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その救済は誰か為か

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●苦しみから逃れたかっただけなのに
 ああ、どうしてこんなことになってしまったのだろう。私はこんなにも耐え忍んだのに。そう何度も考えてしまう。考えないようにして来た筈なのに。一緒に乗り越えようと誓った人も居た筈なのに。苦しみは一向に晴れない。

『苦しくなったらてんしさまに会いに行くと良い』
 と、そんな言葉を不意に思い出し、気付けばここまで私は歩みを進めていた。
 眼の前に現れたのは、淑やかに微笑む、羽の生えた天使のような女。
「……救いを求めるのは、貴方ですか?」

●救いがそんな甘い話ではない
「……ダークセイヴァーのある村が奇妙な事になってる」
 そう、開口一番に語る佐久間・嶺滋(想葬の黒影・f00774)は頭を抱えていた。空気から変な予知ではなく、真面目に頭を悩ませるような予知なのだと、集まった猟兵達は察した。

「元々、ダークセイヴァー自体オブリビオンに脅かされて困窮してたり精神的に疲弊している村も多かったりするんだが……その村はな、どうしようもなく苦しんでた奴が、ある日いきなり憑き物が取れたみたいに穏やかな表情になって帰ってくるんだ」
 それは良いことじゃないのか?と思った猟兵も居ただろう。だがしかし、そんな単純な話では無いのだと、嶺滋は続ける。
「むしろそれが原因だ。まるで『他人』になったみたいに戻ってくるから、村の中が不信感を募らせてるんだ」
 信じてた隣人が、苦楽を共に乗り切ろうとしていた友人が、そんなことを『忘れて』しまったかのように戻ってくるから。そして……。
 戻ってきた人は口々に言うらしい。『てんしさまが救ってくださった』のだと。
「……この『てんしさま』が恐らくオブリビオンだ。俺が頼みたいのはこの『てんしさま』の討伐だ」

 村の住民は今の所半分半分ぐらいで思想が分かれているらしく、半分はまだ『てんしさま』を疑っているらしい。巧く疑念を抱いてる住人に接触出来れば……辿り着けるかもしれない。
「ただ、気をつけて欲しい。『てんしさま』を信じてる奴らの中に……嫌な予感がするんだ。余り感づかれると、こちらにとって不利になるかもしれないんだ」
 言外に、住人『ではない者』が混ざっているのだと、言うのだ。
「けれど、俺にはそいつらの特徴が、よく解らなかった……というよりは、区別があまり付かなかった。現場で見て実際の言動の差から判断するしか無いかもしれない……」
 申し訳ないが、その辺りに気をつけて行動して欲しい、と嶺滋は念を押した。

「苦しみに負けるのが悪いことじゃない。けれど……」
 苦虫を噛み潰したかのような顔をした後、嶺滋は猟兵達に向き直る。
「……オブリビオンが齎す救いに頼らせることだけは、させないでくれ」


逢坂灰斗
 でも向き合わなきゃ苦しみからは逃れられないこともあるんですよね……。逢坂灰斗です。はじめましての方ははじめまして。再びの方は今回も宜しくお願いします。
 今回はダークセイヴァーのとある村で『てんしさま』の謎に迫って頂きます。どう考えてもシリアス不可避だろうので、ネタにはあんまり向かないかもしれません。お気をつけ下さい。
 いつものことなのですが、「必ずこの人と描写して欲しい」「ソロで挑みたい」など希望がございましたらプレイングでお書き添えお願いします。逢坂は何も書いてないと割とよく合同判定リプレイとかやり始めますので……。
 では、お目に止まりましたら、宜しくお願いします。
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第1章 冒険 『村を覆う不協和音』

POW   :    力量を見せて人々を安心させます

SPD   :    村の中を走り回って、不和の証拠を探します

WIZ   :    知恵を絞り、人々を安心させたり、情報を得たりします

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

式神・白雪童子
心の隙間に闇ができる時、魔物達は容赦なく入り込んでくるとはある陰陽師の言葉でした、ね。その"てんしさま"もまた、心の隙間に入り込む術を持っているので、しょう。

[WIZ]皆さん、ごはんを、一緒に食べましょう。親しい人と共に食べるご飯は、おいしいです、よ。そして、いっぱいお話、するんです。苦楽を共にしてきた人同士、互いのことを共感し合えます。悲しかったことも、時間が癒してあと思い出話にすることも、できます。それは、『忘れて』はいけないもの…だと、僕は思います。悩んだり悲しんでいる渦中の時は、たしかにツラいです、けど。

それでも、ごはんを食べている時くらいは笑顔でいたいではありませんか。


千手院・ソワカ
【WIZ行動を選択】
弱っている人につけ込むという最も邪悪な行為…必ずやオブリビオンを探し出して仏罰を下してやる必要がありますの。

修行中である旅の僧侶を装い、『てんしさま』の影響が少なそうな、沈んだ表情の村の住民を探して接触を試みますわ。
旅の目的は…もちろん苦しみの輪廻から解脱することですの。村の信ずる神と教義が違えど丁寧に教えを乞う形で潜入してみましょう。
それとなく村の印象を述べたりして、相手が自然と自分たちの事を語りたくなるように情報収集しますの。

「不思議な村ですわね。晴れ晴れとした方がいる一方で、眉間にしわを寄せ、ため息をつく方もいる…」



●神仏の導き手達が見たもの
「……不思議な村ですわね。晴れ晴れとした方がいる一方で、眉間にしわを寄せ、ため息をつく方もいる……」
 修行の身の僧侶として潜入している千手院・ソワカ(破戒僧ガバ勢・f00994)は、村を一通り見回して、そういう感想を零した。実際その通りなのだ。村の違和が其処に存在している。
 かたや晴れ晴れとした表情で労働などに精を出す村人がいれば、かたやその様子を見て更に表情を曇らせている者もいる。そんな村人に『もし苦しいことがあれば、てんしさまに会いに行くと良い』と、晴れ晴れとした表情の村人が言うのだ。その言葉を聞いて更に取り乱す村人も居れば、考え込む村人もいる。まるで、新興の教えが染み渡ろうとする光景を目の当たりにしているかのようだ。
(苦しみの輪廻から解脱する為、と私の旅の目的は申しましたが……これでは、苦しみが更に増しているのではありませんの?この状況を作り出した邪悪なオブリビオンには、仏罰を与えねばなりませんの……!)

