アルダワ魔王戦争1-E〜憤怒の胞子と龍の咆哮
グリモアベースで猟兵を集めたネルウェザ・イェルドットは、いつになく苛立った様子でカツカツと爪先を鳴らす。しかし猟兵の到着に気づけば、彼女ははっとして姿勢を改め、ぎこちない笑みを浮かべて会釈した。
「……し、失礼。集まってくれてありがとう。皆、アルダワの大魔王の件は把握しているかな」
そう彼女が問うのはかの世界の地下迷宮最深部、ファーストダンジョンにて封印された存在。猟兵が肯定を示せば、ネルウェザは自らを落ち着けるように深く呼吸をして続けた。
「今回はそのファーストダンジョンへと攻め込んでもらいたいのだけど……少し、戦場が特殊になりそうなんだよねぇ」
けらっと笑い、ネルウェザはモニターを取り出して何かを映し出す。
画面いっぱいに映ったのはアルダワの地下迷宮――と、大量のキノコだった。
毒々しい見た目をしたそれらはふんわりと粉のようなものを撒き散らしており、映っているフロア全体がそれで満たされているのがわかる。そして奥で動く何かの影が大げさなほどに腕を振り回し、何かを叫んでいるのが見えた。
「これは迷宮キノコといってね。特定の感情を増大させる胞子を振り撒く、という厄介な特徴を持っているんだ」
ネルウェザはポケットからビニール袋を取り出す。袋には画面に映るキノコを一回り小さくしたようなものがひとつ包まれており、彼女は興味本位で嗅いでしまったのだと素直に白状した。
「これを吸ってからイライラが止まらなくてねぇ……見てもらったとおり、迷宮にはこれの成長したやつがわんさか生えている。あそこに立てば間違いなく『怒り』の感情がわくことだろう」
ミレナリィドールである自分でもこの胞子には抗えなかった。つまり猟兵であろうと機械の身体であろうと、何に対しても容赦なくこの胞子は効いてくるのだ、とネルウェザは補足する。
「これを無理やり押さえつけるのには相当な気力が要る。故に、敢えて胞子の誘うままに感情を爆発させながら戦う、というのが最善手と言えるだろう」
ふう、と一度深呼吸をし直してネルウェザはグリモアを浮かべる。そして片手に摘んだキノコ入りの袋をぐちゃっと潰すと、彼女は吹っ切れたような笑みで猟兵に向き直った。
「それでは、皆を先程見せたエリアへ転送するよ。くれぐれも怒り狂って正常な判断を失わぬよう気をつけて戦ってきてくれ」
ネルウェザがそう告げれば、ふわりとグリモアが光を帯びる。
転送が始まりだんだんと白く染まる視界の向こう、景色が完全に切り替わる寸前――ふんッ!! と、彼女が抑え込んでいた怒りを噴出させてキノコを踏み潰しているのが見えた……ような、気がした。
●
猟兵がダンジョンへ降り立てば、吸い込んだ空気に微かなザラつきを感じる。辺りを見回す頃には既に、自らの感情が怒りに傾き始めているのが感じられた。
そして奥、キノコで埋め尽くされた床に立つ災魔がひとり。
「許さん……許さん、許さん許さん!!!!!」
そう怒り狂うドラゴニアンは、猟兵を見るなりその感情を爆発させて襲いかかってくる。
「俺をこんな姿に、身体にしやがって……ああ憎い、憎い憎い憎い!!!!!」
彼が叫ぶものは当然ここに立つ猟兵に向けての言葉ではないはずだ。しかし周囲の迷宮キノコの効力のせいだろうか――最早、怒りの矛先を判断する理性すら失われているようであった。
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。
今回はアルダワにて、特殊なキノコが埋め尽くす戦場での戦闘シナリオとなります。
こちらはボス戦一章のみの戦争シナリオです。
キノコのせいで怒りの感情が膨らむようになっていますが、これを利用した戦闘、および何かに怒りを爆発させながらの戦闘が有利となります。是非日頃の思いの丈をぶつけていってください。
それでは、プレイングお待ちしております!
