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アルダワ魔王戦争1-E〜血みどろの戦い

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●闘争心
『ァァアアアアア!!!』

 一閃。身の丈ほどもある長剣が兵士の姿をした災魔を切り裂く。
 災魔は倒れながらも、己を斬った敵――黒鎧の騎士へと手を伸ばす。
 瞳に燃えるのは闘争心。死が訪れるその瞬間も戦おうとしたのだ。

 だがそれも無駄なこと。騎士は軽くその手を斬り払い、辺りを見渡す。
 広い空間にあるのは災魔の死骸と不思議な色のキノコ。騎士はそれが不満なのか、長剣を縦横無尽に振り回し、死骸を、キノコを切り刻む。血と胞子が飛び散るが、騎士は意に介さず、ただ渇きを表すかのように暴れまわる。

『敵はどこだ! 敵はどこだァ!!』

 部下だった敵は全て殺した。ならば、次はだれと戦えば良い。
 騎士の問いに答えるものはなく。ただ、血と胞子が広がっていった。

●今回の説明
 グリモアベースにて、焼けたキノコを手に見つめるものが一人。
 恐ろしいものを見るような眼が一転、覚悟を決めたかと思うと、えいと一口。
 テイル・スネークスは顔をほころばせ……周囲の猟兵達に気付くと、姿勢を正した。

「ごめんごめん。キノコってどんなものかなと思って、ついね」
「えーっと、まぁ、多分皆気付いてるかな。うん、戦争のことでね?」

 タブレットを尻尾で加え、猟兵達に見やすいよう掲げるテイル。
 画面には一面の血に塗れた。そして暴れまわる黒鎧の騎士が映っていた。

「今回はダンジョンを攻略して行くことになるんだけど。その中でも、僕が予知したのはキノコに覆われた場所なんだ。知ってた? キノコって、毒とかあるらしいんだよ」

 美味しいのもあるみたいけどね。と言いながら残っていたキノコをパクリと食べる。
 口をもぐもぐさせながらも指差したタブレットには、詳しい説明が書いてあった。

 それによると、今回の戦場では「闘争心」が増大する胞子を撒くキノコに覆われているらしい。胞子を吸い込めばいかな傷を負おうと怯むことはなくなり。狂戦士の如く相手を倒そうとするようになるとも。

「我慢できなくもないらしいんだけど。それだけでいっぱいになっちゃうからね」
「敵を倒すには闘争心を受け入れて戦うしかないんじゃないかな」

 咀嚼し終えたのか、真面目に解説を加えながらタブレットの画面をスライド。
 画面いっぱいの大きさに黒鎧の騎士の姿を映し出す。

「で、今回の敵はこの鎧だね。見ての通りの近接特化の災魔」
「本当は部下もいたみたいなんだけど……」

 胞子の影響を受け、殺し合いになったという。それで消耗でもしてくれればよかったのだが、この災魔は鎧が本体。ただ血に塗れただけで、さしたる消耗もないという。

「あ、でも長時間いるんじゃなきゃ、皆が同士討ちになるってことはないけどね」
「それに、あんまり影響が強くなるようなら僕が転移させるから」

 タブレットを仕舞い込み、サムズアップ。
 キノコを食べて元気が出たのか、既に転移の準備は満タンだ。

「安心して、いってらっしゃい、猟兵(イェーガー)!」


黒い蛇
 お久しぶりです。あるいは初めまして。
 マスターの黒い蛇です。

 今回は闘争心を増大させる胞子を浴びながらの戦いです。
 オープニングでは狂戦士の如くと表現しましたが、
 戦いにも様々なやり方があるかと思います。

 あくまで一例であり、実際の描写はプレイング次第です。
 各々の戦いへの思いや、戦い方を存分にお書きください。

 また、このシナリオには下記の特別なプレイングボーナスがあります。
 これに基づく行動をすると有利になりますので、ご参考にどうぞ。

 プレイングボーナス……オープニングで指定した感情を爆発させる。

 それでは、プレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『騎士の怨鎧』

POW   :    戦鎧の妙技
【縦横無尽の剣閃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    闘鎧の秘技
【自身に刻まれた戦闘経験から的確に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    魔鎧の禁忌
【魔核の稼働制限を解除。超過駆動状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。

