●人狼ゲーム@スマートフォン
村人が9人椅子をまるく並べて座っていた。各人の頭の上には数字が浮かんでいる。遠景の青空を雲がゆったりと流れている。3番だけは赤い文字で「接続切れ」という表示が出ていた。
誠実そうな声の4番が話し終えて、次に喋っているのは5番だ。
「占いCO(カミングアウト)で左隣を占いました。理由は、時間を与えずリアクションが見れるからです。占い結果、6番白です。
2番さん3番さんが接続切れなので時間を稼ごうと追加課金したのが好印象です。3番さん接続切れで戻ってこないですね。戻ってこないなら吊っていいんじゃないかな。情報落ちないもん。あと雑殴りします。4番さんは名前が詐欺師というので信用できないと思いました」
喋っている画面上に発言できる残り時間が表示されている。持ち時間が終了し、6番が話し始める。
ちゃららららら~♪
6番が用意したと思われるBGMがマイク越しに流れ、BGMに乗って声が流れる。
「オッス! オラ6番! オラも雑殴りすっぞ! 1番は3番が接続切れなのに一言で挨拶締めた理由はなんだ? 2番は犬好きって言ったけど猫の声がしたから嘘つきの気配を感じっぞ」
チャット欄には1番による「課金コインが切れてた」という言い訳発言が出ている。
順番が巡り、吊られたのはマイク越しにAV音声を流して顰蹙を買った8番だった。8番が死ぬと銃声が響き、1人しかCOしていなかった5番占い師が道連れにされると部屋の空気が悪くなる。
「8番はハンターで荒らしですね」
チャット欄が荒れる中、夜が来る。
●ゲームをしてほしいのです
「UDCアースでゲームをしているひとびとが、UDCの怪異に巻き込まれるという予知が出ました」
アルトワイン・ディネリンド(真昼の月・f00189)がおずおずと予知を語り出す。
「それはUDCによる呪いのようなもので、怪異に誘われるのは「ゲームを満喫しているひとたち」という事が分かりました。
そこで、皆さまにゲームを満喫していただいて、UDCに連なる「怪しい誘い」を猟兵のみなさまご自身に引き寄せ、その奥に潜むUDCを倒していただきたいのです」
ぺこりと頭を下げ、アルトワインはスマートフォンを慣れない手つきで見せてくる。
「そのゲームというのが、「人狼ゲーム」というゲームらしいのです。みなさま、ご存知ですか?」
アルトワインは「わたしはあまりわからないのですけど」と前置きをしてからアプリスタート後に出てくるルールを読む。
「ゲームは、恐ろしい人狼が潜むひとつの村が舞台となります。
9人で遊ぶ9人村は、「人狼2人、狂人1人、占い師1人、狩人1人、霊能者1人、村人3人」で構成されています。
「人狼、狂人」は「人狼陣営」。それ以外は「村人陣営」です。
ゲームは昼のターンと夜のターンが交互にきます。人狼は昼は人のふりをしていて、夜になると人を噛んで殺してしまいます。昼のターンでは、村人たちは会議をして誰が人狼陣営かを予想します。会議後の投票で、「この人は人になりすました狼だ」と1人を選び、処刑することができます。
人狼陣営は、「人狼」と「狂人」です。人狼生存者の数が村人の生存者の数と同等以上になれば勝利です。
村人陣営は、「村人」「占い師」「狩人」「霊能者」です。すべての人狼を見付けて処刑できれば勝利です。
「村人」は、とくに何の能力も役職もないただの村人です。
「ハンター」は、死亡時に発砲し、任意の1人を道連れにできる役職です。
「狩人」は、1人を選んで護衛することができる役職です。狩人に守られた人は、夜に人狼に狙われても死にません。ゲーム内では同じ人を連続で護衛ができない仕様です。
「占い師」は夜のターンで1人を選び、対象が人狼陣営か村人陣営かを判別できる役職です。
「霊能者」は昼のターンに吊ったプレイヤーが人狼だったのか人狼ではなかったのかを、夜のターンで判別できる能力をもつ役職です。
「狂人」は占い師の占い結果では村人陣営と出ますが、人狼陣営です。人狼の勝利のために立ち回ります。
「人狼」は夜のターンに1人を選んで噛み殺すことができます」
ルールを読み終えたアルトワインは「わたしよりも皆さまの方がおくわしいでしょうか」とはにかんだ。
「現地――UDCアースでは、ちょうど「リアル」でもゲーム大会があるようなのです。大会と関わりがあるのかはわかりませんけれども、まずは現地に転移しますので、スマートフォンでゲームを満喫していただいて。その後で、異変がおきましたらご対応をお願いできますでしょうか」
アルトワインはしずしずと頭を下げたのだった。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回はUDCアースでの冒険です。気楽でゆるい感じのシナリオです。
「人狼ゲーム」を遊ぶ内容です。
1章は日常、スマートフォンで人狼ゲームを遊んで頂きます。ボイスチャットでコミュニケーションを取りながらプレイしていただけます。
民間人と遊んだり猟兵どうしで遊んだりなリプレイになります。「こんな役職に当たった」とか「こんな方針でプレイをした」とか、あるいは「こんなゲーム展開だった、勝った、負けた」と書いていただいても大丈夫です(展開をがちがちに書いた場合は、民間人相手のソロリプレイになる可能性が高いです)。ネタプレイも歓迎です。
2章は冒険、3章は集団戦です。
1章のプレイングの受付期間は1月22日(水)8時31分~1月24日(金)8時30分まででお願いします。
すみませんが、再送をお願いする可能性もございます。もしよければ再送前提で参加していただけますと、とても助かります。
キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
第1章 日常
『スマホでのんびり』
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POW : 一心不乱に1つのことに熱中する!
SPD : マルチタスクはお手のもの。あれもこれも同時にできるよ。
WIZ : 知的な時間を過ごします。
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
イヴ・クロノサージュ
◎連携・アドリブお任せします
◎台詞盛り込み大歓迎!!
●人狼陣営
◎イヴちゃんはガチ勢
基本行動は
狩人になりすます人狼として
活動します
その為、多弁(発言が多い)狼として活動します
狩人日記を付けながら状況を把握します
●村側のフリをする狼として発言
縄数を数える。村側二人吊ると負けてしまうという認識を
●噛み先
初日は寡黙(静かな人)を噛み、狩人またはスナイパーを予想し潰します
2日目は、狼が白判定を貰った場合、あえて狂人を噛み
3日目の朝に
狂人が本物の占い師だと誘導し
狩人COと日記を提示して、占い師を吊る勝負をします
◎勝敗
猟兵さん相手
終盤まで生き残り
狩人もしくは霊能がいる場合、論破されます
民間人相手だと作戦通り
渦雷・ユキテル
狂人なら鉄板の占いCOでいきます
初日ラン白でしたっけ?
占いありなら左隣に白出し
生存意欲と発言強め、思考開示も適度に【演技】
後々占い狼を追わせられるようにしときます
理由のこじ付けは怪しまれるんで
精査内容では嘘吐かず占い結果だけ弄る感じで
初日は経費叩きに黒を見る占い師像を演じます
「〇番さん、楽に釣れそうな位置を探してるみたいですけど
それって黒見て釣るんですか?」
もしPS低いご主人様なら
そのまま釣られちゃって下さーい
身内切りは避けたいですけど
初日は庇っても民意で釣られちゃいますから
逆に中盤以降で辛い盤面があれば【言いくるめ】
それに叩いたとこが黒なら
真目上がるんで囲いもしやすい、と
※絡み・アドリブ歓迎
オブシダン・ソード
さあ、楽しんでいこう
もちろんやるからには勝利を目指すよ
・よく喋るタイプのプレイヤー
・うさんくさい
・考えをすぐ口に出す
・全体を俯瞰するのは得意でない
ということで、僕は他の誰かに賛成したり、主張に乗っかる形で話を展開していくのが基本姿勢
占い霊能なら早めにCOして協議を求めて、人外ならあらゆる論に乗っかって引っ掻き回しに行くよ
理論は重視するけれど、
択を求められたら、最後は面白そうな方を選ぼう
「いやあ、すごいね!」
「えー、でも僕はまだ死にたくないし」
「なるほどなるほど、君の話の通りなら、こういうことになるのかな?」
「ふうん、僕が怪しいって?そんなことないんだけど、困ったなあ、ふふふ」
あとは全部お任せ!
叢雲・源次
※アドリブ、絡みお任せ
UDC…邪神や邪教徒が関わる案件ならば、と依頼を受けたのだが…
人狼ゲーム?…いや俺は遊びにきたわけでは…
なるほど…被害対象となるのは「ゲームを満喫している人達」というわけか…それで俺達にゲームに興じろと……了解した。UDC案件ならば協力は惜しまん
◆いざ人狼ゲーム
ルールは概ね理解した…つまり、両陣営に分かれて会話という名の心理戦を用い勝敗を決する遊戯…というわけか…
遊戯というよりは心理戦の訓練という気概で臨めば甲斐もある
◆方針
基本的にクソ真面目で嘘をつくのが得意ではないが、逆にそれが功を奏したりしなかったりする
役職「狩人」
※勝敗お任せ
ステラ・エヴァンズ
WIZ判定
人狼ゲーム…実は興味があってリプレイは色々と拝見していたのですが、やるのは初めてです
初心者だけに素村だと嬉し……『霊能者』、ですか?
いえ、大丈夫ですっ…ボロ雑巾ですよね、知ってます!
比較的初心者にも優しめな役職ですし、拙いなりに精一杯努めましょう
ふふ、しかし『霊能者』とはある意味本業である巫女に近しい役職をひいたのでしょうか
初心者らしくトリッキーな策は取らず、堅実にプレイしていきます
退場が早くても霊能者らしいお役目が果たせれば満足です
しかし、思いの外長生きしてしまったら
ボロ雑巾のはずなのにどうしてまだ生きてるのか…?
と凄くわたわたと焦るでしょうね
※アドリブ歓迎
トリテレイア・ゼロナイン
ルールを把握した限りでは対人心理ゲームのようですね
私のUCで音声の調子等を●情報収集して解析すれば、発言内容の真偽を●見切ることも出来そうですが…騎士としてはとてもフェアとは言えませんし、これを使った場合、「ゲームを満喫している」と言えずUDC召喚不能となるリスクもありますが…
いえ、使いましょう
人狼ゲームを盛り上げれば召喚の可能性も高まりますし、初心者の私が盛り上げに加担するには素の実力では困難です
役職は…ハンターでしたか。役割的に狩人が良かったのですが
ここは定石通りに開幕COして…
…誰が嘘を吐いているか把握出来ているのに弁の立つ相手に場の主導権を奪われています…!
これが多数決の恐ろしさ…!
●村1
オブリビオン。それは、過去からの侵略者だ。
叢雲・源次(DEAD SET・f14403)はサイボーグである。
全ては彼がマキナ教に拉致されたことで始まった。
邪神の依代として改造されるも反逆を試み、UDC組織の協力も受けて教団を壊滅させ。ひとまずの終わりを迎えたのち、猟兵として歩み始めて。
「人狼ゲーム? ……いや俺は遊びにきたわけでは……なるほど……被害対象となるのは「ゲームを満喫している人達」というわけか……それで俺達にゲームに興じろと……」
「了解した。UDC案件ならば協力は惜しまん」
そこには、何か予感めいたものもあったのかもしれなかった。
◆
スマートフォンの画面に9人が円くなって座る風景が映っている。
「ここは噛みあり部屋ですが初日噛みなしでお願いします。占いはラン白ではありませんので騙りの人は間違ってラン白と言わないように注意してください、チャットでのCOあり、2日目以降ならチャットに結果貼りもOKです」
「はーい」
ルームマスターの説明にゆるっと返事を返し、渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)はメンバーを確認していた。
ゲームが始まり、夜が来る。
(初心者だけに素村だと嬉し……『霊能者』、ですか? いえ、大丈夫ですっ……ボロ雑巾ですよね、知ってます!)
ステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)が深呼吸をする。
(リプレイは色々と拝見していたのですが、やるのは初めてです)
イヴ・クロノサージュ(《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113)は人狼を引いていた。噛みあり部屋では相方狼と夜に相談ができる。
「よろしくお願いしますね! 潜伏して狩人騙ります」
(初日は噛みなし、なら護衛もなしだな)
狩人を引いた源次はルールを反芻する。
(ルールは概ね理解した……つまり、両陣営に分かれて会話という名の心理戦を用い勝敗を決する遊戯……というわけか……遊戯というよりは心理戦の訓練という気概で臨めば甲斐もある)
同じ頃、同村のトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)も同じ感想を抱いていた。
(ルールを把握した限りでは対人心理ゲームのようですね)
スマートフォンに映る自分のアバターの上には、自分にしか見えない「ハンター」の役職マークがついている。
(マルチセンサー・フルアクティブモードを使えば他プレイヤーの発言虚偽を判別できそうですが)
トリテレイアは考える。ウォーマシンである彼の能力を使ってよいものか。初心者であるトリテレイアは、能力を使わずに参加をした場合逆にゲームを盛り下げてしまったり満喫できないのではと懸念していた。
「やはり、自分の能力をフルに活かして全力で挑むべきでしょうか。手加減はよくありません」
(あっ)
オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が夜画面を見てはしゃいでいた。初日噛みあり部屋では初日から占い師が1人を選んで占うことができる。なんとなく隣だからという理由で選んだ4番は、「人狼陣営」、人狼だったのである。
「黒だ」
ゲーム内では発言時間が限られている。チャットで報告する際も素早い入力が望まれる。そのため、プレイヤーたちは略語を多用していた。「黒」とは「人狼」という意味である。対して「白」は「村人陣営」である(狂人も「白」である)。
(対抗も出てくるだろうけど、これ僕の真目高くなるよね。ハンターありだし)
初日に4番黒を吊り、残りを見つけて終わり。オブシダンは目深にかぶったフードの下でニコニコした。
やがて、朝が来る。
<1日目>
生存者
1 ユキテル
2 トリテレイア
3 オブシダン
4 イヴ
5 民間人
6 民間人
7 ステラ
8 民間人
9 源次
(もしPS低いご主人様ならそのまま釣られちゃって下さーい。身内切りは避けたいですけど初日は庇っても民意で釣られちゃいますから)
PSとはプレイスキルの略である。ユキテルは何処かにいるはずの「ご主人様」を見極めるべく画面に視線を向け、村人の話をきく。
「おはようございます」
喋る順番はランダム順で2番からだった。通常発言は2巡し、翌日以降は、死んだ人の左隣から喋ることになる。稀に雄弁な味方が最終発言者になるように噛むこともあった。
2番のトリテレイアはスマートフォンに向けて礼儀正しく語り始める。
「2番、トリテレイアです。私は占いです。占い結果は3番が白でした。私が真の占い師ですから、これ以降に出てくる占い師は偽です。私は出てきた方を人狼陣営と見て全力で追っていきます」
騙りである。
この騙りには理由がある。
(この後、真占いが出てくるでしょう。そうすれば占い師が2人いるのを見て人狼は狂人が占いに出ていると考えて騙りに出るのをやめ、狂人は人狼が占いに出ていると考えて騙りをやめるでしょう。1巡ののちに撤回すれば真占いだけが残り、村が有利になります。また、もし占い師が3人になった場合は、私が真だと誤解した偽が先にCOして後から出てきたほうは騙りではなく真の可能性が高いのです。
私はハンターなので撤回後に自分の役職を空砲で証明できますし、騙りが出れば即どちらかを吊って頂いて真偽証明ができ、真が吊られた時も偽を道連れにできるので村には有利となり……)
(ほら、さっそく出て来たよ)
オブシダンは自分の番で早速真の占い師だと名乗り出る。
「いやあ、早速黒を見付けちゃったよ。4番が人狼陣営と出たから今日は4番を吊ってくれるかな? 2番のトリテレイアの印象だけど、僕が真だから狼か狂ってことになるのかな?
僕が真だと思ってもらいたい根拠だけど、順番がすぐにまわってきて直前が圧をかけたのにCOして黒を出しているところかな。本物だから当たり前なんだけどね。この村はハンターがいるから、もし僕が偽占い師だった場合4番がハンターだったら黒を出すことで偽がバレてしまうんだ。ハンターは死んだ時に自分の役職を証明できるから、ね。特に狂人だった場合は人狼に誤爆する可能性もあるわけで、ちょっと博打が過ぎるよね」
発言の真偽を聞き分けられるトリテレイアは「オブシダン様は真占い師ですね」と悟り、残り7人が対抗に出ないようにと祈るのだった。出るとどうなるかというと、真の占い師なのに先に出た人狼陣営みたいになってしまうのだ。
その間も発言は続いている。
「今の段階ではどちらかはわからないけど、もし2番トリテレイアが狼なら今日は4番イヴを吊って明日トリテレイアで終わり! いやあ、圧勝だね! とはいえ、そう簡単にもいかないかもしれないし進行論を語ろうか。
番号が前半の人は1人、後半の人は2人吊り位置をあげてほしいな。吊り位置をあげるとライン考察もできるようになるからね。僕は霊能は黒を見付けるまで潜伏が好みだけど、吊り位置に入ったり噛まれそうで狩人が健在なら出てきてね」
(いきなり黒出しされちゃいましたか。3番さんは狂ではなく真っぽく思えますね)
4番のイヴは画面から流れるうさんくさい声に眉を顰める。すらすらと喋る青年の声は涼やかで美声なのだが、なんとなく妖しく嘘くさく聞こえる。
人狼ゲームは文字だけで行う場合とボイス付きの場合と対面の場合があり、ボイス付きのアプリゲームでの野良試合では「綺麗な試合」になる確率は低い。発言内容があやしくても情熱的だったり誠実そうなトークで「パッションがある」と思わせて説得するタイプのプレイがあるが、オブシダンの場合は「逆パッション」だろうか。
(話している内容をよく聞くとロジック派のようだけど)
(たぶん2番さんが狂人さんですね、トリテレイアさん把握です。となると、2番さんの真目をあげつつ3番さんの真目をさげましょう)
「おはようございます、初心者さんもいらっしゃる村のようですから、楽しく遊びましょう。2番さん3番さん占いCO把握です。3番さんは私に黒出し特攻(偽占い師が黒を出す意味)? なら私目線は3番さん狼か狂人です。私は村人陣営で役もあるので、すみませんが初日吊りは待ってほしいです。この後の他の方のCOも見て吊り位置を考えましょう」
初心者もいる村なので、と進行論を語るイヴの後で喋る5番は意味不明なことを喋っていた。
「声がきこえる、声がきこえる」
ぷつりとボイスが途切れる。しばらくの静寂の後、順番は6番にまわってきた。6番、イヴの相方狼の人である。
「5番さん霊能COってこと? COならちゃんと言って」
チャット欄には5番が「CO」と連続でタイピングしていた。10回、20回、濁流のように同じ文字が流れていく。
「5番さん吊りましょう」
続き、7番のステラが戸惑いがちに喋り出す。
(COしなければ5番が霊能者と見られてしまうかもしれません?)
「これは、荒し、でしょうか……。私は、霊能者でした。それと、占い師さんから黒が出ているので4番吊りで明日色を見るのも良いのでは、と思いますが」
「明日色を見る」とは、明日の霊能結果を見るという意味だ。
8番が「4でもいいと思う。チャットも流されちゃうし」と5番吊りを押し、9番の源次は同意した。
「5番がどちらの陣営かわからないが、やむを得ないな」
会議が進む。
ユキテルは概ね状況を理解していた。
(占い師に人狼が出ていない気がするんですよね。これスライドあるでしょー、2番ハンターですよねー?)
他役職や素村(役職を持たない村人)はスライド(騙りに出て撤回)した時に真だと証明が難しいため嫌がるプレイヤーが多いが、ハンターはシステム的に証明ができる。
ユキテルは1巡目の発言から人狼が占い師に出ていないと感じていた。
(4番はたぶん人狼。相方狼は……679のどれか)
「はいはーい、1番ユキテルです。占いCCO、3人目で真目高く見て貰えます? 3-1(占い師が3人、霊能者が1人の意味)で内訳が狼狼真か狼狂真。でも、そうじゃないですよねスラありますよね、ハンター以外許しませんけどさっさとCOしてくださーい。定番左隣で2番さん白でした。ってか5番さんうわー、クソダサ、リア狂ですかぁ。でも、荒らしムーヴの人って村人陣営率高いんですよね。占って白だったら放置でもいいんじゃないですかぁ? リア狂に無駄に縄使うのって負けた気がするんですよね」
番号順に考察を入れていくユキテルは順番も味方してオブシダンよりも真目に見えるが、その正体は狂人である。
2番をハンターと予想するユキテルからすれば、COしなければ占い師が1人となり、真占いから黒出しされた4番が吊られてしまう。
「占い撤回がなければ今日から占い吊りましょう、私は3番さんを吊ってほしいでーす、うさんくさいです! 撤回があれば黒吊りもいいですけど、私の真を信じて貰えたらグレー(役職COをしておらず、かつ誰からも占われていない人)から吊ってほしいでーす」
(このままではオブシダン様が吊られてしまいます!)
トリテレイアは慌ててチャット欄に「ハンターCO」と打ち、占い師COを撤回した。
「ほぉら、ハンターでしたー」
ユキテルの声が響く。
(騙りを抑えられませんでしたね……、それにしても、マルチセンサー・フルアクティブモードで4と6が嘘をついている気配はわかったのですが占い師のユキテル様は限りなく嘘をついている気配が薄い……私のマシンスペックを欺くとは恐ろしいですね)
2巡目の発言でトリテレイアは改めてハンターCOをして4番6番があやしいと付け加えた。
「現在2占い師となっています。ならば、黒出しされた4番イヴ様を吊るのが妥当ではありませんか。霊能者を護衛して明日色結果を見ましょう」
「そうそう、霊能者を護衛してほしいね。僕はまだ死にたくないなぁ、真だし。シャレじゃないよ」
オブシダンが楽しそうな声を出した。
「まず、大前提として今日は黒を吊る日だよね? 明日以降吊っても色が見れるとは限らないから、必ず今日は黒を吊ってほしいんだけどな、いや、荒しを残してゲームを進めるのも楽しくないという意見には確かに賛成もするのだけどね。
今日4番を吊り、明日の結果が黒なら人狼が吊れて村有利だ。白なら僕の偽がはっきりする。1縄(1回吊ること)で必ず人狼陣営が吊れるか判明して、真占い師まで確定するんだよ。
あとは対抗の1番はさ、2人占い師が出ている状態でハンタースライドだとどうしてわかったのかな? 僕が推察するに盤面が見えすぎる人狼だからじゃないだろうか。平和回避(占いが1人で確定するのを防ぐ)に出てきたんじゃないかな。
「3人目で真目高く見て貰えます?」と発言していたけれど、スライドを見越していたなら「3人目だから」は通らないんだよね。なら、スライドを読んでいない僕が後からCOして黒出ししたという事実を真目高く見てもらえると思っているよ」
(狂人は1番、把握です)
イヴはメモを取りながら頷いた。
「私は今日5番さんに投票します。発言して遊ぶゲームで他の人とまともなコミュニケーションを取らない人を残してもメリットはないですし、チャット欄が荒らされるのなら2日目以降の占い結果や霊能結果の報告が流されてしまい、ゲーム自体の継続が困難になりますよ。
1番さんは占いCOとハンターさんへの白出し把握です。人狼陣営なら3人目の占い師には出ないと思うので、その意味では確かに真目が高いですね。けれど、スライドを見通していたならフラット(占いの信用度が上がりも下がりもしない状態)に戻ります。
2番さんは平和を造ろうとなさったのですね、理解しますが失敗してしまいましたね。ふと思ったのですが3番さんは1番さんの偽目をあげた際に「ハンタースライドがどうしてわかったのか、見越していたなら」と仰ってましたが、もし3番さん自身も実はCOなさる時に「ハンタースライドかも」と思われていて1番さんと違ってそのお考えを伏せて演じられているなら、恐ろしく騙りのテクニックの高い方ですね。そうしますと「2番がハンターだからハンターに黒が誤爆しない」とわかって黒出しをしたことになるのです。
5番さんですが……」
しばらく話し合ったのち、結局初日は5番が吊られて初日の夜を迎えたのだった。
「投票結果は5番に46819、4番に372 5番は放棄?」
ウォーマシンのマシンスペックを活かすトリテレイアにははっきりと誰が人狼陣営かがわかっていた。
「5番はさすがに仕方ありませんね……、しかし、誰が嘘を吐いているか把握出来ているのに弁の立つ相手に場の主導権を奪われています……! これが多数決の恐ろしさ……!」
「4番6番、把握です」
夜画面の中ユキテルはチャット欄に「6白」を準備していた。朝と同時にチャット欄に出し、真目が取れている占い師がご主人様を囲おうという意図である。
「番号を振られて、飼われて」
ここはあの白い部屋ではないけれど、と微笑みながら。
(2番が1番の白でハンター。4番が3番の黒で役透かし(役職者であると匂わせた)……何の役職だ? 7番が霊能者)
狩人である源次は護衛先を選び、昼の会議を思い出す。1人辺り1~2分の持ち時間での会議は情報量が多かった。
(しかし、7を今日護衛すると明日は護衛が外れてしまう。そうすると明日4番を吊った夜に霊能者が噛まれてしまいかねないのか)
それにしても、と源次は吊られた5番のアバターを見つめる。投票後の遺言ボイスチャットで、雑音混じりの奇声の中で「マキナ教」という単語を5番が言ったように聞き取れたのだ。
「霊能結果は白ですね」
ステラがそっと息を吐く。
「ふふ、しかし『霊能者』とはある意味本業である巫女に近しい役職をひいたのでしょうか」
頬に手をあて、そっと息をつく。
「緊張、しました」
机には紙がある。メモを取っていたはずが、所々手が追い付かなくなっていた。
「観るのとプレイするのとではやはり違うものなのですね。けれど、観ていないよりはましなはずです。精一杯頑張りましょう……」
まずは、と白い手が発言欄に文字を準備する。
「5白、と」
朝と同時に送信するのだ。
人狼イヴは荒らしに溜息をつく。人狼側に有利とはなったが、ゲームを楽しむためにしているイヴからすると荒らしのおかげで勝っても嬉しくないのだ。
「よくあることですけどね。あの5番には勝ち星をあげませんよ」
相方狼が同意をしている。イヴは2番噛みを提案した。
「奇数進行です。初日確信なく道連れはないでしょう」
奇数進行とは、昼の時点で奇数人数になっている状態である。ハンターは自分が死んだ時に任意の1人を道連れにできるのだが、それにより自陣営に不利となることがある。
「確信なく道連れにすると村人陣営に誤爆した時、味方が2人一気に減ることになりますから、縄(話し合って1人選んで吊る数。人狼を処刑できるチャンス)を減らしただけの利敵、大戦犯になってしまいます」
発砲できないCO済ハンターはただの確白だ。人狼は微笑んだ。
真占いであるオブシダンは昼の話し合いで偽目に見られていた。「論理的に話したのにどうしてあんなに信じてもらえなかったんだろう」と昼の会議を思い出しながらグレーの中から6を占っていた。トリテレイア以外の他のメンバー曰く「うさんくさい」と全体的に偽目に見られていた。
「6は人狼陣営、と。ストレートに2人見つけるなんて僕は神占いじゃないかな? 誰も信じてくれないのが問題だけれど」
(いや、トリテレイアは信じてくれていたな。……僕が思うにメタ考察かユーベルコード使ってるよねえ)
そして、朝が来る。同時に「昨夜死んだのは2番です」というウインドウメッセージとシステム音声が流れてトリテレイアが発砲した。
「えっ?」
道連れにされたのは6番の人狼だった。能力をフルに使ったトリテレイアには6番が狼という確信があったのである。
「他の方の理解が得られるかはわかりませんが、確実に人狼を減らしました」
発言できなくなった自分のアバターと村人たちを見ながらトリテレイアは端末の前で呟いた。
◆
2日目が始まる。
<2日目>
生存者
1 ユキテル
3 オブシダン
4 イヴ
7 ステラ
8 民間人
9 源次
チャット欄には1番のユキテルが占い結果を「6白」と打ち、7番のステラが「5白」と打っている。
(確証なかったでしょうによく撃ち抜きましたね)
(ええ? 撃ったの?)
