小さな暮らしを守るため
小さな村だった。
それでも彼らは平和に生きていた。
これからもそうだと思っていた、無根拠に。
雲が月明かりを隠す、静かな夜。
ぞろぞろと群れをなす緑色の魔物達が、静かに、しかし確実に、人々の生活圏へと足を踏み入れる。
ニタニタと下品な笑みを浮かべながら、これから行われる殺戮と快楽の宴に思いを馳せる。
高らかに歌声が響く。その合図と同時に、魔物たちは哀れな犠牲者を蹂躙し始めた。
夜遅く、不意を打たれた村人達に為す術はなかった。悲鳴と流血に彩られ、壊れていく人々の営み。
「どうして誰も気づかなかったんだ!」
「何で村の中に魔物が!」
彼らを率いる魔物たちの主は、翼をはためかせながら、その惨劇を眺め、にやりと舌なめずりをした。
●
「さあ、建築の時間だよ!」
グリモアベースに集まった猟兵達に告げたのは、栗毛が特徴的な少女、グリモア猟兵のミコトメモリ・メイクメモリアだ。
「……え? 説明が足りない? うん、ごめん、ボクの悪い癖だった。それじゃあ改めて」
こほん、と咳払いをしてから、ミコトメモリは端末を操作し、空中にディスプレイを表示させた。
広大な平地に大きな池があり、それを背にする形で小さな村があった。
「事件が起こるワールドはアックス&ウィザーズ、剣と魔法の世界だね。この世界の片隅にある、小さな村がモンスターに襲われるんだ、これを助けてあげてほしい。けれど」
集まったグリモア猟兵の一人が、「けれど?」と続きを促した。
「実は、村には防衛用の砦があるんだ。ちょっとやそっとの事じゃモンスターの侵入を許すこともないし、見張り台を建てられるから、奇襲にも対応出来る、はずだったんだけど」
ディスプレイに映し出された、村を守るはずの「砦」の有様は、ひどかった。
何度も魔物の襲撃を受けたのだろう、朽ち果ててボロボロになった石垣は、大半が崩れ落ちている。
ところどころに子供が通れそうな程大きな穴が空いており、木で組まれた見張り台は既に腐り果て、上から半分がない有様だった。
「ご覧の通り、どうにも役割を果たしていない。今までは運良くしのげてたけど、次の襲撃は敵の数が多くて耐えられない、というのがボクの予知さ、というわけで」
楽しそうに、ミコトメモリは笑った。
「皆には、砦の補修を手伝ってあげてほしいんだ。そうすれば、今後はある程度、自分たちで自衛出来るようになる。毎回、ボクら猟兵が首を突っ込むわけにも行かないでしょう?」
「それに、攻めて来る魔物の数も多いから、猟兵だけじゃ対応出来ない部分も出てくる。その時は村人達にも凌いでもらわないと行けないから……やっぱり砦は必要なんだ」
幸いにも、村人達は全面的に協力的で、猟兵達が手伝ってくれるとわかれば、大概の頼みは聞いてくれるだろう。
「材料になる石や木をガンガン運んでくれてもいいし、効率的な建築案を提案してくれてもいい。周囲の偵察とか、砦の活用法とかを考えてくれてもオッケー、皆の得意分野を活かして頂戴。建築そのものは、村人達が頑張ってくれるけど……勿論、そっちを手伝うのも大歓迎さ、皆、喜んでくれると思うよ」
手元のタブレットをついっと動かすと、次にディスプレイに映し出されたのは、緑色の皮膚をした魔物、ゴブリンだった。
「攻めてくるのはこの子達、ゴブリンだね。数が多いから、集団戦になると思う。砦の補修が終わり次第、皆に対応してもらう事になると思うから、覚えておいて。
数を減らせば、コイツらの親玉がでてくるはずさ、そいつを倒せば、ひとまず安心、かな」
ブンッ、とディスプレイが消滅する。ミコトメモリは、改めて猟兵達に向き直った。
「自分で予知しておいて、何も出来ないのはなんとももどかしいけれど……うん、ボクは君達を信じているよ。必ず、村人達を助けてあげておくれ」
そう言って、深々と一礼するのだった。
甘党
はじめまして、新人マスターの甘党です。
皆様の楽しい冒険の一助となれれば幸いです。
●補足説明
砦の建築は、
【POW】なら資材を運ぶ、建築を手伝うといった力仕事等。
【SPD】なら周辺の偵察や、罠の確認等。
【WIZ】なら作戦を立てたり砦の友好な利用法を提案する等。
等……それぞれの得意分野でご活躍ください。
自由な発想でプレイングを書いてくだされば幸いです。
●合わせプレイングについて
「特定の誰かと」「見知らぬ誰かと」「同じ旅団の人と」「フレンド同士」など、
不特定の相手を指定してプレイングを書くことも可能です。
採用はリプレイを書きやすいかどうかで決めますので、お気軽にどうぞ。
冒険のはじめの一歩、どうか怖がらずに踏み出してもらえれば幸いです。
小さな村の小さな暮らしを守る為、皆様の力をお貸しください。
第1章 冒険
『砦の建設』
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POW : 砦の建設に必要な力仕事を行う
SPD : 周辺の探索を行う、仕掛け罠を用意する
WIZ : 砦を利用した戦い方を提案する
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「おぉう……これはひどいですね……」
騎士の末っ子であるゼグブレイド・ウェイバー(見習い騎士・f03572)の目から見ても、砦の有様はひどかった。
村人達も不安になるし、グリモア猟兵もう動こう、というものだ。
「おや、お嬢ちゃんも手伝ってくれるのかい?」
と、中年の男性が声をかけてきた。小さな身長と髪型が、性別を間違わせたのかも知れない。
あはは、と笑みでごまかしながら、自分にできることを考える。
「罠を仕掛けられるほど器用じゃない、かといって、戦術を考えられるほど、僕に経験はない……なら」
すたすたと歩いて向かう先は、砦の建築に使う大きな石や木の原材だ。
村人達は、これをどうやって運ぶか、と考えているようだが……。
「ん? どうしたんだい? お嬢ちゃん」
「いえ……僕に出来るお仕事をしようかと思って、これ、いいですか?
