アルダワ魔王戦争4-D〜彼女はひ弱な天才マッド~
●彼女はエミリ・クワイアット。
「……キヒヒっ」
アルダワ学園、蒸気煙る小さな女子学生寮に敷地内でも一、二を争う程に乱雑な一室がある。
「ファーストダンジョン……ダークゾーン……無限……大魔王……アウルム・アンティーカ……レオ・レガリス……セレブラム・オルクス……キヒヒっ……たまんねーな、おい!」
その部屋の主はエミリ・クワイアット。
蒸気機械と魔法こそが本意といえる学園に籍を置きながら、それらを扱う才能に毛ほども恵まれない【劣等生】であった。その彼女が今、大きな鞄に適当に荷物を放り込んでいる。……非効率的な荷造りに、鞄が今にもはち切れそう。
「極めつけに迷宮大図書館!と来たもんだ!……キヒヒっ……こうしちゃいらんねーよなあ?」
その立場と何より人を寄せ付けぬ奇橋な性格から全く評価されていないが、彼女には天性の調査研究の才能がある。
(興味がそそられればという条件付きとはいえ)洞察力、記憶力、集中力、精神力、そして今までの調査研究培った経験値。どれをとっても超人的である。熱意を持った超人的変人であった。
惜しむらくは彼女自身が周りの評価などに一切の興味がない変人であること。彼女は嬉々として、大きな鞄を貧弱な体で引き摺るように迷宮大図書館赴き――
――故に、エミリ・クワイアットは、迷宮大図書館に死す。
●行こうぜ迷宮大図書館
「どもっす!猟兵殿達、いらっしゃいっす!心踊るフレーズだと思わないっすか迷宮大図書館!」
グリモアベースにて猟兵達を出迎えるモルツクルス・ゼーレヴェックスはいつにも増して五月蝿い。そして物理的に背中の羽で飛んでいる。
「自分も行きたい……というのはさておきまして、今回皆さんにお願いしたいのは調査と……お守りっす」
こちらをご覧ください、と差し出されたのはエミリ・クワイアットという女子生徒の資料である。成績はほとんど全てが壊滅的で出席率も悪い劣等生。
添付された写真には目付きが悪く、猫背で、貧乳で小柄で痩せて、ボサボサの髪を後ろで括っている眼鏡の女子が写っている。
ちゃんとすればそこそこ可愛いような印象は受けなくもない。
「えー……ぶっちゃけっすね、彼女のサポートしてくれれば調査任務は上手くいくんすよ。彼女は実はそういうのの天才にして秀才なんす。……ただ」
……ただ?
「このまま彼女に一人で作業させてたらあまりの熱意に休み無く研究しまくって過労で死ぬっす」
……過労。
「やり方は任せるっすけど要は彼女の負担を軽くしてほしいんすよね。調査研究に協力するんでもいいでしょうし、ご飯や栄養ドリンク提供するのもいいでしょう。本の整理とか運搬とか雑用も必要でしょうし、何もない図書館の泊まり込み生活を豊かにしてあげるのもグルービーっすよね」
そこは皆さんの経験を活かしてほしいっす、とモルツクルスは笑顔で。
「殴り合いばかりが闘い方じゃあないっすよね。ここは一つ知恵と気遣いの力ってやつをみせてやりましょう」
影帽子
はじめまして、こんにちは、こんばんわ、おはようございます。影帽子と申します。
行こうぜ迷宮大図書館。口に出して読みたい迷宮大図書館。
というわけで調査に見せかけた社会不適合者介護シナリオになります。彼女に優しくしてくれれば大体が上手くいくのは明言しておきます。
そんな貧弱女には付き合いきれねーぜという方も歓迎致します。本来、図書館は一人で静かに豊かに楽しむものですからね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。よろしければばご参加のほどをよろしくお願い致します。
第1章 冒険
『迷宮大図書館の大探索』
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POW : 教職員や生徒を護衛したり、重い本を運んだりして手伝う
SPD : 広大な図書館をかけめぐって、必要そうな資料を集めるのを手伝う
WIZ : 専門家では無い視点からの意見を出すなどして、教職員や生徒の調査に協力する
👑5
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エミリが迷宮大図書館に辿り着くと、先ずしたことは荷物を放り出すことだった。
次に無限にあると思われる書架の中でも手近なモノに取りつくと、一冊につき10秒のペースで捲っていく。
矮躯で届く範囲のものを読み尽くすと場所を移し、また読み始める。……何時までだって続けるのだろう。それこそぶっ倒れるまで。