 ソワカが村人達に村の事を訪ねて回っても、『てんしさま』を信じる者はこの村にどんなことがあろうとも、『てんしさま』がいらっしゃるから大丈夫だ、と語る。逆に、信じない者達は『てんしさま』を信じる者達を気にして、口を閉ざしている。それ故に、表での聞き込みはあまり捗らなかった。
 その中で、式神・白雪童子(白拍子・f12020)は1つの提案をした。
「……村の人達と一緒に、ごはんを、食べません、か?」
「そうですわね。少しぐらいは気を紛らわせてくれるかもしれませんわ」
 式神の提案には、最初村の人々も戸惑っていたが、
「親しい人と共に食べるご飯は、おいしいです、よ。そして、いっぱいお話、するんです。苦楽を共にしてきた人同士、互いのことを共感し合えます。悲しかったことも、時間が癒してあと思い出話にすることも、できます。それは、『忘れて』はいけないもの…だと、僕は思います。」
 そう告げた彼に同意してくれたのは、暗い顔をした人々だった。『てんしさま』を信じる人々は何故か最初から好意的であったために、そうと決まったらば話は異常に早かった。二人の主導でご飯を皆で食べることになった村人達。そんな最中に、密やかな会話が行われていた。
「おかあさん……この人達なら」
「……そうかも、知れないわね」
 共にご飯を食べている村人達の中で、二人の側に寄ってくる母親が居た。
「すみません、お礼がしたいので……後で、私共の家に来て頂けませんか」
 その目は、本当の希望を見つけたような眼差しを、していた。

 二人の猟兵を招いた親子は、意を決したように語り出した。
「……ごく、最近の事なのです。村の外れへ向かった人が、穏やかな顔になって帰ってきたんです。『てんしさま』に救って貰った、と言って」
「でも……悩みを解決して貰ったようには、なにも見えなかったの」
 その言葉にはて?となる二人の猟兵。穏やかな顔になったのだから、悩みを解決したのだろうと、普通は思えるだろう。だが、この親子は『そうではない』と判断しているらしい。
「それは、どう、いう……?」
「『忘れているんです』。……この村は様々な苦しみとも向き合いながらも、私達は懸命に生きてきました。ですが……そういった大事な約束や、一緒に頑張ろうという約束さえも『忘れて』帰ってくるんです。そんな彼らは私達には別人に見えました」
「悩みも約束すらも忘れた人が、同じ人だとは思えないということですわね?」
 グリモア猟兵が事前に語っていたこととはいえ、明確に『人が変わったように』なって帰ってくるのだという。子供が言うには、どんなに悩んでいても、以前とは比べ物にならない位晴れやかな顔をしているのだと。
「……怖いの。『てんしさま』は、救ってくれている訳じゃないって思って」
「ですが、彼らは疑っていないのです。一片の曇もなく。信じ切っているんです。……私達よりも、その『てんしさま』の事を」

「助けて、くれませんか。『てんしさま』は天使でもなんでもない気がするのです。この村を、もっと別のおぞましいものに変えようとしているんじゃないかって、思うんです……」
 母親は、子供は救いを求めた。『てんしさま』でもなく、村へやってきた二人の旅人に。
「……私達が信ずるものは『てんしさま』でもなく、別の神や御仏ですわ」
「『てんしさま』もまた、心の隙間に入り込む術を持っているので、しょう。私で良ければ、お力になりま、しょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オーキ・ベルヴァン
ヴァンパイアの支配下にある、今のダークセイヴァーに救いなんてある訳ないじゃん?
まあ、オレとカシムで皆をかどわかしてる……で、いいんだっけ?
そいつの正体を暴いてやるぜ!

とりあえず、情報収集だな。
俺はヴァンパイアに焼け出されて命からがら一人生き延びて逃げてきた可哀想な子供って設定で(実際そうだけどな!)同情誘って、村に潜入する。
カシムは怪力で引きずって行くけど、ボロボロでたどり着いた感じな!

とりあえず、てんしさまに救ってもらった奴に、オレもてんしさまに救ってもらえるかな?って聞いてみる。
こんな辛い世界いやだから……ってな。

住人外に当たって攻撃行動に移られそうだったら絶望の福音で回避後カシムで反撃!


ミカゲ・フユ
てんしさま……
そんな存在がいるなら僕だって縋りたいです
でも僕はそんなもの、いないって知ってる

『彼女の福音』は常に発動
ハルお姉ちゃんと村を回って調査

旅の聖職者見習い、その修行の一環と称して
お困り事があれば力になります、と出会う人々に告げ、真摯に話を聞く
悩みがない人、つまり件の人々には微笑み「素晴らしい事です」と肯定
敢えてそれ以上深入りせず、疑念を持つ村人さんにだけ密かに聞き込み

人が変わる前、その人は出かけなかったか
どの方角に向かったか分かれば聞いておきます

魂が操られているのか、もう既に別の何かなのか
隣人が愛すべき者ではなくなっていたと考えたら、僕も怖くなる
それでも、前に進まなきゃ。ね、お姉ちゃん



●剥がれ落ちる『救い』
 オーキ・ベルヴァン(樫の木と踊る・f06056)は、村の中では比較的同情を得ながらも、潜入することに成功していた。彼の実経歴を元にした『設定』を語ることで、『てんしさま』を信じている人々が主に匿う事に積極的だったからだ。
(ヴァンパイアの支配下にある、今のダークセイヴァーに救いなんてある訳ないじゃん?まあ、オレとカシムで皆をかどわかしてる……で、いいんだっけ?そいつの正体を暴いてやるぜ!)
 と、内心は思いっきり『てんしさま』の正体を暴く気満々なのだが、それに気づいている村人は今の所居なさそうだった。
 そんな最中に旅の聖職者見習いとして、ミカゲ・フユ(かげろう・f09424)は姉であるハルの霊と共にやってきていた。彼は修行の一環と称しながらも、村の人々の困りごとを解決する手助けをして回っていた。そうしてやってきた少年聖職者のお蔭で、少しずつ困り事も解決されてきては居たものの、村のそのものの『困り事』はまだまだ解決には遠かった。

「『てんしさま』のお導きなんだろうな、君が来てから随分と村の困っている人も減っている気がするよ」
 フユの働きを『てんしさま』のお陰だと考える者も居たようで、悩みの無い村人は穏やかな微笑みを浮かべながら、声を掛けてくる。その話が気になった(ように見せかけた)オーキも近寄って話を催促する。
「そうね、まだ信じてくれてない人もいるの。……悩みを嘘みたいに晴らして帰ってきてくれた彼が言ってるのに、不安がる人も多くて」
 声を掛けてきた青年の彼女だろうか、傍らの女性も『てんしさま』の事を信ずるような言葉を発している。
「悩みなく生きることが一番大事なのに、どうして皆怖がるんだろうな?」
「……そうですね、それは素晴らしいことです」
「……オレもてんしさまに救ってもらえるかな?」
 肯定はするものの、それ以上の言及を避けたフユの代わりに、横で話を聞いていたオーキが、不安(実際はそうではないのだが)を口にする。
「そうね、きっと救って貰えるわ。『てんしさま』は平等だって言っていたもの」
 樫の木の人形を連れながらも、ボロボロの身なりでやってきた少年は、救われるべき存在であろう、と考えているのか、女性は慈しむようにオーキに答えた。
 一方で、フユは顔には出さないものの女性の言葉には複雑な気持ちでいた。
(そんな存在がいるなら僕だって縋りたいです……でも僕はそんなもの、いないって知ってる)