「いいですか、って、はは、流石にお嬢ちゃんじゃ…………うおおお!?」
驚いたのも無理はなかろう、華奢なその腕では持てるはずもない、丸太をまるまる一本、ゼグブレイドは担いでみせたのだ。
「これ、どこに運べばいいですかー!」
「え、ええ、じゃあ、あの、砦の前に……」
「はーい、わかりました!」
明るい声で、ゼグブレイドは材料運びを始めた。
目を丸くしてぽかんとする村人達はその姿に勇気づけられ、士気をあげてゆく。
驚きと称賛の視線が向けられるコトに、材料を運び終えたゼグブレイドは、きょとんとした表情で首を傾げた。
アリス・フォーサイス
ぼくは建築案を考えてみようかな。おそらく今回は急造で作ることになるし、前と同じ状態にすることは無理だね。少しぶかっこうでも、見張り台とか、石垣を先に直すか、それの変わりになるものを作るのがいいよね。
クリスティア・エルンスト
数が多いってことは、完全に穴を塞ぎ切ってしまうんじゃなくて、わざと何箇所か隙を作っておいて、相手の攻撃を誘導してあげると守りやすいのかな。
攻撃する時も、相手の攻めてくる場所が分かっているならやりやすいと思う。
作戦を考える時はそんな提案をしつつ、空いた時間は一緒に物を運んだりできたらいいな。体力には自信があるから、重い物も頑張る。
「ん……相手を、誘い込んで、待ち伏せとか、どう……?」
「……それ、手伝う。お礼はいらない、けど……甘い物あると、喜ぶ……」
「よいしょ……んしょ、と……大丈夫、見かけよりは、力持ちだし」
情報妖精たるアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)にとって、砦の建築、という作業はなかなか好奇心をそそる案件だ。
ネット上にデータの砦を築くのとは違う、現実の質感と、物理的な対策が求められる。
とはいえ、アリスの計算では前と同じ砦を作るのは不可能だ。時間も材料も足りない。
ならば、効率的に、代用になるようなものを作り出せれば……。
「ん……相手を、誘い込んで、待ち伏せとか、どう……?」
そう考え、端末をイジるアリスの手元を覗き込んだのは、エルフの猟兵、クリスティア・エルンスト(舞い散る真白の(スノー・ドロップ)・f03593)だ。
「誘い込む? ああ、砦に穴を開ける、って意味かな?」
クリスティアの言葉を、すぐさまアリスは理解した。
「そう……わざと、相手が入れる穴をあけておけば……」
「一網打尽にできる! そうだな、なら、こういうのは……」
新たな砦の設計図を、即興で作り上げるアリス。
クリスティアの目からみても、それはよく出来た【罠】と【仕込み】だった。
「んー、ここをもうちょっと自然に見せられれば……少し材料が足りないかな」
……少し興がノリすぎてしまった。
設計図は完璧だが、そのために必要な材料をここまで運んでくるのはなかなか大変だ。
猟兵であるアリスにとって不可能ではないが、得意分野かどうかで言われると否である。
「なら……それ、私が持ってくる、待ってて……」
「ん、いいのかい?」
「ん……大丈夫、見かけよりは、力持ちだし……」
とてもそうは見えない少女の発言を、しかし、疑う意味などなかった。
初対面で、初めての会話だ。けれど……人々を守るために集まった、猟兵同士なのだから。
「お、ありがとうっ! お礼は何がいいかな?」
「お礼は……いらない」
ふるふると首を振るクリスティア。しかし、ふと思い出した様に顔を上げ。
「でも……甘い物なら、喜ぶ……かも」
その言葉に、情報妖精とエルフの騎士は、小さく微笑んで笑いあった。
大成功
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ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)初仕事は戦闘ではなく偵察任務か……問題ない、それで人が助かるなら良しとしよう。//(ザザッ)偵察及び村周辺の巡回・罠確認任務を担当する。それなりにSPDは高い、一役程度は買えるだろう。敏捷さを活かし速やかに村周辺を確認、足跡等の痕跡から敵の移動経路などを割り出し何処を重点的に守るべきかなどを割り出す。判明した事象は速やかに他参加者及び村人と共有する。また、仮に巡回中敵と早退した場合はクィックドロウで応戦する事とする。本機の行動指針は以上だ。オーヴァ。(ザザッ)
音もなく、機械の豹が森を駆ける。
その動きに森の動物達が気づくのは、彼が駆け抜けた、数秒後の事だ。
村の外で偵察に出ていたジャガーノート・ジャック(オーバーキル・f02381)は、土を浅く踏んだ痕跡を見逃さなかった。
大して遠くない距離の森の中、数時間前まで、【何か】がいた事は疑いようがない。
(……追跡し、戦闘を)
足跡は数少ない。
少数の斥候隊ならば殲滅も可能だろう。
(実行するか? ――――だが)
砦では現在、あえて『穴』を構築し、そこに敵をおびき寄せる作戦を立てているようだ。
ならば、不用意に敵を刺激して、砦の完成前に攻めてくるような事があれば問題だ。
眼の前のリスクを見逃すことは、少し先の未来を守ることに繋がる。
(……『本機』の初仕事は偵察任務。それで人が助かるなら良しとしよう)
