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遥かなる海の歌

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 どこかから耳障りな木の軋む音が響いてくる。
「全員逃げろ! この船はもう長くは持たない!」
 むしろ僅かばかりの時間とはいえ持つ方が不思議といえる状況にあった。
 なぜならばこの船は、後ろ半分を切断されているのだから。
 浸水など抑えようはずもないが、それでも未だに浮力を保っていられるのは、ひとえに魔法の力あってのものだ。
 あんな者に出会ってしまったのが運の尽きだったのだ、クソッと自然と悪態が口から漏れ出す。
「こんなところで死んでたまるか。 なんとしてでも生き延びろ!」


「はーい、みんな座って座ってー。 事件概要の説明をするよ」
 ホワイトボードを押しながら、グリモア猟兵のミーナ・ペンドルトンが会議室に入ってくる。
 着席を促すその様子は、どことなく学校の先生っぽかった。 恐らくは実際にそんなイメージで口にしたのであろう。
「はいそこ、お喋りしない」
 ぴっ、と黒マーカーで指して注意すると、ホワイトボードに2枚の写真を貼り付けた。
 1枚目は真っ黒でよくわからないもの。 2枚目は骸骨だ。
「まず今回の行き先は、アルダワ魔法学園だ。 学校だよ学校」
 みんなも学校はちゃんと行かないとダメだよ、と言いながら、1枚目の写真の下に『学園迷宮』と書き。
「で、現場はここね」
 真っ黒な写真をとんとんとマーカーのお尻で叩き、おっけー? と小首を傾げているミーナだったが、何度見ようと写真は真っ黒だ。
 せんせー、黒くて何か分かりませんという言葉に、写真の下に黒マーカーで『静かの海』と書く。
「はい、今回は海だよ。 まぁ、海といっても迷宮の中だから薄暗いんだけどねー」
 なんでも一つの階層がまるっと海になっているらしい。 かつて海に住むモンスターを海ごと切り離し迷宮へ封印したとかなんとか。
 フロア内はところどころに岩礁や浮桟橋などもあるが、ほとんどが海水で満たされており深くはあるが凪いでいるため、小船でも往来が可能だ。
 普段はモンスターの出ない静かなフロアなのだが、今回はここで行方不明の生徒が出たという。
「犯人はこーれ。 死霊兵……いわゆるスケルトンだね。 どうやら海に眠っていた幽霊船を起こしちゃったみたいでねー」
 そうして攫われ現在に至ると。
 今のところは幽霊船を目覚めさせた生徒達以外に行方不明者はおらず、死霊兵達も目立った行動はしていないようだ。
 幽霊船の潜伏先は不明だが、おびき寄せるのは難しそうだからアクティブに探してほしいと彼女はいう。
「海上、海中含めて注意して探索を進めてね。 それじゃあ、いってらっしゃい」


神坂あずり
 こんにちは神坂(こうさか)あずりです。
 今回はアルダワ魔法学園で迷宮探索となります。
 メニューは以下の通りです。

 1章.探索。
   行方不明となった生徒の手がかりを探す。
 2章.集団戦。
   生徒の奪還。
 3章.ボス戦。
   事件解決。
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第1章 冒険 『井戸の底の大海』

POW   :    船を漕ぎ出す。水の中へ潜るなどをして。消えた生徒の痕跡を探します。

SPD   :    海の魔物をおびき寄せる、封じ込める罠を準備します。

WIZ   :    古い文献から海の魔物の特徴や弱点を調べたり。魔法で海を移動する方法を試みます。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グラデウス・ミースミ
古い文献から海の魔物の特徴や弱点を調べたり。魔法で海を移動する方法を試みます。

封印したというのなら、その経緯も記録されているかもしれません。
同時に当時は勝ち目がないからこその封印でしょうから、
この辺も含めて情報収集が必要かなと思います。
図書館か資料室があるとよいのですが。




 そこは静謐な空気だけが支配していた。
 僅かに舞った埃が、カーテンの隙間から差し込む光に反射してしてきらきらと落ちていく。
 数少なくも微かにある人の気配は、その誰もが沈黙し、黙々と自らの行いに打ち込んでいた。

 アルダワ魔法学園、大図書館。
 膨大な蔵書量を誇るこの書庫で、幾つもの本を紐解く女性の姿があった。
 つい先ほどまではもう一人いたのだが、彼は海図を見つけると軽く聞き込みをして去っていったようだった。
 グラデウス・ミースミ(将来の夢は安眠。・f12178)は読み終わった文献を脇に退け、羊皮紙に覚書を記していく。
 が、彼女は途中で手を止め、ペンを転がしてため息を吐く。
 この作業に意味はあるのだろうか?
 いくら調べても肝心の情報が出てこないのだ。
 確かに、かつてあの階層に海ごとモンスターを封印したという記録はある。 だがそれは、強大な力を持つ海蛇。 いわゆるシーサーペントであるようだった。
 幽霊船に関する記述が、どの文献にも出てこない。 それはまさしく幽霊のように、どこからともなくぽっと出てきたような不気味さをかもしだしていた。
 これ以上は調べても無駄だろうと、彼女は羊皮紙を手に立ち上がる。
 この由来の分からない不気味な敵のことを仲間達に伝えるため、足早に図書館を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティアリス・レイン
相棒の小竜に【騎乗】し海の上を飛行して、怪しい痕跡をさがしたり魔物たちをおびき寄せます。
「ねぇ、ユーちゃん。なにか見つけたぁ?」

