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ジョン・ブレイン博士の反逆

#UDCアース

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#UDCアース


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●2019年1月■■日、■■県■■市のUDC研究所に残されたメモ
『アンダーグラウンド・ディフェンス・コープに属する、勇敢にして愚かな我が同僚、いや元同僚たちへ。君たちは今日も、己の職務に励んでいるだろうか。
 忌まわしき古代の邪神とその眷属、邪神崇拝者の陰謀から世界を守る日々。その代償は己の正気と生命、報酬は明日にも壊れてしまうかもしれない、ほんのささやかな平穏だ。

 私は■■年間、組織の一員としてその職務に励んできた。
 それが人類を、世界を護ることだと信じて、狂気の深淵を覗き込み、おぞましきこの世の真実に立ち向かってきた。
 しかし、ああ、しかしだ諸君。私は気付いてしまったのだ。
 すべては徒労だ。我々はいずれ来る定められた終焉の秒針を、ほんの少し巻き戻しているに過ぎないのだ。

 これまでに組織が、一体何件の邪神教団を発見しただろうか?
 どれだけの眷属を捕獲し、破壊しただろうか?
 収容された危険なオブジェクトで組織の倉庫は一杯だ。
 封印された邪神はあと何柱いる? 我々はいつまでそれを守っていればいい?

 我々が対峙した狂気とは、危機とは、終焉とは、氷山の一角なのだ。
 私はそれに気付いてしまった。
 もう駄目だ。
 戦えない。

 勇敢で愚かな諸君、どうか君たちにも分かって欲しい。
 すべては徒労なのだ。我々は敗北していた。
 私はこれからそれを証明する。
 よき終末を。

 ――ジョン・ブレイン』

●狂気を追う者たち
「以上が、UDC組織を離反した元研究員、ジョン・ブレイン博士のメッセージです」
 ボロボロのメモに書き殴られた文章を読み終えると、リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は猟兵たちに「状況を説明します」と告げた。
「ブレイン博士はこのメモを残した後、組織に収容されていたオブジェクト――オブリビオンにまつわるある物品を強奪し、行方を晦ましました」
 ブレイン博士はそのオブジェクトを利用して邪神召喚の儀式を行い、世界の滅亡を企てているようだ。

「強奪されたオブジェクトの通称は"貪欲者の王冠"。未知の金属質の素材で作られた古代の冠で、磁性を有していないにも関わらず、金銀等の貴金属、あるいはダイヤやルビーといった貴石類に引き寄せられる異常性を持ちます」
 UDC組織の研究ではそれ以上の異常性は確認されておらず、さほど危険性の高いオブジェクトとは見做されていなかったようだが……。
「ブレイン博士はUDCに関する優秀な研究者でした。彼がこのオブジェクトの未知の特性を解明した可能性は否定できません」
 あるいは、それを"知ってしまった"が故に、彼は狂気に堕ちたのかもしれない。
 何れにせよ、このまま博士と"貪欲者の王冠"を放置すれば未曾有の災厄が起こることを、リミティアのグリモアは予知していた。

「リムの予知により、ブレイン博士の潜伏先はUDCアースのとある都市まで絞り込めました。皆様はそこで博士とオブジェクトの捜索を行ってください」
 ブレイン博士の目的は邪神の降臨だ。ならばただ隠れ潜んでいるわけにもいかない。
 儀式の準備に必要な行程や、所持しているオブジェクトの異常性が、博士を発見する糸口になるだろう。
「UDC組織から、博士の顔写真や"貪欲者の王冠"を写した写真も預かっています。これで地道に探すのも方法の一つでしょう」
 写真に写っているブレイン博士は、白衣を着て眼鏡をかけた、30代半ばの神経質そうな男性である。
 一方の"貪欲者の王冠"は、外見上は錆び付いたみすぼらしい冠にしか見えない。そうと知らなければ、ただのガラクタとしか思わないだろう。

「最後に、リムはひとつ忠告します。ブレイン博士の説得は恐らく不可能です」
 組織を離反した時点で、ブレイン博士の精神は完全な狂気に陥っている。
 もはや真っ当な倫理や説得の通じる心理状態ではなく、精神的には邪神の眷属に近い。
「恐らくは"貪欲者の王冠"から何らかの影響も受けたのでしょう。博士を発見したら、力尽くでもオブジェクトの奪還を――邪神の復活を阻止し切れなかった場合はそれの撃滅も、リムは猟兵に要請します」
 邪神との戦いはヒトの精神を蝕む。
 猟兵ならぬ身で、長年に渡り研究者としての戦いを続けてきたブレイン博士の精神は、限界に達していた――ということだろう。
「その絶望に同情の余地を見出すかは各自の自由です。ですが、彼の絶望に世界を付き合わせるわけにはいきません」
 静かな眼差しで猟兵たちを見つめ、リミティアはグリモアを手のひらに浮かべる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はUDCアースにて、UDC組織を離反した博士とオブジェクトによる邪神召喚儀式の阻止になります。
 まず第一章は、都市に潜伏している博士とオブジェクトの捜索が目的となります。「発見するまで」が第一章になるので、博士との対峙やオブジェクト奪還戦は次章以降になります。

 狂気に染まってしまった博士を救うことは不可能です。
 それでも会話自体は可能なので、思うところあればそれをぶつけてみるのも良いかもしれません。お好きなスタンスでどうぞ。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『持ち出されたUDCオブジェクトの探索』

POW   :    気力体力を駆使し、足で探す

SPD   :    持ち前の技術力を活かして、機転を利かせ情報を集める

WIZ   :    オブジェクトの性質を鑑み、どこにありそうか推理する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

在連寺・十未
……へっ! これだからUDCの連中は……信用ならないってんだ。全く。全く……ちゃんと管理しろよな、クソっ、落伍者なら落伍者らしく他人にメーワクかけるなって言うんだ。臆病者め……(思うところあるのかぐちぐち呟いている)

【WIS】
……所感だけど、件のオブジェクトは貴金属に引き寄せられてるんじゃなくて、貴金属を求めて這い寄っているように思えるんだ。貪欲者、なんて名前とかいかにもって感じじゃない?

