#アルダワ魔法学園
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蒸気が満ちた回廊で、少年と少女が声を張り上げていた。
「やっぱりあいつとヨリ戻したいんだろ!」
「何でそうなるのよ?! 委員会が同じなんだから、会話ぐらいして当然じゃない!」
地下迷宮アルダワ。少なくとも年頃の男女が痴話喧嘩を繰り広げる場所として、適当とは言い難い。
「元彼と同じ委員に立候補とかおかしいだろ!」
「偶然だってば! 大体ね、あなただって先週……」
些細な呟きから始まった言い合いは過熱する一方で、収まる気配が無い。それでもなんだかんだと入り組んだ道を抜け、二人が拓けた場所に出ると同時、場の雰囲気にそぐわない明るい声がした。
「ふふっ、仲が良いのね!」
――ほら、喧嘩するほど仲が良いって言うでしょ? 柔らかな髪を揺らし、少女が笑う。
「あ、でもね? 私達には敵わないと思うわ。そもそも喧嘩なんてしたことなくても最初から仲良しだもの、この先もずぅーっと。だって……私、選択肢を間違えないから!」
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「あんたらは好きな人っている?」
突然何を言い出すんだと訝しげな視線に晒され、二本木・アロは慌てて弁明を始めた。
「いや別に恋バナしよーってアレじゃねーんだ。迷宮! 今回の迷宮の話!」
アロの話によれば、二人の学生が迷宮に挑んだものの、途中で仲違いをしたままオブリビオンと遭遇し、連携出来ずに敗北する――という未来が予知されたとの事だった。ちなみに彼らは恋人同士だそうだ。
「これが『学生たちが未熟でした』っつー簡単な話ならともかく、喧嘩の原因が迷宮の罠にあるんだわ。で、あたしら猟兵の出番」
既に学園側には連絡を入れ、該当の生徒達を引き返させたので保護等の対処は必要ない。存分に力を発揮して欲しいと彼女は頭を下げた。
「まず一つ目のエリアは『幻惑の迷宮』だ。幻覚か、催眠か……入った者を惑わせる。ここであんたらが見せられるのは『好きな人との幸せな思い出』だ」
それは初めてのデートかもしれないし、想いが通じ合った日かもしれない。挙式を上げた日かもしれないし、何でもない平穏な日々かもしれない。
「まあ恋愛的な『好き』に関わる思い出が多そうだけど、人によるかな。友情や家族愛かもしれねーし、片思い的な話もありうる」
危険な場所ではないが、幸せな過去に浸ってオブリビオンの居場所に辿り着けない事態だけは勘弁してくれとアロは言う。
「二つ目のエリア。ここについてあたしから言えるコトはただ一つ、『疑うな』だ」
ここでは、探索する者に『疑念』を植え付ける。想い人に対して『他に好きな人が出来たのでは?』『本当は自分を好きではないのでは?』と疑ったり、自身に対して『自分では相手を不幸にしてしまうのでは?』と不安になったり――といったものだ。
「このエリアに長くいれば長くいるほど、疑う気持ちはデカくなる。心が折れて精神状態ガッタガタの状態でボス戦とか、同行者とケンカして連携出来ねーとか無いようにな」
猜疑心が爆発した状態が、例の学生達の痴話喧嘩だ。何か縋れる思い出や、相手への強い想いがあれば抗えるかもしれないし、自分に余裕があれば同行者の不安を和らげる行動も有効だろう。とにかく相手を、そして自分を信じて欲しいとアロは言った。
「最後、オブリビオンの情報。こいつは……んー、なんだ。世界を『乙女ゲーム』とかいうヤツだと認識してるらしい」
自称、天真爛漫な正統派ヒロイン。猟兵達の事を『自分達の恋路を邪魔する悪役』だと思っている節があるようだ。
「……っつーか、こんな罠に隠れて探索するヤツらの痴話喧嘩楽しんでるような女を『天真爛漫』ってゆーのか?」
思いの外、ヒロインは腹黒いかもしれない。何にせよオブリビオンである以上は倒すだけだ。アロは首を傾げつつ、迷宮へと向かう猟兵達を見送った。
宮下さつき
もうすぐ戦争な空気ですが、リア充を眺めたい宮下です。
お一人様での参加も、大切な方との参加も大歓迎です。ご一緒に参加なさる際はお連れ様とはぐれないよう、お名前をプレイングにご記入ください。
●世界
アルダワ魔法学園です。
●第一章『幻惑の迷宮』
あなたの『好きな人との幸せな思い出』を聞かせてください。思い出の一コマを書かせて頂ければ幸いです。300字の惚気をお待ちしております。
●第二章『刻一刻と変化する心身』
あなたの抱える不安や迷宮に抗う想いをお聞かせください。
もちろん喧嘩をしないように迷宮攻略に力を入れても構いません。
それではよろしくお願い致します。
第1章 冒険
『幻惑の迷宮』
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POW : 惑わされないように自身を保ち行動する。
SPD : 惑わされる前に出口にたどり着く。
WIZ : 惑わされないように幻惑を見定めて行動する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オーキ・ベルヴァン
好きな人との思い出にさいぎしん?だっけ?疑う気持ちな…まあ、どっちもオレには関係無いよなー。
幸せな日々ってやつは、ヴァンパイアに奪われちまったし、村のみんなも父さんも母さんも生き返ることは絶対に無いしな。
猟兵になって、幸せじゃない人もいっぱい見てきたんだ。
幸せな思い出にすがったって幸せになれる訳じゃない。
幸せは自分の後ろには無くて、前に自分で…自分の力で新しく作るしかないんだ。
俺は村のみんなに…みんなにちゃんとサヨナラしたんだからな!(泣きそう)
行くぞカシム!
オレ達で幻惑なんか吹き飛ばすんだ!
絶対に負けない!
オレは誰も裏切らない!
だから天国で、嘘じゃなく笑っててくれよな…みんな。
※アドリブ歓迎
一面の白。霧の濃い日であってもここまでは酷くないはずだ。ミルクの中を歩いたらこんな感じだろうかと、オーキ・ベルヴァンは軽い足取りで迷宮を進む。纏わりつく濃霧が、いっそ面白いとすら感じていた。
「好きな人との思い出にさいぎしん? だっけ?」
今の自身には縁の無さそうな話だ。どちらも想像がつかないとぼやけば、応えるように誰かが笑う声が聞こえた気がした。
「……ん?」
しゅうしゅうと鳴る蒸気の音はささめく声になり、次第にさざめきへと転じてゆく。
『なんだ、まだ好きな子は居ないのか』
懐かしい声が響き、思わず振り返る。
「父さ、ん」
『母さんのどこが好きかって? そうだな――』
『ちょっと、何の話?』
「……母さん」
違う。全部全部、ヴァンパイアに奪われた。今自分に微笑みかける両親も、その後ろを駆け回る兄弟達も、全て幻だ。
だというのに、笑った時に出来る小さな皺まで再現されるなんて。
「……幸せな思い出にすがったって、幸せになれる訳じゃ、ない!」
振り払うように、叫ぶ。
(「幸せは自分の後ろには無くて、自分の前に……自分の力で新しく作るしかないんだ」)
猟兵になった事で、多くの不幸を目にしてきた。小さな身体にたくさんの希望を背負わされたオーキは、ぎゅうと拳を硬くする。
「俺は村のみんなに……みんなにちゃんとサヨナラしたんだからな!」
じわりと滲む風景を手の甲で拭うと懐かしい人々から顔を背け、傍らの相棒に声を掛けた。
「行くぞカシム!」
絶対に負けない。
誰も裏切らない。
こんなまやかしではなく、彼らには天国で笑っていて欲しい。
カシムは何も答えない。ただ、力強く踏み出した少年を肯定するように、からりと鳴った。
成功
🔵🔵🔴
御園・桜花
目の前に広がるのは明るい帝都の夜
美しく着飾った男女が手を組み会話しながら目の前を歩いていく
彼らがのっぺら坊なのは、単純にあの頃人の顔の区別がつかなかったからだ
夜はこんなにも明るくて
人は笑いさざめくことが出来る生き物なのだと初めて知った
そしてあれは私の原風景になった
UC「魂の歌劇」使用
歓びの歌を一曲心を込めて歌う
歌い終わったら一礼し、また迷路探索へ
「あの時まだ言葉を知らなかった私は、あれで自分が部外者であると知ったのです」
あの世界を愛し守りたい
眺めているだけでは守れない世界だと知っているから
足を止める理由にもなり得なかった
久しぶりに見た原風景への感謝を胸に
また精力的に迷路探索を開始する
濃霧が晴れたら別の場所に瞬間移動していたかのような、或いは霧をスクリーン代わりに活動写真を始めたとでも言うのだろうか。今、御園・桜花が置かれた状況は、そのくらい唐突なものだった。
