アルダワ魔王戦争3-A〜強欲なる黄金
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「アルダワのファーストダンジョンの攻略も順調のようじゃ。どんどん新しい領域に進んでおる」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)はそう告げると、新たな領域について語り始めた。
「ここは迷宮の宝である巨大な黄金鉱脈があるダンジョンのようじゃ。それだけならば、問題はないのじゃが、呪われておってな」
このダンジョンには、欲望を際限なく増幅させて探索者達を仲間同士で争い合わせ自滅させる――そんな強欲の呪いが掛けられているのだという。厄介な事に、この呪いの効果は猟兵にもさえなくない影響を与えるのだ。
「金塊の欲望に目がくらむと、おぬしらであっても敵に隙を晒してしまうかもしれん。対抗手段が必要じゃろう」
呪いに対して、もっとも簡単で確実な対抗方法は金塊の魅力を否定し、無欲になる事だ……人によっては難しいじゃろうが、とガングランは咳払いする。
「加えて、この地にいるオブリビオンも呪いの影響を受けておる。おぬしらが自分の金塊を奪いに来たと思い込み、金塊を守るために戦いを挑んでくるようじゃ……いつもより殺意が高いかもしれんの」
今回、みんなが担当する戦場にいるのはグレーターキメラだ。呪いによって自身の巣に略奪のために侵入してきたと襲い掛かってくる。かなり凶暴な、黄金の守護者となっているようだ。
「何にせよ、ここを抜けねば意味がない。黄金の呪いなぞにおぬしらなら決して負けぬとわしは信じておるよ、うん。信じとるよ」
信じることは大切だ、だから二回繰り返してガングランは念を押して締めくくった。
波多野志郎
金の相場が値崩れしそうで怖いですね、どうも波多野志郎です。
アルダワ魔王戦争、黄金の鉱脈内での戦闘となります。
今回のプレイングボーナスは、「金塊の魅力を否定し、無欲になる」となります。呪いになんて負けたりしない! そんな強い心をどうプレイングで表現するか、お待ち致しております。
それでは、強欲の黄金眠る地でお会いしましょう。
第1章 ボス戦
『グレーターキメラ』
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POW : グレートゴリラパンチ
単純で重い【ゴリラの剛腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : デッドエンド・バイト
【鷲掴み、または踏み付けによる拘束攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【獅子頭または尻尾の毒蛇による噛み付き】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 山羊頭の暗黒魔法
レベル×5本の【暗黒】属性の【瘴気の魔弾】を放つ。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ニーナ・ソーサリー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴェルフラム・リーヴォローズ
・心情
金塊……ねぇ
ボクの場合、否定しようと意識してしまえば、逆に魅力に囚われてしまうかもしれない
そうしたら、戦闘にも支障が出るかもね
だから、自分で考えないようにしようか
・戦闘
繰糸纏いし舞踏会で人形遣い風のオブリビオンを召喚し、ボク自身を操らせて戦うよ
こいつなら、黄金にもきっと目が眩まずにボクを操って敵のオブリビオンを倒してくれる……と思いたいね?
・その他
アドリブ等は大歓迎だよ
水貝・雁之助
連携、アレンジ歓迎
黄金ねえ
正直、長持ちするのは良いんだけど希少過ぎて持っていたら狙われたりするし・・・
義娘の永久が邪神の煽動で村人達に殺された時も渓に黄金が沢山あるって吹き込まれたからだし、余り良い印象ないなあ
正直、財産なんて多少の体を悪くした時の備えさえあれば他は生きていけるだけあれば良くない?
『地形耐性』で黄金の誘惑を流しつつ逆に黄金が沢山ある『地形の利用』をし事前に準備しておいた黄金の偽物や其処らに転がっている黄金を適当に投擲
『地形の利用』をし迷宮内の壁やキマイラの宝を盾にしつつキマイラの気を逸らし此方に攻撃が来るように誘導し悉平太郎を支援
悉平太郎は動き廻りつつ攻撃しては離れる様に動く
御剣・刀也
黄金?んなもん興味ない
俺が興味あるのは強い相手との死闘だけだ
さぁ、生と死の瀬戸際の、魂のざわめきを感じさせてくれ!