第1章 ボス戦
『『失敗作』ゼラノス』
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POW : 消え行く理性
【悲痛な叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 叶わぬ願い
【人だった頃の自分の幻影(年齢は毎回違う)】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 増大する本能
全身を【憤怒のオーラ】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:ヤマトイヌル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「サフィリア・ラズワルド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セルマ・エンフィールド
感情のまま、怒りのままに振舞ってもろくなことはありませんよ。
聞く耳もありませんか……まぁ、どうでもいいことですね。
怒りのままに戦闘すれば冷静な判断力はなくなりそうですが……それなら最初から捨ててしまいましょう。
【氷炎嵐舞】を使用。無差別の攻撃を超耐久で耐え、あふれ出す熱気と冷気で地形ごと敵を焼きつつ凍結させ移動を阻害し、両手に持った銃による炎の弾丸と氷の弾丸による『属性攻撃』『制圧射撃』を。
聞いていれば憎い憎いと……鬱陶しい。知ったことではありません。
訳の分からない恨みで私に襲い掛かるあなたこそ、私にとっては憎らしい。あなたは、ここで殺す。
(怒りでいつもより口が悪いです)
「感情のまま、怒りのままに振る舞ってもろくなことはありませんよ」
怒り狂うオブリビオンゼラノスに向かって、セルマ・エンフィールドがそう諭す。しかしゼラノスは鬼のような形相で怒りを叫びながら、目の前にいたセルマを標的と捉えて走り出した。
「聞く耳もありませんか……まぁ、どうでもいいことですね」
セルマはため息混じりでそう呟く。突進しようとしていたゼラノスはそんな彼女の姿に感情を昂ぶらせたか、憎いと繰り返すのを一旦止めて大きく息を吸い込んだ。
ゼラノスは腹に溜め込んだ息を吐き出し、喉を震わせる。恐ろしい圧を帯びた声はフロア中に響き渡り、セルマの精神を蝕もうとしていた。
「あああ憎い、憎い憎い!! 絶対にッ、許さん!!!!!」
――そして、彼女の精神に手を伸ばすのはそれだけではない。
ふと、セルマが周囲の地面に目を向ければ件の『迷宮キノコ』の姿が映る。そしてふつふつと心に何かが煮えるような感情を覚えながら、彼女は視線をオブリビオンの方へと戻した。
「……ならば、最初から捨ててしまいましょう」
そう、彼女は内なる力に身を委ねる。ユーベルコード『氷炎嵐舞』を発動したセルマは灼熱の炎と凍てつく冷気を纏いながら、両手に銃を構えて口を開いた。
「聞いていれば憎い憎いと……鬱陶しい。知ったことではありません」
フロアに響く咆哮を耐え、セルマはその身から溢れる熱気と冷気で周囲を焼いていく。感情のままに振る舞ってもろくなことはない、と告げた彼女の眼は――明らかな怒りに満ちていた。
セルマは地を焼きながら、両手の銃に二極の弾丸を込めて照準を合わせる。
「訳の分からない恨みで私に襲い掛かるあなたこそ、私にとっては憎らしい」
目を細め、指に力を込めて。
「――あなたは、ここで殺す」
二つの銃声が重なる。ほぼ同時にゼラノスの口元を貫いた炎と氷の弾丸は、遥か遠くでその軌道を交わらせて消滅した。
「……、が、はッ……」
ゼラノスは大口を開けたまま、ぼたりと血を流して声を切る。
キノコの溢れる迷宮の中、セルマは静寂に少し心を落ち着けたか鮮やかに銃を収めて息をつくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
抑えなくっていいって言われてるし
存分に八つ当たりさせてね?(にっこにこ)
人がせっかく色んな料理研究しても美味しいの一言もないし!
(【オーラ防御+空中戦】)
1人で家事やってても手伝おうとしてくれないし!
(氷の【高速詠唱、属性攻撃】で足凍結)
そのくせからかう時は本気だし!僕は姫じゃないって!何度言ったら!わかるのかな!!
(★氷でコーティングした★杖でのフルスイングからの往復殴打)
好きの方が大きいから気にならないけど!他人なら蹴り飛ばしてるよ!?
