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恋する乙女のための果実

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●素材から拘りたい乙女
 大好きな彼に、振り向いてもらいたい。
 彼は多くの人に好かれる人だから、少しでも周りに差をつけなくてはいけない。
 特別な何かじゃないと、きっとアタシのことなんて振り向いて貰えない。
 アタシはソバカスだってあるし、眼鏡も大きくてダサいし、それに地味。
 けれどお菓子作りは得意だから、彼に贈るチョコレートは他の子と全然違うものにしなくちゃ。

 噂を、聞いたの。迷宮に特別なカカオがあるって。
 それはすごく香りが良くて、味もいいって。
 だからアタシは、『コレ』だ! って思ったの。
 やっぱり『特別』を贈るなら、素材から拘らなくっちゃ!

●猫の語り
「君たちはもう、二月の予定は決まっているのかな?」
 唐突に、グィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)はそう切り出した。
 積まれた箱の上に腰を下ろし、尾をゆうるり揺らしながらどうなんだい? と首を傾げる。
「二月に、乙女たちの一大イベントがあるだろう? その為の戦いが、既に始まっているらしいんだ」
 関係無い世間話ではないよと手を振って、眉をきりりと真面目な表情をしてみせる。
「幻のカカオと言われる特別なカカオが迷宮にあるらしく、それを求めてアルダワ魔法学園の女生徒たちが迷宮探索に熱を上げているらしいんだ。……うん、カカオからチョコレートを作るらしい。すごいよね。まあそれは良いのだけれど、その幻のカカオのある場所にオブリビオンが居るんだ」
 幻のカカオを求めてたどり着いた女生徒たちが、オブリビオンの魔手に掛かる予知を視た。
 手紙の形のグリモアから便箋が飛び出し、それを手にしたグィーは告げる。
「さあ、みんな。お仕事の時間だよ」
 幻のカカオは、鬱蒼と木々が生い茂る深い森の迷宮を抜けて、そのまた先のフロアにあるようだ。
 見た目は一般的なカカオと同じ。これくらいかなとグィーが両手を動かしてサイズを伝えようとする。ケットシーであるグィーには大きく感じるが、ラグビーボールくらいの大きさだ。
「良い匂いもするって噂だから、近付けば匂いで解るかもしれないね」
 けれど、甘すぎる香りにはご用心。近くにはオブリビオンが居ることだろう。
 それは呪いを纏う骸骨で、魔導士のような姿をしている。呪いと嘆きを引き連れるオブリビオンは、乙女たちが迷い込むのを待っている。恋のような強い感情は嫉妬や呪いへ転じやすく、格好の餌なのだろう。
 それだけは必ず阻止しないと。グィーは頷いて、猟兵たちを送り出す準備に入る。
「それにしても、特別なカカオか。僕もちょっと、興味があるかな。そんなカカオで作ったチョコレート、どんな味がするのだろうね」
 乙女たちの為にも、頑張ってきてくれるとうれしいよ。


壱花
 二度目まして、もしくは初めまして、壱花と申します。
 前作の後すぐにオープニングを出す予定だったのですが、日程調整の為に暫く寝かせてしまいました。期間的に間に合えば、後編的な依頼を出したいと思っています。前編カカオ探し、後編チョコ作り、みたいな感じで。間に合わなかったらごめんなさい、乙女の日はオーバーします。
 サクサクお返しできるよう頑張っていきたいと思っております。

 第1章、まずは森林探索です。カカオ0%!
 第2章、噂だとここにカカオがあるらしいので、幻のカカオを探します。
 第3章、ボス戦です。倒してカカオを持ち帰りましょう。

●冒険
 POWSPDWIZは一例と思って頂いて大丈夫です。
 バーンっと突き進んでいってください。

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合はプレイングの最初に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。指定が一方通行の場合、判断に迷って描写できない可能性があります。
 掛け合わせるのが好きなので、軽い気持ちで誰かと絡ませてしまう事が多いほうです。お一人様での描写希望の方は【絡みNG】【単独】等の記載をお願いします。

●幻の果実
 アイテム等の発行はありません。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『森林迷宮』

POW   :    森の中を体力勝負で進む。植物を切り拓き、災魔が出れば排除する。力押しで乗り切ろう。

SPD   :    森の中を素早く駆け抜ける。ちんたらしていたら、危険は増すばかり。速いに越したことはない。

WIZ   :    森の中を知識を活かして進め。どんな危険が、どんな障害がありえるのか。事前に分かれば、対応できる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ノルナイン・エストラーシャ
ああそう言えば、チョコレートを渡し合うイベントがあるのですね。もうそんな時期ですか……
私に送る相手はいませんので、夢見る乙女たちの希望を守るとしましょう。

件の場所はこの森の奥……ですか。中々骨が折れそうですが、【シーブズ・ギャンビット】で邪魔な蔦などを切り払いながら進んでいきます。こうすれば、後続の猟兵が来やすくなる……かもしれません。

他の猟兵が居れば、協力を打診してみましょうか。一足先に行って【シーブズ・ギャンビット】で草木を刈ってもいいですし、狙撃銃や熱線銃で破壊なんていうのも出来ます。

先のフロアのオブリビオンを倒す。そのためには、まずこの森を抜けないことには話にならないのですから。


ホーラ・フギト
私自身、誰かに恋したことは無い
でも恋に弾む心は何度か見てきた
美しいわ、とても
だから彼女たちのため、気合い入れましょ

深い森で、しかも迷宮。なんて素敵なんでしょう!
何ごともなかったら森林浴したかったわね
ランタンの火の精霊を明かりにして、WIZ頼りで簡易地図作り
道中の障害や、生息する花や獣に変化が出てきたら、それも記録
コンパスが利くなら火の精霊に持ってもらうわ

通る道の目印として道を挟んだ木にリボンを括る
少し力を貸してね。そう木の精に一言
括るときも樹皮を傷つけないように
他の猟兵さんとご一緒できるなら、リボンの件を伝えておきます



