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蟲姫討滅伝

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 島国エンパイアの西の方。
 難攻不落とされる山城を仰ぎ見る小さな町に、どんと据え付けられた立て札一つ。

 ――剣術弁舌神通力等々、一芸に秀でし者求む。

 どうやら、山城のお姫様の退屈を紛らわせる人材を集めているらしい。
 噂は千里を走り、既に何組かの旅芸人一座が城に召し出されたと町人は語るが――。

●猟兵一座にお頼み申す
「――なんと、お姫様はオブリビオンだったのです」
 グリモア猟兵の一人“テュティエティス・イルニスティア”は、一同を見回して言った。
「……まあ、私が皆さんにお話している時点で、そんな事は百も承知でしょうけれど」
 こほん。テュティエティスはわざとらしい咳払いを一つ挟んでから、説明を続ける。

 今回の依頼は、サムライエンパイアにある山城の一つを乗っ取った“怨霊姫”と、彼女に使役されている“腐怪の蟲”の討滅。
 姫は怨霊を用いて城主を操り、我が物とした城に篭って力を蓄えている。
 いずれ麓の町を始め、人里に危害を加えることだろう。そうなる前に手駒の蟲共々討滅すべきであるのだが……城の門扉は固く閉ざされており、険阻な地形も相まって正面から攻め入るのは難しい。
「そこで、皆さんには先の立て札を利用して頂きたいのです」
 札の前で人々から称賛を受けるほどの芸を見せられた者は、御前で披露させるべく城へ招かれる。内部に踏み込めば猟兵であることも知られるだろうが、しかし金城鉄壁の守りさえすり抜けてしまえば此方のもの。天守に居るであろう姫を追い詰め、討ち果たせるはずだ。
「……姫の前に、蟲退治の必要があるとは思いますが。ともあれ、まずは城に入れなければ退治も何もありません」
 オブリビオンを退けるのと同じくらい、全力で旅芸人に扮してください。
 テュティエティスは念押ししつつ、転送準備に移った。


天枷由良
 猟兵全員で旅芸人一座。
 一芸披露は基本的に個別で描写しますが、何人かで力を合わせて壮大な演目を作り上げる際は共通の組名をご記入下さい。
 芸の中身はサムライエンパイアっぽい感じでも、そうでなくても大丈夫。
 大事なのは人々を驚嘆させられるか。どかんと一発思いっきりやって下さい。

 第二章以降はオブリビオンとの戦いです。
 蟲と姫です。

 ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『芸は身を助く』

POW   :    居合い抜きや演舞、怪力などの芸。

SPD   :    手妻(手品)や曲独楽、軽業などの芸。

WIZ   :    話芸や動物使い、神通力などの芸。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

相澤・樟
旅の道中での路銀稼ぎは得意だよ
勿論一芸披露もお手のものさ

これは手妻?神通力?
見た目曲芸だから、人形芸でいいか…

そう、俺の武器で相棒でもある3体の狐のぬいぐるみさ
狩衣着た二足歩行するデフォルメ人形タイプね
武器や扇子も持てるんだ、すごいだろう?

おっとつい語っちゃった、本題の人形芸は順当に扇子持ったイッコと鼓のニコ、小太鼓のサンコでの舞かな

とざいとーざい
これなるはとある公家様をも唸らせた神狐
これらが披露しまするは妖婉なる舞
三位一体の舞い踊りにてご覧に入れまする
そのため口上左様とざいとーざい

優雅な舞いから宙返りの曲芸まで狐は多芸さ
可愛い?ありがとう、イッコがお礼に火吹きも見せるよ
これが本当の狐火ってね



●神狐の舞
 その立て札の前で荷物を下せば、自然と人の目が集まる。
 単純に新しい刺激を求めてのもの。褒美目当ての阿呆がまた来たと蔑み混じりのもの。山城に召し出すべきかと値踏みするようなもの。視線に含まれる意味は様々だが、それを一々気にするようでは芸など披露できまい。
「とざい、とーざい!」
 相澤・樟は両手を広げて呼び掛ける。
 足元には狩衣姿の狐が三匹。所謂“でふぉるめ”された作りの人形は二本の足で立ち、それぞれ扇子と鼓と小太鼓を持って、とてとてと配置に就く。
「きちゅねさん!」
「はは、すごいだろう?」
 幼子の可愛らしい声に応えつつ、ぐるりと観衆を見回して。
「とざい。これなるはとある公家様をも唸らせた神狐。
 これらが披露しまするは妖婉なる舞。
 扇持ちたるイッコ。鼓、ニコ。小太鼓、サンコ。
 三位一体の舞い踊りにてご覧に入れまする。
 そのため口上左様。とざい、とーざい」
 この世界に相応しい口調で呼びかければ、まばらな拍手が起こる。
 それをより大きなものに出来るかどうか。
 なに、旅の最中に路銀も稼いだ手妻……いや、神通力? いやいや、見た目そのまま素直に人形芸と称しておくか。
 ともあれ、この身を此処まで存えさせるのに一役買った芸であれば、きっと観衆の御眼鏡にも適うはず。
 ではではご覧あれ――と、樟の代わりに狐達が一礼。
 それからぽんぽんぽぽんと鼓の鳴る音に合わせてゆるりと顔を上げたイッコが、そろりそろりと摺り足で動き出す。
 扇を前にぐぐっと伸ばして一歩二歩。そっと手を返してまた一歩。
 人間顔負けの艷やかな動きに、子供は勿論大人も目を見張る。それを生み出しているのは樟の十指だが、しかし今の彼はそこにいるけれどもいないもの。所謂黒子。
 人々の視線は、セリも花道もない舞台に鼓と小太鼓の小気味良い音を響かせ、堂々と扇を翻す三匹の狐にのみ注がれる。
 段々と熱が入ってきたように思えるのは、この日本に似た島国エンパイアでも“狐”が畏れ敬うべき存在であるからだろうか。
 だとすれば、樟自身が妖狐である事をひけらかしても面白そうだが――それを伏せたまま、作り物の狐に没頭させておくのも面白い。
 後ろ手で指をちょちょいと動かして、幾分駆け足になった小太鼓の音に合わせ、イッコがココンと宙返り。
 その着地に合わせて鼓を一叩き。ぴっと最後に決めの姿勢を取らせて、舞い納め。
「わー! かわいー!」
「そうかい? ありがとう」
 子供の何とも純朴な感想に愛想よく返しつつ、最後におまけで、ココンと一つ。
「わっ!」
 驚嘆する人々の目の前で、山城の方を仰ぎ見るイッコが口から火を噴く。
(「これが本当の狐火ってね」)
 内心ほくそ笑みながら、樟は三匹の狐と共に一礼して終えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クラウス・ハントハーベン
【SPD】マリオネットの人形劇の芸を行います

「それでは演目を始めると致しましょう」

所持している【人形劇用マリオネット】を使用し【パフォーマンス】で人形劇をします。
またUC『錬成カミヤドリ』で分身である操作板を最大数の17個作成し、それらをマリオネットにつけ操作します。クラウス自身もマリオネットの操作をするので計18体のマリオネット人形を一人で操ります。
18体による大掛かりな人形劇はきっと満足してもらえるでしょう。
演目は派手で目を引きやすい殺陣などがある活劇を演じます。

