アルダワ魔王戦争2-B〜ぷにっとひしっと橋渡り
「皆、お疲れ様。さて、迷宮の探索はどんどん進んでいるようだよ」
グリモアベースに集まった猟兵へ、ネルウェザ・イェルドットは感謝の意と共にそう告げる。彼女はアルダワで発生している魔王戦争の状況を整理しつつ、モニターを手にして話を始めた。
「まずこれを見てほしいのだけど……」
ぽん、とモニターに映るのはアルダワの迷宮――その中に広がる大きな地底湖。明らかに何かが泳いでいるような水面の揺れが目を引くが、ネルウェザはそちらではなく湖の上を指して続ける。
「この地底湖には大きな橋が架かっていてね。今回はここを渡り、迷宮の奥へと進んで欲しいんだ」
しかしモニターの映像を眺めればその橋は大きく揺れ動いており、とても安全に渡れるものでないことが伺える。わざわざ、そんな危険な橋を渡る必要があるだろうか。
ネルウェザはそんな意見を予測してか、モニターをとんとつついて『橋を渡らなければならない理由』を明らかにする。
映像を横切る人影。じれったい、と言わんばかりにその影が翼のようなものを広げて、橋から飛び上がれば。
――ざばっ!! と、突如湖から巨大な魚が飛び出す。よくよく見ればそれは生き物に非ず、どうやらアルダワの蒸気文明を利用した機械仕掛けの魚であることが分かった。
「……と、このように橋から離れれば湖からデカいのが飛び出して喰らいついてくる。災魔の攻撃と同じかそれ以上の威力はある筈だから、できれば食らわないように気をつけてくれ」
つまりは、これも危険な任務となる。ネルウェザは申し訳無さそうにそう続け、片手にグリモアを浮かべながら猟兵の参加の意志を問う。
それでもグリモアベースに残り頷いてくれた猟兵に笑みを浮かべると、彼女はグリモアに光をふわふわと纏わせて転送の準備を始めた。
「当然といえば当然なのだけど、この橋にも災魔が待ち構えている。渡るのに邪魔だろうしそもそもオブリビオンだし……退治しつつ、奥へ進んで貰えると助かるよ」
よろしくね、というネルウェザの言葉を最後に猟兵の視界が切り替わる。
真っ白な視界がすうと晴れれば――そこには、広い広い地底湖とその上に架かる大きな橋が見えた。
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ぷに、ぷに。
もち、もち。
大きく揺れる橋の上で、丸っこい何かがうごめいている。
おそらくこのエリアに住み着いている災魔だろう。大きなウミウシのような彼等はしっかりと橋に張り付いて、右へ左へぷにぷにと移動しては道を塞いでいた。
湖の向こうへ渡るため、彼等を倒しながら進まなければ。
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。
今回はアルダワで災魔を倒しつつ地底湖にかかる橋を渡る、戦争集団戦シナリオです。
このぷにぷにもちもち災魔はしっかり橋にくっついて道を塞いでいる上、猟兵の進路を妨害してきますので退治してください。
揺れる橋から落ちないような策、もしくは災魔を橋から落とす策があると有利になります。
※災魔、猟兵ともに橋から落ちれば魚に喰われます。
※空中を飛んだり吹き飛ばされて宙を舞ったりすれば魚に喰われます。
お気をつけください。
それではプレイングお待ちしております!
第1章 集団戦
『ユキウサギウミウシ』
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POW : あそんで
【ミニぷにぷに】【ミニもちもち】【ミニつるつる】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD : ともだち
自身の身長の2倍の【めっちゃ移動が早いシロイルカ】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : ぶんしん
レベル×1体の、【背中】に1と刻印された戦闘用【自分の分身】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
イラスト:橡こりす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
可愛いのは卑怯なのでは…!?(第一声
飛べない分【ダンス】の容量でバランス取り
橋の動きに合わせてステップ踏んだり体重の掛け方を調整
食べられるのは嫌だし注意しないと
でもできれば甘やかしたい…あ、そうだ
【指定UC】を発動
大量の分身達をウミウシさん達の隙間を埋めるように殺到させ
敢えて道を詰まらせますね!