イラスト:暁せんべい

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

霧島・カイト
ああ、久しい感覚だ。
ふつふつと煮えたぎる感覚。
戦場において快楽にすら通じるもの。
『思い出した』。
お前の修羅こそ今の俺と仕合うにきっと相応しい。

無くした筈の感情が、闘争心が隆起していく。
不思議と――心地よい。今はこんなにもお前と刃を交えたい。

【高速詠唱】【早業】で【指定UC】。
相手の攻撃を【見切り】、素早く氷の盾で【盾受け】を合わせる。
【オーラ防御】【激痛耐性】も含め、俺の硬さは伊達ではない。

攻めは【属性攻撃】で強化した凍てつく波動にて行こう。
術式を通して魔鎧を【ハッキング】出来るならば、
魔核に干渉し、行動精度を妨害しよう。

「――有り難い、ここは忘れていた物を思い出させてくれる」

※アドリブ連携可


アーロン・フェニックス
ねえねえあのキノコ、お土産にしちゃ……ダメ?

●P
〈天照〉の照射、機巧腕に連結した《光明》で射程外から攻撃をかけるよ。騎士に当たらなくても構やしない、森に当たればだって燃やして、砕いて!楽しいだろ!(いつも通りの行動……胞子?)

(砲撃を継続しつつ《不退転》を噴かして急接近。機巧腕を《破天荒》として斬り合いに挑む。傷つく事を厭わない)

ぶっ壊れるまで、僕も君も止まれやしない、そうだろう? 何もかもが壊れるまで倒れられない、そうだろう!?
死んでも死に切れない俺たちがこの森に居るのは、きっとみんなが『壊して欲しい』って思ったから違いないよね!

(そして男のUCは、本人すら消し飛ばそうと……)


アドリブ歓迎



 剣を弾く音がする。

 音は絶え間なく続き、息つく暇ない攻防が行われていることが見ずとも分かる。いや、実際に呼吸など忘れているのだろう。攻め、守る。何方もただの人間ではなかった。

「ああ、久しい感覚だ」

 大上段からの振り下ろしを大きく弾き、僅かな休息の中で言葉を漏らしたサイボーグの青年、霧島・カイト(氷獄喪心の凍護機人・f14899)は再び迫り来る騎士を前にかつて失った闘争心を湧き上がらせていた。

 オブリビオンの襲撃により失った筈の感情。ふつふつと煮えたぎるその感覚をカイトは不思議と心地よく感じていた。あるいは、これもキノコの錯覚なのかもしれなかった。

『死ぃぃぃねぇ!』
「死なん」

 僅か一足で詰められた間合いを氷の盾で押し返す。すかさず凍てつく波動を繰り出せば、黒騎士の挙動が僅かに止まった。無論、怯んだわけではない。カイトが術式を通して黒騎士の魔核にハッキングを仕掛けているのだ。ただでさえ体の芯まで凍るような攻撃。影響は決して小さくはない。しかし――。

『ァァァアア!!』

 動かぬ体を強引に動かし、長剣を薙ぎ払う。
 カイトはそれを想定していたのか、既に間合いの外へ移動していた。

 「ハッキングが甘いか。では、次だ」

 小手調べは終わったとばかりに、構え直す両者。
 カイトが用いているユーベルコード【氷戒装法『破軍の執行者』】は圧倒的な防御力と凍てつく波動と引き換えに使用している間中、寿命を削る。本来であれば、早期決着こそ最善。しかし闘争心のみが戻っている影響か、カイトは一秒でも長く黒騎士と刃を交えることを望んでいた。

