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春待つ祝言

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●狐火に問う
 ぽつり、ぽつり。
 よく晴れた冬空にも関わらず、枯木の枝に雨粒が落ちた。
 ただの天気雨だ。憎らしいほど明るい冬晴れの空を、誰もいない寂れた神社で狐は見上げていた。
 なんて美しい空なのだろう。きっとこの日に祝言を挙げるものは幸せになるに違いない。
 ここではないどこかの、美しく荘厳な神社で行われるのだろう祝言を思うだけで、狐は悲しくなった。
 ーー自分の神社は、こんなに廃れてしまったのに。
 ーー自分は、こんなにひとりぼっちなのに。
 津々と降る雨音に嗚咽が混じる。
 雨空を見上げて、そのとき狐は確かに泣いていた。
 もう涙を流す目も、頭も、ありはしないというのに。

「おや、おや。可哀想な狐がいるね」
 そんな狐に声をかける者がいた。
 頭を持たない狐を哀れんだ声は、歌うように狐に問いかける。
「無念は晴らすべきだ。そうは思わないかい?」
 打って捨てられた、廃れた神社にひとりきり。
 自分ばかりが悲しい。自分ばかりが痛ましい。
 ならば、その無念は晴らして然るべきものだと影が笑う。
 それは応えてはいけない問いかけ。
 けれど憎しみに濡れた狐は、応えてしまった。悲しいならば、憎らしいならば。すべて壊してしまえば良いのだと、尾に沿う鬼火が揺れる。
 狐がそうして山を駆けた頃。雨はもう、止んでいた。
 
●祝言の知らせ
「やあ、親愛なる君」
 グリモアベースへ集まる猟兵を見上げ、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)は首を傾げる。
 サムライエンパイアで行われる婚礼を見たことはあるかな?
 問いかけに目を丸くする猟兵をよそに、クリスは鷹揚と話を続けていく。
「いわゆる神前式といった形のようでね。名の通り神社で神様を前に愛を誓う、サムライエンパイアでは伝統的な結婚式らしい」
 自分とは文化の異なる世界での婚礼の様を身振り手振りで伝えながら、それから少しだけ悩むような仕草。クリスは揺れる髭をなぞりながら、目を伏せる。夢に見た光景が瞼の裏に映るようだったが、やがて開いてしまった間を埋めるように、その先を語ろうと口を開いた。
「その婚礼がある予定の神社が、とある狐のオブリビオンによって壊されてしまうんだ。君にはそれを、阻止してもらいたい」
 第一の目的は狐を倒し、そして神社を守ること。
 婚礼は空が茜色に染まる夕方から始まるため、神社を守ることが出来れば猟兵もその婚礼に賑やかしのうちのひとりとして、参加することも出来るだろう。
 また、神社の近くの森で戦うことにはなるが、整地され開けた場所のため足場に困ることはないはずだ。
 クリスは案内先となる場所の様相を伝えながら、猟兵を改めて見上げて小さく笑いかける。
「……実は、僕もサムライエンパイアの婚礼を見るのは初めてなんだ。仕事が終わった後は、皆で祝いに行こう」
 そのためにも。婚礼の前のひと仕事を頼むよ、とクリスは手に馴染んだステッキで床を小突き、線を描くようにして現れたグリモアに手を伸ばす。猟兵が無事に次なる世界へ行けるよう、祈りを込めて。
 そして。猟兵の健闘を祈りながら光の粒子を見届けて、クリスは静けさを取り戻したグリモアベースでひとり、シルクハットを被り直すのだった。


atten
お目に留めていただきありがとうございます。
春を待ち蕾が徐々に膨らみ始める季節。サムライエンパイアへご案内いたします。

▼ご案内
舞台はサムライエンパイアになります。
神社をお守りいただいた後は、神社で結婚式に参加することができます。
また、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)も共に結婚式をお祝いさせて頂く予定です。こちらはプレイングでお誘いなど頂いた場合のみ交流させていただきます。

皆さまのプレイングをお待ちしております。
よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『憎しみに濡れた妖狐』

POW   :    神通力
見えない【波動】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    鬼火
【尻尾から放たれる怨嗟の炎】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    心眼
【常に相手の思考を読んでいるかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユノ・フィリーゼ
本当に美しい、空
茜色に見守られ祝言をあげる二人を、あたたかな時を守る為に
私は全力を尽くすだけ

…嗚呼、でも
狐様は何故神社を壊そうとするのだろう
理由が知れたらいいんだけど

見切りと残像で攻撃を躱しながら、
好機があれば狙いを定め花蝕庭園を放つ

揺らめく鬼火はまるで涙の様に思えて胸が痛む
…だけど私よりもずっと狐様の方が痛い筈だ
身も心も、全部

名も知らぬ狐の君
さぞ辛い思いをされたのでしょう、ね
今は存在しない顔に想いを馳せつつ語りかけ

嘗ての貴方を私は知らない
…だけど、今この時この一瞬
貴方と過ごした時間を私、ずっと忘れないわ
例えこの時が過去になってしまっても

怨み辛みも全部受け止める
だからどうか、…もう泣かないで?


ベルリリー・ベルベット
結婚式は女の子の憧れよね。
サムライエンパイアではジンジャーで結婚式をするの?
面白いわね。
将来のための予習として、リリもぜひ見てみたいわ。
そのためにも、まずは頑張らないとね。

【SPD】
素早く動いて敵を撹乱しながら、自分や味方が攻撃できるように隙を作るわ。
フック付きワイヤーを引っ掛け『ジャンプ』して、空中も移動するわね。
敵の攻撃は受けずに『見切り』で回避。
避けられそうになければ、急いで物陰に隠れるわ。

攻撃のチャンスには【早撃ちシンデレラ】で投げナイフをお見舞い。
『2回攻撃』で手数を増やしながら、氷の『属性攻撃』で怨嗟の炎を消してあげるわ。

◆アドリブや絡み歓迎



●狐の慟哭
 雨が上がったばかりの森は、大地と草木の匂いがする。
 冬の澄んだ空気を彩る、生きているものの匂いだ。
 その隙間を縫うようにして、雨粒を弾くように妖狐は森を駆けていた。
 甘く漂う死臭は雨が掻き消してくれている。領域外である神社を壊すなら、いまが好機。そうして駆け抜けた神社の鳥居前ーーしかし、そこには人影があった。