詰まってれば突然体当たりはできないでしょ
もふもふダイブの誘惑には耐えつつ
時間稼ぎに砕いた★飴をばらまきウミウシさんをなでなで
敵も分身出したら更に詰まるねこれ、天国だね
あんまり増えると落ちちゃうぞー?
満足したら【破魔】を宿した光の【範囲攻撃】でまとめて浄化
食べられて終わるより…この方が怖くないよね、きっと
ふにふにと動く災魔、ユキウサギウミウシ。彼等がうごめく橋に一歩踏み出すと同時、栗花落・澪はふにゃりと表情を緩ませて声を上げた。
「可愛いのは卑怯なのでは……!?」
災魔であり猟兵の邪魔をする敵とはいえ、澪の思考には目の前のぷにもちウミウシを魚の餌にしたり、力技で駆逐したりなどという案は微塵も浮かんでいなかった。
寧ろ、できれば甘やかしたい――そんな事を考えて。
「……あ、そうだ」
澪は揺れる橋をダンスの要領でたんたん進むと、ウミウシ達に近づいてユーベルコードを発動する。現れた小さな天使、手の平サイズの澪の分身たちは魚に狙われないよう翼を封印させつつ、わわわわーっと増えて、増えて、増えて。
「むゅっ!?」
ウミウシはぴくりと澪の方、向かってくる彼の分身達に驚いた様子を見せる。そしてむにむに動いて体当たり――を試みるが、橋の上はみるみるうちに殺到する分身に埋め尽くされ、勢いをつけるどころか思うように動けなくなってしまっていた。
「ふにふにふにー!!」
ぷんすこぷんすこ、丸っこい身体でもがいてなんとか怒りらしき感情を表すウミウシたち。
澪はもふもふがみっちりと詰まるそちらへ飛び込みたい衝動をなんとか抑えつつ、手元で軽く飴を砕きながら橋を進んでいった。
「ふにぃっ!!」
動けないウミウシたちは突如、きゅっと力をこめて分裂する。
数で圧してやるということだろうか。橋の上はウミウシと天使の分身でぎゅうぎゅうに溢れ、いつの間にやらもふもふもにもにの天国と化していた。
「はぁぁ可愛い……!」
澪は思わず飴をばら撒きながら、ウミウシに近づいてその頭を撫でる。増えすぎて落ちそうになるウミウシをぽんと橋の上に戻しつつ、澪はあんまり増えると落ちちゃうぞ、と彼等に微笑んだ。
――そして。
ウミウシ天国を味わいきった澪は、橋の向こうに目を遣って。
「食べられて終わるより……この方が怖くないよね、きっと」
「ふに?」
きょとんとするウミウシを最後に一度撫で、澪はそっと力を籠めていく。
すると彼の身体からふわりと光が広がり――アルダワ迷宮の地底湖は、瞬時に眩く優しい光に包まれた。
増えたウミウシたちは浄化されていき、蒸発するように消えてしまう。橋の上が寂しいほどに静まり返れば、澪は迷宮の奥へと進んで行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
こう言うステージ、見た事あるんだよなー。
サ〇ケだっけ、た〇し城だっけ……?
どちらにせよ、その渡る先に敵が居座ってるってのは
見た事なかったね。
ま、頑張ってへばりついてるだけならなんとでもなるさ!
飛び移る前の振り子の足場から、ウミウシたちの様子を観察して
しっかり『情報収集』。
そうして奴らをしっかりと「認識」したら、
【縁手繰る掌】でアタシの手元に強制転移させるよ!
引き寄せたウミウシがビックリしている間に、
『念動力』で湖の方へポイっと落とす。
後は魚が美味しくいただいてくれるだろ。
何度か同じく繰り返して足場が空いたら、
『ダッシュ』と『ジャンプ』でテンポよく渡っていくよ!
アトシュ・スカーレット
【アドリブ、連携大歓迎】
か、可愛い…!!
お持ち帰り厳禁なのは百も承知だけどこれは…!!!
落ちたくないから慎重に行動するね
昔、吸血鬼の館に【盗み】に入った時の感覚でいいかな…??
【夢幻式・煌式】でたくさんの蝶を出すよ!
オレのUC、攻撃型多いし、橋から落ちた時の保険として別のUC使いたいけど、今回ばかりは仕方ない…!!
