#アポカリプスヘル
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――灰色の雪が降っている。
朽ちた都市は音もなく横たわり、奪還者(ブリンガー)達を静かに迎え入れていた。
此処には誰も居ない――生命の息吹が無い。
この世界が、このように様変わりをしてからたかだか数年。それだけの年月では、此処に満ちた"毒"が除かれるには到底、足りないことは明白であった。
重汚染地域――此処は、そう呼ばれている。
誰一人として立ち入る事が出来ない筈の場所。
それを示すかのような、まるで新雪の如き灰に、NBC防護車両の8輪が轍を刻んだ。
微かなモーター音を響かせ、車体上部の12.7mm重機が辺りを睥睨する。
この奪還者達は随分と装備が良い。でなければ、こんな場所へ赴こうとは思うまいが。
否――それでも不足だったか。車両に随伴する徒歩の者は、たった独りである。
「リリー、異状は無いか」
「……ありません」
ノイズ混じりの声が少女の耳を打つ。彼女はそれに、感情を乗せない声で応えた。
吸入すれば数時間のうちに肺を腐らせる毒の塵が舞う中で、リリーと呼ばれた少女は簡易な防護装備を付けた程度で、平然と歩き回っていた。
フラスコチャイルド。
遺伝子操作により汚染に耐性を持つクローン兵を、奪還者達は他の同じような――此処よりはだいぶ、ましな環境の――場所で、見つけていたのだ。
それにより、物資があることは確信していながらも手を出す事の出来なかった、この地域にあるシェルターを攻略にかかると決めた。
「頼むぜ……お前だけが頼りだ」
「……わかっています」
わかっている。そのために創られたのだと。
故に、都市へと足を踏み入れてから半日以上。休みなく警戒を続け、最も安全と思えるルートを指示し続けて。表情の無いその顔には疲労が色濃く滲んでいた。
だからだろうか。それとも、完調であっても気付くことは出来なかったのか。
サイバーゴーグルに映る照準用レーザーの光に、リリーの反応はやや遅れていた。
地面が炸裂する。車両の前輪が吹き飛び、ヘッドセットに罵声が響く。
「くそったれ、何だ今のは! 砲撃か!?」
「右前方のビルからだ! 下がれ! 早く車を下げろ!」
2輪を失ってなお、力強い唸りを上げる防護車両だが、そこへ再びの爆発が轟いた。
後方からの一撃に装甲を削られ、密閉を破られる車両の中で奪還者達は悲鳴をあげる。
「なんてこった、囲まれてるぞ!」
「あのガキは一体、何をしてやがった……!」
「……あ……」
ごぼごぼと、瀕死の咳を交えながら吐かれた言葉に、呆然と立ち尽くすリリー。
その前で――潜んでいた瓦礫の中から、手足を持つ小型の戦車とでも言うべきものが、次々と這い出して来たのであった。
●
「……依頼です」
集まった猟兵達の前で、ニア・スクイード(水辺の都市伝説製造機・f24343)は呟くようにして言う。
「場所は、アポカリプスヘル。内容は、奪還者の一団を助けて欲しいというもの」
なんでも、このままではとある重汚染地域へと物資を回収しに行った奪還者達が、潜んでいたオブリビオンに襲われ全滅するのだとか――。
「珍しいことではない。それは、わかります」
そう――かの世界においては珍しいことでもない。
点在する人類の拠点、ベースに物資を供給するため廃墟へと探索に乗り出す奪還者達は常に危険と隣り合わせであり、その損耗率も非常に高いのだ。
だが、予知として視てしまったからには助けたいと、ニアは言っていた。
さて――まず最初の障害だが、これは現地の環境それ自体である。
化学物質か生物兵器か、放射性物質も含めたそれら全てか。内容は定かではないが、その都市は全域が毒に覆われている。猟兵であればそこまで大袈裟な装備を用いなくとも耐えられはするだろうが、何らかの備えは欲しいといったところだ。
また、転送された猟兵達は、奪還者達より若干の先行を得ることが出来る。
直接の接触はお勧めしないが――『同業者』としか見えない猟兵達に、危険だから下がっていろと言われたところで、彼等も納得はすまい――オブリビオンとの戦闘に彼等を巻き込まないため、何らかの足止め策を講じるのも良いかもしれない。
その後はオブリビオンの排除となる。そして、首尾よく敵を殲滅出来たなら、
「物資の積み込みを、手伝ってあげてください」
個人のシェルターとはいえその場所は広く、また劣化してダメになっている物も多いだろうから。多分彼等だけでやるのは大変だろうと、ニアは言っていた。
「……以上です。宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げ、グリモアが光を発する。
Redmoon
マスターのRedmoonです。
今回の依頼はアポカリプスヘルにて。
奪還者達を助け、物資の回収を手伝うというものとなります。
●第一章【冒険】
毒に包まれた廃墟を探索し、目的地である富豪のシェルターへと辿り着くまでのシーンです。後方数キロを隔てて奪還者達の車両と、随伴歩兵が一名。彼女にその先が危険であると思わせれば、迂回路を取らせる事が可能でしょう。
●第二章【集団戦】
オブリビオンとの戦闘です。戦場の詳細は二章になった後、断章にてお知らせします。
●第三章【日常】
富豪のシェルター内で、物資の選別や奪還者の車両への積み込みをお願いします。
持ち主である富豪自身は結局辿り着くことが出来なかったらしく、既にこの世にありません。そちらの気遣いは無用です。
なお、その際、奪還者達とは若干の話し合いが必要になるかもしれません。
シナリオの流れはこのように。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『猛毒の廃墟を駆け抜けろ』
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POW : 肉体的利点を生かし、突破する
SPD : 持ち前のスピードやテクニックを駆使して、突破する
WIZ : 精神や頭脳を生かし、突破する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴィクトリカ・ライブラリア
なるほどね。人間の生存のために摩耗するまで使い潰される、それはわたし達フラスコチャイルドの役目だし、彼女が受け入れてるなら其処に文句はないけど……
それで酷使してスペックダウンさせてる事に気づいてないんなら、少し問題かな。彼女の待遇云々より、彼らの生存確率を下げてるのはちょっと良くないね。
とにかく足止めが必要なのね。そこらの放棄車両を解体複製してルートを封鎖しちゃいましょう。
わざわざぶつけて押し通る人は居ないと思うし、見かけのガワだけをちょっと装甲車でも無理かなってくらいの密度で置いておけば迂回するでしょ。
それにしてもすごい毒素。こういうところって手付かずの本があったりするのよね……
ベルベナ・ラウンドディー
●毒耐性・空中浮遊・破壊工作・時間稼ぎ・情報収集
疲弊は度外視
転送後、奪還者に先行して作戦地区の概要把握を展開
彼等が侵入しえる経路の封鎖をユーベルコード…光柱のバリケードで行う
展開速度の効率化と堆積する粉塵の吸入を抑えるため、高所を飛び歩くのが望ましいか
結界数は有限につき、多方面に展開の際は地面や周囲建物を破壊し、車輛侵入を妨げる簡易手段も想定する
これには爆発物を持つ敵勢力の存在の誤認を示す狙いも兼ねる
工作は得意なんですよ、工作なら
●
…汚染地域、か。宇宙放射線とどちらがマシでしょうね
対策品の現地調達は困難と見るが、かといって奪還者に要求する暇も無し
私の遺伝子が変な変性を起こさないことを祈ります
微かに吹いた風に、塵が舞い上がる。
さくり――と足音を立て、死に絶えた都市へと降り立ったヴィクトリカ・ライブラリア(二等司書・f24575)は、舌先に覚える苦さに眼鏡の奥の瞳を僅か、細めていた。
「なるほど。……聞いた通り、凄い毒素ね……」
「むぅ……」
同じく転送されたベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)もまた、微かな唸りをあげて。その白い尻尾に付着した塵が、痛みとまではいかないが、じりじりとした違和感を訴える、その感覚に耐えている。
重汚染地域。さて、宇宙空間で降り注ぐ放射線と、どちらがマシでしょうか――などと思っていたが、果たして。
あまり長居したくない場所であることは疑いがないといったところか。
「そちらは。問題ありませんか?」
「え? あぁ……」
ヴィクトリカへと問いかけるベルベナ。彼から見て、ヴィクトリカは特別な装備をしているようにも思えない。それだけならば自身も同様ではあったが、彼の姿は竜である。毒に対して耐性があるのはむしろ当たり前と見える。
ヴィクトリカは微笑し、答えていた。
「わたしは、あの奪還者達が連れている……彼女と同じだから」
清浄な環境でこそ生命維持が必要となる、この世界に適応させられたヒト。
ベルベナは納得したように肯き、そして空を見上げた。
「では、仕事にかかりましょうか。私は上から」
「はい。……ルートの一つは、こちらでも塞ぎます」
そして、二人は上下に分かれて、動き始める。
――とりあえずしなければならない事は、オブリビオンとの戦闘時間を確保するため、奪還者達の足を遅らせる、足止めである。
彼等は十分に警戒しながら進んでいるため、多少迂回路を取らせる程度でこれは足りよう。
堆積する塵を避けるため、また速やかに作業を終わらせるため、高所へと駆け上ったベルベナは、都市の作戦領域を浮遊しながら見下ろしている。
目的地は――概ねあの辺り。其処へ至る道は――なかなかに多いか。
守護結界(グレイプニル)は……足りてくれれば良いのですが、と。道の一つへと駆け下り、光のバリケードをそこに打ち立てる。
次へ。霧のように塵が覆った空を翔ける。なかなかに辛い作業だが、あまり時間をかける訳にもいかない。今だけは疲労も、肌に触れて不快さを齎す塵も無視する。
――私の遺伝子が、変な変性を起こさなければ良いのですが。
苦笑しつつ駆け上がった先で、ベルベナはヴィクトリカが道の一つを塞いでいる姿を見つけていた。
呼吸の度、感じる苦さに、少しばかりの懐かしさを覚える。
かつて、汚染地帯でのサルベージに特化したフラスコチャイルド部隊に所属していた頃は、濃度こそ様々ではあるが、この匂いは日常的に嗅いでいたものだ。
