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襲撃のプレリュード

#アックス&ウィザーズ #劇中劇

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#アックス&ウィザーズ
#劇中劇


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●アックス&ウィザーズにて
 寒空の下、三台の箱馬車と二台の荷馬車が山麓の街道を走っていた。
 車輪が外れかねないほどの勢いで疾走しているが、命知らずのスピード狂が御者を務めているというわけではない。
 騎馬の一団に追われているのだ。
「逃げても無駄だぞ! 身ぐるみ置いてけや、こらぁーっ!」
 土煙を上げて走る馬車群に向かって、追手の一人が叫ぶ。
 他の者たちは下卑た笑みを浮かべ、馬上で言葉を交わしていた。
「あれは隊商の類じゃねえなぁ」
「ああ。たぶん、旅芸人の一座かなにかだろうよ」
「芸人か……たいした稼ぎにはならねえかもな」
「いやいや。あのお方が気に入りそうな金ぴかの衣装だの装飾品だのを持ってるかもしれねえぞ」
「それに踊り娘とか歌姫とかもいたりして!」
「おおう!? やる気がわいてきたー!」
 騎馬の一団――この辺りを縄張りにしている追い剥ぎたちは歓喜の声をあげ、馬に鞭を入れた。

●グリモアベースにて
「今日の昼飯はアックス&ウィザーズのミニ肉団子入りシチュー! うーん、美味い! めちゃくちゃ、美味い! うまうまうまぅ~!」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前でマグカップを傾けていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトだ。
 ズズズズズッ……と、下品な音を盛大に立ててマグカップ内のシチューを啜り終えると、JJは本題に入った。
「さて、そのアックス&ウィザーズで事件発生だ。辺境の村に向かってる旅一座を山賊どもが襲いやがったんだよ。そいつらはただのザコだが、どうもオブリビオンくさい奴が首領格におさまってるようだ。つーことで、その首領をザコもろともブッ倒してくれ」
 山賊の一団は馬を駆り、旅芸人の馬車を追っているという。同じように走りながら戦ってもいいし、なんらかの手段で足止めした上で戦ってもいいだろう。
「必要なら、人数分の馬を用意するぜ。もちろん、馬じゃなくて自前の宇宙バイクとかで戦ってくれても構わない」
 現地の人間は猟兵を同世界の住人として認識する。よって、旅芸人や山賊たちは宇宙バイク等の未知の乗り物のことを馬(もしくはアックス&ウィザーズにいる騎乗用の動物)だと思い込むだろう。
「あ、そうそう。さっきも言ったけど、件の旅一座は辺境の村に向かってんだ。戦いが終わったら、その村での興行におまえらも加わってみないか? 見物するほうでもいいけどよ。きっと楽しいぞぉ」
 目を細めて笑うJJ。
 ヒゲの先についていたシチューの雫がぽたりと落ちた。


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。

 本件は、旅一座を救うために山賊を倒すシナリオです。
 第一章では山賊のザコどもを蹴散らし(馬等に乗って走りながら戦うことも可能です)、第二章では謎のボス(オープニング画像を見ればバレバレですが)と戦います。
 第三章では旅一座の面々と一緒に舞台に立ったり(裏方もできます)、村人たちと一緒にそれを鑑賞したりできます。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シル・ウィンディア
山賊さんって、ある意味失業しない商売なんだね…
でも、ここでその商売はおしまいっ!

猟兵に見つかったのが運のつきってね?

ヒット&アウェイで攻撃を仕掛けます
光刃剣『エレメンティア』と『六源和導』を二刀流に構えて
【二回攻撃】【薙ぎ払い】で纏めて攻撃っ!
一回攻撃したら【ダッシュ】【空中戦】で離脱を図って距離を取ります

敵の攻撃は【見切り】【第六感】を使用して、敵の攻撃を察知して
回避を優先に行動
被弾する場合は【オーラ防御】と光刃剣を回転させてシールド代わりに使って防御します

敵を半径20m以内に誘導する様に行動して
【高速詠唱】【全力魔法】のヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストで
一気に殲滅しかけに行きますっ!


鏡島・嵐
旅芸人かぁ。
戦いは怖ぇけど、おれも同じ旅好きとしてすげぇ応援してぇし、いっちょ頑張りますか!

【SPD】
《我が涅槃に到れ獣》でクゥを呼び出して、背中に乗って山賊を追いかけつつ戦う。
足止めする仲間が多いならそいつらの援護になるように進路を妨害しつつ、そうでないなら山賊どもに並走しながらクゥをけしかける。
石つぶては〈フェイント〉で発射タイミングを狂わせて〈見切り〉で回避とかやってみっか。
クゥ、おれを振り落とさない程度に頑張って走ってくれよ!


ツーユウ・ナン
●先回りして街道で待ち受ける
用心棒稼業ではこうした手合いをよく相手にするが、世界が変わっても賊のやる事は変わらんのう。
さて、馬に罪はない故、賊だけを叩き落したいところ。
・騎上の賊に前宙から飛び付き首刈り投げ[グラップル]
呀ヤ!
・敵の斬りかかりを鉄箸(装備4)で白羽取りし、そのまま捻って引き倒す[見切り][武器受け][早業]
嘿ハイ!
●UC:練った氣を飛ばし、鎖を引いて落馬させる。また鎖を操り他の賊に引っ掛けるなど派手に立ち回る。[怪力][範囲攻撃]
哈ハ!

馬から引きずり落とせば追う事もできまい。みっちりと懲らしめてやろう。
・突き、頂肘[カウンター]、回り込んで靠撃[吹き飛ばし]
哼フン!


スター・レイガン
Hmm、ごろつきの類いか
であれば、カウボーイの出番だね
馬車に乗っていて自分達が狩る側だと思い込んでいるのならば強烈な一発を撃ち込んであげるとしよう

【SPD】
見晴らしの良い丘の上に陣取り、山賊の一団を光線銃でどんどん撃っていこう
当たればよし、当たらなくても足止めや、山賊の馬を怖がらせての落馬を狙えれば良し、だ

【クイックドロウ(技能)】【2回攻撃】で【クイックドロウ(UC)】を加速、丘や山の上の射撃ポイントからどんどん山賊を撃っていこう

位置関係が悪いのならば【空中戦】で別の場所に射撃ポイントを変えたり、空から弾幕を張りながら山賊に接近して撃ち込んでやろう

どうかね、山賊君
狩られる側になった気分は?


セツナ・トゥイーディア
何処の世界も、山賊って分かりやすいものなのねー
ごめんね、お馬さん。途中まででいいの、頑張って。

旅の一座の人にも選ぶ権利ってものがあると思わないー?
おじさんたちになびくとは思えないなー

【戦闘】
そのおひげ、可愛くないから燃やしちゃおうー
という事で、フォックスファイアでおひげを狙って攻撃します
刃物は当たらなければいいので、近づいてきたら距離を取ります。
笑い方もきったなーい。そういうのモテないよー?


セツナ・クラルス
双方同意の追いかけっこなら
口を挟むことはないのだろうが
違うのなら止めなくてはいけないね

乗馬は初めて
馬はあっちにふらふら
向こうにふらふら
終いには道端の草を食べ始めてしまったり
ふむ、腹が減っては何とやらかな
しかし、そろそろ任務に戻りたいのだが…

途中からは馬とも連携が取れ始めたのか
どうにかこうにか追い付いて
大鎌を敵の前に突き出して
進路を塞ぐようにしてみようか
騎乗戦は私の技術が追い付かないのでね
砂ぼこりに咳き込みながら
泥臭く戦うことにしよう

戦闘時は別人格ゼロを召喚
一人称はオレ
セツナよりも目付きも口も悪い
騎乗してなければ普段の戦闘と同じだからね
心配はいらないよ
さあ、ゼロ、共に歩もう


幽暮・半月
度し難い下衆どもめ
漆黒の風と駆けて追跡しよう
我が伸縮自在の鉄槌を喰らうがいい
貴様らの攻撃など回避にも値せん

(約:
泥棒なんて良くない!