ゴリラのパンチは第六感、見切り、残像でよけるか、武器受けで受け流すかして防御して、勇気で反撃を恐れず、捨て身の一撃で斬り捨てる
黄金に対しての欲求はお金に対してもあまり興味がないので元々あまりわかない。わいたとしても、それより強い相手と戦えることのほうが腕しいので、すぐに忘れて強者との勝負に集中する
「黄金?んなもんどうでもいい。俺が興味あるのは強い相手との戦いだ。お前は強そうだ。楽しませてくれよ」
鈴木・志乃
(恋人の名前を呟く)
(ため息)
(また呟く)
(ため息)
【呪詛耐性オーラ防御展開、自分の本心を失せ物探し、心と手をつなぐ】
(千羽鶴握りしめて)
金塊手に入れた所で恋人と会えるわけじゃない
私の生きる理由の全てである恋人の為に金塊は必要じゃない
死にたがりだった私を救ってくれた恋人の為に
恋人がこれ以上オブリビオンの現れる未来を視ない為に
私その為に戦いに来たの
彼以外には何にもいらない!!
私と恋人のBDならびにバレンタイン潰すのはお前らか!!!
(※全部2月)
UC発動、祈りと破魔を乗せた全力魔法の衝撃波で一切合切すべてをなぎ払い攻撃する
無機物……金塊もポイだポイ!
幻想は平和になったアルダワと学生達の怒涛の攻撃
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
金塊の魅力…正直言ってあるの?
玉鋼とかの方が個人的に魅力的だと思うけど。
猟兵やってると金銭的な意味で困らないからなぁ、今のとこ。
プレゼントとかで使う相手もいないしな…(遠い目
【存在感】を消し【目立たない】ように立ち回る。
隙を見て【マヒ攻撃】を乗せたUC剣刃一閃で【暗殺】攻撃を仕掛ける。
マヒは入れば上等。
相手の攻撃は【第六感】で感知【見切り】で回避。回避しきれないものは可能な限り黒鵺で【武器受け】して、さらに【カウンター】を叩き込む。
それも出来ない物は【オーラ防御】と【激痛耐性】、毒蛇の噛みつきは【毒耐性】で、瘴気は【呪詛耐性】でしのぐ。
シノギ・リンダリンダリンダ
……この世の全ての黄金は私のものです。多少誰かに分け与えていようと、多少誰かに保存を任せていようとそれは変わりません
絢爛豪華な宝石だろうと、巨大な金塊だろうと、私の前では等しく『お宝』で、略奪対象です
今更、心を乱すわけもないじゃないですか?
お宝に対する狂気じみた価値観と、「呪詛耐性」「狂気耐性」により黄金の魅力をはねのける
他の猟兵の方々に奪われようが、最終的に自分の元に返ってくるのだから心配いりません。わざわざ手を出したりしませんとも
敵に向かって歩いていき、邪魔するものはなんでも【殴り】壊し、近づいたら【力いっぱい殴るだけ】
あ。安心してください。私は略奪のために侵入していますので
宇冠・龍
由(f01211)と参加
財宝はいつだって良くも悪くも人生を変える力を持っています
冒険者を昔やっていましたから、その恐ろしさも素晴らしさも身に染みています
(その時のお宝でもある黒い竜玉をこうして頼っているのですから、私自身ずっと魔性に取りつかれているのかもしれませんね)
金塊は暮らすために必要な物資、たしかに欲しいものです
けれど「どうして欲しいか」まで考えれば、自然と欲する手も下がります
私は家族のため、由と幸せに暮らしたい
その幸せを曇らせるのなら、必要以上の財宝は不要
【画竜点睛】で呪詛の腕を召喚
相手を拘束しながら呪詛で弱体化、暗黒属性の効果も弱めます
宇冠・由
お母様(f00173)と参加
凄い金の山々ですわ! これだけあれば何着のドレスが買えるのでしょう(それにこれだけのお金があれば、お母様だってきっと楽できるに違いありませんの!)(欲望全開)
金塊でなく、炎で溶かして液体状にすれば「金塊の魅力を否定」してますし、呪いだってきっと
ちょっとだけでも駄目ですか? そうですか……(母に叱られしょんぼり)
悔しいですけど、この想い、がむしゃらに(無欲)にキメラへぶつけますわ
お母様の技で動きを封じたキメラに接近【百火繚乱】の技にて最大限の火力をぶつけます
敵の攻撃は炎のオーラを盾状に放出させて拡散