もしこれで満足されなかったり、他の演目を要求されたら、ローゼ(人形)を操ることによるハルバートの演舞を行います。



●大立ち回り
 つかみは上々。
 まだ拍手も止まない中で演者は入れ替わり、札の前にはクラウス・ハントハーベンが立つ。
 片腕に見目麗しき姫騎士のマリオネットを抱えたままで仰々しく一礼して、ざっと観衆の前に並べるのは、これまた十八の糸繰り人形。
 またお人形遊びかと野次が飛ぶ。純粋な観客からは窘めるような言葉や視線が返されるが、しかし当のクラウスは微笑むばかりで。
「それでは始めると致しましょう」
 なお丁寧に語りつつ、言外に自信を匂わせる。
 遊びかどうかは見てのお楽しみと、そういう事だ。

 かくして始まった人形劇は、いきなりクライマックスの様相。
 クラウス自身と、その分身である十八の操作板に繋がる人形達が、一体を取り囲んで次々に襲いかかる。
 見た目は特筆すべきところもない只のマリオネットだというのに、そうして情景を作られると不思議と善悪が映るもの。
 糸繰り人形の歴史やら操り主の姿からすれば少々不似合いだが、しかし此処はサムライエンパイアであるから、世直しの侍と悪しき幕臣の用心棒といったところか。
「やれー! やっちまえー!」
「負けるなー!」
 観衆の声援は、クラウス本人が操る中央の一体に注がれる。
 主演に選ばれたマリオネットは襲い来る同胞を躱しては叩き、受けては蹴り、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
 いや、実際に千切ってしまったら大惨事だけれども。そのくらいの勢いでもって、ばったばったと薙ぎ倒す。
 ついには十七もいた敵役が一つのみとなり、その一つと主演人形は打ち込む瞬間を見定めるように睨み合ったまま、じりじりと間合いを保って舞台を回る。
 見つめる観衆も、じっと決着の時を待つ。
 やがて――二つの影は同時に動き、瞬く間に重なってまた二つに分かれた。
 暫しの静寂。それから倒れるのは勿論、敵役。
 それがマリオネットである証として、かちゃりと軽い音をならしながら前のめりに突っ伏した瞬間、固唾を呑んで見守っていた人々はわあーっと歓声を上げた。
 あまりにも真剣に見入ったせいか、安堵の溜息をついている者さえ窺える。
「十分、満足して頂けたようですね」
 人形劇で不足なら青薔薇姫の演舞を、と思っていたが。
 そちらを披露するのはまたの機会だと、クラウスは抱える姫騎士に声掛けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハーバニー・キーテセラ
早撃ち演舞でもしてみましょうかぁ~

最初は抜き撃ちですぅ
2、3の的を、纏めてドカンッ
火薬の音の派手さと分かり易い効果でぇ、度肝を抜きましょ~

町人さん達がショックから立ち直る前にぃ、一気に畳みかけますよぉ?
近くの方に声を掛けてぇ、今度は的を宙に投げてもらいますぅ
1枚? 軽いですよぉ
2枚? 余裕ですねぇ
……なんて、段々と数を増やしていきますねぇ
終わりの時にはぁ、協力してくれた町人さんにも拍手を~

最後はぁ、擬獣召喚で呼んだ動物さん達に的を背負ってもらってぇ、動き回る的を撃ち抜いて御覧にいれましょ~
跳んで跳ねての軽業要素も取り入れつつド派手に行きましょ~
見事出来ればぁ、拍手喝采、よろしくお願いしますねぇ



●早撃ち
「はぁい。今度はこっちですよぉ~」
 二幕の芝居が終わって間もなく、観衆の後ろから響いたのは何とも間延びした声。
 振り返ってみれば、そこでひらひらと片手を揺らすのは、今日も今日とて営業モード全開のバニーガール。
「ええと、とざいと~ざい……? ハーバニー・キーテセラ、ですぅ」
 何の気なしに真似をしつつ、ぴっと指し示すのは自身の腰辺り。
 そこにあるのは愛用の一品。死出の旅路へと誘うデリンジャー“ヴォーパル”だ。
「これでぇ、早撃ちをお見せしますねぇ~?」
 などと言うが早いか、凡庸な町人達の鼓膜を乾いた音が揺さぶる。
 それは一発だけしか聞こえなかったはずだが、しかしハーバニーから少し離れたところで倒れた的は三つ。
 ……歓声も、悲鳴もなし。
 完全に置き去りにされた人々の頭は、只々呆然という文字で埋め尽くされていく。
「うふふ、驚きましたぁ? 驚いちゃいましたかぁ~?」
 したり顔で言うハーバニーだが、まだまだ序の口。
「えっとぉ、そこの人、ちょっといいですかぁ?」
「……え? あ、俺……?」
「そうですぅ。あと、そこの人と、隣の人もどうぞ~」
 何だか分からないが、呼ばれているようだからとりあえず。
 そんな感じでふらりふらりと寄ってきた三人に、持たせてみるのは只の木板。
「これをですねぇ、お好きなところでえいっ! って投げてもらいたいんですぅ」
 えいっと、投げる。
 何故? と疑問が沸かない事もないが、どうにも頭がぼんやりするのは先の銃声のせいか。
 ともかく臨時アシスタントとなった町人はまず一枚、空に木板を投げ――割れた。
 ぱらぱらと破片が落ちてくる。ふとバニーガールを見やれば、彼女は「まだまだ軽いですよぉ」などと笑っている。
 では二枚――割れた。三――割れた。
 四、五、六。ついには三人で抱えられるだけ抱えて、思いっきり投げる。
 ものの見事に全てが木片になって降り注いだ。
「はい、拍手~」
 自分で「ぱちぱち~」と言いながら手を叩くハーバニーに釣られて、ぱらぱらと称賛の音が鳴る。
 まだ驚きやら感動より、困惑の方が多いらしい。
「……それじゃあですねぇ」
 これならどうだと、喚び出したるは兎が十七羽。あと猫が一匹。
 それに木板を背負わせて、合図一つであちこちに走らせる。
「今からぁ、あの“的だけ”を撃ちますからねぇ~?」
 見事出来れば拍手喝采、よろしくお願いしますぅ。
 そう言って一つ礼をしてから――ハーバニーは大地を蹴り、高々と跳び上がった。
 人々があんぐりと口を開けたまま空を仰ぐ。それに微笑みかけながら、ハーバニーはヴォーパルに手を添えて――。
 撃つ、撃つ撃つ撃つ。目を丸くして逃げ惑う兎や猫に容赦なく引き金を引く。
 とうとう子供などから「うさぎさんが!」と悲鳴が上がった。が、的を散らせた兎はぱたりと地面に伏せるやいなや、出番終了とばかりに観衆の元に退場していく。
 ああ、よかった。うさぎさん元気だ。そう胸を撫で下ろす人々の前で、ハーバニーは兎に負けじと上に下に右に左に。飛んで跳ねて飛んで跳ねて。
 最後まで残しておいた猫の背に狙いを定めると――。
「ばぁん♪」
 茶目っ気たっぷりに呟きながら、的を撃ち砕く。
 ついでに男性諸君の心も撃ち抜く。
「は、は……ハーバニーちゃーん!!」
「はぁい。ありがとうございましたぁ~」
 最後にウインク一つ振りまいて、ハーバニーは銃を収めると彼方を指差した。

成功 🔵​🔵​🔴​

白寂・魅蓮
姫の暇つぶしに一芸披露、ってところかな。
まぁそれくらいならなんてことはないけど…一城の姫がオブリビオンとなったら、少し話は変わってくるな。
このまま事が大きくなっても面倒だろうし、先に倒しておくにこしたことはないね。

とりあえずまずは立札の通り、みんなの前で芸を披露するとしよう。
旅芸者としては腕の見せ所かな。
今回は軽業を主体に、細道などの綱渡りを披露していくよ。
余裕があればその場でくるくると廻ってみたりして。