おそらく儀式の行使のためには一定量の貴金属及び宝石類が要るものと考えられる。……大きな宝石店とか、的にされそうだよね。その付近を張ってみよう


※アドリブや連携など大歓迎です。


ヴィネ・ルサルカ
ふん、未来への可能性を否定するなぞ愚かでしかない。
貴様を諦観と絶望ごと丸呑みにしてやるわい。

【SPD】
貪欲者の王冠とやらは貴金属や宝石に引寄せられる、ならば貴金属や宝飾品を扱う店や質屋を冷やかしながら巡るかのぅ。

博士と王冠の写真を見せ、些細な事でもよいから情報を引き出すとしよう。

【WIZ】
ワシや他の猟兵が集めた情報を基に博士の居場所を推定、数ヵ所ピックアップしたら後は野生の勘を使い当りをつけるかのぅ。


青葉・まどか
UDCからの離脱者か…。まあ、色んな理由で希望が持てなくなってしまったのかな。何故を考えてもきりがない、気持ち切り替えて行きますか。
UDCからの追手があることは相手も予想して変装や隠蔽工作もしてるだろうけど、痕跡を全て消すなんて無理です。現場をなめんなよ。

気になるのはオブジェクトの特性だね。
潜伏している地域の貴金属店や宝飾店、質屋に博士の写真を見せて「祖母の大事な宝石を詐欺でだまし取った男なんですが、見覚えがありませんか?」等の内容で聞き込み(技能【言いくるめ】【コミュ力】使用)。
素直に情報を教えてもらえ無くても、怪しげな対応のお店に【影の追跡者】を忍びこませる。


桑崎・恭介
WIZ



■心情
…言いたいことは理解できなくは無いんやけどな
が、理解できるかってのと納得できるかってのはまた別や
アンタが人類の敗北を証明するなら、その証明を打ち砕いたる
正気だった頃の博士の為にも、な

■行動
貴金属宝石類に反応する、か
動くだけやないなら意味が有るはずや
博士が宝石集めると推測し、都市の大きい宝石店で張りこむで
猟兵が来ることも警戒するやろから、店員に影の追跡者を付けて自分は近くのカフェに隠れとくか

富を集めるって性質か…?
一応写真の冠が豪華になってる場合も想定しとくで
安直やろか…徒労に終わるならそれはそれで判断材料になるしええか
発見したら博士に影を付け、俺は建物挟んだり直接見えん所から追うで


朝海・柚貴
随分とご立派な理由でこちらの仕事を増やされたものです
これ以上残業を増やされて過労死したくありませんので、さっさと片付けましょう

『私はこれからそれを証明する』
この言葉は見せると言う意味にも取れますので
こそこそと動く事もなく、狂気に陥っている精神状態なら尚正常な行動ではなく大胆に動く気もします

WIZ
異常性を利用して儀式が成されるなら
金銀等の貴金属、また貴石類が多く集まる場所を疑ってみましょう
潜伏都市内の貴金属店、宝石店、或いは王冠を見せつける為に、それらのある人が集まる場所かもしれません
疑いのある場所を自分も探しながら
情報収集、足で動いている方々とも連携して
情報の共有、協力も可能な限り求めてみます


ムルヘルベル・アーキロギア
禁書を蒐め封印する使命を背負う者として、この状況は見過ごせぬな
たしかオブジェクトは貴金属を引き寄せるのであったか
であればまず【ガジェットショータイム】でドローン型のガジェットを作成
装備「魔力結晶」を搭載し、王冠の反応を探知してみよう 〈情報収集〉だ
「それにしても"貪欲者の王冠"か。なんとも皮肉めいた銘よな」
装備「閉架書庫目録」を使い、禁書の中に似た物品の記述がないかを捜査する
もしかすると王冠の特性はわからずとも、邪神の手がかりは掴めるやもしれぬ
〈世界知識〉の活用であるな
「狂気に屈したことを責めはすまい。だが世界に仇なすならば、狩るのみよ」
手がかりが得られたならば、仲間たちにそれを共有する


御堂・玲
そうですか、博士は狂気に染まりましたか。
確かこの分野では、それなりに著名な方だったはずですが……
ジャンルは違えど、同じ研究者ですので残念ですね。

【WIZで行動】
そうですね……
貴金属店やジュエリーショップを回ってみましょうか。
特性から考えれば、何かしらの足取りは掴めると思います。

博士の気付いた真の特性とやらの為に貴金属・貴石が必要なのでしょうか?
いずれにしろ、被害が出ていないといいのですが。
早めに博士を見つけられるよう、とにかく今は足を動かしましょう。

※改変アドリブ歓迎します。



 ブレイン博士の潜伏先として予知されたのは、一般的な地方都市だった。
 規模は大したことはないがそれでも一都市となれば、無闇に捜索しても発見は困難だろう。

 彼が強奪したオブジェクト"貪欲者の王冠"の異常性――
 そこから博士の手がかりが貴金属店や宝石店などにあると考えた猟兵は多かった。
 彼らは都市内にある該当する店舗の情報を集めると、それぞれに手分けして調査を開始する。

「UDCからの離脱者か……。まあ、色んな理由で希望が持てなくなってしまったのかな」
 調査メンバーの一人、青葉・まどか(人間の探索者・f06729)は小さく呟く。
 何故、を今考えてもきりがない。気持ちを切り替えて彼女が最初に向かったのはとある質屋。

「祖母の大事な宝石を詐欺でだまし取った男なんですが、見覚えがありませんか?」
「さあ……すまないが、知らないねぇ」
 博士の写真を片手に、それらしい理由を語って聞き込みを行う。
 確かな情報がなくとも、対応に怪しさを感じた店には召喚した影の追跡者を忍び込ませ、監視役として配置する。
(追手があることは相手も予想して変装や隠蔽工作もしてるだろうけど、痕跡を全て消すなんて無理です)
 現場をなめんなよ、と意気込む彼女の目には探索者としての自信がある。
 調査開始からさほどの間を置かず、まどかの元には博士らしき人物の目撃談や、盗難にあったという店舗の情報等が次々に集まっていった。

「所感だけど、件のオブジェクトは貴金属に引き寄せられてるんじゃなくて、貴金属を求めて這い寄っているように思えるんだ。貪欲者、なんて名前とかいかにもって感じじゃない?」
「せやな。動くだけやないなら意味が有るはずや。富を集めるって性質か……?」
 小声で推測を語り合う在連寺・十未(アパレシオン・f01512)と桑崎・恭介(浮草・f00793)は、都市内でも特に大きな宝石店に的を絞り、張り込みを行っていた。
 付近にあるカフェで一般人に紛れつつ、宝石店に出入りする人間を観察し、店内の様子は店員に張り付けた影の追跡者から確認する。
 どうやらこの店では、最近数度に渡って高価な商品の買い手があったらしい。怪しい、と二人は警戒を強める。

「……ここからじゃ見えない所から来てるかもね。僕は裏のほうも回ってみるよ」
「ああ、頼むわ。俺はここから影と一緒に監視を続けとく」
 カフェを出て行く十未を見送ると、恭介は居座り用に頼んだコーヒーカップに口をつけ、一息吐く。
「……言いたいことは理解できなくは無いんやけどな。が、理解できるかってのと納得できるかってのはまた別や」
 終わりの見えないオブリビオンとの戦いは、その事情を深く知る者ほど絶望してしまうのかもしれない。
 だが、それで諦めがつくのなら、恭介はこうして今もUDC絡みの事件に首を突っ込んではいないだろう。
「アンタが人類の敗北を証明するなら、その証明を打ち砕いたる……正気だった頃の博士の為にも、な」

