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雪の荒野を行く

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●雪積もる砦
 ひもじかった。寒かった。
 砦の見張りに立った兵士の視界は、渦巻く雪によって白く閉ざされていた。マントの襟をかき寄せても空腹を抱えた身体には熱が戻ってくるようには思えない。何時間も立っているし――少なくとも兵士自身の感覚ではとても長かった――景色はといえば変わり映えしない雪山の風景だ。
 我知らず意識が遠のいていき、地面に突いた槍にもたれて、見張り兵はついうとうととまどろんでしまう。
 次に彼が目を開けた時、見えたのは自分の身体に食い込む粗末な投げ斧。いつの間にか地面に倒れていて、喜色を浮かべて嗤うゴブリンの顔が見えた。
 敵襲を告げるために声を張り上げようとしたが、唇が震えただけで。肺には吐き出すべき空気がもはやなかった。
 斧が引き抜かれ、血が流れ、永遠の眠りが訪れた。

●グリモアベース
「二つの事件を予知しました」
 そう言って、グリモアベースに猟兵たちを集めた張本人、ゾシエ・バシュカ(蛇の魔女・f07825)は両手の人差し指をそれぞれ立てて見せる。その二本の指を顔の前で合わせてから、続ける。
「ですが、その二つは一つの原因から来ているので。それで一つの事件ということです」
 ゾシエが手を向けると、グリモアベースの壁に雪を被った荒野の風景が映し出された。
「今回みなさんに向かってもらうのは『アックス&ウィザーズ』の世界です。あちらも季節は冬ですね。雪が降っています。それで、二つの事件というのは」
 再び、右の人差し指を立てて、
「一つ目。荒野を越えて街から街へとめぐるとあるキャラバンが、ゴブリンの襲撃を受けます。護衛の冒険者もいるのでそれで全滅とはいきませんが、死傷者は出てしまうようです。そしてなにより、馬車が動けず立ち往生してしまうことが次の事件に繋がってしまいます」
 次いで、左手の指を立てる。
「二つ目の事件。キャラバンの行く先は山中にある砦だったのですが、いつまで経ってもこれが到着しないわけなので。雪が降るなか物資や燃料も底を尽き、食べるものも満足になく、士気も下がり……と、気づけば敵襲への備えが綻んでしまうのです」
 そこに敵――オブリビオン――の本隊が襲撃をかけてきて、奮戦むなしく壊滅。それがゾシエの予知した事件の概要だ。
「ということなので。みなさんにはまず、キャラバンを護って無事に砦まで送りとどけてほしいんです。キャラバンは護衛を求めて冒険者を集めていますから、依頼を請けて一緒に行ってください」
 キャラバンが襲撃を受ける場所や時間については確かなことは言えない。こちらの出方次第でゴブリンたちも対応を変えてくるだろう。護衛中、体力に優れた者なら夜襲に備えての見張りや雪の積もった悪路を行くための力仕事で実力を発揮できるはずだ。感覚や素早さに長けた者なら行く手の危険を察知するための偵察や警戒が適任である。知識や知恵で貢献するなら、地形を見て襲撃を受けにくいルートを提案したり、道中の困難を魔法で解決したりもできるだろう。
「実際に現場に赴くみなさんは、もっと他のことにも気がつくかもしれませんね。今言ったのはわたしの想像なので」
 また、キャラバンの仕事を手伝うなどして信頼を得ておけばいざというときに役に立つかもしれない。
「無事に砦にたどり着いたら、敵の襲撃を待ち受け、迎え撃つことになります。幸い、準備に時間をかけることができますから、砦の防備を強化したり防衛のための作戦を練ったりして過ごしてくださいね。敵はゴブリンの群れですが、何者かが統率している様子があります。それを倒せば瓦解するでしょう」
 ゾシエはついと視線を逸らし、しばし説明し忘れたことがないか思案してから、一度うなずいて視線を戻して言う。
「長丁場にはなりますが、お願いできますか? ……それでは、ゲートを開きます」


kurosato
 おそらくはじめましてでしょう。新人マスターのkurosatoです。
 今回はアックス&ウィザーズの世界での冒険です。シナリオ中でそれなりに日数がかかる、ゆったりした旅路を描いていきたいなと思っています。
 第一章『隊商の護衛』は、すでに冒険者として護衛依頼を請け、砦へと向かう道中から始まります。
 オープニング中にゾシエも言っていますが、貢献の仕方は人それぞれですし、やりたいことを積極的に提案してくださるとありがたいです。道中や砦でのトラブルを自分で提案して自分で解決してもOKです。むしろどんどんやってください。
 ゴブリンとの戦闘も章を割いてはやらないので、護衛中などにゴブリンと戦って撃退したいときはそういうプレイングを書いてくだされば反映します。

●プレイングについて
「あれもこれも」と隙なく書くよりは、ご自身のキャラクターが特にやりたいこと(行動)をはっきりと書いてきてくださるほうがマスタリングしやすいです(個人の感想です)。
 ただし、そうでないと採用しないというわけではないので、書きやすい方法で書いていただければと思います。みなさんの活躍をお待ちしています!
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第1章 冒険 『隊商の護衛』

POW   :    不寝番で見張る。

SPD   :    斥候や警戒を行なう。

WIZ   :    守りやすいルートを提案する。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●1
 日が落ちかかり、馬車の列は街道の脇に逸れてから停まった。周りには森と呼ぶにはややまばらな針葉樹の木立ちが並び、野営中の風よけにはちょうどよさそうである。
 この日は終日晴れていたが、冬の弱々しい太陽では降り積もった雪を融かすには至らなかった。荷馬車の乗り心地は控え目に言っても最低であり、絶えずガタつき、跳ね、轍から逸れればたちまち雪に足を取られたので、そのたびに力を合わせて押し引きせねば進めなかった。したがって、目指す砦はまだ遠い。
 野営の準備はすみやかに進む。天幕を張り寝床を設え、たき木を集めて火を熾し、手早く夕食が用意されていく。冒険者たち、つまり護衛の依頼を請けた猟兵たちにも食事が供された。干し肉とチーズのかけら。玉ねぎと豆、ありあわせの食べられる野草を煮たスープ。簡単なものではあったが、疲れと冷気がしみ込んだ身体には温かいだけでもありがたい。それに、保存用の硬いパンをひたして食べるとスープはなかなかいける味だった。
 たき火を囲む猟兵たちのもとに壮年の男性が近づいてきた。この隊商のリーダー、ハロラン氏であった。どこかくたびれた雰囲気の男だった。一日の道行で疲れたからというわけではなく、彼は初対面のときからくたびれた雰囲気をまとっていた。仕事にか、人生にか。大それた望みを持たず、願うことといえば平穏無事と街に残してきたまだ幼い娘の健やかな成長くらいといった手合いだ。
 ただし、本当にそれを願うのならば、彼は別の仕事を見つけるべきだっただろう。荒野を渡る隊商はお世辞にも安全ではない、というかはっきりと危険な仕事だったが、祖父の代からの家業なのだ。
 やつらは飢えているんだよ、とハロランは言った。
 獣に野盗、ゴブリンみたいなモンスター。近頃はいたるところでワイバーンが出たという噂を聞く。さすがにそんなにも飛び回ってるわけがないがね。おれたちは徒党を組んでいるし、あんたたちみたいな冒険者も雇ってる。だから、ちょっとでも利口なやつならおれたちを襲ったりしない。痛い目にあうのが想像できるからだ。襲ってくるとしたら飢えたやつらで、その手合いはおれたちから奪えなければけっきょくのたれ死ぬのだから、文字通り死に物狂いなんだ。勝ち目があるかどうかなんておかまいなしさ。そんなやつらは本当に怖ろしい。だから、まあつまり、あんたち、しっかりやってくれよな。頼むよ。
アベル・スカイウインド
兵糧攻めというわけか?フッ、なかなかどうしてゴブリンどもにしては頭が回るじゃないか。
まあ、俺がいる限る好き勝手にはさせないがな。