敵からの攻撃をかばう盾として利用し攻撃を防ぎます
メンカル・プルモーサ
……ふむ、欲をかき立てる黄金、ねぇ……
…と言っても金塊は【愚者の黄金】トン単位で別に作れるから困ってないんだよね…ただの素材でしかないからな…
…まあ呪いそのものはほんのちょっとだけ気になるけどね?そっちもサンプルが少しあれば良いから無欲無欲…
さて、キメラか……暗黒属性の瘴気弾は浄化復元術式【ハラエド】で浄化することで迎撃…
…反撃として【空より降りたる静謐の魔剣】により氷の魔剣を多数召喚……
四方八方からからキメラへと向かわせて防御や回避を困難にするよ…
…それにしても、キメラに黄金を使う当てがあるとも思えないんだけど…
…それでも独り占めしようと思わせるのがまさに呪い、と言うところかな…
フェルト・ユメノアール
餌を吊るして同士討ちを狙うなんて、悪趣味な罠だね
道化師として、猟兵としてみんなの笑顔を思い浮かべて誘惑に耐える
ボクが本当に欲しいのはみんなの喜ぶ顔なんだ!ってね
そうしていつもお客さんに『パフォーマンス』をする時の様な自分が集中できる状態で戦闘に挑む
『トリックスターを投擲』して相手を牽制
さらに『ミラクルシルクハット』から白鳩姿の『ハートロッド』を放ち、相手を攪乱
相手を焦らし、UCを誘う
そして、相手がUCを発動した時が勝負!
さあ、夢幻の射手のご登場だ!現れろ!【SPトリックシューター】!
そして、トリックシューターの効果発動!
飛び道具を吸収して、相手に矢として打ち返す!
喰らえッ!ダークネス・アロー!
●黄金鉱脈
ファーストダンジョンの地下、そこにあったのは膨大な黄金鉱脈だった。地面からこれみよがしに露出した金色だけでも、目も眩まんばかりだった。
「凄い金の山々ですわ! これだけあれば何着のドレスが買えるのでしょう」
そう歓声を上げたのは、宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)だ。すっかりとその黄金に魅入られたように、はしゃいで駆け寄る。
(「それにこれだけのお金があれば、お母様だってきっと楽できるに違いありませんの!」)
「金塊でなく、炎で溶かして液体状にすれば「金塊の魅力を否定」してますし、呪いだってきっと――」
しかし、そんな由の提案を却下したのは他ではない母親である宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)だった。
「金塊は暮らすために必要な物資、たしかに欲しいものです。けれど「どうして欲しいか」まで考えれば、自然と欲する手も下がります。私は家族のため、由と幸せに暮らしたい……その幸せを曇らせるのなら、必要以上の財宝は不要です」
「ちょっとだけでも駄目ですか? そうですか……」
しょんぼりと落ち込む由に、龍は小さく首を左右に振る。財宝はいつだって良くも悪くも人生を変える力を持っている――冒険者としての過去を持つ龍は、その恐ろしさも素晴らしさも身に染みていた。
(「その時のお宝でもある黒い竜玉をこうして頼っているのですから、私自身ずっと魔性に取りつかれているのかもしれませんね」)
娘にそうなってほしくないという親心だが、龍はそこまでは語らない。わかってくれると、信じているからだ。
「……ふむ、欲をかき立てる黄金、ねぇ………と言っても金塊は【愚者の黄金】トン単位で別に作れるから困ってないんだよね……ただの素材でしかないからな……まあ呪いそのものはほんのちょっとだけ気になるけどね? そっちもサンプルが少しあれば良いから無欲無欲……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)のようなユーベルコードの持ち主にとって、黄金という価値は優先順位の低いものだ。むしろ、欲しいと思わせる呪いの方が興味深かった。
「……この世の全ての黄金は私のものです。多少誰かに分け与えていようと、多少誰かに保存を任せていようとそれは変わりません。絢爛豪華な宝石だろうと、巨大な金塊だろうと、私の前では等しく『お宝』で、略奪対象です。今更、心を乱すわけもないじゃないですか?」
