アルダワ魔王戦争5-E〜ドリーム・オルゴール
●ゼンマイ仕掛けの歌姫
キリキリとゼンマイが回り、人形達が踊りだす。室内に吹き出す蒸気は蜜のように甘く、壁のガス灯の暖かい光が穏やかに室内を照らし出す。
その部屋の真ん中で災魔の歌姫が優しいオルゴールの歌声を響かせていた。
●グリモアベースにて
「アルダワ地下ダンジョンの攻略を頼みたい」
と、声をかけて回るのはディスターブ・オフィディアン(f00053)。
「場所はダンジョン内の研究施設――どうも災魔の強化研究がおこなわれていた場所のようでね。『失敗作』として放置されていた群れが、侵入者を迎撃しようと待ち構えているんだ」
待ち伏せを受けることにはなるが危険はない、とディスターブは付け加える。
「待ち構えている災魔は螺子式ディーヴァ。催眠音波によって侵入者を幸福な夢に捕える、機械仕掛けの敵だ。特筆するべきは二点。強化研究の結果、催眠音波のユーベルコードが非常に強化されている事、対策は不可能と言っていい。確実に夢に捕らわれる。
そしてもう一点は、そのユーベルコードを使用すると、奴は負荷に耐えられず崩壊する」
そこでディスターブは肩をすくめる。
「つまり、侵入者を眠らせて夢を見せただけで自壊するんだ、この災魔は」
しかも見せる夢は幸せな物や楽しい物に限られ、精神攻撃になる訳でもない。
「紛れもない失敗作さ、単体ならば、ね」
もしも今の群れを離れて、他の敵や罠と格闘している最中に催眠音波を放たれれば、愉快な結末にはなりえない。
「というわけで今のうちに倒す――というか自壊させてきてほしいんだ。この先の探索の安全のためにね」
当然、寝付いたらすぐに転送するから安全に問題はない、そう言ってディスターブは人を食ったような笑みを浮かべる。
「それじゃあ、みんなお休み。良い夢を」
雲鶴
●仕事とか忘れて眠りたい。雲鶴です。
さて今回のシナリオではプレイングボーナスが設定されています。条件は「偏った特徴への対策」、つまり幸せな夢を見れば成功に近づきます。
侵入即睡眠、という感じですので索敵など入眠前の工夫は不要となっております。夢に見るであろう楽しい記憶や愛しい記憶などを、思う存分プレイングに書いてくださいませ。
プレイングの受付期間などは随時MSページでお知らせしております、そちらをご確認くださいませ。
第1章 集団戦
『螺子式ディーヴァ』
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POW : 楽シキ歌
【狂った円盤から】【楽しい記憶を呼び起こす音色を対象に放ち】【動きを一時的に封じる幸せな夢に捕らえる事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 哀シキ歌
【狂った円盤から出鱈目な衝撃波の慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 愛シキ歌
【狂った円盤】から【愛しい記憶を呼び起こす音色】を放ち、【幸せな夢に捕らえる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
歌姫のいる部屋を目指して、蒸気に満ちた通路を歩む。暖かくそれでいて汗もかかない。
ふと花の蜜のような香りが鼻をくすぐった。――実験に使われていた薬草だろうか?
進めるうちに、冷えて疲れた体がゆっくりと温まりほぐれていった。
疲れと凝りが、蒸気の中に溶けて消えていくようだ。
だんだんと手足が温まっていく。
暗い部屋の中、ブリキの人形が見えた。
貴方のことなど知らぬげに、クルリクルリと踊っている。
オルゴールが聞こえる。いつかどこかで聞いた音色。懐かしく優しい音。
瞼が重くなっていく。目を閉じて耳を澄ませよう、この微かな音色が消えないように。
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歌姫のいる部屋を目指して、蒸気に満ちた通路を歩む。暖かくそれでいて汗もかかない。
ふと花の蜜のような香りが鼻をくすぐった。――実験に使われていた薬草だろうか?