「待っていたわ、狐さん」
 憎しみに濡れた妖狐の、視線の先。
 冬空のような薄い青色の髪を揺らして振り返ったベルリリー・ベルベット(ルーナフラウ・f01474)はそう言って、妖狐に笑いかける。神社へ向かうなら鳥居を潜らねばならない。ならば必ずここを通るはずだと、待ち伏せていたのだ。
 警戒の色を見せた妖狐に、ベルリリーは空気を含むように柔らかなスカートの裾を摘んで、軽い仕草でお辞儀をしてみせる。
「あなたにどんな理由があったとしても、ジンジャーを壊すのはいけないわ」
 ーーだって、結婚式は女の子の憧れだもの。
 将来の予習としてぜひ見てみたい。そのためにも、神社は守ってみせると歌うように語るベルリリーに、ぶわりと妖狐の毛が膨らむ。これは自分の行く手を阻むものだと、肌で感じたのだろう。その感情に呼応して増えていく鬼火が、妖狐の怒りを物語る。
 その様を見ながら、ベルリリーの言葉に同意を示したのはユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)だ。
 ユノの藍色の瞳は、物言わぬ妖狐をまっすぐに見つめている。その真意を探るように、心の内を見据えるように。けれど、頭のない妖狐から見て取れるものはなかった。切なげに目を瞬かせたユノは、けれど竪琴の柄から伸びる銀色の切っ先を向けて意を決する。
「……茜色に見守られ祝言を挙げるふたりを、あたたかなときを守るために、私は全力を尽くすだけ」
 そうして、戦いの火蓋は切って落とされた。
 先手を取るように妖狐の膨らむ尾先から放たれた怨嗟の炎を、ユノは『Zephyros*』で切り裂き、静かな声で告げる。
「我が命を糧としてーー満ちて、咲け」
 その怨みも辛みもすべて受け止めようと、ユノの生命力を奪って急激に育った花の種子は、鬼火を揺らす尻尾を絡め取っていく。捕縛して妖狐の手数を奪うその技はしかし、ユノの寿命さえ削る諸刃の刃でもあった。
 長くは持たないと目配せしたユノに大きく頷いて、ベルリリーは踊るような軽快な足取りで前へ出る。チャンスは逃さないと、鮮明な色を湛えた瞳は笑っていた。
「ダメよ、私から目を逸らしちゃ!」
 早撃ちシンデレラ。それは彼女が舞う、第1演目。
 絡め取る種子に気を取られた妖狐の鬼火ごと突き刺された投げナイフは、そして怨嗟の炎を氷漬けたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒金・華焔
婚礼の儀ねぇ
私には全く縁のない事だが、一度くらいは見てみるのも面白いか
ま、私は暴れられればなんでもいいさ

さぁて、まずは雑魚共を散らす事になる訳だな
開幕は『黒式術・響歌』を詠唱(高速詠唱)
響歌に支援を貰いながら敵に突っ込んで黒焔呪月でひたすら薙ぎ払ってやる(属性攻撃、二回攻撃、範囲攻撃、なぎ払い)
相手の動きを読むのが得意らしいが、読めても避けられなければ意味ないな?
敵の攻撃は経験とカンで避ける(見切り、戦闘知識)
それに加えて相手の動きの癖を掴めば避けるのも楽だろ(情報収集)

くく、雑魚共を蹴散らすのは愉快でいい
精々私を楽しませてから死んでくれよ



「婚礼の儀ねぇ……」
 黒焔の力を宿した薙刀を肩で背負い直しながら、黒金・華焔(黒の焔・f03455)は小さく呟いた。自分にはとんと縁のない話である。けれど、1度くらいは見てみるのも面白そうだった。僅かな興味を胸に、華焔は唇を吊り上げる。
「……ま、私は暴れられれば何でもいいさ」
 この妖狐は倒さなければならない。その目的には何ら変わりはない。
 手馴れた仕草で『黒焔呪月』を構えた華焔は、凍った鬼火ごと燃やすような勢いで増えていく妖狐の鬼火を見据えて静かに間合いを見る。鬼火など、黒焔の力を前にすれば風前の灯のようなものだ。細められた青い瞳は冷たく、妖狐の動きを見極めていた。
 どうやら、神社を破壊するという衝動的な行動に対して、その実、妖狐はかなり慎重な性格をしているらしい。頭がなければ視線も読めないが、それでも警戒を此方に向けていることは華焔にもよく分かった。
 しかし、だからこそ。来ないならば此方から向かうまで、と華焔が決断を下すのは瞬く間のことだった。口を開けばすばやい詠唱が紡がれ、呼応するように華焔の背後に黒き焔が生まれていく。其は運命を呪い抗う者。聲を響かせ、唯一人の為歌う者ーー、
「起きろ、式神『響歌』!」
 そうして召喚されたのは、華焔の援護を務める式神だ。
 澄み渡るような美しい歌声が武器に更なる力を宿し、華焔は加速するように駆け抜けて妖狐目掛けて黒焔呪月を薙ぐ。
「先を読めても避けられなければ意味ないぞ!」
 初撃は、妖狐の心眼によってするりと避けられる。華焔はそれを予測した上で、さらに攻撃を重ねていった。1度避けられたとして、果たしていつまで避け続けられるというのか。
 振り下ろされる妖狐の爪先を見切りながら、ひたすらに攻撃を重ねて、重ねて。積み重ね続けられた華焔の攻撃はそしてーー妖狐の鬼火ごとまとめて薙ぎ払うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベリザリオ・ルナセルウス
結婚式があるのか、おめでたい事だ。私も祝福しよう
信仰は違っても幸福を望む祈りの気持ちは同じだろうから
新たな夫婦の門出のため
戦いにその身を投じる織久のため
そして人に不幸を齎す存在となった妖狐の救いのために戦おう


いくら回避しようとも嵐を避け続けられるとは思わない事だ
【鈴蘭の嵐】は何度逃げようとも捉えるまで止めはしない
【鼓舞】と【祈り】で戦意を高める
私に注意を引きつけて他から注意を逸らさせる
隙ができれば織久がすかさず攻撃するだろう
攻撃して来るなら【武器受け】と【盾受け】で受けきる
【勇気】と【覚悟】を持って盾となり守り抜く