護衛中の役割分担か。ならば俺は周囲の状況を確認して回るとしよう。
俺にとっては空中ジャンプなんて造作もないからな。
高所から警戒しておけば道中の敵襲やトラブルをいち早く察知できよう。
あとはそうだな…他の連中がサボっていないか監視するのもいいかもな…フッ、冗談だ。

(アドリブ、絡み等歓迎)



 グリモア猟兵が予知していたゴブリンが果たして飢えているのかどうかはさだかではなかったが。
 アベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)は木立ちの枝から枝に飛び移りながら、周囲を哨戒していた。
 一日の「仕事」が終わり腰を落ち着けたときは、どうしても気が緩んでしまうものだ。今のところ異常はないが、こんなときこそ抜け目なく確認しておかなければならない。
 空中を蹴って、別の枝に渡る。
 兵糧攻めを考えつくとは……ゴブリンにしては頭が回るじゃないか。
「フッ、俺がいるかぎり好きにはさせないがな」
 ひとりごちて、アベルは思案する。何者かが統率していて、ゴブリンに隊商を襲わせるのだとしたら、本隊がいる砦付近まで近づいてからというほうが妥当か。だからといって油断はしないが。
 痩せた子狼が二頭、煮炊きの匂いを嗅ぎつけてかうろうろと迷い出てきていた。アベルが頭上から様子をうかがっていると気づくと、そそくさと退散する。
 利口なやつだった。フッ、とアベルの口元がわずかに上がる。
 空中跳躍で一度宙返りをうってから次の枝へ飛び移る。宙返りに特に意味はなかった。強いていえばなんとなくカッコよかったというくらいだ。陽は遠く山並みに隠れ、紺色に染まった空に瞬き始めた星々だけがアベルを見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

白菊・誠
【POW】
飯も用意してくれたんなら、サボる訳にはいかねえな、なんてな。
しかしまあ……寒いな。マフラー装備で助かった。

偵察はもう十分だろうが、
空に「戦線を探る猛禽」を放って周辺の警戒。
夜は任せときな、寝ずに番くらいならお安い御用だ。
簡単な奴なら始末しとけるように、狙撃銃には防音装備をしておこう。
勿論、ヤバくなったら……いや、なる前に誰か呼ばなきゃいけねぇけどな。

しかしまあ、家業を継いで隊商か……大変だな。
安全に行商が出来るよう、俺達も頑張らなきゃいけねぇな。



 夜が更けて。白菊・誠(最前線の狙撃手・f05924)は、闇夜を飛ぶ猛禽となっていた。音もなく羽ばたき、おそるおそる氷の上を走る小さな生き物の動きさえ見逃さない。
 『戦線を探る猛禽』、式神の札から梟を喚び出し使役するユーベルコード。誠の感覚は梟と共有されていた。翼が冷たい夜気を切り裂き、木々の間を縫って急旋回する。
 誠自身の肉体は、防音装置を取り付けた狙撃銃に手を添えたまま眼を閉じている。断じて眠っているわけではない。空に放った猛禽の感覚に集中しているのだ。しかし、寒い中でじっとしているのは正直堪えた。口元まで引き上げた黒いマフラーがかろうじて凍りついてしまうのを防いでくれているような気がする。
 梟が先頭の馬車の上をかすめ、ふと、ハロランの姿が脳裏をよぎった。危険な家業を継いで、実際に危険な目にあうことになっている男。難儀な話だった。猟兵として、必ず守りきってみせるが――これから先、オブリビオンとの戦いが激化していくのであれば、彼の商売はますます困難なものになるかもしれない。
 俺達も頑張らなきゃいけねぇな。飯の恩もあるし。ひとり決意を新たにし、再び誠の意識は闇夜に踊った。

成功 🔵​🔵​🔴​

レイチェル・ケイトリン
アベルさん、ごめんなさい。

護衛の冒険者だからほんとはわたしもみはりとかしなきゃいけないんだよね。

でも、みてたら商人さんたち、とってもたいへんそうなの。

だからわたし、雪の積もった悪路を行くための力仕事をさせてね。

わたしだと力って念動力技能でつかうサイコキネシスなんだけど。

馬車がつっかえちゃったらもちあげるよ。
雪がひどいとこがあるならそのまえに吹き飛ばし技能もつかってならしてあげるね。

夜はまわりに雪をおしつぶした氷のかたい壁をつくっておくの。

このさむいのに空をとびまわるってたいへんだから、せめて、アベルさんにはサイコキネシスで暖かい飲み物をとどけてあげるね。

もちろんたたかいはわたしもがんばるよっ!



 東の地平線がうっすらと紺碧に輝きだす頃、空からは白い雪が花のように舞い始めた。風に流され、馬車の列に吹き付けてくる。
 レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)は熾火からポットを拾い上げ、ブリキのカップに中身を注ぎ入れた。真っ黒な液体の正体は蜂蜜入りの香茶だ。長い時間置かれたせいで煮出しすぎになってしまってはいたが、冷えた身体を温めるには十分役に立つだろう。レイチェルはそれを、樹上で見張りを続ける仲間に放ってやった。念動力で浮かんだカップは中身をこぼすことなく宙を舞い、白い湯気の軌跡を残して届く。
「飲み終わったらおとしていいよ。受けとめるからね」
 冬の日は短い。明るい時間を無駄にしないため、隊商がまどろみの中にいられるのはあとわずかの時間だけだった。

●2
 夜が明ける前にはみなが起きだしてきたので、レイチェルは朝の仕事にとりかかった。暗いうちに降った雪の量は大したことはなかったが、荷物を満載した荷馬車は自重でもって地面に積もった雪の層に車輪を食いこませている。また、車輪自体も凍りつき、車軸にはりついていた。レイチェルは『サイコキネシス』を操って車体を浮かせ、細かなコントロールで車輪の氷を砕く。仲間たちと力をあわせ、隊商が街道を進みはじめた。