(敵に飛び蹴り…からの自主的に言った告白まがいの単語に赤くなり)
なに言わせんだばかぁーーーー!!
(理不尽【指定UC】で幻影ごと【破魔】攻撃)
ふぅ…すっきり!
――ふわり、ふわり、ぶわっ。
迷宮キノコは風に揺れ、その傘の内から胞子を撒き散らしていく。呼吸と同時に入り込んでくるその胞子の効果を感じながら、栗花落・澪は怒り――否、にっこにこの笑顔でゼラノスの方へと歩き出していた。
「抑えなくていいって言われてるし……存分に八つ当たりさせてね?」
そう微笑んだ顔のまま、彼は大きくその背の翼を広げる。身を守る気を纏い、宙へと浮き上がりながら、澪は普段から溜め込んでいた思いをひとり吐き出した。
「人がせっかく色んな料理研究しても美味しいの一言もないし!」
ばさり、と翼に力を込めて。
「一人で家事やってても手伝おうとしてくれないし!」
明らかに個人に向けられたその怒りを一度止め、素早く唇を動かして魔術を紡ぐ。地面からそれを見上げるゼラノスは、小さな子供のような影を抱えて澪へと投げつけようと構えていた。
しかし、それは放たれない。澪の詠唱は影が飛ぶより僅かに速く、ゼラノスが力を込めた頃には既にその腕は氷に縛られてしまっていた。
「ぐッ……!」
目を見開き歯を食いしばるゼラノスへ、澪は大きく羽撃き――杖に氷を纏わせながら声を上げる。
「――そのくせ、からかう時は本気だし!」
ぶん、と杖は澪の細い身体の後方へ。
「僕は姫じゃないって! 何度言ったら! わかるのかな!!」
――ゴンッ!!!!
澪のフルスイングは動けぬゼラノスの顔面に見事命中する。
しかし澪は怒り――怒りだろうか、未だ溢れるその感情に任せてもう一撃。弧を描いた杖は踵を返し、再びゼラノスの頬へと振り抜かれた。
それでも澪は止まらない。翼を動かし一度距離を取ると、彼は体勢を変えて。
「好きの方が大きいから気にならないけど! 他人なら蹴り飛ばしてるよ!?」
「ごほッ!!!?」
澪が勢いよく放った飛び蹴りはゼラノスの身体を大きく傾け、手に抱えていた影ごと吹き飛ばしてしまう。
はぁ、はぁと肩で息をしながら澪はふと、我に返って先程自分が口にした言葉を一度頭の中で繰り返した。
「な……」
告白まがいの単語がエコーをかけて頭に響く。澪はその白雪のような頬をしゅうっと赤く染め、わなわなと手を震わせ――理不尽にもゼラノスに向かってユーベルコード『Fiat Lux』を発動した。
「なに言わせんだばかぁーーーー!!」
眩い光を放ち、感情を爆発させながら。
澪の力は小さな影ごとゼラノスを飲み込み、刃となって降り注ぐ。
「ふぅ……すっきり!」
想いを出し切った澪は笑顔を戻して息をつく。がくりと膝をつくゼラノスを他所目に、彼は清々しい顔で地面へと舞い降りるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
片桐・公明
【POW】
開幕一撃
遠くから一気に駆け寄り飛び蹴りを喰らわせる
「イライラする!!イライラするからとりあえず死ね!!」
『はっはぁ。いいぞいいぞ。そのまま感情に任せてぶっ殺しちまえ。』
平素の冷静さを無くし攻撃する公明を、頭の中の分身が楽しそうに囃し立てる。
本来優雅に美しいはずの舞も、激しく荒々しくなっている。戦闘の癖は抜けておらず、死角を意識して銃と素手で応戦しているが普段より直線的になっている。
ダメージも気にせず、吹き飛ばされてもまた近づいて殴り蹴り始める
『イイコちゃんの仮面なんて捨てて。目の前の敵を屠ってやれ。』
「言われなくてもそうするわ!!」
「ケドね、イイコちゃんは素よ!!バカ野郎!!」
「くッ……、そ……」
爆ぜた口と焦げた身体に顔を顰め、ゼラノスがゆらりと立ち上がる。傷の痛みが感情を更に膨れ上がらせたか、彼は大きく吼えて怒りを曝け出していた。
――そんなゼラノスが、近づいてくる気配に気づく訳もなく。
「イライラする!! イライラするからとりあえず死ね!!」
――バゴッ!!!!!
