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猫とネズミとネズミ捕り

#UDCアース

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#UDCアース


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「ちょっと依頼したいことがあるんですが、今って時間大丈夫ですか?」
 ヤドリガミの探索者であるグリモア猟兵、飯田柘榴の呼びかけに、ベースに集まっていた猟兵達が顔を向ける。注意が十分に集まったことを確認すると、彼女は依頼の内容を簡潔に告げた。
「現場はUDCアースで、内容としては邪神教団がらみの連続殺人事件が予知されたので、目的と実行犯を突き止めて始末してくださいって感じです。行けそうな人いますか?」
 再度の確認の後、十分な人数が残っているのを見て、柘榴は一度深く頭を下げて、手元の手帳を開いた。何枚かのページが巻き上がって空中で静止し、スクリーンのように映像を映し出す。彼女は手を軽く振って映像の変化を確認すると、猟兵達に向かって依頼の詳細を話し始めた。
「ご協力ありがとうございます。事件の背景ですが、日本、UDCがよく出る国ですね。その国で古代文明の遺跡が見つかった所に端を発します。なんでも、現在に伝わらなかった神話の資料や神を描いた石碑なんかが見つかったそうで、その手の界隈ではかなり盛り上がってるそうです」
 楽しそうですねー。などという呑気な言葉とは裏腹に数人の猟兵の肩がこわばった。UDCアースを襲っている邪神とは、まさしく今回見つかったような『忘れられた神々』がほとんどだ。儀式や呪文が見つかればそれだけ敵が増え、万が一本体が眠っていた日には犠牲覚悟での戦闘が必要になる。どう転んでも厄介事になるのだ、気負ってしまう猟兵が出てくるのも仕方のないことだろう。やや重くなった空気を払うべく、柘榴はあえてニコリと笑みを浮かべた。
「お察しの通り特級の厄ネタです。とはいえ調査自体は無事終わってます。呪文の類も見つからなければ、発掘中に邪神復活、なんて大ごとも起きなかったようです。問題はその後です」
 スクリーンの表示が切り替わり、新聞記事や調査機関の報告書を映し出す。未来の日付で書かれたそれは、予知による自動筆記で得られたものだろう。内容を読むと、発掘に関わった人物が連続して殺されており、犯人も不明であることなどが書かれている。
「死者28名、行方不明者1名、このうち最初の犠牲者3名は発掘を主導した大学研究室の生徒です。この資料だけだと邪神教団がやったとは断定できませんが。予知後に調べてもらったところ、発掘以降研究室回りで奴らの痕跡がいくつも見つかったそうなので何かしら関わってるとみて良いでしょう」
 言葉に合わせて、草むらに隠された小規模な儀式痕や虫に偽装した使い魔などの写真が映った。その様式は邪神教団が関わる他の事件で用いられたものと一致しており教派の特定こそできないが、いずれかの教団が関与していることは確実だろう。
「口封じか、出土品狙いか……なんにせよ情報が足りていませんのでまずは教団に関わってそうな人を捕まえて目的を聞き出してください。根本的な対策はそのあとです」
 そこまで言うと、柘榴は言葉を切って手帳に目を落とし、何かを考えるような仕草をした。彼女の思考に従ってスクリーンに映る内容がバラバラと移り変わり、最終的に研究室の教授および3人の学生、そして発掘後に採用された新任の警備員の顔と名前が映し出される。柘榴は学生の1人を丸く囲って『行方不明』と書き加えると再度猟兵達に向き直った。
「これはあくまでも推測ですが。敵の行動範囲がかなりピンポイントですから、関係者の中に教団員、あるいは洗脳された人がいると考えた方が良いと思います。特に怪しいと思われるのはこの5名ですが、それ以外の関係者も一通り住所や所属をリストアップしておきましたので参考にしてください」
 柘榴が軽く手を振ると、スクリーンを構成していたページが宙を舞い、猟兵達の手元に積みあがった。見ると、説明した内容と関係者のリストが記載されており、先ほどの5名に赤線が引かれている。どうやら配布資料をスクリーンに流用していたようだ。
「大学には話を通してありますので、研究室、警備員室には自由に入れるはずです。出土品の確認ですとか、監視カメラの映像については直接の交渉をお願いします」
 こんな所ですかね、という言葉と共に余っていたページが柘榴の手帳に舞い戻る。紙の流れが治まると、彼女は口元に張り付けていた笑みを消して、光の差さない瞳を鋭く細めた。
「現地機関の行動を反映した予知で犯人が特定できていないということは、意思決定を行っているのはそこそこ頭が切れる人物でしょう。経験上、この手の輩は生かしておくと最悪のタイミングで足をすくわれますから、確実に仕留めてください。皆さんであれば心配はいらないと思いますが、お願いしますね」


Uravis
●マスター挨拶
 はじめまして、Uravisと申します。このような形式で書かせて頂くのは初めてですので、試しに某探索系TRPGでありそうなシナリオを用意してみました。

●シナリオ概要
 内容としては、戦闘少なめで調査メインの三部構成シナリオとなっており、第一部は邪神教団の教団員を発見、情報を聞き出すことが目的となります。

●舞台
 主な舞台としては大学構内を想定していますが、発掘現場や学生の家など、調査上必要と思われる場所であれば出して頂いても構いません。

●その他
 手探りの形になりますが、読み返して楽しいと思えるようなリプレイを作れるよう努力して参りますのでよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『教団員を探せ』

POW   :    自分が怪しいと思った相手に力を見せつける

SPD   :    容疑者の情報や証拠から教団員を特定する

WIZ   :    会話して得られた情報から教団員を推理する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

江戸川・律
こんな厄ネタ関わらない方が、フリーのジャーナリストとしてあり得ないだろ?容疑者は5人に絞られていても決定的な証拠は無しと、資料だけじゃどんな人達か分かんないな…とりあえずいつも通り、記事ネタを貰いに大学の研究室にひとりひとり話を聞きに行きますか、どんなものが見つかったとか興味もあるしな、まずは信頼を得てから深い話を探れる下準備っと



「やっぱ取材の基本は足だよな」
 江戸川・律(摩天楼の探求者・f03475)はそうひとりごちた。
 どんなに詳細な資料があっても、そこに赴かなくては得られないものもある。ジャーナリズムはえてしてそう言った側面を持つものだが、江戸川の行動はまさにそれを体現するものだ。
彼は今、容疑者候補達から直接話を聞くため、研究室へと赴いていた。
「失礼します、UBジャーナルの江戸川です。先日発掘された伏田遺跡について取材に伺いました」
 メールで伝えられた偽の名義を告げて研究室に入ると、すぐに近くの席に座っていた男性が立ち上がった。
「大学から話は聞いてます。調査に参加してたサナダです」
 その後やや遅れて、緊張した様子の女性が立ち上がる。
「み、ミタです」
 2人の顔は資料の死亡者と一致しているが、行方不明になるはずの1人だけが見当たらない。
「今日はよろしくお願いします。ところで、遺跡の発掘に関わった方は3人と伺っているのですが、もう1人の方はお休みですか?」
「オオノですね。アイツ、最近大学来てないんです。家には居るみたいなんですが……」
「なるほど」
 そちらにも話を聞く必要があると考えながら、江戸川は2人へと取材を始めた。