 それ以上の深入りはオーキの方に任せ、にこりと柔和な笑みを浮かべたフユは他の村人の方へ向かっていった。丁度良い話の切り口も見つかったので、別の村人にこっそりと話を聞いてみる。幾分か心を開き始めているのか、以前よりは話してくれるようにはなってきていた。
「……彼処の女性の彼氏さん、ですが、ああなる前に、何方かに行っていたのですか?」
「村の外れだよ。教会があるとか言ってたけれど、俺達は全く使ってないんだ。なにせ長い間牧師様もいらっしゃらないからな」
「村の外れの教会……ですか」
「確かに教会に『てんしさま』が現れたってんならすがりたくもなるだろーが、殆ど手付かずと言っても良い教会だ。神様の加護が残っている気はしないね」
「分かりました。……有難うございます」
 村の外れの教会という情報を得て、フユは再びオーキの方に目を向けた。
(こっそりと、追いかけた方がいいかもしれませんね。裏付けにもなりますし)

 件の会話の後に、オーキは女性に、案内をして貰う約束を取り付けていた。女性は直接向かったことは無いらしく、彼にも来て貰おうと、二人で待っている所だ。
「『てんしさま』はお姉さんの彼氏さんの事を救ってくれたんだよな?」
「ええ、それまでは色々思い詰めてたんだけれど、元気になってくれて良かったわ」
 だが、肝心の青年は一向に来ない。女性も不安になり始める。
「けれど、遅いわね……私は直接行ったことが無いから、行ったことのある彼に来て貰おうと思ったのに」
 その瞬間、オーキには視えた。薪割りの鉈を手に持ち、二人の背後から振り翳そうとする青年の姿が。咄嗟に判断し、女性を庇うように回避するオーキ。案内をしようとしてた女性が愛する者の突然の凶手に驚愕の声をあげる。
「ど、どうしてオーキ君を狙うの!?」
「『てんしさま』の救いを、邪魔する子供は、いらないからだ」
 表情は村で見たものとは違う。無機質で、感情のない、機械のような眼差し。本当に『別人』のようだった。

 その叫びに気づいてか、後を追っていたフユとハルが動いた。
「ハルお姉ちゃん、二人を護って!!!」
「オレ達を狙うなら……容赦はしねーぜ!」
 カシムを繰り、反撃に以降するオーキに加勢するように、ハルの霊が二人の下へ飛んで行った。反撃により、オーキと女性の身は護られた。だが……
「な、なにが……起きているの!?」
 護り切った筈の女性から驚愕の声が響く。その原因をフユは見ていた。
「い、一体何が起きたんだ!?」
 女性を庇うように立ち回っていたオーキは半ば状況が呑み込めずに、フユへ問いかける。
「……僕達が、反撃したら、その彼氏さんが、砕けて『消えた』んです」
「それじゃあ、オレ達がさっきまで喋ってた彼氏さんって……!」
 二人は、顔を見合わせる。
「「に、にせ……もの……?」」
 その言葉に青ざめた女性が、その場に崩れ落ちた。
「う、嘘……彼は、本物の彼は……どこに、行ってしまったの……!?」

 村の外れの教会に向かった者が、『偽物』と入れ替わって帰ってきている。
『てんしさま』の救いの化けの皮が、少しずつ、剥がれて来ていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

星群・ヒカル
ここがダークセイヴァー世界か、陰気なとこだなぁ

行動:SPD
村を見て回りつつ他の猟兵と情報交換
偽物と入れ替わってるだって?なるほど、それが『真実』か。
じゃあ次にやるべきは教会の場所を探すことだなッ!

「地形の利用」で崖などの高い所から
超宇宙望遠鏡と神経融合(コードが背中に刺さって割と痛い)し手に入れた「視力」で村中を観察
晴れやかな顔の人が村外れから出てきたり、暗い顔の人が村外れに向かっていたら宇宙バイク「銀翼号」で向かう
ただし村人にはバレないように音は静かに、大回りして行くぞ

着いたら銀翼号は茂みに隠し、その人に何をしているのか「コミュ力」で話しかけてみよう
場合によっちゃ「逃げ足」で逃げるぞッ



●『救い』の真実
 先行していた猟兵達から情報を得た星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)は、高台より、天体望遠鏡「ガントバス」と神経接続をし、村の様子を俯瞰していた。
「偽物と入れ替わってるだって?なるほど、それが『真実』か。……じゃあ次にやるべきは教会の場所を探すことだなッ!」
 と、意気込んで見たものの、村の人の流れの中に怪しい所は今の所無かった。
「痛ッ……うーん、やっぱり思い詰めるような悩みを抱えてるような奴も、教会から戻ってくるような奴も早々いないのか………ん?」
 神経接続の痛みを堪えつつも、根気良く様子を見ていたヒカルは、重たい足取りで、とある方向へ向かっていく青年を捉えた。その方向を見れば、林に埋もれるように、屋根に十字架の立っている場所が見える。
「成る程、アレが件の教会だなッ……後をつけて行こうか」

 若干遠回りをしつつ、青年にバレないように教会への道を往くヒカル。特に問題もなく、教会の近辺に到着し、茂みの中に『銀翼号』を隠すことにも成功したのだが……
「ひいいっ!?」
 『銀翼号』を隠したばかりのヒカルは追いかけていた青年の悲鳴を聞いた。それに声を掛けようと近寄ろうとすると、強烈な死臭。思わずに鼻を塞ぎたくなったが、近寄ると、青年が腰を抜かし、教会の裏手で動けなくなっていたのだ。
 そこは古びた教会にも関わらず、その朽ちながらも清浄さを残す外観と不釣り合いな死臭がするのだ。そして、ヒカルが腰を抜かしている青年の見ている物の方を見れば……

 ――供養されず、積み重なっている死体の山。真新しいものもあれば、腐敗が始まっているものもあるが……それらの人相から、ヒカルと青年は1つの判断を下した。
「こ、こいつら皆『教会』に向かったって言われてた奴らじゃ……!?」
「ど、どうして。皆『てんしさま』に救って貰ったんじゃない のか……?」
 腰を抜かし、青筋を浮かべたままの青年。其処にぞろぞろと足音が向かってくる。ヒカルの【視力】はそれを捉えた。……住民の『偽物』達の群れがこっちに向かってきている!!!
「「「『てんしさま』の『救い』を、邪魔をするものは――」」」
「まずい、捕まってくれ!!!このままだとおめぇも『てんしさま』に殺されるッ!!」
「はっ、はいい!!!」

 青年を無理矢理同乗させ、『銀翼号』が駆けていく。『偽物』達を撒く為に大回りをすることを再び要したが、二人は無事に村まで逃げ延びる事が出来た。その二人の出迎える者達が居た。『本物』の村人達だ!!!そのうち、村長らしき人物が血相を変えて二人に駆け寄ると、こう告げたのである。
「よ、よく生きて帰って来られました!!!やはり『てんしさま』の救いなど存在しなかったのですね!?」
「ああ、教会の近くに『救って』貰った筈の連中の死体の山があった!」
「やはりそうでしたか、此方でもおかしな事が起きたばかりで……!!一部の住民が一斉に教会に向けて刃物を携えながら向かっていったのですよ……!」
 自らが視た光景との符号に震え上がるヒカル。
「……俺達は、そいつらに、殺されそうに、なったんだ」
 村人達の疑念はその言葉で確信に変わった。彼を失ったのだと知った女性が猟兵達に叫ぶ。
「お願いです!!!助けてください!!!こんな『救い』では誰も報われません!!」
 お願い、彼を、救いを求めた村の皆を、本当の意味で救って、と。