もし、あやしいのを発見したら【フェアリーランド】のツボにかいしゅうするよ!
「う~ん、いっかい持ってかえろうかな?」

まものがでてきたら【怪力】で大斧を振るって迎撃するよ!
「みぃつけたぁ♪」
なにかふしんな点があったら、遺体もツボに回収しておくね!
「いちおー、しまっちゃおっか?」

みずのなかに何か見つけたら、躊躇なく潜ってさがすよ!
「あ、なにかある!」
敵が出てきたら水で動きづらいので、その場で【怪力】と【捨て身の一撃】で迎撃するよ!
「ん~!!」

危なかったらすぐ撤収するよ。


煌燥・燿
多分精霊魔法使える魔法使いとか。
水棲生物由来のキマイラや何か向けの依頼のようだな。

じゃあなんで俺なんか居るのか、って
ダンジョンの中に海とかロマンあるだろ。
あとは水着の女の子が居たら嬉しいけど、ちょっと季節が違うだろうかな。

【WIZ】で記録を掘り返そう。
フロアの地図、もとい海図。海賊船を封印した記録。
それから小舟に乗って行った生徒達の航路予定や何かがあれば。
小舟にしても海賊船にしても月も星も海流も無ければ
そんなに広い範囲を行動しようとは思わないと思う。

暗い海で迷わないようにレプリカクラフトで
流され防止に錘を付けた浮きにライト付けた物を仕掛け罠として
幾つか作り航海の際は浮かべて目印にしてみるぜ。


メルエ・メルルルシア
オレは、メルルルシアの泉の妖精、水にかけちゃエキスパートだ。
いや、ここ来たことないからよく分からんけど、水場なら多分行けるだろ、任せておけ

とりあえず、誰か他のやつと一緒に船で移動だな
船漕げそうなやつが居なかったら、オレ様用のおもちゃボートで大海原に旅立つことになる……できれば誰かまともに船を漕げるやつがいると助かる

行方不明者の発見が第一だ、多分海の何処かに船の破片とかあるんじゃないかな

まずは海上をざっと捜索しつつ、沈没した船の痕跡を見つけたら、その周りに生き残った奴がいるか確認、そのあと海中に潜ってみるとしよう

【まずは船で消えた生徒の痕跡を探る】
他の人との協力等大歓迎


花宵・稀星
ふむ、現場は薄暗い、ですか。
じゃあ<生まれながらの光>でペカーっと光って照らしてみるです。

海を進む方法?
他の方が考えてくれるんじゃないですか(他力本願)。

本来、生まれながらの光は治療のために使うものであって、光源のためではない?
そこはほら、応用というですか。まあ、何でも物は試しというですから。
カンテラやライトを使えば済むのではないかという話も、ほら。
出力が……どっちが大きいんでしょうね?
疲労すればするほどたくさん光れるっぽいですから、頑張ってエネルギーを振り絞って、ハンディライトとかには負けないくらいには出力を出したいところなのです。




 凪いだ海を滑るように、二人の男女を小舟が進む。
 その軌跡の後ろには、ぽつぽつと蛍火のように小さな灯が残されている。
 それは煌燥・燿(影焼く眼・f02597)がありあわせの物で組み、複製された灯浮標(照明機能を備えたブイ)だ。
 先刻、図書館でこの階層の海図を手に入れた彼は、情報収集もほどほどに現地へと赴いていた。
 なぜならば、この階層には月も星もない薄暗い凪いだ海。 標となる明かりがなければ迷いかねないことに気付いたからであった。
 うん、別に他にやましい理由はない。 ないはずだ。
 彼は櫂で水を掻きながら正面に座る少女に目を向けた……が、眩しい。 とても眩しい。
 そう、彼の正面には<生まれながらの光>で自らを光源とした少女、花宵・稀星(置き去り人形・f07013)がいた。 ……いるはずだ。 眩しくて見えないが。
 明らかに使い方を間違っているような気もするが、その光は確かに周囲を明るく照らし出している。
 周囲は明るい、だが燿は少し悔しい思いをしていた。
 男子であれば大抵の人は思うだろう、海ならば水着の女の子がいたら嬉しいと。
 目の前に水着のような服を着た少女がいるというのに、一切見ることが叶わないのである。 下心とは別に、どことなく悔しさを感じる。
 生まれながらの光の余波で体力が回復しているのか、いくら漕いでも疲れしらずなのは嬉しい限りだが、いるのに見ることすら叶わない。 これ如何に。
 そんな思いを乗せながら、船は先へと進んでいく。