西院鬼・織久
【POW】
【心情】
シュウゲン、ですか
どうりでベリザリオが盛り上がっていると
俺は敵が居るならそれで良いのですが

【行動】
ベリザリオ(ID:f11970)と共闘
「視力」「第六感」を働かせ敵の動向、周辺に注意

【戦闘】
「先制攻撃」を狙い距離が空いた所から「殺意の炎」「範囲攻撃」
「ダッシュ」で距離を詰め「二回攻撃」「なぎ払い」
敵の防御が高いなら「鎧砕き」「鎧無視攻撃」
更に「傷口をえぐる」で更にダメージを重ねる
回避が高いなら「怪力」も利用した「串刺し」で動きを止める

敵からの攻撃は「見切り」
回避できないものは「武器受け」で防御
回避の際は「残像」も利用した「フェイント」で攻撃に繋げる
防御の時も「カウンター」狙う



「……結婚式があるのか」
 鳥居を見上げ、ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)はそっと目を細めた。
 結婚式。それはとてもおめでたいことだと、祝福を込めて冬晴れの空に祈りを向ける。例え信仰が違ったとしても、幸福を願う祈りの気持ちはきっと同じだった。
 新たな夫婦の門出のため。戦いにその身を投じる織久のため。
 そして、人に不幸を齎す存在となった妖狐の救いのために。
 自らも戦おうと武器を握りしめたべリザリオは、覚悟を新たに戦場へ目を向ける。
 それは、その隣に並び立つ西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)も同じくだ。もっとも彼としては敵がそこにいるのならはそれで良かったのだが、横目にべリザリオの様子を見守りながら、倣うように武器を手に取る。戦闘は既に始まっている。ならばそれに続こうと、その赤い目は爛々と輝いていた。
「行くぞ、妖狐。いくら回避しようとも、嵐を避け続けられるとは思わないことだ」
 狂気を解放せんとした織久が先手を取るよりも早く、べリザリオがそうして妖狐に語りかけたのは、注意を引きつける狙いでもあった。鼓舞と祈りを込めて剣を向ければ、淡く煌めく刀身は先端からはらはらと鈴蘭の花びらへと変化していく。鈴蘭の嵐の名に相応しく光を帯びた花びらは強い風を伴ってやがて嵐となり、すべてを巻き上げるように妖狐へ襲いかかった。
 ーー逃げられない。
 傷を負った妖狐は、嵐を前に確かにそう思った。なればこそ。妖狐は退かずに、嵐へと自ら飛び込んでいく。逃げられないならばいっそ、という思いからなのだろう。そのまま嵐を突き破ろうとした妖狐は、薙いだ尾から見えない衝撃波をべリザリオに向かって飛ばす。
「べリザリオ!」
「構うな! いまだ、織久!」
 妖狐が覚悟を持って嵐を受けたならば、べリザリオもまた傷を負う覚悟を持ってその衝撃波を受け止める。そしてその隙を逃さず、織久の背を押すように叫んだ。
 隙を作るために注意を引き付け、覚悟の上で攻撃を受け止めたのだ。べリザリオのその献身を無駄にする訳にはいかない。何より織久の胸の内で蠢く怨念は、目の前の糧を求めていた。
 殺せと、胸の内のもっと奥底から声が聞こえるようだった。大剣を手にした織久はべリザリオの声と自らの狂気に押されるようにして戦場を駆け、妖狐目掛けて大剣を振りかぶる。
「ーー我らが怨念、尽きることなし」
 ぶわりと湧き出たのは、他でもない織久自身に宿る怨念と殺意の炎だった。放たれた黒い炎は憎しみに濡れた妖狐の鬼火を舐め、そして振りかぶられた大剣の力強い一撃をもって、妖狐の尾をひとつ、此処に斬り落とされた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

襲祢・八咫
…………己の寂寞を、人の子の枷にするのはおやめ。
(滅びた世界。誰もいない世界。神社。祀られたもの。たった、ひとり。愛した場所は、もう、)(あまり良い記憶ではない。感じたいものでも、ない)

……おいで。
赤鳥居の魔法陣から三本脚の烏を喚び出して、【属性攻撃】で強化。元は清らかな存在であったのなら、どうか行き着く先は光であるように、おれは祈ろう。【祈り】【破魔】
……往け、烏。送っておやり。
【2回攻撃】【衝撃波】【なぎ払い】を込め、陽光の浄化を。
寂しさを覚え、悲しみを覚え、憎しみに転じるほどに人の子が作り出すざわめきを愛していたのなら、人の子の手で逝くと良い。
人の子がとどめを刺せるよう、隙を作ろう。


枦山・涼香
嘆きを憎しみに転化させられましたか。
悲しいですが、同族なればこそ、外道に堕ちたならこの手で斬りましょう。
……もちろん、唆した者共々。

【存在感】で妖狐の意識を引きつけた上で、相手の怨嗟をも塗りつぶすような【殺気】を叩きつけて機先を制し、相手の心眼を牽制。
狐火を自らの周囲に浮かべ、抜いた大太刀を手に距離を詰めます。
狐火を2,3発ずつ飛ばして妖狐を四方八方から攻撃し、相手の回避を制限しながら大太刀で【なぎ払い】ます。大太刀を本命に見せて、狐火を【鎧無視攻撃】となる位置へ着弾させるのが真の狙いです。

嘆くのはいい。けれど憎しみは奉られていた己の矜持を傷つけることだと叱咤し、目を覚ますよう【鼓舞】します。


白菊・誠
【POW】
憎んじまったのか。まあ、そういう狐は少なくない。
この世界、野狐が結構多いしな。
しかしまあ、怒りに任せて神社自体を壊そうってか。

……真っ先に人の命を奪おうとしないってんなら、
きっとお前は優しい狐だったんじゃねーかな、と思う。
同情はするが、しかしだからって倒さない訳にもいかねえ。

狙撃銃と二丁拳銃で攻撃、必要なら護符も使用
首に注連縄がついた狐なら、何処かの神社の狛狐だろう
対になる狐は何処へ行ったんだよ、ったく……


閂・綮
かつては神のはしくれであった癖に、随分と俗世にまみれたものだ。忘れ去られた腹いせに、ひとを襲おうなどと。
一一 その様は、まさに、
(ひとのようだ。)