ユキテルとイヴが不運に驚く。相方が死に、残ったイヴは黒出しをされている。厳しい状況となっていた。
「やあ、おはよう」
3番のオブシダンが話しながらのんびりとチャット欄に「6黒」と打った。
「今の撃つ場面だったかな? びっくりしちゃったよ。でも結果オーライだね、6番は占い結果黒だったんだ」
本人は本当の話をしているのだが、発言はとても白々しく響いた。
「狼を道連れにしてくれたってことになる……ラストウルフ(最後の狼)の4番を釣って終わりだよ、今日は4吊り以外のめないよ」
これは真占いからの紛れもない真実の発言なのだ。しかし、他のメンバーからするとやはりとてもあやしいのであった。
(3番はどうもあやしく聞こえてしまう。それにしても、6番はなぜ撃たれたのだろうか)
源次は初日の6番を思い出していた。
(2番は特に悪い印象はなく理性的な印象だった。スライドをしたことからも多少強引でも村有利な形勢をつくろうと積極的に働きかける姿勢がうかがえた。その2番が撃ったということは確信があったに違いない。もしくは手が滑って誤爆したのか)
その耳に4番の可憐な声が聞こえてくる。
「もうCOするけど狩人です」
(!?)
源次はハッとして画面を注視した。4番の声が続いている。
「昨日は1番さんを守っていました。霊能者を護衛する話が出ていて誘導された気がしました。1番さんが圧倒的に真目が高かったので、いきなり噛んでくる目もあると思ったんです。
5番さんが白でグレーの6番さんが道連れにされてハンターの2番さんが噛まれて、縄に余裕がないです。事故といってもいいでしょう。ここで偽目の占い師が黒出し特攻した私を吊るのですか?」
(今日で一気に3番さんを吊りにいくわ、それしかない。昨日までで真目をあげている1番さんの腕なら無理じゃない)
真狩人である源次はイヴの発言の意図を完全に把握した。
(騙りということか。ならば、3番が真の占い師で4番は本当に狼だったのか? 騙りが出たなら対抗したほうがいいな。このまま騙らせていると負けてしまう)
「狩人CCOだ。昨日は7番を護衛していた」
源次が考えを巡らせ、落ち着いた声で話し始める。
(俺目線では4番は偽だ。即ち、狂か狼。3番は俺目線真目が上がるが狂人が主人に、あるいは狼が狂に誤爆を出した可能性もあるのだろうか?)
4番と9番の狩人COで3-9ライン(3番と9番それぞれのプレイヤー発言に整合性が取れて仲間同士と思われること)が出来てしまいそうだった。
思い出すのはオブシダンの声だ。
「なるほどなるほど、君の話の通りなら、こういうことになるのかな?」
(彼は、よく口の回る男だ。騙り慣れている)
「えー、でも僕はまだ死にたくないし、クスクス」
(どことなく愉快犯的な気配がした)
「ふうん、僕が怪しいって? そんなことないんだけど、困ったなあ、ふふふ」
(……、困ったな、真目が低くて俺の真目まで下がりそうだ)
2巡目、スマートフォンから聴こえる村人たちの声に源次は内心溜息をつく。会議が進む中、4番がクロス護衛を提案している。
「1番さんを9番さんが護衛、7番さんを私が護衛しましょう。占いと霊、どちらかが噛まれれば守れなかったほうが偽になりますし、GJ(護衛成功)が出れば村有利です。狼が狩人を噛んでも真偽がついて、占霊の2役職は守られます。狼が狙いを外し、占霊どちらも明日生存できる目が大きいです」
「4番さんと9番さんは、9番さんが後出し、その後で4番さんが人狼陣営に不利な提案をしたのもあり、4番さん真目9番さん偽目に見えてしまいますね」
「真占いは1番ですよね」
イヴが誘導しユキテルが各メンバー視点の盤面を整理する。
「2黒を見つけたなら3番さんは占い師の仕事も終わってますよねー」
「4番さんは吊らないんですか? 4番さんを吊って狩人が噛まれるか見れば占い精査と狩人精査が同時にできるのでは」
民間人の8番は占いで黒が出ているので黒を吊っていいのではとオブシダンに同調を見せた。源次はライン切りするかをおおいに悩みつつも4番吊りに賛同をした。
しかし、投票が終わると吊られたのは3番のオブシダンだった。
(あれ? 僕決め打ちされるの? おかしいなあ)
投票結果を見ながらオブシダンは首をかしげた。
「3番に入れたのが1番4番7番……4番に入れたのが3番9番、8番は放棄?」
(ああ、オブシダン様が吊られてしまいました)
発言できない状態で村を見守るトリテレイアはおおいに嘆いた。なにせ、彼にはオブシダンが真占いだとわかっているのだ。
2日目の夜が来た。
源次は指定先の1番ユキテルを護衛している。
「オブシダン様、噛み先は何処になるのでしょうか?」
霊界チャット(死んだプレイヤーどうしが雑談するチャット)でトリテレイアがオブシダンと会話をしていた。
「1番を噛まない理由ができているから、「占い師さんなんで生きてるの?」とは言われないね」
「あとは敵陣営の誰を残すか、ですね」
(思っていたより生き残ってしまいました……おそらくクロス護衛で今夜も私噛みはないのですよね?」
7番であるステラは若干わたわたしながら夜を迎えた。霊能結果は村人陣営と出ている。
(3番さんが吊られて5人、噛み成功で4人になって――狼が2人残っていたら、終わってしまいます!)
ステラが考える。
(逆に、朝が来れば狼は1人しか残っていません)
「噛みは7番、9番、8番のどれかから選ぶことになる。1番は真狩人に守られている。噛もうと思っても噛めない」
夜にそれぞれが考察を進める。
「狼は偽狩人が護衛している霊能者を噛めますが、噛むと4番が偽狩人だとバレてしまいますね」
狼は残り1人、昼の縄を逃れないと負けてしまう。
(源次さんが指定を外さない限り明日は4人ですね。真面目そうな方です、まず外さないでしょう)
イヴが噛み対象を選んでいる。
(黒出しされなければもっと楽だったのですけど)
(事故らない限り、引き分け以上は確定ですね)
ユキテルがスマートフォンを見ながら欠伸をした。
「ふわぁ……」
ステラが考えを巡らせている。
(3番6番どちらかが黒で3番さんが白だったということは、6番さんを白と言っていた1番さんが偽占い師なのですね。
朝が来て7番さん噛みなら残るのは4891の4人。7番さんを守っていた4番さんの偽狩人が確定、9番さんの真狩人が確定。1番さんが真占いを貫くなら霊能結果が落ちないのを利用して3番さんを黒として、4番さんを狂と言って他を吊るよう誘導しないといけません。8番さんを狼にして9番さんに信じてもらうことになるでしょう。しかし、3番さんが黒なら霊を噛んで黒結果を隠す必要はない、と言われてしまいかねませんでしょうか)
(朝が来て9番さん噛みなら4番さんの偽狩人が確定、9番さんの真狩人確定。4781に狼1となります。3番さんの色は白だった、6番さんが黒だったと私が言いますから、1の偽が判明。同時に白だった3番さんが真なら4番さんの黒が確定、3番さんが狂なら4番さんは偽狩人かつ狂ではない、イコール狼になるのでやはり4黒さんと言うことができます。
朝が来て8噛みなら)
狼陣営は2人いる。票を合わせれば引き分けにはできる。あとは「黒塗りできるのが誰か、言いくるめてもう1票を取れるのが誰か」という問題だ。
ユキテルはチャット欄に「7黒」と準備をする。
◆
「朝が来たな」
源次が呟いた。画面には8番の死亡通知と同時の占い師による「7黒」と霊能による「3白」の知らせが表示されている。
<3日目>
生存者
1 ユキテル
4 イヴ
7 ステラ
9 源次
「思い出してほしいんですけど、5番は霊能COをしていましたよね。リア狂の変なCOでしたけど」
ユキテルが「霊能は騙りだった」と主張する。霊能を真のままで噛むと狼陣営は破綻するが、霊能が偽だったことにできれば破綻を免れるのだ。
「源次さん、私は4番イヴさんが狂人で3番オブシダンさんと7番ステラさんが狼と見ています。ステラさんに入れてください」
源次がステラに入れれば、イヴとユキテルと合わせて3票になる。夜に1人を噛み、村人陣営と同数になるので人狼陣営が勝利するのだ。
「4番イヴが狼で7番ステラが狂の線は洗わないのか?」
「3番さんが4番さんに黒を出したのは、イヴさんが相方狼じゃなかったからです。初日で狂だとわからず誤爆したのでしょうねー、役も匂わせたので吊りたかった。そこで初日の投票結果、4番さんに3番7番が入れているんですよ」
ユキテルの舌が滑らかにまわっていた。
「ユキテルさん、一生懸命に源次さんに信じてほしいと力説なさってますけど、源次さんが狂人で私は真狩人です」
イヴが焦ったような声を出して話し始めた。演技だ。
「私目線では、9番源次さんが偽狩人の狂人、3番オブシダンさんが人狼、1番ユキテルさんが真占い師、7番ステラさんが人狼。こうです。信じてください。もう一度今までの狩人日記を読みます。初日から私は役があるので待ってほしいと言っていました、思い出してください……!」
ユキテルは「源次さんを信じています」とチャットに発言を落とした。
対するステラは源次が人狼陣営の言い分を信じないよう、必死に説得をする。
「5番さんは霊COとは考えていません。吊る時にも誰も「5番さんは霊かも」とは思わなかったはずです。5番さんは初日に私を護衛する時、翌日護衛ができなくて4番さんを吊った際の霊能結果が見れなくなる可能性をお考えになりませんでしたでしょうか、私は考えました。それで、初日に4番さんを吊りたかったのです。
今日、朝が来たということは、狼は残り1人。ということは、今まで死んだ人の中に狼がいたことになります。死んだのは5番さん、2番さん、6番さん、3番さん。2番さんはハンター証明済で白、5番さん3番さんは霊能結果白。6番さんしか該当がいません。6番さんが確定で黒になります、そして3番さんは6番さんに黒を出していて1番さんは6番さんに白を出していました」
ステラが言葉を紡ぐ。
「源次さん、信じてください。もっとも、1番さんが狂で4番さんが狼なら、私たちが票を合わせても引き分けにしか持ち込めませんが……」
ぷつりと声が途切れた。このタイミングでステラが接続切れを起こしたのだ。
「……」
不在の状態で投票になれば、投票放棄となる。票を合わせれば人狼陣営は必ず勝てる。
(ここまで真剣に勝負していてそんな残念な勝利、欲しくないんですよ)
「待ちましょう。時間を稼ぎます」
イヴがそう言って発言時間を追加し、雑談を始めた。ふと気づけば観戦者が増えている。源次は「こちらも時間を追加する」とチャットに出して時間を追加した。
「そういえば近くで大会もあるんでしたっけ。行ってみたいですね」
「俺は先ほどの5番が気になっている。単純な荒らしでもないような」
やがてステラが復帰すると全員が「おかえりなさい、戻ってきてよかった」と喜び、投票が始まった。
結果は引き分けとなったのだった。
<役職公開>
1 ユキテル 狂人
2 トリテレイア ハンター
3 オブシダン 占い師
4 イヴ 人狼
5 民間人 村人
6 民間人 人狼
7 ステラ 霊能者
8 民間人 村人
9 源次 狩
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
ほうほう、「人狼ゲーム」か面白そうじゃのう。ルールも把握したしやってみるかの。
何故か【巨狼マニトゥ】に【騎乗】し参加。(もふもふ)
わしの役職は…「人狼」じゃな!マニトゥ、狼つながりでお揃いじゃのう。
最後まで生き残れば勝ちなのじゃな。頑張るのじゃ!
方針として、まずは「占い師」、これはいかん、真っ先にガブリとやるのじゃ。
次にわしを疑う者、これも噛むしかないな。
それから疑われたら一生懸命否定するのじゃ!
「人狼」を探せる「占い師」とわしを疑う者がいなくなれば安全が確保できるという寸法じゃよ。
この神算鬼謀、我ながら恐ろしくなるわい。
さあ、無力な村人共よ!眠れぬ夜を震えて過ごすがよい!
アネモネ・ネモローサ
※アドリブ連携大歓迎
【POW】
ゲームを介してやってくるUDCか。
人々の楽しみに水を差すとは、許し難いな。
とはいえ、人狼ゲーム……。
ルールを読んだが、騙りを見破ったり命に優先順位をつけるゲームなのだな。
むう、私に上手くできるだろうか。
引いた役職は、狩人か。
良かった、人を守る役だな。
普段のように、全力をかけて皆を守ろうではないか。
……一回しか守れなかったな。
しかも守れた次の日の昼、嬉しさのあまりしてしまった失言で皆から狩人がバレてしまった。
当然その夜、人狼に噛まれた。悔しいな。
しかし、中々奥が深いゲームだ。
次こそは、犠牲者を出さないでみせる。頑張るぞ。
●村2
ここにひとりの民間人プレイヤーがいる。
キャラ名は「まきなさん」だ。まきなさんは普通の社会人男性で、普通の善良なプレイヤーだ。だが、そんなまきなさんは偶然名前がまきなさんというだけで妙な事件に巻き込まれてしまうことになる。
「狂人か。ここはあえてCOせずに潜伏しようかな。狩人が連続護衛なしだから、占い師が1確しても連続襲撃で殺せるしね」
まきなさんが満面の笑みでスマートフォン画面を見ている。
まきなさんのアバターの上には3番の番号と役職狂人のマークが浮かんでいた。
同村のアネモネ・ネモローサ(人に憧れし黒き彩喰み・f21338)は8番だ。真っ白な瞳には使命感と強き意志を漲らせていた。
「ゲームを介してやってくるUDCか。人々の楽しみに水を差すとは、許し難いな」
(とはいえ、人狼ゲーム……。ルールを読んだが、騙りを見破ったり命に優先順位をつけるゲームなのだな。むう、私に上手くできるだろうか)
アネモネのゲーム内アバターの上には狩人役職のマークが表示されていた。
「良かった、人を守る役だな」
大好きだったファミリーがあった。
彼らは花の名をアネモネに贈り、家族のように育ててくれた。彼らを守れなかったアネモネは、以来、己が人を護るために存在するのだと思っている。仮想世界での遊戯に過ぎないこんな時でも、誰かを守るという役はアネモネの心に不思議な安心感を与えてくれる。そう、その役にいない自分は落ち着かないのだ。
「普段のように、全力をかけて皆を守ろうではないか」
画面を見つめる瞳には真剣な色が浮かんでいた。
「わしの役職は……「人狼」じゃな! マニトゥ、狼つながりでお揃いじゃのう。最後まで生き残れば勝ちなのじゃな。頑張るのじゃ!」
ルールを把握したての4番、エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は人狼を引いていた。
「どうもーよろしくお願いしますー」
「!! お味方殿か!」
スマートフォンから1番の相方狼の声が聞こえてエウトティアは自信満々に挨拶をした。
「わしに任せるのじゃ!」
「あっ、はい。よろしくおねしゃす」
相方狼が生真面目に返事をする。アプリゲームでは実況主や声優などがネタに走ったりキャラなりきりをしてプレイすることもあるし、荒しやリア狂もいる。民間人の相方狼はエウトティアの喋り方に「声優さんのキャラなりきりとかかな」と呟き、嬉しそうに「勝ち負け気にしないんで、好きにやってください。サポートしますよ、楽しくやりましょう」と告げるのだった。
「良い相方を引いたようじゃ。勝利は見えたぞ!」
「わー、演技クオリティ高いっす……! 騙り出ます?」
「騙りとはなんじゃ!」
「あっ、はい。俺占いになりすましますから村人のふりしてもらっていいっすか」
「任せるのじゃ」
人狼陣営は盛り上がっていた。
◆
<1日目>
生存者
1 民間人
2 民間人
3 民間人・まきなさん
4 エウトティア
5 民間人
6 民間人
7 民間人
8 アネモネ
9 民間人
初日の朝が来た。
「そういえばルール確認してなかった」
「ここは罠村かな」
罠村とは、ルームマスターがまともじゃない村だ。だいたい開始直後から荒れ、まともにゲームが楽しめない可能性も高い。
3番まきなさんがのんびりとルールテンプレを打っていく。ルームマスターは7番だがなんと「接続切れ」となっている。
「ここ初日噛みあり部屋だっけ? なし部屋だっけ……おぼえてナイナア……」
噛みあり部屋は初日の占い先を占い師が好きに選べるし、人狼陣営を当てることもある。
噛みなし部屋は初日村人陣営の中からランダムでシステムが選び、結果を教えてくれる。
なお、噛みあり部屋でもプレイヤー同士の取り決めで初日の噛みはなしと定められていることが多い。システム的には噛めるのにわざわざ禁止する理由は、「ゲーム開始直後に噛まれて何もできなくなってしまう人がかわいそうだから」という理由だ。複数人で遊ぶゲームのルールは、プレイヤーが楽しむために増えるのである。
まきなさんは適当にチャットにルールを貼った。
「初日噛みなしラン白(ラン白は記憶があいまいなので触れないのが無難)、スライド(ある役職をCOした後に、そのCOを撤回して別の役職をCOし直すこと)禁止、2日目以降チャットで結果報告OK、雑談チャットOK考察チャットNG」
「OKです。3番さんありがとうございます」
喋っているのは5番だ。すでにゲームは始まっていた。
「楽しいゲームになりそうですね」
1番がチャットで発言をしていた。ルームマスターが欠けているが雰囲気は良い部屋のようだった。
5番6番がにこやかに挨拶をして不在の7番からは無言の時間が過ぎ、8番アネモネの番になった。
「8番だ。私は村人陣営だった。全力で村の勝利のために頑張るぞ」
凛然とした声が響くと徐々に観戦者が増えていく。アネモネ的には普通に喋っているのだが、民間人プレイヤーからすると「声優さんが芝居がかったなりきりプレイをしている」とたいそう好評だった。
やがて1番が占いCOをした。
「1番占いCOで8番さん白(村人陣営)でした。チャットにラン白ってあってあれってなったんですけどここラン白じゃなかったっす。占いは苦手ですが頑張ります」
1番のマイクから生活音が漏れていた。
「おとうさんおーかみー」
子供の声だ。
「ははははは、うちの子供もこのゲーム好きなんですよ。喋って混ざりたがっちゃって。おとうさん今占いなんだよ、ほらこのマーク見てごらん」
「ほんとだ占いだー」
続いてまきなさんがのんびりゆるゆると挨拶をしながら時間を追加して「7番が戻ってくるといいけど、待ちながら進行論と考察を落とすね」と語り始める。
「時間をゆっくり進行するのがよいのじゃろうか? さくっと吊ってしまってもよいじゃろう」
エウトティアが玲瓏とした声で特徴的な口調による考察を響かせると観戦者がまた増えていく。
(ふらっと覗いた人が女性の声で留まって、人数が多いのを見て新しく覗く人が出て……で、増えてるんだなー)
まきなさんはそう考えた。
ほんわかとした空気が流れる中、初日は7番が吊られることになった。接続が切れたまま戻ってこなかったのだ。
「情報全く落ちないし、仕方ないですよね」
「そうですね」
村はほんわかとしていた。時折観戦者が女性プレイヤーに有料の花やスマイルといったエフェクトを贈っており、見た目も華やかだ。
そして、夜が来る。
「1番殿は占い師なのじゃな」
エウトティアは初日を振り返り1番を選択した。
「ふぇっ? いえいえ、人狼っすよ。噛まないで! 噛まないで! なりすましです。本物が出てこなかったんすよ、というか役職が全潜伏になってるんです」
「ぱぱーうらないけっかなにー?」
エウトティアは相方狼の子供とにこやかにトークをして方針を語る。
「方針として、まずは「占い師」。これはいかん、真っ先にガブリとやるのじゃ。
次にわしを疑う者、これも噛むしかないな。
それから疑われたら一生懸命否定するのじゃ!
「人狼」を探せる「占い師」とわしを疑う者がいなくなれば安全が確保できるという寸法じゃよ。
この神算鬼謀、我ながら恐ろしくなるわい。
さあ、無力な村人共よ!眠れぬ夜を震えて過ごすがよい!」
「ははははは」
「しゅごすがよいー!」
人狼陣営は相談メンバーが3人に増えて楽しい夜を過ごしていた。
「占い師が一人しか出ていない村。これは平和村と呼ぶのだったか」
アネモネは迷わず占い師を選び、護衛をしていた。
「守ってみせよう」
護衛先の占い師1番はアネモネの決意も知らず、楽しく人狼陣営で相談(雑談)をしていた。
「それにしても占い師1人以外全潜伏なんだねえ」
まきなさんは初日の和気藹々とした空気を思い出しながらご主人様の当たりをつけていた。
「エウトティアくんはまず狼だね、わかりやすかった」
こうして朝が来たのであった。
「あっ、噛み先1番になったままっすよ!? このゲーム、人狼自分を噛めるっす!」
人狼陣営からは終わり際に悲鳴が上がっていた。
◆
<2日目>
生存者
1 占い→8白
2 民間人
3 まきなさん
4 エウトティア
5 民間人
6 民間人
8 アネモネ
9 民間人
2日目の朝が来た。
メッセージウインドウと同時にシステムボイスがアナウンスを流している。
「昨夜は誰も死にませんでした」
チャット欄には占い結果の「6白」が打ち込まれていた。
6番が「ハンターCO」と名乗り出る中、8番のアネモネは喜んでいた。なにせ、昨夜は誰も死ななかったのだ。
「昨夜は守れたということだな。1人しかいない占い師を襲うとは豪胆な狼だ。そういえば昨日の発言を洗っていたのだが、4番はあやしいのではないか」
発言から狩人を透かしながらアネモネはエウトティアの発言を精査した。
「なりきりと言われればそれまでだが、うん」
(しまった、嬉しさのあまり自分が狩人だとバレてしまいそうな失言をしてしまったな)
自分の発言時間が終わった後でアネモネはひっそりと反省をするが、1番の順番が来て1番のマイクから子供の「ぱぱしななかった! ぐっじょぶ~~かりゅうどさんぐっじょぶだー!」という愛らしい声が響くと端末を見つめる白い瞳が嬉しそうに微笑んだ。護衛をしなければあの子供の声は聴けなくなっていたところだった。
(今日もいっしょに楽しもう)
心の中で民間人に語り掛け、アネモネはゲームに集中した。
3番のまきなさんは各参加者の発言を楽しそうに聞きながらしっかりとメモを取っていた。
「昨日、占いCOがひとりしかいなかったけど、まだ確定とは思ってないよ。GJだったから今日は連噛みで噛まれると思うけど、そのあとから出ようと思ってるのかも。あと、霊能さんが出ていないのは白だったからだろうね。もちろん7番さんが霊能だった可能性もあるんだけど」
続いて喋り出した4番のエウトティアは一生懸命に人狼疑惑を否定した。
「確かにわしは今マニトゥに乗っておるが、マニトゥは狼じゃがわしは狼ではないのじゃ!」
「あおーん」
エウトティアのマイクから狼マニトゥの声がすると観戦者からの拍手エモ―ションが画面を彩る。
「観戦者が凄い数っすね」
民間人プレイヤーが初日よりも緊張した声でそう呟いた。
「ああ~~!! 吊られてしまうのじゃー!」
エウトティアが画面を見て悲鳴をあげる。リアル世界でエウトティアに寄り添うマニトゥはふわふわもふもふの毛並みを寄せた。
「くーん、くーん」
「マニトゥ~~、吊られてしまったのじゃー!!」
そして、夜が来る。
「ああー!! 相方狼氏とお話できなくなったのじゃ!」
エウトティアは話し相手のいない画面を寂しく見つめる。昨日まではあんなに賑やかな夜だったのに、今夜は誰とも話すことができないのだ。
◆
<3日目>
生存者
1 民間人
2 民間人
3 まきなさん
5 民間人
6 民間人
9 民間人
3日目の朝が来た。
メッセージウインドウと同時にシステムボイスが響き渡る。
「昨夜死んだ人は8番さんです」
「やはり、透けてしまいましたか」
「死人仲間ができたのじゃ!」
霊界チャット(死んだプレイヤー同士が雑談するチャット)でアネモネとエウトティアが再会していた。
「勝敗を見守りましょう。勝利を祈っています」
「勝つのじゃ!」
二人は互いに相手が敵陣営だとわかっていたが、観戦しながら雑談する仲間としてゆるくチャットを交換しながら勝負の結末を見守ることにした。
チャット欄には「占い5白」の文字が打たれている。ラストウルフ(最後の人狼)となった1番が頑張っていた。
「あ、霊能が出てきた」
まきなさんが呟いた。チャットに5番からの「霊CO 4黒」という文字が打ち込まれている。
「残り1人かー」
(アピールしながら吊られにいこうかな)
実はまきなさんは3日目の時点でもう1人のご主人様を見つけていなかった。
「5番霊能CO、6番ハンターCO、あと8番さんは狩が透けてたね。思うんだけど、4番は本当に黒だったのかな? 4番を疑ってる人が多かったけど、狼だったら疑われるから出てこない発言ばかりだった。むしろ一周まわって村だよ。とすると霊能CO5番が人外陣営。真霊能は7番の可能性もあるんだ。
9番は主導権をとってるのに噛まれてない。これはゲームメイクしてる狼の行動だよ」
霊界チャットで観戦しながら雑談していたアネモネは「まきなさんは狂人のようだな」と呟いた。
「狂人とも夜にワイワイしたかったのう」
「そんなにワイワイしていたのですか」
「子供が混ざっていて楽しかったのじゃ!」
霊界チャットはのんびりと時を過ごしていた。
観戦者と霊界のふたりが見守る中、村人たちは9番を吊っていた。
(たぶん向こうからは見付けて貰えたかなー。今日は2番噛みかなー)
まきなさんが4日目に残る村人を予想しながら夜を過ごしている。
(5番霊能、6番ハンター、1番占い、3番ぼく……役職しかいないね。人狼は誰? 4番は黒だよね、1番? あ、1番っぽい)
やがて、夜が明けた。
◆
<4日目>
生存者
1 民間人
3 まきなさん
5 民間人
6 民間人
4日目の朝が来た。メッセージウインドウと同時にシステムボイスが響き渡る。
「昨夜死んだ人は2番さんです」
チャット欄には「占い結果3黒」の文字が打たれてまきなさんは安心した。まきなさんのご主人様が確定したのだ。
同時に霊能結果も「9白」と打ち込まれている。
「3番殿が吊られれば人狼陣営の勝ちじゃな!」
エウトティアが身を乗り出した。マニトゥが尻尾をふわふわと振りながら主人の歓喜に気持ちを添わせている。
「わぅ、わぅーん」
「3番が狂人だと思われ、1番が狼だと見破られればあるいは」
アネモネは可能性を考えながらも端末から聴こえる「3番さん破綻していますよ」という声に首を振った。
結果、まきなさんは狼だと思われて吊られ、夜に村人が噛まれて人狼陣営が勝利したのであった。
<役職公開>
1 民間人 人狼
2 民間人 村人
3 まきなさん 狂人
4 エウトティア 人狼
5 民間人 霊能者
6 民間人 ハンター
7 民間人 占い師
8 アネモネ 狩人
9 民間人 村人
「一回しか守れなかった上に失言して狩人を透かしてしまったのは悔しかったな。しかし、護衛したのは人狼だったのか……中々奥が深いゲームだ。次こそは、犠牲者を出さないでみせる。頑張るぞ」
感想戦(1戦を終えたメンバーがすぐに解散せず感想を語り合うこと)でアネモネがそうコメントするとまきなさんとエウトティアも「また勝負しよう」と再戦を誓う。
「おねーちゃん、ごえいありがとう!」
子供の声が端末から響く。
「またあそぼうね、ばいばい」
「ばいばい」
メンバーはニコニコと挨拶をして別れようとして――、
「あれ?
