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アルダワ魔王戦争8-D〜毒液まみれのティータイム

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●グリモアベースにて
「皆の尽力により、ファーストダンジョンはすでに最下層にまで手がかかっている。こうも早く攻略してくれるとはまったく恐れ入った」
 まさに破竹の勢い――。
 広大な迷宮を着々と踏破してゆく猟兵たちの活躍に、プルート・アイスマインドは肩を竦める仕草で敬服を表した。
 大魔王を討つこともそう遠くはない。
 そう思えるほどの気勢が、アルダワへ向かう者たちからは感じられていたのだ。
「今回もその調子で攻略してくれ。向かってほしいのは地下8階層にある区画……蒸気機関から排出される有害物質の集積所だ」
 猟兵たちの顔を見ながら、次なる攻略ポイントを告げるプルート。
 8階層のその区域は、地下迷宮はもちろんのこと、アルダワ魔法学園全体から蒸気機関由来の有害物質が集まって廃液の沼を形成しているらしい。
「その毒性たるや尋常なものではない。毒に耐えられる何らかの方法を考えなければ、戦うこともままならんかもしれん」
 毒沼にて待つのは、強力なオブリビオンが一体。
 廃液を浄化する蒸気機関を体内に有しているために、敵方は何ら悪影響を受けずに戦うことができる。猟兵側だけが一方的に廃液からのダメージを受けるという状況は、明らかに不利と言わざるを得ない。
 しかし、とプルートは握ったグリモアを掲げる。
「それしきを覆せない、おまえたちではあるまい?」
 マスクの下の笑みが見えるような声で、プルートが猟兵たちを送りだす。

 転移の光に導かれた一同が向かう先は――地下迷宮第8階層。

●毒液まみれのティータイム
 足元にどこまでもひろがるのは、汚濁にまみれた水だった。
 濁りきった液体は、魔法学園が生みだす有害物質が凝集しているとは思えないほどサラリとしている。しかしひとたび近づけば頭が痛くなるような悪習が鼻をつき、触れれば衣服や肌を通ってたちまち毒が肉体を蝕む。
 人がいるべき場所でないことは、もはや自明のものである。
 しかし。
 区画の中央には、その環境の悪さにそぐわないアンティークのテーブルがあった。
「さぁさぁ、誰が来るのかしらね? 楽しみねー?」
 椅子に腰かけていた一人の少女が、小脇に抱いたテディベアに話しかける。
 当然ながらテディベアは一言も返さなかったが、少女はまるで気にするふうもなく微笑んで、甘い紅茶の入ったティーカップに口をつけた。
 優雅だ。
 廃液の沼のど真ん中にいるとは思えないほどに。
「これから猟兵さん? が来るのよね。ちゃあんとおもてなししてあげないと。お菓子もたくさん用意して、ティーカップはこれで足りるかしら?」
 カチャカチャ、と無数のカップを卓上にばらまく少女。
 それからお菓子をこんもりと乗せた皿を、卓の中央にどかんと置いた。
 漂う甘い匂いは廃液の悪臭をも塗りつぶし、一帯はまるで女の子が語る夢のような甘ったるさに包まれる。
 そうして、少女――『お菓子な精霊魔術師』シュガー・メレンゲは「よしっ」と満足そうに笑って、猟兵たちを待ち構えるのだった。


星垣えん
 この戦争のハイペースにはついていけそうもない。
 という状態の星垣えんでございます。
 今回は毒がやべぇ区画での戦いとなります。
 でも敵が甘々で可愛いからイイ感じに中和されると信じてるんだ。

 今シナリオでは『毒に耐えながら戦う方法を実践する』とプレイングボーナスが与えられます。
 こうすれば毒の影響をちょっとは防げるんじゃないかなーってアイディアをぜひ盛り込んで下さい。有利になりますよ!