観客へのサービスも忘れずに、ふっと微笑みを向けてあげよう。
甘い笑顔には自信があるからね。
【幽玄の舞「泡沫語リ」】は演出の為に使って、花びらを舞わせるとしよう。



●黒蓮閃く
 そこに立つのは、小さな身体から歳に見合わぬ妖しさを漂わせる美男子。
 今度は女子の一団がときめく。この鈍い銀髪の君は一体、何を見せてくれるのか。
 期待の眼差しを浴びつつ、白寂・魅蓮もまた一礼。
 まずは軽く、その場で飛んだり跳ねたり回ったり。立て札にひょいと乗ってみたり。そのまま逆立ちまでしてみたりと身軽さを活かした芸を披露。
 それだけでも幾らかの拍手は起こる。が、頑固一徹を人の姿にしたような親父などは「ガキが跳ねてるだけじゃねぇか」などと難癖をつけてくる。
 そんなあんたはさっき飛び跳ねる娘に鼻の下を伸ばしていたじゃないか――と女性陣が喚き立てるが、魅蓮はそれをさっと制して。
「これより魅せまするは、ひと時の夢物語――」
 どうか心行くまで、溺れて、融けて。
 老若男女問わず、ふっと儚げに微笑みかければ――途端、魅蓮の姿は黒い蓮の花びらの嵐に消え失せた。
 ああ銀の君よ、何処に――。すっかり惑わされた年頃の娘は勿論のこと、人々は忽然と消えた少年を探し求めて、視線をあちらへこちらへと彷徨わせる。
「……あ!」
 あんなところに!
 そう叫んだのが誰であるのかも確かめぬまま、観衆が見やった先は瓦屋根。
 いつの間に張っていたのか、ぴんと伸びた綱を前にして魅蓮は涼し気な顔。
 渡るのか? それを渡るのか?
 何故そこにとの疑問は後回しに、人々がそればかり思うのを魅蓮も感じ取る。
 ならば、期待には応えてやるのが芸者芸人というもの。
 まるで散歩に赴くような軽い足取りで一つ、さらに続けて二つ三つ。
「ああっ……!」
 もう危なくて見てられない。でも見たい!
 そんな想いから顔を両手で覆って、けれども両眼の辺りだけはちゃっかりと広げたままの娘に、魅蓮は微笑みを投げる。
「ああっ……!!!」
 耐えきれなかったのか、腰を抜かしてへたり込む娘。
 それを遥か高みより見下ろす魅蓮は、なおもはらりはらりと黒蓮を散らせつつ、くるりくるりと縄上で回りつつ。自信たっぷりに甘い表情を見せつける。
 その度に観衆は一人また一人と溺れていき、気づけば誰しもが少年の虜となってしまうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アカネ・リアーブル
蟲が人を襲うなど、見過ごす訳には参りません!
山城の姫には後程攻撃付の舞をしかとお見せするとして、今は皆様を楽しませてみせましょう。


という訳で舞います。
二段構成にしまして、まずはダンスを。
軽快な音楽に合わせて、【スカイステッパー】でまるで滞空するように軽やかに踊ります。
音楽のクライマックス、着地直前に花のみの【茜花乱舞】を放ち、観客の皆様の視界を塞ぎます。

着地後は、サムライエンパイアの舞を舞います。
音楽もぐっと押さえ目に、メリハリをつけて舞います。

母様から教わった舞を、とくとご覧あれ。

舞の最後はアップテンポの音楽に。
激しい乱舞に少な目花のみ【茜花乱舞】を乗せて 、皆様をアカネの世界に誘いましょう



●茜舞う
「むむ……」
 確かに魅力的な少年だった。
 けれども負けてはいられない。天空駆け巡るスカイダンサー的に。
 そんな雰囲気で気合を入れて、アカネ・リアーブルは札の前に立つ。
 観衆はまだとろんとした表情だ。
 ここは一つ、目の醒めるような踊りを見せてやろう。
「どうぞご覧くださいませ!」
 溌剌と言えば、途端に何処からともなく鳴り響く軽快な音楽。
「……お囃子?」
「違いますわ!」
 そうじゃない。確かに祭囃子も軽快だけれど、そうじゃない。
 もっとこう、なんだ、スカイダンサー的なアレだ。ポップでフューチャーでサイバーでパンクでビビットキュート的なアレだ!
 伝われ! 感じ取れ! ――と、そこまでアカネが強く念じているかはさておき、軽やかな身のこなしは程なく空まで跳び上がる。
 翼を翻すでもなく、足場を用意するでもなく。何もないところを踏みしめて上がっていく。
 はっと、人々が目を醒ました。それと同時に大地へと戻ってきたアカネは、着地の間際に放った茜の花びらで皆の視界を奪う。
 そして――嵐が過ぎ去った後、観衆が目にするのはダンサーでなく巫女。
 音楽も一転、控えめかつ緩急鋭いものに。馴染み深い三味線やら篠笛やらの音色に耳を傾けつつ、衆目の見守る中でアカネが披露してみせるのは亡き母直伝の舞。
 その由来からすれば、一挙手一投足にも真剣さが増す。きりりとした表情で舞い踊るアカネを、人々もぐっと食い入るように見つめて。
「……はいっ!」
 いよいよ大詰めと声を上げれば、音楽は和の要素を残したままテンポアップ。
 それに合わせてアカネの舞も乱舞と呼ぶべき激しさに至り、振り乱す赤い衣裳の端からはまた茜の花が散る。
 ただ、今度の花びらはアカネの姿を隠さない。むしろ早々に広がって、観衆をアカネの世界へと包み込む。
 それも程なく散って消えるが――舞と音楽の止まったところには、惜しみない拍手が送られた。
 母に恥じぬ舞が見せられたと、胸を張っても良さそうだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

春日・陽子
…魔は祓います
(基本口数は少なく)

芸事ということなら、書き初めを
8尺×8尺の宣紙と大きめの毛筆を用意為ます

…喋るのは苦手ですが、必要でしたら口上を
あけまして、お目出度うございます
この街と城主様の益々のご健勝を願い、書き初めを行います
皆様どうかご笑覧下さい(一礼を

鈴型の獣奏器を着物の帯につけ、それぞれ小さな鈴をつけた複数のリス達と共に紙に向き合います
リス達には、鈴にあわせて動いて音をだすよう指示を
ただ書くだけでなく、リスの演奏にあわせ筆をおろし、身体を動かします

