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アルダワ魔王戦争1-D〜迷宮坑道に巣食う盗賊たち

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争

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 その知らせは、突如として舞い込んだ。

 いわく、アルダワ魔法学園に存亡の危機が迫る、とのこと。

 これを受け、グリモアベースに多くの猟兵達が集結し、あれやこれやと騒然となる。
 慌ただしい中、グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)が猟兵たちへ駆け寄ると、血相を変えて言葉をまくし立てた。
「大変だよっ! アルダワ魔法学園で、大魔王が遂に動き出したよっ! 現在、『旧校舎』に向かって無限の数を誇る災魔たちが迷宮を逆侵攻中っ! 猟兵のみんなは最深部『ファーストダンジョン』で災魔と交戦しつつ、広大な迷宮のどこかにいる大魔王を捜索して討伐する……。これが『アルダワ魔王戦争』の大まかな概要だよっ!」
 アルダワ魔法学園らしく、ダンジョン内部で敵の親玉を捜索しながらオブリビオンを打ち破ってゆくわけか。その無限に出現する災魔どもは、魔王を倒すと止むのか?
「その通りっ! だから一刻も早く大魔王を探し出さないといけないんだけど……」
 う~ん、とレモンが唸りながら首を傾げてしまう。
「みんなに潜ってもらう『ファーストダンジョン』には、『ダークゾーン』っていう大魔王の放つ闇で満たされてるんだよね……。だから、まずは手近な迷宮を攻略して、ひとつひとつ周囲の迷宮の闇を払う必要があるんだよっ!」
 つまり、いきなり迷宮の奥地まで突き進むことは不可能なのか……。
 ならば、まずはどこへ行くべきか?
 その問いに、レモンは『ファーストダンジョン』の地図を広げ、ある区画を指差す。
「あたいが予知を見たのはここだよっ! 迷宮坑道っていって、複雑に張り巡らされた坑道のあちこちに災魔が待ち構えているダンジョンなんだよっ! ここは既に廃坑だけど、もしかしたら蒸気動力で動くトロッコがあるかも? 機械に強い猟兵のみんなだったら、うまく活用してみてねっ!」

 それで、ここに居座る災魔とは?
「予知で見たのはホムンクルスの盗賊たちだよっ! 盗賊たちは姉妹で連携を仕掛けてくる上に、迷宮坑道内を熟知しているから地の利は敵方にあると言っていいと思う。みんなも迷わないように迷宮内部をマッピングして、索敵行動を大切にねっ?」
 レモンは猟兵たちへそう告げると、グリモアを輝かせて転送準備に入る。
「これから長丁場になるけど、アルダワ魔法学園の窮地を救う第一歩、しっかり成功に導いてねっ!」


七転 十五起
 なぎてんはねおきです。
 本シナリオはアルダワ魔王戦争シナリオです。
 よろしくお願い致します。
 今までの戦争ルールと異なりますので、参加される前に目を通しておきましょう。

 本シナリオは特定のプレイングを掛けることで、プレイングボーナスを付与します。
 プレイングボーナスは『マッピングをするなど、迷わない工夫をする』ことです。

 本シナリオは全体マップの1-Dが戦場です。
 坑道内は戦闘に差し支えない広さと空間を有しています。

 また、公序良俗に反すると判断したプレイング内容は、採用せず返却します。
 ご了承下さいませ。

 それでは、皆様の挑戦、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『ホムンクルスの盗賊』

POW   :    後ろにも目をつけといたほうがいいよ!
【打撃能力を持つ魔法のミサイル】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
SPD   :    早いねキミ、でもウチらも負けないよ!
【攻撃の宣言】を向けた対象に、【ホムンクルスの姉妹たちの連携攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    良いもの持ってるね!ちょっと貸してくんない?
対象のユーベルコードを防御すると、それを【劣化した性能で魔力の回路に一時的保存し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:つかさ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リズ・ルシーズ
アドリブ歓迎だよ!