「がふッ!!?」
ゼラノスは突如口を閉じ、首をおかしな方向に回して身を傾ける。
一気に距離を詰めてオブリビオンの頭部を捉え、飛び蹴りを喰らわせたその人影の正体は猟兵、片桐・公明であった。
(「はっはぁ。いいぞいいぞ。そのまま感情に任せてぶっ殺しちまえ」)
そう笑うのは、公明の脳内に存在する分身の声。キノコの効力によってか冷静さを失い、怒りに任せて交戦と同時に蹴りを放った彼女の内で、その分身は楽しそうに囃し立てていた。
チッ、とゼラノスが体勢を戻して公明を睨む。そして大きく咆えると――ゼラノスはその鋭い爪を振り上げながら、公明に向かって突進した。
「許さん……絶対に許さん!!!」
しかし、グンと振り下ろされた爪を公明は素早い動きで躱し切る。そのまま舞うように力強い蹴りを叩き込み、生まれた隙に銃を構え――引き金に指を掛けた。
――ダンッ!! と鋭い銃声が響き、更に拳による一撃が加わる。
怒りの所為もあってか、彼女はゼラノスの攻撃が掠ろうと衝撃に身を揺らそうと、感情に任せるように身体を動かし続ける。戦闘の癖こそ抜けていないとはいえ、本来の優雅で美しい筈の舞――ユーベルコード『諸葛流舞闘術』の動きは、激しく荒々しく床を踏み鳴らしていた。
そんな公明に、再び分身が口を開く。
(「イイコちゃんの仮面なんか捨てて。目の前の敵を屠ってやれ」)
囃す声に、公明はギリ、と表情に怒りを滲ませて。
「言われなくてもそうするわよ!!」
吐き出すような叫びと共に放たれた拳は、ゼラノスの腹部を確実に捉えて突き出される。公明がそのまま拳を前へと押し込めば、ゼラノスは液混じりの息を吐き出しながら勢いよく吹き飛ばされてしまった。
「……ケドね、イイコちゃんは素よ! バカ野郎!!」
床に叩きつけられたゼラノスを見下ろしながら、公明はひとり頭の中の分身に向かってそう言い返すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アポリオン・アビス
》アドリブ・改変・共闘歓迎
》感情
ああ"!?テメェ暴れてんじゃねェぞゴラァ!!
喰い難いだろうが!!
二人に増えてちょこまかと……まとめて食ってやる!!
》戦法
自動発動した【Glatney Hazzard】で敵を包囲しつつ、服を脱ぎ捨て戦闘形態に変態して『ジャンプ、ダッシュ、先制攻撃、野生の勘』で二人が離れないうちに一気に飛びかかり『怪力』で二人をまとめて押さえつけ尾から糸を放ち『ロープワーク』で拘束する
そのまま自動発動の【貪食の胃袋】と『大食い』で抵抗できないよう押さえつけたまま『恐怖を与え』つつ『捕食』する
もしかしたら捕食する場所によっては『部位破壊』して他の猟兵が有利になるかも知れないな
ぐっと身を起こしたゼラノスが突如二人に分身する。しかしよく目を凝らせば新たに現れた方はやや若く、ドラゴニアンとしてバランスを保った人型をしていた。
「う、うぅぅ……」
呻き、駆け出す二人。撹乱するように右へ左へ動く彼らに、アポリオン・アビスは苛立ちを露わにして向かっていった。
「ああ゛!? テメェ暴れてんじゃねェぞゴラァ!! 喰い難いだろうが!!」
開幕と共に発動していたユーベルコード『Glatney Hazzard』に身を任せ、アポリオンはゼラノスの分身へと突進する。服を脱ぎ捨て、戦闘形態と化した彼は――捕食者の目をしていた。
「ッ!?」
分身が慌てて距離を取ると、アポリオンが進行方向を変える。そのまま少しずつ、少しづつ進路と退路を塞いでいけば、分身はいつの間にか本体であるゼラノスのすぐ近くへと辿り着いてしまっていた。
「二人に増えてちょこまかと……まとめて食ってやる!!」
アポリオンは二人が合流した瞬間を狙い飛び掛かる。大きく広げられた肢体は凄まじい力でゼラノスとその分身を捕らえ、地に縛り付けた。
