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アルダワ魔王戦争1-E〜罪を抱いて進め

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●罪を覚える迷宮
 足をそっと、前へ出す。
 ぐにゃりとした感触が足裏に伝わったかと思えば、それは炎が上がると同時に消え去り、辺りには焦げた臭いが漂った。
「ヒッ」
 ルビーと同色の炎を纏うミレナリィドールの少女は、自身が引き起こしたことを目にして小さく悲鳴を上げ、思わず後退った。すると背後で再び炎が燃え上がる。
「あ、あぁぁ……」
 恐る恐る振り返った少女人形は燃える通路に目を見開き、顔を引き攣らせた。
 そうして、とうとう前にも後ろにも動けなくなり、胸を押さえながら崩れ落ちるように床に座り込んでしまった。
「あああどうしよう、どうしたらいいの。私のせい、私のせいでこんな……どうせなら私が燃えればいいのに」
 ぶつぶつと何事かを呟き可能な限り小さくなろうと蹲る人形を包みこみながら、赤い炎は主の意思に反して迷宮内を煌々と照らし、床や壁や天井、その全てに夥しく繁殖した毒々しい色合いのキノコを燃やす。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
 その後、胞子と灰が雨のように降り注ぐ空間には、罪深く燃える炎の音とか細い謝罪の声だけが響き続けるのだった。

●状況説明
 テレビウムのグリモア猟兵、遠千坊・仲道(砂嵐・f15852)は自身のテレビ画面に映していた予知を消すと、静かに腕を組んだ。
「予知に出てきたのは、触れた相手に深い『罪悪感』を齎す特殊な胞子を吐くキノコが大量繁殖した場所だ。胞子はオブリビオンも猟兵も関係なく、その場にいるやつ全員に悪影響を及ぼすぜ。しかも、そうやって増幅された罪悪感は思考力や判断力を低下させるだけじゃない。歩くことや息をすること、そういう普段何気なく行える行為すら困難にすることだってある。……あんたたちのことだ、その気になれば感情を抑え込むことだってできるだろうぜ。だけど、それにはかなりの精神的負荷がかかる。そのせいで戦闘が行えなくなっちまったら、本末転倒だよな? だから、つまりな」
 仲道は躊躇うように一呼吸分の間を置くと、組んだ腕に力を籠めて続ける。
「――抱いた罪悪感をそのまま力に変えて、戦ってくれ」
 無茶ぶりは重々承知していた。だが、現段階で他に有効な手段はない。
 強制的に罪悪感を植え付け増幅させる胞子。それは、人によっては過去のトラウマすら呼び起こしかねない精神的苦痛を味わわせることになるだろうとは想像に難くなかった。
「……じゃ、後は頼んだぜ、猟兵。終わったら、さっさと帰ってこいよ」
 仲道は最後まで何事か言いかけながら、しかし飲み込んで、旅立つ猟兵たちを見送るのだった。


葛湯
 アルダワ魔王戦争だ!
 初めまして、お久しぶりです。葛湯(くずゆ)と申します。
 どうぞお手柔らかにお願いします。

●シナリオ説明(ざっくり)
 第一章 ボス戦『『宝石人形』情熱のルビー』
 罪悪感を抱えながら敵を倒してください。
 感情を抱く対象は何でも構いません。
 ※一章完結の戦争シナリオです。

●プレイングボーナス条件
 『罪悪感』を爆発させるプレイング。

●お願いと諸注意
 青丸が目標数を達成し次第、締め切ります。
 それ以降は余力があれば書きたいです。
 同行者がいる場合は冒頭に分かりやすく記載をお願いします。
 キャラの性格を把握するため、台詞例や心情描写があると助かります。
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第1章 ボス戦 『『宝石人形』情熱のルビー』

POW   :    パッション・オブ・ファイヤー
レベル×1個の【絶対に鎮火する事も無く、全てを燃やす不滅】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    スティレットレーザー
レベル分の1秒で【全身から、光速で放たれる超威力のレーザー】を発射できる。
WIZ   :    人形転生~リバーシブル・フェニックス~
自身が戦闘で瀕死になると【自身と同じUCが使用可能な自分自身】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:潮音

