6
アルダワ魔王戦争1-E〜定められた哀しき未来

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園
🔒
#戦争
🔒
#アルダワ魔王戦争


0




●未来を識った人形は哀しみを抱く
 胞子の満ちたあるフロアに一体の人形が泣いている。

「ああ、どうして……終焉を迎えることがわかっているのに彼らは戦うのでしょう……」

 その人形は未来を視る。
 未来を視ることで識ってしまった。

 これからここへ来るであろう彼らの未来に訪れるであろう終焉を。だからこそ人形は哀しくなった。

『どうして彼らは足掻くのだろう。ただ苦しくなるだけなのに』

 その理由がわからぬ人形はここで独り未来を視ては泣いている。

 未来とは常に移りゆくモノだと知らずに涙を流す。

●グリモアベースにて
「皆様、お疲れ様です。また新たな戦場が発見されました」

 グリモアベースで猟兵たちを出迎えたのはアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)。今回の戦争においてまた新たな戦場が見つかったらしい。

「今回発見されたのは特殊な胞子を振りまく迷宮キノコで埋め尽くされた戦場です。どうやらこの迷宮キノコの胞子は吸った者の精神に悪影響を及ぼす様なのです」

 群生する迷宮キノコの胞子には吸った者の感情を増大させる効果があるらしい。その効果に抵抗することも可能ではあるがそれに多大な精神力を使い、なおかつ災魔と戦闘を行うというのは些か厳しいだろう。

「このキノコは生えている場所でそれぞれ増大される感情が違うらしく、今回の戦場に生えているキノコは『哀』の感情を増大させるようです」

 つまり戦場にいつ限り敵味方問わず『哀』の感情が増大される。常に哀しさを抱いて戦わねばならない。

「感情を増大されるというのは厄介ですがこれは逆に利用することができます。増大されるのであればその感情を抑え込むのではなく爆発させてしまえばいいのです」

 感情を制御するのではなく身を任せる。通常であればあまり推奨されない戦い方だが今回はおそらくそれが最適解になるだろう。

「哀しみに満ちた戦場を越え、新たな未来を掴み取ってください。どうかご武運を」

 こうしてカーテシーと共に猟兵たちの転移が開始された。


灰色幽霊
 どうも、灰色幽霊です。

 今回は『哀』の感情が増大される戦場で未来を視る人形との戦闘になります。
 『哀の感情を爆発させること』でプレイングボーナスが発生しますので積極的に狙ってみてください。

 注意事項などはMSページをご覧ください。
 それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
109




第1章 ボス戦 『『宝石人形』未来のエメラルド』

POW   :    ノーフューチャー・ジャム
レベル×5本の【未来において敵の身体に必ず命中する、未来】属性の【大威力で、非常に高い命中率の宝石槍】を放つ。
SPD   :    運命の蔦
【自身の足元】から【UCを無力化する能力を持つ植物の蔦】を放ち、【捕縛する事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    ノルン・ザ・フェイト
【対象に対しての未来予知】が命中した対象に対し、高威力高命中の【UCを無力化する能力を持つ植物の蔦】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ララドランカ・アルトリング
アドリブ歓迎

いや、このキノコなんなのさ…結局、前回は無効化出来なかったし…リベンジ…今度こそ、胞子を全部喰いながら進めば行ける筈……

嗚呼、残念だ…思想の相違…きっと、骸でしかないお前達と解り合える日は来ないのだろう…故に、この場で果てるが良いさ…(白い涙を流しながら…やっぱり駄目だった)

【叉喰羅】発動…
ブラストで遠巻きに削りながら近付き(2回攻撃・傷口を抉る)
相手のUCはUCで「捕食」
接近後はスティングで「凪ぎ払い」
接触して「捕食」



●想いの違い、立場の相違

 キノコが生い茂る部屋を進む一人の影。それはララドランカ・アルトリング(Δ-6:白波姫・f18090)の物。キノコから出る胞子の満ちるこの部屋の中でララドランカの周囲だけぽっかりと胞子が消え、空白が生まれていた。
 説明によれば吸った者の感情を増大させるこの胞子、吸うことがトリガーであるのなら吸わずに直接身体に取り込めば無効化もできるはず。そんな目論見もあり、ララドランカはタールである自分の身体に接触した胞子を捕食し身体に取り込みながら進んでいた。

