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耀う世界

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ──ごめんなさい。
 翡翠の髪を靡かせながら、少女はひたすらに森を走った。途中、草葉が少女の白い脚を切ったが、決して足は止まらない。ゆるくウェーブがかった胸元ほどの髪が枝にかかるも、すぐさま髪を引きちぎる。ただ右手の長剣だけが、強く、強く、握られていた。
(「エマはなにもできなかった」)
 お父さん、エマ達を護ろうと一生懸命戦ってくれた。
 お母さん、エマのことを抱きしめて、身を挺して守ってくれた。
 ノアおにいちゃん、お父さんと一緒に戦ってくれたけど、本当はお兄ちゃんも怖かったよね。だって脚が震えていたのが視えたもの。
 リアム、護ってあげられなくてごめんね、お前は家族でいちばんの弱虫で怖がりだった。獣に手足を千切られ、肩を喰われ、胴を抉られ、どれほど怖く痛かっただろう。
 お隣のおじさん、おばさん、見捨ててごめんなさい。うちでなくてよかったなんてほっとしたこと、今はすごく後悔してる。
 オリバー、せっかく生き残ったのになんで自殺なんてしたのだと、親不孝者だなどと思ってごめんね。ひとり生き残ることがこんなにも悲しく辛いだなんて知らなかった。
 今のエマなら、貴方を思い切り抱きしめてあげられたのに。
 ああ、後悔だらけだ。悔やんでも仕方ないことが何度も脳裏を過ぎていく。
 このままじゃだめだ、だめなんだ、怯えて息を潜めて生きるだけじゃ、どこまでも嘆きが積もるだけ。一時の安寧かもしれない、それでもプレアグレイス、エマはお前を──。


「生き残りが出たおかげでオブリビオンの居場所がわかったということでしょうか」
 よく、わかりませんけど。
 白之・万色(真白彩・f05308)はそう言い、ともあれダークセイヴァー世界に存在する、オブリビオンの居場所がひとつわかったことには違いないと言葉を続ける。
「森の奥にある教会を自らの館としているみたいです。館周りはオブリビオンの警備が厳しいことが通例ですが、今は手薄のようですね。警備が手薄ということは配下が他所を襲いに行った可能性はありますが、仮にそうだとしても、それが何処かはわからないのでどうにもなりません」
 万色は至極あっさりと言い切った。
「支配者の首を狩れば配下の動きは止まるかもしれません、それを祈って主の首を取るのみでしょうね」
 万色の指先がスケッチブックの紙面を滑る。描かれたのは森と教会、森にはオブリビオンの配下であるファンガスが居るという。猟兵の敵ではないだろうが如何せん数が多い。ファンガスを倒しながら森を抜けることになるだろうと万色は言った。
 加えて、生き残りの少女が教会に向かっているとも彼は告げた。予知によれば少女は猟兵より先に教会に辿りつく。生死の如何は不明。唯、急ぐより他はない。
「それから」
 万色は無表情のまま、ぽつりと言い落とす。
「耀が視えました」
 予知を思い出そうとするかのように、彼は宝石の瞳を閉じた。ダークセイヴァーと云えば夜と闇の世界、耀とは相反する世界の筈である。それでも視えたという、耀。

 ──ひとつ、ふたつ。
 教会の周りに灯るましろの耀は漸うと一面に広がっていく。少しずつ、少しずつ、耀の粒が常闇の空へ舞い上がった。
 しんと静まる夜に耀が満ちる中、やがて確かな鐘の音が鳴る。
 誰かのために。
 君のために。


小藤みわ
 第1章集団戦『ファンガスの森』
 第2章ボス戦『救済の代行者・プレアグレイス』
 第3章日常 『ましろの耀と鐘の音』
 以上の3章構成です。
 どの章からご参加いただいても構いません。

●第3章補足
 教会周りに咲く花々は、枯れる間際のすこしの間だけ耀を放つようです。
 耀を帯びた花粉が空を登り、足元だけでなく空にも小さな耀が満ちます。
 そして教会の鐘は鳴る。
 誰かのために、君のために。
 第3章のみ参加の場合は『噂で聞いた』とでも。
 POW/SPD/WIZは行動の一例です。提示のない行動も自由にどうぞ。

●2章目以降
 各章の始まりには少しオープニングをはさむ予定です。
 物語の進み方次第では不要になるかもしれませんが、その際も一行でも文章をはさみます。
 プレイング開始の参考までに。

 どうぞ、ご縁があること願って。
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第1章 集団戦 『ファンガス』

POW   :    胞子散布
予め【胞子を周囲に撒き散らす】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    闘虫禍争
自身の身長の2倍の【虫型の魔獣(形状は毎回変わります)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    毒の胞子
【口や茸の傘】から【胞子】を放ち、【毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 自分の視界が唐突に開け、エマは思わず足を止めた。勢いで少女の足裏が滑り、砂塵が舞う。
 一面に綻ぶ花々と、薄暗い視界の遠くにありながらも存在を示す、壮麗な教会が其処にあった。
 風に乗って漂う、薔薇の香り。
 奇しき薔薇を模すステンドグラスの前に、ひとりの美しい少女が立っていた。齢はエマと然程違わないようにも視える白翼の彼女は、エマの来訪を察していた様子で、唯々優美な笑みを浮かべている。
「御機嫌よう、哀れな子羊。私は救済を望む者──」
「プレアグレイスだろ、お前の声は一度だけ聞いたことがある」
 ゆっくりと自分に歩み寄る少女を、エマは毅然と見返した。一方の少女は尚、たおやかな笑みを湛えたまま、小さく首を傾げてみせる。
「怯えることは何もない。私は貴方を苦しみや絶望から救済する者」
 少女が手にした黒の魔剣が緩やかな弧を描いた。ぞわりと空気が振れ、ぞろりぞろりと影が湧く。少女の淡く繊細な指先が、撫でるように影へ触れた。
「貴方の大切な者達は、此処に居るわ」

 ──樹々が哭く、樹々が哭く。影が満ちた森の奥、常人であれば恐ろしさに引き返してしまうほどの闇に、幾つもの足音が鳴り響いた。
 急げ、急げ、生き残った命の燈火が消えてしまう、その前に。
アンナ・フランツウェイ
生き残りの少女を助けに行く。この場をサッサと切り抜ける方が先決。

自分から進行方向のファンガスの群れへ突っ込み、蹴散らしながら進む。雑魚に構っている暇は無い!

ファンガスが胞子散布の動きをしている隙に接近、処刑剣・ラストレクイエムをなぎ払いと範囲攻撃を使って切り払おう。

数が多い場所に突っ込んだら拒絶式・呪詛黒百合を鮮血の鋼鉄処女を起点に発動。周囲にいるファンガスをまとめて攻撃する。
「…アンタ達に構っている暇は無い。どいて」



 避けることなく真正面、胞子の霧中に剣を薙ぐ。愚鈍なファンガスの断末魔が響くのを背に、アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)は更に駆けた。背を振り返ることもない。
 鎮魂歌の名を冠した処刑剣は幾度となく敵を薙いだ。容赦などない、その必要もない。このファンガスらは血の匂いがする。一体どれほどの命を喰らってきたのか、ただ解るのは、そのすべての命が他の場所に生まれていたなら、もっと平穏な生を過ごせただろうということだ。
(「ホント嫌になる」)
 これだから、世界は。
 アンナの双眸がすうと細まり、目の前の罪を斬り落とす。
 人間を厭い、世界を厭い、何より己の黒き片翼を厭う、それがアンナ・フランツウェイという女であった。同時に、くだんの少女を助けるために足を走らせてしまうのも彼女の性だ。
 アンナは立ちはだかるファンガスの群れめがけて高く跳ねた。
「……アンタ達に構っている暇は無い。どいて」
 ──我が怨念は全てを包む。
 処刑剣が消え、無数のクロユリの花びらが宙を舞う。呪詛を纏うたクロユリはファンガスらを決して逃さない。
 片を散らせたクロユリを背に、アンナは前を見据えたまま駆け抜けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

エムピースリー・シャローム
失った子供が仇へと向かう、ですか
いたましい

これ以上の喪失を生まないために
過去により現在を喪失しないために
行きましょう

私は見ての通りこの体
隠れるにはとんと向きません故堂々と進みましょう
宇宙で活動するため密閉性は高いのですよ

毒の胞子を撒くというのなら、電磁バリアの出力を上げて焼きましょう
延焼しないように木々を倒したり踏みつけて消火したりも行います

ファンガスはヒートソード(属性攻撃)で突き刺して中から焼きましょう

敵が動けるのなら、こちらに注意が向く分皆が楽になるはずです


三嶋・友
…ホント救いがなくて嫌になっちゃうよね、ダークセイヴァーの世界ってさ
教会に向かったっていう生き残りの少女が何を想っているのか、なんて私なんかにわかるはずもないけれど
……助けたい、そう思う
大切なものをすべて失って生きる辛さなんて私は知らない
だからこれは私の傲慢かもしれない、けど
…予知で見えたという耀のように
常闇の世界にもひとひらの希望はあると信じて
今はただ、急ごう!

邪魔なキノコなんかに構ってる暇はない!
晶花に火の魔力を纏わせて連続攻撃
炎爆波で胞子ごと焼き払う!
勿論燃やすのは敵だけ
森まで燃やすつもりはないよ

相手の攻撃は可能な限り見切り
攻撃の手は休めずに、教会を目指し駆け抜けるよ



(「失った子供が仇へと向かう、ですか」)
 なんと、いたましい。
 冷たい夜陰に覆われた森に焔が満ちた。エムピースリー・シャローム(ウォーマシンのシンフォニア・f01012)の身体から放たれた強電磁界が、ファンガスらの毒胞子を焼いたのだ。
 延焼をしないようにと樹々を倒し、踏みつける。幾度となく戦場を超えてきたであろう、古きロボット兵の足が不要な破壊を消し止めた。
 己の体が隠れることに向かないことは承知しているエムピースリーは、堂々と森を突き抜けている。密閉性には自信があった、なにせ宇宙を駆ける身だ。
(「私に注意が向けば皆が楽になるでしょう」)
 己の電磁バリアの出力を上げて、更に毒胞子を焼いていく。
 暗闇の中の焔と大きな体躯は、エムピースリーの考えどおりよく目立った。どうぞ、と仲間を促すように体を捩れば影がひとつすり抜ける、三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)だ。
 友の手許にもまた焔が揺れる。紅水晶の刀身がゆらめく焔を纏えば、ファンガスを薙ぐ一閃が煌めいた。
(「……ホント救いがなくて嫌になっちゃうよね、ダークセイヴァーの世界ってさ」)
 平生はゆるくマイペースな友の脚が、今はとかく先を急く。無論考えているのは教会へ向かったという少女のことだ。件の少女が何を想っているのか、娘には知りようもないけれど。
 ──助けたい。
 友が愛剣を振る度に、エムピースリーが毒胞子から仲間を護ろうとするたびに、耀なき森に焔の灯りとぬくもりが広がっていく。
(「大切なものをすべて失って生きる辛さなんて私は知らない」)
 だから、これは自分の傲慢かもしれない。
 友の足が跳ね、ファンガスの懐に飛び込むと直前で一転。ファンガスの反撃を躱すや否や、焔の連撃で切り裂いた。赤き焔の河から溢れた紅蓮の波は、決して森には触れず、ただ目の前の敵だけを焼き尽くす。
 これ以上の喪失を生まないために。
 過去により現在を喪失しないために。
「行きましょう」
 エムピースリーが紡ぐ音はどこか優しく、どこか強く。彼の繰る剣撃がファンガスを貫けば、途端に焔が燃え上がり、進むべき路を照らしてくれる。
 急ごう。
 友の足は迷うことなく路を行く。
 自分の傲慢かもしれない。
 けれど、予知で視えたという耀のように、常闇の世界にもひとひらの希望はあるのだと信じて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
……ま、生き残りというのは、いつでも苦しむものよなァ。
そのやりきれん思いも分からんわけではない。
分かるがゆえに、余計に一人向かわせることは出来ないな。
では参ろう。村の残した最後の希望、無為に潰えさせるわけにはいかん。

幸か不幸か、この世界は怨念には事欠かん。
【死者の毒泉】での強化、選ぶのは攻撃力だ。とっとと掃討して先に進まねばならん、私の【呪詛】も乗せてやろう。
各個撃破ならば槍を使うが、一気に来るならば【ドラゴニアン・チェイン】で縛って振り回してやろう!
ふはは、食えもせん茸どもめ、せめて武器として役に立つことだ!


ファルネーゼ・アトラス
ファルが救える命なんて、高が知れているでしょう
けれど、僅かでも希望が残されているならば――エチカ
どうかファルに力を貸して下さい
貴方が傍に居てくれるならば、ファルは大丈夫ですから

教会へと急ぐ皆様を【生まれながらの光】で治療致します
ファンガス達が放つ胞子による毒も、治癒を早める事が出来るかも知れない
もし有効ならば、ファルの疲労など関係ありませんね
皆様が満足に動けるよう最善を尽くすまで
一刻も早く森を抜けなければ手遅れになってしまう
…ファルは、誰かが死ぬ姿をもう見たくはありません!

闇に閉ざされた世界でも必ず光は訪れる
誰もが笑顔で居られる世界を作る為ならば
ファルは幾ら傷付こうが皆様の為に歌い続けましょう



 幸か不幸か、この世界は怨念に事欠かない。闇色の森から泉のように沸き立つ憎悪、怨嗟、そして絶望が呪詛となり、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)の身体に纏わりついた。加えて己の呪詛を積む。
 さァ行くかと相棒を担ぎ、竜の男は駆け出した。
(「……ま、生き残りというのは、いつでも苦しむものよなァ」)
 威力の増した槍ならば、ファンガスは一振りで沈む。足を止めることなく槍を振り、森を駆け抜けながら、ニルズヘッグは生き残りの少女のことを思い描く。絶対に敵わないであろう支配者の許へ駆けてしまうほどの、彼女のやりきれない想いも解らなくはない。
 否、解るからこそ、決して独りには出来ぬのだ。
 目の前を跳ねるファンガスらから毒胞子の霧が舞う。けれど退くことなく突き抜けて、群れに飛び込み覇気を一喝。伝う波動に爆ぜたファンガスを鎖で捉え、男はぶんと振り回した。
「ふはは、食えもせん茸どもめ、せめて武器として役立つことだ!」
 どちらが悪役とも知れない笑声を響かせ、回す、回す。周囲のファンガスをすべて吹き飛ばし、男は豪快に嗤った。
 周囲が癒しの耀が満ちたのは、その時だ。
 ニルズヘッグが振り返れば、夜色の髪を靡かせた星彩の少女と、ふわふわ浮かぶ星の聖獣の姿が其処にある。星彩の少女、ファルネーゼ・アトラス(星謡・f06256)は男と眼が合うと、こくりと頷いてみせた。
 ──ファルが救える命なんて、高が知れているでしょう。
 只管に森を駆けながら、ファルネーゼはそんなことを考えた。己の無力さなど疾うに思い知っている。それでも、僅かでも希望が残されているならば、ファルネーゼの足は何処までも駆けた。──もう、誰かが死ぬ姿を視たくない。
 そのための癒しなら、幾らでも降らせよう。
 夜を優しく彩る、星唄のように。
 ファルネーゼから生まれゆく耀は、幾度となくファンガスの毒を退け、森を抜けるための枷を解く。
 同時に耀は重い疲労も齎した。視界が歪み、脚が縺れた。一瞬、樹の幹に繊細な身体が衝突する。
 木枝が揺れる音を聞き、ニルズヘッグは振り返ったが、けれど足は止めなかった。ファルネーゼに寄り添う聖獣の姿も視えていたし、何より彼女はそれを良しとしないだろう。己にできるのは疾く森を抜けること、それだけだ。男は路を造るべく、幾度も知れず槍を振るう。
(「ありがとう、エチカ」)
 力を貸してくれて、傍にいてくれて。
 大丈夫、貴方のおかげでファルはまだ走れる。
 闇に閉ざされた世界でも必ず光は訪れる、誰もが笑顔で居られる世界のためならば歌い続けましょう、どれほど自分が傷つこうとも。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧島・ニュイ
【SPD】

急ぐ必要があるよね
先を急ぐ仲間の為に、道を切り開くよー
真っすぐ走り抜けられるように、その道にいる敵や邪魔して群がってくる敵から倒していくよー。
それらが片付いたら一掃しますか!