中央に墨絵で一富士二鷹三茄子
後に新年の慶びの文字を記していきます(内容はそれらしいもので
最後は大きな動きで陽の模様の花押を押印して一礼を



●〆の一筆
 賑やかな猟兵一座の公演もいよいよ大詰め。
 そこで何の因果か、トリを務める事となったのは春日・陽子。
 喜怒哀楽の欠けた顔ですすっと現れた彼女に、観衆はじっと目を向ける。
「……」
 さて、視線は何か一言期待しているようだ。
 表情と同じく多くを語らない口ではあるが、しかし人々の求めを無下にするのも具合が悪い。
「……あけまして、お目出度うございます」
「おお……」
 喋った。ただそれだけで起こるざわめきの中から、鸚鵡返しの答えが来る。
 演者と客のやり取りにしては、あまりに大人しくぎこちないやりとり。けれども陽子の一芸は弁舌でないから、これでよし。
「町と城主様の益々のご健勝を願い、書き初めを行います……」
 どうぞご笑覧下さい。
 淡々と演目を述べた後、ゆっくりと一礼してから取り出したるは――何とも大きな、八尺(約242センチ)四方の上質な画仙紙。
 陽子の身体が四尺三寸ほどであるから、ほぼ倍近い。
 それに合わせた大きな筆を手にして、ぐっと構えれば着物の帯が“ちりん”と鳴る。
 いや、勿論帯が鳴ったのではない。音の源はそこに括り付けられた鈴。獣と意思疎通を図る不思議な道具。
 冴えた響きに導かれて、舞台には鈴をつけた何匹かのリスが現れる。そして小さなお手伝いさん達に音色で軽く指示を出した陽子は、いよいよ紙に向かって大筆を振るう。
 ちりん、ぱっ。ちりん、ぱっ。音鳴る度に墨黒が真白の上を走っていく。人々は何が出来上がるのかと期待に胸踊らせながら、同時に陽子の一挙手一投足に目を奪われる。
 踊り、でなく舞と呼ぶべきだろうか。ぴたりと止まったかと思えば勢いよく跳ねるように動き、とても力強く躍動的な線を引いたかと思えばまた静寂の中に沈む。
 何とも厳かで気高い、神楽の如き筆さばき。当の本人は「ご笑覧ください」などと申していたが、いやいや、見る方はもはや呼吸をする事さえ躊躇ってしまう。
 だから代わりに――と言う訳ではないが、陽子が固く結んでいた口から吐息を漏らす。それでふと緊張の糸が途切れた瞬間、人々は何とも目出度い墨絵に感嘆を溢す。
 サムライエンパイアを治める徳川将軍家とも縁の深い、駿河国に聳える名峰・富士山。その頂まで飛ぼうかという大きな鷹に、此方も大ぶりの茄子。
 縁起物の詰め合わせだ。そこに慶春と二文字添えて、最後にもう一つ、陽の模様の花押を書けば――渾身の一芸にして新年を祝う墨画“一富士二鷹三茄子”の完成である。
「はぇー……」
 とまぁ、あまりの出来栄えに町人からは溜息ばかりが出てしまう。
 しかし陽子の方は顔色一つ変えるでもなく、リスを呼び集めてまた丁寧に一礼。
 そこではっと気付いた町人が手を叩けば、たちまち割れんばかりの拍手が、小さな書家を包み込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『腐怪の蟲』

POW   :    腐敗の瘴気
【腐敗の瘴気 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    粘着糸
【尻尾から発射する粘着糸 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    腐敗の溶解液
【口から発射する腐敗の溶解液 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を腐らせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魔城への誘い
「いやいや、お見事お見事」
 改めて猟兵一座に賛辞を贈る町人達を掻き分け、声掛けてきたのは一人の男。
 刀を帯びているからには武士であろう。山城の主に仕えていると語ったその男は、猟兵達に姫御前の前で披露してみないかと誘いをかけてくる。
 無論、断る理由はない。
 猟兵達は男に従い、事情を知らない人々の無邪気な声援に送られながら町を出た。

「少々険しい道程でございますが、辛抱下され」
 そんな風に気遣う言葉を掛けられつつ、歩くこと暫く。
 一行を出迎えたのは、地方の山城らしからぬ重厚な門構え。
 男が声を張り上げると、古めかしい門扉はゆっくりと開く。
 いよいよ敵地への突入だ。

 ――と、意気込んで踏み入った瞬間。
 微かな笑い声と共に男は消え失せ、独りでに閉じた門は押しても引いても殴っても、異世界の道具やユーベルコードを用いてさえ開かなくなってしまった。

 さらに、城内からは死臭が漂ってくる。
 じっと目を凝らせば、薄暗がりからのそりのそりと這い出てくるのは――。
 蟲、蟲、蟲。蟲蟲蟲、おびただしい数の、蟲。
 丸々とした緑色の蟲。腐肉のようなものに塗れた蟲。
 波のように押し寄せてくるそれの合間には、人の名残らしきものすら窺える。
 誘われるがままに来て、餌食となった旅芸人達だろう。

 彼らの弔い合戦とするかはともかく。
 姫の御尊顔を拝するには、蟲どもを蹴散らしていくしかあるまい。
アカネ・リアーブル
絡み、アドリブ歓迎です。

蟲……!
背筋がゾワゾワします気持ちが悪いです気分が悪いです見たくないです触れたくありません気色悪いです臭いです……。

ありていに言えば嫌いです!

……ですが。
アカネも元は旅芸人。兄様や母様と一緒に、各地を旅して参りました。
ここへ来た旅芸人の皆様のことは他人事とは思えません。
ひょっとしたら、あそこで肉塊になっていたのは、兄様かも知れないのですから。

「敵、討たせていただきます!」

嫌悪感を無視して【茜花乱舞】で攻撃します。
【範囲攻撃】と【なぎ払い】【二回攻撃】も併用して短期決戦を目指します。
溶解液は【スカイステッパー】で回避。着地点の蟲は【なぎ払い】ます。
早く親玉をお出しなさい!


相澤・樟
首尾よくいったな
じゃあ、次は害虫駆除だね

集団戦かて数が多いのなら単独行動は危険だね
共闘連携重視で孤立しそうな仲間の援護をしよう
狐のぬいぐるみも楽器を武器に持ち替えて戦わせるよ
イッコの棍、ニコの双錘、サンコの剣鈴捌きは中々だろう?
まあそんなに大きくないから攻撃力は劣るけど…そこは連携と手数でカバーだね

俺自身も戦えないわけじゃないし
狐火にご用心だ
イッコ達に気を取られ過ぎると、俺の狐火の餌食になるぞ
そして、俺に気を取られると……後ろに来た俺の仲間の攻撃を喰らう、ってわけだ

狐は化かすのが得意なんだから、妖狐の俺もこう言う戦い方はお手のものさ


さぁ、首魁までの花道、開けてもらおうか



●茜と狐
 ぞくり。
 方々から湧き続ける敵の姿が、アカネの玉肌を粟立たせる。
 数、形、色、腐臭、鳴き声、動き方――ありとあらゆるものが不快で構成された蟲を前にすれば、猟兵とて本能から嫌悪が滲み出る。元より好む理由もないが、しかしありのまま「嫌い」と吐き出して一蹴したくなる。
 けれど、相手は言葉の通じない蟲。そして長柄の一払いでは退けきれないほどの大群。
 自制心を欠いた行動に出れば、先で待つのは無慈悲で暴虐的な破滅だ。緑の波間に揺れる人の名残が、その証。
「突出しすぎないようにしよう」
「ええ」
 樟の呼びかけに短く応える間も、アカネの瞳はそれを見つめ続けていた。
 目と口を大きく開いたままの表情が、押し寄せた絶望を色濃く物語っている。
 一体、何の罪があってあれほど無惨な死を迎えなければならなかったのか。
 それは争いと無縁な、只の旅芸人であったはずなのに。ふらりと立ち寄った町で偶然にも立札を目に留めて、己の芸が退屈しのぎになるならと誘いに乗った。ともすれば少しくらいの褒美は期待したかもしれないが、生命を奪われるほどの咎を背負ってはいなかっただろう。
 物言わぬ肉となった今は真の経緯を尋ねる事も出来ないが、それでもあれを赤の他人とは切り捨てられない。もしも――もしも、あの惨めな塊となっていたのが、何処かに消えた愛しき兄様であったとしたら。
「敵、討たせていただきます!」
 不愉快さを押し込めて言い放ち、アカネは長柄を構える。
 瞬間、それは鋭い刃の先端から無数の白い花びらとなって吹き荒れた。
 前方百八十度を埋め尽くす蟲の群れが、そこかしこで千切れて腐肉に変わっていく。それもまた不快な光景であるが致し方ない。敵が狙いを定める必要がないほどの量でも、まさか目を瞑っては戦えまい。
「もう一つ!」
 蟲を斬り裂いて彼方に過ぎようかという茜の花を、片腕一振りで呼び戻す。再び訪れた嵐は容赦なく敵を薙ぎ払い、アカネの眼前には半円状の空間が開いた。
「早く親玉をお出しなさい!」
 すかさず踏み込み――。
「右だ!」
 なおも攻めかかろうとした矢先に聞こえた仲間の声で、咄嗟に跳び上がる。
 足元を掠めた液体は、そのままアカネが立っていた所へ落ちて大地を黒く汚した。どの蟲が撃ち出したのかはともかく、それに触れれば身体を侵されるであろう事は容易に想像がつく。
「このっ……!」
 戦いによる高ぶりを言葉の端に滲ませながら、足元の蟲を花びらで払い除けて着地。
 そこへ狐のぬいぐるみが三体現れて、アカネを守るように取り囲む。