●白と茶
 偶然出会った二人の機械人形は、深い森の道をともにしていた。
 白の機械人形――ノルナイン・エストラーシャ(旅する機械人形・f11355)は、白磁の肌に金の髪。刃の切れ味を隠し、藍色の瞳を柔らかく細めて後ろに続く機械人形へと手を差し出す。
「こちらの丸太、朽ちているので気をつけてくださいね」
 茶の機械人形――ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)は、褐色の肌に編んだ葡萄色の髪を揺らし、翡翠の瞳を深緑に溶かすように綻ばせてその手を借りた。ランタン――『時迷いの魔導燈』を片手に地図を作成していたホーラには、その気遣いはとてもありがたい。
 ありがとうと返す言葉は弾む心を表すように明るく、何も無ければ森林浴がしたかったと視線は今にも緑の海へと泳ぎ出してしまいそう。
 誰かへの恋心を抱いたことがないホーラだけれど、誰かが恋に心を弾ませる姿は何度か見てきた。それはとても美しく、愛しく思えるもので。だからこそ彼女たちのためにと気合いを入れて、森の奥を確りと見据えた。
 その想いは、ノルナインも同じく抱いている。恋する気持ちを伝えるチョコレートを渡す相手は居ないが、夢見る乙女たちの希望を守りたい。話に聞いたオブリビオンは必ず倒さなくてはいけない。
 そうして丸太を越えたなら、ノルナインは少しだけ先行し、行く手を遮る蔦をダガーで払う。最小限の動きで振るわれるダガーはノルナインの身体の一部のように滑らかに動き、目的を違わず払いのける。しかし、払う草木も最小限に抑える。後ろを歩く、ホーラの眦が下がらぬように。
 火の精霊の明かりを頼りに地図を作成していくホーラと離れすぎないよう気をつけて、少し進んでは後方の確認も忘れずに。先程の丸太の事も地図へ記載したホーラと視線が合い、どちらからとも無く微笑んだ。
 ホーラの手元の地図は、歩む度に彩りが増す。道中の障害だけでなく、生息する草花や獣も記されていき、そして――
「ああ、少し待って」
 ホーラは先を歩くノルナインへ一言告げると、腰の鞄からリボンを取り出して。
「少し、力を貸してね」
 すぐ傍らの木の肌を柔らかな手付きで愛しむように撫で、木の精へと言の葉を届けながら伸びた枝へとリボンを括る。
 通った道を挟む木々へリボンを結べば、後続の猟兵も同じ道を辿れるはず。また、帰路にも使えるわとノルナインに理由を告げれば、ノルナインもホーラに手を貸して。
「二人居るのだから、分担して結んでいきましょう」
 ノルナインの提案に、ホーラは素敵! と胸元の翡翠の前で両手の指を合わせて微笑みを返した。

 進んでは二人で目印のリボンを結んで、また進む。
 作成している地図にリボンの場所も記載し、ホーラはふと顔を上げて後ろを振り返る。
 木々の間に、アルダワ魔法学園の制服が見えた――気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイシャ・ストリングウッド
ワタクシ知的な術師でゴザイマスから~、方針は【WIZ】でゴザイマスよ!

この森にも精霊がゴザイマスでしょう?
ワタクシの清らかな心でもって問いかければきっとカカオについての有益な情報もいただけると思いマスのよ!
芳醇な香りがいたしマスのでしょう?それを目指せばカカオ一直線!

乙女が心寄せる殿方のために手作りのチョコレート…厳選の素材を手にいれるために危険な迷宮へも足を運ぶ…ん~ロマンでゴザイマスね~!大変ステキかと!
ここでワタクシが事前に安全なルートを開拓し乙女たちの道を作り上げて男らしいところを見せておけば、来る日にはチョコレートが確約されたようなモノ、大変ワクワクいたしマシテヨ!



●来る日のために
 乙女が心寄せる殿方のために手作りのチョコレート。
 厳選の素材を手にいれるために危険な迷宮へも足を運ぶ。
「ん~ロマンでゴザイマスね~! 大変ステキかと!」
 アイシャ・ストリングウッド(何もしてないのに通報される・f12485)は深い森の中、一人で胸に手を宛て声を上げる。ついでに大きく空気を吸い込めば、美味しい空気が身に染み渡り気分も良い。
(ここでワタクシが事前に安全なルートを開拓し乙女たちの道を作り上げて男らしいところを見せておけば、来る日にはチョコレートが確約されたようなモノ、大変ワクワクいたしマシテヨ!)
 完璧だ。完璧な作戦だ。世間が羨む知的な術士でなければ思いつかない作戦だろう。
 乙女たちのためだけではない。自分にも益がある。胸に秘めた思いに、うふふと思わず笑みも溢れる。森の中、一人で笑う長身の成人男性はこの上もなく怪しかった。
 後は森の精霊に道を聞けばいいだけだと精霊術士たるアイシャが目聡く森を見渡せば、木々に隠れるようにこちらを伺う精霊の姿がいくつか確認できた。木の精霊と風の精霊なのだろう。景色に溶け込むように佇んでいた。
 居るには、居る。しかし、アイシャがうさんくさいのか、とても遠巻きに窺われているようだ。
「この森の精霊でゴザイマスか? ワタクシはアイシャ。怪しい者ではゴザイマセン。ただの知的な術士でゴザイマス」
 優雅に、貴族然とした礼をする。アイシャは貴族ではないが、幼い頃から姉たちに優雅な言葉遣いや態度をしつけられてきていた。この仕草も言葉遣いも、精霊たちからの好感度は鰻登りのはずだ。
 ――しかし。
 ひそひそ。精霊たちが顔を合わせ、言葉を交わすような仕草をする。何度もチラチラとアイシャを見、そして肩をすくめた。
「ワタクシ、怪しい者ではゴザイマセンよ!?」
 ざわり。木々が揺れた。
 ざわり、ざわり。
 だって、どう見たってうさんくさい。

 あっち。そう言いたげに、風の精が森奥を指さす。
 何度も怪しく無さを主張して、ようやく道を教えてもらったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

狗衣宮・藍狐
【ピリカ・コルテット】と
(友だちと一緒なので廓言葉ではない口調)

それじゃあピリカちゃん、いこっか!妖狐森林探索隊だよ!
うまく幻のカカオを見つけられたら、リリアくん(※リリアネット・クロエ)にチョコを一緒に作ってあげようね!

それじゃあ森林だし、あたしは首の鈴を鳴らして森の動物たちを呼び出して、動物と話す、コミュ力、情報収集でこの辺り一体のお話を聞くよ。
万が一迷っても大丈夫なように、グラフィティスプラッシュで目印を書きながら進むね!
あっ、ピリカちゃんそっちじゃないよ、こっちだよ!

アドリブ・絡み歓迎!


ピリカ・コルテット
【狗衣宮・藍狐】と

幻のカカオを探してれっつごー!!
藍狐ちゃん、一緒に頑張ろうねっ♪
二人で仲良しのリリくんに美味しいチョコを作ってあげるんだ~!
まずは森の迷宮を抜けて、カカオのある場所を目指さないとだね!

困った事があったり敵と遭遇したら、愛刀プリムの力も借りつつ、
属性攻撃・全力魔法・武器受け等を駆使して乗り越えます!
探し物はすこーし苦手なので、女子力(物理)で貢献しましょう☆
どんどん突き進んでいればきっと奥に辿り着くはずですっ!

アドリブ・絡みその他諸々大歓迎っ!