 それでは、皆様からのプレイング、お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『『お菓子な精霊魔術師』シュガー・メレンゲ』

POW   :    精霊契約:スイート・アグリーメント
自身の【持っているメープルシロップ】を代償に、【その地に住まう精霊】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【自属性とお菓子属性の合成精霊魔術】で戦う。
SPD   :    精霊結界:スイーティスト・ティータイム
【ほっぺたが落ちるほど激甘な紅茶】を給仕している間、戦場にいるほっぺたが落ちるほど激甘な紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    精霊世界:スイートフル・ワールド
自身からレベルm半径内の無機物を【材料:お菓子】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:エゾツユ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
厄介な環境が増えて参りましたねぇ。
何とか頑張ってみましょうかぁ。

まず『FBS』を四肢に嵌め、飛行しておきましょう。
これで、直接廃液に触れる状態ではなくなりますから、多少の効果は見込める上、水場という「足場の悪さ」にも対応出来ますぅ。
その上で【遍界招】を使用、この様な環境に適応する為の『祭器』を召喚しますねぇ。
『ベルト状』になっており、着用すると全身を薄い膜でコーティング、周囲の毒素等を分解する品ですぅ。
これで『毒』の影響と、『その地の精霊の能力』は或る程度防げるでしょうかぁ。
同時に『祭器』である『F●S』3種の強化も出来ますので、此方を使用した射撃主体で応戦しますねぇ。


フォンミィ・ナカムラ
甘くて可愛いお茶会は素敵だけど、毒まみれのスイーツはお断り!

足場になるところを氷【属性攻撃】で凍らせて、その上に【オーラ防御】を張って毒の沼に落ちないように対策
『精霊杖』の炎の精霊さんに沼の熱エネルギーを吸い取ってもらって、少しでも厚く凍るように
もし飛沫とかが飛ぶようなら、自分の周りもオーラ防御で覆うよ

UCの属性は炎、自然現象はつむじ風
炎の精霊さんの力で周りの熱エネルギーをぎゅっとつむじ風に集めて、周りは冷たいまま炎だけすごく熱くなるようにコントロールするよ
お菓子なら火をつければコゲコゲになっちゃうはず
軌道に乗ったら防御のぶんの魔力も攻撃に回して、【全力魔法】でさらに燃やしちゃうよ!


メメ・ペペル
てれびうむにも、どくってきくのでしょうか……?ねんのため、ちかよらないでおいたほうがよさそうですね……!

ボクは、ほかのりょーへーさんのためにも、どくがひろがりにくくなるようにたたかってみますね!
【スーパーアタックシステム】をはつどーし、じぇっとのきりゅうで、しゅーいにただよったにおいをふきとばします!さらに、こおりの「属性攻撃」の「一斉発射」で、はいえきをこおらせつつ、てきさんをこーげきしますよ!

せかいのへーわのため、そこをどくのです!あ、いまのは「毒」と「退く」をかけたぎゃぐです!

【アドリブ・絡み歓迎です】


黒木・摩那
蒸気機関から出る有害廃棄物を集めるとこうなるんですか。
すごい公害パワーです。

こんな環境ではお菓子も紅茶もにおいや毒で台無しです。

刺激物が皮膚や目についたら洗い流すのが基本です。
UC【トリニティ・エンハンス】でルーンソードに【水の魔力】を付与します。
そして、剣からミストを放射することで毒を洗います。

沼の中央にいるオブリビオンにはヨーヨー『エクリプス』で戦います。
重さを重くして打撃重視。
ワイヤーを【念動力】で操作しながら、外周の刃を出し入れして【先制攻撃】【なぎ払い】ます。

せっかくの歓迎の準備ですが、環境が残念過ぎます。


佐伯・晶
毒液の沼に似つかわしくないものがあるね
そのお菓子の材料は何なんだろう
食べちゃいけない物のような気がするんだけど

女神降臨で飛行したり空中浮遊したりして
毒に触れないようにするよ

飛んできた飛沫や攻撃は
触れる前に時間を止めて防御
これは僕なりのオーラ防御だよ

それでも抜けてくるなら
毒耐性で耐えよう

ガトリングガンの射撃で攻撃
精霊が出てくるなら
紋章を刻んだ銀の弾丸を創って対処

お菓子がたくさん転がっているみたいだから
お菓子を元に使い魔を創ろう

飴から創った使い魔に
精霊やシュガーを飴に変えさせようか
そんなにお菓子が好きなら
自分がお菓子になってみたらどうかな

他の猟兵と協力した方が良さそうなら
射撃や状態異常で援護しよう


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

ふふーん、ママが持たせてくれたお守りの宝石のおかげで毒には強いんだぞー☆
それに、ボクに秘策ありだよ♪

背中の翅で羽ばたいて、足元の廃液の影響をなるべく受けないように一気にシュガーに近づくよ!
シュガーの周りをくるくるくるくる飛び回ってこっちに目が追い付いてこなくなったらチャンス到来!
念のためフェイントを一度入れた後に、【妖精姫のいたずら】を発動して服の中に飛び込んじゃうよ♪
ようし、作戦通り!服の中なら廃液を浴びることもないし、匂いも全然気にならなくなるよ☆
それじゃあ、服の中からこちょこちょし続けてシュガーの行動の邪魔をしちゃうね♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