「害虫駆除なんて早く終わらせたい、ってところかい?」
 樟がそう言えば、天の御遣いのような少女は花弁から戻った長柄を手に「すみません」と返してきた。
 先に呼びかけた時、微妙に生返事なのが気に掛かったからと目で追っていて正解だったようだ。花の嵐は大群相手に間違いなく効果覿面だが、決して万能の術法でもないだろう。
「ま、俺のぬいぐるみよりかはよっぽど強そうだったけどね」
 自嘲めいた事を言いつつ、樟は両の手を動かす。
 途端、仲間を守る体勢でいた狐達は各々の武器を構えて、敵群の一角へと駆け出した。
 アカネにも襲いかかった溶解液が吹き付けられるが、小狐達は器用に三方へと分かれて難を逃れる。
 そしてそのまま、蟲の一匹へと突撃。イッコが混で、ニコが双錘で目を潰し、サンコが剣鈴を用いて頭を裂く。
 中々の連携だ。……もっとも、確かに樟が語る通り殲滅力という点には少々乏しいようだが。
「そこは手数と連携で補うってことで」
 いけるか? という視線にアカネが頷き返す。
「よし。それじゃあ首魁までの花道、開けてもらおうか」
「はいっ!」
 快活な返答を受けて、樟もまた頷く。
 目指すは城内。其処へ至るまでの蟲を祓い尽くすこと。
「イッコ、ニコ、サンコ。しっかり働けよ」
 呼び掛けるやいなや、狩衣姿の小狐たちは敵中に飛び込み武器を振り回す。
 それが樟に操られるものである事など蟲達には理解しようもない。自ら進んで災いへと踏み入った獲物を逃さんと、幾つもの蟲がイッコ達に向き直る。
 丸々と膨れた背中がガラ空きだ。三匹の狐が貪られないようにと十指を絶え間なく動かしながらも、樟は続けざま十五の狐火を次々と放って蟲を焼く。
 果実を潰すような、或いは金属を擦れされるような、ともかく耳障りな断末魔があちこちから上がった。その同胞の悲鳴によって群れの一部は樟を捉え、口元を忙しなく動かす。
 全くもって気味が悪い。――が、樟の顔には不快さなどなく、むしろ間抜けな蟲を茶化すような微笑みが浮かぶ。
「イッコ達や俺より、気をつけるべきものがあるんじゃないのかい?」
 まあ、そんな風に言ったところで伝わりはしないだろうが。
 自らの無益な呼びかけを鼻で笑う樟。
 その後ろから響くのは、可憐ながらも凛とした声。
「あかねさす、日の暮れゆけば、すべをなみ」
 ふわり、白翼翻して空に舞う少女の手から刃が解けていく。
「千たび嘆きて、恋ひつつぞ居る――!」
 詠い終えると共に吹き荒れるは、詠み手と同じ名を持つ白い花びら。
 三度吹き荒ぶ嵐は城内までの蟲を尽く薙ぎ払い、開いた道が再び埋め尽くされる前にと、猟兵達は一斉に駆けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春日・陽子
…助けられなくて、ごめんなさい
すぐに…蟲も、姫も、祓います
だから…待ってて、ください

【WIZ】
【アート】書道筆で空に浄魔の「吽」の字を書き、後方から蟲に呪文字を射撃します
焼浄せよ、焼浄せよ
前にでる力は乏しいので仲間の援護を中心に立ち回ります
仲間に群がる蟲を優先、溶解液・糸の射出がみられれば呪文字で相殺を試みます

自分のユーベルコードと同能力の溶解液が地面に付着した場合は、それを上書きするように「唵」の字の結界で上書きを試みます
滅悪、穢土を浄土となし、地獄の苦しみを救済し、吉祥あらしめ給え

群がられそうな時は一度後退を
優先順位は仲間>自分自身

この地を清めます、せめて、ここに眠る人達が浄土へいけるよう


ハーバニー・キーテセラ
わわわぁ~。これはちょっとぉ、あんまりお近づきになりたくない光景ですねぇ
鳥肌がたってしまいそうですぅ

なるべくなら蟲さん達が近付ききる前に倒したいところぉ
瘴気を浴びるのもぉ、粘着糸や溶解液に触れるのもぉ、ご勘弁ですのでぇ
ヴォーパルで狙いを付けてぇ、片っ端から撃ち貫きましょ~
普段以上に気合を入れてぇ、弾倉交換も早業で手早く手早くぅ
リロードで止まる攻撃の隙を最小限に押さえますぅ
それでも近づかれたならぁ、致し方ありません~
蟲の大きさにもよりますが蹴り飛ばしてぇ、少しでも距離を稼ぎますよぉ
……これ、洗って落ちるといいのですけれど
思わず、営業モードの仮面がぽろり
ちょっと真面目さんに戻ってしまいましたねぇ



●跳ねる、祓う
 城の外から中へ。舞台が変わっても、景色は殆ど変わらない。
 土の上でも板張りでも畳敷きでも、そこを埋め尽くすのは蟲の群れ。
「わ、わわ……わわわぁ~」
 間延びした声の中に嫌悪と拒絶と焦燥を混ぜ込んで、ハーバニーはひたすらに引き金を引く。
 小さな愛銃“ヴォーパル”から飛び出した弾丸は、意外や厚く硬い緑の表皮を苦もなく貫いて肉を穿ち、その蠢動を終わらせる――が、死骸が朽ち果てるよりも先に新たな蟲が湧いてくる。
「まぁだ出るんですかぁ~……」
 これを越えて上層、天守まで進むのにはどれほどかかるだろうか。
 思わず項垂れそうになるのを気合で堪えながら、ヴォーパルに弾を込め直す。
 再装填は声色と裏腹に、目にも留まらぬ早さで行われる。
 それでも埋めがたい僅かな隙を、傍らの陽子が筆で塗りつぶす。
 空に画くは“吽”の文字。吽とは、即ち終わり。
 その意味の通り、墨に触れた蟲は終極を与えられ、欠片も残さず消えていく。
「あ、ありがとうございますぅ」
 込めたばかりの弾を吐き出しつつ援護の礼を述べるハーバニーに、陽子は筆を振り続けながら微かに頷いて返した。