 女性を始めとした村人の慟哭が、村に響く時、猟兵達の決意は固まった。
 ……『てんしさま』を、討ち滅ぼさねば、と。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●救われなかった魂の成れの果てに
 ――猟兵達が、教会への道を進んでいく。
 村人達は真実を知り、正気に戻った為、これ以上の被害は『そのまま』なら恐らく出ないだろう。だが、『てんしさま』が他の行動に移れば被害が再び広がるだろうということは想像に難くなかった。
 そんな道行きで、猟兵達は、『声』を聞いた。

「ああ、たすけて」
「くるしい」
「『てんしさま』は『すくってくれなかった』」

 ――怨嗟の声、苦悶の声が聞こえる。これが、『救われた』本当の村人達の魂の末路だというのか!?
 救いを求め、あるいは恨みの感情を湛え、猟兵達に殺到する『残影』達。
 こうなってしまっては、猟兵達が直接弔ってやるしかない……!
星群・ヒカル
こんな結末のために生きてたわけじゃなかろーに……
なんでこんなことにならなきゃいけなかったんだろうな?

●行動:SPD
周りの人とはちょっと距離をとっておいた上で、敵と目を合わせる
敵は「憐憫」の感情を持つおれに手を伸ばし殺到してくることだろう
それでいい、そのままもっとおれの近くに来いッ
ギリギリまで引き寄せて何人かと「手をつな」ごう
そしたら超宇宙・真眼光波動で周囲をまとめて消しとばす!
……喧嘩を売ってきてるわけでもないヒトに、おれは拳は使わねぇよ

てめーらの嘆き悲しみ、しかと受け取ったッ!
今度生まれてくる時は、この超宇宙番長ことおれの舎弟になりに来い。一生愉快に楽しく暮らさせてやる。わかったな!?


オーキ・ベルヴァン
……救いなんて無いんだよ。
……オレの村の皆だって、救われなかったんだ。
だから、終わらせてやる!
救いじゃねえ!
その苦しみだけ、オレが奪ってやる!

行くぞ!
カシム!
カシムを前衛に繰り出し、俺は真の姿開放!
黒の騎士団のキングとして、ゲームデバイスで黒のチェス駒から15体の黒の戦士達を召喚。
お前等、全力で行っけー!
『てんしさまは』必ず見てる!
オレ達の……我が軍の戦力を見せ付けてやれ!

死人の攻撃なんて面倒臭いだけなんだよ!
てんしさまから貰った力は、自分達で受けてろ!
(攻撃を受ける前にゆっくり息を吐く)…カシム!
全部撥ね返せ!【オペラツィオン・マカブル使用】

許さねえから……絶対に許さねえからな、てんしさま!



●救いは無いのだから
「こんな結末のために生きてたわけじゃなかろーに……」
 星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)は、少し距離を取りつつも思い抱いた感情を吐露する。
「なんでこんなことにならなきゃいけなかったんだろうな?」
 それは【憐憫】の感情。抱くな、思うな、というのはとても難しい事だ。故に番長へ、肉塊より傷だらけの手が、伸びてきている。だが彼は目を逸らさなかった。その手を、絡みついてくる手を『受け入れた』。手を伸ばした。
(それでいい、そのままもっとおれの近くに来いッ……)
 都合のいい対象が、其処に居るのだから寄せられていく『残影』達。それこそが、狙いであった。無論、殴る為でもなんでもない。
「……喧嘩を売ってきてるわけでもないヒトに、おれは拳は使わねぇよ」
 両手は、塞がれている。受け入れたのだから。だが、宇宙番長には……

「その目に焼き付けろ。これが……超宇宙番長の輝きだッ!」
 魔眼が、あった。一瞬にして魔力の輝きが肉塊ごと『残影』を焼き払う。
 光の奔流と共に、絡みついていた手も、塵に還っていく。それを見てもなお、抱いた感情を収めることは、彼には出来なかった。
「……てめーらの嘆き悲しみ、しかと受け取ったッ!」

「……救いなんて無いんだよ」
 オーキ・ベルヴァン(樫の木と踊る・f06056)はその成れの果て達を見て、自らの過去を思い返す。ヴァンパイアに襲われ、村ごと全ての知り合いを喪った少年だからこそ、知っている。
「……オレの村の皆だって、救われなかったんだ」
 だから、
「終わらせてやる!救いじゃねえ!その苦しみだけ、オレが奪ってやる!」
 そして、其処に現れるのは一人の少年ではない。黒の王。15の駒を統べる、キング。そして相棒を繰り、立ち向かう。
「行くぞ!カシム!」
 黒きキングとなったオーキは更に手元のチェス盤より、カシムに加勢させるように黒のチェス駒達を展開する。
「全力で行っけー!『てんしさまは』必ず見てるんだ!オレ達の……我が軍の戦力を見せ付けてやれ!」

 黒きチェス駒の騎士団が展開され、『残影』の殺到を押し止める。それでも飛来する災厄を見て、黒の王は苦虫を噛み潰す。
「死人の攻撃なんて面倒臭いだけなんだよ……『てんしさま』から貰った力は、自分達で受けてろ!」
 実際は貰った訳でもなく、落とされたと、言うべきなのだが……殺到の寸前、ゆっくりと、小さな人形遣いは息を吐き出す。
「……カシム!全部撥ね返せ!」
 樫の木の人形が、主の受けた災厄を『肩代わり』し、『凝縮』し、『排出』する。それが、人形遣いの秘技……【オペラツィオン・マカブル】。

 星写しの魔眼の閃光と、災厄を反射する秘技により、討ち滅ぼされる『残影』達。まだ全部とは言えないが、二人の働きにより、だいぶ数を減らすことが出来た。その様子を見ながらも、二人の年若い猟兵は叫ぶ。
「今度生まれてくる時は、この超宇宙番長ことおれの舎弟になりに来い。一生愉快に楽しく暮らさせてやる。わかったな!?」
 ヒカルの言葉は、其処にはもう居ない者達に向けられ、
「許さねえから……絶対に許さねえからな、『てんしさま』!」
 オーキの言葉は、その先に居る元凶への向けられていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

千手院・ソワカ
死してなお、苦しみの中でさ迷っているとは。なんと痛ましい…。
せめて速やかに解放して差し上げましょう。
「この者たちの来世に幸あらんことを、いざ南無三!!」

なかなか厄介そうな攻撃が揃っていそうですわね。
他の猟兵がダメージを負う事のないように、『人形遊戯の波紋疾走』で『残影』達が放つユーベルコードの打ち消しを狙いますわ。

