アルダワ魔王戦争4-A〜きみにひろってほしいの。
●さみしがりやのすらいむ
まるで所々に宝石が散りばめられたような自然洞窟。そんなダンジョンに潜むのは虹色のスライム。
誰が、いつ、何の目的で生んだものなのかは誰も知らない。
少なくともこのスライムを目にした時、発見者はこう思うだろう。
『なんて罪深いものを残していったんだ……』と。
「…………」
寂しがり屋のにじいろとろりんは、今日も誰かを待っている。
いつか拾ってくれる、優しそうな人に出会えると信じて。
●仕掛け罠の洞窟~激流の洞窟~
「皆さん、お疲れ様です! 戦いはまだまだ続きそうですね、頑張りましょう!」
私も頑張って探します、とローズウェル・フィリンシア(太陽と月の神子・f09072)は猟兵達に応援の声を掛ける。
「さて、集まって頂きましたので私からの依頼内容をお伝えしますね。今回私が発見したのは、キラキラと輝く綺麗な洞窟なのです」
赤や緑、青といった宝石が所々に埋め込まれたような自然洞窟の通路に向かって貰う、という事のようだが。
「普通の洞窟ならいいのですが、やっぱりそういう訳にもいかなくて……。罠がいっぱい仕掛けられているようなのです」
罠とは恐らく……埋め込まれた宝石が怪しく感じられるのだが。
「もしも罠に引っ掛かってしまうと……水がびしゃーん! じゃばばー! です!」
よく分からないがジェスチャーからして『滝のように水が降って来てヤバい』という意味だと思われる。水圧が凄い上に全身びっしょりになってしまうので、何度も引っ掛かってしまうのは控えた方がいいのかもしれない。
「罠に引っ掛かってしまうと、トドメを刺そうと敵が群がって来ます。……が」
が?
「……ただただ、じっとこちらを見つめてくるだけ、です」
それだけ?
「敵は『にじいろとろりん』というスライムなのですが……寂しがり屋なだけなのです、拾って欲しいだけなのです。なので敵に遭遇したら気を付けて下さいね。ずっとこちらを見つめてついて来ようとしますから!」
なんて健気なんだ……。いろんな意味で二重トラップの洞窟ではないか……。
「ですから皆さん、同情して絶対拾っちゃダメですよ! 心を鬼にして、なんとかこう……優しく追い返して下さいね。あっ、可哀想ですが水に流しちゃうっていうのも有効かもですよ?」
この依頼、なかなかに手強い可能性がある。なんて事を猟兵達はそれぞれ思い、覚悟を決める。
「そんな感じでしょうか、私からの説明は以上です。準備が出来ましたら送りますね!」
最後にそう締め括り、ローズウェルは転送の準備を行い始めた。
ののん
お世話になります、ののんです。
●状況
『アルダワ魔王戦争』の戦争シナリオとなります。
1章で完結します。
●戦場ルールについて
OPの説明通り、トラップが仕掛けられていますので注意して下さい。
今回は『トラップに引っかかった振りをして、敵を釣りだす』行動を行えばプレイングボーナスとなります。
にじいろとろりんへの対応はご自由に。でも持って帰るは駄目ですぞ!
●プレイングについて
受付期間は特に設けておりません。
キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
同時に投稿して頂けると大変助かります。
申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。
以上、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『にじいろとろりん』
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POW : とろりんは、ひろってほしそうに、きみをみている。
【ひろってほしそうなまなざし】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ひろってあたっく】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : とろりんは、うったえている。
【拾ってほしい気持ちを訴える鳴き声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ : とろりんは、りらっくすしている。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【体の一部】から排出する。失敗すると被害は2倍。
イラスト:Miyu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……」
じめじめと湿った空気が漂う洞窟に、むにむにとろーんとしたスライムが一匹、二匹……とてもたくさん。
『ひろってください。』と書かれた段ボールにぎゅうぎゅうとろーんと集い、
何をする訳でもなく、ただただじっと猟兵達の事を見つめている。
「……」
「…………」
「………………」
純粋な眼で仲間になりたそうにこちらを見ている、にじいろとろりん。
周囲に潜む罠に注意しつつ、とろりんの魅力に惹かれないよう対処しなければならないのだが……。
栗花落・澪
翼の【空中浮遊】で足元に注意して
罠を警戒してる素振りで【演技】
飛び続けるのも疲れたなぁ…わっ、わっ!?