俺は黒馬に乗って追跡するぜ!
身をかなり乗り出しても落ちないブラックタールで良かった
見た目、馬と同化してるけど実際山賊にはちゃんと人と馬に見えるのかなあ
ビビってくれた方がやりやすいけど

それはさておきバウンドボディでヒットアンドアウェイ戦法だ!
馬上から体を伸ばしてばちーんばちーん叩く!

石礫くらいなら体に穴をあけて素通り…させたらカッコいいよな
切断はノーサンキューだ全力で仰け反る(きっぱり)


ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に行動
・他の人との絡み、アドリブ歓迎

罪のない旅芸人の皆さんを襲うなんて、これ以上の乱暴狼藉は許しません!
わたくしたちの手で、皆さんを助けましょう!

馬に乗って山賊たちを追い、追いついたら足止め。
攻撃を受けそうになったら【鈴蘭の嵐】で反撃します。
「女だと思って甘く見ないことです」

味方が傷ついたら【生まれながらの光】で癒し、
敵の猛攻が激しく苦戦するなら【主よ、哀れみ給え】と祈りを捧げ隙を作ります。
「悔い改めなさい。死してなお地獄の業火に焼かれたくなければ」

神よ、どうか善き人々をお守りください。
ヴォルフ……負けないで!


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と共に行動
・他者との絡み、アドリブ歓迎

罪なき民衆を襲うならず者か。許してはおけんな。
まして、背後にオブリビオンがいるとなれば、尚更放置はできん。
行くぞ、ヘルガ。俺たちの力を見せてやろう。

馬で追走し、山賊たちの前に立ちはだかる。
対抗手段のない者が敵の山賊斬りを受けそうになったら、対象を「かばう」と同時に【無敵城塞】発動
「この俺がいる限り、これ以上人々に手出しはさせん!」

無敵城塞を維持しつつ【獄狼の軍団】を召喚、敵を追撃。
地獄の猟犬は、罪人を決して逃さない。
悪党共よ、業火に焼かれ裁きを受けよ。

貴様らの下卑な欲望のために人々を傷つけるなど許さん。
特にヘルガには……絶対にだ!



●第一場
 街道を塞ぐような形で数人の男女が並んでいた。
 馬に乗っている者もいれば、自らの足で立っている者もいる。それぞれが違う種族であり、携えている武器にも統一性はない。
 だが、目的は同じだ。
「用心棒稼業をやっておると、ああいう手合いをよく相手にするが――」
 ちびりちびりと酒を味わっていた竜派ドラゴニンの女が赤い杯から口を離し、街道の奥を見やった。
 土煙が立ちのぼっている。罪なき者たちが『ああいう手合い』に追われているのだ。
「――世界が変わっても、彼奴らのやることは変わらんのう」
「ホント、どこの世界でも山賊ってのは判りやすいね」
 馬に乗った妖狐の少女が頷いた。ドラゴニアンの女はツーユウ・ナン(粋酔たる女用心棒・f04066)、この少女はセツナ・トゥイーディア(燐光スターダスト・f02091)。
 一団の中には、セツナという名の者がもう一人いた。
 多重人格者の少年――セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)だ。
「双方が同意した上での追いかけっこなら、私たちが口を挟むことではないのだけれどね」
「同意しているわけがないし、そもそも同意を求めてさえいないだろう」
 と、セツナの呟きに反応したのは人狼のヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)。静かな声音だったが、そこに込められた山賊たちに対する怒りを全員が感じ取った。
「そうだろうね。では、私たちも同意を得ずに討たせてもらおうか」
 多重人格者のセツナは馬を走らせ始めた。
「ごめんね、お馬さん。途中まででいいの。頑張って」
 馬を労りつつ、妖狐のセツナが続く。
 別の馬も走り出した。騎乗者は幽暮・半月(一葉・f00901)。いや、騎乗者とは言えないかもしれない。ブラックタールである彼は馬にまたがるのではなく、同化するかのごとく貼り付いているのだから。
「度し難い下衆どもめ。漆黒の風となりて、打ち倒してくれるわ!」
 物言いが芝居がかっているのは、中二病に罹患しているからだ(まだ十五歳ということもあって、その手のビョーキに免疫がないのである)。ブラックタールと青毛の馬という組み合わせなので、『漆黒の風』という比喩は決して的外れではなかったが。
「行くぞ、ヘルガ。俺たちの力を見せてやろう」
『漆黒の風』に続くのはヴォルフガング。呼びかけた相手はオラトリオのヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)だ。
「はい!」
 ヘルガも騎馬に合図を送り、走り出した。
 蹄鉄の音が遠ざかり、消えていく。
 そして、代わりに別の音がどこからともなく流れてきた。
 笛の調べだ。
「いい音じゃのう」
 ツーユウが、杯に残っていた酒をぐいと飲み干した。

●第二場
「Hmm……ゴロツキの類か。であれば、カウボーイの出番だねぇ」
 屈強な体を宇宙服に包んだ男が小高い丘の上から土煙を眺めていた。
 スペースシップワールドからやってきたスター・レイガン(キャプテンレイガン・f02054)である。
「さて、強烈な一発を撃ち込んであげるとしようか」
 自称『カウボーイ』はホルスターから『位相転移銃』なる拳銃型の光線銃を抜き、出力を調整した。
 そして、爽やかに笑いながら――
「いや、一発では済まないかな。HAHAHAHAHA!」
 ――二丁目の光線銃を抜いた。

 山賊たちは旅一座の馬車群を追い続けていた。
 狩る側から狩られる側になったことも知らずに。
「おい!」
 先頭を走っていた山賊が振り返り、仲間に問いかけた。
「妙な音が聞こえなかったか?」
「妙な音?」
「ああ。笛の音みたいな……あと、なんか癇にさわる笑い声も……」
「おい! 前を見ろ、前を!」
 仲間に促されて、先頭の山賊は正面に向き直った。
 馬車群の向こうから騎馬が一団が駆けてくる。
 追われている旅一座のほうもそれに気付いたらしく(彼らのほうが新手の一団との距離が近いのだから気付かないわけがない)、馬車のスピードが少しばかり落ちた。挟み撃ちにされたと思って、焦っているのだろう。
 だが、一団は馬車群の横を素通りして、山賊たちに向かってきた。
「くそっ! 同業者の縄張りに入り込んじまったのか!?」
 山賊の一人が叫ぶと、他の者たちの顔に緊張が走った。勘違いも甚だしい。
 その勘違いを正すため……というわけではないが、騎馬を駆る者の一人が凛とした声で宣言した。
「これ以上の乱暴狼藉は許しません!」
 ヘルガだ。
 彼女の声を聞いた瞬間、緊張に固まっていた山賊たちの顔がまた弛緩した。同業者でないなら、恐れる必要はないし、遠慮する必要もない。そう思っているのだろう。
「これ以上もなにも、まだランボーもローゼキもしちゃいねえよ!」
「そうそう! ランボーローゼキをするのはこれからだぜ、これから!」
「まず、姉ちゃんからローゼキしてやんよ! その後は旅芸人の女どもだ!」
 次々と下卑た言葉を吐く山賊たち。
 その間に彼らと猟兵たちの距離は詰まり――
「女だと思って甘く見ないことです」
 ――ヘルガが馬をターンさせながら、『鈴蘭の嵐』を発動させた。愛用のシンフォニックデバイスが無数の鈴蘭の花片に変じて舞い散り、山賊たちを斬り刻んでいく。
 ヘルガに続いて、他の猟兵たちも馬首を翻し、山賊と並走する形となった。もちろん、ただ並ぶだけではなく、攻撃することも忘れてはいない。
「これ以上、人々に手出しはさせん!」
 片手で手綱を操りながら、もう片方の手で長大な鉄塊剣を振るうヴォルフガング。
 その斬撃を浴びてのけぞった山賊にいくつもの炎が襲いかかった。
 妖狐のセツナがフォックスファイアを使ったのだ。
「そりゃあ、乱暴狼藉するしかないよね。旅一座の女の人たちもヘルガさんも……いえ、世界中の誰だって、こんな下品なオジさんたちになびくわけないもの」
「な、なにを!?」
 炎に焼かれながらも、山賊の一人が反撃を試みた。
 だが、試みただけで終わった。
『HAHAHAHAHA!』という笑い声とともに何条もの光線が降り注ぎ、彼を蜂の巣にしたからだ。
 丘の上のスターが二丁拳銃ならぬ二丁光線銃を連射したのである。
 穴だらけになった山賊だけでなく、他にも何人かがダメージを受けた。足下に着弾(着光?)したために速度を落とした馬もいた。
 その隙を衝くようにして、山賊たちの右側から襲いかかってきた者がいる。
 エルフのシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)。まだ十歳だが、十二分に実戦経験を積んだ猟兵である。
「山賊さんって、食いっぱぐれのなさそうな商売だよねー」
 シルは二本の光剣を手にしていた。柄代わりの銀のロッドから伸びる『エレメンティア』と、六種の精霊の調和から生まれた『六源和導』。
 それらを自在に操りながら――
「でも、その商売も今日でおしまいっ! 猟兵に見つかったのが運のつきってね」
 ――舞い踊るかのような動きで馬たちの間を走り抜けて、敵を斬り伏せ、薙ぎ払い、刺し貫いていく。
「このガキ!」
 山賊の一人が馬上から鉈を振り下ろしたが、シルはマントを翻して素早く跳躍し、刃が届かぬ場所に離脱した。
「おそい、おそーい!」
 と、敵をからかうエルフの少女の後方から大きな獣が飛び出してきた。
 炎を纏った黄金のライオンだ。
 その背には一人の少年が乗っている。シャーマンにしてビーストマスターの鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)。山賊たちは知らないだろう。先程の笛の音の発生源が、嵐の持つオカリナ型の獣奏器であることを。
 だが、別のことは気付いたらしい。
「……お、おまえ、ビビッてやがるなぁ? 顔を見れば、判るぜ。めちゃくちゃビビッてんだろ? なぁ!?」
 シルに攻撃を躱された山賊が嵐に嘲笑をぶつけた。もっとも、当人もかなり『ビビッて』いるようだが(ライオンを前にしてビビらすにいられようか?)。
「ああ、ビビッてるさ。怖くて怖くてしかたねえよ」
 と、嵐は認めた。実際、その体は恐怖に震えている。今回に限ったことではない。戦う度に恐怖心に押し潰されそうになるのだ。
「だが、逃げるつもりはねえぞ。同じ旅好きとして、芸人さんたちのことは放っておけねえもんよ。いくぞ、クゥ!」
 炎を纏った相棒の名を叫び、嵐は山賊に突き進んだ。これも今回に限ったことではない。戦う度に恐怖心をねじ伏せてきたのだ。
「Roarrrrrr!」
「うぉーっ!?」
 クゥの咆哮と山賊の悲鳴が重なった。だが、残響が生じたのは前者のみ。山賊はクゥの爪を顔面に受けて落馬し、ついでに命も落とした。
「放っておけねえもんよ……」
 先程と同じ言葉を呟いて、嵐はクゥとともに新たな敵に肉迫した。
「ところで――」
 妖狐のセツナが周囲を見回した。
「――もう一人のセツナさんはどこ?」

