アルダワ魔王戦争2-C〜造られし書が謡う
「培養液の中で生成された本って中身がどうなってるんだろう……」
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)はふと真面目な顔でそんなことを言った。おんなじ文章なんだろうか……と、興味津々である。
が、出るのは書物は書物でも書物の魔物らしいので、あんまり考えてもせんのないことかもしれなかった。
ともかく、と。自分の好奇心はひとまず置いておいて。リュカは話を続ける。
「アルダワの魔王戦争で、培養施設ってのが見つかったんだ。何って、迷宮に出るオブリビオンを作ってる培養施設なんだけれど」
どうやら、アルダワ魔法学園の迷宮にいたオブリビオンの何割かは、この培養施設で生み出された可能性があると、リュカは伝える。
「この、培養液から生まれたばかりのオブリビオンって、さすがに生まれたてだからか戦闘力が低いんだ。……その分、数はとても多いから、戦闘には注意してほしい。……とても。おおいから」
本当にね。と、リュカは念を押すように言った。
「現れるのは、さっきも言ったように書物の魔物。浮いているから、それと一目で見てわかりやすい。……そもそもものすごくいっぱいいるから、まあ、隠れようもないんだけれど」
わさわさいるよ。なんて真面目な顔をしていって、リュカはしばし、思い出すように考え込んでから、
「で、戦場だけど……。培養液があった区画。ここは足元にガラスの破片が結構散らばっているから、そのまま突入すると結構痛いけれども……ひとまずは痛いだけだから、そのまま気にせず戦える。障害物もないから、派手なことをする人にはもってこいだと思う」
痛いのが嫌な人は、厚めの靴を履いていくか、なんだったら飛んでいけばいいとリュカは言った。
逆に言うと、その程度の工夫で充分、という意味でもある。
「逆に、あんまり広いところが落ち着かない人は、もう少し下がったら石造りの迷宮に出るから……」
そこは普通に、通路もあって曲がり角がある、いわゆる迷路風の作りをしているので、
待ち伏せしたり奇襲することも可能である。
「石の壁は強いところもあれば脆いところもあるから、そのあたりは自分の戦法にあった場所を見繕ってくれたらいいと思うよ」
ご自由にどうぞ、というやつである。それからリュカはうん、と一つ息をついて、
「兎に角、今回はシンプルな話。……敵が多い、ってこと。それだけだから。……でも、時に数は一番の脅威となるから……気を付けて行ってきて」
そういって、リュカは話を締めくくった。
ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
と、いうわけで。
●プレイングボーナス
このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になるということを、オープニングでお客様に説明してください。そして、実際にプレイングボーナスを与えてください。
=============================
プレイングボーナス……数多くの敵を一気に撃退するような工夫
=============================
です。
プレイング募集期間は、ただいま(OP承認時)よりメンテナンス終了時刻にかかわらず、同日15:00まで
成功数に達しない場合は、改めて募集をかけさせていただきます。
今回はざっくりいっぱいいる敵に無双してもらいます、ぐらいのノリで。
弱めの敵をいっぱい倒していただければと。
だいたいノルマは一人20体ぐらいのイメージでよろしくどうぞ
(もちろんきっちりではなく数は多少変動します)
だいたいそんな感じ。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『書物の魔物』
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POW : 魔書の記述
予め【状況に適したページを開き魔力を蓄える】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ページカッター
レベル分の1秒で【刃に変えた自分のページ】を発射できる。
WIZ : ビブリオマジック
レベル×5本の【毒】属性の【インク魔法弾】を放つ。
イラスト:kokuzu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夏目・晴夜
このハレルヤが褒められる為の糧になって頂きますよ
培養液があった区画で暴れたく
どれほど広々とした場所であろうとも、
このハレルヤという存在を収めるには少々狭いですねえ
妖刀の斬撃から『喰う幸福』の衝撃波を一帯に広く放ち、
敵をまとめて一気に【なぎ払い】斬り落として参ります
少しでも衝撃波が掠れば呪詛で蝕んで腐らせて差し上げますよ
刃のページは【第六感】でかわすか、
妖刀での【武器受け・カウンター】で弾いてお返し致します
敵をザクザクぶちのめしていくのは最高に気持ちいいですね!
ガラスもザクザク刺さって地味にきついですがね
手をついたら手袋越しでも結構痛くて腹立たしい……
私が来るのですから予め掃除しとけって感じです
コノハ・ライゼ
はー、本だわネ、本
普通お目にかかれないような状況に感動さえ覚えちゃう
ミンナ同じかしら、それとも個性はあるの?