アイシス・リデル
わたしは、こういうところには慣れてるけど
あの子はくさくない、のかな……?
……なんだかあまい臭いがする、ね

お菓子にお紅茶、とってもおいしそうだね
だけど、こんなところで食べたらおなかこわしちゃいそう、だよね?
わたしには、【毒耐性】があるから大丈夫
むしろ、周りの毒ごとお菓子を取り込んで……「食べて」
【暴食者】を使って、わたしの身体をおっきく、つよくして戦う、よ
そうやって周りの毒をお【掃除】しちゃえば
きっと他の猟兵の人も戦いやすくなる、よね

こんなきたないところにも、精霊さんがいるんだ、ね
ううん。きたなくなっちゃった精霊さん、なのかな?
周りと一緒にきれいにお【掃除】できれば、いいんだけど……



 廃液区画に転移するなり、猟兵たちは淀んだ空気に包まれた。
 臭いはない。辺りを満たすのは胸やけしそうな甘い香りだけだ。
 だが地面を埋め尽くす汚濁を見れば、黒木・摩那は無意識に服の袖で鼻を覆っていた。
「蒸気機関から出る有害廃棄物を集めるとこうなるんですか。すごい公害パワーです」
「厄介な環境が増えて参りましたねぇ」
 間延びした調子で答えながら、廃液の沼を見つめる夢ヶ枝・るこる。波紋ひとつない水面は静かだが、ひとたび浸かれば体はただで済むまい。
 そんな劣悪な水場の中央から、シュガー・メレンゲは好奇心に輝く眼差しを猟兵たちに向けてきていた。
「あなたたちが猟兵さんね! いらっしゃい!」
「歓迎されていますが……正直こんな環境ではお菓子も紅茶も台無しですね」
 両手を振ってくるシュガー・メレンゲを見ながら、魔法剣『緋月絢爛』を抜く摩那。
 前方にかざした魔法剣に水の魔力を注ぎこむ。
「刺激物が皮膚や目についたら洗い流すのが基本です」
 中空めがけて、摩那が水気を帯びた刀身を振るう。
 すると爆ぜたように水飛沫が拡散し、清らかなミストが広範囲を覆った。溜まった廃液から空気中に立ち昇った毒素が洗浄されると、いくらか綺麗な空気が摩那の体内へと入ってくる。
「私も浄化をお手伝いしますねぇ」
 浮力を持つ戦輪を四肢に嵌め、るこるは廃液の上を飛び、そのままユーベルコードを発動する。
「大いなる豊饒の女神、その鴻大なる知と力を持つ『祭器』を此処にお与え下さい」
 詠唱を終えたるこるの腰に、ベルト状の祭器が出現。飛行する体を薄い膜が覆う。
 膜は瞬く間に周囲の毒素を分解、まるで無害な空気へと作り替えてゆく。るこるはその空気をめいっぱい吸いこむと、ちょっと嬉しそうに笑った。
「何も気にせず息ができるってありがたいですぅ」
「あらら。この場所で参らないなんてすごいわ! でも猟兵さんの邪魔をするのが私のお仕事なのよね……ごめんなさい!」
 硝子の小瓶を取り出して、中身のメープルシロップをまき散らすシュガー・メレンゲ。
 途端、シロップが落ちた廃液から蛇のようにうねる精霊が飛び出した。毒々しく濁った液状のそれは中空をぐるぐると回転して、一帯に飴状の毒を散布する。
 しかし毒はるこるに届かず、コーティングした膜で分解。
 るこるはゆうゆうと、十六の浮遊砲台をシュガー・メレンゲに差し向けた。
「一斉発射ですぅ」
「きゃーーっ!?」
 殺到する砲弾が、沼ごとシュガー・メレンゲを吹っ飛ばす。ふんわりファッションを汚液で汚して、お菓子少女はごろごろと転がった。
「少し可哀想な状態ですが……容赦はしません!」
 廃液でびちゃびちゃになったオブリビオンへと、ヨーヨー『エクリプス』を投げる摩那。
 念動力で操るそれは上下左右へと巧みに軌道を変えて、体を起こしたシュガー・メレンゲの眼前に到達した。
「な、何かしらこれ……!」
「教えてあげますよ。重くて痛いやつです」
 ふふっ、と笑った摩那が指先を操り、エクリプスが鋭い刃を飛び出させる。
 ギャリギャリと回転する刃に切り裂かれたシュガー・メレンゲが、再び悲鳴を上げた。