窓という窓に明かりが灯り、歩道に沿ってたくさんのガス灯が並んでいる。星々に対抗するように輝くそれらに夜空のような静けさは無く、しかし不快ではない。
ふと隣のレンガ造りの建物の扉が開き、二人の男女が現れた。夜会でも開かれていたのだろうか、艶やかな黒髪を巻き上げた女性を、男性がエスコートする。柔らかな光と古美色のコントラストの下、石畳に影が落ちる。
(「この風景は、夜はこんなにも明るくて、人は笑いさざめくことが出来る生き物なのだと。初めて知った時の――」)
人々がなべてのっぺらぼうなのは、桜花の記憶に無いというよりは、人の区別がつかなかった頃の思い出だからだろうが、不思議と彼らが『笑っている』という事だけははっきりと分かった。
すうと息を吸い込み、桜花は歌う。
(「眺めているだけでは守れない世界だと知っているから」)
桜花は、例えるならば雛だ。殻を破り、初めて目にしたモノを親と慕うように、閉ざされた世界を出て、初めて目にした帝都を、恋い慕う。
「あの時まだ言葉を知らなかった私は、あれで自分が部外者であると知ったのです」
地上にはたくさんの星が光っているというのに、自分の為に瞬いてくれる光は一つも無くて。それでもこの光景は、桜花にとってかけがえのない、ただ一つの。
彼女が歌い終わった時、狂おしいまでの雑踏は遠ざかり、正面には蒸気に満ちた通路があった。
「あの世界を――」
愛し、守りたい。原風景を見せてくれた迷宮に彼女は感謝こそすれ、足を止める理由にはなり得なかった。一礼し、再び歩き出す。
大成功
🔵🔵🔵
コイスル・スズリズム
SPD
口ずさむ歌を「楽器演奏」しながら歩く。
何が出るのか、
実のところ楽しみに歩いていたのだけれど、浮かんだのは学園の屋上、貯水タンクの光景
屋上に座る私、隣にいるのは魔法学園ではじめてできた友達
ある日突然元の世界に戻るといってそれっきり帰ってった女の子
幻覚の中であなたを見るということは
私はあなたのことを友達としてけっこう好きだったんだろう、ね
歌声を強め、お世話になってるホテルのオーナーさんから誕生日に貰ったキャンディを口に放り込む
あれから私は一つ年を重ねたよ
これからも学園で重ねてく
だから
これ以上は幻覚にはいられない。前に進むよ
久しぶりに思い出せてよかった、ありがとう、幻覚
歌声とともに次のフロアへ
迷宮の中に居る事を忘れるような、ありふれた景色だった。
絡み合う配管、煤けた歯車、煩雑な印象を与える建造物の数々。眼下に広がる街並みは、所々から吹き出す蒸気で霞んで見える。
(「実のところ楽しみに歩いていたのだけれど」)
元より生まれた世界に未練の類があるとは思っていないが、あまりにも見慣れた風景。弾きながら歩いていたはずのコイスル・スズリズムがいつの間にか腰掛けていたのは、アルダワ魔法学園の屋上にある貯水タンクだ。
『ねえ』
呼びかけに顔を上げたコイスルは、思わず声の主の名を呟くところであった。僅かに声が震えたものの、歌を止めなかったのは流石だろう。
『それで思ったんだけど、私ね……』
はにかんだ少女は、この学園に来たコイスルに初めて出来た友人だ。コイスルと同じように他の世界から訪れ、同じように魔法学園での日々を過ごした女の子。
『あ、そういえば――』
たわいのない会話。繰り返されるアルダワの日常。明確な卒業が定められていないこの場所で、ずっと続くと思われた日々。だが、彼女は学園を去った。
(「幻覚の中であなたを見るということは」)
猟兵を続けていれば、彼女が帰ったであろう世界に行く事もあるだろうか。偶然出会う事もあるだろうか。だとしたら天文学的な確率だと、小さく笑う。
(「あなたのこと、友達としてけっこう好きだったんだろう、ね」)
酷く眩しいものを見るかのように目を細めたのは、彼女の背後の西日のせいか、それとも――
(「あれから私は一つ年を重ねたよ」)
ころり。舌の上で、キャンディを転がした。甘酸っぱい柑橘の香りが、口いっぱいに広がる。
「すずは、これからも」
ここで年を重ねていくから。幻覚にありがとうと一言告げ、ぴょこりと立ち上がった。
「前に進むよ」
歌声と共に、歩き出す。
成功
🔵🔵🔴
荻原・志桜
🎲🌸
幻惑が見せるのは彼と過ごす何でもない日々
交わす言葉、伸ばせば繋いでくれる手
…たまにいじわるだけど
名前を呼んで笑ってくれる
嬉しいと思う気持ちが積み重なって
それだけでわたしは幸せだと感じる
あのときもそう…
いつもの喫茶でふたり話した冬の日
呪印のことを知って、直に彼の熱に触れて
烏滸がましくもわたしは彼に寄り添えたらと気持ちを抱いた
真っ直ぐに好意を伝えてくれることが嬉しい
だけど彼が伝えてくれる好きがどういう意味なのか分からない
勝手に期待して、同じじゃなければ泣くのは自分で
笑みを向けてくれる彼にわたしは情けなく眉を下げ微笑む
わたしも好きだよ、ディイくん…
――誰よりも、と続く言葉は心の中だけで零した
ディイ・ディー
🎲🌸
見えているのは志桜との記憶
あれは或る冬の日
紅茶を飲みながらたくさんの事を話した
呪印を隠しているこの手袋を外して重ねた手
触れあったときのちいさな熱
生来から呪いを宿す俺を、
そして自ら受入れたこの呪印を
怖いと感じながらも触れてくれた事が嬉しかった
あの時に懸命に伝えてくれた言葉
たったそれだけの事が、幸せだと思えていた
「なぁ志桜」
名を呼んで笑いかける
これまでも何度か戯れに告げたり、
伝えようとしてきたがもう一度言っておこう
「俺さ、志桜の事が好きだ」
友愛か、親愛か、それとも……
別に何だって良い
ただ君が愛らしいと思っていたけれど
ああそうか、そうだったんだ
俺が彼女に抱く感情はどうやら、
(――愛、らしい)
いくつもの情景が、回り灯篭のように現れては消えてゆく。概ね予想通りだと、荻原・志桜は静かに見つめていた。流れてゆく幻は、志桜の大切な記憶の欠片だ。その一つ一つをつい昨日の出来事のように思い出せる。
桜。屹立する幻朧桜と、絶え間なく降り注ぐ花びら。薄桜の合間にちらちらと混じる真空色が、まるで万華鏡の中に居るようだ。
雨。はらはらと落ちる恵みは鮮やかに色づいて、そこは雨が描いた絵本の世界。小さな瓶の中で、それぞれの色がとぷ、と揺れた。
星。冴え冴えとした光の下、じわりと身体を温めてくれるココア。目の前には悪戯っ子のように笑う、青年。
全ての記憶に、彼が居た。たわいのない会話。伸ばせば繋がれる手。しあわせな気持ちが膨らんでゆく。
(「……たまにいじわるだけど」)
それでも名前を呼ぶ声は、優しいから。
(「あのときもそう……」)
冬の日を思い出した時、志桜はふと気になった。彼は今、何を見ているのだろう?
(「これは冬の、あの日だ――」)
喫茶店のソファに身体を沈めていたディイ・ディーは、意を決したように姿勢を正した。嫌に乾く口の中を湿らせようとカップを空にすると、正面に座っていた志桜がティーコジーの下から白磁のポットを取り出した。何も言わずとも温かな紅茶が注がれ、ベルガモットが香る。
だがすぐには口を付けず、ディイは手袋を外した。信頼か、甘えか、或いは彼女に隠し事をしたくなかっただけかもしれない。右腕に露わになる、呪われた印。
青。紺碧。花浅葱。うつろう空と形容するには禍々しい程に鮮やかな、揺らめく蒼炎。ディイは語る。呪物に宿りしヤドリガミであり、自ら呪印を受け入れた男の話を。
決して愉快な話では無かったにも関わらず、彼女は静かに聞いていた。語り終えたディイが手の甲に感じたぬくもりに顔を上げれば、悍ましい印に小さな手が重ねられていた。少なからず怖がらせただろうに、だ。
(「嬉しかった」)
必死に言葉を選びながら、寄り添おうとする気持ちが垣間見える。好ましくないわけがない。
(「友愛か、親愛か、それとも……」)
春を体現したような存在が、くるくると変わる表情が、『愛らしい』――そう思った瞬間、ディイの中ですとんと腑に落ちた。この気持ちに名前があるならば。
(「ああそうか、そうだったんだ」)
――愛、らしい。
「なぁ志桜」
既に戯れに告げた事はある。元より彼女への誉め言葉はストレートに伝えてきたつもりだ。ただ、今ここで。もう一度伝えておきたいと、ディイは志桜へと向き直る。
ふいに名前を呼ばれ、志桜の心臓がとくりと跳ねた。冬の日に抱いた思いを、――彼に寄り添えたらと思ってしまった、烏滸がましいとすら感じる気持ちを、碧落に見透かされたような気がして。見上げれば、晴れ晴れとした彼の笑顔。
「俺さ、志桜の事が好きだ」
突然告げられた言葉に、頬が熱くなるのを感じる。真っ直ぐに伝えられた好意が、嬉しくないわけがない。
(「だけど」)
――その『好き』は、なぁに?