【SPD】

迷宮に迷わないって言ったら、アリアドネの糸だよね

【指定UC】で多脚戦車状態で迷宮に挑むよ。【高分子ワイヤー】を【ロープワーク】でアリアドネの糸のように入口からの経路を示すために使用だね

道中は光学【迷彩】を用い【情報収集・地形の利用】をしながら進んでいくつもり、敵は高機動と【空中戦】で一気に襲撃し【先制攻撃】で【零距離射撃】だね

攻撃の宣言するつもりなんてボクにはないからね?

【気絶攻撃】が上手く決まったら、敵を餌に【罠】を設置し先に進むよ。敵地だしやりすぎても大丈夫だよね?気絶した敵の周囲に、救いに来た姉妹や目覚めた敵が引っかかるようにワイヤートラップを仕掛けて進むよ


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

アルダワにはあれこれお世話になってるし、なんだかんだで色々と思い出もできた場所。――(眼鏡を外して)――きっちりと勝って、守らなきゃ、でありますよ。

【選択UC】で【情報収集】。数の暴力は探索、マッピングおいては優位に立てる要素でありますからね。但し、こいつらに任せるのは探索のみ。なんか嫌な予感がする(第六感)し、接敵したら交戦する前に退かせて、私自身で敵と相対する。アサルトライフル【刹那】で近中距離での連続攻撃、あるいは近接攻撃(串刺し)を試みる。

「うん、マッピングは順調でありますね」
「――敵戦力、CAが確認。交戦前に電脳空間に戻し、私自身で交戦するであります!」



 迷宮坑道には明かりが灯っているものの、その奥の闇は深淵に繋がっているかのような不気味さを感じられる。
 この迷宮に足を踏み入れたリズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)と紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)の2人は、周囲への最大警戒を怠ることなく少しずつ前進をしていた。
 奇しくも、2人はサイボーグ同士。
 全世界からサイボーグが集う連盟の加盟者同士、少なからず親近感が湧く。
 互いに軽い自己紹介を織り交ぜながら、サイボーグあるあるネタ『YOUはどこまで機械なの?』談義の花が咲く。
「そっか。智華も結構、身体の大部分を機械化してるんだね。ナノマシンとかカッコいいよね」
「それをいうなら、リズさんの肉体だって。脳と必要最低限の生体器官以外は機械化されてるとは思わなかったよ」
「そんなに驚くことなのかな? サイボーグなら珍しくないよね?」
「いやだって、アーマー以外は機械とは思えないな。人間と見紛うほどの自然なフォルムは凄い……!」
 赤いフレームの眼鏡を中指で持ち上げながら、智華はフルアーマーのリズの全身を観察する。
 機械いじりが趣味な智華のオタク心をくすぐるロマンが目の前にあった。
 その熱意に圧倒され、リズは思わず顔を赤らめた。
「えっと、見詰められると、恥ずかしい……!」
「あっ、ご、ごめんなさい……! さ、さあて、仕事しよう!」
 こほん、と咳払いをした智華は両手で自分の頬を軽く叩いて気合を入れる。
「アルダワにはあれこれお世話になってるし、なんだかんだで色々と思い出もできた場所――」
 そして彼女はメガネを外すと、義眼の『虚構の神脳(ラプラス)』が01のシグナルを視界にちらつかせた。
「――きっちりと勝って、守らなきゃ、でありますよ」
「あれ、メガネを外すと、口調が変わるキャラかな?」
「キャラって言わないでほしいであります……!」
 リズの問い掛けに、そっと智華は目を逸らしながら呟いた。