鈴木・志乃
※UC発動第三人格『ツナギ』に移行
……なるほど(内容を聞いて一人頷く)
なかなか厄介そうだね、さて僕の出来ることは
【情報収集、学習力、第六感、見切り】
軽く挨拶して調査研究に協力しようか
あまりこの世界に精通してはいないけれど、一応情報収集力と学習力はそこそこある筈だから手伝ってあげられると思う
推論の話相手になってもいいしね(なれるか分からないが)
後は彼女の生活環境や調査方法を見て生活指導をしよう
必要な栄養素を導き出したり
軽いストレッチを提案
枕も君の体に合ってない、作り変えようか
せっかくの大切な才能だ、もう少し大事にしてほしいけれど
それは余計なお節介だろう
君の調査に僕も興味がある
是非聞かせて欲しい
ファルシェ・ユヴェール
天才肌の人は、何故か生活力皆無な事が多いのは気のせいでしょうか…
しかしエミリさんのフォローをすれば確実となれば
最善を尽くしましょう
過労死する程までに熱中してしまうなら
中断して休憩を取らせるのは難しいでしょうし
食事は片手で口に運べるサンドイッチと
それから緊急用の糖分補給にラムネ
後は上手いこと仮眠させるには……と
そうだ、エミリさん
貴女にこれをお貸ししましょう、と
導き手、アイオライトをUCで小鳥に変えて差し出します
貴女の求める書物の内容を告げて目を綴じれば
この子がその在り処を見つけてきてくれる魔法の小鳥です
この場で資料を分別しつつ
小鳥を飛ばして探すのは私の仕事になる訳ですけれど
まあ、頑張りましょうか
月凪・ハルマ
いやまぁ、天才には変わり者が多いとはよく聞くけど
……これまた随分と個性的な方デスネ
(精一杯のオブラート表現)
◆WIZ
まぁ、予知を聞いちゃったしな。サポート頑張ってみるか
(【優しさ】)
という訳で、どーもこんにちはエミリさん
お手伝いに来ましたよ、と
一人でやるより人手が多い方が効率良いでしょ?
で、俺自身は自身の速さを活かして彼女が必要とする
資料を探し出して届ける事にしよう
(【早業】【見切り】【情報収集】)
あと、彼女の健康状態もだいぶ心配なんだよな……
様子を見てヤバそうだったら【医術】的見地からも休憩を進言
まともに聞いてくれない場合は【目立たない】様に
【心身解放蒸気】を発動して強制的に眠らせちゃうか
ヴィクトリカ・ライブラリア
気持ちは痛いほどわかる!
大好きな分野のまだ見ぬ資料が目の前にあるなら寝食を惜しんで読み漁りたくなるわよね!!
でもわたしは人を助けるための人工司書。こういう狂気に耐性もあるし、人が死ぬなら心を鬼にして彼女を制止するわ。
アポカリプスヘルで培ったサバイバル経験の見せ所ね!
ほら10秒本閉じて! はい高カロリークッキー齧る! お茶! 流し込んだ? はい読書再開!!
もう夜ね! はい寝袋入る! 明かり置いとくけど早く寝るのよ! 温かいアイマスク用意しておくわね!
……一分一秒が惜しい? わかるわよ!!
でもここで寿命すり減らすより生還してまた今度ゆっくり研究に来ればいいじゃない!!
わかったら休みなさい!
月宮・ユイ
なるほど…
…特化型の才をお持ちなのですね
過労死する程の集中力とはまた凄くはありますが、
放っては置けませんか
どうせ止められないのなら、思いきり研究に没頭出来る様
全面的にサポート<奉仕>するつもりで挑みます
[アバター]達も動員
<情報収集、念動力、怪力、知識:罠使い、破魔>
万一の敵・罠への警戒排除や本の捜索運搬等々
時にアバター達の得た視界や情報を電脳魔術で空中投影
探索について<コミュ力>駆使し指示貰う。
他[倉庫]で物資運搬
[メルクリウス]に寝具等々変化して貰い
不足補いつつ<料理>の用意や休憩所構築
必要に応じ《夜魔誘惑》で眠気誘発、眠らせ回復も
アドリブ絡み◎
呪<呪詛>操る誘惑呪詛器に宿すヤドリガミ
パティ・チャン
【WIZ】
……本の虫というのは、本当にどうにもならないというか……
(自分の事は棚に上げる)
よろしい!私も本の虫。それならば、私のとっておきの「秘書」を派遣して差し上げましょう!
○エミリさんとの接触後
(【誘惑】からの百年の森、発動)
「ナリは小さいですが、雑事はこの者達にお申し付けを」
(一斉に礼!)
【世界知識、情報収集】も発動させて、エミリさんの知識量には敵わぬまでも、言われたことをまるで理解できない、という事態を避けさせます。
それでは、私も参りましょう!