 凪いだ海の上を滑るように二人と一匹は進む。
 一方は小さな竜ユーちゃんに騎乗し空を征くティアリス・レイン(小竜に乗る妖精騎士・f12213)
 もう一方はユーちゃんに牽引されるおもちゃのボートに乗ったメルエ・メルルルシア(宿り木妖精・f00640)だ。
 本物の大海原であれば、おもちゃのボートでは即転覆していたかもしれないが、ほとんど波風の立たないこの海ならば問題はない。
 この背丈の小さな船では、遠くまで見通せはしないが、その分足元――海中はよく見ることができる。 遠くは、上を飛ぶティアリスに任せるのが一番だ。
「船どころか、モンスターのモの字もみねえな……。 ティアリス、そっちはどうだ」
 上空を飛ぶティアリスは下から響く声に、改めて周囲を見渡す。
「うーん……ねぇ、ユーちゃん。 なにか見つけたぁ?」
 自分の目では見つけられず、確認を兼ねて自らの騎乗する小竜に声を掛ける。 するとどうだろうか。 ユーちゃんは進路を僅かに変えて飛び出した。
 目指す先の海面に、なにかが浮かんでいる。
「あ、なにか見つけたみたいだよ! あれはー……木?」
 近付いてみるとそこには、一隻の小舟がその船底を露わにして浮かんでいた。
 軽く調べてみたところ、船底以外の付着物から推測するに、まだこうなってから日が浅いようだ。
「生徒が乗っていったのって、こんな感じの船だって燿がいってたよね?」
 燿の聞き込みによると、生徒数人がこのタイプのボートで探索に出かけたという。 恐らく同一の物で間違いないだろう。
 メルエはおもちゃのボートから身を乗り出し、じっと海中を覗き込む。
 深く暗い水の中。 水底にほど近いその場所に、何か大きなものがある気がする。
「なんか下にありそうだな。 オレがちょこっと見てくるぜ ティアリスはみんなを呼んできてくれ」
 元気よく返事をするティアリスを背に、準備運動もほどほどに、メルエはどぼんと海中に飛び込んだ。


 メルルルシアの泉の妖精ことメルエが海に飛び込んでから僅か数分。
 転覆した小舟の周りに猟兵達が集まっていた。
 ある者は辺りを照らし、ある者はメルエの後を追うように海に飛び込もうとしていた。
 そんな時。 パシャッ、と小さく水面が跳ね、何かが天井に突き刺さる――それは、水で作られた蛇の形をした矢だ。
 直後、矢の後を追うように、メルエを飲み込んだ巨大な水竜が姿を現した。
 敵の襲撃かと身構える猟兵達の目の前で、水竜はその姿を崩し、その腹の内から妖精の少女が飛び出してくと慌てたように口を開く。
「みんな、逃げろ!」
 が、既に遅い。
 集まった猟兵達の船の周囲が徐々に黒く染まる。 押し上げられた水面が盛り上がり。

 ――轟音を上げながら爆ぜた。

 長大なバウスプリットが水面を突き破り、美しい女神を象ったフィギュアヘッドが天を見上げる。
 それは巨大な帆船だった。 現代様式ではない、遥かに古い古い時代の船だ。
 巨大な帆船はゆっくりと傾ぐと、盛大な波飛沫を立てながら船底を水面に叩きつける。
 それはさながら、クジラのブリーチングのようであった。

 今、猟兵達の前に、船尾を寸断された幽霊船が長い年月を越えて姿を現した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『死霊兵』

POW   :    剣の一撃
【血に濡れた近接武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    弓の一射
【血に汚れた遠距離武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    連続攻撃
【弓の一射】が命中した対象に対し、高威力高命中の【剣の一撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 姿を現した幽霊船は、徐々に沈むように喫水を下げていく。
 ほどなくして海面ギリギリまで沈んだ船から、カタリ、カタリと足音を立て、一体の船員風の骸骨が姿を現した。

 が、手に手に武器を持つ猟兵達の姿を目に留めると、慌てたように船内へ戻っていく。
 カンカンカン! 幽霊船から甲高い鐘の音が響き渡る。 それは敵の襲来を告げる音だ。
 船内から武装した骸骨兵達が押し押せてくる。
 戦いの始まりだ。
メルエ・メルルルシア
おいおい、骸骨出てきたぞ、骸骨……オレ、冒険譚は好きだがホラー苦手なんだけど……まあ、弓矢で倒せる骸骨ならそんな怖くもねえか

幸い水は沢山ある……他の奴らの後ろから水蛇の矢で牽制、頭狙い……だな
相手も弓使いってことだが、オレは故郷でも一番の射手だったんだぜ
他の奴ら、弓とか持ってなかったしな

剣で切られるのは勘弁だ、少しはなれて戦おう。
矢の打ち合いになれば、水を矢に変えて戦うオレに分がある。
明らかにダメージの大きそうな連続攻撃に注意して、最初の弓の一射を回避するように立ち回る、かな

生徒連中が幽霊船にいたりすればいいんだが……最悪、遺品ぐらいは持ち帰ってやろう


ズァイ・コッペ
海カニ!魂のふるさとカニ!
泳ぐのは苦手だけど、戦い(の邪魔)なら得意カニ!
煮ても焼いても美味しくなさそうな骨っこには負ける気がしないカニ!/

戦闘は味方の陰でこそこそしながら、装備蟹ハサミ砲でいつもどおりスキル誘導弾で援護カニ!
特に敵の攻撃は命中率が高そうだから、スキル目潰しを積極的に混ぜて
行くカニ!
甲板は身を隠す場所も有りそうだし、そこで凌ぐのもありカニね。/

【連続攻撃】は正直すっごく怖いカニ…!
だから、【弓の一射】が味方に当たったら、放った敵に対してユーベルコード【蟹光線】でお邪魔カニー!


