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砂のあとさき

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●あなただけ知っている
「……その村長の棺の中にね、あるらしいんだよ。あの世にまで持ってくほどのお宝が!」
「はいはい、夢のある話ね。あんたが妙なこと言いだすから、向かいの旦那も帰ってきやしないじゃないか」

 さらさらと――きめの細かな白妙がずうっと広がる光景は、砂漠か砂浜のよう。
 石造りの都は失せて久しく。揺れる、疎らな緑葉。
 枯れ井戸、開きっぱなしの戸、転げた靴に欠けた剣。骨。
 だれかが此処に生きた跡。

 或いは今も?
 斜陽に滲んだ面影を、ああ、また――砂嵐が混ぜ返す。

●砂のあとさき
 置き去られたその場所へ。近隣の村々を騒がせている墓荒らし……オブリビオンがこの夜、現れると予知された。
 ここほれわんわん、なんつって。手を開いて閉じてして、アビ・ローリイット(献灯・f11247)はご挨拶。
「砂ん下にお宝が眠ってんだってさ。えらいやつでも暮らしてたのか、ね。被害を他所へ逸らそうとしたホラか、本当になんかがそこにあるのか。どう思う?」
 金銀財宝だろうか。呪いの遺物だったり? 伝説の武具防具なんてのもこの世界ならではと、犬の尾は気ままに揺れる。
 実態は不明。
 現場の周辺には魔獣が巣を作っているものの、猟兵にとって大した脅威ではない。人避けとなり好都合ともいえよう。
「絶好の仕留め時なわけだ。のこのこやってきたとこを出迎えて、お宝なら俺らがもらったぜー、っててきとー言や怒んじゃないかな」
 しかし、墓荒らしの襲来は夜と言ったか。待ち伏せるにしても、辺りはまだ明るいが――。
「いやさ呼び出し時間トチっちまって。賊より先にトレジャーハントもロマンってことで、たのしく暇潰しててくれよ」
 なっ。と、ゴーグルやらスコップといったお砂場セットが入った箱を滑らせるアビ。ばふりと砂が舞う。
「頼んだ。ひいふうみい……あは、数えとかないとさ、たまに居るらしいんだよな。戻ってこないのが」
 何が見えたとして、すべて砂の見せる幻。
 そんじゃバイバイ。言い置く男が姿を消せば、残るのは。


zino
 閲覧ありがとうございます。
 zinoと申します。よろしくお願いいたします。
 今回は、うせものの眠るアックス&ウィザーズへとご案内いたします。

●最終目的
 墓荒らしオブリビオンの撃破。
 行動次第で雑魚魔獣が現れる可能性有。

 第1章:砂の廃墟を探索。
 第2章:ボスの襲撃に備えて野営。
 第3章:ボス戦。

●第1章・第2章について
 第1章は昼~夕、第2章は夜。砂の廃墟を探索できます。
 キビキビ宝探し、ふらりと見て歩く、雑魚魔獣狩り、ガチ砂遊び等々ご自由に。第2章での探索は野営のついで扱いです。
 嘗ては村。ところどころに草花。生活の跡は残るが人はいない。
 不可思議な砂嵐が時に何もかもを曖昧にする。そこに何を見るも見ないもあなた次第。
 なくした故郷や過去に置いてきたものだとかを静かに想ってみるのも、よいのかもしれません。
 それはきっとこんな物、こんな光景だとプレイングにてお教えください。

●その他
 いただくプレイングにより変動いたしますが、特に心情面を大切にと考えております。
 セリフや心情、結果に関わること以外で大事にしたい/避けたいこだわり等、プレイングにて添えていただけましたら可能な範囲で執筆の参考とさせていただきます。

 以上、ご参加を心待ちにしております。
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第1章 冒険 『宝探し』

POW   :    力を使って調べる

SPD   :    器用に調べる

WIZ   :    頭を使って調べる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

一文字・八太郎
砂に埋もれた都で宝探し
浪漫があるでござるな

まずは身動きが取りやすいよう
【猫の毛づくろい】にて準備を
魔獣が出たのならば切り捨てていこう
他者の探索の邪魔であろうし
夜間の墓荒らしとの戦いの邪魔をされても困るでござるしな

不意に巻き起こった砂嵐
その向こうに見えるのは
戦乱の島国の小さな村、嘗ての故郷か
…いや、拙者の村はもう何処にもござらん
せめてここのように、何かが残っていればと思うでござるが…

否、何も残っていなかったからこそ
きっと拙者は今も旅を続けていられるのでござろう
未練が残って仕舞えば
それが例えどれほど小さかろうとも
断ち切るのはこの刀ですら難しい

砂影の中、遠く見た気がする人影も
懐かしき記憶の残滓の一片




 自分たちの他に誰もいない。

 ハチワレの、毛艶の良い体を舐め上げ準備は万端。
 砂に埋もれた都で宝探し。それもまた浪漫と、旅慣れた男は塞ぐことなく歩を進める。
 高下駄が砂に呑まれる音が、さくさく、さくさく規則正しく耳に届く。それ程に此処は、静かだった。
 ゆるい風だけはずっと止まずにいて。
「さて、どのあたりから探したものか」
 他の猟兵と手分けして当たるべきか。思いを巡らせる彼の元へも、ぶわりと。一際強い嵐が駆け抜けた。
「っこれが、件の……」
 負けじと風に向かい、細めて開く金の右目が映すのは、ひどくなつかしい。
 戦乱の島国の小さな村、嘗ての故郷――亡国の風景。
 楽しげに駆け回るひと。それを見守る、ひと。顔の見えずに、しかし"何"であるかを男は一度に理解する。
 少しばかり尾が立つ。
 だが――そんな筈があるものかと、彼、一文字・八太郎(ハチ・f09059)は頭を振った。
(「……拙者の村はもう何処にもござらん」)
 目に入った砂を拭い。ゆっくりとした瞬きののちにはその通り、広いこの世界に、またひとりきり。
 忘れよう筈もない真実。頭ではいつだって分かっている。それでも、安堵とも落胆ともつかぬ息が知らず零れた。
(「せめてここのように、何かが残っていればと思うでござるが……」)
 代わって視界に佇む、色薄い輪郭たち。
 きっとこれは大家族の暮らした家。指を触れた冷たい石壁が熱を持って脈打つ、……脈打つまぼろし。笑いあう人々の温度まで。
 ――否。
(「何も残っていなかったからこそ、きっと拙者は今も旅を続けていられるのでござろう」)
 未練が残って仕舞えば断ち切るには難くなる。
 例えどれほど小さかろうとも――この刀ですら。担ぐ太刀がしゃんと、八太郎が居るべき場所を伝える。
 生きる今、為すべきことも。
「夢見には些か早い刻限でござるしな」
 猟兵として、一文字・八太郎として抜いた刃は、音もなく飛び掛かってきていた大蛇を両断する。
 鮮やかな一芸は日進月歩の前進を重ねる剣の冴えを、霞の向こう、記憶の残滓の一片へと披露するようでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅沼・灯人
宝探し。……宝探しね。
まあ時間潰しにはいいんじゃねぇか?
ガキの心でお砂場遊びでもしてみるか。