どんな味か楽しみねぇ
底厚めのブーツでも履いて、培養液区画でイタダキマス
やっぱよく燃えるかしら?と【月焔】喚ンで、小手調べに最大数でばら撒くねぇ
効果の程を『情報収集』し『2回攻撃』でもう一度
今度は数撃で効率よく倒せる程度の威力に数を集約させ焔を降らせるヨ
インクの反撃は『見切り』避け更に『オーラ防御』で防いでくねぇ、汚れたくないし
打ち漏らした本には手で触れ直接焔をお見舞い、そのまま『生命力吸収』すんね
でもなかなかお腹は膨れそうにないみたい
攻撃広げるよう『範囲攻撃』を乗せて、どんどん頂いてくヨ
イア・エエングラ
ご本のことももか骸のこどもか
やあ、どちらにしたって不思議なものね
記すことばは違うのかしら、ね
おんなじ種子から花開く、ひとひら色をかえるよに
おなじつ言葉を書き写す写本がすかしずつ違うよに
そんな違いがあるかしら
尋ねながら歩く踵は高いから
硝子を砕いてお前をさそうよ
……うん、僕の裸足なら硝子よりは硬いけど
だからきっと、お前たちがかじるには硬いけども
おいでおいでとうたうよに
丈夫な壁を背にして振り返る
ほら、お祝いの星が降るよ
赫辜を墜として穿ちましょ
壁際で跳弾した破片が二度三度
辿られもせず開かれず
お前たちのことばを一体だれが、しるかしら
ガラスが飛び散り足元には培養液と思われる液体がぶちまけられていた。
どうやらこの区画の液体は透明であり無臭であるので、それが逆に違和感を感じさせられる。
割れたガラスと、ぶちまけられた液体。それが延々と続く光景は、どこか空寒いものを感じさせられた……が、
「ふ……。このハレルヤという存在を収めるには少々狭いですねえ!!」
その中を、真っ先に夏目・晴夜(不夜狼・f00145)が突入した。
「さーて、敵はどこですか!! このハレルヤが褒められる為の糧になって頂きますよ! 跡形もなく叩き潰して、きっちりしっかり、褒めてもらうのですから!!」
いうなり、晴夜は本物そっくりの犬型からくり人形から妖刀を受け取って突入する。侵入者を待ち構えていたように、ふわりふわりと本たちが空中へと浮かび上がった。
「ご本のことももか骸のこどもか……。やあ、こんにちは。どちらにしたって不思議なものね」
それをみて、ついとイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)が手を上げる。お辞儀をするかのように手を掲げれば、
「はー、本だわネ、本。普通お目にかかれないような状況に感動さえ覚えちゃう。だってほら……どんどんわいてくる」
コノハ・ライゼ(空々・f03130)も軽く額のあたりに手をかざして、イアの後ろから建物内を覗き込んでいた。わらわら湧き上がってくる本は数限りなく。小さく、小さく、
「ミンナ同じかしら、それとも個性はあるの? ……ああ。どんな味か楽しみねぇ」
舌なめずり。それについとイアは視線を本から外して、
「どうかしら。記すことばは違うのかしら、ね」
イアとコノハは視線を交わすと、互いに頷きあって別方向へと向き直る。晴夜とも違う方向で、カバーするように向き合って。
「おんなじ種子から花開く、ひとひら色をかえるよに。おなじつ言葉を書き写す写本がすかしずつ違うよに……そんな違いがあるかしら」
どこかうきうきとした口調で、イアは一歩、踏み出していく。ガラスを踏んで音を立てて。歩く踵は高いから。砕けるガラスの音とともに、
「おいで、おいで。僕の踵を齧りにおいでよ。そう……またたき、穿て」
イアが二人から離れ、本が彼を取り巻く。その瞬間、イアは片手を上げた。赫き墜つ冱星の剥片が。花のように周囲に舞い散り、本を次々と打ち抜いていく。
「く……。どこを見ているんですか。ちゃんとこのハレルヤの方を見て。ほめてくださいよ」
広範囲の技に、まきこまれた本たちが撃ち抜かれて地に落ちていく。それを見て晴夜は負けじと妖刀を握り直した。
「残さず食べて差し上げます……!」
いうや否や、悪食の妖刀が暗色に輝く。それは喰らってきたものの怨念であった。その憎しみを身に纏わせながら、呪いを込めた一撃を、衝撃波とともに晴夜は放つ。一刀。ただそれだけで、周囲にいる敵をまとめて薙ぎ払い、
「掠っただけでも蝕んで腐らせて差し上げますよ……!」
返す刃でその傷口から呪詛をしみこませ、一斉に敵をたたき落とした。
「どうですか!」
どや顔をする晴夜。怨念がまとわりついているが本人は気にしていないようだった。なぜかイアとコノハのほうを見るので、
「わ、うんうん、えらいえらーい」
コノハが思わず手をたたいてみる。
「わかればいいんです、わかれば」
晴夜もご満悦で片手を腰に手を当てるので、
「ふふ。そういう子好きヨ。俺もやる気が出るわ。……ねえ?」
コノハが片目を瞑ってイアを見るので、イアはぱちくり、瞬きをした。
「……そう……そう。えらい、えらい……?」
慣れぬ様子に誉め言葉に、それからほんの少し首を傾げて、微笑んでいる。
「ふふん。それでいいんですよ。危険になったらいつでも声を上げてくださいね! このハレルヤが駆けつけますから!」
「頼りに……してる、よ」
やわらかく頷くイアに、うんうん。と頷いてコノハは向けていた視線を正面に戻す。
「さーて……」
そこ厚めのブーツでガラスを蹴ればコノハもぱちんと指を鳴らす。
「やっぱよく燃えるかしら? こんな場所だと寒いでショ。……暖めてあげようか」
冷たき月白の炎が周囲に浮かび上がった。それを自分に襲い掛かってくる本たちに、
「それじゃ、イタダキマス」
ばらまいて、撃ちぬいた。
(一撃、二撃でギリギリ行けるかいけないか……かな?)