 一方、宝石店の裏手に回って張り込みを続ける十未の様子はと言うと。
「……へっ! これだからUDCの連中は……信用ならないってんだ。全く」
 過去の経緯からUDC組織に対して思うところのある十未。
 UDC関係者の猟兵もいる手前抑えてはいても、こうして人気のない場所ではつい愚痴が零れてしまう。
「全く……ちゃんと管理しろよな、クソっ、落伍者なら落伍者らしく他人にメーワクかけるなって言うんだ」
 迂闊にもオブジェクトを強奪されてしまった組織と、それ以上に狂気に敗北した博士への怒りを呟く十未。
「臆病者め……」
 探索者として狂気と戦い続けてきた彼女にとって、それは何よりも許しがたいことだったのかもしれない。

 的を絞って調査を行う者もいれば、足を使って広く情報を集める者もいる。
 御堂・玲(レジスタ・f00957)とヴィネ・ルサルカ(暗黒世界の悪魔・f08694)は、都市内の貴金属や宝飾品を扱う店を巡る最中、ばったりと出くわす。
「そちらはどうですか?」
「怪しい話やウワサは幾つか聞けたが、まだ確実な情報はないのぅ」
「こちらもです」
 とはいえ、一つ一つは些細な情報でも、積み重ねれば見えてくるものもある。
 玲とヴィネは互いが集めた情報を一度共有してみる。
「ふーむ……この辺とか怪しいんじゃないかのぅ?」
 地図を見てヴィネが指差したのは、博士らしき人物の目撃情報が多かったポイントのひとつだ。
 しかし、それならまだ候補地と呼べる場所は他に幾つもある。
「なぜ、そこが怪しいと?」
「野生の勘じゃ」
 玲の問いかけに堂々と答えるヴィネ。
 ……意外とそれが馬鹿にできないのも、猟兵という存在の規格外さだが。

 ともあれ立ち止まっていても仕方がなく、怪しければとにかく足を動かす二人。
 その移動中、ふと玲が今回の事件について呟く。
「ブレイン博士は狂気に染まりましたか。確かこの分野では、それなりに著名な方だったはずですが……ジャンルは違えど、同じ研究者ですので残念ですね」
「ふん、未来への可能性を否定するなぞ愚かでしかない。諦観と絶望ごと丸呑みにしてやるわい」
 非常識の世界に身を置く学者として共感と無念を感じる玲に対し、ヴィネの博士に対する感情はあくまで辛辣だった。
 反応は対照的でも、二人の為すべきことは一致している。この世界の未来のために、博士の企みは止めなければならないのだ。

 こうして猟兵たちの集めた情報は共有され、博士の潜伏場所は絞り込まれていく。
 情報の纏めを行っていたのは、UDCエージェントの朝海・柚貴(絶対零度・f10070)だった。
「随分とご立派な理由でこちらの仕事を増やされたものです」
 自身も疑いの高い場所を巡りながら、彼は博士への皮肉を口にする。
「これ以上残業を増やされて過労死したくありませんので、さっさと片付けましょう」

『私はこれからそれを証明する』
 博士が残したメッセージに記された一文は、見せ付けるという意味にも取れる。
 狂気に陥った博士の精神状態も考慮すれば尚のこと、大胆な行動も考えられる。
 そう、例えばそこで邪神が顕現すれば、ただちに大きな被害が予想されるような――。

 その推測と集められた情報を元に柚貴が辿り着いたのは、都市の中心地に在るとある博物館だった。
 現在は大規模な展覧会の準備中とのことで、客の出入りはない。
 『エジプト・ファラオ展』と題されたその展覧会では、古代の王たちに由来する数々の宝物も展示予定で、その多くは既に館内に運び込まれているようだ。

「古代エジプト、そしてファラオか……」
 柚貴に同行していたムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)は、手にした書物【閉架書庫目録】のページを捲りながら呟く。
 "貪欲者の王冠"に関する情報を探っていた彼は、かつて下エジプトに存在したとある王にまつわる記述に、このオブジェクトに類似した品を見つけ出していた。
 その王の名は定かではない。伝わる異名は『イネブ・ヘジの狂える王』――。

 詳細は今だ掴めてはいないが、この符号は無関係ではないだろう。
 ムルヘルベルはガジェットショータイムを発動し、魔力結晶を搭載したドローン型ガジェットを作成し、博物館に向けて飛ばす。
「どうですか?」
「当たりだ。館内から魔力の反応がある」
 十中八九、強奪された"貪欲者の王冠"のものだ。
 それを聞いた柚貴は、即座に端末を取り出して、都市に散っている仲間たちに連絡を送る。

 かくしてブレイン博士の潜伏先は特定された。
 博物館が閉館中なのはもっけの幸い、一般人を巻き込む危険の低い今のうちに踏み込むべきだろう。
 閉ざされた博物館の入り口に視線を向け、ムルヘルベルは宣言する。
「狂気に屈したことを責めはすまい。だが世界に仇なすならば、狩るのみよ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ロッジ・ゴーレム』

POW   :    ゴーレムパンチ
単純で重い【コンクリートの拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    サンドブラスター
【体中から大量の砂粒】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ジャイアントロッジ
予め【周囲の無機物を取り込んでおく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの調査の結果、ブレイン博士の潜伏先は特定された。
 そこは現在『エジプト・ファラオ展』の開催準備のために閉館中となっている博物館。
 都市の中心地に位置するそこで邪神が召喚されれば、未曾有の被害は免れない。

 来館客のいないこのタイミングを幸運とし、猟兵たちは博物館に突入した。
 古代の美術品や宝物が展示された、明かりの消えた館内で、彼らは一人の男と遭遇する。
 写真と比べるとやつれた顔立ちで、服装も変えてはいるが――間違いない、ジョン・ブレイン博士だ。

「もう来たのか……最近のエージェントは優秀だな。それとも君たちは猟兵かね?」
 ブレイン博士は猟兵たちに気づくと、狂気的な笑みを張り付かせながらパチンと指を鳴らす。
「悪いが今、私は大事な儀式の準備中でね。大したもてなしもできないが……暫くソレと遊んでいてくれ」
 博物館の壁や床が隆起し、コンクリートの体を持つ人型の怪物の群れが現れる。
 ロッジ・ゴーレム。邪神崇拝者が使役している事の多い低位のオブリビオンだ。
 彼がそれを作成・使役できるのは、UDC研究者としての知識ゆえだろう。