足跡を辿り、注意深く歩みを進める。
(――――)
やがて視界に収まったのは、森の一区画が大きく開けていた。
人為的に――いや、魔為的に作られたスペース、と言うべきか。
足跡から推測できる魔物の量は、猟兵達がただ応戦すればよい、という物ではなかった。
砦の完成と、村人達が自分たちで立ち上がる事が不可欠だ。
「――『本機』より通達。砦の友軍へ。敵の軍勢の痕跡を発見。おおよその軍勢の数量が推定、次の指示を乞う。オーヴァ」
破壊に特化した体を持つジャガーノートは、人を守る為の戦いに身を投じる為に、次の指示を砦の猟兵に求めた。
大成功
🔵🔵🔵
黒川・闇慈
さてさて、ではいざ戦う場合の作戦案でも進言してみるとしましょうか……。
クックック……古今東西、砦というのは防衛拠点、つまり防御力を活かすものです。
村人たちに積極的に接近戦をさせるのも危険でしょうし、砦に防御をまかせ、遠距離攻撃で削るのがよろしいかと。
遠距離攻撃の手段としては……手軽なのは石でしょうかね。手頃な石と紐や布があれば、立派なスリングの完成です。それなりの人数でまとめて投げれば、けっこうな制圧力を発揮するでしょう。最悪牽制にはなります。
この作戦案を活かすためにも、砦の建築と修繕、よろしくお願いしますよ?
「何もあなた方に武器を持って直接戦え、とまではいいませんとも」
上から下まで、漆黒の衣装に身を包んだ男、黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)は集まった村人達を前に告げた。
村人達に共通しているのは……線が細く、どう見ても戦いに向いているとは思えない若者や、老人たちが多い、という事だった。
「適切な人材を適切に割り振り、適切に運用すれば、あなた方でも役に立てる。いえ、むしろ戦いの要になると言って良いでしょう」
「けど、どうしろってんだ? まさかとは思うけど……」
村人の一人、青年と少年の境と言った年頃の男が、事前に集める様指示された、こぶし大の石を見せた。
「こいつを投げつけろってんじゃ、ないだろうな」
「そのまさか、ですよ。砦には高さがある。高い所から落ちる物の重さは、そのまま破壊力です。何より安全で、確実です」
まさか、そんな事で? と戸惑う村人達の前に、闇慈は一枚の布切れを取り出した。
「勿論、ただ投げつけるんじゃありませんよ。ほら」
石を布に包んで、振り回して、投げる。所謂スリング、という奴だ。
遠心力を得た石は、手で投げるよりも遥かに遠く、強く飛んでいき……木の幹を凹ませて、砕け散った。
「頭蓋に当たれば割れます。他のところでも、ダメージを当たられます、そうすれば、前線で戦う人たちが楽になります。これは、ここに居る誰もが出来る、効率的で確実な攻撃手段、というわけです。わかりましたか?」
実演されてしまえば、否定の言葉はない。
村人達は思い思いにスリングを手にとって、投擲の練習を始めた。
非戦闘員達を、安全圏から戦える戦力へと変じさせる作戦。
勿論、砦の完成があってこそだ。猟兵達の活躍によって、地盤は整いつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ゴブリン』
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POW : ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:あなQ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達の手によって砦の建築が進む中。
空からその有様を見下ろす、一匹の魔物がいた。
「キィ……ッ」
憎々しげに鳴くと、その魔物は甲高い声を張り上げた。
「グルル……」
「ギヒヒ……」
「ゲガッ……!」
その声は、配下に告げる進軍の合図。
体毛のない緑色の皮膚に簡素な腰巻き。
ゴブリン、と呼ばれる魔物たちの姿だった。
一匹や二匹ではない。
それこそ、『群れ』と呼べる数がいくつも、砦に向かって進軍を始めた。
「てぇーっ!」
その時、誰かが叫んだ。石の塊が雨となって空を裂き――向かってくるゴブリン達に降り注いだ。
「ガッ!」「ギャッ!」「グオッ!」
速度と勢いがあれば、ただの石でも立派な凶器だ。頭蓋を割られて再起不能になる個体もいれば、腕を折られ武器を落とす個体もいる。
しかし、それでも全滅、とは勿論行かない。仲間を盾にし、次々と砦に接敵するゴブリン達。
「ギヒヒ……!」
めざとく砦の『穴』を見つけたのは、ゴブリン達のリーダーの一匹だった。
やはり、ボロい砦だ。完全に修復するのは不可能、そして僅かな隙間があれば、数で押し切れる。
そう判断して、ゴブリンは笑った。手で合図して仲間を呼び寄せ、穴の中に飛び込む。
「ギヒヒ………………ヒヒ?」
剣を。斧を。鉈を。
それぞれの獲物を構えた村人達が、『穴』を抜けたゴブリン達を待ち構えていた。
「あの不思議なお嬢ちゃんの言う通りだったな…………かかれーっ!」
「ギィー!!!」
『数の理』によって蹂躙されるゴブリン達。アリスとクリスティアの作戦は、見事に成功した。