 その頃、もう一人のセツナは――、
「やれやれ……」
 ――馬上で溜息をついていた。
 馬のほうは呑気に道端の草を食んでいる。真っ先に駆け出したはいいものの、明後日の方向に行ったかと思えば、急に反転して今来た道を引き返し、すぐにまた進路を変え……と、ふらふらと迷走した挙げ句、戦場から遠く離れたこの場所で文字通り道草を食い始めたのだ。セツナに馬術の心得がないせいか、あるいはこの馬の性格や能力に問題があるのか。
「まあ、腹が減ってはなんとやらと言うからね。でも、そろそろ任務に戻りたいんだけど……」
 セツナの独白を理解したのか(草を食べ飽きただけという可能性もある)、馬は首をもたげて、また走り始めた。

●第三場
「我が伸縮自在の鉄槌を喰らうがいい! (訳:おれのバウンドボディを受けてみろ!)」
 中二病まっさかりの半月が山賊に体当たりを食らわせた。本来ならば、体当たりできるような距離ではない。下半身を青毛の馬に密着させたまま、上半身をゴムのように伸ばしているのだ。ブラックタールならではの安全圏からのヒットアンドアウェイ。しかも、一度では終わらない。弾力と反動を利用して体を引き戻しながら回転させ、二度、三度とぶつかっていく。
 四度目の攻撃を受ける前に山賊は落馬した。
「クソが!」
 と、別の山賊が怒りの声を発し、半月めがけて礫を投じた(今まで投げなかったのは、攻撃を受けていた山賊が射線に入っていたからだろう」)。
「虚ろなるこの身に石塊など効かぬわ! (訳:体に穴を開けて、素通りさせようっと)」
 礫が命中するであろう自身の部位に半月はトンネルをつくった……が、タイミングを合わせることができず、トンネルの入り口の横に礫を食らった。
「痛っ!? (訳:痛っ!?)」
 不定形の体を苦痛に震わせる半月。
 異世界の異種族の異様なその姿が山賊の脳内でどのように補正されたのかは判らないが、少なくともダメージを与えたことは認識できたらしい。得意げな顔をして馬首をめぐらせて距離を詰め、半月に斬りかかった。
 しかし――、
「『手出しはさせん』と言ったはずだが?」
 ――騎馬の戦士が両者の間に割り込み、その身で刃を受け止めた。
 ヴォルフガングである。無敵城塞を発動させて全身を超防御モードにしているため、傷は負っていない。
「大丈夫、ヴォルフ?」
 馬上で硬直する(無敵城塞の発動中は動けないのだ)ヴォルフガングに気遣わしげな目を向けるヘルガ。
「どうも、ありが……いや、絆に恵まれたる者に爆炎の呪いあれ! (訳:リア充、爆発しろ!)」
 ヴォルフガングへの感謝の言葉をぐっと飲み込み、半月は心にもないことを言った。『仲間と慣れ合わぬ孤高の戦士』というキャラを貫いているのだ。その代わり、ヴォルフガングに斬りつけた山賊にとどめを刺すという形で謝意を表したが。
 残された山賊は四人。
 そのうちの一人が空を指さした。
「あ!? あれを見ろ!」
 なにかが猛スピードで落下してくる。山賊たちに向かって。
「鳥だ!」
 と、別の賊が叫んだ。
「ドラゴンだ!」
 と、また別の賊が叫んだ。
「いや――」
 と、空から迫り来る鳥でもドラゴンでもない『なにか』が叫んだ。
「――キャプテンレイガンだ! HAHAHAHAHA!」
 そう、それはキャプテンレイガンことスターだった。二丁の光線銃を連射して弾幕(光幕と呼ぶべきか?)を張りながら、背中のジェットパックを噴かして急降下しているのだ。
 ヴィランの前に颯爽と現れるスーパーヒーローのごとき勇姿。もっとも、ヴィランの役をあてがわれた山賊たちからすれば、そのスーパーヒーローは『哄笑を響かせて空から襲いかかってくる身長二メートル近くの偉丈夫』にしか見えないだろう。一生もののトラウマが残るに違いない。
 もっとも、スターの攻撃を受けた時点で一生を終えた者もいたが。
 残りの面々の一生も終わろうとしていた。
 死神が人の形を取って、前方に現れたのだ。
 その数は二人。ツーユウと、ポンコツ気味の馬に導かれて元の場所に戻ってきた二重人格者のセツナ。
 だが、すぐに三人になった。
 セツナが鍵型のペンダントを手にして――
「おいで、私の愛し仔。ともに歩もう」
 ――もう一つの人格の『ゼロ』を実体化させたのである。
「くそっ!」
 先頭を行く山賊が馬を鞭打った。突っ切るつもりなのだろう。
 しかし、すぐにスピードを落とさざるを得なくなった。
「そうはいかねえぞ!」
 クゥに乗った嵐が前方に回り込み、行く手を塞いだのだ。
 そして、クゥの後方からセツナとゼロが飛び出し、両横を通り過ぎた。
「ごほっ! ごほっ!」
 砂埃に咳き込みながらも、セツナは『宵』という名の鎌を凪ぎ払い、二人の山賊を落馬させた。
 そのうち一人はすぐに立ち上がったが、もう一人は――
「寝てろよ、三下」
 ――ゼロにとどめを刺された。
「ぐえっ!?」
 ゼロの後方で小さな爆発音が起こり、間を置かずに苦鳴が上がった。
 声の主は、馬に乗っていた最後の一人。手首に絡まった鎖状のオーラに引っ張られて彼は無様に落下したが、追撃を受ける前になんとか立ち上がり、鎖状のオーラ――ドラゴニアン・チェインの端を持つツーユウに突進した。
「うりゃあーっ!」
 気合いの叫びを発し、鉈を振り下ろす。
「ハイ!」
 だが、ツーユウもまた裂帛の気合いとともに鉈の刃を受け止めた。
 いや、受け止めるのではなく、摘んでみせた。
 愛用の鉄箸を使って。
「な、なに!?」
 山賊は目を剥いたが、ツーユウのほうは泰然自若たるもの。
「箸で取ったはいいが、こやつは煮ても焼いても食えそうにないのう」
 箸を持つ手を捻るようにして、山賊の体を引き倒す。
 そこに妖狐のセツナがやってきて――、
「いやいや、実際に焼いてみないと判らないでしょ」
 ――立ち上がる暇を与えることなく、また狐火を放った。
「そのおひげ、可愛くないから燃やしちゃうね」
「ぶぎゃあぁぁぁーっ!?」
 絶叫を響かせて、山賊は息絶えた。髭どころか、顔全体を燃やされて。
 そんな地獄絵図のような光景を見ながら、セツナは小さく頸をかしげた。
「んー? やっぱり、食べられそうもないね」
「だから、言うたであろう」
 したり顔で頷くツーユウ。
「うぇぇぇーっ!」
 またもや絶叫が響いた。多重人格者のセツナに落馬させられた山賊だ。泣き声にしか聞こえないが、本人は怒号のつもりなのかもしれない。
「うぇぇぇぇぇーっ!」
 叫び続けながら、山賊はツーユウめがけて礫を放った。
 だが、それはツーユウに届く前に――、
「だから、おそいって」
 ――シルが回転させた光剣に弾かれ、明後日の方向に飛んでいった。
「うぇぇぇぇぇーっ!?」
 怒号に驚嘆(あるいは絶望かもしれない)の感情を滲ませながらも、山賊は第二の礫を手に取った。
 シルはそれに気付くと、光剣の回転を止めた。
 戦いを放棄したわけではない。防御から攻撃に移ったのだ。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ。六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 高速詠唱に応じてユーベルコード『ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト』が発動し、火と水と風と土と光と闇の属性を有する魔力砲が放たれた。
「うぇぇっ……」
 聞き飽きた叫びが途切れた。
 礫を手にした姿勢のまま、山賊は立ち尽くしていた。胸板には大きな穴が穿たれている。
 目の上に手をかざして、その穴の向こうにある景色を眺めながら、シルは皆に言った。
「快勝で圧勝で楽勝だったね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第一場
「おいおいおいおい。よくもやってくれたな。うん、よくもやってくれたな」
 くぐもった声が猟兵たちの背後から聞こえた。
 振り返った皆の目に入ったのは、金色に染まった獣の頭蓋骨を被った男。
 おそらく、この男が山賊たちの首領だろう。『男』と言っても、人間ではない(かつては人間だったのかもしれないが)。両手足が獣のそれのような形をしている。そんな異形な姿をしているためか、他の山賊たちのように馬には乗っていなかった。
「なんなんだ、おまえら? セイギの味方でも気取ってんのか? うん、気取ってんのか? まあ、気取るのはいいとしてもよぉ。セイギの味方なら、地に足をつけて堅実に生きてる皆様を助けるべきだろ。うん、助けるべきだろ。社会になーんも貢献してない、根無し草の芸人どもなんか放っとけよ。うん、放っとけよ」
 自分や死んだ手下たちこそが『社会になーんも貢献してない』という事実は無視しているらしい。あるいは本当に自覚がないのかもしれない。
「でも、俺様も鬼じゃないから。うん、鬼じゃないから。勘違い野郎のおまえらを特別に許してやるよ。死んじまった手下どもは可哀想だが、この程度の連中なら、すぐにまた集められるしな。うん、集められるしな」
 骨男は猟兵たちに背を向けた。
「じゃあな。これを機に勘違いを改めるんだぞ。そして、謙虚に生きろ。うん、謙虚に生きろ」
 彼の寛大な心に皆は胸を打たれ、感涙にむせびながら、いつまでも後ろ姿を見送るのだった……などということになるはずもない。
 微塵も躊躇せずに猟兵たちは男に襲いかかった。
スター・レイガン
このオブリビオンはひょっとしてギャグで言っているのだろうか。なんという高度な話術だ。