 かつては、世界を守るために使われてきた研究と知識。
 それを今、ブレイン博士は世界の滅亡のために利用している。
 彼の企みを阻止すべく、猟兵たちは立ちはだかるロッジ・ゴーレムの群れと対峙する。
ムルヘルベル・アーキロギア
「数が多いな……ワガハイが露払いをする!」
仲間たちにそう伝えた上で、【ウィザード・ミサイル】を使用し敵の第一波を掃討しよう
敵は範囲攻撃をしてくるようであるからな、〈全力魔法〉と〈高速詠唱〉を併用して機先を制するのだ
「それにしても、UDC内部からの裏切り者とはな。この世界では日常茶飯事なのか?」
オブリビオンを使役する研究者とはなんとも始末が悪いものだな、まったく……

ともあれ敵の動きは鈍重のようであるから、攻撃の予備動作を見てそれを伝えるなどして仲間と連携したいところである
●その他
真の姿:ホワイトオパールでできた髪に淡い虹の輝き(遊色効果)が起こる
アドリブ・他PCさんとの絡み大歓迎


桑崎・恭介
SPD


くッ…ロッジ・ゴーレム…!?
既にこんなん仕込んどったって事は、儀式って奴も相当な段階まで進んどるか…?
思ってたより厄介やな、研究員相手にするってのは…!

お前らとは戦った事は無い…けど、会った時のための対策は既に考えとる!
箱舟ッ!(機銃のような超常機械を召喚し、それに飛び乗る)
動きが遅い格闘系なんてのは、寄らない寄らせんを徹底や!
(超常機銃の弾頭は砂礫対策として着弾点が凍る。また、無機物吸収対策として倒したゴーレムを氷で覆い収容する)

■相性悪かったり苦戦判定
超常機械ぶっ壊されつつ「やっべぇ! 机上の空論だった!」と言いつつ距離を置き、
離れたところから仲間の支援のため銃器で攻撃します



「くッ……ロッジ・ゴーレム……!?」
 押し寄せる怪物の群れを目にした恭介は警戒を強める。
「既にこんなん仕込んどったって事は、儀式って奴も相当な段階まで進んどるか……?」
「いかにも。惜しいところだよ……あと少し来るのが遅ければ、もっと素晴らしい歓迎ができたのに」
 狂気の笑みを張り付かせたまま、ブレイン博士が答える。
 猟兵たちがここに辿り着くのに手間取ったという訳ではない。むしろ、猟兵でなければ手遅れになっていたと言うべきか。

「数が多いな……ワガハイが露払いをする!」
 戦いの初手を取ったのはムルヘルベル。真の姿を顕しつつある彼のホワイトオパールの髪には、淡い虹の輝きが浮かんでいる。
 最速で詠唱を紡ぎ、放つのはウィザード・ミサイル。何十発という炎の矢の雨が、ロッジ・ゴーレムの第一陣へと降り注ぐ。
 ゴーレムはその見た目どおり動きは鈍重らしく、直撃を受けた先頭の数体が炎に包まれ崩壊していく。
 しかし、それ以外の個体はまだ健在だ。予め博物館のコンクリートや建材を主な素材として取り込んだゴーレムは、その頑健さにものを言わせて前進を続ける。

 だが、敵の進撃が一時鈍った間に、恭介は対UDC用の超常機械を召喚していた。
「お前らとは戦った事は無い……けど、会った時のための対策は既に考えとる! 箱舟ッ!」
 機銃のような超常機械に飛び乗ると、恭介はその銃口をゴーレムの群れに向ける。
「動きが遅い格闘系なんてのは、寄らない寄らせんを徹底や!」
 放たれた超常機銃の弾頭は、着弾と同時に標的を凍結させる特性を持つ。
 まず脚部を凍らされ、進撃の止まったゴーレムは、追撃を浴びて氷の中に収容されていく。

 アウトレンジからの攻撃を行うムルヘルベルと恭介によって、ゴーレムは猟兵を攻撃の射程に捉えることもできず、徐々に数を減らしていく。
 だが、こうしている間にも、ブレイン博士は儀式の準備を進めている。
 彼の足元には、幾何学的な模様を描くように配置された宝飾品の数々。それは宝石と貴金属で描かれた魔法陣にも見える。
「ふむ、やはりこの程度のゴーレムでは役者不足か……仕方ない、質は数で補うとしよう」
 博士がそう呟くと、博物館の各所から新たなロッジ・ゴーレムが現れ、猟兵たちに襲い掛かる。

 新手の出現に顔をしかめながら、ムルヘルベルは思わずぼやく。
「それにしても、UDC内部からの裏切り者とはな。この世界では日常茶飯事なのか?」
「いやぁ。流石にそれはあらへん、って言いたいところやけどな」
 UDCアース出身者として否定しつつも、恭介もブレイン博士の危険性はひしひしと感じていた。
 オブリビオン研究の権威が、その知識を悪用すればどうなるのか。
「思ってたより厄介やな、研究員相手にするってのは……!」
「オブリビオンを使役する研究者とはなんとも始末が悪いものだな、まったく……」
 共通の見解を抱きつつ、恭介とムルヘルベルは更なる氷の銃弾と炎の矢を放つのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

青葉・まどか
博士の狂気に堕ちた笑みを見て納得。
「先が見えないから、自分で終わらせる。狂気に堕ちた人間のよくあるパターン一つですね」
邪神の召喚なんて冗談じゃない!大事な儀式、台無しにしてあげるね!

戦闘では、周囲の仲間と連携やフォローを心掛ける。
攪乱を狙って常に動き回り、フック付きワイヤーとダガーを駆使してヒット&アウェイ。

【敵を盾にする】動きで同士打ちを狙い、【2回攻撃】【鎧無視攻撃】の『シーブズ・ギャンビット』で攻撃。

戦闘中、余裕が出来たら【投擲】で博士にナイフ投げを試みる。まあ、嫌がらせですね。


朝海・柚貴
私も仕事はキッチリしますが、あなたみたいに仕事熱心に働くほど優秀ではありませんよ
嫌になって転職届出した割には随分おやつれになって
この仕事まで残業詰めで感覚おかしくなったんでしょうか
仕事中に遊ぶ気は全くありませんのでお気遣いなく

それよりも、「同僚」の不手際も管理できずに皆さんには誠に申し訳ない
罵詈雑言刺すなり煮るなり受け止めますが
わがまま承知で、この仕事が終わってからお願いしたい

SPD
砂粒が来た際、収縮可能なクランケさんを出来るだけ広範囲に展開
味方に対し【盾受け】自身も【オーラ防御】を可能な限り
威力が高い攻撃程隙は出来やすいですから
敵の動きと大きく反応した箇所を脳に記憶しユーベルコードを放ちます