攻性サハスラブジャの千手で、余計な苦しみを与えぬよう一撃で済ませたいですわね。
「『救い』とは誰かから与えてもらうものではなく、自ら悟り、その手で掴むもの…。その事をどうぞ覚えて彼岸へ旅立って下さいまし」


ミカゲ・フユ
……死は救い
こんな世界の中でなら確かにそうかもしれません
でも、これは違う。こんなの救いじゃないよね、お姉ちゃん

『春彩の秘蹟』でハルお姉ちゃんに僕の法力を注いで
手にした魔術杖に祈りを捧げてから聖属性魔法を紡ぎます
僕の魔法とお姉ちゃんの聖なる光を合わせて連続攻撃

僕たちもまた終わらせることしか出来ないけれど
残影をこのままにはしておけません

あなたたちの魂は僕がちゃんと弔います
この杖の十字架もお姉ちゃんが放つ十字も総てを赦すから
てんしさまなんて、僕は認めない

怨恨の炎も嘆きの声も潰えた希望も全部受け止めて
受けた痛みがこの世界に生きる人々の痛みなのだと自分を律して
必ず、止めてみせます。これ以上の悲劇を――



●救うための光
「死してなお、苦しみの中でさ迷っているとは。なんと痛ましい…」
千手院・ソワカ(破戒僧ガバ勢・f00994)は『残影』達の現状に心を痛めながらも、少しずつ前へ向かっていった。苦しみの輪廻から解き放たれる為の旅だとと、村に入る時の理由としても言ったことではあるが、彼女自身、今の彼らはその輪廻に囚われているようにしか見えなかった。その輪廻より、自らが救い上げねばならぬ、と。
「……せめて速やかに解放して差し上げましょう」
 素早く組まれる祈りの印に呼応し、僧侶の後背に備わりし清き千手の御手が『残影』達を打ち据えていく。苦しむ暇も無く、浄化されていく『残影』達。それでもなお、全てを救う為に、彼女は『残影』達と向き合い続ける。
「この者たちの来世に幸あらんことを、いざ南無三!!」

「……死は救い。こんな世界の中でなら確かにそうかもしれません」
 ミカゲ・フユ(かげろう・f09424)は、『残影』達の置かれた状況を反芻する。このように絶望にまみれた世界において、死は救いに近いのかもしれない。
「……でも、これは」
 『残影』の群れが抱いた感情は全て、『救い』とは程遠い物。どちらかと言えば『怨霊』の抱く感情だ。その様子に首を振り、姉へ眼差しを向ける。
「……違う。こんなの救いじゃないよね、お姉ちゃん」
 言葉を掛けると同時に、ハルの霊に更なる法力を注ぎ込み、清き御霊としての力を増幅させていく。無論、ハルは只の霊ではなく、『聖職者』の霊だ。聖なる光や赦しの十字が紡がれ、『残影』達を浄化していく。それに合わせるように、フユも魔法を敵陣へ撃ち込んでいく。
「僕たちもまた終わらせることしか出来ないけれど……残影をこのままにはしておけません」

(中々厄介な攻撃が揃っています……マトモに撃ち合えば損耗は避けられないですわ)
 怨恨の焔も、悲劇の絶叫も、策なしに撃ち合えば消耗を強いられると、前線にて乱戦を繰り広げる機械仕掛けの僧侶は判断を下した。故に彼女は、後方にて法力を紬ぐ
「御仏の加護を、今此処にお見せ致しますわ!!」
 【人形遊戯の波紋疾走】……法力が収束し、悲劇の絶叫を中和する形に……『救世の音色』と変じる!!
「そのユーベルコード…見切りましたのッ!! 今ですわ!!」
 ソワカの叫びに、自らの法力が高まった瞬間を合わせ、フユとハルの霊は解き放った。
「――ハルお姉ちゃん、今だよ!」
 単なる死霊ではなく、聖職者の霊であるハルと、死霊術師でありながら、聖職者としての清き思いを忘れぬフユ。二人の聖なる光が『残霊』達を浄化していく。

「あなたたちの魂は僕がちゃんと弔います。この杖の十字架もお姉ちゃんが放つ十字も総てを赦すから……だから」
 前を向いて、フユはその方向に居るであろう者に、強い意志を向けた。
「……『てんしさま』なんて、僕は認めない。必ず、止めてみせます。これ以上の悲劇を――」
 聖光により浄化されていく様子を見、信ずるものは違えど、ソワカも其処に居た者達へ言葉を向けた。
「『救い』とは誰かから与えてもらうものではなく、自ら悟り、その手で掴むもの…。その事をどうぞ覚えて彼岸へ旅立って下さいまし」

 『残霊』達も残りわずかとなっていったが、彼らの思いは、浄化された者達に、届いたのだろうか……

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アンバー・バルヴェニー
「マリアドール・シュシュ、素敵なお名前ね。マリアと呼んでよろしくて? わたくしはアンバー。さぁ、哀しき調べをわたくしたちの音で変えましょう」

残影達を前に躊躇してしまう優しいマリアの手に自分の手をそっと重ねて励ますわ。

「恐れないで。わたくしたちの音を彼らの為に届け、苦しみから解き放ちましょう。大丈夫、二人なら出来ますわ」

マリアの鎮魂曲に合わせて鎮魂歌を歌い、エレメンタルファンタジアを発動。
恨みも絶望も悲しみも。
全てを溶かし、安らかな眠りを彼らに与える甘やかな声で紡ぐ鎮魂曲。
慈しみの雨の如く、光よ降り注げ。
願わくば彼らの魂が真に救われんことを。


マリアドール・シュシュ
(つらい、かなしい、くるしい。それはマリアの世界には在り得ないもの。忘れてしまうから)
「心を巣食われてしまったのね…『てんしさま』が為したことをマリアは赦せない。
悲劇はこれが最後。光(すくい)は猟兵達がいる限り消えないんですのよ。
…ええ、ありがとう可愛らしい仔猫さん。もう平気なのだわ。
せめて安らかに眠れるように」

偶然出会った【アンバー・バルヴェニー】と連携
暗い表情で華水晶を腰に掲げる
村人の残滓を感じ攻撃を一度躊躇うも、
アンバーに励まされこくりと頷いて戦闘態勢

【透白色の奏】使用
敵を目に焼き付ける
攻撃が届く範囲で距離取る
アンバーの歌に寄添う様に竪琴を演奏
鎮魂歌に近い綺麗な音色
無差別攻撃は音色で相殺



●光の向こう、鎮魂の雨
 それでも尚、その場に残っている『残影』達を見遣り、マリアドール・シュシュ(無邪気な華水晶・f03102)は自らの大好きな世界と対極にある彼らの境遇に、苦い顔をする。
(つらい、かなしい、くるしい。それはマリアの世界には在り得ないもの。忘れてしまうから)
 辛いことも、悲しいことも、苦しいことも。彼女にとっては揮発性のように消えてしまう筈だった。けれど、彼らは彼女が今まで目を背けてきた対岸の世界だ。だからこそ『救い』を求めたのだが――
「心を巣食われてしまったのね…『てんしさま』が為したことをマリアは赦せない」
 唇をきゅっと、締め。自らとの対岸の世界に眼差しを向ける。
「……けれど、大丈夫。悲劇はこれが最後。光(すくい)は猟兵達がいる限り消えないんですのよ」
 自らを鼓舞するように、自分なりに覚悟を決めたつもりでは居たが。華水晶を腰に提げ鎮魂歌を紡ごうとするも、その表情は暗く。マリアはその『悲劇』を直視することが出来ないでいた。
 村人達の成れの果て、とはいえ彼処に居るのは紛れもなく苦しんでいた村人達なのだ。華水晶の少女はその事実から目を背けてしまう。
(彼らは、まだ彼処にいる。私が為すべきことはこんなことでは――)