ひとが死ぬように、
神も消えていく。

社が寂れたことで、己が矜持を汚されたとでも思ったか。
八つ当たりは其処までにしておけ、無頭の狐。

「さあ。鳥たちよ。
我が手足よ。
羽ばたきでかの男の背を押し。
囀りでかの女の迷いを断て。
この糸。我が声。
尽くに加護を与えん。」

「これ」は、お前が連れてきたものか。
害なす獣になったとて。嫁入りの娘を祝う、「雨」を降らす程度の力はあったのか。

…愚か者め。
その哀れな姿になる前に。
何故、助けを請わなかった。



 妖狐には分からなかった。
 ――どうして自分ばかり、悲しいのか。
 ――どうして自分ばかり、痛ましいのか。
 頭を失くした妖狐には、誰かに問うことさえできなかった。だから、ずっと分からないまま。どうして悲しいのかも、痛ましいのかも。どうしてこんなにも、苦しいのかも。
 斬り落とされた尾によってバランスを崩した妖狐は、震える足で立ち上がる。分からない。分からない。ただ、全部壊してしまえばいいという声に突き動かされるように、力を振り絞って鬼火を燃やし、命を燃やしていく。

「嘆きを憎しみに、転化させられてしまったのですね」
 悲しみを灯した瞳を伏せて、枦山・涼香(烈華なる黒狐・f01881)は憐れみを飲み込んだ。自分の気持ちの在り処さえ見失ってしまった妖狐の存在は確かに悲しいけれど、悲しんでばかりはいられない。同族として、妖狐が外道に堕ちたならこの手で斬って終わらせようと涼香は大太刀を引き抜く。
 その横で白菊・誠(最前線の狙撃手・f05924)もまた、狙撃銃を手にしたまま眉を顰めていた。
「怒りに任せて神社自体を壊そうってか。……真っ先に人の命を奪おうとしないってんなら、きっとお前は優しい狐だったんじゃねーかな、と思うよ」
 今となっては分からないけれど。ずっと昔、いつかの妖狐を偲ぶように誠は小さく唸る。
 首に注連縄がついた狐なら、何処かの神社の狛狐だったのだろうに。ひとりぼっちの妖狐の対になっていたはずの狐は、何処へ行ってしまったというのか。
「……己の寂寞を、人の子の枷にするのはおやめ」
 妖狐を前に、過去へ思いを馳せたのは誠だけではない。襲祢・八咫(導烏・f09103)もまた、妖狐に遠い昔の日々を見るようだった。けれど、八咫にとってその記憶はあまり良いものではない。小さく頭を振り、八咫もまた、美しい波紋を描く一振りの太刀を引き抜く。
 妖狐の消耗具合は、誰からであっても見て取れた。終わりにしよう。そう呟いたのは誰であったか。各々に武器を取った猟兵たちは、憎しみに濡れた妖狐と対峙する。
「わたしが引き付けます!」
 先駆けたのは、そう言って大太刀を手に距離を詰める涼香だった。
 怨嗟さえ塗りつぶすような殺気を纏った涼香は周囲に浮かべた狐火を飛ばし、妖狐を四方八方から攻撃していく。その動きに翻弄されながらも心眼の力を発揮する妖狐だったが、息も吐かせぬ間に迫る大太刀の切っ先によって大きく後退せざるを得なかった。
 しかし、妖狐にも後がない。1度は後退するも、すぐに体勢を立て直した妖狐の膨れ上がる悲しみ、痛み、憎しみ。それらすべての怨嗟が炎を燃やし、猛り上がる鬼火となって鋭い軌道を描いて涼香に襲い掛かる。
「……くっ、」
「おっと、大丈夫か! 援護するぜ!」
 一撃、二撃。その存在感ゆえか、涼香へ追い立てるように襲い掛かる鬼火を相殺するように前へ出た誠が、クイックドロウによってブラスターを発射する。
 優しい狐はもう此処にはなく、いま此処にあるのは憎しみに濡れた妖狐だということを痛感するようで、誠は小さく舌打ちした。手負いの獣はもはや、止まる術さえ知らないのだ。
「――我が癒そう」
 誠が牽制するその背後で、するりと音もなく。涼香の傍へ歩み寄ったのは閂・綮(マヨヒガ・f04541)だ。暖かなオレンジの瞳を伏せた綮は、聖なる光を灯して涼香の傷を癒していく。
「かつては神のはしくれであった癖に、随分と俗世にまみれたものだ。忘れ去られた腹いせに、ひとを襲おうなどと」
 その様はまさに――、
 誰に言うでもない胸の内が、小さく落ちる。嘆かわしいことではあったが、起きたことはもはや誰にも止められないということは綮にもよく分かっていた。ひとが死ぬように、神も消えていく。
 けれど、だからこそせめて。
「寂しさを覚え、悲しみを覚え、憎しみに転じるほどにひとの子が作り出すざわめきを愛していたのなら、ひとの子の手で逝くと良い」
 せめてもの手向けとして、八咫はそう言って赤鳥居の魔方陣から三本足の鳥を喚び出す。大烏が生み出す暖かな陽の光は衝撃波を伴って妖狐に一瞬の隙を作ることができるだろうと、僅かな祈りを込めて、そして八咫は最後の一撃を仲間に託した。
 はたして、託された思いを受け止めたのは涼香だった。綮によって怪我も治してもらったおかげか、その体は軽く、涼香はまた狐火を供に前線へ駆けていく。
 そして。
「終わりにしよう、妖狐」
 嘆くのはいい。悲しむのもいい。けれど、憎しみは奉られていた己の矜持さえ傷付けてしまう。だからこれ以上傷つかないでいいように、願いを込めて。涼香はその怨嗟を断ち切るように大太刀を大きく薙ぎ、鬼火さえ覆い砕くほどの狐火をもって、その戦いの幕を下ろしたのだった。

 ――ぽつり、ぽつり。
 よく晴れた冬空にも関わらず、枯木の枝に雨粒が落ちた。
 ただの天気雨だ。けれど、これは。
「……害なす獣になったとて。嫁入りの娘を祝う、『雨』を降らす程度の力はあったのか」
 綮は空を見上げて、呆れたように小さく呟く。
 なんて美しい空なのだろう。きっとこの日に祝言を挙げるものは幸せになるに違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『勘解由小路・桔梗』

