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アルダワ魔王戦争1-D〜悲嘆廃坑を駆け下りて

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「さて、君たちには廃坑を通るルートを案内しようか」
 ふんふん、と鼻を鳴らすルーダスはそう言った。
 ファーストダンジョンへの侵攻。その皮切りだ。
 ダンジョンを覆うダークゾーン。それを払拭するために、フロアの攻略が必要になる。
 複数個所ある入り口から既に、多くの猟兵達が乗り込んでいっている。
「そのうちの一つだ。かつて採掘がおこなわれ、今では完全封鎖された坑道」
 既にダンジョン化したそこからファーストダンジョンへの道を探る。
 まあ行けば分かるだろう、とルーダスは投げる様に言い放って、最後に付け加える。
「もし、近道を見つけたとしても、注意してほしい」
 目的は、突破ではなく攻略。
 そこがどこか、どこから来てどこまで行くのか。それを把握することが大事だからね。とルーダスは猟兵達に、告げた。


 数層あった坑道が落盤したのだろう。複雑な道だったはずのそこは一本の急な坂道に変わっていた。
 一本道ではなく、恐らく地中を複雑に曲がる様に複数の廃校がつながって、下って行っているのだろう、入り口からではゆるくカーブを描いて壁に視線を遮られている。脇に見えるのは瓦礫に埋もれた廃坑だろうか。完全に埋められて道としては使えなさそうだ。
 そこを行けば迷うことなく確実に下層を目指せる、まあ、下層のどこに着くかは、意識せねば下りた先で迷う事になるのだが。
 だが、それでもこの道は攻略にも一役立ちそうだ。猟兵達がそう考え、来るだろうオブリビオンの妨害に備えながら、少し進んだとき。
 ゴ、ガアアアアアン!!
 そんな轟音と共に、上の層をぶち破って降ってきたのは、巨大なトロッコだった。積まれてあるのは、玉ねぎ型のオブリビオン。
 軍勢は無限、とは言っていたが。猟兵達が数人並んでも余裕のある道を上下ともに埋めるような巨大なトロッコに満載されているその光景は、むしろギャグにしか見えない。
 が。
 忘れてはならない。ここは、結構勾配のある坂道で。トロッコの車輪は無事なようだ。
「は」
 つまり、
 ズゴゴ、と地響きを立てながら、動き出したトロッコが猟兵達に迫る。
「走れえええ!!」
 誰が叫んだか。いや、叫んだのはあのトロッコの上に乗った玉ねぎたちか。
 ともかく、猟兵達はその超重量に押し潰される前に、泣き叫ぶサッドニオンの声が響く坂を駆け下りていく。


オーガ
 道中にもごろごろ転がっているサッドニオンを蹴散らし、サッドニオントロッコから逃げる話です。
 プレイングボーナス対象である、マッピングや現在地確認も忘れずにお願いしますね。

 尚、トロッコは吹き飛ばしても次のトロッコが降ってくるらしいです。一時的な足止めにはなるかもしれません。

 イメージ的によくある大岩ゴロゴロトラップな感じを想定してます。

 採用数は少なめです。

 それではよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『サッドニオン』

POW   :    どれだけ皮を剥けば素早くなれるんだろう。
【体当たり】による素早い一撃を放つ。また、【皮を何層か剥く】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    君が泣くまで、僕らは泣き止まない!
【触れた者をネガティブ思考にする涙】【催涙ガス】【強烈なネギ臭】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    皆もこんなに悲しんでくれてるんだ!
戦闘力のない【小さな分身】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【周囲から集めた悲しみの力】によって武器や防具がパワーアップする。

イラスト:くずもちルー

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴木・志乃
アド連歓迎
即UC発動

志乃、私こういうの嫌だって言わなかったっけ!!
ねえ、親友のハズの私の扱いがぞんざい過ぎるんだけど!!
正気? 私囮? いや確かに幽霊だけどね?!!
それは理由にならないっていうか(※絶賛追われ中)