 探索は思いの外に順調。
 敵との遭遇もなく、淡々と迷宮坑道内の奥へと進んでゆく。
「ここまでは順調だね。でも、そろそろ準備しておくよ」
 リズはユーベルコード『Arachnophobia(アラクノフォビア)』を発動させる。
 彼女の体内からガイダンス音声が発せられた。
『外部兵装召喚、種別指定、多脚自立砲台』
 リズの足元から淡い光を放ちながら、漆黒の蜘蛛型多脚自立砲台が召喚されると、そのままリズを騎乗させて競り上がってゆく。
『アラクネ、管理番号Re-Zとの神経接続を開始』
 彼女の首筋から端子ケーブルが伸びると、砲台との神経接続を完了。
「全システム、正常稼働(オールグリーン)! 行くよ、アラクネ!」
 完全武装モードになったリズの機体が、みるみるうちに周囲の岩壁と同化してゆく。
「これは、光学迷彩でありますか!」
 義眼の解析力で、目の前の事象を智華は解き明かした。
 そして、リズの後ろに伸びてゆく奇妙な線の存在にも気が付いた。
「おや? その極細のワイヤーは……? ラプラスでなきゃ見逃しちゃいますね?」
 リズは足元を振り返る。
「高分子のナノワイヤーだよ。迷宮に迷わないって言ったら、アリアドネの糸だよね」
「なるほど。『いともった?』という例の魔法の合言葉でありますか」
「道具屋で買い忘れたと気付いた時の絶望感は半端ないよね。リアルでそれは避けたいから、実は入り口からずっと垂れ伸ばしてきたんだよ」
 これで何か不測の事態が遭っても、糸を辿って脱出ができる。
「流石であります、リズさん! 私も負けてられませんね!」
 触発された智華も、ユーベルコードによる探索を行うことにした。
「数を補うでありますよ。数の暴力は探索、マッピングおいては優位に立てる要素でありますからね」
 ユーベルコード『戦場覆う四足歩行兵器CA-X-001(カバリングアームズ)』……異空間から召喚された総勢315体の小型の戦闘用四足歩行兵器。
「さあ、坑道内を探索して、正確な内部構造を調査するのであります!」
 四足歩行兵器たちはたちどころに散開すると、地形データを智華のラプラスへと集積してゆく。
「智華、ボクも解析を手伝うよ。どのみち、ボクも周囲の情報を解析しようと思ってたところだからね。単独でこなすよりも早く片付くはずだよ」
「助かります、リズさん! ええと、どうすれば?」
「ボクの端子ケーブルの一本を、智華のデバイスに接続できればいけるよ」
「でしたら、この腕時計型の電脳演算端末に!」
 スマートウォッチ風のデバイスへ、首筋から伸びる端子ケーブルを接続。
 リズの脳内に埋め込まれた演算チップの助けを借り、みるみるうちに坑道の内部構造が暴かれてゆく。
「うん、マッピングは順調でありますね。むむ?」
 当然、そうなると敵の反応も確認できるのだが……。
「――敵戦力、CAが確認」
「どうする? 急行して奇襲をかけることも出来るよ?」
「いや、どうも嫌な予感がするであります。歩行兵器たちには探索のみに留まらせて、ここはリズさんの砲撃で一網打尽にすべきかと」
 智華の義眼である虚構の神脳(ラプラス)は、本来は未来予知を得意とする。
 その義眼と己の第六感が、自身のユーベルコード製の兵器を突っ込ませてはいけないと警鐘を鳴らしているのだ。
 対してリズの光学迷彩からの一撃必殺の砲撃は、盗賊たちに反撃の暇を与えにくいと智華は考えたのだ。
 これにリズは了承した。
「判ったよ。それじゃあ、一気に行くよ!」
 リズの周囲に浮かぶ青い鏡面体が活性化すると、アラクネの多脚自立砲台ごと浮遊させ、そのまま音もなく坑道の奥へと飛び去ってゆくではないか!
 慌てた智華も足音を立てないように最新の注意を払いながら、リズの背を追ってゆく。
 すると、前方に、暇そうに談笑するホムンクルス盗賊の姉妹たちの姿が見えてきた。
 リズはギリギリまで光学迷彩のまま接敵すると、超至近距離から光属性レーザーを撃ち込んだ!
「「グワーッ!?」」
 突如として爆発、崩落する坑道の天井と壁に、盗賊姉妹たちは大混乱!
「敵襲! 猟兵だ! 相手は素早いけど、ウチらも負けないよ!」
 生存している盗賊姉妹たちは、砲撃の方向からリズの居場所を割り出し、一斉に飛び掛かる!
 しかし、リズの多脚自立砲台は高速移動を実現させるのだ。
「遅いよ。それに、攻撃の宣言するつもりなんてボクにはないからね?」
 第二射、第三射は粘着性の網を射出し、ユーベルコードごと彼女たちの動きを封じてしまった。
 撃ち漏らした盗賊たちが果敢にリズへ仕掛けるも、はるか坑道の奥から飛んできた狙撃弾の餌食となる盗賊たち!
「交戦前にCAを電脳空間へ撤収、私自身で交戦するであります!」
 04-MV[P/MC]マルチロールアサルトウェポン【刹那】のマズルフラッシュと銃声が坑道内に轟くたびに、盗賊たちはバタバタと倒れてゆく。
「くっ!? これは、ユーベルコードじゃないよ、姉さん!」
「そんな、単に銃の技量だけで、ここまで圧倒されるとは、ぐわッ!?」
「姉さーん!? ぎゃぁ!?」
 物陰から狙撃しつつ、智華はリズの背中へ追い縋る。
 気が付けば、敵の生存者は蜘蛛の糸に絡め取られた十数体のみになっていた。
「さて、ここは敵地だし、やりすぎても大丈夫だよね?」
 蜘蛛脚で彼女たちをリズは蹴飛ばして意識を奪うと、器用に機械の脚でワイヤートラップを設置してゆく。
「これはまた、古典的なブービートラップでありますな!」
「雁字搦めになって気絶した敵を、間違いなく他の姉妹が救出に来るはずだよ。身体を動かした途端、ワイヤーが外れて……」
「ズドンッ……ありますか。リズさんも策士でありますな!」
「戦争の常套手段だよ。敵は結構多いみたいだし、少しでも数を減らさないと」