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イージー・ブロークンハート
おええ。吐きそう。つらい。膝から崩れたい。
…普通の下町で普通の家族と普通に生きて平穏に死ぬはずだったのを、ただ何となく気づいたら何もかも離れた場所来て命かけた剣とかやってて…そうか俺は家族も人生も命すら興味なかったんだって…罪悪感がひどい。涙が出る。
罪悪感を初めて感じるのも、つらい。
わかる。すげえわかる。
思うよな、なんだってこんなことに。そういうつもりじゃなかったのに。苦しいよな。俺も。
うん、だけど、だからわかるよな、そう。
そんなつもりなくても。
俺もあんたも、自業自得なんだ。
【激痛耐性・見切り・限界突破】
いいよ、焼いても。立ってるよ、俺。
代わりに、斬ってやる。
(アドリブ・ピンチ・協力可能です)



●イージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)は砕け散る
 
 ――キシキシと硝子に罅が入る音を聞いたのは、もう何度目のことだったか。

 視界に映る風景が変わったと、気づいて間もなく。
 イージーは自身でも予期していなかった激情に襲われて壁に手をついた。
「う゛、おぇえ゛……っ?!」
 胃の中のものが不意に喉元までせり上がってくる感覚に思わず背を丸めてえずきながら、イージーは目を白黒させた。
 自分に罪悪感がないと、思っていたわけではない。だが、これほどまでに苦しく、痛みを伴う感情を引き起こすような覚えもなかったのだ。
 そしてそれこそが、イージー・ブロークンハートの罪だった。
「俺、は……」
 オブリビオンの放つ炎で熱気の籠る迷宮内にいながら、イージーの頭は冷や水を浴びせられたように凍りついていた。
 酷い罪悪感と共に脳裏に浮かんだのは、もはや思い出すこともなくなっていた、過去の人生だった。

 かつてイージー・ブロークンハートは本当に、どこにでもいる普通の男だった。
 平凡な下町に暮らし、並の家族をもち、それなりに生きて、いずれ平穏に死ぬのだろう、ただの人間だった。
 それが、いったいどこで道をそれたのか。ふと気がつけば、自身は硝子の魔剣を佩き、数多の世界を渡る猟兵として、故郷から遠く離れた地へと文字通り命を砕く戦いに身を投じていた。
 家族恋しさに振り返ることも、過去の生を懐かしむことも、硝子に変化していく体を惜しむことも、ただの一度もないままに。

「……そうか、俺は家族も人生も命すら興味なかったんだ」
 独白するイージーの眦には、じわりと涙が滲んだ。
「罪悪感を初めて覚えるのも、つらい。……つらい、つらい」
 己の罪を自覚し感情を吐きだすごとに、背にかかる重圧は立っていられるのが不思議なほどに大きくなり、一瞬、膝から崩れ落ちてしまいたいという考えがイージーの頭を過った。
 しかし。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
 耳に飛び込んできた少女の声に顔を上げたイージーは、火に囲まれたオブリビオンの姿を見ると、よろりと思い出したように立ち上がった。
 そして、覚束ない足取りながらも真っ直ぐに歩み始めたのだ。
「わかる。すげえわかる。思うよな、なんだってこんなことに。そういうつもりじゃなかったのに。苦しいよな。俺も」
 蹲る少女を慰めるように、けれどどこか自分に言い聞かせるような口調で、僅かに声を震わせながら、イージーは語る。その手に握られるのは、揺れる炎を透かす硝子の剣。
「うん、だけど、だからわかるよな、そう。そんなつもりなくても」
 近づいてきた外敵に反応して勢いを増す炎に全身を覆う服を焼かれ、その下の皮膚まで炙られながら、イージーはその間合いに入るまで歩み続け、立ち続けた。
「俺もあんたも、自業自得なんだ」

 ――硝子の割れる音を聞くのは、あと何度だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
罪悪感? 誰がお前なんかにそんな物を…