壁に寄り掛かろうとして罠に引っ掛かってザバーン
わー水圧が痛い!びしょびしょだぁ…あ
とろりんさんを見つけたら笑顔で
こんにちは
…ひろってください?
君達拾ってほしいの?
ふふ、じゃあ初めましてのご挨拶に遊ぼうか
一緒に歌おう?
【催眠】を乗せた【歌唱】の【範囲攻撃】で
最初は楽しく、次第に眠くなるように
とろりんって撫でれるのだろうか…
大丈夫そうなら【優しく】撫でてあげよう
眠るまでの時間が寂しくないように
ごめんね
出来ればそのままにしてあげたいけど…
倒さなきゃなら【指定UC】の【破魔】で
痛みを与えず優しく浄化を
「うーん、ジメジメはちょっとなぁ……」
寒くもなければ暑くもない、ただじめじめとした空間は居心地が良いとは言いにくい。栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は湿気を我慢しながら周囲をきょろきょろと見渡し、洞窟の中を飛んでいた。
「とろりん、とろりん……あっ」
罠に警戒する素振りを見せながら、澪が探していたのは虹色のスライム。とろりんとした虹色の液体(?)の痕跡を発見すれば、彼は地上に降り立ち。
「はーぁ、飛び続けるのも疲れたなぁ……」
と、わざとらしく大きな溜め息を吐きながら、輝く宝石の埋め込まれた壁に寄り掛かると。
ざっぱーーーん!!!
「うわっ!! わっ、わっ!?」
巨大なバケツをひっくり返したかのような大量の水が澪に襲い掛かった。予想以上の水圧に驚き思わず膝をついてしまう。
「い、痛い……流されなかったけど……びしょびしょだぁ……」
水流トラップが落ち着いた頃、ふるふると震えながらずぶ濡れの体を立たせようとしていた……その時だった。
「…………」
何処からかすごい視線を感じ、ハッと顔を見上げる。いつの間にか自分の周囲を囲んでいたのは……純粋な眼差しをじっと向けるスライム、にじいろとろりんの群れだった。
「これが、とろりんさん……。えっと、こんにちは」
正面にいたとろりんに笑顔で挨拶をしてみる澪。それに反応したとろりんは慌てて何処かへ向かうと……先程まで自分が入っていたであろう段ボールを仲間と共に引き摺って戻ってきた。
「……『ひろってください』? 君達拾ってほしいの?」
うんうん、と頷くとろりん達。自分も、自分も、と他のとろりん達も自分の段ボールを運んでくる。あっという間に澪は段ボールに包囲されてしまった。
「ふふ、面白いなぁ。じゃあ初めましてのご挨拶に……一緒に歌おう?」
よいしょ、と体勢を整え座り直すと、澪はとろりん達に向かって手招きをした。恐る恐るでありながらも、とろりん達はゆっくりと近付く。澪の楽しそうな歌が響き始めると、とろりん達は次第に安心し、ふよふよと体を揺らし始めた。
触れるかなぁ、と澪は一匹のとろりんに手を伸ばしてみた。ぷるるん、と冷たい感触が伝わる。
「(わ、ぷるぷるして、冷たくて……お餅みたい! ちょっと癖になりそう……)」
ぷるんぷるんと撫で続けていると、脱力するかようにとろーんと溶けていくとろりん。安心し過ぎて、うとうとと眠ってしまいそうだ。
この人は良い人だ、そうとろりん達は感じたのだろう。ゆったりとした優しいメロディとなでなでによって、眠気は急速に周囲に伝染していった。
「……ごめんね、そのままにしてあげたいんだけど……」
せめて痛みのないままに。子守歌を歌いながら、澪は自身の体から温かな光を放つ。眠りについたとろりんは一匹、また一匹と、静かに姿を消していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