じたばたと暴れようとするゼラノスは、ふと頭上のキマイラの尾が揺れたのに気がつく。
何か来る、そう彼が察した瞬間――アポリオンの尾は、蜘蛛のように糸を吐いて二人の拘束を強めた。
アポリオンは動けぬ二人を見下ろして、告げるように口を開く。
「いただきます」
「ひッ……!?」
――ぞぶり。
アポリオンの口が分身の頭を覆う。何か硬いものが砕ける音、柔らかいものが潰れる音。至近距離でそれを聴き、『捕食』の様子を見ていたゼラノスは一瞬怒りを忘れたように顔を青くしていた。
そして突如、ゼラノスはアポリオンの下から渾身の力で抜け出そうとする。
が、しかし。
アポリオンはゼラノスが逃げる寸前、翼のついた腕を思い切り掴んで顔を近づけた。
――ブチィッ!!!!! と、アポリオンが豪快にゼラノスを捕食する。
「……ぁ、ああああああああああッ!!!!」
ゼラノスは片翼を引き千切られ、途轍もない痛みに悲鳴を上げる。それでも危険と恐怖からかゼラノスは足を動かし距離を取るが――バランスが崩れたのか、がくっと膝を付いて再び劈くような悲鳴を響かせていた。
大成功
🔵🔵🔵
ララドランカ・アルトリング
アドリブ歓迎
…胞子か…食べるか、体内の循環を止めれば問題無い?
ハハハ…この私にそんなちゃちなモノが効く筈なかろう?
チッ…イライラすんなぁおい…
(駄目だった。見事に口調が乱雑になっている)
あー…此奴、似てるなぁ…私は成功作だから共感は出来んけど…捨てられた失敗作なんて腐るほど見て来たからさ…ガタガタ騒いで無いで復讐しに行くか
…さっさと死ねよ…手前で死ねねえなら私が殺してやるから大人しくしてろ
(見事にキレて殺戮技巧が何時もより冴えている)
【殺】発動…
スティング&ブラストで応戦(2回攻撃・武器受け・傷口を抉る)
隙を見て体の一部をピアノ線の様に細く伸ばしてUCで切断
「胞子か……ハハハ、この私にそんなちゃちなモノが効く筈なかろう?」
そう笑い、周囲のキノコに目を遣るララドランカ・アルトリング。食べてしまえば、体内の循環を止めれば問題ない――そう彼女は余裕そうに振る舞うが、しかし。
「チッ……イライラすんなぁおい……」
――駄目だった。
見事に乱雑な口調で舌打ちをして、ララドランカは向こうで立ち上がるゼラノスの方を見る。こんな身体に変えやがって、許さない、と憎しみを零すオブリビオンに、彼女は記憶の中の何かを重ねるように目を細めていた。
「あー……此奴、似てるなぁ」
ララドランカが頭に過ぎらせたのは、彼女が腐るほど見てきた『捨てられた失敗作』。とはいえ兵器として、『成功作』として生を受けたララドランカが共感することは叶わなかったらしい。
憎い、憎いと裂けた口を開閉するゼラノスに近づきながら、彼女は段々と怒りを膨らませて。
「……さっさと死ねよ……手前で死ねねえなら私が殺してやるから」
ふっ、と赤い瞳が光を返す。
「大人しくしてろ」
――CHORD BLADE 起動。
ララドランカは大槍を手に、ユーベルコードを発動しながらゼラノスに襲いかかる。ひゅっ、と白い刃がゼラノスの頬を掠めれば、ララドランカはすかさずもう片手で光線銃のトリガーを引いた。
ゼラノスは飛び退がり、ララドランカを睨みつけながら大きく息を吸い込む。
「ォ、アァアアアアアアアッ!!!!」
鼓膜を貫くような咆哮。空気がびりびりと震える中、ララドランカは感情を更に昂ぶらせて槍を構えた。
ゼラノスが爪で槍を迎え撃つ。ガキン! と衝撃音が響くと同時、ララドランカの視線が僅かに動き――突如、ゼラノスの片腕がぼたりと落ちた。
きらりと細い線が視界を過ぎる。ユーベルコードの力を帯びたララドランカの身体はピアノ線のように伸び、刃となってゼラノスを襲っていたのだ。
「…………ッ!?」
目を丸くしたゼラノスは思わず動きを止める。ララドランカは一度槍を引き戻すと、ゼラノスの腕が生えていたその根元へと容赦なくその刃を突き出した。