 黒騎士もまた同じ思いか、いざと動き出すその瞬間。
 二人の頭上より、熱線が降り注ぐ。

『チィ!』
「新手か」

 熱線を放った張本人、アーロン・フェニックス(アーロン・ザ・テンペスト・f24438)は二人が熱線を弾いたのを視認。それでも楽しげに声を張り上げた。

「お楽しみ中ごめんね! 僕も混ぜて欲しいなぁ!」

 返事を貰う間もなく、次の熱線を照射するアーロン。
 さらには機巧腕に連結した電磁投射砲《光明》をも放つ。
 味方を巻き込むことの躊躇などまるでない乱射ぶりだ。

「命中精度が悪いな」
「森に当たればだって燃やして、砕いて! 楽しいだろ!」
「それとも、巻き込むなだなんて言うのかい!?」

 果たして、その行動にどれほどキノコの影響があるのだろう。一切合切の破壊を望み、常に衝動を抱えている彼にとってはいつも通りとも言える。一つ確かなことは、キノコをお土産にしようとしてNGを食らうほどこの場を気に入り、楽しんでいると言うことだ。

「いや、俺の硬さは伊達ではない。巻き込まれようと支障なく動ける」
「それに――『思い出した』」

 戦場において流れ弾など日常茶飯事。かつてと似た状況に置かれたことで、より鮮明に闘争心を感じることができた。――心地よく感じるのも当然だ。これこそは戦場において快楽にすら通じるもの。少しだけ、闘争心に引っ張られるように世界の色が満ちる。

「恐らくはこの場限り。ならば――」
「お前の修羅こそ今の俺と仕合うにきっと相応しい」

 その言葉に応えるようにカイトに斬りかかる黒騎士。
 熱線にその身を焼かれても関係はない。敵を斬り殺す。それだけが彼の戦いだ。

 そして激突する二人を前にアーロンは己の衝動が疼くのを感じていた。今だって砲撃は続けている。それでもこの衝動は止まらない。だってそうだろう。目前で互いを壊し合う二人を見て、砲撃だけで我慢できるはずがない。

「いいなぁ! 凄くいい!」
「待ってて、一緒に楽しもう!」

 背部推進器《不退転》を噴かして二人へ急接近。無論、砲撃を止めることなどしない。
 己が作った混乱の中に突撃し、機巧腕を無刃刀《破天荒》に。
 抜き身の衝動を持って黒騎士を切り裂かんとする。

 対する黒騎士は大上段。
 長剣を振り上げた勢いでカイトを弾き、そのままアーロンを向かい打つ。

「ハハハハ!!」
『斬ぃぃる!!』

 互いに傷つくことを厭わぬ捨て身の一撃。当然のように剣が、衝動が互いを切り裂く。
 深手を負ったのはアーロン。急接近によって勢いづいた分、深く切り込まれた。だが、そんなことは関係ないとばかりに立ち上がり、アーロンは笑顔を向ける。傷ついた黒騎士に追撃をしながらも、カイトは視界の隅にその笑顔をみた。

「深手のようだが、戦えるのか」
「もちろん。ぶっ壊れるまで、僕も君も、彼だって止まれやしない、そうだろう?」

 当然の疑問に前のめりに応えるどころか、楽し気に質問を繰り出すアーロン。
 何かを答える前にカイトは気づく。アーロンが、増えている。

「何もかもが壊れるまで倒れられない、そうだろう!?」

 複数の声が重なり合って、森を駆け抜ける。
 酷く高揚した様子の声の主はすべて同じ顔をしていた。

 【笑えトリプルユーフォリア(アーロン・ザ・トリプルユーフォリア)】。
 瀕死となることによって、アーロンの似姿をした三体の破壊衝動を実体化するユーベルコード。それぞれが高い戦闘力を持ち、アーロンと同様の攻撃手段を持つ。強力な技だ。

 最も――破壊衝動のいく着く先が、敵である保証などありはしない。
 そのことは破壊衝動に《光明》を向けられたアーロン自身が良く知っていた。

「死んでも死に切れない俺達がこの森に居るのは、きっとみんなが『壊して欲しい』って思ったから違いないよね!」

 破壊衝動が放つ《光明》の弾を壊しながら、満面の笑みを裂かせるアーロン。
 言葉の通り、彼は破壊衝動を御するつもりなどない。
 己が壊れようと、ただ衝動の赴くままに。何もかもが壊れるまで壊すだけだ。