なんにせよ、正義の味方、ヒーローたる猟兵としてはオブリビオンは見逃せないな。過去にお帰り願おう。

【POW】
正面から大ダメージを与えていこう。
敵は陸での戦闘の方が得意そうだな。【ジェットパック】の出力を上げて【空中戦】で空から接近、【スターパンチ】をお見舞いしよう。命中すれば【2回攻撃】攻撃でパンチを加速し、続けてにパンチで空に敵を吹き飛ばすぞ。

吹き飛ばした後は【クイックドロウ(技能)】で素早く光線銃を抜き、敵に狙いをつけてシュート、最後は【零距離射撃】で大出力のビームをお見舞いしてあげよう!


鏡島・嵐
怖くて身体ががくがく震えてるおれだけど、流石にその物言いにはカチンとくるぞ。
おれの場合、親に似て自由奔放放浪癖は性分なんだ! 根無し草で悪かったな!

【WIZ】
怒りに身を任せて突撃……してどうにか出来るような手腕はおれには無ぇから、《笛吹き男の凱歌》と〈援護射撃〉で支援重視の立ち回りをする。
向こうが飛ばしてくる呪詛呪縛は……対抗手段も無ぇし、むしろ他の皆より大して強くねぇおれが受ける方が戦局的にマシな気がする。〈第六感〉とかで避けられればそれに越したことは無ぇけどな。


シル・ウィンディア
べっつに、正義の味方ってわけじゃないよ?
ただ単に、あなた達のほうがひどいことをしてたから
お仕置きにきただけだからね

それにね…
山賊さんは、地に足つけてないからっ!!

ということで、二刀流の光刃剣を前後に結合させて
両刃剣モードに変形させて左手に持ち
右手には、風精杖『エアリアル』をもっての二刀流で攻撃に行くよ

【空中戦】【フェイント】【残像】を使っての三次元機動と
撹乱を行いつつ左手の光刃剣と風精杖で攻撃だね

攻撃後は、すぐさまに離れて、回避を中心に行動
第六感が働けばいいんだけど…

しばらく通常攻撃をして
隙を見せたら、【高速詠唱】と【全力魔法】で
エレメンタル・ファランクスを撃ち放ちますっ!
わたしの全力だーっ!


幽暮・半月
謙虚さ、それは大事だ
だが貴様のどこに謙虚さがあるというのだ!?
山羊だってもっと筋を通すぞ
紅蓮の怒り、思い知れ

(約:
自分を棚に上げまくってふてえやつだ!(ぷんすこ
バラックスクラップの紅蓮灯(三色赤点灯の信号機)でぶん殴る!

ここでもバウンドボディを活用
弾力性を生かして、後ろにぎゅっと引いてから紅蓮灯を構えつつ突撃するぜ!
【属性攻撃】で炎も付与しておけるかな?

爪は要注意だな、分離して飛び散ったりしたらグロ注意になってしまう(主観
呪詛なんかならこのブラックタールの体には効かないぜ!(フラグ)

アドリブ&絡み歓迎


ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に
・他の人との絡み、アドリブ歓迎

旅芸人さんたちが『社会に貢献していない』ですって……?
彼らの歌や踊りは、人々の心に喜びと彩りをもたらすもの。
ただ周囲を妬み呪詛を吐き散らすだけの貴方なんかより、遥かに立派な存在です。
これ以上彼らを馬鹿にしたら、わたくしとて許しません!

カツィカには分からない「仲間や弱者を大切に思う心」を【シンフォニック・キュア】の調べに乗せて歌い、深く傷ついた仲間は【生まれながらの光】で癒します。
敵の攻撃が激しくなったら【主よ、哀れみ給え】と祈りを捧げ足止めを。


わたくしたちの『仲間を信じ愛する心』が決して折れることはありません……!