獲物はからくり人形のリサちゃんとマスケット銃
まずリサちゃんに先に【フェイント】使いつつ攻撃して貰って
道を塞ぐ邪魔者から【スナイパー】で狙い撃ち!
わ、君僕に近くない?おいでおいで大歓迎…ほら、直ぐに終わりでしょ?【零距離射撃】

Σわー、大きいねー。こわいよー><(演技)
ねえ。ところでさー。そのお口と傘を塞いだらどーなるの?
【傷口をえぐる】【咎力封じ】使用

あーあ。毒キノコじゃ晩御飯のおかずに出来ないね!


チガヤ・シフレット
やれやれ、暗い話だ。暗い話で暗い死に方なんて、つまらないよなぁ?
どうせなら、笑顔であの世へ! なんてな。女の子は笑ってるほうが良い。あの子の元へ駆けつけるとしよう。

ヴァリアブル・ウェポンを起動!
銃火器で撃ち抜き、ワイヤーでぶん投げて!
邪魔するキノコどもを踏みつけて走るぞっ!
食えないきのこは好きじゃないな。チョコ菓子の方はきのこの方が好きだがなっと。
光を追って輝きを探して。命の煌めきを求めて全力だ。

少女が生きてるうちに辿り着ければ上々、助けに来たぞ、さぁ、笑え。

ただ、ファンガスが多すぎて思うように猟兵たちが進めないなら、ファンガス掃討に力を掛けよう。
他の誰でもいいから辿り着けば問題はないだろう?



 やれやれ、暗い話だ。
 暗い話で暗い死に方なんて、つまらないよなぁ?
 どうせなら、笑顔であの世へ!
 なんてな。
 途方もない深潭の闇が堕ちる森で、けれどチガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)はいつも通りの明るさを以って駆け抜けた。──女の子は笑ってるほうが良い。
 そんなチガヤの前にぽんと現れ出たのは、椿の花を纏う可憐な少女羅刹のからくり人形だ。小動物のような愛嬌ある彼女は、どうやら名前をリサと云うらしい。背後から「リサちゃん!」と呼ぶ声がする。霧島・ニュイ(霧雲・f12029)の声である。
 リサが大きく跳ねて見せつけて、ファンガスの群れを翻弄すれば、ニュイのマスケット銃が真っ先に道すがらのファンガスを撃ち抜いた。
「まずは道を塞ぐ邪魔者から撃ち抜くよ!」
「よし、わたしもそれで行こう!」
 黒渕眼鏡を掛け直し、ぴんぴん跳ねた髪を更に跳ねさせながら一弾。ニュイが撃ち放った銃弾に合わせて飛び込みながら、チガヤはヴァリアブル・ウェポンを起動する。追撃の銃弾を叩き込み、ワイヤーを絡めてぶん投げて、着地ついでに別のファンガスを踏みつけた。ギエと足許から何とも形容しがたい奇声が漏れる。
「食えないきのこは好きじゃないな。チョコ菓子はきのこの方が好きだがな」
「きのこ派かー。僕はね、わ、君僕に近くない?」
 僕はね、と自分の派閥を語ろうとしたところで、ニュイの目の前をファンガスが跳ねた。おいでおいでと歓迎して、少年はマスケット銃を突きつける。
「ほら、直ぐに終わりでしょ?」
 まさに零距離。ぶっ放された圧力で、ファンガスの身体が砕け散る。
 チガヤはもう一体を撃ち抜くと、開けた道を駆け抜けた。ポニーテールを靡かせながら、少女の命の煌めきを目指してひた走る。この調子なら、ファンガスが多すぎて進めないということもなさそうだ。ならば、走るのみ。
 彼方此方で戦っている音がする。
 走っている音がする。
 少女が生きているなら、いや、きっと生きている、だから辿り着いたら伝えよう。──助けに来たぞ、さぁ笑え、と。
「わー、大きいねー。こわいよー」
 他方、ニュイは巨大化したファンガスを仰ぎながら声を上げた。勿論、演技だ。
「ねえ。ところでさー。──そのお口と傘を塞いだらどーなるの?」
 問いたところで答えは聞かない、口を塞ぎ、拘束をして枷を掛け、銃弾の傷口を抉り抜く。崩れ落ちたファンガスを横目に、ニュイもまた地面を蹴って駆け出した。
 あーあ、毒キノコじゃ晩御飯のおかずに出来ないね!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ステラ・ハシュマール
生き残った子のためにも、オブビリオンは焼却しないとね。それと、ボクキノコが嫌いなんだよね。鑑賞する分には良いけど、食べるのはちょっと……
だから君たちには消えてもらおうか。

「毒キノコは、灰の一欠けら残さず焼却だ」

黒壇鎮魂葬送曲をぶん回し、敵の陣地に特攻するよ。
離れた敵は血弾螺旋銃で迎撃しつつ、大鎌で敵を【薙ぎ払い】で切り刻んであげる。
ある程度目立つくらい暴れたら、闘虫禍争で袋叩きにしようと反撃してくると思う。それにカウンター気味に終焉ヲ抱ク紅蓮ノ荊を喰らわせてあげる。

「さあ、真っ黒に燃えなさいな。散り行くあなた達は、とっても綺麗よ」

アドリブ・改変OKです


茅原・紫九
とにかく情報が足りねえ状況だと時間が惜しい
死にゆく人が1か100かも分からねえなら猶更だ

近距離での攻撃は胞子が避け辛えから悪手と見て中距離から絵の具を飛ばす
殲滅でなく突破だからな、倒す敵は最小限で突き進む
だが周囲を囲まれたり致命的な状態になりそうなら別だ、足を止めてでもしっかり対処する

最速でなく快速で、ベストでなくベターを心がけるぜ
いつも通り有利な戦況を維持しつつ、無理のない範囲で急いで向かおう


コノハ・ライゼ
……どうせ光を見るのなら、少しでも憂いは無い方がイイでしょ
ただでさえ闇深い世界なのだから

【WIZ】
広く効率よく攻撃し、機敏に動ける者を少しでも早くこの先へ
館へ向かう方向の内、出来るだけ敵数の少ない箇所を中心に【彩雨】で攻撃
『高速詠唱』からの『2回攻撃』で多数への被弾を狙う
ある程度敵を散らせたら邪魔な個体から
「柘榴」で『傷口をえぐる』ように攻撃しついでに『生命力吸収』も狙っておこう
特に胞子を撒き散らさんとしている個体には要注意
見付けたら優先的に攻撃、反撃の被害を抑えたいトコ

仲間を行かせる事が出来たなら後は残さず喰らうだけ
背を取られちゃ敵わんからネ
なあに血など流れなくても、腹の足しにゃなるデショ?


深護・刹那
きっと、その手は剣を握る必要がなかったはず。
きっと、彼女は怒りより笑顔の方が耀くはずですわ。

ゆえに。不肖、深護・刹那、参ります。
過去(悲劇)を清算し、現代(いま)を生き、未来に進むのがわたくしたちですので!

のっけから全力全開の『からくり仕掛けのセツナ』ですわ。
「セツナ。参りますわよ!」
セツナの力を借りて肉弾戦、いきますわよー!
「えいっ、とうっ、たーっ!」
虫型魔獣とか身長足りなくても足元を攻撃しますので!
怯まず、怯えず、まっすぐに、ですわ!

周囲が片付いたら先を急ぎますわ。
まだまだ、本命はこの先。
休んでる暇はありませんわ。



 夢はうつつ。
 うつつの私はヒトガタ。
 ヒトガタは繰られ夢を見る。
「セツナ。参りますわよ!」
 先を急げとあらば端から全力、深護・刹那(花誘う蝶・f03199)は傍らにからくり人形のセツナを呼び起こし、力いっぱいに地を跳ねた。
 ──これが、人形の、刹那の、夢。
 呼び起こしたからくりの人形遣いが、人形を本体とする刹那を繰れば、ファンガスを躱すなど造作もない。ファンガスから放たれた胞子をひらりと躱し、齢よりもずっと幼い見目の女は一足飛びで詰め寄った。
「えいっ」
 身を屈めてくるりと一転。ファンガスの足許に一撃を入れる。
「とうっ」
 そのまま跳ね上がって顔にも一撃。
「たーっ!」
 最後にはどんと胴を突き飛ばす。
 続けざま、何かが刹那の傍らを過ぎた。絵具だと気づいたと同時、敵を色づけた色彩は、爆ぜてファンガスを破砕する。宙を散る欠片には眼もくれず、茅原・紫九(風に流され来たる紫煙・f04064)は敵陣の穴を一気に駆け抜けた。
(「とにかく、時間が惜しい」)
 予知によれば、少女だけでなく、知らぬどこかで次々と命が失われている可能性もあると云う。消える命の燈火の数は知れぬとなれば、一層紫九の脚は逸った。
 接近すれば胞子が避けづらいと視て、少し離れた先から絵具を飛ばす。殲滅はせず突破を目指す紫九は、深くフードを被りなおすと、鋭い目つきで戦況を見回した。
 幸いながら、今この森を駆け抜ける猟兵は自分ひとりではない。これならば敵に周囲を囲まれることはないだろう。無理をせず、有利な状況を維持しつつ急ぎ進む、それは紫九にとって常であり得意とするところ。
「一人より速そうだしな、合わせるぜ」
「うん、ボクも君と合わせるよ!」
 一声響かせ、絵具を飛ばした紫九に対して、ステラ・ハシュマール(炎血灼滅の死神・f00109)が肯いを返す。軽やかに跳ねながら、一振りして担いだチェーンソー刃の拷問器具。大鎌型のそれを構え、ステラはファンガスの群れに飛び込んだ。
 その顔が少し顰められたように視えたとすれば、それは恐らく。
 ──ボクキノコが嫌いなんだよね。
 視るには構わないが、食べるのは遠慮したい気持ちが故。消えてもらおうかと、紅の瞳がすうと細まる。
「毒キノコは、灰の一欠けら残さず焼却だ」
 軽く告げた、その一言が最後。雰囲気を一変させたステラの、鎮魂と葬送の名を関する大鎌がファンガスらを豪快に薙いだ。
 実に、サディスティック。
 一振り。また二振り。まだ止まらぬ。ファンガスの叫喚に怯むどころか笑みを深めすらしてずたずたに切り裂く。それに危機を感じたか、一斉にステラへ襲い掛かるファンガスらを、女は両腕広げて出迎えた。
 たおやかに宙を撫でたステラの指先から、鮮血が堕ちる。
 ──紅き血潮に染められ、紅き荊に抱かれ、我が内に眠る炎血よ、終焉を抱け。
『終焉ヲ抱ク紅蓮ノ荊!!』
 さあ、真っ黒に燃え上がれ。
 炎々盛る焔に呑まれ、ファンガスらの絶叫が闇の森に響き渡った。ひらりと華やかな服裾をひらめかせ、女はその傍らをすり抜ける。──散り行くあなた達は、とっても綺麗よ。
 そして追撃の雨は未だ止まぬ。四方に跳ねた焔の中、森に無数の煌めきが降り注ぐ。
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)の彩雨は、相手に雨宿りの間を与えない。高速詠唱、そして連撃。敵陣の手薄を的確に見抜いた氷の彩りが、突き進むための路を造りあげた。
「オレも追うから先行ってて」
「わかった、任せたぜ」
 優男の見目をした男はひらひらと掌を振ってみせる。彼の口許に気儘で気まぐれな笑みが浮けば、紫九の察しは速かった。煙管の紫煙は焼け跡からくゆる煙の中に消えていく。
 そう、まだまだ本命はこの先だ。紫九に続き、刹那もまた駆け出した。
 件の少女の掌は剣を握る必要がなかったはず、怒りより笑顔の方が耀くはず。ゆえに不肖、深護・刹那、いざ参らん。
 去を清算し、現代を生き、未来を進む、そのために。
 走りゆく足音を背に聞きながら、コノハは残りのファンガスらを見返した。
「背を取られちゃ敵わんからネ」
 世界を映すナイフを遊ばせる掌は軽く、男は仲間とは逆、残敵の群れへと飛び込んでいく。己にわらわらと群れるファンガスらを纏めて針の雨で貫いて、手早くナイフを奔らせば断末魔がそれを呑む。
(「なあに血など流れなくても、腹の足しにゃなるデショ?」)
 心内で呟き落し、コノハは手負いのファンガスにナイフを突き立てた。薄氷の見抜きは実に的確、胞子を吐かれる前に一層抉り、生命力ごと吸い上げる。
 ──どうせ光を見るのなら。
 少しでも憂いは無い方がいい。
 ただでさえ闇深い世界なのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジロリア・アンブッシュ
生き残りの子が、オブリビオンの所に向かってる?
あの人(亡夫)が聞いたら、もう救助に行く為に走り出してますね。

……大丈夫よ、『あなた』。
私が代わりに走って、全部どうにかしてくるから。

教会に急行。
少女の足跡あれば追跡し、発見し次第事情を話し確保。

ファンガスとの交戦時は【『あなた』はここにいる】使用。
それは亡夫が得意とした炎壁による攻撃を、(方法は違えど)代わりに行使する役割演技。

聖塩の結晶を爪で削り、振りかけて生じた炎を媒介に16枚の炎壁(2㎥大)を生成。
1枚を毒胞子を阻み焼却する盾に使い、残りの壁で敵を追い立て囲み押し潰し燃やす。
森なので足元の草花に延焼せぬよう壁は浮揚させ、周囲延焼分は即消火。



 大丈夫よ、あなた。
 わかっているわ。
 私が代わりに走って、全部どうにかしてくるから。
 ──ねえ、あなた。

 指先から細かな白が零れ落ち、やがて焔と化して燃え盛る。
 聖性を帯びた塩の結晶を爪で削り、媒介として生成した炎の壁は全部で十六。ジロリア・アンブッシュ(燈狼の未亡人・f05791)の体躯を包み込むほどの大きさの炎壁が一枚、ジロリアの前に浮き、ファンガスの胞子を焼き尽くした。
 同時に残りの壁たちが、ファンガスを囲って押しつぶす。揺らめく焔が一層盛り、元はきのこであった炭屑のかけらが風に舞った。
 炎はすぐに消さなくてはね。
 足元の草花も燃やしたりしないわ、大丈夫。
 きっと、あなたならそうするでしょうから。
 亡夫が得意とした炎壁、そしてそれを繰る亡夫の姿。それらを己に重ねて纏い、ジロリアは漆黒の森を駆け抜ける。
 あの人ならば、生き残りの娘がオブリビオンに向かっていると聞くやいなや、走り出していただろうから。
 ジロリアは誰よりも疾く闇夜を翔けた。女が駆ける足許には少女のものらしき足跡たち。足跡の真新しさは、まもなく少女に追いつけるであろうことを示していた。
(「……あれは」)
 樹々の向こうに人影が視えた。
 ええ、間違いないわ、あの子がきっと。
 ジロリアの形のよい唇が言葉を叫んだ。『あなた』なら伝えるはずの言葉を、目一杯に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリヤ・ベル
■ユーゴさま(f10891)と一緒に