進めるうちに、冷えて疲れた体がゆっくりと温まりほぐれていった。
疲れと凝りが、蒸気の中に溶けて消えていくようだ。
だんだんと手足が温まっていく。
暗い部屋の中、ブリキの人形が見えた。
貴方のことなど知らぬげに、クルリクルリと踊っている。
オルゴールが聞こえる。いつかどこかで聞いた音色。懐かしく優しい音。
瞼が重くなっていく。目を閉じて耳を澄ませよう、この微かな音色が消えないように。
ガーネット・グレイローズ
WIZ
…幸せな夢を見る。あれから何十年経っても忘れられない、
人生で最も幸せな一日の記憶を。
オルゴールの音が次第にパイプオルガンの音色に変わり、
気づけば私はとあるコロニーシップ内の教会に立っていた。
…そう、今日は私たちの結婚式だ。
銀河帝国との戦いの最中、私たちは
コロニー船防衛隊の基地で出会った。
ウェディングドレスに身を包んだ私の傍らで、
最愛の夫がほほ笑んでいた。大勢の人に祝福され、
私達は口づけ交わし永遠の愛を誓う。
でも、私は知ってる。この後に待つ悲劇を。
…私としたことが、敵の夢に捕らわれるなんて。
まったく。なんてものを見せてくれる。
これならまだ、残酷な悪夢の方がまだマシだ。
※アドリブ何でも可
●結婚式の夢~ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)
音が聞こえる、結婚行進曲のメロディ。パイプオルガンの荘厳な音色が響いている。
――結婚。そう今日は私たちの結婚式だ。
コロニーシップ内でも人気の教会、ステンドグラスに天使が微笑み、私達を祝福するように窓の外で星々がきらめいていた。
真っ赤なバージンロードを歩む私を友人や親戚、コロニー船防衛隊の同僚たちが笑顔と拍手で迎えてくれた。音色に合わせた歩みを進めるたび、ウェディングドレスが揺れ、かすかな香水の香りを振りまいていく。
そしてバージンロードの先、ステンドグラスから差し込む光に照らされて、あなたが立っている。着つけぬタキシードを着て気恥ずかしげに、私に微笑んでくれた。最愛の人。
階段に足をかけた私の手を優しく取って、あなたは一段、一段と私を導いてくれた。
式は滞りなく、厳かに進んでいく。誓いのキス。
促され、あなたがドレスのヴェールを上げる。少し緊張したような、硬い仕草。愛おしさが胸からこみあげて、思わず顔がほころんだ。気付かれぬうちに目を閉じて、あなたの肩に手を回す。おずおずと遠慮がちにあなたが私の腰に手を添えて、顔と顔が近づく気配。
唇が触れた。天井から差し込む光が私たちを照らす。
ウェディングベルが響く中、目蓋を上げればあなたと目が合った。その笑顔に微笑みを返す。暖かい想いに満たされていく。
たとえこの先、銀河帝国との戦いがどれほど激化しても私たちは負けない、この人と一緒なら。
――私は無邪気にそう信じていた。この先に起こる悲劇を知る由もなく。
●幸せな夢と現実と
「……私としたことが、敵の夢に捕らわれるなんてな」
呻いてガーネットは眠気を払うように頭を振りながら、起き上がる。
「まったく。なんてものを見せてくれる。何十年たとうと忘れるはずもない、私の人生で最高の一日の夢とは」
夢の残滓を求めるように、ガーネットはそっと自らの唇に触れる。酷くむなしい感触、溜め息。
「これなら、残酷な悪夢の方がまだマシだ。起きた後で、現実に打ちのめされずに済むのだからな」
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
敵を眠らせただけで自壊するって、にわかには信じがたいんですが……
……夢を見ればいいんです、よね?
本当に大丈夫なんですよね!?