花宵・稀星
ついに姿を現したですか、幽霊船。

ここは<咲きえぬ花の叫び>(フリガナは修正申請中)を歌い、仲間を強化しながら戦うです。これは災魔に向ける鎮魂歌でもあるです。幽霊……というか骨ですが、オブリビオンは過去から蘇るもの。そこには何かしらの無念があったに違いないのです。その無念を受け止めたうえで、それでも私達は未来を掴むため、災魔達を倒すのです。

この思い、皆さんに共感して頂けるかは分からないですが、情感たっぷりに歌い上げさせて頂くのです。

※アドリブ歓迎です。


煌燥・燿
光を燈す必要が無くなったかと思えば幽霊船の登場か。
すげえ、なんだか映画みたいだな……。
でも、光り輝いてた女の子をよく見ている暇が無いじゃねえか!
もう骨になったお前らに俺の気持ちは分からねえだろうが
俺の地獄の炎でこの悔しさを教えてやるぜ。

小舟で戦うのも狭くて拙いだろうし、可能であれば幽霊船に飛び移ろう。
幽霊船だからって幽霊みたいに透けて落ちたりしないよな。

口惜しさと怒りを込めたブレイズフレイムで
襲い掛かってくる骸骨兵を焼き溶かす。
船に捕まった生徒がいるかもしれねえし、船に延焼する分は消去するぜ。


ティアリス・レイン
相棒の小竜に【騎乗】し【空中戦】で戦うよ!
「いっくよ、ユーちゃん!」

雷の精霊の援護魔法で電気【属性攻撃】を纏わせた巨大な戦斧を【怪力】で振り回し【グラウンドクラッシャー】で敵をぶっ飛ばしていくよ!
「ミーちゃん、ありがとね!」
「ごーらい、いっせん!」

敵の攻撃は小さな体と小回りを活かして【見切り】【残像】で回避するよ!
「そんな攻撃、ユーちゃんには当たらないよ!」

敵の間をすり抜けることで、同士討ちを誘うよ!
「おっと、そんなところでふりまわすとあぶないよー?」

避け切れないときは【捨て身の一撃】で【武器受け】するよ!
「ユーちゃん、ちょっとがまんしててね!」


グラデウス・ミースミ
正体不明の敵、勢力も不明・・・。
不安はありますがそうも言ってられませんね。
悩みどころですがジャッジメント・クルセイドで一体ずつ確実に潰していきましょうか。
敵の弓が怖いのできちんとカバーリングしながら狙います。
懐に飛び込まれてしまったら覚悟と決めてロッドとメイスでひっぱたきます。




 狭苦しい小舟で戦うのはいくらなんでも拙いと、戦闘が始まると同時に燿は幽霊船へと飛び移る。
 幸いにも、幽霊船がなぜか喫水を限界まで下げていたため、飛び移るのに苦労はしなかった。
「すげえ、マジの幽霊船か。 なんか映画みたいだな……」
 何かを探すように辺りを見渡す彼の隣に、ふわりと一人の妖精が舞い降りてきた。
 先ほど、海底で幽霊船を発見し、突然浮上してきた船に撥ねられそうになったメルエだ。
「おいおい、オレ、冒険譚は好きだがホラー苦手なんだけど……まあ、弓で倒せる骸骨ならそんな怖くねえか」
 彼らが戦闘準備を整えるのもほどほどに、骸骨兵が挑みかかってくる!
「正体不明の敵、勢力も不明……不安はありますがそうも言ってられませんね」
 飛び掛かかる敵の刃に、飛びずさりながらグラデウスがポツリと漏らす。
 彼女と入れ替わるように燿が駆け抜ける。 その手には不死鳥の尾を模した炎の剣。
「クッ、これじゃよく見てる暇が無いじゃねえか! 邪魔すんな!」
 彼が振るう炎の剣が、骸骨兵の振り下ろした長剣を打ち払うと同時に、口惜しさと怒りを込められた炎がその身を焼き溶かす。
 その隙を補うように、グラディウスが燿の背後を襲おうとする骸骨兵に指を向ける。
 彼女の合図に合わせ、天から一条の光が降り注ぎ、がらんどうな骨格を焦がしていく。
 光に打たれた衝撃で硬直した身体に、大ぶりのロッドが叩きつけられ、盛大な音を立ててバラバラになった骨が転がる。
「近くの敵は打ち止めか。 私としてはこちらの方が動きやすい」
 構えていたロッドを下ろすグラディウス。 それに対しては次の敵はどこだ、と燿は視線を巡らせる。
 しかし少しばかり距離が遠い。 即座に武器を首から下げたカメラ――殺影機――に持ち替えると素早く構え、瞬時にファインダー越しに捉えシャッターを切る。
 ただそれだけで、写真に写った骸骨がじんわりと霧散するように消えていく。
「はっ、ざまあみろ!」
 果たして、怨嗟の声をあげているのは敵か味方か……。
 幽霊船を映画に例えた彼だったが、見る人が見れば、彼のその戦い方をホラーゲームに例えたかもしれない。
 パシャパシャとフラッシュが瞬く。
 ちなみに彼の探している人物は、その真後ろで支援を行っていた。
「災魔に手向ける鎮魂歌。 どうか忘れず 胸に抱いて、咲けずに終わる、花のこと……ティンド・フラワーズ」
 祈りを得た力ある歌<咲きえぬ花の叫び>が、仲間達の動きをより鋭く、より力強く底上げしていく。