「なるほど、そういう類のものか」

 縦横無尽の剣閃が煌めき、周囲を切り裂く。熱線が全員を森ごと焼き払う。
 戦いは乱戦の様相を見せ始め、カイトも否応なく巻き込まれる。しかしそのような状況に置かれてなお、カイトが動じることはなかった。

 盾で破壊を受け流し、相手へと返す。
 黒騎士が魔核の稼働制限を解除しようとすれば、凍てつく波動を放ち、阻害する。
 その様子はまるで、かつての、戦場を支配する守護者の如く。

「――有り難い、ここは忘れていた物を思い出させてくれる」

 誰一人として一歩も引かない戦い。
 時を経るごとに過熱し、破壊の跡が広がっていく。
 戦いはもはや、彼ら自身では止まれない段階へと至っていた。

 最も、終わりのことなど、今は誰も考えてはいない。
 考えることはただ一つ――戦う事のみ。

 そうして、猟兵達が強制的に転移されるまで彼らは戦い続けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天道・あや
闘争心…つまり…やる気とか負けん気とかだよね!そういうのあたし得意、だってあたしは常に戦ってるからね、過去の自分と!過去を今の限界を越えて未来へ行くために!だからここはあたしにはもってこいのステージ!

よーし…!右よし!左よし!闘争心…よしっ!うおおぉ!いざ勝負!

敵と一定の距離を取りながら攻撃を【見切り】、隙を見せたところでレガリアスを稼働させ突っ込んでUC発動!【ダッシュ】反撃もあるだろうけど右腕に装着した籠手で防いで、指貫グローブ着けた左手でどっかーんと殴るっ!【激痛耐性、属性攻撃雷、鎧砕き】

これがあたしの闘争心を乗せた想いの乗った重い一撃だーーー!!


鈴木・志乃
アド連歓迎
終始無言で戦闘に徹する


オーラ防御展開
早業念動力と高速詠唱の合わせ技で、鎧砕き出来る魔改造ピコハンを遠距離から操作しぶっ叩こうとする
極力自身はその場から動かない
敵がピコハンに引き付けられて運よくピコハンに殴られに来てくれればいいな、と考えつつ第六感で隙を見切りUC発動
祈り、破魔を乗せた光の鎖で縛り上げつつ、ピコハンの2回攻撃でぶっ叩く衝撃波攻撃を行う

敵がこちらに向かって来てしまった場合は早業で油を地面にぶちまける
転んでくれようものなら高速詠唱で即発火。燃えろ。
本当に危ない時は全力魔法の衝撃波で敵を吹っ飛ばし距離を取る
体勢を立て直してもう一度機会を窺う



「よーし……!」

 戦場に元気な声が木霊する。
 転移して早々、黒騎士の目前に立った天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)はまず、周囲を見渡していた。見渡す限りのキノコと血。動き辛くなるようなものはない。

「右よし! 左よし! 闘争心……よしっ!」

 あるとするのならばキノコの胞子であったが、あやは普段とあまり変わらないようにも見える。些か、普段以上に気合いは入っているだろうか。両拳を握り、ファインティングポーズ。黒騎士の間合いへと入っていく。

「うおおぉ! いざ勝負!」
『ォォォオオオオ!』

 長剣が三度閃き、逃げ場をなくすようにあやへと迫る。
 右に躱し、しゃがみ込む。最後はレガリアスを起動し、しゃがみ込んだ反動で跳躍。
 危うげなく攻撃を避けたあやは、無理に攻撃後の隙を狙うことなく、そのまま間合いの外へと離脱する。この場は己一人ではないと知っているが故に。

「見切りよっし! 志乃さん!」

 声に反応し背後から攻撃を仕掛けるのは鈴木・志乃(オレンジ・f12101)。あやとは打って変わって、志乃は転移してから無言を貫いていた。しかし、やる気が劣るなどとは彼女の目を見れば言えはしないだろう。心は熱く、思考は冷静に。闘争心は志乃に極限の集中をもたらしていた。

 当然、そのような志乃が隙を見逃すわけもない。念動力にて黒騎士の背後に移動させていた魔改造ピコハンをすかさず、黒騎士に叩きこむ。ピコハンと侮るなかれ。敵対者には2tハンマーに相当する激痛が走る代物だ。黒騎士も当たるのはまずいと感づいたか、体を捻り長剣をもって迎え撃つ。