「まきなさん?」
まきなさんが戸惑いの声をあげた。
「変なメールがきてるんですよ、なんでしょうねこれ」
「どれどれ」
まきなさんがメールを読み上げる。
「マキナ教の信者です。まきなさんはマキナ教と何か関係があるのですか? 大会には参加されますか? ぜひ参加してください」
まったくもって意味不明なメールであった。
「大会には、参加するけど」
まきなさんは気持ち悪そうに呟いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リヴェンティア・モーヴェマーレ
アドリブ大歓迎です
[POW]
大ジョブでス…問題ありまセン…
ちゃんとルールは覚えましタ、この通りにやればよいのデスよネ(スマホで確認すればいいにも関わらずルールブックを握りしめて神妙な面持ち)
「占い師」
ビギナーズラックで人狼を当ててしまうも、動揺し過ぎてうまく立ち回れず顔を青くし若干挙動不審
必死で村人陣営の人に人狼を伝えようとするも、変に言葉を重ねると人狼だと疑われるのではないかと色々思案を巡らせてしまい言葉数もあまり多くなく流れを見守ってしまう
ここぞと言う時には役に…?
(機械的な面でのマルチタスクは得意だけれど、社交交流面ではポンコツ故に1つの事だけしか出来ない子)
勝敗はお任せいたしマス
オルキテ・タンプル
●心情
・人狼ゲームねぇ…。まあ程々にやろうかな。気合を入れても吊られる時は吊られるし、有能すぎても噛まれるしね。ま、どう動くかは役職次第だけど
・まあ…ズルなんていくらでもやりようがあるんだけど‥‥。ボクは電霊使いだし。電霊使えば、いくらでも役は見れるんだけど…。
●人狼
・うげっ・・ボロ雑巾(霊能)じゃん。3人外だから騙りが来るかなぁ…。来ないなら来ないで確定白で胃痛か食われる役だね。
・騙りが出たらローラされる。出なかったら助けて狩人枠だね。
・じゃあ、ボチボチやろうかな
●調査
・UCを使ってネットワークを調べる。何か見つからないかなぁってね。
ま、何か見つかれば儲けものだ。さあ、電霊ども悪戯の時間だぜ
セシリア・サヴェージ
初心者ではありますが基本的なルールは勉強してまいりました。
同じ陣営の方に迷惑をかけないよう頑張ります。
今回の役職は……狩人ですね。
夜闇に潜む人狼から村人を秘かに護る。暗黒騎士らしい……ですかね?
早期に吊られないように積極的に発言し、さらに狩人であると人狼に悟られぬように【演技】します。
弁舌が立つ方ではありませんが、私が吊られそうになったらなんとか【言いくるめ】ましょう。
村人陣営の勝利に貢献できるよう、精一杯頑張ります!
それにしても、投票で処刑する村人を決めるとは、ゲームと分かっていても良い気分はしませんね。
現実にあったならば……ゾッとする話です。
(勝敗はお任せします)
●村3
「人狼ゲームねぇ……。まあ……ズルなんていくらでもやりようがあるんだけど……。ボクは電霊使いだし。電霊使えば、いくらでも役は見れるんだけど……」
オルキテ・タンプル(もう一人の蘭花・f15791)がスマートフォン画面を見つめている。電子関係全般を得意とするオルキテは能力を使えば絶対的に有利なのだ。
「能力を使うなら、邪神関係を調べるのに使おうかな」
オルキテは鼻歌交じりにネットワークを調べ始めた。
スマートフォンの画面に9人が並んでいる。
「ここは噛みあり部屋ですが初日噛みなしでお願いします。占いはラン白ではありませんので騙りの人は間違ってラン白と言わないように注意してください、2日目以降チャットに占いや霊能結果発言OKです。スライド禁止です」
ルームマスターが説明を終え、ゲームが始まる。
「大ジョブでス……問題ありまセン……」
リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)はルールブックを握りしめて神妙な面持ちをしていた。
「えと、「噛みあり部屋」はシステム的に人狼が初日前夜に誰かヲ噛める部屋デス。
「初日噛みなし」は、「システム的には噛めるケド、噛むの禁止」デス。理由は「スタート直後に噛まレタ人がつまらなくなってシマウから」。
「ラン白」は、「初日の占い結果がシステムでランダムに村人陣営を選んデ、必ず白が出る」デス。
「騙りの人は間違ってラン白と言わないように注意してください」は、占い師になりすます人が「ラン白で占った結果」と言うト一発で嘘がわかるカラ。
「スライド禁止」は、「役職を騙った後で撤回シテ、ホントは別の役職だと言うのを禁止」デス」
「ちゃんとルールは覚えましタ、この通りにやればよいのデスよネ」
スマートフォンを固定置きしたテーブルの上にはふわふわほこほこしたハムスターやチンチラたちが勢ぞろいでリヴェンティアを応援してくれている。
リヴェンティアのアバターの上には7番の数字と占い師の役職マークが表示されている。ぽちりと選んだ隣の8番の占い結果にリヴェンティアは眼を見開いた。
「はっ、は、はちバンサン、黒でス、黒でスヨ!?」
(今回の役職は……狩人ですね。夜闇に潜む人狼から村人を秘かに護る。暗黒騎士らしい……ですかね?)
セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が基本ルールをおさらいしながら潜伏の意志を固めていた。
「うげっ……ボロ雑巾(霊能)じゃん。3人外だから騙りが来るかなぁ……。来ないなら来ないで確定白で胃痛か食われる役、騙りが出たらローラー。出なかったら助けて狩人枠だね」
オルキテが電霊を一度止めて溜息をついた。
「じゃあ、ボチボチやろうかな」
◆
<1日目>
生存者
1 民間人
2 民間人
3 民間人
4 セシリア
5 民間人
6 オルキテ
7 リヴェンティア
8 民間人
9 民間人
朝が来た。
発言順は7からと表示がされた。
「ええっ、最初デス!? ま、まダ心の準備ガ」
リヴェンティアがあたふたと喋り出す。
「村人陣営でシタ!! えと、えと、それと占いでス。えと……」
動揺して挙動不審となるリヴェンティア。
(偽物が出てクルこともあるのでスヨネ)
「私が本物です。私の後に出て来ルノハ偽者さんデス! 絶対! 絶対デス!」
続く8番は落ち着いていた。
「占いCCO(対抗COの意味)、9番白です」
(占いがもうひとり出まシタ!)
リヴェンティアはさらに動揺した。端末からは8番の声が続いている。
「7番さん、占い結果言ってませんよね」
(言い忘れマシタ!?)
リヴェンティアは慌ててチャットに「8クロ」と打った。
「騙りに慣れてない狼か狂人なのかなという印象ですね。嘘をつくのが下手な良い人なのでしょう。狼の相方がいれば少し相談しただけで騙りを任せられないと判断しそうなので、リヴェンティアさんは狂人の線が濃いかなと考えます」
8番は時間を追加して進行論(こういう方針で進めれば村人陣営が勝ちやすいだろう、という持論)を語る。
「片白(片方の占い師から白出しされている人)の考察はやめてください。狂人が占い師に出ている可能性が高いのですが、自分が黒くなろうとします。片白精査から占い精査につなげるのはやめましょう」
(わ、私、ホンモノでス!!)
リヴェンティアは内心で悲鳴をあげた。見守る画面の中で9番が霊能をCOしている。
「霊能COです、7番がCO牽制して8番がするっとでたのと時間延長したので真目取ろうとしてるように見えますね(本物の占い師に見てもらうために頑張っているように見えますね、という意味)。7番さんは「村人陣営でした、それと占いでした」の言い方に違和感があります。占い師ならすぱっと占いでしたと言って占い結果を言うのではないでしょうか。なにより占い結果を指摘されるまで言わなかったのが……」
8番からの流れで概ね占い師は8番が真目に見られていた。
(些細な言い方ひとつで偽者っぽく思われてしまうのですね)
1人1人が他者の発言に対して「こんな言い方をしたのが村っぽい、村じゃないと感じた」と感想を告げている流れにセシリアは驚いていた。
「4番のセシリアです。村人陣営です。私は占い師はフラット(どちらも同じくらい)に見ています。嘘をつくのが下手な良い人、と言われた7番さん。私は単純にゲーム自体に不慣れな方が慌てているように感じられました。対する8番さんは落ち着いていて慣れている方、十分に考えて話をされている方と感じられました。8番さんの言い分から考えますと「人狼陣営が騙りに出る時に8番さんは騙りを任せられるタイプ」に思えました。
それに、8番さんは7番さんが狂人濃厚と仰いましたが、現状2-1(占い師が2人霊能者が1人)で初日初巡から真狂に絞り、かつ真占いを決め打つのは少しリスクが大きく感じられます」
「ぼくは慌てている人が嘘をついていて落ち着いている人が本物だと思うんで8を真ぽいなと見ていて、4番は7と同じ陣営で庇っているのかなと思っちゃうな。4番あやしい」
5番がそう語り、6番のオルキテはうんうんと頷いた。
「6番オルキテ、霊能CCO。これで2-2(占い師2人、霊能者2人)、9は狂とみているよ。6目線では狼2人が騙りに出ている目もあると見ているよ。7は偽目に見えるけどまだわからない、9が8の真を勝ち取ろうと出てきたようにも見える、霊ロラ(霊能者を順番に吊ること)なら9から吊ってほしいな」
(占いが2人、霊能が2人? 護衛先は……)
セシリアが情報を整理しながら護衛先を考えていた。端末からはリヴェンティアがおろおろしながら「本物デス、本物デスヨ! 信じてくだサイ! 私が本物なのデ、8番さんは偽者だと思うんデス、黒だと思うんデス」と語る声が聞こえていた。とても初々しい。
一方、8番はやはり落ち着いた声であった。
「7番さんは「偽者だと思う」「黒だと思う」という言い方がおかしいですよね、7番さんが本当に真なら間違いなく偽者確定で黒なので「思う」とは言わずに「絶対黒です」と言うはずです。
霊の6吊ってください。吊ったら狼が落ちます。占いを真狼で見る人は6、9の単体精査をしたほうがいいです。私は9が出た時あまり真目は感じなかったので狂もあるかな。6が人狼陣営と見ると相方は吊り位置(吊りたい人として名前が挙げられた人)に入っていたのかな、村目線では1~6グレー(役職者COをしておらず、占い師からも占われていない人)、今日の内容から入っていないように思える。6が出る理由が薄いので真目、あっても狂で7の狼目が下がります」
9番が首をひねっている。
「8番さんは69を真狂で見ているんですよね、9に真目を感じなくて6に真目を感じてあっても狂だと思う、6を吊ると狼が落ちると言うのおかしくないですか? 78が真狂だった時9が真確定したら今日狼吊られる可能性が高いので霊ロラにするために6が出てきた可能性あるよね」
いつしか吊り対象は6に絞られていた。
「7番さんあやしいですが、8番さんも後半あやしかったから占いどっちが真かわからないですね。現状6が仕事しに出てきたように私も見えます」
セシリアが考えながら言葉を紡ぐ。
(話し合いをするうちに段々と誰かを吊る流れができていくようです。これは怖いですね……)
(早々に退場かな、これは)
オルキテは電霊に調査を再開させた。
(じゃ、あとは調査に専念しようっと)
端末から流れる声が眠気を誘う。
「2番です。5番さんってみんなの意見ちょっとずつ拾って同じこと言ってるだけじゃないです? 9番さんの発言もそんなに白くない。7番さんは一生懸命なパッションは感じて真目感じるならそこかなあ」
「3番です。霊を騙ってる人はあって狂だよね。狂なら占いに狼出てるのわかるよね。黒出てるんだよね。78どっちか吊って色見て霊能信用勝負しない? 7に真目を感じるなら8からいけば初日黒落ちるんじゃない? 8も霊騙りもそれが嫌で騙りに出てきたんでしょう。ところで7に真目感じます? ……」
そして、投票が始まった。
(あれ?)
「わわわ、私に投票されテいまスヨ」
リヴェンティアがしょんぼりとした。
「ほ、本物なのデス……ヨ」
遺言でしょんぼりとした声を出すと画面に花が咲く。
「ふわっ? な、なんでショ? お花デス。あ、ニコニコマークデス。可愛いデス」
戸惑う素直な声に次々とエフェクトが出現して画面を華やかに彩った。観戦者が初々しく愛らしいリヴェンティアに有料のプレゼントを贈っているのだ。
「疑われてシマッテどうしたラいいかわからなくなったのデス、ごめんなサイ。私、本物でシタ……信じてもらうノ難しいデス。でも、ゲーム参加できて楽しい気持ち」
遺言を喋り終えるとリヴェンティアはほっと息を吐く。とても緊張していたのだ。そんなリヴェンティアの指をチンチラの藍がやわやわと撫でて労わる気配を見せていた。
(白だなあ)
オルキテは霊能結果をチャット欄に準備してから投票先を再確認した。
夜が訪れた。
「投票結果は9番が6番に入れて、7番が8番に入れて、残りが7ですね」
セシリアが投票結果を確認しながら護衛をしている。
「それにしても、投票で処刑する村人を決めるとは、ゲームと分かっていても良い気分はしませんね。現実にあったならば……ゾッとする話です」
◆
そして、朝が来る。
噛まれたのは1番だった。
<2日目>
生存者
2 民間人
3 民間人
4 セシリア
5 民間人
6 オルキテ
8 民間人
9 民間人
誰も道連れにせず、自分がハンターであることを証明するための空砲を撃ち、1番が死ぬと8番占い師は占い結果をチャット欄に知らせた。
占い師や霊能者はハンターが発砲する前に前日の結果を発言することができる。だが、それをあえてしないのは、幾つもの試合を経て考察を重ねたプレイヤーたちが「それをしてしまうと村人陣営が有利すぎる」と結論を出し、広めてローカルルールとしたからだ。
ルールを知らない初心者でも何試合か経験すると自然とそれを理解している。ルームマスターが事前に初心者がいるとわかった時に周知することもあるし、初日の進行論で語られることもある。事故のように禁忌が侵された時に「今のはだめですよ」と理由を説く者が出てくることもある。そんなプレイヤーたちの努力の積み重ねにより、この朝があった。
「3白」
8番の占い師の占い結果は3番白となっていた。
(対抗も白出すでしょ)
オルキテはチャット欄に「7白」と入力して珈琲を啜る。カップからはゆらゆらと白い湯気が立ち上っていた。ちらっと見るとチャット欄に「7白」が2つ並んでいる。思った通り。
白出しされた3番が喋っている声が端末から響いている。
「昨日9が対抗霊に入れてる。ここで占いにいけないのは狂なんだよ。9番は昨日最後78どっちがご主人様の確証がなかったんだ。残り8が狼、相方狼は4、5にいると思ってる」
(COするならこのタイミングでしょうね)
セシリアはチャット欄に「狩人CO 3守り」と出し、目を瞬かせた。
「対抗?」
チャット欄には5番が出した「狩人CO 8守り」が出ていた。ほぼ同時のタイミングだ。
「3を守った理由ですが、人狼陣営が霊ロラにしたかったのだと考え、昨日霊ロラに行く流れを3番さんが変えたから村からも狼からも白く見えて狙われると思ったからです。外してしまいましたが……」
「8番を守ったのは真占いと見ているからです。4番偽ですね、4番偽です。8が真占い、7が偽占いで白だったから狂、4は偽狼、69どちらかに狼です。吊ってください」
自分は発言できないものの戦況を見守っているリヴェンティアは先ほどよりもリラックスしつつ「狩人サンはどちらがホンモノなのデショ?」と頭を悩ませていた。
端末からはオルキテの声が響いている。溌溂として自信に溢れた声だ。他人が安心してついていけるようなオーラが出ていた。
「今日は8絶対吊り、狩人は今日いかなくていいよ、8吊り以外はのめない。58だ狼。9番さん昨日占いに投票していなかったけど、今日は絶対8投票に反対すると思う」
声を聴きながら端末の前でセシリアは頷いた。
オルキテの順が終わり、8番が話し始める。
「9番が6番に入れるのは対抗だからおかしくない、その動きだけで狂というのは軽率ですね。霊能結果で7が狂とわかったので6番が狼だと確定したのです。6番目線58で追うなら5吊ってもいいはずなので8吊り以外のめないのはおかしい」
「9番です、まず昨日6に入れたのは初日に占いを吊る進行がないと思ったから。自分は6吊ってほしい。ただ8吊ってもPPないから8いっても民意には従います。6は狼だからワンチャン真吊れると思って345に乗ったんでしょ? 46狼、87真狂でみています。狩人は4偽目でみています」
セシリアは「PP」の単語にドキリとした。PP(パワープレイ)とは、狂人をあわせた人狼陣営の数が村人陣営に勝り、数にものをいわせて勝ちにいくことだ。
最終的な投票結果は8番が吊られる結果となった。
「ウーン、昨夜3番サンを守った4番狩人サンと6番霊能サンが味方同士で、昨夜8番サンを守った5番狩人サンと9番霊能サンが味方同士、3番サンは村人陣営っぽい、デショカ?」
見守るリヴェンティアがフェレットの壱を撫でながら呟いた。壱はくりくりとした眼で首をかしげながら、一緒に考えてくれるようだった。
「おっと、変なデータを見つけた」
オルキテが電霊の齎した情報に目を留めた。
「ここ数日開催してるゲーム大会に参加せよ、偉大なる神のために奉仕せよ、現実世界に潜む仲間たちよ……」
「ゲーム大会でマキナ教が事件を起こすので、ゲーム大会に参加してはいけない」
そういったフレンドメールがゲームプレイヤーの間で飛び交っているのである。
「敵味方がはっきりしましたね」
セシリアが護衛先を選んでいる。
「私が護衛できるのは3以外、対抗を除外して926……というのを人狼陣営は知っていますね。GJが確実に出ない3を狙うでしょうか。霊能を噛む可能性もあるでしょうか」
(人狼陣営は誰を噛んで誰を残せば話し合いを有利に進められるでしょうか?)
◆
そして、3日目の朝が来た。
「昨夜死んだのは3番です」
お知らせウインドウが画面に表示され、システムアナウンスが流れる。
<3日目>
生存者
2 民間人
4 セシリア
5 民間人
6 オルキテ
9 民間人
同時にチャット欄に霊能結果と護衛先報告が並んでいた。
6番「8黒」
9番「8白」
4番「2守り」
5番「9守り」
発言は4番のセシリアからだった。
「おはようございます、昨夜私は連続ガードができないので3を守れませんでした。昨夜守ったのは2番です。霊能69決め打ちは6を真とみます、5を吊ってほしいです」
続いて5番が対抗する。
「4は確実に人外なので吊ってほしいです。48狼9狂かもしれませんね。2番さん同じ陣営ですよね、2番さん4いきましょう」
(どっちが2番を味方につけるかの勝負になってるなー)
オルキテが発言順を迎えてニコニコと話し始めた。
「ボクは5をあやしくみてるよ。ボクを信じなくてもいいよ、昨夜噛まれた3番を信じて。3番は霊ロラを邪魔して、霊にいるのは狂だと言ってたんだよ。でもね、今日は5じゃなくて9吊りでもいいよ。2番さんが今日噛まれることはないよ。だって5番が今夜2番さんを守るからね。守るよね? 5番さんが本物だって言うなら2番さんは今夜死なないから、9を先に吊ってもいい」
対して9番は猛烈に反対をしている。
「45から偽を決めて吊るのでいいじゃないですか、6って俺吊った後のこと考えてない人外なんですよ。俺は5真に見えますよ白アピールしようとしてた! 俺目線なら45精査しないといけない、俺は4いってほしい」
発言が巡り最終発言は2番となっていた。
「5で終わると思うけど。でも9からでもいいですよ、4は昨夜私を守ったけど5守ってないんでしょ、じゃあ、5番さん今夜私を守ってくれますよね? 9を吊って狼が今夜噛むところを見れば46と59どちらが村人陣営かわかります。9吊りましょう」
その日、9が吊られて夜が来て朝が来た。
◆
4日目の朝が来た。
「昨夜は誰も死にませんでした」
お知らせウインドウが画面に表示され、システムアナウンスが流れる。
<4日目>
生存者
2 民間人
4 セシリア
5 民間人
6 オルキテ
チャット欄に霊能結果と護衛先報告が並んでいた。
6番「9白」
5番「2守り」
6番「5守り」
5番は「GJが出たのだ、自分が真の狩人だ」と2番を説得しようとし、セシリアとオルキテは「人狼はあえて噛まずに2番を説得する目に賭けたのだ」と言葉を返した。
「なるほど、最後まで万が一の可能性に賭けて粘ると。ナイスファイトです」
「一緒に頑張った味方のためにも諦めるわけにはいかないのです」
話し合いの末、結局2番は5番を信じることはなかった。人狼は追放されて村人陣営が勝利したのであった。
<役職公開>
1 民間人 ハンター
2 民間人 村人
3 民間人 村人
4 セシリア 狩人
5 民間人 人狼
6 オルキテ 霊能
7 リヴェンティア 占い師
8 民間人 人狼
9 民間人 狂人
「わ、勝ててよかったデス。楽しいゲームでシタ、ありがとうな気持ち……♪」
発言できるようになったリヴェンティアがボイスチャットで発言すると、セシリアとオルキテが労った。
「全員で掴んだ勝利です、ありがとうございました」
「またゲームしよう、フレンド登録してもいい?」
人狼陣営の民間人も「同じ村で遊べてよかったです」と晴れやかな声で感想を語り、観戦者たちがエフェクトを咲かせて楽しい時間が過ぎていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
守田・緋姫子
■日輪・黒玉と行動 二人で人狼ゲームに参加したら二人とも人狼になった。 私は経験者なので役職を騙り、司会進行の乗っ取りを目論むぞ。 黒玉との繋がりを疑われないよう、あえて挑発的な言動を取る。 「その耳が怪しい!さては人狼だな!」 黒玉に言い返されてひそかに傷つく。寡黙になり、険悪なムードを演出(傷ついてるのは本当)。 さて、うまく村人を根絶やしにできるかな?
日輪・黒玉
■守田・緋姫子さんと行動。二人一緒に人狼役に
人狼ゲームは初経験のため、潜伏して手堅くばれないように動いていく方針
緋姫子さんとの関係を疑われないよう、挑発されたら食ってかかります(割と本気)
「いい加減なことを言わないでもらいたいですね。そういうそちらこそ顔色が良くないのでは? 妖しいです」ふん、と言いながら言い返して周囲に険悪さをアピールします
人狼としてはやるからには完全勝利、私は誇り高い人狼ですので
栗花落・澪
人狼初心者だけど、楽しそうなので
はーいCOします
僕霊能でーす
真っ先にCOする事で狂人を牽制
狂人の動きとして考えられるのは最初時点では3つ
霊能か占いに対抗が出る可能性
村人に紛れ込む可能性
敢えて怪しい行動をとり自分に疑惑を向けさせる事で人狼を庇う可能性
かな?
対抗はいます?
いなければ僕は白確定で大丈夫かな?
人狼に狙われる可能性が高いのは霊能か占い師
確定COさえ出来れば狩人がどちらかを護ってくれるとして…
占いと霊能の能力は早めに使っておきたいね
占い対象は昼時点で1番怪しい人
対抗がいるなら片方は狂人の可能性が高いから
判定結果が両方白じゃなければ疑ってかかるべきだね
狩人は釣らないよう注意したい
※詳細お任せ
インディゴ・クロワッサン
人狼ゲーム!ちょっとやってみたかったんだよねぇ…!
(HN:亜茨 役職:狂人)
…うん!騙りは狼さんに任せよーっと!
僕は潜伏してこの場を引っ掻き回すぞー
「はーい 3番でーす」
【礼儀作法・目立たない】を使って、序盤は大人しくして…
序盤からの【情報収集】の結果と【第六感】を照らし合わせて、狼に目星を付けたら、それとなーく狼陣営に寄っておこうかな
(ご主人さんみーつけた♪)
後半は【精神攻撃・傷口をえぐる】で村陣営を追い詰めて【恐怖を与える・誘惑】で吊られようとしようかなー(笑)
「良いのぉ?僕を吊らないと、負けちゃうかもよ?」
吊られちゃったら、クスクスと笑いながら結果を見守ろうか!
「あー 楽しい…!」
●村4
「人狼ゲーム! ちょっとやってみたかったんだよねぇ……!」
インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)がスマホ画面の自分のアバターを見つめている。
アバターの上には「亜茨」というHNと狂人の役職マークが表示されていた。
名前。
それは個人をあらわすもので、大切なものなのだろう。
藍の夜空に浮かぶ金色の月めいた瞳は微笑んだ。
「……うん! 騙りは狼さんに任せよーっと! 僕は潜伏してこの場を引っ掻き回すぞー」
夜の時間。
人狼は2匹いる。
2匹は今相談しているのだろうか……、インディゴは静かな夜に思いを馳せた。
狂人。好いではないか。そう思いながら端末の前でつまむおにぎりはホカホカとしていた。
「人狼陣営が村人陣営と同じ数になれば勝利、か」
インディゴが終盤までの自身の生存を前提にメモアプリに数字を打ちながら考える。
「1日目は9人。1人を吊る。GJが起きなければ1人が噛まれる。
2日目は7人。1人を吊る。GJが起きなければ1人が噛まれる。
3日目は5人。1人を吊る。GJが起きなければ1人が噛まれる」
3日目までに村人陣営だけが吊られており、自身が吊られず噛まれず残っていれば2人狼と狂人が3票合わることができ、数にものを言わせて村人を吊って勝利できる。
人狼の噛み対象にもならず吊り対象にもならず、人狼の目星をつけて人狼有利に進むよう立ち回らないといけない。そしてここぞという場面では自分が人狼だと思わせて主人の代わりに吊られるのだ。
「霊能だ。真っ先にCOして狂人を牽制しようかな?」
同村の栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は夜画面を見つめていた。開始前に点呼した時から自分のアバターに時折振ってくるハートや花のエフェクトが可愛らしい。
「これって観戦してる人がくれてるんだよね? お礼言いたいなあ」
顔も名前もわからない観戦者に澪は心を和ませ、微笑んだ。
(狂人の動きとして考えられるのは最初時点では3つ。
霊能か占いに対抗が出る可能性、村人に紛れ込む可能性、敢えて怪しい行動をとり自分に疑惑を向けさせる事で人狼を庇う可能性かな?