「良し、村人達もゴブリンをひきつけてる……俺達も出るぞ! 連中を片付ければ、空のアイツも降りてくる!」
待機していた猟兵達が、ここぞとばかりにゴブリンの集団相手に打って出る。長く時間をかければ、村人達の攻勢も逆転する恐れがある。
鍵となるのはやはり……猟兵達がいかに素早く、残りのゴブリン達を片付けられるか、だ。
ルキウス・ミューオニウム
戦いの基本は相手が殴れない距離から一方的に攻撃する事。
ゴブリン達は遠距離での攻撃手段を持っていないようなので、遠距離からの先制攻撃をぼ……私は提案します。
砦の上に陣取って視界を確保したのち、全力全弾を以って面制圧します。
50発の炎の矢は、外れてもその場で燃焼し続けるので、足止めにもなるでしょう。
「魔力行使(じゅんびおっけー)炎弾形成50発(ぜんりょくぜんかい)射出開始(ぜんぶもってけ)!!!」
新たに築かれた砦の頂点。
ルキウス・ミューオニウム(夜明けの賛歌・f00023)は、眼下で群れなすゴブリン達に狙いを定めた。
投石攻撃は確かに効果を上げている。彼らの戦術は非常に正しい。
戦いの基本は相手が殴れない距離から一方的に攻撃する事。
ただの村人達の石がこれだけ戦果を上げるなら。
猟兵の炎は、どれだけ敵を焼くだろう。
目を閉じて意識を集中する。
「魔力行使(じゅんびおっけー)」
ルキウスの実力で生み出せる炎の矢の数は――――
「炎弾形成五十発(ぜんりょくぜんかい)」
五十の赤が、空を染め上げる。
「射出開始(ぜんぶもってけ)!!!」」
――――炎の矢が着弾する度、ゴブリン達が吹き飛んでいく。
盾にした仲間ごと貫いた炎は大地を焼き、後続の動きまでもを制限する。
「ギィイイイイイイイ!」
怒りと痛みからヤケになったゴブリンの一匹が、剣を投擲したが、それが届くはずは毛頭なかった。
剣の代わりに返ってきたのは、逃れられない赤に焼かれる未来のみ。
大成功
🔵🔵🔵
ライザー・ヴェロシティ
俺ならどうする?
決まっている、傭兵は戦場にいる。
つまりは戦うだけだ!
【殲滅戦】
「オラオラオラァ!嵐のお通りだぜェ!」
「トリニティ・エンハンス」の【風の魔力】で足を重点的に身体能力を強化
(=状態異常抵抗を重視して魔力強化)
足払いに警戒して黒剣とルーンソードの二刀流で戦場に突っ込むぞ!
あとは飛んだりはねたり斬ったり、囲まれないように常に動きながら
周りのゴブリンに攻撃するぞ。
「次だ!」「見えてんだよ!」「邪魔だ!」
余裕ができたり、敵の様子に気づいたら
上空の敵を睨んで観察しとくぜ
「余裕かましやがって……!」
二本の剣が振るわれる度、ゴブリンの身体が両断されていく。
戦場を駆けるライザー・ヴェロシティ(Sturm Jaeger・f00188)が歩みを進める事は、敵の生命を砕くのと同義だ。
決して一箇所にとどまらない。飛び跳ね、駆け抜け、集団の理である多対一の状況を避け続ける。
「オラオラオラァ!嵐のお通りだぜェ!」
有言実行。飛び散る血と肉の嵐は、誇り高きギスガーンの戦士の武勇の証明となる。
「ギ、ギギギギイ!」
「ガルルァ!」
その時、ライザーの着地の瞬間を狙って、二体のゴブリンがタイミングを合わせて、足払いを仕掛けてきた。
ライザーの右足を、二本の緑色が挟み込むように襲いかかる。
不意をついた。確実に転ぶ。そうすれば、囲んで叩いて始末できる。
「警戒してないと思ったのか――? 見えてんだよ!」
吹き荒れる風の魔力が足を覆う。
このゴブリン達に勝ちの目があるとすれば、ライザーの足を止めるしかない。
ゴブリンはそれをわかっていたし、ライザーも当然わかっていた。
わかっているから、油断など決してしない。
「ガッ」「グッ」
仕掛けた足払いは、あっさりと弾かれ、逆に隙となった。一瞬後には首が飛び、再び戦場を嵐が駆ける。
「ギャ、ギャウ、ギァー!」
仲間のほとんどを失ったゴブリンの一隊が、恐怖に怯え、背を向け逃げ出した。
もう、この周囲は大丈夫だろう、次の戦場へと駆けるライザーの目に、空に浮かぶ魔物の姿が見えた。
「余裕かましやがって……いや、そうでもないか?」
魅惑の美貌を持つはずの魔物……ハーピーの顔は、憎悪と屈辱の歯ぎしりで歪んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
照崎・舞雪
「速攻が重要とはいえ、攻撃手が安定して攻撃に専念するにはこういうサポートも必要なのです」
シンフォニック・キュア
後方で歌いゴブリンによって傷つく村人や猟兵達の傷を治療することで攻撃の手をゆるまなくする
「歌うなら何がいいですかね。やっぱりこういう場合、イケイケな感じでいきましょうか」
「さぁ皆さんが主役です。私の歌をBGMに、張り切っていきましょう!」
武器を持つ村人達の、疲労の色は濃い。
新たな砦に、戦う術。そして猟兵達の存在があっても、やはり命がけの戦いだ。
負傷者もでれるし、体力も削られる。歩み寄る死の気配を、意識せずにはいられない。
(くそ、痛ぇ……死にたくねえよ……! けど……)
ゴブリンの剣に腕を裂かれた青年は、破けた服を無理やり巻いて応急処置を終えた。
すぐに戦場へと戻らねばならない。でなければ、隣人が、家族が危ない。
わかっていても、活を入れるのには時間がかかった。
(……?)