罪悪感を抱く対象は【自己証明】による
『期待、祈り』の声。
自分を救ったそれらに報いる為に、救った価値があったと証明する為に
英雄になろうとしているのだから、在り方の根底が罪悪感の塊だからね。

違う、違う、ごめんなさいごめんなさい…。
すぐに証明して見せるから。
私が、絶対に、あなた達の行いは間違っていなかったって…
今目の前に、敵がいるから。

【自己証明】で能力強化。
呪縛を引いた場合【止まる事なかれ】で呪縛を変換。
被弾を無視して傷つく事を厭わずに真っ直ぐ行ってぶっとばす。



●宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は聞こえない
「罪悪感? 誰がお前にそんなものを……」
 ライアは戦いに消極的な様子のオブリビオンに眉をひそめ、独り言ちた。
 敵意を剥き出しにして攻撃してくる相手なら、一切の躊躇なく倒せただろうに。これではまるで、弱い者いじめではないか。英雄の、ヒーローのやることではない。
 しかし、目の前にいるのは一般人ではなく、オブリビオンなのだ。人形自身が口にしたように、彼らは明確なる“世界の敵”であり、放置すれば世界を滅ぼす存在。
 ならば、たとえ気が進まずとも、やれることはひとつだけだ。ライアは固く拳を握りしめると足を前へ踏み出した。
 ところが、そうして数歩進んだ時点で、ライアは透明な壁にぶつかったかのように突然立ち止まった。
「……違う、違う、ごめんなさいごめんなさい……」
 総身を震わせ、ライアは譫言のように違う、ごめんなさい、と繰り返す。その目は瞳孔が開ききり、ここではないどこか、あるいは恐ろしい何かを見ているようだった。
 いや、正確には、“聞いて”いたのだ。自身の内に満ち、巡り続けるノイズのような声を。

 初めて己が罪悪を知るものがいる一方で、対照的にライアの人生のほとんどはそれを基盤として成っていた。
 ヒーローになりたいと口癖のように語るのも、昼夜を問わず全身を苛む耐えがたき痛みに黙して耐え続けるのも、人々を救うため化け物と成り果て敵を屠り、救った者にその姿を謗られようと常に笑みを湛えヒーローたらんとし続けるのも、全て。
 そうしたライアの在り方の全てが、同じ奈落から生じた罪悪感を起点としていたからだ。
 それは選ばれ、託され、救われた――多くの死を代償に。それが宮落・ライアの罪悪であった。

 違えられぬ期待は焦燥に、内に響く祈りは呪詛に。罪悪感という毒に侵された心はやがてライアの認識を歪ませ、自らが作りだした地獄へとライアを誘う。
「すぐに証明して見せるから。私が、絶対に、あなた達の行いは間違っていなかったって……」
 加減なく握りしめられた拳の爪が手のひらの皮膚を破り、血を滴らせたのを皮切りに、驚異的な自己治癒能力により傷ひとつ作られないはずの素肌には過去の戦闘で受けた損傷を復元したかのように大小様々な切り傷が浮き上がり、全身は傷から流れる血で真っ赤に染まった。
 ライアは自身の惨状を顧みることなく、赤い涙を零す両目をひたと正面に据えた。
「今目の前に、敵がいるから」
 急速に膨れ上がった殺意にオブリビオンの防衛本能が反応し、ライアに向かってレーザーが飛んだ。光速で放たれたそれらは、ライアの四肢に水玉のような穴を開け、新たな血を溢れさせる。
 それでもライアは痛みを感じないかのように躊躇なく火の海へと突き進み。
「――ごめんなさい」
 響き続ける祈りの声の向こう、聞こえるオブリビオンの声を掻き消すように、傷だらけの拳を振りぬいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
──ごめんなさい。ずっと騙していてごめんなさい。
ずっと嘘をついていてごめんなさい。ごめんなさい……。