(しかし本の背表紙に、脚がとまりかかる)
※アドリブ、連携(体躯が小さいので事、力をお借りできれば有難く)共に歓迎
小烏・安芸
やー……好きなことにのめり込む子って結構おるけど、死ぬまでやる子は早々おらんで?
で、調査研究に特化しとるいうことはそれ以外をフォローすればええんやな。身軽さには自信あるし、奈落送りの先触れがあれば高いところとか足場が悪いとこの資料も運べるから、周りのもん吹っ飛ばさん程度に速度を落として資料探しと運搬に飛び回ろ。
ああそれと、この手の調査には息抜きと甘いもんが欠かせんよな。てなわけで差し入れにチョコレート持ってきたで。
しかし今回はええけど毎回こんな感じやと難儀しそうやなぁ……これが片付いたら誰か身の回りのことが得意な生徒さん探さん? 今回ので成果が出れば手伝ってくれる子も出てくると思うんやけど。
「……なるほど」
依頼の概要を聞いて鈴木・志乃は頷いた。……注視してみていた者なら、まるで人が変わったような印象を覚えるかもしれない。
「なかなか厄介そうだね、さて僕の出来ることは……」
人格のスイッチ。依頼に合わせて相応しい自分を纏う、歴戦の経験の成せる業。
書架の回りには引っ張り出された本が積み重なっている。出しては読んで移動して、まるで片付けようとはしていない。一定より上の高さの本が本棚に残っているのは背丈の問題だろうか。
「はじめまして」
「キヒヒっ……なんだよ色男……いや、女か?なんだっていいけど私は調査で忙しいんだよナンパなら他を当たれよ難破なら海にいけよ」
返ってきた挨拶は随分なものだった。チラリと一瞬視線を向けたかと思えばエミリは乱雑に集めてきた思しき資料に目を落とし、高速でページを捲りながらあしらうように言った。
「ナンパじゃないし難破じゃない。……よければ、協力して調査をしないかってお誘いなんだけど」
「……ああ?」
「ほら、僕は君の言う通りの本を探してこれるし、椅子を持ってこれる。脚立を使うことも厭わなければ不用意に声をかけて邪魔することもしないと誓うし……君の話をいくらでも聴かせてもらう……どう?」
エミリ・クワイアットは視線を上げた。……ジッと見詰めてくる血走った目に、志乃はまるで心を覗かれているように感じ、先程までと違って彼女がこちらに興味を抱いていることを確信する。
「キヒヒっ……好きにしろ、ワタシの足引っ張んなよ」
「最善を尽くすさ」
卓越したエミリの眼鏡に、どうやら叶ったらしい。
「でよ、やっぱり大魔王の由来には諸説あるわけだ、キヒヒっ……大魔王はどこから来た何者なのか?……なかなかにそそるテーマだそうじゃねえか?」
「うん」
エミリは優秀であり、熱狂的であり、壊滅的だった。これに付き合う志乃は本を手放さないエミリの口に食べ物を捩じ込む。……彼女は全く、不健康に大きくなった赤ん坊のようだった。
不健康な赤ん坊は自分が喋りたいことだけを喚く。しかも『レオ・レガリス』を『2番目の樹』とか表現するものだから所謂エミリ語について学習する必要があった。
「なあ、なんだってワタシなんかの世話をやくんだ?」
一緒にストレッチをしている時(驚異的な体の固さを披露しながら)エミリ・クワイアットはそう言った。
どう言ったものだろうか、と、志乃は考えを巡らせた。戦争の為?依頼の為?……働き過ぎについては、エミリのことをまるで言えないのが鈴木・志乃という猟兵のスゴいところだ。
「……あれ」
彼女の明晰な頭脳が回答をまとめている僅かな間に、エミリはストレッチの姿勢で本を枕に寝てしまっていた。
――さあ、彼女の頭をもう少しいい物にのせて、また散らかっている物を片付けなければ。……どうやら休憩まではまだかかる。
月凪・ハルマが迷宮大図書館に来て早々、甲高い声が鼓膜を劈いた。
「キヒヒっ……キーーーーっヒっヒっヒっヒっヒっ!!あぁあぁああ!!思いついちまったぜ冴えてる仮説をぉ!ワタシってばもしかして天才なのでは!?んな訳ねぇーけど!」
虚弱な造りの暴走列車、というのが第一印象だ。……年頃の女子が浮かべていけない形相で本に齧り付く彼女の名は、エミリ・クワイアット。
「いやまぁ……天才には変わり者が多いとはよく聞くけど……」
ハルマが今回、手助けすべき相手……奇声を上げて本を抱えて、ペンを走らせ、常にナニかを呟いている。
「……これまた随分と個性的な方デスネ」