また、別の意味でシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)のような者もいる。海賊船の船長である誇りが望むのは、略奪だ――決してこそ泥ではない。
「黄金ねえ。正直、長持ちするのは良いんだけど希少過ぎて持っていたら狙われたりするし……義娘の永久が邪神の煽動で村人達に殺された時も渓に黄金が沢山あるって吹き込まれたからだし、余り良い印象ないなあ」
そうぼやくのは、水貝・雁之助(おにぎり大将放浪記・f06042)だ。過去の教訓というのは、やはり重要だ。柴犬のモコも雁之助の後ろをトコトコと着いていくだけで見向きもしない……むしろ、眩しさがうっとおしそうでさえある。
「正直、財産なんて多少の体を悪くした時の備えさえあれば他は生きていけるだけあれば良くない?」
「金塊の魅力……正直言ってあるの? 玉鋼とかの方が個人的に魅力的だと思うけど。猟兵やってると金銭的な意味で困らないからなぁ、今のとこ。プレゼントとかで使う相手もいないしな……」
刃が黒い大振りなナイフが本体であるヤドリガミである黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)にとっても、やはり黄金は不評だ。加工も施されず、加工しても武器には向かないのが黄金という金属だ。瑞樹の興味の対象たりえなかった。
(「あれ? 私がおかしいんですの?」)
由が思わず、小首を傾げる。まさかの少数派であった事で心配したが――。
「ボクの場合、否定しようと意識してしまえば、逆に魅力に囚われてしまうかもしれない。そうしたら、戦闘にも支障が出るかもね。だから、自分で考えないようにしようか」
――そんなヴェルフラム・リーヴォローズ(竜墓の薔薇姫・f25400)の呟きに、ようやく由は安堵する。
「お、あれか?」
御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)の言葉に、仲間達は視線を向ける。洞窟を抜けた先にあったのは、まさに黄金の山だった。その中心で寝ていたのは、さまざまな動物の融合体――グレーターキメラだった。
『グル……!』
「黄金? んなもん興味ない。俺が興味あるのは強い相手との死闘だけだ。さぁ、生と死の瀬戸際の、魂のざわめきを感じさせてくれ!」
グレーターキメラの殺気を込めた威嚇に、刀也が笑う。が、ふと背後に凄まじい気配がして、刀也は振り返った。
「……はぁ……」
鈴木・志乃(オレンジ・f12101)が、一つの名を呟いてはため息をこぼす。何度も何度もそれを繰り返し、千羽鶴握りしめて志乃は座った目でグレーターキメラを見た。
「金塊手に入れた所で恋人と会えるわけじゃない。私の生きる理由の全てである恋人の為に金塊は必要じゃない。死にたがりだった私を救ってくれた恋人の為に――恋人がこれ以上オブリビオンの現れる未来を視ない為に私その為に戦いに来たの」
『グ、グル……?』
冷たい感情のない志乃の言葉に、グレーターキメラは戸惑う。え? いや、そんな事言われても……言葉が話せたら、そう返したかもしれない。
しかし、届かない戸惑いを押し潰すように、志乃は言い放った。
「私と恋人のBDならびにバレンタイン潰すのはお前らか!!!」
志乃の祈り――とは何なのだろう……?――と破魔を乗せた全力魔法の衝撃波が、黄金の園を薙ぎ払った。砕けた黄金に、グレーターキメラは激怒する。
『グ、ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「餌を吊るして同士討ちを狙うなんて、悪趣味な罠使うから」
ご愁傷さま、とフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は合掌する。怒りに燃えたグレーターキメラが迫るのを見て、フェルトはクルクルとトリックスターをジャグリングして言ってのけた。
「ボクが本当に欲しいのはみんなの喜ぶ顔なんだ!」