本当のことは言えないよ
幸せそうに笑う顔を歪ませたくなくて、辛くて、
いつか私がいなくなることなんて何にも知らずに今日も貴方は

吐きそう
苦しい
それでも、そう、戦わなきゃ
この世界の全てを幸福にする為に
それだけが──私が貴方に遺せる全て
だから──戦うの

全力魔法で拡声した大声による歌唱の衝撃波(UC)で相手の鼓膜から意識から敵UCまで全てをなぎ払い攻撃する

私の愛する全てを脅かされてたまるもんですか
この胸がたとえ押し潰されようとも、それだけは絶対に許さない

第六感で攻撃を見切り光の鎖で早業武器受け
念動力で捕縛



●鈴木・志乃(ブラック・f12101)には秘密がある
 奇妙な熱と重苦しい空気に満ちた迷宮で、ひとり苦悩する者がいた。
「――ごめんなさい。ずっと騙していてごめんなさい。ずっと嘘をついていてごめんなさい。ごめんなさい……」
 黒のキャップ帽を目深に被った志乃は、静かに涙を流しながら愛しい人の姿や声を心に浮かべる。
 いつもなら胸を温める記憶が、今だけは酷く悲しい。
(本当のことは言えないよ。幸せそうに笑う顔を歪ませたくなくて、辛くて、いつか私がいなくなることなんて何にも知らずに今日も貴方は)
 分かっていた。大切な相手ならば尚更、伝えるべきなのだと。それでも志乃は言えなかった。
 自分に向けられる笑顔が歪む様を見たくなかった。
 幸福な日々がいつまでも続くような錯覚をしていたかった。
 ――“いつか”が訪れたときのことを考えたこともないようなふりをして。

 志乃は薄い酸素を取り込むように荒く呼吸し、そっと喉を押さえた。
「それでも、そう、戦わなきゃ」
 吐きそうになりながら立ち上がり、いまだ溢れる涙を拭う。
「この世界の全てを幸福にする為に。それだけが、私が貴方に遺せる全て。だから──」
 志乃の潤んだオレンジ色の虹彩が、意志を宿して揺らめいた。
「戦うの」
 僅かに震える喉で、すぅ、と深く息を吸う。
(私の愛する全てを脅かされてたまるもんですか。この胸がたとえ押し潰されようとも、それだけは絶対に許さない)

 迷宮の内で、炎は猟兵たちを取り込みながら徐々にその激しさを増していた。
 宝石人形の不滅の炎はコントロール能力を失った主の手を離れ、対象を焼き尽くすまで止まらないように見え。キノコの迷宮は今、さながら地獄絵図のようであった。
「ごめんなさい、ごめんなさい。止め方が分からないの。これもぜんぶ私のせい? でも、あなたたちが攻撃するから……だけど、やっぱり私のせいなのかも。ああ、もう分からない。私、どうしたらいいの?」
 オブリビオンとしての役目と強制的に植え付けられた罪悪感の間で板挟みになった宝石人形は、少女のように戸惑いながら災厄をばら撒いていく。そのときだった。
 苦悶する人形は突如として“何か”に襲われ、吹き飛ばされた。
 意識を失う間際に聞こえたのは、この世のものとは思えぬほどに美しく、澄んだ歌だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

照崎・舞雪
……
………
ええ、はい
確かに多少の罪悪感を、感じていなかったといえば嘘になるのです
バレンタインにチョコと偽り、適当なアルダワ男子生徒を呼び出しては魔法薬の試薬を渡してその効果を確かめる実験行為
まさか、こんな形で過去の罪が襲って来るとは思わなかったのです
まぁ今年も同じことやるんですけども

押しつぶされそうな罪悪感を感じますが
犠牲となった男子生徒達(死者はいない)に報いるため
せめてもの罪滅ぼしに
私はその魔法薬を使って戦いましょう
毒性の魔法薬を巨大注射器に装填
すっごくかわいいポーズで敵の動きを止めた所をブスリといってやるのです
ああ、かわいいことも罪なのです。辛いのです