「ごめんねェ。そっち行ったヨ」
「問題ない……よ。鬼さん、こちら」
撃ち漏らしにコノハは目を細める。ならば余裕をもって……なんて、弾数の調節をしているコノハ。対するイアもあんまり気にしていないようで、
「任せて、今度は数撃で効率よく倒せる程度の威力に数を集約させ焔を降らせるヨ」
「はぁぃ。ほらこっち、こっちよ。……うん、僕の裸足なら硝子よりは硬いけど、だからきっと、お前たちがかじるには硬いけども……」
おいでおいでとうたうよに、丈夫な壁の区画まで。今度はもっとたっぷり、共に戦う仲間たちから離れて、
「ほら、お祝いの星が降るよ。赫辜を、墜として穿ちましょ」
歌うように再び天から星を落としていく。壁に当たり、跳ね返り。ガラスの破片にあたり、欠片を飛ばして。イアが周囲に群がった本の山を、次から次へと撃ち落としていく。これでは中身の確認なんて、できやしないだろう。
「ふふ、派手派手ネ……っと」
見ていたコノハが、インクの反撃を間一髪でよける。それでもあててこようとするのを、オーラ防御ではじき返す。
「これくらいなら、痛くはないんだけどねぇ。汚れたくないし」
「く……っ。地味に何だか足が痛くなってきましたね……!」
やだやだ。なんて、オーラを解除して手を振るコノハの隣で、晴夜が何だか怒りながら刀を握っていた。
「手をついたら手袋越しでも結構痛くて腹立たしい……。私が来るのですから予め掃除しとけって感じです!!」
「うーん。前もって言われてたんだから、ちゃんと準備しておきなヨ」
「? なんでこの私が状況を慮らなくてはいけないのですか! それにしても敵をザクザクぶちのめしていくのは最高に気持ちいいですね!」
斬り伏せ、斬りかかり。刀のページを武器で弾きながら晴夜が声を上げる。
「味がないのが残念ですが! 腹が全く膨れません!」
「ああー……」
ぱちん、と、コノハは指先を弾く。
ぱちん、ぱちんと、威力を調節し、範囲を広げて。次から次へと、敵を撃ち落としていく。威力を調節して、最小限の力で最大限の戦果が得られるように。そしてそのまま近づく本を直接手でつかみ、
「わかるヨ。なかなかお腹は膨れそうにないみたい」
声明を奪い取りながら、コノハは次、と、周囲を見回した。
「味が薄いんだよネ。生まれたてだからかな? でもほら、たまには薄味もいに優しいってことで、どんどん頂いてくヨ」
飄々とした口調で攻撃を続けるコノハ。
騒がしくも切り込んでいこ晴夜。
そんな彼らを見つめて、イアは本を一冊、拾い上げる。
ボロボロになった書物は、もはや中身の判別は不可能だった。
「辿られもせず開かれず、お前たちのことばを一体だれが、しるかしら」
本たちは応えない。ただ数に任せて押し寄せるのみで、
イアもまた、歌うように再び星を降らせるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【華禱】
常識を超えるものこそ魔法と呼ばれるのでしょう
同じ物として生まれて早々斬り捨ててしまう事に
何も思わない訳ではありませんが、オブリビオンは斬らねばなりません
倫太郎殿の拘束術を合図に攻撃
視力にて敵の数が多い所へ早業の抜刀術『陣風』
一度のユーベルコードでよる多くの敵を巻き込めるよう
2回攻撃で手数を増やし、なぎ払いに併せて刀を振って衝撃波で吹き飛ばす
その後は拘束されていない敵を優先して狙う
一撃で敵を倒せるのならば倫太郎殿とは別の敵を
倒せない場合は倫太郎殿が狙う敵を狙いましょう
魔書の動きに警戒
ページを開き始めたら攻撃と判断
残像・見切りにて回避
遠距離攻撃は武器落としにて刃で軌道を変えて凌ぐ
篝・倫太郎
【華禱】
本って培養で増えるもんでもねぇと思うけど
魔法ならではの、あらまぁ不思議ってヤツかな……?
何にせよ、生まれたて(?)の本の魔物には
還って貰わねぇとな
足元の破片はブーツでどうにかなんねぇかな!
拘束術使用
範囲内の全ての敵に鎖での先制攻撃
これである程度は対応出来っとイイなァ……!
先制攻撃と同時に拘束しそびれた対象に
華焔刀でのなぎ払いの範囲攻撃
倒せてるようなら刃先返して別方向に同様へと2回攻撃
UCにも通常攻撃にも衝撃波と破魔を乗せてくぜ
案外カタいようなら、鎧無視も乗せてくし
二撃目以降はフェイントも交ぜてく
敵の動向は常時警戒
敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避出来ない場合はオーラ防御で防いでカウンター
わさわさと本がひしめいている。
それにしても培養液で本。と、確かめるように倫太郎はその集団を覗き込んだ。
「本って培養で増えるもんでもねぇと思うけど。魔法ならではの、あらまぁ不思議ってヤツかな……?」
呑気に倫太郎がそういうので、夜彦はふ、とほほ笑んだ。
「常識を超えるものこそ魔法と呼ばれるのでしょう」
「まあ、それもそーだな」
軽く屈伸運動をする倫太郎。しかし、
「同じ物として生まれて早々斬り捨ててしまう事に、何も思わない訳ではありませんが……」
夜彦がそういうので、一瞬、何とも言えない顔をした。その顔による彦が首を横に振る。
「ですが、オブリビオンは斬らねばなりません」
「そ、そうだな。何にせよ、生まれたて(?)の本の魔物には、還って貰わねぇとな」
「はい。ですが私は倫太郎殿のそういう心優しいところが好きですよ」
「まーーーーた、そういうこと、いう」
朗らかにいう夜彦に、倫太郎がぼやいた。
「ほらほら行くぜ。足元の破片はブーツでどうにかなんねぇかな!」
「どうにもならないかもしれませんがどうにかなっているような顔をするのがよろしいかと」
「それってやせ我慢っていうよな。……っと」
ひゅん! と。
本がページを飛ばしてくる。
それを倫太郎は紙一重で避けて、
「気が早いっての。そーゆー奴らには縛めをくれてやるをくれてやる。……これである程度は対応出来っとイイなァ……!」
災いを縛る見えない鎖を周囲にはなって、蜘蛛の巣のように倫太郎は本をとらえようとする。
それと同時に、夜彦も走り出した。
ガラスを踏む音がする。足が切れて血が流れるが構わず夜彦は敵へと走りこんだ。
なるべく敵が多い場所を選び、そして、
「全て、斬り捨てるのみ」
敵へと突っ込んでから、夜彦は夜天に移す銀の月、己の愛刀を抜き放つ。そのまま無数の斬撃を放ちながら、即座に本たちを切り伏せていった。
「……まだまだ」