「ああ……やはり来たのですね。足掻いても結末は変わりませんのに……」

 そんなララドランカを出迎えたのはこの部屋の主である宝石人形の一体、未来のエメラルド。未来を見通し、植物を操るこの人形は猟兵たちがここに来ると知った上で逃げることもせず待っていた。

「どうして、どうして貴方達は戦うのでしょう……」

 この哀しみに満ちた部屋で紡がれるエメラルドの言葉紛うことなき心からの言葉。エメラルドは本当に猟兵たちの境遇を哀しんでいる。

「嗚呼、残念だ……思想の相違……きっと、骸でしかないお前達と解り合える日は来ないのだろう……故に、この場で果てるが良いさ……」

 その瞳から白い涙を流しながらララドランカはエメラルドへ言葉を返す。ララドランカの哀しそうな顔が示すのは吸い込まないという対策は結局意味がなく、体内に取り込めば変わらないということだった。
 胞子をその身に取り込んだララドランカの哀の感情は増幅され、猟兵である自身と災魔であるエメラルドの違いに涙をする。所詮過去でしかない災魔たちが未来に向けて足掻くということはないのだろう。ないからこそ何故それをするのかが理解できない。

  そしてララドランカもエメラルドに理解をしてもらおうとは思っていない。

「CODE EATER 起動」

 あらゆる物質を捕食するララドランカのユーベルコード【叉喰羅】。この部屋に足を踏み入れた時から発動していたそれのリミッターをここで解除する。両手に白い大槍と光線銃『白波姫スティング&ブラスト』を携えゆっくりとエメラルドの元へ歩み寄る。

「どうして……」

 ララドランカの行動が理解できないエメラルド。攻撃が当たるとわかっているはずなのにこちらへ近づいて来る。ララドランカがこれから通るであろう場所へ先んじて放たれる宝石槍。

「邪魔」

 その宝石槍を避けることなくその身で受けとめるララドランカ。

 確かに槍は命中した。

 しかし槍がララドランカの身体へ触れた瞬間にそこから分解され、捕食される。エメラルドから見れば予知の通り槍は命中している。だが実際はダメージが発生せずに槍はララドランカの餌となっている。

 槍を避けずにブラストを構えエメラルドへ斉射するララドランカ。当たる未来を見ていないエメラルドにその光線は当たることはないが歩み続けるララドランカとエメラルドの距離は次第に近づいていく。


 槍を、胞子を喰らい尽くしたララドランカの全身の細胞は活性化し食べた質量だけその力を増す。歩み寄り、その距離が零になった瞬間。

 振るわれる白い大槍が未来を見通す宝石人形を喰らい尽くした。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーア・ストリッツ
悲しい……確かに悲しいです
この戦いで大きく損傷するのが決まっている私がとても悲しい……
「修理にいくらかかると思っているのですか。直るまで不便な生活を強いられる私の身にもなって下さい」

なんで損傷が確定かと?
その必中大威力とかいう、チキンの特盛セットみたいなUCのせいですよ
「相手の体に必中。部位までは決まっていませんね?ならば喰らっても問題ない箇所で受けるまでです」
こんな身を切るような対処しか無いのが悲しいですよ、はい

機械の腕を盾に、わざと敵の宝石槍を受けつつこちらのUCを準備です
「例え両腕が砕けようとも。私の切り札には何の支障もありませんよ」
【氷雪竜砲】、喰らうが良いです

【アドリブ歓迎】



●変わらぬ運命、変える結果

「どうして自分の身体が壊れると知っても戦うの……?」

 自らの前に現れたフィーア・ストリッツ(サキエルの眼差し・f05578)に対してエメラルドは疑問を投げかける。自身も造られた存在であるエメラルドはその一点が理解できなかった。既に視た未来でフィーアは宝石槍に貫かれその身体を大きく破損する。

「どうして……?」
「どうしてもこうしてもないですよ。貴女を倒さないといけないからです」

 未来を視るエメラルドが言うのであればそれは事実なのだろう。その事実はフィーアにとってもただただ哀しい。

「修理にいくらかかると思っているのですか。直るまで不便な生活を強いられる私の身にもなって下さい」

 サイボーグであるフィーアならば多少の損傷であれば修理をすれば元通りに直る。とはいえパーツを換装すればすぐさま直る物でもなく修理が完了するまではその箇所は自由に動かせない上、修理をするにもパーツ代や作業代といった経費も掛かるのだ。