猫森・奈緒
【WIZ】
綺麗な場所ね。でも、ここ…トラップがあるのよね。
確か…水が激しく降ってくるのだったかしら。…冷たい水は苦手だから気をつけていかないと。…あら?この宝石他の宝石と少し違う気がするわね。でも、とても綺麗。少し触るくらいなら…。
やっ!ちょっ…み、水は…。水は嫌…!耳に水が入っ…みゃ~……。
…酷い目にあったわ。おかげで目的の子には会えたけれど。
それにしても…とても可愛いわね。共感してしまうところもあるけれど…拾ってはあげられないから…。だからこの歌を聴いて強く生きてね。
うぅ…。視界が霞むのはきっとさっきの水のせいね。あの子達との別れが寂しいわけじゃないんだから…。
【アドリブ・絡み・可】
猫森・奈緒(HeartSong・f18253)はゆらりと散歩をするように洞窟を歩く。空気は美味しくないけれど、これも迷宮を突破する為だ。
「にしても、綺麗な場所ね」
危険な場所だとは思えないような静けさ、そして輝く水滴と埋め込まれた宝石。神秘的空間に心惹かれるのだが。
「ここ……トラップがあるのよね。確か……水が激しく降ってくるのだったかしら」
冷たい水は苦手だ。それだけには気を付けたい。慎重に進みつつ早くにじいろとろりんに出会わなければ。
……と心に決めたのも束の間。視線を落としたその先に見えたものに、ぴたりと足が止まる。
「……猫の形みたい」
猫の顔のような形をした紅い宝石が地面に落ちている。いや、よく見れば少しだけ地面に埋まっている。……少し引っ張れば取れるかもしれない。
少し触るくらいなら、と奈緒は屈んで宝石に手を伸ばす。親指と人差し指で宝石を摘まんだその瞬間、悲劇は起きた。
ざっぱーーーん!!!
何が起きたのか、最初は理解が出来ず呆然とした。大きな音と共に一瞬水の中へと入ったような、意識が違う方へ飛んでいたような……。ともかく気付いた時には全身がびしょ濡れで、ついでに背中辺りがひりひりと痛んでいた。
「み、水……! 耳に水が、入っ……みゃ~……」
頭の耳がしょんぼりと垂れる。全身の力が抜けたかのようにその場でうずくまる奈緒。ふるふると耳を震わせながらハンカチ(それもびっしょり濡れていた……)で顔を拭いていると、突然、ふと強い視線を感じ取った。
「……あら」
見上げたその先にいたのは、にじいろとろりんの群れ。水トラップに心配したのか、それとも偶然発見したからか。どちらにせよとろりんは目をぱちくりさせながら、ただただじっとこちらを見つめている。
びしょ濡れの不快感を我慢しつつ、奈緒は自らとろりん達へと近付いてみた。とろりん達は全員、奈緒の顔から目を離さず見続ける。
「……拾って欲しいの?」
「…………」
「……とても可愛いけど、ごめんなさいね」
拾えない代わりに、と、奈緒は一つの歌をとろりん達へと送った。
それは自由気ままな野良猫の歌。昨日の敵は今日の友、それくらい心とは移ろい易いものなのさ。自分の赴くままに、日々を自由に生きようじゃないか。
「――……できるわ。あなた達にも、ね」
とろりん達にそう伝えると、数匹のとろりん達はぷよぷよと体を揺らしながら、洞窟の奥へと去っていった。
何処となくその後ろ姿が勇ましく見えたような気がした。奈緒は濡れたハンカチで再び自分の顔を拭く。
「うぅ……まだ水が残って……」
心がきゅっとして視界が霞むのは寂しいからじゃない、罠で酷い目に遭ったからだ。……きっとそうだ。
成功
🔵🔵🔴
神代・凶津
今回の依頼は罠に掛かったフリをして敵を釣りだして討伐。
しかも敵は見つめてくるだけとは、今回の仕事は楽勝だな相棒ッ!