成功 🔵​🔵​🔴​

デナイル・ヒステリカル
キャラバンを襲撃する者が現地の方である場合、それがこの世界の法や道徳に反したとして、僕に彼らを見咎めていい道理は存在しません。
しかしその結果オブリビオンによって苦しむ非とが出るというのなら、それは猟兵の領分ですね。
「そして何より道案内こそ僕(プログラム)の本領ですから」

電脳ゴーグルを使用して電脳空間を展開。
目的地までの地形・気象データを収集し、敵対存在による襲撃が困難かつ最短のルートを導き出します。

僕はキャラバンのリーダーを説得してルートの随時変更を提案しつつ、
UCで召喚した機械兵士たちを先行させて足場の整備舗装を命じます。


ガルディエ・ワールレイド
ちと厄介な旅路になりそうか。
だが、将来キャラバンの連中が良い思い出話に出来るような結果にしねぇとな。

【POW】雪道の踏破を手伝いつつ護衛

故郷が極寒の地だったから、雪道には慣れてんだ。
ということで、悪路の進行を力仕事で手伝うぜ。
馬車の車輪が上手く進まない時は押すし、事前に泥濘を察知すれば、そこを避けて通るように提案。

寒さにやられてる奴がいれば、無理はしないように言いつつ、荷物を持ってやる。風邪でも引かれると面倒だからな。

それと、ハルバードの槍部分(ドラゴンランス)を小型ドラゴンに変えて偵察要員として活用するぜ。
小型ドラゴンが敵を見つけてくれれば周囲に伝達だ。
(戦闘シーン自体は無くてOK)



 デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)は電脳ゴーグルを用いて電脳空間を展開した。周囲の地形や気象条件をもとに、ゴーグルに内蔵された超高度コンピューターが最適なルートをはじき出す。
 この世界の住人たるハロランからは、探査魔法か占術とでも見えているはずだ。それで、なにかわかったのかね? ハロランの問いかけに、デナイルは自信ありげな表情を作る。
 デナイルは創られた存在(バーチャルキャラクター)だ。創られたモノには理由があり、存在意義がプログラムされている。
「任せてください。道案内こそ僕の本領ですから」
 そして、彼にとってのそれは「案内役」であるということだった。

「それで」
 ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は顔を歪めてデナイルを見た。
「川か?」
「川です」
 行く手には緩やかに流れる川が横たわっていた。デナイルの提案したルートはこの川を渡るものであった。ガルディエは噛みつくような眼光をデナイルに投げたが、当人は動じた様子もなく首肯してみせる。その表情は自信ありげというより、軽薄にさえ映った。
 厄介だ、とガルディエは思ったが、反面、悪い考えであるとも言えなかった。周囲の見通しはよく、もし襲撃を受けたとしても不意を突かれることはない。川の水量は足がつく程度で流れも速くないので、馬たちを急きたてて渡ることはできそうだった。橋を求めて大きく迂回することを思えば、旅程を短縮できるメリットもある。
 この寒さのなか水に浸かるのだけは、極寒の地の出身であるガルディエにとっても(むしろ、だからこそ)ぞっとしなかったが。……仕方ない。腹をくくるか。
 ガルディエはハルバードの槍部分を切り離し、小型のドラゴンに変えた。偵察させるために放っておき、自身は残った戦斧を担いで木立ちに向かう。切り出した丸太を馬車に括りつけて「浮き」にしようという魂胆である。デナイルの呼び出した小型の機械兵士にも作業を手伝わせ、ほどなく完了する。
「用がないやつは馬車に乗りこんどけよ。こんなとこで凍えたら後が面倒だぜ」
 鞭が入れられ、馬車は勢いをつけて川へと走り込んでいく。こんな苦労も、あとで思い出話にでもできるとよいのだが。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キール・ラトシエ
旅団【牛舎】と共に参ります。

ゴブリンといえば知恵は回らないけれど間抜けではないというレベルだと思っていたのですけれどね
纏める上位種のゴブリンがいるのか、それとも別のリーダー種がいるのか
気になりますが、とりあえずは無事にこのキャラバンを砦まで送り届けることを優先しましょう

地図を見て自分がもしこのキャラバンを襲うならばどこかを確認していきます
テオに伝えこの地点は重点的にチェックしてもらうことにしましょう
先に敵を発見できれば先手をとれます
奇襲を受けさせないことに私は注視します

ゴブリンを見つけたら逆に奇襲を仕掛けましょう
ウィザードミサイルで突撃するオリオさんの援護、広範囲襲撃します


テオ・イェラキ
旅団【牛舎】のメンバーと参加だ

これはまた今日は一段と冷えるな…
妻から送られたコートに身を包みながら愚痴ってしまう
しかし、寒さに負けて注意を怠るわけにはいかんな

『スカイステッパー』で木々を飛び移りながら、高い視点から偵察をする
木々にとまる鳥(鷹)と『動物と話す』でゴブリンの集団について情報を集めるぞ

予想通りだ、この先にゴブリンの集団がいるらしい
手に入れた情報は仲間やキャラバンと共有しなければな

え?よく鳥の言うことが分かるかって?
俺の部族では子供の頃から動物と共に過ごすからな…自然に分かるんだ、言いたいことが

ゴブリンを発見後は仲間と共に奇襲を仕掛ける
キャラバンへの危険は排除しなければな


オリオ・イェラキ
【牛舎】と供に

暖かい格好で参りましょう
テオ、わたくしの贈ったコート着て来たのね
嬉しい

あらキール
では珍しい小鬼が見られるの?
わたくし楽しみ

ハロランさまご機嫌よう
確りとお勤め果たし帰還できるよう、尽力しますわ
道中キャラバンの方々にご挨拶とお話を
手伝等もして打ち解けておきますわ
彼らとも連携しませんと

わたくしは主に驚異の警戒と排除を
もし仲間達が敵を見つけたのなら、キャラバンを襲う前に仕掛けますわ
物陰に潜みながら近付けば、黒いわたくしを見つけるのは大変でしょう?
驚く間に星空の剣で一思いに