「……なんだかあまい臭いがする、ね」
 アイシス・リデルはその汚泥の体を廃液沼に浸しながら、漂う匂いを嗅いでいた。
 これだと自分の放つ臭いも消えていそう。
 なんて思いながら、アイシスは沼の中央へと歩き出す。
「あなた……この汚い沼が平気なの?」
「お菓子にお紅茶、とってもおいしそうだね。だけど、こんなところで食べたらおなかこわしちゃいそう、だよね?」
 廃液の中を平気で進んでくることに驚くシュガー・メレンゲに、アイシスは湿った笑いを浮かべる。
 汚れた体に浄化体質を併せもつアイシスにとって、汚液の類は忌避すべきものではない。
 それどころか――。
「いっぱいあるから、食べ放題だね……」
「な、何なの! どんどん大きく……!?」
 シュガー・メレンゲの目の前で、アイシスはみるみる肥大化した。
 毒を食べるほど力が増す――ユーベルコードで周囲の廃液やらお菓子やらを取りこんだアイシスの体は、膨れに膨れて4mをも超す巨体に変形する。
「これは私、ピンチだわ! 精霊さんお願い!」
 シュガー・メレンゲが慌てて、大蛇のごとき精霊を差し向ける。
 が、近づいた途端、精霊はアイシスの体に吸われた。
「こんなきたないところにも、精霊さんがいるんだ、ね。ううん。きたなくなっちゃった精霊さん、なのかな?」
「せ、精霊さん!」
 その体に秘めた毒素ごとアイシスに吸いこまれた精霊は、何をすることもできずに綺麗さっぱり浄化されてしまうのだった。