狂人は霊能結果が白、狼は霊能結果が黒。村に色情報が落とせるようにがんばろう)
「よろしくお願い、……、と、相方狼は黒玉?」
「よろしくお……って緋姫子さん?」
守田・緋姫子(電子の海より彷徨い出でし怨霊・f15154)と日輪・黒玉(日輪の子・f03556)が夜の村で人狼どうしの顔合わせをしていた。
「黒玉……確かゲーム初めてだったな」
「やるからには完全勝利を狙いたいですね」
黒玉の声には人狼の矜持が窺える。
「もちろんだ、勝ちにいこう。私は経験者だから役職を騙り出よう。私たちが味方同士だと疑われないようにあえてギスギス殴り合っていく!」
「あえて、ですね。勝利のためにお互い手加減無用です。必ず勝ちましょう」
◆
こうして初日の朝が来た。
<1日目>
生存者
1 緋姫子
2 黒玉
3 インディゴ
4 民間人
5 澪
6 民間人
7 民間人
8 民間人
9 民間人
(さて、うまく村人を根絶やしにできるかな?)
村には人狼を除くと7人の村人がいる。うち1人は狂人だ。人狼は相方の人狼が誰なのかがゲーム開始時にわかる。だが狂人と人狼間はゲーム開始時に誰が味方なのかがわからない。
(相方狼は初心者だ。私は役職を騙り真目取り争いをしながら村人の中から役職の検討をつけ、黒塗り先を考えないといけない)
「1番、占い師CO、6番白だ」
緋姫子が名乗り出て2番の黒玉を早速あやしむ。初週ならではの雑殴りだ。
「その耳が怪しい! さては人狼だな!」
ゲーム内の黒玉のアバターは本物とよく似せて愛らしく、頭にはぴょこんと動く狼耳があった。
「2番黒玉です。1番さんいい加減なことを言わないでもらいたいですね。そういうそちらこそ顔色が良くないのでは? 妖しいです」
「っ!!」
黒玉が冷ややかな声で緋姫子のアバターの顔色の悪さを指摘する。
(顔色をディスられるなんて……)
言い返された緋姫子は内心ひそかに傷ついていた。自ら怨霊を名乗る緋姫子だが、化け物と言われると傷付いてしまう繊細なところがあるのだ。
「ふん」
黒玉の声が端末から響く。
(接続切ってしまおうか)
緋姫子は本気で一瞬そう思った。もちろん、そんなことはしない。だが、盛り下がったメンタルは確実にプレイに影響を落とし、緋姫子は寡黙がちになってしまった。村は険悪な空気を感じながらも会議を進めていく。
「はーい、3番でーす」
険悪な空気の中インディゴが礼儀正しく挨拶をする。声の大きさもほどよく、喋り方も癖がなく、発言内容も当たりさわりなく1番2番のギスギスに紛れるような存在感の薄さであった。
続く4番が占いCCOして5に白を出し、5番の澪は霊能をCOする。
(なんだか雑殴りがもとで本当に喧嘩みたいになって雰囲気が悪くなっているような……大丈夫なのかな?)
澪は心配そうな目をしながらも空気をよくするために姿勢を正して笑顔をつくり、明るい声をあげた。顔が見えないから笑顔をつくる意味がないと思われるかもしれないが、そんなことはない。喋っている人の体勢や表情は声に出るのだ。
「はーいCOします。僕霊能でーす」
中性的な声がやわらかに響くと険悪だった空気がほわりと和む。
「占いが2人いるんだね。どちらかが真でどちらかが狂もしくは狼。霊能の対抗はいます? いなければ僕は白確定で大丈夫かな?
今日はグレー(役職COもしておらず、占い師に占われてもいない人)を吊って明日は占い精査から決め打ちかな。狩人さんは吊りたくないよね。あとね、あと。楽しくやりたいかな。ね!」
(うっ)
緋姫子がその一言に自分の事を言われているのだと察する。緋姫子は繊細な少女だ。ゲーム自体には慣れていて、雑殴りや考察のあら捜しでプレイヤー同士が感情をむき出しにしてしまう場面を何度も見てきた。普段ならばこんなに「気にしてしまう」ことはないのだ。殴れと言ったのは自分なのだ。殴られても作戦通りだ。
(でも、こんなに)
嫌な気持ちだ。
それは、理屈ではないのだ。
俯く瞳が前髪の下で伏せられる。
678と順番が巡る。8番は緋姫子に好意的だった。9番があやしい発言をすると全員からあやしまれて吊り位置に押された。9番は狩人COをすることで吊を逃れ、初日は7番が吊られたのだった。
そして、夜が来る。
「緋姫子さん、昼はあまり発言していなかったですね」
夜の時間、人狼の2人が相談をしていた。緋姫子はひそやかに黒玉との昼の殴り合いを気にしていたのだが、黒玉からすれば作戦を遂行しただけであり、相方の調子が揮わない理由がわからないのだ。
「……今日は、狩人を噛む。狩人は他人は守れるが自分は守れない。生かしておけば厄介だし、確実に噛める。狩人COを噛むのは当然なので噛み考察も伸びない」
「なるほど、昼に狩人がCOする状況になったのは幸運でしたね。狩人噛み了解です」
2人狼が噛み対象を合わせる。2人の標的が合わないと噛みは成立しない。共同作業だ。
「おそらくラストウルフは黒玉になる。狂人はまだわからない、間違って噛まないように気を付けて」
「必ず勝ちましょう」
「ご主人さんみーつけた♪」
インディゴは昼のうちに人狼の目星をつけていた。
「投票先で狂人アピールしていたけど気付いて貰えたかなー? まだ気付いて貰えてないかな?」
インディゴが感じ取ったのは、人狼と思われる1番と2番が互いに殴り合ってライン切りしていたことと、いまいち考察が伸びず寡黙がちだったことだ。片方は初心者かもしれない。もう片方は。
「ご主人さん調子悪いのかな、まさか本気で喧嘩してた? まさかね」
一方霊能者の澪は霊能結果を見つめていた。
「吊られた7番さんは村人陣営、白だった。COした狩人さんは今日噛まれちゃうよね」
澪は昼の間にとったメモと投票結果を見直してからチャット欄に霊能結果を打ち、送信準備をした。
◆
2日目の朝が来た。
「昨夜死んだ人は9番です」
死亡者の名が知らされる。
<2日目>
生存者
1 緋姫子
2 黒玉
3 インディゴ
4 民間人
5 澪
6 民間人
8 民間人
2日目開始と同時にチャット欄に占い結果と霊能結果が報告された。
霊能者である5番澪からは霊能結果の「7白」、占い師の4番からは「8白」占い師を名乗る1番緋姫子は少し遅れて「2白」と打つ。
発言順は1番からとなっていた。
「おはよう。2番を占って白だった。占った理由は昨日言った通りあやしいから、そして執拗に殴り返してきて敵意を強く感じたから。結果は白だったが狂人目で見ている」
「2番です。白出しされましたけどライン繋がれたくないですね、私は偽だと思っていますから」
会議が進む。村の意見は1番の緋姫子を偽目に見ている。
(1番が相方を囲いにいって2番がライン切り? うーん、ここで代わりに吊られにいってもいいけど、1人落ちてからの明日でもいいかな)
インディゴは明るい声で喋り出す。
「7番が狂人だったと思ってるよ」
会議が進み、やがて投票がされる。
(うーん、1番さんが吊られて占いが残り1。今日狼落ちるかな?)
澪が投票結果を見つて首を傾げる。
「1番に投票したのが2456、4番に投票したのが18、投票放棄3番?」
その夜、喋る相手のいない時間を黒玉は黙々と過ごしていた。
「3番は狂人ですよね?」
噛み先に選ぶのは霊能者の5番だ。選択された5番を護衛する狩人はもういない。
「黒だ……」
澪はひとり霊能結果を見つめていた。
「狼が一人吊れた。よかった、あと一人だよみんな! ……ということは、4番さんが真占い師、真占い師に白出しされた6番さんは白、4番さんをあやしんで吊ろうとしてた8番さんは結構あやしいかな」
チャット欄に「1黒」と入力して送信待機しながら、澪はその文字が村に知らされない気がしていた。
「……」
時間が過ぎていく。
澪はそっと唇を噛んだ。
真実がわかっても、ひとりでは勝てないのだ。
「残ってるご主人さんは初心者のほうだね。今日は占い師を噛むかな? 占い師を残して霊能者を噛むかな?」
(どっちでもいいよ)
インディゴは占い師を見つめていた。白を出されても黒になろう、それはきっと楽しいことだ……そう思ってわくわくしながら。
「残っているご主人さんは凄く白く見られている。頑張れば勝てるよ」
狂人の声は人狼に届くことはない。
聴こえないとわかっていながらも、インディゴは楽しそうに初心者のご主人さまに励ましの声を贈るのだった。
「占いが狂で身内切りした……霊能を噛んで結果を隠した……」
黒玉は端末の前で呟いた。その声はもう味方に届かないのだ。
迷った時に一緒に考えてくれた相方はもういない。けれど、勝負の展開を見守っていてくれる。勝利を願ってくれている。
「必ず勝ちましょう」
その声が相方に届くことはないけれど、黒玉は端末に向かって語り掛けた。昨日までずっとそうしてきたように。
そして、それぞれの夜が明ける。
◆
3日目の朝が来た。
「おはようございます」
昨夜は5番の澪が噛まれていた。
<3日目>
生存者
2 黒玉
3 インディゴ
4 民間人
6 民間人
8 民間人
チャット欄に残る送信できなかった「1黒」の2文字にせつない気持ちになりながら澪は村を見守った。
黒玉は自分の順番に備えて騙る内容を考えていた。
(霊能が噛まれた理由は、偽占い師である1番と同じ陣営の人狼にとって1番が人狼だと露見するのが問題があったのです。何故か? 1番とラインがあり、1番が人狼だと自分もあやしまれるから。ですから霊能結果を隠したのです。今日は狼を吊りましょう……そうすると村人陣営が勝つのです、と言いましょう)
(狼は3番8番どちらか)
しかし、チャット欄には残った占い師である4番の「3白」の2文字がある。
(なら、8番に……)
「今日は狼を吊らないといけません。昨日1狼が落ちているなら、今日吊って終わりです」
黒玉が説得を始める。
(けれど、今日8番を狼だと言って吊っても明日は来るんだよ、ご主人さん)
インディゴが微笑んだ。
(悪い狼は最後に吊るんだ)
「ふふふ、それじゃ負けちゃうよぉ?」
順番がまわってきたインディゴのマイクからは笑い声が響いた。これまでの様子をがらりと変わり、他者を煽り楽しむ愉快犯的な雰囲気がある。
「良いのぉ? 僕を吊らないと、負けちゃうかもよ?」
真目に見られている占い師に白出しされているインディゴを吊ろうと考える者はいなかった。もし狂人であるとしても、縄を使う余裕もない。吊らなければいけないのは人狼なのだ。しかし、不思議なことにインディゴが語るにつれて人々はインディゴが狼のような気になっていく。いや、狼じゃなくてもインディゴを吊るのだ。そうしなければこのゲームは負けてしまう。そんな気がするのだ。
「今までゲームを誤解していたみたいだね。よくあることだよ」
――吊らないと負けてしまう。
やがて、皆がそう信じた。
「??? え、えええっ? どういうことなの?」
澪がはらはらと見守るが、投票はインディゴに集まってしまったのだった。
「あー、楽しい……!」
綺麗にそろった投票結果を見て黒玉は「味方でよかった」と呟き、最後の夜に4番を噛む。
「あの狂人、2日目にアレをしてくれていたら……」
どうなっていたでしょう? 呟く黒玉は無音の夜画面に首を振る。
IFを考えるのは終わってからだ。ゲームは続いているのだから。
◆
4日目の朝が来た。
夜が来て朝が来たということは、狼が残っているということであった。
「昨夜は4番さんが噛まれましたね」
占い師はもういない。
<4日目>
生存者
2 黒玉
6 民間人
8 民間人
残った村人は2番、6番、8番だ。
「4日目が来たということは、3番は狼ではなく狂人で間違いなかったようですね。昨日はまんまとやられました……自噛みでなければやはり1番が偽で狼だったということで確定。よいのではないでしょうか」
黒玉が落ち着いた声で話すのを緋姫子が見守っていた。
「私は村人陣営です。6番さんも村人陣営ですよね? 同じ視点を見ているという確信があります」
チャット欄には6番による「ハンターCO」の文字があり、黒玉は端末の前で微笑んだ。
「6番さん、81黒、3狂。そうですね。
投票結果を見ても発言内容を振り返っても、納得がいきます。最後にメタなことを言ってしまいますが、私のプロフィールの戦歴を見てください」
戦歴を見れば、0戦0勝0負。これが初めての村であることが誰の目にも明らかだ。プロフィールはプレイ中誰でも見ることができる。プレイヤーは実は結構な割合でプロフィールを見てしまう。フレンドや有名プレイヤーならプレイ傾向もわかるし、参考にしてしまう。しかし、ゲーム中の考察でそれを誰かを信じたりあやしむ理由として挙げる者は滅多にいない。実際にそれをしてしまっていても――互いにそれが当たり前だと思っていても――あくまでもゲーム内の情報だけで戦う、というのが建前なのだ。
――初心者だ。
――接戦で味方と一緒の視点を共有できて勝利を確信し、勝利を掴めそうで喜んでいる初心者だ。
「6番さん」
端末から黒玉の声が聞こえる。
「仲間のおかげでここまで来れました。仲間のために私は勝ちたい。勝ちたいと思って、今日まで頑張って来ました。これで勝てます」
短い時間であったが、ボイスチャットで話す同村のプレイヤーたちにはこの顔が見えずどこに住んでいるかもわからない2番の少女があまり愛想がよくなく、人付き合いが良いと言えない性格なのだと理解されていた。
その少女が最後に語る「仲間」のひとことには、仲間への想いが感じられた。それは大きく6番の心を揺さぶった。
「2番さん、一緒に勝ちましょう。一緒に戦ってこられて、よかった」
6番がそう言った。8番は「待ってください、あの、騙されてますよ。ちょっと」と弁明していたがもはやノイズにしかならなかった。
「6番さん、私8番さんに票をいれます」
「2番さん、こちらも8番さんに票をいれます」
投票結果でふたりが票を合わせて8番を吊ると8番以外の全員が「これで村人陣営が勝つのだ」と思った。
「ゲーム終了。人狼陣営の勝利です」
<役職公開>
1 緋姫子 人狼
2 黒玉 人狼
3 インディゴ 狂人
4 民間人 占い師
5 澪 霊能者
6 民間人 ハンター
7 民間人 村人
8 民間人 村人
9 民間人 狩人
結果が出るとチャット欄とボイスチャットには驚きの声が溢れたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
安倍・榛爲
知的な時間を過ごす振りをします。(WIZ)」に挑戦します。 実は人狼ゲームはやった事がありません。
見た事はありますが……
最大の目的は、この行動を成功させることです。
その為なら、ある程度の怪我や些細な失敗はやむを得ないものとします。
ビスマス・テルマール
役職:狩人
事前に『情報収集』で狩人に必要な立ち振舞いに対する指針の情報を集め、基本的には村人に扮し、臨機応変に狩人とバレない様に立ち振舞いますね
パン屋の役職があれば……それをやっていたのですが、それはさておき。
護衛する対象は【占い師】【霊能者】のどちらかを状況に応じて決めましょうか
誰もカミングアウトしていないか、【占い師】か【霊能者】が対抗して二人(片方恐らく、人狼か狂人)になった場合は『第六感』たよりで決めちゃいましょうか
人狼って始めてやるんですが……こう言う腹の探り合いは慣れませんね、ですが、どこまで行けるか、やるだけやってみますか。
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(他参加者との連携希望)
フィオ姉ちゃんと同じグループに参加してみるね
役職はね…わー、『人狼』だ。
もう一人の人狼さんは、あの人か。
フィオ姉ちゃんは、村人陣営ってことなのかな?
これ、フィオ姉ちゃんを噛み殺すと後が怖いよね。だからスルーしよっと。
「ボクは普通の村人だよ。」
「えー、誰が怖い人狼だか全然わからないよ」
村人の振りをしながら、無害な村人のフリをし続けるよ
夜の間はフィオ姉ちゃん以外の人を噛み殺していくよ。
もう一人の人狼さんと意見が割れたら、相手の意見を尊重だね。
(あれ、なんかフィオ姉ちゃんから不機嫌オーラを感じる?)
結果はお任せにするよ。もう1回やってみたいな
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【POW】(連携・アドリブ可)
「スマホで人狼ゲーム。なかなか面白そうね。」
フォルセティと同じ村に参加
■役職
占い師
■行動
「迷ったら身内から占うべきよね」
<初手>
弟をこっそり占う → 結果:人狼
『!? 可愛い顔して男はみんな狼なのよね』と謎の納得。
<~中盤>
「〇〇さんは、信頼できる人だと思うわ」
占い師を思わせぶりにしつつ、もう一人の人狼が判明しない限りCOはしない。
『もー、人狼なんでしょ。早く襲ってこないかしら』
妙な期待感を持ちながら襲撃を何故か楽しみにする。
…が、指名されずに焦らされて次第に不満が!
『一体、何しているのよ』
<結果>
お任せで。
「納得できないわ。もう1回よ!」
●村5
「わー、『人狼』だ」
フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)がスマートフォンの画面を見つめている。
姉であるフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)と並んで椅子に座るフォルセティのアバターの上には5番の数字と人狼のマークが表示されている。
「宜しくお願いします」
端末から声が響く。仲間である6番の人狼がフォルセティに挨拶をしているのだ。声からすると中年の女性のようだ。
「はじめまして! よろしくお願いしまーす」
元気いっぱいのフォルセティに女性はおっとりと「楽しくすすめましょうね、私が占いでCOしますね」と提案した。声は可愛らしさをつくることもなく自然な低さでフォルセティはにっこりとした。
「やさしいお姉さんと組めて嬉しいな!」
人狼二人はすぐに打ち解け、和やかな夜を過ごしていた。
(フォルセティは同じ村人陣営かしら?)
一方のフィオリナはひとりの夜を過ごしていた。本人にしか見えない役職マークは占い師だ。
(ふたり一緒に人狼になったら夜に相談をしたりして過ごせたけど、さすがにふたりして狼が当たるのは難しいわね。せめて同じ陣営だといいけど)
姉は視線をフォルセティのアバターに固定し、指を動かした。そして、占った。
「!?」
結果は人狼陣営だった。
「可愛い顔して男はみんな狼なのよね」
姉はひとり、謎の納得をしたのであった。
「パン屋の役職があれば……それをやっていたのですが」
ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は自分のアバターの上に表示された8番の数字と狩人のマークを見つめていた。そして、ふと思いついてチャット欄に文字を打つ。この村は初心者向けの村で、雑談やネタも歓迎とされていたからだ。
「人狼ゲーム、ですか。観たことはありますが……」
安倍・榛爲(人間の陰陽師・f17632)は陰陽師協会を主催する由緒正しき陰陽師だ。幼く見える煌く瞳は真剣な感情を湛えて画面を見つめている。
「依頼の成功のため、力を尽くしましょう」
そのアバターには霊能者の役職マークが表示されていた。
◆
初日の朝が来た。
<1日目>
生存者
1 民間人
2 民間人
3 民間人
4 フィオリナ
5 フォルセティ
6 民間人
7 民間人
8 ビスマス
9 榛爲
丸く並んで椅子に座るアバターの順にひとりずつ持ち時間を使って挨拶をしていく。発言順は4番のフィオリナからだったが、フィオリナはCOをしなかった。
(人狼はふたりだから、フィオ姉ちゃんは村人陣営だよね。あ、でも狂人の可能性もあるんだなー)
フォルセティがふわふわのマシュマロをつまみながら発言を聞き、ジュースを飲んでから元気いっぱいに挨拶をする。声からわかるお子様感に6番がチャットで「楽しくゲームしましょう」と打ち、同村のメンバーは好意的なチャットを次々と打った。
(この村は、良い人が多いみたいですね)
ビスマスは夜のターンのうちにチャット欄に入力だけして送信するかどうかを迷っていた文章を送信した。
「パン屋さんがパンを焼きました」
今回の村にはいないはずのパン屋のロールプレイだ。
「パン屋さんがいるw」
「この村、パンが食べられるぞ」
チャットはネタをネタと受け止めて楽しくリアクションを返してくれた。
「楽しそうな村でよかったです」
ビスマスは微笑んだ。
「6番、占いCOで4番さんが白でした。私は小学生の子持ちのお母さんです」
6番が占いを騙り出る。占い先は4番のフィオリナだ。
(占い師は人狼か狂人ね。白だと言ってもらえたし、初日は潜伏できそうね)
フィオリナが安堵する。真占いが潜伏をするのは難しい選択なのだ。吊られてはいけないし、噛まれてもいけない。偽の占い師が村に本物だと思われた状態で後から出た時に自分が本物であると論理的に語り、他の村人を説得しないといけない。
(さあ、噛まれないようにしながらもう1人の狼を見付けるわよ……でも、か、噛まれてもいいかも)
占い師としては噛まれたくない。それなのに、姉としては「夜に弟に襲われる」というシチュエーションにほんのすこしドキドキしてしまう。姉心は複雑だった。
そんな姉心をよそに村人たちは話し続けている。
「7番、村人陣営で大学生です。一昨日チャリが盗まれてバイトに行く時タクシー使ったんですけど、バイト代5000円なのにタクシー往復で2500円かかってはあ、ほんと、もう。しかも家に帰ったら、あ、チャリが戻ってて、次の日乗れると思ったらまた盗まれてるんですよ。皆さんチャリには鍵をかけましょう、というのが僕からの進行論です、あ、時間追加しますね」
7番が課金して発言時間を延長している。
「延長するなw」
「www」
チャット欄に草が生えていた。
「9番、榛爲です。村人陣営の勝利のために頑張ります」
自分の番がきて榛爲は丁寧に言葉を紡ぐ。初心者ながらその声は落ち着いており、不慣れさを感じさせない。マイペースな性分なのだ。
「占い師は現在1名出ているようですね。もしこの後出てくれば、どちらかが人外の騙りとなりますね。出て来なければ真で確定でしょうか。
狩人さんはできるだけCOなさらず、護衛をしていただけると嬉しいです。占い師が1名であればハンターさんはCOをして、2名以上ならば潜伏して黒出し抑制が望ましいでしょうか」
普段は無口な榛爲は雑談やネタこそ言わないものの、必要なことをきちんと言って自分の持ち時間を使い切った。
榛爲の声は誠実そうな響きを伴い、他の村人からするととても村のために発言している印象があった。
やがて1巡目の最終発言者である3番が占いCCOをして占い先が8番、占い結果は白だったと告げ、占い師は2人になったのだった。
(占いに人外が2人、フォルセティが狼だから残りの狼と狂人が出ているのね)
フィオリナは落ち着いてメモを取る。なら、フィオリナ目線で残りの村人は全員間違いなく村人陣営なのだ。けれど、今の段階でそれは言えない。言うのは明日にしようとフィオリナは決めていた。
(今日は申し訳ないけど民意に従って村人を吊ることになるわね。フォルセティを吊り位置にあげることもできるけど……)
複雑な姉心と白出しされていることが影響し、フィオリナのプレイが若干潜伏狂人っぽくなっていく。占い師が2人出ており、村人は皆どちらかが真でどちらかが偽だと考えている。まさか真の占い師が潜伏しているとは思いもしなかった。
「あやしまれているけど、2番さんは信頼できる人だと思うわ」
「ボクは普通の村人だよー」
話し合いの結果、7番が吊られて夜が来た。
「雰囲気の良い村でよかったですね」
お母さん狼がそう言ってフォルセティと相談する。
「4番のフィオリナさんは狂人っぽさがあったかしら。それとなくフォルセティさんが吊られないように擁護してくれていましたね」
「4番はお姉ちゃんなんだー」
「まあ、そうなの?」
「フィオ姉ちゃんを噛み殺すと後が怖いから、あんまり噛みたくないやー」
「あら、じゃあお姉ちゃんを噛むのはやめておきましょうね」
「7番さんの霊能結果は村人陣営、白でしたね」
榛爲が霊能結果を確認していた。
「明日霊能結果を知らせるのですね」
慣れないながらも予習はしっかりとしてきた榛爲はチャット欄に霊能結果を準備する。
(楽しくゲームをしている人々……)
榛爲は艶やかに揺れる髪をそっと手櫛で整えた。スマートフォンの脇に置かれた湯呑の中ではあたたかな緑茶が揺れ、白い湯気をほわほわとさせている。
(守らないといけません)
自身が危険な目にあっても、負傷しても。
榛爲は人々のため、戦う決意を固めていた。
(パン屋さんロールプレイが好意的に受け止めてもらえて、本当に良い村ですね)
ビスマスは昼の雑談チャットをのんびりと見返しながら護衛先を考えていた。
「占い師さんが二人、霊能者さんは潜伏。真目の高いほうをお守りしましょうか、それとも……いえ、ここは占いを守りましょう」
COしている占い師は狼と狂なのだが、ビスマスにはそれはわからない。初日噛みなしで必ず真占いがいる村でCOした2人ともが人外というのはレアケースだ。ビスマスは「どちらかが本物、どちらかが偽物」と考えて6番を護衛した。
「さあ、狼が確定するわよ」
フィオリナは二人の占い師のうち片方を占うことにしていた。
「どちらにしようかしら。3番にしようかしら」
結果は村人陣営と出た。
「この村はスライド禁止。私が真の占い師。占い師とCOした3番6番は偽で、5番フォルセティが狼とわかっているから占い師を騙っているのは狼狂よ。3番は村人陣営ということは、3番が狂人で6番が狼ね」
それにしても、とフィオリナは弟にじりじりとする。
「もー、人狼なんでしょ。早く襲ってこないかしら」
占い師としては噛まれるわけにはいかないのだが、複雑な姉心である。
◆
「昨夜死んだのは、2番さんです」
2日目の朝、システム音声がそう告げた。
<2日目>
生存者
1 民間人
3 民間人
4 フィオリナ
5 フォルセティ
6 民間人
8 ビスマス
9 榛爲
「……」
無言の時間。ハンターが空砲を打ったのだ。噛まれた2番がハンターだったということがシステム的に証明され、かつハンターは誰も道連れにしなかった。誰が人狼陣営かの確証がない状態で迂闊に撃って村人陣営を減らすリスクを回避したのだ。
システム的に、ハンターが打つまでの間にチャットで占い結果や霊能結果は知らせることができる。
(情報を元にあやしい対象を打てるなら、ハンターという役職はかなり強いのではないでしょうか?)
榛爲が冷静にゲームバランスを訝しむ。だが、チャット欄にはハンターの空砲を待ってから占い結果と霊能結果が打ち込まれた。プレイヤーどうしが作ったローカルルールだ。ゲームを楽しむプレイヤーたちが暗黙の了解として、「お互いの陣営が良い勝負をして楽しめるように」と結果を発砲後に出すことにしており、もし先に結果を出してしまった場合でもハンターは見なかったことにするのが主流なのだ。
「2番さんはハンターだったようですね」
3番の占い師がそう言った。ビスマスは「やはり良い村です」と呟きながらチャット欄に「パン屋さんがパンを焼きました」と発言を出した。
「パン屋さんも健在ですね。みんなで美味しいパンを食べながら考察を進めましょう」
ボイスチャットでパン屋ロールプレイにのっかりながら会議が進んでいく。
「チャットで出ている報告は、6番占い師が5白、3番占い師が5白ね」
フィオリナがチャット欄に出ている占い結果を読み上げる。
(あれ? ボク黒なのに。3番の占い師さんって偽物の占い師なのかな? でも、6番の占い師も偽物なんだけど。あれー?)