 しかし、撃てども塗れども。蟲は途切れる事なく湧き続ける。
 それどころか、少しずつ間合いを狭めている。撃つと画くの、その合間の瞬く程の隙間を、物量でもって強引に抉じ開けてくる。
「これはちょっとぉ……」
「……よくない、です」
 ハーバニーの呟きに、無言を貫いていた陽子さえ口を開く。
 あちこちから蟲が押し寄せるせいで、突破に必要な推進力が出しきれない。弾も墨もまだ幾らでも浴びせてやれるが、それでは迫る敵を打ち返せても、中々前に進めない。
「あんまりお近づきにはなりたくなかったんですけれどぉ、そうも言っていられそうにないですねぇ」
 ――事態を打開するには思い切りが必要と考えますが、いかがでしょう?
 そんな意味の含められた視線に、陽子はまた口を結んだまま頷きだけで応える。
 けれども、ふふっと微笑んだハーバニーは見落とさない。筆を握る手に、ぐっと力が入ったのを見逃さない。
「それじゃあ~、よろしくお願いしますねぇ?」
 期待と信頼を込めて呼びかけ、自身は城の奥部目指して跳ねるように走り出す。
 当然、蟲が邪魔をする。糸を伸ばし、液を吐く。
「……!」
 それらが狙い所へ届く前に、陽子が墨黒を用いて終わらせる。
 さらには返す筆で、新たに“唵”と画く。
 吽が終わりならば、唵とは神聖なる物事の始まり。戦の真っ只中であるが故か少々荒々しく、しかし流麗な呪文字は蟲から滲み出た邪悪を打ち消し、荘厳な気配で進むべき道を示す。
「そんな場合じゃないとわかってはいるんですけどぉ、なんだか落ち着きますねぇ」
 文字の結界を跨ぐ最中で言って、ハーバニーは先へ。
 陽子が追いかけて来られるようにと、後方への銃撃を行いながら――。
「……わわっ!」
 不意に前から飛び出してきた蟲を、反射的に蹴り飛ばす。
 三日三晩は忘れられそうにない気色悪い弾力が足の甲を舐めた。
 それと同時に、悍ましい色の汁がバニースーツへと跳ねた。
 瞬間。
「あっ……」
 いついかなる時でも剥がれそうになかったハーバニーの“ガワ”が僅かに捲れる。
「これ、洗って落ちるでしょうか……?」
「……大丈夫、ですか?」
 もしや怪我でも?
 息を切らしながら追ってきた陽子が、金の瞳で案じるように見上げてきた。
「――あ、いえいえ。大丈夫ですよぉ?」
 この通り、まだぴんぴんぴょんぴょんしてますぅ。
 蟲に銃弾を叩き込みながら応えるハーバニーに、陽子はそれ以上、何を言うでもなく蟲退治へと戻る。
 いや、戻らざるを得ないのだ。どうにか先へと進み始めた二人を喰らうべく、また数多の蟲が此方へと迫っている。
「瘴気も粘着糸も溶解液もぉ、浴びたくはありませんからねぇ」
 もうひと頑張りしましょ~。
 自身をも鼓舞するようなハーバニーの言葉にまたまた頷き、陽子は無心で写経をする僧の如く、吽と唵を画く。


 ……そうして進む途中、陽子はそれを目にした。
 武具の類を収めた小部屋。一段と死の臭いがこびりついた其処に転がる、幾つもの肉片。もとい、旅芸人たちの遺体を。
 恐らくは恐怖から逃れようと踠き、しかし城の外には出られず、それでもなお抗おうとして此処に飛び込み――ついぞ報われることなく、蟲の餌食となったのだろう。
(「……助けられなくて、ごめんなさい」)
 決して自らのせいではないというのに、少女は心の中で告げる。
 そして誓う。彼らに、せめて彼方での安寧を授けようと。
 未だ尽きる気配もない蟲を祓い、惨事の元凶たる邪姫を祓い。
 全ての禍を取り除き、この穢された地を必ずや浄めようと。
 それが何の因果か猟兵の力を得て、今此処に立つ己の務めだと。
(「だから……待ってて、ください。もう少し、だけ」)
 名残惜しくも視線を切って、陽子は先へと歩みを進める。
 首魁の姿はまだ見えない。
 それでも。蟲とは違う邪な気配が漂ってくるのを、陽子たちは感じ始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トゥリース・リグル
アドリブ・連携歓迎

この世界には『虎穴に入らずんば虎子を得ず』という言葉があるのでしたね
虎穴には入れましたから、あとは虎子を得るだけ、ですね

【錬成カミヤドリ】で複製したダガーで【先制攻撃】で【範囲攻撃】を行う
その後は複製ダガーを操作して【範囲攻撃】を行い効率的に排除していく
僕自身は【ダッシュ】で接近し【2回攻撃】を行い【ダッシュ】や【ジャンプ】、【スライディング】で離脱のヒット&アウェイを心がける
相手の攻撃は【見切り+フェイント+第六感】で回避を優先、状況に応じて【ジャンプ】や【スライディング】、【ダッシュ】を用いて効率的に回避を試みる
連携時は味方の死角をフォローするように複製ダガーを操作



●突き進む
 数多の使い手を巡った諸刃の短剣は、いつしか名を持ち、四肢を得て、ついには自ら世界を渡り歩くようになった。
 ――と、ただそれだけの言葉では、彼女の過ごした月日を語り尽くすには到底足りないだろう。
 けれど、もしも今、彼女に問いかける事が許されるとすれば、昔よりも今の話を聞きたいものだ。
 つまりは――貴女が覗き眺めて見たかった世界の一部に、こんなにも蟲だらけの光景があるなどと想像し得たのかと。
 或いは故郷たる剣と魔法と竜の世界で、既にこの程度の光景は見てきたのかと。

 しかし残念な事に、そんな問いを投げる者もいなければ、問う暇もないのが現実。
 トゥリース・リグルは無限に伸びているような板張りの廊下をひた走り、逆手に握った自身の複製で以て眼前の敵を十字に斬り裂く。
 頭部から割れ始めた蟲は、程なく四つの塊へと分かれていく。
 だが、驚異でなくなったものにくれてやる視線も時間もない。とんと軽く床を蹴って壁に取り付きながら、トゥリースはさらに己の複製を作り出して先へと放る。
「複製でも、それは僕なんですから。ありがたく受け取ってくださいよ」
 何の気なしに呟いてはみるものの、当然ながら返事などあるはずもない。
 聞こえてくるのは短剣が肉に食い込む音。血と体液の間の子らしき汁が噴き出す音。過去の亡霊である蟲が再びあるべき彼方へと返っていく音。
 そして消えかけの遺骸を乗り越えた新たな敵が、此方へ近付こうと床を這ってくる最中に起こす、しゅるしゅるという衣擦れのような音。
「……はぁ」
 うんざりだ。幾ら何でも多すぎる。
 もう暫く――というか、金輪際。この緑色の体躯は見なくてもいいだろう。
 そうして呆れながらも敵を斬り倒し続けるうちに、トゥリースはふと、ある言葉を思い起こす。
「……確か、虎穴に入らずんば虎子を得ず、でしたか」
 より普遍的な単語に置き換えるとすれば、危険を冒さなければ大きな成果は上げられない、といったところか。
 もしくは、冒険しなければ栄誉は勝ち取れない、とかでもいいかもしれない。むしろ生まれ故郷の者に伝えるなら、そちらの方がいいような気もする。
 ともあれ、その言葉を純朴に信じるなら。此処まで相当の危険と苦労は越えてきたはずなのだから。
「そろそろ虎子を得たい所なのですけれど」
 一体、何処まで進めばいいのやら。
 トゥリースは独り言つ。
 そして、後背から伸びてきた粘着糸を振り返りもせずに避けてみせると――再び生み出した十九本の短剣を行く手の蟲の背に次々と突き刺し、それを足場にして上層へと続く階段まで、飛石を渡るかのように軽々と越えてみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怨霊姫』