●あの子のために
 森の薄暗さを吹き飛ばすような、明るい声が迷宮内に響く。
「それじゃあピリカちゃん、いこっか! 妖狐森林探索隊だよ!」
「幻のカカオを探してれっつごー!!」
 仲良しの二人、狗衣宮・藍狐(キューティースタイリスト・f00011)とピリカ・コルテット(Crazy*Sunshine・f04804)は元気にえいえいおーっと腕を振り上げた。同時に互いの耳と尾も、ピコッと揺れる。気合いはじゅうぶんすぎる程めいっぱい。だって二人には共通の目的があるのだから!
 それは共通の友人である男の子に美味しいチョコを作ってあげること。
「リリアくんにチョコを一緒に作ってあげようね!」
「うんっ! 藍狐ちゃん、一緒に頑張ろうねっ♪」
「リリアくん喜んでくれるかな」
「だいじょうぶっ、リリくんはきっと喜んでくれるよっ☆」
 なんてったって、特別なカカオで作るチョコなんだもの。
 二人で手を取り顔を見合わせ、にっこり笑い合って協力して森を進んでいく。
 怖い獣がガオーッと出れば、ピリカはお日様色の髪と尾を揺らし、愛刀プリムで一閃。探しものはすこーし苦手だけれど、仲良しの友達が居るから大丈夫。ずんずんずんと斬り進み、緋袴揺らす足運びはとても軽い。
 藍狐は暫く進んではちりんと首の鈴を鳴らす。そうして動物たちを呼び寄せて、情報を集めているのだ。
 葉陰からリスがヒョコリと顔を出し、首を傾げる。まぁるいつぶらな瞳で藍狐を見つめ、手招かれれば器用に枝から枝へと飛び移り、その指先へ。腕を駆け上り、肩口までその小さな身体を寄せた。
 リスの顎をくすぐるように撫ぜながらひとつふたつ言葉を交わせば、耳元に内緒話をするようにリスが顔を寄せ、ふわふわな毛が頬に当たる。くすぐったくて思わず破顔しぱたりと尾も揺らし、小さな声を交わして迷宮の抜け方を聞いた。
「ありがとう、リスくんっ」
 狭い額を指先でちょんちょんと撫でて、前を見る。少しの間リスと話していただけなのに、ピリカの姿がかなり遠く、思わず大きく口を開けてしまう。
「あっ、ピリカちゃんそっちじゃないよ、こっちだよ!」
「えっ」
 ピリカが大きな動作で振り返る。耳はピンと立ち、尾もビョッと毛羽立って。恥ずかしさからか、頬には紅みがさしていた。
 慌ててパタパタと戻ってくるピリカの姿に笑みを零しながら藍狐も駆け寄って、その手に手を伸ばした。女子力(物理)でどんどん突き進みすぎてしまわないように、繋ぎ止めておかなくっちゃ。
「リスくんがね、教えてくれたの。あっちだって」
 ありがとうリスくん。ピリカに声を掛けられたリスがまぁるい瞳をシパシパと瞬かせ、ゆうるり首を傾げた。用は済んだと住処に戻らず、その姿は未だ藍狐の肩の上。
 リス隊員を増やした妖狐森林探索隊。幻のカカオを目指して前進あるのみ!



 樹木につけられたグラフィティスプラッシュの跡に気付き、足を止める。
 リボンを見失ってしまったけれど、この先を誰かが通ったのは間違いない。
 大きく息を吐き、眼鏡の位置を人差し指で直す。
 大丈夫、大丈夫だ。
 己を奮い立たせた影は、森奥へと靴先を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花降・かなた
【f12339 イリヤちゃんと】
さ、行きましょうイリヤちゃん
戦いですって。乙女だって、時には戦うことも必要なのでしょうね

と、いうわけでステシの格好で上手に爆走。
鼻歌交じりに突入するわ。
【サウンド・オブ・パワー】交じり。ごっきげんで戦いの歌を歌いながら急ぐわね。
え?共感できない?
曲はラブリーだけど歌詞が殺伐すぎる?
……ま、まあ、細かいことは気にしなくていいんじゃないかしら。
これでもお姉さんだから。イリアちゃんには気を配るわよ。いつでも危なくなったらサポートできるように動くようにするわ。大丈夫。それなりに知識はあるつもりだもの。罠ははまって踏み倒すのよね。任せて
チョコレート……も、任せて(目が泳ぐ


憩・イリヤ
かなたちゃん(f12235)と

2月の戦いの準備を今からするなんて
乙女はすごいの
頑張ろうね、かなたちゃん!

ふよふよ浮いたまま森の迷宮をわくわく探索
【スカイステッパー】とか使いながら
必要なときはかなたちゃんの手を引いて跳んじゃう
わー、かなたちゃんのお歌かわい、……んんん?(歌詞に首傾げ)

かなたちゃん頼もしい!
(って素直について行って慌てたりするかも)

ね、ね、かなたちゃんはチョコって作れる?
特別なカカオでチョコ作ったら
なにか違うのかな
作れるならイリにも教えて欲しいの!

※アドリブ歓迎



●花降る星
 雨雫が無くとも、傘が揺れる。
 森も迷宮の奥深くには不似合いな傘が、揺れながら木々の合間を進んでいく。
 微かに聞こえる鼻歌に迷宮に住まう動物たちも興味を惹かれて顔を出し、彼女の纏う服装も相まって童話を切り抜いた雰囲気だ。――遠くから眺めていたら、そう思えただろう。
 今が旬と綻ぶ可憐な花のような少女の、薄く色付く花唇から零れ落ちる歌声はとても愛らしい。聞く者の心に花を降らすような、温かさえ覚えさせる。
「かなたちゃんのお歌、可愛い!」
 謳いながら歩む少女――花降・かなた(雨上がりに見た幻・f12235)の周りをふよふよふわりと浮かぶ電子の精霊――憩・イリヤ(キミガタメ・f12339)は素直に賛辞を送る。夜空色の髪を宙に遊ばせて、かなたの歩みを邪魔しない程度にふわふわと浮かびながら彼女の髪に戯れてみたりして。
 しかし、彼女が口ずさむ歌は、何かがおかしかった。
(……んんん?)
 可愛らしい歌声と曲調なはずなのに、何故だか歌詞はとても勇ましい。勇ましいと言うよりも殺伐が過ぎるような気もする。しかし歌っている当の本人たるかなたは機嫌よく謳い、褒められれば満更でもない表情で意気揚々と森を進んでいる。機嫌の良さは傘にも現れ、歌に合わせてくるりくるりと回っていた。
 乙女も時には戦うことが必要なのだ。勇ましい歌こそが相応しいとかなたには思える。何もおかしくはない。細かいことを気にしなくてもいいはずだ。
 罠に嵌っても歌いながら踏み倒して進む。勇ましい歌のパワーは絶大で、そんなかなたを見るイリヤは頼もしさは覚えても不安なんて微塵も感じない。そっと顔を窺い見れば、任せてと言わんばかりの頼もしい微笑みが返ってくる。殺伐とした歌詞もかなたが歌えば可愛いし、イリヤはすぐに気にならなくなりご機嫌に二人で歌ってみたりもした。一緒に歌うと楽しくて、心もふわふわ跳ねるよう。……実際、ふわふわ浮かぶイリヤの姿は跳ねるように飛んでいた。
 この森林迷宮も、終りが近いのだろう。少し跳躍するだけでは登れ無さそうな、起伏のある場所が増えてきた。その度にイリヤは自然な動作でするりとかなたの手を取り、空を蹴って暫しの空の散歩へと誘う。お互いの髪がふわりと後に付き従い、傘を揺らして短い空の旅。
 かなたのスカートのフリルがふわりと広がり、トンときれいに着地をするのを見届けて、イリヤは思いついた事を唇に載せて音にする。
「ね、ね、かなたちゃんはチョコって作れる? 作れるならイリにも教えて欲しいの!」
 かなたちゃんなら、きっと可愛くて美味しくてとっても素敵なチョコが作れそう。しかも使うのは特別なカカオ。イリヤには想像もつかない程、一味違ったチョコになるに違いない。
 素直で真っ直ぐな、尊敬するような瞳をかなたへ向ける。それを正面から見つめたかなたは、キラキラとした輝きが見えるような気がしてウッと鼻白み――そっと視線をイリヤから外した。
「チョコレート……も、任せて」
「本当!? 流石かなたちゃんなの!」
 かなたが逸らした視線の先に、イリヤがふわりと回り込む。嬉しそうにぎゅっと手を握り、一緒に作ろうねと無垢な笑顔を浮かべた。
 逃げる事が出来ないその笑みに、かなたは言葉を詰まらせて、
「ま、まずはカカオを入手することから、よ。さ、行きましょうイリヤちゃん」
「うん! 頑張ろうね、かなたちゃん!」
 素直なイリヤは簡単に話を逸らされ、かなたは密かに息を吐いたのだった。