 こうして、リズと智華は迷宮坑道内部の探索に戻った。
 暫くすると、背後から轟音と地響きが発生し、思わず2人は顔を見合わせてニンマリと笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(アドリブ/連携可)
「どうやらあちらも姉妹みたいね」
連携攻撃なら私たちも負けてはいないわ。そうよね、フォルセティ?
■準備
これまで歩いた場所をオートフォーカス上に拡張現実でマップ展開
迷わないように対策案する。
■行動
戦闘開始と同時に弟と左右に展開しホムンクルスの盗賊姉妹と対峙する
「どうやらこちらのユーベルコードを拝借するみたいね」
ならば使いこなせないUCで攻撃するのがベスト
「フォルセティ、タイミングを合わせていくわよ」
弟に合図を送り阿吽の呼吸で【ロンギヌスの槍】を放つ[高速詠唱]
二人で連携した時のみに発現するUCで、盗賊姉妹の『良いもの持ってるね!』を
完全に封殺する


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(アドリブ・共闘可)
「なんだか誤解を招く発言だー!」
こっちは姉弟だよ、フィオ姉ちゃん!
ボクは古典的だけど、一度通った坑道にチョークで落書きして、道標にするよ。
【行動】()内は技能
「ここは、さっき通った場所だね。」
フィオ姉ちゃんとしっかり確認しながら、盗賊姉妹達に惑わされないようにするよ。
「残念。その手にはのらないよー」
阿吽の呼吸でフィオ姉ちゃんと戦闘態勢に入るよ。
「任せてよねフィオ姉ちゃん!」
(ダッシュ)で左右に展開したら、フィオ姉ちゃんの合図にあわせて
タイミングばっちりの【ロンギヌスの槍】を放つよ(高速詠唱)
「これなら簡単にスチールできないよね」



