アルダワ魔王戦争4-E〜水中にいるものと言えば
●導きの迷い路
アルダワ地下迷宮最深部――はじまりの迷宮、ファーストダンジョン。
封印されていた大魔王の復活により、そこは闇に覆われた。
されどその闇は、猟兵達の手で多くが払われてきている。
「アルダワ地下迷宮ファーストダンジョン。そこに4-Eと区分された『導きの迷い路』と言う区画があるのは聞いているかな?」
集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は転移先の話を切り出した。
導きの迷い路。そこは幾つもの分岐点が続いている区画だ。
各分岐点で、それぞれ正しい道は1つだけ。
分岐点には立て札があり、その謎を解けば正しい道が判ると言う。
そこに来たるものを迷わす区画。迷宮と名の付く場所なのだから、そういう区画があるのも当然と言えば当然かもしれない。
「今回、新たに見つかった分岐点は一見ただの十字路だ」
十字路の4つの道の内、1つは他からその分岐点に続いていた道。
つまり、この分岐点から先に進める正しい道は、残る3つの道のどれかと言う事だ。
「どの道も、特に害はないがやたらと濃い蒸気が満ちていてね。先を伺う事は出来そうにない。立て札の謎を解くしかなさそうだ」
3分の1なら、当てずっぽうでもいいのでは?
誰かが言ったその言葉に、ルシルは少し困った顔を見せた。
「それがね。『誰一人、正しき道を踏まなかった場合、この分岐点は埋まる――なんて書かれているんだよね、その立て札の裏に」
うおい。
まあ埋まったところで、広大な迷宮のほんの一部。大勢に影響はないだろうが、迂回しなければならない手間は発生する。
「と言うわけで、一つ謎解きを頼むよ」
●立て札
東と北と西の道、正しき道は1つだけ。
『東:雪と雷が交わり花となれば、老いた虎が春を喜ぶ』
『北:雲と雨が離れず滝となれば、猛る龍を鎮めるは柊』
『西:霞と霧が隠して朧となれば、愁う鳳が翼を広げる』
正しき道に繋がるものは水の中にいる。
立て札に書かれているのは、此処までだ。
最後の一文はヒントなのだろうが、周りを見渡してもこの分岐点に水は溜まってもいなければ、流れてもいない。
さて、一体どういう事だろうか。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、『アルダワ魔王戦争』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
4-E『導きの迷い路』の謎解きシナリオ、となります。
このシナリオでは、戦闘は一切発生しません。
今回のプレイングボーナスは『オープニングの謎に正答する』となります。
プレイングには『東、北、西、のどの道が正しい道か』の答えは必ず書いて下さい。
加えて『何故その道が正解であるか』と言う理由もあると、答えだけよりも採用率は上がると思います。
字数余りそうなら、フラグメントの例にあるようにお菓子とか食べながらでもいいですよ。
なお今回は申し訳ないですが、『全員描写』は確約致しません。
人数次第ですが、正解者の中から可能な限り、になると思います。
2/12中に完結予定です。プレイング締切は、主にツイッターで告知します。
ヒント追加は様子を見て検討します。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 冒険
『導きの迷い路』
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POW : お弁当や、おやつ等を持ち込み、脳に栄養を補給しつつ問題を解く
SPD : 分岐点まで素早く進み、その分、時間をかけて問題に取り掛かる
WIZ : 立札の問題を良く読み、知恵を絞って正しい答えを導き出す
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オズ・ケストナー
むずかしいことはあんまりわからないけど
水の中っていったらこの中では龍だから、北かなあ?
あと、北だけすこし文章がちがう気がする
虎はよろこんで、鳳はつばさをひろげるけど
龍だけヒイラギがいるよって書いてあるみたい
ヒイラギって、魔よけなんだよね?
このあいだ「せつぶん」でヒイラギイワシっていうのをきいたもの
ふふ、はなことばもさいきん本を読んだからわかるよ
「用心深さ」「保護」「先見の明」
うーん?
センケンノメイってなんだっけ
あと、虎、龍、鳳もなにかあったような…
あっ、そうだ
四神
でも北は龍じゃなかったきがするからそれはかんけいないのかな?