これほどまでに多くの種類に分けられる言葉があるだろうか。『好き』は千差万別で、果たして今の『好き』は――
(「勝手に期待して、同じじゃなければ泣くのは自分で」)
意味を問えたらどれだけ楽だろうか。溢れそうな気持を飲み込んで、志桜は口を開いた。
「わたしも好きだよ、ディイくん……」
――誰よりも。彼女は続く言葉を隠すように微笑んだ。
「志桜……?」
何よりも満足の行く答えを得られたはずだというのに、眉尻を下げた楚々とした笑みは、儚げで。どうにも心の底からの笑顔に思えなくて、ディイは彼女の手を取った。
「……行くか」
あの日と変わらず、温かい。手袋越しに伝わる熱を、互いに感じていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
好きな相手との思い出の話、か
ならば俺は宵と出会った時の事だろうか
近くの村の者に頼まれヒースを取りに行った丘で野営をしようとしていた際に偶然出会ったのだったな
星空を眺め簡易的なスープを食しつつ肉を得てから始めて楽しむ為の酒を飲んだのだったか
…初めて会ったというに随分深い話迄しあったのはきっと、宵が聞き上手なせいだろうな
かくあれと創られ望まれる侭在った俺の枷を外してくれたお前の言葉も、あの日共に眺めた北極星や星々の記憶は全て俺の大事な宝だ
そしてその思い出を隣で語り合え、そして毎日新たな思い出を重ねられる今をとても大事に思う
本当に、お前と出会えてよかった。…これからもよろしく頼む、な
逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と
ザッフィーロ君との幸せな思い出、ですか?
ふふ、たくさんありますよ
これまでにかれと過ごしたあらゆる時間がいずれも素敵な思い出ですが
僕の幸せな思い出の最たるものは、きみと過ごす何気ない毎日なんです
朝目が覚めるごとに真っ先に目にするきみのやさしい顔
栄養満点のきみお手製の料理、手を繋いでともに向かう依頼先
あれもこれもと選ぶ買い物、それから美味しい夕飯に舌鼓を打って
また一緒に眠りに就くのです
その繰り返しこそが、僕にとっては何よりもかけがえなく幸せな思い出なんですよ
僕を焼き焦がす僕のシリウス、何よりも美しい一等星
ええ、これからもよろしくお願いしますね、愛しいきみ
――すっかり日が落ちてしまったな。
近隣の村の者からの頼まれ事とはいえ、然して急ぎの用というわけでもなく。夜通し歩く事もあるまいと、ザッフィーロ・アドラツィオーネは野営の準備に取り掛かった。手早くテントを張ると火を起こし、簡素な具材を入れた鍋をかける。ふとヒースと共に数種類のハーブを採取したのだったと思い出し、籠に手を伸ばした。その時、火の向こうの茂みががさりと揺れた。
『すみません、明かりが見えたもので――』
驚かせてしまいましたか、と申し訳なさそうに草むらから顔を出したのは、背後の夜空に溶けてしまいそうな髪の、だが白い肌が絵画のように映えた――ヤドリガミだった。
(「これは……宵と出会った時の」)
食事を勧めたのは気紛れか、退屈な夜の戯れか。千切ったオゼイユの葉を入れたスープは少しばかり酸味が強くなってしまったが、彼は美味しいと笑ったのを覚えている。
『温まりますよ』
聖餐でない酒、要は単純に味わい、楽しむ為の――を飲んだのは、この日が初めてだ。頭上に広がる星々を肴に、饒舌ではないはずの自身が色々と話し込んでしまったのは、アルコールのせいだったのかもしれない。
(「……いや、宵が聞き上手なせいだろうな」)
ザッフィーロは記憶を慈しむように、目を細める。
(「かくあれと。創られ望まれる侭在った、俺の枷を外してくれた」)
繰り返される言霊に模られた聖職者でなく、『ザッフィーロ』を見つめる搗返の瞳は、あの日の極星の記憶と同じく大切な宝だ。素晴らしい事に彼との記憶はここで終わりではなく、今も、これからも続いていく。
ふふ、と。逢坂・宵は口元を緩めた。カーテンの隙間から差し込む朝日が起床時間である事を告げているが、胸に圧し掛かる重みがどうにも心地よい。
『ほら、宵が起きられないだろう』
急に抱き上げられ、にゃあと抗議の声が上がる。朝食だと告げつつ、いつになく猫を構うのは、ひょっとしたら嫉妬なのだろうか。
猫を独り占めされて寂しかったですかと揶揄い半分に声を掛ければ、予想と多少異なる答えを返された。
『……それもある』
も、とは。尋ねようとして、口を噤んだ。彼の褐色の肌では少しわかり辛いが、耳がほんのりと赤く色づいているではないか。
――まさか仲間外れで拗ねていたのだろうか。思わず吹き出してしまいそうになり、日々の糧に感謝の祈りを捧げる男から目を逸らした。
(「――幸せ、ですね」)
栄養バランスの考えられた手料理を共に食べ、手を繋いで依頼に向かう。肩を並べて戦い、時には互いを心配するあまりやきもきする事もあるが、安心して背を任せる事が出来る。揃って買い物に行けばあれもこれもとつい買い過ぎるきらいがあるが、二人で荷物を分ければどうという事はない。そうしてまた美味しい食事に舌鼓を打ち、温かな毛布に包まれて眠りにつく。
(「この繰り返しこそが、僕にとっては何よりもかけがえなく幸せな思い出なんですよ」)
陽に照らされた水面のように澄んだ銀が、瞼に隠されたのを見届けた瞬間。また大切な思い出が一つ増えたと、宵は幸せを噛み締めるのだ。
(「僕を焼き焦がす僕のシリウス、何よりも美しい一等星」)
おやすみなさい。優しい囁きが、暗闇に溶けた。
「本当に、お前と出会えてよかった」
「どうしたんですか、いきなり」
小さく笑い合う。互いに見た幻惑の内容は語らずとも、二人の思い出のうちの一つであろう事は想像に難くなく、最早確信に近い。視線が交わった。
「……これからもよろしく頼む、な」
「ええ、これからもよろしくお願いしますね、愛しいきみ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『刻一刻と変化する心身』
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POW : 気力を振り絞って最奥部まで向かう
SPD : 影響が出てしまう前に一気に駆け抜ける
WIZ : 何らかの手段で最短経路を見つける
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
懐かしい顔を見た。
懐かしい景色を見た。
繰り返される日々の、小さな幸せの積み重ねを。
人生を変える程の出来事を。
幸せな思い出を胸に、猟兵達は次の階層へと踏み込んだ。
――じわ、と。一滴の『疑念』が、心に滲む。
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
すらりと高い背に、白い肌。儚げ――と言えば聞こえは良いが、自信無さげに下がった眉はどちらかと言えば薄幸な印象の。
己を掻き抱き、音駆螺・鬱詐偽はふるりと身体を震わせた。蒸気に満ちた迷宮はむしろ暑いくらいであったが、嫌な予感と言うか、彼女に足を進める事を躊躇わせる『何か』があった。
ヴ……ン。撮影用ドローンが回り込み、鬱詐偽を正面から捉えた。条件反射的にポーズを決めたのは、流石はアイドルといった所だろうか。
「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上」
(「……って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ」)
全ては番組の為。自身に言い聞かせて歩き出すが、どうにも気分が優れない。
「今日の猟兵のお仕事は迷宮探索よ。ここの迷宮は『疑念』を植え付けるそうで――」
よりにもよって、何故私が。ネガティブな者をよりネガティブにする企画など、正気の沙汰とは思えない。
「という事で、絵面が地味なのは我慢して貰いたいの。ごめんね?」
そう、地味だ。精神的な罠など、視聴者に伝わり難い事この上ない。カメラに向かって可愛く謝罪してみたものの、いっそ土下座くらいすべきだろうかと思う。
「うう、道を間違えたみたい。ではさっきの道を左に……」
じわり。鬱詐偽の『疑念』が育つ。
「……っ、プロデューサー、この企画……本当に数字取れるの……?」
――オオオォ。
それは『猜疑心』。十の怪物が生まれ、唸り声を上げた。
「! バロックレギオンを追いかければ……」
召喚された怪物は、猜疑心を与えた対象を追跡する。恐らく彼らの行き先は、迷宮の罠を利用する災魔だ。
こうして鬱詐偽は最短経路を見つけ出す事に成功した。余談だが、視聴者の反応は悪くなかったそうだ。