 取材という非日常の興奮ゆえか、江戸川の話の巧さ故か、次から次へと話は弾んでいく。しかし出土品について話し始めた時、急にサナダが言葉を濁らせた。
「どうかしましたか?」
「いや……発掘中に何か変なものを掘り出した気がするんですよね」
 考え込むサナダにミタが心配そうな視線を向ける。いつもの事、という訳ではなさそうだ。
「気になりますね。発掘の時に出てきたものって見せてもらうことはできますか?」
「あ、えと、出土品は教授が管理してるので、教授室に行けば見せてもらえると思います」
 悩むサナダに代わって、ミタがテーブルに置かれていた裏紙を取り、簡単な地図を書くと、江戸川に手渡した。
「ありがとうございます、何か分かったら教えて下さいね」
「はい、ありがとうございました」

 疑問は増えるばかりだ。しかし、全くの暗雲というわけではない。
「少なくとも手がかりは見つかった……ってこれじゃまるで探偵だな」
 江戸川は苦笑しながらも、とりあえずの状況を報告すべく、支給された携帯を手に取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

月山・カムイ
確実に犯人を見つけるのなら、まずは最初の犠牲者3名が殺される現場を目撃すればそれで事は足りるでしょう
未来の日付の新聞記事や報告書から殺害日時や現場について、最低限度の情報は得られるはずなので、その時間に犠牲者の一人に影の追跡者を召喚して追跡させる
容疑者5名全てに追跡者を着ける事ができれば話は早いのですが、そこまで便利なものでもありませんからね
私は私のやり方で、最後に根を絶つ為にまずは情報収集とさせていただきましょう



確実に犯人を見つけるにはどうするか?簡単だ、現行犯で捕まえれば良い。
実行もそれほど難しくない、誰がいつ殺されるのかは分かっている、あとは影の追跡者で追うだけだ。
残るのは倫理の壁だけだ。少数の犠牲で災厄の根を断つ。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。誰だって、見捨てたくも、見捨てられたくもないのだから。
"だから"自分がやるのだ。月山・カムイ(絶影・f01363)はそう決めていた。

「問題は、誰に使うかですね」
 五感を共有する都合上、影の追跡者を2体以上同時に扱うのは難しい。対象を絞る必要がある。必要な情報を吟味していると、全体連絡のメールが届いた。
「行方不明を予知された学生が家に引きこもっている、ですか」
資料を見返すと、その学生、オオノに関しての情報は行方不明となった時点で途切れていた。物理的に消されたとも考えられるが、犯人という可能性もありうる。
「最初の事件まで時間はありますし、調べてみる価値はありそうですね」

 引きこもっている学生、オオノの家は小さなアパートの一室だった。昼だというのに雨戸が閉められ、ポストの中身は溜まったままになっている。カムイは追跡者の視界を通してそれを確認すると、扉を透過して追跡者を滑り込ませた。
 部屋の中には正気を感じさせない文章が書き殴られ、読み散らかされた本や新聞が散らばっている。オオノはそんな部屋の中心に座りぶつぶつと何事かを呟いていた、意図せずして狂気に触れてしまった者によく見られるふるまいだ。
 カムイは半ばはずれを確信しながらも、確実な証拠を得るべく追跡者を部屋の奥へと進める。その瞬間、オオノの目と追跡者の視線が交差した。
影の追跡者を発見するのは極めて難しいが、不可能ではない。極度の警戒状態に陥っている者ならばなおさらだ。明瞭ではないまでも、影に潜む何者かの気配を感じ取ったオオノは即座に近くにあった卓上ライトを手に取り、立ち上がった。
「誰だ!?」
オオノがそれ以上の行動を起こすよりも早く、追跡者を扉の外へと退避させる。
間を置かずに家の中から何かが割れる音、砕ける音が響き、続いて
「知ってるぞ!知ってるんだからな!お前なんだろ!!隠れてないで出て来いよぉ!!」
という叫びがこだまする。
 状況から判断するに、彼が教団員である可能性は非常に低いと言えた、が……
「何か、知っているようでしたね」
 直接犯人を知ることはできないだろう。だが、調べる意味が無いというわけでもなさそうだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

江戸川・律
仲間に連絡は取ったけど…このまま帰るわけないよな、仲間と合流するならするでOK、オオノのことも気になるけど先ずは『情報収集』で教授の事を確認してから大学内の教授室へ

教授室に訪れてキチンと礼節を守りながら話をしよう。
古代ロマンに花を咲かせ『言いくるめ』を使用しながら、信頼を勝ち取れば、出土品一覧と出土品を見せて貰えるかも?
もしかしたらリストから消えている品があるんじゃないかな?
当時の状況や現場でのスタッフの様子なども話を振ってしれっと調べてみるか…まぁ教授黒幕説も捨てられないけどね…



ミタから教えられた場所へ行き、挨拶して扉を開けると、頭髪が後退し始めた初老の男性がにこやかに江戸川を出迎えた。
「ああ、君が取材の。ミタ君がさっき電話してきたよ。随分と話の分かる記者さんだって。結構人見知りなんだけどね、彼女」
 どうやら先んじて連絡を入れてくれていたようだ、心の内で彼女に礼を言いながら、教授と握手を交わす。
 思っていたよりも話は早く進んだ、話が通っていたからというのも一つだが、専門的なことをきちんとわかってくれる記者の存在を教授が殊の外喜んだから、というのが大きい。
「よければ、出土品などを見せていただけないでしょうか?」
「もちろん!実はボクも自慢したかったんだ。管理を任されてるだけでボクのってわけじゃないんだけどね!」
 教授は積みあがっていた資料から出土品のリストを渡すと、満面の笑みを浮かべて隣部屋の鍵を開けた。物を一つ一つ取り出して見せながら、当時の生活について喜々として語っていく。そうして、話が終わるころには時計の長針は二周ほどしていた。確認できた限りでは、リストに抜けは無く、魔術的な力を感じるものも無いようだ。
江戸川が取ったメモとリストの内容を突き合わせていると、最後の出土品を棚に戻していた教授が残念そうに付け加えた。
「一つだけ心残りなのは首飾りが見つからなかったことかな。当時の宗教観がわかる重要な資料なんだけどね」
「それはぜひ拝見したかったですね、どのようなものなのですか?」
「形は色々だけど、大抵はヒスイでできてるね。中心に赤いヒスイが使われてることが多いよ。もしかして見たことあるかな?」
「いえ、残念ながら」
「そっか、もし骨董品屋とかで見つけたらボクに教えてくれると嬉しいな」
 教授は冗談交じりにそう言うと、他に聞いときたいことはある?と胸を張った。
「では一つだけ、今回の発掘にはどういった方が参加されたのでしょう?」
「あまり覚えてないなー、他所からも結構来てたと思うけど……あそうだ、最近来た警備員の彼。エンドウくんだっけか。彼が警備で参加してたよ。若いのにずいぶん真面目で勉強家だったから、ちょっと記憶に残ってたんだ」
 その後、教授は少し考えるように宙を見上げて
「そういえば君も若いのによく勉強してるよね、この国の未来は明るいなぁー」
と笑った。