フォルセティが眼をまるくする。端末からは姉の声が続いていた。
「……6番は相方狼を囲おうとして、3番は狼を囲おうとしたのね」
フィオリナがそう言ってなまあたたかい目をフォルセティのアバターに向ける。愛らしく社交的な弟は、リアルでも周囲の大人たちに甘やかされちやほやされがちだ。
(ゲームでもそうなのね)
「占いCCO、狼を2人とも見つけたわ」
フィオリナが潜伏理由と2日間の占い結果を報告するとフォルセティはびっくりして目をぱちぱちとさせた。
「6番さんは騙りに出た占い師。真占いが潜伏していたから発言順が最後だった3番狂人さんは平和村(占い師が1人しかいない村人有利な村)を阻止するために対抗に出てきたのよ。私目線では2人とも人外で、5番に狼も見つかっていたから夜に偽占い師2人のどちらかを占えば黒が見つかると思って、片白も貰っていたし、噛まれる心配だけはあったけど潜伏を続けたの」
「えー、ボクは狼じゃないよ。えー、誰が怖い人狼だか全然わからないよ」
「うーん、潜伏と占いの筋も通っていて、真に思えるような……」
ビスマスは戸惑いながら狩人COをした。
「私は狩人です。昨夜は6番さんを護衛していたのですけど、占い師の3人目が出てきたのですね。しかし、36の両占い師さんが確白にした5番さんが黒だと仰るなら、今日吊って明日色を見るのはいかがでしょうか? 霊能さんCOお願いしてもいいですか?」
(霊能結果を必ず期待できるなら、フォルセティさんを吊ってみたい)
ビスマスはそう考えたのだ。
榛爲がビスマスの声をききながら考える。
(ビスマスさんが噛まれるか、狙われても護衛してくれると考えてよさそうですね)
「霊能COです」
榛爲は名乗り出た。
「もしフィオリナさんが真の占い師なら、見つかっている狼2人を連続で吊って勝利できますね」
もしフィオリナさんが人外の騙りの可能性を考えるなら?)
「私は5番さん吊りを推します。吊った結果5番さんが黒ならフィオリナさんを真と決めて6番さん吊り。5番さんが白なら2狼が残っていて、4番の偽が確定。346に2狼、6番さんが4番さんに白出ししているので6番さんが黒とみます」
投票結果は5番に票が集まった。
(わー、吊られちゃったよ。やっぱりフィオ姉ちゃんは怖いや)
投票されて吊られてしまった弟のアバターを見ながらフィオリナは不満を抱えていた。
「一体、何しているのよ」
吊るされた原因は間違いなく姉が占い師として仕事をした結果なのだが、複雑な姉心であった。
3日目の朝、人狼はビスマスを噛んでいた。
<3日目>
生存者
1 民間人
3 民間人
4 フィオリナ
6 民間人
9 榛爲
「もう美味しいパンは食べられません」
1番がチャットにそう書いた。
発言できなくなったビスマスはそれを見て「やはり良い村でした」と呟き、チャット欄に書かれた榛爲による「5黒」の知らせに村人の勝利を確信する。
3日目、村人たちは6番を吊り、ゲームは村人陣営の勝利に終わったのだった。
<役職公開>
1 民間人 村人
2 民間人 ハンター
3 民間人 狂人
4 フィオリナ 占い師
5 フォルセティ 人狼
6 民間人 人狼
7 民間人 村人
8 ビスマス 狩人
9 榛爲 霊能者
「ちぇー、負けちゃったよー」
ゲームが終わりフォルセティが口をとがらせていると、フィオリナがフォルセティに個人メッセージを送ってきた。
「納得できないわ。全員でもう1回よ!」
お楽しみの時間はまだまだ続くようだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏡島・嵐
ええと、どういうゲームなんだっけ。
なになに……人狼になったら嘘ついて村人のふりをする、村人だったら嘘をついてる人狼を見破る……かぁ。
なんだか難しそうだけど、考えるよりやってみた方が早いか。
〈情報収集〉と〈第六感〉が役に立つかな?
うーん、何回やってもほとんど村人になるなあ。
それに「おまえはナチュラルに村っぽい言動だから占わなくても絶対村人」って信頼されるのはいいんだけど、すぐ襲撃されて脱落するから、勝利に貢献出来てるんだか出来てねえんだか実感が湧かねえや。
勝率は五分五分よりは多いから、全然役に立ってねえってことは無いと思うんだけどな。
たまには役職もやってみてえなー……。
あ、また村人だ。
宮入・マイ
連携・アドリブ歓迎っス!
ゲームと聞いてマイちゃんが黙っていられるはずがないっス!
何を隠そうこのマイちゃん面白いことに目がないと巷で噂になっているっスよ!
そして…今回のお題は…人狼ゲームっス!
やったことないっスね。
…まぁでも初めてのゲームでも楽しむすべをマイちゃんは知ってるっス!
それは…とにかく上級者に聞くことっス!
ゲームに慣れたもの…特にこういうタイプのゲームだと上級者は初心者に優しく教えたがる…マイちゃんにも覚えがあるっス。
というわけでーマイちゃん超超超初心者なんっスけど誰か教えてほしいっス~!
仲間外れにしないでっス~!
きゃっきゃ。
アンネリーゼ・ディンドルフ
◎WIZ
アンネリーゼは今日もおいしいオブリビオン料理を求め……
今回は違うらしい
「人狼ゲームですか。これは興味深いですね」
与えられた陣営を勝利に導くために頭を使うゲームのようだ
いざ参加してみると、なんともレアなケースに巡り合った
人狼2人、狂人、占い師、霊能者、狩人、ハンターが初日に「占い師」と宣言
占い師が7人
つまり、それ以外の2人は村人確定となった
誰を追放するか議論の結果、狂人が追放となる
狩人は村人の1人を守ったが、霊能者が噛まれる
次の日に人狼2人が「本当は霊能者でした」と宣言
占い師はハンターを占って白結果を出す
占い師3人、霊能者2人
その後密かにユーベルコードを使い、なんやかんやで何とか勝利した
アリス・セカンドカラー
おまかせプレイング。
希望役職は人狼。
アストラルプロジェクションリーリングで真占を見透して、偽占として早業/先制攻撃で真占を黒判定。
で、真占を残しつつ狩人を噛む機会をじっと待つわー。
後は如何にローラーされないように立ち回るかね。
カイム・クローバー
人狼ゲーム。それは毎夜起こされる殺戮。消えていく人々。醜い争い、信じた人の正体が人に化けた魔物だったら―お前はそれを殺せるか?
ハンターか狩人が良いなー。(なんて言いつつ、村人引いて軽い溜息)
村人を引いた訳だが…自信満々に発言はしていくぜ。ゲームだし、遊ぶなら楽しくやらなきゃ損だろ?
UCを使って余裕の口調は崩さないまま。証拠なんて全くない。ハッキリ言って出鱈目だらけ。だが、それを思わせない口調。当てずっぽうで人狼らしい人を指定したり。
俺が吊るし上げられるなら、良いのかい?俺を指定して。万に一つも勝機が無くなるぜ?とか言ってみたり。
(でも吊るされる)ぎゃぁぁ!覚えとけよ、○番!次は負けねぇー!!
●村6
オブリビオンは食べ物である。
アンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)は常々そう思っていた。オブリビオン料理を求め、麗しの歌姫は日々お腹を鳴らして戦っているのだ。
「人狼ゲームですか。これは興味深いですね」
そんなアンネリーゼが見つめるのは、スマートフォンの画面だった。
<1日目>
生存者
1 アンネリーゼ
2 民間人
3 民間人
4 マイ
5 民間人
6 アリス
7 民間人
8 カイム
9 嵐
「これは、頭を使うゲーム……ですよね」
自分のアバターの上に表示されている1番の番号と占い師の役職マークを見ながらアンネリーゼが呟いた。アンネリーゼは初日、ひとりひとりの発言をききながらCOされた役職をメモしていた。
そして、9人中7人の役職が占い師となっていた。
「占い師CO、占い結果は9番さんが白でした」
「やったことないっスけど、楽しいっス! 占い師を騙るゲームっス?」
発言中の宮入・マイ(奇妙なり宮入マイ・f20801)はきゃっきゃと楽しそうな声をあげている。
「マイちゃん超超超初心者なんっスけど誰か教えてほしいっス~! 仲間外れにしないでっス~!」
チャット欄に「初心者CO把握」という文字が出ていた。
「マイちゃん、面白いこと大好きっス!」
溌溂とした声できゃらきゃらと喋るマイは民間人にしてみれば「ゲーム初心者の女子」だ。チャット欄に他プレイヤーからのネタか本気かわからない「LIMEやってる? どこ住み?」という発言が打たれていた。同時に「初心者は吊ろう」という発言が続く。どちらもネタなのか本気なのかはわからないがマイは元気よく「マイちゃんほんとはハンターっスけどみんなが占い師になってるからマイちゃんも占い師っス! マイちゃん発砲してみたいっス! ゲームのチュートリアルで「このゲームのハンターはゲームの決着をつける発砲ができます」とあったの見た時からハンター楽しそうって思ってたっス!」と堂々と語り終えたのであった。
順番に添ってひとりひとりが発言をする中、5番はマイクの向こうに複数の女子の声を響かせて「今修学旅行中でーす!」とアピールした。
6番のアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は「1番さん黒だったわ」と自信満々に言った。
「わたし、リアルで占い師みたいな能力持ちなのよね……という理由なんだけど、透けちゃったわ。当ててみせるから全員きいて。
占い師COの1番さんは人狼、占い師COの2番さんは霊能者よ。占い師COの3番さんは狩人ね。占い師COの4番さんはハンター。占い師COの5番さんは狂人。7番は人狼。8番9番は話すまでもなく村人。私はじ……占い師よ」
アリスはアストラルプロジェクションリーリングでさくっと役職を見透かしたのだ。そこに躊躇いはなかった。
チャット欄に文字が一斉に打たれる。
「今じ……って言った」
「じ……」
「じ?」
「人狼把握」
7番はというと、「アミロ・レイです。今夜はルルァに占ってもらいます。ジャアはどこだ! これは地声です」とアニメキャラの真似をした。なかなかの高クオリティだ。
(この村はネタ村か?)
8番のカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は空気を感じ取り、画面に映るマイクに向かって喋り始めた。
「人狼ゲーム。それは毎夜起こされる殺戮。消えていく人々。醜い争い、信じた人の正体が人に化けた魔物だったら――お前はそれを殺せるか?」
一部では「乙女ゲーカイム」という異名を持つ彼のイケボに修学旅行生とアミロの嫁が黄色い悲鳴をあげている報告がチャットに寄せられた。
「声優さんですか?」
「かっこいい!」
「みなさん、ぼくのときには声優と言わなかったのにおかしいです!」
アミロ・レイが拗ねている。
「占い結果報告をまとめるぜ。1番2白、2番3白、3番4白、4番5白、5番6白、7番8白……全員白だ。この村平和だな!」
「私は黒を出したわよ」
アリスがチャットで指摘する。
「把握漏れ黒い」
「把握漏れ」
(あ、隣カイムだ)
「なんだろう。ぐだぐだになってる、よな」
9番の鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は手元のメモにある8番に「カイム 把握漏れつっこまれる」と名前を書きながら状況を整理した。
「9番、村人陣営の嵐だ。誰も言わないからおれが言うんだけど、全員勝つために真面目にプレイした結果占い師が7人になったんだよな……だよな? うーん。正直占い師が7人出ていて何をどう推理していいかわかんねえ。いや、たぶん4番はハンターなんだろうけど」
チャットにはマイによる「占い師っス!」という発言が出ていた。
「あー、うん。占い師。わかった……」
ここまでの発言でアンネリーゼは「9番さんは人狼に最終日まで残されるタイプ」とメモを取った。
順番が巡る。
「ここはスライド(役職COした後で撤回し、本当の役職をCOすること)が禁止ではない村ですよね、スライドする方はいます?」
アンネリーゼが確認するが誰も反応しなかった。
(……逆村でもないですよね。身内村でしょうか)
「2巡目ですし、吊り位置を……そうですね。発言の内容から6番でいいと思うのですが、いかがでしょうか」
投票が始まるとなぜか7番が追放された。
「え? ……え? ナンデ?」
7番はそんな遺言を残して死んでいった。
「さらば。7番。犠牲は無駄にしないわ」
アリスはしめしめと微笑んだ。
夜画面に切り替わる直前、チャット欄には2番3番による「狂CO」の文字が並んだ。少し遅れて4番5番6番8番が「狂CO」と発言を真似する。
「すげーなこの村、狂人が5人いるのか」
嵐が夜画面の中でルールを再確認していた。
「人狼になったら嘘ついて村人のふりをする、村人だったら嘘をついてる人狼を見破る。村人が嘘をついていないか? 4番なんて絶対ハンターだし」
「なんだこの村は?」
一方カイムは笑っていた。
「ハンターか狩人がやりたかったなー。……とはいえ、せっかくのゲームだ。なんか変な村みたいだが楽しむぜ」
ずらりと並ぶ狂COのチャットの文字列。これは噛みを回避しようとしたのだろう。カイムもそれに気づいて狂COをしたのだ。
「こんなにCOされても人狼も困るだろうなあ」
「楽しいっス!! 明日はカラオケ考察もしてみたいっス!」
マイは初日を振り返ってニコニコしている。
「はやく撃ちたいっス!! ばきゅーん! ばーん!」
「アピールされても透けてるから噛むわよ」
マイがはしゃいでいる時、アリスは淡々と2番を噛んでいた。
「はい、霊能者アウトー」
「昨日役職予想したけど村人陣営にはどこまで信じられてるのかしら? 人狼以外本当なんだけど」
「リアル占い師さんってほんとですかー? 霊能者アウトー! きゃー」
人狼陣営の相談が盛り上がっていた。
◆
そして、2日目の朝が来た。
「昨夜死んだのは2番です」
システムボイスが2番が人狼に噛まれてしまったと周知する。
<2日目>
生存者
1 アンネリーゼ
3 民間人
4 マイ
5 民間人
6 アリス
8 カイム
9 嵐
そして、一斉にチャット欄に文字が流れた。まず1番が「3白」と発言し、ほぼ同時に3番が「狩人CO」4番が「ハンターCO!」5番が「霊能CO 7黒」6番が「霊能CO 7白」。
「なんだあ?」
嵐がぽかんとする中、1番のアンネリーゼが「くぅ」と腹の音をマイク越しに鳴らしながら話し始めた。
「おはようございます。一気にスライドが……ええと? まず、私は3番を占って白でした……占い師は私ひとりになったようですね? 3番さんが狩人、4番さんがハンター、5番さん6番さんが霊能で霊能結果が白黒パンダ……」
マイがきゃっきゃとチャット欄に「マイちゃんハンターっス!」と打つと他のメンバーが「しってる」「しってた」とチャットを返した。
自分の番がきてマイが楽しそうに「撃つっス~♪ 撃つっス~♪」と歌うと5番の順番で修学旅行生が流行りのボカロ曲をアレンジした歌考察を披露し、6番アリスは「今日で終わらせてね、あなたならできるわ」とヒロインのようなオーラを見せていた。
3番が急に昨日死んだ7番のキャラを引き継ぎ、「ルルァが教えてくれました。実は、狩人だったのだと! 俺は占いをやめるぞルルァー!」と謎のキャラクターに進化した。3番の嫁が笑い混じりに「あなたならできるわ」と声を入れている。
「3番キャラ変把握」
「3番嫁潜伏把握」
「潜伏嫁対抗CO」
チャット欄のリアクションを見てアンネリーゼは「このゲームではありふれた風景なのでしょうか」と呟き、腹を鳴らした。
「うん、この村はネタ村だな。完全に把握した」
8番のカイムは自信満々に発言をしていく。
「ネタ村でも手は抜かないぜ。今日は占い1霊能2狩人ハンターのフルオープンになったってことだよな。もうわかってるんだ。俺の推理を披露するからきいてくれ」
チャット欄には「スライドなし?」「狂?」と書かれていた。カイムは少し迷って「す」とチャットしてから演説を再開した。
「まず、ハンターが真占いを一人にさせようとしてスライド前提で騙り出た。これが事の発端だ!
次に真占いが出てきた。これは当たり前だな。そして、真占い師が隣の狼に黒を出した!
そして、狼が焦って占いに出て隣の狂人に黒を出した!
すると、狂人は黒出しした占いがご主人だと思って主人を守るべく占いに出て隣に黒を出した! そしてよくわからないが何か思うところがあって――たぶんネタで――次の奴が占いに出て黒を出した! 黒を出された先が狼で、「この流れはネタに乗じて乗り切ろう」と占い師に出て黒を」
流暢に流れる言葉は説得力に満ちていた。
「でも、ハンターがCOしたのは最期の方で、占い結果は6番が黒出ししたけど残りは全員白だったんだよな」
嵐がぽつりとつっこみをいれた。明らかにでたらめだ。それなのに皆は「そうだったのか!」「謎は全て解けた!」とチャットをしている。半分はネタなのかもしれないが。
「チャットで指摘してみよう。全員で間違った方向に進んじまうとやばそうだし」
嵐が冷静な指摘をチャットに打つと発言時間が残っていたカイムが反論した。
「狼は嵐だ!!」
「なんでだよ!? じゃあミスリード誘導したカイムが狼」
チャット欄には草が生えていた。
「俺が吊るすだって? 良いのかい? 俺を指定して。万に一つも勝機が無くなるぜ? ……ぎゃぁぁ! 覚えとけよー嵐! 次は負けねぇー!!」
遺言を残してカイムはその日吊られていったのだった。
「今日は狂COする人がいないっスね!」
マイはチャット欄を見つめて「狂CO」の文字を消した。
「マイちゃん理由わかるっスよ! 狂人のふりしなくても噛まれないからっス!」
(でも、みんなでCOするの楽しかったからまたやりたいっス)
マイはそう思いながら夜を過ごした。
「狩人を噛むわよ」
アリスがそう言った。
相談先の相方狼はきゃーきゃーわあわあ言っていてとても賑やかだった。
「先生が来た! みんなたぬき!」
「たぬき……? 寝たふりのことかしら」
夜の時間が過ぎていく。
「……制限時間迫ってるけど誰かスマホ操作できるかしら? 大丈夫?」
◆
3日目の朝が来た。
「昨夜死んだのは3番です」
システム音声が噛まれた人を教えてくれる。
<3日目>
生存者
1 アンネリーゼ
4 マイ
5 民間人
6 アリス
9 嵐
チャット欄には1番アンネリーゼによる「6黒」という占い報告と、5番霊能者による「8黒」6番アリスによる「8白」が並んでいた。
アリスが胸を撫でおろした。相方狼に先生襲来というトラブルが舞い降りて人狼人狼はピンチだったのだ。
アンネリーゼは真占いとして信じられていた。
「みなさん、今日は6番を吊ってください。6番が狼です。そして、5番さんが真なら今日で終わりだと思ったのですが、5番さん破綻しています」
「そういえば6番って初日から人狼だとわかってたような気がしないでもない」
(残り5人になったなあ。6が狼なら今日で終わるのかな?)
嵐は指定通りに6番に投票した。
(でも、5番が霊能結果を8黒って言ってるんだよな。カイム人狼だったかー……カイム人狼だったのか?)
このネタ村という特殊な状況ではそれも「ある」のかもしれない、と嵐は考えた。
(でも、普通の村ならおかしい気がするんだけどな? いや、ここは変な村だけど。普通は、村の利益にならない行動を村人陣営はしないんだ。だから、役職者が騙りに出ることはあっても役職の無い村人は騙らないはず……)
嵐は民間人的に表現するなら「霊感がある」少年だ。それもあり、どうもカイムが人狼だったという結果に違和感を覚えてしまうのだった。そして、その意見をボイスチャットで語るとアンネリーゼが丁寧に「5番さんの霊能結果が今日までに狼2人死んだことになっているので6番さんの相方狼は5番さんです」と説明するのであった。
「よくわかんないっスけど、了解っス! ところで発砲っていつできるっス? マイちゃん撃ちたいっス」
6番が追放され、夜が来た。
「明日5番投票して終わりみたいだなー」
発言できない状態で見守っていたカイムが勝ち確に安堵する。
「撃ちたいっス! マイちゃん撃ちたいっス! 狼さん噛んでほしいっス!」
そんな中、マイがわくわくと画面を見ていた。
「あっ、誰を撃つか考えてなかったっス。うーん」
なお、修学旅行中の5番は同じ部屋の女子どうしでワイワイと相談をしていた。
「きゃー、ちょっとどうしよう」
「1番いこ1番!」
「初心者ハンターちゃん噛もうよ、ずっと発砲したがってたじゃん撃たせて終わろうよ」
「他撃ってくれたら勝てるかも」
「賭けよう賭けよう」
朝が来て、マイが噛まれていた。
「待ってたっス!!」
マイの画面にウインドウが出ている。
「ハンターのあなたが死にました。発砲しますか? やめる 決定」
マイは元気よく決定を押す。
ちっ、ちっ、ちっ、と時計のカウントダウンが効果音付きで流れている。制限時間内に誰かを選べば選んだ人を道連れにできるのだ。逆に、誰も選ばなければ「空砲」となり、誰も道連れにせず死ぬことになる。
(誰を撃つんだ……?)
一同が見守る中、マイは5番を選んだ。
「狼が5番って言ってたっス!」
5番には舐められていたが、マイはしっかり把握していたのだ。
「【5】番に発砲します やめる 決定」
マイの画面にウインドウが出ている。
「バーン!!」
マイは満面の笑みを浮かべて決定を押した。
バーン!
効果音が鳴り響く。
5番が道連れにされ、その瞬間ゲームは終了した。
「ゲーム終了。村人陣営の勝利です」
「勝ったっス!! マイちゃんの発砲で勝ったっス!!」
<役職公開>
1 アンネリーゼ 占い師
2 民間人 霊能者
3 民間人 狩人
4 マイ ハンター
5 民間人 人狼
6 アリス 人狼
7 民間人 狂人
8 カイム 村人
9 嵐 村人
「楽しかったです、またよろしくお願いしますね」
アンネリーゼがマイクから腹の音を鳴らしながら挨拶をした。
「ぐぬぬ。最後惜しかったわー」
アリスがそう言って修学旅行生に「早く寝るのよ」とお姉さんぶった声をかけている。
「嵐、もう1ゲームいこうぜ」
「マイちゃんも行くっス!」
「おれ何回やってもほとんど村人になるんだよなあ。それに「おまえはナチュラルに村っぽい言動だから占わなくても絶対村人」って信頼されるのはいいんだけど、すぐ襲撃されて脱落するから、勝利に貢献出来てるんだか出来てねえんだか実感が湧かねえや。
勝率は五分五分よりは多いから、全然役に立ってねえってことは無いと思うんだけどな」
嵐がそう呟くとアンネリーゼは「とても頼もしい村人さんでしたよ」と声を返した。
変な村のプレイヤーたちは和やかに感想を語り合い、しばらくして気付くとカラオケ大会になっていた。
「嵐さん歌い手さんですか? 動画アップしてもいいですか?」
「えっ、動画?」
「マイちゃんの歌も動画にしてほしいっス!」
「最後みんなで合唱して終わりませんかー?」
それぞれのマイクから歌声が響き、楽しい時間が過ぎていく……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『ゲーム大会』
|
POW : 真面目にプレイしたり警護をする。
SPD : ネタに走ったりイカサマしたり会場を歩き回って調査する。
WIZ : 会場内の人々の会話や試合ログを分析して情報収集する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ゲーム大会に行こう!
人狼ゲームを楽しむ猟兵たちは、ふとゲーム内フレンドメールに気が付いた。
人狼陣営でプレイした猟兵には、以下の文章。
「人狼陣営の諸君!
現代社会に嫌気が差していないか? 実は、我々はリアルでも闇に潜んで村人たちを食い殺してやろうと計画している。
ここ数日開催されているKYゲーム大会に人狼ゲームエリアが設けられている。ぜひ集まってくれたまえ」
村人陣営でプレイしていた猟兵には以下の文章。
「村人陣営のみなさん、気を付けてください。
ここ数日開催されているKYゲーム大会に人狼ゲームエリアが設けられているのですが、そこでマキナ教の狂信者による事件が起きます。ゲーム大会に参加しないようにしてください」
「このメールは一体?」
猟兵たちは、UDCを倒すために依頼に参加していた。
「ゲーム大会でマキナ教の狂信者による事件とありますが、それがUDCでしょうか?」
「この中にマキナ教に詳しい方はいますか? 情報があれば共有してください」
相談を交わしたり交わさなかったりしながら、猟兵たちはゲーム大会に参加したりしなかったりするのであった!
●現地の会場からお届けします
そんなわけで、猟兵たちはゲーム大会に遊びに来ていた。
会場は広かった。
「参加者募集中でーす!」
細長いテーブルを囲んで椅子が置かれた「ゲーム卓」が幾つも用意されている。プレイヤーやゲームマスターが椅子に座り、周囲に観戦者が集まっていた。
「クレープありますよ~」
「タコヤキありますよ~」
軽食を提供する店や飲食するための専用スペースもある。
コスプレをした人が散見される。
「ラーメン食べたい」
ラーメンもある。
「タピオカ」
タピオカも、ある!
💠2章の進行につきまして
1章ご参加ありがとうございました!
2章のプレイングは【1月30日(木)8時31分から2月1日(土)8時30分まで】の期間に送ってくださるととても嬉しいです。
(状況しだいで、また再送をお願いするかもしれません。よろしくお願いいたします!)
2章は自由度の高い章となっております。
人狼ゲームを遊びたい方は、もう一回遊べます。2章で遊ぶ場合は現地会場での「対面」でのゲームとなります。
その場合は1章と同じ感じの「9人村」で「パターン1:村人3人、人狼2人、霊能者1人、占い師1人、狩人1人、狂人1人」、1章と違う点は「ハンター」がいないという点です。
人狼ゲームを遊ぶ以外の行動もできます。会場を警備したり、会場内で民間人や猟兵仲間と交流したり、飲食を楽しんだり(こういうものを食べる、飲む、と自由に書いてください)、ゲームを観戦したりできます。
ゲームを遊ぶ時も、会場をうろうろする時も、1章に出てきた民間人を「1章で同村だった〇番さん」「何番の村にいた〇番さん」と指定するとリアルで再会することができます。「仲良く遊んだ〇番の人ともう一回お話したい」、変なことをしていた〇番の人はどんな人だったんだろう」、と気になる時は指定してみてください。
マキナ教に関する知識のあるキャラクター様(過去に依頼で遭遇したことがあるキャラクター様や宿敵主の方)が「マキナ教知ってるぞ! こういう敵だった!」と敵の目的や特徴を説明するプレイングを書くと、その情報が猟兵仲間に共有された扱いになります。
それでは、楽しいプレイングをお待ちしております!
どうぞよろしくお願いいたします。
(こっそり訂正)
(誤)「パターン1:村人3人、人狼2人、霊能者1人、占い師1人、狩人1人、狂人1人」→(正)「村人3人、人狼2人、霊能者1人、占い師1人、狩人1人、狂人1人」です。(複数パターン用意しようとしていた時のなごりでした。1パターンだけなのでご了承ください……!)
宮入・マイ
連携・アドリブ歓迎っス!
なんかよくわかんないメールだったっスけどー…ゲーム大会って聞いてやってきちゃったっス!
ついでにタピオカも!
人狼はこの前ので一通り遊んだっスから~今日は見にまわるっス!
買い食いしながらぷらぷら歩き回って~適当に話しかけたり一口貰ったりー…なんか面白いことを探すっスよ!
そして…ゲームに口出しをしていくっス!
何を隠そうマイちゃんはもはや人狼のプロプレイヤーと言っても過言ではない存在…前の人をマネてCOしたりハンターがゲームを決めることを知っているっス!
迷える子羊を導かねばならないっス~!