ヴィネ・ルサルカ
やれやれ、セロトニン不足の中年男に硬いだけのゴーレムとはのぅ…粗食にしても貧しすぎる食事だわい…

遣る気は出んが一先ず【七星七縛符】でゴーレム共の動きを制限、【■■■■■・■■■】で眷族の猟犬と奴隷を召喚して他の猟兵を支援するかの。

猟犬は噛み付き、奴隷は纏わり付いて酸で溶かすのが得意じゃ。

ワシ自身は動き回り、ゴーレム共のサンドブラスターで共倒れになるのを狙うかのぅ

気は進まぬが…ゴーレム共が瀕死になったら暴食螺鈿怪口で一気に喰ってしまうかのぅ…



 仲間を無力化されながらも、その残骸を盾にしてじりじりと接近してくるロッジ・ゴーレム。
 これ以上のアウトレンジ戦が困難になったタイミングで、接近戦を心得る猟兵たちが飛び出した。

 フック付きワイヤーとダガーを手に、戦場を駆け回るのはまどか。
 ゴーレムとゴーレムの隙間を風のようにすり抜けながら、すれ違いざまに攻撃を仕掛ける。
 装甲の隙間を狙った二連突きがゴーレムを貫いた、その次の瞬間にはワイヤーを付近の柱に引っ掛けて離脱。時には敵の巨体を盾にして、同士討ちを誘っていく。
 俊敏なまどかのヒット&アウェイ戦法に、鈍重なゴーレムは撹乱されていた。
 何度その拳を振り下ろしても、叩き付けた先にあるのは博物館の床か、味方のはずのゴーレムばかりだ。

 まどかが戦場をかき回している間に、人間には発音不可能な奇怪な詠唱をヴィネが紡ぐ。
「我が眷属よ、顕現せよ」
 召喚された三角頭の『■■■■の猟犬』と、不定形の『奴隷・■■■■』は、主の意に従ってロッジ・ゴーレムに襲い掛かった。
 まず奴隷がゴーレムの身体に纏わり付き、その装甲を酸で腐食させる。
 露出した柔らかい部位にすかさず猟犬が噛み付き、ゴーレムの機能を停止させていく。
 ヴィネはそこに自らも追撃を加えようかと思ったが、眷族の召喚・使役と自身の戦闘を同時に行うのは難しい。
「ま、高みの見物といくかのぅ」
 元より喰らうのにも気の進まなかった相手だ。力を温存しておくのも悪くないだろうとヴィネは判断する。

 ここまでの戦闘で、格闘戦は猟兵たちに有効ではないと判断したロッジ・ゴーレムは、攻撃手段を変更する。
 その全身から大量の砂粒を放ち、巻き起こった砂塵の嵐が猟兵たちを襲う。
 後衛はともかく、前線で戦っていたまどかとヴィネの眷属には、この広域攻撃を避ける術はない――と思われた。

 だが、そこにすかさず柚貴がフォローに入る。
 愛用のクランケヴァッフェの『クランケさん』を盾状に変形させ、広範囲に展開。オーラを纏った巨大な盾が、砂塵の嵐から柚貴と仲間たちを守る。
 やがて攻撃が止んだ時、被害を受けているのはむしろ、集団で無差別攻撃を放ったロッジ・ゴーレム側だった。

「ゴーレムの損耗速度が想定を上回っているな……こちらも儀式を急ぐべきか」
 猟兵とゴーレムの戦いを観察していたブレイン博士が呟く。
 準備の手を早めようとした彼の肩に、不意に一本のナイフが突き刺さる。
「……?」
「邪神の召喚なんて冗談じゃない! 大事な儀式、台無しにしてあげるね!」
 戦闘の最中、隙を見てそれを放ったまどかが、挑発めいた言葉をぶつける。
 だが、ブレイン博士はまるで傷の痛みを感じていないように、笑みを浮かべて答える。
「そうか。君はまだ希望を捨てられないのだな。ああ、もう少し待っていてくれ。すぐに終わらせてあげるから」
 会話をしているようで噛み合わないその言動、そして狂気に歪んだ笑みを見たまどかは理解する。
「先が見えないから、自分で終わらせる。狂気に堕ちた人間のよくあるパターンの一つですね」

「私も仕事はキッチリしますが、あなたみたいに仕事熱心に働くほど優秀ではありませんよ」
 クランケさんを攻撃形態に変形させながら、柚貴も博士と言葉を交わす。
「嫌になって転職届出した割には随分おやつれになって」
「UDCを抜けてからの方が、むしろやることは山積みでね。しかし充実した日々だったよ」
 目を爛々と輝かせながら博士は答える。
「終わらせないための目的地のない徒労ではない。確実な終わりへと向かう一歩だ。ゴールが見えていたほうが、努力にも熱が入るだろう?」
「この仕事まで残業詰めで感覚おかしくなったんでしょうか」
 生き生きと語る博士の言葉を、柚貴は突き放すように冷たくあしらう。
 同じUDCのエージェント兼研究者として、彼のような一線を踏み越えないために。
「私は正常だとも。これまでが異常だったのさ。それより、私なんぞと話している暇はあるのかね?」
「お気遣いなく。仕事中に遊ぶ気は全くありませんので」
 背後から迫っていたロッジ・ゴーレムに対し、柚貴はプログラムド・ジェノサイドを起動。
 最適化された超高速の連続攻撃が、ゴーレムをバラバラに破壊する。

「それよりも、『同僚』の不手際も管理できずに、皆さんには誠に申し訳ない」
 離反した博士をあえてまだ同僚と呼びながら、柚貴は仲間たちに謝罪する。
「罵詈雑言刺すなり煮るなり受け止めますが、わがまま承知で、この仕事が終わってからお願いしたい」
「わしは飯が食いたいのぅ。セロトニン不足の中年男に硬いだけのゴーレムでは、粗食にしても貧しすぎる食事だわい」
 やれやれ、と肩をすくめながらヴィネが答える。
 何にせよ、全てはこの「仕事」を終えてから。博士を守るゴーレムの数は、残り僅かとなっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

御堂・玲
博士のおっしゃる事も分かりますが、貴方が行った事は決して徒労などでは無いかと思います。
今は対処療法しか取れなくとも、いつか根本的な解決ができるかもしれない。
その時が来るまで、滅びへの秒針を巻き戻していた貴方は立派な研究者、でした。

もはや、貴方に逃避する場所は無いですよ。
覚悟はいいですか。

【プログラムド・ジェノサイド】
――モシュネ・レプリカ起動。
博士に話しかける前に残りのゴーレムを片づけておきましょう。

ゴーレム、堅そうですね。
なるべく柔らかそうな箇所を斬りますが……
モシュネ、刃毀れしても許してください。

※アレンジ・アドリブ自由にお願いします。



「――モシュネ・レプリカ起動」
 残存するゴーレムを片付けるため、玲は日本刀型のクランケヴァッフェを構える。
「ゴーレム、堅そうですね。モシュネ、刃毀れしても許してください」
 愛刀にそう囁きながらも、玲はロッジ・ゴーレムに肉迫する。