 胸を満たすのは、わくわくとドキドキ。それから甘いチョコへの思い。
 森の木々を抜けた途端に、甘い香りが鼻孔をくすぐって。
 二人の少女は顔を見合せ、笑顔を浮かべる。
 思わずかなたは駆け出して、イリヤはそんなかなたに付いてふわふわり。
 今この時は、お転婆だなんて気にしない。だって甘い香りが誘うのだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『幻の果実を求めて』

POW   :    人の来ない場所にあるはずだ! 壊せそうな壁を破壊して隠し通路を探す

SPD   :    とにかく足で稼ごう。きっとどこかにあるはず!

WIZ   :    古い文献を調べ、確かな情報を得る

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 深い森を抜けると、そこは壁に覆われた迷宮だった。
 否、正しくは壁ではない。幾重にも重なった幹や蔦で壁のようになっていた。
 樹木で編まれたような迷宮は熱帯を思わせる蒸し暑さで、見上げればバナナ等が成っているのが見える。甘い香りはそこかしこに満ちており、暫く滞在すれば鼻が慣れ気にならなくなるだろうが、それは香りの元を辿る事が難しくなるという事でもある。
 しかし確実に言えるのは、確かに此処に幻のカカオが在るということ。
 そして、大量のカカオが実る場所。そこにオブリビオンが居るということだ。

●眼鏡のアルダワ魔法学園女学生
 幻のカカオの噂を聞いたアタシは今すぐにでも飛び出したい気持ちをグッと押さえた。
 だって、一人で行くにはアタシは非力で。かと言って、誰かに教えて恋敵を増やしたくはない。
 けれどね、神様はアタシを見捨てていなかったの。
 強そうな『転校生』さんたちが迷宮に向かって行ったのを見かけたの。
 勿論、すぐに後をつけたわ。怖い敵も、罠も、きっと何とかしてくれるはずだもの。

 ひらりと揺れるリボンを追いかけて、不思議なペイントを追いかけて、ちょっとのジャンプじゃ越えれない場所だって乗り越えて。アタシ、頑張ったの。
 だからね、こうして今、ここに居れている。
 甘い香りが幻のカカオがあるって告げている。
 アタシ――ユーリィカ、頑張れって、きっとカカオが呼んでいるわ――!
花降・かなた
【f12339 イリヤちゃんと】
それでは引き続き行きましょうか。
幻のカカオ…ねえ。幻というからには、金色に光っていたりなんてするのかしら?
それから…そうよ。いい匂いがするとか!
…ええ。カカオのにおいなんて私も知らなかったわ…。

とかおしゃべりをしながら探します。危険なものがあったときはさりげなくイリヤちゃんの手を引いて回避
手を繋いだらご機嫌になるイリヤちゃんがかわいいので時々感極まってハグする
ユーリィカちゃんがついてきてるのは気付いていても声はかけないけれども危ないことをしているようなら気にはかけておく
二人とも危険があるようなら手助け&かばう
…大丈夫?レディ。

淑女たるもの、常に優雅でいないとね


憩・イリヤ
かなたちゃん(f12235)と
お喋りしながらさくさく散策

幻だもんね
すっごい大きいとかかな?
くんくん……はっ! かなたちゃんたいへん!
甘い香り(バナナ)がいっぱいで……あとイリ、カカオのにおいって知らない!
きっとバナナ以外の「いい匂い」なの!

かなたちゃんに手を繋がれたらご機嫌
るんるん唄っちゃう
必要があればまた【スカイステッパー】で一緒に危険を避けるの

ユーリィカちゃんに気付いたら
かなたちゃんをちらっと見るけど、
内緒ならイリも声は掛けない(そわそわ
でも道は後続の人にも判りやすいように、通りやすいようにしておくし、
危険があればかなたちゃんと一緒に助けます!

※アドリブ歓迎



 森林を抜けたその先も、花降・かなた(雨上がりに見た幻・f12235)の勇ましい歌は続いていた。チラリと視界の端に偶に見えるアルダワ魔法学園の制服に気付いてはいたけれど、声を掛ける事はしなかった。彼女は彼女なりに自分の力でカカオを得たいのだろうと思ったから。
(私はいつだって乙女の味方だもの。頑張って――)
 勿論危険が迫れば助けよう。そっと背後を気にかけつつ、心の中でエールを送る。
 離れて付いて来る人物は、かなた達が軽く飛び越えた場所も危なっかしく蹌踉けたり、何もないところで転んだりしていた。
 何度もそんな事をしていれば、かなたの横に浮かんでるんるん気分で歌を歌っていた憩・イリヤ(キミガタメ・f12339)の視界にだって入る。
(――あっ!)
 気付いたイリヤが、思わずかなたを見る。
 開いた唇から音が溢れ落ちなかったのは、イリヤの唇にかなたの人差し指が触れたから。
 かなたの意図を汲み取ったイリヤは、しっかりとかなたの瞳を見てこくこくと何度も頷いた。尊敬と同意を篭めたキラキラの瞳を大きく見開いて。
(かなたちゃん、気付いてたんだ! やっぱりかなたちゃんはすごいの。内緒ならイリも声は掛けない!)
 けどっけどっ!
 気になってしまうのは止められない。不自然にならないように後ろを確認したくい。けれど、自然にと心がけるが故に不自然になってしまいそうで。そわそわ、落ち着かない。そわそわ、落ち着くことなんて出来ない。
「イリヤちゃん、ちゃんと前を見ないと危ないわ」
 前方への意識が疎かになっていたイリヤの手をかなたがさり気なく引き、頭上から垂れていた蔓を回避させる。
「あっ、ありがとう、かなたちゃん!」
「あら。何のことかしら、イリヤちゃん」
 気にしないでと微笑みを向け、握った手はそのままに。
 歌を歌って、足取り軽く。
 空を蹴って、抱きついて。
 そのままくるりと回れば、ダンスのよう。
 かなたとイリヤ、仲良しの二人の前に障害なんて無いようなもの。
「幻のカカオ……ねえ」
 金色に光っていたりなんてするのかしら。なんてかなたが想像すれば、イリヤの明るい声が応じる。
「幻だもんね。すっごい大きいとかかな?」
「大きさは確か普通のカカオくらいって言っていたわ。それから……そうよ。いい匂いがするとか!」
 それを聞いて、イリヤは辺りの匂いを嗅ごうと顔を動かす。くんくんくん。辺りにはバナナの美味しそうな香りが満ちている。
 そしてイリヤは大事な事に気がついた。
「……はっ! かなたちゃんたいへん!」
「どうしたの、イリヤちゃん!」
「甘い香りがいっぱいでわからないかも! ……あとイリ、カカオのにおいって知らない!」
「……ええ。カカオのにおいなんて私も知らなかったわ……」
 すわ敵かと身構え掛けたかなたは、肩から力を抜いて笑う。
「えっ、かなたちゃん何で笑うの? ねえ、かなたちゃ……あっ! かなたちゃんっかなたちゃんっ!」
 慌てた様子でアレ! アレ! と指差す先には、ラグビーボールのような果実がひとつ。
 電子の精霊たちは顔を見合わせると、両の手を取り合って身の内から湧き出る喜びのまま何度か跳ねる。そして、抱き合って喜びを分かちあったのだった。