蝶たちが出す【催眠術】にかかる鱗粉で酔った状態にするね
蝶達にはなるべく橋から落ちるように誘導してもらうね
オレのいる方向に攻撃してこないといいけど、もし来たらRauchで撃って攻撃かな
【カウンター】気味になりそうだけどね
君らの最大の攻撃はその可愛さでは…???
「こう言うステージ、見たことあるんだよなー」
ぐわんぐわんと揺れる橋に、アクションゲームやテレビ番組の画面を重ねる数宮・多喜。とはいえ、キャラクターや人があの手この手で進むステージにみっしりとウミウシが蠢き居座っている、というのはなかなかに珍しい光景であった。
そして、そんなみっしりウミウシに目を輝かせる猟兵が一人。
「か、可愛い……!!」
アトシュ・スカーレットは思わず一歩、ウミウシたちの方へ近付こうとする。
いやいや、これは災魔でありオブリビオン。お持ち帰りなど厳禁――そんなことは百も承知とアトシュの手がぴたりと止まるが、彼の表情は何時もより心なしか緩んでいるように見えた。
そして、ぐわんと一度橋が大きく揺れる。多喜とアトシュが咄嗟にバランスを保とうとする中、ウミウシたちは何ともない様子でふにふにと蠢き――ふと、猟兵の姿に気づいた。
「むゅーっ!!!」
二人を敵、と認識したのだろうか。ウミウシたちはひとつふたつと分裂しながら、橋を這って勢いよく突進を始める。彼等の下に現れたシロイルカはその突進の速度に拍車をかけ、猟兵を橋から追いやらんとふにふに力んでいた。
向かってくるウミウシの大群を迎え撃つべく、アトシュはユーベルコード『夢幻術・煌式』を発動する。
「煌きの羽持つ蝶にご用心!」
ばっ、と三百を超える蝶が羽撃いて。
「むゅむゅ!?」
アトシュの操るままに蝶は橋を低く舞う。振り撒く鱗粉がウミウシたちを覆うと、僅かに彼等の動きが鈍っていくのが感じられた。
その瞬間を見計らい、多喜がすかさず手を掲げユーベルコード『緑手操る掌』の力を放つ。
「――捕まえた!」
突如、ふっとウミウシが数体姿を消し――多喜の目の前に転移する。
アトシュの蝶が放った鱗粉の催眠に加え、突然敵の眼前にテレポートしたウミウシたちは完全に混乱しているようだった。
そのまま、多喜は念動力でウミウシたちを橋の外へ放る。
「後は魚が美味しくいただいてくれるだろ!」
「むゅぅぅーーーっ!!!」
ウミウシはまん丸の身体でじたばた暴れるが、なす術もなくぽーんと広い湖面へとダイブしていってしまった。
すると案の定湖からは巨大魚が飛び出し、落ちたウミウシたちを一呑みにしてしまう。アトシュは少し残念そうにそれを見つつ、橋の上に残るウミウシの方へ向き直った。
「むゅむゅむゅ!!!」
ウミウシたちは仲間の仇、と言わんばかりの勢いでアトシュと多喜の方へ突進しようとする。
しかし周囲を舞う蝶が彼等を惑わせ、多喜がぽいぽいと湖へ放れば、その数はみるみるうちに減っていってしまった。
――そんな中。
ばっ、と一体のウミウシがなんとか自我を保ってアトシュに飛び掛かる。
最後の力を振り絞った捨て身の一撃。が、しかしそのぷにぷにもちもちの体は――あまりにも、可愛かった。
「君らの最大の攻撃はその可愛さでは……???」
「むゅーっ!!」
アトシュの言葉を理解しているのか否か、ウミウシは更に突進に力を込める。ぎゅうんと向かってくるウミウシへ、アトシュは蒸気ライフル『Rauch』を構えて。
――どむっ、とウミウシは弾丸の衝撃を受け、湖へと落ちていく。
真下の湖面で高く水飛沫が上がる頃には、多喜が鱗粉に酔ったウミウシをすべて駆逐し終わっていた。
ぐらぐらと揺れる橋の上、アトシュは落ちてしまわぬよう慎重に足を踏み出す。
彼が吸血鬼の館へ盗みに入ったときの感覚を思い出しつつ進む中、多喜はその横を颯爽と抜け、テンポよく駆けて迷宮奥を目指すのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラリー・マーレイ
可愛い外見だけど、油断出来る程実力に自信は無いよ。全力でいかないと。