「わからない……わからないわ」

 フィーアはその言葉とは裏腹に戦いの意思を無くしてはいない。哀しみながらも覚悟を決め、ここにいる。

 そしてそれがエメラルドにはわからない。

 どうして自分の身体を労わらないのか。直るからいいというものでもないだろう。
 どうして不便な生活を享受するのか。最初からそうならない方がいいだろう。

 宝石槍の当たる未来を知って尚戦いに赴く理由がわからない。

 しかし未来が決まっている以上エメラルドの行動も決まっている。エメラルドの背後で形成される宝石槍。その矛先が指す今は何もない場所。だが、この未来を宿す槍は絶対に外れることなくフィーアの身体に命中することも確定している。

「哀しいですがその槍は相手の体に必中。しかし部位までは決まっていませんね? ならば喰らっても問題ない箇所で受けるまでです」

 そして哀しいことだがそれをフィーネも認識している。故にフィーネが取れる手段は一つしかない。

 放たれる宝石槍。それがフィーネの右肘から先を吹き飛ばす。
 放たれる宝石槍。それがフィーネの左手首を斬り落とす。

 これでフィーネの両腕は手としての役割を失った。ならばもうただ盾としての役割だけあればいい。次々と迫る宝石槍の全てを盾と化した両腕を砕きながら弾き飛ばし、フィーネは前へ、前へと進んでいく。

「例え両腕が砕けようとも。私の切り札には何の支障もありませんよ」
「どうしてそこまで……」

 フィーネの両腕は肩から先が消失していた。それを代償たどり着いた切り札の間合い。それは竜騎士たるフィーネの奥の手である【氷雪竜砲】。

 大きく、深く吸い込んだ息。吐き出されたそれは吹雪へとその姿を変え、未来を見通す宝石人形を宝石槍ごと飲み込んだ。

「ああ、こんな手では何もできないではないですか……」

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィルフレッド・ラグナイト
戦闘中は知らずに流れた涙を零し続ける
けれど心に宿る希望を思い、戦闘に臨む

敵の攻撃はなるべくは避け、避けられそうにない場合は剣で切り払う
時にはゼファーが蔦を呼び出して相殺してくれると信じて
致命的な一打になると思われる攻撃には絶望の福音で避ける
「貴女が視る未来はどんな光景でしたか?」
相手が未来を視るなら
私も僅かな未来を視て、か細くとも可能性のある未来を視て選びます
そうして間合いを詰めて攻撃を行う

「人は足掻くものなんです。どんなに苦しくても、つらくても…」
この流れる涙は、誰のためなのか。
目の前の人形か、過去に失ったものか、はたまた自分自身のためなのか。
それがわからないことも哀しいのかもしれない



●希望の騎士、絶望の福音

「どうして貴方は泣いているの……?」
「どうしてでしょう……私にもわかりません。何故か止まらないのです」

 エメラルドの前に現れたウィルフレッド・ラグナイト(希望の西風と共に・f17025)はこの部屋に足を踏み入れた瞬間から止め処なく涙を零し続けていた。それが胞子により増大された感情だとしてもこの涙の意味をウィルフレッド自身が理解していなかった。

 未来を嘆く目の前の人形のために流れるのか。
 過去に失った今は記憶にないなにかのためなのか。
 現在もこうして戦い続ける自分のためなのか。

 この涙が誰のために流れるのか。

 それがわからないということはそれもまた哀しいことなのかもしれない。

「涙を流す理由がわからないなんて哀しいこと……」
「それでも戦わなければいけないんです」

 溢れ出る涙を拭いすらせず、ウィルフレッドは『誓剣エルピス』を抜き放ちエメラルドに接近する。
 足元から伸びる蔦を操りエメラルドはウィルフレッドの動きを止めるべく手足を狙う。それを斬り捨て、切り払い、すれ違う様によけながら前へと進む。ただ愚直に前へ進む。