そう、わたくしこう見えても力ありますの
道中の障害物破壊もこの大剣で何なりと

夜警も致しますわ
この旅で観る夜空は綺麗かしら



●3
 それから二日。いくつかの丘陵を越え、森を越え、時には思うような速度を出せないこともあったが隊商は大きなトラブルもなく進んだ。猟兵たちは護衛として申し分ない働きをしていたといえる。襲撃を避けるべく道を選び、警戒を怠らず、悪路を行くにも彼らの様々な能力が役に立った。
 しかし、空模様は日に日に、砦のある山に近づくにつれて悪くなっていくようであった。今日に至っては、朝から横殴りの吹雪に晒されている。日が落ちると視界は黒と白の極端なコントラストで狭くなり、木々をざわめかせる風切り音が聴覚さえもかき乱す。
 そして、選べない道もある。砦は攻めづらい場所に築かれるものだ。細くつづら折りになった山道は傾斜が急で馬車の脚を否応なく鈍らせる。そこに雪が加わるならば……。
 キール・ラトシエ(古き知識を読み求める者・f04006)はグリモア猟兵の言葉を反芻していた。こちらの出方次第でゴブリンたちも対応を変えてくる……ここまで、猟兵たちは隙を見せずにやってきた。ゴブリンは知恵が足りないとしても闇雲な愚か者ではない。何者かが統率をとっているならなおさらだ。チャンスを与えなければ、隊商を襲撃すること自体を諦めることもありえたのだろうが。
 彼の結論としては、ゴブリンの襲撃があるとすれば、それは「今」「ここ」だということだった。
 テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)とオリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)の夫妻は雪に阻まれ止まったハロランの馬車を助けようとしていた。キールは彼らに自らの考えを伝えた。
「あらキール。では珍しい小鬼が見られるの? わたくし楽しみ」
 どこか暢気そうな言葉で応えたのはオリオだ。しかし、その声音は黒い大剣が抜かれる時を待ちわびる剣呑さとも表裏一体だった。
「先に敵を発見できれば先手をとれます。テオ」
 キールの呼びかけに、テオはわかっていると頷いた。妻から贈られた赤褐色のコートの襟もとを改めて正すと、その姿を嬉しげに眺めるオリオを残し、空中を蹴って跳び上がる。雪で視界は悪いが、テオはほどなく一羽の鷹を見つけ出した。丈夫な枝の上に立ち腕を差し出すと、鷹はついと飛び、彼の腕に止まる。彼の部族は自然に生きる動物たち、特に鷹との繋がりを持っていた。秘密の“言葉”でのやりとりの後、テオは猛禽とともに地上に舞い戻った。
「キール、予想通りだ。この先にゴブリンの集団がいるらしい」
 鷹は彼の言葉を裏づけるように一声鳴いた。ハロランはあっけにとられた様子だったが、オリオが「夫は鳥の言うことがわかりますの」と取りなした。
 そうとわかったからには、逆にこちらから攻め入るのが得策である。猟兵たちは馬車を護るために数人を残しつつ、オリオとテオを筆頭に奇襲をかける。
 敵の数は多くなかった。オリオは夜闇の黒に身を溶け込ませて走った。漆黒の剣が振るわれ、悲鳴一つを残してゴブリンの一体を屠る。突然のことに泡を食ったゴブリンの一団はあえなく瓦解し、続いて殺到した猟兵たちの攻撃に次々と打ち倒されていく。
 戦いは大した時間もかかからずに終わった。
 夜のうちに吹雪は止み、冬の澄んだ空気に星々と月とが冴え冴えと浮かび上がる。次の日の朝のうちに、隊商は砦へと到着した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『砦の建設』

POW   :    砦の建設に必要な力仕事を行う

SPD   :    周辺の探索を行う、仕掛け罠を用意する

WIZ   :    砦を利用した戦い方を提案する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●1
 砦といっても、その規模は大それたものではない。兵士詰め所だと紹介されたとしたらそれはそれで納得したかもしれない。
 砦の兵士たちは隊商の到着を大層喜んだ。辺鄙な場所で、外が吹雪いていたとなると気を紛らわせる機会さえろくにない。それに、気を緩められない理由もあった。
 砦を預かる兵士長は隊商とともにやってきた護衛たちに話を持ち掛けた。このところ、砦の周辺ではゴブリンがうろつき回っているというのだ。吹雪のなか哨戒に出掛けた兵士二人が行方知らずになり(おそらくゴブリンの犠牲になったのだろう)、砦そのものも雪と暴風で補修が必要となっている。人手がいるのだ。しばらくこの砦に留まり、手を貸してはくれないだろうか――?
レイチェル・ケイトリン
砦の建設に必要な力仕事するね。

まあ、わたしだと力って得意な念動力技能をつかったサイコキネシスなんだけど。

兵士長さんから一人、兵士さんを紹介してもらって、その兵士さんと
それからいっしょにやってくれる猟兵さんがいたら、その人とも
しっかり相談しながら作業するね。

まずは補修が必要なとこ。そして強化だね。

わたし高いとこへの作業もひょいってしてあげられるし、
広範囲に力をかけてあげられるよ。
作業する人と材料を持ち上げてあげることもできるし、
じゃまな雪をどかしたり、風をおさえたりもできるの。

砦が安全なように、それから見張るひとたちが楽に見張れるように

そうしてあげられたらうれしいな。


アベル・スカイウインド
もとよりオブリビオンと戦うためにここに来たんだ。今さら一つや二つ何か任されたからといって駄々はこねないさ。
しかし、砦というからにはもう少しまともなものを想像していたが…フッ、この様子ではなかなか厳しい戦いになりそうだな…。

ぼやいていても仕方がない。道中と同じく周辺の探索を行うとしよう。
地形の確認と、敵の進行ルートを予測しておくのが第一だな。
そして罠があるのなら予測地点の周囲に仕掛けておこう…まあ予測といっても【野生の勘】だがな。フッ、俺は猫だからな。

この間の飲み物の礼をお嬢ちゃんにしてやりたいが、普段なら花でも送るんだがこの雪じゃな…探索中に見つかるといいが。


デナイル・ヒステリカル
力仕事も探索も不得手となると、策を練る方向で力になるべきです。
しかしアックス&ウィザーズの歴史の中で最適化され洗練されてきた砦に、安易に猟兵基準の色を残すのも良くないのではないかと思考します。
僕らが去っても彼らの日常は続いていくのですから……。

少々悩みましたが、普段弓を射る為に使用される覗き穴の位置を採寸させてもらうことにします。
僕が彼らの規格に合った機械兵士を召喚すれば良いのだと気付きました。

UCを使用して機械兵士を召喚。それぞれを砦内部から周辺への攻撃が可能な位置へと配置し、簡易的な射撃タレットとしてゴブリンを迎撃します。


テオ・イェラキ
旅団【牛舎】のメンバーと参加だ
技能は『SPD』

砦とは聞いていたが、こりゃあまたイメージと違ったな
たしかに手助けしてやらにゃぁ、厳しそうだ
俺は罠が仕掛けるのに有効な場所を偵察して、罠でも仕掛けようか

『動物と話す』『追跡』を使用し、獣道とゴブリンの普段の通り道を見分けるぞ
ここがゴブリンの通り道か…
人手不足から落とし穴もそこまでたくさんは作れないからな
作るならば、ゴブリンが通るであろう場所だ

『怪力』を使用し、自慢の斧で木を伐り出し、スパイクを作ると、
穴を掘ってスパイク付き落とし穴を作る

罠はあえて、一つの場所に誘導するように配置するぞ
何やら味方の作戦で誘導したい場所があるらしいからな


キール・ラトシエ
旅団【牛舎】と共に参ります。

確かに多勢を相手するには心もとないですね
とはいえ時間もあまりなさそうですし、柵を周りに巡らせるだけでギリギリでしょうか
柵ができたなら一か所、外側からよく見える箇所の柵を壊れそうなように偽装しましょう
その場所を突破しても拒馬があって迎撃しやすいという仕組みです
テオさんの落とし穴もあれば爽快ですね
これでやってくる敵を一網打尽にできるように策を重ねましょうか