 アンバー・バルヴェニー(歌う琥珀嬢・f01030)は戦場に置いて思い悩むその少女の姿が目に入った。自身も唄い手である身だからなのか、そこに立つ姿を理解できた。その詩は明るく歌う物。紡がれるべき『だった』もの。けれど、対極にある陰鬱な末路を直視出来ないでいるのだと。彼女の詩は、彼らの救いになるだろうとも、感じて。
 このままでは彼女はその躊躇から彼らに『喰われて』しまうだろうと。戦場においては明るく、この世界に置いてはまるで太陽のようないつものお転婆な表情で声を掛ける。
「素敵なお顔なのに、そんなに暗い表情をしていてはいけませんわ。貴方のお名前を伺っても?」
「マリアは……わたしはマリアドール・シュシュ」
 暗い表情をした華水晶の少女の輝きを取り戻す為、偶然の出会いとはいえ鼓舞するように、声を掛けていく。
「マリアドール・シュシュ……素敵なお名前ね!マリアと呼んでよろしくて?」
「え、ええ……」
「わたくしはアンバー。さぁ、哀しき調べをわたくしたちの音で変えましょう」
  躊躇を感じ取ったアンバーが、本来は無邪気であろう少女に向き直り、二人で前を向く為にその手を取る。繊細な水晶の身体の手に優しく仔猫の手が添えられる。その言葉は陽気で明るかった今までの言葉とは打って変わって、真摯で、少女の目を真っ直ぐに見つめるもの。
「……恐れないで。わたくしたちの音を彼らの為に届け、苦しみから解き放ちましょう。大丈夫、二人なら出来ますわ」
 その言葉にはっとするかのように『残影』達に向き直るマリアドール。彼らは苦しんでいるのだ。彼らにとって『てんしさま』の救いは偽りでしか無かったから。
「……ええ、ありがとう可愛らしい仔猫さん。もう平気なのだわ」
 改めて、彼らと対峙する。眼差しは逸らさずに。彼らの身に起きたことから目を背けずに。
「――せめて安らかに眠れるように」
「――慈しみの雨の如く、光よ降り注げ」
 恨みも絶望も悲しみも。全てを溶かし、安らかな眠りを。
 紡がれた詩に共鳴するかのように、鎮魂の驟雨が降り注ぐ。

 二人は見た。最期にぎこちなくではあるが。微笑んで消えていく彼らの姿を。
 この世界において『死』が『救い』だとするのならば……彼らは漸く、『救われた』と、言うべきだろう。
 光の雨が止んだ後、マリアは教会のある方へ向いて呟いた。
「……『てんしさま』が為したことをマリアは赦さない。だから、彼らのような悲劇は、猟兵(わたし)達という光(すくい)が、終わらせます」

 ――教会まで後少し。
 気がかりなのはヒカル達を襲撃しようとした『偽物』達が何処へ消えたか、ということだけだが……
 それは、程なく解ることとなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『救済の代行者・プレアグレイス』

POW   :    黒死天使
【漆黒の翼】に覚醒して【黒死天使】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    鏡像の魔剣・反射
対象のユーベルコードを防御すると、それを【魔剣の刃に映しとり】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    鏡像の魔剣・投影
【魔剣の刃に姿が映った対象の偽物】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●その救済は誰が為か
 ――教会は異様な光景であった。
 神聖さは失われていないが、『てんしさま』によって『救われた』のであろう者達の返り血がこびりつき、聖なる場には似つかわしくない赤黒い染みが所々出来上がっていた。その場所にあって更に異様だったのは……
 住民達の『偽物』を伴い、白き羽根に喪服の如き黒衣を纏った女だ。彼女は猟兵達を見ると、いつものように。誰かを『救う』時のように、声を掛ける。
「お待ちしておりました。貴方方もお救いしましょう。ですが――」
 『てんしさま』の手元の魔剣が煌めく。鏡像の魔剣に写し取られた猟兵達の『偽物』が、群れに加わった。
 猟兵達は感じ取る。苦しむものを『救い(ころし)』、その後の人生は『偽物』達に紡がせるのが、『てんしさま』の救いの正体であったのだ、と。

「「てんしさまの」」
「「『救い』を邪魔する者は」」
 自らが『救い』、自らが創造した彼らの『偽物』を傍らに侍らせ。それでも、平静と柔和な微笑みを浮かべて猟兵達へその『てんしさま』――救済の代行者・プレアグレイスは言った。
「私の、『救い』を拒むのは……貴方達ですか?」
千手院・ソワカ
【真の姿】を解放:輝くエネルギーラインが体中に走った千手観音風の姿。身長3mを超える仏罰形態に変わる。ユーベルコード『逆仏契』を使い更に後光も背負う。
「御仏が瞬きで目を閉じている間に終わらせますの…。逆仏契ッ!!!」

救済の代行者…自分を悪だと認識していない、最も唾棄すべき邪悪ですわ。
このオブリビオンは、絶対に取り逃がせませんの。仏の顔も三度まで、でしてよ?。

「説破!! あなたの行為は『救い』ではない、人々の弱っている心に付け込んだ、ただの『殺人』ですの!」

自らの偽物は厄介ですが…攻撃回数重視の『我は号する済度の一撃』で正々堂々物理的に突破してやりますわー!