 鈍い音が辺りに響く。無理な体勢でピコハンを受けた黒騎士は宙に舞っていた。というよりは、舞うことで衝撃を逃がしたというべきか。志乃は想定よりダメージが出ていないことに気付いていた。しかし本命は次。黒騎士が落ちる先で光の鎖が揺らめいていた。

「ナイス! あたしも……!」

 光の鎖は志乃のユーベルコード【女神の拘束(ジャッジメント・コード)】であった。
 着地の隙を狙い、黒騎士を縛り上げんと絡みついていく。動きを封じさえすれば対処のしようもない。あやも志乃に合わせてレガリアスを起動。助走の構えをとった。

『邪ぁぁぁ魔だぁあ!!』
「ッ―――!」

 それは縛り切る直前。黒騎士の瞳が光ったかと思うと、超過駆動状態となり、凄まじい膂力をもって光の鎖を強引に振りほどく。このまま追撃は可能。だが、猟兵としての勘が二人に危険を告げていた。今の黒騎士であれば、さらなる力技で隙を埋めてくると。

 咄嗟に反転し、距離を取るあや。志乃は下がるのをあえて踏みとどまり、オーラ防御を全開に、次に迫るだろう剣閃に備える。縦横無尽の剣閃がどれ程伸びるかは知っていた。

『ァァアアアアア!!!』

 二人の想定通り、縦横無尽の剣閃が二人を覆う。離れていたはずの志乃にすら届きうる広範囲の剣閃。しかして収まった後、倒れているものは誰もいなかった。猟兵達は多少の傷を負ってはいるものの動きに支障はない。

 そして何より、二人の瞳には熱く燃える闘争心が映っていた。

「やっぱり……!」
「やっぱりここは、あたしにはもってこいのステージ!」

 あやは闘争心が得意分野だと自覚している。いつだって、過去の自分と戦い。過去を、今を超えてこそ未来にいけるのだと。そして、それは間違ってはいなかったと今、改めて分かった。

 乗り越えられなかった壁が目の前にある。
 それを乗り越える為に燃え上がるこの心こそが闘争心。
 きっとこれはキノコのせいじゃない。己から湧き上がる、本当の気持ち。

「今の連携じゃダメだった! なら、もっともっと上げていこう!」

 迫る黒騎士に向かいながら、志乃へと声を投げかける。返事は求めていなかった。既に役割分担はできている。ならば、あとは己の役割を全うするだけだ。

 そして志乃もまた、返事をするまでもなく次の行動を組み立てていた。努力家で、実は熱血である志乃。一度ダメだったからと折れるような心は持ち合わせていなかった。

 なにより、先ほど踏みとどまった成果が出ている。超過駆動状態の黒騎士は速く動く物をこそ攻撃対象とする。黒騎士はあやのみを狙い、志乃を見てすらいなかった。用意していた油はもういらない。ただ、次の一撃に集中するのみ。

「そん! なんじゃ! あたらないよ!」

 その間にも黒騎士はあやへと切りかかり続ける。先ほどまでよりも一刀が重く、あやが避けると地面を容易く砕いていた。しかし、その分動きは単調になり、ずいぶんと見切りやすくなっていた。回避に専念すれば、早々当たるものではない。

「だけど! ここでもう一歩!」

 黒騎士が振り上げた長剣を紙一重で避け、足を前に踏み出す。
 もはや攻撃後の隙では強引に埋められる。ならば、さらに大きな隙を。

 反対の足を浮かせ、円を描くような後ろ回し蹴り。
 レガリアスにより加速した足は長剣の腹を叩き、黒騎士の姿勢を大きく崩した。

「志乃さん!」

 ピコハンが姿勢を崩した黒騎士へと迫る。下から掬い上げるような一撃。
 姿勢を崩した黒騎士に避けられるはずもなく、腹部にクリーンヒット。だが、超耐久を得た黒騎士に致命打になるとは志乃も思っていなかった。