 猟兵たちを送り出したグリモア猟兵は『甘すぎる香り』と言っていた。
 つまり、群生している場所がどこかにあるはずだ。
 ひとつ見つけたのだから、必ず群生地はある。
 そしてそこには――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アンナマリー・ロゼルフィ
【WIZ】【絡み大歓迎】
こう言った事は事前に古い文献を調べてゲットですわ!(握りこぶし)
と言っても乙女の日、だなんて…わたくしめ、チョコは誰にも渡した事がありませんの。
だって…お世話係に『お嬢様の料理は死に直結しかねない』だなんて言われたら
やる気もなくなりましょう?
出来ない事は出来ないなりに、得意な者にさせておけば良いのですわ!
その代わり…わたくしめはチョコレートを食べる側、ですけれど、ね!ふふ!

わたくしめがこのお仕事を引き受けたのは単に興味ですの。
恋する乙女とはどんなものなのか…わたくしめ、そちらが気になりまして。
いろんな方のお話をお聞きしたいのですの。
要するに…わたくしめに惚気けなさい!!



●恋とは
 金髪の令嬢アンナマリー・ロゼルフィ(強かな歌謡い・f12868)は事前に古い文献を入手し、調べてから迷宮へ足を踏み入れていた。
 彼女とて、年頃の乙女。そういった風習等を聞けば興味を持つ。可愛らしいチョコレート菓子を作って意中の相手へ贈るなど、一度はやってみたいものだ。しかし、お世話係の言葉でやる気を失ってしまったのだ。
『お嬢様の料理は死に直結しかねません』
 何度思い出してもひどい言葉だ。扇子を手にしていたならば、ギリギリと握りしめていたかも知れない。
(出来ない事は出来ないなりに、得意な者にさせておけば良いのですわ!)
 人には得手不得手がある。料理が不得手な自分が作るよりも、ショコラティエが作った甘美なチョコの味をアンナマリーは知っている。舌触りは滑らかで、上品に溶けゆくチョコレート。そのチョコレートを幻のカカオで作ったらどうなることだろう。
 うっとりとチョコレートへ思いを馳せ、ふふっと小さく笑みを漏らす。
 そんなアンナマリーの背後でガサリと不届きな音がした。
「そこのあなた!」
 突然後ろを振り向いたアンナマリーがズビシと指をさす。こっそりと隠れながら付いてきていた少女――ユーリィカは飛び跳ねんばかりに驚いて、慌てて身を隠すが既に見つかっている身。アンナマリーが近付いてくる気配に身を小さくすることしか出来ない。
「あなた、あなたよ。あなたが居ることには気付いておりましたのよ」
「えっ」
「あなた、恋をしているのでしょう? わたくしめはその気持ちと言うものにとても興味がありますの」
 この仕事を引き受けたのは、単純に興味があっただけだ。幻の果実で作るチョコレートにも興味はあるが、アンナマリーは恋する乙女の気持ちが知りたくて自ら足を運んだのだ。
 嗚呼、恋とはどんなものなのかしら!
「さあ、存分にわたくしめに惚気けなさい!!」
「ええっ! アタ、アタシ!?」
「あなた以外に誰が居ると言うの? さあ、さあ。わたくしめに惚気けてみせなさい!」
「え、えっと、その、あのっ! ごめっ、ごめんなさいっ」
 アンナマリーの迫力に負けたユーリィカは涙目になり、駆け出してしまう。
「あっ、こら、待ちなさーい!」
「ごめんなさーーーい!」

 二人の捕物劇は、暫く続くこととなる。

成功 🔵​🔵​🔴​

ホーラ・フギト
(森林迷宮で、木々の合間に見えた気がする制服を思い出して)
……んー、ちょっと急ぎましょうか

【ガジェットショータイム】で携帯型匂い探知機を召喚
これは私の知る香りのデータに基づいて、辺りの香りを探知するの
『料理』したことあるメニューや材料に近い香りなら、芳香の強さも含めセンサーに引っかかるはず
幻とはいえカカオはカカオだもの。カカオのデータに接続して、っと(カチャカチャ操作)
香りが強いなら引っかかるでしょうけど……機械に拘り過ぎず、探知できなかったら足で稼ぐわ!
ああ、ホットチョコが飲みたくなってきちゃった!
チョコをお酒のおつまみにするのも合うのよねえ

一緒に動ける猟兵さんがいらしたら、声をかけるわね


アイシャ・ストリングウッド
あらあらこれは熱帯の果実は甘~い香りのいたしマスコト!
これは勘だけでは到底辿り着けそうにはアリマセンね~

こんな時は事前準備がモノをいうというものデスワ
ワタクシ事前に調べておいた文献の知識や、やーっと協力的になってくださった現地精霊の力をフル動員させていただきたいと思いマス!
現地の精霊の方にはカカオよりもさいきんあらわれたであろう不思議な生物(オブリビオン)のことを聞いた方が情報がえられるかもしれませんワネ

それにしてもなにやら後ろから女生徒のついてきている気配……これは……さっそくワタクシのファンができてしまいマシタね!?期待どうりの展開デスワ!