ユーゴさま、ユーゴさま。
いそぎましょう。
まだ間に合うなら、がんばりたいです。はしります。

くらいもりは、おそろしい。
おそろしいけれど、よくしっています。
迷わないよう気をつけて、奥へ。奥へ。
不意をつかれないよう、くらがりには気をつけてゆきます。
足元にもご注意を。

ファンガスと行き会ったら、ためらいません。
わたくしは、ユーゴさまを援護するように。
胞子を撒きそうな個体に気付いたら、注意を。

はい。なんとかいたします。
おまかせください。
【ジャッジメント・クルセイド】で、阻まれないよう確実にたおします。

ここで足を止めるわけには、いきません。
まだ、はしれます。ゆきましょう。


ユーゴ・アッシュフィールド
■リリヤ(f10892)と一緒に

お前と出会ってから、人を助けてばかりだ。
そもそも俺は……おい、リリヤ待て!
ああくそ、ガキのくせに足が早いな。
仕方がない、俺も走るぞ。

森に関しては不慣れだが、俺が前を走ろう。
周囲の警戒とルートは任せた。

ファンガスは問答無用で斬って捨てる。
胞子を撒くようようなら【トリニティ・エンハンス】で風の魔力を纏い、すべて吹き飛ばす。

数が多かったり、不意を突かれた場合か?
それはリリヤがなんとかする。頼んだぞ。

よし、この調子で一気に駆け抜けるぞ。

※改変・追記は自由に頼む



 お前と出会ってから、人を助けてばかりだ。

 娘の後ろから、娘の名を呼ぶ声がする。聞きなれた声音は「待て」とも紡ぎ、苦い呟きと溜め息も紡いだ。けれども娘──リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)は自分が告げたとおりに、自分にできる精一杯の疾さで駆ける。
 それは無論、拗ねたのでも、無視をしているのでもない。
「俺が前を行く。ルートは任せた」
 結局は自分の前を走る、その大きな背を知っているからだ。
 ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)の背を仰ぎ、リリヤはこくり頷いた。はい、なんとかいたします、と小さな掌を握る。
 うっそうと茂る樹々の奥は、闇に呑まれた世界の中でもひときわ暗く、茫々どこまでも影に満ちていている。生きものの息吹が途絶えたような、恐ろしい、恐ろしい、森の奥。けれどリリヤはこういう森をよく知っていた。
「ユーゴさま、ユーゴさま」
 翠の眸がぱちんと瞬き、前を行く男の名を呼べば、男の脚が一層跳ねた。樹の裏から現れたファンガスを真っ二つに斬り落とす。
「リリヤ、頼んだぞ」
「おまかせください、ユーゴさま」
 娘の声はすぐに返るが、ユーゴの脚が動くのはそれよりも速かった。返事より速く翔けるのはおそらく信頼がゆえ、男は背を預け、続けざま現れたファンガスの群れに飛び込んだ。
 男が纏うたのは風。刃を繰ればようよう広がるつむじ風、嵐となった突風が毒の胞子を吹き飛ばす。同時に身体を捻って旋回、風に気圧されて動きを止めたファンガスらを切り伏せる。草臥れたアッシュブロンドが風に揺れた。
 重ねて、木漏れ日のような耀。
 リリヤが自分の指先を残党に差し向ければ、耀はそれを包みこみ、抱くように葬り去る。
 道が開ければ、ふたりはすぐさま駆け出した。リリヤの齢幼く小さな身体を考えれば、走り続ける負担は相応に大きく、けれど娘の脚は決して止まらない。
 だいじょうぶ、まだ、はしれます。
 ゆきましょう、まだ間に合うなら。
 わたくしは、はしります。がんばりたいのです。
 懸命に走る娘を一瞥して、頷いて、ユーゴもまた地面を蹴った。無理をするなと紡ぎながら、無理を受け止めもする男は、娘がゆく路を切り開く。
 森を抜けるまで、あと少し。
 ユーゴの眼に翡翠の髪を靡かせた少女の背が映る。

 お前と出会ってから、人を助けてばかりだ。
 ああ、それでも──。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『救済の代行者・プレアグレイス』

POW   :    黒死天使
【漆黒の翼】に覚醒して【黒死天使】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    鏡像の魔剣・反射
対象のユーベルコードを防御すると、それを【魔剣の刃に映しとり】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    鏡像の魔剣・投影
【魔剣の刃に姿が映った対象の偽物】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「貴方の大切な者達は、此処に居るわ」
 プレアグレイスの傍らに現れたのは、紛れもなく、エマの家族の姿をしたものたちだった。
 瞳も、髪も、身体も、すべてはエマの記憶の彼らのまま。けれど彼らの瞳にはかけらも感情を感じない。
「皆苦しみから解放されたのよ。解るでしょう?」
 苦しむなかれ。
 悲しむなかれ。
 私はすべてから貴方を解放する。
 安息の死こそ真なる救い。
 これこそ、プレアグレイスの救済である。
 どこまでも美しく淑やかな少女の唄声を聞いた、エマの瞳が見開かれる。
「ふざけるな! それのどこが救済だ! お前はみんなの死に様をちゃんと見てないからそんなことが言えるんだ!」
 慟哭のような叫声が柔い唄声にぶつかった。体にまとわりつく唄を振り切るように、長剣を振ってきつく睨む。あの死に様をエマは忘れない、忘れたくとも決して忘れられやしないのだ。
「エマはお前を絶対許さない! エマみたいな人は、エマで最後でなくちゃだめなんだ!」
 そのために、プレアグレイス、エマはお前を殺す。
 震えて滑り落ちそうになる長剣を何度も握り直し、気を抜けば膝が折れそうになる脚を叩き、エマはできうる限りの声で吼えた。剣を振りかぶり、一歩を踏み出す。
 ──その時だ。
 エマの耳に声が響いた。自分に静止を告げる声だ。反射的に足を止め、エマは弾かれたように振り返った。
深護・刹那
ではでは。不肖、深護・刹那、参ります!

随分と悪趣味な天使がいたものですわ。
その方たちが望んだのならば、仕方のないことでしょう。
ですが、一方的な救済はただの自己満足に過ぎませんわ。
見過ごすわけには参りません!

わたくしは、エマさんをお守りしつつ、
シンフォニック・キュアで戦線を支えましょう。
謳うは、エマさんの悲しみ、勇気、そして愛。
大丈夫、わたくしたちがついています。
その本懐、きっと遂げましょう。

こちらを狙ってくるようなら、エマさんの盾になりつつ、
オペラツィオン・マカブルで攻撃をいなしますわ。
絶対通しませんわ、ここは!


三嶋・友
…優しい子だね
復讐心は勿論あると思う
だけど、あんなにも震えているのに
きっと恐怖と悲しみでいっぱいなのに
悲劇を繰り返さない為に必死で此処まで駆けてきたんだ
なら、やっぱり…助けたいよね!

エマさんが狙われた場合はダッシュで駆け寄りかばう
此処は私達に任せて
最後にするんでしょ?
貴女が此処で倒れたら、今度は私達の嘆きが積もっちゃうよ
大丈夫、私達は絶対に負けないから!

鏡の魔剣…
借り物の技に、借り物の味方、か
…そんなものばかりだから、本物の慟哭が届かないんだよ!
貴女の救いなんかいらない
そんなもの、そのまま貴女に返してあげるッ!

真の姿を開放
孤蝶乱舞でさらに強化
孤蝶を手に、持てる力の全てを叩き込んでいくよ!



 森がさざめき葉を散らせると同時に、幾つもの影が飛び出したのをエマは視た。
 影の内のひとつ、自分より少し背丈が小さな娘が傍らを過ぎるのに合わせて振り返れば、娘もまたエマを視る。
「此処は私達に任せて。最後にするんでしょ?」
 ──貴女が此処で倒れたら、今度は私達の嘆きが積もっちゃうよ。
 そう、三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)が口許を緩めた瞬間、黒の剣圧が波紋のように広がった。
 反射的にエマの前で構えた友を無数の風が裂く。
 友の眼前にプレアグレイスが立っていた。呪刀で薙げば宙に消える彼女の姿、その向こうにプレアグレイスが微笑んでいるのを見やり、友はそれが鏡像であったことを知る。
「どうして」
 邪魔をするの、と。愛らしい唇が紡ごうとした言葉は途中で止まった。
 漆黒の少女が弾かれたように振り返れば、そこにはからくり人形が浮いていて、
「『どうして』? 一方的な救済はただの自己満足に過ぎませんわ」
 無数の風が今度はプレアグレイスを切り裂いた。
 深護・刹那(花誘う蝶・f03199)はかくりとついた膝を払い、青の瞳で彼女を見据える。
 刹那のオペラツィオン・マカブルが刃を呑み込み、彼女の許へ吐き出したのだと気づけば、天使の双眸がすうと細っていく。
 救済を語るには冷淡すぎる眼差しに、けれど刹那は決して引かない。
 彼の者たちが望んだことならいざ知らず、望まぬ死を与えようとはなんと悪趣味な天使だろうか。
「見過ごすわけには参りません!」
 実に真直ぐな一声が夜陰を跳ね返さんと駆け抜けた。
 刹那の声を追うように、友の脚も駆け──ようとしたところで服を引かれて振り返る。友の瞳と、エマの今にも泣きだしそうな瞳が重なった。先ほどの傷を心配しているのか、震える彼女の掌を握り、友は笑う。
「大丈夫、私達は絶対に負けないから!」
 そして、今度こそ友の脚は地面を蹴った。
 彼女は優しい子だと友は思う。あんなにも震えて、恐怖と悲しみに溢れながら、それでも必死に此処まで駆けてきたのだ。
 ──助けたい。
 主の想いに応えるように友の周りを無数の蝶が舞えば、幻影の蝶は娘に力を貸してくれた。友は高まった己の身体能力を糧に大きく跳ねて、掌の中のただひとつの蝶を振りかぶる。
 偽りの友が、そこに居た。
 プレアグレイスの鏡像であることはすぐに解る。
 借り物の技、借り物の味方。
「……そんなものばかりだから、本物の慟哭が届かないんだよ!」
 そんな救いなら、自分はいらない。
 振りかぶった呪刀を構わず振り下ろし、幻影ごと叩き斬る。漆黒の天使の瞠目が視えた。自分の幻影に刺されたか、友の肩に激痛が奔ったが娘は決して刀を落とさない。
 淑女とは思えぬ、悲鳴が響いた。
 ──……大丈夫。
 刹那の唄声がようようと薄暗い夜に響き渡る。
 大丈夫、大丈夫、わたくしたちがついています。あなたの悲しみ、勇気、そして愛を紡ぎましょう。
 エマのこころと己の大切な想い出を孕んだ刹那の柔い声音は、甚い悲鳴すら包み込んで広がっていく。
 共感するものたちの傷を塞ぐ癒しの唄声は、傍らのエマもぬくもりで包んだ。
 気を張っていたのだろう、エマの頬に一筋の涙が零れる様を視て、刹那もまた笑う。
「その本懐、きっと遂げましょう」
 これはそのための、第一歩なのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

茅原・紫九
なんか叫んでる奴がいるな……
おそらく件の生き残りだろうが知ったこっちゃねえ
事情を知らねえなら同情も憐憫も失礼極まりねえだろ?
怒りも悲しみも当人だけのものであるべきだと俺は思う

【トリニティ・エンハンス】を使用、防御力重視で強化
俺自身は徹底的に補助に回らせて貰うぜ

可能な限りその少女を敵の射線上に入れず割り込むように行動
多対一の戦いだからな、遠距離組の射線を通し近距離組の隙を消すようにもだ
流動的に動く戦場全員の立ち位置としてえことすること、5秒先を見据えて負けねえように動く

勝つための動きは誰かがやってくれんだろ。多分きっとメイビー



 誰かが何かを叫んでいる声がする。
 けれど声の主には眼もくれず、茅原・紫九(風に流され来たる紫煙・f04064)は森を抜けた脚のまま、プレアグレイスの許へ駆けた。
 一瞬、紫九の視界を過った少女は件の生き残りであろう、だが知ったことではない。
(「──事情を知らねえ俺が」)
 同情も、憐憫も、どうして向けられようか。
 怒りも悲しみも当人だけのものであるべきだと、そう思う。
 紫九が剣を抜けば焔が渦巻き、水が跳ね、風がごうと唸りを上げた。
 水の流れに乗るようにして草原を滑る。自身の背後にプレアグレイスの鏡像が現れたのに気づくと同時、少女の本体もまた黒剣を振りかぶるのを認め、紫九の剣が軌跡を描く。
 唸る焔が本体からの剣圧を焼いた。焔は実に、派手に燃え上がる。まるで天をも焼くが如く。
「どうして」
「優雅にお喋りしてる場合かねえ」
 紫九の吊り上がった双眸と少女の嫋やかな瞳が重なった。同時に仲間のからくり人形がプレアグレイスの背後に浮く。
「お前、隙だらけだぜ」
 焔も紫九の存在も、囮であったのだと気づく頃にはもう遅い。
 人形から放たれた風がプレアグレイスの切り裂くのを見届けて一転、紫九は彼女から距離を取る。
 五秒先を見据えて流動的に、戦場全員の立ち位置を把握して補助をする。徹底した『負けない』戦い、それこそが茅原・紫九たる者の本領であった。
 当然、紫九は猟兵たる娘がプレアグレイスの許へ翔ける姿も見逃さない。鏡像を嗾けて身を引こうとした少女の足許に、局所的な風を巻き起こす。足が縺れた少女の瞳が再び紫九に向いた。今度は、忌々しげに。
「お前は俺が逃がさねえ」
 次の瞬間、歪んだ淑女の悲鳴が闇夜に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チガヤ・シフレット
救済の代行者、ねぇ……。まぁ、確かに死んだらそれでさようなら、すべてからの解放だな。
だけど、望んでもいない奴に押し付けちゃあいけないな。
やっぱり、笑顔であの世へ行けなきゃあなぁ?

さて、お嬢さん。命を賭けるのはそれで勝てるだけにしときな。

ヴァリアブル・ウェポンを起動。
一気に間合いを詰めて銃弾を叩き込もう。
まずは攻撃回数重視で。【二回攻撃】とかを使いながら撃って撃って撃ちまくる。
魔剣や翼とか、相手の攻撃の動作を狙って撃ちまくれればいいんだがな。

仲間と連携しながらうまく立ち回ろう。
ある程度ダメージが与えられたら威力重視に切り替えて、砲撃だ。

さぁ、楽しくいこう。最後はハッピーなのがいいだろう?