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と同行
・他者との絡み、アドリブ歓迎

……醜悪だな。
民衆はもとより、ならず者とは言え仲間の命を顧みず使い捨てにする所業。
その上口先だけで大物を気取るその浅ましさ。貴様こそ最もこの世に不要なクズそのものだ。
その減らず口を閉じて、おとなしく骸の海に帰れ!

敵が呪獣の一撃を使うそぶりを見せたら、周囲の非力な者には後方に下がるように指示し、自らは「勇気」を振り絞って「かばう」ように突撃。
ダメージを受けたら【ブレイズフレイム】でカウンターを仕掛ける。
【獄狼の軍団】を召喚し更に追撃。

忌まわしき『過去からの亡者』よ、地獄へ落ちろ……!


ツーユウ・ナン
●機を伺い、隙を捉えて一撃必殺の拳を叩き込む
 獣のようななりをしているが、それだけではなさそうじゃな。わしの得意は接近戦とはいえ、無為に飛び込めば危険は大きい。まずは遠い間合を徐々に詰めながら敵の手の内を見極める。もし、近くの味方が不測の攻撃を受けたら氣をまとって間に入ろう。[かばう][オーラ防御][激痛耐性]

 機を得たら突進して手合い(インファイト)に持ち込み[見切り][武器受け][戦闘知識]、一気呵成に攻め立てる。
→捌き崩し[グラップル]や[カウンター]での頂肘、斜に交しての靠撃等
 そして、震脚による勁を足から腰、肩、腕を通しながら倍加させ、必殺の拳を叩き込む。『灰燼拳』「哈ハ!」



●第二場
「根無し草で悪かったな!」
 嵐が思わず怒声を発すると、骨男が立ち止まって振り返った。
「え? どうして怒るんだ? うん、どうして怒るんだ?」
 顔の大部分が頭蓋骨に隠されているので判りにくいが、きょとんとした表情をしているようだ。
「俺は、セイギの味方を気取って調子に乗ってるおまえらを許してやったんだぞ? その慈悲深い対応に感謝するどころか、がなりたてるなんて……無礼にもほどがあるな。うん、ほどがあるな」
「べっつに、わたしたちは正義の味方を気取ってるわけじゃないよ」
 シルが『エレメンティア』と『六源和導』の柄頭を結合し、両端から光刃が伸びる剣に変えた。それを左手に持ち、エレメンタルロッドの『エアリエル』を右手で構える。二刀流ならぬ二・五刀流といったところ。
「あなたたちがひどいことをしてたから、お仕置きするために来ただけ」
「だから、そういうのがセイギの味方気取りなんだよ。うん、セイギの味方気取りなんだよ。だいたい、どうして俺がお仕置きされなくちゃくいけないんだ? ゴミ同然の旅芸人ごときを襲っただけじゃないか。うん、襲っただけじゃな……」
「黙りなさい!」
 骨男の言葉をヘルガが怒号で遮った。
「歌や踊りで人々の心に喜びと彩りをもたらす人たちのことを『社会に貢献していない』だの『ゴミ同然』だのと……これ以上、彼らを侮辱するのであれば、わたくしとて許しませんよ!」
「いや、侮辱しなくても許さないような剣幕じゃないか。おまえら、本当に怒りっぽいな。うん、怒りっぽいな。おまけに失礼と来たもんだ。でも、さっきも言ったように俺も鬼じゃない。土下座して謝るのなら、許してやってもいいぞ。うん、許してやってもいいぞ」
 骨男はふんぞり返って、猟兵たちの謝罪を待った。
 もちろん、謝罪する者など一人もいなかったが。
「ひょっとして、あれはギャグで言ってるつもりなのか?」
 と、キャプテンレイガンことスターが骨男を指さし、憮然とした面持ちで仲間たちに問いかけた。
「だとしたら、実に高度なユーモアセンスだ。あまりにも高度すぎて、私には理解できないが……」
「ギャグなんか言ってないぞ。うん、言ってないぞ。俺はしごく真面目に語ってるんだ」
 骨男は腰を落とし、前傾姿勢を取った。
「でも、おまえらのほうは真面目に聞くつもりがないらしいな。うん、ないらしいな。こうなると、俺も堪忍袋の緒を切らざるをえないぞ。うん――」
 そして、獣のそれのような足で地を蹴り、猟兵たちに襲いかかった。
「――切らざるをえないぞぉーっ!」

●第三場
「下がれ!」
 皆に警告しながら、ヴォルフガングが騎馬で飛び出し、骨男に正面からぶつかった。
 両者が衝突した場所で激しい衝撃波が生じ、土煙が巻き起こり、無数の石や土塊が弾け飛んだ。
 そして、ヴォルフガングは馬もろとも吹き飛ばされた。
 周囲で所在なげにしていた馬たち(山賊が乗っていた馬だ)がいななきをあげて逃げ出していく。
 しかし、当然のことながら、猟兵たちは逃げ出さなかった。
「ふむ。見かけに反して、ただの獣というわけではなさそうじゃな」
 間合いを測りつつ、ツーユウが身構えた。
「うかつに接近戦をしかけるのは危険かもしれん……大丈夫か?」
 最後の言葉はヴォルフガングに向けられたものだ。盾の役目を果たした彼は馬(無事だったが、完全に戦意を喪失していた)から離れて、自分の足で立ち上がっていた。
「大丈夫だ」
 ヴォルフガングの甲冑の腹部には亀裂が走り、その奥から地獄の炎が洩れ、血が流れ出していた。骨男にぶつかった際に大きな爪で叩き割られたのだ。
「大丈夫だ」
 もう一度、ヴォルフガングは言った。心配そうに自分を見ているヘルガに向かって。
 そして、鉄塊剣を構え直し、骨男に向き直った。
「醜悪だな。仲間の命を顧みることなく、使い捨てにする所業。そして、口先だけで大物を気取るその浅ましさ……貴様こそ、ゴミそのものだ」
「間違いが二つある。うん、二つある」
 そう応じる骨男もまた無傷ではなかった。右の脇腹で炎が燃えている。ヴォルフガングに爪の一撃を与えた際、ブレイズフレイムのカウンターを受けたのだ。
「一つ、死んだ連中は仲間じゃなくて、ただの手下だ。うん、手下だ。二つ、俺は大物を気取ってるんじゃなくて、本当に大物なんだ。うん、大物なんだ」
 骨男は爪を顔の前まで持ってくると、そこに付着しているヴォルフガングの血をなめてみせた。そういう所作がかっこいいとでも思っているのだろう。中二病なのかもしれない。
「でも、大物たる俺をおまえらはちっとも敬おうとしないんだよな。うん、しないんだよな。謙虚さってものを叩き込んでやるよ。うん、叩き込んでやるよ」
「笑止! 謙虚という美徳を知るべきはおまえのほうだろうが! (訳:自分のことを棚に上げまくって、ふてえ奴だ! あったま来たー!)」
 同じく中二病の半月が武器を振りかぶった。三色信号機型のバラックスクラップ。その名も『紅蓮灯』である。
「根無し草で悪かったな!」
 半月の横で嵐が先程と同じ言葉を叫んだ。体の震えは止まっていないが、憤怒が恐怖を上回っている。
「自由奔放な放浪癖は親譲りの性分なんだよ!」
 そうは言ったが、嵐はただ性分に従って放浪をしているわけではない。今は亡き両親が見て回った世界を自分もまた見て回りたい――それが旅人となった本当の理由だ。
 両親が見たかもしれないこのアックス&ウィザーズの名もなき荒野の小さな平和を守るべく、彼はユーベルコード『笛吹き男の凱歌(ラッテンフェンガー・パラード)』を発動させた。
「魔笛の導き、鼠の行軍、それは常闇への巡礼なり!」
 それに応じて一人の道化師が姿を現し、剽げた動作で笛を吹き始めた。
「この音も悪くないのう」
 笛の音を聞きながら、徐々に間合いを詰めていくツーユウ。
『徐々』どころか一気に詰めた者もいた。
 半月だ。
 バウンドボディを用いて体を後方に引き、数瞬の間を置いた後に力を解放。玩具の鉄砲から発射されたゴムさながらに骨男めがけて飛んでいく。
「紅蓮の怒り、思い知れ! (訳:ぶっとばーす!)」
 半月の体が刻む黒い軌跡に赤色が加わった。『紅蓮灯』のスイッチを入れて、赤い信号を点灯させたのだ。
「ぐぉ!?」
『紅蓮灯』を叩きつけられて、骨男は吹き飛んだ。ちなみに半月が与えたダメージは通常よりも上昇している。道化師の笛の音がもたらした作用だ。
 それでもなんとか受け身を取った骨男であったが、その懐にシルが飛び込み、二連の光剣で斬りかかった。
「見切った! うん、見切った!」
 骨男は素早く爪をすくい上げ、光剣の刃を頭上に払いのけた。すかさず、もう一本の刃が跳ね上がってきたが、それも紙一重で躱した……にもかかわらず、攻撃を受けて体勢を崩した。
「いでっ!?」
 実はシルの斬撃はフェイント。残像を生むほどの速度で横に回り込み、『エアリエル』を叩きつけたのだ。もちろん、彼女の攻撃力も道化師の笛の音によって上昇している。
「くそっ! なかなか、やるじゃないか。セイギの味方を気取ってるだけのゴロツキだと思ってけど。うん、思ってたけど」
 骨男は飛び跳ねるようにしてシルから距離を置くと、両手を胸の前にやり、印を結んだ。
「金山羊の呪詛の力を借りるとするか。うん、借りるとするか。この技は寿命を削るから、使いたくなかったが――」
 骨男の頭を覆う山羊の頭蓋骨に奇妙な文様が浮かび、輝きを放った。
「――Howwwwwl!」
 胸を反らして咆哮する骨男。
 猟兵たちは瞬時に悟った。それがただの叫び声ではなく、ダメージを与えるものであることを。
「これは良い音とは言えんのう」
 耳をつんざく不愉快な咆哮に顔をしかめるツーユウ。
 予想通り、その不愉快な大音声はダメージをもたらした。
 だが、皆の傷の幾許かはすぐに癒された。
 戦場に流れ始めたシンフォニック・キュアの歌声によって。
「癒しを、癒しを♪ 友のために剣を取る者たちに♪ 友のために盾となる者たちに♪」
 歌い手はヘルガだ。