テオさんの罠がここに誘導してくれるようになっているとはいえ、他の箇所の防備も充実させなければいけません
柵と投石用の石など充実させておきましょう


オリオ・イェラキ
【牛舎】と供に

先ずは到着お疲れ様でしたわ
キャラバンの方が物資を運ぶのを手伝いましょう

さて砦の補強ですわね
キール、その策手伝いますわ
柵が必要なのね、では
キャラバンの方に聞いて木材を分けて頂けるか聞きましょう
無ければそう、目立たない程度に木を大剣で切り落としますわ
わたくしこう見えても力ありますの

柵を作り、時間があれば砦の補修も
一点以外の所は頑丈にしませんと
それにしても大勢で来る獲物……狩るのが待ち遠しい

終わりましたら暖かなスープ等を作りまして
キャラバンの皆様と暖まりながら作戦のすり合わせ等しましょうか
勿論、お仕事してきました夫も労いますわ
お疲れさま、テオ
このスープお口に合うと良いのですけれど


ガルディエ・ワールレイド
戦士や兵士にとって砦のような拠点は拠り所だ。しっかり直さねぇとな。

【POW】砦の建設に必要な力仕事を行う

まぁ力仕事は得意だ。
【怪力】を活かして色々と手伝うぜ。
ユーベルコードの【竜神気】も活用。
砦の補修時に直接手を触れずに動かせるのは色々と便利だろう。

現状で補修に必要そうな資材を運ぶし、実際に補修も手伝うぜ。
壊れた部分以外にも、傷んで壊れやすそうな箇所とかが有れば、人手のある今の内に早期補修してぇな。

また俺達が去った後の補修もしやすいよう、倉庫の類が有るならそこの整理もやっとくぜ。

あと、一応、前回に続き小型ドラゴンを呼び出して、見張りに使う。
近場をゴブリンが通れば味方に報せた上で始末に向かうぜ。


白菊・誠
【POW】
酷い吹雪だ。元から視界は期待しちゃいなかったが、
行方知れずまで既に出ているとはな。
となると、それも統率者とやらの計画の内と考えるべきか。
そいつを仕留めるまでは、この砦からは動けねぇな。

補修っつーと、何処か壊れているのか?
砦を外側から巡回して、損壊している場所があれば資材を探して補修しよう。
得意なスキルは無い、が……「顕現せよ我が僚機」!
重い物や高い所なら役立つだろう。
……戦闘用のロボなんだがなー。微妙な気分だが。
砦の中に、この重量が乗ってもなんとかなる高い場所も聞いておくぜ。



●2
 砦周辺が晴れているのは久しぶりらしい。グリモア猟兵の予知によれば、ゴブリンの襲撃があったときには吹雪いていたので、数日以内にはまた天気が崩れるということなのだろう。空模様を見てもそれは間違いなさそうだった。山の天候は気まぐれだ。雪を気にせず準備にさける時間はいかほどだろうか?
 それにしても、砦と聞いていたからもう少しまともなものを想像していたのだが。
 残念ながら、砦は猟兵たちが期待していたほどの防衛力を見込めない。戦いは厳しいものになりそうで、それだけに、迎撃のための準備のほどが明暗を分けるように思われた。
 テオは目ざとく見つけた野生動物と“話し”ながら、アベルは樹上を跳び渡りながら、砦の周囲を見て回っていた。敵が来るルートを予測し、罠を仕掛けるべき場所を割り出すためだ。
「見つけたぞ。ここがゴブリンの通り道か……」
 幼少からつちかった獣追いの技術の応用。テオは雪の積もった地面から痕跡を嗅ぎだし、獣道とゴブリンが行き交う道を見分けた。しかし、それは悩ましい発見でもあった。
「ここを通るなら、砦への襲撃ルートは二パターンありうるな……」
 罠を仕掛けるのに使える時間はあまり多くはないはず。つまり、両方に対応することは不可能ということだった。
「フッ、俺はこっちだと思うがな」
 降り立ったアベルが言う。根拠を問うテオに、アベルは自信ありげに、
「フッ……野生の勘だ。俺は猫だからな」
 そう返す。特に説明できるような理由はない。だが、テオ自身の勘もまた、同じ結論を告げていた。この手の直感は信頼できるとわかっていた。
「よし、じゃあこっちだ! 罠を張ろう」
 テオは武骨な巨大斧を振り上げると、手ごろな木を伐り倒す。落とし穴を掘り、杭を埋める算段だ。アベルとともに、罠を仕掛ける場所を吟味していく。作れる罠は少ない。しかし効果的に、ゴブリンたちの目先を変えて誘導するように。二人は作戦を授けられていた。
 作業に没頭するうちに、時間は思うよりも速く過ぎていく。息をつき、ふと目を上げたアベルの視線の先に、小さな花が一輪咲いていた。
 こんな雪の中で。アベルの表情がそれとはわからないくらいに小さくほころぶ。……フッ、土産にでもするか。あのスープのお嬢ちゃんに。

●3
 作戦というのはこうだ。砦の防備を固めるべく、周囲に柵を巡らせる。しかし無論、全部を完璧に守るほど頑健なものは用意できまい。そこで、「あえて」隙を残すのだ。一か所だけ、まるで間に合わなかったかのように、すぐにでも破れるように見せて――その先にはさらに罠があり、猟兵たちが待ち構えているのだが。
 視界の悪い吹雪に紛れて襲ってくるなら、こちらの仕掛けに気づくのも難しいはずだ。ゴブリンたち自身の策が仇となるのだ。
「多勢を相手取るには、この砦は心もとないですからね」
 キールは仲間たちに自らの作戦をよどみなく語って聞かせた。急ごしらえで敵を迎え撃たねばならない猟兵たちにとっては上々の、冴えた策であるといえた。上手く嵌まれば一網打尽にできるだろう。オリオが手を合わせて同意を示す。
「キール、その策手伝いますわ。柵を作るには木材が必要なのよね。キャラバンのみなさんから分けてもらえるかしら? なければとりに行きませんと」
 砦の周りの山には背の高い針葉樹が森を成している。いくらか伐っても問題はあるまい。猟兵たち(と砦の兵士たち)は思い思いの得物を抱えて森へと向かう。
 ガルディエもその一人。怪力自慢で、力仕事は得意だ。斧を幹に叩きつけると、ほどなくメリメリと音を立てて木が倒れる。掌をかざし集中すると、倒木はわずかに浮き上がった。『竜神気』、彼のユーベルコードだった。自身の血脈に眠る異端の神、竜の力を解き放ち、見えざる力として操る。攻撃として使えるほどの出力を持ちながら、直接ものに手を触れないまま精密な作業にも転用できる、応用性に長けた技であった。
 オーラを操り、伐り出した木を森の入り口まで「引っ張って」行く。縄を巻いて引きずるよりは各段に楽なやり方だった。そこには、――ガルディエにとってはどんな仕組みなのか皆目見当もつかないのだが――人間の身長の二倍はあろうかという機械の巨人が待ち構えていた。
 この機械の巨人は、誠のユーベルコードが呼び出したロボットだった。巨大な手が材木を掴むと、雪上を引きながら砦の前へと歩んでいく。そこで材木を加工し、柵を組み上げるのだ。
 力強く材木を運ぶ巨人に、作業にいそしむ砦の兵士たちは「おお」と歓声を上げる。
「……戦闘用のロボなんだがなー」
 実のところ、まったくもって、このような雑用は本来の使い方ではない。微妙な気分になって誠はぼやく。が、自分の持てるスキルを見直した結果としては、これが一番役に立てそうな仕事だったのだ。不本意ではあったが……。