POW   :    怨霊乱舞
【無数の怨霊の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    怨霊傀儡
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【怨霊を憑依させることで、自らの傀儡】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    怨霊家臣団
【レベル×1体の、怨霊武者】の霊を召喚する。これは【刀や槍】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蟲姫
 銘々の手法と得物で蟲群を乗り越えた猟兵たちは、やがて城の最上最奥、行き着くところまで行き着く。
 麓の町さえも見下ろせるほどの高みには、これまでと打って変わって悍ましい異形など一匹も居ない。
 だが、其処が穢れていないわけでもなかった。
 御衣を纏い、退屈そうに扇を揺らす女の傍らには、既に事切れた幾人もの武士と、乾ききった血の跡。
「……まさか猟兵までもが誘われてくるとはのう」
 そう言って“怨霊姫”は妖しげに微笑み、傍らに髑髏を漂わせる。
「ほれ、起きぬか。妾の愛しい子らを葬って来た彼奴らを、たんと――たんと饗してやらねばな」
 くく、とくぐもった声を漏らす姫。
 その周囲をぐるりと巡って、髑髏は武士の亡骸へと溶けた。
 途端、動くはずのないそれは一人、また一人と立ち上がる。
 死してなお呪縛を解かれず、傀儡と化した彼らに安寧を授けるには、操り手たる怨霊姫を一刻も早く倒さなければならない――。
白寂・魅蓮
ようやく姫様とのご対面、ですね。
死してなおも姫の人形となって働かされるのはさぞつらいことでしょう。
「悪いけど…喰われるのは貴方だ、怨霊の姫様」

相手は怨霊を使ってとにかく数を増やしてくる…
あんまり相手が多くなると相手が辛くなるのはこちらだし、 【早業】と【2回攻撃】で素早く剣舞で攻撃しつつ、姫の元へ接近しよう。
相手の攻撃に対しては【見切り】でとにかくやり過ごす…!

怨霊さえどうにかすれば姫自身の攻撃力は怖くないはず
【幽玄の舞「泡沫語リ」】で一気にまとめて吹き飛ばしてしまおう

「この舞で幕引きにしましょう。貴女も、この城も――悪夢の終わりです」

※絡み、アドリブ歓迎


加藤・光廣
姫さんよお、死体を操っての人形遊びかい?
いい趣味してるな
胸糞悪い、反吐が出るぜ!
恨みはねえけど、ここで片付けさせてもらう


まずは動く死体どもを何とかしねえと近付けそうもないな
一九式の三点バーストを一体ずつ頭に撃ち込んで黙らせてくか
弾切れ起こしたら一九式は手放して、スローイングナイフに持ち替えだ
12本か……何体やれるかなっと
一本だけ敵の裾目掛けて投擲しておく
床に縫い付けて身動き取りにくくさせられたらベストだな
スローイングナイフを投擲し尽くしたら他猟兵を退がらせる為に叫ぶ
ちょっと退がってろ!お前らまで巻き込みたくないんでな!
叫んでいる間、右手にダガー・左手にマンゴーシュを装備
退がったのを確認してUC


春日・陽子
もてなしは、いりません
ただ、骸の海へ還します
理不尽に命を奪われた、人達の為に

【WIZ】
【アート】呪文字で、後方から射撃を行います
仲間や私の陣の敷設には「唵」の字を
姫を取り巻く怨霊武者には「歩嚕唵」の文字で迎撃と浄化を試みます
攻撃して、ごめんなさい。許しは、請いません
必ず亡骸を弄ぶ罪障を滅し、解放します。少しだけ、我慢してください
距離を詰められた際は、一度ライオンライドで距離をとるよう試みます

ここに居る人達にも、大事な人達が、きっと、いました
奪う側の貴女が、蟲を殺されて、怒るのは筋違い、です
だから、祓います
悪しき者には、煉獄を

アドリブ・連携等歓迎


アカネ・リアーブル
アドリブ、絡み歓迎

あなたが、怨霊姫……!
嘘偽りで人を騙し、あまつさえ殺してしまうなどアカネは許しません!
あなたに殺された人々の怨み、アカネが晴らして差し上げます!

家臣団が前に出てきましたら、【茜花乱舞】でなぎ払いいたします。
まずは外堀を埋めることが肝要です。
怨霊姫に対しては真の姿を開放して、退魔封縛の舞で攻撃いたします。
怨霊姫が踏みにじった旅芸人や武士達の思いを乗せて、舞扇を手にして攻撃を放ちます。
手下の蟲といいあなたのやり口といい、アカネは許しません……!


終わりましたら、怨霊姫に殺された方々の冥福を祈り、舞をひと差し。
あなた達を苦しめた怨霊姫は、骸の海へ還りました。
どうか、安らかに。



●討滅
「随分といい趣味してるな、姫さんよお」
 加藤・光廣が言葉に侮蔑を含めて投げつける。
 それを躱すようにして持ち上げた袖で、怨霊姫は堪えきれず溢した笑みを隠す。
「……チッ」
 化生の類に罪の意識など望むべくもないのだろうが、しかし人を人と思わぬ所業も、それを咎められることすら愉悦の糧としたような態度も、見れば見るほどに忌々しい。
 なおも感情を示すべく言葉を尽くすならば、胸糞悪い。或いは反吐が出るというやつだ。
 この気分を晴らし、弄ばれた生命を慰めるには、怨霊姫を消し去るしかない。
 完全に討ち果たせないとしても、せめて骸の海へと還さねばならない。
「アカネは――アカネはあなたを、許しません……!」
「悪いけど……喰われるのは貴方だ、怨霊の姫様」
 薙刀を握りしめながらアカネが、脇差に手を添えて魅蓮が言い放つ。
 だが。
 現実とは、かくも無情なるもの。
 犠牲となった人々のためにと、此処まで力を振るい続けてきた猟兵たちの――陽子の前に立ちはだかる障害こそ、正しく怨霊姫によって生命奪われた、かつての“人”であるのだから。

「お前らに恨みはねえけど、これも仕事なんでな。……恨んでくれるなよ」
 光廣が一九式突撃銃のトリガーを引く。
 制限点射機構によって三発で打ち止めとなった弾丸が、武者の屍の眉間を貫く。
 手近な者から、一つ、二つ。
 淡々と銃撃を仕掛ける光廣に続いて、魅蓮も舞うように銀の刃を二度閃かせる。
 だが――さらに姫の方へと踏み込みかけた足は、一転して後ろへと運ばれた。
 刹那、魅蓮の在った所を槍が裂いていく。
 操られるだけの骸とは言えど、武士は武士ということだろう。今は既の所で見切ったが、姫の討滅を急くあまりに飛び込めば、たちまち彼らが生前鍛えた技の餌食となりそうだ。
「やはり、まずは外堀から埋めていかねばなりませんね」
 覚悟を宿した両眼で骸を見据えて、アカネが長柄を無数の茜に変える。
 その一枚一枚が鮮やかに翻る度、見るも無惨な死体には新たな傷がつく。
 それでも、躊躇ってはいられない。彼らが化生に付け入られた無辜の人であると、その過去に絆されれば、今度はアカネや猟兵仲間たちが怨霊に巣食われる。
 悼み、弔うのは全てが終わってから。アカネは粛々と花びらの嵐を操り続けて、巻き込み倒した者の瞳が抱く恨み辛みを受け止めていく。
 その傍ら、魅蓮も再び脇差を手に傀儡を斬り伏せて。
 陽子は呪文字を画くため、筆を振るう。
 宙に記すは“歩嚕唵”の三文字。罪障を滅すべく実体化したそれは、本丸を守る傀儡たちへと打ち当たり、彼らを嘆かせつつも人へと戻していく。
(「……ごめんなさい」)
 刀を握ったまま崩れ落ちる遺体に目を向けて、陽子はまた詫びた。
 けれども、許してくれ、とまでは請わず言わず。
 むしろ心中で繰り返す言葉は、魔を祓うという使命に己を括り付ける呪いと等しい。
 必ず――必ず。
 決意は固く結んだ口から紡がれることなく、画く文字に力強さとして表れる。