「どうして……」

 エメラルドは既にウィルフレッドが自身の元へ届く前に蔦に囚われる未来の光景を視認している。

 それなのに

 どうして

 この人はその未来を越えて近づいてくるのか。

「貴女が視る未来はどんな光景でしたか?」

 今も右手を絡めとる筈の蔦が飛び出した小竜ゼファーが噛り付き噛みちぎる。
 そしてまた一歩こちらへ近づいてくる。

「貴方は本当ならもうこの蔦に掴まっていたはず……」
「そうですか……ですが私はその未来を選びません」

 【絶望の福音】。
 それは希望を心に宿した騎士が現実に抗い続けるために舞い降りるたった10秒先の未来を見通すためだけのモノ。常に未来を視続けているエメラルドに比べれば細く、短い、絶望という闇の中を照らす福音という光。ウィルフレッドはその中からか細くも可能性のある未来を視て選び取る。
 未来を掴む力がエメラルドより劣ろうとも、止め処ない涙が視界を曇らせようとも、前を向き、先のある未来をその剣で斬り拓く。その身に迫る蔦を退け一歩ずつ前へ進む。

「どうして……そんなに哀しい顔をしているのに」
「人は足掻くものなんです。どんなに苦しくても、つらくても……」

 誰かの希望を護るためにもウィルフレッドは足掻き続ける。どれだけ哀しみに包まれても涙を溜めて、歯を食いしばり足掻き続ける。

「そして足掻き続ければいつか未来にたどり着くのです」

 一歩ずつ愚直に進み続けた騎士はついに人形をその剣の間合いへと捉える。

「こんな未来は知らないわ……」

 未来を視続けた人形も知らぬ未来。それが進み続けた騎士がその手に収めた現実という名の結果。不確定な未来を足掻き続けた人が掴み取った希望。


 心に宿る希望をその剣に込め、騎士は零れ落ちる涙と共に振り上げた腕をただ一直線に振り下ろす。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
はぁ……どうしてよりによってバレンタインも誕生日もこの月にあるんだろ……
(高速詠唱全力魔法で炎のオーラ防御を自身に展開。UCの蔦が来たら可能なら焼却予定)

のんびり好きな人と話す時間、普段取れない大切な時間……
戦争のせいで潰れちゃうよ……
(※依頼参加前から既に落ち込んでいる人)

未来が書き変わってしまえばいいのに……
全部全部ぶち壊しちゃえ!!
(可能ならUC発動
蔦が燃やされた未来を持ってくる
念動力で油をぶちまけさらに加速
必要なら多少のダメージは厭わない)

辛い、苦しい、悲しい
きっと、絶対、この世界を塗り替えて見せる



●決められた未来、塗り替える世界

「はぁ……どうしてよりによってバレンタインも誕生日もこの月にあるんだろ……」

 迫りくる蔦をその身に纏う炎で焼き払いながらも鈴木・志乃(ブラック・f12101)は静かに落ち込んでいた。哀しいかな志乃の誕生日は2月の27日。つまりこの戦いの期間中であり慌ただしさの真っ只中にある。それに加え月の半ばにはバレンタインと言うイベントも存在する。その準備にも時間は必要。

 つまりのんびりと好きな人と話す大切な時間も慌ただしさで流されてしまう。

「貴女は何を哀しんでいるの……?」
「これからの未来だよ……」

 自らが生まれた日は永劫変わることはない。過去は変わらないというのは絶対の法則。
 しかし未来は認知こそされても確定はしていない。つまり未来にはまだ変わる余地がある。

「可哀そうな人……」

 エメラルドには視えている。志乃が忙しさで忙殺され、たった独りで過ごす日々が。大切な人と共に過ごすことができない未来が。そんな哀しい思いをさせるくらいなら今ここで終わらせるのが優しさだろう。エメラルドは再び足元から蔦を伸ばし志乃を絡めとらんと伸ばし迫る。

「未来が書き変わってしまえばいいのに……」

 独りで誕生日を過ごす未来。
 大切な人と話すことのできない未来。
 戦いに明け暮れる未来。

 そんな未来は要らない。欲しいのはもっと幸いに満ちた未来。

「全部全部ぶち壊しちゃえ!!」

 志乃の願望があふれ出しユーベルコ―ドが発動する。それは【未来を願う世界の意志】と言う名の限定的な未来改変能力。志乃自身に未来を願う世界の意思を纏うことで志乃は一時的に未来を変える力を手にすることができる。