成功
🔵🔵🔴
キャロ・エレフセレリア(サポート)
静かにしないといけない場面を除いて台詞に「!」が付く。うるさいくらいに元気
人を呼ぶ時は敵以外には誰にでも「名前+さん」
●戦闘
相棒機『メガロス』や各種ガジェット、アイテムを駆使する
『迷彩』で身を隠し『プチメガロス』で偵察しつつ敵を引きつけて、最大火力の『メガロス大爆炎波』を叩き込むのが好き
火力任せの面制圧からスナイパー技能を活かした狙撃や『メガシュピラーレ』で串刺しにして敵の動きを封じるなど、援護や中距離戦もできる
●冒険
情報収集、暗号作成にハッキングなど主に機械類に対する技能を発揮する
『武器改造』『防具改造』の技術でハッキングしやすいように改造するなど強硬手段も躊躇わない
「んー、どういう仕組みになってるのかな?」
迷宮の只中でその構造に気が向いてしまう辺り、根っからの職人とでも言うべきか。ふわふわと漂いながら、キャロ・エレフセレリアはあちらこちらに目を向けていた。
「精神に影響与えるとなると、魔導要素が強そうだよね! でも視覚的に暗示を掛けるような罠は見当たらないし、どこかに催眠の術式が……」
もしかしたら自身のガジェットに更なる改良を加える事が出来るかもしれない。既に足りない機能が思いつかない程に魔改造された相棒も、彼女にかかればその伸びしろは無限大だ。
「うーん、まだかなー! 待ちくたびれちゃう!」
パイプの上に腰掛け、ぐ、と大きく伸びをする。キャロは決して趣味に没頭していたわけではなく、サーチドローンを偵察に向かわせていたのだ。
「このフロアに災魔は居ないはずだしー……」
紅藤色のおさげをくるくると指先で遊ばせながら、口先を尖らせる。
「まさか故障?! いやでもメンテナンスしたし」
ああでもないこうでもない。考えれば考える程、よろしくない状況ばかりが思い浮かぶ。
「いや迷宮が想定以上に入り組んでたらプチメガロスも戻るまで時間が……メガロス?」
一人で百面相を繰り広げていたキャロは、はたと気付く。自分が心血を注いで作り上げたガジェットが、そんなに脆いわけがないではないか。
「アタシ、今『疑念』にとらわれてた?」
なるほどこれが迷宮の罠かと悟ったキャロは、ゴーグルを装着すると相棒へと跨った。
「プチメガロスの移動記録は……うん、おっけー! じゃあこれを解析して、っと」
すぐさま指を走らせたキャロは、自信ありげに口の端を上げる。視線の先に投射されたのは、迷宮の地図だ。
「最短ルートみっけ! 行くよ、メガロス!」
成功
🔵🔵🔴
逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と
「視力」「暗視」「野生の勘」にて行先の選択をしつつ迷宮を進みながら
ふと心のうちが曇る
普段は考えもせぬ手段が浮かぶのは、この迷宮のせいでしょうか
「未来が不安ならばいま、諸共永遠にしてしまえ」と黒い僕が囁く
もう棄てたはずのそれをちらつかせる悪魔の思考に動きが止まった瞬間、かれからの問いが投げられる
その瞬間、霧散する疑念に口元が緩み
ええ、しあわせです
きみといて、きみとまだ見ぬ未来を切り開き、新しい思い出を作ることの、なんと楽しみなことか
掴まれた手を握り返し
はい、幸せにしてください
きみも僕が幸せにします
一緒に幸せになりましょう
きみとならば、どんな未来でも前を向ける
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
宵と共に『地形の利用』を使い進みながらも、道を探る宵の後ろ姿を見ればじわりと得体のしれぬ焦燥感に襲われついぞ足を止めてしまう
肉を得た後共に過ごした所有者を愛しく思いながらも思いを伝えぬ侭亡くした時の様な
何かを間違えているのではないかと嫌な予感に心が騒ぐような―そんな心持ちに襲われれば宵、お前は今幸せかとそんな女々しい言葉が口に出てしまうやもしれん
だが、宵の笑みと共に紡がれた言の葉を聞けば、僅かに軽くなった心と共に手を伸ばし確りとその手指を掴まんと試みよう
…手を伸ばさず後悔する事は、もうせんと決めたのだったな
今がどうだとしてもお前は必ず俺が幸せにしてみせる故に。…さあ、先を急ぐか
「宵、どう思う」
「僕の勘を信じるのならこちらですね」
地形、距離、金属のパイプを伝う音。あらゆる情報を頼りにルートを選別していたザッフィーロ・アドラツィオーネも、幾度目かの分岐点で逢坂・宵に判断を委ねた。
「どちらとも選べぬ時は、お前の勘の方が当てになるからな」
「では僕が先に。他の通路より暗いようですし」
夜目の効く宵が前に出る。道幅も狭い上に、心なしか天井も低そうだ。
「ここパイプが出ているので気を付けてください。僕でぎりぎりの高さですね……少し様子を見てきます」
頭上を走る配管が所々突き出ており、注意しなければ頭をぶつけそうだと宵は足を速める。
「ああ、お前も気を付け、ろ……?」
宵の濡羽色の髪が影に飲まれてゆくのを目にすると同時、ザッフィーロの心臓がどくりと鳴った。焦燥。切迫感。それらに反し、足は棒切れにでもなったかのように動かない。
「……ええ」
返答はした。事実、宵は周囲に注意を払い、目を凝らして通路の先を探っている。だが、通路が想像以上に暗い。否、明るさの問題であろうか、この闇は。
――この感覚は、あの時に似ている。ザッフィーロには心当たりがあった。
自身の所有者は、幾度も変わった。人から人へ、時には国を渡り、しまいには世界すらも。
だからだろうか。限りある生を生きる人間と、器物であった自身に、一種の隔たりのようなモノを見出していたのは。
ザッフィーロが肉を得た後の事だ。当時、共に在った所有者を、少なからず愛しいと思っていた。
(「『思っていた』――だけだった」)
想いを伝える事が無いまま、所有者は逝った。今、ザッフィーロはその時に似た心のざわめきを感じている。伝えなかった事が果たして正しかったのかと自問自答を繰り返せど、答えは一向に分からない。悔いがある事だけは確かだ。
(「俺は間違えたのだろうか。俺は今……間違えている?」)
何を。明確な問いすらもわからない。わからない――
(「この、」)
迷宮のせいだ。でなければ、そのような。常であれば考えもせぬ、考えてはならぬ『手段』が脳裏を過ぎった宵は、自身の考えを一蹴する。
(「気の迷い……ですね」)
顔を上げた宵は、ひゅ、と息を飲んだ。このように暗かっただろうか、この道は。
先が見えぬ。――未来(さき)が、見えぬ。
『未来が不安ならば』
繰り返される幸せな日々も、いつかは終わりが来てしまうのではなかろうか。失う事がただ怖くて、それでもどす黒い感情を纏った『僕』に、宵に残された理性が願う。どうか、どうかその先を言わないで。
だが、黒い『僕』は囁いた。
『いま、諸共永遠にしてしまえ』
――なんと甘美な提案か。道を探る事を止め、その場に立ち尽くす。
ふらり。酷く頼りない足取りで、ザッフィーロは宵の後を追った。わからない。どうか答えを。
「宵、お前は……」
縋るような声が、酷く女々しいとザッフィーロは自嘲した。それでも愛しい人の背を認め、口を衝いた問いは止まらない。
「今、幸せか」
霧が晴れるように、宵の視界が開けた。突然明るくなったのは、きっと。
「ええ、しあわせです」
振り返ってザッフィーロを目にした宵は、自然と口元に笑みが浮かんだ。
「きみといて、きみとまだ見ぬ未来を切り開き、新しい思い出を作ることの、なんと楽しみなことか」
花が綻ぶように微笑んだ宵に、ザッフィーロの拳が解ける。
(「きみとならば、どんな未来でも前を向ける」)
(「……手を伸ばさず後悔する事は、もうせんと決めたのだったな」)
そっと指を絡めれば、宵はその手を硬く握り返した。
「今がどうだとしても……お前は必ず俺が幸せにしてみせる故に」
「はい、幸せにしてください――きみも僕が幸せにします」
一緒に、幸せに。確かな歩調で、二人は前に進む。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
コイスル・スズリズム
SPD
「疑うな」かぁ
ポケットから取り出した友達に貰ったテレビウムグミと
私がこの世界で購入した、傘の形をしたチョコレートを口に含む
確かな味。
懐かしいあの子が出てきたことはあの子への友情を
―――疑うよりありがたいことだと信じてたい。これからもずっとね
久しぶりに走ろうかな
入口から一気に「ダッシュ」で全力で駆け抜ける
体を動かして、魔法学園で覚えた魔法を使ってれば、考えなんて吹き飛ぶはずだよ!
口ずさむ歌「UC」は、高速でジャジーに
これは現在ここにいる私がその場で作るこれからの曲!
自分自身を疑わないための曲!