不意に、不思議な旋律が、耳に飛び込んできた。
(……歌、声?)
心地よく、それでいて勇気を奮い立たせるような歌。
村での暮らしでは聞いたことのないリズムと音階に、導かれるように顔を上げ、気づけば走り出していた。
「――――ウオオオオオオオオオオオッ!」
鬨の声と共に、村人達がゴブリンへと立ち向かっていく戦場が、そこにはあった。
――――さぁ、戦おう! 大事な人を守る為! 大丈夫! 皆がそばにいる! 絶対に――負けない!
その背後に、一人の少女が居た。
喉から発せられる音が歌であり、戦士たちを鼓舞しているのだと、すぐに気づいた。
力が湧いてくる、痛みが消える。錯覚ではなかった。まだ血の止まらなかった右腕の傷が癒えている。
「――――おおおおおおおおおっ!」
武器を持つ手に、力が入る。負けるわけがない、という不思議な確信と共に、青年はゴブリンへと斬りかかった。
●
(速攻が重要とはいえ、攻撃手が安定して攻撃に専念するにはこういうサポートも必要なのです)
歌い手たる照崎・舞雪(未来照らし舞う雪の明かり・f05079)のユーベルコード。
自らの歌声に共感した者の傷を癒やす力。
彼らが戦えるとすれば、それは彼らに守るべき物がある、という事。
ならば、それに手を添えるのが、舞雪の役目だ。
「さぁ皆さんが主役です。私の歌をBGMに、張り切っていきましょう!」
大成功
🔵🔵🔵
神威・くるる
汗臭い戦闘は苦手やさかい、サポートにまわらせてもらおかな。
穴から出てきたゴブリンに高速ロープで編んだ投網を投擲
それをかいくぐって来たゴブリンはんは
「ほーらほら、鬼さんこちら、手のなる方へ
うちを捕まえられたら、なぁんでも、好きにしてええんよ?……ふふ、ドキドキしてまうわぁ」
なぁんて挑発しておびき寄せて、隙をついて拘束させてもらおかな
足を引っかけるようにあらかじめロープを張っとくんもええねぇ
動きが鈍ったゴブリンはんらは手枷や紐で縛り上げとくさかい
後は他の人らにお任せさせてもらいまひょ
ふふ、よろしゅうおたのもうしますえー
「ギギギ――!」
コソコソと隠密行動をしていたゴブリンの一隊は、砦の『穴』を見つけ、歓喜した。
周囲に人影は待ち伏せの気配はない。仮に居たとしてもこの数だ、囲んで叩けば勝ちである。戦いは数なので数が多いほうが勝つ為だ。
「グッグッグッ――」
一度砦を越えて村に入ってしまえば、若い娘を貪って人質にすることも出来る。
邪悪な笑みを浮かべながら、穴を通り抜けた。
バサッ
「ギ?」
「ゲ?」
「ゴ?」
何かが殴りつけるように横から飛んできて、ゴブリン達は一斉にすっ転んだ。
「ガ!?」「ブォ!?」「グッ!?」
猟兵謹製、拘束ロープで編み上げた、即興の投網だった。一度絡まってしまえば、抜け出すことはほぼ不可能だ。
「ギィーッ!?」
「あややー、ぎょうさんきよったねぇ」
肝心の、投網を放った猟兵――神威・くるる(神の威を狩る黒猫・f01129)は、柔らかな笑みを浮かべ、悶えるゴブリン達を楽しげに見つめた。
「ギィッ、ギィッ!」
「グルルル……!」
「キィィ!」
しかし、すべてのゴブリンを拘束出来たわけではなかった。ロープを逃れたゴブリン達は、武器を構え直し、状況を確認する。
他に人間は? 戦士は?
「あや、そない怖い顔、嫌やわぁ……」
しなを作って、そんな事を言うくるる。ゴブリン達はこう判断した。
――一人だ。一人だな。一人しかいない。勝てるなこれは。
「ほーらほら、鬼さんこちら、手のなる方へ
うちを捕まえられたら、なぁんでも、好きにしてええんよ?」
――女だ! 若い女だ! 絶対に美味しい目を見てやる! あんなことやこんなことしてやる!