 朗々と歌い上げる稀星の上を小さな影が通り過ぎる。
 相棒の小竜ユーちゃんと共に骸骨兵の群れにティアリスが突撃する。
「いっくよー、ユーちゃん! ミーちゃん! ごーらい、いっせん!」
 その手には身の丈ほどもある巨大な戦斧。 雷の精霊ミーちゃんの助力を得て紫電を纏う戦斧が振り下ろされる!
 ユーちゃんの速度も合わさったそれは、爆撃の如く骸骨達をバラバラに吹き飛ばす。
 だが骸骨兵もただやられているわけではない。 まだ動ける兵が次々と剣を突き出す。
「ユーちゃん、全力でいくよ。 ちょっとがまんしててね!」
 迫りくる一つ目の刃を戦斧で受け流し、続けて二つ目の刃をバレルロールでひらりと避けながら急上昇。
 頂点で失速し、三つ目の刃をストールターンで掠めながら骸骨の頭骨を粉砕。
 そんな攻撃当たらないよ、と得意げにいうだけの素晴らしい空中機動で敵の攻撃をいなしていく。

 ティアリスが骸骨兵の攻撃を誘発し攪乱する中、その頭蓋を的確に水蛇の矢が穿つ。
 それを煩わしく思ったのか、返すように別の骸骨兵達が弓を放つ。
 剣と真っ向勝負は分が悪い。 だが弓同士の戦いならメルエには自信があった。
 何といっても故郷では一番の射手だったという自負がある。 ……他の故郷の仲間が弓を持っていなかったからだが。
 それは同時に一番下手という意味でもあるが気にしてはいけない。
 彼女は飛来する矢を、舞い踊るようにひらりひらりと躱しながら海中から生み出した水蛇の矢をつがえる。
 あらよっと、とどことなくおっさん臭い掛け声と共に次々と放たれた矢が、射撃後の無防備な骸骨弓兵に喰らい付き、消滅させる。
「あんまり強くねえけど、数が厄介だな……生徒連中も探せねえし」
 元来世話焼き気質の彼女は心配そうに顔をしかめた。
「ならさくさく片付けるカニね! さっさとご退場願うカニ!」
 同じように隣の木箱の影でよく分からないビームを乱射していた蟹。 もとい蟹っぽい少女ズァイ・コッペ(かにさん・f08081)が言葉を繋げる。
 彼女の両腕――というか蟹バサミ――からほかほかの湯気が立ち上る熱線<蟹光線>が放たれる!
 熱線に打たれた骸骨兵達の足が止まる。 それは熱線の威力によるものか、程よい温度の熱による温泉気分なのかは分からないが、間違いなく足は止まった。
「なんということでしょう。 足を止めた兵士達を、巨大な竜はその大きな口で飲み込んでしまいます」
「時の流れにうつろう水の精よ、全てを飲み込む急流となれ!」
 水で形作られた竜と、半人半漁の精霊が立て続けに骸骨兵達に襲い掛かり、その身体をバラバラに離散させた。
 上手く連携が取れたことに気をよくしたズァイが、とても楽しげにカニカニカニと笑いながら、奇怪な軌道のビームで敵の動きを阻害していく。

 順調に戦いは進んでいる……はずなのだが。
「やっぱりおかしいです」
 訝しげな稀星の呟きに、骸骨達を注視しながらメルエが首肯した。
 そう、おかしい。 かなりの数を倒しているはずなのだがあまりにも限がない。 次から次へと骸骨達が湧いてくるのだ。
 これはどういうことあろうかと戦場を注意深く観察する。
「……カニ!?」
 驚きの声? を上げたズァイに何事かと二人がその視線の先を追うと……。
 そこには、バラバラになった骸骨兵を回収しては、せっせと組み直している船員風の骸骨の姿があった。
 ありなのかそれは?
 確かに元々死霊なのだから、完全に破壊されない限り死にはしないかもしれないが、それはありなのか?
 三人の間に沈黙が流れる。
 復活した骸骨兵を送り出した船員骸骨が、いい仕事をしたという風に額の汗をぬぐう動作をしながら顔を上げ、集中している視線に気が付く。
 その顔――雰囲気――が如実に語る。
 あ、やべぇばれた……と。 慌てた船員は、急いで首から下げたホイッスルを吹き鳴らす。
 甲高いその音に、はっとして攻撃に出ようとする三人だったが、骸骨兵達の動きは迅速だった。
 骸骨兵達は多少の犠牲など気にもせずに戦闘を中断し、船員を守るように集う。
 だが、その様子はどこかおかしい。
 これは猟兵達にとっては骸骨兵を一網打尽にするチャンスだ。 だが同時に何かをしでかす前兆かもしれず、下手に手出しもできない。
 そこはかとなくざわざわとした空気の中、骸骨達はなにかを相談するように視線を交わしあっている。

 ドンッと杖で床板を強かに叩く、小さくもよく響く音が波紋を広げた。
 その音一つで、漣のような雰囲気が凪に変わる。
 骸骨兵達も骸骨船員も一様に同じ動きで直立不動の姿勢を取り、そしてすっと波風に解ける姿を消した。
 一体何が起こったのかは分からない、だが一時とはいえ戦闘は終わった。
 猟兵達の目の前には船内へと続く扉。 そして何かが近付いてくる気配を感じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怨霊魔導士』