 残されたゴーレムは悪足掻きとばかりに砂塵の嵐を放とうとするが――
 それよりも早く、玲の脳内の攻撃プログラムが起動。
 振るわれた刀はゴーレムの装甲の薄い箇所を正確に切り刻み、瞬く間に瓦礫の山へと変えた。

「博士のおっしゃる事も分かりますが、貴方が行った事は決して徒労などでは無いかと思います」
 もはや活動するゴーレムがいないことを確認すると、玲はモシュネ・レプリカの切っ先をブレイン博士に向ける。
「今は対処療法しか取れなくとも、いつか根本的な解決ができるかもしれない。その時が来るまで、滅びへの秒針を巻き戻していた貴方は立派な研究者、でした」

「君も、なかなか優秀な研究者のようだな……ならば、本当は君だって理解できるだろう」
 過去形で結ばれた玲の言葉に、しかし博士は笑みを深めて答えた。 
「UDCの発生は止められない。これはシステムなのだよ。世界は最初から滅びるよう定められていた!」
 その言葉は異様な熱を帯び、目の焦点も定まっていない。
 確かなのは、彼は既に結論を決めてしまっている、ということだ。

「……もはや、貴方に逃避する場所は無いですよ。覚悟はいいですか」
「覚悟? ああ、そんなもの、とうにできているさ……」
 玲が鋭い声を発すると、博士はぐりん、と彼女と猟兵たちを見渡し。
 ――その手にはいつの間にか、錆び付いた冠が握られていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『イネブ・ヘジの狂える王』

POW   :    アーマーンの大顎
自身の身体部位ひとつを【罪深き魂を喰らう鰐】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    カイトスの三魔槍
【メンカルの血槍】【ディフダの怨槍】【カファルジドマの戒槍】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ネクロポリスの狂嵐
【腐食の呪詛を含んだ極彩色の旋風】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・綺里枝です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「見事だ、諸君。結局、儀式の準備は完成できなかったな」
 ぱち、ぱち、ぱち。
 ロッジ・ゴーレムの残骸が散らばる博物館に、ブレイン博士の空ろな拍手が響く。

「本当は、完全な状態で降臨させたかったのだが……こうなってはやむを得まい」
 そう言うと博士は、手にしていた錆び付いた冠――UDCオブジェクト"貪欲者の王冠"を自らの頭に乗せる。
 そして、ポケットから一本のナイフを取り出すと、その切っ先を己の胸に当て。
「トラブルに備えて、第二第三のプランを用意するのが、一流というものだ」

 ナイフの刃が、ブレイン博士の胸を貫く。
 ごぼり、と血を吐きながらも、彼はよりいっそう笑みを深め、叫ぶ。
「捧げし供物を糧に、我が身を仮初めの器として、現世に降臨するがいい。『イネブ・ヘジの狂える王』よ!!」
 瞬間、配置された宝物の魔法陣が輝き、博士の体が光に包まれる。

 ――やがて光が収まった時、そこに居たのは『ジョン・ブレイン』ではなかった。
 古代の装束を身に包んだ、高貴な気配を纏う褐色肌の男。
 一見すれば人間にしか見えないそれが高位のオブリビオンであることを、猟兵の直感が告げる。
 これが、ブレイン博士が召喚しようと企んだ邪神なのだ。

「見たまえ、諸君。これが終わりの始まりだ」
 言葉を発する『イネブ・ヘジの狂える王』。その声と口調は、寄り代となったブレイン博士のそれだ。
 言い換えるなら『ジョン・ブレイン』としての意識がまだ残っている以上、邪神の降臨は不完全だったのだろう。
 それでも、これを放置すれば大きな災厄が都市の中心で起きるのは間違いない。

 とある博士の狂気を終わらせるため、オブリビオンの災厄から人々を守るため。
 猟兵たちは決戦に臨む。
ヴィネ・ルサルカ
カカカ!漸く晩餐に相応しい主菜が顕れよったわい!依り代になった中年男共々、じっくり味わってやろうぞ!

引き継ぎ、猟犬と奴隷による攻勢を掛けるとしよう。奴隷には酸を飛ばしての援護射撃、猟犬には他の猟兵と連携した攻撃を指示。

奴が範囲攻撃を行う素振りを見せたら眷族を引っ込めて七星七縛符で動きを封じるかのぅ。

ワシ自身は近接戦闘が苦手故に、支援や嫌がらせで動くとしよう。

さて、奴が後一息で止めを刺せる段階まで来たか…のぅ、ジョン・ブレイン…いや、狂える王よ。貴様の企みはワシが此の世界で為すべき謀にとって邪魔であった。

故に、貴様をジョン・ブレインの絶望と諦念ごと喰ろうてやるわい。(【暴食螺鈿怪口】使用)


ムルヘルベル・アーキロギア
[]:装備
【】:UC
〈〉:技能
自ら贄になるとは愚かな
相手は高位邪神、禁書の知識を基に遠距離戦を、と普通なら判断する
彼奴も恐らく後衛型、先の戦いを経た知識もあれば"此方がそう判断する"と考えるはず
故にあえて逆の手で不意を突く

「宝石が欲しいならば、我が輝きを味わわせてやろう!」
最高級の[魔力結晶]を噛み砕き、【石喰い】と同時に[胡蝶装]を起動
〈呪詛耐性〉を活かし被弾覚悟で接近
無論不得手な身で倒せるとは思わぬ
狙いが此方に来ればよし、攻撃は仲間に任せる
「狂気に屈したオヌシを責めはせん、誰しも怖いものはある」
「だが、故にこそワガハイはオヌシのように諦めはせぬ。共に戦う仲間も居るのでな!」
アドリブ絡み歓迎


朝海・柚貴
引き続きクランケさん展開し攻守支援

博士の考えに私も同感です
現状守れているのは束の間の平穏
日々狂気に晒される中
プランもなく希望はあるとか根拠もない話聞く気にもならない
ですが博士の様に
自分の正しい説すら全て無駄にする馬鹿な話でもないです

説得や説教したい訳ではなく
何故退職届出さなかったんでしょう
自分の説を証明すると研究者として宣言されただけ
貴方なら今後立てられるプランも
後で私が罵詈雑言刺され煮られる狂気に晒される事にも
確実に守れる平穏もあるのにと一言あるだけ

お気遣いなく
奪還と儀式阻止が任務です

しかし付いてくる民もいないのに
王になれる筈もないでしょう
錆びれるだけの王冠はやはりガラクタです
そうコード展開


青葉・まどか
儀式を完全には妨害できなかったのは残念だけど、決着つけるよ!