 一番の狙いは――吹っ飛ばすこと。
 ピコハンが生んだ衝撃波が黒騎士を宙へと吹っ飛ばす。

 吹き飛ばした先には先ほど同様、光の鎖。
 しかし、今度は踏ん張りの利かない空中。さらに追撃は考えず、縛ることに専念。
 一度縛り上げれば、いかに強化された黒騎士と言えど振りほどくことはできない。

『グゥゥゥウウウ!!』

 志乃は口角を上げ、あやに視線を向ける。
 声を掛ける必要はないだろう。自分と同じように、己の役目に集中している。

「これがあたしの!」

 ぐっと強く地面を踏みしめる。
 レガリアスの中で圧縮された大気が、今にも飛び出そうとしている。
 だが、まだ早い。黒騎士はまだ上昇している。

「闘争心を乗せた!」

 黒騎士が重力に引かれ、地面へと向かいだす。縛られて動けず、ただ落ちるのみ。
 それを認識した瞬間、反射的に地面を強く蹴り、圧縮された空気が解放される。
 速く、重く。今まで繰り出した中で最高の一撃を。限界を超えた一撃を。
 今こそ、最大の一撃を放つ時―――!

「想いの乗った重い一撃だーーー!!」

 雷が迸る。一直線に進むその姿はまさに雷光。
 縛られた黒騎士には避けること叶わず。
 ――雷光が黒騎士を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

舘林・祀
へぇ、近接特化の黒騎手ね
うん、相手にとって不足なし。ばっちり粉々にしてやりましょ

「闘争心」が増大するっていうけど……ぇ、いつも通りじゃない?
強い奴がいたら戦う、面白い奴がいたら戦う、気が向いたから戦う
日々の修行は次の戦のためってね

けど、そうね。せっかくだから、出し惜しみなしでいってあげる
《妖焔襲爪》
寿命?知ったこっちゃないわ
今この場であの騎手をぶっ倒す

焔を推進力にしながら拳や蹴りを叩き込む
バックステップを踏んで中距離から狐火をお見舞い
ふふ、近接しかできないと思った?
大丈夫。最後はちゃーんとステゴロで相手してあげるから


陽向・理玖
戦う為に造り変えられたんだ
俺にぴったりじゃねぇ?
皮肉げに呟き
さぁ死合おうぜ?

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波飛ばし
残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
暗殺用い鎧の継ぎ目狙い拳の乱れ撃ち

敵の攻撃よく見て見切り
避け切れない場合は激痛耐性
多少のダメージも耐える
前だけ見て間合い詰め武器受けからのカウンターで部位破壊
徹底的に鎧狙う
そんな攻撃痛くも痒くもねぇッ!

戦うほどに燃えてくる
むしろ頭の芯は冷えてくる
動き丸見えだぜ
残像纏い攻撃見切り
スピード増してダッシュで背後からフェイント
しゃがんで足払い
あんたはどうだよ?
そんな狂気に塗れちゃ戦えねぇだろッ!
体勢崩させUC

ああ…物足りねぇ



 猟兵達との戦いを経て、既に鎧に穴が開くほどのダメージを負った黒騎士。
 されど闘争心は尽きることなく。手負いと油断をすれば、すぐさま食われことになるのは明白であった。

「近接特化って話だったけど……うん、相手にとって不足なし」
「ばっちり粉々にしてやりましょ」

 品定めを終えた舘林・祀(一拳十殺・f24918)は拳を鳴らし、隣に立っている少年、陽向・理玖(夏疾風・f22773)に視線を向ける。理玖は鋭い眼光を黒騎士から離さず、静かに頷いた。

「キノコってのも、すぐに効くわけじゃないみたいだ」

 祀も理玖も、相手を観察する余裕がある。
 長時間いれば分からないが、少なくとも現段階で大きな変化は見られない。

「俺にぴったりじゃねぇ?」

 それもそうかと納得し、皮肉気に呟く。理玖は戦うために造り替えられた存在。ならば闘争心など標準装備。容易く呑まれることなどありえない。あるいは目の前の黒騎士も、初めは同じだったのだろうか。