困ったらマイちゃんに任せるっスよ~!
きゃっきゃ。
アリス・セカンドカラー
おまかせプレイング☆
一章で同村だった5番の修学旅行生ちゃんとさらに7番のアミロ・レイさんと再会。
ネタ村面白かったわねぇ、と盛り上がってたら端から話を聞いてたネタ村上等なメンバーが集まってゲームをやる流れに。ネタ村だから全員ない役職のCOし始めて混沌なゲームになりましたが楽しかったですまる。あ、アミロさんだけ一人ツッコミで孤軍奮闘してました合掌、ナムナム。
アリスは悪い狼さんなので全員おいしくいただきました♡
栗花落・澪
んー、やっぱり人狼初めてだと難しいなー!
多分定番の立ち回りとかあるんだろうね
人狼ならこう、占い師ならこう!みたいな
この機会に覚えてみたいし、観戦できるなら見てみたいな
あっ、クレープは食べたいです!考える時に甘いものは大事
会えるなら…うーん、できれば皆会いたいくらいだし
特に誰っていう指定は無いんだけど
狩人さんはちょっと気になるかな
話す時間が短かったからっていうのもあるし…
僕COしちゃったけど、順当に吊られたからなぁ
本当は霊能潜んだ方がよかったのかなとか
狩人の役職だとどういう立ち回りした方が庇う対象選びやすいのかな、とか
色々と気になることがね
楽しかったから、ちゃんと覚えたいんだ
アドリブお任せ
鏡島・嵐
ええと、こういうのなんて言うんだっけ。……そうそう、対面人狼。
やっぱり、チャットでやるんとは勝手が違うんだろうな。
おれはとりあえず、参加せずに観戦。
プレイヤーたちのやり取りを聞きながら、誰がどの役職なんかを推理してみる。勿論、邪魔にならねえように気をつけながら。
あ、あとクレープ食いてえ。
買いに行くところで、同村だった7番の人とばったり鉢合わせ。声とか歌ネタで軽く盛り上がる。
……そんなに特徴的な声っすか、おれ?(まったく自覚がない)
マキナ教……んー、おれはよく知らねえなあ。
猟兵仲間で誰か知ってる奴が居たら、話は聞いておこう。誰も居ねえなら、〈情報収集〉で基本的な情報だけでも集めておく。
●「人狼ゲーム/ゲーム大会」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が昨日同村した9番の狩人と再会していた。名前はキジョウ・マナミと名乗った狩人の少女は澪を同じ年ごろの同性、少女だと信じているようだった。
「マナミさん、昨日は惜しかったね」
「昨日はありがとうございました。惜しかったですよね、昨日」
「んー、やっぱり人狼初めてだと難しいなー! 多分定番の立ち回りとかあるんだろうね、人狼ならこう、占い師ならこう! みたいな」
マナミは「難しいですよね」と頷いた。
「僕COしちゃったけど、順当に吊られたからなぁ。本当は霊能潜んだ方がよかったのかな」
「霊能潜伏論議は一時期ネットを騒がせていましたね。有名な実況者さんが潜伏派とCO派に分かれて自説を熱弁したり……」
「そうなんだ?」
澪が眼を円くするとマナミがスマホを取り出した。呟きツールを検索すると長文を書いた画像を数枚投稿している数人が出てくる。
「わあ、荒れてるみたいだね」
「はい……」
マナミが眉を下げて笑った。
「潜伏は吊られても噛まれてもいけないので、上級者向けと言われています。もちろん、村の状況しだいですけど、野良村なら潜伏して怒る人はいてもCOして怒る人はいないので、COでよかったじゃないでしょうか」
会話をしながらふたりはお揃いのクレープを買おうかと相談し、店に向かう。
◆
猟兵たちが時折情報交換をしながら会場を自由行動している。
「マキナ教……んー、おれはよく知らねえなあ」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はそう呟いた。ひとりひとり、知っていることもあれば知らないこともある。嵐は自分にできることをしようと思った。
純粋さに煌めく瞳が見つめるのは、ゲームに興じる人々だ。
「ええと、こういうのなんて言うんだっけ。……そうそう、対面人狼」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)が観戦している。
(やっぱり、チャットでやるんとは勝手が違うんだろうな)
互いの姿を見ながらのゲームはスマホで遊んでいた時よりも情報が多い。表情、仕草、視線。
(もしかして、文字の時、文字+声の時、対面の時の3つだと対面が一番推理しやすかったり?)
自分が参加していない、というのも大きいのだろうか、観戦していると役職がだいだい推理できて嵐の口角が自然とあがる――わかると、楽しい。
「うん、対面のほうが初心者でもパーティゲームっぽくわいわいできていいかも」
優しいお姉さんが初心者向けに解説をしているのを見て嵐は微笑んだ。
「クレープ食いてえ……」
あやしい「霊能者」のお兄さんが美味しそうにクレープを食べているのを見て嵐はクレープ屋に向かった。
(勝敗も気になるけど、あとでわかるだろ)
そんなことを考えながら。
「おつかれっス!」
「うわっ、なんだ?」
すれ違い様に元気いっぱいに声をかけられ、嵐がぎょっとする。
「お、おう。おつかれ」
ピンク色のかたつむり女子と男子たちの群れが賑やかに会話しながら通り過ぎていく……、宮入・マイ(奇妙なり宮入マイ・f20801)だ。
時間は少し遡る。
「ゲーム大会っス~!!」
宮入・マイはキマイラである。ピンク色の髪と煌く円い瞳が特徴だ。
「なんかよくわかんないメールだったっスけどー……ゲーム大会って聞いてやってきちゃったっス!」
その正体は「実験によって知性を与えられた寄生虫が人型に寄り集まったもの」、可愛らしい「マイちゃん」は実は人間ではないのだ。
しかし。
「それカタツムリのコスプレ? 可愛いね」
「背高いね、モデルさん?」
カタツムリの着ぐるみパーカー姿のマイに男性ゲーマーが声をかけてくる。カタツムリ・マイちゃんは目立っていた。
(いろんな人が話しかけてきて面白いっス!)
「人狼はこの前ので一通り遊んだっスから~今日は見にまわるっス!」
お気楽な笑顔で人懐こく適当なトークを返しながら会場をぷらぷらするうち、マイの周囲に民間人の小グループができていた。
「マイちゃんクレープ食べる? 買ってくるよ」
「食べるっス!」
「マイちゃんたこやき食べる?」
いわゆる「オタサーの姫」というやつだ。
「きゃっきゃ」
マイが楽しそうに笑うとそれだけで取り巻きたちは幸せそうな顔をする。マイが楽しむことが彼らの幸せなのだ。
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は昨日同村だった5番の修学旅行生たち、そして7番の元祖(?)アミロ・レイと再会を果たしていた。
「みなさん、ゲーム大会へようこそ!」
「ん?」
「ぼくのゲーム内ギルドがこの大会を主催しているんですよ」
「そうだったのか、知らなかったわ」
和やかに笑いながらネタ村メンバーが集まり、メンバーが集まれば自然とゲームが始まった。
「ふんふんふん♪ ゲームをやってるっスね」
ちょうど通りかかったマイがゲーム卓を覗き込む。
「あら、ゲームする? 交代してもいいわよ」
アリスが見た目は年下ながら年上のお姉さんな気配を見せながら誘うが、マイはぶんぶんと首を振った。
「マイちゃんはコーチっス!」
「コーチ?」
アリスがきょとんと聞き返す中、マイは胸を張る。
「何を隠そうマイちゃんはもはや人狼のプロプレイヤーと言っても過言ではない存在……前の人をマネてCOしたりハンターがゲームを決めることを知っているっス!」
「それは普通の人狼じゃないのでは」
思わずツッコミを入れた民間人に取り巻きが圧をかける。
「COするっス! 全員占い師を騙るっスよ!」
「よ、よぉし」
「迷える子羊を導かねばならないっス~!
困ったらマイちゃんに任せるっスよ~!」
「マイちゃんは人狼ガチ勢なんだね、すごいな」
「アドバイス優しいな!」
卓は不思議な盛り上がりを見せていた。
そして、ゲームが始まった。
「怪盗CO!」
「双子CO!」
「罠師CO!」
「人狼CO!」
「わたしよ! 幼馴染のドマよ!(おっさん声)」
「覚醒ケイル!」
「対抗名もなきケイル!」
「色々混ざってるわね」
「マイちゃんのアドバイスのおかげっス!!」
これは果たしてアドバイスのおかげなのだろうか――全員が訝しむ中取り巻きたちは大喜びでマイを褒め称えてヨイショしていた!
「みなさん! さてはシャッジメントのまわしものですね!?」
アミロが懸命にツッコミをいれている。
「こんな卓にいられるものですか! ぼくは他の卓にいきます!」
やがてアミロは死亡フラグめいたセリフをのこして卓を離れた。
◆
「嵐さん、お疲れ様です」
クレープ屋に並ぶ人だかりの中、見覚えのある人を見て澪が笑顔で手を振った。
「彼氏?」
「えっ、ちがうよ」
(ああ、女子だと思われてるんだな)
会話からなんとなく察しながら嵐がにこやかに挨拶をする。
「鏡島嵐だ。よろしくな」
「マナミです」
「昨日一緒の村だったんだよ、マナミさん」
「へえー、オフで会えたのか。いいな」
「嵐さんってイケボですね」
「イケボ……? そうか?」
一緒にまわろうかと澪が提案するが、嵐は不思議な予感を感じながら丁重に誘いを断った。
「なんとなく、もう少しひとりでぶらついてみたいんだ」
「そっか、気を付けてね」
「お互いにな」
澪とマナミと別れてクレープ片手に歩いて居れば、聞き覚えのある声がした。
「まったくもう」
「あ、7番だ」
ひどくイライラした様子の7番アミロに一瞬で気付き、嵐が声をかけるとアミロは一瞬驚いてから笑顔になった。
「その声は、村人さん!?」
「あ、うん。まあ村人だったけど」
偶然の再会であった。
「きいてください9番さん、ゲーム卓がカオスだったんですよ」
「へえ、あのネタ村のひとたち今日もやってるのか。あとで見てみようかな」
「それにしても9番さんは素の声でそれですか、うらやましいです。ぼくは作り声なので」
「……そんなに特徴的な声っすか、おれ?」
(たまに言われるけど、自分ではふつうに思うけどなあ)
「歌動画みました? 好評みたいですよ」
「あ、あれ本当に投稿したのか」
談笑しながらネタ卓に近づけば、ツッコミ役が離れてる間に人狼アリスが勝利していた。
「あっちの卓はどうなったかな」
嵐が呟いた。あっちの卓とは、あやしい黒いお兄さんや優しい白いお姉さんがいた真面目な卓のことである。
卓に向かおうとする嵐の袖をアミロが躊躇い勝ちに引っ張った。
「うん? なんだ?」
「みなさん、どうして大会に来ちゃうんでしょうね」
アミロは小さな声でそう言った。
◆
その頃。
澪とマナミは横長の椅子にふたりで並んで座り、クレープを食べていた。
「可愛いし、甘い~!」
「おいしい!」
澪が食べているのは桜苺のカモミールクレープだ。ふわふわの生クリームの上にちょこんと盛られた真っ赤な苺とピンク色のアイスクリーム、そしてカモミールを象ったホワイトチョコ。
「狩人の役職だとどういう立ち回りした方が庇う対象選びやすいの?」
「私、昨日ゲームをしてた時は、澪さんが「狩人を吊りたくない」と言ってくれていたので吊りを逃れようと発言気を付けようと思っていたんです……、でも、失言しちゃって」
「あやしいって言われちゃってたもんね」
リアルでは会ったばかり、お互いの素性も詳しく知らないふたり。だが、ゲームの話は共通の話題として安心して盛り上がることができた。
「楽しかったから、ちゃんと覚えたいんだ」
澪がそう言ってにっこりとすればマナミも微笑んだ。
「澪、さんは前向きなんですね。……私は、難しいし、ガチ勢の人たち怖いし、流行ってるから遊んでたけど、ほんとはそんなに情熱がないんだって自覚しちゃって。やめちゃおうかなって」
「やめちゃうの?」
澪がびっくりして聞き返すと、マナミは俯いた。
「だって、つよくないから」
人々の声が楽しげに渦巻いて雑音が世界に溢れている。
――そんな昼の時間である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ビスマス・テルマール
●SPD
事前に『料理』した
【鯵のなめろうメンチのコッペサンド】と
鮪とバナナと醤油とアボカドとオリーブ油とレモン果汁で叩き混ぜた【ハワイアンなめろうのサンドイッチ】を
人狼卓の皆さんや一般人の方々に配膳して回りますね
※UC発動させつつ
あっ、ハワイアンなめろうの方は鮪の旨味にバナナのネットリとした甘さが良く合うんですよ
特にパンに合いますしね
一方で可能ならウルシさんにレコーダーを仕掛け『属性攻撃(迷彩)』を込めた『オーラ防御』で覆い『情報収集』させ会場の状況を把握
UCの効果で怪しい動きをする人が居れば一目瞭然なのでソコも注意を払いつつ
※UC使用が不味そうならUCは使いません
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
同村の民間人1親子とまきな殿に出会う
(マニトゥに騎乗しゲーム大会へ)
大会は盛況じゃな。さて、まずは情報を集めるか。
(風の精霊を方々に放ち情報収集)
む、この声は…おお、相方狼殿ではないか。
親子で参加かの?一人で暇を持て余していた所じゃ、一緒に回らぬか?
仔狼殿は、わしと一緒にマニトゥに乗るとよいぞ。
そこに居るのはまきな殿じゃな?奇遇じゃな、人狼陣営が揃ったのじゃ。
さて、先程の様子じゃと、まきな殿にマキナ教とやらから接触がありそうじゃな。
皆と遊びまわりつつ情報収集を行うのじゃ。
じゃが念の為、3人に風の精霊をつけて護衛しておくか。
何かあれば狼を呼び出して避難させたらよいじゃろう。
アネモネ・ネモローサ
※アドリブ連携大歓迎
あの時同村した、まきなさんに来たというメールがどうにも気になるな。
現代服に着替えてからKYゲーム大会とやらに参加して、人々の記憶を読んだり会話を聞いたりしながら[情報収集]。
その過程で、村2のまきなさんや1番の父娘と会いたい。
村2の1番親子に会ったら
「(父親の了承を得たら)ゲームの中では、花を贈ることが多々あるのであろう?私から君へ感謝の印だ、ふわふわで食べられるこの花を贈ろう」
と綿あめを買ってあげたい。
まきなさんと会えたら、変わったことは無かったか直接聞いてみよう。
会場にいる間、暴力の気配を感じたら一般人に危害が加わらないようすぐに[かばう][盾受け]をしようとするぞ。
●「ゲーム大会/狩人は、護衛対象を選んでください」
何人もの足が行き交う会場の床に黒い漆塗りのお椀が落ちていた。民間人は皆気が付かない様子だが、会場を注視していた猟兵は気付いた。
――目立たなくするためのオーラを纏い、よく視るとお椀はのそのそと動いている。
「なんだぁ?」
何か隠れているのだろうか、とお椀を拾い上げようとして。
ひょこっ。
お椀から手足と頭が生えた。
これは、スッポンだ。
本物ではない。メカだ。スッポンメカだ。
つぶらな瞳に見つめられ、そぉっと手を引っ込める。お椀ならぬスッポンメカの『ウルシ』はのそ、のそと会場を這い進む。ビスマスによりレコーダーが仕掛けられたウルシは情報収集をしているのだ。
のそ、のそ。
スッポンメカは昼を往く。
◆
祖母を意識することがある。
祖母は先代の巫女であった。
その声、醸し出す空気、まなざし。
祖母を真似することがある。
エウトティアとはすなわち巫女である。
巫女としての己を意識する姫で、マニトゥの主で、けれど――実は。ほんとうは、うまく振舞えないことも、多い。
「マニトゥ、ゲーム大会じゃ」
「あおーん」
エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は自然を愛する巫女である。今日も騎乗する巨狼マニトゥは尻尾をふりふり返事をしてくれる。
「わんわんだー、おおきい」
子供が眼をまんまるにしてマニトゥを見ている。おおきな聖獣マニトゥは畏れられることなく「かわいい」と言われていた。これも世界の加護か、あるいは単にその子供が動物好きなのかもしれない。
「マニトゥ、褒めて貰ったのじゃ」
誇らしげにマニトゥを撫でてエウトティアが笑う。
この世界は――少なくともこの街は、自然が少なく、神や精霊を信じるものが少ないのだという。足元は硬い何かで固められ、建物は高く、空気もあまり綺麗とは言えないようだ。
「大会は盛況じゃな」
赤い瞳を細めるのは、5歳くらいの子供が大はしゃぎで近づいてくるからだ。人見知りをせず、無防備な子供の背に若親が続く。
「こら、エリ。すみません、うちの子が」
人の良さそうな好青年、といった父親にエウトティアが「む、」と猫耳を揺らした。
「この声は……おお、相方狼殿ではないか」
「そ、その声は!? 昨日の相方さんっすか」
なんとエウトティア、偶然、昨日一緒に人狼として共闘した相方狼と再会したのであった。
「お声から美人さんだろうなと思ってましたけど、いやはや、美人さんだなあ」
父親がニコニコとしている。
「わしはエウトティアじゃ!」
「俺はハシモト・ナオキです。こっちは子供のエリです」
「ぱぱうわきー」
「どこで覚えたのかな、うわきしないよ!」
そんな父子のやりとりに自らも家族をちょっぴり思い出しながらエウトティアは微笑んだ。
「親子で参加かの? 一人で暇を持て余していた所じゃ、一緒に回らぬか?」
「おお、いいっすね! 3人でまわりましょう」
「仔狼殿は、わしと一緒にマニトゥに乗るとよいぞ」
エリが大喜びでマニトゥに乗り、ふわふわの白い毛を何度も何度も撫でている。エウトティアは優しくダイキの胴をかかえた。
「いいにおーい! ふわふわ!」
マニトゥはおっとりと尻尾を揺らして会場を歩き出した。
◆
アネモネ・ネモローサ(人に憧れし黒き彩喰み・f21338)は現地に馴染むフェミニンホワイトなオフショルダー二ッとセーターに綺麗な脚のラインが人目を惹くデニムパンツ姿だ。長い髪をかきわけてクールな表情で会場を歩くアネモネは民間人からすると「できる女」といった雰囲気だ。
「「まきなさん」だな」
待ち合わせ場所に指定した場所で声をかけると、スマートフォン端末を眺めていた「まきなさん」がハッと顔をあげた。
「あ、アネモネさんですか。「まきなさん」です。きょ、今日はよろしくお願いします」
民間人であるまきなさんが事件に巻き込まれそうな気配を感じたアネモネは、前日に約束して会場を一緒にまわることにしたのだ。
「大会、人が多いですね。変な噂とかメールもありましたけど」
「ああ。何も起こらないといいが」
(起こっても人々を守ってみせよう)
アネモネがそっと心に誓う。そのために、ここにいるのだ。
「まずはどこからまわろうか――」
「ん?」
(おや、あの猟兵殿。それに、一緒に話している民間人の声は)
エウトティアの猫耳がぴこぴこ動き、声を拾う。
「そこに居るのはまきな殿じゃな? それに、アネモネ殿」
エウトティアはアネモネとまきなさんに声をかけた。
「奇遇じゃな、昨日の村メンバーが揃ったのじゃ!」
「集まりましたね」
「昨日は楽しい試合でしたね」
「オフでも会えてうれしいです」
(さて、昨日の様子じゃと、まきな殿にマキナ教とやらから接触がありそうじゃな)
「風の精霊よ……」
エウトティアが密やかに喚べば周囲の空気がさわりと揺れる。民間人の護衛である。
(何か護衛を用意してくれたようだな)
詳細にはわからずとも、アネモネにはエウトティアが民間人の護衛のためになにかの能力を使っているのが感じられた。
ほんの一瞬交差する視線。
目的は同じだと互いにわかった。
「かりゅうどさんだ!」
子供のエリがエウトティアの狼に乗せてもらいながら無邪気な声をあげる。アネモネは眦を優しく緩め、「この子を守ろう」と思うのだった。
父に一言断りを入れてからアネモネが綿あめをひとつ購入し、エリに差し出した。
「ゲームの中では、花を贈ることが多々あるのであろう? 私から君へ感謝の印だ、ふわふわで食べられるこの花を贈ろう」
「わああああっ、ありがとう!」
「よし、ゲーム卓を見て回ろうか」
しっかりと護衛をしながら向かうゲームエリアには、猟兵仲間がいた。
ゲームを楽しんでいる者達、観戦している者達。
(ここは、安全そうだな)
アネモネとエウトティアが密やかに頷きを交わす。
そして。
「差し入れです」
ゲームを楽しんでいる人々の卓に料理を差し入れしてまわっている猟兵少女の声がした。ビスマス結晶のクリスタリアン。名を、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)。スッポンメカ・ウルシの主でもある。
猟兵達は、世界の加護により「全ての世界で言葉が通じ、どんな外見でも住民に違和感を与えない」という、地味だが有益な特性を持っている。ゆえにビスマスは現地の民間人からすると「清潔感のある社交的な少女」として違和感なく受け入れられていた。
「鯵のなめろうメンチのコッペサンドです」
卓の民間人が眼を輝かせ、歓声をあげて皿に手を伸ばした。ビスマスは食欲旺盛なゲーマーたちに嬉しそうな目をして料理の解説を加えていく。
「こちらは、鮪とバナナと醤油とアボカドとオリーブ油とレモン果汁で叩き混ぜたハワイアンなめろうのサンドイッチです」
「鮪の旨味にバナナのネットリとした甘さが良く合うんですよ、特にパンに合いますしね」
説明を終えたビスマスは「あら」と目を瞬かせた。ウルシが情報を届けてきたのだ。
「不審者があの小グループさんに近付こうとしたけれど、諦めた様子なのですね」
ビスマスが視線を向けた先には、アネモネとエウトティア、そして民間人たちがいた。
「猟兵仲間さんが守ってくれているようですね、そのおかげでしょうか」
ビスマスはほっと息を吐き、ウルシに「情報を仲間が集まる対策本部に届けてくれますか」とお願いをした。
なんと猟兵たち、今日の事件対策に「対策本部」という格好良い名前付きで会場の一角に小部屋を借りたのである。UDC組織の助力のおかげだ。
ちなみに正式名称は「人狼ゲームはよくわからないけどUDCに備えましょうきっと大会に何かあると思って集まりました対策本部」である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
(※「ダイキ」は「エリ」の記載ミスです。申し訳ありません!)
叢雲・源次
行動:会場内で待機。組織経由で情報共有
オブリビオンが過去からの侵略者である以上、例外はない…いつか、再び相対する時が来るかもしれない…そんな予感は脳裏の片隅にあった
インタセプター起動、組織へアクセス
通信
>何故教えなかった
>教えたら真っ先に飛び込んでいくでしょう?
>……。
>猟兵の協力と手順が必要だったのよ
教団についてはこちらから猟兵の端末へ送るわ
後は好きになさい
>…了解した
UDC組織から猟兵の持つ端末へ
◆マキナ教団について
嘗て存在した邪教団
機械化した肉体を依り代に邪神を降ろし現人類を凌駕
選民思想の元、理想郷を造らんとする狂人の集団
望んで入信する者もいれば無関係の人間の拉致・改造・洗脳も厭わない
ステラ・エヴァンズ
最終日まで生き残るとは…その上スケープゴートにされかかるとは…やはり奥が深いです、人狼ゲーム
もう一度やってみたい所ではありますが、本日は会場の警備を
猟兵としての責務を果たしませんとね
事前に月日星で友人達を呼んで警備と情報収集を手伝っていただきましょう
監視カメラの変わりになりますし、怪しい動きがあれば追跡もできますので
私は警戒心をほどきやすいように霊能者の格好でもして、警備しながら各テーブルを巡りお話を伺いましょう
自身に来たメールを見せながらそれとなく尋ねる感じで
それから、村1…同村だった5番さん、もしおられましたらお話伺いたいです
えぇ、投票後の遺言で『マキナ教』と言っていたような気がしますので
トリテレイア・ゼロナイン
村1の5番の方…UDCが関わる以上精神汚染に曝された可能性も捨てきれません
幸いUCのお陰で音声データは入手
遊戯とは言え、いえ遊戯だからこそ卑怯な真似をした甲斐がありました
自身を●ハッキングしセンサーの音声●情報収集機能を●限界突破
UCも併用し会場の雑踏を捜索
彼に教団関係者が接触したり、周囲にいる可能性は高い
ゲームの観戦をしている風を装いつつ監視兼警備
ゲーム大会で標的を集める以上、主催側にも紛れていたほうが都合が良い
他にも挙動が怪しい客やそれに対応する人々の動向にも注意を払います
しかし発見しても尾行等は不得手
他の方に任せるしか…
ああ、(視界を遮ってしまい)すみません!
直ぐに後ろに下がりますので!
●「狩人は、護衛対象を選んでください/護衛が成功しました」
対策本部に向かう叢雲・源次(DEAD SET・f14403)により、UDC組織経由で猟兵たちの端末に情報が送信されている。
「>各自確認されたし」
「>マキナ教団について
>嘗て存在した邪教団
>機械化した肉体を依り代に邪神を降ろし現人類を凌駕
>選民思想の元、理想郷を造らんとする狂人の集団
>望んで入信する者もいれば無関係の人間の拉致・改造・洗脳も厭わない」
――オブリビオンが過去からの侵略者である以上、例外はない……。
いつか、再び相対する時が来るかもしれない……そんな予感は脳裏の片隅にあった。
フォーマルスーツに身を包んだ源次の正面から燥いだ子供が走ってくる。父親が注意喚起しながら後を走ってきて、けれど止まらない子供が口を「あ」の形に開いてつんのめる。足をもつれさせて転びそうになるのがまるでスローモーションのようだ。完成品の録画を再生して観ているような眼差しが動揺することなくそれを見つめていた。どこか頭の隅は冷えていた。
「あ」
「……」
支えたからだは小さくやわらかで体温を感じた。
「ありがとうございます」
父親が慌ててやってきて頭を下げる。
転びそうな子供を自然な動作で支えて父に渡した源次は言葉すくなに歩み去る。
腕時計型のインターセプターが起動される。通信先は組織員だ。
>何故教えなかった
>教えたら真っ先に飛び込んでいくでしょう?
