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アルダワ魔王戦争6-E〜回る刃と紅粘液

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 背筋を凍らせるような高い高い摩擦音。
 ネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)はその手のモニターへ、錆びた歯車が煩く回り飛び交う光景を映していた。
 酷い音に眉を顰めるネルウェザは、集まった猟兵の姿に気がついて一度手元の映像を止める。
「お疲れ様。そして集まってくれて有難う。さて……黒板を思い切り爪で掻いても耐えられる者以外は、取り敢えず耳を塞いでくれ」
 そう言って彼女は映像を再開する。アルダワの迷宮区域――探索が進みダークゾーンが晴れたことによって開かれたそのエリアには、大量の巨大な歯車が回っているのが見えた。
 しかし歯車は一つ一つが独立して動いており、互いが噛み合って何かを動かしている様子はない。動力を伝える筈の歯に代わって煌めくのは、触れるものを皆切り刻まんとする凶悪な刃であった。
 歯車は金属の擦れる悍ましい音を上げながら、ぎゅんぎゅんと縦横無尽に飛び回る。
 ずるりと迷宮を這う人型スライムの災魔が歯車の軌道を横切ってしまった瞬間、その身は見事すっぱりと両断されて二つに分かれてしまった。
「……と、まぁこんな感じでかなり危険なエリアなんだ。歯車は猟兵も災魔も関係なく襲ってくるのだけど、やはりこんなエリアを守る災魔である故か――」
 そう言葉が切れ、ネルウェザの視線が再びモニターに落ちる。
 歯車に両断されたスライムはその綺麗な断面をぷるぷる震わせると、数秒の間の後にぐにゃりと身を起こして元の人型に戻ってしまった。
「斬撃は、あまり効かないらしい。有効打は歯車の回転に巻き込ませてしまうか、蒸発させてしまうかといったところかねぇ……きっと方法はある筈だから、思いつく手段はどんどん使っていってほしい」
 ネルウェザは考えを巡らせつつ、手にグリモアを浮かべて猟兵に参加の意思を問う。
 頷く猟兵にありがとうと笑みを浮かべると、彼女は早速転送の準備を始めた。
「繰り返すが、かなり危険なエリアだ。くれぐれもあの歯車に捕まらないよう……気をつけて」
 ふわり、とグリモアが光を帯びる。無事を願うネルウェザの姿が光に遮られていけば、猟兵の体はアルダワの迷宮へと転送されて行くのであった。



 猟兵が降り立つや否や、迷宮にはギュインギュインと勢いよく駆動音が鳴り響いていることに気がつく。周囲を見渡せばあのモニターで見た通り、殺人歯車と言うに相応しい凶悪な刃が飛び交っていた。
 迷宮の奥へ進む道の途中には、紅くぬらりと煌めく災魔の姿。彼等は人らしい姿こそしていたが、そこに明確な意思や知能がある様子はなく――ただ、歯車に裂かれようと潰されようと、侵入してきた猟兵を目指してずるずる足を動かしていた。
 歯車の刃を躱しつつ、あれを倒して先へ進まなければ。


みかろっと
 こんにちは、みかろっとと申します。
 今回は歯車が動き回るアルダワの迷宮区域を進む集団戦シナリオです。
 こちらは一章のみで完結する戦争シナリオとなります。
 歯車に当たらないような行動、戦闘に歯車を利用する行動があると有利です。
 OPの通り敵は歯車に衝突しただけでは消滅しませんが、『再生できないくらいに』切り刻む・潰す等の攻撃であればアリです。
 それでは、プレイングお待ちしております!
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第1章 集団戦 『ジェムスライム』

POW   :    【特性:物理攻撃無効】ジャムバレット
レベル×5本の【着弾時に大爆発する宝石弾を、物理】属性の【攻撃を無効化する身体から、上記の宝石弾】を放つ。
SPD   :    【特性:物理攻撃無効】スライムボディ
自身の肉体を【物理属性の攻撃を無効化する身体】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    【特性:物理攻撃無効】ホープルビー
【物理属性の攻撃を無効化する身体】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、物理属性の攻撃を無効化する身体から何度でも発動できる。

イラスト:嵩地

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

小宮・あき
すずちゃん(f02317)と参加。
愛用のマスケット銃は、今回はお休みね。

歯車に注意しながら敵対処は少々骨が折れるもの。
敵は寄ってくるようだし、すずちゃんのおびき寄せもあれば私達から仕掛ける必要はないでしょう。
さ、すずちゃん、少し『休憩』しませんか?