POW   :    無念の報復
【陰陽道の術で召喚した武器の群れ 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    信康招聘
自身が戦闘で瀕死になると【一体の強力な妖狐 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    知識の蒐集
質問と共に【指先から蝋燭の火程度の大きさの炎 】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠デナーリス・ハルメアスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Interval
「おや、おや。可哀想に。無念さえ晴らせずに死んでいくんだね」
 悲しいも、憎らしいも。死んでしまえば何もない。
 では、晴らせなかった無念はどこに行くのだろう。
 いつの間にか、鳥居の上に座っていた少女が猟兵たちを見下ろしていた。
 目が合えば少女はにっこりと笑みを浮かべて、音もなく鳥居の向こうへと降り立つ。
「君も可哀想だとは思わないかい?」
 まだ年若い、優しげな面立ちの少女だ。
 しかしその手に持つ和綴じの書物は、煌々と金色に輝く怪しげな光を揺らめかせていた。
 そして、同じように。月のような金色の瞳をにんまりと細めて、少女は問いかける。
「君だって、無念は晴らしたいだろう?」
白菊・誠
【POW】
そうだな、無念は大体晴らしてきた。
周りに迷惑もかけたし衝突もした。
その度に誰かに助けられたな。で?

銃撃スキルを駆使し二丁拳銃と狙撃銃で戦闘
飛び道具には高出力シールドを置いて防げるだけ防ぐが
銃弾でも銃身でも使える物は何でも使う

(以下の問いかけは、戦闘中に余裕があれば)
お前がやった事は、あの狐を助けたのか?
怒りを鎮め、嘆きを受け止め、共に歩む道を示したのか?
こうなる事を予想して、怒りを煽っただけじゃねぇのか?

相手が故意犯ならば怒りを露わにする
俺は、そういう奴が一番気に食わねえんだよ


枦山・涼香
晴らすべき無念とは何か。而して、如何に晴らされるべきか。
その本質を問わないあなたの言葉は、欺瞞に満ちていますね。
韜晦の果てに滅ぶがよろしいかと。

狐火を周囲に漂わせ、大太刀を手に少女と対峙します。
せいぜい【存在感】たっぷりに、派手に暴れて少女の意識を引き付け、仲間たちへの援護を。
苛烈な【殺気】と共に斬りつけ、敢えて受けさせて隙を作ります。その意図を察して手を抜くなら、深く踏み込んで【捨て身の一撃】を放ち、後悔させてやりましょう。

少女が大量の武器を召喚したなら、狐炎疾走にてその全てを燃やし尽くします。

妖狐の無念を代わりに、などとはおこがましい。
わたしはわたしの怒りで以て、あなたを斬りましょう。



●冬来たりならば
 雨はまだ、降り止まない。
 頬に伝う雨粒が消えた鬼火の名残を思わせるようで、それ故に少女の優しげな笑みが胸の内を波立たせる。白菊・誠(最前線の狙撃手・f05924)は隠すことなく顔を歪めて鼻を鳴らし、吐き捨てるように答えた。
「ーーそうだな」
 けれど。
 それは決して、少女に応えるためのものではない。
 糸雨のその先を見据えるように目を細め、誠は手にした二丁銃の銃口で少女を捉えた。
「だが、終わったことだ」
 言うが否や放たれた、誠のクイックドロウによる熱光線は鋭い直線を描いて対する少女ーー勘解由小路・桔梗を貫かんと迫ってゆく。それでも桔梗の笑みは依然として崩れることなく、熱光線はひらりと舞うような仕草で避けられしまった。
 しかし、その直後。
 突如としてそこに現れたかのように急激に発せられる存在感と殺気に桔梗が気付いたときには、目の前に大太刀の刃が迫っていた。
「あなたの言葉は、欺瞞に満ちていますね」
 ーー韜晦の果てに滅ぶがよろしいかと。
 退こうとするが遅く、桔梗の腕を斬りつけた大太刀。その持ち主である枦山・涼香(烈華なる黒狐・f01881)もまた、凛とした表情でそう告げた。
 誠がまず放ったクイックドロウは、撃ち抜くためでもなければ威嚇でもない。涼香を視線から隠すためのものだったのだ。熱光線による光の軌道に隠れて、距離を詰めていた涼香の一太刀は確かに裂き、見事な連携をもってして初撃を通した誠と涼香はそして更なる一撃を入れるために、武器を握り直す。
「ああ、痛い。ああ、ひどい。君たちは狐が可哀想ではないの?」
 傷付いた腕を見下ろした桔梗は、怪しげな煌めきを瞬かせて笑う。傷付けられたならばその分だけ、返さなければ。桔梗が持った和綴じの書物が捲られたその次の瞬間には、じゃらりと鈍い音を立てて数多の武器が群れを成してその切っ先を2人に向けていた。
「可哀想だからなんだ?  じゃあお前がやったことは、あの狐を助けたのか!?」
 桔梗の言葉には何の意味もない。怒りを鎮め、嘆きを受け止め、共に歩む道を示すこともない。ただただ、狐の怒りを煽っただけではないのかと誠は声高らかに吠える。お前のような奴が1番気に食わないのだと、その瞳は確かな怒りを映していた。
 そしてそれは、涼香もまた同じく。静かに大太刀を構え直した涼香は、此方に向けられた数多の武器に怯むことなく桔梗へ宣言してみせる。
「妖狐の無念を代わりに、などとはおこがましい。わたしはわたしの怒りで以て、あなたを斬りましょう」
 その言葉が合図となり、桔梗から一斉に放たれた武器の種類はそれこそ多く、一貫性はまるでない。ただ殺傷力のみに特化したした無銘のものばかりが、本来の使い道さえ無視して弾丸のように宙を駆ける。
 その中で、誠と涼香は僅かな間の中で互いに目配せをすると、お互いに走り出した。
「蒼炎よ、我が妖気を糧として燃え上がり、彼奴らを黄泉路へと導きなさいーー!」
 何ひとつ残らず、すべてを燃やし尽くせと放った青白い狐火を筆頭として、涼香はあらん限りの力を持ってして向かう武器という武器を斬り落とし、狐火を燃やして桔梗へと迫る。
「そのまま突っ込め、涼香!」
 そして。誠の放った銃弾が再び道を作り、涼香による捨て身の一撃は桔梗目掛けて、力強く振り下ろされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
【POW】
【心情】
晴らせぬ無念は怨念となる
我等はそれを糧に戦うもの
貴様の血肉もまた我等の怨念と交わり糧となろう