まだ幼い頃の夢 ダークセイヴァーに居た頃の話
親友と二人でお鍋を見張っているように言われて
母親は少しだけ他所に出かけて行った
なんだか目の前に白くてふわふわした生き物が飛んできて
私と親友はびっくりしてつい追いかけてしまって
本当はどっちか一人でも残ってれば良かったけど
あとはお察しの通りで、鍋は黒焦げ
母親にはこっぴどく叱られた
なにせ貴重な貴重な食糧だったんだもの、私と親友の
……見かねた町の皆が食べ物分けてくれてつい泣いちゃってね
もう今は皆、いない
二度と帰らない大切な思い出
●帰らぬ日々~鈴木・志乃(オレンジ・f12101)
オルゴールが聴こえる。暖かい湯気、いい匂い。懐かしい、お母さんのスープの匂い。瞼が落ちる。思い出す、ダークセイヴァーでの日々。一番の親友と、『―――』と、一緒に過ごした幼い日々。
――・――
かまどの上で鍋がコトコトと音を立てている。鍋を覗き込む私、スープの表面に幼い日の私が映る。具材は、多くはない。なけなしの食べ物だった。
「このスープしっかり完成させようね」
「うん、私達だけでも留守番できるって、ママに見せてあげよう!」
『―――』の言葉に答えて、私はもう一度ゆげを吸い込む。豆とジャガイモ、それから僅かな肉の匂い。
お腹の虫が急かすように音を立てた。
「おいしそうだね」
「うん」
「ママ、早く帰ってこないかなぁ」
「うん……きゃっ!?」
「わぁっ! なにあれ!」
窓の外で何かが飛んでいった。
「白くて、ふわふわしてる……?」
「ねぇっ! 追いかけてみようよ!」
家の戸を開けて駆け出す『―――』。私も彼女と一緒にそれを追いかけて――。
――鍋を黒焦げにしてお母さんにこっぴどく叱られたっけ。
――・――
「ありがとうございます、パンを分けて頂いて……。ほら貴方達もお礼を言いなさい。まったく鍋を放って遊びに行くなんて、本当だったら晩御飯抜きのところよ」
「まあまあ。この子達も悪気があったわけじゃない、勘弁しておやり。あのトウモロコシも余っておったんじゃろう?」
「あれは、向かいの旦那さんが、いつも水くみを手伝ってくれるお礼にと」
「あはは、そうかいそうかい。なぁにアタシのこれも、畑仕事のお礼と思っておくれ。二人ともいろんなところを手伝って、えらいねぇ」
そう言って、隣のおばあちゃんは私達の頭をなでてくれた。ごつごつと固く、やせた手。『―――』は何だか困ったような、顔をしていた。きっと私も同じだ――おばあちゃんは褒めてくれるけど、お母さんはまだ怒っていて、笑うのを我慢しないといけない気がした。
おばあちゃんを見送って私と『―――』は、テーブルにつく。お母さんが運んできてくれたのは、さっきよりも具の減ったスープと固いパン。
パンをかじって、スープをすする。暖かい感触がのどからお腹に広がっていく。トウモロコシとほうれん草、ベーコンの味。ベーコンを分けてくれたのは猟師のおじさん、ほうれん草は村長さんだったっけ。
――なぜだか急に、涙が出た。
「あれ? ひょっとして泣いてるの?」
心配そうに私の顔を見つめる『―――』。
「あら。むせちゃった? ゆっくり落ち着いて食べなさい」
そう言ってお母さんは私の背をさすり始める。
――ああ、お母さん、『―――』、みんな。
みんな、もういない。もう二度と帰ってこない。大切な思い出の日々。
大成功
🔵🔵🔵
南雲・海莉
満開の桜の大きな枝が土手の上から張り出している
河川敷で温かな木洩れ日を感じている
「海莉、お待たせ」
幼い自分に義兄が紙袋を差し出す
紙袋の中には俵型の大きなクレープ
ふわふわの厚いクレープ生地
たっぷりの苺に生クリーム、スポンジにタピオカ入りだ
桜祭りの2日間だけ、近くのケーキ屋が焼いてくれる
二時間待ちの大行列を義兄が並んで買ってきてくれた
水筒の紅茶を飲みつつ、義兄と一緒の河川敷を過ごす
お腹が膨れて、義兄の膝枕でうつらうつら
「義兄さんは桜が好き?」
「好きだよ」
眠気に負けて義兄の言葉を良く考えられない
「その傍にいられなくても、咲き続けてくれると信じてる」
遠くを眺めるその瞳は、桜とは、誰を映してたのだろう
●春の陽気~南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)
オルゴールが響いている。暖かい、木漏れ日がさしていた。
見上げれば青空の元、満開の桜並木。川べりの土手に腰掛けて、私は目を閉じて耳を澄ませた。水の流れる音に混じる鶯の鳴き声。若草のあおい匂い。桜祭りの賑わいが遠くのほうから聞こえてくる。そして私に向かって近づいてくる足音。首を巡らせれば一人の少年が紙袋を片手に、私の方へ歩いてくる。視線に気づいたのだろう、彼が私に向けて手を振る。
――義兄だ。幼いころから私は義兄さんが大好きだった。
「海莉、お待たせ。ほら、おやつ。買ってきたよ」