●4
 砦側の補修を買って出る者もいた。雪と風による被害は砦の様々な機能を蝕んでおり、特に悪かった箇所はといえば、食料や物資を補完するための倉庫だった。
 ここが壊れてたから、もたなかったんだね。
 レイチェルはそんなことを思う。倉庫が壊れて備蓄食料や燃料を使えなくなったことが、予知されたように砦の兵士たちを致命的な運命へと押しやる最後の一押しとなったのであろう。
 補修を行なう兵士たちと連れだってレイチェルは倉庫までやって来た。屋根の一部がはがれているようだったが、彼女の念動力、『サイコキネシス』をもってすれば、このように、
 ――作業する人を持ち上げてあげることもできるし、
 ――材料を上まで運んだりもできるし、
 ――邪魔な雪をどかして、あぶなくないように風よけだってできるよ。
 すごく便利だった。兵士たちは魔術としか思えない光景に驚きつつも、レイチェルの助力に感謝を述べ、手早く着々と作業を進めていく。
 一方で、デナイルはどうしたものかと頭を悩ませていた。砦の守りを強化するためにできることはそれこそいくらでも考えつきはするのだが、もう一つの懸念もあった。
 どこまで猟兵が介入していいものか?
 彼の考えでいえば、たとえば、今回襲ってくるのがオブリビオンでなければ介入すべきではなかった。そうならこの世界の問題であり、猟兵の領分ではないと考えるからだ。
 では、砦を守るためとはいえ、『アックス&ウィザーズ』の世界では未知の技術を導入することの是非は?
「僕らが去った後も、彼らはここで暮らしていくんですから」
 安易に爪痕を残さないようにしなくては。そのうえで、できることは……。デナイルは砦内を見回りながら考えて、ある場所にさしかかったところで答えを得た。
 砦正面を見下ろす小塔。その壁にはアロースリット(矢狭間)が並んで開けられていた。ためしにユーベルコードを起動し、機械兵士を呼び出す。射撃武器を持たせて構えさせる。
 デナイルの顔に笑みが浮かぶ。これを使わせてもらえばいい。もとからあるものに、僕の方があわせれば。

●5
 日が暮れるまでに作業はかなり進んだ。オリオは食事番の兵士たちや逗留しているキャラバンの面々と一緒になって、皆を労うための料理をこしらえた。
 兵士たちは久しぶりにごちそうにありつけるとあって色めきたっていた。温かな食事は英気を養うになくてはならないものである。オリオは帰ってきたテオを出迎え、スープの椀を手渡す。
「お疲れさま、テオ。このスープ、お口にあうと良いのですけれど」
 土に汚れ、身体に冷気がしみ込んでもいたが、渡されたスープと触れた指先以上の温かさがテオにとっては感じられるようだった。
 食事をとりながら、兵士長と猟兵たちは作戦をすり合わせ、作業の進捗状況を話しあった。この分でいけば、次の嵐が来るまでには間に合うだろう。防備を十分に整え、ゴブリンの襲撃を待つのだ。
 それにしても、大勢で来る怪物……それに、指揮する統率者。
 狩るのが待ち遠しい。
 微笑みを浮かべながら、オリオはひとり、そんなことを思った。

●6
 そうして数日。ついに吹雪が訪れた。
 その夜の見張りを買って出ていた誠は、真っ白になった視界に毒づいた。もとから期待しちゃいなかったが、酷い吹雪だ。
 召喚した僚機は膝立ちに見張り塔の屋根に乗り、狙撃銃を構えている。景色が変わることもなく、時間が進むのがやけに遅い。
 風切り音の最中、見張り塔を誰かが昇ってくる気配。交代に来たガルディエだ。彼は小型ドラゴンを従えていた。空気がひりついて感じられるのは、戦場を渡り歩いた勘ゆえか。視線が合い、二人ともが同じ“匂い”を感じ取っているのを悟る。一瞬の沈黙を挟んで、ガルディエは言った。
「戦士や兵士にとって、砦は拠り所だ」
 あてどないような言葉だったが、誠には彼の真意がわかった。自分たちの護るべき場所を脅かされ、すでに二人の仲間も失った兵士たちの心はどうだったろうか? 誇りを踏みにじられたように思えたことだろう。
 だが、今はもう違う。砦の守りは強固になり、来たるべき襲撃に備えている。いよいよだ。未来は変わる。猟兵たちがいるのだから。
「……お出ましだ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●1
 吹雪に紛れ、ゴブリンたちが砦に殺到する。
 そいつらは頭に血が上っていた。ここに至るまでで、すでに数を減らしていたからだ。まるでどこから来るのかわかっているといわんばかりの、馬鹿にしたような落し穴や罠にかかって。
 ゴブリンたちを指揮していたのは金色の角兜をかぶった半人半獣。呪飾獣カツィカ。欲深き者の末路たる怪物。
 怪物は叫んだ。殺せ! 奪え!
 指し示した。敵の守りの綻びを。
デナイル・ヒステリカル
どうやら始まったようですね……。
グリモア猟兵の予知によりある程度襲撃を予想していた僕たちは兎も角、
元々この砦に駐在していた兵士の方たちにも大規模襲撃である事を警告します。

僕らはオブリビオンに対するカウンターですが、彼らは砦を守ってきたプロです。
吹雪の中での襲撃だとして、余計な混乱や無駄な行動を起こしたりはしないはず。

それに戦力という意味では万全です。そのために僕らが来たのですから。
勝ちましょう、この戦い。

事前に準備していた通り、砦に召喚した機械兵士からの先制攻撃、範囲攻撃、一斉発射で敵オブリビオン集団を打撃します。


キール・ラトシエ
旅団【牛舎】と共に

やはりこの吹雪の中では先に見つけるのは難しかったですね
他の箇所の柵も強固とは言えません
事前の打ち合わせ通り、他の箇所からの侵入を許さないよう傭兵の方々に監視の強化をお願いして私も現場に向かいます
ええ、テオさん、オリオさん先にそちらはお願いします