(高速詠唱やら何やらで一旦敵を焼却もしくは吹っ飛ばし、道が割れたら二手に別れて女霊『昨夜』は延々叫んで逃げ回り続ける。囮。
鈴木、自分に精神攻撃作用のある催眠術をわざとかけてわざとハイテンションになるように細工。敵SPD対策。遭遇したら高速詠唱で焼却か吹っ飛ばす。

片方が囮、もう片方がマッピング役になれるのが理想
第六感で空気、風の流れを見切り囮を活用してじっくりマッピングしたい)


四軒屋・綴
アドリブ絡み改変歓迎

他人の涙より自身の涙を……随分と泣かせる話じゃあないか等と言うと思ったかこの硫化アリル共がッ!!!(滝のように涙を流しつつ。)

それはさておき【防具改造】ッ!!自らマスクドトロッコへと変身しライドオンッ!!下層へ下りつつ電脳ゴーグルを用いた壁面及び魔力パターンの解析により『不連続な』違和感のある場所を探す……隠蔽されているとすれば『不自然な壁』を殴り壊すのが一番だろうッ!!

そして敵のお出ましだなッ!ユーベルコード発動ッ!!上昇させた防御力を頼みに敵トロッコを受け止め線路を踏み砕き脱線投げだッ!

後は火を通さねばなッ!【属性攻撃】と敵の乗っていたトロッコを武器に殴りかかるぞッ!


テラ・ウィンディア
準備
可能な限り事前にわかってる情報とか後はコンパスも用意
方角が解らないと混乱しちゃうからな

取りあえず
逃げるしかないな!

【属性攻撃】
炎を全身に付与
【戦闘知識】で常にトロッコとの距離とトラップや上の玉ねぎの動きを警戒して何らかの行動の捕捉の助けとする
モードグランディア発動
地上すれすれを飛びながらトロッコから逃げるぞ

追いつかれそうな時や玉ねぎから攻撃が来そうな時は
【第六感・見切り】で可能な限り回避しつつ
グラビティバスターによる重力波砲の【一斉放射】でトロッコを吹っ飛ばす!
直ぐ復活するだろうからその間に真直ぐな道を加速
但しどれくらい進んだか把握してマッピングは忘れない
妨害や倒せるギミックがあれば利用


杜鬼・クロウ
アドリブ歓迎

古典的だが地味に心身共に追い詰められるンだよなァ
凡人なら余裕がなくなってたろうが
折角の迷宮攻略の機会だ
愉しませてもらうわ(ニィ

廃坑経路は夜雀頼りに
超音波で周囲の状況や建物の構造を把握出来る所までする
地図更新

玄夜叉に赤熱の焔宿す
トロッコの車輪狙い低姿勢で灼き斬る
2回攻撃で敵を不快を誘う
一つだけ敵を排除しトロッコ強奪

挽肉にするなら、テメェらみてェな玉葱野郎を混ぜた方がきっと美味だろうな(皮肉
みじん切りにしてヤんよ
腕が鳴るぜ!

【聖獣の呼応】使用
朱の鳥で援護攻撃で妨害
時間稼ぎ中に奪ったトロッコに乗り全力疾走
トロッコから一定の距離保つ

夜雀の暗視で薄暗い箇所や細道へ
情報収集や聞き耳で色々探索


ブライアン・ボーンハート
不採用含めて全て歓迎だ。

おまっ、ふざけっ、えっほ! ごほっ!
運動不足がたたって横っ腹も痛いがとにかくダッシュ!
道中に転がるサッドニオンは文字通り蹴散らすぞ。
道中、煙草を目印に捨てておく。戻った時や後続がどうにかしてくれるだろ。
一口吸ってから捨てるから灰になってるかも知れんがしょうがない。火を消す時間もないし、俺は模範的な大人だからな、金を無駄にはしないぜ。

トロッコに追い付かれたらUC使用。
魔王復活の危機の前、救ってみせよう子供たち!この熱き血潮のサイクロン・ブロンズハートがここに見参ッ!
ヒーロー衣装はないが関係ねえ、たっぷり威嚇して相手を牽制、動きを止め…待てよこれトロッコ止まるか?