そのまま返す刃で刀を振るい、衝撃波で吹き飛ばす。倫太郎の高速で動きが鈍っている敵を、一瞬で蹴散らした。
「と、と……せい!」
倫太郎も負けてはいない。拘束しそびれた対象を、即座に見極め走っていた。華焔刀を傾ければ、一瞬で蹴散らすように敵たちを薙ぎ払う。そのまま刃を返して、別方向へも刃を走らせた。
「倫太郎殿」
「おう!」
一瞬、背中合わせに語り合う。それだけで通じた。この敵であるならば、同じ敵ではなく別の敵を狙ったほうが早い。
二人同時にガラスを踏んで地を蹴った。足に痛みが残るがそれはそれで些細なことだった。
「それ、帰ったら手当な」
「はい、倫太郎殿も、ですよ」
そんな軽口が楽しい。会話をしながら夜彦は、放たれたページをそのまま曇りない愛刀でではじき返した。
「包帯上手にまけっかなあ」
倫太郎が華焔刀で薙ぎ払いながらそうぼやけば、
「だったら私が二人分行いますよ」
涼しい顔でそう返す夜彦。倫太郎はふと真顔になって、
「それはだめ。夜彦は自分のこと後回しにすっから」
「む……」
ばれていた。けれどもばれていることがなんだか嬉しくて、夜彦は軽やかに刀を振ると、空を切る澄んだ音がした。
押し黙った夜彦に、倫太郎が華焔刀を払いながら笑う。相棒の心の動きは、言葉よりも雄弁にその太刀筋が語ってくれている気がして。
突っ込んでくる書物を紙一重でよけて蹴り飛ばしながら、倫太郎がくつくつ笑っていると。その様子に張り合うように、夜彦の太刀が一閃され書物は真っ二つに切り裂かれるのであった。
「どっちがたくさん倒せるか、勝負すっか?」
負けじと倫太郎もフェイントを織り交ぜながらなぎなたを振るう。冗談めかして倫太郎が挙げた声には、まじめな声が返っていた。
「最初の倫太郎殿の拘束がなければ、初撃でここまで倒せませんでしたから。私がこうやって数多の敵を倒せるのは、倫太郎殿のおかげですよ」
「……夜彦。そういうところだよ」
顔は見えないが、倫太郎が照れていることは、夜彦にもよくわかっていた。そういう声をしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【SPD】
次は本が大量とは景気がいいのー
じゃけど、今の時代は電子書籍! 紙の本はもう古いのー
二足歩行戦車KIYOMORIに搭乗して参戦
電脳魔術による空間【ハッキング・情報収集】で敵位置を把握し、焼却榴弾【誘導弾】を【一斉発射】して紙媒体に有効な焼却を狙う
それとは別にレーザー砲ユニットの連射や、遠くの敵には背中の長距離プラズマレーザー砲など撃ち対抗
さらにUC「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」を発動して、ページカッターを収納する電脳兵器を創造
そこに高速振動をかけることで撃ち返すように発射して自分の武器で倒す自動迎撃を行わせる
やっぱり効率よくいかんとのー。時代は電子じゃし
アドリブ絡みOK
ふよふよと本の魔物たちが漂っている。
「次は本が大量とは景気がいいのー。じゃけど、今の時代は電子書籍! 紙の本はもう古いのー」
それを、電脳魔術兵器を搭載した水陸両用二足歩行戦車。KIYOMORIに搭乗し、そこから景色を一瞥したメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)はうんうん、と、頷いた。ちなみにこの戦車はソフトウェアAIによる遠隔無人操作も可だったりする優れものだ。
「と、いうわけで、古書はまとめて償却するかのー」
言いながら、メイスンは戦車の中から敵の様子を見つめる。電脳魔術による空間ハッキングと情報収集で敵の正確な位置を把握した。
「で……。それ、ぽいっとなー」
そのままぽいっと指定した区画に、焼却榴弾をメイスンはばらまいていく。
「おお。さすが紙媒体。よく燃えるのー」
一瞬にして炎に包まれる周囲の書物の魔物に、メイスンは感心したような声を上げるのであった。
それからそれから……。と、メイスンはさらに戦車の機能に手を伸ばす。
レーザー砲ユニットの連射から、さらに遠くの敵には背中の長距離プラズマレーザー砲など撃ちこんでいくと、敵もあっという間に数を減らしつつあった。
それでも負けじと生き残った本たちが、ページを閃かせて反撃のように刃として飛ばしてくる……が、
「お、きたきた。それじゃそれに有利な物を出すとしようかのー。彼を知り己を知れば百戦して殆うからず、じゃ」
メイスンは落ち着き払ってユーベルコードを吸収し特攻を得る電脳兵器、すなわちページカッターを収納する電脳兵器を創造し、その刃を取り込んでいく。
「おかえしじゃ」
そしてそのままそこに高速振動をかけることで撃ち返すように発射して自分の武器で倒す自動迎撃を行わせていくのであった。
「やっぱり効率よくいかんとのー。時代は電子じゃし」
敵の攻撃もものともせずに、的確に数を減らし対処していくメイスン。
周囲を制圧するまで、そう時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
鵜飼・章
たまには真面目に働けと言われている気がする…仕方ない
クローン本、気になるし行ってみようか
戦場は石造りの迷宮を選択
曲がり角等の死角を利用して身を潜め
敵に気づかれないうちにUC【万有引力】で奇襲をかける戦法を基本にする
針で狙う急所は背表紙と紙の接合部分
頁と表紙を切り離し一瞬でばらばらにする
針で突くのは難しいと思うけど
そこは【暗殺】の腕の見せ所かな
見える範囲の敵を素早く処理し次の曲がり角へ
暗がりを選んで【闇を纏】えれば上々
敵に先に見つかってもUCで素早く対応
本の標本を作る位は可能だろう
ページカッターは壁を盾にしてかわすか
【見切れ】ない時は【激痛耐性】で凌ぐ
中身は僕も気になるよ…
余裕があれば読んでみる
シキ・ジルモント
◆SPD
敵が多いと最初から分かっているなら問題は無い
敵が数で押してくるならそれを逆手にとって利用させてもらう
敵の集団へ一撃離脱を繰り返してみせたり、
派手に銃声を響かせて敵の注意を引くように動く
周りに味方がいない、その上敵に囲まれている
そんな状況にあえて持ち込みユーベルコードを発動、『範囲攻撃』によって一気に数を減らしたい
敵に囲ませたのは味方に被害を与えずに多くの敵を巻き込む為だ
リロードの隙に寄ってくる敵は、飛ばしてくる本のページにむけて蹴り飛ばし盾として使う