【WIZ:頭を使って調べる】
……闇雲に探すよかそういう方が性に合ってる。
家の残骸を見つけたら、その周辺でも調べてみよう。
生活の痕跡をなぞっては、ここに生きていた誰かの生活と、
離れて暮らす家族との思い出を重ねて立ち止まる。
元気にしてりゃあいいけどな。

砂から何かが飛び出してたり、光るものか何か見つけたら
掘り返すなり物を避けるなりして一度手に取ってみよう。

瓦礫に座って眺めるだけ眺めたら、元の場所に返しておこう。
誰かにとってのかけがえのないもの、大切だった思い出の欠片。
俺には過ぎた宝だろう。



 宝探し、ね。
 大変に怠い。だが、と、浅沼・灯人(ささくれ・f00902)は雑に袖をまくる。
「何したところで時間の流れは同じじゃあな。ガキの心でお砂場遊びでもしてみるか」
 呟きは溜め息混じり。それでも頭を、体を動かしている方が性に合っていたのかもしれない。なんだかんだと言いつつも男はすぐに目的を定め、村の中心まで辿り着くのは誰より早かった。

 まずは家の残骸周辺から探る。
 此処まできたなら、生活の跡がより一層に目につき始める。
(「特別に金持ちっぽさとかも無さそうだし……」)
 戸口から覗き込む家々――天井の概念など残っているものの方が珍しい崩壊具合であったが――は、噂話の信憑性を疑わせるものばかり。
 割れた椅子。脚が折れ斜めに傾いたテーブルには、砂が山を作っている。
 ほかほか湯気を立てながら、卓上にどんと置かれる自慢の一品。嬉々として腰掛け揺らされる椅子。いただきますと揃って上がる声。
 ……なんて。思い描く空想に、離れて暮らす家族を重ねては足を止める灯人。
(「元気にしてりゃあいいけどな」)
 唇には、どんな表情が浮かんでいただろう――さぁ、次だ。裏口を塞ぐ瓦礫に手を掛ける。除ける。
 砂埃が立ったそのとき、一点が白く輝いて見えたのは眼鏡のレンズに傷がついたからではない。
 瓦礫の下、抉れた砂、半分埋まる控えめな銀。とっくに錆付いていてもおかしくないそれが、風化を免れてそこにあった。
「……リング、か?」
 持ち主の姿はない。見つけたものは、自由にしてしまえとの話。
 腰を下ろして摘まみ上げると隙間に溜まった砂が零れてゆく。
 不恰好に、輪に沿って削り掘られた文字。幸せと永遠とを誓うメッセージは、この身には――。
(「過ぎた宝だ」)
 そっと指でも絡められるかのように風が巻いたから、すり抜ける柔らかさで解く。
 何にも、誰にも触れられたくない。
 きっとこうして"残されたもの"だって、そうである筈だ。
 奪うためにある指先から滑り落ちた銀の輪――誰かにとってのかけがえのない、大切だった思い出の欠片は、砂のもっと深くへ潜り込み姿を消す。
 まるでその手の中には初めから、何も無かったとでも云うように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
お宝、お宝
夜まではまだ時間があるなァ……
自慢の鼻でにおいを探してみるかァ
でも――砂だらけでくしゃみが……

やめたやめた。
ここほれワンワンだっけ?テキトーに歩いて直感で掘る
ココとかある気がするンだよなァ……
ワンワン。

砂の中で生活かァ……ココは砂の牢みたいだ。
吹き荒れる砂嵐が思考を曖昧にする。アァ……嫌な砂だ。
その向こうに何か見えたか、見えなかったか
目を細めるだけで終わらせようカ。手を休める暇は無いンだって。
ここ掘れワンワン

掘るのにも飽きたらさらさらの砂で遊ぶ。
砂の山を作るのも楽しいなァ




 夜まではまだ、まだまだまだ長い。
 くぁりとひとつ欠伸をして、砂を掻く指が止まる。爪の間に挟まった粒ですら、血色の悪い男の肌には金の飾りのよう。
「ンー? あっちほれワンワンだったカ?」
 お宝のにおいが風に紛れてやしないかと、ご自慢の鼻が頑張る。
 頑張りはじめた直後にくしゃみが零れてしまって、それが少しだけ可笑しくて、小さく笑ってしまった。
 乾いた音は当人以外には苦しげに聞こえただろうけれど。
 エンジ・カラカ(六月・f06959)はひとり遊びがお上手。
「やーめたやめた。そっちとかある気がするンだよなァ……」
 おしゃべりにも事欠かない。
 ワンと吠えてワンと返るものなどなくとも、いっそ上機嫌に振られる尾みたく襤褸切れの端がぱたぱたぱた。
 今作り出した穴だって風のひと撫でで埋められる。吹き曝しの寄る辺なさは、誰かによく似ていた。