「本日は大変興味深いお話をありがとうございました」
 外に出て、先ほどの事を思い返した。悪い人じゃなさそうだ、と直感は言っている。一方で、手帳に遺された記者の勘は、第一印象を信じるな、と告げていた。
「さて、どうしたもんか」
 考古学の記事を書くなら十分だ、だが、殺人事件を書くには、まだ足りない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木乃花・蓮司
学生達には接触済、その流れで教授にも話を聞けそうだし、僕は新任の警備員の方を探ってみようかな。
同じ立場になった方が話しをしやすいと思うから、警備員に扮して一緒に仕事をしつつ休憩時間にでも色々聞いてみよう。

世間話ついでにそういえば、という感じで遺跡についての話をきりだして、何か表には出せない奇妙な出土品があったらしいよ、と言って反応をみる。

ついでにそういういわくつきの物に興味があるから、ちょっと調べてみようかな~なんてことを仄めかしてみようかな。
もし教団員なら関わろうとする人物は厄介だろうし、むこうからアクションをおこしてくれるかも。

何も無くてもこの人は無関係ってことが分かれば収穫だよね。



UDC組織の協力によって首尾よく警備員として潜入した木乃花・蓮司(ダンピールの精霊術士・f03953)は目的の警備員、エンドウと同じ時間の仕事に入り込むことに成功していた。警備員の仕事時間のうち多くは待機であり、特に夜勤はそれが顕著だ、話す時間をとることはそれほど難しくない。蓮司は初対面というハードルをものともせず、1時間もしないうちにエンドウと話の花を咲かせていた。夜の警備ということもあって、ちらほらと怪談の話などが混じりだした所を見計らい、遺跡についての話を切り出す。
「怪談で思い出したけど。エンドウさんって古代遺跡の研究してる教授は知ってる?」
「フシダ教授ですか?存じております」
「それなら話が早い。その教授の研究室が呪われてるって噂が流れてるんだよね」
 もちろん、実際にそういった噂が流れている訳ではない。しかし、そのことにエンドウが疑問を覚えた様子は無いようだ。
「呪いというと、古代の呪いとかそういった類のですか?」
「そう、発掘の時に学生の一人がいわくつきの物品を掘り出して発狂したとか」
 それを聞いた瞬間、エンドウの目が探るように鋭く細められた。
「……なるほど、それは、恐ろしいですね。木乃花は何かご存知なのですか?」
 その表情は瞬きもしないうちに元の朴訥としたものに戻ったが、その一瞬、エンドウは確かに蓮司に疑いの目を向けていた。明らかに怪しいが、確証は得られていない、蓮司は気づかなかったふりをして話を続けることにした。
「いや全然。ただ、興味があるから調べてみようかなーとは思ってるよ」
「それは良い、何か分かったら私にも教えてくださいね」
 ちょうどその時、セットされたタイマーが鳴り、エンドウが立ち上がった。
「おっと、巡回の時間ですね。行きましょうか」
 後に続いて暗い校舎へと踏み出しながら蓮司は考える。
(なにかしら知ってはいそうだね。もっと調べた方がいいかもしれないな)

成功 🔵​🔵​🔴​

ケンパー・ボイド
SPD:技能「ハッキング」で個人情報を収集して対象の絞込みを行う。

ターゲットにするのは私生活に金銭面のトラブルを抱えている、あるいは精神面の不安定さから来る奇行を見せる者。ドローンを併用して5人の中から特に怪しい1、2人ほどを選んで動向を監視。

他にも調べている連中がいるのだ。自分の割り当てとしてはこれで十分だろう。



「監視と、対象の絞りこみ、私がすべきはその程度だろう」
 すでに情報は集まっている、自分がすべきはその補強であり、それで片が付く。ケンパー・ボイド(ウォーマシンの悪徳警官・f03805)はそう考えていた。
 現状、調べる必要性が高いのはエンドウとオオノの二人だが、オオノは閉じこもっており、今持っている機器での監視は難しい。とすれば、エンドウに対象を絞るべきだろう。
 ドローンによって彼の行動を追いかけるが、仕事の最中に彼が行動を起こす様子はなく、特に進展もないまま自宅へと戻ってしまった。さすがにドローンは中に入れない、手詰まりだ。
「さて、どうするか……ん?」
 その時、ドローンに搭載された魔力を感知するセンサーが何かを捉えた。拡大すると、細く開いた窓から小さな虫のような物が部屋の中へと入っていくのが見える。もちろんただの虫であれば気にする必要もないが、そこから魔力が感知できるとなれば話は別。十中八九邪神教団の常とう手段、偽装した小型の使い魔だろう。
 問題は、監視しているのか、されているのか、だ。
 さすがに気づかれずに窓からドローンを侵入させるのは不可能だが、手段はそれだけではない。目がダメなら耳がある。
 ドローンを家屋に最大限近づけ、集音性能を最大にする。もちろん雑音も大きくなるが、他のマイクから拾った音で打ち消すと、エンドウの声だけが残った。
「なぜ見つからないんだ、何を見落としている。家も研究室も発掘現場も全て探したはずだ。あるとすれば、あとは、あとは……体内、そうだ、体内はまだ探していない。切り開いて探さなくては」
 エンドウは発掘された何かを見つけるために、被害者の体の中を“探した”のだろう。資料の状況とも一致する。
「当たりだ。手間が省けたな」
 本部へと連絡を入れながら、今後について思考を巡らせる。このままいけばエンドウは捕まり、事件の発生は止められるだろう。
「だが、これで終わるとは思えないな」
 それは勘ではあるが、同時に確信でもあった。UDC機関とて無能ではない、たったこれだけで解決できる事件ならば、わざわざ猟兵が出張る必要はないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『祭具争奪戦』

POW   :    祭具を強奪する、教団員を物理的に排除する

SPD   :    乗り物を用意する、所有者と一緒に逃げる

WIZ   :    交渉で祭具を入手する、偽情報で敵を惑わす

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


想定していたよりもずっとあっさりと、事件の犯人は捕らえられた。
踏み込んだ猟兵達にエンドウは抵抗したものの、せいぜいが小型の使い魔を召喚する程度。本当に猟兵の関与が必要だったのかと疑う程だ。
 しかし、まだ全てが終わったわけではない。
 彼が行動に至った理由そのものを潰さなければ、真に平穏が訪れたとは言えない。この事件が彼単独で行われたものという保証はどこにもないのだから。
 エンドウは黙して何も語らず、彼の部屋から見つかった情報はたった一つだけ。
『ヒスイの首飾りを探す』
 彼の手帳に乱雑に書き込まれたその一文だけが今回の事件と彼の関係を示していた。ヒスイの首飾り。おそらくは教授が語ったソレは、発掘の際には見つからなかったはずのものだ。
 少なくとも、教授はそう言っていた。しかし、エンドウの目的はそれだという。
 研究室の二人か、引きこもっている一人か、それとも教授か、はたまた他の誰かが何かを隠している。
 まだ明らかになっていない何かがある。それだけは確実だった。
 ふいに視線を感じて一人の猟兵が振り向く。小さな使い魔が一匹、じっとこちらを眺めていた。
木乃花・蓮司
うーん、使い魔を送ってくるとはなかなか厄介な相手だねぇ。
僕達も慎重に調査していかないと。