…ふと思いつき、蹴り落とした本をフック付きワイヤーで捕まえて中身を確認
培養液で増えた本の中身が同じか否か、言われてみれば気にならなくも無い
シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)と鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は思わず顔を見合わせていた。
きっかけは、ひょいとシキが飛んできた本を蹴飛ばして、そのままフック付きワイヤーで捕獲したことから始まった。そこに章もたまたま合流したのだ。
「中身は僕も気になるよ……余裕があれば読んでみたいとおもっていたんだ」
「確かにな……。培養液で増えた本の中身が同じか否か、言われてみれば気にならなくも無い」
顔を見合わせて、頷きあう二人。シキはどちらかと真面目な顔で、章はなんだかわくわくするような表情をしていた。
「中身の確認は仕事の範囲外だが……」
「うん。でも、仕事にだって楽しみは必要だよ」
にこやかに悪いことを吹き込む顔をしている章に、なるほど。とシキは頷いて。じたばたしている本に手をかけると……、
「……!」
「ふんっ!」
ざんっ! と、本の刃が二人に襲い掛かる。
とっさに章は壁を盾にするように隠れ、シキは開こうとしていた本を盾にする。
「あっ」
「問題ない。もう一つ確保すればいいだけの話だ」
わらわらと、彼らの気配を感じ取ったのか、集まってくる本たち。背中合わせに立ち、うーん。と章は難しい顔をする。
「たまには真面目に働けと言われている気がする……仕方ない」
「お楽しみは仕事が終わってからにしろ、ということだろうな」
「僕はね、できれば働かずに人生生きていきたいんだ。……でも、クローン本、気になるし行ってみようか」
「一冊は確保する。あんたも一冊は頼んだぞ。……先に行く」
いうなり、シキは走り出した。
「ええー。カブトムシみたいに虫取り網で捕まえられるかなあ」
章のそんな言葉が背中から聞こえていた。
走り抜ける。すり抜けざまに再びフック付きワイヤーで本を捕獲する。
そのままそれを盾にして、シキは敵の群れの中に突っ込んでいく。
(敵が多いと最初から分かっているなら問題は無い。敵が数で押してくるならそれを逆手にとって利用させてもらう……!)
しばらく走る。理想なのは周りに味方がいない、その上敵に囲まれている状態だ。
本がシキを追いかけてくる。それを引き連れたままシキは角を曲がる。
また別の敵を見つければ、派手に銃声を響かせて注意を引き。また別の方向へと走り出した。
「……こんなものか」
そうして、いつの間にかぞろぞろと敵を引き連れてシキは広い場所に出る。
周囲には味方もいない。ここでちょうどいいだろうと、シキは取り回し易さを損なわないギリギリまで威力を上げたハンドガンを構えた。実用性重視の造りで、武骨でシンプルなそれの引き金に手をかける。
「ここなら誰も巻き込まないな……。逃げられると思うな」
唐突に足を止めたシキに、本たちは一瞬、対応ができなかった。
その隙を、シキは見逃さなかった。
銃声が絶え間なく響き渡る。全方向向けてもはや狙いすらつけずに無差別に放たれた攻撃は、あらゆる目の前にいるものを撃ち抜いていく。この場合目の前にいるのは敵だけなので、倒れ落ちていくその姿をシキは確認すらしなかった。
そのまま打ち漏らして、リロードの隙に接近してくる本に手を伸ばす。銃には手にかけたまま、もう片方の腕で抱えて壁へと投げつけ。ときに蹴り飛ばして盾にする。……そして、
「……ああ」
忘れてはいけない。本を一冊。フック付きワイヤーで確保するシキである。
中身は、殲滅後のお楽しみであった。
「それじゃあ、僕も……」
そうして、シキが去った後。章もそっと、壁の死角へと身を潜めた。
「あれ、こうしているとなんだか僕、有能そうじゃない?」
なんて一人で言ってみるも、突っ込み不在である。そのまま静かに隠れていると、先ほどページを撃ち込んでいた本たちがふわふわと浮きながら章を追いかけて無防備に通路を移動してきていた。
「来た来た……」
そ、っと息を殺して章は待つ。本たちが章のすぐ近くを通過した、その時、
「普通のことさ。……≪万有引力≫」
章は手にしていた、巨大な針を本たちへと投げつけた。
「!」
本たちが章のほうを向く、その前に、
「本っていうと、そこだよね」
背表紙と紙の接合部分を狙って、章は針を複数叩きつける。表紙とページを切り離し、バラバラにして落としていく。
「針で突くのは難しいと思ってたけれども、結構何とかなったみたいだね。ふ……。この完璧な暗殺技。誰かに見せたいぐらいだよ」
やれるやれる。と、何やら上機嫌にポーズを決める章であるが……、
「!」
「わ」
突然角を曲がって表れた本に、即座に章は針を閃かせた。
「先手必勝。これもある意味奇襲だからね!」
と、針を投げつけながらも自信は即座に角に逃げ込んで壁を盾にしながら針を投げる。
「びっくりした。たまにまじめに仕事をするとこういうことになるよね……」
言いながら、再び章は暗がりに飛び込んで、すっと身を隠す。
「あ、そうだ。盾君も一人、捕まえておかなきゃね」
答え合わせに必要だ。なんて。
章は真面目な顔をして、一冊本を捕まえる算段をするのであった……。
そして……。
「……あんた、読めるか?」
「読めない……読めないね」
再び合流した二人は、そんなことを言い合っていた。
「でもほら、たぶんおんなじことを書いてあるみたいだよ。読めないけれどもぱっと見は一緒だから」
「なるほど。確かにそうだが……少し筆跡が違うんじゃないか? ほら、この辺とか」
「ええ、まさかの手書き写本……?」
謎は深まるばかりであったという……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
賢い君、賢い君
なーんか一杯いるいる。
みてみて、一杯。
アァ……硝子も一杯。まァ、イイ。
うんうん、倒そう倒そう。
いーっぱい倒そう。
こんなにも沢山敵サンがいたらワクワクする
『わっ!』て手始めに前方の群れに
人狼咆哮をお見舞いしてやろう。そうしよう。
少し大きな声を出すだけで消える。
アァ……賢くないンだなァ……。
賢い君、賢い君、アイツら賢くない。
やってしまおうそうしよう。
前方は人狼咆哮。
あとは自慢の足を使っておびき寄せながら
賢い君の毒とそれから糸を辺りに張り巡らせる
飛んで火にいるナントヤラって言うだろ?