●第四場
「げぇ!? なんだ、この歌は?」
 骨男は山羊の頭蓋骨を両横から押さえた。耳を塞ぐジェスチェーのつもりだろう。
「仲間たちを信じ、愛する心について歌ったのですが――」
 歌い終えたヘルガが怒りと哀れみの眼差しを骨男に向けた。
「――あなたには決して理解できないでしょうね」
「偉そうなことを言うなよ。うん、言うなよ」
 頭蓋骨の両横から手を離して、骨男は吐き捨てた。その声音からは怒りと焦りが感じられる。大物ぶっている余裕がなくなってきたらしい。
「所詮、おまえらみたいな冒険者もあの芸人どもと同様、地に足をつけて生きてない社会のはみ出し者だろうが。うん、はみ出し者だろうが。そんな連中が『仲間を大切に』云々なんてご高説を垂れるなんて、ちゃんちゃらおかしい。うん、おかしい」
「ゴコーセツを垂れてるのはお互いさまでしょ。てゆーか、そもそも山賊さんだって――」
 シルが本日二度目のエレメンタル・ファランクスを放った。
「――地に足をつけてないよね!」
「ぐぁ!? ……いや、俺はしっかりと大地に根を張って生きてるぞ! 信念という名の根を! うん、信念という名の根をー!」
 魔力の砲撃を食らいながらも、骨男は反駁した。
 そこに肉迫したのはスター。ある意味、彼は地に足をつけていない。ジェットパックを噴かして空から襲いかかったのだから。
「ほほう。その信念とやらを教えてくれないか!」
 着地ざまにスターはパンチを見舞った。光輝く右腕で。
 必殺の『スターパンチ』。
 UDCアースに存在するアメコミという文化を知っている者なら、『BLAMMMMM!』という擬音を表す派手な文字がスターの頭上に浮かぶ様を思い描いたかもしれない。
「教えてくれないか!」
 スターは質問を繰り返し、同時にパンチも繰り返した。今度は『BAKOOOOOM!』という擬音が(略)。
 二度の殴打を受けて、またもや吹き飛ばされる骨男。
 空中で弧を描きながら、彼は言った。
「こ、この世のすべての光り物を手に入れる――それが俺の信念だぁーっ!」
 そして、地面に落下した。
「やはり、ギャグで言ってるんじゃないのか? あいかわらず高度すぎて、私にはちっとも理解できないが……」
 骨男の『信念』にさすがにスターも呆れ返るばかり。
 そんな彼に対して、骨男はなにか言い返そうとしたが――
「その減らず口を閉じて、おとなしく骸の海に帰れ!」
 ――それより早く、ヴォルフガングが鉄塊剣を叩き込んだ。
 しかし、骨男は『おとなしく骸の海に帰』ったりしなかった。地面を転がってヴォルフガングの第二撃から逃れ、立ち上がると同時に両手を前に突き出す。
 頭蓋骨に浮かんだあの文様が今度は掌に浮かび、光線のように伸びた。
 その先にいたのは半月。
「そんなものは俺には通用しない!」
 と、不定形の胸を張って言ってのけた半月であったが、すぐに自分の言葉を後悔した。
(「……あ? フラグ、立てちゃったかも」)
 しかし、不吉なフラグはへし折られた。
「ぐっ!?」
 光線状の文様を受けて苦鳴を発したのは半月ではなく、嵐だった。斜線に割り込み、盾となっただ。
 文様光線はダメージばかりか麻痺までもたらしたが……いや、麻痺をもたらしたからこそ、嵐は自分の行動に満足していた。
(「有利な戦局を変えないためには、この手の攻撃はおれが受けるべきだよな。そう、他の皆ほど強くねぇおれが……」)
「ありがとう!」
 半月が骨男に紅蓮灯を叩きつけた。自分が思っているほどに『強くねぇ』わけがない嵐に礼を言いながら(中二病キャラを演じることは思わず忘れていた)。嵐のほうはまだ体が麻痺しているため、言葉を返せなかったが。
「これが『仲間を信じ、愛する心』です!」
 と、ヘルガが骨男に言った。
 そして、嵐を癒すべく、再びシンフォニック・キュアを歌い始めた。
「今日は良い音楽ばかり耳にするのう」
 薄く笑いながら、ツーユウが骨男に突進した。
「だが、おまえらが最後に聞くのは自分の断末魔の声だ。うん、断末魔の声だ」
 骨男もまたツーユウに突進し、右手の爪を振り下ろした。
 ツーユウは手刀を振り上げ、爪を払いのけるようにして軌道を逸らし、同時に反対側の拳を繰り出した。すると、骨男も左の爪で拳を逸らし、右の爪で二度目の攻撃を仕掛けた。ツーユウは半身を退いて躱しつつ、また新たな攻撃を……という具合に目に止まらぬ激しい攻防戦が繰り広げられた。
 ほんの数秒間だけ。
 短くも激しい戦いは唐突に終わった。
 ツーユウが骨男の手首に掌底を打ちつけるようにして捌き崩し――
「ハッ!」
 ――勢いよく踏み込み、足から伝わる運動量を腰に、肩に、腕に通して、三センチにも満たない近距離から拳を叩き込んだ。
 その名も『灰燼拳』。
「……っ!?」
 声を出すこともできずに後方に弾き飛ばされる骨男。
 その体が地に落ちる前に光が閃いた。
 スターが光線銃のクイックドロウを披露したのだ。
「ヴォルフガング君が言ったようにお帰り願おうか」
 光線銃をくるりと回してホルスターに戻すスター。
「骸の海という名の過去にね」
 空中で光線を浴びた骨男の体は、しかし、どこにも落下しなかった。
 塵一つ残さず消え去ったのだ。
「哀れな奴だ。自分の断末魔の声すら聞けずに死んでしまうとはな……(訳:やーい、ざまーみろ!)」
 半月が勝利の旗でも掲げるかのように紅蓮灯を突き上げて、柄に付いているスイッチを操作した。
 信号の色が赤から青に変わった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『猟兵、舞台に立つ(A&W編)』

POW   :    書き割りの設置など、力仕事なら任せとけ。もちろん、出演もする!