見事にキレたララドランカのその技は、何時もより冴えた動きでゼラノスに向かう。
傷口が深く抉られ、粘つくような音が鳴る。
頬に脂汗を流したゼラノスはララドランカから逃げるように渾身の力で床を蹴ると、ぼたぼたと赤の流れる肩口を必死に抑えながら歯を軋らせるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
バルディート・ラーガ
あらら、あンたも
お姿が変わっちまったクチでございやすかい。
あっしもよう、生まれた時分のカワイイと褒めそやされた子トカゲから
随分とかけ離れた姿になっちまったモンです。見てヨこの腕。
少々の同情はございやすが……しかし、アルダワを潰すってンでしょう。
そいつア困る。こちらとて、容赦はできやせンぜ。
こちらとて見た目はドラゴニアンな身、
やっこサンの怒りを増幅するでしょう。それで良い。
判断力を削いでこっちの狙いを悟られねエよにしやす。
二人前の攻撃を腕脚を犠牲にしのぎやしたらば
……ヒヒ。こちとら、ダメージを蓄積しちゃア
怒りのカウンターをお返しするスタイルなンですぜ。
最高速の一噛みをお見舞いしてやりやしょう!
「あらら、あンたもお姿が変わっちまったクチでございやすかい」
その言葉に反応したか、ゼラノスはぐるりと首を動かす。声の主はドラゴニアン、猟兵バルディート・ラーガであった。
バルディートは身体を包む黒布に手を触れながら、少しだけその肌を曝け出して続ける。
「あっしもよう、生まれた時分のカワイイと褒めそやされた子トカゲから随分とかけ離れた姿になっちまったモンです」
見てヨこの腕、とバルディートはゼラノスの方へとそれを掲げて。
そう言いながらもへらりと笑う彼に、ゼラノスはギリギリと苛立ちを露わにして歯を軋らせる。傷の痛みと怒りで粗く息を繰り返せば、ゼラノスの表情は再び激しい怒りに染まっていった。
憎い、憎い、憎い。怒り狂うゼラノスにすぅと目を細め、バルディートは静かに身構えて口を開いた。
「少々の同情はございやすが……しかし、アルダワを潰すってンでしょう」
――そいつア困る。
バルディートはしゅるりと尾を揺らし、ゼラノスを挑発するように笑って続けた。
「こちらとて、容赦はできやせンぜ」
ぎろり、とゼラノスの目が鋭くバルディートを睨みつける。彼が細く吼えれば突如その姿は二つに分かれ、声を重ねてバルディートの方へと駆け出した。
――それで良い。
捲った布を戻し、バルディートはゼラノスとその分身の突進を正面から待ち構える。本体の力強い爪がバルディートの腕に食い込めば、ほぼ同時に分身が懐へと飛び込んできた。
すかさずバルディートは脚を振り上げ、分身の牙を弾き返す。痛みも厭わずその攻防を続け――ぞぶり、とバルディートの片腕が深く切り裂かれたその時。
「……ヒヒ」
腕が朽ちかけているにも関わらず小さく笑うバルディート。怒りのままに爪を振り回すゼラノスは、それに気づいていなかった。
突如、バルディートはゼラノスと分身の爪に四肢を押し当てて自ら切り離す。身軽になった彼は大きく尾をうねらせると、ユーベルコード『神速の一噛み』を発動した。
「……この一撃、テメエに見切れるかねエ!」
「ッ!?」
目にも止まらぬ速度で、バルディートの頭がゼラノスの肩へ直撃する。ブチッ、と肉の千切れる音がしたかと思えば、ゼラノスはぶるりと身を震わせて叫び声を上げた。
痛みにゼラノスの意識が一瞬飛んだか、傍にいた分身がしゅうと消滅する。
バルディートは口から肉片を吐き出すと、尾を脚の代わりに立ててふうと息をつくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
許せない…貴方もまた、わたしと同じドラゴニアンなのに
誰が彼をあんな姿に変えたのですか!竜でもなく、人でもない、どっちつかずの姿へと!