「・・・甘くみちゃ駄目だよ。」
おう、腐ってもオブリビオンだ、油断はしねえよ。
「いくぜ相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」
風神霊装、こいつなら罠のダメージもある程度軽減できるぜ。
とりあえず洞窟の宝石でも触ってみるか。
敵を誘き寄せたら、ぱぱっと片付けて終わりだぜ。
・・・?相棒、足が止まってるが?
「連れて帰ろ?」
待て待てッ!何言ってんだ相棒ッ!?
絆されちゃってんじゃねえかッ!?
「ちゃんとお世話するから。」
そういう問題じゃねえよッ!?
(このあと、何とか少女を説得して追い払った。)
【アドリブ歓迎】
鬼の仮面、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は少女、神代・桜に抱かれつつ洞窟を歩いていた。
「今回の仕事は楽勝だな相棒ッ!」
凶津が生き生きとした口調で話し掛ければ、少女は静かな声で、
「……甘く見ちゃ駄目だよ」
そう仮面に向かって宥める。どうやらこの二人の性格は正反対のものらしい。
「おう、腐ってもオブリビオンだからな。……さてと、罠とやらはこの辺りじゃないか? んじゃ一発行くか、相棒!」
凶津の言葉に桜は頷くと、彼を仮面として自身の顔に装着する。
「いくぜ相棒ッ!!」
「……転身ッ!」
元気な掛け声と静かな掛け声を合図に、突風が吹き荒れ彼らの全身を包み込む。突風が止んだ時には、彼らは風神霊装(ストームフォーム)へと変身を終えていた。
「いいねぇ相変わらずキマってるぜ。じゃ早速、誘い込むとするか!」
「うん、これかな……?」
対策済みとはいえ、わざと罠に引っ掛かるのは少し緊張するものだ。桜はゆっくりと腕を伸ばし、壁に埋め込まれた宝石に触れる。
「天井だ、薙ぎ払えッ!!」
咄嗟に桜の体を操り、天井に向かって薙刀を振るう凶津。薙刀から放たれた暴風が、滝のように降り注いできた水を二つに割る。
「よし、最小限に抑えたな」
桜の体に降り掛かるのは、雨のような飛沫だけ。ずぶ濡れにならずに済み、二人がほっとしていると。
「…………」
「あ……」
やはり現れたのは今回の目標、にじいろとろりん。『ひろってください』と書かれた段ボールを見せ付けながら、桜と凶津の事を黙って見上げていた。
「来たな、後はこいつらをパパッと片付けるだけだ。さぁいく、ぞ……?」
と言った矢先、何故だか桜の体が動かない。どうしたんだと凶津が戸惑っていると。
「……連れて帰ろ?」
「え? ……待て待てッ! 何言ってんだ相棒ッ!?」
桜はしゃがみ込み、とろりんの頭をぷよぷよと撫でる。どちらも気持ち良さそうな表情をしており(桜は仮面を被っているので見えないが)、他のとろりんも撫でられる順番待ちをしているではないか。
「いやいや駄目! 駄目だッ! オブリビオンだぞ!?」
「ちゃんとお世話するから」
「そういう問題じゃねえよッ!? っつーか待て待てそれ以上はマジで懐かれるって……ふんッ!!」
撫で続ける桜に、凶津は仕方なく彼女の体を無理矢理動かし操った。本当は思いっきり薙刀を振り回し吹き飛ばしたかったのだが……少々(特に桜の)心が痛みそうだったので、軽く横に振ってとろりん達を追い払うだけに留めてあげた。集まっていたとろりん達はふよふよと体を揺らしながら、慌てて洞窟の奥へと逃げていったのだった。
「あれだ、相棒……オブリビオンじゃないやつだったら考えてやるから……」
「……」
どちらにせよ、しょんぼりとする桜であった。
成功
🔵🔵🔴
マヒル・シルバームーン
第二結界を発動して雨を降らせ、こっそり罠の水に紛れ込ませます
混ざって薄まるかもですが水圧は結界で防ぎ、あとは濡れるくらいなので我慢します
黒は透けにくいですしね
さて、何やら不思議な生き物が出てきましたね
エサは何をあげればよいのでしょうか
メロンパンとか、食べます?