歯に衣着せる優しさがハルマには備わっていたようだ。
ある意味殺しても死ななそうな彼女だが、その身に余る熱意が彼女を殺すというのが予知された未来。……それは少々、寝覚めが悪い。
ハルマは帽子を被り直すと、いざ、接触をはかった。
「どーもこんにちはエミリさんお手伝いに来ましたよ、と」
ぐるぅり、と、エミリがハルマを見上げる。その瞳はどんよりと澱んでいて、ハルマはまるで水底を覗いている気分だった。……これは相当、溜まっている様子。
「……一人でやるより人手が多い方が効率良いでしょ?」
「……」
優しく笑顔で変わらず接することが出来るのも覚悟、勇気、優しさがあったればこそ。ハルマは彼女が独りぼっちの理由を知った気がした。
「……本、特に、この学園の旧い歴史の本を、ありったけ持ってこい」
それだけ言うと、エミリはまた、頁を捲って脳内を書き連ねる作業に戻った。……ハルマには分かる。……彼女には余裕がないのだ。興がのって徹夜を重ねたりしたのだろう。食事をとっているかもあやしいものだ。普段からそうであろう人間不信な部分が強調されているような気配。
「ここは俺が大人になっとくか」
手伝いを申し出たのはこっちだし、と、ハルマは言われたとおりに資料探しを開始する。……今すぐ止めるというのは、信頼を築けない選択肢だろう。
動くとなれば素早く、彼は化身忍者としての技能を発揮して空間を跳ねた。迷宮大図書館は暗くて広くて深い。無数の書架が立ち並ぶここにはその数千倍もの本がある。
「彼処と……あの棚、そして、こっち」
だが、在ると分かっているものは――探し出せるということだ。僅かな法則を頼りに本を集めるのは、ハルマにとっては容易いこと。
「おう、サンキュ。……じゃあ、そっちの山を片付けて、ついでにまた新しいのを持ってきてくれ」
「……はあ」
真にノッているエミリはどうやら一度読んだ本を手元に残す必要がないらしい。……酷い隈だ。そして、不自然に赤らんだ頬……どうやら知恵熱なのではないかと彼の医術知識が囁いてくる。あくまでも、彼女を殺すのは病気などではない。
「エミリさん、少し休んだ方が……」
「……ああ、休む、休むよ」
手の動きと眼球運動が止まらない。……ハルマは溜め息を圧し殺して、UCを発動させる。
「……んあ?」
心身解放蒸気が静かに漂うと、エミリは呆気ないくらい簡単に意識を手放した。白目を剥いているのが痛々しい。
「個性的……うん」
「終焉を……終焉?……キヒヒっ……わっかんねー、わっかんねーから面白ぇ……!」
エミリ・クワイアットは鬼気迫る形相で本の頁を捲っていく……そしてもう片方の手でガリガリとメモを書いていく……明らかに複数種の言語が混じっているようだ。
「なるほど……特化型の才をお持ちなのですね」
通常、言い換えれば凡庸な人間にはブレーキが存在する。そういった機構を持たず、友人という外付け安全装置も無い彼女は、正しく天才なのかも知れない。
月宮・ユイは彼女を放っては置けないと思考する。しかし、強引に止めるということも出来ない、したくはない。……ならば、思う存分に研究に没頭できるよう、全面的に奉仕し尽くすのみ。
「エミリさん、こちら次の本になります」
「お、おう……苦しうないぜ?」
……あれ?なんでワタシ、よく知らない転校生の女の子に世話されてんだ?……いや、女の子『達』か。
などと考えているエミリを余所に、気がついたら御奉仕ポジションに陣取っていたユイはアバター達とのリンクを密にする。
斯くして接触用外部端末『アバター』達は楚々とした、それでいて素早い歩みで迷宮大図書館を往く。時に壁や本棚さえ、彼女達の歩みを止めることは出来ない。
「……ふむ」
ユイはそれら全てのアバター達から送られて来るデータを元に電脳魔術でミニチュア迷宮大図書館を空中投影。
リアルタイム更新される迷宮大図書館から、臨時の主人が望む情報を取得して運搬する。……電脳空間倉庫があるならば容易いことだ。
「お願いします、メル」
どうやらエミリの読書ペースを上回ったらしい。その時間を活用して準備をする。主の言葉に、一瞬前まで黒猫に擬態していたミラースライムが蠢いた。
「エミリさん、どうぞ召し上がれ」
「お……おう」
……あれ?なんでワタシ、よく知らない転校生の女の子にあったかい手料理を振る舞われてんだ?此処は迷宮大図書館だよな?