 掻いても、掻いてもソコには辿り着けない。
(「砂の中で生活かァ……」)
 此処は砂の牢みたいだ。そう、エンジはぼんやり考える。
 それならば今、真中にぽつりと座り込む自身は囚われた身であろうか。
 ――ふと。
 吹き上げられ波立つ砂の壁が、開けた錯覚。向こう側に見えるもの。見えぬもの。それもまた錯覚。
 彼の世界の境目はもとより曖昧であるからして、いつものように目を細める動きひとつで終わらせる。
 だから今一度爪を喰い込ませた手元から、どくどく溢れるぬるい温度がべっとりと纏わりつくこれもまた、――?
「アァ……嫌な砂だ」
 何が如何だとして手を休める暇など、無いのだ。
 穴掘りにも飽きてしまったからと、同じ手指が次にお山を作り始める。
 両の手の合間からなんてことのない、指通りの良い粒が抜けてゆく。
 積んでは崩す。積んでは、崩す。遊ぶようでいて、下手な墓堀りの姿。
 穴を掘ったら埋めるべきなどと誰に教えられたわけでもない。その工程の最後のひとすくいで転げ出たのは、より白く褪せた骨の欠片。
 楽しいなァと――零した呟きの色は、もっとずっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

氏神・鹿糸
【SPD】
私はお花のある所へしか向かわないから…砂漠は初めて来たわ。
まるで海ね。こんな広い砂の海からお宝なんて見つかるの?

砂の中のお宝ねえ。
ユーベルコードで、水の精霊と竜巻の組み合わせを地面に叩きつけましょう。砂が濡れて、少し抉らせたら探しやすくならない?
あとは地道に繰り返しつつ、広い砂漠をお散歩。
「砂漠に花はないけど……何だか大きなものに包まれたような安心感があるのね。」

もし魔獣が来たら、ユーベルコードで対処。
砂漠の魔獣に水は贅沢ね。火の精霊を突風に乗せて攻撃しましょう。
「早く終わりにしましょう。もう少し、砂の海をゆっくりお散歩したいのよ。」


フィオリーナ・フォルトナータ
特に宛てはありませんが、廃墟の散策を
ご一緒される方がいらっしゃいましたらお手伝いもさせて頂きます
怪しそうな岩などどかしてみたり、壊せそうなものならば壊す…のはよくないですね
既に人が居なくなって久しい廃墟とは言え、誰かが生きていた証であることに変わりはありませんから
ついでに焼いて食べられそうな獣がいたら狩って持ち帰ります

砂嵐に紛れ浮かぶ景色に、覚えるのは懐かしさ
見覚えのある風景も、人々の顔も
どれもわたくしを育み愛して下さったもの
そして、誰よりもお慕い申し上げておりました彼の方
(主様、わたくしは。……わたしは、あなたの名に恥じぬ戦いが、出来ているでしょうか)
答えは砂嵐の向こう、届かぬ空の彼方に



「……砂漠は初めて来たわ。まるで海ね。こんな広い砂の海からお宝なんて見つかるの?」
 氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)の傘がくるりとまわる。夕日に照らされゆく砂上で、乙女の足元にだけ花に似た影が出来ていた。
 砂漠にも瑞々しく咲くのだと、フィオリーナ・フォルトナータ(ローズマリー・f11550)は眺め。続いて遠くを窺い見るため瞳の上そろえる指にも、今日はまだ傷ひとつない。
「本当に……どんなものが眠っているのでしょう」
 どうやら人骨が見つかったらしいとは聞いていた。
 弔われもせず朽ちたいのちが数え切れずあるのだろう――こうして踏みゆく砂の下にすら。
 それはすこし、さみしいことのように想う。
 今だけ、すこし俯きがちな人形の娘の前を行き、鹿糸は足取り軽やか。お花のある所へしか向かわないから、なんだか新鮮な心地よと朗らかな笑みが咲けば、フィオリーナもつられ目尻を下げる。
「お散歩しましょう。きっと素敵な出会いがあるわ」
 ふわり風孕む翠髪は、枯れた地にどんな幻想よりも確かな彩を添えていた。

「いやね、もう少しゆっくり歩かせてちょうだい」
 麗しい二人の様は貴重な美味い植物とでも映ったのかもしれない。
 寄ってくる魔獣の数はやや多く、その度に遠慮なく鹿糸の魔法が炸裂する。
 指の動きに従って、膨らむ体がぽごんと炎上。こんがり焼きトカゲなんてものが量産されはじめていた。
 お見事ですと声を掛けながら、フィオリーナはそれらを野営に備え持ち帰ろうと手際良くまとめあげる。
「砂の地であっても、生き物は変わりないようですね」
「花はないけど……何だか大きなものに包まれたような安心感があるわ」
 頷き、歩いてきた道筋を振り返る女が、両腕を広げて風に煽られる。二人分の足跡はすっかり砂に浚われていて、それでも人影は二本足で立っている。
 ヤドリガミとして受肉して、久しく覚えたひとの身の全身で自然を歩む感覚は、広大さに相応しい途方もない自由そのものだった。
「小さなお花でしたら、こちらにも」
「本当? ふふっ。随分と可愛らしいお花だこと」
 岩陰からぽつぽつと姿を見せる、微かな紫色をした小花を見つめる。砂だらけの大地に咲く花もまた、幸せそうで――よかったと、鹿糸は顔を綻ばせ。
 その岩の向こうに、背の低い石板が複数十字に組まれているのを目にした。
「あら? ……これって、お墓かしら」
 ねぇ。
 彼女の声に呼応した風にも砂塵が巻き起こる。フィオリーナはそれが、自身へ向けた言葉であると分かっていた。
 分かっていたが――ほんのひととき。
 強風、しかし送り込まれたその時よりも、どこか穏やかになった嵐の中には憧憬が霞む。
 忘れもしない風景、人々。どれもが人形を育み愛し、ひとつでない、ひとりとなるべくいのちを与えてくれたもの。
 誰よりも慕わしい彼の方の名だって、吐息を零すようにすべらかに喉を通り抜けるというのに。
 ――主様、わたくしは。
 その背に贈りたい言葉の幾つもあるうち、問いたいものはひとつきり。
(「……わたしは、あなたの名に恥じぬ戦いが、出来ているでしょうか」)
 前を見て、生きて生きて、戦い続けると決めた瞳は時にあえかに揺れる。それでも伸ばしはしない指は、決め事を心に灯し続けるから。
 まばゆいほどにあたたかな夢景色は、何も語らずにほどけてゆく。
 いつも、そう。答えは砂嵐の向こう――届かぬ空の彼方に。
「フィオリーナ?」
 薄く煙る世界、繰り返し優しく呼び掛ける声色は変わらず、花に寄り添う女のものだけ。
「――ええ。すこし、調べてまいりましょう」
 じきに夜が来ます。
 重く封じる岩。誰かが生きていた証へ、敵ではないと伝えながら、ふうわりてのひらが重ねられる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『荒野のキャンプ』