 その想いの前には、槍も刀もなまくら同然。
 何一つ――少なくとも肉体には何一つ傷を与えることも出来ずに、傀儡を傀儡たらしめる怨霊たちは消滅していく。
 しかし手勢を失っても、姫には焦燥など伺えず。
「く、くくくくく……」
 今度は広げた扇で口元を覆いながら、肩を揺らす。

 瞬間、笑い声と一緒に滲み出た妖気が、次々と武者の形を作った。
 数は傀儡よりも多い。器に怨霊を入れるのでなく、怨霊そのものを喚び出す此方が、姫の本領なのだろう。
「クソっ、キリがねえ……」
 そう吐き捨てると同時に、光廣は空になった突撃銃をあっさりと手放す。
 そして鍔がなく短い投擲用のナイフへと持ち替えるやいなや、怨霊武者へと投げつけた。
 ともすれば通じるのかと不安も過ったが、刃は敵の喉へと突き刺さり、怨霊を再び彼方へと葬り去る。
 けれど、銃弾と同じくそれにも限りがある。
 四本一組が三つ。全部で十二の刃は、瞬く間に減ってあと一本。
 その最後の一本を首魁の裾目掛けて放ると、光廣は脇差振るう魅蓮を押しのけ、一気に最前へと躍り出た。
「ちょっと退がってろ! でねえと巻き込んじまうぞ!」
 荒っぽい言い草は、ハッタリでもあるまい。
 何を、と返すわけでもなく、魅蓮と陽子、アカネは揃って壁際まで後退る。
 それを見やってから、光廣は人狼の獣たる部分を解き放った。
 激しい咆哮が、肉の器を持たない怨霊武者を尽く霧散させていく。
 決して狭くない範囲を無差別に襲うその雄叫びが、城の最上最奥という舞台で猟兵仲間三人を巻き込まなかったのは天の配剤によるものとも言えよう。

 ともあれ、鶴の一声ならぬ狼の一吼えは戦況を一変させた。
 だが、決して猟兵の優位に傾いたわけではない。
 姫と猟兵と動かぬ死体、戦場の光景こそ白紙には返ったが、撃ち放った銃弾や消費した体力などが戻ることはない。
 一方で、光廣が投じたナイフに僅かとは言え自由を奪われながらも、怨霊を盾に咆哮から逃れた姫からは未だ限界を推し量ることすら出来ない。
 そして骸の海から染み出してきた姫自身と同じように、怨霊たちは再び戦場へと滲んで形を成しつつある。
「くく、もう終わりかえ?」
 余裕からか、もはや嘲り笑うのを隠しもせずに姫が言った。

「――ええ、終わりです。終わりですとも」
 不敵な面構えで返したのは、魅蓮だった。
「くく、くくくく……ぬかしおるわ」
 身体を震わせる姫の傍らに、とうとう怨霊武者が立つ。
 それは二人、四人と増えてすぐさま一団と呼ぶべきほどにまで膨れ上がり、弓を構える。
「じゃが、褒めて遣わそう。壊れてしもうた芸子共よりは“まし”じゃったからのう。して、妾の退屈を紛らわせた其方らには褒美を取らせねばなるまい。……まあ、褒美と言うても金銀財宝でなく矢弾なのじゃが。妾が直々にくれてやるのじゃから、有り難く受け取るが良いぞ」
 ではな、と。姫が戦の終極を確信して扇を振った。
 一斉に矢が放たれる。まさか逃げ場などあるはずなく、猟兵たちはせめて抗うべく、各々の得物を握りしめ――。

「この舞で幕引きにしましょう。貴女も、この城も」
 囁く魅蓮の元から、黒い蓮の花びらが溢れた。
 それは押し寄せる殺意を跳ね返すばかりか、怨霊武者の一団をも纏めて吹き飛ばす。
 ただ、言い換えればそこまででもあった。姫は依然として健在のまま、魅蓮の繰り出した技を悪あがきと断じて口元を歪める。
「色が違うた所で、花嵐などもう見飽きたわ」
「それなら、これはどうです!」
 戦いの最中、オマモリサマと呼ばれる姫巫女の姿に変わりつつあったアカネが哮り、鎖の描かれた舞扇で空を薙ぐ。
 そこから伸びるのは――絵と同じ無数の鎖。
 鎖は打ち払えども打ち払えども、大蛇の如くうねり迫る。
「……無駄なことを。早う諦めてしまえば楽になるというのに」
「言ったはずです。アカネは、あなたを決して許しません……!」
 そのためならば、己が未来すらも捧げよう。
 アカネは生命を削り、鎖を撃ち放ち続ける。
 そして、その一本が間隙を縫い、ついに姫の身体を捉える。
「くっ!?」
「貰った!」
 すかさず、最後の武器である短剣二振りを両手に握り込んだ光廣が、間合いを詰めて一撃見舞う。
 裂けた御衣の切れ端が漂い、城の外へと流れていく。
「――浅いか!」
「貴様、妾に傷を!」
 これ以上無い絶好機を掴みきれなかった光廣が歯噛みすれば、姫の顔には初めて、猟兵を蔑む以外の感情が現れた。
 だが、化生の怒りを前にしても陽子は全く顔色を変えない。
 それが道理からかけ離れすぎているからだ。人を弄び、奪い、思うがままにしておいて、自らが失う事には怒ると、耐えられぬと、堪えられぬというのは――あまりに勝手が過ぎる。
 しかし、陽子は化生を責めるのに言葉など尽くさない。
「……祓います」
 ただ改めて決意のみを呟き、筆を七度振るう。
 それで、それだけでいいのだ。
 宙に残る墨黒が画き出すは、魔を怯えさせ、終わらせる言葉。
 即ち、吽。
「――――ッ!!」
 呪文字が触れた瞬間、姫の喉からは金属を擦り合わせたような悲鳴が上がる。
 炎の如く揺らめく文字は瞬く間に魔を侵し尽くして、その力を一気に奪い去る。
「これで、悪夢も終わりです」
 トドメとばかりに魅蓮が黒蓮の嵐をぶつければ、それに合わせてアカネも鎖を絡めた。
 呪文字と黒い花びらと、そして数多の鎖の三重で封じられた中からは悍ましい悲鳴が響き続けて――程なく、ぶつりと突然途絶える。
 やがて解けていった縛めの中に化生の姿などなく、まるで最初からそんなものは存在していなかったかのような、不気味な余韻だけが残されていた。


 ……そして。
 怨霊姫が消滅すると共に、武士の遺体も朽ち果てた。
 化生の尖兵と化していたとはいえ、その器は常人に過ぎない。そして姫が討滅された今、怨霊という理外に侵された武士たちの身体もまた、限界を迎えたのだろう。
 如何に生命体の埒外にある猟兵といえども、人の死ばかりは覆せない。
 血の痕に目を向けて立ち尽くす彼らに出来ることがあるとすれば……それは非業の死を遂げた武士と、蟲の餌食となった旅芸人たちが、せめて浄土へと辿り着けるように祈るくらいのもの。
(「どうか、どうか――安らかに」)
 想いを込めて、アカネが舞を奉じる。
 その厳かながらも虚しい様をじっと見つめながら、猟兵たちは主を喪った城や麓の町、そこに住まう人々の身すらも案じるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月12日


挿絵イラスト