 突如、迷宮坑道の空気が激しく震え、足元も地響きが伝わってきた。
「なに、今の……?」
 赤毛の電脳ウィザードことフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)は急ぎ、電脳魔術を軌道。
 オートフォーカス上に拡張現実(AR)ホログラムマップを展開し、振動と音の発生源の特定を急ぐ。
「どう? 何か判った? フィオ姉ちゃん?」
 心配そうにホログラムマップを覗き込むのは、フィオリナの弟のフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)だ。
 姉とは対象的に青い衣装に緑の髪の彼は、白いチョークで壁に『✕』印を描いた。
 フォルセティは迷宮の入り口からずっとここまで、曲がり角や分岐路にチョークで印を付けて道標として進んできたのだ。
 彼いわく、古典的だけど一番確実で、他の猟兵とも情報共有が可能な点を鑑みての行動らしい。
「……わかったわ。恐らく、別の区画で猟兵たちが戦闘を行った影響よ。この衝撃だと、爆発物でも使ったのかしら?」
「ここまで衝撃が伝わるレベルの爆発って、坑道が崩れそうだけど……?」
 姉の言葉に、弟は崩れた脇道の瓦礫を見て唾をごくりと飲み込んだ。
 その瓦礫の中には、白骨化した何かの腕が外に垣間見えている。
 内心、自分たちも生き埋めにならないか不安を抱いてしまう。
 慄くフォルセティに、フィオリナはくすくすと含み笑いをしながら前へ進み出す。
「大丈夫よ。よほどの破壊力があるユーベルコードをぶっ放さない限り、この迷宮坑道が崩落することはないはずよ」
 コツ、コツ、コツと靴音を響かせながら進む姉を、弟は慌てて小走りに追い縋る。
「だと、いいんだけどね。崩落以外にも、何があるか判らないよ? ほら、その影辺りに敵が潜んでいそうだよね?」
「もう、フォルセティったらなーバスになりすぎよ?」
 苦笑いしながらフィオリナは前方に手をかざし、ARキーボードを叩いて術式コードを入力。
 01の数字の羅列が魔法陣を形成し、事象を捻じ曲げて彼女の目の前で魔力となって発現する!
「サンダーボルト!」
 バチィッ!
 火花とともに放たれた小さな電撃の矢が彼女の掌から放たれた!
「ね? 誰もいないで……」
 雷光は物陰へ突き刺さると、途端、聞き覚えのない女性の悲鳴が上がったではないか!
「きゃああーっ!」
「妹よ! 何故だ? 私達の待ち伏せが看破されてただと!?」
 にわかに騒然とする物陰の向こう。
 電撃に射抜かれて斃れるホムンクルス盗賊の1体と、その後ろからぞろぞろと姉妹たちが姿を現した!
「フィオ姉ちゃん! ほら! やっぱりいたよ! でもよく判ったね!?」
 フォルセティはフィオリナの腕を掴んで、その体を揺すった。
 当のフィオリナは勝ち誇ったように、ホムンクルス盗賊たちへ言い放った。
「私は由緒正しき魔導の家系であるソルレスティア家の次期当主、フィオリナ・ソルレスティアですよ? 待ち伏せなんて、私の電脳魔術で見破れないとでも?」
「こいつ、千里眼の持ち主か!」
「くそ! 此方の動きが筒抜けだったのか!?」
 慄く盗賊たち。
 怯んだ隙に、フィオリナはフォルセティの手を握ると、踵を返して脱兎のごとく逃げていった!
「ちょ!? フィオ姉ちゃん!? どうしたの!?」
 混乱する弟に、姉は涙目で打ち明けた。
「だって、まさか本当にいるとは思ってなかったのよ! 千里眼とかハッタリ仕掛けて怯んだ内に、安全な場所へ移動して態勢を立て直すわよ、フォルセティ!」
「そんなぁ!?」
 逃げる姉弟、その後ろからようやくハッタリだと気付いて追跡を開始する盗賊たち。
 両陣営の命をかけた鬼ごっこが暫く続く。
「ここ、さっき通った場所だね。ほら、ボクがチョークで道標を書いてる!」
 確かに、矢印で正しい道順が描かれていた。
 ここは十字路になっており、最初はとても苦労させられた場所だとフォルセティは記憶している。
 すると、フィオリナはハッと何かに気が付いた。
「フォルセティ、ここで迎え撃つわよ。そう言えば、どうやらあちらも姉妹みたいね」
「なんだか誤解を招く発言だー! こっちは姉弟だよ、フィオ姉ちゃん!?」
「あなたは自分の可能性に気付いていないのよ、フォルセティ」
「それ、どういう意味……!?」
 姉の意味ありげな視線に、弟の背筋は思わず寒くなってゆく。
 そうこうしているうちに、盗賊たちが真正面から押し寄せてくる。
 そのうちの1体が、先程の電撃魔法を真似ようとするが不発に終わった。
「さっきの魔法はユーベルコードじゃないよ、姉さん!」
「だったら、何が何でも防御してコピーしてしまえばいいだけのことよ!」
 盗賊姉妹たちの会話から、フィオリナは敵のユーベルコードの本質を推理する。
「どうやら、こちらのユーベルコードを拝借するみたいね」
「だったら、絶対に真似できないユーベルコードを使おう、フィオ姉ちゃん!」
 弟の言葉に姉は首肯し、その手を握った。
「ええ。連携攻撃なら私たちも負けてはいないわ。そうよね、フォルセティ?」
「当たり前だよ、フィオ姉ちゃん!」
 姉弟の繋いだ手から、互いの魔力が激しく入れ替わり循環してゆく。
 迫りくる盗賊たちへ向けて、2人は手をかざすと、目の前に複雑多様な魔法陣が幾重にも出現!
 盗賊たちは待ちに待ったユーベルコードの発動に、防御を固めて受け止めようと待ち構えていた。
 それを好機に、姉と弟は相互効果で魔力を増幅させてゆく!
「フォルセティ、タイミングを合わせていくわよ」
「任せてよね、フィオ姉ちゃん!」
 魔法陣から溢れる光が一点集中すると、それはかつて神を貫き、殺したとされる伝説の槍の概念を具現化させてゆく!
 そして、2人の魔力が完全に一致した次の瞬間!
「「全てを貫け! ロンギヌスの槍(ランサ・ロンギヌス)!」」
 姉と弟、互いのユーベルコードが合体したその時、このユーベルコードの真の効果を発揮する。
 魔法陣から出現したのは、巨大な神殺しの閃槍!
 唸りを上げながら前方に射出されると、逃げ場のない十字路の通路を突き進む!
 ホムンクルス盗賊たちは防御しようと身構える、が。
「「ぎゃあああああああああっ!」」
 容赦なく神殺しの槍に蹂躙されてゆく災魔たち。
 そもそもソルレスティア姉弟でなければ、このユーベルコードを使いこなせないため、最初からコピーは不可能なのだ
 盗賊姉妹たちの断末魔が途絶えると、ソルレスティア姉弟は自分たちの勝利を確信する。
「残念。その手にはのらないよー。これなら簡単にスチールできないからね」
「先を急ぐわ、フォルセティ? 置いてゆくわよ」
「待ってよ! もう少し勝利の余韻に浸らせってば!」
 ダークゾーンの闇を晴らすべく、この後も姉弟は精力的に探索を続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