江戸川さんの調査でリストに載ってる遺物からは魔力が感じられないし、抜けている物もない。
けど月山さんの調査でオオノは狂気に触れた様子がある…と。

オオノが例の首飾りに関わって狂気に触れた可能性が高そうだし、もう一度オオノの部屋を調べてみようかな。

「おいで、ポチ。出番だよ!」
名犬召喚を使用してオオノの部屋を調べてもらうよ。
また気付かれるかもしれないけど、UDCであるポチなら部屋の中やオオノから首飾りの手掛かりを感じられるかも。
あと彼が「お前」の何を「知っている」のか、その辺も調べられたないいかな。


月山・カムイ
どうにも、全体像が見えないというのは居心地が悪いですね
私はこのままオオノさんを調べてみましょう
最終的には手荒になりますが……まずは彼について調べてみる
何時頃から引篭っているか、友人達は彼についてどういう風に言っているのか
その手の情報はUDC機関に収集してもらう

最終的には力尽くで彼の住居へ踏み込む
予想として
・ヒスイの首飾りを彼が持っている
・その前後から妙な事件が周りで起きた為怯えている
のではないかと
行方不明になった理由もそこに関連しているのでは?
なら、力尽くで彼を部屋から引っ張り出し、機関に保護してもらうとしましょう
家探しも必要ならばする
どういった情報が手に入るかはわかりませんがね




 事件の先行きは再び暗雲に包まれた、といっても過言ではない。
何せ、犯人が捕まったはいいが分かったのは『首飾りの回収』という目的だけ。
いまだに黒幕らしきものは暗躍し、物自体もどこにあるか分かったものではない。
そんな中で、確実に何かを知っているオオノに調査の目が向くのは当然の事だ。
それは、在り方の異なる二人の猟兵、月山カムイと木乃花蓮司にとっても同じことだった。

 同じ目的をもってオオノの家の前に立った二人が方針について話し合う。
蓮司は当初自身の使い魔、名犬ポチでもって屋内を探らせることを考えていたが。
先日同様の手法を試していたカムイがそれを止めた。

「前回情報収集を試みた時、彼はかなり強く警戒していました。たとえ隠密性に優れたUDCであっても、ただ潜入させるだけでは気づかれてしまう可能性が高いです」
「それは僕もそう思う。じゃあ、どうしようか?」
「ここはあえて追跡者に気づかせましょう」

 一度失敗した方法を繰り返しても成功する可能性は低い。だが、失敗したならば失敗したなりに活かす方法はある。
 前回の潜入でオオノは追跡者を敵と認識しているだろう。だから、追跡者の存在に気づかせ、その上でポチにそれを制させるのだ。
 襲い掛かってくる怪物にしか見えない追跡者と、自分を守るように現れたポチが戦っていればどちらを味方と判断するかは明白だ。神経をすり減らしている一般人であれば助けを縋ってもおかしくない。
 実に合理的で、効率的ではある。
 だが、その提案に蓮司は苦笑いを浮かべた。
「……それ、マッチポンプって言わないかな?」
「ええ、ですが力づくや潜入で無理やり情報を手に入れるよりはずっと確実で穏便に済むと思います」
 様々な考えが蓮司の中で巡る。そして最終的に、状況が分かっていないのに時間をかけるのは悪手だろう、という結論へと至った。
「そうだね。やってみよう」


 カムイが家の影に、蓮司が玄関の前に立ち、それぞれの追跡者を呼び出す。
「闇に紛れろ、影の追跡者」
「おいで、ポチ。出番だよ!」

 方や闇が形を成したかのような漆黒の異形が、方や人の友たる犬が、それぞれの前に現れる。事前の相談に従い、漆黒の異形が部屋の中に入ると、ややあってつんざくような叫び声が響き渡った。それに続き、何かが壊れるような音が聞こえてくる。オオノが追跡者を攻撃しているのだろう。
 今のところカムイの巧みな操作で攻撃を避けているが、物理に強いわけではない追跡者はしばらくすれば撃退されてしまうだろう。その前に作戦を遂行すべく、蓮司はポチに声をかけた。
「よし、ポチ。行っておいで」
 ワンと力強く吠えて、ポチが家の中へ飛び込んでいく。すると、ポチの目を通して、犬の乱入に困惑するオオノの姿がはっきりと映った。その困惑に乗じて、ポチが追跡者に噛みつく。
 思わず五感の共有でダメージを受けるであろうカムイに目が行った。しかし、彼は何事もなかったかのように追跡者を操っている。精神的に強いのか、フィードバックだけを遮断したのか。どちらにせよその高い能力に感心していると。二十秒ほどの戦いを経て、ポチが追跡者を咥えて誇らしげに立った。そんな姿に、オオノが弱弱しくつぶやいた。
「もしかして……助けて、くれるのか?」
 理想的な展開だ。ポチは一声鳴いて応えると、玄関に向かって歩き出す。つられるようにして、オオノが玄関に近寄った。
 ポチの目を通して見えたその瞳は、わずかな光明にすがる哀れな犠牲者のそれに他ならない。蓮司は一つため息を吐いた。
「扉は開けなくて良いから聞いてくれるかな?僕はその子の飼い主の木乃花蓮司。君の置かれてる状況について話したいことがあるんだ」
 聞き覚えのない声に、オオノはビクリと肩を震わせたが、一度ポチに目をやると、ゆっくりとドアに手をかけた。


 直接顔を合わせて状況説明を終えると。オオノは言葉を選びながら語りだした。
「その、たぶんアンタが言ってる首飾りを持ってるのはミタだ。同じ研究グループの、人見知りな女の方」
 意外な名前が出てきたことで、蓮司はオオノの目を見据えた。目には疲弊が色濃く刻まれてはいるが、パラノイアの兆しは見えない。正気と判断し、話の続きを待つ。
「この間の発掘の時、サナダが変な首飾りを見つけて。それを見たとたんおかしくなったんだ。急に暴れだしたかと思ったら、サナダから首飾りを奪って、それで」
そこでオオノは一度口をつぐみ、何かにおびえるように視線をさまよわせた。
「ミタの口から黒い虫みたいなのが出てきて、サナダが食われたんだ……」
 情報によればサナダは生きているはずなのだが……一致しない証言に気を取られていると、オオノの顔色が休息に悪化していった。口をつくように言葉が溢れでる。
「俺、たまたま見てて、隠れてたから、気づかれてないと思ったのに……」
「分かった、もう大丈夫だ」
 狂気に触れたことによる幻覚か、実際に使い魔が送られていたのか。おそらくは両方の影響だろうが、オオノはひどく憔悴しており、それ以上を話させるのは酷なように見えた。方法によってはこれ以上話を聞くこともできるだろうが……もう十分だ。
そう感じた蓮司は、くずおれるオオノに優しく語りかけながらUDC機関へ保護の要請を送った。