UC『優雅な誘い』発動。美味しい紅茶とお菓子はいかが?
召喚に応じてくれた弟に手を振って、すずちゃんとお茶会をします。
スコーンに何を付ける? 紅茶に角砂糖はいくつ?
ざます? やんす? 

すずちゃんのUCも掛け合わせると、災魔の動きは相当遅いでしょうね。
お菓子を食べる手を止めて、指先からUC神罰で落としてしまいましょう。
or全力魔法の通常魔法攻撃。


コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)同行

まったく歯車で飛び回るなんて非常識な
ミセス小宮のお紅茶が冷めてしまいますわよ

なんだかこのエリアのすずは優雅な気分

「残像」を大量に作って歯車に撒いて、スライムを「おびき寄せ」

本体であるすずはミセス小宮と端っこで
オーラ防御放ちつつ優雅に紅茶を楽しむ
お紅茶といえばキャンディもいかが?
おびき寄せられた敵に対してキャンディ
『UC』
楽しめない?
それならね、紅茶とお菓子を飲みながらひょいっと「全力魔法」で消し飛ばす

お茶とキャンディを楽しめない人はここにふさわしくないざます
あオーナーさん次また残像に釣られてきたでやんすよ
え、しゃべり方変?えぇ~!?頑張ったのにっ!

アドリブ大歓迎



 ギィィ、と歯車が鳴いて回る。ただ立っているだけでもかなり危険なこの迷宮区域で、小宮・あき(人間の聖者・f03848)は柔らかな笑みを浮かべてスカートを揺らしていた。
 愛用のマスケット銃はお休み。こちらから仕掛けずともずるりずるりと這い寄ってくる災魔にちらと目を遣って、彼女はすず――もとい、コイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)の方を振り向いた。
「さ、すずちゃん、少し『休憩』しませんか?」
 ふわ、と桃色の髪が風に靡く。あきは歯車の間でミレナリィドールの少年の姿を視界に入れると、そちらへ軽く手を振ってコイスルと共に『お茶会』へと招いた。
「美味しい紅茶とお菓子はいかが?」
 ――瞬間、ギッ、と周囲の歯車が動きを鈍らせる。
 甘い香りと温かな湯気がその場を包めば、危険な迷宮区域はゆったりとした昼下がりの庭へと姿を変えていた。

 彼女の『優雅な誘い』に応じるコイスルは、何やら何時もよりも気品溢れる立ち振る舞いで――周囲の歯車にため息をつく。
「まったく歯車で飛び回るなんて非常識な。ミセス小宮のお紅茶が冷めてしまいますわよ」
 そう、鈍くとも未だ回る刃を嗜めるように。
 コイスルはあきの傍らへ歩く道すがら、歯車の下に残像を撒いて微笑んだ。
「――」
 スライム達は頭らしき部位を捻ると、揃ってコイスルの残像が手招く方へと誘われていく。
 ゆっくり、ゆっくりと歯車に巻かれるスライムから視線を外し、コイスルはとんとあきの『お茶会』に加わった。

 バターたっぷりのスコーンを手に取れば、色とりどりの小瓶に細指が揺れる。
 きらきらと宝石のように透ける、甘酸っぱい苺や林檎のジャム。
 真っ白な瓶は濃厚な、ふんわりとしたクロテッドクリーム。
 温かい紅茶を一口味わって、角砂糖を小さくつまんで。
 あきと共に優雅なお茶会を楽しむコイスルは、ふと近くに寄ってきたスライムへと声を掛けて。
「お紅茶といえば……キャンディもいかが?」
 コイスルは袖から可愛らしいキャンディーを取り出すと、反応の無いスライムに首を傾げる。
「楽しめない?」
 ……それならね、とコイスルは紅茶を一口呑んで――全力の魔法をそちらへ放った。