独りで戦うわけじゃない、仲間と連携・フォローを心掛ける。
戦闘、得意じゃないんで正面から戦ったりしません。
フットワークを活かして、一撃離脱の戦闘スタイル。
仲間の攻撃の合間に『シーブズ・ギャンビット』で【2回攻撃】、【早業】で【傷口をえぐる】を狙う。


博士は狂気に堕ちたけど、研究は無駄なんかじゃない。誰かが引継ぎ、きっと実を結ぶ。
博士の行動も、UDCは無駄にしない。オブジェクトの管理や研究者のメンタルケア、出来ることは沢山あります。
…ごめんなさい。貴方を支えてあげれなくて、貴方の希望になれなくて。
私は諦めません。
さよなら、博士。


桑崎・恭介
博士…!間に合わん…とは知ってたけど…(その姿を見て、苦々しく)
…博士が狂うんも、しゃーない…完全な状態やったら、と思うと膝が震えるわ
でもな…アンタの狂気は…絶望はここで食い止める!そのために来たんや!

(指輪からチェーンブレードを召喚し、切り結ぶ)
(UCを封じられても『激痛耐性』で痛みに抗い接敵し交戦)
やがて死ぬとか、いつか滅ぶとかはどうでもええ
人はいつか死ぬ!そんな当然の事を誰もが知ってても…みんな未来の為に精一杯生きとるんやろが!
俺は今!悲劇が起こるんを見過ごせへん!
博士!アンタだって…アンタだってそうやった筈やろ!
何大人が勝手に絶望しとんねん!ガキに尻拭いさせて恥ずかしいと思わんのか!


御堂・玲
高位のオブリビオンですが、不完全な召喚だったようですね。
博士、不完全な結果を出して一流と言うのは少々苦しいかと。

さて、まだ勝ちの目はありそうですね。
頑張りましょう。

【エレクトロレギオン】
モシュネ・レプリカはゴーレムの切断で刀身が痛んだで
使うのは止めておきましょう。
折ったら所長に怒られてしまいます。

では、私は小型の誘導自爆兵器でみなさんをサポートしましょうか。
あまりこの兵器は好きではないですが、持ってきてよかったです。
本体を狙うのではなく、これで敵の技を潰せるように誘導設定をしましょう。

貴方に次はありません、これで終わりです。
……お疲れ様でした。ジョン・ブレイン博士。

※改変アレンジ歓迎です。



「博士……! 間に合わん……とは知ってたけど……」
 変わり果てたブレイン博士――否、博士だったオブリビオンを前に、恭介は苦々しい表情を浮かべる。
 膝が震える。もしこの邪神が完全な状態だったらと思うと、博士が狂うのも理解できる気がした。
「カカカ! 漸く晩餐に相応しい主菜が顕れよったわい! 依り代になった中年男共々、じっくり味わってやろうぞ!」
 一方のヴィネは喜悦の笑みを浮かべながら、配下の猟犬と奴隷を差し向ける。
「高位のオブリビオンですが、不完全な召喚だったようですね。まだ勝ちの目はありそうです、頑張りましょう」
 研究者としての冷静な分析を下しながら、支援用の小型兵器群を召喚する玲。
「儀式を完全には妨害できなかったのは残念だけど、決着つけるよ!」
 ダガーを構え、宣言するまどか。それが、開戦の号令となった。

「まずは小手調べといこうか。見るがいい、ネクロポリスの狂嵐を!」
 イブネ・ヘジの狂える王が宣言すると、彼を中心に極彩色の旋風が巻き起こる。
 その風に触れた博物館の床や展示物は、瞬く間に腐食し、崩れ落ちていく。

 真っ先に防御行動を行ったのは柚貴。ロッジ・ゴーレムの砂塵から仲間を守った時のようにクランケさんを展開し、旋風を防ぐ盾とする。
 だが、邪神の放つ呪詛は、同じUDCの肉体から作られているはずのクランケさんすらじわじわと蝕んでいく。
 突破されるかと思ったその時、玲の召喚した小型兵器の群れが飛び出し、一斉に自爆する。
「あまりこの兵器は好きではないですが、持ってきてよかったです」
 爆風が旋風を相殺し、腐食の呪詛を吹き飛ばしていく。
「ですが、長期戦は拙いかもしれませんね」
 初撃は凌ぎきったが、直にこの風を浴びれば猟兵であろうと無事では済むまい。

「ふむ、想定より出力が低いな。やはり顕現は不完全か……」
 猟兵が健在を見てぶつぶつと呟きながら、狂王は再び旋風を起こそうとする。
 だが、それよりも早く動いたのはムルヘルベルだった。
「自ら贄になるとは愚かな……宝石が欲しいならば、我が輝きを味わわせてやろう!」
 最高級の魔力結晶を噛み砕き、補給した全魔力を運動能力へと変換。蝶の翅めいた光の尾を引きながら、全速力で狂王に接近する。

「ほう。先の戦闘を見る限り、君は魔術師だと思っていたが」
「あまりやりたくはないのであるがなあ。オヌシのせいだ、覚悟してもらうぞ?」
 相手の想定を逆手に取った、不意を突く戦法。
 鉱石の拳に魔力を込めて、ムルヘルベルは全力の打撃を放つ。
 それは見事に標的の腹部に突き刺さり、狂王の体をくの字に曲げた。
「グッ……」
「狂気に屈したオヌシを責めはせん、誰しも怖いものはある。……だが、故にこそワガハイはオヌシのように諦めはせぬ。共に戦う仲間も居るのでな!」
 確かな手応えを感じながらムルヘルベルは宣言する。
 だが、狂王はにぃ、と笑みを浮かべて顔を上げ。
「無意味だよ。諦めなければそれだけ、苦しみの時間が長引くだけだ」
 その右腕が巨大な鮫の大顎に変化し、ムルヘルベルの肩に食らい付く。
「味あわせてくれると言ったね? ならば遠慮なくいただこう」
「クッ……!」
 顎がムルヘルベルの肩を噛み砕き、ホワイトオパールで出来た肉片を咀嚼する。
「悪くない味だ」
 その生命力と魔力を奪い、狂王の体に更なる力が漲っていく。

 だが、ムルヘルベルの捨て身の接近は、仲間たちに攻撃の機会を与えた。
「アンタの狂気は……絶望はここで食い止める! そのために来たんや!」
 収納具の指輪からチェーンブレードを召喚し、恭介が狂王に斬りかかる。
 狂王は即座に右腕を元に戻すと、血塗られた魔槍を召喚し、チェーンブレードを受け止める。
「無駄だよ。絶望は止まらない。いずれこの世界のすべては死に絶え、滅びる定めなのだから」
「やがて死ぬとか、いつか滅ぶとかはどうでもええ」
 ブレードで魔槍と切り結びながら、恭介は叫ぶ。
「人はいつか死ぬ! そんな当然の事を誰もが知ってても……みんな未来の為に精一杯生きとるんやろが!」
「よう言うたわ」
 ヴィネの使役する奴隷が酸の援護射撃を放ち、狂王の動きに隙を作る。
 その好機を見逃さず恭介は踏み込んだ。