そう――こういった場所には、手つかずの本があることも多い。燃料として消費してしまうような者も居らず。破損させるような動物も、虫も、場合によっては微生物すらも、死に絶えているから。
半ば、瓦礫と灰に埋もれた書店を視界の端に捉え、其処に眠り、誰かの手に取られる事を待っているのだろう知識に少しばかりの興味が湧くが、今は仕事の時である。
ヴィクトリカは振り返り、こちらへ向かってじりじりと進みつつあるのだろう奪還者達のことに思考を移していた。
車両に随伴する同種――フラスコチャイルドの扱いについては文句も無い。
元来、そのために生み出された存在である。そして、この世界の人間誰しもに、余裕など無いのだから。彼女がそれを受け入れているのであれば。
――だけど。
「それで酷使してスペックダウンさせてる事に気づいてないんなら、少し問題かな」
彼等自身の生存率を下げることでもあるからだ。そのことだけは、ヴィクトリカの顔にやや苦味の強い笑みを刻ませる。
さて――と、気を取り直すかのように、路上に転がっていた車両の一つへと手を触れたヴィクトリカは、それを瞬時に分解してゆく。
解体複製。やがて精巧に作られたその複製品が、次々と道に配置され、たとえ装甲車であっても突破は難しいと思えるほどに塞がれてしまい。
「これで迂回してくれるかしら?」
出来栄えを確かめるかのように、ヴィクトリカはひとつ肯いてみせた。
――感情を乗せない瞳が、道を塞ぐ数台の車両を眺める。
「……どうした、何か問題があったか?」
「はい。……最短ルートが放棄車両で塞がれています。迂回路を探しますので、暫くそこで待機を」
「何? チッ……こいつでも、ありゃ無理か。……わかった、任せる」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジフテリア・クレステッド
(自分自身、人間の余計な欲で、ガスマスクがなければ【毒・環境耐性】がない失敗作として生を受けた経緯を思い出しながら)
これだから人間は…気分的にはあの車両をぶち抜いて人間どもは置き去り。リリーだけ連れて離れたいところだけど…これも仕事か、仕方ない。
【スナイパー】ライフルで【目立たない】ようにリリーの足元を狙撃する。通常弾で、リリーには決して当てないように。
人間どもが着弾に気づかないような威力になるぐらい離れた位置からちょっかいを出す。
それを、リリーが警戒して進路を変更するか暫くその場に留まる、または進路を反転して引き返すかするまで続ける。
狙われてるって思えば慎重になってくれる、といいんだけど…。
ニトロ・トリニィ
アドリブ歓迎です!
うへぇ…
ひどい臭いだなぁ。
ブラックタールで〈毒耐性〉がある僕でも長くは持たないだろう。
でもまぁ、何とかなるはずさ。
行動
要するに、敵がいる事を奪還者達に知らせれば良いんだね?
それなら手っ取り早く警告文でも書いて危険を知らせてあげようか。
そこら辺にある瓦礫なんかにククリナイフを使って削りながら書いていこう。
えぇーっと…
内容はどうしようかな?
【ここより先は死地、命が惜しければ引き返せ】とか【この先に敵がいる】で良いかな。
これを時間一杯まで大量に書いていこうか。
引き返す事は無いだろうけど、脅威がいる事を知らせる事は出来るはずさ。
囁石灯・銀刃郎
私も長時間労働はきっついのよね。精神的に。まぁ、だからって
あんまり悠長にもしてられないのが奪還家業の困り物だけど。
装甲トラックを【運転】していく
【環境耐性】荒れた土地を走る為のトラック。
機密性もそこそこあるし多少は毒を防いでくれる。『治癒細胞』での回復もできるし、これで通行は多分問題ない。
……ああ、後ろの奪還者達を遅らせなきゃだっけ?そーねぇ…
トラックの荷台から武装バギーを降ろし【操縦】
【戦闘知識】【世界知識】崩れそうな家屋や、
トラックが通った後の狭い道をキャノン砲で砲撃。崩壊させる
崩壊音に真新しい破壊痕を作る。
奪還者はいざとなれば冒険しなくちゃいけないけれど、
避けれる危険は避ける…ものよね?
「――さ、この辺りでいい?」
廃墟に低いエンジン音が響いている。
装甲トラックの運転席で、囁石灯・銀刃郎(ミュータントファントム・f24401)は荷台に居る同乗者達へと、そう声をかけていた。
「ありがと! ……うへぇ。ひどい臭いだなぁ……」
後部ドアを開け、降り立ったニトロ・トリニィ(楽観的な自称旅人・f07375)はそう言ってあからさまに顔をしかめ。
続いて、小さく礼を述べたジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)も車から降り、静かに周囲に視線を巡らせている。
「こりゃ、僕でもあまり長くは持ちそうにないか」
ブラックタールであり、毒への耐性も強く持ち合わせている筈のニトロは、ぼやくように言っていた。しかしすぐに表情を変え、「でもまぁ、何とかなるはずさ」と、自身の黒い体表に指先を触れながら楽観的にそう呟いてみせる。
「だけど、だいぶ奪還者達に近づくのね。……大丈夫?」
「うん。……心配しないで。接触するつもりはないから」
「こっちも同じく。ちょっと警告を残しにね」
何気ない銀刃郎の問いに、答えるジフテリアとニトロ。朗らかに愛用のククリナイフを振ってみせるニトロは良いとしても、何処か――機嫌の悪そうなジフテリアには少しばかりの懸念があったが、銀刃郎は軽く息を吐いてみせる程度でそれを流していた。
二人を見送り、再び装甲トラックを走らせる。
ちらほらと雪のように降る毒の塵も、この中に居れば触れることはない。
この身体は既に――猟兵以前に、まともに生きているとは言えない代物だが。ただの人間であれば、分厚い防護装備に着膨れながらこの外に出てゆくというのは躊躇いを覚えるどころの話ではあるまい。
軽装でも耐えられる者、一人に依存してしまうのも分からなくはない――が。
「……長時間労働はきっついのよね、精神的に」
シートにもたれながら、そう独りごちる。
特に、あらゆる危険を察知すべく気を配りながらでは、その消耗も並ではなかろう。
しかし、かと言って、あまり悠長にもしていられないのが様々なタイムリミットに常に追われている奪還者稼業というものであると。
わかる。この世界生まれではないが、此処に迷い込み、生きてきた者としてわかってしまう。故に、ため息一つを吐いて彼女はその思考を終わらせていた。
「さて、後ろの奪還者達を遅らせなきゃだっけ? そーねぇ……」
やや迷った後、トラックの荷台から武装バギーを降車させる。ジギーという名のそのバギーは自動操縦で走り、後部に据え付けられた砲を旋回させる。
目標は道の左右に立つ廃墟と、今通ってきた道そのものだ。
野太い火線と共に吐き出された砲弾は家屋内部で炸裂し、辺りに瓦礫をぶち撒けていた。そして、ばらばらと硬い物が降る音を、銀刃郎は装甲トラックの中で聞く。
「崩壊音と、真新しい破壊痕。奪還者はいざとなれば冒険しなくちゃいけないけれど、避けれる危険は避ける……ものよね?」
「……凄い音がしてるな。だいぶ派手にやってるね、あっちは」
がりがりと瓦礫に警告を刻みながら、不意に響いた崩壊音に顔を上げるニトロ。
彼は振り返って、これまで自分の刻んできた文句に目を落とした。
【ここより先は死地、命が惜しければ引き返せ】
【この先に敵がいる】
うん。あの音で凄い信憑性増したと思う。現在進行系でこの先はやばい、と。
「よし……もう少し書いていくかな」
呟いて、ニトロは瓦礫に隠れるように再び移動を開始する。
奪還者達の姿をビルの上階に潜んで見下ろすジフテリアにとっても、この音は助けになっただろうか。
彼女の体格に合わせて、ややサイズダウンされたスナイパーライフルを構え、防護車両の近くで警戒を続けるリリーが足を止めた瞬間を狙って銃爪を絞る。
息苦しい。フラスコチャイルドを超え、それ以上を――汚染された環境だけでなく、清浄な環境においても適応する事を――求められた結果の失敗作。
人の欲、そのツケだけを負って生まれたジフテリアに、まともな環境耐性は無い。
だからこそ、発見したフラスコチャイルドを、ただ所有する機材の一つであるかのように酷使しているかに見える、この奪還者達には苛立ちが募った。
――これだから人間は……と。
気分的にはあの車両へ銃口を向けたい。あれをぶち抜き、中の人間どもは置き去りにして、あの子だけを連れこの場を離れたいところだが。
これも仕事か、仕方ない――と自らに呟いて。肩を蹴る銃床に目を細めながら、止めていた息を吐き出す。ボルトを開き吐き出された薬莢が、澄んだ音を奏でる。
遠雷のように轟く銃声は、砲撃音と続く崩壊音の中に紛れていた。
足元を削る銃弾にリリーは飛び退き、その場に伏せた。
車両に後退するように指示を送り、自身もじりじりと物陰へ退いて、何処から狙撃を受けたのか、それを割り出そうとしている。
付けたヘッドセットからは、リーダーの忌々しげな声が聞こえていた。
「……訳の分からん光の壁に、爆発音。そこらじゅうに刻まれた警告に、更には銃撃だと? どうやら、何者かの妨害を受けているのは間違いないようだな」
「はい。……どう、しましょう」
「出直すというのは無しだ。燃料にも、フィルターにも余裕が無い。……さっきの、塞がれていた道へ戻るぞ。全員であの車を退かして道を作るしかあるまい」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナターシャ・フォーサイス
WIZ
穢れた地の物資を…ですか。
そして、疲弊して襲撃されてしまうと。
それは、使徒として止めねばなりません。
浄化を齎す穢れなき翼をもって、道を拓きましょう。
ですが、その後を彼らが来るのは避けたいところ。
同時に召喚する天使達で道を塞ぎますが、手荒な真似はしないよう命じます。
奪還者の方々には…疲労がとれるまで、しばし休憩していただきましょう。
彼らに加護を授け、来るだろう戦いへの備えとするのです。
もし彼らが来るのなら、天使達をその助けとしましょう。
我々は残る天使を引き連れ、シェルターを目指すのです。
探索の必要があるようですし、手分けして目的地を探します。
シェルターまでの道は浄化の羽根で残しましょう。
高砂・オリフィス
WIZ判定*アドリブ歓迎
こういうことはままある、って言われてもぜーんぜん納得できないや!