そんな本能に任せた欲望を顔に貼り付けながら、残るゴブリン達は頭に血を登らせて、くるるを追う。
「そんな怖い顔して、うちを求めてくれるん? ……ふふ、ドキドキしてまうわぁ」
けど、だぁめ。
「ギェッ」
後手をくい、と引くと、ロープがピン、と貼った。
なまじ、勢いよく駆けていたゴブリン達は、それだけで足を取られて、ドミノ倒しのように転んでいった。
「「「ギャアアアアアアアアアア!!!」」」
「もうちょっと優しく扱ってくれへんと――――嫌やわぁ」
ころんだゴブリン達の手足を、目にも留まらぬ速さで拘束してゆく。
猿ぐつわに手かせ、ロープで巻かれて、完全に無力化したゴブリン達は、もう唸ることしか出来ない。
「それじゃあうちは、これで。優しい人に見つかるとええなぁ。見逃してくれる、優しい人に?」
勿論――ここは砦の向こう側、敵地の真っ只中だ。
味方の助けはありえない。でてくるとすれば、敵だけ――――
欲にまかせて向かった先には、黒猫の罠がある。
絡め取られた彼らに、未来だけが消え失せていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ハーピー』
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POW : エキドナブラッド
【伝説に語られる『魔獣の母』の血】に覚醒して【怒りと食欲をあらわにした怪物の形相】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : ハーピーシャウト
【金切り声と羽ばたきに乗せて衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ハーピーズソング
【ハーピーの歌声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:+風
👑17
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
なんて不甲斐ない。
この『私』の配下が、なんてザマだ。
空から地上を見下ろしていた『ソレ』は、大きな溜息を吐いた。
なんて嘆かわしい。
この『私』の声に鼓舞されているはずなのに、ここまでの醜態を晒すなど。
空から地上を見下ろしていた『ソレ』は、激しい怒りを覚えた。
なんて情けない。
この『私』の計画が、あんな連中に。
空から地上を見下ろしていた『ソレ』の顔に、もはや美貌は無かった。
「――――ユ ル サ ナ イ」
翼を大きく広げ、勢いをつけ、砦へと舞い降りる。
「…………来るぞ!」
誰かが叫んだ。同時に――――ゴブリン達の主、歌と美貌で生物を惑わす擬態の持ち主。
ハーピーが、怒りと共に猟兵達へと襲いかかってきた。
法月・志蓮
「ハーピーか……夜に襲撃してくるくらいだし鳥目ってことはなさそうだが……さて」
今は夜。更に雲で月明かりも隠れている。物陰で黒いマントを被り、ユーベルコード「夜陰の狙撃手」を使ってライフル型アサルトウェポンによる狙撃を行う。
ただ、空を飛び回る相手を適当に撃っても外して無駄に警戒心を煽りかねない。確実に当てきれて効果も見込めるであろう狙撃タイミング……他者との戦闘で大技を出そうとする瞬間か、村人や負傷者に襲いかかろうとして横槍に対する警戒心が薄れる瞬間を狙って、まずはじっと息を潜めておこう。
そしてチャンスが来たら、
「…………仕留める」
ミーユイ・ロッソカステル
……なんて醜い歌
そんなものを聞いて悦んでいるケダモノ達。……見るに堪えないわ
ハーピーズ・ソングで増強された敵の攻撃は実際に、苛烈でしょうね。……いいわ、私も座っているだけで終わらせる気なんてない
ユーベルコード、【シンフォニック・キュア】……私の「詩」を聞かせてあげる……!
……別に、【共感】なんてしてくれなくても、いいの。……ただ、ありのままに聞こえたモノを受け入れればいいわ
それを「癒しの祝福」と取るか、「聞くに堪えない金切り声」と取るか……それは、聴者次第
どっちの喉が先に枯れるか……勝負といきましょう?
ゼグブレイド・ウェイバー
「…!あれは、ハーピー!?初めて見た…」
驚いた表情でハーピーを見つめ急いで剣を構える
「…でも飛んでいる敵に剣なんて…僕の実力じゃとても…」
恐怖もあるのか足が震えている、初めての戦闘で強敵と戦うから
「でも、できることはあるはずだ!例え僕が倒せなくてもほかの人が頑張って倒してくれるはず!なら今は僕にできることをやるだけ!剣を使わなくても、僕には…『氷銀の槍達よ…!僕の力となって敵を殲滅してください!』」
詠唱をして魔法であるアイシクル・ランスを飛ばしハーピーへと攻撃をする
闇の中に男は居た。
殺意を胸に宿し、機会を伺い続ける。
確実な一瞬の為に。必殺の一時の為に。
●
『――――キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
ハーピーの放つ金切り声は、それ自体が破壊力を持つ衝撃波だ。
空から羽ばたきと共に放たれるその一撃は、猟兵達を吹き飛ばし、配下であるゴブリン達を鼓舞――いや、恐怖させる。
戦わなければ、勝たなければ、あの力に屠られるのは自分達だと。
生命の危機に追い込まれた魔物ほど、厄介なものはない。
死を恐れない。いや、死を恐れるからこそ、我が身を顧みずに襲ってくる。
「あれは……ハーピー!? 始めてみた……」
ゼグブレイド・ウェイバーは、魔物の群れを率いる主の姿を前に、己の足が震えている事に気づいた。
(……怖い……?)