 呟きが聞き取れなかったか、小首をかしげる祀をよそに理玖は龍珠に手を伸ばす。
 いつの間にか、黒騎士は二人に向かって長剣を振り上げていた。

「さぁ、死合うぜ?」

 手の内の龍珠が弾かれて宙を舞う。くるりくるりと軽やかに回る龍珠を危うげなく握りしめ、ドラゴンドライバーにセット。もう意識するまでもなく出来るようになったいつもの動作。――理玖の全身が装甲姿に変わっていく。

「変身ッ!」

 衝撃波を飛ばし、残像を纏いながら距離を詰める。背後で祀が先を越されたと言いたげな表情をするが関係はなかった。己の拳で敵と戦いたいのはお互い様。ならばせめて邪魔だけはしない。それだけを約束した。――要するに、早い者勝ちということだ。

 横なぎの一閃をダッキングで回避。そのままの勢いで腕の関節を殴りつける。
 想定より硬い感触。だが問題はない。さらに間合いを詰め、鎧の継ぎ目を狙っていく。
 反撃は当然のように来るが、関係ない。避けられるならば避けるが、避けられないなら耐えれば良いのだ。この身は痛みなど慣れきってしまったのだから。

「そんな攻撃痛くも痒くもねぇッ!」

 体が切り裂かれる感覚をものともせず、理玖はまた一歩間合いを詰める。
 その様子を後ろから見ていたのは出遅れた祀。すぐには決着は付かないだろうと、二人の攻防を眺めていた。

「もう、アタシ抜きで盛り上がっちゃって。影響、やっぱり受けてるんじゃないの?」

 近距離での真正面からの削り合い。ひたすら間合いを詰めて拳を浴びせる理玖に対し、黒騎士は自在に長剣を操り斬撃を加えていく。あれほど近寄られては、長剣では逆に戦い辛いだろうに。それを感じさせない立ち回りをしている。

 強いやつだと思った。面白いと思った。そして自分も戦いたいとも。

 祀にとってこれはいつも通りの感覚であった。闘争心を増大させるとは言うが、彼女にとっては変わりがなくて逆に疑問を持ってしまう。先程だって理玖に言われてそういえばと感覚を確かめたのだ。そのせいもあって出遅れてはしまったが、結果的には良かったのだろう。実際に戦っている姿を見て、よりその気になったのだから。

 いつも通りの高揚感。日々の修行もこの時のためを思えば楽しくなる。
 闘争心を燃やすのにキノコなど必要はない。

「けど、そうね。せっかくだから、出し惜しみなしでいってあげる」

 口角を持ち上げながら両手に狐火を生み出す。どこか妖し気な狐火は燃え広がるように祀の体を覆い、次の瞬間には祀の体へと入っていく。そうして、再び姿を現した祀は先程までと装いを変え、戦巫女装束を纏っていた。  

 これこそは祀のとっておき。強力な力を得る代償に寿命を削る捨て身のユーベルコード【妖焔襲爪(ヨウエンシュウソウ)】であった。

「よしっと。さぁ、アタシも混ざるわよ!」

 焔を推進力に飛び蹴りを放つ。長剣で防がれるも、所詮は小手調べ。着地すると同時に連撃を繰り出す。狙いは相手の脆い部分。先ほどまで理玖が殴っていた繋ぎ目だ。しかし黒騎士もそう容易くはやらせない。強引に長剣を手繰り、連撃にカウンターを行う。

『ォォォオオオオ!』
「っと! そうこなくっちゃ!」

 カウンターを飛び上がって躱し、焔の推進力で拳を振り下ろす。
 無理な体勢での一撃。しかし理玖が下から拳を突き上げるのが見えていた。多少崩してでも同時に繰り出すことで意識を分散させ、強引にダメージを通すのが目的だ。

 対する黒騎士は体を捻り、完全な挟み撃ちを回避。ダメージを食らいながらも、捻った勢いで長剣を振り回し、猟兵達を至近距離から引き剥がした。

「今のでダメかー。暴走してるように見えて、意外とちゃんと避けるわね」
「体が覚えてるという奴なのかもな。あんた、大丈夫か?」

 ちらりと祀をみる理玖。いま彼女が用いているものが寿命を削る類いの技だと見抜いていた。相手が回避に長けてるとなれば長引く可能性もある。離脱とまではいかなくとも、一旦ユーベルコードを解除するのも手であるのだ。