後ろの人たちがこっちにこないようにしつつ、毒素を吹っ飛ばしちゃおう
こういう時こそ笑顔、笑顔だねっ⭐︎
使用するユーベルコードは《こぼれ落ちる時間》
取り出しますはじゃーん!舞踏用儀礼剣ブレイド・ロンドっ!
こちらでじゃんじゃん剣舞を舞って行こう
突破はもちろん、封鎖やオブジェクトの破壊もこれならなんのその!
ついでに味方に見てもらってアピールっ、称賛なりブーイングなりもらえればさらに効率アップって寸法だね
テンションあげてこ!毒素なんかにぼくらは負けないから!
奪還者達が放棄車両の撤去を行うその先には、二人の猟兵が降り立っていた。
一人は高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)。彼女は、依頼の際に告げられた、珍しいことではないという言葉に複雑なものを覚えながら、転送に応じる。
(「こういうことはままある、って言われても、ぜーんぜん納得できないや!」)
助けられるのは目に映るものだけで、取り零されるものは多く。レイダーに変異生物、ゾンビ、狂ったマシーン――猟兵となった今から考えればオブリビオン――が蔓延る世界がどんなものかは教えられずとも知っている。
だが。だとしても。納得などはしてやらないのだ。
こういう時こそ笑顔である。テンション上げて行こう! と――。
しかし、転送を終え地に足が付き、堆積した塵が舞い上がった途端、オリフィスは痛だだっ! と叫んで飛び上がっていた。
「痛ぁっ! 何これ、痛いしちょっと痺れるし! これが毒の塵!?」
自身もまたこの世界出身ではあるが、こんな場所があるとは聞いてなかったと。
ぴょんぴょん跳ねるオリフィスに、少しだけ困ったように笑んで、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)はその身体から翼の如き光を広げていた。
その翼から舞い散る羽根。ひらひらと降りながら、それらは辺りを浄化してゆく。
不意に痛みがなくなった事に気づいたオリフィスは、暫しの間、ほえーとその光景を眺めていた。そして気を取り直したかのように笑みを浮かべると、一振りの装飾が施された巨大な剣を引き抜く。
「よおし、こっちだって! 毒素なんて吹き飛ばしちゃえばいいよね!」
優美な剣身。ブレイド・ロンドを振るい、風を巻き起こす。
オリフィスの舞う剣舞によって作り出された真空の刃は、ナターシャの羽根を巻き込んで拡散し、通りの一帯から毒を消し去ることに成功していた。
「お見事です。これで……しばらくの間、この場の穢れは除かれましたね」
浄化と共に喚び出された天使達を連れて、言うナターシャ。
彼女はそのまま光の羽根を撒きつつ歩いてゆこうとし、オリフィスもまた称賛を受けたことで力を増した剣舞によって風を起こしながらその後を続いてゆく。
――ナターシャには使命があった。一切のものを楽園へと導くという、使命が。
ゆえに、使徒として。この世界で生き足掻く者達が無為に潰えるこの一件、止めねばならないと思う。
奪還者の方々にはしばしの休憩を――すぐには後を追ってこられないよう、数名の天使をその場に残して。そして自身は進み続ける。目的地であるシェルターまでの道を、浄化の翼によって拓くために。
「道が瓦礫で塞がってるね! ぼくに任せて!」
「はい。どうぞ……お願いいたします」
オリフィスの放った真空の刃が崩れ落ちた家屋の残骸を砕く。そして道が開かれたことにナターシャは穏やかな笑みを浮かべ。
二人が通った後には、白い浄化の羽根が残っていた。
「……何なんだありゃ」
車両を囲むようにして立つ5人の奪還者達。リリーと、分厚い防護服と防毒面に身を包んでいるため性別すら判別出来ない人間達は、暫し呆然と立ち尽くしていた。
道に撒かれた羽根の続く先、天使としか表現出来ないものが居る。
それぞれ自動小銃や短機関銃を抱えながら、まさか撃つ気にもなれず、彼等は顔を見合わせていた。
「進む……のか? あそこへ?」
「冗談を抜かせ。迂回するしかねえだろうが」
「だがよ……見ろ。この辺り、ここらじゃ信じられねえくらい毒が薄くなってやがる」
だからと言って装備を外す訳にはいかないが。こんな格好をしているのが馬鹿らしくなるほどに、周辺の大気、その分析結果はそれが清浄である事を示していた。
「ああ、もう。どうとでもなれだ。車を隠せ、しばらく……状況が変わるまで交代で警戒しつつ休憩と整備に入る。リリー、お前も休んでろ」
「……ですが」
「ですがも何もあるか、お前にとっちゃこっちの方が毒なんだろうが」
大袈裟に肩をすくめながら言われた言葉にリリーはこくりと肯き、そして車の中へと入っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ウォーキングタンク』
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POW : 機銃掃射
【砲塔上部の重機関銃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 対猟兵弾
【対猟兵用の砲弾を装填した主砲(連続砲撃)】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : キャニスター弾
単純で重い【散弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
イラスト:良之助
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
奪還者達の足止めと周辺探索を終え、猟兵達は目指すシェルターにほど近い場所へと足を進めていた。
一等地に広い敷地を持つ富豪の屋敷。その地上部分は見る影もなく崩れていたが、そのために地下へと続くスロープと、その先のややへこんだシャッターが猟兵達の目にははっきりと映っていた。
あれが地下シェルターへの入口、車両での進入が可能なエレベータであろう。
だが、あそこへと進入する前に――周囲には多数のオブリビオンが潜んでいる事を猟兵達は知っている。
道の左右に並ぶ家屋から、かすかな気配。高級住宅地へと入る直前に立つビルの、瓦礫に覆われた一角にぽつりと灯る、赤い照準器の光。
人型の小型戦車は、やって来た猟兵達を獲物と定めて、静かに動き始める。
近場には幾つかの高所があり、周囲には大小の瓦礫が散っている。
猟兵達の居る道はそう狭くもない。数台の車両が残骸として転がっていた。
敵は恐らく、そのまま包囲を完成させようとして来るのだろう。戦闘の始まりだ。
ベルベナ・ラウンドディー
敵に配置の暇を与えたくないし
どのみち汚染環境下での消耗戦は避けたい
…先程からの疲労は承知で、速攻を展開
切り込み、他猟兵展開のとっかかりは作ります
戦闘の本展開はお任せしますよ
●破魔・焼却・範囲攻撃・戦闘知識・ダッシュ
ユーベルコード使用
重量を誇る炎を纏わせ損壊と同時に機動力を奪う攻撃を行う
直接刻むか、地面に大きく描いて範囲的に炎上させる2パターンを想定
敵は銃のみ、なら狙いは絞らせず絶えず動くことで対策とします
連携を誤れば味方に当たる危険があるのは欠点の1つ
優れる範囲も射程も、それを活かす前提の布陣は機動性と統率性あってこそ
ならばそれから殺します
走破性しか取柄のない車輛ならいい的でしょうがね
囁石灯・銀刃郎
ひゅぅ!来たわねぇー…っと!
AI【操縦のバギーで敵の注意を惹き【存在感】
【運転をしてるトラックで敵を横切り、運転席から飛び出て【ジャンプ】
しャアッ!【早業】両脚をカタナで斬り、体高が下がった所に
戦車下部からカタナを突き刺して電流を流しこむ【属性攻撃
一つ。次、距離――問題無し。
抜刀体勢をとり、『銀光一閃』発動。【残像】
連続砲撃も重機関銃も散弾も、遅い。
【戦闘知識から射線を【見切り、【ダッシュ。
至近距離からの抜刀。
―――!【武器改造】カタナで斬るんじゃなく、
刀身に込めたオーラを伸ばして車体を切断。納刀。
ふたーつ。まだいるわよねぇ。
【第六感】オブリビオン化した敵の気配に向けて、再度抜刀体勢を取る。
まるで網を張るかのように待ち構え、囲みを閉じようとするオブリビオン達。
それに対し、まず猟兵達が選んだのは速攻だった。
――配置の暇など与えるものか。
「切り込みます」とベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)は告げて、膝を撓めた。そして疾駆へと移行した彼は、囲みの中へと飛び込んでゆく。
彼を追うように向けられる、幾条もの赤い光。それらのうち一つが肌へと触れた瞬間、ベルベナは跳んでいた。
――ドッ、と炸裂する家屋の壁面。薄黒い爆煙は白い尾を追って斜めに連なり、壁を駆けるベルベナの姿を捉えきれずにむなしく土塊の華を咲かせるのみである。
「走破性しか取柄のない車両なら、いい的でしょうがね……」
当たるまい。動きを止めず、これほど機敏に駆け回るものに、そんな砲では――!