●交錯する『救い』手
 プレアグレイスの言葉はまず、道は違えど『救い』の道を歩む者……千手院・ソワカ(破戒僧ガバ勢・f00994)に向けられた。
「――どうして、貴方は私の『救い』を否定するのですか?」
 その笑みは敵対者であろうとも、崩れない。淡々とその女は続ける。
「この絶望に溢れた世界には、光明などありません」
 確かに、ヴァンパイアを始めとしたオブリビオンの跋扈により、この世界の人々は絶望的な暮らしを続けている。それは猟兵達も痛いほど理解している。
「ですから……」
「その光明が訪れるまでの長い、途方もない苦しみを、一瞬で『終わらせ』た方が、『救われる』と思いませんか?」
 その慈母のような微笑みに、曇りは一点もない。故に、このオブリビオンは『救いようがない』。
「――説破ッ!!」
 見開かれた眼差しは、仏の道を歩むものだからこそ。然しながら御仏も苦言を呈す程の『怒り』に満ち溢れていて。
「あなたの行為は『救い』ではない……人々の弱っている心に付け込んだ、ただの『殺人』ですの!」

「そうですか……でしたら」
 黒衣の天使の横より翻るは自らの映し身(にせもの)。
「――示してあげて下さい。本当の『救い』を」
 鏡のように相対し、鏡のように撃ち合おうとした。だが――
 本物の彼女には、偽物には無いものがある。
「御仏が瞬きで目を閉じている間に終わらせますの…。逆仏契ッ!!!」
 顕現するは機械仕掛けの観音。神無き世界において、この世界の住人が見れば『神』と形容するかもしれない、本来ならば慈悲深き御姿。しかし今は、仏罰を与えんが為にその法力が振るわれている。
 1つの手を振り翳せば『偽り』は鏡の如く砕け、もう1つの手を振り翳せば殺到しようとする『偽物』が塵芥へと還る。
「――仏の顔も三度まで、でしてよ?」
 慈悲無き仏罰の乱撃にて、『偽物』を打ち払い、突き進んでいくソワカ。絶対に取り逃してはならぬ邪悪を視界に収め、そのまま天使の如き威容の女に御仏の手が迫るが……
「貴方は、救えません。この世界から『放逐』致します」
 刹那、その羽根が漆黒に染まった。魔剣でその手を受け、攻撃を減衰する。格好として鍔迫り合いのようにはなっているが、二人の視線は真っ直ぐに交錯する。
「……それが貴方の『本性』という訳ですのね」
「いいえ、私の『死』は『救い』です。故に『本性』などではありません、最初から私は『救い』の導き手であることは隠していませんから」

 互いに弾かれ、距離を取り合う二人。
 こうして『死』という理不尽な『救い』を齎す天使との最終決戦の火蓋は切って落とされたのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

星群・ヒカル
ここまで来たら誰でも『視える』ぜ、てめーの正体が!
てめーは自分の主義主張を押し付けるに飽き足らず、自作自演でテッペンとってるように見せかけているだけだ
そんなハリボテのシャバい天下、おれ達がぶっ潰してやるッ!

●行動
先に手札を見せたのは悪手だったな、その剣がてめーの技の決め手だ

「銀翼号」に乗って教会を机とか椅子とかひきながら駆け回るぞ
真の姿に近づいたおれは蒼と銀の炎を纏って超加速
例えおれの偽物でも追いつけないはず!
エセ番長、じゃあなーッ。(舌を出して手を振り)

魔剣を掲げコピーしようとする瞬間が好機だ
超宇宙・強襲流星撃で魔剣のみを撃ち抜き、魔剣を弾き飛ばそう
あわよくば魔剣の鏡面をボコボコにしてやる!


ミカゲ・フユ
この光景に似たものを僕は知ってる
夥しい血、死の匂い……思い出すだけで苦しいです

けれど怯んでちゃいけない。そうですよね、お姉ちゃん
杖を掲げて『春彩の秘蹟』で僕の力をハルお姉ちゃんへ
一緒に聖なる光で攻撃をして貰いながら投影の敵を蹴散らします
攻撃を武器で受けながら立ち回り、攻撃の隙を窺います

邪悪すぎる偽の救いに胸が痛くなるけど
だからこそ、僕の中の闇も大きくなる
放つ力は『異端審問』
漆黒の十字矢と暗黒の断罪刃であなたを穿ちます

てんしさまなんて呼んであげません
あなたはただの、この世界にとっての異端だから
お姉ちゃん、合わせていくよ!

死者に祈るのは戦いが終わってからでいい
今はただ、この一撃に全力を込めて――!



●その『異端』を撃ち貫くもの
 星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)は燃えたぎる心の中でも冷静に判断を下していた。鍔迫り合いの後に再び投影にて『偽物』を補充し始めたプレアグレイスを見遣り、『銀翼号』のエンジンを唸らせる。
(先に手札を見せたのは悪手だったな、その剣がてめーの技の決め手だ)
 蒼と銀の焔を纏い始めた少年は、教会を半ば荒らすように駆け巡りながら『偽物』達と相対する。その中には当然彼自身の『偽物』も混じっているのだが……
「エセ番長、じゃあなーッ!」
 本物にあるものを『持ち合わせていない』のだから、あっという間にに置き去りにされ、プレアグレイスから引き離されていく。

 一方で、ミカゲ・フユ(かげろう・f09424)は、戦地と化した教会での光景を見て、かつての記憶を脳裏に過ぎらせていた。
(この光景に似たものを僕は知ってる。夥しい血、死の匂い……)
 骸の海からやってきた『災厄』が、全ての縁を押し流していったあの日。癒やしの力を捨て、姉を繋ぎ止める業に手を染める切掛となったこと。
(思い出すだけで苦しいです。けれど、)
 微笑む姉……ハルの霊の手がそっと、弟に添えられる。
「――けれど怯んでちゃいけない。そうですよね、お姉ちゃん」
 真っ直ぐに、目を逸らさずに。フユは真正面でバイクを狩り敵陣を駆け抜けていく少年に、声を掛けた。【春彩の秘蹟】によりハルの清き力が高まり、聖光が、殺到しようとする『偽り』を剥ぎ取っていく。
「僕達が援護します!ですから、大きな隙を作って下さい!!」
 その言葉にニカっと笑って返す星を駆ける番長。
「おう、おれと銀翼号に任せろッ!!」

 宇宙番長を自称するこの少年の狙いは、初めから天使の持つ『魔剣』であった。敵陣を陽動と加速、さらに聖者の姉弟の支援で護りを崩し……。その中で、神経融合の齎す痛みに耐えつつも得たその【視力】が、魔剣を捉え。
「超宇宙望遠鏡ガントバス、融ッ合!……『視えた』ぜ、てめぇの姿!」
 銀翼号のガトリングの銃口が得物を握る『手元』に向けられ――
「今更隠れようとしたってもう遅い、蜂の巣にしてやるよ!」
 流星の如き弾幕がプレアグレイスを襲った。『偽物』を盾に防御しようとするも、圧倒的な質量の弾幕の前に、補充すら間に合わず。ついに魔剣が手元から振り落とされた。
「今だッ!!」
 ヒカルが魔剣を弾き飛ばした瞬間、フユの聖なる力が闇という裁きへ傾けられる。
(死者に祈るのはこの戦いが終わってからでいい、だから――)
「世界の破滅を導く者に、異端なる存在に」
 得物を手元から失った黒死の天使に。『異端』に、裁きが下る。
(今はただ、この一撃に、全力を込めて――!)
「――裁きを!!」
「……あっ」
 プレアグレイスの呟きが一瞬だけ、聞こえた気がした。が、彼女が気づいた瞬間には防御する暇も与えられなかった。
 漆黒の十字矢で聖者の如く磔にされた偽りの『救い手』は、暗黒の断罪刃で斬り飛ばされ、深い傷を刻まれる。その様子を毅然とした態度で見つめる姉弟の聖者。
「『てんしさま』なんて、呼んであげません。あなたはただの……、この世界にとっての異端だから!!」