 ハタタと、轟音に驚いたのか蝙蝠が飛び去っていく廃坑の中、五つ分の、いや途中から増えた六つ分の声が響く。
「ハッハッハ!! 困ったなこれはッ!」
「もー!! 何でこうなるんですかーッ!!」
『なんでこの状況で私呼んだの』
「やあ、賑やかしくっていいなァ」
「っ、な、アンタっ、そんな余ゆ、ぅご、っほ! なん、だっ」
「てかアンタの運動不足だ、オッサン!」
 いいから、走るしかないだろ! と脇腹を抑えて、咳き込みながらどうにか足を動かす中年の男性に、炎を纏いながら飛翔する少女が叱咤を送る。
 ゴゴゴゴガガドガガガッ!! と瓦礫も岩も押し潰して迫る巨大トロッコに追われながらも、背を追うそれをブライアン・ボーンハート(熱き血潮のサイクロン、ブロンズハート!・f22409)は後ろを肩越しに振り返る。
『ゴアアアアアア!!』と地響きのように轟音を立てているのは、何も巨大トロッコだけではない。そこに満載されたサッドニオンの大音響の泣き声が、それだけで音響兵器の如く響き渡っているのだ。
「ガ、ああ!! ど、どうにかできんか!!」
 坂道にも転がって、飛び掛かってくるサッドニオンをドッパア! とガントレットに包まれた拳で吹き飛ばしながら、限界を迎えてきそうな脇腹を抑え、肺に酸素を送り叫ぶ。
「とは言ってもなっ! こうも追われてはどうしようもない!」
「二手に分かれるとかどうでしょう!?」
「二手……そうか、あったな脇道!」
 背中に、オラトリオの女霊を張り付けた鈴木・志乃(ブラック・f12101)が、叫んだ案にテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が炎翼の尾を引きながら、道中幾つかあった分かれ道を思い出す。
 揺らぐ炎槍で飛び掛かってくる玉ねぎどもを薙ぎ払いながら、返せば周囲から同意が返る。
 成程、戦力が分散することになるが、片方が囮になってトロッコを引きつければ、もう片方が周辺の探索を行えるという算段だ。
「へえ? ならどう別れるか、だな?」
 突発的状況にも関わらず、慣れたように余裕な態度を見せる杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が、次の分かれ道で混乱しないようにと、具体案を詰めようとするが、しかし、それも志乃が勢い良く上げた手に遮られた。
「はい! それについてもいい案があります!」
「おお、そうかッ!! 採用だッ!」
 トロッコ形態になって坂道を駆ける、四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)が竹を割るような性格をそのままに即断する。
「何も言ってないですけど!! それじゃあ、昨夜!」
『待って、嫌な予感しかしな――』
「囮よろしく!!」
『ツッコミ途中ッ!!』
 背後や道中のサッドニオンに、ネガティブ思考に陥れられて、奔る足を止めてはいけないと自己催眠で、異常なテンションを維持している志乃に、そんな声が届くはずもなく。
 そんな彼女に引っ張られるような高揚に包まれた猟兵達にも伝播していく。
 いや、結構素のままかもしれないが、綴が幽霊だと説明された昨夜へとガッツポーズを送る。
「危険だぞ! 頼んだッ!」
『慮りながらの、確定宣言っ!? 分かったよ! やれば良いんでしょ、やれば!』
 次の分かれ道だね! と聖霊じみた幽霊は、半ば投げやりに叫んで、直後、カーブの先に手頃な分かれ道が姿を現した。
「ゴー1」
『覚えてろぁおー!』
 志乃の声に、昨夜がその背から分離して分かれ道に飛び込んでいった。
『ほら、こっち!! 親友を売るような志乃より追い甲斐があるよ!!』
 などと叫び声をあげて分かれ道に消えていった昨夜の後ろを、トロッコが追っていく。
 どういう基準で標的を選んだのか。
 それは謎だが、しかし、トロッコは思惑通りに遠い坑道の闇の中へと消えていった。尊い犠牲があったわけだが。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫、あの子、私から一定距離離れたら体維持できないし」
 ――そのままいなくなってくれても、なんて聞こえた言葉を、テラは聞かなかったことにした。
 気の置けない仲特有の冗談だと思いたい。
「でも、まあこれで少しは余裕が出来たんじゃないか?」
 告げられた言葉に、猛疲労しているブライアンの方がびくりと跳ねる。
「いやそれ、フラグ――」
 テラの言葉に、言い知れぬ不安をブライアンが覚えたまさにその時、ミシシ、とそんな聞き覚えのある音が天井から響く。そして轟音のような泣き声と共に。
「……はい、おかわりぃ」
 天井を突き破って、巨大トロッコがまたしても、降ってきた。
 ズズ、とデジャブのような、滑り出しの音が響く。
「おれのせいじゃないよな?」
「いいから! 走りますよ!!」
 冷や汗を頬に伝わせ、少し口をとんがらせて不満げに零したテラを急かし、志乃達は再び、坂道を転がる様に走り出した。
「もう、囮の意味……っ」
「ちょっと休めただけでも儲けもんだッ」
 志乃の葛藤に、ブライアンがどうにか足を動かしながら告げる。説得力の塊である。