POW   :    寝ずの番で警戒する

SPD   :    キャンプ技術や美味な料理で環境を整える

WIZ   :    キャンプ場所を探す、敵を誘う細工をする

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 芯まで冷える夜。
 
 猟兵らの手によって見つけ出された十字の石板。
 真下の砂はまだ掘り返されてはいない。読めぬ紋様が刻まれているが、これが墓だとしたならば、野晒しの骨と違い手厚く埋葬されたものであろうと見て取れる。

 引き戻し、引き戻され。或いはひとつの迷いなく。
 あれ程に強く吹いていた嵐は、幾分和らいでいて。それでもまだ、誰かの心へうせものの残り香を漂わせていた。

 大雑把な予知の弊害、今は気力体力を温存しながら思い思いに備える他ないが――その時は、そう遠くないと思えた。
エンジ・カラカ
随分と綺麗にしてもらったんだなァ……
こーんな場所なのに、こーんな綺麗なモンがあるなんて。
もっとこの廃墟みたいにボロボロの墓を想像していたなァ

アァ……夜は落ち着く
ずっと夜と闇に覆われた故郷もこんな景色だったか?
もっと気味悪くて落ち着く景色だったか?
墓の番をしながら故郷を思う。

ホント、立派な墓だよなァ……
刻まれた模様はもちろん読めないケド、少なくとも故郷の牢でたまに番をしていたボロボロの墓よりかは立派だ。

今から荒らされる気分はどうだァ?
墓に話しかけても分からないか。


フィオリーナ・フォルトナータ
力仕事などの必要なお手伝いをしつつ
キャンプの支度が無事に整いましたら
わたくしは寝ずの番で警戒を
焚き火の火を絶やさないようにしながら
また、焚き火が見える範囲内であれば松明を手に実際に歩いて
オブリビオンの襲来に備えましょう

風も、大分弱まりましたね
わたくし達以外に生きるいのちの気配を感じられない、とても静かな世界
空気はとても冷たいですが、それでも怖くないのは…
きっと、仲間の皆様が一緒に居てくださるからでしょう
一人でないということは、とても心強く

見上げた空には満天の、眩いばかりの星の煌めき
ずっと見ていたら、時折、流れる星も見つけられるでしょうか
それは、どこの世界でも変わらないのですね


終夜・嵐吾
野営ときいて!
美味い酒とつまみと。そういうの用意しとったら遅れてしもた
鍋に食材、色々もちこみ
簡単なもんしか作れんけど、先にきとった皆へ寒い夜の振る舞いを

寝ずの番をするものおれば、温かいものを
売れ残りチーズを値切ってきたのでな、ちーずすーぷじゃ
具はあんまり入ってないが胡椒はばっちり。しっかりと味がついとるし腹にもたまるじゃろ。固いパンも浸せば十分美味い
酒もちょちょいとスパイス入れてあっためて飲んでもええし
ぼっちじゃない野営たのしい

砂の世界は初めてじゃ
砂は雪とは全然ちがうの
遠くに見える砂嵐の中になんぞ……うん……何も見えん
わしにとって置いてきたものは……たぶん、無いんじゃな
全部、もってきとるから


浅沼・灯人
よーし、敵でるまでは休むぞ。
腹へったろ、飯にしようぜ、飯。

【SPD】簡単なもんだが、スープくらいは作れる。
水場までどんくらいあるかはわからねぇが、人数分の水を用意。
力仕事は慣れてるが、往復するのは面倒だ。
誰か手伝ってくれるなら助かる。

あとは食えそうな山菜適度に採って、
見当たらねぇなら念のため持ってきてたじゃがいもだけ切って入れて、
持ってきた鍋で煮込む。
火は吐ける。戦闘じゃねぇし熱低めに吐こう。
味付けは持参したブイヨンと塩で調整。
山菜に火が通ったなら完成だ。
ほらよ、いただきます忘れんなよ。
食べ盛りのやつには……しゃあねぇ。秘蔵の乾燥肉も分けてやらぁ。
なんの肉かは秘密だ。うまいからいいだろ?



 猟兵らの順応力といえば、大したものだ。
 砂地を訪れる体験自体今日が初という者も多かったが、てきぱき手分けをして支度を進めている。
 思えば昼から働き詰め。まずは腹ごしらえと切り出したのはこう見えて料理のできる灯人。この地一帯が完全な砂漠ではないことで、やりようもあった。
「腹へったら出る力も出ねぇ。あ、水運んでくんの手伝ってくれ」
「もちろんです。力仕事でしたらお任せを」
 火に焼べるためカラカラに乾燥した木枝を集めていたフィオリーナもよく応じ、彼をサポート。
 やがて戦闘時並に真剣に目を凝らして、食用に出来そうな野草を見定め始める逞しい姿のそばへ、たったと軽やかに迫る足音の主は――。
「野営ときいて! ――盛り上がっとるか?」
 小脇に鍋。もう片手には重みのある花蔦柄の風呂敷包み。
 オブリビオンではなく。用意しとったら遅れてしもた、と人好きのする笑みを浮かべる猟兵、終夜・嵐吾(灰青・f05366)その人。
「温かいものをと思ってなぁ。簡単なもんしか作れんけど、腹にはたまる筈じゃ」
 包みからは出てくる出てくる、パンにチーズに以下略といったまごころの数々。
「……料理担当の増員って新しくねぇ? けど丁度いいとこに来た、今から飯だぜ」
 両手に草を握った灯人が手招いて、お食事タイムのスタート。