現場に到着したらまず状況把握
苦戦や数的不利な状況にある味方を救援すべくウィザードミサイルを放ちます
この分なら私はここからみなさんに状況を伝え援護に徹した方がいいですね

カツィカだけになればあとはジャッジメントクルセイド連発で動きを妨害することで誰かがとどめを刺してくれることでしょう

ひとまずは退けましたね
また次の依頼に行くとしましょう


テオ・イェラキ
旅団【牛舎】のメンバーと参加だ

さてさて、ついにやって来たな
寒くてしょうがねぇが、熱いパーティーの始まりだ

雑魚どもが!散れぃ!
斧で『なぎ払い』をするが、なかなかに数が多いな
仲間の猟兵たちの攻撃で雑魚ゴブリンが相当されたのならば、
『スカイステッパー』で空中に飛び出し、カツィカの元へ向かおう

やるなオリオ!さすがだっ!
妻のゴブリンどもを吹き飛ばす勇ましさは、惚れ惚れするぜ

さぁ、カツィカと相対したのならば、顔をまじまじと見てしまう
随分と趣味の悪いヤツだな、被るなら本物の骨に限るぜ

さてさてさて、お立合いだ!
そんないきり立ってないで、我が部族に伝わる舞をご覧あれ!
目の前で『大地に捧ぐ情熱の舞』を使用する


オリオ・イェラキ
【牛舎】と供に

まぁ、まぁ
小鬼が沢山群がってますわ
まるで塵の様

ではキール、わたくし先に行きますわね
夫に後れてはなりませんもの

ふわりと柵の一点に飛び乗って
低劣な軍勢を見渡し、微笑みひとつ
初めましょう
貴方達へ、最期の夜を届ける為に

極夜に更けるわたくしは、とても鮮やかでしょう?
この黒い夜が全てを塗りつぶしますわ
星夜の剣を振りかざして、さぁ
ご挨拶のメテオリオを召し上がれ

わたくしの星が粗方を葬っても
残っている獲物もおりますから
ちゃんと掃除しませんと

大剣を手に戦場へ降り立つ
砦の護りを意識しながら、小鬼達をなぎ払って
勿論最高の獲物も、その呪詛ごと切り裂いて差し上げますわ

ふふ、夫に褒められましたの
わたくし嬉しい


レイチェル・ケイトリン
念動力と吹き飛ばし技能でサイコキネシスをつかってたたかうね。

最初は敵が攻めてきたとこに石とか運ぶね。
予想外のとこにきちゃったらふっとばして足止めしとくし。

ゴブリンが何匹かやっつけられたらそいつをつかんで武器にして
カツィカをぶんなぐってふっとばすよ。

威力はあがらないだろうけど、カツィカは
わたしがつかんだゴブリンを敵だとおもって
攻撃をそっちに向けるよね。

ゴブリンがつぶされようが呪縛かけられようがどうでもいいし、
高速移動中にふっとばされたら勝手にころんじゃうよね。

ゴブリンがばらばらになっても、まとめてつかんで
ぶんなぐればいいだけだし。

最後、なんにもなくなったら普通にサイコキネシスでぶんなぐるよ。


アベル・スカイウインド
ほう、おいでなすったか。フッ、随分と怒っているようだがまだ理解していないようだな。お前たちはこれから狩られるんだ。俺たち猟兵によってな。

狙うは大将首ただ一つ。後方から【ドラゴンダイブ】で一気に距離を詰めて奇襲をかける。うまくいけばそのまま【串刺し】だな。
白兵戦になったら【見切り】と【フェイント】を駆使してやつに俺の動きを捉えさせないように立ち回る。
危なくなったら自慢の【ジャンプ】力で宙に逃れる。
フッ、俗にいうヒットアンドアウェイというやつだな。
俺の動きにイラついてきたか?ならますます【挑発】してやるとするか。

ノロマだな!それでは一生かかっても俺に触れることはできんぞ!


ガルディエ・ワールレイド
砦に攻め入るリスクをしっかり教えてやるよ。反省する時間はやれねぇがな。

(見張り塔の上からの参戦希望)
先ずは敵が「意図された綻び」に来るまで引きつけるぜ
一応「意図されてない綻び」が無いかも見張り塔の上から確認だ

敵の群れが接近して来たら見張り塔の上から飛び降り【竜神の裁き】に【属性攻撃】を乗せて攻撃
飛び降り直後に真の姿を解放(赤い雷を纏い、影が竜の形に成る)して、着地ダメージは即回復だ

その後はカツィカ目掛けて切り込むぜ
(雑魚が多く残っているなら【竜神の裁き】継続)
武装は【怪力】【2回攻撃】を活かす長剣とハルバードの二刀流
【武器受け】や【オーラ防御】で身を守り、味方に通ってヤバそうな攻撃は【かばう】



●2
 敵襲の報せが行き渡るのに時間はかからなかった。猟兵たちは待ちわびていたといわんばかりに吹雪の中に飛び出していく。一歩遅れ、砦の兵士たちもそれに続く。
「気をつけてください! これは大規模な襲撃です!」
 急ごしらえの柵は間もなく破られるだろう。そのための仕掛けなのだから。デナイルはユーベルコードで召喚した機械兵士を抜け目なく指揮して体勢を整えながら、砦の兵士たちに声をかける。ゴブリンの一体一体ならば彼らでも渡り合える相手だが、数が数だ。浮足立っての混乱や孤立はすなわち命取りになりかねない。
 結果的に、砦の防備を固めるための時間をとれたことは想定以上によい効果を挙げていた。単純な防衛力の強化のみならず、本来どこの馬の骨とも知れない猟兵たちが砦の兵士たちに頼もしい味方として認められるための時間ともなっていたのだ。
 他の様子を見てきたキールが青い髪を吹雪に揺らしながら合流し、二人は手早く状況を確認しあう。
「この分なら私はここからみなさんを援護したほうがいいですね」
 キールが言う。事態はおおむね、事前に考えた通りに推移しているようだった。激しい風が音立てて舞う中、ゴブリンたちが鬨の声をあげる。――綻びがが破れた。柵がこじ開けられ、小鬼の群れが我先にと押しあいなだれ込もうとする。だが、それは計画された罠だ。
 柵の奥に設置されていたバリケードが一瞬、ゴブリンたちを戸惑わせ、足を止めさせる。誘い込んだ。
 電脳ゴーグルの奥で、デナイルの眼が光る。準備は万端、戦力も十分。――そのために僕らが来たのだから。彼は『疲れ知らずの配下たち』に斉射を命じた。雨のように降り注いだ射撃が群れを打倒していく。
 命からがらといった調子でバリケードを乗り越えたゴブリンも、キールの『ウィザーズミサイル』によって放たれた炎の矢が撃ち抜いていく。杖を振りかざし、キールは砦の兵士たちに叫ぶ。
「出すぎないで! 今は持ちこたえることが最優先です!」
 勝利のための布石はすでに打ってあるのだから。