でも、火とか木とか、そういうのは水が北だったよね
うんうん、北にいってみよ
ルテネス・エストレア
正解は【北】だと思うの(書物をパラパラ捲り)
東・北・西、虎・龍・鳳、そして春・柊(木+冬)・愁(秋+心)の文字から『四神』を連想したわ
東:春・青龍
北:冬・玄武
西:秋・白虎
この中で水に関係するのが『玄武』
水神とされる玄武の方角が正解なのだと思う、けれど少し自信がないの
他の人の考えも是非聞いてみたいわ
ちょっとだけ休憩して脳のエネルギーを補給するわね
美味しそうなチョコレートをいただいたのよ
疲れた時は甘いものに限るわね
あなたもおひとついかが?
(誰もいなかった時はひとりで美味しそうにもぐもぐ)
●成程、確かに四神を連想できますね
「んんー???」
珍しく眉根を寄せて、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は迷宮の立て札と睨めっ子していた。
「むずかしいことはあんまりわからないけど、北かなあ?」
「わたしも、正解は【北】だと思うの」
立て札の前で小首を傾げるオズが零した呟きに、ルテネス・エストレア(Estrellita・f16335)が同意を示した。
「けれど少し自信がないの。あなたは、どうして?」
「んーとね。水の中っていったら、この中では龍だから」
自信がないと問うルテネスに、オズもどこか自信なさそうな笑みを浮かべて返す。
「あと、虎、龍、鳳もなにかあったような気がするんだけど……」
「四神かしら」
記憶を探るように彷徨うオズの青い瞳を見上げて、ルテネスがぽつりと告げる。
「あっ、そうだよ。四神!」
それを聞いたオズが、パッと瞳を輝かせる。
「わたしも、ね。四神を連想したわ」
ルテネスがオズの『なにかあったような』をあっさりと当てられたのは、偶々、同じものを連想していたからだった。
「東・北・西の方角。虎・龍・鳳の生き物。そして季節ね。柊の字は木と冬に、愁の字は秋と心に分けられるわ。そして春」
ルテネスの指が、立て札の上を滑る。
謎の問いの文章ある漢字は、ルテネスに四神を連想させていた。
「でも――」
ルテネスの指を目で追いながら話を聞いていたオズが、口を開く。
「北は龍じゃなかったきがする……かんけいないのかな?」
「確かに北は龍じゃないわ」
ころころと表情を変えるオズに、ルテネスはふるふると首を横に振ってから、立て札から指を離して書物を捲り始めた。
「北は玄武ね。水に関係する四神よ」
パラパラと書物を捲っていたルテネスの指が止まる。
そこには、玄武について水神と記されていた。
「水神とされる玄武の方角、北が正解なのだと思うの」
「うんうん。火とか木とか、そういうのは水が北だったよね」
水の中にいるものとは、水神とされる玄武ではないか――ルテネスの考えに、オズも首を縦に振る。
「でも確かに、方角と生き物の不一致は気になる所ね」
だがその考えも、ルテネス自身、確証が持てずにいた。
「例えば西の文章にある鳳。四神で対応するなら朱雀だけれど、その方角は南よ」
一致してないばかりか、南は選択肢ですらない。
「わたしね、北だけすこし文章がちがう気がするんだ」
珊瑚色の瞳を伏せるルテネスの様子を見て、今度はオズが口を開いた。
「虎はよろこんで、鳳はつばさをひろげるけど、龍だけ『ヒイラギがいるよ』って書いてあるみたい」
オズが気にしたのは文体。
確かに北の文だけ、動詞ではなく名詞で終わっている。
「ヒイラギって、魔よけなんだよね? このあいだ「せつぶん」でヒイラギイワシっていうのをきいたもの」
「そうね。柊の樹は魔除け――邪鬼の類を防ぐとされていると、書物にもあるわ」
オズの話に、ルテネスが書物の頁を捲りながら頷く。
「ふふ、はなことばもさいきん本を読んだからわかるよ。『用心深さ』『保護』『先見の明』……センケンノメイってなんだっけ?」
「何かが起こる前にそれを見抜く事、ね」
覚えていた花言葉を指折り数えるも、意味を思い出せず首を捻るオズに、ルテネスが再び書物を捲ってその意味を返す。
「だけど……柊も鍵だとすると、水の中にいる、とは繋がらないわ」
「あ、そっかー……」
ルテネスの指摘に、オズも頷く。
どうにも――決め手に欠ける気がする。
「だめね……少し休憩」
ぱたんっと書物を閉じて立て札から離れると、ルテネスは小さな箱を取り出した。
蓋を開けば、仄かに甘い香りが広がる。
ひとつ抓んで口に入れれば、チョコレートの甘さがルテネスの舌の上に広がった。
「いただいたものだけれど。あなたもおひとついかが?」
「わたしも、いいの?」
ルテネスが差し出した箱の中に並んでいる形も様々な美味しそうなチョコレートに、オズが目を輝かせる。
「ええ、頭が疲れた時は甘いものに限るわ――そちらのあなたも、どう?」
嬉しそうなオズの様子に小さく微笑みながら、ルテネスはもう一人の猟兵にもチョコレートを勧めようと、視線を向ける。
丁度その時、その猟兵の竜の尾がぴーんっと伸びていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
雷田・龍子
WIZ
正しき道に繋がるものは水の中にいる。
水中にいるものと言えば……魚ですね。
ピンと来ましたよ!