茲乃摘・七曜
心情
大魔王の侵攻ですか…負けられませんね

指針
蒸気トロッコのレールの繋がりから坑道の広がりを予測し、判明した繋がりは壁などに目印をつけマッピングしながら探索し、戦闘の際に災魔達から不意を突かれないように準備する
「急ぐ必要はありますが、焦らないように気を付けなければ

行動
目印に『流転』用の魔導弾を織り交ぜ仕掛けを施す
探索はAngels Bitsから超音波を響かせ反響で確認してゆく。
「災魔に不意打ちされないよう、闇に紛れて行動しましょうか

戦闘はPride of foolsを用いた近接格闘と射撃
属性弾を使用することで『流転』カモフラージュし敵に防御され利用されないよう注意
「囲まれないよう音にも注意ですね


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

あたし、記憶力はそう悪いほうじゃないとは思うけど。…これだけ入り組んでる上にだだっ広いんじゃ、対策なしだといくらなんでも無謀ねぇ。
…とりあえず、目印でも残してきましょうか。
カノ(松明)のルーンストーンをエオロー(結界)で保護してオセル(不動産)で固定。何もないよりは多少マシでしょ。

相手はここの構造を熟知してるって話だし、先んじて潰す、ってのは難しいわよねぇ、やっぱり。
…なら、かかってきたとこを潰す、ってのがいいかしらねぇ。
○クイックドロウからの●明殺で○カウンターを叩き込むわぁ。
こう見えてあたし、○早業にはそこそこ自信あるのよぉ?