ハーピーは空の上、剣は届かない。
配下のゴブリン達の決死の攻撃も、もはや油断出来ない。気を抜けばやられるのは自分だ――死を目前にした若き騎士の心は、確かに震えた。
『――――――フフフフフ、ハハハハハハハハッ!』
「っ……!」
嘲るような笑い声。
どうすればいい、何が出来る――――頭の中で渦巻く、前に進むべきだという勇気と、逃げ出したい弱気が絡まり、体の動きを止める。
「……なんて、醜い歌」
ハーピーの声が響き渡る戦場の中で、何故か、耳の中に確かに響く声がした。
気づけば、真横に日傘をさした少女が立っていた。
表情は歪んでいる……恐怖ではない、それは、見るに堪えない、汚れたものを見る、悪感情のそれだ。
「アレを悦ぶケダモノ達も、あのハーピーも、見るに堪えない、そう思わない?」
ミーユイ・ロッソカステル(紅月のプリエステス・f00401)は、ゼグブレイドを見ずに――あるいは、誰かに語りかけた言葉では無いのかも知れない――そう言った。
「――――ラ」
心から汲み上げられ、歌として表に放たれる、清涼なる調べ。
シンフォニック・キュア――――その響きが、ゼグブレイドの身体の傷を癒やしていく。
「……あ」
目を閉じ、声を張り上げる。その『詩』は確かに、ハーピーのそれを引き裂いて、戦場に響いた。
(――――さあ)
魔物の、底なしの肺活量に、決して劣らぬ気高き『詩』。
その瞳は、こう告げていた。
(――――あなたは、どちらの『詩』を、受け入れる?)
「…………」
震えはいつの間にか止まっていた。
魔物と戦うより怖いことがあるとすれば、未来を失うことだ。
立派な騎士になる――物語の中の、絵本に出てきた騎士の様に。
だから、背を向けて逃げることだけは絶対にない。
立ち向かわなくてはならない。
「そうだ……できることはあるはずだ!」
まだ、少年は英雄ではない。
けれど……戦場に立っている。
「例え僕が倒せなくても――――」
そして、その勇気と気高さを。
その目で見て、助けられた人々はきっと、確かに彼を騎士と呼ぶだろう。
「他の誰かに、繋げられる!」
迷いなく、手を広げる。指先をハーピーに向けて、自身の勇気(ユーベルコード)を解き放つ。
「氷銀の槍達よ……! 僕の力となって敵を殲滅してください!」
詠唱と同時、周囲に生み出される大量の氷柱が空を切り、ハーピー向けて襲いかかる。
『――――――キィィィィィ!』
ミーユイの『詩』と相殺し合う『声』を張り上げ続けていたハーピーに、回避の術はなかった。
全身を氷柱に貫かれ――――その眼光を、下にいるゼグブレイド達に向けた。
「っ!」
やはり倒しきれない――――魔法を放った硬直を見逃さず、ハーピーは鉤爪を立てて、愚かな獲物を斬り裂こうと襲いかかった。
●
「――見えた」
怒りに身を任せて頭から突っ込む獲物の姿を、法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)は確かに捉えた。
闇に身を隠す――――この一瞬、一撃の為に潜んでいた彼の存在を、猟兵達も、勿論ハーピーも、誰も知らなかった。
戦場で、今まで行ってきた動作は、一切の無駄がない。
なめらかに指が動き、引き金を引いた。
殺意の塊がが飛ぶ。その後を、音が追いかける。
ハーピーの頭部、その右の眼球に、吸い込まれる様に弾丸が飛び込んだ。
「――命中、後はご随意に」
●
『キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
痛み、悲鳴、憎悪、苦痛、屈辱。
ハーピーの頭の中を、負の感情が埋め尽くす。
仕留めるはずだった生意気な小僧の姿が見えない。真っ赤に染まっている。
気づけば、地面に転がり悶えていた。右目が熱い。何も見えない。
あの娘もそうだ、私の歌を掻き消す、騒音を奏でていたあの女!
断じて認められない! 一瞬、確かに見えたその事実を信じない!