●照崎・舞雪(未来照らし舞う雪の明かり・f05079)は可愛すぎる
 罪悪感に苛まれ、苦悩する仲間たちを遠目に眺めながら、舞雪は人差し指を顎にあてて可愛らしく小首を傾げて思考していた。
 胸に重く圧し掛かっている罪悪感、その発生源はどこからか。
 そして浮かぶのはアルダワ学園の空き教室。目の前にいるのは照れくさそうに顔を赤らめ、期待に満ちた目で自分を見る男子生徒“たち”の姿。そして彼らの手に握られている、とても見覚えのあるハート型の箱――と、そこで舞雪ははっきりと思い出した。
 バレンタインにチョコレートと偽って男子生徒を呼び出し、試作の魔法薬の実験台にした過去を。
「……ええ、はい。確かに多少の罪悪感を、感じていなかったといえば嘘になるのです。ただまさか、こんな形で過去の罪が襲って来るとは思わなかったのです。まぁ今年も同じことやるんですけども」
 はあ、胸が痛いのです。言いながら舞雪はどこか芝居がかった仕草で胸に手をやり、憂いを帯びた表情をした。
 このとき舞雪を見ていた者がいたならば、『えっ、それ本当に思ってる?』と疑惑の目を向けただろうが、幸い(?)この場にいる者は皆それぞれに忙しかった。
 罪悪感の分析を済ませ満足したのか、舞雪はキノコの中から起き上がりだしたオブリビオンに目を遣った。
 宝石人形が仲間の猟兵が繰り出したユーベルコードによって一時意識を失っていた影響で、現在、迷宮や数人の猟兵たちに纏わりついていた炎は消えていた。
 しかしその代わりにオブリビオンとしての正気を少し取り戻したようで、先ほどまで戦闘に消極的だった宝石人形はルビーの瞳に猟兵への敵愾心を浮かべている。
「押しつぶされそうな罪悪感を感じますが、犠牲となった男子生徒達に報いるため。せめてもの罪滅ぼしに、私はその魔法薬を使って戦いましょう」
 そう言っていそいそと舞雪が取り出したのは、見るからに怪しげな巨大注射器。中に入っているのは、毒性のある魔法薬――念のため記すが、バレンタインの犠牲者たちはまだ生きている。

 宝石人形は困惑していた。
 一度意識を飛ばしたことで思考が僅かにクリアになり、自分の役割や猟兵への憎悪を思い出したのは良かったが、体の至る所が欠け、不滅の炎は封じられてしまった。
 だが、しかし、今はそんなことよりも。
「……えっ、なに?」
 まだキノコの胞子の影響が残っているせいだろうか。この場に似つかわしくない可愛らしさを振りまきながら物騒な物を引き摺ってくる女が見える。
 現実味のない光景に混乱しながらも警戒を露わにする宝石人形に、和装の美少女は両手を丸めて顎の下に持っていき甘く微笑んで――ウインクした。
 途端、罪悪感に沈みつづけた人形の心が痛いほど激しく高鳴る。胸キュンであった。
 なにこれ、と惚けたように口を動かす人形の前で、美少女は注射器片手に呟いた。
「ああ、かわいいことも罪なのです。辛いのです」

成功 🔵​🔵​🔴​

カミラ・モルヴェン
煌燥・燿(f02597)と参加

・心情
罪悪感、ね。そんなもの掃いて捨てるほどあるけれど……今もそう、目の前に。
だってそうでしょう?私は年下の成人すらしてない子に守られてる。私が守るべき対象なのに。
でもいいわ。そうしたいなら、そうすればいい。こんな罪悪感でも、私は私なりに後ろから守るための力にするだけよ。

小さなものまでは無理だけど……絶対に、大怪我なんてさせないわよ?

・戦法
トリニティ・エンハンスを使用
水の魔力で熱への耐性を高めつつ、燿が引き付けてくれている間に剣で、銃で遠近を駆け回り攻撃を仕掛ける
「はいはい、分かってるわ。全く今回も無茶するわね……!」

【掛け合い、アドリブ歓迎】


煌燥・燿
カミラ(f10735)と参加

・心情
俺の罪悪感か。それはこの人。カミラの傍に俺がいる事かな。
彼女はとても優しいから。
だから俺が傷つけば彼女は自分の事のように傷つくだろう。
それでも彼女の傍にいて彼女を庇おうとするのは自分の罪なんだと思う。