 廃坑とはいえ、内部に放置された器材が無事なまま放置されていることは充分にあり得た。
 だからこそ、茲乃摘・七曜(魔導人形の騙り部・f00724)は蒸気トロッコのレールを見付けると、その道筋を辿り始めた。
「なるほど、ここは……此方へ繋がっているのですね。書き留めておきましょう」
 茲乃摘は日記帳にレールの全容と通路の繋がりを記した簡易地図に手を加えてゆく。
 レールの向きや長さを鑑みると、まだまだこの奥へと迷宮坑道は続いているようだ。
 思っていた以上に広大な区画らしい。
「ファーストダンジョン、そして大魔王の侵攻ですか……負けられませんね」
 茲乃摘の呟きに、帯同していたティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が言葉を返した。
「負けるつもりもないけどねぇ? とはいえ、まずは出来ることからコツコツと、かしらぁ?」
 ティオレンシアは自分の足元に何かを設置してた。
 設置物は篝火のように赤く輝いており、それは後ろへ等間隔に灯されていた。
「これでよし。カノ(松明)のルーンストーンをエオロー(結界)で保護してオセル(不動産)で固定。何もないよりは多少マシでしょ」
「文字通りの光る道標ですね。状況が状況でなければ、ちょっとした幻想的な光景になり得たかもしれませんが」
 苦笑する茲乃摘もまた、壁に道標として細工を施していた。
 二丁拳銃『Pride of fool』の銃口を壁へ向けると、そのまま躊躇なく発砲する茲乃摘。
 弾丸が岩壁に突き刺さり、それ自体が道標となった。
 それを立て続けに3回発砲。
 発砲音が坑道内に結構な音量で反響していった。
「急ぐ必要はありますが、焦らないように気を付けなければ」
 意味深な言葉を口から出した茲乃摘は、2つの浮遊する自律式の多機能小型蒸気機関式拡声器『Angels Bit』から超音波を発生させた。
「なんだか、耳がキーンってするわねぇ……」
「おや、五感が敏感なのですね?」
 茲乃摘が意外そうに感嘆の声を漏らすと、ティオレンシアは耳を抑えながら答えた。
「狙撃手は目だけじゃなく、標的の動く音も聞き漏らさないもの。もしかしたら他人より敏感かもしれないわぁ」
「そうなのですか? ですが、今暫く辛抱を。敵を、こちらにおびき寄せていますので」
 超音波の反響で、こちらへ向かってくるホムンクルス盗賊の姉妹たちをいち早く探知していたのだ。
 先程の銃声で自分の存在を敵へ知らせ、逆に待ち伏せをしようという魂胆だ。
「災魔に不意打ちされないよう、闇に紛れて行動しましょうか」
 黒尽くめの出で立ちの茲乃摘は、坑道内の暗がりへ身を潜ませる。
 すると、ティオレンシアでさえも彼女を視認することが難しくなってしまった。
 ひとり取り残されたティオレンシアは、愛銃オブシディアンに特殊弾――鉄鋼貫通弾を装填しながら周囲の警戒を行う。
「相手はここの構造を熟知してるって話だし、先んじて潰す、ってのは難しいわよねぇ、やっぱり」
 弾丸の充填を終えたあと、弾倉を戻した。撃鉄を起こして輪胴を回す。
「……なら、かかってきたとこを潰す、ってのがいいかしらねぇ?」
 そして自分が囮になって、後の先を狙って敵を潰す。
 坑道の闇へ向けて、ティオレンシアは銃口を掲げた。
 ほぼ同時に、盗賊姉妹たちがティオレンシアへ殺到!
 息の合った連携殺法で襲い掛かってきた!