【ゴブリン達でさえ、ハーピーの歌より、あの女の『歌』に聞き入っていた】などと認められるわけがない。
『――――殺ス、殺ス、殺ス!』
その殺意に応じるように、ハーピーの姿が変じていく。
伝説に語られる『魔獣の母』の血――その原型を留めぬ、異形の怪物へと。
大成功
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フィアラ・マクスウェル
「古よりの契約と、我らが絆を知ら示す。
フィアラ・マクスウェルの名において――ここに具現せよ」
我が幻想の精霊英雄により二体の精霊を具現化
一体が攻撃を行う際はもう一体は側で防御
場所をスイッチしながら常にお互いをカバーし合いながら戦う
本体であるフィアラは攻撃できないが、精霊たちが盤石に動けるようハーピーとの距離を保って位置取りでアシスト
自分への攻撃にも動揺はせず、精霊を信頼して守らせる
その目はハーピーを捉え続ける
怯える村人たちを嘲笑っていた者に、今度はお前の番だ。とでも言うように
「……上がブレては下が終わる、何かを従えたいなら揺らいではいけませんよ」
「情けないったらない」
ジョン・ブラウン
「ワオ、君エミリーと同じくらい化粧上手いんだね」
本性を表したハーピーを見上げながらからかうように
「うっひゃあ!? 怒鳴り声はエマおばさん並ぃ!? すーごいね!」
金切り声に耳をふさぎ、衝撃波を転げ回りながら避けます
「こりゃ参った、一人だって僕の手には負えないのにタッグはズルいや」
「だからちょっと助けてもらおう、なぁにサポートはするさ、ちょっとしたね」
魔法で歌声を強化された人魚姫を召喚し、ハーピーシャウトを相殺、突破してもらう
「ひゅー、ゴールデンブザー間違いなしだ。きっと王子様は君のファンクラブに入るぜ」
草むらから顔だけだして
「君は強かった、もしも腹回りがイザベラ並なら僕の負けだっただろうね」
「ワオ、君エミリーと同じくらい化粧上手いんだね」
ジョン・ブラウン(フェアリーテイルメイガス・f00430)は、異形と化したハーピーを前に、思わずそう言ってしまった。
いやあ、エミリーの化粧と言えばそりゃあもう大したものだ。岩のような肌にたっぷりとクリームを塗りたくるものだからその有様といったら――――
『グルルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
「うっひゃあ!? 怒鳴り声はエマおばさん並ぃ!? すーごいね!」
挑発が通じたのか、あるいは理性を失ったのか。『歌声』とは程遠い怒声が戦場に響き渡る。
慌てて飛び退いたジョンの前に立つように、一人の少女が前に出た。
「遊んでるなら下がってて、ジョン」
「了解了解、なぁにサポートはするさ、ちょっとしたね――持ちこたえておくれよ?」
「馬鹿な事を言わないで――倒すのよ」
フィアラ・マクスウェル(ダンピールのウィザード・f00531)は同じ旅団の仲間にそう告げて、ハーピーを見据え、声を上げた。
「古よりの契約と、我らが絆を知ら示す。
フィアラ・マクスウェルの名において――ここに具現せよ」
詠唱と共に、二体の精霊が、フィアラの傍らに召喚された。
【我が幻想の精霊英雄(ファンタジック・ハーツ)】――少女のユーベルコード。
風と大地を司る精霊剣士、ファミオール。
炎と水を司る精霊闘士、リーオウナ。
「……上がブレては下が終わる、何かを従えたいなら揺らいではいけませんよ」
『ガ――――――』
『詩』に心を一瞬奪われた配下達。
異形を晒すハメになった現状。
その言葉は、ハーピーの耳を突き刺した。
『ギ、ザ、マ――――』
「この程度で動じるの? 全く――」
嘲るように。あるいは、興味を失ったように。
「情けないったらない」
挑発の言葉と、ハーピーの金切り声が放たれるのは、ほぼ同時だった。
「ひゅー、ゴールデンブザー間違いなしだ。きっと王子様は君のファンクラブに入るぜ」
しかし――ゲームデバイスを事前に操作していたジョンは、その一瞬前に端末のエンターを押した。
瞬時、出現するのは『人魚姫』――物語のキャラクターを具現化する、ジョンのユーベルコードによって生み出された幻想。
その歌声は、ハーピーの声を鮮やかに相殺した。
『!?』
「君は強かった、もしも腹回りがイザベラ並なら僕の負けだっただろうね」
見とれちゃうからさ、と付け足し。
「嘘おっしゃい」
その隙を貫くように、精霊剣士の刃がハーピーの顔面を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)敵に不足なし。速やかに排除するのみ――作戦を実行する。
(ザザッ)SPDを用いた攻撃を行使、「Snipe Laser」を使用する。敵の攻撃はどうやらせいぜい半径2桁メートル程度……であれば、それより長距離から狙撃してやろう。
距離にして凡そ150m遠方から、砦などの遮蔽物を使用し隠れつつ、チャージした熱線を敵に放つ。
「――5、4、3、2、1、照射。」
狙うは相手の胸部、仮に多少逸れても翼を穿てば他の味方が地に堕ちた敵を仕留められよう。
――行動指針は以上。オーヴァ。(ザザッ)
『ギイイイイイイイイイイイイイイイ!』
異形化は自らの寿命を縮める行為だ。
この姿を見せた以上、敵には『死』以外ありえない。
それなのに、この有様はなんだ。この無様はなんだ。
ハーピーは吠えた。潰れた視界の向こう側にいる敵を見据え、衝撃波を放とうとした。
●
―――配置完了。
対象確認。
「――5、」
砦の頂上に腰を据えたジャガーノートは、自らの核にエネルギーを収束させていく。
「――4、」
目標の姿はもう見えている。
地に落ち、眼球を潰され、身動きはままならない。
「――3、」
十分な射程と、十分な時間。
「――2、」
猟兵達と村人達が積み重ねた、勝利までの軌跡は。
「――1、」
計算も、あるいは――『直感』などというものが自分にあるとしたら。
「――照射」
どちらも、『勝利』の結論以外、出る要素がない。
『Snipe Laser』……ジャガーノートのユーベルコード、超高温のレーザービーム。
周囲に居た猟兵達は、タイミングを合わせたように飛び退き――ハーピーの身体を、問答無用で飲み込んだ。
数秒後、残ったのは、そこに「何か居た」であろう、焼け焦げた痕跡のみ。
「――全猟兵と村人に告ぐ。敵指揮官の撃破及び敵軍残党の敗走を確認」
淡々と告げられるその事実に。
「――以上、任務完了、オーヴァ」
砦に集い、戦い傷つき、支え合った村人達と、異世界からの来訪者である猟兵達は――
顔を見合わせ、笑い、次の瞬間、凄まじい歓声が湧き上がった。
成功
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