SPD   :    小道具や衣装の製作など、手先の器用さが求められる仕事なら任せとけ。もちろん、出演もする!

WIZ   :    演出や脚本など、センスが必要な役割なら任せとけ。もちろん、出演もする!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第一場
 五台の馬車の前に十数人の男女が並び、猟兵たちに頭を下げていた。
 山賊たちに襲われていた旅芸人の一座である。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
 一際大きな声で礼を述べているのは、恰幅のいい初老の男。どうやら、この一座の座長らしい。
「ところで――」
『ありがとうございます』の連呼をやめて、座長は頭を上げた。
「――これから向こうの村で興行をするんですよ。良かったら、観ていきませんか? もちろん、お代はいただきません。ただ、ちょっと困ったことがありましてね。うちの者の何人かが怪我をしたんですよ。もの凄い速度で馬車を走らせたもんですから、体のあちこちをいろんなところにぶつけてしまってねぇ。ほら、見ての通り、傷だらけでしょう?」
 見たところ、旅芸人たちの中に負傷している者は一人もいなかったが。
「いや、たいした怪我じゃないんですけどね。でも、怪我が治るまでは、舞台に立てないんじゃないかな、と。いやー、困った、困った」
 言葉に反して、座長は満面の笑みだ。
「そういうわけですから、怪我をした連中の代わりに芝居に出ていただけませんか?」
 なにが『そういうわけ』なのか判らないが、猟兵たちに口を開く暇を与えることなく、座長はずいと迫ってきた。あいかわらず、満面の笑みで。おまけに揉み手をしながら。
「いえ、芝居といっても、そんなに難しいもんじゃありませんよ。即興の剣劇でいいんです。皆さん、戦い慣れておられるようですから、そういうのは得意でしょう? かっこよく悪玉を斬る役もよし、かっこよく善玉に斬られる役もよし。もちろん、ヒロイン役も大歓迎。芝居だけじゃなくて、幕間の歌や踊りや軽業や手品なんかを披露してくださってもいいんですよ」
 こうして、猟兵たちは新たな戦いに臨むこととなった。
 今度の戦場は舞台の上だ。
鏡島・嵐
お芝居なんて、学芸会くらいでしかやったことねぇけど……。
やっぱり一座の人たちを応援してぇし、一肌脱ぐとしますか。

判定:【SPD】
とりあえず、小道具や衣装の制作とか修繕とかを手伝う。旅先で服が破れても繕えるように、それ用の道具も持ち歩いてるから使うぞ。
舞台では〈楽器演奏〉〈歌唱〉技能使って、演奏とか歌を担当。……あんまり自信無ぇけど、頑張る。
(本当は歌声がとても綺麗なのだが、本人に自覚は皆無)


ヴォルフガング・エアレーザー
・他者との絡み、アドリブ歓迎

まいったな……芸や芝居など経験はないのだが。
とはいえ折角の頼みを無碍にも出来ん。とにかくやってみるか。

役柄は……人狼の変身能力を生かして、人間→獣頭の魔人→狼の間を自在に変化する「獣の王」。野獣の姿と猛々しさで周囲から恐れられていたが、ヘルガ(f03378)演じる姫と出会い、人間的な心を取り戻す、というのはどうだろう。

斬る側(正義の狼騎士)か斬られる側(死ぬ間際に改心する魔王)かは、周囲の役柄に合わせよう。
剣戟でも遠慮はいらない。多少の無茶振りは【無敵城塞】で防げるだろう。

「歌姫よ……そなたに出会えて、私は幸せだ。
この命尽きるとも、後悔することはない……」


ヘルガ・リープフラウ
・他の人との絡み、アドリブ歓迎

舞台……ですか? ええ、喜んで。
わたくしの歌が皆様のお役に立てるのでしたら。

ヴォルフ(f05120)演じる獣の王と出会い、彼の隠された優しさに触れ、次第に惹かれてゆく歌姫、というのはどうでしょう。
大丈夫。ヴォルフも、皆さんも、とっても素敵です。
もっと自信を持っていいんですよ。

世界の幸せを「祈り」、「優しさ」を【シンフォニック・キュア】の調べに乗せ、情感を込めて歌いましょう。
聴衆にも団員の皆さんにも、全ての人に癒しの奇跡が降り注ぎますように。

「全ての命は尊く、希望の光はあまねく世を照らす
暖かな愛に包まれ、人々に幸あれかしと……」


ツーユウ・ナン
◆設営の手伝いをし、舞台の見物をする
 三千世界を股にかけ、猟兵稼業は風任せ……とはいえ、袖すり合うも多生の縁よ。少しばかり付き合うのも悪くなかろう。
 限られた人数で運営する旅の一座ならば、おそらく裏方仕事も演者自らやるような規模。襲撃の後だ、皆疲れてもいるだろうから、設営くらい手伝ってやらんとな。

 わしは舞台に立つより酒でも呑みながら見物と行きたい所……そうじゃ、「JJ」がおったな?あやつはこういうのが好きそうじゃったから引っ張ってこようじゃないか。

◆以前、シナリオ『怨念(MS天枷由良)』三章にて顔を合わせたことのあるグリモア猟兵JJに出演依頼


幽暮・半月
抜け目のない男だな
まあよかろう、これも猟兵の仕事だ
ブラックタールたる我が身は闇に潜み舞台そのものとなろう

(約:
剣劇かー、クールな俺的には似合わないかもしれないけど息抜き息抜き(ノリノリ

仲間の演出に合わせてエレメンタル・ファンタジアで氷の世界や炎の街みたいな感じの演出をしよっと
これまたブラックタールの体を生かして黒子もできそうだな
倒れた役の人を運搬したり、体を薄くすればちょっとした影絵みたいな書き割りも作れるかな?)

絡み&アドリブ歓迎



●第二場
「いやはや、この村の皆様は実に運が良い! 今回の我が一座の興行には、都で名を馳せた超一流の役者や歌い手たちが特別出演するのですからな! なんと、彼らは百戦錬磨の冒険者でもあります! 故に剣劇もまた迫真の演技! いや、もう演技とは呼べません! 勢い余って本当の斬り合いを舞台で始めるかもしれませんから、心臓の弱いかたは要注意ですぞ! 要、注、意!」
 村の広場で旅一座の座長が呼び口上を述べていた。
 BGMは威勢のいいかけ声と木釘を打つリズミカルな音。後方で天幕劇場の設営がおこわなわれているのだ。
 その作業に従事しているのは旅一座の面々だけではない。『都で名を馳せた超一流の役者や歌い手』であるところの猟兵たちも手伝っていた。
「本当にすいません。命を救っていただいただけでなく、こんなことまで……」
 一座に属する女優が申し訳なさそうな顔をして、猟兵たちにわびた。
「気にするな」
 と、天幕の支柱を掛け矢で打ち込んでいた手を休めて、ツーユウが答えた。
「猟兵稼業は風任せとはいえ……いや、風任せだからこそ、袖振り合うも多生の縁。いろいろと付き合ってみるのも悪くない」
「それにしても、あの座長の抜け目のなさには恐れ入る。俺たちを『超一流の役者や歌い手』なるものに仕立て上げて客寄せに使うとはな……」
 ブラックタールの半月が肩をすくめるような動作を見せた。
「しかし、これもまた猟兵の仕事。気は進まないが、協力しよう。この身を活かして闇に潜み、舞台そのものとなることで。(訳:クールな俺に舞台劇なんて似合わないけど、まあ、息抜きと思ってやってみるかな。そう、あくまでも息抜き。べつにノリノリじゃないから。ぜっんぜん、ノリノリじゃないから)」
「くくっ……」
 ツーユウが小さく笑った。無貌であるはずのブラックタールの表情を読み取ったのだ。
「悠然と構えてるつもりなのかもしれぬが、わくわくとした気分は隠し切れておらぬぞ」
「わ、わくわくなどしていない」
 半月は慌てて否定すると、その件を更に追及される前に話題を変えた。
「ところで、ツーユウは芝居に出ないのか?」
「うむ。舞台に立つより、酒でも呑みながら見物しておるほうが性に合ってるからのう。その代わりというわけでもないが、助っ人を呼んでおいた」
 ツーユウが顎をしゃくった先には、伊達姿のケットシーがいた。
 皆をこの地に転送したグリモア猟兵のJJだ。
「サムライエンパイアでJJの講釈というか一人芝居を見たことがあるのだが、なかなかものだったぞ」
「いやいや、それほどでもないけどなぁ。にゃはははは!」
 JJは胸を張り、高笑いした。『それほどでもない』などと露ほども思っていないのは一目瞭然。
 そんな彼とは対照的に自信なげな顔をしているのは嵐。
 芝居用の衣装を慣れた手付きで繕いながら、彼は呟いた。
「お芝居なんて、学芸会くらいでしかやったことねえんだよなぁ……」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
 JJが嵐の肩を叩いた(嵐が胡座をかいて作業していなければ、JJの手が肩に届くことはなかっただろう)。
「おまえさんが緊張のあまりトチったりしても、俺がちゃんとフォローしてやるよ。大船に乗ったつもりでいな。にゃはははは!」
 またもや高笑いするJJを横目で見ながら、嵐は心の中で溜息をついた。
(「この大船、今にも沈みそう……」)