食べるようでしたらそのまま差し上げて敵のテンションを上げさせます
食べなければ懐にしまって帰るそぶりを見せてしょんぼりさせます
いずれの場合でも、リラックス状態でなくすることで無効化を阻止して、
こちらのUCをおかわりして罠と合わせて押し流します
申し訳ありませんがペットは間に合っていますわ
わたくしには可愛い下ぼ…もとい、護衛兼執事がおりますので
マヒル・シルバームーン(銀の月・f03414)は周囲を見渡す。きらきらと輝く宝石を一つ見付けると、そこへ腕を伸ばそうと……いや、その前に。
「――ふたつめの音……それは、世界を護る銀色の誓い」
詠唱と共に銀色の雨が静かに降り始めた。その雨粒はマヒルの体を優しく濡らす。
雨が降る中、そこへ更に水が加わる。埋め込まれた宝石にマヒルが触れた瞬間、頭上から大量の水が降り注いできた。それは雨や暴風雨などと例えられない。滝だ。
「っ……!」
大きな音と共に水を被るマヒルだったが、銀色の雨が守ってくれたのだろう。彼女の周囲にはうっすらと結界が広がっており、水圧をやわらげたのだ。
お陰で怪我をする事無く水トラップを耐える事ができたのだが、全身がびしょ濡れとなってしまう未来だけは変える事はできなかった。
「……いえ、これくらいは我慢しましょう」
濡れてしまった黒いドレスを手で払っていると、むにんむにんと液体がひとりでに動くような音が聞こえた。ふと見れば、そこにはにじいろとろりんの群れがいつの間にか現れていたではないか。
「あら、あなたが噂のとろりんですの?」
「…………」
「そんなに見つめてどうしたのです? ……あぁ、お腹が空いているので?」
首を傾げるとろりん達。そうですわねぇ、とマヒルはしゃがみ込むと、ごそごそと何かを取り出す。
「メロンパンとか……食べます?」
「……???」
ふよふよと体を揺らしながら、とろりん達全員の視線はメロンパンへ向く。どうやら知らないようだ。一匹のとろりんが近付き、不思議そうに見つめながら小さな口を開くと、メロンパンを一口齧り(口でむしり取った、と言った方が正しいかもしれない)、食べてみた。半透明な体の中に千切れたメロンパンの欠片が浮いている。
「美味しいですか? よろしければ差し上げましょう。有り難く食べなさい」
「……」
微笑みながらそっと地面へ置く。とろりんはメロンパンとマヒルを交互に見つめ、そして二口目のメロンパンの欠片を飲み込むのだった。
次第に他のとろりん達もメロンパンに興味を示し、ふよふよと群がってはメロンパンを皆でむしり食べ始める。
美味しいものだ、あの人は良い人だ。そうとろりん達は安心しただろう。
「……でも、申し訳ありませんわね」
マヒルは目を閉じ、再び銀色の雨を呼び出した。さらさらと降る銀色の雨は先程よりも美しく輝いている。
そして彼女は、す、と宝石を撫でるように触れた。再び降り注ぐ滝のような水。しかし、二度目のユーベルコードは強度を増しており、強化された結界は水圧だけでなく、水そのものを彼女から守ってみせた。
マヒルの代わりに水流に飲み込まれたのはとろりん達。戦う力を持たない彼らはあっという間に流され、メロンパンと共に何処かへ消えていってしまった。
「ペットは間に合ってますの……。わたくしには可愛い下ぼ……もとい、護衛兼執事がおりますので」
ごほん、と咳を一つ。これはきっと、肌寒くなったからだ。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
う~む、激流トラップとは恐ろしい! 注意しなければならんな
…とか言ってみるが、だ
妾的には行くっきゃないであろう? やっぱこう、お約束でね?