「もらった! 遅いねキミ!」
 盗賊姉妹の体術が肉薄するかと思いきや、突如鳴り響く銃声によって連携は絶たれた。
「どんな硬い鎧にも、貫くべき継ぎ目はある――あなたの隙、丸見えよぉ?」
 ユーベルコード『明殺(ポーラスター)』!
 敵の攻撃を誘発し、さらに先んじて撃ち抜く後の先の究極の射撃術!
 放たれた鉄鋼貫通弾は、容易く盗賊姉妹たちの身体を次々と貫き、鮮血の花を咲かせながら地面へ崩れさせてゆく。
「できればこれは切りたくない切り札だったけどねぇ? 仕方がないわぁ」
 押し寄せてくる災魔へティオレンシアはファニングショットの5連射!
 そして素早く空薬莢を排出し、敵の腕を潜り抜けながらリロード!
「ティオレンシアさん、援護します」
 闇の中から二丁拳銃を連射し、敵を牽制する茲乃摘。
 彼女は的中へ飛び込んでゆくと、前転しながら敵の足を撃ち抜き、接近してきた盗賊の顔面へ回し蹴りを放った後、心臓へ一発ズドンと弾丸を撃ち込んだ。
「属性弾のお味はいかがかしら?」
 撃ち抜かれた盗賊の体が瞬時に燃え上がる!
「助かったわぁ。同じガンナー同士、ここは共闘と洒落込みたいところねぇ」
「いいですね。ただ、私は案外、前に出る戦い方が好みなので、援護をお願いできますか?」
「乗ったわぁ。前はよろしく頼むわよぉ?」
 茲乃摘とティオレンシアがハイタッチを交わすと、互いに前衛と後衛に分かれて敵の対処を始めた。
「囲まれないよう音にも注意ですね」
 茲乃摘は黒いドレス姿で縦横無尽にガン=カタで属性弾をばら撒いてゆき、後方からのティオレンシアの射撃が敵の攻撃を留まらせる。
「どうしたのかしらぁ? こう見えてあたし、早業と早撃ちにはそこそこ自信あるのよぉ」
 ティオレンシアの援護により、次第に盗賊姉妹たちの数が減ってゆく。
 茲乃摘は直感で一撃で決めなければいけない衝動を覚え、ユーベルコードで一気に決着を突けるべく詠唱を開始!
「万物流転。有限が作り出す無限の円環……幽玄たる時間の監獄へようこそ」
 すると、先程、岩に撃ち込んだ魔導弾から七曜を象徴する杭を盗賊たちの周囲に放ち、様々な属性でその身を貫いてゆく!
 だが、盗賊たちはいくら倒れようが、ニヤリとほくそ笑む。
「良いもの持ってるね! ちょっと貸してくんない?」
 茲乃摘はユーベルコードをコピーされると瞬時に理解した。
 だからこそ、既に彼女は布石を打っていたのだ。
「残念ですが、その攻撃は私の二丁拳銃から放った属性弾です。ユーベルコードはカモフラージュですよ」
「なに!?」
 実際、盗賊たちは茲乃摘のユーベルコードをコピーすることが出来なかった。
 次の瞬間、魔法の杭が、盗賊たちの周囲を取り囲む!
「もう、防御する体力も残されていないでしょう。では、皆様、ごきげんよう?」
「「うわああぁぁぁーっ!?」」
 日・月・火・水・木・金・土の七属性の杭が四方八方から盗賊たちへ突き刺さり、その命を奪うことで、身体の動きを永遠に封じてしまった。
「終わったわねぇ。それじゃあ、探索を再開しましょう?」
 ティオレンシアは何度目かの空薬莢を排出すると、茲乃摘へニコニコと笑みを向ける。
「ええ、まだまだ先は長そうね?」
 茲乃摘もまた、帽子を目深にかぶり直すと、口元の黒いルージュを愉悦に歪ませて相手に応えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月03日


挿絵イラスト