駆け抜けたら、
あんまりいい趣味じゃないみたいだね。迷宮主さん。
そろそろ、あえそうかな
アドリブ大歓迎
つぶらな瞳でこちらを見つめてくる、カラフルな二頭身のテレビウム――のグミを一つ摘まみ、ひょいと口の中に放り込む。むにゅりと形が変わるのを少しだけ堪能した後、歯に当たる感触を楽しみながら咀嚼する。こくん。
「『疑うな』かぁ」
かさかさ。グミを飲み下したコイスル・スズリズムが次にポケットから取り出したのは、傘の形をしたチョコレート。剥がした包み紙をポケットに戻し、齧る。
(「前の世界にも似たようなチョコはあったけど」)
小さな頃に食したそれは、これよりもずっと甘いミルクチョコレートだったように思う。今、口の中にあるチョコはどちらかと言えばコーヒーのお供にしたい濃厚な味で。
この世界で得た、確かな味。元の世界にあった物と似て非なる、コイスルがこの世界で出会った味。
「――久しぶりに走ろうかな」
言うが早いか、床を蹴る。平坦とは程遠い床と曲がりくねった通路は決して走り易い環境とは言い難いが、コイスルは加速した。
(「あの子への友情を――疑うよりありがたいことだと信じてたい」)
「これからもずっと、ね」
振り払うように、吹き飛ばすように。学生服の裾を翻して駆けるコイスルが、大きく息を吸った。それは呼吸を整える為ではなく、
「――♪」
声を張り上げた。歯車が回る音にも蒸気が吹き出す音にも負けずに、迷宮内にコイスルの歌声が響く。ジャジーな、だが既存のどのジャズ曲とも異なる、たった一つの。
(「これは! 現在ここにいる私がその場で作る、これからの曲!」)
足はアップテンポの曲に負けじと動き、口はトップスピードを維持する足に負けじと滑らかに回り、まるで一人で競争しているような身体がいっそ愉快だとコイスルは笑う。
(「これは、自分自身を疑わないための曲!」)
微かに脳裏を掠めた疑念を置いてけぼりに、前へ、前へ、駆ける、歌う。
はあ、と大きく息を吐いた。どくどくと脈打つ心臓の音に、心地よい疲労感を覚える。
「あんまりいい趣味じゃないみたいだね。迷宮主さん」
にこりと微笑んだコイスルは、駆け抜けた通路を振り返る事なく、次の階層へ向かった。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
着飾った紳士淑女がさざめく目映く煌めく帝都の夜
「…でもそれを、好まぬ方も居るのでしたね」
UC「ノームの召喚」使用
迷宮の地図作成を引続き依頼
大正の夜を滅ぼさんとする者として、幻朧戦線と…影朧の瓜子姫を思い出した
童話や民話で植物から生まれた主人公は多くない
竹取姫は月の罪人で違う
私が知るのは桃太郎と瓜子姫くらい
桃太郎は人を助ける英雄
瓜子姫は何重もの意味で人に背く人外
親の教えを守らず殺され
人を騙し続けようとしてまた殺される
人由来の皮剥ぎの殺人鬼が
行為から瓜子姫を名乗ろうと
人外の私はそう名乗る影朧を許せない
「ごめんなさい、行きましょう」
ノームにつつかれ地図見てまた歩き出す
何だろう頭が重い
早く抜けなくては
「おいでおいで、土小人」
ぽこ、ぽこり。もぐらが顔を出すように床が盛り上がり、たくさんのノーム達が姿を現した。
「私に進むべき道を教えておくれ」
御園・桜花が歌うように告げれば、ノームはぴょこぴょこと跳ね、あちらこちらへと散っていった。建造物の中とはいえ、地下は彼らの領分だ。下手に動き回れば悪手になりかねない以上、慎重すぎるくらいが良い。
そうしてノームが作り上げた地図は、思いの外精巧な仕上がりだった。流石、六十以上の人員を投じただけはある。桜花は地図を片手に、新たな階層へと足を踏み入れた。
「……と、次は右ですね」
ふと入り組んだ通路が、帝都の繁華街の路地と似ているように思った。地下迷宮と違い、あちらは何処も彼処も眩く煌いているけれど――
「……でもそれを、好まぬ方も居るのでしたね」
大正の夜を滅ぼさんとする者。影朧に限らず、幻朧戦線などと名乗る犯罪者まで居るのだからたちが悪い。
「それに……」
以前相対した影朧の姿が過ぎり、唇を噛む。己が宿縁というわけではないが、こんなにも心をざわつかせるのは、自身が幻朧桜より生まれたからか。
(「童話や民話で植物から生まれた主人公は多くない」)
桃太郎然り、瓜子姫然り。桜花と同じく、人ならざる存在だ。だが、あの影朧は。
(「人由来の皮剥ぎの殺人鬼がその名を騙るなど――人外の私はそう名乗る影朧を許せない」)
桜の精と言えど、或いは桜の精だから。荒ぶる魂へ癒しを与える存在であっても、全てを赦すなどと――
――つん。
桜花が如何ともし難い感情の波に飲まれそうになっているのを知ってか知らずか、足を止めた彼女をノームがつついた。はたと我に返る。
「っ、ごめんなさい……行きましょう」
皺の寄った地図を伸ばし、心配そうに見上げるノームに微笑んだ。
(「……何だろう、頭が重い」)
早く抜けなくては――。顔を上げ、桜花は足を速めた。
成功
🔵🔵🔴
ディイ・ディー
🎲🌸
先程の志桜の顔
あの笑みの裏にはどんな感情が隠れているのか
浮かぶ疑念
手を繋いでいる筈なのに距離が遠く感じる
思えば彼女に話してない事が多い
(多くの人を呪い殺して来た事
その際に得た霊力で生きている事
そう知っても尚、俺の傍に居てくれるのか
違う、問題は
こんな俺が志桜の傍に居ていいのか、だ)
志桜、きっとお前も
俺の全部を知ったら離れていくんだろ
好きだってのも表面しか見てないからだ
普段は良い奴を装ってるが
本当はお前が泣く姿や思い悩む姿も好きだ
人が苦しみが歓びだなんて
この身は呪いの産物でしかないんだ
……俺もお前も、我儘だよな
ま、知ってたさ
突き放す訳が無いだろ
嫌だと言われても
この手は絶対に離してやらねえ
荻原・志桜
🎲🌸
どうしてだろう
彼がいるのに不安が消えない
握る手も次の瞬間に振り払われるかもしれない
もしもを想像すれば指先が冷たくなる気がした
ふと彼の纏う空気が仄暗くいつもと違うように感じて
思わず手を引いて見上げる
表面しか? 決めつけないで
良い人を装ってるのだって別にいいじゃん
抱えてるもの纏めて全部がわたしだと言うなら、
ディイくんだってそういうの纏めて全部のディイくんでしょ?
どんなアナタでも変わらず言うよ
嫌いになんてなってあげない
離れることもしてあげない
アナタからわたしを突き放すまでは、絶対に
きっとこれは綺麗なだけじゃない
確証なんてないのに彼を想う気持ちはずっと褪せることはなく
揺らぐこともないと信じてる
「んー……こっち?」
「右……に曲がると、距離的にさっきの分岐に戻っちまう可能性が高いな」
「じゃあ左!」
余計な事を考えないように、ある意味ではいつも通りにディイ・ディーと荻原・志桜は迷宮を進んでいた。特に志桜は努めて明るく振る舞っていたが、徐々に口数は減っていく。疲れたわけではない。ただ――
(「どうしてだろう」)
言いようのない、不安。得体の知れない何かが背後からにじり寄ってくるような焦燥が、これが『疑念』だとでも言うのだろうか。
「あの、ね……ううん、やっぱりなんでもない!」
彼に頼ろうとして、急に躊躇われた。取り繕うようににこりと笑う。
(「もしも、この手を振り払われてしまったら」)
彼に包まれて温かいはずの手が、指先から冷えてくるような感覚。もしも、もしも、もしも――、口に出せぬまま、志桜の中で嫌な考えばかりが渦巻いてゆく。
(「まただ」)
ディイは眉間に皺を寄せた。胸というか腹というか、臓腑にじくじくと滲み出るような不快感を感じる。わからない。胸がざわつく理由も、彼女が笑顔の裏に何を隠しているのかも。
(「手を繋いでいる筈なのに」)
彼女が、遠い。そう思ってから、ディイは口元を歪ませた。自分とて、彼女にどれ程の事を隠しているだろう。
(「……思えば彼女に話してない事が多い」)
呪われた印を晒し、永らく溜め込んだ呪力を打ち明けた。しかしその呪いが人を死に至らしめる程のものである事も、多くの者が餌食になっている事も、――その際に得た霊力が己を生かしている事も。結局は話していないではないか。仮に話したとして、
(「そう知っても尚、俺の傍に居てくれるのか?」)
心の中で問い、かぶりを振った。
(「違う、問題は――」)
違う、と志桜は思った。辺りの雰囲気というか、急に黙り込んだディイの纏う空気が、違う。見上げれば天色の瞳が心なしか曇っていて、不安が大きくなる。どうしたの。口にしない代わりに、くい、と手を引いた。
手を引かれたディイが首を動かせば、こちらをみつめる志桜と目が合った。大きな花萌葱は不安に揺れている。このような顔をさせているのは、他でもない自分で。
(「問題は……こんな俺が志桜の傍に居ていいのか、だ」)
「志桜」
不安にさせまいと、名を呼んだはずだった。だというのに。
「きっとお前も、俺の全部を知ったら離れていくんだろ……?」
口を衝いた言葉は、今言うべき事でもないと分かっていて。それでもディイの溢れ出した感情は止まらない。
「好きだってのも表面しか見てないからだ」
「表面しか? そんな、決めつけな……」
「普段は! 良い奴を装ってるが、本当は! ……お前が泣く姿や思い悩む姿も好きだ。人の苦しみが歓びだなんて――」
――この身は呪いの産物でしかないんだ。掠れた声が、嫌に重く響く。ディイは志桜の小刻みに震える肩を見やり、それでも繋いだ手を離せない未練がましさを自嘲した。だが。
「……良い人を装ってるのだって、別にいいじゃん」
ぽつりと呟き、顔を上げた志桜は柳眉を逆立てていて。
「抱えてるもの纏めて全部がわたしだと言うなら、ディイくんだって……! そういうの、纏めて全部ディイくんでしょ?」
志桜を傷つけそうな事を言いながら、どちらかと言えば酷く傷ついた顔をしていたのはディイの方だ。そんな彼を見て、志桜はふわりと微笑んだ。
「どんなアナタでも変わらず言うよ。嫌いになんてなってあげない」
(「敵わねえな」)
志桜のいつもと変わらぬ笑顔に釣られ、ディイも思わず破顔した。
「……俺もお前も、我儘だよな」
呆れたような声色は、果たしてどちらに呆れての事だろうか。
「離れることもしてあげない。アナタからわたしを突き放すまでは、絶対に」
我儘ついでとばかりに、志桜はぎゅうと握る手に力を籠める。
「……突き放す訳が無いだろ」
そっと優しく、それでも解ける事が無いようにしっかりと、ディイは彼女の手を握り返した。
(「嫌だと言われても、この手は絶対に離してやらねえ」)
(「確証なんてないけれど。ディイくんを想う気持ちは、きっと、ずっと――」)
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
音駆螺・鬱詐偽
ただ走っているシーンなんて、当然CM入ってるわよね。
こうして迷宮の中をレギオン達を追いかけて走っていると、だんだん不安になってくるのよ。
あの子たちが一人、二人といなくなっていって、最後には迷宮の奥で私一人が取り残される、そんな気がしてくるのよ。
ふふ、今度は災魔に就職なのかしら?