そして己の位置を晒し、瓦礫の中から立ち上がったウォーキングタンクの前に、緑と黒の二色を曳いて彼は舞い降りる。
瞬時に向けられて来る砲へと指先を添わせ、踏み込んで背面へと回り込む。がちり、と内部で鳴ったのは弾種を換えたのか。発射された散弾が誰も居ない地面を抉るのを横目に見つつ、ベルベナは引き抜いた直刀で敵機の装甲に竜言語の紋を刻み込む。
離脱――と同時に起動。紅々と煌めき、燃え上がる紋はその重量と熱を以て敵を蹂躙する。装甲を赤熱、融解させ、小爆発を起こしながら膝をつくウォーキングタンク。
続いて姿を見せた二体に対し、ベルベナは今しがた行動不能にした敵機を盾とした。
遅い……。連携も取れていない。
跳ね回る機銃弾の中で場違いなほどに落ち着きながら、息を整えるベルベナ。
いかに射程と範囲に優れようと、それらが真価を発揮するのはきちんと獲物が網にかかっていてこそ。
このまま掻き回してくれると、銃撃の途切れた隙を突いて、彼は滑るように敵機の陰を飛び出していた。同時に砲弾が擱座したウォーキングタンクの残骸を砕く。
次いで二体目の、散弾を込めた砲がベルベナの姿を追うも、しかし一瞬早く足元に描いた紋は重い炎を噴き上げ、定まりかけていたその照準を強引に逸らしてしまう。
鋼鉄の砲が、のしかかる重さに悲鳴をあげる。
「……無駄なことを」
続く斬撃は赤く燃える砲をざっくりと斬り落とし、更に存分にその車体へと斬り込んでいた。
「ひゅぅ! 来たわねぇー……っと!」
既に状況は動いている。家屋に着弾し炸裂の嬌声をあげる砲弾を眺めながら、口笛を吹く囁石灯・銀刃郎(ミュータントファントム・f24401)。
ハンドルを回し半回転を決めた装甲トラックから飛び出したバギーは砲声の中を走り回っていた。瓦礫の中を縫うように走るバギーを追って、姿を見せたウォーキングタンク達の前を銀刃郎の駆るトラックが横切ってゆく。
その運転席に、彼女の姿は既に無い。
開いたままのドア。無人のままにAI操作で動くトラックから、もはや離れた銀刃郎の姿は空中にあり――ぎこちなく立つ人型戦車の死角に、低い姿勢で彼女は降り立つ。
「――しゃアッ!」
描かれるのは、青白い弧――。
鋭い気迫の声と重なる金音と共に、一線で断たれたウォーキングタンクの足はまるで達磨落としのように落ちてその体高を縮めていた。
腿の断面で立つウォーキングタンクの、表情などある筈もない砲塔の顔に、何故だか確かな戸惑いを見ながら銀刃郎は突きを繰り出す。
狙うのは箱状の胴と、腰との継ぎ目である。
そうして、するりと滑り込んだ刃を深く埋め、その刀身に電流を纏わせれば、ウォーキングタンクは誤作動を起こしたかのようにばたばたとその腕を振るわせた。
――ひとつ。
ショートする音と共に煙を上げ、動かなくなる敵機から刃を引き抜いて。
確認するようにそう呟けば、漸くにしてこちらを向くもう一体の姿を彼女は認める。
「次。距離――問題なし」
チィン、と鍔鳴りの音を鳴らして刃を鞘に納めた、その姿は一瞬ぶれるかに見え、戦車の左肩より吐き出された火線は何も居ない空間を薙いでゆく。
否――何も居ない空間ではなかった。それは、ほんのひと刹那前であれば銀刃郎が居た筈の空間である。銃口の追従が追いつかず、また機械の目を以てしても命中を期待できぬと認識出来ないその僅かな間に、彼女の姿は沈み込んでいた。潜り込んでいた。
絶好の間合いへと。
「――――ッ!」
呼気と共に奔った銀閃は刃そのものではない。纏われたオーラによるものだ。
そして一拍を置いて、ずるりとウォーキングタンクの胴がずれた。鏡のような断面を見せて分かたれた複合装甲から、ざらざらと零れ落ちる機関銃弾。
その真鍮の輝きと音色の中で、銀刃郎は曇り一つない刀身を鞘へと納める。
「ふたーつ。……まだいるわよねぇ」
気配はまだまだ、数多くあった。こちらが見えていないのか、それとも先に飛び込んだベルベナの相手でそれどころではないのか。
ならばこちらから出向こうとばかりに、銀刃郎は廃屋の一つへと身を躍らせる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィクトリカ・ライブラリア
対戦車戦闘用意。
またぞろ歪な兵器が数ばっかり出てきたものね。
こういう連中は足を潰す、それで大抵ケリがつくわ。
車両の残骸にプラスチック爆弾と携帯電話を繋いだ即席爆弾を仕掛ける。
足下を爆風が薙ぎ払って華奢な脚部を叩き潰すように配置を計算、車列ごと吹っ飛ばせるようにありったけの爆薬を使ってIEDを作るわ。それを404して隠匿しましょ。
あとは盾の防弾性を信じて、散弾の効果が弱まる遠距離を維持しながら後退。敵戦車隊がIEDの真横に到達した時点で電子辞書から携帯電話にコール。
もし爆発を堪えたやつがいれば、ペーパーカッターで叩き潰す。
生身の歩兵でも戦車を潰せる知識ってものがあるのよ。覚えておくといいわ。
ジフテリア・クレステッド
あの奪還者たちとやり合う前に、とりあえず前座の戦車どもを片付けようか。
オブリビオンは私たちの存在に気づいてるようだけど、私たちだってグリモア猟兵のお陰で連中がこの地形でどういう風に動くかの目処はついてる。
【戦闘知識】と【学習力】を利用して包囲を目的とした敵の動きから敵の位置を大まかに弾き出して、その知覚外から【目立たない】ように【スナイパー】ライフルによる【先制攻撃】を敢行するよ。【毒使い】の私が作った汚染毒弾による射撃は毒の侵食による【鎧無視攻撃】で銃弾を当てた箇所を【部位破壊】する。最初の狙いは主に足だね。キャタピラもないんだし、それでもう動けないでしょ。【2回攻撃】で車体を壊してトドメ。
数体のウォーキングタンク達が細道を進んでいる。
ほぼ人間大の体躯に戦闘車両の火力を併せ持つべく作られたこの異形の兵器達は、オブリビオンとなって漸くその設計思想を完璧に実現出来ていた。
アンバランスな筈の身体は揺れることもない。劣悪な筈の整備性は問題にならず、四肢があげる微かなアクチュエータ音はただびとでは気付く事も出来まい。
仲間達が既に交戦に入っているが問題はなかった。彼等のすべきことは変わらない。迷いの一つもなく、ただ囲みを閉じるべく動き続ける。
その姿を、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は静かに見下ろしていた。
「……予想通りだね」
言って、銃爪を絞る。音の壁を貫く甲高い銃声が鳴り、立ち込める塵の層を衝撃波が丸く穿って、飛翔した弾丸は狙い違わずウォーキングタンクの膝へと着弾する。
人型の戦車はつんのめるようにして転倒していた。両手を地面につくウォーキングタンクを前に立ち尽くす、後続の者達。その脚部を、良い的であるとばかりにジフテリアは次々と狙い撃っていった。
着弾。薄いとは言え、歩兵の携行する小銃弾程度であれば難なく弾き返す筈の脚部装甲が、弾丸に仕込まれたジフテリア謹製の毒によって侵食される。
駆動部を腐食させられたウォーキングタンク達はぎこちなく動きを止め、次弾によって頭部を穿たれ或いは箱状の胴に穴を開けられ、次々と機能停止してゆく。
ここに至ってやっと気づいたか、残り一体となって漸くウォーキングタンクの砲がジフテリアの潜む位置を向いた。けれど少しも焦ることはない。紫の瞳はその見つめる先で、砲口が真円となるのを待ってから銃弾を放っていた。
砲撃の寸前、砲口内へと飛び込んだ銃弾によってウォーキングタンクの頭部が爆ぜる。橙色の炎を上げ、黒煙を棚引かせるその残骸を眺めながら、ジフテリアはふっと息を吐いてライフルを抱え直していた。
「前座にしては数が多い」
ボルトを引き、クリップに留められた弾丸を弾倉内へと押し込みながらそう呟く。
飽くまで興味はあの、フラスコチャイルドを連れた奪還者たちにあった。あのシェルター内で、ようやく彼等とは対面出来る。
その時自分がどうするのかは未だわからないが。
もう少し撃って行こうかと、ジフテリアは移動を開始していた。
その頃、逆側の路地にて――。
突っ込んだ猟兵達により戦闘領域をずらされ、側面に回っていたウォーキングタンク達は家屋の壁を破砕しながら道へと這い出して来ていた。
それを迎え撃つのはヴィクトリカ・ライブラリア(二等司書・f24575)。透明なポリカーボネートの盾を構え、その切り欠きにブルバップ式の自動小銃を添えて敵機を睨む。
「またぞろ、歪な兵器が数ばっかり出てきたものね」
呟いた彼女の姿はウォーキングタンク達には格好の獲物と見えただろうか。姿勢を整え掃射される機銃と、拡散しながらアスファルトを耕してゆく散弾はヴィクトリカへと殺到し、彼女はそれらを避けながら後退してゆく。
盾は数発の被弾に曇っていた。だが未だ耐えられるレベルだ。
後方には警戒する必要はなかった。鳴り響く銃声はジフテリアのものであり、ならば。彼女なら、問題なく抑えきるだろうと思えた。
自分はこの、見えるものどもに専念出来る。十分に余裕はある。
もう少し――と、そのままじりじりと退き、人型戦車の前進を誘って。
そして時折放つこちらの応射に対し、比較的装甲が薄い下半身を隠そうとしてか、放棄された車両へ寄って遮蔽を取ろうとする敵の動きにヴィクトリカは内心ほくそ笑む。
――良し。
電子辞書――Dictionary3000から、即席爆弾に繋いだ携帯電話へとコール。ピッと短い呼出音を鳴らした車の残骸が、付近に居たウォーキングタンクを巻き込んで爆散する。
路上にあった残骸には、既にヴィクトリカによる仕込みが済んで居たのだ。
下方へと流れるよう計算された爆風に脚部を砕かれ、路上へと転がるウォーキングタンク達。もはや、腕の生えた箱と言うべきフォルムとなってじたばたと藻掻き、射線の取れない砲をアスファルトに打ち付けるだけとなった連中の姿は滑稽と言うほかない。
が――まだ生きているか。
それらへと止めを刺すべく、ヴィクトリカは打ち掛かって行った。
拉げた盾を捨て、単分子振動ブレードを引き抜く。悪足掻きのように放たれた砲弾を避けて差し込まれたPapercutter-Block216は火花を上げながらウォーキングタンクの装甲を切断し、沈黙させてゆく。
「生身の歩兵でも戦車を潰せる知識ってものがあるのよ。覚えておくといいわ」
ちろちろと残り火が燃え、黒煙の上がる路上にて。
歪な人型兵器だったものに囲まれたヴィクトリカはそれら、もう動かない残骸たちにそう告げ遣っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ニトロ・トリニィ
アドリブ・協力歓迎です!