「おぉ、さすがじゃの!」
 ――とは、ドラゴニアンが吐いてみせた炎に対する嵐吾の感想。間近に見る琥珀色にぱあっと花開く風に朱が増す。
 器用なことに火力控えめに調整された竜の炎は、フィオリーナらが集めた枝を燃やしてあたたかな火を灯した。
 けふり火の粉を零す灯人は朝飯前だが何かという顔でありつつも、ちょっとばかり得意げに鼻を鳴らし。
「さっ、鍋乗せた乗せた」
「ちーずすーぷも同時に仕上げてしまおう。荒野のすーぷぱーてぃー、洒落とる」
 男らの料理の様は、いっそ楽しげでもあった。鼻歌でも聞こえてきやしないかと思う程――。
「あの、わたくしもなにかお手伝いを。それとも、見回りを」
 淑やかに正座しているようでありながらその実、指先などが若干迷子にそわつく女へはゆったり火の世話でもしてくれれば十分と何度目かの声が掛けられる。
「じゃったら味見してみてくれんか?」
 すすと目の前に出された木皿。瞬いて、頷いて、何かしらの厳かな儀式の如くそうっと手に取って……ひとくち。
 あたたかいです。ふわりとして彼女から告げられた味のほどに、嵐吾もまた嬉しげに肩を揺らし次の皿へ注いでゆく。
「――よぉし。火ぃ通ったしこっちも完成だ、いただきます忘れんなよ」
 それに続き、ほらよ、の声とともに灯人のスープがよそって配られた。こちらはブイヨンと塩のうまみが濃縮された味付け。
 いただきますの声が重なる。
 そこにあるのは、彼が昼間に"視た"食事風景と、そう違わないであろう穏やかな一幕。
「んん、これ売ってるものと遜色ないぞ」
「やっぱチーズは強ぇな、一杯おかわりもーらい」
 嵐吾、灯人。そんな会話が続き。ふっ、と、口元に手を添えつつフィオリーナは小さく息を落とす。
 火傷? 喉に詰まりでもしたのか? 面倒見の良さが体にしみ込んだ男二人が前のめりに覗き込みかけたとき、ごめんなさい、と断りが入った。
「なんだか、ピクニックのようで……」
 ぴくにっく?
 脳内辞書を辿る間僅かに首が傾ぐ妖狐へと、外でする茶会みたいなと手早く耳打ちする灯人。
「これから戦いだってのに、気ぃ抜けさせちまったか?」
「いいえ。とても……心強いです」
 ついつい漏れたものは、きっとこころからの笑みであったから。
 自分たちの他に、生きるいのちの気配を感じられない、とても静かな世界。空気だってずっと冷たい。
 それでも怖くないのは、彼らが、仲間の皆が一緒に居てくれるからだと――改めてそう感じて。
「そうか。わしも、たのしいから一緒じゃな」
 嵐吾は得たりと首を縦に。そして二人の皿へパンをわさっと載せては浸すと美味いと第二のおたのしみをアドバイス。
「いやさすがに丸ごとは腹が。俺まだ肉も……」
「遠慮はなしじゃろ。そうそう、これも食わん?」
 ……この地に再び、笑い声が燈るのはいつぶりか。彼らの時はゆるやかに過ぎてゆく。

「さってと……ちょいと食いっぱぐれたやつがいねぇか見てくるわ」
「それでは、わたくしもぐるりと」
 灯人、そしてぺこりと頭を下げてフィオリーナが離れて。
「うむ、何かあったら大声で呼ぶとよい。それより先に駆けつけるがな」
 ゆるゆる手を振り見送った嵐吾は、しばらくぶりの静寂の中。
(「砂は雪とは全然ちがうの」)
 実を言えば、己にとっても初めての砂の世界。ゆっくり見ておけるのは今のうちだろうと、視線を巡らせる男の傍にも。
 或いはひとりになったことで初めて気付いたか――囁きかけるような妙にぬるい風が、一陣。灰青が、炎が頼りなげにも揺れて。空いた器を片す手を一度止める。
 促される形で眼差しを注ぐ先。けれど何も見えはしないと、薄目のままにまなこを伏せるのだ。
(「全部、もってきとるから」)
 置いてきたものは、無い。
 ――何ひとつ無いとも。


 夜は、落ち着く。
 一切の声も届かぬほどに隔たりがあるわけではない。しかし賑わいからやや距離を置いて、腰を下ろす男。
 エンジの目には飽きもせず、夕刻に姿を露わにした石十字が映されていた。
「随分と綺麗にしてもらったんだなァ……」
 こんなにも棄て去られた場所で。こんなにも綺麗なものがあるなんて。
 死霊術士の嗅覚というものが、もしかすると存在したのかもしれない。
 これは墓で、この下に死者がいるのだと――刻まれた紋様が読めずとも、どこか男には肌で感じるものがあった。
 墓守。
 今の己はまるでそれだと頭に過れば、付随してうぞりと流れ込んでくるのは故郷のこと。
(「夜と闇……ずっと覆われたあそこもこんな景色だったか」)
 否。もっと気味悪くて落ち着く景色だった気もするな。
 赤茶けた脳裡。確かなことは、たまに番をしていたボロボロのそれよりも、この墓がずっと立派だということ。
「ホント、立派な墓だよなァ……」
 感情と呼べるものは滲まず。繰り返される呟きは半ば無意識に近く、誰に届かずとも構わなかったもの。
 律儀にもそれを拾ったのだろう、ゆらり近付く松明の灯は。
「……こちらにいらしたのですね」
 皆様からの差し入れです。そう、スープの入った器を両手に大切そうに持ち直して差し出す淡色の乙女。ほわと漂う湯気。
 ひとからの施しというものは、中々どうして――エンジは彼女の顔と手の内のものとを下から上へ眺めてから、片手で掴み取った。
「そいつはドウモ」
 ごちそーサマ。声は常通り。襤褸布の下、ニィと笑む……歪む瞳は狼というよりは蛇に似ていたか。
 炎に照らしだされる男の姿は平素同様でありつつも、傍目には今にも倒れそうに見えたろう。
「お疲れでしょう。交代させていただきます」
「いやァ、悪かないさ。ぼーっと過ごすってのも」
 そうして訳もなく暗幕に水滴を散らした風な空を仰ぐ。エンジには見飽きた夜も、同じく顔を上げたフィオリーナには一瞬一瞬煌めいて。
「あっ。流れ星……見えました?」
「ン? 俺にはなァんにも」
 どこの世界でも変わらぬ光が落ちて消えるあいだ、組まれた女の両の指は墓前、誰かに捧ぐ祈りのかたちにも似て。
 男はそちらを見ていた――……耳に、金属の擦れる音と獣の唸り声を拾うまで。
「――では、今のは聞こえましたか」
「アァ……数は一、岩場の向こう」
 二人は視線を交わす。
 多くを語るまでもない。それぞれの得物へ出番を知らせるよう持ち出せば、別所で警戒や体を休めていた猟兵らの切り替えの早さも相当のもの。
 すっと息潜めそれに続き、即座に戦闘態勢に移る。
「今から荒らされる気分はどうだァ?」
 墓守の問いに、死者は黙し――ただ、強く、風が哭いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『うまそうなお宝のにおいだぁ』
 その魔獣は、どこから声を出しているのだろう。
 カラカラカラカラカラ――と、響く笑いは、骨が風に鳴るような音。
 岩陰から金色の。金装飾まみれの、長く捩じれたツノが覗いた。