●香りを追って
 森林迷宮を抜けたホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)は、手分けをして探しましょうと協力した猟兵と別れ、バナナの実揺れる迷宮を一人で進んでいた。
(……んー、ちょっと急ぎましょうか)
 森林迷宮で木々の合間に制服が見えた気がすることを思い出し、後ろを少し気に掛ける。振り向いて誰も付いてきていない事を確認しても矢張り心の隅に引っかかるものがあり、先を急ぐことにした。
 ホーラはガジェットショータイムを使用し、携帯型匂い探知機を喚び出す。これはホーラの知る香りのデータに基づいて辺りの香りを探知する機械だ。
「カカオのデータに接続して、っと」
 機械をカチャカチャと操作して暫く、ホーラはひとつの事実に気がつくこととなる。
 実は、カカオと呼ばれるものに匂いはほぼ無い。カカオの実から取り出したカカオパルプと呼ばれる果肉の中の種を発酵させ乾燥させ焙煎することで、チョコレートの豊かな甘い香りが生まれるのだ。
「カカオの香りでは引っかからないのね……」
 そういえば、『甘い香り』がするとは聞いていたけれど、『チョコの香り』とは言っていなかった気もする。
 探知出来ないのならば仕方がない。ホーラは気持ちを切り替えると、足で稼ぐべく元気に一歩を踏み出した。

 アイシャ・ストリングウッド(何もしてないのに通報される・f12485)は果実の甘い香りを胸いっぱいに吸い込み、ほうっと息を吐く。現地の精霊の説得に時間は掛かったが、彼らも何とか積極的になってくれた。たまにうさんくさそうな視線を送られている気がするが、それは気の所為だと思うことにしている。
 熱帯の果実の甘い香りを吸い込みながら、予め調べておいた文献の知識を思い出す。
 色んな種類がある幻の果実。その中から幻のカカオの情報を確りと掴んだアイシャは、そこに記載されていた香りの種類も当然知っていた。
(文献によると『甘い香り』はチョコの匂いではなく……)
 もう一度、甘い香りを吸い込む。漂う香りはバナナのものが多いが、その中に違う香りが混ざっている。バナナでもなく、チョコでもなく……それは、バニラのような香り。
 顔を動かして方角を確かめ、精霊たちにも確認を取る。間違いないようだ。
 しかし、アイシャは歩を進めるよりも気になることがあった。
(なにやら後ろから女生徒のついてきている気配……これは……さっそくワタクシのファンができてしまいマシタね!? 期待どうりの展開デスワ!)
 人の気配に、胸に晴れやかな気持ちが舞い降りる。来る日のチョコレートへの期待も一層増すというもの。
 決して相手に驚かれる事のないように、そしてファンが一層自分に憧れてくれるように、優雅さと紳士さを心掛けて振り返らねばならない。
 そうして、細心の注意を胸にアイシャは振り返った。

 頭上のバナナに視線を送りながら進むホーラの視界に、緑色と黄色以外の色が入り込んだ。
 木々の向こうに見える色は、目にも鮮やかなピンク色。
 同胞に違いないと近付き、声を掛けようとしたその時――
「……!」
「……!?」
 突然眼の前のピンク色が振り返った為、目を丸くするホーラ。
 女生徒が来ていると思っていた為、息を飲んで驚くアイシャ。
 暫くの間沈黙が場を支配し、先に口を開いたのはホーラだった。
「……あの。猟兵の方、よね? 良かったら」
「ハイ! ハイッ! ワタクシ猟兵な上に、とーっても頼りになる紳士でゴザイマス! 先程現地の精霊に最近この地に現れたオブリビオンの話も聞きましたし、その上事前調査もバッチリでゴザイマスので頼りに頼って男らしいと思ってくださっても大丈夫でゴザイマスよ!」
「そ、そう。よろしくね」
「ハイッ!」
 協力の申し出をみなまで言う前にアイシャがすごい勢いで捲したてた為、ホーラは少し押され気味になる。
(でも、悪い人ではなさそう、ね)
 よろしくと向けられた微笑みにアイシャは俄然やる気を出して「こちらデスよ!」と先導して歩き出し、ホーラもその後へ続く。
 道中では勿論、文献で得た知識を語り『頼りになる男』アピールも忘れないアイシャであったが、人間の行動を学習中のホーラは精霊たちのような視線を向けることも無く笑顔で彼の会話に耳を傾けたのだった。


●幻のカカオの園
 一際強く香る甘い香りを追いかけた先。
 そこは、ラグビーボールのような果実がたくさん生る果実園のような場所だった。広さはそこそこ広く、広場と感じられる程度はある。バナナも生えてはいるが、それよりもカカオのほうが多くあるように感じられた。
 重たそうな果実が生る様は少し不思議に思え、猟兵たちもつい見上げてしまう。
 しかし、気を抜くことは出来ない。予知通りならば、オブリビオンがいることだろう。
 猟兵たちは各自注意を促し合いながら、辺りの様子を窺った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怨霊魔導士』

POW   :    死霊兵団
【骸の海に揺蕩う罪人達】の霊を召喚する。これは【血に濡れた近接武器】や【血に汚れた遠距離武器】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    死霊の嘆き
レベル×1個の【呻き声をあげる人魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    死霊の誘い
【昏い視線】を向けた対象に、【忌まわしい幻影と心を抉る言葉】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●恋した乙女
 アタシは『転校生』さんたちが集まっているのが見えて思わず駆け出す。
 そこそこ広いスペースに、たくさんのカカオの実。
 甘い香りは調べた文献通りだし、これは間違いなく幻の果実だわ!
 その場に足を踏み入れたアタシの後ろに何か気配を感じたけれど、きっと後から来た転校生さん。ただ、突然現れたような感じがしたけれど、戦いはあまり得意ではないアタシの勘は当てにならない。だから特に気にしなかった。
 ――――? どうしたの、転校生さんたち。
 その場に居た皆が、一斉にアタシを見ている。
 アタシを……と言うよりも、アタシの後ろ? 何か、居るの?
 アタシは皆の視線を追って、振り返ろうとし――出来なかった。

 誰かが、『逃げろ』って言った気がする。
 けれどアタシは、動くことが出来ない。
 手も足も重たくって水の中に沈んでるみたいだし、頭も靄が掛かったみたいにボーッとしている。
 おかしい、な。アタシはただ振り返ろうとしただけなのに。

 あのね、声が聞こえるの。
『お前の想いが実ることはない』
 そんなのまだ、解らないのに。
『あの者はお前以外を見ている』
 アタシは確認していないのに。
『お前の想いを受け取ることすらしないだろう』
 そんなの、やってみないと解らない。
 けど、そうなのかも。こんなことしたって何にもならないのかもしれない。
 身の程を知れって笑われちゃうだけかも。
 どうしよう、アタシ。チョコ、作っても、いい、のかな…………。

●暗い炎
 アルダワ魔法学園の制服を来た少女の真後ろに、突如として魔導士が現れた。
「――逃げろ!」
 気付いた猟兵が、叫ぶ。
 けれど、驚いたように目を見開いた少女の瞳はゆっくりと半眼になり、その身は魔導士の腕の中。

 少女の胸の上に火が灯る。
 暗い、暗い、暗い炎。
 焦りと嫉妬と嘆きで、ゆらり。炎が揺れる。
 魔導士の、大好きな色だ。
海月・びいどろ
恋とは、特別とは、なんだろう…
こころが跳ねたりするものなのかな
あの暗い炎は、どんな名前をしているのだろう

たくさんの海月の機械兵士たちを喚び出して、フェイントを仕掛けるよ
あの女の子を引き離さないといけないもの
怪我をさせないように、海月たちが引きつけている内に
ボクが迷彩をまとって、慎重に連れ出してみる

連れ出せなければ、かばいながら攻撃しよう
魔導士には、とびきりの毒をあげる
海月の針はビリビリするから、マヒで動きを鈍くしてくれると良いけれど

乙女のこころは、ボクには解らない
だけど、魔導士にだって、分からないことでしょう?