はーっはっはっは! 実に綺麗で素晴らしいロケーションではないか!
これだけ宝石があるなら、ちょっとぐらい妾が頂いても良いんじゃないかのう?
おお、これなんか大きくて良さげではないか!(宝石を鷲掴みしてみる)
はっはっは、一度や二度ひどい目に遭った程度で諦める妾ではない!
むしろ水も滴るイイ女とゆーやつよ! 自分が恐ろしいの~
何度でもチャレンジだ!
スライム? 悪いが妾は身体を張ったロケの最中!
テンション上がってる今の妾では、お主らには触れるだけで爆散必至よ
さあお帰り!
「なるほど……なるほどなるほど!」
御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は洞窟を観察するなり大きく頷いてみせた。これは絶好の撮影スポットだ!
「はーっはっはっは! 実に綺麗で素晴らしいロケーションではないか!」
邪神様はここがお気に召したようだ。そうとなれば早速ここで撮影だ!
「はっはっは! 何とも幻想的な洞窟だが、ここには激流トラップが多く潜んでいると聞く! 注意しなければならんな……」
なんて重々しく言ってみたが、完全にフラグである。
「しかしまぁこれだけ宝石があるならちょっとくらい頂いても……おっと? 大きな宝石が出っ張ってるなー! これなら妾にも取れるのではー?」
とてもわざとらしい言い方だった。壁から顔を出す宝石を大きな手で鷲掴みする菘。
……ばきっ。
ざっぱーーーん!!!
なんと宝石が折れた。なんという腕力と握力なのだろうか。折れた宝石を手に入れたと同時に、菘の頭上から滝の如き大量の水が溢れ出し、重く重く圧し掛かって来た。
しかし菘は涼しい顔をしていた。悲鳴など何処へやら。寧ろ高らかに笑う声が空間中に響き渡るではないか。
「はっはっは! 良いシャワーではないか! どれ、他の宝石も取れるかのう? 試してみようではないか!」
菘は次々と目に入る宝石に触れていく。それも軽率に。もはや「ダムから水が放流されまくっているのでは?」というくらいの水が菘を襲う。何処からそんなに水が? なんて突っ込みは野暮だ。魔法だよ魔法。だってアルダワだもの。
「まだまだこれからよ。これくらいなら涼しい涼しい、むしろ水も滴るイイ女とゆーやつよ! いや~自分が恐ろしいの~」
菘は楽しそうに笑う。喜んで自身を追い込む。その強すぎる信念はただ一つ、『素晴らしい動画を創り上げる』事。自身を追い込めば追い込むほど、彼女の体は強化されていく!
「しかしまぁ、これだけやってると一つくらい温泉が降って来ても良いではないか? あ、『温泉水引き当てるまで帰らない』企画! ちょっとアリかもしれんの~!」
なんてテンション爆上がりの菘。膝下まで洪水した水を蹴り上げながら、次なる宝石(トラップ)を求めて突き進む。
え、にじいろとろりん……? 誰の事ですかね……まぁ流されていきましたけど。
大成功
🔵🔵🔵
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
怪しい音等せんか『聞き耳』を立て『視力』『第六感』を使い先を進もう
それにしても本当に美しい洞窟だな
煌く壁の宝石を見れば何の種類の宝石だろうかと手を伸ばしてしまう…も
降った水に全身濡らされれば濡れ視界を遮る髪は其の侭に呆然としてしまう
…寒さが苦手な俺に…水だと…?
そして冷たいゼリーだ…t…と
…以前涙をのみ相棒にする事を諦めた愛らしい存在が何故ここに居るのだ…!?
震えつつ引き寄せられる様に手を伸ばし掛ける―が
脳裏に駄目ですよ!と呆れる相方の姿が浮かべば手を止めよう
すまん、拾ってやれんのだ…!許せ…!