「俺は今! 悲劇が起こるんを見過ごせへん! アンタだって……アンタだってそうやった筈やろ!」
 轟音と火花を撒き散らし、チェーンブレードが回転する。
 悪しき神をバラバラに屠るために作られた剣が、狂王の魔槍を叩き斬り。
「何大人が勝手に絶望しとんねん! ガキに尻拭いさせて恥ずかしいと思わんのか!」
 渾身の叫びと共に放たれた返しの斬撃が、狂王の肉体を袈裟懸けに切り裂いた。
「……君は……」
 血飛沫を上げながら、恭介の叫びに呆然とする狂王。

 そこに不意に、背後からの刃が狂王のマントを切り裂いた。
「!」
「私は戦闘、得意じゃないんで。正面から戦ったりしません」
 振り返ればそこに居たのは、血に塗れたダガーを持つまどか。持ち前のフットワークを活かし、既に狂王から距離を取っている。
「素早いな。だが、その距離で逃げたつもりかな?」
 狂王は投擲の構えを取ると、新たに怨念を纏った魔槍を召喚し、まどか目掛けて投げ放とうとする。
 だがそこに、横合いから飛び掛ったヴィネの猟犬が、狂王の腕に食らい付いた。

「ムッ……!」
 狂王が猟犬を払いのける一瞬のうちに、まどかは再び狂王の死角に回りこみ、刃を振るう。
 邪神さえも捉え切れぬ高速の二連斬が、初撃と正確に同じ位置に刻まれ、その傷をより深く抉る。
「あなたは狂気に堕ちたけど、研究は無駄なんかじゃない。誰かが引継ぎ、きっと実を結びます」
 足を止めることなく戦場を駆けながら、まどかは『博士』に語りかける。
「あなたの行動も、UDCは無駄にしない。オブジェクトの管理や研究者のメンタルケア、出来ることは沢山あります」
 だから、諦めるにはまだ早すぎる。
 まどかの眼から、まだ希望は失われていない。

「何故……なぜ理解してくれないのだ。その希望が君たちを苦しめると言うのに!」
 徐々に深く傷ついていく狂王の顔から、初めて笑みが消えた。
 悲嘆に表情を歪ませながら、彼は再びネクロポリスの狂嵐を巻き起こそうとする。
 先の小手調べとは違う、猟兵たちの希望と生命を奪うための全力の嵐を。

「させぬわ」
 だが、その予兆を見て取ったヴィネは、即座に眷属の召喚を解除すると、七星七縛符を放つ。
 狂王の胸に張り付いた護符が、寸前だったユーベルコードの発動を強制解除する。
「クソッ……邪魔を……するな!」
 符の力に束縛されながらも、狂王は魔槍を持ち上げ、術者であるヴィネ目掛けて投擲する。
 しかし、その射線上にすかさず玲の小型兵器が割り込み、自爆と引き換えに魔槍の軌道を逸らした。

 動きを束縛され、武器も手放してしまった狂王。
 その致命的な隙を見逃さず、接近したのは柚貴。
「博士の考えに私も同感です」
 エージェントである彼はそう語る。
 今、UDCが守れているのは束の間の平穏に過ぎない。日々を狂気に晒される中で、根拠もプランもない希望を語られても聞く気にもならないだろうと。
「ですが博士の様に、自分の正しい説すら全て無駄にする馬鹿な話でもないです」
 貴方なら、今後希望的なプランを立てられることも、確実に守れる平穏もあっただろうに、と呟き。
 そして、彼は問う。
「何故、退職届を出さなかったんでしょう。貴方は自分の説を証明すると、研究者として宣言されただけだ」
 ここまで狂気に蝕まれるほどに、UDCの研究者として在籍し続け、狂気と向き合ってきたのは何故なのか、と。

「た、退職届? わ……私は……私は……?」
 その問いに狂王は――狂った『ジョン・ブレイン』は答えられなかった。
 彼の心に生じた疑問に、柚貴のユーベルコードが反応する。
 召喚された『謎を喰らう触手』が狂王に絡みつき、その精神を喰らっていく。
「あ、ああああああああああっ!!!!!!」
 絶叫を上げる狂王。その体が、がくりと膝を突いた。

「さて、後一息まで来たか……」
 狂王の弱った姿を確認すると、ヴィネはあえて七星七縛符を解除した。
 止めの一撃を自らの手で加えるために。
「のぅ、ジョン・ブレイン……いや、狂える王よ。貴様の企みはワシが此の世界で為すべき謀にとって邪魔であった」
 暗黒世界の悪魔が嗤う。その身体の一部を、クリオネの頭部に似た捕食器官に変化させながら。
「故に、貴様をジョン・ブレインの絶望と諦念ごと喰ろうてやるわい」
 一切の慈悲なく、容赦なく。捕食者が狂王に飛び掛る。

「ま……まだだ……まだ、私は……」
 触手を振り解きながら、狂王は立ち上がろうとする。
「私は……救いたい……救わねば……この世界に、希望を、希望を、希望を、希望を希望を希望希望希望希望希望希望希望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望!!!!!!」
 その精神の均衡は完全に崩れ、取り繕われていた理性の仮面は剥がれ落ち。
「そうだ、この世界は希望に満ちているだから駄目なのだ絶望は希望と共にある満たせ満たせ世界を絶望で来たれ来たれ世界に終焉を知らしめろ我らの敗北をそうすれば楽になるそうそれこそが救済――!!!!!!」
 狂気を垂れ流す男は三本目の魔槍を召喚すると、ヴィネを貫かんとし――。

 ――それを止めたのは、背後から突き刺された一本のダガー。
「――あ?」
「……ごめんなさい。貴方を支えてあげれなくて、貴方の希望になれなくて」
 呆然とした面持ちで振り返る狂王に、まどかは別れの言葉を送る。
「私は諦めません。さよなら、博士」
 彼女が飛び退いた直後、玲の操る自爆兵器の残機が狂王に襲い掛かり。
「貴方に次はありません、これで終わりです……お疲れ様でした。ジョン・ブレイン博士」
 爆風が魔槍を吹き飛ばし、無防備となった狂王の頭上から、捕食器の口を開いたヴィネが飛び掛る。
「さらばじゃ、狂える王よ」

 捕食される寸前、狂王が見せたのは絶望でも、狂気でもなく――
「……そうか。私はここまでか」
 安堵の表情を浮かべた彼は、猟兵たちに穏やかな笑みを向けて。
「すまない。後は、頼んだ」
 ――それが『ジョン・ブレイン博士の反逆』の終焉だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月15日


挿絵イラスト