え、ここで視聴者からのお手紙って、
・・・、ええ、私頑張る、応援ありがとうね。
あれ、なんで私のさっきの愚痴がバレているのかしら?
ちょっと、プロデューサー、CM入ってないじゃないの!!
吹き出す蒸気の音。歯車の擦れる音。その通路を駆け抜ける、音駆螺・鬱詐偽自身の足音。
(「ただ走っているシーンなんて、当然CM入ってるわよね」)
もちろん彼女も最初のうちは番組としての面白さを意識して、あれこれと迷宮の内部について紹介していた。だが、如何せん迷宮の景色が単調過ぎる。加えてこのフロアがどの程度の広さかわかっていない事もあり、トークに力を入れ過ぎて後半で息切れを起こすような事は避けたい。
自然と口数は減り、今に至る。現在、鬱詐偽が駆けているのはただの薄暗い通路だ。曲がりくねった配管が左右の壁にあるだけで特段変わった所もなく、観て面白い物でもなければ、コメントにも困る。
「……少なくとも、ここを抜けるまではコマーシャル……よね」
そう思うといくらか張り詰めていた気が緩み、鬱詐偽はふうと小さく息を吐いた。とはいえ、バロックレギオンを見失うわけにはいかない。顔を上げれば彼らと少し距離が開いており、慌てて速度を上げる。
「こうして迷宮の中をレギオン達を追いかけて走っていると、だんだん不安になってくるのよ……」
ぽつりと零れた、弱音。
「あの子たちが一人、二人といなくなっていって……最後には迷宮の奥で私一人が取り残される、そんな気がしてくるのよ」
誰に聞かせるでもなく紡がれる言葉は、その性格由来のものか、迷宮の罠か。視線はしっかりとバロックレギオンを捉えているにも関わらず、何処か遠くを見ているかのように虚ろだ。
「ふ、ふふ……今度は災魔に就職なのかしら?」
大きな瞳が潤んだ。電子の海でも骸の海でもなく、地下迷宮で独りぼっち。ああ、なんという孤独なのだろう――その時、悲嘆に暮れる鬱詐偽の携帯端末にメッセージが表示された。
「え、ここで視聴者からのお手紙って」
『頑張って!』
「……、ええ、私頑張る、応援ありがとうね」
『疲れてない? 大丈夫?』
「平気よ、まだ走れるもの」
『一人じゃないよー! ちゃんと観てるよ!』
「ありが……観て? え、ちょっと、観てるって、今?」
しばしの間。状況を把握した鬱詐偽は、疑念どころか収録中という事も忘れて絶叫した。
「ちょっと、プロデューサー、CM入ってないじゃないの!!」
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『伝説のヒロイン』
|
POW : 皆がいてくれれば、悪役令嬢なんかに絶対負けない!
【炎の魔力を操る攻略対象のイケメン騎士 】【水の魔力を操る攻略対象のイケメン神官】【風の魔力を操る攻略対象のイケメン魔法使い】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 大丈夫!私は伝説のヒロインだから間違えないわ!
【攻略本に全部書いてあるので 】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 皆、信じてるわ…!(コントローラーガチャガチャ)
【最適な選択肢に記されたヒロインの台詞 】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:如月マイカ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「マヒル・シルバームーン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「あれ?」
不思議そうに小首を傾げたのは、学生服に身を包んだ少女。
「もっとこう、凹んだり派手に喧嘩したりすると思ってたのに……うーん、あんまり面白くない……」
ぶつぶつと独り言を言っていた彼女は、猟兵達の視線に気付くと慌てて科を作った。
「あ、あなたたち……猟兵ね? 酷いわ! 私達の仲を引き裂こうとするなんて……!」
唐突な悲劇のヒロインムーブである。
「でも、あなたたちにイケメンの彼を自慢……じゃなかった、私達の仲の良さを見せつけ……じゃなくて、えっと……私! 負けないから!」
少女を守るように、複数の男性が姿を現した。――どうやら、攻略対象全員の好感度を上げた、所謂『逆ハーレム』状態らしい。
「みんな、私達の幸せの為に……頑張ろ?」
それはそれは大層可愛らしい仕草でおねだりをするヒロインは、ただただあざとかった。
日埜・晴翔
アドリブ/連携歓迎
乙女ゲーの世界だと思ってんなら、あのコを落とせば勝ちなんじゃね?
攻略できるか、されるか、ゲーマーの勝負!/UC
ハーレムEDってさ、攻略キャラ同士で揉めないように調整するのが大変じゃね?
その上EDでやっとくっつくからゲーム中は恋人関係じゃ無いことが多いっつーかさぁ、あと一歩のもどかしい感じが物足りなくねぇ?
と、ゲーマー同士話が合わないかと話しかける/誘惑、(心を)盗み攻撃
攻略キャラ達はパラメーターチェックできるかな/情報収集
好感度が1でも下がってたら、突きようがあるかもしれねぇ。
会話を続けながらコントローラの操作やゲーム自体のハッキング狙う。
ハーレムは少しのミスが命取りってな!
音駆螺・鬱詐偽
で、で、で、伝説のヒロインが相手なんて、私が勝てる訳ないじゃないの。
そんな当て付けのようにイケメンの彼氏を見せつけて。
そうよ、こんなネガティブな私に彼氏なんて出来る訳ないじゃないの。
あっ、ついいつもの癖で言ってしまったわ。
こんな嫌味な台詞を言えば、私が嫌われるのは当然よね。
えっ、どうしてこんな私に応援が来るの?
昔だったら、ここで捨て台詞を吐いて立ち去るけど、なんだかみんなからのネガティブな力が後押ししてくれる気がするの。
私、ヒロインに打ち勝ってくるわ。
「で、で、伝説のヒロインが相手なんて、私が勝てる訳ないじゃないの」
戦う前から絶望的な表情で、音駆螺・鬱詐偽は頽れた。片や溌溂とした健康的美少女、片や愁いを帯びた表情が魅力的なアイドル。方向性は違えど悲観する必要はないはずだが、こと自己評価の低さにおいては鬱詐偽の右に出るものは居ない。
そんな彼女の事情は露知らず、日埜・晴翔は思いついた事をそのまま口に出した。
「乙女ゲーの世界だと思ってんなら、あのコを落とせば勝ちなんじゃね?」
ちょっと攻略してみるわ、と言われた鬱詐偽は白い顔を更に白くする。
「うう、仲間だと思ってた猟兵まで彼女の魅力に……、やっぱり本物のヒロインは違うのね……」
「本気のわけねぇって。勘弁してくれ」
作戦があるからと晴翔が鬱詐偽に耳打ちをすれば、放ったらかしにされたと思ったのか、ヒロインが幾らか焦れた様子で声を張り上げた。
「何をこそこそ話してるの? みんな、ここは先手必勝よ!」
歩み出たのは三人の男。同時に、猟兵達を突風が襲う。
「きゃあっ」
落ち込んで低い姿勢になっていたのが幸いし、風の刃は鬱詐偽の頭上を通過した。少しずれれば顔を切り裂かれたかもしれない『恐怖心』からバロックレギオンが生まれるが、甲冑姿の男に阻まれ、思うように攻められない。
「私達、自慢のパーティなの」
ヒロインの言葉に共感したのか、頷いた男達がより力を増したように感じられた。だが晴翔は焦る事なく、むしろ彼女の言葉に同意を示す。
「あー、バランス良いよな。タンクの騎士に火力高い魔法使いも居て、そっちの神官が補助だろ?」
「あ、わかるぅ?」
(「――掴みは上々」)
に、と晴翔は口の端を上げた。彼はレンズの向こうに娯楽を見出し、ターゲットを見定める。ゲーム、開始。
「ハーレムEDってさ、攻略キャラ同士で揉めないように調整するのが大変じゃね?」
「そうそう、気を付けないとヤンデレルート入るキャラが居たりね!」
「そりゃ難度高そうだ」
魔法使いが操る風を避けながら、気安い会話を継続する。ヒロインも食いつくが、実際の所は腹の探り合いだ。攻略するかされるか、二人のゲーマーが火花を散らす。
「ゲーム中は恋人関係じゃ無いことが多いっつーかさぁ、あと一歩のもどかしい感じが物足りなくねぇ?」
「そこが楽しいんじゃない。特定の人とくっついちゃったらハーレムにならないでしょ?」
「なるほど」
全員と好感度が十分でかつ関係は恋人未満、それがハーレム。思わぬ所で乙女ゲームを履修する事になった晴翔の靴底が、キラキラと光った。
「ええ? そこを楽しめるとか恋愛強者の台詞じゃない……しかもイケメン騎士けしかけてくるとか私への当て付けなの?」
対して鬱詐偽はヒロインの言葉を聞けば聞くほど『彼氏が居ないのに……』とネガティブに拍車をかけていた。
「そうよ、こんなネガティブな私に彼氏なんて出来る訳ないじゃないの」
負の無限ループに突入である。思わず足を止めた鬱詐偽に、騎士の炎を宿す剣が迫る――が。
『おい、補助魔法しっかりしろよ!』
『何故、私が恋敵のサポートなど』
「は?」
突然の仲間割れ。状況が理解出来ないのか、少女はぽかんと口を開けて佇んでいた。ヒロインとして如何なものかと思われる表情に、堪らず晴翔が吹き出した。
「ははっ、ハーレムは少しのミスが命取り……ってな!」
「え、嘘! 神官の好感度が!」
晴翔との会話へと意識が逸れた僅かな隙を、晴翔は突いた。十分に成功率を高めたハッキングは、見事に神官のパラメータの改ざんを成したのだ。
「くっ……前回のセーブから!」
言い争う男達がその場から消える。今が好機だ、と晴翔が声を上げれば、鬱詐偽はしっかりと顔を上げた。
「私、ヒロインに打ち勝ってくるわ……!」
鬱詐偽の急な変化にヒロインが戸惑う。早くイケメン達を再召喚しなければ。がちゃがちゃとコントローラーが音を立てる。
(「昔だったら、ここで捨て台詞を吐いて立ち去るけど、なんだかみんなからのネガティブな力が後押ししてくれる気がするの」)
『イケメンばっか。顔面格差辛い』
『なんであれがモテてあたしに彼氏できないの……』
『鬱詐偽ちゃんまだ若いけど私なんか――』
『男の敵!』
多くの視聴者達の声援――という名の怨嗟に強化された鬱詐偽のレギオン達が、ヒロインに群がった。ヒロインの悲鳴が上がる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ディイ・ディー
🎲🌸
心を揺らがされるなんて不覚
お陰で志桜に伝えたい事は出来たが、話は後だ
カードを掲げて邪式発動
来い、賽の目の肆――イカル!