 アイシスが沼の真ん中で特撮ばりの変身を見せていた一方。
 メメ・ペペルは沼の外周を恐る恐る歩いていた。
「てれびうむにも、どくってきくのでしょうか……? ねんのため、ちかよらないでおいたほうがよさそうですね……!」
「うん、直接触れるのは避けないとだよね……」
 てけてけ歩いていたメメが行きあったのは、同じく不安げなフォンミィ・ナカムラ。
「……きっとお洋服とか大変なことに……」
「そうですね。においもついちゃいますし……あ、そーだ!」
 ぺかっ、と電球マークを顔画面に表示するメメ。
「はいえきをこおらせてしまえば、およーふくもよごれません! ついでにてきさんもこおらせればいっせきにちょーです!」
「確かにそうだね!」
 わーい、とタッチする二人。
 そうと決まれば話は早い――メメが愛用のガジェット『ぺぺっとがじぇっと』を取り出し、フォンミィがマジカルペット『ホッピポッラ』をステッキに変える。
「かちこちにしちゃいますよ!」
「全部凍っちゃえー!」
 二人が放つ凍結攻撃が、沼にヒット。
 一気に極低温まで冷やされた廃液は、見る間に凍りついた。
 まるで平らな場所に水をひろげたかのように凍結部分が拡大し、ついには沼に浸かるシュガー・メレンゲの脚をも捕まえる。
「きゃっ……凍ってる!?」
「ほかくかんりょーですね!」
「よーし、追撃だよ!」
 してやったりと跳ねるメメを横目に、フォンミィが凍結した水面に飛び乗る。衝撃でぴきりと氷に亀裂が入るが、フォンミィは構わず駆けだした。
「炎の精霊さん、よろしくね!」
 一振りしたステッキに、ぼうっと小さな炎が灯る。
 すると、だ。ステッキの炎がどんどんと大きくなり、それに反比例して足場の沼はさらに冷えていった。凍った水面はもうフォンミィが強く踏んでもびくともしない。
 ステッキの精霊が、廃液から熱を根こそぎ奪い取っていたのだ。
「お菓子なんてコゲコゲにしちゃうんだから!」
 ユーベルコードを発動したフォンミィの頭上に、ひゅう、とつむじ風が生まれる。逆巻く風はステッキの炎を吸って、灼熱の竜巻へと姿を変える。
「とっても熱そう……そんなのもらったら大変だわ!」
 肌を撫でる熱風を恐れ、シュガー・メレンゲが小さなスプーンを振る。タクトのようなその仕草で彼女がお菓子に変えたのは――フォンミィがひた進む足場の氷だった。
「きゃっ!?」
 ぐら、とバランスを崩すフォンミィ。
 しかしその瞬間、沼のほとりからメメがぴるるー、と凍結ビームを撃った。お菓子は瞬く間に凍りつき、波打つようなでこぼこの足場を作り出す。
「フォンミィさん、れっつごーです!」
「ありがと、メメさん!」
 球体の手をふりふりするメメに手を振り返したフォンミィが、とんとんとん、と凍ったお菓子の足場を飛び移る。
 そして魔力のすべてを灼熱の竜巻にこめて――撃ちおろした。
「全部、燃やしちゃうよ!」
「きゃあーー!? 熱い熱いー!?」
 吹き荒れる炎に晒されたシュガー・メレンゲが、燃える服をぱたぱた叩きながら騒がしく走り回る。遠目に眺めるメメはふふふ、と笑った。
「せかいのへーわのため、そこをどくのです! あ、いまのは『毒』と『退く』をかけたぎゃぐです!」

 爆発に見紛うような火柱が立ち昇ると、凍った沼はその圧倒的な熱量によって一瞬で液状に戻った。
 同時に、むせ返るような毒気も再び空間にひろがってゆく。
 だが、ティエル・ティエリエルは翅をぱたぱたと振って平然とその渦中に突っこんだ。同時に佐伯・晶も黒いドレスに身を包み、魔力の翼を羽ばたかせて並行する。
「ふふーん、ママが持たせてくれたお守りの宝石のおかげで毒には強いんだぞー☆」
「強気だね、ティエルさん。……にしても毒液の沼にお菓子とは、何とも似つかわしくない光景だ」
 自慢げに宝石を見せびらかすティエルから、眼下の毒沼へと視線を移す晶。
 沼の水面には、シュガー・メレンゲが生み出したお菓子が大量に浮かんでいる。およそ食べ物とは思えぬ色に染まっているそれは、口にすればどうなることか。
「まあ、触らないのが一番だよね」
「このまま飛んで一気に近づいちゃおー♪」
「それじゃ僕は援護しようかな」
 おー、に合わせて拳を握ったティエルがスピードを上げる。一直線に飛行するフェアリーの姿にもちろんシュガー・メレンゲも気が付いて、お菓子を操作して撃墜しようとするが、そうはさせじと晶は携行型ガトリングガンをぶっ放した。
「あっ、私のお菓子をー!」
「そんなの当てたらティエルさんが可哀想だよ」
「そーだぞー! それにボクはそう簡単に落とされないんだからー!」
 上方を全速で旋回するティエル。シュガー・メレンゲはそれを見上げて動きを追いかけるが、すばしっこい軌道に首が追いつかない。
 くるくる。
 くるくるくるくる。
「あっ、ちょっと目が回っちゃう……」
「いまだー!」
 目を回してふらり、と体を泳がせたシュガー・メレンゲめがけて急降下するティエル。
 小さな体をさらにきゅっと縮ませたおてんば妖精は、そのままシュガー・メレンゲのもこもこ襟の隙間からすぽっと服の下に潜りこんだ。
「それー! こちょこちょこちょこちょ……」
「あひゃっ! ちょ、やめてやめてあははっ! だ、だめ……くすぐらないで……!」
 自分の体を服の上から弄りながら、ひぃひぃと息を乱すシュガー・メレンゲ。
 もちろん懇願しようともティエルの悪戯は止まるわけもなく、さわさわと肌の上を駆け巡るくすぐったさに少女は泣くほど悶絶した。
「これは大チャンス。今のうちに」
 行動不能に陥った敵を尻目に、辺りへ目を配る晶。そこかしこに転がったり浮いたりしてるお菓子に目を留めると、それらから邪神の力で使い魔を創造する。
 きらきら光る綺麗な飴を体にした使い魔が命令を求めて飛んでくると、晶は絶賛じたばた中のシュガー・メレンゲを指差した。
「彼女を飴にしてしまおうか」
「ふぇっ……!? 私を飴に……?」
「そんなにお菓子が好きなら、自分がお菓子になってみたらどうかな、と思って」
 ね、と晶が笑みを浮かべるのと同時に、使い魔が無慈悲に魔法を放つ。
 ティエルにくすぐられているシュガー・メレンゲにその波動をかわす余裕があるわけもなく、見事に命中した彼女は「あーっ!」と叫びながら小さな飴玉に姿を変えた。
 なお、ティエルは普通にその上にパタパタ浮かんでいたので、どうやら巻き添えをくらうことはなかったようです。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バジル・サラザール
お茶会にはこの上なく向かない環境だと思うのだけれど……