 手始めに改変されるのは迫りくる蔦。
 ただの伸び続けてた蔦は唐突に炎に包まれ灰となり焼け落ちる。エメラルドが観測した蔦が伸び、志乃を拘束するという未来が改変され、蔦が燃えるという未来に置き換えられた。
 さらに燃え盛る蔦へ続けざまに投入される念動力で操られた油が炎の勢いを増し、周囲を火の海で包み込む。

「貴女はなにがしたいの……?」
「言ったでしょ? 要らない未来をぶち壊す、って」

 戦いに明け暮れるだけの未来など要らない。そんなものは燃え尽きてしまえばいい。周囲の炎がその身を焼こうと志乃は炎を絶やすことなく燃やし続ける。宝石人形も志乃本人も炎に包まれ焼かれていく。

「辛い、苦しい、悲しい」

 しかしそれでも炎は弱まることを知らない。

「きっと、絶対、この世界を塗り替えてみせる」

 他の誰でもない志乃がそう決めた。
 その近いと共に胞子が満ちるこの部屋の総てが炎に包まれた。


 未来は未だ不確定。白紙であり何色にも染まる。これから塗られる色は何色か……。

成功 🔵​🔵​🔴​

バルディート・ラーガ
敵サンの能力、未来予知と来やしたかい。
そーいうモンが昔にありゃ、あっしの生き様も違ってたンかねエ。
盗っ人に、更にゃ呪われ人にまで落っこちて
アルダワの親兄弟に今更顔会わせる事すらできやしねエ。

敵サンの諳んじる未来予知に抵抗こそしてみせやすが、
きっと避けられねエ。UC封じの蔦があっしを襲うでしょう。
『激痛耐性』で堪えようにも、反撃の手段が最早…。

……イエイエ。隠し球はまだございやす。
予め切り離しといた、這いずる炎の蛇!
未来予知の「対象」から外れ、封じられてねエ蛇にて
蔦に噛み付いて燃やしちまいやしょ!

そ、決まった未来は変えられっこ無エ。悲観していればこそ
視点をズラして足掻く策が浮かぶンです。ヒヒヒ。



●あり得た未来、変わらぬ過去

(未来予知ですか……)

 バルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)はエメラルドの能力を聞いてふと思う。

 もし、自分にそんな能力があればどうなっていただろうか。

 盗っ人にならず、その後呪われることもなく、両の手はそのまま残っていたかもしれない。
 そうすればアルダワでお尋ね者になることなく、この世界から逃げ出す必要もなかったかもしれない。
 今もアルダワにいる親兄弟とも何不自由なく笑いあえていたかもしれない。

 そんな風に生きていられたらどんなに幸せだったか。

「哀しい人……」
「エエ、そうでしょうねエ……」

 エメラルドの瞳は既に蔦に捕らえられ成す術がなくなったバルディートの姿を視認している。ならばあとはこの未来にたどり着くように進めばいいだけ。ただなぞる様に動けば片腕のドラゴニアンなど取るに足らない存在でしかない。
 伸びる蔦から逃げるように部屋の中を駆けるバルディートだが未来の見えているエメラルドにとってはその行動ですら既知の範囲内に過ぎない。例え数本の蔦を躱したとしてもその先に待ち構える数十本の蔦がバルディートの右腕と両の足を拘束し、その動きを封じ込める。

「どうして無駄なことを……」
「あっしじゃだめでやしたか……」

 手足を拘束した蔦はそのままバルディートの身体全体を締め付け、捩じ切らんと力を強める。まだかろうじて耐えられる範囲の痛みではあるが右腕も、右足も、左足も動かぬこの現状。それに加え蔦の能力なのかユーベルコ―ドの発動もできなくなっていた。

「……さようなら」

 エメラルドの別れの言葉共に引き絞られる蔦。囚われたバルディートの身体が千切れようとするその直前。

 バルディートは大きく口を開いた。

「……イエイエ。隠し球はまだございやす。あっしでだめならあっし以外。動けるやつに助けていただきやしょう!」

 その言葉と共に燃え落ちるバルディートの身体に巻き付いていた蔦。エメラルドは何が起こったのかわからない。バルディートの未来は確かに視た。バルディートは何もできず蔦に捕まりそのまま締め落とされるだけだったはず。