けど。今はその罪も連れて行く。
罪を犯すだけこの人を守れるなら俺は喜んで罪悪を感じてやるさ。
それでお相子ってやつだろ。

・戦法
不死鳥降臨・再誕を使用
「焼却」の熱の揺らぎが生み出す「残像」と
「火炎耐性」で炎を往なしつつ。
カミラの方から炎と敵の注意をこちらへ引き付ける。
引き寄せた所でカミラに攻撃を任せる
「今がチャンスだ! 頼むぜカミラ!」

【掛け合い、アドリブ歓迎】



●煌燥・燿(影焼く眼・f02597)とカミラ・モルヴェン(常在戦場・f10735)は守りたい
 迷宮に踏み入ったとき、胸を締め付けたのは苦しいほどの罪悪感。
 耀にとって、その理由は考えなくともすぐ傍にあった。
「……カミラ」
 青紫の艶やかな角をもつ、その女性。つかず離れずの距離にいる彼女を見下ろし、無意識のうちに名を呼べば、銀糸の髪が揺れ、隠されていた異色の瞳が耀を映した。
「耀」
 どうしたの、とカミラは当たり前のように自分の名前を呼び、応える。
 耀は何かを言おうとして、けれど何も言えることがないと気づくと、ただそっと目を細め、密かに心配そうに眉を顰めているカミラを見つめ返した。
 ――カミラは強い。俺が手を貸さなくても、ひとりで戦える人だと知っている。俺が庇うことで優しい彼女が傷つくことも知っている。それでもここに、彼女の傍にいたいと思うのは、単なる俺の我儘だ。
 けれど、それでも。
「罪を犯すだけこの人を守れるなら、俺は喜んで罪悪を感じてやるさ」
 それは、罪を抱いて進むと決めた、自分自身への決意表明。
 聞き取れなかったカミラが小首を傾げて怪訝そうに自分の目を覗きこむのを笑って誤魔化しながら、耀は不死鳥の尾を模した炎の剣を片手に出現させ、カミラを庇うように一歩前へ出た。
「カミラに傷はつけさせないよ」
 はっきりと告げる耀の背後で、小さく息を呑む音がした。

「……だったら、私に守られないように気をつけなさいね。耀」
 軽口を交わすように言いながら、オブリビオンに対峙する耀に続いてカミラもまた剣や銃を構えた。
「分かってる。お互い無事に帰ろう」
 穏やかに頷き、囮を担うために駆け出していく耀の背を注意深く見ながら、カミラは自身の内に澱む罪悪がまた色味を深めていくのを感じた。
 ――罪悪感、ね。そんなもの掃いて捨てるほどあるけれど……今もそう、目の前に。
 ぐっ、と武器を握る手に力が籠る。先ほどは耀の手前、表情に出さぬようにしていたが、カミラもまた自己嫌悪に似た罪悪感に苦悩していた。
 ――だってそうでしょう? 私は年下の成人すらしてない子に守られてる。私が守るべき対象なのに。
 自ら囮を買って出た耀は今、瀕死になった宝石人形が召喚した分身の操る炎を自らの放つ炎によって作りだした残像によって往なし、わざと派手に動き回ることで注意を引きつけている。
 機を窺うため気配を消して敵の死角に移動しながら耀の戦闘を観察していたカミラは、以前共闘したときのことを思い出していた。
 カミラを庇うため躊躇なく敵の攻撃の前に飛び出した耀の姿は、思い返すだけで今も背筋が凍るような気持ちになる。それでも、不思議なことにこれが苦い記憶だけで終わらないのは、あのときの耀の表情があったからだとカミラは思う。
 不思議なことに、耀はあのとき笑っていたのだ。新緑に木漏れ日が差すように、誇りに満ちた瞳をして。
 そう、だから、私は。
「……いいわ。そうしたいなら、そうすればいい。こんな罪悪感でも、私は私なりに後ろから守るための力にするだけよ」
 諦めたように苦笑して、カミラもまた覚悟を決めた。そこへ耀の声が飛び込んできた。
「今がチャンスだ! 頼むぜカミラ!」
「はいはい、分かってるわ。全く今回も無茶するわね……!」
 瞬時に反応したカミラは、注意が完全に耀に向きがら空きになった敵の背中目がけて駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛籠雄・九雀
SPD