エムピースリー・シャローム
真の姿を解放
電磁の障壁を纏う

行うことはシンプルです
近寄ってくれば踏みつけましょう
攻撃してくれば盾で受けましょう
剣を振るい追い払いましょう(属性攻撃:ヒートソード、二回攻撃)

行うことはシンプルです
この場で今生きる誰一人、過去(オブリビオン)に連れ去らせないこと

今までの戦闘で起こった攻防の記録からタイミングを計り、過去の放つユーベルコードを無効化する

過去は過去へ還りなさい
私たちは現在で未来に向かうものなのです



「さて、お嬢さん」
 マズルから伸びる細い煙を消すように、両腕の義手を一振りしたチガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)は、エマに背を向けたままの姿でそう告げた。背中の彼女に向けて、ひらひらと振れる腕。
「命を賭けるのはそれで勝てるだけにしときな」
 ──助けに来たぞ、さぁ、笑え。
 女のその背に、薄暗い夜の中でも鮮やかな、ピンクのポニーテールが揺れていた。
 遠くからぼんやりと視えた、漆黒の天使の傍らにいた人間たちは、少女の家族であっただろうか。
 エムピースリー・シャローム(ウォーマシンのシンフォニア・f01012)は電磁の障壁を纏うて跳ねて、少女の幻影を踏みつけた。
 家族、それは今でもとても暖かくて、幸せで、寂しい。
 エマもそう想ったかなどと、朴念仁たる古いロボット兵が思考を巡らせたかは解らない が、兎も角エムピースリーは剣を取った。
 行うことはシンプルです。
 この場で今生きる誰一人、過去に連れ去らせないこと。
 機械音を響かせながら剣を繰る。彼の剣が軌跡を描く度に、焔はごうと唸りを上げた。
 対するプレアグレイスが水を纏いて焔を弾く。魔剣の反射だ、エムピースリーは少女の行動を記録しながら、同時に反撃の剣戟を盾でいなした。自身の体躯を刃が掠めたが彼の装甲は硬い。きん、と硬質な音が響く。
(「救済の代行者、ねぇ」)
 確かに死んだらそれでさようなら、すべてからの解放であることは否定しない。
 だが、望んでもないことを押し付けるのはいかがなものか。
 エムピースリーが対峙する間に、チガヤはプレアグレイスの背後に回り込んだ──と思えば、見慣れた顔が眼の前に現れ、瞠目する。この、目つきも人相も悪い顔。
「私か!」
 気づくや否や、チガヤは反射的に身を捩った。紙一重で銃弾を躱し、ワイヤーで両腕を絡め取り、額に銃口を当てる。笑顔のない偽りの己ににぃと嗤った。
「やっぱり、笑顔であの世へ行けなきゃあなぁ?」
 幻影に連続の銃弾を叩き込む。
 一方、隙を埋めるかのように繰られたプレアグレイスの剣は、エムピースリーが受け止める。ナイス、と女の口許が動いた。
 エムピースリーの記録は正確であり、またそこから弾き出された予測は正解であった。
 次手、魔剣の反射。
 剣戟の回数増加。
 相殺します。
 電磁の障壁、最大出力。少女の眼にも止まらぬ速さの連撃をすべて捌く。
「さぁ、楽しくいこう」
 その背で己の力を威力重視に切り替えたチガヤが再び銃口を少女に向けた。銃口が示す先は無論笑顔のハッピーエンド。
 飛び退こうとしたプレアグレイスの細い両腕をロボット兵の指が掴んだ。力強い無骨な掌は強く、強く、少女の手首を握る。
「過去は過去へ還りなさい」
 私たちは現在で未来に向かうものなのです。
 その、機械の声音を合図とするかのように、激しい砲撃が歪な救済を撃ち抜いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
死が救済だの、死者と同じ姿の別物だの……あァ、そういうのは大嫌いだ。全く反吐が出る。
下がっていろ、お嬢さん。その意気を買おう。我々も、手伝わせてもらうぞ。

容赦はせん。【呪纏】で強化したのち、【ドラゴニック・エンド】で仕留めるぞ。
【槍投げ】でも何でも、当たりさえすればいいのだ、こういうのは!
召喚した蛇竜は攻撃にも防御にもうってつけだ。私の黒炎と合わせて焼き払ってくれる。
竜を呼ぶ術式、跳ね返せるものなら跳ね返してみることだ。高速移動がある以上、そう易々と当たりはしないがな!

なに、貴様の流儀にのっとって、貴様を『救済』してやるだけだ。
死を救済と謳っておいて、よもや死にたくないなどとは言うまいな?



 あァ、全く反吐が出る。
 思わず双眸を細めたニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)の頬の横を、薔薇の花びらが流れていく。
 場違いなほど艶やかなピンクローズは、酷く甘ったるい香りがした。
「下がっていろ、お嬢さん。その意気を買おう」
 急いで走ってきてみれば随分と聞き心地の悪い言葉が並んだものだ。
 死が救済だの、使者と同じ姿の別物だの。
 そういうのは大嫌いだ、反吐が出る。
 エマに一声かけた後、ニルズヘッグは自分の身体からじわりと呪詛を滲ませた。途端、男の姿は消える。次の瞬間には少女の背を取った。仲間の攻撃に足を縺れさせた隙を逃さず、男はプレアグレイスを槍で貫く。
「貴方に問うわ」
 一方で、少女の掌がニルズヘッグの槍を掴んだ。
 細い指先ながら槍を決して抜かせぬ彼女は、男の瞳を間近に覗き込む。
「私を殺そうとする貴方は、あの子を救えるの」
 黒剣の切っ先がニルズヘッグに向いた。判断は一瞬、即座に蛇竜を呼び起こし、少女めがけて嗾ける。寸での所で黒剣を躱して地を滑り、男は少女の眼差しを見返した。
「貴方もそうやって、死を選ぶのに」
 その言葉は、ニルズヘッグの呪詛が寿命を削っていることに気づいている証であった。
 刻々と寿命を喰らう呪詛、男は少女へ応える代わりに、その代償を以って得た黒炎を呼び起こす。
「なに、貴様の流儀にのっとって、貴様を『救済』してやるだけだ」
 同時に蛇竜もまた焔を吐けば、漆黒の少女が顔を顰めるほどの火焔の渦、その中にニルズヘッグは飛び込んだ。男の指先が少女に触れる。
 灰燼の隙間から金の双眸が覗くが、そこに容赦の色など存在しない。
「死を救済と謳っておいて、よもや死にたくないなどとは言うまいな?」
 神すら気圧す、その殺気。
 薔薇が燃える、灰が散る、焔の唸りは少女が零した小さな悲鳴も呑み込んだ。
 ──さァ、その身を以って、己の救済を思い知れ。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
きっと茸掃除の間に仲間が間に合ってると信じ
故に首魁への対処を最優先

【POW】ああ、さっきのと違って実に美味そうだネ
「柘榴」の刃を肌に滑らせ『高速詠唱』で【紅牙】発動
正面より喰らい付き離さぬままに『2回攻撃』で右目に仕込んだ「氷泪」展開
刻印から奔る稲妻で『傷口をえぐる』様にもう一度喰らう

反撃はどれも厄介だが自身の投影には眉ひとつ動かさず斬り付ける
そんなモノ居ない事はよぉく分かってる
なによりオレがニセモノなんだから

もしエマに危険あれば『捨て身の一撃』で『かばう』ヨ
ついでに『生命力吸収』、転んでもタダでは起きないってヤツ
その勇気、叶えてやりてぇケド
オレに貸せる手はコレだけだからね

(アドリブ歓迎)



 コノハ・ライゼ(空々・f03130)が教会周りに辿り着いた頃、そこは陽を無くした世界とは思えぬほどに眩かった。砲撃に焔、数々の闇夜を照らす耀がそこにある。
 コノハの視界の端に翡翠の少女が映った。自分が信じた通り、間に合ったのだと息を吐く。少女の震える掌がいまだ長剣を離していないのを見取るも、男は脚を緩めなかった。少女の勇気を叶えてやりたいが、自分にできることがあるとすれば、いざという時にかばってやること位だろう。
 コノハの鼻先を掠める、場違いなほど甘ったるい香りのピンクローズ。
 ああ、さっきのと違って実に美味そうだネと口遊みながら、男は愛刃を頬に滑らせた。一筋の滴る血を代償に、牙の殺戮捕食形態にその姿を変えていく。 
「どうして、どうして」
 私の邪魔をするの。
 救済を信じる乙女のかぶりが振られ、艶めく黒剣が幻想を描いた。
 紫雲の空に薄氷を浮かべた、どこか軽薄な優男がそこにいる。
「ああ、君から見たオレはコレってコト」
 此方を喰らおうと紅の牙を剥く幻影を、コノハは眉ひとつ動かさずに見返した。
 映し身とは本来厄介なものなのであろう、けれど男にとっては何でもない。そんなもの居ないことは疾うに解りきっていた。
 それは、強靭なる精神力だとか、自分の信念だとかいった、清く正しいものなどではない。
 ──なによりオレがニセモノなんだから。
 すれ違いざまに斬り捨てる。音もなく消えゆく幻影を見送りすらせず捨て置いて、コノハはプレアグレイスに詰め寄った。
 漆黒の天使はひどく哀しげに双眸を緩め、焔と纏うたままコノハの頬に触れる。自分の肌がじりと焼ける音がした。
「貴方も」
 殺してあげなくちゃ、と。彼女の声音を耳許に、男はその首筋に牙を突き立てる。
 ──イタダキマス。
 ぶちりと筋が切れる音。
 次いで右眼の薄氷が抉るように稲妻を奔らせ、少女の首根を一層深く抉り取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

アンナ・フランツウェイ
死してなお弄ぶか…。それの何処が救済だ。ならば私の掲げる救済…、断罪を持っての赦しで、真の救済という物を教えてやる。
死んでいった者達の為に。エマに私のような憎悪の道を歩かせない為に。

私は鏡像の魔剣・反射の効果を逆手に取り、プレアグレイスを倒す。

魔剣の攻撃は見切りでの回避と、武器受けを使い対処。プレアグレイスへ接近する。近づけたら私のユーべルコードの口上「断罪の時は来たれり…」と言いながら攻撃し、ユーべルコードを使用した攻撃だと見せかける。

敵が動揺したらその隙に30cm以内へ接近。正真正銘のユーべルコード、断罪式・瑠璃唐花のギロチンの刃でプレアグレイスを断罪する。



 何れほど甘い香りに包もうと本当に染みついた匂いは消えない。いっそ花よりずっと、馴染みのあるこの匂い。
 ああ、あの少女の花びらは、血の匂いがする。
 黒の片翼の上で、護るようにかばい立ったエマと似た色の、長い髪が風に揺れた。アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)の口許がエマを呼べば、後ろから彼女が此方を見上げたような気配がする。
「──あなたは私のようにはなるな、エマ」
 然して一足、アンナは血の匂いの渦中に飛び込んだ。
 花の香りを超えるほどの匂いとは、あの花は何れほどの血を吸ったのだろう。そのうえ死してなお弄ぶ、それの何処が救済か。
 死んでいった者達のため、エマに自分のような憎悪の道を歩かせないため。
 断罪を以って、許しを。
 真の救済を。
 アンナが振り抜いた剣とプレアグレイスの黒剣が重なり、硬質な音を響かせた。ぎりと競り合いを暫し、頃合いを図って力を抜けば、薙がれる黒剣を屈んで躱す。
 ──断罪の時は来たれり。
 アンナの唇が詠唱を紡いだ。力を乗せてもう一撃、素早い一閃は、然し漆黒を超えられずに弾かれる。
 少女の指先が丁寧に空を撫で、黒剣が鏡のように艶めいた。
 鏡像の魔剣の反射──けれど反射は何も起こらない。
 アンナの詠唱はフェイクであった。見開かれた少女の瞳を見返して更に一足、アンナは少女の懐に飛び込んでいく。その距離僅か三十センチ。強い、花の香りがする。
「アンタに真の救済という物を教えてやる」
 断罪の時は来たれり、贖罪の時。
 碧の瞳がすうと細まりねめつける。今度こそ、アンナのユーベルコードは発動した。蓮に牡丹、瑠璃の唐花が断罪のギロチンを呼び起こす。
 これぞアンナの掲げる救済である。
 少女の繊細な身体など優に両断しそうな程の巨大な刃が、一直線に空から落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​




「あ、あ、あっ……っ!」
 喘ぎ、嘆き、嗚咽、そのすべてでもあるような音が少女から零れ落ちた。どろりと流れた体液が地面に滴り、汚れた水溜まりが広がっていく。
 どうして、どうして、どうして。
「どうして邪魔をするの……私を殺して、そうして、貴方達は」
 この世界に生きるものを救えるの。
 ぎりと漆黒の乙女の歯が鳴った。白い指先が黒剣を握り締める。最後の力を振り絞るように、少女は黒剣を振りかざした。
 花も、翼も、ようよう黒に染まりゆく。一層の黒と死を背負おうた少女は、ゆっくりと優雅に空を仰いで。
 そして、吼えた。
 もう嫋やかな淑女の姿はそこにない。冷酷無比の双眸が猟兵たちをねめつけた。
 さあ今、決着の刻。
西院鬼・織久
【POW】
【心情】
ほう、救済を掲げるか
なればやってみるといい
その血肉を以て我等を餓えから救済して見せよ

【行動】
「視力」「第六感」を働かせる
常に敵の動向に注意し攻撃の機会を狙い隙を「見切り」

【戦闘】
「ダッシュ」を利用し「先制攻撃」を狙う
距離が離すぎているなら「殺意の炎」「範囲攻撃」で牽制
自分の間合いに入り「二回攻撃」「なぎ払い」
敵が動き回るなら「殺意の炎」で周辺ごと焼き払う
または「串刺し」で動きを止める
負傷箇所には「傷口をえぐる」で更にダメージを

敵からの攻撃は致命傷のみ「見切り」
避けられない物のみ「武器受け」
その時にタイミングを見計らい「怪力」も利用して「カウンター」



 殺気が増した漆黒の乙女を、同じく殺気と、加えて狂気を孕んだ紅が見返した。齢こそ少年でありながら幾分も上に見られる見目のダンピールが大剣を振れば、乙女の目線が彼に向く。
 救済を掲げるか、なればやってみるといい。
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)はゆっくりと乙女に歩み寄った。すべてはオブビリオン狩るために、血と怨念宿る刃を振って、
「その血肉を以て我等を餓えから救済して見せよ」
 織久は一瞬で距離を詰めた。先制の一撃、ぎんと刃が重なればすぐさま距離を取り、追撃の黒剣を素早くいなす。
 ──我等が怨念尽きる事なし。
 怨念と殺意の焔が一気に爆ぜた。盛る焔は漆黒の乙女に追撃を許さぬ。剣の間合いを捨て、ついで槍。あらゆる武具を使いこなす西院鬼の男は、焔の向こうの乙女を突き刺した。
 脇腹を刺し貫いた、手応えはあった。
 更に抉ろうと槍を押すもぴくりとも動かぬ。織久が視線を動かせば、焔の向こうのプレアグレイスが槍を掴んでいる姿が見て取れた。
 吊り上げた瞳に憎悪を宿した乙女が一層強く槍を掴んだ、その瞬間。
 ごうと唸る焔が槍を伝った。
 燃え広がるのはまさに一瞬、怨念と殺意の焔を映したかと、考えを巡らせる頃には焔が織久の周囲を包んでいた。
 同時に乙女の黒剣が地を撃った。波紋のような剣圧、草原飽き足らず森までみしりと鳴り、避ける大地がつぶてとなって織久を叩く。
 ──やってくれる。
 剣圧に押された先は焔の中、真白の肌を焼かんと焔が爆ぜるのが視えた。
 ──然れども。
 織久はあくまで無表情に乙女を見返す。焔の向こう、爛々と光る殺意と狂気だけが鮮明であった。
 西院鬼はこの程度では終わりはせぬ。己の焔で焼かれるほどもろくは無いぞ、プレアグレイス。
 男は一足で踏み込む。
 同時に、剣を防がんと乙女もまた剣を振り下ろす。
 だが、ほんの一瞬、男の疾さが上回った。
「我等が糧になるがいい」
 織久の剣閃、然して乙女の脇腹から体液の飛沫が跳ね上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリヤ・ベル
■ユーゴさま(f10891)と一緒に

おいついた。
おいつきました。……よかった。
ゆきましょう、ユーゴさま。

わたくしは、回復に専念を。
【シンフォニック・キュア】で、ユーゴさまやみなさまの援護に努めます。
にせものが現れても、心を乱されることがないように。
ほんものは、なによりもよくしっています。

くるしみも、かなしみも、そのひとだけのもの。
どうするかは、あなたが決めることでは、ありません。
……くるしくても、かなしくても。
手放したくないものは、あるのです。

死を善しとしないのならば、わたくしはエマさまの味方です。
忘れなかった、そのこころに報いましょう。
だいじょうぶですよ。
ここで、おわりにいたします。


ユーゴ・アッシュフィールド
■リリヤ(f10892)と一緒に

おいついた、間に合ったな。
いくぞ、リリヤ。

俺は、【絶風】を使う。
名前なんて付けてはいるが、つまるところただの剣技だ。
ただひたすらに磨き上げた剣の技だ。
真似れるものなら真似るがいい、偽者を出すなら誰であれ叩き斬る。
傷はリリヤに任せた。多少は無茶をして戦おう。

プレアグレイスか、随分と自分勝手な奴だな。
『救いだ』と口にして行う、死者への冒涜は気持ちがいいのか?
綺麗な顔して趣味が悪いな。

エマ、そんなに震える腕で剣は振るえないぞ。
お前の思いは、お前の怒りは、俺達に届いた。
お前のような人が、お前で最後になるように、そいつは俺達が殺す。

※アドリブ改変、自由に



 おいついた、間に合った、いくぞと言葉を交わし合うふたりの背を、エマが初めに見送ったのは幾分か前のことだ。
 前を行く剣士と、軽やかな足取りで追う娘。
 この場にいる者たちは皆強くて、終わりにできるかもしれないと思ったのも束の間、尋常でない程の殺気を浴びて、エマはその場にへたりこんだ。
 こんな殺気、知らない。こわい。
 ──皆、死ぬの?