という顔をしているものの芳しい香りによって胃袋に支配されたエミリの胃袋は手をハックしてスプーン操り、スープを口へと運ぶ。
「……!うめぇ!」
「恐れ入ります」
日頃、栄養のみを目的として口にしている物とは違う、エミリ個人のことをかんがえて作られた料理だ。
研究時に並ぶ情熱でもって料理を平らげるエミリを、ユイは甲斐甲斐しく世話をする。
大方を片付ける頃には、エミリはこっくりこっくり船を漕いでいる始末。
「まだまだ……まだまだ……研究……しないと……」
「流石に少し、おやすみしましょう」
エミリの目を塞ぐように、ユイは優しく精神に感応して彼女を優しい夢へと導いていく。用意しておいたベッドが役に立つだろう。……無論、ベッドメイクも完璧だ。
「ほら10秒本閉じて!」
「ギャーーー!?なにしやがる!?」
ふらふらとした覚束ない手付きで抵抗するエミリ・クワイアット。余裕で本を閉じさせるヴィクトリカ・ライブラリア。迷宮大図書館を舞台に二人の格闘が始まった。……勝敗は明らかだ。
「はい高カロリークッキー齧る!」
「ぐむ!?」
親の仇を見るような目で殺気を放つ幽鬼めいたエミリの視線に動じることなく、ヴィクトリカは次々と猛攻をかける。ああ……次はティーカップだ。
「お茶!……流し込んだ?……はい、読書再開!!」
「む!」
栄養を強制補充させられたエミリ頭脳は一秒前までに抱えていた恨みをコロリとデリートし、再び情報取得と、構築した推論のタスクを走らせることに没頭する。
ヴィクトリカにしてみれば微笑ましい共感を誘うと同時に心配になってしまう姿だ。
何せ、前回の仮眠から目覚めてから既に8時間、よく観察していたが集中力が切れているタイミングほぼ皆無。……本当に死にそうな驚異的な姿勢であった。……故に。
「もう夜ね! はい寝袋入る!」
「うおぉ!?またしてもこら!?離せ!本を返せゴラァ!?」
「却下よ!」
ヴィクトリカには、彼女の気持ちが痛いほど分かる。大好きな分野のまだ見ぬ資料……知識人にとっては値段など付けられないお宝だ。
目の前にあるなら寝食を惜しんで読み漁りたくなる、それは云わばサガのようなもの。……しかしだ。
「明かり置いとくけど早く寝るのよ! 温かいアイマスク用意しておくわね!」
ヴィクトリカ・ライブラリアは人を助けるため生み出された人工司書。アポカリプスヘルという地獄のような世界で培ったサバイバル経験と使命感がある。
「アンタはワタシの母ちゃんか!?大丈夫だよ死にやしねーよ!だって今まで死んだことねーもん!やってりゃ限界になったとこで勝手に落ちるってワタシは詳しいんだ!だからさ、やらせてくれよ……今さ」
「今、何」
「えっと……」
「……一分一秒が惜しいって?」
迷宮大図書館に目が眩んでいたエミリはこの段になって、目の前のヴィクトリカもまた、ブチ切れそうなほど怒っているのに気付いた。
……ヴィクトリカは知っているのだ。普段からフィールドワークを生業にしていればこそ、エミリ・クワイアットの異才のほどが。……それを粗末に扱う愚かしさが。人がどれほど容易く死んでしまうか。
「わかるわよ!!でもここで寿命すり減らすより生還してまた今度ゆっくり研究に来ればいいじゃない!わかったら休みなさい!」
「はい!」
本気の思いは伝わる。そして目を閉じればそれこそ一瞬で落ちるエミリ。
「全く……」
ヴィクトリカは明かりを消した。……さて、片付けが残っている。
「おやすみなさい」
小烏・安芸は迷宮大図書館を飛び回る。
エミリ・クワイアットの「これみたいの持ってこい」というアバウトな指示と一緒に投げ渡された本を小脇に抱えたその姿は黒い霧のような呪詛に覆われ、この世全ての不吉を纏っているよう。
その仄暗い力を羽の形に発散しながら、無数に立ち並ぶ書架の中身を確認しては抱える本を増やしていくのだ。
「やー……好きなことにのめり込む子って結構おるけど、死ぬまでやる子は早々おらんで?」
「……ん、ごくろう」
その学生には恐ろしかろう姿も、エミリには何処吹く風だ。近くに寄っても、興味関心は新たな資料にばかり向けられている。
ふと思いついて「気にならん?」と問えば「実験材料になってくれるのかよ?」という問いが返り、安芸が「いやや」と答えれば「じゃあ知ったこっちゃねえよ」とのこと。