「寿命? 知ったこっちゃないわ」
「今この場であの騎手をぶっ倒す。大切なのはそれだけよ」

 駆けだした祀の言葉に納得した理玖もまた、再び距離を詰めていく。確かに彼女の言う通り。あんなのはすぐにでも倒さなければ。今の自分ならそれができるはずだ。
 

『斬る! 斬る! 斬ぃぃいる!!』

 再び始まった攻防。長剣を振り回し、常に片方を牽制する黒騎士に二人は果敢に攻撃を仕掛けていた。二対一であれば迎撃の隙は必ず出てくる。じわりじわりと有利に傾いてく戦況。しかし黒騎士には強引に変える術があることを二人は知っていた。

 ダメージを覚悟で、黒騎士が大ぶりに構える。
 一早く察知したのは祀。すかさずバックステップで距離を取る。しかしそれは避ける為だけではない。中距離から放った狐火が黒騎士へと纏わりつき、ユーベルコードの発動を阻害。意表を突かれた黒騎士はバランスを崩した。

「ふふ、近接しかできないと思った?」
『グゥゥゥウウウ!!』

 悔しげな声を漏らす黒騎士はしかし、止まることだけはしなかった。不完全であろうと構いはしない。至近距離にまだ敵がいるのだ。それを切り刻めれば十二分。

 縦横無尽の剣閃が理玖へと迫る。纏った残像も無駄と言わんばかりの暴力的な嵐。
 理玖はその嵐を前にして後退ではなく、前進を選択した。

 自棄になったわけではない。むしろ、頭の芯は冷え渡っていた。
 戦うほどに燃え上がる心と反比例するように思考がクリアになっていく。

 嵐のような剣閃であろうと実際に増えている訳ではない。動きには連続性があり、一瞬でも攻撃が届いていない場所は存在する。避け、弾き、時には斬られながらも前に進む。

「あんたはどうだよ?」

 どこか怒気が混ざった問いかけを向ける。黒騎士もまた、理玖と同じように戦うための存在。ならば同じなのではないか。暴れながらも、頭は冷えているのではないか。

 勿論、そんな訳がないと分かっている。
 もしもそうなら、こんなにも動きが丸見えなわけがない。

 剣閃を掻い潜り、隙だらけの背後へ。崩れていたバランスに足払いで止めを刺し黒騎士を地面に叩き落とす。そのままに勢いで掲げた理玖の拳に、龍が宿る。

「そんな狂気に塗れちゃ戦えねぇだろッ!」

 龍の咆哮の如く轟音が鳴り響き。黒騎士の兜が地面ごと砕かれる。
 音が鳴りやめば、血に濡れた理玖だけが立っていた。

「ああ……物足りねぇ」

 倒れた黒騎士に背を向けて歩き出す。
 闘争心は未だ尽きず、拳は失った敵を求めていた。

「あら、それならまだ戦っていけばいいじゃない」

 不意に、祀が近づいてくる。未だユーベルコードは解除していない。
 怪訝な顔をする理玖に、祀はちょいちょいと理玖の背後に指をさす。

「言ったでしょ? ばっちり粉々にしてやりましょって」
「ああいうのはね。しぶといから好きなのよ」

 振り返れば、兜を失った黒騎士が立ち上がっていた。失ったのは兜だけではない。腹に穴が開き、全身に罅が入っているというのに気迫だけは変わらない。祀の言う通りもはや粉々にでもしなければ止まらないだろう。

「そうか……そうかよ。なら、粉々にしてやる」
「おっと、抜け駆けはさせないわよ」
「アタシも最後はちゃーんとステゴロで相手してあげなきゃね」

 拳を鳴らし、再び戦いの渦へと飛び込んでいく猟兵達。
 各々の思いはどうあれ、その心にはただ、闘争心が燃え上がる。
 戦いは長く、長く続き――後には猟兵達と、粉々の鎧だけが残った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月10日


挿絵イラスト