黒猫の霊体を呪炎に変え、漆黒の焔を妖刀に纏わせ前へ
確かに人の生は或る意味でゲームかもな
だが、選択肢は間違えたって問題ない
俺達の通ってきた道がその証だ
出てきたイケメン共を散らすように刃を振るう
蒼炎の鐐で防御しつつ、刃先を突き付け
そいつらより俺様の方が断然カッコいい!
それから、俺にとってのヒロインは志桜!!
お前らに恨みはないが、とにかくぶっ飛ば……うわっ
志桜、やりすぎだ。然し丁度良い。このまま決めるぜ!
逆ハーレムか何か知らねーが
俺が選ぶのは一途!純愛!トゥルーエンドだッ!!
荻原・志桜
🎲🌸
いけめん…? あれがイケメンなの??
んー、格好良いかもしれないけど
自分は好みじゃなくて首を傾げるしかない
杖を振るって凍えるような冷気を杖先に集束させ
共に戦う彼のタイミングに合わせて魔弾を撃つ
――凍てつけ、イケメン(仮)たち!
氷結で相手の動きを制限できれば上々
そうそう、ディイくんの方がカッコイイ
だから彼らに興味持てないんだと納得して
ヒロインもわた、し――…ひゃい?!
思わず威力調整に失敗して撃ち放つ魔弾
敵に止めを刺す勢いの氷山を作り上げて自分が驚く
ご、ごめん! ディイくん大丈夫だった…?!
わ、わたしだって!
ひとりだけを好きになるし、一途に想ってもらいたいもん!
そんな逆ハーレムいりません…!
「さっきは不覚を取ったけど、まだまだ甘いわね。セーブデータは複数用意するのが基本だもの!」
他の猟兵達にしてやられたのも何のその、と『伝説のヒロイン』は三人の男達を改めて呼び出した。自慢のパーティ構成にしたり顔を見せるが、対する荻原・志桜はこてんと小首を傾げた。
「いけめん……? あれがイケメンなの?」
「何よ、文句あるの?!」
「んー、格好良いかもしれないけど」
確かに整った顔立ちはしているが、どうも志桜にはしっくりこない。まあ主観的なものだよねと自身を納得させつつ、無意識に傍らのディイ・ディーを見上げた。
(「……心を揺らがされるなんて不覚」)
自身の気持ちに向き合う事も出来たし、彼女の覚悟も知った。とはいえこのような形で吐露する事になったのは、ディイにとってはただただ不本意だ。
「そこの男はこっちを見もしないし……! みんな、敵は油断しているわ。やりましょう!」
心ここにあらずといった様子で悶々とするディイの様子が、まるでお前など眼中に無いと言われているようで。激昂したヒロインが、男達に指示を飛ばす。
(「お陰で志桜に伝えたい事は出来たが」)
ごうと音を立て、ディイに風の刃が迫る。空気の流れを感じ取り、彼は黒鉄色の刀を抜いた。
「話は後だ」
ぐいと志桜の腰に手を回し、横へ跳ぶ。直後、二人の居た場所に鋭利な刃物で切りつけたような跡が刻まれた。次いで騎士が二人に迫り、間髪を入れずに炎を纏った剣が振り下ろされる。
――ギィ……ン。
ディイは刀の棟で受け流し、跳ね上げる。無防備になった騎士の腹部に冷気の塊が叩きつけられた。志桜の魔弾だ。鎧に阻まれ致命傷には至らないが、分が悪いと判断したか、騎士は後方へ飛び退る。
「そっちも炎の剣か。なら……来い、賽の目の肆――イカル!」
ディイの掲げたカードから、音も無く黒猫が現れた。その姿は陽炎のように揺らぎ、妖刀に絡みつく。
「確かに人の生は或る意味でゲームかもな。だが、選択肢は間違えたって問題ない」
――俺達の通ってきた道がその証だ、そう言って小さく笑ったディイに、再び刃が向けられた。意味が分からないとでも言いたげに眉根を寄せたヒロインの表情に、この災魔と分かり合える事は無いと悟る。敵の斬撃をひたすら蒼炎で防ぐディイを援護すべく、志桜は小さな花の咲く杖先に魔力を集中させた。
「――凍てつけ、イケメンたち!」
ただし、仮称。好みの問題とはいえ、そこは譲れない。超低温の魔弾が飛び交い、騎士の動きが鈍ったのを認めたディイは彼らを刃先で指し、宣言するように声を張り上げた。
「そいつらより俺様の方が断然カッコいい!」
そこで志桜はイケメン(仮)をイケメンと思えない理由を理解し、全面的に同意を示す。
「そうそう、ディイくんの方がカッコイイ!」
「それから、俺にとってのヒロインは志桜!!」
「そうそう、ヒロインもわた、し――……ひゃい?!」
見事なまでに声が裏返ったその一瞬、彼女の魔力制御の概念が意識の彼方に消えた。
ゴォオオオオッ!
イケメン魔法使いの風魔法すら飲み込むブリザードが吹き荒れる。魔弾の大暴投は床に当たって炸裂し、辺り一面を凍てつかせた。
「お前らに恨みはないが、とにかくぶっ飛ば……うわ」
「ご、ごめん! ディイくん大丈夫だった……?!」
地下迷宮に突如誕生した氷河期フロアにディイも思わず絶句したが、これは好機だと思い直す。
「志桜、やりすぎだ。然し丁度良い。このまま決めるぜ!」
床まで凍り付いた今、迂闊に動けば足を取られる。攻めあぐねる敵に対し、ディイは滑るように突撃した。
「逆ハーレムか何か知らねーが――俺が選ぶのは一途! 純愛! トゥルーエンドだッ!!」
「きっ……綺麗事言ってんじゃないわよッ!」
「わ、わたしだって! ひとりだけを好きになるし、一途に想ってもらいたいもん!」
ディイの呪炎が、志桜の魔法が男達を捉えた。直撃を受けた彼らは、反撃の機会を得られないまま粒子となって消えてゆく。
「そんな、みんなが……! 私達の絆が負けるなんてありえない」
本気か演技か図りかねるが、ヒロインがよよと泣き崩れた。その視線の先に居る猟兵達はと言うと、
「ディイくんカッコよかった……」
「志桜もすごいじゃねえか」
見つめ合い、顔を綻ばせていた。ヒロインがぎりと唇を噛む。
「他人様の男を消しといて何いちゃいちゃしてんのよ……! もうっ、リア充、爆ぜろーッ!」
地下迷宮に、ヒロインらしからぬ叫びが木霊した。
大成功
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逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と
喧嘩するほど仲がいいとも申しますが
いまの僕とザッフィーロ君の間にはその言葉は無縁ですねぇ
ザッフィーロ君の顔はそれはそれは如何なる秀才による彫刻もかくやと言うほど美しいですが……
顔だけが好みなわけではありませんからね
彼のさらなる良さは僕だけ知っていればよいのです
敵へと踏み込むザッフィーロ君の援護を「衝撃波」「吹き飛ばし」で行いつつ
すかさず己を守る彼に感謝の言葉を述べてから
「属性攻撃」「全力魔法」「マヒ攻撃」を加えた
【天航アストロゲーション】で攻撃しましょう
彼の言葉には困ったように眉を下げ
僕はどうせならきみのための言葉を言いたいのですが
それとも、口説かれてくれます?