●3
 ガルディエは見張り塔の上から戦いを見守っていた。敵の群れはほとんどこちらの思惑通りに動いていた。罠に誘い込まれたゴブリンは二人の猟兵と兵士たちの守りを崩せそうにない。
 しかし、数だけはいるのだから、ひたすら愚直に死の罠に向かう者ばかりではない。一隊が離れ、他に防御の隙がないか探し回っているのが見えた。
「砦に攻め入るリスクをしっかり教えてやるよ」
 反省する時間はやれねえがな。ひとりごち、塔から身を投げる。瞬間、赤の稲妻がその身を包み、影が竜の姿を成す。真の姿を解放したガルディエが眼下の敵の真ん中に降り立つと、付き従った真紅の雷光が冬の夜を引き裂いて迸った。
 着地から立ち上がったガルディエは、武器を手に駆ける。狙うは大将首。ゴブリンの群れへと飛び込んでいく。

 オリオは黒衣と黒髪を風に流して、夜そのものとなっていた。柵の上に立ち、眼下にひしめく小鬼の群れを見つめ、微笑みをひとつ。はじめましょう、貴方達へ、最期の夜を届けるために。
 振りかざした星夜の剣が、星の煌きを纏った黒薔薇と化して雪の花とともにゴブリンの群れへと吹きつける。鮮やかな血の花がその命を散らしていく。
 再び手の中に剣が戻り、オリオは残る獲物に向かって、散歩するような気やすさで地面に降り立つ。オリオの姿が星空のごとき揺らめくオーロラに覆われ、疾駆する。
「ちゃんと掃除しませんと」
「雑魚どもが! 散れぃ!」
 鮮やかな煌きを軌跡に残すオリオの剣舞。テオの豪快な斧もそれに加わる。二人の織り成す死の舞踏が卑しい小鬼どもを薙ぎ払っていく。悲鳴と断末魔が奏でられ、やがて沈黙が訪れる。
「やるなオリオ! さすがだ!」
 妻の勇ましさにほれぼれした声音でテオが賞賛を送ると、戦いの最中なのも忘れたように――だからこそか――オリオは乙女のような笑みを浮かべる。テオもまた笑みを返すと、オリオを抱き寄せ宙に踊った。敵勢に動きがあった。二人は呪飾獣カツィカのもとへ急ぐ。

●4
 呪飾獣はいらだっていた。どう見ても、自らの手勢がいいように踊らされていたからだ。カツィカは群れを率いるのに長けていたし、昔から(いつのことかはわからなかったが)一番頭がいいのは自分だった。
 それが、粗末な砦ひとつ手に入れられずにいる。配下のゴブリンたちにも不安と動揺が広がっているようだった。ゴブリンは元来、臆病なモンスターだ。勝っているうちは我も忘れて勢いづくが、形勢不利になるととたんに統制がとれなくなる。
 力を誇示せねばならなかった。
 カツィカは走ると、忌々しい柵(こんなものあったか?)にとりつくと、爪を振り上げて呪いの力を込めた。彼の一撃ならば、この程度の障害物を粉砕するのはたやすい。
 邪魔さえ入らなければ。
 横合いからなにかが勢いよくぶつかってきて、カツィカはたたらを踏む。歯ぎしりして振り向くと、なんとそれは配下のゴブリンだった。そいつは混乱した様子でカツィカの顔色を窺っていた(仮面に隠れて見えはしないのだが)。
 呪飾獣カツィカは、端的にいうとキレた。怒りの絶叫とともに振り下ろされた呪いの一撃は、邪魔をしやがったそいつをものの見事に肉の塊に変えた。

●5
 ゴブリンが自ら進んでカツィカを止めようとしたわけではなかった。レイチェルが『サイコキネシス』でゴブリンを掴んでぶつけたのである。
 もちろん、攻撃としては大した威力ではなかった。こうしてやれば、カツィカはゴブリンを自分の敵だと思い込むのではないかと考えてやってみたのだ。そうならなければふつうに戦うだけだったのだが。
 レイチェルは次々とゴブリンを吹き飛ばし、カツィカに「跳びかからせ」た。
 上手くいってしまった。――バカだよね。
 敵の首魁は咆哮とともに金山羊の呪詛を纏い、自らの配下を次々とひき倒していた。
 そして、その頭上から降り来たる小さき影。身の丈を超える長槍を構えて超高度から落下してきたアベルが、カツィカの身体を串刺しにした。金山羊が霧散し、苦悶にあえいで転がる。
「フッ、随分と怒っているようだが」
 アベルは相手をさらに挑発してみせる。振り回される呪獣の爪も、両掌からの呪詛も見切り、躱し、槍の穂先を突き入れると見せかけて旋回させた石突きで顔面を痛打する。
 怒りは判断を鈍らせ、敵の動きはどんどん単調になっていく。ひらりと宙を舞い、アベルはカツィカの攻撃をいなす。
「まだ理解していないようだな。お前はこれから狩られるんだ。俺たち猟兵によってな」
 吹雪はいつの間にか止んでいた。カツィカの目は宙に跳ねたケットシーを追い、天を仰いだ。影が重なった。
 雄たけびとともに振り下ろされた巨大斧がカツィカの黄金の角兜を砕く。
「随分と趣味の悪いヤツだな、被るなら本物の骨に限るぜ」
 そう言って、自らの兜――牛の頭骨から造られた蛮族の兜――を指してみせる。テオだ。
「さてさてさて、お立合いだ! そんないきり立ってないで、我が部族に伝わる舞をご覧あれ!」
 この男は戦いを楽しんでいる。斧を突きつけるテオの姿にカツィカは狼狽し、割れた面の奥からきょろきょろと周囲を見やる。引き連れてきたゴブリンたちは蜘蛛の子を散らすように瓦解していた。
 わずかにその場に残っていたゴブリンが這う這うの体で逃げ出そうとしたが、果たせなかった。赤雷が轟き、そのことごとくを打ち倒す。剣とハルバードを振りかざしたガルディエは残った唯一の敵、カツィカへと迫る。呪獣は瞬間的に怖れをなし、地面を蹴って飛びのいたが、その先には真夜中の娘の微笑が待っていた。夜の闇にとけたオリオの剣が閃き、カツィカの片腕を斬り飛ばす。
 落ちた呪腕が紫の煙をあげて消散していく。オブリビオンの目に映ったのは、夜の闇から現れる猟兵たちの姿。それは絶望を意味していた。

●6
 かくして戦いは終わった。砦の兵士たちは勝利の雄たけびをあげ、猟兵たちは安堵に胸を撫でおろすとともに互いの健闘を讃えあった。隊商を守りぬき、この砦を守るという使命を見事に果たしたのだ。
 雪解けの季節はまだ遠いが、ひとまずの危機は去ったということだ。
 短い期間ではあったが苦楽を共にした砦の兵士たちや隊商の人々との名残を惜しみながら、猟兵たちも帰還する。いつか、どこかの世界へと、猟兵たちは旅と戦いを続けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月28日


挿絵イラスト