戦車を人型兵器にするなんて、ロマンがあるじゃないか!
うーん… もう少し見ていたいけれど、奴等は一輌残らず狩り尽くさないといけないね。
さぁ!戦車狩りだ!
行動
確かにキャニスター弾は脅威だけど、有効射程は短いんじゃ無かったかな?
それなら〈目立たない〉で気配を消しつつ〈迷彩〉で周囲に溶け込みながら〈鎧砕き/鎧無視攻撃〉を合わせた《集約する炎》で敵戦車を狙撃してやろう!
これなら装甲が硬くても貫く事が出来るはずさ!
一か所に止まっていたら、恐らく集中砲火を浴びる事になるだろう…
場所がバレるのは避けたいし、一度狙撃を行ったら〈忍び足〉で場所を変えようか。
フフ… 僕はここだよ?
高砂・オリフィス
POW判定*アドリブ歓迎
ぼくと一緒に、あコレはだめだ! この子たちとは友達になれないってわかっちゃった本能的に!
でもでも兵器でもへーきへーき! よろしくっあははっ!
ごめんっちょっとマジメにやりまーすっ!
瓦礫に潜んで機銃をやり過ごしつつ観察観察
どう見てもバランス悪そうだしなぁ
思い切ってダッシュとスライディングで飛び込んで、ユーベルコード《一撃必殺》をぶち込んでみようか!
そのままひっくり返しちゃえば動けないよねっ?! はいどーん! ん?
お……重っ! ふんぐぐぐギギギ……おらー!
どーだみたか参ったか!
ナターシャ・フォーサイス
WIZ
物資を求める方々を、ですか。
役目を全うするのは否定いたしませんが…
貴方がたは過去から蘇りし哀れな魂。
我々が楽園へと導いて差し上げねばなりません。
守護結界を展開し、天使達を呼んで彼らの力を封じましょう。
それから彼らの罪と闇祓う聖なる光を以て導くのです。
我々を囲むならば、数には数でお相手いたしましょう。
撃つのも構いませんが、加護を受けた我らにそれは自ら滅びの道を進むようなもの。
己が力で滅びる前に、我々の手で楽園へと誘いましょう。
もっとも、主砲から撃つようですから…そこを封じるのも、いいかもしれませんが。
…もし奪還者の方々が来るのならば。
彼らにも加護を授け、倒れることのないようにしましょう。
慌ただしく走り回るウォーキングタンク達。
正面から掻き回され、側面に回っていた者達の大半を破壊された人型兵器の群れは、残存勢力を集結させて立て直しを図ろうとしていた。
合流し、ぞろぞろと列をなして駆けてゆくウォーキングタンク。しかし彼等は気付けなかった。気付こう筈もなかった。人が潜むにはあまりにも狭すぎる隙間から、その姿を眺める、一対の青い瞳があることに――。
(「戦車を人型兵器にするなんて、ロマンがあるじゃないか!」)
ニトロ・トリニィ(楽観的な自称旅人・f07375)は目の前で動く、無骨な鉄の塊を見ながら心中で喜びの声をあげていた。
本当に、戦車を切り詰めて手足を生やしただけというようなフォルムはお世辞にもスタイリッシュとは言えず、コミカルにすら思えるが、逆にそれが良いのだ。
戦車である事をはっきりと示しながら頭部として収まっている砲塔。申し訳程度に傾斜した装甲を備える箱型の胴体。それらが細い下半身によって支えられ走り回っている姿は面白く、見ていて飽きることがない。
だが、そうして暫く観察していたニトロも、ウォーキングタンク達が集まって隊列を作ってゆく段になって軽く頭を振っていた。
(「うーん……もう少し見ていたい気持ちはあるけれど……」)
残念だけど時間切れかな、と。これ以上見ていては、仕事が出来なくなってしまう。
これらは皆、一輌残らず狩り尽くさねばならないのだ。
――さあ、戦車狩りだ!
ニトロはそう気持ちを切り替えると、じわりと滲み出すように薄暗がりの中へとその姿を現した。そして、人型戦車の一体へと向けられた指先には小さな赤い炎が灯る。
「狙いを定めて……発射!」
囁かれる言葉と共に、音もなく射出される熱線。
集約され、プラズマ化した炎は光条となってウォーキングタンクの装甲に突き刺さっていた。赤く融けた断面を持つ空洞が戦車の胴に開き、背中側の景色をそこに覗かせる。
崩れ落ちるウォーキングタンク。
その姿に、集まっていた戦車達は迅速に反応した。無音のままに葬られた仲間に一瞬頭部を向けると、散開してビームの発射されたであろう方向を睨みつける。
だが、ニトロはもう其処には居ない。余程離れているのでもない限り、同じ場所からそう何発も撃つものか。それではいずれ集中砲火を浴びる事は分かっている。
「フフ……僕はここだよ?」
足音を殺し移動を果たして、人型戦車達の無防備な背中を見るニトロ。
その指先には再び圧縮された炎が灯り、白くその輝度を増していった。
――数体をそのようにして落とされ、周辺の警戒に走るウォーキングタンク達。
突如、その前へと駆け込んだ高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)に対し、彼等はその砲塔を一斉に向けてみせていた。
「ぼくと一緒に……いや何でもないです!」
咄嗟に踵を返して全力退避。その後を物凄い勢いで砕いてゆく鉛玉と、追ってゆくウォーキングタンク達。オリフィス的には握手をすれば皆友達、人型戦車にもとりあえず腕は付いているが、ちょっとこれは話が通じそうにない。
(「コレはだめだ! この子達とは友達になれないってわかっちゃった本能的に!」)
――のである。
これまでやられっぱなしであったからか、しつこく追いすがる人型戦車からオリフィスは逃げる、逃げる。ロボットの表情も感情もわからないが、むきになっているような気すらする追跡に、オリフィスの方もナチュラルな煽りを入れてゆく。
「でもでも兵器でもへーきへーき! よろしくっあははっ! ……ごめんっちょっとマジメにやりまーすっ!」
跳ね回る機関銃弾。炸裂する砲弾。それらを大きめの瓦礫に滑り込みながらどうにかやり過ごして、さてどうしたものかとオリフィスは考える。
(「……どう見てもバランス悪そうだしなあ」)
まあ、直立して主砲を撃ったらそのまま縦に180度回転しそうな形状ではある。そういった事になっていないのはオブリビオン故か。
それはともかく。あれはもう、こけたら動けないのではなかろうか。
よし――と考えは纏まった。思いついたらやってみようの精神である。意を決して瓦礫を飛び出すと、オリフィスは向けられてくる砲口にスライディングを決めて躱し、ウォーキングタンクの足元へと飛び込んでいた。
そして起き上がりざまに放たれる拳がその胴体を打つ。
「はいどーん!」
前面装甲を凹ませ、打ち倒されるウォーキングタンク。仕上げとばかりにその胴へと手をかけ、ひっくり返そうとしたオリフィスは「ん?」と怪訝な顔をみせた。
「お……重っ!」
重かった。滅茶苦茶に重いのだ。
どうした事か。連中あれだけ軽快に走り回っていたと言うのに。まさか重量軽減装置など積んでいるとも思えないが。イメージと違うじゃないか。
しかし一度やり始めた事であるため歯を食いしばって再度力を込め、おらー! とばかりにひっくり返した。
起こしてよ、と言いたげに地面を叩くウォーキングタンクの短い腕を見ながら、オリフィスはひと仕事終えたと言うように額の汗を拭い、ひと息をつく。