そのまま一気にバーイバイ。
アァ……賢い君、もっと遊ぼう。
次はどうやっておびき寄せる?
華折・黒羽
数の脅威、か
ではその数に何処まで俺の技が通用するか、試させてもらいます
試す、と言ったものの勿論全力で
取り出した篠笛・東雲を口許へ
痛みで集中を切らさぬ為空中戦を主としながら
広範囲に響かせる間合いを取って奏でる高音の調べ
可能な限り生み出す黒烏の影は今時点で数にして34羽
音によって指示を渡し一斉に攻撃を
威力の落ちぬよう指示は簡易に
──喰い千切れ
自身は翼で敵の攻撃を回避しながら音が途切れるのを上手く応用し
高音からの転調にて低音をもって烏達の動きを制御する
ひとつひとつの影にはこの身に宿る屠の影を散りばめ
倒した敵から生命力を吸収しそれをひとたび己の力へと成して
力の、命の続く限り戦い続けてやる
前へと進む為に
西条・霧華
「私は私にできる事をするだけです。」
守護者の【覚悟】を以て…
広域を一度に薙ぎ払う術に長けているわけではありませんけれど…
工夫を凝らす事で戦いやすくはできます
まずは迷宮の壁が頑丈な場所へ【ダッシュ】で移動しながら敵を引き付けます
狭い故に必然的に彼我の距離も縮まりますし、頑丈である故に壁越しの奇襲も心配もありません
つまり一対多の戦いに向いた場所ですね
『無名・後の先』で誘った攻撃を【見切り】つつ【武器受け】
纏う【残像】で敵を乱し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて【カウンター】
【見切り】の時点で反撃が困難だと判断した場合
【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
「私は私にできる事をするだけです……」
西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)はそういって、小さく息をついた。
「守護者の覚悟を以て……」
深呼吸をする。目の前に押し寄せる敵を前に、緊張した面持ちで敵を見据える。
「賢い君、賢い君。なーんか一杯いるいる。みてみて、一杯」
そのとなりで、おおー。とエンジ・カラカ(六月・f06959)が声を上げた。屈伸運動、なんてしたりしていて、
「アァ……硝子も一杯。まァ、イイ」
周囲の状況に、いったん目を細めて頷いたりしていた。
「本当に。よくここまで揃えましたね」
そんな二人を前に、肩を竦める華折・黒羽(掬折・f10471)は、どこか呆れたような。それでいて楽しそうな声をしていた。
「うんうん、倒そう倒そう。いーっぱい倒そう。こんなにも沢山敵サンがいたらワクワクする」
くつくつと笑うエンジに、黒羽も小さく頷く。
「数の脅威、か……。ではその数に何処まで俺の技が通用するか、試させてもらいます。ええ、楽しみですよ。どこまでできるか……」
どこか自信をのぞかせる黒羽の言葉に、エンジはナルホドナルホド、とうなずいてから、
「じゃあ、先に行くよォ……!」
そういって、まるで狼のように一直線に走り出した。
「……それでは。互いに、行きましょうか」
言って、黒羽は『揺』……。篠笛・東雲を鳴らす。風穴のようにエンジが通った道が開き、そのまま二人へ向かって殺到してくる書物と、エンジを取り囲もうと動く書物に彼らの動きも分かれる。
「はい、どうか、お気をつけて」
黒羽の言葉に、霧華も軽く一礼して、そして本たちに背を向けて走り出した。
本は黒羽を取り囲む本と、霧華を追いかけて来る者たちに分かれる。
背中から大きな咆哮が聞こえて、霧華は走る速度を上げた。
「広域を一度に薙ぎ払う術に長けているわけではありませんけれど……。工夫を凝らす事で戦いやすくはできます」
私には私の戦い方があると。
その声を聴きながら、霧華は本を引き連れて頑丈な壁が立ち並ぶ区画へと突入した。
「こちら……です」
壁から壁へ。縫うように。霧華はその道を走り抜ける。
時折すれ違う本たちを切り伏せて通り抜け。さらに敵を呼び込みながら囲まれないことを意識しつつ全力で駆けた。
「さあ……」
そうして選んで細い道へ。自然と本たちが込み合って、列のように並んでくる場所まで霧華は本を誘い込む。
袋小路に入ったのは、あえて狙ってのことであった。
頑丈な壁であることを念のために一度、霧華は確認をして。
上を見て、上まで壁であり、上空からの奇襲がないことも確認する。
「それでは……、参りましょうか」
そうこうしている間にも、敵は目の前に迫っていた。
そうはいっても、狭い通路であるのだから、一斉に飛び掛かってくることができる数には限りがあった。
「……」
霧華は刀を抜かぬまま、『無名・後の先』にて全く動かず攻撃を誘う。居合抜刀術で反撃の機会を狙っているのであった。
「は……っ」
本が刃に代えた自分のページを放つ。その一瞬で、霧華は残像を纏いその敵へと肉薄した。二種の倶利伽羅の彫刻が施された刀を翻し、そして反撃の一刀で、本をばさりと切り伏せる。
「……」
休む間もなく繰り出される攻撃を、霧華はそうやって休むことなく籠釣瓶妙法村正にて捌いていった。時にさばききれぬ攻撃もあるけれども、その覚悟でもって受け止めれば、
「皆さんは……御無事でしょうか……」
先ほど別れた二人を思い出す。きっと大丈夫だろうと、霧華は目の前の敵をたたき伏せながら、負けてはいられませんねと小さく頷いた。
走って、走って、走って。
時々その爪に本をひっかけながら爆走したエンジが、もういいだろう、と、振り返ったのは、