目の下に濃い隈を作り、口の端に涎を溢しながら高速で頁を捲るエミリに、安芸は苦笑してしまう。
「ちょいと息抜きとかどない?……てなわけで、差し入れにチョコレート持ってきたで」
「んあー……」
頁を捲る速度を衰えさせず、それでも話は聴いていたのだろう。エミリはなんの疑いもなく大きく口を開けるので、安芸としてはそこにチョコレートを入れてやるしかないのだ。
「キヒヒっ……美味え。くるしぅねえぜ」
「そらどうも」
どうやら、世話をしてくれるとなったらトコトンまで寄り掛かってその分まで研究に打ち込むことにしたらしい。
此処で共同作業を始めてから大した時間も経ってないというのにさながら王様めいている。
見ようによっては巫山戯ているが、例え一人でいたとしても行動が変わらないのが彼女の危うさと言えた。
「しかし今回はええけど毎回こんな感じやと難儀しそうやなぁ……」
「……あ?」
助手の言葉に耳を貸すという『息抜き』をする気になったらしいエミリが安芸を見上げる。……爛々と輝く濁った眼。
「これが片付いたら誰か身の回りのことが得意な生徒さん探さん? 今回ので成果が出れば手伝ってくれる子も出てくると思うんやけど」
「キヒヒっ……いねーよ。……見ろよ。このエミリ・クワイアット様の艶姿をよ。優等生様達はみんな裾巻くって逃げてくぜ」
エミリは唇残ったチョコレートを舐めとって「けどまあ……」と続ける。ニヤリと笑って。
「アンタがこれから先も御世話してくれるってんなら大歓迎だぜ?」
「……それは」
「キヒヒっ……即決で断らねえし嫌悪感が感じられねえのが転校生なんだよなあ……アンタ等おもしれーなそそるな。……安心しろや」
エミリは、既に次の本へと手を伸ばしていた。……ペースが上がる。
きっとそれは、天才マッドの慣れない気遣い。……安芸は再び迷宮大図書館を舞う。次の本を持ってこなければならないからだ。
「……」
ファルシェ・ユヴェール。綺羅びやかな男。整ったその顔はともすれば冷たい印象を与えるだろう……しかし、見るものが見れば、その身を飾る花は造花であり、宝石がイミテーションであることが分かるはずだ。
なにより真に心に傲慢を宿す者が、好奇心に狂った少女を救うために迷宮大図書館に赴くものか。
「天才肌の人は、何故か生活力皆無な事が多いのは気のせいでしょうか……」
「あ?あんだってファルやん、なんか言ったか」
「ファルやん……」
エミリの右手には次々と頁が捲られていく本。……左手にはファルシェが用意したサンドイッチを掴んで小さい口を駆使して頬張っている。
「いえ、なんでもありませんとも」
キヒヒっと、機嫌よくエミリは笑う。……彼女からしてみれば何故か酔狂にも手伝いを申し出てきたこの伊達男、とにかく顔がいい。
エミリの洞察力と、僅かながら共に過ごす時間があれば、ファルシェ・ユヴェールという猟兵が実に甘えがいのある男という結論が導き出せるのだ。
そう、ファルシェは少々、最善を尽くしすぎたかもしれない。
「……そうだ、エミリさん貴女にこれをお貸ししましょう」
「……うめうめ……なに?」
サンドイッチを平らげて、それでも足りぬとラムネをぼりぼり噛み砕くエミリのコンディション低下をファルシェは見抜く。……眠気を興奮で飛ばしている状態だ。
これに一計を案じた宝石商が取り出したのは一羽の小鳥。菫色の美しい羽を持つ小鳥。
「……キヒヒっ……受け取れねえよ、ワタシに生き物の世話とか正気かファルやん」
まさか彼女に正気を疑われるとは思わなかったファルシェが笑みを溢しながら続ける。
「大丈夫。これは魔法の小鳥。……さあ、目を閉じて貴女の求める書物の内容を告げてみてください……すぐに見つけてきてくれますよ」
「ヘえ……キヒヒっ」
エミリは覚束ない手つきで小鳥を撫でて、目を閉じて。
「異世界の本だ。ここじゃない何処かから此処にナニかが来た記録……若しくは其処から流れついた書物……大魔王という単語は避けてくれ……瞳を覗く者が住まう世界……ぐぅ……」
主の目論見通りに少女が眠りについた事を確認すると、小鳥……導きの宝石アイオライトは飛び立った。
「さて……」
ファルシェはここからが忙しい。先ずはエミリを寝床に移動させて、この場の資料を分類して片付けながら、傾向も覚えて。