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
喧嘩…?する訳なかろうに
俺と宵と間に在る信頼はその程度では揺るがんからな
顔の良い者を好んでいる…表面の肉皮に捉われて居るお前には解らんだろうが、な
戦闘と同時に『早業』にて踏み込み『怪力』を乗せたメイスを振るう
女子は護るべき物ではあるが…人の不幸を願う者は好かんのでな
その後は前衛に立ち宵へ向かう攻撃を『盾・武器受け』にて受け『かば』いながら【蝗達の晩餐】を至近から放とう
もし敵の台詞を聞けば、宵、試しに言って見てはくれんかとついぞ軽口を
宵の紡ぐ言葉ならば心に響くと思うのだが…と
口説くというが…俺はお前に惚れ込んで居るからな。…あー…なんだ。そのこれ以上夢中になっては困る…だろう?
「嘘よ、私の考えた最強のパーティが……」
最高の布陣と信じていたイケメン三人が尽く猟兵達に蹴散らされ、『伝説のヒロイン』は酷く落胆していた。
『どうしたんだい?』
心配そうに顔を覗き込むイケメン達に「あんたらが弱いからだ」と八つ当たりしたい思いに苛まれるも、その台詞は最適解ではないからとぐっと堪える。
「しかも何? 喧嘩どころかおてて繋いで仲良く突破とかどういう事なの」
ザッフィーロ・アドラツィオーネと逢坂・宵は恨みがましい視線を向けられるも、不思議そうにきょとんとして答えた。
「喧嘩? する訳なかろうに」
喧嘩する程仲が良いとは申しますが、と宵はころころと笑う。
「いまの僕とザッフィーロ君の間にはその言葉は無縁ですねぇ」
「俺と宵と間に在る信頼はその程度では揺るがんからな」
どうにも腑に落ちないといった表情のヒロインに、ザッフィーロは苦笑を漏らした。
「……顔の良い者を好んでいる――表面の肉皮に捉われて居るお前には解らんだろうが、な」
「何が悪いのよ! そっちだって似たようなものでしょ?!」
「確かに……ザッフィーロ君の顔はそれはそれは如何なる秀才による彫刻もかくやと言うほど美しいですが」
「え、何この人。何で真面目腐った顔で惚気てんの?」
乙女ゲームのイケメン達にも負けていない、むしろザッフィーロ君に軍配が上がるのでは? もちろん顔だけではないけれど。そう心の底から信じている宵に、冗談を言っている素振りは微塵も無い。ややもすれば二人の世界を構築しそうな彼らに、ヒロインも「もういいわ」と肩を落とした。すかさず彼女を悲しませる輩は許さない云々とがなり立て、少女の取り巻きが武器を取る。
「まるでこちらが悪役だ」
剣を手に突撃してくる騎士を見やり、ザッフィーロは敢えて踏み込んだ。武器のリーチによる不利を、力業で押し込める。まともに打ち合っては刃毀れでは済まない上に、彼の早業は剣技の敏捷性に引けを取らない。防戦一方になってしまった騎士を援護すべく、魔法使いが杖を掲げた。
「させませんよ」
魔法には、魔法を。風の刃がザッフィーロ目掛けて放たれるが、全て宵の衝撃波が相殺する。一連の流れを観ていたヒロインが、芝居がかった口調で大仰に嘆いた。
「やめて! 私はもう……大好きなみんなが傷つくのを見たくないッ」
少女の声を聞くなり、男達に闘志が漲った。それまで補助に徹していた神官までもが水の魔法を放ち、先程とは比べ物にならない風と剣技が猟兵を襲う。
ザッフィーロは即座に展開した盾でそれらを受け、腰を落とし、耐える。
「大丈夫ですか!」
「……宵、試しに言ってみてはくれんか」
敵の台詞も宵の紡ぐ言葉ならば心に響くかもしれぬ、などと言われ、少しの逡巡の後、宵が口を開く。
「ザッフィーロ君が傷つくのを……」
「その、前」
「軽口を叩けるのなら大丈夫そうですね」
――『大好きなザッフィーロ君が』。どうせ伝えるならば、他人の台詞を借りるのではなく――と宵は眉尻を下げた。
「僕はどうせならきみのための言葉を言いたいのですが」
宵はふと悪戯を思いついた子供のように微笑み、尋ねる。
「それとも、口説かれてくれます?」
「口説っ……あー、なんだ。その……これ以上夢中になっては困る、だろう?」
敵の攻撃を凌ぎ切ったタイミングで、或いはただの照れ隠しに、ザッフィーロは前に出た。床に落ちた彼の影がざぶりと膨れ上がり、意思を持っているかのように黒い霧が広がる。
「きゃ……!」
蠢く影は、一つ一つが蝗の姿をしていた。ザッフィーロの身に宿っていた罪穢は蝗災となり、災魔達を飲み込んでいく。
「彼女の台詞を言わせようとしたのはきみの方ではありませんか」
宵が杖の先を彼女――ヒロインへと向けると、天井に魔法陣が浮かんだ。アストロラーベにも似た紋様から生れ出たのは、星の欠片。いつもならば守ってくれるはずの男達は蝗に群がられて身動きが取れず、いくら広いと言えどたかが知れている迷宮の中で、頭上に落ちてくる隕石を避ける術などあるだろうか。
「……これは、攻略本に無かったわ」
ぽつ、とヒロインが呟いた直後、星が落ちた。轟音。決して小さくない傷を刻まれ、ヒロインがよろめいた。
大成功
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御園・桜花
「貴女は私達の幸せと仰った。その割に何方にも同格の者への敬意を払っているように見えません。その方々は…貴女にとって、本当に人なのでしょうか」
UC「桜の癒やし」使用
騎士・神官・魔法使いを眠らせ強化を防ぐ
戦闘終了後の仲間の回復にも使用
敵の攻撃は見切りや第六感で躱す
属性攻撃は逆属性でカウンター
躱せない物理攻撃にはカウンターからのシールドバッシュ
仲間の攻撃の隙を作るために時折制圧射撃も
「貴女には趣味を話し合うお友達はいらっしゃらなかったのでしょうか。得られぬものが希望となる…貴女はそんなにも、何方かに誑し込まれたかったのですか」
「骸の海に戻る方の転生の仕組みは分かりませんが…次はお友達になりましょう」
「もうっ……何なのよ! 何で勝てないの……?!」
満身創痍。攻略本が役に立たないと嘆きながら、『伝説のヒロイン』は改めて自身の取り巻きを呼び出した。召喚されるなりヒロインの怪我を心配し始めた男達に、彼女は明るく振る舞っている。
「……貴女は」
酷いダメージを負っていながら、あくまでもヒロインらしい振る舞いを続ける災魔を見やり、御園・桜花はどうにもやるせないといった表情をしていた。桜花の事など気にも留めず、ヒロインは男達に指示を下す。
まず桜花はビームシールドを起動した。迫る刃を弾き、軽機関銃を構える。魔法の発動を第六感で察知し、騎士の後方に向けて掃射。神官と魔法使いが武器を取り落としたのを認め、展開したままのシールドを騎士へと叩き付けた。
次々に攻撃を捌いて見せた桜花を警戒してか、男達は距離を保ったまま、様子を伺っている。ひらり、はらり。彼らと桜花の間で桜が舞った。
「貴女は私達の幸せと仰った。……その割に、何方にも同格の者への敬意を払っているように見えません」
「……敬意?」
ひらひら、はらはら。花びらが徐々に増えてゆき、視界を遮り始めたその時、男達がどさりと倒れた。
「何……?!」
眠って頂いただけだと事も無げに答え、桜花は問う。
「その方々は……貴女にとって、本当に人なのでしょうか」
「はい? 何なの、お説教なら勘弁してよ!」
もう彼らはあてにならないとばかりに、ヒロインは分厚い攻略本で殴りかかる。桜花はそれをシールドで受け止めると、言葉を続けた。
「貴女には趣味を話し合うお友達はいらっしゃらなかったのでしょうか。得られぬものが希望となる……貴女はそんなにも、何方かに誑し込まれたかったのですか」
「誑し込まれ……って人聞きの悪い。イケメン侍らせたかっただけよ!」
新たな男達でも呼ぶつもりだろうか、ヒロインがコントローラーを握った。咄嗟に桜花はシールドで殴りつける。
――かちゃん。床に落ちたコントローラーが砕け、少し遅れてヒロインが転がった。
「骸の海に戻る方の転生の仕組みは分かりませんが……次はお友達になりましょう」
ヒロインはもう起き上がらない。ただ一言「嫌よ」と返し、目を閉じた。
――イケメン達の前で理想の『ヒロイン』を演じていた彼女より、猟兵に噛みついている彼女の方が、よほど生き生きしていたように感じられたのは気のせいだろうか。
桜花は祈るように、そっと目を伏せた。
成功
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