黒羽たちが十分離れた、ガラス飛び散るど真ん中であった。
「んー。足、痛イ? 痛いような……気のせい気のセイ。それじゃァ……」
首を傾げながらも、エンジはすう、と、肺に空気を吸い込んで、
「わ!!!」
追いすがってくる本たちに、大音量で咆哮を放った。
「びっくりシタ? びっくりシタ?」
思いっきり叫んで、わくわくとエンジは周囲を見回す。
そうすると……、
エンジの周囲にいた本たちは、すでに力なく地面にその体を横たえていた。
「……」
どうやら、ずいぶん効いたらしい。
「なァんだ。つまんない。詰まんないなァ……少し大きな声を出すだけで消えるってさァ」
ええ。と。つまらなさそうにエンジは鼻を鳴らして、賢い君に視線を向ける。
「アァ……賢くないンだなァ……」
声は若干、しょんぼりしたわんこのような声をしていた。
「賢い君、賢い君、アイツら賢くない。賢くないはダメだ。やってしまおうそうしよう」
ちぇーっ。と言いながら、エンジは走り出す。
大きく声を上げながら、走り抜ける。
そうして前方の敵を蹴散らしながら、走り回ってあちこちに顔を出し、わざと見つけられてはおびき寄せる。
「賢い君、賢い君、賢くないやつらだ。やっちゃおう」
賢い君の糸を周囲に張り巡らせて、そして毒とともに追いかけてくる本をがんじがらめにしていく。
「賢くないから簡単だなァ。飛んで火にいるナントヤラって言うだろ? そのまま一気にバーイバイ」
そのまま一息で賢い君を使って倒し。倒しきれない敵は方向を使用して屠っていく。
一瞬で消えていく本たちに、再び止まることなくエンジは走っていく。
「アァ……賢い君、もっと遊ぼう」
走るとともに、面白いぐらいついてくる本たちに、エンジはほんの少し口の端を上げて笑った。
「次はどうやっておびき寄せる? 賢くないのは詰まんないけど、いっぱいまとめるのは楽しいなァ……」
どうやら彼は、別の楽しみ方を見つけたらしかった。
「アァ……。あっちも元気でやってるかなぁ……」
そしてふと思い出すのは、先ほど別れた猟兵たち。
「大丈夫かァ。強そうだったもんなァ……。こいつらよりもずーっと賢い賢い」
本を処理しながらも、エンジはそんなことを言って微笑む。その声は何処か、楽しげであった。
「……さて」
試す、とはいったものの。
もちろん黒羽は今日も全力であった。翼をはばたかせ、黒羽は空へと舞い上がる。
「舞えや踊れや、獣達。有明の下に身を照らせ。――吹かば其の音は、友への語らい」
近距離の敵はエンジと霧華が引き受けてくれた。
故に黒羽はその場所にとどまったまま、少し離れた場所にいる敵を見据えて。篠笛『揺』の奏でる。
高音の調べが、周囲に満ちる。その奏でた歌に応じるように、どこからともなくあらわれた影があった、
「……」
笛を奏でている間も、じり、じり。と、滲みよるようにして本たちが黒羽を取り囲んでいる。
黒羽は動かない。下手に動いて足を怪我して、痛みで集中を切らすよりかはこちらの戦法を選んだのだ。
どこからともなくあらわれた、黒烏の影は、数にしておよそ34羽。黒羽が演奏により喚び出した、獣達の影である。
視認している敵の数は10を超えたところで数えるのをやめた。
黒羽は増えから唇を放さない。高温が周囲に満ちる。そしてそのまま周囲をぐるりと見まわして、
『──喰い千切れ』
音による指示は最小限に簡潔に。
ひょう、と、ひときわ高く吹かれた笛の音とともに、
黒烏たちが一斉に、本の群れへと襲い掛かった。
「……」
本も迎撃態勢に入る。烏に向けて攻撃を放つものは、烏の反撃を受けて撃墜されていく。
烏たちが本をついばむ。威力が落ちぬように出された単純な、それでいて絶対の指示に従って、烏たちは目に入る本のページを食いちぎり、そしてバラバラにしていく。
「……」
中には術者である黒羽を攻撃してくる個体もいた。走るインクの魔法弾を翼を使って回避して、黒羽は音が途切れる瞬間曲を低音へ転調させる。
ざ、と一斉に動きを変える烏たち。無差別攻撃から、数を減らした敵への追撃へと動きを変える。
攻撃のたびに影の中に宿らせた黒剣、屠の影が生命力を吸い上げて、黒羽の体へとその力を還元していく。
(……力の、命の続く限り戦い続けてやる)
そしてたとえ、回避が間に合わずにページの刃をその体に受けても、黒羽は音を絶やすことなく、烏たちに攻撃を命じ続けるのであった。
(前へと進む為に……)
きっとさっき別れた仲間たちも、そうやって戦っているのだろうと。思いをはせながら……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
……オブリビオンにも“生まれたて”とかそういう概念があるんだな
いやまあ、どうでもいいんだけど
放っておいても後で面倒になるだけだ
ここで全て殲滅するさ
足元は普段通りの戦闘靴で防護して開けた場所で応戦
下手に崩れたりしない方が都合がいい
できるだけ壁や障害物を背にして
死角を作らないようにしながら戦闘を運ぶ
【涯の腥嵐】――射程内におさめた敵から順に殲滅
手持ちの銃器を用いて銃弾で撃ち払っていく
おおよその数は射程におさめられるだろう
必要に応じて部屋内を移動しながら掃討していくよ
相手の動きを目で見切り、敵の発する音を逃がさぬよう聞き耳を立て
撃ち漏らしのないように立ち回る
禍根は遺さないに限るからな
ジャック・スペード
敵個体は多数か、戦況は理解した
効率良く数を減らして行くとしよう
硝子の破片は気にせず踏み付け
リボルバーからマヒの弾丸乱れ撃ち敵の牽制を