 しかしそうはならなかった。

「こいつをね? 予め切り離しておいたンです」

 燃える蔦をよく見れば、その傍らになにやら黒い紐状のナニカ。

 それこそこの部屋に入ると同時に切り離しておいたバルディートの左腕の炎を触媒に召喚された黒炎の蛇。エメラルドが視たのはバルディートの未来だけでありこの蛇は認知の外にいた。

「そ、決まった未来は変えられっこ無エ。悲観していればこそ視点をズラして足掻く策が浮かぶンです。ヒヒヒ」


 蔦を燃やし尽くした黒炎の蛇はその顎を人形へと向け噛みついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(元々哀しい境遇のオブリビオンに同情的な為、嘆きながら戦うことも多く胞子の影響で悪化)

哀しいですね
理由はどうあれ私達の為に涙を流してくれる方に剣を向けるのは
そして普段通りの動作精度のこの鋼の身が

UCの影響で未来視が過剰強化され、私が落とし穴に落ち、テレポートし、自爆し、魔法を使う等「無視できる有り得ない未来」を処理しきれず宝石槍の制御を失って哀しむ貴女の姿が

同じ被造物として、性能が発揮できない哀しさは私にも理解できます

槍を武器受け盾受けで武器落としし、歩み寄って一太刀

一番哀しいことは、泣いてくださった貴女と私達が手を取る未来…有り得ないとしても、それを見せることが私には出来なかったことです



●変わる想い、変わらぬ鋼

 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は苦悩する。
 元より騎士足らんとするトリテレイアは胞子の影響がなくともオブリビオンに同情的であり、その中でも悲劇的な過去を持つモノを救えぬことを嘆きながら戦ってきた。それがこの部屋に足を踏み入れ、胞子を吸収したことでより一層強化されていた。

「哀しいですね……理由はどうあれ私達の為に涙を流してくれる方に剣を向けるのは」

 しかし言葉とは裏腹に迫りくる宝石槍をその手に持つ剣で弾き逸らす。その動きに一切の躊躇も遅延もなく、まさしく普段通りのトリテレイアの動きそのものだった。
 トリテレイアの身体は機械。つまりは意志こそあれどプログラムされたとおりにその身は動く。例え自らの意思が揺らごうとその身体はただいつもの様に誰かを護り、敵を討つ。

 そしてその鋼の身はこの場における最適解を導き出し、情け容赦も躊躇もなく実行する。

 トリテレイアの身体に格納されていた【対ユーベルコード制御妨害力場発振器射出ユニット】、通称アンチ・ユーベルコードフィールドジェネレーターが射出されこの部屋の中を特殊なフィールドが包み込む。胞子はユーベルコ―ドではなくキノコ自身の効果であり影響を受けないがエメラルドが視る未来は多大な影響を受けてしまう。

 未来とは本来、数限りなく存在するモノ。
 未来視とはその中から最も有り得る未来を取捨選択し知覚するモノ。

 その未来視が何らかの要因で暴走するとどうなるのか。

「な……ぜ……」

 エメラルドの処理領域に流れ込んでくる膨大な量の情報。
 それは本来無視できるほどの可能性しか持たぬ有り得ない未来。

 そこにはただ一歩進むだけで迷宮の床が抜け、そこから落下するトリテレイアが。
 そこにはかつての遺失技術を再現し、ワープを自在に操りテレポートするトリテレイアが。
 そこには電脳が突如過負荷を起こし、周囲一帯を巻き込み自爆するトリテレイアが。
 そこには周囲に満ちる魔力を吸収し、魔法を行使する術を身に付けたトリテレイアが。

 暴走した未来視により無限に近い数のIFを知覚してしまったエメラルドは情報の処理を終えることができず、ただそこに在り未来を視るだけのモノとなる。

「同じ被造物として、性能が発揮できない哀しさは私にも理解できます」

 制御を失い、ただ宙に浮くだけとなった宝石槍をトリテレイアは手に持った剣で落としエメラルドへ歩み寄る。

「一番哀しいことは、泣いてくださった貴女と私達が手を取る未来……有り得ないとしても、それを見せることが私には出来なかったことです」

 誰かを想い、涙を流せる人形と手を取る未来。きっとエメラルドが災魔である以上はあり得ないのだとしても、もしかしたらという可能性すら見せてあげることができなかった。それがトリテレイアは一番哀しかった。