 自分たちを呼ぶ声が聞こえた気がして、ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)は振り返った。案の定、翡翠の少女が此方を見つめている。
「エマ、そんなに震える腕で剣は振るえないぞ」
 ぴくりとエマの肩が跳ねた。同時に掌から滑り落ちかけた彼女の剣を支え、リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)がエマを仰ぐ。こうして剣を落としかける位だ、ユーゴの言葉は実に正しい。
「だいじょうぶですよ」
 リリヤの指先がエマの掌に触れた。一瞬震えた彼女の指先は、やがてリリヤのぬくもりを確かめるようにその指先を握る。震える指先が、柔く、柔く。
「ここで、おわりにいたします」
 死を善しとしないのならば、わたくしはエマさまの味方です。
 忘れなかった、そのこころに報いましょう。
 娘の小さな指先が握り返せば、少女の長剣が硬質な音を立てて地面に落ちた。落ちた剣を継ぐように、ユーゴが己の剣を振る。
 お前の思いは、怒りは、すべて俺達が連れていく。
「お前のような人が、お前で最後になるように、あいつは俺達が殺す」
 灰殻が焔の残骸くゆる戦場を舞う。漆黒の乙女が繰る剣戟と一度、二度、繰り返し撃ち合いの末の競り合い。ぎりと刃を鳴らした刹那、少女の黒剣の煌めきが眼に止まった。
 もはや反射的に飛び退けば、ユーゴの鼻先を見慣れた剣閃が掠める。自分の映し身だと、認識したと同時、碧の瞳は漆黒の乙女が己の死角に廻り込もうと跳ねたのも視た。
 黒剣がユーゴの肩口を貫く。
 然してその剣を、男は掴んだ。
 我ながら無茶をしたと思う。乙女を捉えている間、己の幻影の相手は厳しい。映し身と云えども、それは剣技に長けた己に違いないのだ。
 それでも男は乙女を離さない。
「お前、趣味が悪い女だな」
 救いを掲げて死者を踏み荒らし、自己満足に浸る乙女に剣を振る。一撃では当然終わらぬ。二撃、連撃、眼の前の漆黒を持ちうるすべてで斬り刻む。
 同時に、ユーゴの脇腹を激痛が奔った。
 映し身の剣に抉られ、ぐらつく身体に男の足裏がだんと地を踏みしめる。
 ──歌が聞こえる。
 聞きなれた聲だ。いつもの鼻歌より少ししゃんとした、リリヤの歌声が薄暗い空に響き渡る。
 贋物に負けることなどないことを、なによりもよく知る娘の歌声が男の傷を塞いでいく。
 歌声を響かせながら、娘はプレアグレイスを見返した。
 苦しみも、悲しみも、すべては持ちえたそれぞれのものだ。その行く末は他のものが決めていいものでは決してない。
「……くるしくても、かなしくても。手放したくないものは、あるのです」
 幼い翠の眸に浮かぶいろを、なんと呼んだらいいだろう。
 少なくとも、忌々しげに娘をねめつけるプレアグレイスには、決して理解できないいろを抱え、リリヤは何度でも歌を紡ぐ。
 どれほど傷を負おうとも、どれほど倒れそうになろうとも、寄り添い支える歌声に背押されて、ユーゴの剣がプレアグレイスの体躯を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧島・ニュイ
このままじゃやられちゃう
一緒に倒そうよ
近づいて助け起こす
敵に殺されそうになったら庇ったり安全位置に移動させたりする
僕としては彼女の想い遂げさせてあげたいけど…

リサちゃんに死角から飛び乗って攻撃してもらい【フェイント】
その隙に【スナイパー】で狙撃する
【咎力封じ】【傷口をえぐる】で、仲間の攻撃した傷口をえぐったり、敵の腕や能力を封じることを狙う。

安息の死が救いなんて、云ってる側のエゴだと思うよ?
結局、救いなんて本人が決めるコトだもん♪
これ以上エマちゃんを不幸にするわけに行かないよね
彼女にはこれからが待ってるんだからさ。たとえ辛くても家族の分まで生きてほしいよ

(僕の救いも僕が決めるさ)



 願うのはただひとつ。
 どうか、どうか。
 死なないで。
 泣き崩れたエマの身体を受け止めたのは、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)だった。同時に、プレアグレイスが他の仲間に撃った攻撃の残滓であろう、焔と石礫が戦場に跳ねれば、ニュイは少女の身体を庇うように抱え込む。
(「彼女の想い遂げさせてあげたいけど……」)
 自分より細く、小さく、猟兵でもない一般人の身体だ。プレアグレイスの剣圧にすら耐えられないことはよく解る。
「ここにいてね」
 僕が君の分まで、戦ってくるから。
 リサちゃん、とニュイは連れ合いの人形を喚んだ。プレアグレイスの顔めがけて跳ねるリサに合わせ、銃口を向ける。
 これ以上、エマを不幸にするわけにはいかない。
 彼女の路はこの先もまだ続く、これで終わりではないのだ。
 願うなら彼女の家族の分まで生きてほしかった。──たとえ、辛い路であったとしても。
 ニュイの銃弾が漆黒の乙女を撃ち抜いた。
 短い悲鳴を上げ、体躯を捩った乙女は荒々しくリサを掴んで叩きつける。宙を散った花椿。「わー、乱暴!」とニュイの瞳が瞬く。
「貴方も私の邪魔するのね。貴方だって閉じ込めたものがあるくせに」
 今死ねば、知らぬまま、開かぬままで在れるのに。
 漆黒の双眸を緩める乙女に、どうかなーとけらり笑って、ニュイは指先を繰る。
 手枷、拘束ローブ、猿轡。乙女に体躯にまとわらせながら、ニュイは仲間の付けた傷口を見据え、再びマスケット銃の銃口を向けた。
「安息の死が救いなんて、云ってる側のエゴだと思うよ? 結局、救いなんて本人が決めるコトだもん♪」
 だから。
 ──僕の救いも僕が決めるさ。
 軽く告げる一方で、形の整った緑の瞳がすうと細まる。
 この直後、銃弾は狙いと寸分違わぬところを撃ち抜いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジロリア・アンブッシュ
実にあの人(亡夫)好みのいい子ですね、エマさんは。

……大丈夫よ『あなた』。
昔の私なら嫉妬してたけど、今の私は『あなた』の望みのままに、あの子を守ってみせるから。

エマに駆け寄り、危険だからと(雨に濡らさぬ為に)後方の木陰まで一緒に下がり彼女を背に庇う立ち位置に。

手袋を外し露わになった右手の火傷跡(聖痕)を敵に向け、神々と犠牲者への祈りを込めて【怨霊轟天雷】。

「死と生命と向き合わず、偽りの救済を騙る者よ。神々と霊達の怒りを知りなさい」

突如降り出す豪雨で敵の剣に雨粒を滴らせ、刃に映るものを歪ませ敵の技を阻害した上で、天を奔る雷光で敵の位置を見定め、落雷を叩き込む。
万一幻影が現れたら、幻影にも落雷を。



 エマの肩に掌のぬくもりが触れた。顔を上げて、顔を合わせて、少女はああと小さく呟く。
 赤い髪をした、奇麗な女のひと。最初に声が聞こえたひと。今此処に立っているひとたちの事情を、教えてくれたひとだ。

 ジロリア・アンブッシュ(燈狼の未亡人・f05791)はエマと眼を見かわすと、危険だからと森の木陰へ少女を手招いた。──ここならば雨に濡れることもない。
 実に“あの人”好みのいい子だとジロリアは思う。同時に、大丈夫よとも心内で呟き落した。昔の自分なら嫉妬をしていただろうけれど、今の自分はあなたの望むまま。
 あの子を守ってみせるから。
 心内で宣言したとおりに、ジロリアはエマを背にして立ちはだかった。
 指先からするりと右の手袋を外し、露になった白肌には火傷跡。聖なる耀の力を帯びた跡をプレアグレイスに向ける。
 空はどこまでも薄暗く、大地はところどころ血に濡れて浅黒い。
 どこまでも救いのない世界に女は祈った。
 神々へ、犠牲者へ。
 その怒りを今、形と成して仇を穿つ。
「死と生命と向き合わず、偽りの救済を騙る者よ」
 ジロリアのしなやかな指先が漆黒の乙女を示した。歪な救済を語る乙女はジロリアの動きに気づいているようで、口許を笑みに歪め、女めがけて剣風を奔らせる。
 草を散らせ地面を駆ける風刃を避けるわけにはいかなかった。後ろには件の少女が居るのだ。どんと衝撃は爆ぜて、女の胸元が紅に染まる。
 けれどジロリアは揺るがなかった。
 突如、雨が降る。
 まさに豪雨、強く、強く、雨は地面を打って飛沫を上げた。雨は黒剣を覆い、黒剣に映るものを歪ませる。それに気づいた乙女の舌打ちが響いた。
「神々と霊達の怒りを知りなさい」
 それはまるで、天の裁き。
 激しい落雷が漆黒を撃ち落とせば──薄暗い空に確かな耀が差し込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アンリ・オヴォラ
アンタの言う事は最もナンダケドね
だからってそーゆーコトする必要もないのよ
ホラ、ブスが余計ブスになっちゃうわよ

浮遊する玉から2体召喚
そっちのおブスは何で来るのかしら
例えそこの子やこの子の家族の偽物だろうが、関係ないわ
綺麗に、苦しくないように、逝かせてアゲル
あんまり見せたくないけどね

これ使うとアタシ自身は戦えないけど、攻撃がどうくるかくらいわかるワ
基本は蛇を守りに、騎士を攻撃に立ち回るつもりよ
攻撃を止めて反撃のカウンター狙いね
勿論、この子への攻撃もさせないわよ
他の子達がいるんなら、アタシは守りに徹してもいいわ

もう、黙ってヤられるのも、復讐もオシマイ
どーせなら、もっとハッピーに反撃してやりましょ



「アンタの言う事は最もナンダケドね。だからってそーゆーコトする必要もないのよ」
 エマは自分の前に出来た大きな影に瞬いた。
 磨かれた爪先にふうと息を吹きかけて、アンリ・オヴォラ(クレイジーサイコカマー・f08026)は自慢の美髪を風に揺らしながら、その指先を少女に向ける。
「ホラ、ブスが余計ブスになっちゃうわよ」
 エマの瞳が、ますます見開いた。
 けれどその表情は今日初めて、少女が浮かべた歳相応の表情でもあった。
 少し砕けた少女の表情に満足げに宜って、アンリは傍らを浮遊する玉から死霊を呼び起こす。
 プレアグレイスが嗾けたのは既に生み出されていた他の猟兵の幻影で、あらイイオトコと男は紡いだ。
「イイオトコだからオマケしてあげるワ。綺麗に、苦しくないように、逝かせてアゲル」
 アンリの許から死霊の騎士が駆けていく。
 軽い口調で紡ぎながら、同時にエマやエマの家族でなかったのは都合が良かったとそう思う。容赦はしないと心に決めたが、それでもあまり見せたくはなかった。幾ら偽物であれ、家族が再び殺されるところなど。
「……アラ、なかなか鋭いじゃないのアンタ」
 アンリは青の双眸を傍らの漆黒へと向けた。プレアグレイス本体が、アンリめがけて剣を振る姿が見て取れる。
 アンリが唱えたユーベルコードは乙女が狙うその通り、術者の自分は戦えない。
「でも残念ね。実はもう一匹イルの」
 死霊の蛇竜を嗾けて身を護り、アンリは乙女から距離を取る。それによって自分と距離が近づいたエマから息を呑む声が聞こえたが、先ほど通り笑ってみせる。ブスになってるわよと言い添えて。
「もう、黙ってヤられるのも、復讐もオシマイ」
 どーせなら、もっとハッピーに反撃してやりましょ。
 そう言った男の声が、あまりに明るい声だったから。
 ──この時、少女はこの日初めての、小さな笑みを零してみせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファルネーゼ・アトラス
御無事ですか!
良かった…間に合って、良かった
つい涙腺が緩みそうになりますが、喜んでばかりはいられません
ファルは、たとえ苦しくともエマ様に生きていて欲しい
その悲しみも、その怒りも
無くなってはならない貴女だけのもの

ファルは戦う術を持ちません
皆様の傷つく姿を見守る事しか出来ない
だからこそ、その痛みを少しでも緩和出来るよう【シンフォニック・キュア】を行使
ファルの歌声が皆様の鼓舞に繋がる様に
そして黒き天使の唄をかき消す様に、高らかに歌い、癒し続いけます
今は亡き大切な方々から教わった唄
その一つ一つがファルに力を与えてくれる

プレアグレイス様
貴女が死を救済とするならば
ファルはそれを、この歌をもって否定致します


ステラ・ハシュマール
「全く持って美しくないね、それは救済じゃなく虐殺だよ」

見下す瞳で奴を見た後、エマちゃんに問うよ

「エマちゃん、奴に復讐がしたいかい?奴が地獄の業火で焼かれ、苦痛の海に沈む姿が見たい?もしそうなら……手を貸すよ」

yesがもらえたなら依頼成立。noでも勝手にやらせてもらうよ。
炎血のミケランジェロを発動。炎を纏った16連撃で【薙ぎ払い】【傷口を抉り】、その柔肌をズタズタに焼き切ってあげる。踊るように、奴の絶叫のリズムに合わせて。