「……」
本部につながる通路は短く、人の声と熱が空気に溢れていた。すれ違う数人が白と黒のマスクをして「人が多いところは気を付けなきゃな」と困ったように笑った。
冷たく固い無機質な壁に囲まれた会場の中。
――奴らがいる。
通信は続いていた。
>猟兵の協力と手順が必要だったのよ
>教団についてはこちらから猟兵の端末へ送るわ
>後は好きになさい
源次の脳裏に相手の表情が想像できた。微かに開いた唇の間から吐息が零れる。
>……了解した
吐息は、人の体温を伝える。
◆
猟兵たちは、今日の事件対策に「対策本部」という格好良い名前付きで会場の一角に小部屋を借りていた。UDC組織の助力のおかげだ。
ちなみに正式名称は「人狼ゲームはよくわからないけどUDCに備えましょうきっと大会に何かあると思って集まりました対策本部」である。
各人が思い思いに過ごしながら時折立ち寄り、情報が少しずつ集まっていく。
「占い師の信用勝負が忙しくて調べきれなくて!」
「そ、それはお疲れ様です」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は猟兵仲間から送られてきたデータを受け取った。
「不審者が現れたのですか、捕まえられるなら捕まえたいところですが」
「見失ってしまいました。でも、探してみます」
状況が目まぐるしく動いている。
「こちらも分析を続けます」
トリテレイアが分析をしているのは昨日のゲームログ、裏番号1のものだ。ゲーム中は「リア狂」と呼ばれていたのだが。
「UDCが関わる以上精神汚染に曝された可能性も捨てきれません――遊戯とは言え、いえ遊戯だからこそ卑怯な真似をした甲斐がありました」
トリテレイアはゲーム中にフルスペックで役職透かしをしたことを「卑怯だ」と思っているのである。人が明晰な頭脳や鍛え上げた筋肉を活かすようにマシンである彼がマシン性能を活かすのは別段おかしなことではないのだが、「御伽噺に出てくる騎士」を理想とする彼には「自身の振舞が正々堂々とした騎士のものではなかった」という意識があり、後ろめたく尾を引いているのだ。
マルチセンサー・フルアクティブモードのトリテレイアが会場内音声データの中から昨日の音声データに類似する者をサーチする。
「見つけました」
5番の「リア狂」は、会場に来ていた。
「源次様、5番がいました」
仲間からの情報を整理していた源次が無言で頷き、立ち上がる。
◆
(最終日まで生き残るとは……その上スケープゴートにされかかるとは……やはり奥が深いです、人狼ゲーム)
ステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)が会場の片隅で警備をしている。
会場の至るところで人々が集まってワイワイとゲームに興じている。もう一度やってみたい、と思う気持ちが胸の奥で燻って、けれどステラが迷うことはなかった。
(猟兵としての責務を果たしませんとね)
ステラは猟兵としての自分が在ることに誇りを持っている。過去、籠の中で道具として利用されていた自分はもういない。
自分の意志で力を誰かのために活かす。それが、今のステラなのだ。
民間人の目には見つかりにくい不思議な長尾の小鳥が首をせわしなく動かしている。白色型のカワリサンコウチョウはステラの愛しき友たちだ。事前に呼んだ友たちは会場内を自由に飛び回り、情報を集めてはステラのもとへと飛んできた。
愛らしく囀り、代わる代わる飛び交う友にその都度律義に礼を言い、ステラはゲーム卓を巡る。
「霊能者さんのコスプレですか?」
「はい」
民間人がステラの美しさに見惚れている。
「あのひとはアイドルか何かですか? なんだか現実離れして綺麗ですね」
「霊能者っぽいなー、巫女さんって感じがする」
囁き声が周囲から漏れる。長く艶やかな髪を揺らし、裾長の霊能者衣装で歩くステラはどこか神秘的な雰囲気で、周囲の人々はうっとりとするのであった。
「実は、私のもとにこのようなメールが来たのですが」
ステラがあやしいメールを見せれば人々は「それはイタズラメールですね」「気にしたらだめですよ!」とステラを気遣ってくれた。
「あ、トリテレイア様、源次様」
同じく監視兼警備に努めている猟兵仲間を見付けてステラが丁寧に礼をする。
「5番の方を見付けました。私は尾行等は不得手なのですが――ああ、すみません! 直ぐに後ろに下がりますので!」
うっかり観戦者の視界を遮ってしまい慌てて移動するトリテレイア。その身長は現時点285.2cmとかなりの長身だ。
「源次様、お任せしてもよろしいでしょうか?」
フォーマルスーツに身を包んだ源次は、二振りの刀を腰に佩いている点により異様な凄みを醸し出しているものの、世界の加護もあり雑踏に紛れるには不自然ではない。この中で一番適任に思えた。
「尾行は心得ている」
「情報を送ります」
「ああ」
端末に送られる情報を元に源次が尾行を開始する。仲間猟兵ステラの神秘の鳥が音もなく頭上を飛び、トリテレイアが指示を送り続ける。
◆
熱の塊。肉の塊が人の形をして集まっている。
>源次様、右の卓をターゲットが今立ち上がりました。判りますか?
>確認した
視線を男に向けることなく源次が何気なく卓を覗き込む。ポスターに視線を向けて隣の自販機に寄れば視界の隅を男が移動している。距離は保ち、視線を向けることなく尾いていく。
「トリテレイア様、出入口警備スタッフがクレーマーに手を焼いているようです。それに、トイレに不審物があったと通報があったみたいで警備員が動いています……」
ステラが情報を共有している。
「私の友人である鳥によると不審物は問題ありません。クレーマーのほうは、宥める手伝いをしてまいりますね」
「お願いします――人手を割いて警備を手薄にしようとしている気配もありますね、と。もう抑えられたのですか源次様」
やりとりの間に源次様が男を確保している。周囲には他にも数人の民間人がいた。
「狂信者だ。UDCではない民間人で多少影響を受けている。組織がケアすれば元通りの人格を取り戻すだろう」
源次はひとことを重く付け足した。
「主犯は有名ギルドらしい。会場で行われる人狼ゲームが儀式の役割を果たしている。儀式が成れば何が起こることか――今から果たして間に合うか」
「そんな。ゲームは現在進行形でどんどん遊ばれていて、……どのようにして防げばよいのです?」
深刻な声でやりとりをする彼らのもとに仲間猟兵が新たな情報を送ってくる。
「すみません、ゲームをしていたら――人狼ゲームではないゲームだったのですが――民間人の一部が暴れ出しました」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
守田・緋姫子
人狼ゲームの時のやりとりをまだ根に持っており、不機嫌だが、ゲームの協力プレイをダシに黒玉になだめられて機嫌が直る(チョロい)
軽食をパクつきながら黒玉とゲームを楽しむぞ。
「そっちじゃない!あっちだ!」(先に死んだので後ろからゲームプレイ中の黒玉の背中にしがみつき、あれこれ指示を出す幽霊娘)
※ゲームの内容はお任せ
日輪・黒玉
緋姫子さんと引き続き行動
人狼ゲーム中のことで不機嫌になっていることを察して、無表情ながら内心慌てています
いえ、でも、最後に私が勝ち残れたのは緋姫子さんのご協力あってのことですから……あちらのゲームなど今度はどうでしょうか? あそこで売っている物も美味しそうですよ
ゲームと食べ物で機嫌を直してもらおうと奮闘
その後は、一緒に軽食を食べながらゲームを楽しみましょう
「言われずとも、分かっています。あまり揺らさないでください……!」(一方向に集中しているので、別方向のことに気づいていない)
※ゲーム内容はお任せします
●「護衛が成功しました/儀式を邪魔しますか?」
(緋姫子さん、どうやら人狼ゲームが原因で不機嫌になっているようですね)
日輪・黒玉(日輪の子・f03556)は原因に気付いていた。ちらりと見る「緋姫子さん」――守田・緋姫子(電子の海より彷徨い出でし怨霊・f15154)はとても小柄な少女だ。自称怨霊という緋姫子は不機嫌が続いていた。
黒玉の狼耳がへたりとなる。無表情ながら、内心では気が気でない。本気で罵倒したわけではなかった。軽い気持ちだった――けれど、緋姫子は傷付いたのだ。
「うまく立ち回れなかったし、私が足を引っ張ってしまったな」
ぼそりと呟く緋姫子。
ああ、と黒玉は眼を瞬かせる。
(それも、気にしているのですね)
単に傷付いただけではない。傷ついたことでゲームプレイに影響をきたしたのが二重の憂鬱となっているのだ。
視線を合わせないようにしながら――緋姫子はもともと前髪で目が隠れていることが多いが――頬を膨らませている緋姫子は年相応の幼さを感じさせる。
「いえ、でも、最後に私が勝ち残れたのは緋姫子さんのご協力あってのことですから……」
黒玉は自分が慌てているのだと自覚した。
視線を合わせてくれない少女の機嫌をなんとかして直したい――関係を修復したい。
目を合わせようとしない緋姫子は小さく華奢で、――年下の女の子だ。顔色が悪いのを気にしている女の子だ。
「緋姫子さん、ゲームをしませんか。協力プレイです」
「ん」
すこしだけ必死な声になってしまっているかもしれない。黒玉はそんな自分を自覚しながら、スマートフォンを見せた。
「ぐらんど・ぶるー……あくてぃびてぃ」
「イベント中です」
グランドブルーアクティビティとは、略して「ぐらぶるA」! ファンタジーな世界観を旅する主人公や仲間達を動かして森やダンジョンで対モンスター戦や対人戦を楽しめるアクション性の高いゲームである。
「やる」
「やりましょう」
ふたりは「戦いに挑むには食べ物の確保から」と軽食を買い込んで並んでベンチに座り、声をかけあいながらチーム戦を開始した。
◆
画面内ではマスコットキャラが撃破数を数え、最初真っ黒だったマップ欄はキャラが探索したエリアがマッピングされてほぼ全域を明確にしていた。
「黒玉、そっちじゃない! あっちだ!」
先に死んだ緋姫子が口のまわりに青海苔をつけながら黒玉の背中にしがみつき、指示を出している。ちなみに青海苔はたこ焼きについていたものだ。たこ焼きは美味しかった。
「言われずとも、分かっています。あまり揺らさないでください……!」
「黒玉! 視点を固定させすぎだ! サーチを忘れるな」
ゲーム画面ではバチバチと魔法と銃の撃ち合いがされている。
「アサシンがハイドキルを狙ってるぞ! 右にいる」
「!!」
咄嗟に回避をすれば一瞬後に黒玉のキルを狙ったアサシンのスキルエフェクトが閃いた。
「返り討ちにしてあげます!」
反撃で氷撃を放てば、ワンキルが上がる。
「いいぞ黒玉! あと、あーん」
「えっ」
緋姫子がたこ焼きをひとつ食べさせてくれた。
「美味しいです」
たこ焼きは美味しかった。
「食レポだ黒玉!」
「ゲームしながら食レポなんてスキルありません!」
画面から目を放して緋姫子を見れば少女の目がすっかり機嫌を直した様子で黒玉を見ている。黒玉はそれを見て胸の奥が温かくなるのを感じて――、
「あ、」
「ゲームオーバー!」
一瞬の隙に撃破されてしまった。
「目を放すからだ――あはは!」
「すみませんね……」
ゲームの勝敗は不思議と気にならなかった。黒玉はハンカチを取り出すと、そっと緋姫子の口元にあてた。
「ん?」
「海苔、ついてます」
優しく拭えば、緋姫子が笑う。
「黒玉にもついてるぞ!」
勝ち誇ったような声をきいて黒玉は「ゲームに誘って良かった」と思うのだった。
――と、そんなひとときを過ごしていたふたりに、突然声がかけられる。
「なんで人狼ゲームじゃないゲームしてるんだよお!」
「えっ」
「はっ?」
ヒステリックな声は小太りの男から放たれていた。
「人狼ゲームしかしちゃだめなんだ! このエリアは神聖なんだよ、なんてことをするんだよお!!」
男が狂気を感じさせる甲高い声で喚いてふたりに殴り掛かる。
「何をするんです!」
「こ、これがリア狂か!?」
むろん、ふたりも猟兵だ。民間人に後れを取ることはない。黒玉は殴り掛かってきた男の腕を危なげなくつかみ、抑え込んだ。
「警備に引き渡しましょう」
周囲の民間人がざわざわしている。
「君たち、大丈夫かい」
心配そうに声をかけてくる「大会主催者であり有名ギルドのマスター」である中年の男は「シロキ・ダイキ」と名乗り、警備員を呼んでくれて、「せっかくの大会なのに」と義憤に溢れる呟きを零した。
「ごめんね、人狼ゲーム好きな人がみんなあんな人だと思わないでね。あ、あとグラブルAなら向こうのエリアに専用エリアがあるよ。好きなら、行ってみたらどうかな」
ダイキは残念そうにそう言ってふたりを気遣う様子で「別エリアへの移動」をすすめたのであった。
「ぼくもそのゲーム好きだよ、此処だけの話。あはは」
笑うダイキはとても良い人に見えた。
「今の出来事は、一応猟兵仲間に共有しておきましょう」
「そうだな」
ふたりは猟兵仲間に事件を共有したのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
「事件が起きます」とは断定的な書き方ですが、差出人はそのマキナ教の関係者なのでしょうか?
なんにせよ、事件の兆候を見逃さぬよう人狼ゲームに参加しながら警戒するとしましょう。
スマホ越しと違い実際に対面してのプレイだと、表情や仕草なども虚実を見極める判断材料となり得ますね。
ですが今回の目的はあくまで事件に関する【情報収集】及び警戒。
嘘をついているかどうかではなく、事件に関係する人物かどうかの観察をしましょう。
ゲームに夢中になるあまり任務を忘れてはいけません。
ゲーム中になにも起きなければ同卓の人に、メールやマキナ教や彼らが起こすとされる事件について話を聞いてみましょう。
(役職・勝敗はお任せします)
オブシダン・ソード
対面型の人狼に参加
もちろん今回も勝利を目指すよ。楽しむ方が優先だけどね
人外か、役職ついたらラッキーだなあ
・よく喋る
・思い付きをすぐ口に出す
・いつでも笑顔
・フード被ってるしうさんくさい
・タピオカミルクティーがおいしい
・クレープもおいしい
プレイスタイルは変わらず
何か静かに潜伏するのは向いてない気配なので、
占い霊能なら早めにCO、人外でも早々に騙る
喋りすぎてぼろが出てもまあ良いよね、喋るの楽しい
あれぇ、間違ったこと言ったかな?
でも最後は、信じてもらうしかないんだよねえ
とかへらへらしながら
怪しまれるのは悲しいけど反省はあんまりしてない
一生懸命論理的に話をするよ
でもまた無実で吊られたらへこむかも!
渦雷・ユキテル
現代社会に嫌気ですかー
多数派に牙剥くのは気分良さそうですけど
それ以外に利がないんで惹かれません
事件を楽しむのは
ゲームの後でも間に合いますよね?
今回は素村でした
考察楽しめそうですね!
霊能確定ならとりあえずグレー精査
便乗気味だったり占い真偽透けてそうな
発言があった人釣りたいです
釣り位置は明確に示しますけど
反論に納得出来たらその旨ちゃんと伝えますよ
不当に叩くと疑われかねませんし
2-2なら霊ロラです?
作業臭いのは好きじゃないんですけど
気をとられてグレー精査甘くなる占いは
真目下がるんで切欠にはいいかも
対面なら表情の動きから
読み取れる要素もあるかと思うんで
少し気にしときます【見切り】
※絡み・アドリブ等歓迎
カイム・クローバー
勿論、続けて人狼ゲームに参加するぜ。……言っとくが、これは情報収集として行くんだからな?決して負けたのが悔しかったりする訳じゃないぜ?…ホントだからな!?
前回と似たメンツだと良いんだが。じゃねぇと、俺のリベンジが…(ゴホン)情報収集に差し支えが出るからな(キリ)
今回の俺は当たりだぜ。狩人。ようやくしがない村人から役職持ちだ。俺が護衛する以上、そいつに手出しはさせねぇさ。…ま、連続で同じ人物を護衛は出来ねぇみたいだが。それが出来たら占い師守ってるだけで有利になるから当然と言えば当然か。
UC使った自信に満ちた発言は変わらず。一日前に『必勝!人狼ゲーム』を読んで来た。今度は負けねぇ!(でも負ける)
オルキテ・タンプル
〇心情
・マキナ教?なんぞそれ。まあいいか、調べれば。
・会場の監視とゲームとハッキング…アレ、ボクのやること滅茶苦茶多くない?
〇調査
・UCを使ってハッキングするよ。メールを送った奴の情報を抜く。んでもって、会場にファレノプシスを放って会場の監視もするよ。怪しい行動をしている奴をこれで探す。どこを調べるかはドローンに憑依させた電霊次第だ。
・んでもってボクはゲームをやりつつ色々と調べよう。適当に素村で‥って占い師かよおおおお。また役かい!まあいい、信用勝負にならなければ情報落としつつ、適度な所で噛まれて真を取って…って信用勝負かよ!
・Zut!(クソッ!)こうなったら全部完璧にこなしてやるからなああ!
イヴ・クロノサージュ
★アドリブ歓迎!
◎人狼
●心情
おや?このメール……。事件の匂いがしますね……。
ゲームを通じて、人殺しをしようだなんて
狂気の沙汰ではありませんね……?
人狼陣営で遊ぶ子にとっては
仲間やお友達と、楽しくパフォーマンスする手段の一つでしかないのにね
●行動(人狼で遊ぶ)
人狼を引いたら占いCOで勝負をします
誠実そうな占いを装い
結果は騙らない事によって嘘を付かないようにします
用語がわからない初心者さんに優しく解説します
▼
勝負どころは発言の誠実さをアピールして
真占いを村人目線『偽目』にする事です
2日目の占い理由は『多弁』
この方は、自分の意見でよく発言して
もしも人狼陣営だと吊れないから占いましたと
矛盾無くいきます
●「儀式を邪魔しますか?/人狼は、」
「……言っとくが、これは仕事としてやるんだぜ。決して負けたのが悔しかったりする訳じゃないぜ? 徹夜で『必勝! 人狼ゲーム』を読んだのも悔しかったからじゃないからな。……ホントだからな!?」
カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が誰も質問していないのにそんな言い訳をしていた。
「このメンツ……俺のリベンジが……ごほん」
メンバーを見て咳払いをするカイム。つまりそういうことなのだろう。
(あのメール……。事件の匂いがしますね……)
イヴ・クロノサージュ(《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113)は心の内で溜息をつく。
――ゲームを通じて、人殺しをしようだなんて。
(人狼陣営で遊ぶ子にとっては仲間やお友達と、楽しくパフォーマンスする手段の一つでしかないのにね)
イヴは卓を囲むプレイヤー仲間を見る。初心者もいれば、玄人もいる。
(せっかくの大会なのに)
セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は騎士である。会場の民間人が遊ぶようなゲームのなりきりではない。本物の剣を手に幾度も血を浴び、血を流して戦ってきた本物の騎士だ。
「「事件が起きます」とは断定的な書き方ですが、差出人はそのマキナ教の関係者なのでしょうか?」
セシリアは訝しむ。事件を予告し、ゲーム大会の危険を説くメールは「善意」によるものではないだろうか。しかし、一体誰が?
「なんにせよ、事件の兆候を見逃さぬよう人狼ゲームに参加しながら警戒するとしましょう」
オルキテ・タンプル(もう一人の蘭花・f15791)は雷や水に関する魔術の名門一族の出身だ。
(マキナ教? なんぞそれ。まあいいか、調べれば)
「会場の監視とゲームとハッキング……アレ、ボクのやること滅茶苦茶多くない?」
仕事の多さに気付いて焦りながらもオルキテは電霊を召喚した。常人には見えない電子の蜘蛛たちは無限のネットワークを己の巣を行き来するように調べ上げ、情報の糸を紡ぎあげる。
同時に会場内をひらひら舞うのは蝶のかたちのドローンだ。オルキテはファレノプシスと呼んでいる。
「ファレノプシス、怪しい行動をしている奴を捜してね」
その情報はオルキテ経由で仲間猟兵のもとへと送られていく。
オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は、「コスプレ」をしていた――民間人はそう思った。
目深にかぶったフードがゆったりと布の流れをなして首元の見事な金装飾で留められて、けれど胸元からは緩く開かれて見に纏う黒衣装を覗かせながら背後にマントとして流れ、内側の紅生地を見せている。
「タピオカおいしい」
タピオカはおいしかった。
アイスミルクティーの入ったカップは柔らかく、少し指に力を籠めるとふにゃりとする。ストローで吸い上げたティーは生クリームの臭いがして、舌にまろやかだ。固めのタピオカが口の中にやってきてぷるんとしている。噛んでみれば弾力性が強めで、少し黒糖の風味がした。後味はスッキリとして甘すぎない。
「現代社会に嫌気ですかー、多数派に牙剥くのは気分良さそうですけどそれ以外に利がないんで惹かれません」
渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)がピンクのジェルネイルと似た色のバー・ジュエルキャンディをぺろりと味わう。果実の味が爽やかフレッシュなベリー&ベリーストロベリーのフレーバーは会場で売られていたものだ。
「事件を楽しむのはゲームの後でも間に合いますよね?」
民間人から見るとその容姿も振舞いも女子学生にしか思えない。
(こんな後輩がいたら)
男たちはそう思い、デレデレとするのであった。
さて、彼らが何をしているかというと、ゲームをしていた。
人狼ゲームである。
「はじめようか」
オブシダンが気負う様子もなくそう言った。
ゲームが始まる。
◆
<1日目>
生存者
1 民間人
2 セシリア
3 オブシダン
4 オルキテ
5 ユキテル
6 民間人
7 カイム
8 民間人
9 イヴ
テーブルを囲んでお互いの顔が見える。ゲームマスターは大会を主催する有名ギルドマスターの「シロキ・ダイキ」という男だ。とても善良そうな顔をしている。
「2番のひとから順番に発言をどうぞ」
初日の昼、セシリアが立ち上がる。
「早い段階でどんどん吊り位置をあげていって役職回避をしていきましょう、役職は吊らないようにしたいですね」
3番オブシダンが同意する。
「2番に同意だね。吊り位置はどんどんいっていこう。白い位置も言っていこうか、噛み考察もできるから。ちなみに2番の意見は人狼に不利だから2番は白く感じたよ、あと僕」
「3番さん時間切れです」
「えっ、時間切れあるの? 延長は?」
「初週はありません」
フードで顔上部があやしく隠れて笑顔の口元だけを覗かせた青年を見て、誰かが「うさんくさい」と言った。
4番オルキテは「占い師だよ、3白だった。ここまでは白く見てる、5番以降に狼いるかなと思ってるよ」と短く切り上げ、5番ユキテルが性別不詳の明るい笑顔で挨拶をする。
「まあここまでの考察に違和感はないです。狼要素ある人いまのとこいないですね。COしだいですけど霊能確定ならとりあえずグレー精査、便乗気味だったり占い真偽透けてそうな発言があった人釣りたいです。3番さんは余計なひとことが多いタイプです? 言わなくていいこと言いそうですよねー」
6番はそんなユキテルに「3は白いと思ったから3を殴った5は黒い」とコメントをする。
7番カイムは「俺も3は白に思えるかな。5番にも同意できるけど。6番、5番の3殴りって初週で情報が少ない中の雑殴りだろ? それで黒とはっきり言うのもあやしいぜ。4番が5番以降に狼いるって決めつけたのが理由薄くてあやしく見えるな」とコメントをした。
8番は「6番が一番黒いのでは? あと、7もあやしい」と首をひねる。
9番イヴが清楚な微笑みを見せ、初心者向けにと軽くここまでのメンバーの発言した単語を解説し、考察をまとめた。
「初心者向けによさそうですし、ここは時間を延長します」
ダイキがそう言って時間を取ってくれた。綺麗なおねえさんには弱いらしい。オブシダンは軽く肩を竦めてからテーブルの上のクレープに手を伸ばし、包装紙をぺりぺりチマチマ剥がした。イヴの声が続いている。
「私は占い師で、6番白でした。1番が占いCOがなければ6番が狂人あるかなと見ています。5番さんの吊り位置は3番さんですか? あと、8番さんの吊り位置は6番7番ですか?」
1番が続いて1巡目を締めくくる。
「6番も7番も白く見えた、8番とは意見が合わない。自分霊能です、2番は印象よかったけどそれを白とはまだ言えるほどじゃなくて狂人もあるかな。9番が6番を狂あるというけど狂を探してる人狼なのかな」
続く2巡目、2番セシリアは「5番7番を吊りたいですね」と語る。
「3番は片白でとても白く見ていますが、7番はその3番をあやしむ5番に同意と言っていました」
白く見られているオブシダンは美味しそうにクレープを食べていたが、順番がまわってくると大喜びで霊能COをした。
「いやぁ、1番は9番をあやしむ発言が白くみえたんだけど、偽で出てきちゃって残念だよ。あとクレープ美味しい。6番は意見がもっともで白いな! 今日は1番吊りでいこう」
4番オルキテは「1番か3番、霊どっちか吊ろう」と同意した。
「3番はボク目線白、あっても狂なんだ。1番は狼の可能性がある。だから1番がいいな。対抗の9番も実は狼で見てる。7番は6番を白く見たのが黒いけど、6番よりは黒くない」
「あたしは6番を黒く見てないですねー」
ユキテルがそういって鮮やかなピンクの瞳をイヴに向けた。受け止めるイヴの瞳は澄んでいる。
「2番8番があやしく見えていて、占いは9が偽とみています。霊能は3が真でしょうね。人狼だとして囲われてて2人目の霊能に出る必要がありますー?」
6番が同意する。
「4番は96で追っているんですか? 9狼で6囲うと思います? 俺は思わない。2番は86白く見てるんだね? 57を吊りたい? あやしい」
7番カイムは「5は白いと思うけどな」と首を振る。
「3番について5番に同意だ。2番はちょっとあやしく見えてる」
8番は「9が真だったら6は白だよね、霊能は1が偽目かな。霊能さんに狼がいるなら占ってみたら?」と9番に視線を向ける。
9番イヴがニコリと微笑めば8番は頬を染めた。
「9は真かな」
8番が呟いた。
「5番7番2番を黒く見ています。霊ロラをするなら占う意味はありません。7番は2番にヘイトを向けて5番を庇っているようにも見えますね」
1番は「3番を吊ってほしい」と主張した。
「4番の人、3番を吊って黒だったら4番の偽が確定しますよね、僕吊りをおしてきたのが4番あやしいんですよ」
投票結果は3番に1番2番、残りは1番に入れて1番が処刑されたのだった。
◆
(スマホ越しと違い実際に対面してのプレイだと、表情や仕草なども虚実を見極める判断材料となり得ますね)
ゲームを楽しみつつも、セシリアの真の目的は単純な勝利ではない。
(ゲームに夢中になるあまり任務を忘れてはいけません)
あくまでも任務が第一、と考えるセシリアは冷静に卓の人物を見極める。事件に関係していないか、異常は見られないか――その手の届く範囲の脆弱な生命をすべて守らんと心のうちで静かに闘志を燃やしながら。
(しかし、「人狼」はどなたなのでしょう)
(いやぁ、今回はとても信用されている気がするね!!)
オブシダンは真霊能者だった。
薄い生地がやわらかに包む具は真っ白すぎるホイップ生クリームと白さを際立たせるようなチョコレートソースが甘い香りを放っている。生地とクリームの隙間からは奥ゆかしくバナナの果肉が覗いていて、ぱくりと齧りつけば頼りないほどに全てがやわらかく甘やかだ。
「クレープおいしい」
クレープはおいしかった。
(1番は狼でしょう。もう1人が騙りのうまい方のようですけどー、霊能に2人揃って出ることはないでしょうから3番は真とみますが)
ユキテルがメモ帳に書かれた情報を見ている。占い先やライン、表情で気になった点を手早く書き込んだメモは女子らしさに溢れていて背後の観戦者も「メモわかりやすい」と呟いた。
(うーん、怒涛の1日目だった)
カイムは購入したての「人狼記録ノート」を見つめている。線が何本も引かれ、誰が誰を殴ったか、誰が誰を白いと言ったかが書かれている。もちろん、占い結果や役職COも。
観戦者が興味深々に覗いている気配を感じながらカイムは「明日も霊能を吊るのか?」と首をかしげる。
「恐ろしい夜がやってきました。みなさんは顔を伏せ、眠りについてください」
GMダイキの声に全員が顔を覆い伏せ、目を閉じる。
「人狼は目を開けて、襲撃する一人を指定してください」
イヴが眼を開けると、相方狼と目があった。スマホの時と違い声で相談することはなく、ただジェスチャーで「人狼が噛む相手」を静かに指し示す。
「人狼は顔を伏せて目を閉じてください」
「それでは次に占い師の方、占い人を一人指定してください……」
オルキテが眼を開けて占い先を指さした。GMはジェスチャーで結果を伝える。あまり動いている気配を出さないようにと気を付けながらオルキテは再び目を伏せた。
夜の時間が淡々と進行する。
観戦者には誰がどの役職かがわかるが、誰も口を挟むことはなかった。なぜなら、このエリアに集まっているのは「ゲームを理解しているファンたち」だからだ。
◆
「昨夜噛まれたのは、8番です」
占い師と霊能者が昨夜の結果を報告した。観戦者目線では、生存者は以下となっている。
<2日目>
生存者
2 セシリア(?)