 ほどなくして、UDC機関の車が到着し、オオノが保護されていく。それを確認して、姿を隠していたカムイが蓮司の隣に立った。
「成功ですね」
「うん、ちょっとだけ罪悪感はあるけど。うまくいって良かった」
「あのまま部屋に籠って怯え続けるよりはずっとマシでしょう」
 互いに思うところはあるだろう。だが、少なくとも事件は解決に大きく近づき。
一人の少年を危険から遠ざけることができた。
 それは間違いなく大事な成果といえるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月山・カムイ
オオノの証言から
・サナダが虫に食われた
・ミタがヒスイの首飾りを持っている可能性が高い
この2つが考えられます
ヒスイの首飾りを手にしたお陰で、取り憑かれていたものから開放された?
ただ、それだと未だ研究室でその後虫に取り憑かれたサナダと一緒にいるのはおかしい、か

参りましたね、説得は苦手なのですが……とにかく、ヒスイの首飾りをミタが持っている事を確認しましょう
まずは直接彼女へ接触、オオノから聞いたという方向でヒスイの首飾りを知っているか、と尋ねる
コレが彼女を守っている可能性もあるので、取り上げたりはしない
むしろ彼女を逃がす方向で行きたいのですが
本当に犠牲者が出てしまう前に、なんとか対処したいものです


ケンパー・ボイド
色々と不確定な状況だが、とりあえずはコノハナとツキヤマの仕入れた情報が正しいとして動いてみよう。

まずはサナダの安否の確認。これは目撃情報やカメラ、ビデオといった電子情報からでも間接的に分かるはずだ。少なくとも最近急に姿が見えなくなったか、今もぴんぴんしているかどうかくらいは調べられる。

そして問題は、ミタか、まだ容疑の晴れていない教授、あるいはまだ生きているサナダへの接触。直接的にアクセスした時点でもう片方──あるいは黒幕が──何らかのアクションを起こす可能性は高い。だが、どこかで思い切る必要がある。

生きていればサナダ、そうでなければミタに話を聞きに行く。戦闘になれば御の字だ。事件が動く。




 少なくとも、エドガワがサナダと会ってから3日と経っていない以上、戸籍上サナダと呼ばれる存在は生きているのだろう。だが、それが本人であることを保障する物はない。とはいえ、狂気に囚われた人間の見たものがどこまで参考になるかは、疑問の余地が残る以上。やはり直接確認する必要があるだろう。ケンパー・ボイドはそう考えると、サナダに対して直接連絡を取った。

 既に得ていた情報を1つ1つ確認しながら、彼の素性を確認していく。UDC機関の調べた彼の情報と、彼が語る情報は寸分たがわず一致しており、彼を殺した何者かが成り代わっているようには見えない。しかし、おかしなものを発掘した、という話題になった時、変化は起きた。
「それは、ヒスイの首飾りだったんじゃないか?」
「え……」
 その質問をしたとたん、サナダの動きが奇妙に止まった。
「いえ、違います」
 先ほどなんだかわからないと言っていたにも関わらず、急に明確な否定を返したことで、ケンパー・ボイドは警戒を強めた。様子を伺いつつ、何度か同様の意図の質問をするも、帰ってくる答えはbotのようなものばかり。この方法では結果が得られないかと思い始めた瞬間、急にサナダが震え始め、そして、彼の口から黒い虫のようなものが姿を現した。
「オオノが言っていたヤツか」
 虫に食われたと言っていたのは実際は寄生対象が移る場面だったのだろう。情報を探るものへのカウンターとして用意されたであろうその虫は。しかし、猟兵相手には不足としか言いようがない。銃を抜き、何事もなかったかのように打ち抜くと、二発ほどで黒い虫は地面に倒れ伏した。後に残るのは倒れたサナダと虫の死体。つまり、後処理だけだ。
「さて、清掃と保護を手配するか」
 もちろん、自分でやる理由もないのだが。


 ケンパー・ボイドの調べによって、おおよその状況は理解できた。直接ミタに話を聞けば状況は解決するはずだ。その考えのもとに、カムイはミタの元を訪ねた。
 研究室に近い大学の通路、人気の少ないそこを話の場に指定され、カムイはヒスイの首飾りの話を切り出した。
「あなたが持っているとオオノさんに伺ったんですが」
「なんの話ですか?」
 まるで知らない話だ、と言外に告げながらミタはにっこりと笑う。実に自然で、疑いようもない動作。それが、逆にどうしようもなく不自然だった。
 発掘前から付き合いのあるオオノが、人見知りと表現するくらいだから。元々の彼女はそういう性格だったのだろう。だとしたら、この対応は妙だ。何かが憑りついているか、もしくは洗脳されているか、その可能性が高い。
 ミタへの疑いを確信に変えながら、カムイはさらに問いかける。
「本当にご存じないんですか?」
「ええ、最近オオノさん具合が悪かったみたいだから、きっと勘違いしたんじゃないでしょうか?」
 疑われていることを知ってか知らずか、ミタはあくまで否定を続ける。このまま話続けても平行線になるだけだろう。
「そうですか、何度もお聞きしてすみませんでした」
 だから、あえて隙を見せることにした。カムイが頭を下げ、後ろを向いた瞬間、ミタの体から複数の虫が現れ、カムイへと襲い掛かる。
「あなたが悪いんですよ」
 意識外からの奇襲、普通の人間であれば対応する事すらままならない一撃に、ミタは勝利を確信した笑みを浮かべた。
「手荒な手段を取るつもりはなかったのですが……虫を数体出した程度でどうにかなると思われても困りますね」
 しかし、当然ながら、というべきか。その攻撃はただの一刀のもとに切り捨てられ、残る虫たちも数匹ずつまとめて切り払われ、落下していく。武闘派の猟兵にとって、この程度は児戯にも等しい行為だ。しかし、ミタは、虫が一瞬で切り払われたことにひどく驚愕の表情を見せていた。
「な、なに?なんなのあなた!?」
「猟兵です、といっても、ご存じないみたいですね」
 ミタはじりじりと後ろに下がると、やがて一気に走りだした。脱兎のごとき逃走、とはいっても、猟兵であれば余裕で追いつける程度の速さでしかない。しかし、カムイはあえてそれを追う事はしなかった。
 なぜなら、最初から追う必要が無かったからだ。曲がり角を曲がった所でケンパー・ボイドに気絶させられ、連れ戻されるミタを見て、カムイは微妙に渋い顔をした。