「君の死は芸術になる、さあ独りの少女に捧げる作品をここに!」

決着が付いたらエマちゃんに言うよ。お代は君の笑顔だって。だからこんな世界でも笑って生きてほしいって。



「全く持って美しくないね、それは救済じゃなく虐殺だよ」
 清々しいほど明瞭に言い切って、ステラ・ハシュマール(炎血灼滅の死神・f00109)は
見下す瞳をプレアグレイスに向ける。それから次に瞳を向ける先はエマ。
「エマちゃん、奴に復讐がしたいかい?」
 それは咎人殺しの暗殺者らしい問いとも言えた。彼女が地獄の業火で焼かれ、苦痛の海に沈む姿が見たいか、もしそうなら手を貸すと、言葉を続けた娘をエマは見開いた瞳で見返す。
「……それが、終わりに繋がるなら」
 少しの間ののち、エマがはっきりと紡いだ返事を聞いた、ステラの口許が緩んだ。
 そうと決まれば後は標的を狩るだけだ。
 業炎に抱かれ、鮮血に沈み、我が内に住まう紅蓮の醜き炎血よ。
 我は剣とし汝を携えん。
 プレアグレイス目掛けて駆け抜けながら口遊み、纏った焔で乙女の肌を焼く。強敵とて娘は怯まぬ、華やかなフリルの裾を踊るように翻せ、反動のままにチェーンソー刃を奔らせた。
 途中、漆黒の乙女が猟兵の力であろう、死霊の蛇龍と騎士を呼び起こして、ステラを挟撃したがそれでも娘は退かなかった。
 ファルネーゼ・アトラス(星謡・f06256)から、癒しの加護を得ていたからだ。
 ファルネーゼは戦う術を持たず、ただ見守ることしかできない娘であった。だからこそ、戦う仲間の痛みを少しでも緩和できるように、精一杯の歌声を響かせる。
 漆黒の乙女が謡う救済をかき消すように。
 少女の慟哭を包みこむように。
(「ファルは、たとえ苦しくともエマ様に生きていて欲しい」)
 その悲しみも、その怒りも、無くなってはならない貴女だけのものだから。
 ファルネーゼが紡ぐ歌は大切なものたちから教わった唄だった。
 もう今は亡くした、大切なもの。
 ファルネーゼもまた、大切なものを失った者であった。けれど歌の音が、言の葉が、ひとつひとつすべてが自分に力を与えてくれる。
「プレアグレイス様」
 歪つな救済者の名を紡ぎ、ファルネーゼは彼女を見据えた。彼女の瞳もまた、ファルネーゼの方を向く。
「貴女が死を救済とするならば、ファルはそれを、この歌をもって否定致します」
 死は救済などでは、決してない。
 ファルネーゼの歌声が、ステラに纏わりついた蛇竜の牙と騎士の剣戟の跡を退けた。
 ステラが跳ねた背に、少女の鼓舞。
 邪魔な死霊を鎌で薙ぎ捨て、もう一度ステラはプレアグレイスの懐に飛び込む。焔が唸り、鎌は少女の胴に掛かり、娘は薙いだ。薙ぐ、薙ぐ、薙ぐ。柔肌を裂けば体液が散った。傷口は焼かれて一層爛れた。だが未だ終わらぬ。淑女の絶叫に合わせて踊り跳ねて、咎人殺しは盛大に嗤う。
 ──エマちゃん。決着が付いたら君に言うよ。お代は君の笑顔だって。だからこんな世界でも笑って生きてほしいって。
「君の死は芸術になる、さあ独りの少女に捧げる作品をここに!」
 ステラ渾身の、地獄の一六連撃。
 娘の想いを乗せた焔が体液を糧に燃え上がった。
 それは、ひとつの闇の終焉を示す。
 プレアグレイスの指先が空を搔く様を、ファルネーゼを見つめていた。漆黒が焔に呑まれて消えていく。
 終わったのだ。そう思った途端、ファルネーゼの膝がかくりと落ちた。疲労の蓄積も厭わず癒しを施しながら此処まで駆けて、今まで歌い続けてきた疲労に身体が限界を向けたのだ。
 地面に伏した娘の視界に、大切なふわもこドラゴンと、守護を願った少女の顔が映る。
 ──……良かった。
 その瞳が思わず緩む。
 貴方が無事で本当に、良かった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『誰が為に鐘は鳴る』

POW   :    周囲のひとたちを励ます

SPD   :    何の為の鐘か村人に尋ねる

WIZ   :    静かに祈りを捧げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──耀だ。
 ひとつ、ふたつと、教会周りの花々が耀を帯びていく。
 初めは小さな灯火であった耀がようよう広がり、今では一面の耀が其処に広がっていた。
「そういえば、聞いたことがある」
 エマはぽつりと独りごちた。教会周りの花々は枯れる間際のすこしの間だけ、耀を放つのだと。
 そして、その時期に決まって、教会の鐘が鳴るのだと。
 誰が鳴らすでもない、けれど確かに鐘は鳴るのだ。父と母はそれを安寧の鐘と呼んでいた。足許にも、空にも、花の耀りが舞い踊るなか、鐘に息災を願っていたと聞いている。
 けれど、それはあくまで、エマの家族のなかの話だ。実際のところは解らない。
 事実はただ闇に満ちた世界のなかに、眩いほどの耀が咲き、鐘が鳴り響く、それだけのこと。
「他のひとはこれを見たら、何を思うものなのかな」
 翡翠の少女は、そう小さく呟いた。
 ──ただこの耀が少しでも、何かになればいいと、そう思う。
ステラ・ハシュマール
※WIZ行動

全てが終わった、ならボクのすることは一つだけ。

ヴァイオリンを取り出して、葬送曲を奏でるよ。
生きているボクらに死したものを送るには、これしかないからね。

「こんな世界でも、眠れやすらかに」

演奏が終わって、まだエマがいるなら、彼女のために何か弾いて上げようかな



 全てが終わった、ならボクのすることは一つだけ。
 戦いが終われば途端に静寂が落ちた草原で、風は止めば静けさはより深まった。ステラ・ハシュマール(炎血灼滅の死神・f00109)がすうと息を吸い込めば、その音さえ響きそうな閑静な夜さだ。
 ステラはヴァイオリンを肩に乗せ、ゆっくりと弓を引く。
 それは、息を呑むほどの。
 弦が震えて響かせる美しい音色が、遠くどこまでも広がっていく。ステラの指先が弓を引く度に、闇に溶けるような黒髪が揺れ、透きとおった音色が響いた。
 ステラが紡いだのは葬送曲であった。生きている自分たちが死者に送るには、これしかないと娘は思う。
「こんな世界でも、眠れやすらかに」
 ステラの唇が鎮魂を紡いだ。
 ヴァイオリンの音が輝う世界を包んだ。
 ステラの足許の耀が心地よさそうに揺蕩い、音ともに舞い上がる。
 一曲を奏で切ったステラは、次にエマを視た。花たちとともに音色を聴き入っていたらしい少女は、娘と眼が合えばぴくりと肩を揺らす。
「一曲、弾いてあげようか」
「い、いいの……?」
「いいよ、お代は君の笑顔だね」
 おずおずと見返すエマへ、ステラは笑ってみせた。先ほども告げた言葉をステラが繰り返したから、エマの瞳は瞬き、やがて口許を少し緩ませる。
 彼女の希望を聞いてもう一曲。丁寧に弓を引きながら、ステラはそっと眼を閉じた。
 エマ。
 どうか君は、こんな世界でも笑って生きて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エムピースリー・シャローム
耀の花、ですか
大層美しい

この花の輝きであればきっと月まで届くでしょう

人の魂は月に至ると聞きました
なれば空の上から見るに、この耀の花は星の如くに見えることでしょう
手向けの花が見えるのでしょう

この花が絶えぬ限り、毎年、月まで届くのでしょう
それはきっと、素敵なことだと思いませんか



 一粒の耀がエムピースリー・シャローム(ウォーマシンのシンフォニア・f01012)の傍らをふわりと浮いた。
 あちらこちらと柔い風に彷徨いながら、まるい、ちいさなましろの耀が空の向こうに消えていく。
 耀の花、ですか。
 大層美しい。
 少しずつ浮き上がる耀が増えていけば、エムピースリーの上に広がる紫黒一辺倒の空に、耀は星のように瞬いた。
 ふと自分の体躯に止まったままの耀に気づき、そっと空に放ってやれば、まるで礼を述べるように、耀はエムピースリーの周りを一転する。
 この花の輝きであればきっと月まで届くでしょう。
 エムピースリーはそう思いながら、平生であれば月が浮くはずの空を仰いだ。
 彼は、人の魂は月に至ると聞いている。それならば、月に至った魂たちから視るこの地上の花々は、星のように視えるに違いない。
 手向けの花はきっと月まで届いている。
 エムピースリーの足許で風にそよぐ耀たち。風に揺れた花の葉がつんと花びらを突けばまたひとつ、またひとつと、茎を離れた耀の花びらが空へと舞い上がっていく。
 これは花が枯れる間際の耀だという。
 ならば耀が舞い上がるそれは、天寿を全うしたものたちが空を昇るさまにどこか似ている。

 この花が絶えぬ限り、毎年、月まで届くのでしょう。
 それはきっと、素敵なことだと思いませんか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チガヤ・シフレット
戦いが終わったならば、私の出る幕はないな。

一服でもして、次へ行くとしよう……(煙草を取り出して火をつけようとしたところで耀に気づく)

……ふぅ、こんなところで別の光は野暮か。
この耀が何かの導になるのか……それとも、この世から離れていく光なのか。
あるいは、助かった命への祝福か。
笑って終わりを迎えられるように突き進んで欲しいものだがな。

さて、そろそろ行くとしよう。鐘の音が鳴るなんて、旅立ちにはちょうどいいじゃないか



 戦いが終わったのであれば戦場傭兵たる女の役目はこれで仕舞い。次へ行くかと心のなかで独りごちながら、チガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)は唇に煙草を咥えた。
 火を灯そうと眼を伏せて──ふと、女はましろの耀が自分の視界を過ぎるのに気づく。
 花の耀は気づけばチガヤの周りを包むように浮いていた。
 女の釣り目が耀を見詰めて暫しの間、やがて小さく息を吐く。
(「こんなところで別の光は野暮か」)
 結局、煙草は仕舞いこむ。手持ち無沙汰になった掌を腰に当て、チガヤはもう一度息を吐いた。
 枯れゆく花が最後に灯す耀たち。この耀がすべて空に昇る頃、草原の花々はすべて枯れるのだろうか。だとすれば、この耀が示すものは何なのだろう。
 この耀が何かの導になるのか。
 それとも、この世から離れていく耀なのか。
 あるいは、助かった命への祝福か。
 脳裏を巡らすチガヤの傍らを、風に踊る耀たちがくるくると舞った。まるでじゃれつくように、喜ぶように、耀が躍る姿を認め、チガヤは口許を緩める。
 ただ願わくば。
 笑って終わりを迎えられるように突き進むものであれ。
「……さて、そろそろ行くか」
 小さく独りごちて、女は草原から一歩を踏み出した。仕事は終わった、高く結いた髪が揺れる背に残したものは何もない。
 鐘の音とは旅立ちには丁度いいと笑う女の背で、まさしく、鐘の音が大きく鳴り響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンナ・フランツウェイ
気がかりな事があるので少しエマと話がしたい。

「自分のような人間は自分で最後にする」。この言葉から全てが終わったら、自分も命を絶つという考えが見える気がして。

もし家族や村人達を見捨てた事を後悔している様なら、多分皆はあなたを恨んで無いこと。この耀と鐘の音は散って行った者達の魂と、生き残ったあなたへの祝福だと思うと伝える。

そしてエマに死んでいった者達の為にも、あなたには生きて欲しいと言おう。多分それが去って行った皆の…願いだと思うから。

この戦いで様々の物から血の香りがした。だけど血の香りがしないこの花の耀…、魂の耀は綺麗だと思った。



 自分のような人間は自分で最後にすると啖呵を切った少女は、改めて視れば年相応の姿をしている。
 アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)には彼女の言葉が、自分も命を絶つような考えのようにも思えたがゆえに、女は続けてエマの様子を伺うように見返した。
「エマは結局、何もできなかったね。ただ、震えていただけ」
 先に口を開いたのはエマだった。
 少女の翡翠の瞳がすうと細まる。舞い上がる耀を映す瞳に浮かぶものは後悔なのか、ただ彼女の呟きを聞きながら、アンナもまた花の耀に眼を向ける。
「私は、この耀と鐘の音は散って行った者達の魂と、生き残ったあなたへの祝福だと思う」
 アンナの視界の端に、少女が瞳を瞬かせる姿が映った。
 同時に教会の鐘の音もまた辺りに鳴り響いた。高く、優しく、澄んだ音がゆっくりと響き渡れば、アンナの双眸がゆるりと緩む。
「死んでいった者達の為にも、あなたには生きて欲しい」
 アンナの口許から自然と願いが溢れでた。
 きっと、エマの家族や村人たちは彼女を恨んではいないだろう。地上を離れた彼らが願うとすれば、それは彼女の生を願うのだ。少なくとも、アンナはそう思う。
 ふと、自分の掌にぬくもりを感じてアンナは瞬いた。気づけば傍らに立っていたエマが自分の掌を握り締めている。
 彼女の翡翠がアンナを見つめ、唇がありがとうと言葉を紡いで、それから。
「きみも、どうか生きていて」
 柔らかな風が願いを包みながら流れゆく。風に乗って漂う香りは、ただただ優しく、血の香りは感じない。
 ──ああ、この花の耀は、魂の耀は、とても綺麗だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

深護・刹那
ではでは。不肖、深護・刹那、参ります♪

耀り、そして、誰がために鐘は鳴る?
こういうのは考えてもダメな時がありますし。
ゆえに、わたくしも感じましょう。

ふふ、幻想的、といえばいいのか、儚い、といえばいいのか。
わたくしのユーベルコードは「刹那の夢」ですが、今ここはまさに、刹那の時。
この気持ちに全てを委ねるのが心地良いと思うのですわ。
刹那ゆえに、次に訪れるのはいつになるのか、わからないのですから。

そんな想いを込めて、わたくしは祈りを捧げましょう。
この地に、また平穏が訪れますように。

☆このプレ内の刹那という単語は、時間の単位の方です。
本人の名前ではない感じでお願いします。



 幻想的、儚い、それとも。
 ふわふわと浮かび上がる耀を眺めながら、深護・刹那(花誘う蝶・f03199)はそれらを言い表す言葉を並べて、ふふと笑った。
 今のこの世界をなんと言い表したらよいものか。そう考えながら花々ゆれる草原を歩む足が愉しげに跳ねた。
(「こういうのは考えてもダメな時がありますし。ゆえに、わたくしも感じましょう」)
 この耀と鐘の音に何を想うかとくだんの少女は問いたが、刹那は考えるよりも感じることを選び取る。
 夢はうつつ。
 うつつの私はヒトガタ。
 ヒトガタは繰られ夢を見る。
 これが、人形の、刹那の、夢
 再びユーベルコードを発動させた刹那は、気持ちにすべてを委ねるように、青の瞳を薄く閉じた。
 刹那──そう、枯れゆく花がもたらす耀はそのとおり、ほんの少しだけの、一瞬の夢。
 一瞬のものならば、次に訪れるのはいつになるのかわからない。だから今、揺蕩う。
 刹那の耳に響く鐘の音がここちよい。足許で柔くゆれる花の葉が、刹那の脚を優しく撫でた。長く艶やかな金の髪が、ふわりと風のなかを舞う。
 小さな掌が、そっと抱えるものはましろの耀とたしかな祈り。
 祈りを捧げましょう。
 この地に、また平穏が訪れますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)と一緒
アドリブ等歓迎

まぁ!綺麗ね!闇の世界に耀る花……美しいじゃない!
あたし、こういうの好きよ!
枯れる前の耀……最期の灯火をリルと並んで観る
うふふ、耀と戯れるあなたはまた一段と美しいわね
羨ましいわ、なんて

あら、綺麗な鐘の音
心洗われるような気持ちになれるわね
たくさんの人々の願いがきっと、この音には込められているって思うの

あたしの願い?
そうね
沢山ありすぎて悩んじゃうわ
けれど――こうしてあなたと美しいものをみて、世界を重ねられたらとも願っているのよ!
水槽から飛び出したリルの世界が、美しいもので満たされるようにってね

ねぇ、リルは何を願ったのかしら?
あら秘密なの?
気になるわ……!