【行動】
呼称ベリザリオ(f11970)と共闘
敵の攻撃を「視力」と「第六感」を働かせて捕捉
ベリザリオと互いの視界や斜線を邪魔しないよう立ち回る

【戦闘】
「先制攻撃」で「影面」を使用
拘束に成功したら「ダッシュ」で接近し「串刺し」
敵の攻撃は「範囲攻撃」の「なぎ払い」と「殺意の炎」落とす
可能な限り回避・防御行動は少なく攻撃の手数を増やす
落とせない攻撃のみ「見切り」回避
回避が難しいなら「武器受け」で防ぐ
武器が届く距離での直接攻撃は「武器受け」と同時に「カウンター」を狙う


ベリザリオ・ルナセルウス
哀れと思うなら何故救いの道を示さなかったのです
徒に憎しみを駆り立て争いを呼ぶ
そのような事をこれ以上許す訳にはいきません

●目的
織久(f10350)と共に戦い彼を守る
無念、いやもはや怨念は呪いとなって西院鬼を駆り立てる
彼等のような生き方を強いるあのオブリビオンは倒さなければ

●戦闘
織久が戦いやすいように敵の目を引き付けよう
味方を【鼓舞】してあえて目立つように【祈り】を口にする
おびき寄せが成功したら【鈴蘭の嵐】で攻撃しながらチャンスを作る
織久が危険な時に技能で守れない時は【無敵城塞】で守る
あの書物を【武器落とし】で狙えるだろうか
織久の攻撃に合わせて狙ってみよう



「哀れに思うなら、何故救いの道を示さなかったのですか」
 きっと問いかけたたところで、意味を成さないのだろう。それでも問わずにはいられなかった。
 ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)は桔梗の行く末さえ偲ぶように僅かな間、目を伏せる。徒が更なる憎しみを駆り立て、争いを呼ぶというのなら。そのようなことをこれ以上許す訳にはいかない。これ以上、 野放しにはできない。そうして彼が次に目を開けたときーー覚悟は、もう決まっていた。
「何故、何故かって? 簡単なことだよ。救いなんて、初めから求めていないのさ」
 刀身が淡く煌めく誓いの剣を構えたべリザリオを前にした桔梗の損傷は既に激しいもので、そこに笑みはもう見えない。ただ、月のような金色の瞳が静かに前を見つめている。
 そして、過去の残滓であるオブリビオンに救いなどありはしないと語る桔梗が、痛みに震える指先で煌々と輝く頁を捲れば、瞬く間もなくまるで初めからそこにいたかのように桔梗の背後に見知らぬ男が立っていた。
「私たちはただ探しているだけ。私たちはただ、答えがほしいだけ」
 ガキン、と激しい音を立てて剣戟が鳴る。べリザリオが気を引く間に先制攻撃を仕掛けた西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)の一撃を見知らぬ男ーー妖狐、信康が斬り結び、刃を交えた音だ。その剣を押し払うように薙いだ織久は、明確な殺意を灯した瞳で信康を睨み上げ、再び殺意の炎を燃やす。
「晴らせぬ無念は怨念となる。我等はそれを糧に戦うもの。ーー貴様の血肉もまた、我等の怨念と交わり糧となろう」
 それ以上の問答は無用だと、その瞳は語っていた。織久にとって目の前のものは倒す敵でしかなく、その怨念も自らの糧に過ぎない。べリザリオの祈りを背に、織久は黒い炎を唸らせ猛攻を仕掛けていく。
 そんな織久を援護するように、べリザリオをまた剣を鈴蘭の花びらへと変化させ嵐を巻き起こす。敵が妖狐を召喚しても、数多の武器を召喚しても。彼の守るという意思が尽きない限り、その刀身が曇ることはないのだろう。
「……そうとも、そうだとも。無念は怨念となる。だからこそ、痛みの数だけ痛みを返そう。その報復こそ、答えを得るための道標となるのだから」
 じゃらりと鈍い音を立てて、数多の武器の群れがまた補充されていく。己の限界が近いことに、桔梗も気付いていた。
 悲しいならば。痛ましいならば。その分だけ、悲しみと痛みを返さなければ。怨念と消えていく前に、無念を晴らさなければ。それは雨と消えた妖狐にも、桔梗にも言えること。失くしたものはもう戻らないけれど、そうすれば、きっと答えに辿り着けると信じて。
 そうして放たれた武器の群れは、しかしべリザリオの無敵城塞が壁となり、織久へは届かない。あらゆる攻撃を防ぐかわりに身動きが取れなくなるその技は、まさにべリザリオの覚悟の表れと言っても過言ではないのだろう。織久を守り、そして鼓舞する彼はそして、戦況を冷静に見据えて織久へ道を示す。
「ッ織久! 本だ、彼女の持っている本を狙え!」
 怪しげに煌めく、和綴じの書物。瞬間、その言葉に狙いを変えた織久の太刀筋を防ぐように信康もまた織久へ向けて牙を向く。
 けれどーー怨念と殺意の炎を燃やした織久の速さを前にして、時は既に遅く。黒い炎は書物を燃やしていった。
「あぁ、ああぁあッ……!」
 書物は見る見るうちに黒く焼け焦げ、燃えていく。たちまち、劈くような悲鳴が上がった。それは他でもない、桔梗の声だ。まるで書物を燃やす炎が乗り移ったかのように、彼女もまた黒く染っていく。あれほどあったはずの数多の武器も消え失せ、信康も同じように薄らと消えていってしまう。黒ずむ自らの顔を抑えた桔梗は獣のように唸りながらも、その金色の瞳は未だ輝いていた。
「まだだ、まだ、まだ……! 私たちはまだ、」
「ーーいいや、これで終わりだ」
 音もなく。燃え崩れた書物を両断する最後の一太刀は、あまりにも呆気ない。目を見開いて消えていった金色の残像を瞼の裏に焼き付けて、そして織久は煤を払うように『黒椿』を一振りし、べリザリオを振り返る。
 怨念は尽きない。血は絶えない。狂気は変わらず、胸の内で渦巻いている。けれど、いつからか共にある存在を少なからず認めているからこそ、共に戦い続けていくのだろう。あらゆる無念を越えて、怨念を糧として。今日も、きっとこれからも。

 いつの間にやら、雨は雪に変わっていた。
 触れれば消える程度の小さな雪は、空が茜色に染まる頃には止んでしまうだろう。手のひらの熱に消えていく雪を2人は少しの間目に収め、そうしてゆっくりと踵を返していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『狐の嫁入り』