【死点打ち】を使う。【高速詠唱】で加速の呪文を唱えて先手を取るよ。
激しく揺れてても、こっちの思考速度が上がってれば相対的にゆっくりした揺れになる。落ち着いて足場を踏み締め前進。
長剣を構えて相手の急所を狙う。……急所ってどこだろう。軟体だから見切り難いな。でも、どんな生き物でも眉間……目と目の間は脳に繋がる『致命点』だ。オブリビオンだろうと当たりさえすれば神でも殺せる技。高速で一体ずつ倒していくよ。
敵の攻撃は落ち着いて【見切り】回避。足を踏み外しそうになったらウイングブーツで空中を蹴って立て直す。一歩ずつ確実に前に進んで行こう。
ふにふに、とうごめくウミウシたち。もっちりした球体は思わず手を伸ばしたくなるような可愛らしい外見だが――しかし彼等は災魔であり、世界の敵だ。
そんな存在に油断できるような自信はない。ラリー・マーレイはそう心の中で頷いて気を引き締めると、揺れる橋へ踏み出しながらユーベルコードを発動した。
「ペーザンメ・ヌーン・ターイ――」
彼が唱えるは『死点打ち』。呪文を詠み上げ自らの意識を加速させれば、ラリーの目に映る景色は本を一頁一頁捲るような速度で流れ出していく。
ウミウシひしめく振り子の橋を慎重に進み、大きな群れに近づいたラリーは長剣を携えて彼等の急所を――。
――ウミウシの急所ってどこだろう。
もにゅもにゅと動く軟体には、明らかな弱点に見える部位が見当たらない。見切り難いな、とラリーは僅かに目を細める――が、その一瞬などウミウシたちにとっては須臾も同然であった。
そして、ぶつん! と。
「ふみゅぅぅう!?」
ラリーの長剣がウミウシの眉間を貫く。
彼が狙ったのは目と目の間、生き物であれば脳に繋がる『致命点』。そこさえ穿つことができれば神すらも殺せるユーベルコードを纏った一撃は、瞬時にウミウシを骸の海へと還してしまった。
「むゅぅ!」
ウミウシは足元にシロイルカを喚び出し、加速してラリーを仕留めんと力みだす。しかし加速したラリーは軽くそれを躱すとすぐに剣を構え、的確にウミウシの眉間を狙ってその刃を突き出した。
次々にウミウシを潰していけば、だんだんと橋は向こう岸への道を開き始める。
ラリーが慎重にまた一歩、踏み出そうとしたその時であった。
ころりとウミウシの身体が橋の外へ放られる。同時にざばぁっと機械魚が飛び上がれば、振り子の橋は僅かにタイミングを遅らせて不規則な揺れを伝わせた。
「……っ!」
ラリーは投げ出されかけながらも、近くの空気を蹴ってすぐに橋に足をつける。
そして橋の揺れが安定するタイミングを狙って再び踏み出し――彼は、確実に迷宮の奥へと進んでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ミア・ミュラー
湖に、橋……?地下に、こんなにいろんな場所があって、ダンジョンって面白い、ね。
わたしは杖(武器)を杖(支え)にして揺れに耐えて、落ちないようにする、よ。足りなければ傘も杖に、する。
そのままわたしは動かずに、【火剣】を動かして遠距離から敵を攻撃する、よ。ん、ぷにもちは可愛らしいけど、わたしの世界ではそういうやつが一番、危ない。油断は、しない。近い敵から斬って燃やして、近づかれないように、する。数が増えたら、地面を燃やしちゃう、から。橋にくっついてる分、地面が燃えたら熱いし、簡単には逃げられない、よね?
こっちに来たやつはプリンセスハートをぶつけて、倒す。ん、揺れる橋も慣れてくると楽しい、かも。
テラ・ウィンディア
…おれ割と空中戦とか好きなんだけど…
まぁ…大地をしっかり踏みしめて進むのも悪くはないな
【属性攻撃】で炎を全身と武器に付与
【戦闘知識】を利用して可能な限り敵の陣形とか動きを解析
【第六感・見切り】を利用して揺れる橋の動きに可能な限り堪え耐える
それでも尚敵の攻撃が重なってふっ飛ばされそうな時は
槍で地面を【串刺し】にして耐える
その上で紅蓮神龍波発動
お前らみたいなのはこういうのは大体苦手なの知ってるんだぞ!