リル・ルリ
■櫻宵(f02768)と
(アドリブ等歓迎

「耀が、櫻宵。みて、耀の花が咲いた。星が舞い上がっていくみたいだ」
ふわりゆらり、耀の花と戯れるように游ぎ笑う
嗚呼、綺麗
儚くて切なくて
一瞬の耀であっても君とみたならば僕の中では一生の耀になる
そう?櫻宵も綺麗だ

「鐘の音がする。願い、か。闇の中での願いはどんなものなのだろう?僕は今まで、自分の願いというものを考えたことがなかったから」
玻璃の水槽の中で求められるがままに歌って、揺蕩う日々
願いなんて

「櫻宵、櫻宵は?願い事ある?」
彼の夢見草の微笑みを見れば瞬いて
ただ微笑む

初めての願い
明日も明後日も君と一緒にいて、うつくしい世界を観られるように

けれどそれは、君には内緒



 みて、みて、櫻宵。
 耀が、ほら。
「耀の花が咲いた。星が舞い上がっていくみたいだ」
 ふわり、ゆらり、花と戯れるように游ぎ笑って、リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)はくるりと振り返る。いろくずが水面を跳ねるように、白の指先が空を攫えば、傍らの耀もまたくるりと踊った。
「闇の世界に耀る花……美しいじゃない!」
 薄花桜の瞳の先で、綺麗ねと誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)の愉しげな声が跳ねた。
「あたし、こういうの好きよ!」
 平生から凛と微笑む花屑の男の周りを、耀は戯れるようにくるくると揺れる。男が掌を添えてやれば一層おどる耀がふわりと男の唇をなぞった。そっと閉じた花霞の向こう、リルの瞳がすこし見開き、すこし細まる。
 ああ、なんだかうらやましい、なんて。
 途端、櫻宵の双眸がリルに向いた。ふふと柔く笑って、耀と戯れるあなたはまた一段と美しいわねと彼が紡ぐから、リルの瞳もいっしょに緩む。
 嗚呼、綺麗。
 儚くて切なくて。
「そう? 櫻宵も綺麗だ」
 一瞬の耀であっても君とみたならば、僕の中では一生の耀になる。
 リルがゆらり游ぎ近づくのと、生憎泳ぎには随分疎い櫻宵が歩み近づくのと、それが重なり合わさったとき、ちょうど鐘の音が鳴り響いた。あら、綺麗な鐘の音と櫻宵が笑う。
「心洗われるような気持ちになれるわね。リル、あたし、たくさんの人々の願いがきっと、この音には込められているって思うの」
「願い、か。闇の中での願いはどんなものなのだろう?」
 リルの指先が紫黒の空へと、ゆるやかに伸びれば、櫻宵の瞳が彼に向く。
「僕は今まで、自分の願いというものを考えたことがなかったから」
 櫻宵の瞳のなか、繊細な白磁の指先が耀を撫でた。
 美しい花のような人魚は、玻璃の水槽の中で揺蕩い、求められるがままに歌を紡いで生きてきた。願いなど覚えるよしもない。
 それを知る傍らの櫻宵の、淡墨が風に揺れる。
「櫻宵、櫻宵は? 願い事ある?」
 つと、薄花桜が櫻宵を視た。櫻宵は愛らしい瞳を見返しながら頬緩み、願いなんて沢山ありすぎて悩んじゃうわと紡ぎ落とすも、けれど続く願いは傍らに寄り添う彼のこと。
「こうしてあなたと美しいものをみて、世界を重ねられたらとも願っているのよ!」
 水槽から飛び出したリルの世界が、美しいもので満たされるように。
 ただ真直ぐに、男はそう願うのだ。
 一方で櫻宵がリルに願いを問えば、凪のような柔い笑みが返るだけ。内緒なの、気になるわと紡ぐ彼の隣で、リルはもう一度空を仰いだ。
 ましろの耀が鐘の音とともに、どこまでも高くのぼっていく。密やかな願いを引き連れて。
 初めての願い。
 明日も明後日も君と一緒にいて、うつくしい世界を観られるように。
 けれどそれは、君には内緒。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルネーゼ・アトラス
疲れの溜まった身を休め、教会の外へ視線を向ける
安寧を願う鐘の音と刹那の光を宿す花々
その美しさに、儚さに
気付けば、祈る様に両手を合わせて涙を流し、見蕩れる
…ああ、本当に
とても綺麗ですね…

耀う世界に身を委ね、エチカを抱き寄せ空を仰ぐ
闇に舞い踊るその光は星のよう
枯れた喉では聞くに耐えぬ歌しか紡げないかも知れない
それでも――口を開き、喉を震わせながら
響かせたるは玲瓏たる鎮魂歌
奪われた罪なき命に、少しでも安らぎを齎せる様に

安寧の鐘――この響きをそう呼んだエマ様のご家族は、とても素敵な方々なのでしょうね
この煌めきが、この鐘の音が
これからも変わらず続きます様に
そしていつの日にか、この世界に光が齎されます様に



 ファルネーゼ・アトラス(星謡・f06256)は教会の扉にもたれかかり、長く息を吐き出した。すこしずつ、身体から疲労が抜けていく。
 耀に照らされて映し出されるシャルトルブルーのふもと、ファルネーゼは舞い上がる耀を仰ぎ、鐘の音に耳を澄ませた。
 娘の耳が安寧を願う音を捉え、愛らしい瞳が最期に耀を灯す花々を映せば、その美しさと儚さに、いつしか娘の指先は重なり、頬を涙が伝っていく。
 ──……ああ、本当に、とても綺麗。
 この音を安寧の鐘と呼んだ少女の家族は、きっと、とても素敵なものたちであったに違いない。
 見蕩れること暫し、やがて指先を解いて滲む視界を拭うと、ファルネーゼは大切の聖獣エチカを抱き寄せる。
 ふわふわに頬を寄せながら、空を仰げば耀は星のように紫黒の空を彩っていた。空の闇色の深さゆえに、耀はより美しい。
 ファルネーゼの唇が薄く開いた。細い首筋が震え、かすかな音が零れる。
 歌い尽くして枯れた喉だ、聞くに耐えない歌かもしれないと思いながら、それでも尚、娘は歌を紡いだ。
 懸命に紡がれたそれは、こころをのせた鎮魂歌。
 奪われた命を想い、その安らぎを願う歌声が、聞き苦しくなろうはずもない。
 草原を揺蕩うましろのように煌めき、包みこみ、声主を写す歌声はどこまでも優しく、健気に響き渡った。
 娘は願う。
 この煌めきが、この鐘の音が、これからも変わらず続きます様に。
 そしていつの日にか、この世界に光が齎されます様に──。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三嶋・友
負担でなければ、エマさんと話がしたいな

私なんかより経験豊富な他の猟兵さんの方がちゃんと話せると思う
だから、言葉を交わしたい、何ていうのは私の我儘なんだけど

さっきは心配してくれてありがとね!
でもほら、大丈夫だったでしょ?
貴女の方は大丈夫?
私は友
ね、少し一緒に見てても良い?

綺麗だね
耀も、鐘の音も
これ、なんなのかな
誰かの祈り?想い?
…そんな物だったら、素敵だね

過去は海へ返っていく物だけど
誰かの想いを未来へ生かしていけるのは今を生きる私達だけだから
この耀を胸に宿して、少しでも前に進んでいけたら良いな、なんて
今はまだ惨劇から間もなくて、無理かもしれないけれど
いつか貴女が心からの笑顔を浮かべられますように



「さっきは心配してくれてありがとね!」
 草原のなかに座り込んでいたエマは、明るい声音に瞬きながら顔を上げた。仰いだ先、エマに笑いかける三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)の姿が眼に映る。
「でもほら、大丈夫だったでしょ?」
 掌をひらひらと振ってみせ、友は続けてエマの様子を伺った。皆に護られたエマは特に疵などないようで、翡翠の少女はふるふると首を振る。
「私は友。ね、少し一緒に見てても良い?」
 友が問えば、今度はこくりと首が縦に振られた。ありがとうと笑って、友はエマの隣に座り込む。すると、友の肩にエマの掌が触れた。翡翠の眼差しは心配そうに友の顔を覗き込む。
「……肩、痛かった?」
 小さく呟かれた少女の言葉に、今度は友がふるりと首を振る番だった。
 並んで座ったふたりの傍を、ましろの耀が浮いては空を彩っていく。さわりと花が風にゆれる度、耀は波のように優しく揺れた。綺麗だね、と呟く友にエマも宜う。
「エマさんの家族は、祈りや願いを込めたんだっけ?」
「うん。耀がそれらと一緒に空へのぼって、神様に伝えてくれるんだって、そう言ってた」
「そうなんだ。……素敵だね」
 友のそれは、こころからの言葉だった。友の気持ちが伝わったらしい、エマの双眸が少し綻び、空気が緩む。
 その傍らで、友は思う。
 今こうして流れる時は刻々と海へ帰っていく。想いを過去に流すことなく、未来へ繋いでいけるのは今を生きる自分たちだけだ。この耀を胸に宿して、少しでも前に進んでいけたら良い。そして──。
「ねえ、友」
「うん?」
「助けてくれて、ありがとう」
 傍らの少女の瞳が彼女に向き、その口許がはにかんだ。少しずつ、前に向かおうと頑張る彼女の姿に、友の口許には背押すような笑みが浮く。

 耀が願いを連れてくれるというならば、自分もひとつ願いを乗せよう。
 今は惨劇から間もなくて、元のとおりには笑えないかもしれないけれど──いつか貴女が心からの笑顔を浮かべられますように、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーゴ・アッシュフィールド
■リリヤ(f10892)と一緒に

ああ、すごいな
こんな現象は俺も初めて見る
枯れる時に光るということは、これは魂みたいなものか?
なんであれ、綺麗だな

人の手を借りず鳴る安寧の鐘、か
今回の件で犠牲になった奴等が、少しでも安らかに逝ってくれればいいんだがな

ん、俺が祈り、願う事か?
…………そうだな、リリヤを嫁に貰ってくれる男が現れる事だな
でなきゃ、俺はずーっとお前を連れて歩かないといけないからなぁ

俺は、もういいんだよ
今がそれなりに幸せだからな


リリヤ・ベル
■ユーゴさま(f10891)と一緒に

すごい。すごいです。きらきら。あかるいです。
空に、ひかりに、手を伸べて。
ふれたら、きえてしまうでしょうか。

鐘の音が聞こえたら、ユーゴさまのところにもどりましょう。
ほんとうに鳴るのですね。
……それが花でも、ひとでも。
きっといのちが消えるときには、なにかをうごかすちからがはたらくのです。
いまは、だれのこころも、やすらかでありますよう。

ユーゴさま、ユーゴさま。
いのることは、ねがうことは、ありますか。
……、……きがはやい……。
叶えて差し上げますので、ごあんしんを。

ユーゴさまこそ、はやくお嫁さんを見つけてくださいましね。
いつまでもフラフラするのはだめなのですよ。



「すごい。すごいです」
 きらきら、なんとあかるいこと。
 リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)がそっと空に舞う耀に手を伸ばせば、触れた指先で耀が跳ねた。指先と戯れるように踊るましろを追いかけて、リリヤがくるり、くるくるとまわる。
「ああ、すごいな」
 さしもの放浪者も燿をともす花は初めてと視えた。ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)は耀を碧に映しながら、枯れる時に浮かぶ耀ならば魂のようなものかと考えを巡らせる。
 なんであれ、綺麗だ。
 ひとつ、鐘の音が鳴った。高く、伸びやかな鐘の音だ。揺れる鐘の傍には人影など視られない。
 ほんとうに鳴るのですねとの声が近くで聞こえ、ユーゴが視線を落とせばいつのまにか、リリヤが男の傍らに戻っていた。
 いったいなにがあったのか、ミルクティの髪に花だらけ、耀だらけで戻ってきた娘をみやる。指先でついと跳ねれば、耀が空へと還っていった。
「きっといのちが消えるときには、なにかをうごかすちからがはたらくのです」
 それが花でも、ひとでも。
 小さなレディの足許で耀は波のように揺れている。風に背押されてすこしずつ、花を離れて浮く耀は、安寧の鐘の音に導かれるように空を渡って、夜の向こうに消えていく。
 いまは、だれのこころも、やすらかでありますよう。
 空を仰ぎ、祈る少女の傍らで、男は応える代わりに同じ空を視た。今はこの場所に悲鳴も、血の匂いもない、あるのは唯優しい花の香り。──少しでも安らかに逝ってくれればいい。
 リリヤは次に瞳をユーゴに向けた。ユーゴさま、ユーゴさまと名を呼んで。
「いのることは、ねがうことは、ありますか」
「ん、俺が祈り、願う事か?」
「はい、ユーゴさまの、いのること、ねがうこと」
「…………そうだな、リリヤを嫁に貰ってくれる男が現れる事だな」
「……、……きがはやい……」
 なんともはや、随分と先を見据えた願いごと。
 くるりと耀に背を向けて歩き始めた男にふうと息をついてみせ、娘も軽やかに歩きだす.
ふたりを見送るように、耀が最後にふわりとゆれた。
「ユーゴさまこそ、はやくお嫁さんを見つけてくださいましね」
「俺は、もういいんだよ」
「いいえ、いつまでもフラフラするのはだめなのですよ」
 傍らを小さな足音がついてくる。鐘の音に紛れたその音が聞きながら、ユーゴはもう一度呟きを繰り返す。それが娘に聞こえているかは、いざしらず。
 俺は、もういいんだよ。
 今がそれなりに幸せだからな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星乃・爐璃
今は…耀があるの…鐘が鳴るの…
ふらりと旅立って、出会う耀に僕は僕は目をつむる

この体は、ずいぶんと大きくなったね
僕に過去を捨てることができたなら、僕も未来に向けて成長したのかな

(目を開けると耀が溢れてる)

いや、捨てることなんてできない
いつか渡すことができたら…爐璃に渡すことができたら…
その時は僕は…

(小さく身をかがめ蹲る
その一つ一つの動作はすべて子供っぽい)


僕の願いはあの人の願い
僕の祈りはみんなの祈り


あぁ、翼があったらすぐ飛び立てるのに
僕だけの世界、僕の好きなところへ

あぁ、爐璃が起きてしまう
僕はまだキミに会いたくないんだ。

(ハッとして起き上がって足早にそこを離れる)



 耀がふる、鐘がなる。
 夜にさざめく花の啼き声に耳をすまし、耀にふれれば星乃・爐璃(旅人・f00738)はきゅっと瞼を瞑った。
 この体は、ずいぶんと大きくなったね。
 僕に過去を捨てることができたなら、僕も未来に向けて成長したのかな。
 再び瞳を開けば眼前には耀があふれ、その掌が宙を浮く。齢二十を超える男の、けれど所作はまるで惑うこどものよう。
 そのこの掌に耀がおちた。ふわり、戯れるような耀がそのこの掌に添う。
 ──いや、捨てることなんてできない。
 掌でそっと耀を包むこみながら、そのこはふるりとかぶりを振った。
 いつか渡すことができたら。
 爐璃に渡すことができたら。
 その時は、僕は……。
 からだがまるく、小さくなって、耀のなかに埋もれる。鼻許を優しくあまい花の香りがくすぐった。
 僕の願いはあの人の願い。
 僕の祈りはみんなの祈り。
 そのこの傍らでゆれる花の耀はどんどん空に昇っていく。あぁ、僕も、翼があったらすぐ飛び立てるのに。僕だけの世界、僕の好きなところへ。
 きゅっと服裾を握って、同時にはっとする。爐璃が、爐璃が、起きてしまう。勢いよく立ち上がれば、枯れ落ちる寸前の花びらたちが一斉はねた。
 まだ、僕はキミに会いたくないんだ。
 その足が、ぱたぱたと花の群れから駆け出した。たくさんの耀は抱えきれずに溢れて、掌を零れるゆくしずく。
 早足で往くそのこのことを、爐璃はまだ知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンリ・オヴォラ
綺麗だわ
まるで、夢みたい
……どれも現実、皮肉なものね