だいすきなヒトのきもちも、彼女自身のことも
勝手なことを言わせては、いけないと思うんだ


尭海・有珠
【WIZ】

どうせなら特別なカカオっての拝んでみたいって気持ちで来たんだが
心躍らせてる子に何してるんだ

踏み込み時は相手の注意の向け先と【第六感】でもって判断
他に女生徒を取り返そうって奴がいるなら
注意を引いてやるのに魔法を一発、頭辺りを狙ってキメてやろう
助け出すなら敵の元に踏み込み
「返して貰おうじゃないか。お前の玩具ではないだろう」
取り返したら【属性攻撃】で威力を微増した『氷棘の戯』を【高速詠唱】で発動
目眩ましも兼ね、至近距離からやはり頭部目掛けて撃ってやろう

「そうだよ、やってみなきゃ分かんないもんさ」
許可なんていらないんだ、作りたいって思ったんなら作ると良い
まだ、なーんにも始まってないんだからな



●ゆらり、揺れて
 恋とは、特別とは、なんだろう……。
 たくさんの海月の機械兵士たちを喚び出した海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)は、ジッと怨霊魔導士とその腕に抱かれた少女を見つめる。
 電子のこどもには、未だこころが解らない。恋も特別も、今まで与えられてきた情報にはなかった。ゼリーのようなふたごの海月人形の片割れを懐き、感情の動きが現れない表情のまま、ぱちりと瞬く。
(こころが跳ねたりするものなのかな)
 行って。声も無く前方へ向けた手の動きだけで海月の機械兵士たちを怨霊魔導士へ向かわせる。
 ゆらりゆらり、波間を漂うように海月たちが空を泳ぐ。
 びいどろへと視線を向けた怨霊魔導士が口を開き、呪詛を発するひと呼吸前、何かが魔導士の顔近くを通り過ぎた。
「こっちだ」
 怨霊魔導士が視線を向ければ、そこには黒髪を遊ばせた少女が手を突き出していた。当てることは叶わなかったが、意識を向ける事に成功した黒髪の少女――尭海・有珠(殲蒼・f06286)は深い海を思わせる瞳を酷薄そうな笑みの形に歪めて嗤う。
「心躍らせてる子に何してるんだ」
 特別なカカオを拝みに来た有珠だが、眼の前で踏みにじられる想いを捨て置く道理もない。不機嫌さを隠さずに、硬質で冷たい声を迷宮に響かせた。
 有珠が怨霊魔導士の注意を引いている隙に、びいどろは迷彩を纏う。
 電子の精霊たるびいどろは、音も無く動いた。狙いは怨霊魔導士の腕の中。暗い炎を灯す少女を救い出すために。
 その行動と一緒に、海月の機械兵士たちは有珠の反対側、死角から怨霊魔術師へと襲いかかる。怨霊魔術師の腕の中の少女を傷つけぬよう触れるか触れないかで離れ、怨霊魔術師にも触れられぬよう注意して。ゆらり、ふわり。
 有珠もまた、びいどろの意図を察して動く。
「返して貰おうじゃないか。お前の玩具ではないだろう」
 一息に敵前へ詰め、圧縮した朱色の水の矢――«氷棘の戯»を間近で放つ。
 近距離で展開された矢は、正しく雨のように怨霊魔術師へと降り注ぐ。怨霊魔術師の方が格上であろうとも、全てを防ぎ切ることは不可能だ。
「――ぐ、」
 長いローブの裾を翻し、怨霊魔導士が額を押さえ蹌踉めいた。
 支えを失った少女――ユーリィカが倒れる。が、地に伏すことは無かった。びいどろの腕が彼女を抱え、そして海月たちに攻撃させながら怨霊魔導士から距離を取る。
 有珠はそんな二人と怨霊魔導士の間に割り入り、二人を庇った。その暗い視線さえも、二人に届かせはしない。強い意思を宿した海色が鋭く睨みつける。
「愚かなことだ。その娘の想いが叶うことは無い」
 まるで全てを知っている賢者のように、怨霊魔導士が重たげに口を開く。
 言葉に色がついて見えたとしたら、その言葉は闇の色。暗い炎に塗れ、心を閉ざさせる呪詛。
「――乙女のこころは、ボクには解らない」
 だってボクは彼女じゃないから。
 そしてそれは、怨霊魔導士にだって言えること。魔導士にだって、分からないことでしょう?
 ユーリィカを守るように腕に抱いたびいどろは、彼女の耳を両手でそっと塞ぐ。これ以上心無い言葉を聞かせぬように。
(あなたのこころは、ボクが守るよ)
「大好きなヒトの気持ちも、まだ分からない。まだ、何もしていないのだから」
「そうだよ、やってみなきゃ分かんないもんさ」
 想いを伝えるのに許可などいらない。やってみればいいと口にしたのは有珠。
「行わずとも結果は見えている。無駄なことだ」
「それを断じるのはお前じゃないさ」
 吐き捨てるように口にし、有珠は再度«氷棘の戯»を放った。


 暖かくてふわふわな、何かに守られている。
 剥き出しの心を映したような炎が、ゆらり、揺れて。
 瞳を閉ざしたままのユーリィカの頬に、一筋涙が溢れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルヴィ・アウレアム
人の恋路を邪魔するなんて無粋もええところやねぇ。
たとえ叶わぬ恋やとしても、何もかんも実らぬまま潰えるとしても、それでも恋に恋するんが乙女ってもんやろ!

・行動
【ミレナリオ・リフレクション】を用いて【死霊の誘い】によるダメージを無力化。強引に近接戦に持ち込み、平手で思い切り顔をしばき倒す。


アドリブ・共闘歓迎


クロト・ラトキエ
「結果は見えている、ですか?それは凄い。まるでカミサマの様だ」
「――いえ」
「口を開けば否定ばかり、救済も無い……そんなカミサマ居ませんよねぇ」
「ならばその言葉、何の根拠もありはしませんね」

朗らかしつつ、妄言は斬り捨てる気満々に。
少女へは意識行かせぬ様。
言葉の合間にも、敵の攻撃は見切り対応気をつけて、
UCトリニティ・エンハンスで攻撃力強化した鋼糸で攻撃を。
ただ決定打に欠ける様なら、他のお仲間を背に隠したりしてフェイント狙い、
とびきりの一打をお見舞い頂こうかと。

チョコを作っていいかって?
いいに決まってるじゃありませんか。
「渡したい彼はイイ男?」
「なら、寄せられた想いを無碍にはしないってもんです♪」


アレクシア・アークライト
行わずとも結果は見えている、無駄なことだ……ね。
それは貴方の経験談? それをこじらせて骸骨になってまで恨み辛みを集めているのかしら?

じゃ、私からも一つ。
私達が来た以上、貴方の野望が叶うことはない。行わなくても結果は見えているわ、無駄なことよ。

やってみなければ分からん……なんて、まさか言わないわよね?

・初めは離れて念動力で攻撃。

こっちの攻撃は見えも聞こえもしないわよ?

・死霊兵団の遠距離武器は、念動力で向きを反転させる、又は力場で防御。
・相手が弱ったら背後に転移し、力場を纏った脚で死角から全力攻撃。

人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ、ってね。
……あ、私が馬って意味じゃないわよ?