属性で纏った炎で強化した炎龍にウミウシを襲い掛からせる
確実に殲滅しやすいように複数の炎の龍にて集中攻撃で焼き尽くさせる
本当は機械仕掛けの魚にも挑みたいが…まずは邪魔するこいつらを殲滅するのが先だよな?
「湖に、橋……?」
振り子のように大きく揺れる橋を見て、ミア・ミュラーが小さな声で呟く。アルダワの地下迷宮に広がる光景に僅かな笑みを見せながら、彼女はトランプ模様のあしらわれたロッドをかつんと橋に突き立てた。
「っと……」
ぐわん、と橋が大きく揺れる。ミアはもう片手で傘を掴むと、バランスを保とうとそちらも橋に立てて重心を預けていた。
そして、もう一人。自分の得意分野である空中戦が封じられてしまう迷宮区域に、テラ・ウィンディアは少し残念そうに息をついて肩を竦めて。
「……まぁ……大地をしっかり踏みしめて進むのも悪くはないな」
そう割り切って、テラは携える紅龍槍と自らの身体に炎を纏わせる。激しい熱と共に彼女が一歩踏み出せば、湖の飛沫で濡れていた橋がしゅうと真っ白な蒸気を上げた。
薄い霧を裂き、テラはウミウシの群れ目掛けてユーベルコード『紅蓮神龍波』を放つ。
「お前らみたいなのは、こういうのは大体苦手なの知ってるんだぞ!」
瞬間、橋は真っ赤に灼けて口を開く。圧倒的な熱を帯びた炎は龍の形をとって飛び出すと、ウミウシの群れに向かって滑るように突進した。
ウミウシたちはぎょっとして飛び上がり――突如、負けじとふにふに蠢いて分裂を始める。そんな中でも橋は勢いよく揺れ動くが、体幹と勘を活かすテラ、ぺっとり貼り付くウミウシ、そして杖と傘に支えられたミアが振り落とされる様子はなかった。
「むゅっ」
大群になったウミウシは雪崩のように猟兵を襲おうとするが、大半が炎龍に呑まれてじゅうと焼き焦がされてしまう。残ったウミウシがぐるりと龍を避けるようにして猟兵を狙い始めたその時、後方で魔力を練っていたミアがふっとユーベルコードを発動した。
「其は炎……断ち切り、焼き尽くせ」
小さな口がそう紡げば、五十を超える炎の剣がウミウシを襲う。
「ふにぃぃっーーー!!」
じゅうじゅうと次々に焼けて潰れていくまん丸のウミウシを眺め、ミアは油断大敵、と言った様子で目を細めた。
「ぷにもちは可愛らしいけど……わたしの世界ではそういうやつが一番、危ない」
目の前のウミウシのような魅力的な見た目で惑わし、突如肉を喰らわんと牙を剥く敵のなんと多いことか。ミアは自分が生き抜いてきた世界を頭に過ぎらせ、警戒を強めて攻撃を続けていく。
剣の雨を抜けてウミウシがミアの元へ辿り着きかけたかと思えば、すかさず彼女のプリンセスハートがその身を射抜いて弾き返してしまった。
龍が纏めてウミウシを焼き、剣が散らばるウミウシを貫き、橋は炎に蹂躙されていく。
「ん、揺れる橋も慣れてくると楽しい、かも」
ミアがそう呟き、杖や傘にかける力を緩める頃。
白に埋め尽くされていた橋は一転――真っ黒な災魔の骸に覆われ静まり返っていた。
そして、ふと。
ぼちゃん! と黒焦げウミウシが高い水飛沫を上げてひとつ湖へ落ちていく。直後巨大な機械仕掛けの魚が飛び出しそれを噛み砕けば、テラは少し興味深そうに橋の下に目を遣った。
「本当はあれにも挑みたいが……」
しかし、今やるべきことは。
テラは首を振って任務の目的を思い出すと、黒焦げウミウシの間を縫って橋を駆け抜ける。ミアもかつんかつんと杖を鳴らして橋を渡りきり、二人は迷宮の奥へと進んで行くのであった。
大成功
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