「どーだ、みたか参ったか! ……ありゃ?」
気付けば、オリフィスを遠巻きに囲む人型戦車達の姿。
そういや一杯追ってきてたなあ……と。もがく転げたタンクを飛び越え、オリフィスは再び逃走に入っていた。
逃げつつも時折反撃し、ウォーキングタンクを地面に転がしてゆくオリフィス。
動けなくなった戦車には、ニトロが安全に止めをさしてゆく。
そうして、かなりの数を減じながらも走る人型戦車の前に、天使達は現れていた。
この人型戦車達、恐らく、元々は侵入者を排除するため、付近へ配備されていた戦力なのだろう。オブリビオンとなった後も己が役目を全うしようとしている。
それは否定しないが――。
「……貴方がたは、過去から蘇りし哀れな魂。
我々が楽園へと導いて差し上げねばなりません」
言って、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は彼等の前に立つ。
自身を囲むウォーキングタンク達に対し、ナターシャの表情は飽くまで静かだ。凶悪な砲を向けられていても動じず、ただ憐憫の色が添えられていた。
「天使達よ……彼等を、誘いましょう――楽園へ」
告げれば、周囲に立つ召喚された天使達が白い翼を広げて動き始める。
反射的にウォーキングタンクは発砲するも、放たれた砲弾と機関銃弾は守護結界の前に阻まれ、その飛翔するベクトルを変えて発射した戦車自身に突き刺さった。
愚かな――と呟くナターシャ。自ら滅びの道を進もうとは。
そして、ナターシャの防御能力を解析出来ず、対応策を打ち出せないまま固まる人型戦車の群れへと、天使達は向かってゆく。
その攻勢に後退して耐えつつ、結界の消える隙を伺おうとする者も、放たれる光によって砲の機能を停止させられ、再起動を試みようとする姿が其処彼処で見られた。
一方的に過ぎるそれは、戦闘と呼ぶべきか。
否――ただ救済と、それ一言で表される光景だったかもしれない。
「――まだ見ぬ楽園、その一端。我らが同胞を救い誘うため、光を以て導きましょう」
再召喚される天使達。その振るう腕と刃に、切り崩される人型戦車。
鋼鉄の風が舞う中、白い大鎌を携えて立つナターシャの周辺だけは凪いだように静かであり――やがて全ては収まる。崩折れた残骸の中、彼女は独り佇んでいた。
「終わりましたね。……では、行きましょうか」
周囲から散発的に響いていた戦闘音も已み、目を開いたナターシャはそう告げる。
廃墟街には、此処へと足を踏み入れる以前の静寂が戻っていた。周辺のオブリビオンが一掃されたことを確認し、猟兵達は目的地へと――富豪のシェルターへと進んでゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 日常
『元富豪の物資倉庫』
|
POW : 食料や水などを中心に探し、運び出す
SPD : 補強材料や工材などを中心に探し、運び出す
WIZ : 情報や端末などを中心に探し、運び出す
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
広い地下シェルターに並ぶ、大量のコンテナたち。
個人でいったいどれだけの物資をかき集めたのか、しかしそれらは主を失い、電力も途絶えたこの場所で静かに眠っていた。
エレベータを動かす時点で、補助電源は既に付けてある。
辺りには、空調の低い唸りが聞こえている。それを控えめなBGMとして各々時間を過ごしていた猟兵達は、エレベータが動く音に振り返っていた。
重い扉が開いてゆく。NBC防護車輌のヘッドライトが扉の隙間から漏れた。
車輌の脇に立つ5人の人影は奪還者達の姿で間違いなかろう。
やがて扉は完全に開き切り、逆光の中進み出たリーダー格らしい男は、戸惑ったような声を漏らしていた。
「あんた達が……その、色々としてくれていた奴等か?」
敵対的ではない。だが、友好的とも言えない、そんなような態度。
当然か。アポカリプスヘルの住人は、殆どの者が猟兵のことを知らない。つまるところ次の言葉に集約されていた。
「……何者なんだ?」
――と、猟兵達がそれに答える前に、奪還者の中でも軽装の少女――リリーが前に出ていた。そうして、白い髪を揺らし、深々と頭を下げる。
「待って下さい。……外の、人型兵器の残骸は見ました。ありがとうございます」
「何を……」
「ただの同業者なら、私達も排除するのは簡単だったでしょう。あんな回りくどいことをしなくとも。……助けていただいたのだと理解しています」
ですが、とリリーは言った。
「私にも同じ疑問はあります。何故……と。お答えいただけますか」
そして、リリーはその淡い黄色の瞳で猟兵達を見る。
ニトロ・トリニィ
アドリブ・協力歓迎です!
POWを選択
何故?
うーん、何故だろうね?
みんなそれぞれ理由があってここに居る訳だけど…
僕は… 消えた記憶を取り戻す為かな。
ここには手掛かりが無かったけど…
まぁ、いつもの事さ。
行動
確かリリーちゃんだっけ?
彼女には少し休んでもらっても良いんじゃないかな。
さっきまで頑張っていたからね!
その間に僕は奪還者達と雑談をしながら、食べられる食料なんかの仕分けをしていよう。
仕分けた食料は《念動力》で浮かべて彼らのNBC防護車両に積み込もうかな。
あ!そう言えば、僕の警告文は見てくれたかい?
そうそう!一面の警告文さ!
凄かっただろう?
囁石灯・銀刃郎
猟兵じゃ分かんない?そうね…慈善団体の雇われ奪還者って所かしら
そんぐらい分かれば良いでしょ今は【コミュ力】
【世界知識】んー、元々籠る為だから保存食糧は多そう
あ、物資は貴方達の車に積み込むわよ
食べられる物を選別【見切り】【怪力で【運搬
ああ大丈夫、これも仕事だから。後で請求なんてしないわ
奪還者の一人と会話
貴方達を助けた理由はまぁ個人によりけりね
私はやりたかったからそうしたの。そんな理由でって思う?
大事よー、こんな世の中だからこそ、自分のしたい事をするのもね
あ、そうだ、これフラスコチャイルドの子にあげて?疲れてるみたいだし
手持ちのチョコバーを渡しておく
ちゃんと渡してくれるかは、奪還者の【優しさ次第ね
高砂・オリフィス
アドリブ歓迎
とりあえず握手かなっ全員と一回ずつ!
こんにちはっ! ぼくはオリフィス!
怪しいものではないよっ、ほんとにほんとに!
運ぶの手伝うよ。もちろん歌って、踊ってジャンバリ盛り上げまくり!
そしてこっそり念動力を使って荷物持ち上げまくりだね、ふふふふ
理由? ぼくはここらに馴染みのある人間だし、いつかブンメーがサイケン? できればいいと思うんだ!
みんな家族や友達と団欒して、遊んだり仕事したり、そういう感じになったらいいなって
それとこれとは関係ない? あるよ大アリだよっ! だってあなたたちはホッとしてるし笑顔になってるもの!
「まあまあ、とりあえず握手ー! はいっ!」
人懐こい笑みを浮かべて進み出る高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)。彼女はリリーの手を取って軽く握ると、奪還者達もこちらへ来るようにと促していた。
「こんにちはっ! ぼくはオリフィス!