POW   :    死霊兵団
【骸の海に揺蕩う罪人達】の霊を召喚する。これは【血に濡れた近接武器】や【血に汚れた遠距離武器】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    死霊の嘆き
レベル×1個の【呻き声をあげる人魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    死霊の誘い
【昏い視線】を向けた対象に、【忌まわしい幻影と心を抉る言葉】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 骸骨兵達が道を開けるように消え去った後。 古びた船室の扉が軋んだ音を立てながら開かれる。
 その先には一つの人影。
 金糸で刺繍の施された豪奢なローブを纏った一体の魔導士風の骸骨だ。
 彼はゆっくりとした動きで扉をくぐり、その姿を現した。
 ぱたんと扉を閉じ、鮮やかな紫に染められた布地をはためかせると口を開いた。
『さて、猟兵の諸君。 当船への乗船理由はなんだろうか?』
 猟兵達の前に立ち塞がるように対峙するのだった。
花宵・稀星
闇の存在とでもいうべき怨霊を消し去るには強き光と相場が決まっているです。
私は<ダイヤモンド>の宝石で<月光>のユーベルコードを発動して敵を攻撃するです。

しかし、忌まわしい幻影を見せ、心をえぐる言葉を投げてくる敵、ですか。
私にとって忌まわしいこととはなんでしょうね?
例えば、最近そうであろうと知った、私が生まれるまでの間に捨てられていった試作機の存在でしょうか。

しかし、どんな忌まわしい幻影を見せられようと、たった今この瞬間を全力で生きることに決めた私は、足を止めることはないでしょう。

※アドリブ歓迎です。


煌燥・燿
キャプテン、っていうよりはネクロマンサーの感じか?
こっちの正体も理解してるようだし油断ならない雰囲気だな。
もう見えない事がどうとか考えてる場合じゃあなさそうだ!

俺の乗船理由は簡単だ。行方不明の生徒を返してもらうぜ!
ついでにお前たちの命も還してやるよ。

この船や骸骨をこいつ一人で操っていたのかな?
周りの骨は無視してもこいつから先に倒さないと!


不死鳥降臨・再誕で戦おう。
技能の破魔と属性攻撃も使い不死鳥の火を持って
骸を塵と灰に返していく。


メルエ・メルルルシア
おーおー、なんか偉そうなやつが出てきたなおい。
乗船理由……? そんなのは人探しに決まってんだろ。オレたちのちょっと前に来た生徒達……そいつがどうなったのか教えてもらおうか

素直に教えねえって言うなら力づくで……いやまあ、倒すのも依頼のうちだから、素直に教えてくれても倒すんだけどな

さーて、水竜様、ザコ相手はおしまいだ、あの偉そうな骸骨を、ぱくりと飲み込んでくれ

炎の攻撃ならオレに任せてくれ、水でできた竜は味方を傷付ける事はない……火がついた奴がいたら消火作業。できれば火がつく前に水蛇の矢で炎を撃ち落としていこう

幻影なあ、悪口言われたぐらいじゃ、ちょっと胸が痛いし、泣いちゃうかもしれないが、負けないぜ


グラデウス・ミースミ
これはこれは、どうも船長さん。迷子の生徒を探しに参りました。
どうもこちらにお邪魔しているようで。
もし居るなら連れ帰りたいのですがいかがでしょう?

と、問われた理由を答えます。
あっさり返してもらえたらラッキーぐらいです。
多分、そんなことにはならないんだろうなぁと思いつつ。
会話の間はガン見、まではしませんが一挙手一投足に注意を払います。
敵対行動をとられたらカウンター気味にミレナリオ・リフレクションを使います。


ディー・ジェイ
「そらあんた、幽霊船に来た理由なんて金銀財宝目的に決まってんだろ。」(POW

若いやつらがなんか必至こいて頑張ってくれてるとこ悪いけど、俺はこの幽霊船の主を倒してお宝を頂く。その金になりそうなローブも、死人にゃ勿体ない贅沢ってもんだ。

・問答するつもりなぞなく、一言目を発すると同時にフルバーストを叩き込む。骨みたいな外見に弱点があるのか知らんのでその後の銃撃は体のどこかに当たればいいだろうと腰撃ちで撃ち込む。
・他の参戦者と共闘できるのなら、魔導士の術を行使しそうな動作を阻害するべく中距離からの制圧射撃を敢行。ある程度自分への被害も見積もった上でのサポートこそ我が本業。

え、財宝無し?またまた御冗談を


ティアリス・レイン
小竜に【騎乗】し【空中戦】でたたかうよ!

「ゆくえふめいのひとたちを救うため!」
殺したなど言われると激怒して特攻します。
「……ゆるせない。ユーちゃん!」
敵の攻撃があれば【見切り】【残像】で回避しながら、戦斧を振りかぶり【怪力】【捨て身の一撃】【グラウンドクラッシャー】をぶつけるよ!
「ごーらい、いっせん!!」

増援が来たら素早い動きと小ささで【敵を盾にする】
「ユーちゃん!」

危ない時は雷の精霊が【全力魔法】の電気【属性攻撃】で【目潰し】や【マヒ攻撃】【気絶攻撃】で援護。
「ありがと、ミーちゃん!」

敵の隙を作るため、戦斧を【投擲】してから【2回攻撃】で鞘に入ったままの魔剣で【なぎ払い】ます。
「そこだ!」




「なんか偉そうなやつが出てきたなおい」
「キャプテン、っていうよりはネクロマンサーの感じか?」
 ぱたんと扉を閉じる魔導士風の骸骨を、油断なく観察するメルエと燿がぽつりと感想を漏らす。
『さて、猟兵の諸君。 当船への乗船理由はなんだろうか?』
 猟兵達は口々に乗船理由を告げるが、一斉に答えたものだから、言葉が混じって内容が聞き取りにくいこと極まりない。
 だが、一つだけ確信して言えることがある。
 一人だけ、金銀財宝が目当てだった。