いつもお客さんに『パフォーマンス』をする時の様な自分が集中できる状態で、フェルトは戦闘に挑んだ。
●黄金の戦い
ダッ! と地面を駆けたグレーターキメラが疾走してくる。それを見て、刀也が獅子吼を担ぐように構え前に出た。
「――ッ!」
グレーターキメラが接触直前で急停止、後ろ足で立ち上がったかと思った瞬間、そのゴリラの豪腕を振るった。刀也が獅子吼の刃で軌道を逸らす――それだけで、腕の感覚が死にそうな重さだった。
「ははっ!」
続けざまに放たれるゴリラの拳を、刀也は残像を残して掻い潜る。地面が砕け、舞い散る土砂と黄金――その間隙に、刀也は獅子吼を振るった。
ザン! と竜の鱗が切り裂かれるが、浅い。グレーターキメラが尾の蛇を動かそうとした瞬間、ヒュオ! と投擲されたダガーがあった。
「おっと、それは駄目だよ」
フェルトのトリックスターだ。ギギン! と牙でダガーを文字通り蛇が食い止めると、シノギが立ち止まった。
「動かないでくださいね。当たらないので」
『グ、ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
力いっぱい殴るだけ(ノウキンナリノセイイッパイ)、魔力のこもったシノギのラッシュをグレーターキメラは零距離の瘴気の魔弾で迎撃しようとする。だが、放たれた魔弾はことごとく、炎の盾に遮られる――由の炎だ。
「お母様!」
焔の義手によって形成された炎の盾が、瘴気に軋む。シノギの連打を受け、動きが止まったグレーターキメラへ、龍が動いた。
「咲けよ徒花、一つ二つと首垂らせ」
龍の画竜点睛によって召喚された無数の怨霊の腕が、グレーターキメラの巨体を抑え込んでいく。だが、グレーターキメラは強引にその腕を振り払おうと足掻いた。
「一瞬で、十分だぜ」
そこへ滑り込んだのは、瑞樹だ。右手に胡、左手に黒鵺――打刀の薙ぎ払いとナイフの振り払いを、グレーターキメラの懐という死角で放ち、そのまま下を滑り抜けた。
「悪逆を為せし非道の猿神を討ち滅ぼせし悉平太郎! 人々の涙を止めるために僕たちに力を貸して欲しいんだなー」
雁之助の呼びかけに応じて現れたのは、猿神殺しの柴犬悉平太郎だ。駆け出した悉平太郎をフォローするように、雁之助は転がっている黄金を適当に投擲した。
『グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
自分の黄金を好き勝手された、とグレーターキメラが怒った瞬間、悉平太郎がその足元で駆け回った。振るわれる爪、体勢を崩したグレーターキメラへメンカルが動いた。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
メンカルの空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)――召喚された氷の魔剣達が、四方八方から降り注ぐ! 突き刺さった部分から凍てつく痛みと冷たさに、グレーターキメラは暴れ回った。
「無機物……金塊もポイだポイ!」
『グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
志乃の恨み節全開の流星群(メテオストリーム)は、平和になったアルダワと学生達の幻想による怒涛の黄金投擲に、グレーターキメラが憤怒の咆哮を上げる。
「……黄金に魅入られたら、駄目ですわね」
「ああ……わかってくれましたか……」
その姿に娘が頭ではなく心で理解するのを、母は微笑んだ。まさに、子供の成長の瞬間である。
「残滓の繰糸ひとたび纏えば、絡繰人形クルクル踊る。さぁ、開演の刻だ」
ヴェルフラムが召喚した人形遣い風のオブリビオンが、その操り糸でヴェルフラムを動かす。グレーターキメラの魔弾を一つ、また一つと掻い潜るながらヴェルフラムは空飛ぶ謎のハートで撃ち落としていった。
●呪いを踏み越えた先に
グレーターキメラは激怒していた。自分の黄金、領域、巣を乱す侵入者。邪智暴虐なる猟兵達を取り除かなくてはいけない、と……そこまで考えられるかは不明だが、とにかく怒っているのは、確かで。