 ケンパー・ボイドはミタの首からヒスイの首飾りを取り外すと、太陽の光にかざす。何かが力があるのはなんとなくわかるが、語りかけてくることも、精神に干渉してくることもないようだ。
(最初にサナダに反応しなかったあたり、女性専用という可能性も高いか)
 回収要員に連絡をいれながら首飾りをあらゆる角度から見る彼に、カムイは当然のように問いかけた。
「これ、結局どういう道具だとおもいますか?」
「可能性としては、UDCを操る道具、だな。場合によっては何らかの人格が憑りついているかもしれん」
「そんなところですかね。今の虫も彼女が召喚したものではなく、彼女にもともと寄生していたものなのでしょう。そう考えるとオオノの発言とも一致します」
 2人の意見は単なる推論に推論を重ねたものでしかないが。しかし、それほど間違っていないように思えた。この能力であれば、虫で監視されていたミタの首飾りが教団員に見つかっていない理由も、監視していた虫が操られてしまったせいだと想像できる。
「分かってはいたことですが。彼女は事件の本質ではあったようですが、犯人という訳ではないようですね」
「そうだな、自分が所持している首飾りを探させる理由は無い。とすれば、今回の事件は教団員が彼女の首飾りを発見できなかったことによる暴走という可能性が高いな」
 とすれば、することはもう1つだけだ。元凶の教団員を探し出し、捕縛・あるいは殺害すること。そして、それが誰かはほとんど確定していた。
学生やエンドウに干渉することができ、ヒスイの首飾りが存在することを知っている人物は、消去法で考えればもう一人しか残っていない。
「やっぱり教授、ですかね」
「十中八九間違いないだろうな」
 そこまで分かってしまえば、必要なことはただ一つ、次の事件が起きないよう。敵を逃がさないことだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

江戸川・律
ミタさんから回収された《ヒスイの首飾り》
仲間が集めてくれた手元に集まった情報(カード)が
教授が黒と語っている

Truth is stranger than fiction…
わかってる
それでも俺はまだ信じたくないだよ

「レプリカクラフト」で《ヒスイの首飾り》のイミテーションを作り
「変装」で外見を整え
完成したイミテーションを眺めます

そして教授に連絡をとり話がある旨を伝えます
全てが黒でも真実は自分の目で確かめる…
戦闘の前に少しでも話せればと思います

戦闘になれば銃で応戦します

アドリブOKです



●Truth is stranger than fiction.
「あの教授が、か」
 レプリカクラフトで作り上げたヒスイの首飾りのイミテーションを弄びながら、江戸川律は呟いた。
 学生の事を考え、楽しそうに自分の研究を話す姿は悪い人には見えなかった。だが、仲間が集めてくれた情報(カード)がその直感を否定していた。
 全ての不可能を消去して、最後に残ったものがどんなに不都合な事であっても、それが真実となる。UDCアース一有名な探偵のそんな言葉が頭をよぎる。
「結局最後まで探偵の真似事だな」
 そんなことを言いながらも、江戸川は教授の連絡先に電話をかけていた。
 たとえ真実がすでに暴かれていても。たとえそれが信じたくない結果だったとしても。直接問わずには、自らの目で確かめずにはいられなかった。
 そしてそれこそが、真実を求めるものとしての、探偵と記者を別つ唯一の境界、なのかもしれない。

 首飾りが手に入ったことを伝えると、教授は二つ返事で会うことを承諾した。
 部屋で待っていた教授は相変わらず好々爺然とした様子で江戸川にお茶などをふるまい。玩具をもらった子供のように首飾りを眺めまわした。
 首飾りの価値や意味について教授の話は続く。そして、それが首飾りの出所の話となった時、江戸川はミタやエンドウ、オオノに関する全ての情報を公開し、教授に投げかけた。
「はっきり言います、俺は教授を疑っています」
「なるほど、僕が彼女らにその虫とやらを寄生させたと。そういう事かい?」
「ええ、ですが首飾りによって虫が操られ、情報が届かなくなったためエンドウを使ったと、そう考えています」
 もしも一般人であったなら、会話終了後即記憶処理を行うレベルの話だ
 しかし、そんなもしもの想定を裏切るように教授は満面の笑みを浮かべた。
「多分に推測が混じっているようだけど……素晴らしい、全くその通りだ。訂正する箇所もないよ」
 最初に見せた笑顔と同じ、無邪気な少年のような笑顔で教授は答える。
「否定、しないんだな」
「否定するのは簡単だ。でも、せっかく真実を突き止めたのにつまらない嘘で有耶無耶にされるなんて、面白くないだろ?」
 それが彼なりの誠意なのか、単にポリシーの問題なのか推し量る事はできない。
 だが、少なくとも教授が本気でそう思っていることだけは確実なように思われた。
「せっかく答えを出したんだ。他に聞いておきたいことがあれば答えてあげよう」
 そういって胸を張る、どこかで見た動作だ。
「なら一つ。エンドウが人を殺してまで首飾りを手に入れようとした時。止めようとは思わなかったのか?」
 聞くべきことは他にいくつもあったはずだ。だが、口を吐いて出たのはそんな質問だった。
「そうか、それを聞いてくれるんだ。随分と優しいね、君は」
 ふふと教授は笑う。
「なら答えよう、思わなかった。僕にとっては、研究の方が他人の命より重要なんだ。君たちがそう思わないのは知ってるけどね」
 それははっきりとした決別宣言だった。
 ならばラストクエスチョンはここまで、記者としての仕事は終わった。
 だから、この場に残るのは猟兵としての江戸川律だけだ。
「そうか、分かった」
 銃に手を伸ばす江戸川を見て、教授はさも当然とでもいうように笑った。
「そうなるだろうね、だが、私としてもそう簡単にやられるつもりはない」
 閉まっていた窓が突然開き、吹き込んだ風にページが舞う。そして、教授の姿を覆い隠すように飛んだページが過ぎ去ると。そこには邪神の智慧により頭部の肥大化した、歪なオブリビオンが一人立っていた。
 オブリビオンは動かしなれない体をほぐすように大きく伸びをすると。机の上の本を一冊手に取る。
「生憎と緊急用の仕掛けは色々用意していてね、全力で逃げさせてもらおう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
心情
教授さんも
邪神に心を魅入られた犠牲者の一人なのかも知れませんね…

けれど最早元に戻せないのならば
倒すことで
せめて早く解放して差し上げたいです

手段
魔法を使い溶けるように姿を隠した後
一気に残像分身して包囲攻撃!
小柄な体を活かし懐に飛び込み聖なる力を込めたKナーゲルで貫きます
:迷彩&忍び足&残像&早業&先制攻撃&見切り&属性攻撃&串刺し&破魔

敵攻撃は迷彩&残像&早業&見切りで回避・防御
トリニティも重ねて霧影分身や水膜のバリアですよ

敵脱出にも注意を払い
不信な動きがあれば回り込んで通せんぼです
未来を
皆さんの命を絶対に護ります!