罪悪感であるか。
感じるも何も、まず記憶がない。
ただ、この膨らむ怒りが胞子のせいと言うのなら――オレのそれは怒りの形をしておるのやもしれぬ。

さて、光速なぁ。
【見切り】で予備動作などからレーザーを見切れるか?
動きを見つつ、【ジャンプ、ダッシュ、逃げ足】で間合いを取り、【毒使い、投擲、カウンター、2回攻撃】+ペルシカムで足を止めさせたい。
結局オレは、これしかできんのである。

…自分のせい、など。
オレはずっと、『そう』思っておるよ。
だからオレは。
オレは。
オレは…この肉体を、否、『この肉体の人生の続き』を…オレが。オレが歩む。
だからオレは…ただの仮面なのである。
これからも、ずっとな。

アドリブ連携歓迎



●葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)はただの仮面である
「罪悪感であるか」
 九雀は粉塵が胞子と舞う迷宮に佇み、考える。
 猟兵として赴いた戦地の中で、“罪”も“悪”も見知らぬ誰かや殺した何かに言われたことは幾度かあった。そして、言われた理由も理解はした。
 しかしながら、九雀にしてみればそれらは全て“そうする必要があったから”しただけのことであり、そこに後悔だとかを感じることはない。
 そも、九雀は喜楽以外の感情が湧くことなど滅多になく、興味が向くもの以外のことは覚えようとも思わない。ゆえに、強い罪悪感の元になるような記憶もなかった。少なくとも、この九雀は持っていない。覚えていない。
 ただ、それでも、己のうちで膨れ上がるこの感情を『罪悪感』と呼ぶのなら。
 九雀のそれは――“怒り”の形をしているのだろう。

 煮えた湯のような感情を持て余しながらも、九雀は表面上変わりない様子で宝石人形を眺めた。
「さて、光速なぁ」
 散々別の猟兵にあしらわれたからだろうか。宝石人形はもはや炎を使うことは止めたようで、先ほどからは人形の体から放たれる光速のレーザーによって接近してくる猟兵たちを牽制していた。
 標的を外したそれらは石の壁や床に小さく深い穴を無数に開け、もし自身の体や頭に当たってしまえばどうなるかは一目瞭然であった。
 数人の命知らずを除き、猟兵たちは身体のどこから放たれるか分からないそれらに二の足を踏み、膠着状態になりかけていた。
「……ふむ」
 そんな中であえて暫く手を出さずに宝石人形の様子を観察していた九雀は、レーザーを放つ寸前、必ず放つ側に身につけているルビーが光って見えることに気がついた。
 今もまたルビーがキラと光ったかと思えば、にじり寄っていた猟兵の足元を瞬く間にレーザーが貫いていく。そしてまた。もう一度。
「であれば、あとはタイミング次第であるな」
 ルビーを注意深く観察し、幾度目かのレーザーで推測を確信に変えた九雀は、徐に何かを取り出した。そして、唐突に全力で駆け出した。
「えっ」
 警戒していなかった場所から急接近してきた九雀に意表を突かれた宝石人形は、隙が生まれたことに焦り、照準も合わせずレーザーを放つ。しかし、九雀の腹部を貫くはずのレーザーは空を走り、代わりに後ろのキノコを吹き飛ばした。
「しまっ――?!」
 人形が九雀の姿を見失ったのはほんの一瞬。しかし、その一瞬が致命的だった。
「どれか一本でも当たればいいのであるがな」
 ばら撒くように投げられたのは数多の針。そのほとんどは道を逸れ地面に落ちてしまったが、うち何本かはルビーを砕き、確実に人形の腕や足に突き刺さる。
 完全な無力化とまではいかないだろうが、足止めとしては十分だろう。
「結局オレは、これしかできんのである」
 苦しみ悶える人形をただ見下ろして、九雀は独り言ちた。