差し出さた紙袋から漂う甘い香り。中から出てきたのは俵型の大きなクレープ。
「わぁ! これ、あのケーキ屋さんのクレープ! ……待たされなかった?」
「二時間、並んだよ。桜祭り限定とはいえ、あんなに並ばなくてもいいのにな」
溜息を一つ、義兄さんが私の隣に腰掛ける。
「やれやれお陰でクタクタだよ」
その疲れた顔がなんだかおかしくて、そうまでして私のために買って来てくれた事が嬉しくて、私の顔は思わず綻ろんでいた。
そうして私たちはクレープにかぶりつく。ふわふわのクレープ生地に、たっぷりの甘い生クリーム、爽やかなイチゴの酸味。タピオカ入りのスポンジがもちもちと柔らかい噛み応えを返す。
コポコポと義兄さんが水筒の紅茶を注いでいく。コップを受け取って一口。こうばしい香り、紅茶のほろ苦さが口に残った甘みと混じる。
食べ終わる頃には、ぽかぽかと体が温まっていた。あくびが出た。目をこする私をみて義兄さんが微笑む。
「眠くなったかい。それじゃあ少し昼寝にしようか」
まぶたが重くなってくる、こくりと頷き横になる。義兄さんの膝枕、私の髪をなでてくれる義兄さんの手。桜の花が風に揺れている。義兄さんが顔を上げて桜を見上げた。
「ねぇ……義兄さんは桜が好き?」
「ああ、好きだよ」
義兄さんはどこか遠くを見つめていた。桜の花に誰かの面影を重ねるように。
「たとえ、その傍にいられなくても、きっと咲き続けてくれると信じてる」
――義兄さん。義兄さんはあの桜吹雪の中で誰の姿を思っていたの?
大成功
🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
これは夢、未来への希望
胸に秘めたいとおしい想い……
オブリビオンの支配から解放され、平和になったダークセイバーの村
太陽を取り戻し、晴れ渡る空
草の匂い、お日様の匂い、暖かな日差しと澄み渡る風
そこでわたくしは、愛する夫と子供たちと共に、幸せに暮らしている
平凡だけど、何一つ憂いのない、笑顔に溢れ満ち足りた日々
吸血鬼により家族を失ったわたくしにとって、これこそが求めていた幸せ
かつては寿命が短いとされた人狼病の夫も、今は病を克服して、長生きできるようになりました
やがて歳をとって、孫たちに囲まれて、天寿を全うするその日まで
いつまでも、いつまでも変わらぬ愛を
さあ、夕餉の支度を始めましょう
日々の幸せに感謝して
●いつか来るべき日々~ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)
オルゴールの音色の中、優しい匂いが私を包む。洗濯したばかりの真っ白なシーツからほのかにシャボンの香りが立ち上る。暖かい日差しのもと、わたくしは洗濯物を一つ一つ、物干し竿にかけていく。
雲一つない青い空、草木も生気を取り戻し、瑞々しい葉を輝かせている。吹き抜ける風を吸い込むと爽やかな夏の匂いがした。もうこの風に乗って吸血鬼が現れることはない。――私たちはヴァンパイアの支配を打ち破ったのだ。
「ママーー!」
「あらあら、どうしたの? コップなんて持って」
「あのね、パパが畑でお水もってきてくれって。それであたし今からお水もっていくの。えらいでしょー!」
「あら、ちゃんとお手伝いできるの。いい子ね、えらいえらい」
「えへへ」
にっこりと笑う娘、まるで天使のよう。思わず抱きしめて、頬ずりをする。娘はくすぐったそう。
――愛する夫に可愛い子供。家族のぬくもりと笑顔に満ちた日々。これこそがわたくしの求めていた幸せ。
「でも、お水はコップじゃなくて桶でもっていきましょうね」
「……?」
首をかしげる娘を連れて、改めて水を汲みに行く。畑にコップを持ってこられては、あの人も困ってしまうだろう。
――・――
「ふう。ぐっすり寝ているな」
「ええ。疲れたのでしょう。水を運んだあとは、外で走り回っていたみたいですから」
娘はすうすうと寝息を立てている。その寝顔をまじまじと見つめる貴方。
「それにしても可愛いものだ。きっと将来は美人になるぞ」
「ふふ、いいお婿さんを見つけてくれるといいわね。……私みたいに」
照れくさそうにそっぽを向く貴方、けれどその尻尾が、毛むくじゃらの耳が嬉しそうにひくついていた。
「いつか一緒に、孫たちを抱きましょうね」
――そうだ。貴方を苛んでいた人狼病も、今はその痕跡を貴方の体に残すだけ。わたくしたちは一緒に歳を取っていくことができる。天寿を全うする日まで。
「愛しているわ、あなた」
「ん……」
短い返事、その頬がわずかに赤らんでいる。わたくしの顔もきっと同じ。
段々あたりが暗くなってきた、そろそろ夕餉の支度をしなくては。今日のメニューはシチューにしようか。きっと二人も喜んでくれる。
――ああ、なんて幸せな日々。
大成功
🔵🔵🔵
イフ・プリューシュ
アドリブ歓迎
素敵なお歌を聞かせてくれるお人形さんがいるって聞いて
イフ、楽しみにして来たのよ!