災魔であるはずの彼
ですがわたしは、同族を貶められて何も思わずにはいられない
或いはこれも胞子のせいか……判別はつきません
ですが彼が何者かに変質させられたのなら、怒らずにはいられません!!
爆発する怒り、でも最低限は【気合い】で繋ぎ止め
わたしは猟兵、彼は災魔、他の皆さんは味方で攻撃してはいけない
それだけ理解していれば十分です…!
【勇者理論】で【怪力】から成る攻撃力を強化、【盾受け・オーラ防御】で攻撃を凌ぐ
貴方を救えないわたしも腹立たしい!ごめんなさい、貴方を斃します!!
満身創痍のゼラノスはひゅうひゅうと喘鳴を上げながら、歪な身体を起こして猟兵を睨みつける。許さない、憎い、憎い――そう怒りを膨らませるゼラノスに、ソラスティベル・グラスランは僅かに眉を顰めて口を開いた。
「許せない……貴方もまた、わたしと同じドラゴニアンなのに」
そう、彼女はゼラノスとは別の怒りを滲ませて。
「誰が彼をあんな姿に変えたのですか! 竜でもなく、人でもない、どっちつかずの姿へと!」
災魔であり、過去の存在であるゼラノスの記憶を知る術は今ここにはない。しかしひと目見れば分かる歪な姿、『こんな身体にしやがって』という言葉を考えれば――彼に何があったのかは、大方予想がつくだろう。
迷宮キノコが放つ胞子の所為だろうか、それとも自分が持つ感情だろうか。ソラスティベルはオブリビオンとはいえ同族を貶められたという事実に、明らかな怒りを湧き上がらせていた。
ソラスティベルはユーベルコード『勇者理論』の力を身に纏い、心を強く保ちながら――自分自身への怒りをも膨らせ、爆発させて。
――貴方を救えないわたしも腹立たしい!
そう歯を食いしばって、ソラスティベルは怒りに身を任せる。顔の横を抜けるゼラノスの爪、恐ろしく空気を震わす咆哮を躱し、耐えながら彼女は前へ前へと進み続けた。
そんな戦闘の中、膨れ続ける感情の中でもソラスティベルは自我を保ち続ける。自分は猟兵、目の前の歪な竜は災魔、今この場に立つ他の猟兵は味方。刃を向けるべき相手だけをただ理解したまま、彼女はゼラノスの方へと向かっていった。
ふと一撃、ゼラノスが大振りな蹴りを放つ。ソラスティベルが紙一重で躱せば、ゼラノスは大きく身を傾けて隙を見せていた。
傷だらけの竜は息を詰まらせて、捻った身体の向こうで目を丸くする。一瞬視線を合わせ、ソラスティベルは大斧を手にして息を吸い込んだ。
「――ごめんなさい、貴方を斃します!!」
その瞬間、ズガン!! とゼラノスの首へと刃が振り下ろされる。
痛みに動きの鈍ったゼラノスは躱すことも防ぐこともせず――最期に、真っ直ぐな咆哮を上げて事切れた。
さわ、と周囲のキノコが揺れる。憤怒の胞子がふんわりと舞う中、ソラスティベルは心を落ち着けながら骸の海へ還っていく竜を見送るのであった。
大成功
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