「二手に分かれても、増えるだけらしいな!」と、流石に息を弾ませながら駆けるクロウにテラが、そうだな、と叫ぶように言葉を返し。
「てか、いつまで下るんだコレ!」
「さぁなあ、まあそんなに続かねえよ」
「はあ?」
 なんで分かる、と問いかける暇もないテラに、クロウがその視線に言葉を返す。その前に、綴の声が響いた。
「前だ!!」
 そして、その逃避行も、漸く終わりを見せる。
 カーブが無くなり、その終着点が猟兵の向かう先に現れた。
「は」
 見えたのは、行き止まりの瓦礫の壁。脇道も、抜け道もない、どん詰まりの終着駅。
 そして、背後には豪速を伴ってトロッコが迫る。
「はあ!? どうするんだよ、これ!」
 走る事を止めるわけにもいかず、テラが思わず叫ぶ。止まる、即ち、轢死である。
 だが、しかし、そんな一堂にクロウが希望に満ちた情報と打開策を発していた。
「いや、あの先広い空間があるぜ。ぶち破れるんじゃねェか?」
「ほうっ! 分かるのか!」
「まあ、な。頼りになるだろ?」
 綴にそう言ったクロウの肩に蝙蝠が止まり、果実の形に変わって、いや、その形に戻ってクロウの手の中に納まる。
「ああ、助かったッ!」
 式神、道中周囲に飛ばしながら周辺を超音波で調査する、というのを同時に行っていた彼の言葉を、綴は即座に信用した。
「ならば、俺がアレをぶち破ろうッ!」
 トロッコ型に変形していた綴がそう叫ぶ。その視線は、先ほどまでよりも高くなっている天井を見あげる。
「ここならば、……伏せていろ!!!」
 と同時に体を跳ね上げて、空中に躍り出て、人型へと変形。勢いのまま地面を削りながら、着地。巨大トロッコと対面するように体を反転させながら、具現化プログラムで構築した追加ボディを装着する。
 ズガガガガ!!! と足で削る岩の粉塵をエネルギーフィールドで振り解き、体が止まる、と同時に、巨大トロッコが綴と正面衝突を起こし。
「グ、オオオオオッ!!」
 坑道を震わせんばかりの雄叫び。
 ただの人であれば、一切の抵抗なく肉塊にするだろうそれと衝突しながら、しかし綴は五体を満足なままに立っていた。
 トロッコの正面に指をめり込ませ、その信仰のベクトルすらも利用して、さながら巨大な応援旗を振るう様に、彼はトロッコを持ち上げていた。
 そして、猟兵達の頭上を飛び越えて。
 ドッガアアアア!!!
 綴がブン投げた超重のトロッコが、行き止まりの壁へと轟音を立ててぶつかり瓦礫をふき散らかしながら、新たな道を開通せしめた。
「ん」
 が、それで終わり。ではなかった。
 壊れたのは壁だけではなかったのだ。ビキキ、と巨大なトロッコにも亀裂が入る。
「お?」と綴が見上げる。
 さて、水がいっぱいになったバケツを壊すと何が起きるのか。簡単だ、水があふれてくる。
 今回は、その中身がオブリビオンであり、バケツが巨大なトロッコではあるが、しかし、その結末は変わらないもので。
『ウォオオオオン!!』と泣き叫ぶタマネギの洪水が猟兵達の頭上に襲い掛かっていた。
 雪崩れ込むサッドリオンの大波に、綴は全力の反動に咄嗟に動けず、それを見上げて。
 すわ、このまま玉ねぎの大波に押し潰されるのか、と誰もが思うような一瞬。
「う、おぉおオオオオ、ここで出なきゃいつ出るってんだ!!!」
 高らかに、声。
「熱き血潮のサイクロン、ブロンズハート!」
 ビッシャアアーン! と雷光が鳴るが如く、ブライアンが綴を庇う様に彼の前に立ちふさがっていた。
「大・見・参ッ!!」
 瞬間、ぴたりとまるで時が止まったように、泣き声が止まる。その代わりに、無情なる短い大合唱がブライアンに襲い掛かっていった。
 すなわち。
『え、ダッサ』
「……ぅえ?」
 全サッドニオン、涙すら忘れ、ドン引きだった。
 筆舌に尽くしがたく、尺取虫がブレイクダンスを躍ってすっころんだ方がマシだとすら思えるようなポーズに、何故か空中で衝撃波を受けたように引いたサッドニオン達。
 その瞬間、一拍遅れて発射された重力波が、そんな空中のサッドニオンを薙ぎ払う!
「ナイス足止めだ、オッサン!!」
「え、あ、うん……」
 壊れる瞬間に、グラビティバスターを起動して、その中心に狙いを定めていたのはテラだ。
 トロッコに追いつかれそうになった時に吹き飛ばそうと、準備していたことが功を奏していた。充填までの一瞬、それが稼げたなら、星の力がサッドリオンの波を食い破る。
 ギュパ、と空間が悲鳴上げる音を響かせたテラの砲撃は、津波の中心に大穴を貫き、更にその討ち漏らしたサッドニオン達に、朱の鳥の羽ばたきが舞った。
 霊力で構成された神鳥が如き聖獣が、テラが拓いた波の中心に羽ばたき、朱が弾けた。煌めくように破魔の力を宿したその鋭い羽根が、四方のサッドリオンへと打ち放たれたのだ。
 縦横無尽に天を駆ける朱の鳥が一気にその数を減らしていった。
「こんなもんだな」
「ああ、一時はどうなるかと思ったぜ」
 黒い刃にルーンが刻まれた魔剣に火炎を灯して、最後のサッドリオンを叩き斬ったクロウの姿に、テラは残党がいないか、と周囲を見渡した後。
 最後に他の猟兵を振り返る。
 決して目を逸らしていたわけではないが。