あのコのおうちではそういう話なら、それはそれでいいと思うの
何が正解だなんて、野暮じゃない
アタシには今、こういう時だからこそ鎮魂の耀みたいに見えるワ
アタシがそう思えば、そうなのよ

この耀自体は、きっと自分に従ってるだけ
意味を持たせるのはいつだって自分よ

ネェ、アタシ今、この世界が暗闇でよかったって思ってるの
だって、こんなトコじゃなきゃ、この耀をこんなに綺麗だなんてきっと思わないでしょ
この耀に祈る人の気持ち、わからんでもないわ

救いがあるように
救われるように
そして、いつか光でこの耀も満たされるように
祈っておきましょ

祈りを力に変えるのは、アタシ達の仕事よ



 綺麗だわ。
 まるで、夢みたい。
 アンリ・オヴォラ(クレイジーサイコカマー・f08026)の青眼に、ましろの耀が映り込む。叫声と嘆きと、血の香りに溢れていたこの場所に、今はそのどれもが存在しない。今あるのは耀と鐘の音と、優しい花々の香り。
 ──……どれも現実、皮肉なものね。
 アンリの足許で、柔い風に流された花がさざめきの声を響かせる。
「アンタのおうちではそういう話なら、それはそれでいいと思うの」
 アンリの声を聴き、エマは顔を上げた。エマから頭ひとつよりもう少し高くにある瞳が、空にのぼる光を追っていた。
 他のひとはこれを見たら何を思うものなのかな、と。自分が問うたことへの応えだと思い、少女はこくりと頷く。
「アタシには今、こういう時だからこそ鎮魂の耀みたいに見えるワ」
 アタシがそう思えば、そうなのよ。
 耀は耀のあろうとする姿に沿うただけ、意味を持たせるのはいつだって自分だ。そこに正解などなければ、正解を探るのも野暮というもの。
「貴方はいつも真直ぐにものを言うんだな」
 エマも、そうあれたらいい。
 そう、少女がぽつりと呟けば、今度はアンリが彼女を見やる。揺蕩うましろが少女の翡翠を照らせば、髪色はなにより鮮やかに見えた。薄暗いなかで視ていた色とはまるで違う、華やかな色がそこにある。
「ネェ、アタシ今、この世界が暗闇でよかったって思ってるの。だって、こんなトコじゃなきゃ、この耀をこんなに綺麗だなんてきっと思わないでしょ」
 ──この耀に祈る人の気持ち、わからんでもないわ。
 アンリの瞳に映るエマの顔がまた少し緩んだ。
 今度はすこし、泣き出しそうな笑み。

 今は祈ろう。
 救いがあるように、救われるように、そして、いつか光でこの耀も満たされるように。
 ──祈りを力に変えるのは、アタシ達の仕事。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
この暗い世界にも、こうして光のある場所はあるのだなァ。
……うむ、やはり世界は、何にも代えがたく美しい。

光が消えないうちに、ゆっくり散策でもするか。
何があるというわけでもなかろうが、鐘の音の中で花を愛でるのも悪くはない。
花の光に触れながら、ここに何の怨恨も残らないことを祈ろう。
……ま、この地上に憾みのない場所はない。ここもそうなのやもしれんが、今生きているお嬢さんのため、死した者のため、祈るくらいは許されるであろう。

今は剣を杖にするほかないお嬢さんも、いずれ己の力で歩けるときが来るであろう。
何しろ世界は、愛と希望に満ちているのだからな。こういう景色を見ると、そう思うよ。



 一歩足を踏み出せば、訪れを喜ぶように耀ははねる。
 この暗い世界にもこうして光のある場所はあるのだなァ、長躯の男が呟いた。ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)である。
 呪いや怨念には事欠かず、湯水のように呪詛が溢れた場所と、よもやひと繋ぎの世界とは思えぬほどの耀たち。──やはり世界は何にも代えがたく美しいと、そう思う。
 鐘の音は高く、遠くの紫黒一辺倒の空に良く響いた。ニルズヘッグの指先がましろの耀が触れれば耀はくるりと跳ねて踊る。砕けないあたり、耀はなかなかに逞しい。
 本当に何があるというわけでもない、ただただ耀と花の香りが優しい夜であった。
 同時にその平穏な夜が、どれほどかけがえのないものとなるかを、喪失を知るものは知っている。
 呪詛と共に在るものならば猶更、憾みがいかに有り触れているかを思い知っているであろうが、男の指先に込められたものは祈りであった。
 ここに何の怨恨も残らないことを祈ろう。
 今生きている娘のため。
 そして、死した者たちのため。
 数多の呪詛を抱えながら、男はそれでも笑うのだ。今この世界に灯る、ましろの耀のように。
 その脳裏に少女の姿が浮かび上がった。剣を杖にするほかない娘も、いずれは己の力で歩けるときが来るであろうと男は思う。
 己の無力さに、世界が与える絶望に、何れほど打ちひしがれたとしてもその足はきっと動き出す。
 何しろ世界は、愛と希望に満ちているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
わあ……
相棒のリサを連れて歩く
地に灯る輝きに目をぱちくり
人気のない適当な場所に腰を下ろし、じーっと眺めている

「綺麗だねー」
眩くて、小さくて、命の灯に見えて
(……命の輝きはとても綺麗)
(燃え尽きる瞬間も、凄く惹かれる)
(倒れる者も美しいと思うだろう)

(何かを思い出しそうで思い出せない)
(生きている方が良い。生きていてほしかった
でも死んじゃったものは仕方ない)
傍らのリサの肩を抱き寄せてキス
花よりも空気よりも冷たい唇からは死の香りがする
(永遠だって素敵なものだよ)

誰の為に、鐘は鳴るのだろうね?
たとえ闇でも、僕にとっては光だから
そうだね、この輝きを何本か摘まんで、部屋に飾ろうか

*ナチュラルにサイコパス



 足先を揺らす度にふれる耀はうつくしく、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)は思わず息を零した。花に寄り添う葉と似たいろをした瞳がぱちんと瞬く。
 花の波のなかを歩むニュイの傍らを、ちいさな花椿の娘がついてくる。やがて人気のない場所まで歩みすすめば、ニュイはそこで腰を下ろした。ちょこんと、娘もまた傍らに座る。
「綺麗だねー」
 眩くて、小さくて、まるでいのちの灯火のよう。
 命の輝きはとても綺麗だとその少年は思っている。燃え尽きる瞬間にもこころ惹かれ、倒れる者もまた美しいと思うだろう。
 ニュイは柔和な顔立ちを耀に向け、じぃと花を眺めている。傍らのリサもまた、じぃといっしょに眺めている。
 風に波打つ花のように、奥底でゆれて波打つ記憶。浮かびあがるようで、けれど決して浮かばない。
 ──生きている方が良い。生きていてほしかった。
 ぶくぶくと、なにかは底に沈んだまま。
 ──でも死んじゃったものは仕方ない。
 沈んだものをそのままにニュイは傍らのリサの肩を抱き寄せた。そっと、口付ける。足許にふれる花びらよりも空気よりも冷たい唇。優しい花の香りがふたりを包むなか、触れたそこから死の香りがした。
 ──永遠だって素敵なものだよ。
 ニュイの耳許に鐘の音がこだまする。鐘は誰の手も借りず、この高く澄んだ音を響かせるという。誰の為に、鐘は鳴るのだろう。
(「たとえ闇でも、僕にとっては光だから」)
 そうだね、とリサの頬に指先を触れ、ニュイは肯う。
 この輝きを何本か摘まんで部屋に飾ろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジロリア・アンブッシュ
敵は倒れましたが、これであの子(エマ)は完全に前を向いて進めるのでしょうか?
あの人(亡夫)なら、やれる事があるなら全てやる。
まだ未練のある魂もいるようだし、私のやり方で、あの子の心に残ってる棘を抜き取りましょう。

皆に気づかれぬようゆっくり物陰に隠れ、名も失われた慈悲深き神への祈りを捧げ【群霊応援団】発動。
「かつて敵に虐げられた者達の群霊」としてエマの家族たちの霊を招きエマと再会させ、エマの「後悔」を雪ぎ、その家族達が残した想いを受け取れる機会を作る。
耀の中の、奇跡の一つとして。

全て終わったら何食わぬ顔で現れエマを送る。

……ええ、わかってるわ『あなた』。
「耀」はいずれ、この世の全てに。そうよね?



 仇が消えたとき、ひとはそのまま前を向いて進めるのだろうか。
 答えはきっと否であろう。寧ろ、ただ一心不乱に翔けただけの少女が仇を失えば、燃え尽きた灰のようになりえることも侭あること。
(「あの人なら、やれる事があるなら全てやる」)
 ジロリア・アンブッシュ(燈狼の未亡人・f05791)は樹の陰で名も失われた慈悲深き神への祈りを捧げた。
 ユーベルコードが発動する。
 かつて生きた者、そして今を生きている者のために。

 エマはふと人の気配に気づいて振り返った。
 そして、動けなくなった。これでもかという程に瞠目し、口を幾度と動かすも言葉が出てこない。
 エマの愛おしいものたちが、耀のなかに立っていた。
 またしても幻影かと首を振るも彼らは消えない。エマを優しく、愛おしそうに見つめる姿は記憶の家族そのままだ。
 エマ、と母の姿が少女の名を呼んだ。
 その声もまさしく母のもので、途端堰を切ったように溢れだす。
 おとうさん、おかあさん、おにいちゃん、リアム、オリバー、おじさん、おばさん。
「ごめんね……!」
 ごめん、ごめんなさい、エマは何もできなかった。
 もっとたくさん、してあげたかった。
 いくら悔やんでも悔やみきれない。
 泣き崩れたエマの肩に愛おしいものたちの掌が触れた。透き通ったそれは、けれどどこか暖かさすら覚えるような優しさで撫でる。
『泣かないで、エマ』
『エマが生きていてくれてよかった』
『傍にいてあげられなくてごめんね』
『それでも、どうか、エマは』
 エマはどうか、幸せに生きて。
 
 ──これでいいのよね、『あなた』。
 ジロリアは樹の幹の後ろからエマの様子を見つめていた。
 エマの前に現れたあれはジロリアが呼び起こした、かつて敵に虐げられたものたちの群霊であった。耀のなかの奇跡のひとつとでも、思ってくれたらいい。
 群霊が耀のなかに消えていく。
 消える間際、彼らとジロリアの視線が重なった。彼らの瞳が幸せそうに緩み、口許が『ありがとう』と紡ぐ。
 消えゆくのを見送り、木陰から歩み出たジロリアは、そのまま何食わぬ顔でエマの傍に歩み寄った。
 ジロリアが声をかけようと口を開き、けれどその前にエマの掌が女の腕を掴む。ジロリアは泣き崩れる少女を抱え、彼女の掌を握り締めた。そっと、ぬくもりを伝えるように、優しく。

(「……ええ、わかってるわ『あなた』」)
 「耀」はいずれ、この世の全てに。
 ──そうよね?

大成功 🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
コノf03130に誘われ来てみれば
これは、確かに不思議な…
もっと良く見たいとしゃがみ込み
じっと花を眺める

ふわりと浮かんだ耀へと手を伸ばすも
風に運ばれ上手く捉えれなかった耀を目で追い
周囲が耀で満ちている事に気付く

突然鳴り響いた鐘の音に
少しビクッとして尻尾ふくらませ
「枯れゆく、花々の為の、鐘…?」
なんて
しゃがんだ儘コノを見上げ首傾げ

多分、何の為の鐘でも構わないのだろう
この幻想的な光景の中なる教会の鐘は
厳かで心地良い
「そうだ、コノ」
よっこいしょと立ち上がり隣に並び
「…お疲れさん」
おかえり。と、笑みを返して


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

地に、やがて空にも灯る耀を見送り
この昏い世界にも広がる様は
失くしてしまった、とてもよく似た何かのようで
――希望、だったかも
其れに名を付けるなら

視線落とせば隣にある「日常」
花畑に埋もれるとか超似合わなーい
何て揶揄うそばから響く鐘の音
膨らむ尻尾見逃さず可笑しそうに笑い
問いにも首傾げるだけ
枯れゆくモノへ、生まれくるモノへ、或はそれを眺むる、モノへ
君が思うのなら、きっとその為に

ああ、きっと
耀が見えると聞いた時から薄々気付いてた
一人で見ては帰れなくなりそうで、怖いと

呼ばれ自分よりやや高くなったその双眸を見返す
短い一言に返事の代わり緩く笑んで
飽きるまで、耀を眺めていよう



 耀は波のように揺蕩い、コノハ・ライゼ(空々・f03130)の傍らをふわりと浮いては空を彩った。
 影に満ちた仄暗い世界に耀が灯るさまは、失くしてしまった、とてもよく似た何かのようとつと思う。
 ──希望、だったかも。
 其れに、名を付けるなら。

 なるほど、これは確かに不思議と、花のなかでもふりとまるくなってしゃがみこみ、じっと花を眺める連れひとり。
 眼の前の花から耀がふわり浮くものだから、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は手を伸ばしたけれど捉えられず、流れゆく耀をそのまま眼で追った。
 気がつけば周りは耀だらけ、さつまの尻尾も耀だらけ。ぽすんと尻尾を振れば、一層の耀が舞い上がる。
「花畑に埋もれるとか超似合わなーい」
 傍らの『日常』を見やれば、コノハから思わず揶揄が零れた。くるりとさつまが振り返るも、途端鐘の音が響いてびくりと跳ねる。ぶおお、と尻尾がふくらんだ。
「枯れゆく、花々の為の、鐘……?」
 縮まったからだを少し緩めて、さつまの瞳がコノハを仰ぐ。
 他方、コノハと云えば、さつまのふくらんだ尻尾を可笑しそうに笑いながら、問いにはゆるり首を傾げてみせた。
 枯れゆくもののため、生まれくるもののため、或いは、眺めるもののため。
 そう思うなら、きっとそう。
 つまりは、何のための鐘でもいいということだ。傾げるコノハにこくりと頷き、さつまは空舞う耀の向こうで揺れうごく鐘の姿を視た。
 雪のようなましろが彩る世界のなか、響き渡る鐘の音を聴けば、さつまの尻尾がここちよさそうにゆらゆらふれる。
 耀を眺めるコノハの視界の端には、心地よさそうなさつまの姿が映っていた。
 闇夜に浮く耀はまるで夢まぼろし。現からどこか切り離されたような世界のなかで佇みながら、男はすうと双眸を細める。
 耀が視えると聞いた時から、薄々と気づいていた、この感覚。
 一人で見ては帰れなくなりそうで、怖い、と。
「そうだ、コノ」
 ふと、聞きなれた聲が耳に響き、コノハの意識が戻る。
 よっこいしょと立ち上がってくる振動に眼を向ければ、コノハより幾分高くにある青が男を見やった。
 見返せば、平生の青に笑みに浮く。
「……お疲れさん」
 おかえり、と。
 短い一言には、返事の代わりに緩く笑んだ。

 鐘の音に、耀に、想うこころはそれぞれのなかに。
 辺りを包みこむ夜は、ともすれば、どこまでもやさしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月30日
宿敵 『救済の代行者・プレアグレイス』 を撃破!


挿絵イラスト