飛んでいく小鳥を追って彼女が願う本を手にしなければならない……まあ、最善を尽くすのみ、なのだが。
迷宮大図書館を妖精騎士が舞う。
アレンジの効いた和洋折衷の衣装に剣を佩くその姿は不思議な魅力に満ちている。
パティ・チャン。彼女の青い瞳が、迷宮大図書館の床を本の海にして、その最中で溺れるように読み耽っているエミリ・クワイアットを捉えた。
「キヒヒっ……キヒヒヒっ……かぁ~~……」
酷い顔色、資料よりも頬も痩けているだろうか。……それにしても、心底幸せそうな。
「……本の虫というのは、本当にどうにもならないというか……」
思わずパティの口から漏れる素直な気持ち。……まあパティ本人も好奇心に生きる性質である上に重度の本好きであるのだが。
「……よろしい!私も本の虫。それならば、私のとっておきの『秘書』を派遣して差し上げましょう!」
「……んぅ?」
「失礼、エミリ・クワイアットさんでよろしかった?」
「キヒヒっ……ああ、ワタシがエミリ・クワイアットサマサマサマよ。そんで、そんなワタシに態々話しかける物好きはどこのどいつだ妖精さん?」
目が澱んでいる。一体どれだけ休まずに耽溺しているのやらパティには分かりかねる程のただならぬオーラだ。
「私はパティ・チャン。及ばずながら、貴女の手助けに参りましたの」
「……あー、転校生って連中は暇なんかね?ワタシなんかに構っても丸っきり無駄だぜ?なんせワタシが興味あることしか調べねえ……キヒヒっ」
「それでよろしいかと。……エミリさんが、エミリさんの調べたい事を調べる事をサポートするのが、私の使命なのですから」
「キヒヒっ……!」
エミリはパティの言が可笑しくて堪らないとばかりに腹を抱えて笑った。
「そいつぁ傑作だな!でもさパティちゃん、アンタに何が出来るんだい?魔法でも使ってくれるのかい」
「魔法……ええ、超常を魔法と言うのであれば」
パティは剣を掲げて見せる。……魅せる動作で、暫し、エミリ目を釘付けにしてみせる。
「……出でよ!灰色ガラスの森から!」
力在る言葉に答え、遠く、遠い場所より出たるはパティ・チャンの写し身が60余り。
「ナリは小さいですが、雑事はこの者達にお申し付けを」
その幻影達は寸分違わぬ動作と刹那の乱れもない同期を備えた見事な礼を行ってエミリを感嘆させた。
「キヒヒっ……こりゃすげえや……本を探して来れるのかい?ヒントが少なくって、手間だと思うけど……」
「本の探索、運搬、整理整頓、なんでもこなしてみせましょう」
エミリはその言葉に目を輝かせた
「己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力」
「……?」
「分かってるのはこの文言だ。……これに関する本とか、無理筋だよな?それに、これが大魔王に繋がるかはわかんねーし……あれ」
そう、言い終えるのを待たずして、其処に幻影は一体も残っていない。
「ふふ、それでは、私も参りましょう!……むむ!?素敵な背表紙!!」
優秀な写し身達に遅れをとるまいと立ち上がったパティ。……だが、エミリの手にとった本は強大な敵であった。だって見たこともない装丁だもの。
「……一緒に読む?」
「………………はい」
大成功
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クローネ・ハルトマン
迷宮大図書館。実に良いねぇ、まだ見ぬ知識がありそうじゃないか。
でも、本以外にも、彼女の知識も気になるところだね?
私も調べる事は大好きだから、何だか気が合いそうな気がするなぁ。
共に知識を共有して、討論をしながら友好を深めたいねぇ。
猟兵の知識、こことは異なる世界の知識も交えて
あと…そうだ、災魔に興味があるみたいだね?じゃあ、うちの騎士君と蛇竜君を呼んで作業を手伝って貰おう。
騎士君は食事の準備も出来るし力もある、蛇竜君は高い所の物もすぐに取れる。
【言いくるめ】たりして休ませる事も忘れずに。
彼等や別の世界の災魔のこと、知りたくないかい?なら一度休憩しようか。
なぁに、休憩しながらでも話はできるさ。
雪華・風月
つまり家政婦業でしょうか?
家の使用人のような感じで動けばよいのですよね?
お任せください、しっかりと任務をやりとげてみましょう!