『でも、なぁんで、ニンゲンなんかがいるんだろ?』
 次いで顔が。
 骨の面の下で、裂けた口がにんまりと笑んでいる。
 ひと跳び。月を背負い、岩の上に立つ獣。
 大きな毛むくじゃらの体。
 血に染まり続けて変色した爪と蹄が、狩りへ駆け出す形へと揃えられる。

『まぁいっかぁ。ねぇ、体と宝物、なくなるならどっちがいーい?』
エンジ・カラカ
アァ……現れた現れた。
ぜーんぶタイセツだけど、それよりもあーそーぼ。

先制攻撃で相棒の拷問器具、辰砂で拘束
ホーラ、辰砂も遊びたがってる。賢い君賢い君。
素早さを生かして動き回り、敵サンの攻撃は見切りで回避。
重いなァ……。

賢い君が確実に命中するように二回攻撃も挟み、連携をする。
敵サン封じは得意分野、敵サンを追い詰めるのは任せた。
カッコいいモンつけてるじゃないか。
その骨の面、ちょーだい。
その代わりにもーっとカッコいいモンくれてやる。
キラキラした宝石は好きカ?
毒にもなる真っ赤な君……賢い君なんだケドなァ……。


一文字・八太郎
宝物はここに住まうていた者達の物
そして拙者らの体は拙者らのもの
どちらもくれてやる訳には行かんでござる

――だからどうだ、ここは一つ貴殿の首で妥協してみるというのは

あちらとの交戦前に前に軽く【猫の毛づくろい】で準備
出来ればあちらの岩場の方で戦闘を行えればと思う

……呪詛混じりの爪か、厄介でござるな
体躯活かして懐へ飛び込めたのならば
狙い澄ませ【剣刃一閃】で腕を切り落とせれば良い
さすれば他の者も動きやすかろう
一撃で無理でも刀振るうは二度三度
破壊された地面に足を取られぬようにも注意しておこう

ここは遺されたそのままでよい
いずれ風と砂が年月かけ消していくのだとしても
今はどうか、そっとしておいてやりたいのだ


フィオリーナ・フォルトナータ
眠る想いに対する冒涜は、決して許されるものではありません
わたくし達が鉄槌を下しましょう
その罪、あなたの命をもって償って頂きます。――オブリビオン

仲間の皆様と連携して戦います
トリニティ・エンハンスで防御力の強化を重視しつつ、守りに重点を置いての立ち回りを
既に見た攻撃はミレナリオ・リフレクションで相殺を試みます
少しずつ確実に、その力を削ぎ落とし
隙が見出だせれば力を溜めて、重い一撃を叩き込みましょう

なくなるのはわたくし達の命でも、ここに眠る誰かの大切な何かでもありません
オブリビオン、あなたの、命ですよ

無事に戦いが終わったら、焚き火の元へ戻りましょうか
一仕事終えた後の食事は、それはまた格別でしょうから


終夜・嵐吾
なれにやるもんはここには何もない
誰かの心を、想う気もないものがふれてはいかんのじゃ
ここにあるものはな

ほら起きよ、右目の虚の主よ――起きて、頽れよ
今日の気分は、ああ椿か。まぁ、そういう季節よの
視界くらまし機を作ろう
この場であれを仕留めるは、きっとわしでない方が良い

無事に終われば続野営
ふふふ、戦い始まる前に仕込んどいたんじゃ
アルミホイル便利よのー、やきりんごじゃー
それからまて、まだある
マシュマロとクラッカー、あとは…わかるじゃろ?
とろりとさせて、はさむ。これやりたかったんじゃ
好き好きもあるじゃろし蜜漬けナッツも

何故、先に出さんかったのか?
お楽しみは最後にとっとかんと……さぷらいずは大事なんじゃよ


氏神・鹿糸
山羊の獣……嫌ね、砂風のせいで視界が悪いから。似ても似つかない友人を思い出したわ。
さ、切り替えて砂の怪物を倒すわよ。
まずは相手の高速移動を警戒し、[オーラ防御]を纏っておきましょ。

「お宝を探しているのだけど…どんなお宝か知っている?」
武器の日傘(エレメンタルロッド)から[全力魔法]で炎の精霊による攻撃を仕掛けるわ。
[2回攻撃]で繰り返し。少しでも弱まれば良いのだけど。

「長い休息を迎えた人には、穏やかに寝かせてあげるべきでしょう。」
「貴方だって、そろそろお休みをしたほうが良いんじゃない?」
相手が隙を見せたり、形勢を崩したらすかさずユーベルコードを使用。