 そう、教授が動こうとした瞬間。一陣の箒星が室内を駆け抜ける。
「む、ぐぁッ!」
 そしてその到達点で、一振りの魔法剣が教授の右手を深々と貫く。
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)、会話の始まりからずっと、魔法により姿を隠していた彼の一撃が、教授に突き刺さったのだ。
 穴の開いてしまった右手を庇いながら、教授は後退する。
「なるほど……魔法か何かで姿を隠していたのか。さすがは猟兵といったところか」
 体躯に劣るケットシーであるが、磨かれたその技術の前にその程度の差は無意味だ。称賛を送りながら次の手を模索する教授に油断の様子はない。
 一方で仄々の側も予測の隙をついた奇襲を防がれたことに最大限の警戒を送りながら、あえて教授の言葉に答えて胸を張った。
「当然です。未来を、皆さんの命を守るのが私達の役目ですから!」
 会話を通して、相手の呼吸を探り、互いに隙をつかんと睨みあう。先に動いたのは教授だった。
「なるほど、やっぱりこの国の未来は明るいなぁ。だが、邪魔されるのは勘弁だ」
 言葉と共に教授の体が燃え上がり、手に持った本から炎が放たれる。
 直撃すればただでは済まない一撃だ。実際、直撃した箇所には灰一つ残っていない。 炎は逃げ道を塞ぐように周囲を燃やし、最後に一際大きな一撃が仄々に向けて放たれた。
 致命の一撃だろう。
 当たっていれば。そう、舞い上がった煙の中から、炎・水・風の三属性を纏った仄々が3人、同時に飛び出してこなければの話だ。
「何っ!」
 教授とっさに防御を固め、3方からの攻撃を防ごうとする。しかし、予想に反して前方の3人からの攻撃は無く。代わりに背後からの強烈な剣戟が突き刺さった。
「隙あり、です」
「ぐっ、2度も同じ手にかかるとは、僕も焼きが回ったかな」
 重い攻撃を2つも受けた教授に対して、猟兵側の負傷は無し。戦場の開幕としては十分すぎる始まりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月山・カムイ
逃げる? どこへ?
逃がすはずなど、無いに決まってるじゃあないですか
貴方の企みは全てが潰えているんですからね、後片付けまでしっかりさせていただきますよ

窓側に待機していたということで
窓から逃げようとするなら、絶影をブラッド・ガイストにて殺戮捕食態に開放して、上から撃ち落とす

折角なので教えて頂きたいのですが、よろしいですか、教授
そもそも、あのヒスイの首飾りは一体どういうものなんでしょうか
いやなに、その用途によっては貴方の前で砕くのもいいかと思いまして、ね!

そこまで話すと後は苛烈な喰らい合いを始める
敵の攻撃は見切り紙一重でカウンターで撃ち落とし
変形した小太刀で教授をガリガリと削って行く




 激しい攻防に互いの位置関係はめまぐるしく入れ替わる。目立った手のないまま時間が過ぎていき、気づけば教授は大きく開いた窓の傍に立っていた。
「うん、こんなところか。では、僕は失礼させてもらうよ」
 最初からこれを狙っていたのだろう。教授は最後に大きな火球を放つと、窓から身を翻す。
 そこに、月山・カムイの狙いすました必殺の一撃が叩き込まれた。
「ゴッ!?がぁああああああっ!!」
 カムイの小太刀、絶影・殺戮捕食態。二寸という異様なまでに短い刃に圧倒的な殺傷能力を注ぎ込んだそれが、防御を貫いて教授の血肉を喰らい、歓喜の叫びを迸らせる。
 勢いのままに叩きつけられた衝撃は地面へと伝播し、小規模なクレーターを創り出した。
 血反吐を吐き、悶え苦しむ教授を見下ろして、カムイは歩み寄る。
「ぐぁ……伏兵か何かは居るだろうと思っていたが……まさかこれほどとは」
「逆に、この程度のことも想定できていないとは、教授としてどうなのですか?」
 挑発の言葉に、教授は傷口を抑えながらひどく判別しづらい表情を笑みの形に歪める。ダメージは大きいようだが、挑発を受け流すだけの余裕は残しているようだ。
「言うね。けど僕、戦闘は専門外なんだ、お手柔らかにしてくれないかな」
「では、専門についてお聞きしたいのですが。あのヒスイの首飾りはいったいどういうものなんでしょうか?」
「なんだ、そんなことか……ただの制御装置だよ、一部の邪神限定っ……のぉっ」
 退屈そうな表情で放たれた言葉は、カムイの剣戟によって断ち切られる。薄皮一枚で躱した教授は呆れた顔を浮かべていた。
「乱暴だな君は」
「いやなに、用途によっては貴方の前で砕くのもいいかと思いましたが。その様子ではあまり効果が無さそうでしたので」
 互いに鋭く目を細める。奇しくも似通ったそれは、方や獲物を見定める狩人の目であり、方や理解できないものを観察する研究者の目。すなわち、それぞれの攻撃準備を表す目だ。
「訂正しよう。凶暴だな君は」
「それで結構!」
 互いの言葉を境に、双方の攻撃が放たれる。カムイは教授の大ぶりな攻撃を紙一重に躱すと、カウンターによって教授の防御を削り取る。戦況は、猟兵有利に動いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エウトティア・ナトゥア
SPD使用

狼をけしかけて教授を押さえ込み、行動を阻害して次の攻撃につなげます。

加勢するのじゃ。
よく分からぬがこれを倒したらいいのじゃな?

月山・カムイ殿のカウンターに合わせて追撃しようかのう。

《巨狼猛襲》「ダッシュ」使用。
マニトゥ、カムイ殿のカウンターに怯んでいる教授に追撃せよ。
横合いから飛び掛り押さえ込むのじゃ、そのまま喰らいついて離すでないぞ。

「援護射撃」「破魔」使用
わしは【邪神の落とし子】に備えて待機するかのう。
【邪神の落とし子】が出現したらこの弓で射抜いてやるのじゃ。

アドリブOK


月山・カムイ
凶暴でなければ貴方達には勝てはしない
なにせ、我々人間は脆弱な存在だからな!

切り結びながら、吠えるように言葉を叩きつける
致命傷だけをカウンターで弾き、かすり傷程度なら無視してむしろこちらの攻撃のチャンスである、と判断して戦い続ける
他の猟兵からの援護で、教授の注意が逸れたタイミングでユーベルコードを発動する

脆弱だからこそ、利用出来るものはなんでも利用しよう
例えそれが邪神の力そのモノでもな!