POW   :    紙吹雪や折り鶴シャワーを撒く

SPD   :    花嫁行列が来るよ、と先々に告げて回る

WIZ   :    行列に合わせて音楽を奏でる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Interval
 空が茜色に染まる頃。
 雨と雪を越えた冬の空は綺麗に晴れ、美しい色の向こうで太陽が沈んでいく。
 さわさわとざわめく木々の間で、誰かが笑った。
 花嫁行列が来るよ。
 もうすぐ、花嫁行列が来るよ。
 花嫁行列。それは神前式を挙げる神社の境内で執り行われる参進の儀のことだ。
 そうして聞こえてきた、美しい笛の音や太鼓の音。ざわめきの向こうを見れば、美しい婚礼の衣装を身にまとい野点傘の下で寄り添う夫婦が、穏やかな足取りで境内を進んでいた。その後ろを歩く大勢の参列者たちもまた、花嫁行列の一員なのだろう。
 花嫁行列が来たよ。
 ほらほら、もうすぐはじまるよ。
 ざわめくように、木々が揺れる。境内にはその過去と現在、そして未来が合わさる祝福の瞬間を祝おうと、たくさんの参拝者が訪れていた。猟兵もまた、そのうちのひとりである。

 さあ、祝おう。
 新たな門出、新たな夫婦の未来。
 美しい音楽と、美味しい馳走を添えて。
 花嫁行列はまだ、始まったばかり。
襲祢・八咫
子供たちと、折り鶴でも折ろうか。
色とりどりの折り紙広げて、両隣にも膝にも子供をくっ付けて、背中に伸し掛る子供もそのままに。
嗚呼、よく出来た。気持ちの篭もった良いものだ。お祝いは大切だからなあ。
どの子もどの子も、良い子だ良い子。幸せになって欲しいと願う彼らのように、純粋な気持ちを持ち続けたいものだ。
おれは、人の子を恨むようにだけは、なりたくない。そうなるくらいなら、逸そのこと壊れた方がマシだ。
あの狐も、……昔は、きっと。

折り鶴に混ぜて、こっそり作った狐の折り紙。
桜の花が咲き誇る和紙で愛らしく。誇らしげに尾を振って。

さ、お前も祝ってお行き。

小さな狐が、折り鶴に混ざって花嫁に降り注ぐのを見守った。


ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
さっさと離れようとする織久(f10350)を捕まえて結婚式を見て行く
こんな機会はめったにないよ
私のワガママに付き合ってくれないか
だめかな?
と、笑顔で誘う
(君が無条件に慕ってくる相手に弱いと言うのは知っているんだ)
(君の父君もそうだったからね)

●行動
今のダークセイヴァーでは結婚式などあるかさえ分からない
違う世界の事でも嬉しいものだね
邪魔にならないようにそっと【祈り】を捧げよう
ほんのすこし、そよ風くらいの鈴蘭の嵐で花を添えてもいいだろうか?
二人の未来に幸福を
憎しみの果てに消えていったものたちに鎮魂を
例えいつかはまたオブリビオンとして甦るとしても、一時の安らぎを願いたい


西院鬼・織久
【POW】
【心情】
ベリザリオが笑顔で圧を掛けて来る
どうせ見たがるだろうとは思っていましたが
俺は祝福をするには少々血腥すぎます

【同行】
呼称:ベリザリオ(f11970)

【行動】
ベリザリオに付き合うが祝福を行うのは遠慮する
祝言を寿ぐならそう言った気持ちを持っている者がすべき
常に怨念と殺意を持って敵を求める自分はよろしくない
そんな思いで紙吹雪や折鶴を持ってうっかり燃やしたくない
ただベリザリオの楽しみを邪魔しないように控えておく


閂・綮
◾️アドリブ歓迎
【SPD】

提灯の光が揺れている。
自身の草履が霜を踏む音がする。

花嫁道中は、はるか後方。
ゆっくりと進む男女を背に、夕日色の瞳を細めた男は告げた。

「花嫁道中が通る。お前達も祝ってやってはくれないか」
「日は間も無く沈む。必ず寒さを凌げる装いにしておくがいい」

“そう言う兄さんは 一一 花嫁か、花婿どちらかかの血筋かい。”

問われれば、否、と答える。

「我は、あの2人とは縁の無い男だ」

“…なんだいそりゃあ。あんたは随分と世話好きなようだ。”

「なに、我は賑やかな催しを好む。それから、素直に祝えぬものの代わりでもある。一一 例えば、」

(あの狐のような、ものの代わりに)


都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

雨雪の名残に濡れた路は
茜陽に眩い光を返し
行列を一層煌かせる

クリスさんと参拝
祝言の紙吹雪が輝く様子に細める双眸

幻想的で美しい光景
けれど
二人で確かな明日を築いて行く、誓いと約束の道のりでもある

折角ですし
私も一詠差し上げましょうか
…クリスさんは合わせて踊ります?