「お茶とキャンディを楽しめない人はここにふさわしくないざます」
「……ざます?」
 あきが思わず目を瞬いた直後、コイスルの手から放たれた眩い光がスライムを包み、彼等を一瞬にして消し飛ばしてしまう。するとその衝撃に気がついたか、他のスライム達もぬるりと身を回してお茶会の方へと這い出していた。
 コイスルは紅茶とお菓子を楽しみつつ、残像で誘き寄せては魔法で次々彼等を蹴散らしていく。
「あ、オーナーさん、次また残像に釣られてきたでやんすよ」
「やんす?」
 あきが何とも言えない表情で覗き込む。
 え、しゃべり方変? とコイスルが口を押さえて問えば、あきは不思議そうな目で頷いた。
「えぇ〜!? 頑張ったのにっ!」
 コイスルは思わず優雅な気分から何時もの調子に戻ってしまう。
 そんな二人がふと周囲を見れば、そこには動いているのかも判らない程に鈍くなった歯車とスライムが群れを成していた。

 あきとコイスルは揃ってそちらへ指先を向ける。
 コイスルが再び魔力を練り上げる中、あきは静かに祈りを込めて。
 全力の魔法とともに神罰が下れば――災魔の群れは光に呑まれ、じゅうと蒸発して消し飛んでしまうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
飛び交う歯車に物理的な攻撃が効かない敵、厄介と言えば厄介ですが……相性は悪くない。
であれば、手早く排除させてもらいましょうか。

一つ一つが独立して動いているとはいえ、無軌道ではないでしょう。その歯車を動かしている軸となる部分から歯車の動きを予測し『見切り』避けていきます。

ジェムスライムがこちらの半径70m内に入ったら【吹雪の支配者】を使用。
飛び交う歯車を吹雪に変換し、ジェムスライムを凍結させます。
物理攻撃ならばその体で受け止めることができたのでしょうが……この冷気からは逃しません。

十分に凍り付いたら【吹雪の支配者】を解除。元に戻った歯車に凍結したジェムスライムを砕き、切り刻んでもらいます。



 遠くの歯車の陰にて、真っ赤なスライム達がべちゃりと粘ついた音を立てる。猟兵に襲い掛かろうと這い出す群れは、傍の歯車に両断されては元の人型を取り戻すのを繰り返していた。
「厄介と言えば厄介ですが……」
 ――相性は悪くない。
 敵は物理攻撃の効かない液状の身体。しかしそれ故に、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は自らの能力の有効性を確信していた。
「であれば、手早く排除させてもらいましょうか」
 セルマはスライムの群れを目指し、歯車の間を縫って駆けていく。
 噛み合うことなくバラバラに動いているとはいえ、歯車の軌道は規則的。目を凝らせばその中心からは動力であろう蒸気と細かい機構が覗いており、それが歯車の動きを制御している事が察せた。
 ――カシッ、と部品が僅かに動く。セルマはそれを見逃すことなく目で捉え、歯車の軌道が変化するのに合わせて大きく横へ跳んだ。
 歯車はギィィと錆び付いた刃を鳴らし、床に擦れて転がっていく。虚しく空振るそれらを次々に躱しながら、セルマは進路上のスライムに目を向けた。
 手を触れるにはまだまだ遠い。しかし――凍らせるには、十分。