●凶炎消ゆ
 セルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)は前方の怨霊魔導士を睨んでから、同胞の腕に抱かれたアルダワ魔法学園の女生徒――ユーリィカをチラリと見、拳を打ち鳴らした。
「人の恋路を邪魔するなんて無粋もええところやねぇ」
 この少女が何をしただろうか。
 まだ何も為しておらず、まだ何も成せていない。
 なのに、眼前のローブを翻す骸骨は否定をしようというのだ。
「アンタみたいなんはウチがしばいたらなかん」
「小娘が。口だけは威勢が良いようだな」
 怨霊魔導士の空虚な眼窩の奥、仄暗い炎が灯る。
 セルヴィは強い意志を湛えた瞳で真っ直ぐに見据え、対抗すべく《ミレナリオ・リフレクション》を発動させる。だが――。
(――ア)
 心の奥底を覗き込まれるような感覚に、セルヴィの背が強張った。
 怨霊魔導士はこの場で沢山の少女たちの魂を呪いと嘆きへ落としてきた者。易く打ち勝てる相手ではない。
「結果は見えている、ですか?」
 長身の男がセルヴィの前に出る。怨霊魔導士の視線から隠すように少女の前に立ったクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、怨霊魔導士を眼前にしても穏やかな声で言の葉を紡いだ。
 為してもいない事の結果など見えるはずがない。もし見えているとしたら、それは神にだけ。
 カミサマの様だと穏やかな物腰のまま笑えば、怨霊魔導士の眼窩の奥で炎が揺れて。
「――いえ。口を開けば否定ばかり、救済も無い……そんなカミサマ居ませんよねぇ」
 同列に並べてはカミサマに失礼ですよね。男が嗤う。
 朗らかな笑顔で、形だけの柔らかな声で。
 言葉の中に暗器を仕込んで。
「ならば彼女を否定した言葉に何の根拠もありはしませんね」
 薄く笑みながら、指で眼鏡を押し上げ位置を正す。
 何気ない、その仕草。
 眼鏡に何かが反射して、キラリと光った。
「――何!?」
 思わず、怨霊魔導士は声を上げる。いつの間に忍ばせたのか、強化した鋼の糸が怨霊魔導士の身を縛っていた。
 その身を断ち切る事は叶わなかったが、至る所を切り刻まれた怨霊魔導士の眼窩の奥の炎が、また、揺れた。
「さっきの貴方の言葉、あれは貴方の経験談?」
「ぐ――――!?」
「それをこじらせて骸骨になってまで恨み辛みを集めているのかしら?」
 言葉と同時に見えない攻撃を受け、怨霊魔導士が僅かに怯んだ。
 アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)が放った見えざる力が、音も無く怨霊魔導士を襲う。
「小癪な――」
 猟兵たちと距離を取った怨霊魔導士は大きく手を振るう。その手から赤紫の軌跡を描いた炎から喚び出されるのは、死霊たち。血に塗れた武器を掲げると、心を深淵に引きずり込むような獰猛な声を上げ、猟兵たちへと襲いかかった。
 ――しかし、その動きはピタリと止まる。
 死霊兵団たちは、鋼糸でその身を封じられていた。
 鋼糸の先――長身のクロトの背後から、褐色の少女が飛び出す。
 願ったとしても、望んだとしても、行動に移せたとしても、全ての恋が叶う訳ではない。
 叶わない恋も、何も実らず潰れて消えてしまうことだってある。
 それでも。
「――恋に恋するんが乙女ってもんやろ!」
 これはさっきのお返しや!
 甲高い乾いた音を立て、盛大に平手打ちが炸裂した。
 その一瞬の隙に、アレクシアの姿が怨霊魔導士の眼前から絶ち消える。
 背後に瞬間移動したアレクシアを認識するよりも早く、背後の死角から力場を纏った強烈な蹴撃が叩き込まれ、その身は呆気なく吹き飛ばされ――それを追うのは、光の反射で見えた鋼の糸。
 するりと怨霊魔術師の首へ巻き付いた鋼糸が、胴と頭部を別れさせる。
 ――カラン。
 転がった伽藍の眼窩に炎を灯したままの頭部は、最後に邪悪な笑みを零し。
 さらりと砂になって消えた。

 ――そして。
 ユーリィカの胸の、暗い炎が消えた。


●雫落ちて心晴れる
 怨霊魔導士の消滅を確認し、びいどろは腕に抱いていたユーリィカを地面へ横たえる。
「その子、大丈夫?」
「……うん、たぶん」
 案じた猟兵たちが様子を見に近寄る中、有珠は彼女の眼鏡を退けると、真白のハンカチでそっと少女の頬を撫でた。戦いの最中にユーリィカが零した心の血は吸い込まれ、真白に淡く染みを残すのみ。
 その場に集った猟兵たちが見守り、暫くの間を置いて少女の目が開く。
 榛色の瞳はぼんやりとした色を宿し、不思議そうに自分を覗いてくる猟兵たちの顔を見上げ――。
 ふいに、その瞳が揺らいだ。
「……ごめ、なさ……アタシ……っ」
 新しく涙をポロポロと零し、泣き顔を見せまいと両腕で顔を隠す。
 ハンカチを渡され消え入りそうな声で謝りながら受け取った少女が落ち着くのを待ってから、アレクシアが気遣う声を掛ければ大丈夫だと頷きが返った。
「渡したい彼はイイ男?」
 アレクシアに手を借りながら身体を起こしたユーリィカが、迷うような視線でクロトを見上げる。
 クロトの柔らかな表情に少しだけ瞳を揺らし、こくり。確かにしっかりと頷いた。
「なら、寄せられた想いを無碍にはしないってもんです♪」
 少女の見開かれた瞳に、新しく涙が浮かぶ。
 アッと慌てそうになったクロトだが、ユーリィカの口元が綻んでいる事に気付き胸を撫で下ろす。
 浮かべた涙は、猟兵たちの優しさからきたものだ。
「本当にご迷惑をお掛けして、ごめ……」
「ウチらはもっと別の言葉が聞きたいんやけどなぁ」
 遮ったセルヴィの言葉に、周りの猟兵たちも同意を示して頷く。
 周りを見渡した少女は指先で涙を払い、
「あり、がと……『転校生』さんたち」
 ふわり。
 花が綻ぶように微笑んだ。
 ソバカスの浮かぶその顔は、恋する乙女の顔へと戻っていた。

 こうしてアルダワ魔法学園の女生徒ユーリィカは望み通り幻の果実を得、探索に来た猟兵たちと共に帰路に着くことになる。
 猟兵たちとの安全な帰り道。その道中で少女と猟兵たちはたくさん会話をした。
 恋とは何か。
 どうしてその想いを抱いたのか。
 彼はどんな人なのか。
 どんな所が好きなのか。
 引っ切り無しに飛ぶ問いに、少女は顔を赤らめ、けれど真剣な気持ちで応じたのだった。
 両腕いっぱいに恋する乙女のための果実を抱えて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月18日


挿絵イラスト