墓荒らしの制裁はきっちり受けてもらうわ。




 眠る想いに対する冒涜は、決して許されるものではない。
 一歩後ずさるでなく、一歩前へ。凜乎と握る剣、盾、そして気高き騎士然とした女の身を風の加護が抱き込む。
 溶け合う空気の中にはきっと、さやさやと。安息を祈るものたちの、フィオリーナにだけ聴こえる声が混じってあって。
「わたくし達が鉄槌を下しましょう。その罪、あなたの命をもって償って頂きます。――オブリビオン」
 成程、こうも違うものだ。冷気すら帯び怨敵の名を呼ぶそれに、漸くのご登場をしげしげ眺めていた男の喉もくつりと鳴った。先の問いはなんだっけ? なんだったか……。
「まァいいや。ぜーんぶタイセツだけど、それよりも」
 あーそーぼ。
 エンジの手元で遊びたがりの辰砂が躍り。ともすれば主の命より早くそこら中へ放出された赤い糸が、ロマンチックな柄を編みながら呪獣へと迫る。
『つぐない? つぐない? なにして遊ぼ? 死体ごっこかぁ!』
 えへえへとだらしなく口元を緩め岩蹴って跳ね来る巨体。爪が目障りな糸を裂かんと触れた。
 それこそが始まりと知らずに。
『!』
 途端、何重にも巻き取るみたく糸束が膨れ上がる。爪から腕を伝って肩へ、胸へ、胴へ。ぐるぐるの糸巻ごっこ。
 脚にまで絡んでしまえば、半端に飛び出した体は体勢を崩しながらも引っ込みがつかない。
『うゥーじゃまだよぉ! おとなしく全部寄越せェ!』
 操り手は知らん顔。ぐらり傾き宙で吼える獣へ飛び掛かる影は、また獣。
 ずっと小さく、しかしずっと鋭く、迅い。
 ごおっ、と木の幹でも圧し折るかの音は尖った爪の立てるものよりも雄々しく。
「くれてやる訳には行かんでござる」
 身の丈超える刀の鞘が毛と糸とに覆われた肉へ深々めり込み、骨折り、岩場の側へと押し返す。
 八太郎が、戦場を墓前から遠ざけるべく体当たりに近い果敢な一手を打って魅せた。
 ここに住んでいた者達の宝物と、自分たちの体。どれもが到底この獣に見合いはしないと、全身で語って。
『ゥギュッ!?』
 今は冷たい砂の地に墜ちて転がる骨面の主から、空気を潰した音が漏れる。小柄な猫の頭を鷲掴まんと右の手がぎちぎち糸軋ませ伸ばされる。
 だが、遅い。八太郎は躱しもせずに腕の一振りへ全神経を注ぎ込む。
 滞空中に抜き放った刃が星灯を透かしたかと思えば次の瞬間には閃き、反撃はおろか崩れた体を立て直す間も与えず、呪物に覆われた腕の一本を斬り落としていた。
「――だからどうだ、ここは一つ貴殿の首で妥協してみるというのは」
 告げる。金の腕輪が砕け散る。砂に刺さる音に比べ、猫の男は着地までもが静やかに。
『ッッウうぅぅゥゥ! いだあァァぁ!』
 熱り立つ獣の、残る手の爪がめきりと震え丈を増す。袈裟掛けに振り下ろそうとしたそれはしかし、前触れなく生じた爆発によって阻まれた。
 捉えるは、手に残りもしない砂の感触。地面だけ抉れ、ひらり身を跳ばした獲物の姿はまた爆炎の向こうへ。並ぶ人の影が、服を払うようなしぐさをしてみせて。
「山羊の獣……嫌ね、砂風のせいで視界が悪いから。似ても似つかない友人を思い出したわ」
 加減のひとつなかった口で言ってのける。
 でもやっぱり違うわねと、女が、鹿糸が閉じた日傘の先を差し向けた。
 だって遅いんですもの。
 殺風景な死した大地へ続けざま、二度目の鮮やかな火花が咲き誇る。


 生きて焼かれる獣の憎々しげな叫びが轟いた。
 一方的に奪われるなりこの様だ。衣、それに豊かに宝飾の織り込まれていた長毛が焦げ、みすぼらしい姿が白煙の中で身を抱いている。
 恨み言は次第にどろどろと紡ぎ練るまじないへ。嵐吾の耳はそこに滲むのろいを拾い上げ、手のかかる童でも眺むかの如く細く息を吐いた。
「言っとるように、なれにやるもんはここには何もない」
 誰かの心を、想う気もないものがふれてはいかんのじゃ。……ここにあるものはな。
 ぽつり、言い重ね。
「ほら起きよ、右目の虚の主よ――」
 起きて、頽れよ。触れ、囁きかける宛は己の身の内。
 男の右の目。封じられた伽藍洞から、はらはら落ちる、赤色の花弁。
 涙のように止め処なく零れ始めたそれらは吹く風に舞い、今一度散り、嘗ての美しさのままに敵を飾り立てる。
(「椿か。まぁ、そういう季節よの」)
 つくりだしたものに、いつかのように柔く微笑みかける――この場であれを仕留めるは、きっとわしでない方が良い。
 うせものを汚されること。悼み、嘆き。心重ねその理不尽へ真に憤ることのできる者こそ相応しいと彼が開けた道を飛び出してゆく影ひとつ。
 認めてから、手のうちに残った一枚を握って潰す。指の隙間から深紅が溢れ……刹那、すべての花弁が鮮血を欲す牙へと変じた。
『ギイぃッ!?』
 触れるたび貪り取られる血肉。ざああぁぁ、と。花嵐に食まれ暴れ、煙は晴れれど標的を追うどころではなくなった呪獣を次に襲うのは、空切り裂く一条の光。
 直下へと降る様はいかづちの如く目映く、撃ち抜く剥き出しの肉から奥を焼き焦がす。ジャッジメント・クルセイド。
「長い休息を迎えた人は、穏やかに寝かせてあげるべきでしょう。貴方だって、そろそろお休みをしたほうが良いんじゃない?」
 墓荒らしの制裁はきっちり受けてもらう、生憎とここは眠るに丁度良い場所だ。猟兵らの言葉にまったくそうと同意示す鹿糸の裁きは、財宝よりも豪奢に贈られた。
『ゥルルルル……――ルルルァ!!』
 悲鳴を噛みつつ、ダンと地を蹴って歪な三足獣が跳躍する。狐の男と花の女を屠らんと荒れ狂う軌道へ割り入ったのは、疾うに駆け出していたフィオリーナ。
 未だ褪せぬGloria、包む風が毒爪を滑らせ。
「なくなるのはわたくし達の命でも、ここに眠る誰かの大切な何かでもありません」
 下からすくい上げる剣が高い音でかち合い、紅の五本刃を弾き上げ、砂上にすらこれ以上の暴虐の跡を刻ませない。
 ここは、彼らの場所なのだから。
「よぉく見るとカッコいいモンつけてるじゃないか」
 力と力のぶつかる熾烈な間合いとは感じさせぬ声色、横合いからぐうっと身を乗り出してエンジは瞬く。金瞳は呪獣の骨の面を這うように見。
 ちょーだい、と、落ち窪んだ空洞を満たす怯えの色に薄く笑んだ。
「代わりにもーっとカッコいいモンくれてやる。キラキラした宝石は好きカ?」
 カラカラ――骨の鳴るような音は、次は獣からではなく。男が手にした相棒。賢い君が、よほど愉しげに上げるもの。
 拷問具から、剥がれる欠片は鱗となり宝石となり。毒々しいまでの赤色が、花弁を振り切ったばかりの獣をもう一度血色の檻へと閉じ込めた。
『ヴゥ゛、グぐぅ!』
 気に入ってくれたようで嬉しいなァ。
 煌めきたちが口、鼻をひたひた覆って爪先をも丸め込み。呪詛を纏いて身体強化を図ろうとしていた獣は、先手を打って翳された一層深い呪いに咆哮を上げることも叶わずもだえ苦しむ。
 退けと荒々しく振るった腕の肘から先も、間近の女に届く前、瞬きの後にはなくなってしまうのだけれど。
「好い夢は見れたようでござるな」
 然らば。と、身を低く屈め懐へと踏み込んだ剣豪たる猫の二の太刀によって。
 なだらかに弧を描いて肉塊が跳ねる――この結果を信じていた薔薇の娘は閉じた目を、開く。見据える。なくなるものは、そう。
「オブリビオン、あなたの、命ですよ」
 ここに戦うと決めたなら、迷いを知らぬフィオリーナの剣先はただ速く。すうと入り、断面までうつくしく獣の身を斜めに割り背中側に突き出す刃。進むほどに纏う呪いの数々が断たれ、矮小な命もまた、足掻く余力もなくそれに続いた。
 変わりのない、守るための在り方。……風のひと巻きが、すぐ傍で女を見つめそして去っていった。