楽し気に笑んで
篠笛に口唇を添え
寿ぎを贈る

奏でる楽は
柔い雨の如くしっとりした調べから
葉露の弾ける軽やかな様
やがて
春空に舞う花弁のようにゆったりと穏やかに変調

何某かの命や想いがある限りは絶えぬ負の感情
業の深いものだけれど
清らかに転じることも叶う

嘗て何処かで泣いていた誰かの苦しみが昇華されますように
そして
花嫁達の未来に

沢山の祝福を



●春遠からじ
 茜色に染まる空の下で、美しい笛の音が伸びやかに響いている。
 あらたかな祝いと祈りが向けられた心地いいざわめきの中で、ひらひらと舞い散る紙吹雪や折り鶴は殊更に華やいで見えることだろう。薄らと灯された提灯さえ境内を美しく染めあげ、花嫁行列の道を鮮やかに照らしているのだから。
「織久、こっちだよ」
 花嫁行列を見ようと参拝者に紛れたベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)は笑顔を浮かべ、肩越しに振り返る。捕まえた手のひらは放さずに、優しくも強かに手を引いて歩いて来た参道の脇。気が引けた様子の西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)もまたつられるように歩きながら、べリザリオから掛かる笑顔の圧を感じて僅かに眉尻を下げる。
「……俺は祝福するには、少々血腥すぎます」
「そう言わずに。こんな機会は滅多にないよ」
 偶のわがままに付き合ってくれよ、と囁いてべリザリオまた小さく笑う。
 本当は、言わずとも分かっているのだ。織久の無条件に慕ってくる相手に弱いところは、父君によく似ている。思えば振り払うことだって出来ただろうに、こうして付き合ってくれる織久の優しさに触れるのが嬉しくて、嬉しくて。
「べリザリオ、」
「いいんだ。ただ、隣にいてくれれば」
 ただ、共に見たかっただけ。言葉を飲み込み、べリザリオは前へ向き直る。祝言を寿ぐならそういった気持ちを持っている者がすべき、という織久の気持ちも察していたけれど。いまだけ、気付かないふりをして。
 そして目を伏せて、舞い散る紙吹雪と折り鶴に鈴蘭の祈りを捧げる。夫婦の新しい門出を祝うと共に、憎しみの果てに消えていったものたちの安らぎを願って。
「ーー、」
 祈りを捧げるべリザリオを横目に、織久もまたそっと目を伏せる。祝うことも、祈ることも自分には程遠い。だからただ、いまだけは、優しい沈黙を風に乗せて。

 紙吹雪の舞う参道から少し離れた軒の下。
 ひらりと風に舞った真白い鈴蘭の花びらを捕まえて、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)は顔を上げる。雨雪の名残に濡れた路は、茜色の光を返して花嫁行列をより煌めいて見えるようだった。
「……幻想的ですね」
「そうだね。心に残る、素敵な光景だ」
 赤い野点傘の下で、角隠しに白無垢を着込んだ花嫁はそれは美しく、何より幸せそうに見えた。
 しずやかな青磁色の双眸を細め、隣で微笑む都槻・綾(夜宵の森・f01786)に同意するようにクリスも遠くを見やる。花嫁と花婿が歩く誓いと約束の道のりは明るく華やかで、見ているだけで此方も柔らかな気持ちになれるというものだ。
「折角ですし、私も一詠差し上げましょうか」
 いつの間にか手にしていた篠笛を見せて、綾は楽しげに笑む。クリスさんも、合わせて踊りますか?
 その問いかけには、猫目を瞬かせたクリスも思わず笑ってしまった。とんでもない、と手を振って、それから一歩下がったらかしこまったお辞儀をひとつ。
「せっかくの演奏だ。観客がいなくては勿体ないだろう?」
 新たな夫婦に捧げられる寿ぎに、大人しく耳を傾けさせてもらおうとそっと先を促して。
 そうして奏でられはじめた演奏は、柔い雨のような調べから葉露の弾ける軽やかさを越えて、春の空に舞う花びらのような穏やかな調べまで。
 変わりゆく音色は、絶えない負の感情さえ清らかに転じることを願うように、優しく境内に響き渡る。
 その演奏には拍手さえ、きっと無粋なものだろう。青磁色と目が合えば、微笑みがまたひとつ。2人はそして、祝福の詠と共に夫婦の門出を見送るのだった。

「おにいちゃん、どうやったらキレイに折れる?」
 美しい笛の音と祝福が込められたざわめきの中で、きゃらきゃらと子供たちの笑い声もまた境内を賑わせていた。
 幼い子供にそう問いかけられた襲祢・八咫(導烏・f09103)は、背中に子供が伸しかかろうとも穏やかに、丁寧に折り鶴の折り方を教えてあげている。色とりどりの折り紙と子供たちに囲まれて、八咫は薄らと笑っていた。
「嗚呼、よく出来た。気持ちの篭もった良いものだ。お祝いは大切だからなあ……」
 どの子もどの子も、良い子だ良い子。
 完成した折り鶴を見せては褒めてとせがむ子供たちを端から優しく撫でては、八咫は思うのだ。幸せになってほしいと願うこの子らのように、純粋な気持ちを持ち続けたい。人の子を恨むようにだけは、なりたくない。そうなるくらいなら、いっそのことーー、
 くい、と袖を弱く引かれ、はっとしたように八咫は子供を見下ろす。まろくやわらかな笑顔が、八咫を見上げていた。
「おにいちゃんも、いっしょに飛ばそう!」
 いっしょに折ってくれて、ありがとう。と八咫を参道の側へ連れていく子供の手はあたたかい。そのぬくもりを忘れぬように優しく握り返して、八咫も子供たちに倣うように空を見上げる。
 ひらり、ひらひらと。舞い散る紙吹雪と折り鶴の中に、狐の折り紙を混ぜて。
「ーーさ、お前も祝ってお行き」
 桜の花が咲き誇る、柔らかな色の和紙で愛らしく。誇らしげに尾を振る狐を見送って。春の足音に耳を澄ませて。八咫はそうして、降り注ぐ祝福を見守った。

 やがて茜色の空が黄昏に傾きはじめても。花嫁行列はまだ終わらない。長い長い参道を通り、ようやく幸福な男女は未来を約束する赤い糸で結ばれるのだ。
 そんな幸せを紡ぐ花嫁道中は遥か後方。笛の音も遠く、さわさわと木々がざわめく中で草履が霜を踏む音が鳴った。
「花嫁道中が通る。お前たちも祝ってやってはくれないか」
 提灯の光が白い髪を照らす。目には見えない、けれど確かにそこにいる何かに話しかけたのは閂・綮(マヨヒガ・f04541)だった。
 花嫁が来るよ。もうすぐ来るよ。
 さわさわと、木々にざわめきが広がっていく。その様を見つめて、綮はオレンジ色の瞳を瞬かせた。
 花嫁か花婿の血筋にも縁はなく、ここにいる誰にも彼にも縁は紡がれていない。けれど、綮は花嫁道中の先々に告げて回るのだ。どうか、祝ってやってはくれないか。
 それは自身が賑やかな催しを好む故でもあり、ただの世話好きのようでもあり。そしてそれは、
「素直に祝えぬものの代わりでもある。一一 例えば、」
 あの狐のようなものの、代わりでもある。
 綮がそうして願いを乗せれば、木々もまた応えるようにさわさわと葉を揺らしていく。花嫁が来るよ。花嫁がーー春が、来るよ。

「……ああ、」
 空気は未だ、冬の吐息のように冷たい。
 けれど。
「春はそこまで、来ていたのだな……」
 提灯の灯りに照らされた、細枯れた木の枝の先。
 ふくらと丸くなった桜の蕾を見つけて、綮はそっと目を細めて笑った。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月28日


挿絵イラスト