●第三場
 完成した天幕劇場に観客たちが列をなして入場していく。
 村人全員とまではいかないが、かなりの人出だ。座長の大袈裟(というよりも嘘八百)な呼び口上が効いたのかもしれない。
 列の最後尾にいた観客が木戸賃を払って入場すると、天幕劇場の入り口が閉じられた。
 そして、場内の舞台の幕がゆっくりと開いた。
 そこに立つのはヘルガ。
(「さすがに少し緊張しますね。でも、わたくしの歌が皆様のお役に立てるのでしたら……」)
 ヘルガは大きく息を吸い込むと、前口上を兼ねたシンフォニック・キュアの歌を観客たちに聴かせ始めた。
「すべての命は尊く、希望の光はあまねく世を照らす♪ 暖かな愛に包まれ、人々に幸あれかしと♪」
 歌声は場内に響き、観客たちの心にも響いた。芝居が始まったわけでもないのに、もう感涙に頬を濡らしている者もいる。
「よし! 掴みは上々!」
 舞台袖で座長が拳を握りしめつつ、反対の手で主演男優の背中を押した。
「さあ、この感動の波が消えぬうちに! ほら! 早く、早く!」
「……う、うむ」
 戸惑いながらも舞台に出た『主演男優』はヴォルフガングだ。
 演じる役は、人間と獣人と獣という三種の姿に変身できる『獣の王』。人狼たる彼に相応しい役だといえよう。
 しかし、だからといって、上手く演じられるというわけではない。
(「まいったな。芝居の経験などないのだが……」)
 観客たちの視線を浴びて、身を固くするヴォルフガング。
 そんな彼にヘルガが微笑みかけ――
(「大丈夫。とっても素敵です。もっと自信を持っていいんですよ」)
 ――と、目顔で伝えた。
「……」
 ヴォルフガングは無言で小さく頷いた。ぎこちなく微笑み返しながら。
 そして、芝居が始まった。ヴォルフガング演じる獣の王とヘルガ演じる歌姫との悲恋譚。歌姫は獣の王と出会い、彼の隠された優しさに触れ、次第に惹かれていく。獣の王もまた歌姫に対して特別な想いを抱き始める。
 その物語を盛り上げるのは二人の演技ばかりではない。炎の街並みや氷の森林といった幻想的な光景が舞台上で幾度も展開された。二人の心象を代弁するかのように。
 それらを生み出したのは半月だ。エレメンタル・ファンタジアを使ったのである。
(「これは思っていたより面白いかも!」)
 演出家の喜びに目覚めたらしい。
 物語が後半に差し掛かると、若き演出家は自分の体を薄くして、影絵のような書き割りとなり、奇怪な城を舞台の後方に出現させた。『舞台そのものとなる』という宣言通りに。
 その書き割りの城から出てくる態で――
「我こそは魔猫大帝ジャスパーなり!」
 ――悪役のジャスパーが舞台袖から登場した。
 身長が五十センチにも満たない悪役というのは迫力不足……いや、不足どころか皆無であったが、観客たちは気にしていないようだ。
(「JJも猟兵である故、この世界の住人には普通の姿として認識されておるようじゃのう」)
 と、心中で呟いたのは、杯を片手に観劇していたツーユウ。もちろん、彼女の目には、舞台上の悪役が小さなケットシーとして映っている。
「哀れよな、獣の王。愛とやらに魂を毒されてしまっては、かつてのように非情なる剣を振るうこともできまいて。死ぬがいい。さあ、死ぬがいい。己の弱さを悔やみ、愚かさを呪いながら!」
 JJはサーベルを抜き、ヴォルフガングに斬りかかった。もっとも、そのサーベルの刀身はゴム製だが。
(「場合によっては無敵城塞を使うつもりでいたが、そんな『場合』は訪れそうにないな……」)
 苦笑を噛み殺しつつ、獣の王ことヴォルフガングはバスタードソードで応戦した。
「哀れなのは愛を知らぬ貴様のほうだ!」
 唸りをあげ、風を切り、何度もぶつかる二条の刃。片方がゴムであるにもかかわらず、触れ合う度に火花が散った。例によって、半月がエレメンタル・ファンタジアを使っているのだ。
 三十合ほど打ち合った後で、激しい(?)剣戟は終わりを告げた。
 相打ちという形で
「うぎゃぁぁぁーっ!?」
 大袈裟に身をよじりながら、ジャスパーは倒れ込んだ。演出家から黒子に変わった半月がそれを素早く受け止め、舞台袖に引きずっていく。
 ヴォルフガングも同時に倒れていたが、主役たる彼の傍に駆け寄ったのは黒子ではなく、歌姫のヘルガだ。
「ああ、獣の王よ!」
 涙ながらに獣の王の上体を抱き起こす歌姫。
 彼女の顔を見やり、獣の王は微笑んでみせた。
「そなたに出会えだけで……私は幸せだ……この命、尽きるとも……後悔することは、な……」
 言葉が途切れ、獣の王の首ががくりと下がる。
 歌姫は獣の王の上体を寝かせると、微笑が浮かんだままの顔に触れ、優しく撫でるようにして目を閉じさせた。
 一拍の間を置いて、拍手が巻き起こった。

 喝采を送る観客たちに何度も礼をした後でヘルガとヴォルフガングは退場した。
 代わって現れたのは嵐だ。
(「なんだか、戦ってる時とはまた違う恐怖感があるなぁ」)
 興奮さめやらぬ観客たちを前にして、嵐はごくりと息を飲んだ。
 そして、開演時のヘルガと同じように大きく息を吸い込んだ後、歌い始めた。
 終幕の口上を兼ねた歌を。
 これもヘルガの時と同様、その美しい歌声は皆の心に響き、感涙を誘った(自称『大船』のJJも舞台袖で号泣していた)。
 もっとも、当の嵐はそれに気付いていない。そもそも、美声であるという自覚がないのだ。
 やがて、歌が終わり、場内は静寂に包まれた。
 その静寂を嵐は否定的な反応と受け取り、そそくさと退場しようとしたが――
「さすが、都で名を馳せたという超一流の歌い手じゃのう!」
 ――ツーユウが杯を置いて、拍手をした。
 歌の余韻に浸っていた観客たちも我に返り、手首が折れんばかりの勢いで拍手を始めた。

「皆様のおかげで興行は大成功ですよ! 大、成、功! 本当にありがとうございます!」
 終演後、座長は猟兵たちに大声で感謝の意を告げた。またもや、満面の笑み。またもや、揉み手。
「こんなに素晴らしい興行を一回で終わらせるなんて、実にもったいない。どうです? 冒険者を辞めて、私たちの一座に正式に加わっていただけませんか? ゆくゆくは本当に都で名を馳せるほどの役者になれるかもしれませんぞぉ!」
 もちろん、座長の誘いに乗る者はいなかった。
 猟兵稼業を辞めるわけにはいかない。
 この世界には……いや、すべての世界に、まだまだ沢山いるのだから。
 猟兵の力を必要としている人々が。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月24日


挿絵イラスト