でも、なんだか、ねむたく…て…
ねえロゼッタ、少しだけ、眠らせて…
ここは、どこかしら
少し古ぼけてるけど、綺麗で清潔そうな建物
なんだか、懐かしくて、見たことがある場所
ねえ、カメリア、ロゼッタ、みんな!探検しましょ!
……あら、みんな……どこへいってしまったの?
おいてきぼりなんてひどいわ
でも、イフは…違う、「わたし」ははじめから、ずっとひとりだったわ
だからさみしくないわ
それに、この扉を開ければ、あの人がいるはず
あの人がくれた、「おともだち」だって、この先に――
(濡れた目元をこすりつつ目を覚ます)
あれは、ゆめ?
●思い出の扉~イフ・プリューシュ(あなたの『生』に祝福を!・f25344)
蒸気に包まれた暗い部屋、クルリクルリとお人形さんたちが踊っていた。ロゼッタや他のおともだちと比べると硬そうだけど、イフ、この子達ともおともだちになれるかな?
「ねぇ、素敵なお歌を聞かせてくれるお人形さんってあなたたちね! イフね、みんなの歌を楽しみにしてきたの!」
どこかでカチリと音がしてオルゴールのお歌が流れてくる。そのお歌を聞いているうちにイフのまぶたは重くなってきちゃった。
ロゼッタの柔らかい体を抱きしめて目を閉じる。
「なんだか……ねむたくて……。ねぇロゼッタ、少しだけ、眠らせて……。おこさないで……ね……」
――・――
気が付くとイフは別の場所にいたの、
「ここは……どこかしら」
ダンジョンとは全く別の平らな床に平らな壁。少し古ぼけてはいるけど、歩いても足に埃が一つもつかない。綺麗で清潔な建物の中。
いつかどこかで見たことがあるような、なんだか懐かしい建物だった。
「ねぇ、カメリア、ロゼッタ、みんな! この建物を探検しましょ!
……あら、みんな……どこへ行ってしまったの?」
気が付くとおともだちはみんないなくなっていた。抱きしめていたはずのロゼッタも。
曲がり角の向こう、布の体がチラリと見えた。傷だらけの小さなぬいぐるみのウサギがとことこと歩いていく。
「あっ、ロゼッタ! 先に行くなんてひどいわ!」
ロゼッタを追って角を曲がる、けれどイフが行ったときにはロゼッタはまたどこかへ行ってしまっていた。
「もう、おいてきぼりだなんて……。でもイフは……」
――違う、『わたし』は。
「わたしはさみしくないわ。はじめから、ずっとひとりだったもの。それに……」
角を曲がって見つけたこの扉。この扉を開ければきっとあの人がいる。あの人がわたしにくれた「おともだち」だってきっとこの先。
そうしてわたしは扉を開いて、それから――。
――・――
全身が暖かい。左手に柔らかい弾力。イフが目を開けると、ロゼッタはちゃんとそこにいた。
「あ、ロゼッタ! もう、イフに黙って何処か行ったらだめだからね! じゃないと……えっと、なんだっけ?」
なんだかまだ少し眠たい、瞼をこすると、なぜだか濡れていた。
「あれは……ゆめだったのかしら?」
●人形たちの見る夢は~
キリキリとゼンマイが回り発条が跳ねる。オルゴールの音色が段々と遅くなっていく。人形たちのダンスが途切れがちになり、やがて一体また一体と動きが止まっていく。
そうして最後の一体が動きを止めた時、部屋の中には猟兵たちの寝息だけが響いていた。
それが『失敗作』と捨てられた人形たちの最後の光景。
大成功
🔵🔵🔵