そう叫べば手で敵が怪我をせぬ様『なぎ払い』ながら先へと駆けて行こう
…本当に、本当に恐ろしい洞窟だな…
ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は目を細める。彼の耳は怪しげな音を探し、彼の目は地面に輝く宝石達を見つめる。
目的のものを探し出すには罠に掛かるふりをしなければならないが……さて、何処でそれを行うべきなのか。
先の事を考えながらも輝く洞窟を歩き進む。しかし、そう考える時間も長くは続かず。
「……これは」
ふと顔を上げた時だった。壁に一つ埋め込まれた蒼き宝石。星の形にも見えるようなそれに、つい足が止まってしまった。
敢えて言えば、元は自身もサファイアの指輪。散りばめたような宝石達を前に、無関心なはずがなく。……否、もっと言えば、それとは別のものも思い浮かべた事もあり。
「……持ち帰れるだろうか」
そっと宝石に手を伸ばしてみる。宝石は壁から少し顔を出している。摘まんで引っ張れば取れるのではないか……などと思いながら、彼は無意識にユーベルコードを発動した。
68tレベルの力で、小さな宝石を、壁から引っこ抜く。
ぶちん。宝石はいとも簡単に壁から離れた。
……離れたが、バラバラに砕けた。
ざっぱーーーん!!!
悲しむ暇など罠が与える筈がなく。そう、この洞窟の宝石は残酷だ。触れれば滝の如き水が全身を叩き付けて来るのだ。彼らは罠なのだ。
ザッフィーロが我に返った時には全てが遅かった。全身はずぶ濡れ、手に取ったはずの宝石は水に流されて何処かへ消え、そして寒い。
「……」
もう何処から悲しむべきなのか。ザッフィーロはふるふると震えた。
「……」
「…………」
「…………はっ」
そんな時だった。何処からか強い視線を感じ、ザッフィーロは振り向く。彼の視界に、虹色のぷよぷよした物体が映り込んだ。
「……ゼリー、だと……」
虹色ゼリーもとい、にじいろとろりんが不思議そうにザッフィーロを見つめている。ふと気付けば一匹だけではない、何匹ものとろりんがこちらに視線を向けているのだ。
「……以前涙を飲み、相棒にする事を諦めた愛らしい存在が、何故ここに居るのだ……!?」
嬉しさと心の悶えにわなわなと片膝をつき、とろりんへそっと手を伸ばす――。
『……駄目ですよ!』
今度は何処からか聞き覚えのある幻聴が響いた気がした。そう、これは本当の声ではない。心の中にいる相方の声だ!
これはまずい、と開いていた手のひらをぐっと閉じるザッフィーロ。とろりんは首を傾げる。
「……すまん、罪がない存在に、俺は……!」
救いの手を差し伸べてやる事すらできない。二重の意味で。
「……いつの日か、本当に拾える日を待っているぞ……いつまでも、な」
目を閉じ、心を鬼に変え、ザッフィーロはその伸ばしかけた腕を大きく横に振るった。彼らに当たらないよう優しく、近付いてくれたとろりん達を追い払うように。
ぷるんぷるん、と、とろりん達の走り去る(?)音が聞こえた気がした。とても胸が痛くなった。
暫く腕を振り続け、そっと目を開いたその時には……自分の周囲には既に誰もいなくなっていた。
静まり返る洞窟。愛らしい姿は何処にも見当たらず。通路に残されたのは虹色に光る液体がこびり付いた段ボールだけ。
「……本当に、本当に恐ろしい洞窟だな……」
悪らしい悪と戦う方が、いかに清々しい事だったか。ザッフィーロは改めてそれを学んだのだった。
「……行って来る」
彼のその呟きは、消えたとろりんに向かってなのか。それとも、洞窟で輝く宝石達に向かってなのか。
サファイア色の男は、洞窟の奥深くへと進むのだった。
成功
🔵🔵🔴