 彼女は周囲の歯車に目を遣ると、ユーベルコード『吹雪の支配者』を発動させる。途端に不快な金属音は低い風音に変わり、迷宮区域は凍てつくような冷気に包まれた。
「……この冷気からは逃しません」
 セルマを囲んでいた歯車が全て吹雪に変わり、スライムの群れを呑んで轟く。どろりとした液状の身体はすぐに凍り付き、硬くも脆い赤の氷像となって沈黙してしまった。
 冷気が巡り続ければ、スライムは芯の芯まで深く凍結していく。
 その表面にまで白い霜が降り始めれば、セルマはとん、と足を止めて。
 吹雪に命じるが如く彼女の手が動けば、風音はぴたりと止み――再び、金属音に変わる。
 錆びた刃をぎらりと光らせた歯車は、揃ってみるみる内に回転を速めスライムの群れへと突進した。

 ガシャァァン!! と激しい音を立て、氷像が粉々に砕け散る。
 凍ったまま無数の歯車に切り刻まれたスライム達は、互いを合わせて再生する術もなくただ溶けて朽ちていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
……正直、聞くに耐えぬ音ではありますが
耳を塞ぐ訳にも参りません
音の遠近や其々の音の緩急も、
周囲の歯車の動きを把握する為の重要な手掛かりになりますから

基本的には慎重に
動作パターンやタイミングを測りながら歯車を抜けていきますが
避け切るのが難しい、早い歯車や複雑に絡み合う歯車には
大きめの水晶を造り出し、刃に噛ませて
ずっと止め置く事は出来ずとも、
割れる迄に通り抜けられる程度には時を稼げるでしょう

スライムが襲って来たなら
その身を覆うように水晶を生成
丁度、虫入り琥珀のような状態に固めて動きを止め
そのまま置き去りにして先に進みます

特に手を下さずとも
そのうちあの歯車が中身ごとその石を粉々に砕いてくれるでしょう



 歯車は回れば回る程に、ギィギィと甲高い金属音を鳴らす。
 そんな耳を劈く不快な音に、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は思わず僅かに眉を顰めていた。
「……正直、聞くに耐えぬ音ではありますが」
 しかし耳を塞ぐ訳にもいかない。どんなに酷い音であったとしても此処が戦場である限り、そして只の音である限り、それを遮断するのは悪手だろう。
 音の遠近や其々の緩急――それら全てが周囲の情報を把握し、不要な傷を作らない為の重要な手掛かりとなるのだから。
 飛び回る歯車の動きと音に集中し、ファルシェは迷宮奥を目指して一歩踏み出した。

 大小様々な歯車は、噛み合うことなくその大きさに比例した範囲をバラバラに駆け回る。しかし数は多くとも機械故か、その動きはよく見れば規則的だった。
 慎重にそれらを見切り、刃と刃の間を抜けていく。タイミングを測るべくファルシェが目を凝らす中、突如歯車の細かい機構の内部からシゥッと蒸気が細く漏れた。
 直後、その歯車は勢いを付けてファルシェの真横を抜ける。
「……!」
 背後から再びあの蒸気の音が鳴り、金属の擦れる音が激しさを増せば――ファルシェはそちらを振り向きながらユーベルコード『Die Hand des Zauberers』を放った。
 ガキィィッ!! と、歯車は水晶を噛んで停止する。
 小さな亀裂が走った石が長く保たないことを悟れば、ファルシェは素早く歯車の進路から抜け出した。

 するとその衝突音に反応してか、べちゃり、と紅い粘液状の災魔が彼の前に這い出す。
 人の形をとったスライムの群れは道を塞ぐように広がり、ファルシェを先に進ませまいと一斉に両腕を伸ばして襲い掛かった。
「――」
 しかし――真っ赤な粘液がファルシェの首に触れる寸前、透明な何かに遮られて跳ね返される。思考力のないスライム達が策なくただ再び突進を試みれば、ファルシェはそれらを包むように水晶を造り出し閉じ込めてしまった。
 ――丁度、虫入りの琥珀のような姿。
 水晶の中で紅く光を透かすそれを置き去りにして、ファルシェは奥へと進んでいく。

 彼の背後で、バキッ、と歯車を止めていた水晶の砕ける音がした直後。
 勢いを戻した歯車はスライムを閉じ込めた水晶を中身ごと粉々に砕きながら、あの耳障りな金属音を立てて迷宮を駆けていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月11日


挿絵イラスト