それにしても生徒さんで一人で調査とは余程優秀で他教授からも信頼されてる方なのですね尊敬します(曇りなき目)
わたしはでは研究のお手伝いはできそうにないので
本の整理や運搬を、(両手に抱え頭にのせて)
空いてる時は誇りなどの掃除ですね
もし他に提供する方もいなければご飯の方も
えぇ、片手で作業しながら食べられるライスボールです
中の具材で栄養を色々とれるように工夫してみました
多めに作ってきましたので他の猟兵の皆さんも仕事をしながらどうぞ…
黒い影が、否、その様に見える猟兵が佇む。骨格からして男性だと思える人物が、中世ペスト医師のマスクに似たモノを被っている……そのマスクこそ彼の猟兵の本質であった。
「迷宮大図書館。実に良いねぇ、まだ見ぬ知識がありそうじゃないか」
彼の名はクローネ・ハルトマン。
帽子を被ったマスクが笑う。学園を中心としたこのアルダワに貯蔵された知識の集大成。ここ以上となると、別の世界でも電子上にしか存在し得まい。
「でも、本以外にも、彼女の知識も気になるところだね?」
彼女、エミリ・クワイアットは巨大なテーブル一杯に本を積んで調査に没頭している。その瞳は知識欲を凝らせ澱んでいて、尋常な雰囲気ではない。
「はじめまして。エミリ・クワイアット君、だよね?」
「あー……?如何にもエミリはワタシだーぜ。……蝙蝠傘みたいな野郎だな」
「……私はクローネ・ハルトマン。……よければ、ここで一緒に調査させてもらっても構わないかな?」
「好きにしろよ」
エミリは、薄い唇をべろりと舐めて。
「転校生……猟兵って連中が変わりもん揃いってネタは上がってんだ」
「うまい!なんだよゴッツイ死霊騎士くん、やるもんだなあ」
ガツガツとエミリは机の上に載せられた料理を貪っていく。……食事をしながらも随所で本を捲るのをやめない。
彼女の賛辞に、表情の窺えない死霊騎士が礼を返す。あくまでも戦場で培った技術である。本職の料理人とはいかないが、エミリは実に美味そうにシンプルなその料理を腹に納めていく。
其処へもう一体の死霊、蛇竜が迷宮大図書館這ってくる。尻尾には大量の本を巻き付けて器用に進んでくる姿は見るものが見れば可愛いらしい。
「なー、クロちゃんよ、死霊騎士くんや死霊蛇竜くんとどう出会ってどういう経緯で一緒にいるか気になるんだけど」
「そうだな、勿論、話すのに吝かではないが……」
クロちゃん呼ばわりされているクローネだが、それで怒るほど器の小さいマスクではない。……知識をもって知識を求める彼女を、少しばかり気に入ってもいるかもしれない。
「話すと長くなる。どうだろう、交換条件として、お茶に付き合ってもらうというのは」
無論、その最中は本を手放しもらう、というクローネの言にエミリの眉がへにょりと曲がる。……消極的な了承だ。
死霊騎士が湯を沸かす。……さあ、彼女にお茶の好みを聞こう。
不摂生で死んでしまうかも知れない研究者を救うべく手助けをする。
「つまり家政婦業でしょうか?」
雪華・風月は今回の依頼をこう結論付けた。
「はじめましてエミリ・クワイアットさん、わたしは雪華・風月申します」
「……おう」
エミリ・クワイアットから見て雪華・風月は馴染みがない。……そう、学園のヒエラルキートップ層に似たオーラを感じる。
きっと真面目なのだろう。運動や勉強に不得手があったとしても努力で何とかしてしまうに違いない。
「キヒヒっ……エミリ・クワイアットだ。よろしくぅ……」
だから、この育ちの良さそうな女子が、積極的に絡んでくることはないと踏んだ。この挨拶は、あくまでも礼儀を通しただけで、遠巻きにされ互いに関わらないに決まってる……そう思いきや。
「エミリさん、欲しいと仰っていた資料なのですが、これでよろしいでしょうか?」
「……おう」
「エミリさん、少し掃除をしようと思います。そこをどいてください」
「……おう」
「エミリさん、お握りを作りました。根を詰め過ぎるのも問題ですよ」
「……おう」
風月は、よく働いた。……実家の家政婦達と同じように、自分がやるべき事を考えて、ひた向きに実行する美徳の再現。
「なあ……なんでワタシに構うんだ?」
「え?」
お握りを掴んでいた手の塩を舐めとりながら、エミリは聞いた。
「他の猟兵もだけどよ、なんだってワタシみたいな劣等生を構うんだ?」
「そうですね……他の方々のことは分かりませんが、わたしは研究や調査お手伝いができません。……でも必要な事」
一人で風月がこの迷宮大図書館挑んでも得られる成果は知れているが、エミリ・クワイアットは膨大な砂の中から星を掴むことができる。
「貴女があげるであろう成果に期待しているんです……それにしても生徒さんで一人で調査とは余程優秀で他教授からも信頼されてる方なのですね……尊敬します」
「お、おう……あたぼーよ」
単に勝手に潜り込んでるだけで、緊急事態である今、教師はワタシに関心が薄いから騒がれないんだろう――とはエミリ言わなかった。
風月が向けてくる信頼を裏切ったり曇らせたりはしたくなかった。
エミリの日常は信頼されることとはほど遠い。誰もがエミリを評価しないことは最早当たり前に受け取っていた。
「しゃあねえ、頑張るか」
風月が差し出すお茶を啜って、エミリは机に向き直った。……信じてよかったと、そう思ってもらおうと、
大成功
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