怪しいものではないよっ、ほんとにほんとに!!」
そう言われて、顔を見合わせる奪還者達。恐る恐るエレベータから出て来る、その一人一人とオリフィスは握手を交わしてゆく。
そんな姿を見るうち、彼等の間にはいつしか、拍子抜けをしたような、どこか弛緩した空気が流れていた。
どうにも緊張感が維持出来ない。それは、この場において決して悪い事ではなかっただろう。少なくとも話がしやすくなったのは間違いが無いと見えた。
彼等に残っていた警戒心がだいぶ削げ落ちたのを見て、囁石灯・銀刃郎(ミュータントファントム・f24401)は口を開く。
「私達は――猟兵って言っても分かんないか。そうね……慈善団体の雇われ奪還者ってところかしら?」
「……慈善団体だと?」
リーダー格の男は訝しげな顔をしていた。だが、それ以上の説明をする気はないのだという事もすぐに理解をしたようである。
いや――それ以上など元から無いのか――。銀刃郎からは、その口調に反して誤魔化そうとするような気配など感じられなかったのだから。
「……とまぁ、そうは言っても別にがちがちな組織ってわけじゃないから、皆それぞれ依頼を受けた――ここに居る理由は違うんだろうけどね」
引き取ったのはニトロ・トリニィ(楽観的な自称旅人・f07375)である。
別段、命じられてここへ来ている訳ではない。依頼者と彼等自身、2つの理由があるということに、リリーは彼へと視線を向ける。
「あぁ、僕? 僕はね……消えた記憶を取り戻す為かな」
「記憶……ですか」
「そう。ここには手掛かりが無かったけど……まぁ、いつもの事さ」
そのために旅をしている、色んなものを見ているのだとニトロは言う。リリーは軽く視線を伏せ、そして言っていた。
「いつか、見つかるといいですね。いえ……失くしたものであれば、きっと見つかる」
「……ありがとう」
――と、答えてから気づいた。そうか。起こされたばかりなら、この子も無いのか。
あるのは最低限の知識と名前、そして戦闘技能のみ。そう考えれば似ているのかもしれない。どうして自分がここへ来たのか、今更のように気づいた気がして――。
「君も、これから作っていけるといいよね」
「……はい」
続けた言葉に、彼女はかすかな笑みを浮かべて答えていた。
「さ、今はそれだけ分かれば十分でしょ? お人好しか気まぐれ、少なくとも敵じゃないって。あなたがたの目的はこっちの方なんだろうから」
そう銀刃郎が促せば、奪還者達も思い出したかのように並べられているコンテナの中身を確かめるべく動きはじめ、
「よーし、ぼくも手伝おう!」
その中へと勢い良く飛び込んでいったオリフィスにより、金属の箱は次々と開封されてゆく。その度に、奪還者達の間からは歓声が上がっていた。
「食料だ!」
「こっちは飲料水だぞ!」
「医薬品はあるか? 弾は?」
「こっちは……予備の部品類か。助かる、幾つか摩耗し切ってたんだ」
「んー、元々籠る為だから保存食糧は多そうねえ」
そう銀刃郎が言った通り、中身の大半は水と食料である。後は、嵩張る機械類、電子機器などの予備部品が殆どか。弾薬と薬品類はそれぞれ一箇所に纏められていた。
猟兵と奪還者達は、それらを問題のないもの、劣化してしまっているものに選り分けてゆく。そしてバッグへと詰め直された物資は車へと運ばれてゆくのだが――。
「物資は貴方たちの車に積めばいいんでしょう?」
掛けられた声に振り返った奪還者達の間からはどよめきが上がっていた。
その怪力で、或いは念動力を併用し鼻歌交じりに、大量の物資を一度に運んでゆく銀刃郎とオリフィスに、奪還者達は遠慮がちに声をかける。
「いや……凄いな姉ちゃん達。何の礼も出来ないのが心苦しいが」
「ああ大丈夫、これも仕事だから。後で請求なんてしないわ」
どさどさと、車輌の内部に積み上げられてゆく物資。この調子ならばすぐにも車輌の中は一杯になってしまうのではないかと思える。だがそこでふと、ニトロは物資の詰まったバッグを抱えて歩いているリリーに目をとめていた。
「ねえ。あの子……確かリリーちゃんだっけ? 彼女には少し休んでもらっても良いんじゃないかな。さっきまで随分頑張っていたからね!」
「え? ああ……そう、だな。そうしよう」
促された男は慌てたように駆けていった。そして、休んでいて良いと言われたのか、車の近くに座る少女の姿を見て、ニトロは再び物資の仕分けにかかる。
「あ、そうだ! そう言えば、僕の警告文は見てくれたかい?」
「な……あれ、あんたの仕業だったのかよ!」
「そうそう! 一面の警告文さ! 凄かっただろう?」
無邪気に笑うニトロに、目の前で作業をする奪還者は若干引いたような表情を浮かべていた。凄かったというか何というか。まあ、ナイフで刻まれただけのものであるため、幾つか刻まれていた程度では見落としていた可能性も高いが、それにしてもだ。
一面という言葉には誇張がなかった。何やら妙な恐ろしさを感じて、男は口を噤む。
そんな一幕はあったが、猟兵達と奪還者達の間には、概ね打ち解けたような雰囲気が生まれ始めていた。テンションを上げて行こうと歌い、踊りながら作業を進めてゆくオリフィスの周囲には恐らく娯楽に飢えていたのだろう奪還者達が集まっていた。
「ぼくはここらに馴染みのある人間だし、いつかブンメーがサイケン? できればいいと思うんだ!」
文明の再建か――それは半ば、諦めかけていることであった。
この人口が激減し、破壊し尽くされた世界が元通りになるなど。なまじ以前の姿を知っているだけに、覚えているだけに、有り得ない事と思ってしまう。
奪還者達の顔に苦渋が溢れた。或いは、力無い笑みが浮かんだ。かつての残滓を拾い集め、終わりを引き伸ばす事しか出来ない、自身の惨めさを認識してしまったのか。
ある程度の装備と自負を持つことで生まれたその余裕が、むしろそういった思いを――無力感を強めてしまったのかもしれない。
だが、彼等は不意に顔を上げていた。
「みんな家族や友達と団欒して、遊んだり仕事したり。……そういう感じになったらいいなって!」
「……そんな、ことでいいのか?」
「え? そんなことって、あったりまえだよ!」
そうか。一足飛びに望みすぎていたのかと理解する。
今でも時折は見ることの出来る光景。その頻度を、時間を、伸ばしてゆけば良いのだ。それしかないのだ。そして、ならば――出来るのだと。
「それとこれとは関係ない? あるよ大アリだよっ! だってあなたたちはホッとしてるし笑顔になってるもの!」
「……ああ」
そうして、オリフィスを見る奪還者達の顔には、再び笑みが戻っていた。
「貴方達を助けた理由は、まぁ個人によりけりね」
ドライバー兼メカニックだと言う奪還者の一人に近づき、その車輌の整備を手伝いながら銀刃郎は言う。
それに対し、あんたはどうなの――と、工具と共に相槌のようにだけ告げられた言葉にはあまり興味の響きはなかったが、構わず彼女は答えていた。
やりたかったからそうしただけだ、と。それを聞いた奪還者は首を傾げてみせる。
「そんな理由でって思う?」
「思うわ。そもそも理由になってない。そうしかったから、だなんて」
「そう? でも必要な事をしてるだけじゃ人間生きてけないじゃない。私は十分な理由だと思うな。これといった理屈なく、やりたいからやるんだって」
「……こんな世界で」
「大事よー、こんな世の中だからこそ、自分のしたい事をするのってね」
そう言われ、奪還者はやはり納得がいかないといったように黙り込んでいた。銀刃郎はふと思いついたようにポケットを漁り、チョコバーを一本取り出す。
「あ、そうだ、これフラスコチャイルドの子にあげて? 疲れてるみたいだし」
「……直接渡せばいいじゃない。どうしてあたしに…………いえ、わかったわ。これも、あんたがそうしたいからって訳ね?」
呆れたように言う奪還者に、銀刃郎は頼んだわねと告げる。
託された奪還者がちゃんとそれをリリーに渡してくれるかどうかはわからない。渡すとしても、その渡し方がどうなるのかも。
けれど、だからこそ銀刃郎はそうしてみたかったのだ。奪還者は暫くそれを見下ろしていたが、溜め息を吐いた後、休むリリーの所へ行きチョコバーを手渡していた。
その後、銀刃郎を指し示して来る。頭を下げてくるリリーに対し、銀刃郎はぷらぷらと手を振ってみせていた。
大成功
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ベルベナ・ラウンドディー
今は我々に物資の困窮は無い
だが後々力を借りる時が来る(特に戦争
→恩を売る考えがあった
協力理由なら実利を主眼に説けます(善意だけで信は得るのは難しいと判断
何者かの問は私の裁量では答えかねます
…失礼(一度だけ充血した両眼を見せる
猟兵の力で組織崩壊の症状は無いが"この姿は"遺伝子の疾患を患っていた頃のです
我々の事情はさておき物資運搬まで依頼者の善意で任されています
その方も細胞強化型の人間
遺伝子設計された娘に何か感じたのでは?
なので我々の厚意を利用する意味でも丁重な扱いをお勧めします
あと…個人的な事情も兼ね拠点の所在と特徴も伺いたい
落ち着いたら話を聞きに行きたいのです
あの娘、私と違い目が綺麗ですから
ヴィクトリカ・ライブラリア
何故って、他の皆がどうかは知らないけど、わたしが元BoKの司書だから、かな。
個人的に本や資料があれば手に入れたいの。あなた達はもっと実用的な弾薬や食料が欲しいんでしょ、少しくらい貰ってもいいわよね。
それに人間に死なれるのも困るのよ。フラスコチャイルドってそういうのダメなように作られてることが多いから。
リリーにもそうでしょ、と同意を求めるわ。
彼女が同意したなら、そこからはお説教ね。
死なせたくないなら不調のまま無理に任務継続しない。一人のスペックダウンは全員の死につながるわ。
貴方達も彼女を酷使しすぎ。唯一の随伴歩兵なんでしょ。最後まで大事に使いなさいよ。
文句言いながら医療物資をお裾分けするわ。
ジフテリア・クレステッド
●SPD
私たちは仕事であなたたちの手伝いに来ただけ。仕事でもなきゃ同族をこき使うだけの人間を助ける理由なんて、私にはないしね。
なんて、リリーにだけは【優しさ】を向けながら奪還者をこき下ろすような言動を取ってリリーの様子を見る。それに対して不服そうな態度だったら奪還者には何もしないし、おとなしく積み込みを手伝う。リリーが同意するような感情を見せてたら…分け前をこっちは一切請求しない代わりにリリーを寄越せ、とか言おうかな。リリーを物扱いするようで気が引けるけど、奪還者が人でなしならこの言い方の方が応じてくれそうだし。いざとなれば武力で脅すことも考えるよ。脅しは手伝いを受け入れない場合にもするかも。
ナターシャ・フォーサイス
何者なのか、何故なのかと問うのはごもっともでしょう。
私は皆を楽園へと導く使徒。
生けるものも哀れな魂も、皆を導くのです。