「アァ……やっぱりつまんないな」
 ひび割れた骨面を拾い上げたエンジが、興味は失せたと同じ手で放り捨てる。あの骨もまた、じきに砂の下へと眠るのだろう。
 ぱさり乾いた音が無常を告げて、終わりに頷き、嵐吾はぱんと手を打ち鳴らした。
「ということは、飯の時間じゃ!」
 視線が彼に集中する。
「働いたからな、ゆっくりしていってもバチは当たらんて。実は始まる前に仕込んどってなぁ?」
 焚き火の方へと手招きながら消えてゆく妖狐。
 くーと控えめに鳴る腹の虫は、ケットシーからのものだったろうか。
「……ふふ。そうですね、一仕事終えた後の食事は、それはまた格別でしょうから」
「素敵ね!」
 女らも煤や返り血の汚れを拭い、顔を見合わせ破顔した。
(「…………」)
 後を追って歩む最中にもう一度、八太郎は戦場となった墓前を振り返る。多少荒れたものの、彼らの行動によってずっとありのまま保たれた其処。
 整えて行こうかと過りはすれど、どれが今日生まれた傷で、どれが月日に積み重ねた傷か。――考えるまでもなく去来するは、ここは遺されたそのままでよい、との凪いだ心地。
 いずれ風と砂が年月かけ消していくのだとしても。今はどうか、そっとしておいてやりたいのだ。

 ぱちっと火の粉が弾けた。
「のう八太郎殿、これなーんだ?」
「むむ……焼いた芋でござろう」
「やきりんごじゃー」
 アルミホイル、便利。それからまて、まだあるとごそごそ風呂敷のふくらみから取り出される白と薄茶。ふしぎな物体をじぃと睨む八太郎の耳がぴるぴるする。代わってそっと手を上げるフィオリーナ。
「マシュマロとクラッカー、でしょうか?」
「ご名答! あとは……わかるじゃろ?」
 マシュマロを棒の先にちょっと引っかけて、火のそばに近付ける。すぐにとろ~り輪郭が崩れる。そこをすかさずクラッカーで挟む!
「キャンプにぴったりね、贅沢すぎるくらい! ……食べ過ぎちゃわないかしら」
 ジューシーに口の中で綻んでくれる林檎の甘みに続き、簡単おいしいスモアの出来上がりに鹿糸はほろっと笑み零して。
 心配した風をよそに一緒になって棒を刺しと随分な乗り気で臨む。初めは彼らの様子を窺っていた八太郎もまた、次第に手伝いをはじめた。
「火で菓子も焼けるとは……何か変わるのか……」
「悩むよりも食べてみて、熱いから気を付けてね」
 出来立てを差し出す鹿糸から受け取って、ふぅふぅしてから口へ。
 次に浮かぶのはんむ、という表情。ご機嫌を示す如く尻尾がゆるく持ち上がり、それから微かに揺れ。
「うまいか? うまいな! 口に合わんかもしれんと、こんなのも用意しとってなぁ……」
「蜜漬けのナッツ……!」
 やはりピクニック。どこから出てくるのでしょうと目を丸くするフィオリーナへは、したり顔で指を立ててみせる男がいた。
 お楽しみは取っておいてこそ――さぷらいずは大事なんじゃよ、と。
「感激しちゃう……! エンジは何処へいったのかしら? こんなおごちそう、食べないなんてもったいないわ」
 女の手の上、木皿にいつしか沢山重なるスモアたち。とろけて蜜香るナッツが載せられ、これならきっと呪物以上の輝きに違いない。
 ひとつ口に運んでうっとり顔。よく味わったあと、きりりと立ち上がった鹿糸が戦友を探し始めるとそう間も置かず声が返った。
 和やかな賑わいを背に隣に、薔薇の乙女は虚空へと、どうかあと少しだけお邪魔させてくださいねと微笑みかける。
 最後に吹いたそよかぜは今を生きるものたちへ寄り添うように。
 その先にもう、何も視えずとも。
 あなただけ知っている。財宝、呪物、武具――姿の知れぬ宝が、どの噂よりもずっとささやかで、二度とは得難く、やさしいものということを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月20日


挿絵イラスト