 吹き飛ばされながらも、ようやく得物を手元へと戻した彼女は息を荒らげながら猟兵達を見遣る。信じられないという眼差しで。
「どうして、拒むの、ですか……!?」
 その言葉に、そりゃあ当然だろという顔付きで番長が応える。
「てめーは自分の主義主張を押し付けるに飽き足らず、自作自演でテッペンとってるように見せかけているだけだ……」
 そして、そのまま彼は改めて真っ直ぐに見つめたまま宣言した。
「そんなハリボテのシャバい天下、おれ達がぶっ潰してやるッ!」
「……させません、させません。私の『救い』は、此処で、終わる訳には……!」
 偽りの救いが『堕ちる』時は、刻一刻と近づいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩花・涼
苦しみから解放されたいと願うのは悪い事じゃない。
だが、これは『救い』ではない。ただの下らない貴様の道楽だろう。

他の猟兵に気を取られている隙をついて、敵の死角から初手【スナイパー】黒鳥で撃ち抜きに行く。
当たっても当たらなくても、撃ったら即座に武器を持ち替えて【ダッシュ】で近づき接近戦を行う。
さて、次は貴様が『救い』を求める番なんじゃないか?
安心しろ、苦しみを終わらせてやる。
黒蝶の鎮魂歌を使い、黒華・改で【2回攻撃】と【生命力吸収】で敵の残った体力を削り切りに行く。
敵からの攻撃は黒爪・改で【武器受け】して防ぐ。
少しは騙されていた人達の気持ちがわかったか?


オーキ・ベルヴァン
お前、救えねーよ……。
許す気もねえから。
お前は只の利己主義の塊だよ。
そんな奴は、いっぱいいるけどさ……この世界にはな。

【絶望の福音】常時発動で、攻撃を避けることに専念。
お前の救いは俺には届かねえ……最初から救われてねえし、もう誰かに救ってもらおうとも思ってねえよ。

静かに真の姿第二段階。
(カシムの身体に融合し漆黒の大柄なキングになる)
我、漆黒の王にしてチェスの軍勢を敷く者也。
ポーンよ、雑兵の駆逐を。
ナイトよ、戦場を駆けよ。
ルークよ、傷付きし者の盾に。
ピショップよ、彼の者に審判を下せ。
クイーンよ我に我が剣を持て……。

……我が、首を刎ねて……終わりだ。

じゃあな、てんしさま……オレはお前が大っ嫌いだ。



●偽りの『救い』に、決別を
 その幕切れへの始まりは、1つの銃声から始まった。
 その銃声の主は、彩花・涼(黒蝶・f01922)。彼女は傭兵として、最初から戦場内で最も射撃に適した死角を確保し、この不意打ちを行える決定的な瞬間を、待ち続けていたのだ。それが、漸く、成就したのだ。
「苦しみから解放されたいと願うのは悪い事じゃない」
 一射を終えた涼が、平静と駆けた。
「……だが、これは『救い』ではない」
 射撃からそのままプレアグレイスの喉元を狙うかのように、即座に距離を詰め、残酷な『事実』を突きつける。
「――ただの下らない貴様の道楽だろう」

「違う、私は……私の『救い』は……!」
「何が違うんだ?それとも今更になって命乞いをするとも?」
 自らの死期を悟り、顔面を青ざめさせながらも、自らの行いを肯定し続ける者へ、涼は顔色一つ変えず、淡々と、死出への案内人として、振る舞う。
「さて、次は貴様が『救い』を求める番なんじゃないか?安心しろ」
「――苦しみを終わらせてやる」
 漆黒の蝶が、まるで死を告げるかの様に現れる。その死の影を振り払うかのように、魔剣の剣戟を重ねるプレアグレイス。だが、段々と、その生命は啜られていく。
 柔和な微笑みを湛え、天使のような眼差しをしていた、『救い手』は、最早そこには居なかった。

 オーキ・ベルヴァン(樫の木と踊る・f06056)はその中にあっても、抵抗を続けていく『てんしさま』と呼ばれていた女へ、侮蔑の眼差しを向けていた。
「お前、救えねーよ……許す気もねえから」
 その視線にまるで、縋ろうとするような眼差しを向けた哀れな救い手に、更にこの世界に生を受けた者だからこそ、事実を告げる。
「お前は只の利己主義の塊だよ。そんな奴は、いっぱいいるけどさ……この世界にはな」
 絶望に閉ざされた、地獄のような世界にあって、そのような人間は数え切れない程いるのだ。彼は知っている。全部、見てきたから。
 払いのけるように、天使の『救い』が、尽く回避されていく。
「お前の救いは俺には届かねえ……最初から救われてねえからな」
 その言葉より、黒き王として場にあったオーキは更なる変容を迎える。相棒であるカシムと一体となり――
 巨大なる漆黒のキングが、その場に現れた。

 【絶望の福音】にて、盤面を読み切るかのように、黒の王は戦場(ゲーム)を支配していく。
「ポーンよ、雑兵の駆逐を」
 兵士による『偽物』の露払い。
「ナイトよ、戦場を駆けよ」
 進路を確保するかのような騎士の突撃。
「ルークよ、傷付きし者の盾に」
 先んじて戦っていた者たちへは戦車兵が護りに加勢する。
「ピショップよ、彼の者に審判を下せ」
 更に駄目押しをするかのように、黒き僧侶より聖なる光条が降り注ぐ。

 ジリジリと、まるで詰みを作り上げるように、軍勢が残り少ない『偽り』を剥ぎ取り、黒死天使と打ち合っている涼に加勢するように進撃していく。
「クイーンよ我に我が剣を持て……」
 女王から、黒き断罪の剣が託される。もう相手の『王』は、眼の前だ。
「……我が、首を刎ねて……終わり(チェックメイト)だ」
 威圧するかのような黒の王の眼差しが、プレアグレイスに注がれる。程なく、ゆっくりと。天使にとっては気が遠くなるほどゆっくりな時間で、剣が振り落とされる。
 その瞬間の表情を目に焼き付けるように、涼は侮蔑のような、憐れむような眼差しを向けた。
「――少しは騙されていた人達の気持ちがわかったか?」

「そん、な 私……は……」
 怯えと驚愕の表情のまま。偽りの救い手の首が落とされる。
「じゃあな、てんしさま……オレはお前が大っ嫌いだ」
 ――オレは、もう。誰かに救って貰おうとは、思わないから。

●本当の夜明けは、まだ遠く
 住民達の死体は、丁重に弔われた。本当に、今度こそは、救われますようにと。
 ……そして、村の人々はこの教会を焼くことに決めたらしい。
 煌々と、宵闇の世界に生えるように、猟兵達が見守る中で、この村を襲った悲劇の象徴が燃え上がっていく。
 この世界に救いはあるのだろうか。それはいつかやってくる筈だと、信じているが……村人は、このような『救い』は二度と来ないでほしいと、空に登っていく煙に、祈り続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月18日
宿敵 『救済の代行者・プレアグレイス』 を撃破!


挿絵イラスト