あとは銃を持たぬ方の腕を機関銃に変化させよう
其処から炎の弾丸を放ち範囲攻撃
見た所あれは紙の本のようだ、よく燃えるだろう
撃ち漏らしはスナイパーの心得を活かして
炎の弾丸を撃ち込み各個撃破を試みる
飛んでくるページの刃は
ビームシールドを展開する事で防ごう
損傷は激痛耐性で堪える
また近付いて来た個体は怪力で捕まえ
其のページを破り捨ててやる
紙の本は俺の手には余るモノだが
書籍の類は嫌いじゃ無い
ゆえに本を傷付けるのは少し気が引けるが……
彼等がヒトを傷つける前に、退治しないとな
「敵個体は多数か。戦況は理解した」
じゃり、と粉々に散ったガラスの破片を踏みながら、ジャック・スペード(Jスペード️・f16475)はマスクの下で一呼吸、目を細めるかのような間を置いた。機械の体で歩くたびにガラスを踏みにじれば、滲むような音が周囲に響き渡る。
「……オブリビオンにも“生まれたて”とかそういう概念があるんだな。いやまあ、どうでもいいんだけど」
その近くで、鳴宮・匡(凪の海・f01612)もざっと周囲を見回してから肩をすくめる。こちらはいつもの様子、戦闘靴で、何ら普段と変わることなく周囲の敵を見つめている。
書物の魔物がふわふわと、彼らを迎え撃つように浮かび上がっていた。パラパラパラ。静かにページをめくる音がする。
「そうだな。それに生まれたてでは力が落ちるというのも興味深い。……が」
ぐ、とジャックはリボルバーを握りこむ。
匡もまた「異邦人」の名を冠する自動式拳銃を構えて、同時に戦闘態勢をとった。
「効率良く数を減らして行くとしよう」
「その通り。放っておいても後で面倒になるだけだ。ここで全て殲滅するさ」
ジャックの言葉に軽い口調で匡が応える。
「では、互いの武運を祈る」
「ま……。そうだな」
ジャックの言葉に匡は軽く手を挙げてうなずいた。
無事を祈るには互いに戦闘方法が過激であるがゆえに。
さて、いいながら、祈る神などありはしないがと互いに思ったかどうかはわからないが、
二人は同時に走り出した。
銃撃の音が周囲に響き渡るのは、しばらくしてからのことだった。
「さて……と」
匡はなるべく壁や障害物を背にできる場所へと移動する。
互いに協力し合わず分かれたのは、戦法によるところが大きかった。
慎重に、匡は壁や障害物を背にし、時々中で払いながら移動する。……そして、
「さて、遠慮はなしだ」
ここだ。と決めた場所。周囲に敵のいないところまで来ると、匡は己の所持武装と弾薬の全てを解放した。
「片っ端から……片付けようか」
いうなり、手持ちの銃器を使って次から次へと。
敵が反応する間もなく、匡は本たちを撃ち倒していく。
おおよそ視界内の敵全てを焼き払い、
「まだいるか……」
視界の端にいる陰を追いかけるように、匡は移動して追撃していく。
敵の動き、発する音。それらすべてに気を配り、攻撃を回避し、うち漏らさないように立ち回る。
「禍根は遺さないに限るからな」
戦いが過ぎ去った後。周囲に静寂が広がるまで……。匡の銃は動き続けるのであった。
「来い!」
ジャックの銃が続けざまに迫りくる書物たちを打ち抜いていく。
バラまくように放たれる、乱れ撃ちの弾丸はマヒの弾丸であった。それは書物であっても効果があるようで、ぶち当たった書物がぐるぐる回って一瞬、動きを鈍らせる。
「……此の身は異形なればこそ――」
即座にもう片方の腕が追撃に入る。銃を持っていなかったほうの腕を、機関銃に変化させて。撃って、撃って、撃ち抜いていく。
変化させた腕は、ジャックの……異形ならではの業だった。黒鋼の機械はヒトに非ず、ゆえに人の形を捨てその体を余すことなく使いつぶす。それがジャックのやり方であり、そこにためらいはない。
武器と変わった腕から放たれる。その弾丸は炎となり、本へと当たると同時に燃え広がっていく。
たまらず飛び込んできた火の玉のようになっていたそれを、ジャックはマヒ銃で今度は打ち抜きそのまま拳で叩き落した。
「なるほど。やはりこれは紙の本のようだ。さぞかしよく燃えるだろう」
燃える書物に目を細め、淡々と目の前の敵へと対処していく。
撃ち漏らしがその場から、ページの刃をジャックへ向けてはなった。
あわてず騒がずに、ジャックはビームシールドを展開する。
ふさぎきれなかった刃がジャックの装甲を傷つけるが、その表情は見えない。何でもない風にふるまって、ページを放つ本へとむけて、冷静に炎の弾丸を打ち込んでいった。
「さすがに多いな……」
それでもなお押し寄せる本。飛び込んできたそれをとっさにジャックは片手で捕まえる。そのままページを破り捨てると、力を失って落ちていくそれにわずかにジャックの視線が動いた。
「紙の本は俺の手には余るモノだが……。書籍の類は嫌いじゃ無い」
繊細な扱いを要求されるので、ジャックには向かないけれども。
本という媒体は、ジャックも嫌いではなかった。
ゆえに本を傷付けるのは少し気が引けるが……、
「彼等がヒトを傷つける前に、退治しないとな」
だからこそ。というべきか。
せめてその前にと、ジャックは機械の腕を振るい続けた。
何度も何度も。彼らの敵が潰えるまで……。
そして。
あまたの破壊の末に、戦いは終わった。
あとはただ、本の残骸と静寂が残る。
「だが……まだ、終わってはいない」
ジャックの言葉に匡は肩をすくめた。……そう。
戦争はまだこれから。……まだ、戦いは終わらないのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