 鋼の騎士は理想を希いながら手に持つ剣を振り上げる。
 鋼の電脳は現実を噛みしめながらその剣を振り下ろす。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロ描写NG
POW

悲しいわね……
なまじ未来が見えるばかりに
移り変わる未来に翻弄されるなんて……

守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力増強。
『芳しき熱愛』で物理攻撃無効の汚泥と化し
絶対命中の宝石槍を受けても再生

私が貴女を救ってあげる……
私にしか救えないの……
貴女達と同じ……人類から否定される私にしか……

相手を【念動力】で引き寄せ
悲しみさえも蝕み、幸福を感じるほどの
猛毒と【呪詛】を宿した汚泥の体で包み込み
【誘惑・催眠術】で 愛を囁き【慰め】ながら【生命力吸収】

私がずっと傍にいてあげる……
だから貴女も、ずっと私の傍にいて

過去と切り捨てられる事も、未来に怯える事も無い……
永遠の楽園に行きましょう



●独りの過去、2人の未来

 度重なる猟兵との戦闘によりエメラルドは既に崩壊寸前となっていた。

「どう……して……?」

 しかし未来を視ることだけは止められない。それがエメラルドをエメラルド足らしめている根幹であるが故に。

「哀しいわね……」

 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)はそんなエメラルドの姿を見て嘆く。

「なまじ未来が見えるばかりに移り変わる未来に翻弄されるなんて……」

 不変ではない未来。本来であれば今が変われば未来は変わるもの。だがエメラルドにとってはそうではない。未来が変われば今が変わる。何らかの要因で未来が変わればそうなる様に今も変えねばならないのだ。

 そんなエメラルドを見てドゥルールはただ哀しくなった。どうにかしてあげたいと思ってしまった。未来に翻弄される過去である宝石人形の為に何かを―――。

 そのためにはまずエメラルドの元へたどり着かねばならない。しかしそれにはあの宝石槍が邪魔。ならば、とドゥルールはその身にかつて英雄と悪役が跋扈する世界で身に付けた肥溜めの王とその最愛の魂を宿し自らを強化する。その魂を取り込んだドゥルールの身体は汚泥と化し物理的な攻撃の無効化が可能になる。

「私が貴女を救ってあげる……私にしか救えないの……貴女達と同じ……人類から否定される私にしか……」

 宝石槍がその身を貫こうと汚泥の身体は即座に再生し前へ進む。どれだけ宝石槍が放たれようと、どれだけ身体が貫かれようとドゥルールは前へ進みエメラルドへ近づいていく。

 手の届く距離まで近づけばドゥルールは念動力でエメラルドの身体を引き寄せ、そのまま広げた腕で包み込む。
 猛毒を宿した汚泥の身体が触れたエメラルドの身体を蝕んでいく。

「私がずっと傍にいてあげる……だから貴女も、ずっと私の傍にいて」

 そのまま囁かれる愛の言葉。もはや満身創痍のエメラルドに抵抗する力は残っていない。それどころか毒や呪詛、催眠により苦しさすら幸福と感じている。

「過去と切り捨てられる事も、未来に怯える事も無い……永遠の楽園に行きましょう」

 ドゥルールの姿を視界に捉え、エメラルドが最後に視た未来は自分自身の最期だった。
 エメラルドが視た自身の最期は得も言われぬ幸福に包まれながらの機能停止。それはまさに今この状況そのものだった。例えそれが毒によるものだとしてもエメラルドは幸福だった。

 そして最後にやっと気づいた。

 どうして猟兵たちが足掻くのか。それはなんとなくわかった気がする。
 いづれ来る結末だとしても彼らは自らそれを決めたいのだ。流されるのではなく自らの手で。
 例えそれが辛く険しい道だとしても。

 人形は猟兵たちを視てそれに気づいた。


「おやすみなさい」

 その言葉を聞き届け、未来を視る宝石人形は腕に抱かれて機能を停止した。




 『哀』の感情を増大させる部屋での戦いはこうして終結した。
 しかしこの戦争はいまだ始まったばかり。


 猟兵たちは迷宮のさらに奥へと進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月06日


挿絵イラスト