『東:雪と雷が交わり花となれば、老いた虎が春を喜ぶ』
この文章の漢字全てに【魚へん】を付けてみると、こうなります。
『鰊:鱈と鱩が鮫わり𩸽となれば、鮱いた鯱が鰆を鱚ぶ』
東の文章にある全ての漢字について、その漢字が含まれる魚へんの文字が存在します。
これは北、西には当てはまりません。
正しい道は【東】です。
●正しき道へ
「……っ!」
脳裏に電流が走った。
その時の感覚を、雷田・龍子(人派ドラゴニアンの全力お姉さん・f14251)は後にこう語ったとか。
「ピンと来ましたよ!」
実はぽんこつ――なんて言う評もあったり龍子だが、この時ばかりは閃いた。
――正しき道に繋がるものは水の中にいる。
龍子も、この文章に注目した。
「水中にいるものと言えば……魚ですね。魚が、正しき道に『繋がる』――つまり、魚を繋ぐんですよ!」
――魚を繋ぐ?
――何に?
「この文章に書かれている漢字にです」
ぺしぺしと、龍子が叩いたのは立て札。
「東の文章だけが、その中にある全ての漢字について、その漢字が含まれる【魚偏】の文字が存在します」
魚と東。ニシンである。卵は数の子。
魚と雪。タラである。お鍋美味しい。
魚と雷。ハタハタ。またの名をカミナリウオ。雷の多い時期に良く獲れる。
魚と交。サメ。シャーク。案外美味しいらしい。
魚と花。ホッケ。干物最高。
魚と老。オオボラ。ボラと言う魚の育ち切ったやつ。旬は過ぎてる。
魚と虎。シャチ。魚ではないが海の生き物。
魚と春。サワラ。焼いて良し、揚げて良し。
魚と喜。キス。よく天ぷらで食される。
龍子は嘗て、とある国のメイド隊長だった過去を持つ。この豊富な魚知識は、その頃に得た知識だろうか。
「北、西の文章には、これは当てはまりません」
丸眼鏡をくいっと押し上げ、龍子は告げる。
そもそも、東西南北の字からして、魚偏と繋がるのは東だけだ。
「だから、きっと正しい道は東です」
四神を連想した2人が自信を持てる答えを出せなかった様子が、龍子が東1つに絞れた答えに自信を持たせる一助になっていたかもしれない。
後は東がどちらかだが、これは明らかだ。
立て札に唯一書かれていない方角。除かれている南が、この十字路に入ってきた道。ならばその正面が北となり、北に向かって右手に伸びるのが東の道である。
結局のところ、進んでみなければ答えも判らない。
そして予知を信じるならば、罠の類はない筈である。
「それでは、行ってみましょう!」
「わたしたちは、こっちへ行ってみるよ」
「念のため、ね」
オズとルテネスと別れ、龍子は一人やたらと濃い蒸気が満ちる道へ踏み出した。
満足に効かない視界の中を、手探りで進むことしばし。
――カチリ。
「ん?」
龍子の足元が僅かに沈んで、何か歯車がはまったような小さな音が鳴った。
かと思えば、満ち満ちていた蒸気が迷宮に吸い込まれるように消えていき――正面の壁には、飛び出るほどに大きな目の赤い魚が描かれていた。
「これは……目が出ている魚……? あ、目出鯛?」
どうやら――正解おめでとう、と言う事なのだろうか。
龍子が戻ってみれば、迫り出た壁に押し戻されたらしい2人の足元に、床から抜けて倒れた立て札が転がっている。
導きの迷い路。
その一つの分岐点だった場所は、ただの曲がり角になっていた。
大成功
🔵🔵🔵