「……それにしても、キメラに黄金を使う当てがあるとも思えないんだけど……それでも独り占めしようと思わせるのがまさに呪い、と言うところかな……」
メンカルとしては、そちらの執着の方がよっぽど解明したい謎だった。あるいは、動物によくある光り物を集める習性が、呪いにかかったのかもしれないが……。
『ぐ、がああああああああああああああ!!』
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ! とグレーターキメラの瘴気の魔弾が放たれた。その前に躍り出たのは、ミラクルシルクハットを手にしたフェルトだ。
「はい、種も仕掛けもございませんっ。さあ、夢幻の射手のご登場だ! 現れろ! 【SPトリックシューター】!」
フェルトがミラクルシルクハットを振るった瞬間、すべての魔弾がその中へ飲み込まれた。そして、トントンとミラクルシルクハットがハートロッドで叩かれた直後だ。
「喰らえッ! ダークネス・アロー!」
シルクハットの中から撃ち返された魔弾が、グレーターキメラに迫る! それをグレーターキメラは新たな魔弾で迎撃しようとするが――不意に、瘴気がかき消えた。
「……それは、対処済み……」
浄化復元術式【ハラエド】によって瘴気をかき消したメンカルが、続いて氷の魔剣を繰り出した。
グレーターキメラは降り注ぐ魔剣の群れの下を疾走。突き刺さりながらも、なおゴリラの拳で殴りかかった。
「そこまでです」
その進行方向に、龍は怨霊の腕を配置していた。手足を掴もうとする画竜点睛の腕、腕、腕。なおも駆け抜けようとしたその眼前に、悉平太郎が駆け込んだ。
「止めて欲しいんだなー」
雁之助の願いに応え、悉平太郎が飛び込みグレーターキメラの後ろ足に噛み付く! 地面に倒れたグレーターキメラを怨霊の腕が覆っていき――。
「ごめんあそばせ」
百火繚乱《海底摸月》――由の二振りの火炎剣を一つに合わせた大剣による斬撃が、そこへ振り下ろされた。炎に包まれるグレータキメラは、なおも足掻く。その背に降り立ったのは、瑞樹だ。
「ここだ」
そして、突き立てられる胡。グレーターキメラは即座に尾の蛇に噛みつかせようとするが、振り払った黒鵺に弾かれた。
『ぐ、がああああああああああ――!?』
不意に、視界がかげった。グレーターキメラの頭上、志乃の平和になったアルダワと学生達が巨大な金塊を力を合わせて投げ込んだのだ。
「金塊がそんなに好きなら、抱いて骸の海に帰りなさい!」
志乃の燃える怒りに、グレーターキメラが押し潰される! だが、金塊の下からなお這い出し、グレーターキメラは跳んだ。
『が、ああああああああああああああああああああ!!』
獅子の頭による噛みつき――その跳躍が、不意に空中で止まる。その背後から、オブリビオンの操り糸によって強化されたヴェルフラムが引っ掴んだからだ。
「始末は頼んだよ」
ヴェルフラムが、そのままグレーターキメラの巨体を地面へと投げつける! ドォッと地面が穿たれ、亀裂が入る――そこへ、刀也が駆け込んだ。
『が、あああああああああああ!』
「黄金? んなもんどうでもいい。俺が興味あるのは強い相手との戦いだ。お前は強そうだ。楽しませてくれよ」
もはや、互いに黄金には目もくれない。片や余裕がなく、片や強敵との交差を期待して。グレーターキメラのゴリラの拳を、刀也は渾身の獅子吼の振り下ろしで腕ごと断ち切った。
のけぞるグレーターキメラ。その懐へ、散歩のような軽い足取りでシノギは歩み寄った。
「あ。安心してください。私は略奪のために侵入していますので」
『グラアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
最後の最後、正直な告白と共に放たれたシノギの力いっぱい殴るだけ(ノウキンナリノセイイッパイ)――その拳のラッシュがグレーターキメラを吹き飛ばし、巨大な黄金の柱へと叩きつけた。
ずるり……と、獣の巨体が崩れ落ちる。黄金に魅入られた獣が、起き上がる事は二度と無かった……。
大成功
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