 ……自分のせい、など。
 オレはずっと、『そう』思っておるよ。
 だからオレは。
 オレは。
 オレは……この肉体を、否、『この肉体の人生の続き』を……オレが。オレが歩む。
 だからオレは……ただの仮面なのである。
 これからも、ずっとな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆SPD
膨れ上がるのは、傷付ける事への罪悪感
もう数え切れないほど戦って傷付けて、罪悪感など今更だと頭ではわかっているが…
これが胞子の影響か

しかし、だからこそ目の前の宝石人形へ銃口を向ける
あれと戦い、倒す為だ
そうすれば少なくともこの宝石人形がこれ以上の罪悪感を募らせる事は無くなる
自分も罪悪感を抱えるからこそ同じ苦しみから救う為に倒すのだと、自分に言い聞かせる

いつも通り、冷静に
抱える事にも平気なふりをする事にも、慣れているはずだろう、と

交戦中はレーザーの狙いを絞らせない為、常に移動し続ける
隙を見て、銃を構えてユーベルコードで急所を狙い撃つ(『スナイパー』)
出来るだけ苦しまずに済むように
…すまないな



●シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は仕事を終える
 数えきれないほど戦った。
 数えきれないほど傷つけた。
 仕事のために。
 自己防衛のために。
 仲間のために。
 様々な理由をつけて。
 ――それが今更、罪悪感などと。

「……」
 シキは両手でハンドガンを構え、その銃口をオブリビオン――『宝石人形』情熱のルビーの額に向ける。何度も繰り返してきた光景を再現する。
 ――そうだ。いつも通り、冷静に。今まで自分が行ってきたことと、同じことをするだけだ。
 そう内心で呟くとシキは罪悪感を押し潰すようにグリップを握り、引き金に指をかけた。
「……つかれたわ」
 そのとき、ぽつ、とぼんやりした声で宝石人形が囁いた。
 それまで黙っていた人形が声を発したことで身体に染みついた防衛本能が反射的に回避行動を取りかけたのを意識的に押し留め、シキは宝石人形に目を遣った。
 宝石人形に眼前の銃が見えていないはずはないが、故意なのか、もはや避けるほどの体力も残っていないのか、それ以上動く気配はない。上から不可視の何かに押さえつけられているかのように俯いた顔は、傍らで胎児のように蹲る己の分身を見下ろしている。
「相性が悪かったのよ、オブリビオンに罪悪感なんて」
 そう言って人形は嗤い、深い溜息を吐いた。
 シキは静かに彼女の言葉を聞きながら、しかしハンドガンを構える手を解こうとはしなかった。
「こんなところ、来なきゃよかった。……傷つくのも、傷つけるのも、痛いだなんて。知らなくてよかったのに」
「っ……!」
 シキの銃口が、微かにぶれた。
 ――揺らぐな。抱える事にも平気なふりをする事にも、慣れているはずだろう。
 奥歯を噛み締め、グリップを握りなおす。
 いつの間にか分身は消え去り、残るは瀕死の本体ただひとり。
 ――それに、そうすれば少なくともこの宝石人形が罪悪感を募らせることはなくなる。自分と同じ罪悪感から救うことができる。
 だから俺はあれを倒すのだ、と。シキは自分に言い聞かせ、嫌な音を立てて鳴る心臓を宥めるように息を吸う。
 構えなおした銃口の先、ルビーの瞳がシキの青い瞳を見返した。
 瞳の奥に潜んだ罪悪を暴き同情するように。それを抱えながら生きていく者たちを憐れむように。
 シキもまた、宝石人形から決して目を逸らすことはなかった。――引き金を引く、その瞬間まで。

 パンッ

 響いたのは、たった一発の銃声。
 たったそれだけで、全てが終わった。
 否、終わらせたのだ。これ以上、人形が苦しまずに済むように。
 ふぅー、と静かに長く息を吐いて、シキは銃をゆっくりと下ろした。
「……すまないな」
 悼むように目を閉じ囁くと、シキはその場に背を向け迷宮を後にする。
 また少し重みを増した罪悪感を抱きながら、それでも猟兵は歩きつづけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月06日


挿絵イラスト