マスクや手袋など基本的な防御をしたり、『毒使い』『医術』の知識を生かしたり、『毒耐性』を利用したりして、毒を受けないようにしたり、症状に対処したりしましょう
戦闘は『毒使い』『属性攻撃』を生かした『ポイズン・スピア』で攻撃するわ
毒が回りきらないよう短期決戦を狙いましょう
敵の攻撃は『野生の勘』も用いつつ、ポイズン・スピアをお菓子にぶつけて相殺したり、回避や防御しましょう
甘いものばかりじゃ体に毒ってね

お茶会の邪魔して悪いけど、ここを攻略してやらなきゃいけないことがあるのよ

アドリブ、連携歓迎


小宮・あき
すずちゃん(f02317)と参加。

自前の毒耐性だけでは少し不安。
ガスマスクを持っていきます。すずちゃんのもありますよ~、使います?
多少視界が悪くなりますが、足元の心配は必要ないでしょう。

毒の沼は、すずちゃんに対策をお願いしました。
並べた紙片を橋にして、私がスピード勝負で仕留めます。

UC発動。うふふ、舌打ちはガスマスクで見えないですね。
燃えるような赤髪のまま【ジャンプ】しつつ突撃【ダッシュ】。
一気に距離を詰めて、マスケット銃で【早業】【スナイパー】【零距離射撃】

両手を振り下ろすようにUC愛雨霰発動。
お茶会に呼ばれて私の動きが遅くなっても問題ないわ。
70丁の銃口があなたの方を向いているもの。


コイスル・スズリズム
お世話になってるホテルのオーナーさん(f03848)同行!

が、ガスマスク……
オーナーさん、それ、実は気に入ってるでしょ?と突っ込みつつ、一応すずもつける
お茶会ガスマスク

足場が毒の沼!ってことは~~~すずの出番だね!
「毒耐性」と「アート」を込めUCを使用
UCで出した紙片で毒の沼に足場を大量に作る
せっかくだからお茶会に似合うように、紙片はハート型でアートでピンク色!カラフルにしなきゃね。ガスマスクだけど

すず本体は「目立たない」でこそこそ上述の動きをしつつ
「残像」をまいて、注意を惹く

オーナーさんの動きに合わせ
「念動力」を用いて作り出した紙片で足場を調整するよ

オーナーさん攻撃は任せたよ!