 閑話休題。

 なるほど、あの子供達の捜索隊かと納得したように魔導士が頷いた。
 幸いにもちゃんと用件は聞こえていたようだ。
「もし居るなら連れ帰りたいのですが、いかがでしょう?」
 代表して進み出たグラデウスは、相手の一挙手一投足に注意を払いながら会話を進める。
 その言葉に、無防備にも考え込むように口元に手を運ぶ魔導士。
『彼らなら……』
 空気を読まない、その隙を逃さないものが一人いた。
 ディー・ジェイ(Mr.Silence・f01341)は何一つ躊躇することなく、その手の小機関銃の引き金を絞った。
 パパパッと乾いた音を連続して立てながら、問答無用とばかりの一斉射が、骸の身体へと殺到する。
 だが、相手とて全くの無警戒ではなかった。 なにより相手は魔導士なのだから、構える必要がないのである。
 魔導士の身体を守るように、無数の人魂が浮かび上がる。
 銃弾は寸分違わず人魂に飲み込まれ、蒸発する音と金属が焼ける僅かな異臭を残して姿を消した。
『ふむ、闘争をお望みか……なに、こちらとしても都合がいい。 少し試させてもらうとしよう』
 魔導士が手を広げると共に、戦場を覆いつくすほどの数の人魂が燃え盛った。
 戦いが火蓋を切る。


「おーおー、妖精さんモテモテだな」
 ゆらゆらと揺らめく火の玉を見据え、メルエが弓を引き絞る。
 未だ離れた距離にあるにもかかわらず、ジリジリとした熱気が伝わってくる
 人魂がふらりと揺れ、徐々に速度を上げて動き出すと、それは蛍火の如く不規則な軌道を描き、群れを成して猟兵達に襲い掛かった。
「やらせはしませんです。 天駆ける雷の精よ、我が意に従い敵を討て!」
 稀星の言葉に従い、鳥を象る無数の雷の精霊が飛び立つ。 それは一対一では勝てずとも、複数でもってお互いに消しあっていく。
 ……が、いかんせん威力が高い上に数が多い。 相殺しそこなったものが次々と飛来してくる。

 その時、弓の弦が鋭く空気を割く。
 溜め込まれた力が瞬時に解放され、その導きに従い、船の周囲の海原が爆ぜる。
 それは夥しい数の海蛇の矢となり、人魂に向かって大挙して押し寄せた。
 ぶつかり合った炎と水は瞬時に沸騰しては蒸気となり霧散していく。
 一進一退の攻防。
 むせ返る熱気の中で、水も炎も巧みに避けながら一騎の妖精が突き進む。
 視界に薄っすらと広がる蒸気の向こう、ローブの人影目掛けて戦斧を振り上げ。
「覚悟! ごーらい、いっせん!」
 だがその攻撃は、霧の中から飛び出した骸骨兵に受け止められ……その防御すら貫き甲板を粉砕!
 魔導士が飛びずさりながら、感心したようにため息を漏らす。
 だがこれはどうかなと手を振り上げると、召喚された二体の骸骨がティアリスを挟撃する。
「甘いよ、そこだ!」
 黒猫の姿をした雷の精、ミーちゃんが瞬くように雷光を発し、紫電に撃たれた骸骨兵達が動きを止める。
 合わせるように振るわれたティアリスの戦斧が、その骨格を纏めて薙ぎ払って破壊した。

 なにも敵は目に見えるすぐそばだけではない。
 薄霧の向こう。 メインマストの上に一体の人影があった。
 骸骨弓兵は、二体の骸骨と戦う妖精に狙いを定め、つがえた矢から指を離す。
 刹那、その頭蓋を一発の弾丸が穿つ。
 矢は明後日の方向に飛び、力を失った骸骨はメインマストから転落し、甲板に叩きつけられ人の形を失った。
「やれやれ、考えることは敵も同じか」
 戦闘中の敵を狙い打っていたディーは、伏兵の存在に気が付くと、周囲の弓兵を虱潰しに倒していた。
 いつ射られるとも分からないものを放置していては、安心して戦うこともできないのだから。
 次の伏兵を探し、彼は戦場を移動するのだった。