真の姿を表す
額に燃えるような第三眼
背には歪な悪魔の如き翼
皮膚が染み出すように闇色に染まる
ひび割れるように吠えると、そこから更に凶暴な暴風のように教授へ攻撃を仕掛けていく

どちらかが倒れるまで止まらぬ、と決意して


カイ・シュリック
邪神に魅入られ取り返しのつかない事をする……
研究者としてはあることなのかもしれないが、教育者としては論外だな
既にオブリビオンと化しているなら倒すしかないか

戦闘に参加したら、【処刑術・脚焦がし】で動きを阻害しに行く
既に仲間がつけている【傷口をえぐる】とこや武器での【なぎ払い】を意識し、積極的にダメージを与えにいくぞ

攻撃を受ける時は【武器受け】で武器を盾にして受ける
狂気の炎は俺の武器の火熱で打ち消すことを試みる

この手の輩には人として罰を受けてもらいたいが……オブリビオンになっている以上救うのは無理だ
せめて少しくらいは反省してくれるといいが……それも難しいだろう
それなら処刑するだけだ



 狂気の焔と戦場に歓喜する刃が時にぶつかりあい、時に躱され消えていく。
それは教授とカムイ双方の体を削り取り。場は消耗戦、オブリビオンに有利な戦場の体を取り始めていた。しかし、それでもカムイの攻撃は止まらない。
「凶暴でなければ貴方達には勝てはしない。なにせ、我々人間は脆弱な存在だからな!」
 咆哮と共に叩きつけられる刃はまさしく狂奔のそれ、どちらかが倒れぬまでは止まない暴風の剣戟だ。このままではらちが明かない、そう理解したのか、教授はあえて範囲の広い攻撃を放つと、カムイと距離をとった。
「それには同意しかねるな、我々は脆弱だからこそ思索を研ぎ澄ますんだ」
 静かな言葉と共に紡がれるのは巨大な紫炎。どこへ逃げようとかならず食らいつき、骨まで燃やし尽くすであろう必殺の一撃だ。
 あらゆるものをなぎ倒しながら、狂気の炎が迫りくる。今にもそれがカムイに届きそうになった時、赤々と燃える炎が間に割り込み、紫炎に拮抗した。
「遅くなったが、俺も加勢させてもらう」
 その言葉と共に、炎の発生元、カイ・シュリック(紫苑の殺戮代行者・f02556)は落ち着きはらった様子で歩み寄り、手に持った焼き鏝を教授に向けた。
「一応聞いておくぞ。今からでも人として罰を受けるつもりは無いか?」
 虚を突かれたように教授の口が開く。オブリビオンと化した彼の表情を理解することは難しいが、悪い感情ではないようだった。やがて、思い悩むように開かれた口は笑みの形に歪む。
「まじめだね、君は……答えは分かっているんだろう? 君は君のすべきことをしたまえ」
 所詮、オブリビオンと猟兵は戦うしか道は無い。そう言外に告げて、教授は再び狂気の炎を纏う。
「そうか、ならば言葉は不要だな。処刑させてもらう」
 カイの焼き鏝から迸る熱は狂気の焔を焼き払い。断罪の火熱と共に振るわれる一撃はすでにつけられた傷口を焼いていく。そして、数合の打ち合いの末、教授はその場に膝をついた。
「チィ、足をやられたか。まあいい、近接戦闘がお好みだというなら、こういうのはどうかな?」
 言うや否や、教授の影が滲みだし、硬い甲殻を持つ獣へと姿を変える。確かにここで召喚するには最適な姿といえるだろう。ここに居る猟兵が彼らだけならばの話だが。
「よく分からぬが、これを倒したらいいのじゃな?」
 声が響くと同時に、光を宿した矢が獣の目に突き刺さる。
 エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)、邪神を下ろした信者の行動を把握し、落とし子の召喚を予期していた彼女は。戦場を俯瞰し、いつでも支援できるように備えていたのだ。彼女の射撃は関節や甲殻の隙間を射抜き、落とし子の動きを的確に動きを止めていく。
「そちらにも仲間が居たか、ではっ……!?」
 後方支援は姿を捉えられてしまえば脆いものだが、今回に限ってそれは起こらない。なぜなら、彼女には心強い味方がいるからだ。弓手の位置を捉えようと動かした視線の先に巨大な狼の姿が映る。とっさに防御の体制をとるが、巨体の一撃はさほど大きくない教授の体をたやすく弾き飛ばした。
「ぐ、ぉお……今度は本物の獣か。まったく、猟兵という奴は層が厚すぎて嫌になるよ」
 うめき声をあげながら、地面を転がる。狂気の炎を纏い、追撃を避けようと試みるが、炎に包まれてなお、巨狼は教授に食らいつき、ひるむ様子を見せなかった。
「マニトゥ!そのまま喰らいついて離すでないぞ!」
 エウトティアの叱咤に巨狼が力強く応える。
 すでに教授の動きは止められ、他の攻撃手段すら危うい、とどめを刺すには十分な状況だ。だが、猟兵達は警戒を緩めない、なぜなら、彼ら邪神を下ろしたものは往々にして奥の手を持っているのだから。
「これは参った、しかたない、本当に仕方ないがこれをやるとしよう」
 言うや否や、巨狼に向かっていた狂気の焔が一点に集まり、まばゆい光を放ち始めた。
 焔に照らされた影が広がり、世界を侵食していく。それはやがて世界を埋め尽くすような闇となり、そこから巨大な獣が姿を現した。
「僕の奉ずる神の写し見だ。僕の体にも大きな負担がかかるが。緊急の手段という奴さ」
 それぞれが獣の行動に備え、構える中。一度下がっていたカムイが再び前に進み出た。
「ここは自分に」
 言葉に従い他の猟兵がさがると、獣の前に立ったカムイの肌が深淵の闇色に染まり始め、額に真紅に燃える三眼が開いた。その異形は、混沌であり、外より来る無貌なる者であり、万物を嘲笑するトリックスターであり。邪神(オブリビオン)そのものとなっていた。
 異形と化した双眸にカムイの姿を捉えながら教授は笑う。
「く、ははははははは。なんだそれは、結局同じじゃあないか。だが、そうか、それが君の答えか。ならば僕もそれに応えよう」
 その言葉にカムイは答えない。ただ、ただ一声、ひび割れるように吠えると、獣の姿をした神へと襲い掛かった。
 呼ばれしものと、喰らわれしもの。獣と混沌との闘いは余人に踏み込みうるものではない。巨大な爪が刃ではじかれたかと思えば、放たれた幾千の剣戟を獣がオーラではじき返す。千日手とも思われたそれは、はたして他の猟兵の加勢によって崩れた。
 カイの炎が、エウトティアの弓が、カムイによって動きを止められた獣に少しずつ傷を与え、その存在を揺らがせていく。そして、その揺らぎが極限まで増大した瞬間。
 カムイの最後の一撃が邪神の影を打ち砕いた。
 ガラスのように散ってゆく邪神の欠片の中、主たる神とのつながりを断たれた教授の体がひび割れ、崩れ落ちていく。
「悔しいが、僕の負けみたいだ」
 言葉とは裏腹に、さしたる感情の見えない表情で教授が言った。その姿は人へと戻り、そして砂に変わり崩れ落ちていく。
 そんな姿に、カイが一歩前に進み出た。
「お前も一応、教育者だろう。生徒に伝えておくことがあれば聞いておこうか」
「そうだね……さしていうこともないが。レポートは早めにやるように、かな」
 その言葉を残して、最後の欠片が崩れ落ちる。後にはもう、なにも残っていなかった。

 こうして、誰一人死ぬことのなかった殺人事件は密やかに幕を閉じた。
 日常は戻り、関わった人たちもやがて事件を忘れていく。だが、猟兵の戦いは終わらない。
 未だ敵の根幹はつかめず、世界は多くの敵に狙われている。
 今回の事件はそんな戦いのほんのはじまりに過ぎないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月22日


挿絵イラスト