アドリブ大歓迎



「飴にされるなんて……もうお茶会できなくなっちゃうかと思ったわ!」
 飴玉から元の姿に戻るなり、シュガー・メレンゲは崩れるように手をつく。
 肉体というよりは精神の消耗が激しかったのだろう。その背中はどことなく小さく丸まっていた……が、蛇の半身をうねらせて毒沼を渡っているバジル・サラザールは気にするふうもない。
「お茶会って……ここでするつもりなのかしら? こんなにお茶会に向かない環境もそうそうないと思うのだけれど……」
 手袋をつけた手ですくった廃液を、さらりと落とすバジル。
 口と鼻もマスクで覆う彼女は万全装備である。薬剤師であり医術の心得もあるバジルにとって、毒沼の影響を最小化するのは造作もないことだった。むしろ毒はバジルが最も得手とする分野なのだ。
 それは当然、防ぐことだけに留まらない。
「いくらか耐性があるとはいえ長居は避けたいし……早めに終わらせてもらうわね」
 うっすらとした微笑みとともに、ユーベルコードで無数の槍を中空に浮かべるバジル。
 十や百では利かない数だ。
 いわば槍の雨――穂先に強力な毒を染みこませた大量の槍が、一斉にシュガー・メレンゲに襲いかかり、その体を喰い散らした。
「!? このぉ……っ!」
 何本もの槍を突き立てられたシュガー・メレンゲが、辺りにあるお菓子の瓦礫をバジルへとけしかける。だが菓子だ。バジルが防御用に残しておいた槍をぶつけられてたやすくクリームやスポンジにバラされた。
「私のお菓子ーーっ!」
「お茶会の邪魔して悪いけど、ここを攻略してやらなきゃいけないことがあるのよ。ねぇ、そうでしょう?」
 流し目を横へと向けるバジル。
 その視線の先には――物々しいガスマスクをつけた不審な女が、長い赤髪をなびかせて毒沼の上を全力疾走していた。
「ええ、こんなところで足止めされている暇はないわね」
 ガスマスク越しのくぐもった声は、小宮・あきだ。
 自前のガスマスクを装備するあきは、凄まじい速度で沼の上を駆け抜ける。しかし瞬きすらも許されない速さで動く脚が蹴っているのは、廃液ではない。
 あきが進む方向へ、彼方からピンクのハートが飛来して道を作っているのだ。
 そのハートの出どころを探ると……そこにはあきと同じくガスマスクをすっぽりかぶったブロンドの女がいた。
「オーナーさん……実はガスマスク気に入ってるでしょ?」
 袖口からシュパパパとハート型の紙片を射出しつづけるコイスル・スズリズムが、あきのツッコミ不可避の趣味に呆れつつ、シュコーと呼吸音を鳴らす。
 あきが用意してくれたのでせっかくだから着けてみた。
 という感じでガスマスクったコイスルが、愛らしいカラフルなハートを放ちつづけているのは実に不気味な絵面だった。
「でも効果があるのも事実だし……って、そんなこと言ってる場合じゃないよね! 攻撃任せたよ、オーナーさん!」
「ええ。足場を敵のもとまでお願い!」
 コイスルの念動力で寄り集まった紙片が、ピンク色の大きな一本道となり、あきの足元からシュガー・メレンゲへと渡される。そして同時にコイスルはあえてシュガー・メレンゲから視線が通る場所へと躍り出た。
「猟兵さん……隠れていたのね!」
 コイスルにお菓子を叩きつけてやろうと、シュガー・メレンゲは意識を向ける。
 その刹那、あきはマスケット銃をくるりと手の内で回し、紙片で形成された道を全力で蹴りつけた。
 あきの体が、水平に『飛ぶ』。
 ダッシュと言うにはあまりにも速いスピードで、あきの銃口はシュガー・メレンゲの胸に突き当てられていた。
「しまっ……」
「遅いわね」
 銃火が閃く。零距離で放たれた銃弾がシュガー・メレンゲを貫いて、その体を廃液の沼に背中から飛びこませる。
 飛沫が噴きあがり、汚濁の滴が宙に舞う。
「っ……! なら、これで……!」
 数十センチほどの廃液の溜まりに尻もちをつきながら、シュガー・メレンゲは懐からティーポットを取り出した。あきの追撃を防ぐべく、熱々の激甘紅茶をカップに注ごうとする。
 ――が、ポットの注ぎ口を傾けたところで、手が止まった。
 すでに、あきがユーベルコードで複製した七十ものマスケット銃が、余さずシュガー・メレンゲに向けられていたからだ。
「お茶会をしたいのならどうぞ」
「……もう、お菓子も紅茶も楽しめないみたいね?」
 諦念して笑うシュガー・メレンゲに、マスケット銃の群れが鉛玉をぶちかます。
 一斉に響き渡った七十の銃声がやんだとき、お菓子な少女の姿はもうなくて、飛び跳ねた廃液の悪臭だけが残っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月17日


挿絵イラスト