「ち、おかえり、昨夜」
『今、舌打ちしたよね!! ぞんざい過ぎるんだけど!?』
 私たち親友だよね!? と姦しく喧嘩、片方の一方的なまくしたてだが、を繰り広げる、女性と幽霊。

「ぐぅ、……この硫化アリル共が!!」
 恐らく、最後の攻撃の際、重力波砲と朱の鳥の刃にて千々と散ったサッドリオンの玉ねぎ成分にやられたのだろう。両目を抑え号泣する赤銅色の鎧。

「……ダサ、……ダ、サ? ダ、……サ」
 オブリビオンのユーベルコードの影響は無いはずなのだが、かなりネガティブなうわ言のように、サッドリオンの残した言葉に、体を地面に突っ伏す中年男性。

 テラは、彼らの姿を眺める。腰に手を当てて、即座の再起が難しそうと判断して、唯一無事だったクロウに肩を竦めながら見上げ、言った。
「少し待つとすっか」
「はあ、たく、しゃあねえか……」
 蝙蝠の形に変化した式神を手の中に収集し、情報をまとめ上げながら、クロウはそう嘆息した。
「じゃあ、情報交換とするか」
 その間、暇を持て余すこともないだろう。テラが提案して、クロウは頷いていた。
 他の猟兵達が、平常に戻るのは、それから数分後だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月03日


挿絵イラスト