『殲滅・火力・対応、どれをとっても一級品か。 流石は人類を外れた者達だ』
 骸骨兵達に妖精騎士に相対させた魔導士は、滑るように移動しながら満足そうに頷くと、その眼下に昏い光を灯す。
 しばらく彷徨わせた後、その視線を一点へと向ける。
『ならば、その精神は如何ほどか』
 集束された視線の先。 グラデウスに向かい、昏い眼光が襲い掛かる!
 身を竦ませるようなその光に、杖を構えたグラデウスは、橙色の瞳に同じ色の光を灯す。
 <ミレナリオ・リフレクション>によって模倣されたユーベルコードがぶつかり合い、互いにその力を喰い合い、弾ける。
「うぐ……っ」
 胸を押さえたグラデウスは、力が抜けたように膝をつく。
 その呪いのような力は、打ち消した上で双方に被害を齎した。
 眼窩から光を消した魔導士が呻き声をあげる。
 ――刹那、虚ろな洞に烈火が灯る。
『総員、戦闘配備! なんとしてでも奴を陸地に近付けさせるな! 弓兵隊、前へ!』
 怒号の如き号令と共に、横隊陣に展開された骸骨弓兵が召喚される。
 その手は既に、矢をつがえた弓が引き絞り、猟兵達に鏃を向けていた。
『放て!』
 打ち消している暇などない。
「やっべぇ、隠れろ!」
 張り上げられたディーの言葉を聞くまでもなく、既に全員が動き出していた。
 ある者は木箱やマストの影に、またある者はボートの下に転がり込み、またある者は甲板を破壊して船内へと逃げ込んだ。。
 そして素早く駆けた燿は、未だ<死者の誘い>の反動で動けずにいるグラデウスを抱えてマストの裏に飛び込む。
 その後を追うように、連続して甲板に矢が突き立ち、葦原のような光景を船上に生み出していく。
 射撃体勢のまま動かない骸骨兵に向け、影から飛び出した猟兵達が迫る。
「月の光よ、影を打ち消せっ!」
 中空へと打ち上げられた輝石が、その言葉に反応して光を発する。
『っ、白兵戦闘用意!』
 辺りを照らす眩い光に、忌まわしい幻影からハッと目覚めた魔導士が、骸骨兵に指示を送る。
 骸骨兵は即座に反応し、弓を投げ捨て剣に手を掛けるが既に遅い。 稀星が杖を向けた先を、透明な宝石から放たれた光が薙ぎ払っていく。
 光の帯の後を、小竜に騎乗したティアリスが飛翔し、戦斧で骸骨兵を薙ぎ倒して魔導士に迫る!
『まだだ!』
 ローブを着た骸骨は、振り下ろされた戦斧を、咄嗟に拾い上げたショートソードで受け止めた。
 ミシリ、とその身が悲鳴を上げながらも、身体を沈みこませて耐えきる。
「いや、もう終わりだ」
 彼の背後から煌々とした輝きと共に若い男の声が響く。
 そんなはずはない、そこには人などいなかったはず。
 いや、そこには穴があった。 最初の接敵でティアリスの破壊した穴が。
「じゃあな、灰からもう一篇やり直せ」

 燿の振り下ろした不死鳥の火は、魔導士の身体をあっけなく両断した。


『さて、猟兵諸君。 子供達の行方が目的だったか』
 両断された魔導士だったが、彼は倒れ伏したまま何事もなかったかのように口を開いた。
 元より死んでいるのだ。両断されたところで即死するわけもない。
 まあ、治す術もなくあとは消えるのを待つのみなのだが。
 その身は足の方から徐々に粒子となり消え始めていた。
「おう、オレ達のちょっと前に来た生徒達はどうなったのか教えてもらおうか」
 油断なく弓で狙いをつけたままのメルエが首肯しながら先を促す。
 その後ろでお宝は? という声も聞こえたがスルーだスルー。
『彼らなら、奥の船室で眠っている。 なに、たらふく水を飲んで昏倒しているだけだ、遠からず起きるだろう』
 連れてくるなら急いだ方がいいぞ、という彼に猟兵達が首を捻る。
 彼の答えは簡単だった。
 なぜこの幽霊船は船尾を失いながらも浮いているのか?
 それは魔導士が魔法を用いて浮力を維持していたからだ。
 ならば、その彼を失った今、どうなるかは火を見るより明らかだろう。
 木が軋む異音と共に、僅かずつ船が傾き始めていた。
 焦った猟兵達は、手分けをして船室を探し始めた。ほどなくして生徒達を発見することだろう。

 さらさらと、掻き消されるように姿を薄れさせた彼は、思い出したように猟兵達を呼び止める。
『あぁ、消える前に一つだけ聞きたい。 ここに封じた海蛇はどうなったかしらないか?』
 まだなら、倒しておいてもらいたいと告げる彼。 その問いに答えられる者は……一人だけいた。
 なぜなら彼女、グラデウスはここに来る前にこの階層に関する文献を読み漁り、情報を収集していたのだから。
 強大な力を持った海蛇、シーサーペントに関する記述はいくつも記されていた。
 そしてその結末も。
「シーサーペントですね。 それでしたら、もう討伐されています」
 それも、何十年も前にと彼女はその経緯を語る。
 その言葉を聞きながら、魔導士は眼窩の光を落とし、噛みしめるように深く、深く頷く。
『そうか……嗚呼、そうか』
 それは、成し遂げた者の雰囲気であった。
 自らの行いは、無意味などではなかったのだと。

 魔導士はもはや留まる必要を失ったかのように急激にその身を薄れさせ、この世界から姿を消した。
 彼らは結局何者だったのか、詳しいことは分からない。
 が、そんなことを気にしている余裕など、猟兵達にはなかった。
 足元からの水圧に耐えかねた古びた木材が破砕する音が響き渡る。 それは魔法の支えを完全に失った船体の上げる悲鳴だ。
 船室から生徒達を発見した彼らは急いで自分達の乗ってきたボートに飛び乗り、幽霊船から離れるのだった。


 猟兵達が幽霊船から離れるとほどなくして、その船体は水柱を上げながら渦巻く海中へと没する。
 こうして、一つの長い長い後悔が幕を下ろした。
 そうして、重い重い碇を上げた誰かは、新たな航海へと出奔したのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月17日


挿絵イラスト