ゆえに、生けるものたる貴方がたが道半ばで倒れぬよう道示すことこそ我らが責。
そしてまた、哀れな魂を道行きへと導くことも。
全て、導きのままに。
それよりも。
貴方がたはここへ話しに来たわけではないのでしょう。
必要なものを皆へ齎す。
であるならば、我々も手伝いましょう。
天使達を呼び、皆で運ぶのです。
車で運ぶにしても、容量がありますからね。
それから、天使には車の護衛も。
…それから、リリーさん。
貴女の身体は頑丈なのでしょうけれど…
我々もまた生けるもの。
どうか、お身体を大切になさってくださいね。
「我々が何者なのかと問うのはごもっともなこと――」
ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は二人ほどの奪還者達に囲まれていた。彼女が天使を呼び出し物資を運ばせていたことから、先刻地上で見た天使についてもナターシャが呼んだものなのかと訊かれ――こうなったのだ。
彼女に向けられたものに限っては、その正体を問う言葉にも別な意味がある気がしてならない。そしてそれに対して、ナターシャは答える。
「私は皆を楽園へと導く使徒。……生けるものも哀れな魂も、皆を導くのです」
おお、と声があがった。熱の篭もった目が彼女を見上げる。
無論それは劣情ではなく、救い主を見出したというものだ。
ナターシャにとっては向けられることに慣れた眼差し。そして、教団が壊滅して後は焦がれたもの。それに応えるように、彼女の声にも力が篭もった。
「ゆえに、生けるものたる貴方がたが道半ばで倒れぬよう道示すことこそ我らが責」
――全て、導きのままにと。
「あー……部下を宗教に勧誘されると困っちまうんだが」
「それは……ご本人に言っていただかないと」
妙な熱量を発しているその一帯を眺めるように、リーダー格の男。
彼から控えめな抗議を受けたベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)は、そのように答えていた。
「本人に直接か……そいつは、ちょっとな。言ったが最後、数分後には俺もあの輪の中に加わっちまっていそうだ」
「……ふ……」
冗談なのか本気なのか、判別のつかない言にベルベナは苦笑を返す。
「それで? 実際のところどうなんだ。その慈善団体とやら」
「……その問いに答えることは、私の裁量では出来かねます」
ベルベナの赤く充血した両眼が男を射て、男は僅かに怯んだようだった。
普段は竜の形質を強く出した姿を取っているが、現在ベルベナが取っている姿は人の造形が強い――治療を受ける前の姿である。
あえてこちらの方が良いと思った。猟兵はどのような姿だろうと現地の人間に違和感を抱かせることはないが、当然ながらそれは個性を認識させないものではない。
失礼……と告げて、ベルベナは再び瞼を閉じる。
「ですから、我々が現在物資に困っていないこと。そして貴方がたに、後々力を借りるかもしれないこと。そういったところで納得してはいただけませんか」
「なるほどな、貸しという事か」
得心いったというように肯く男。やはり、後に協力を得るためという理由は彼にとっても想像の内――よって受け入れられやすかったか。
善意ほど信用ならないものもないという思考は、こういった場所では多数を占めるものである。これに同意しなかった者は高確率で墓の下に居るという意味で。
だが――ベルベナは続けて、その言葉を用いていた。
「我々の事情はさておき、物資運搬まで依頼者の善意で任されています。その方も細胞強化型の人間……遺伝子設計された娘に何か感じたのでは?」
「……あいつの事か」
リーダー格の男は車の側に座るリリーに視線を向ける。
「なので、我々の厚意を利用する意味でも丁重な扱いをお勧めします」
「……まったく、妙な脅しだな」
「まったくに」
そうして、二人は苦笑を向けあっていた。
「そうだ、個人的な事情も兼ね、拠点の所在と特徴を伺いたい」
「ああ……後々協力をってんなら、そいつを訊かれなきゃおかしいな。少し待ってろ、地図を出す。……ところで、個人的な事情ってのは?」
問われたベルベナは、停められている車輌へと顔を向けていた。
正確にはその側に座っている者へと。
「落ち着いたら話を聞きに行きたいのです。あの娘……私と違い、目が綺麗ですから」
「……少しいい?」
そんな二人の所へ、ヴィクトリカ・ライブラリア(二等司書・f24575)は近づいていた。掛けられた声に男は顔を向ける。
「個人的に、本や資料があれば貰いたいのだけど」
「ああ。どのみち、俺達が優先しなきゃならんのは食料と弾薬、医薬品に部品の類だ。それだって、あんたらの厚意で譲ってもらってるに過ぎん。好きにしてくれ」
――なるほど、意外に道理は弁えているか。
ひとつ肯いたヴィクトリカは、ふっと息を漏らして首を横に振る。
「いえ、本だけで構わないわ。……BoKって組織を知っている?」
「奪還者のグループか? いや……。通信網もろくに残っていなくてな、他のチームについては殆ど情報も仕入れられずにいる」
「そう。……知識の保全を掲げる軍事組織よ。其処の元司書というのがわたしの肩書。今も仲間が言った通り、わたし達は物資には困っていないけど。未収集の資料はまた別だから……わたしにとってはね」
「なるほど、それがあんたの理由という訳か」
そればかりでも、ないのだが。ヴィクトリカはリリーへと視線を送っていた。
クローン兵であるフラスコチャイルドには、人の死を極端に厭うよう深層意識に刷り込みがなされている個体もある。――自分がそうであるように。
彼女も同じなのではないか。いや、経験情報が少ないぶん、その衝動は更に多くを占めているのではないか。これまでの彼女の振る舞いから、ヴィクトリカはそう見ていた。
訊いて確かめるべきか。返答次第によって、彼女にもお説教をしなければならないだろう。座ったままうつらうつらと頭を揺らしているリリーの姿は、明らかに無理のし過ぎと見えた。あれでは普段の注意力の半分も発揮出来まい。
――だが、ヴィクトリカがそちらへと近づくより前に、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は其処へと歩み寄っていた。
「……ねえ」
白と灰色の髪、口許を覆うマスク、そして同程度の年格好。
良く似た二人の、その淡い黄色と紫の視線が交わる。
「ごめんね、眠い?」
「……いえ」
ぱちりと目を開け、こちらを真っ直ぐ見るその姿に覚える感情は複雑なものだった。
自分でもはっきりと分類が付かないような。
「あなたも、フラスコチャイルドなんですね」
「そう。失敗作だけどね」
ぽつりぽつりと言葉が交わされる。淡々とした声の中に、何処か――自分に向けられた優しさを感じ、リリーはジフテリアの横顔をぼんやりと眺めている。
「私がここへ来たのは、ただの仕事」
「……そうですか」
「仕事でもなきゃ、同族をこき使うだけの人間を助ける理由なんて、私にはないしね」
そして同時に、リリーと共に居る、人間達に対する不快さも。
「ありがとう、ございます」
呟かれた言葉にジフテリアはリリーを向く。やはりこの子だけ連れて行ってしまおうかと。しかし、彼女の言葉は続いていた。
「けれど、私は好きでやっているんですよ。どうせつくられたものであるなら、私は私の性能を誇りたい。誰かの期待に応えたい。ですから……」
「……そっか」
そう言って、ジフテリアは俯く。
自分には分からない感覚。これが正規品というものかと――否。
自分達が真にひとであれば、そんなわかりやすく分類された違いなど無い筈なのに。
「まったく……」
と、そこへ微かな苦笑を交えた声が掛けられていた。
顔を上げた二人は、ヴィクトリカの姿を見る。
「だったら、不調のまま無理に任務継続しない。一人のスペックダウンは全員の死につながるって、貴女ならわかるでしょう?」
「……はい」
ばつが悪そうに顔を伏せるリリー。後半では警戒が警戒になっていない事は自分でもわかっていたのだろう。続けて、ヴィクトリカは奪還者達のリーダーを振り返っていた。
「貴方達も彼女を酷使しすぎ。
唯一の随伴歩兵なんでしょ。最後まで大事に使いなさいよ」
「こちらにも事情はあるが……いや、確かに、あまりに長過ぎたか」
「待って、事情って何」
睨むジフテリアに男は渋面を作る。
「除染剤もフィルターも消耗品だ、それもろくに調達の当てもありゃしない。事実、ここへ辿り着けなきゃ帰るにも怪しかった。節約出来るならそれに越した事は……」
「そんなことで……!」
「待って、やめてください!」
食って掛かるジフテリアと止めに入るリリー。やや離れた男は深い溜め息を吐く。
「やれやれ。どうやら、俺達はこいつのおまけで助けられたらしい。心配せんでも丁重に扱えと、別のお仲間にも釘を刺された所さ。……そこでだ、リリー」
「はい……」
名を呼ばれたリリーはびくりと震えた。その前で、男の言葉は続いてゆく。
「禁忌のオーバーテックって奴がどれほどのもんか、俺達も良くわかっちゃいなかった。だが……実のところ、見た目とさほど変わらんようだな?」
「……そんな、事は……」
俯く。彼女を震わせたのは、性能を否定される恐怖、失望されることへの恐怖だ。
存在意義が揺らぐ。
「このシェルターで物資はだいぶ補給出来た。燃料も、除染剤も、フィルターもだ。お前に頼らんでも暫くはやっていける。だから……」
「……ッ!」
激発しそうになるジフテリア。無意識に銃へと手が伸びる、が。
「――"良くやった"。今後も期待している。だが、お前だけが頼りじゃない。お前も頼りにしている、だ。他のろくでなしどもと違い、お前は疲れても自分からは言い出せんようだからな、休憩は都度こちらで指示する。わかったな?」
「……は……」
言うだけ言うと、男は歩み去っていった。ほぼ積み込みが終わり、適当に地面へと座り込んでいる部下達をどやしつけるその姿を見ながら、リリーは暫く呆然と立っていた。
ふわりとその頭に乗せられたのは、いつの間にかやって来ていたナターシャの手だ。
「リリーさん。貴女の身体は頑丈なのでしょうけれど……我々もまた生けるもの。
どうか、お身体を大切になさってくださいね」
「……はい」
そのシンプルな応えに含まれていた安堵を聞いて、ジフテリアとヴィクトリカもまた、それぞれの感情を込めた吐息を短く吐き出していた。
地上へと戻ったエレベータから8輪を備える車輌が進み出てゆく。
再び降る毒の塵に悪態をつきながら、その周囲を固めるのは5人の奪還者達。そしてナターシャが護衛に付けた数体の天使である。
見送る猟兵に一度振り返って、片手を上げるリリー。その姿が廃墟の陰に見えなくなった後、猟兵達は帰還していった。それぞれの世界へと。
大成功
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