3 オブシダン(真霊能)
4 オルキテ(真占い師)
5 ユキテル(?)
6 民間人(?)
7 カイム(?)
9 イヴ(人狼・占い師騙り)
占い 9番→6白→7白
4番→3白→2白
霊能 3番→1黒
吊り 1番
噛み 8番
9番イヴが話し始めた。人狼による偽の占い師だ。だが、イヴは誠実そうに見えた。結果にも虚偽がない――イヴと相方人狼以外は白なのだ。狼には視えている。
「7白だったので5黒かなと考えています。7番は同調や便乗、雑殴りではなく自分の意見で発言していて、吊りにくいので占いました。霊能結果は1黒? そうですか」
凪いだ湖のような瞳を伏せるイヴは思案気な顔をした。観戦者には、イヴが「相方を吊られて黒結果を出された人狼」だと分かっている。
「「人外」はなぜ霊能に出たのでしょうね」
イヴはそう投げかけた。狼とも狂とも言わない。3番はまだ真と決め打ちされたわけではないのだ。
「4番目線では、3白が出ていますから今日は3を吊れば1番目線での結果もわかりますね」
2番のセシリアは頷いた。
「霊ロラ完遂の安定で3番を吊りましょう。そうすれば4番の真偽がつきます。私は占いは9番を真と思っています。9番を真とみれば67は白ですね」
セシリアとイヴの視線が一瞬交差する。ユキテルはそれを見ていた。
3番オブシダンがクレープを食べ終えていた。
「2番に今日白が出たのか、これは吊れないね。占い師は真狂か、真狼か。一番吊り押されたところに狼がいたのかな。それで霊能者に出て霊ロラになるよう持ち込んで仲間を救ったと考えるよ。あれ? これだと後から出た僕があやしくなるかな? でも最後は、信じてもらうしかないんだよねえ」
オブシダンは自分で自分の真目を下げながらもへらへらしている。彼が真だと知っている観戦者が心配そうに見守ってしまうほどだ。だが、とても楽しんでいる空気があった。
「グレーで一番黒いのは5番かな。69の人狼はないと考えているよ、1番が人狼だったし。2番はあやしいけど狼なら露骨すぎるからあって狂人かな……ロラ完遂の意見はわかるから僕でもいい。けれど5番吊りも考えてほしいな」
4番オルキテは同時並行で電霊を駆使して会場の調査をしようとしていたが、音を上げつつあった。結果、猟兵仲間に途中まで集めた情報を送って今日は信用勝負に力を注ぐことにしている。
「2番が3番に投票していて色を知りたかったから占ったよ。昨日も言ったけどボク目線3は占い結果白だから狼はないんだ。吊っても狼は落ちない。5の発言をきいて5があやしかったら5にいくよ」
5番ユキテルが事もなげに笑った。
「霊能は3が真にみえてまーす、今日あたしでもいいですよ。1狼吊れてると信じます。作業臭いのは好きじゃないんですよね。決め打ちでいいんじゃないですか?
あたしには4番が2番に白を打って囲ったように見えます。6番を占って確白をつくるべきでしたね。2番は黒いですよ」
4番オルキテが真占い師で9番イヴが偽占い師だと知っている観戦者たちはどきどきと場を見守った。真目はイヴが取っているのだ。
6番はユキテルに同調し、「5は白い、2黒い。柱発言どっちも吊りたくない、2からいきたい、7は9に白を貰ってるけど囲われた人外の可能性あるかな?」と発言をする。
(今日は235が吊り位置にあがっているのか)
カイムは余裕の笑顔を浮かべた。
「狩人COだ。昨日は3番を守っていた。今夜は4番9番のうち真だと思う方を護衛するつもりだぜ。投票先は民意に従うが――3番か? 占い師は5番を占ってほしいな」
投票が始まる。
「2番さんと3番さんが同数でした。一言ずつコメントののち、決選投票です」
ダイキがそう言った。
(投票結果は、2番に3番5番6番、3番に2番7番9番、9番に4番?)
ユキテルがさらさらとメモを取る。
2番セシリアが思い出すのは前日のゲームであった。
「私を吊るのはのめません、吊るとPPになります」
彼女の仕事は、まだ終わらない。
「5番は白だと見ています」
占い結果は白が出るとセシリアは予想している。
「3番が偽であれば、PPが起きます」
3番は真であるとセシリアは考えている。だから、偽だと言って死ぬのだ。
「怪しまれるのは悲しいなぁ」
3番オブシダンは悲し気に首を振る。
「でも、反省するべき失言はしていないと思っているよ――村人陣営の真が取れているから」
反省すべき点は終わってみないとわからない。終わってもあまり気にしないかもしれない。なぜなら、終わったことだから。
オブシダンは2番吊りに持ち込めそうな空気を感じて饒舌になった。ここでパッションを出さねばいつ出すというのか、そんな気持ちを胸に。
「僕は最初5番を人外目に見ていて、僕を吊り押すと思っていたんだ。僕目線、5番が狼なら吊られたら人狼陣営負けなんだよね。でも柱をしたから5番の狼はない。
1番が狼だったけど2番は初日に1番に入れていないよね、ワンチャン僕が吊れると思って僕に入れていたのかな。僕は2番1番が狼だと思っているよ、今日2番を吊ったら終わりだよ。あと、占い師は……4番を偽だと思っているかな」
(だから、僕を残してね)
心の中で付け足してオブシダンが話し終える。心の中で誰にお願いしているかというと、9番のイヴに、だ。
「投票結果が出ました」
(2番に入れたのが5番6番7番、3番に入れたのは9番、4番は放棄か)
オブシダンはちょっぴりへこみながらも吊られなかったことをよしとした。
(3番は吊れなかった?)
イヴは心の中で残念がる。
(ここで3番が吊れたら大きかったのに)
ほんの1票、最初に動いていれば。けれど、そんなイヴに「味方」の遺言が頼もしい。
「私は狼ではないので、ゲームは終了になりません。それが3番の偽証明になるでしょう。明日は3番をお願いします」
「恐ろしい夜がやってきました。みなさんは顔を伏せ、眠りについてください」
GMダイキの声に全員が顔を覆い伏せ、目を閉じる。夜が来て、淡々と進行したのち朝が来た。
各役職が結果を報告する。
<3日目>
生存者
3 オブシダン(真霊能)4の白
4 オルキテ(真占い師)
5 ユキテル(?)9の白
7 カイム(狩人)9の白
9 イヴ(人狼・占い師騙り)
占い 9番→6白→7白→5白
4番→3白→2白→6白
霊能 3番→1黒→2白
吊り 1番→2番
噛み 8番→6番
狩人 3番→9番
「なんで俺噛まれてないんだ?」
噛まれたのは6番だった。7番カイムが自身の生存をいぶかしんでいる。
「俺を偽に見せようとしているのか、それとも俺とラインがあるのが狼で味方してくれて都合がいいからか? 占い結果は二人とも初日からずっと白だな。……PPあったらPPと言ってくれるか? PPじゃないのか?」
9番イヴは丁寧に解説を入れた。その姿は何も知らない者が観れば「解説のお姉さん」といった様相だ。
「盤面は簡単です。5番6番7番に白が出ていて7番は狩人でしょう」
カイムはイヴの声を聞きながら人狼記録ノートの新しいページにイヴ占い目線の盤面を書いていく。番号に白をつけていく。
「1番3番4番が役職に出ました」
カイムが声に合わせて情報を書き足し、ユキテルが自分のメモを見つめている。
イヴは学校の先生のように微笑んだ。
「非COの2番5番6番8番に村人は3人しかいません。役職4人の中に真は2人しかいません。3番目線は1が黒なのでしょう、3番を真とすればあと1人吊れば終わります。私が真なので、対抗の4番。3を真とするなら4番です。わかりますね」
イヴは丁寧にもう一つの可能性を検討した。
「3番が偽なら34狼狼もあります。3番が狂人なら2が狼と考えます。3番は真なのですよね?」
イヴは確認するような視線を向けた。オブシダンは(昨日僕に投票してたようだけど)と内心で思いながらへらりと笑った。
「3番真なら4番を吊れば終わるので、今日は4番です。PPはありませんよ」
オブシダンは肩を竦めた。
「その論調だと、今日で終わらなかった時に3番に黒塗りをされそうに感じてしまうけど。でも、僕は4番の真を切るよ。昨日の投票の理由を聞きたいかな。9番の今の発言はとても真ぽかったんだよねぇ。占い師を決め打つから、4番を吊って終わらなかったら、うーん……狩人なのに噛まれていない7番か……もし5番が人狼ならすごく潜伏がうまいねぇ」
真を切られた4番オルキテは(うげっ)と内心で呻きながら釈明をする。
「2番3番はボクの白だよ。ワンチャン2番3番どちらも生き残るのに賭けたんだ。6番は狩人かと最初思っていて占っていなかったけど狩人が出て来たし、確白を作ろうと思って占ったよ。ボクは9番5番にいきたい」
ユキテルが「生き残る目に賭けたという理由はちょっと微妙じゃないですかねー」と呟いた。
「3番目線だと14、15が見えません? 7番いくんです? 噛まれてないからですー? あたしは3番狂の目も捨てませんよ。投票的には2番4番がちょくちょくあやしい動きなんですよね。ま、今日は4番いきまーす」
こうして、4番オルキテが吊られたのだった。
(これは勝てるのではないでしょうか?)
処刑されたため席を立ち観戦者と一緒に見守っているセシリアがイヴが真目を取っているのを見て感心する。
「そういえば」
夜のターンを淡々と進行する卓を見ながらセシリアは観戦者に話を振った。
「どなたか「マキナ教」についてご存知の方はいますか」
セシリアが情報収集をするうちに、ゲームでは4日目が幕を開けていた。
ゲームはまだ終わらないようだった。各役職が結果を報告する。
<4日目>
生存者
3 オブシダン(真霊能)4の白
5 ユキテル(?)9の白
7 カイム(狩人)9の白
9 イヴ(人狼・占い師騙り)
占い 9番→6白→7白→5白→3黒
4番→3白→2白→6白
霊能 3番→1黒→2白→4白
吊り 1番→2番→4番
噛み 8番→6番→なし
狩人 3番→9番→3番
「昨夜は誰も死にませんでした」
GMダイキがそう言った。
9番イヴが勝利に賭けて説得をする。真目は取れていた。あとは信じさせれば勝てるのだ。
「3番黒で終了です。昨日と同じように、今度は「私を真と見る3番目線の盤面」を見てください。1番で黒が落ちて、私が真ですから4番しか黒がいません。4番を吊って終わるはずですが、結果は白。破綻です。今日は7番か5番でしたか? 真と決め打った占い師の白を黒と言わないといけないのが苦しいですね」
(9番が偽占い師なんだねぇ)
オブシダンはうんうんと頷いた。
「5番は村人だよね。だからPPはないと。なるほど、なるほど」
腕を組み何度も頷く男はやはりうさんくさいのだが。
「9を真と見て僕が狼なら1が真、234に狼2人と狂1人がいるわけだ。2番は遺言で必ず3番を吊れと言っていたね。2番が仮に狼なら相方狼が吊られるとゲーム終了だから言わない。2番が狂なら遺言から1番を主人と見ていたことになる。
4番が狼なら相方狼が投票拮抗の時に対抗に入れてくれてもいいんじゃないだろうか。
2日目の夜に6番が噛まれたのは、7番狩人が3日目最初の発言順になり「なぜ噛まれなかったのか」と言わせて9番が盤面解説をし、4番吊りの流れを作るため。そして9番を真と決め打てば破綻寸前の僕に「噛まれない狩人はあやしいのでは」と思わせて狩人を疑う発言を誘うためだろうか。
占い師と霊能者の信用勝負だ。信用勝負になっているということはPPがないということでもある。9番を吊ってほしい」
うさんくさい様子ではあったが、そこには確かなパッションがあった。
5番ユキテルは軽い調子で頷いた。
「PPありません。3狼なら7番狩人を噛めばよかったので噛みなしにする必要なかったですよね。7番狩人さんは3→9→3と役職をしっかり護衛して、今夜は9番を護衛する番。3番を処刑してあたしを噛めば人狼9番の勝利です。
3番が狼なら4に囲われていました、2-2を作りに出る理由が薄く、狂を捜す必要もないです。
一方9番狼なら7番をワンチャン狂の目があると見た可能性も考えられます。素直に考えればあやしい動きだった2番が狂ですけど」
7番カイムは(PPはないんだよな?)と確認するように視線を巡らせた。
「俺までにPP発言がないってことは――」
と、その時。
会場に大音量で放送が響いた。
「ゲームを中断してください! 今すぐゲームをやめてください!」
それは、猟兵仲間の声だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『狂信者』
|
POW : 広域圧裂波
レベル分の1秒で【右手に装備する超振動刀の斬撃から衝撃波】を発射できる。
SPD : 光子圧縮体射出機構
【左腕を変形、砲身を形成し光弾を射出する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 原子配列変換
自身からレベルm半径内の無機物を【硬質且つ鋭利な先端を持つ触手】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:リーオカ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●人狼ゲーム/ 人村
嵐の腕を掴む民間人アミロの顔は蒼褪めて視えた。
「それはどういう意味……」
嵐が問いかける。アミロが嵐の声に応えて顔を上げる。そして、何かを視てギクリと身を竦ませた。
「もう行かないといけません」
「あ、おい」
掴んでいた手が離れ、背を向けてアミロが駆けだした。
「待――、」
追い縋ろうとした嵐の耳に猟兵仲間の放送と複数の民間人からあがった悲鳴が届いた。
「ゲームを中断してください! 今すぐゲームをやめてください!」
声はトリテレイアのものだった。
「キャアアアアアアッ!」
視れば、似通った顔と衣装の男が会場の至るところで剣を抜き会場を制圧しようとしている。猟兵にはわかった――UDC、オブリビオンの狂信者だ。
「皆さん、出入口は無事です!!」
ステラと源次とトリテレイアが出入口を守っていた。
この時、
マイは民間人の男性を数人連れている。
アリスは修学旅行生数にと一緒にいる。
澪は民間人マナミと一緒にいる。
ビスマスは料理を卓に差し入れしている最中だった。
エウトティア、アネモネは民間人親子ハシモト・ナオキ&エリ、民間人まきなさんを護衛している。
緋姫子と黒玉は人狼ゲームエリアにいたことにしてもよいし、ぐらぶるAエリアに遊びに行っていたことにしてもよい。
セシリア、オブシダン、ユキテル、カイム、オルキテ、イヴの6人は観戦者に囲まれてゲームをしている最中だった。
◆
「人類には、可能性があります」
アミロがマイクを手に演説を始めた。
「ぼくは小さい頃、夜空を見て星が掴めそうで手を伸ばしたことがあります。成長するにつれ、その手が星に届かないことが当たり前に思えるようになりました。でも人類は、科学技術によって星に行けます。
アニメの世界で魔法を使ったり銃を格好良く使ったりロボットで人を助けて活躍するキャラクターたちを見て、ぼくは小さい頃夢を見ていました。自分があんなふうにヒーローとして活躍する夢です。成長するにつれ、この社会にそんな夢を抱く余地はないのだと当たり前に思うようになりました」
「みなさんは人狼ゲームを知っています。
そこには「沼」がいましたし、みなさん自身も「沼」と言われたことがあるかもしれません。
ぼくたち人間は、義務教育を受けてある程度の思考力や論理力、暗記力を磨かれてなお――話がきけない、記憶ができない、間違ったことを言われても信じてしまう、正しいことがよく考えればわかるのに間違ってしまう、投げ出してしまう、疲れてしまう――メモを取ろうとして手が間に合わない、そんな時もある」
「そこのあなた、なぜマスクをしているのですか? インフルを移されたくないから?
そこのあなた、杖をついていますね。おみ足が悪いのでしょうか?
どんなに体を鍛えても、肉体には限界があります。
どんなに気を付けても、病気にかかり、骨折したり関節を傷めたり筋肉を傷めたりして、ケアしてケアして誤魔化して、老化する」
「しかし、人類には可能性があります。
みなさんもご存知でしょう、ぼくら人類は不可能を可能にしてきました。これからも、そうです。
治せなかった病気が治せるようになり、クローンの子供が生まれて、ガタが来た部位を交換できるようになる。
ロボットがひとの代わりに仕事をする。自動車が自動で目的地まで運転される。
みなさんのまわり、この会場にいる「彼ら」は機械化した肉体をもっています。こころは、ありません。「マキナ教」には確かな科学技術力と、神秘の力があります。あるんです」
「みなさんは、「頭を望んで酷使し、己の能力を向上させようという志がある」という点が評価され、選ばれた民です。
無理強いはしませんが、志を等しくする方は、両手をあげてぼくの近くにきてください。
機械化された狂信者たちの肉体を依り代に神を降ろしましょう。そうしてぼくたちは科学の力と神秘の力を融合させ、幼いころに夢みていたような無限の可能性を追求できるのです……!!」
オルキテのもとに電霊が新しい情報を届けていた。
「これは、メールを送った奴の情報!」
ゲームに手を割かれてすっかり遅くなったが、電霊は仕事を果たしていた。
「ゲーム大会に参加するよう呼び掛けていたのは、ギルマスのダイキ。ゲームに参加しないよう呼び掛けていたのは、今演説をしているアミロ?」
嵐の背後では民間人ダイキが真っ青な顔で「みなさん、出入り口から逃げてください! 逃げましょう、警察呼びます! ああっ、なんでこんなことに!」と悲鳴をあげているのだった。
現場である会場は恐慌状態に陥っている。周囲の民間人は「ゲームを楽しみにきただけの普通の民間人」と「オブリビオンではないが、マキナ教に影響されて少し精神がおかしくなっている民間人」がいる。後者は他の民間人や猟兵の行動を阻害したり、危害を加えようとする可能性がある。
――「村人陣営は、行動を開始してください」。
💠3章のプレイングにつきまして
1章2章ご参加ありがとうございます。
3章のプレイングは2月4日(火)8時31分~2月6日(木)8時30分までの期間に受け付けさせていただけますととても嬉しいです。
怯えていたり逃げ惑う民間人をまもりながらオブリビオン(UDC)であるマキナ狂の狂信者と戦うことになります。マキナ教に影響された民間人はオブリビオンではありませんが、背中に庇って戦っていると突然包丁で刺してくることもあるかもしれません。そのあたりは基本プレイング通りになりますので、「見分けて刺される前に無力化する」「守ったが後ろから刺されてショックを受ける」「危険に晒された民間人や猟兵を庇う!」みたいにご自身の望む展開をどうぞ。
それでは、素敵なプレイングをお待ちしています。よろしくお願いいたします!
ミーヤ・ロロルド(サポート)
『ご飯をくれる人には、悪い人はいないのにゃ!』
楽しいお祭りやイベント、面白そうな所に野生の勘発動させてくるのにゃ!
UCは、ショータイムの方が使うのが多いのにゃ。でもおやつのUCも使ってみたいのにゃ。
戦いの時は得意のSPDで、ジャンプや早業で、相手を翻弄させる戦い方が好きなのにゃよ。
口調だけど、基本は文末に「にゃ」が多いのにゃ。たまににゃよとか、にゃんねとかを使うのにゃ。
食べるの大好きにゃ! 食べるシナリオなら、大食い使って、沢山食べたいのにゃ♪ でも、極端に辛すぎたり、見るからに虫とかゲテモノは……泣いちゃうのにゃ。
皆と楽しく参加できると嬉しいのにゃ☆
※アドリブ、絡み大歓迎♪ エッチはNGで。
桑原・こがね(サポート)
あたしを見ろォ!
登場は雷鳴と共に、派手に演出していきたいわね!
名乗りを上げて注目されたいわね!
囮役とかも嫌いじゃないわ。
こそこそしたり駆け引きするのは苦手だし、何事も正面突破の力技で解決したい!
戦うときは大体斬りかかるか、武器を投げつけるか、雷出すかのどれかね。徒手空拳も心得が無くもないわ!
さーて、雷鳴を轟かせるわよ!
ビスマス・テルマール
ある意味人類の夢ではあるのでしょうが
そこに漬け込み邪神復活ですか?悪辣にも程がある
⚫POW
狂信者達を『早業』でUCによる南瓜砲弾を撃ち『範囲攻撃』の『制圧射撃』で牽制
戻って来た南瓜砲弾を『早業』で鎧装に変形させ装着
鎧装の効果で
強化された『オーラ防御LV300』を『範囲攻撃』で広範囲に展開し
一般人を狂信者の攻撃やUCから守りつつ避難誘導
狂った一般人は『第六感』で『見切り』その凶行を『武器受け』
一般人に及ぶなら
『庇う』し阻止
手加減攻撃し無力化
避難誘導後『オーラ防御LV300』を展開し『属性攻撃(南瓜)』と『誘導弾』を込めた『一斉発射』をウルシさんと一緒に行い狂信者を一掃
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
●under_light&card_sweetam
「キャアアアッ!」
狂信者が無感動な瞳を民間人に向け、鈍色の鋼剣を振る。
「ただの刀じゃないにゃっ!」
警告の声が飛ぶ。声は年端も行かない女の子の声だ。猫耳をぴこぴこさせて剣の超振動に気が付いたのはサポート猟兵のミーヤ・ロロルド(にゃんにゃん元気っ娘・f13185)。
共に現れたサポート仲間の桑原・こがね(銀雷・f03679)は銀色の雷光を身に纏い稲妻のごとく疾駆し狂信者の剣に勢いの乗った刀を衝突させた。
ギィンッ!
濁音混じりの衝撃音。バチリと雷光が迸る。
「あたしを見ろォ!」
小柄な少女とは思えぬ膂力で長身の敵を押し切って剣客少女の金髪がさらりと流れる。金糸の隙間に覗く勝気な藍染の瞳が笑む。
(――さーて、雷鳴を轟かせるわよ)
「ちゅうもーく!!」
こがねが名乗り上げる中ミーヤがチャーミングな尻尾をゆらしながらゲーム卓にスイーツを並べていく。
朗々とした声が響く。
アミロと違い、道具で拡声されないこがねの声は、けれど人々の耳にしっかりと其の存在を伝える。
男性民間人はこがねの溌溂とした声とスタイルの良さがわかる衣装――特に胸元と健康的に露出した生足――に釘付けとなっている。
「なんだ!? 映画の撮影……?」
こがねの刀が風切音を唸らせ高速で振られる。UDC狂信者が目立っているこがねに襲い掛かってきたのだ。
「無粋ね」
柳眉をよせてこがねが刀を振り切ると同時に逆手で短剣を投擲した。弾丸めいて飛んだ鋼線は遠く民間人を狙っていたUDCの手首に命中し、武器落としを成功させる。
「よそ見しちゃだめじゃない」
窘めるように言いながらこがねは何気なく一歩後ろへ跳んだ。小さな玩具みたいな刃がこがねの元いた床に飛んでくる。民間人が放ったカッターだ。
着地したこがねの背後からは別の民間人がタックルをするようにつっこんでくる。
「硬くて投げられるものは全て武器、我が方円流の教えにもあるわ。気が合いそうね」
つっこんできた民間人の背に片手をついて床に転がしながら自身はひらりと身軽に跳ぶ。天井すれずれまで派手に魅せるような跳躍をみせながら高所からの視点頼みで短剣を投げて離れた場所に支援をしながら、こがねは高らかに名乗る。
「聞く気がなくても教えるわ! あたしが言いたいから!
――あたしは方円流の桑原・こがね。なかなか血の気が多い敵が集まってるみたいじゃない。全員相手をしてあげるから纏めてかかってきていいわよ!」
こがねが注目を集めている隙にミーヤはスイーツを並べ終えていた。
(注目を集めてくれてたすかったにゃー♪)
「イチゴのタルトにパンケーキ、バレンタインにはちょっとハヤイけどチョコレートもプレゼントにゃ!」
混乱した会場の一角でひとびとが愛らしい猫耳少女とスイーツに心を奪われる。
「あれ? 今のってショーだったのかな?」
「逃げなくても平気なのかな? だって、あの女の子ふつうにしてる……」
ミーヤが煌く宝石のような瞳をぱちりとウインクし、人々に呼びかけた。
「出入口は混雑しているにゃ。のんびりひと休みしてから帰るのもいいと思うにゃ!」
言いながら自身もビビッドカラーグラスに盛られた星型のチョコレートをぱくり☆
「ベリーベリースイートにゃ!」
ミーヤ、民間人に向かってとっておきのスマイルを披露!
そのままチョコレートのCMに使えそうな極上のキュートスマイルに近くにいた民間人が「なんだ、こういうイベントだったんだ」と笑ながらスイーツに手を伸ばす。
――みんな、楽しむために会場に来たはずにゃんね。
ミーヤはあどけない瞳で人々を見つめ、いとおしく微笑んだ。
「楽しんでくれると嬉しいのにゃ」
民間人の中にはマキナ教に影響されている者も混ざっていたかもしれない。だが、彼らはスイーツを楽しみ、他のことはどうでもよくなってしまったようだった。
「あの一角に集まっている人たち……」
アミロが何かを言いかけて言葉を噤む。だが、彼が何も言わずともUDCの狂信者たちが動いていた。
冷たく感情の窺えない瞳が楽しそうな人々を見つめ、接近する。接近するにつれ速度は不思議と落ちていった。
「これは、ユーベルコードでしょうか。……援軍? 頼もしいです!!」
元から会場にいたビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)がサポート猟兵の支援に口の端をあげて砲弾を撃った。
ぽんっ!
ぽんっ、ぽんっ、コロコロ。
ミーヤと民間人が集まるゲーム卓を守るように南瓜がコロコロと転がり、道を塞ぐ。見た目はとても美味しそうだ。だが、UDC狂信者が触れれば南瓜は小爆発を起こして敵を吹き飛ばし、ビスマスの手によりミーヤと民間人の小グループを守る防衛線がつくられたのだった。
「ウルシさん、隙間をつくらないよう気を付けてください」
声をかけるのはスッポンメカのウルシに対してだ。ウルシはビスマスの声に小さな首をちょこんと縦にふり、懸命に南瓜を放つ。
「スッポンから南瓜が出てるにゃ」
ミーヤが不思議な光景に楽しそうな笑い声をたてた。
「守ってくれてありがとにゃー!」
「ある意味人類の夢ではあるのでしょうがそこにつけ込み邪神復活ですか? 悪辣にも程があります」
ビスマスはアミロに声をかけながら会場中に守りのオーラを展開させていく。
「近くにいる方はミーヤさんのもとへ! 出入口付近の方はどうか落ち着いて」
ちらりと見えた出入口付近はパニック状態となっているようだった。自身に殴りかかる民間人の腕を手加減しながら受け止め、ビスマスは「ひとりで何もかもをこなすには、あまりに手が足りませんね」と呟いた。
「任せていいわよ!」
民間人とUDCをまとめて相手取り大立ち回りを魅せながらこがねが頼もしい声をあげている。
――あたしは、ここにいる!
こがねの瞳がきらきらと輝いていた。一息もつく暇なく小柄な身体は躍動して、肌は軽く上気して汗ばんでいる。肩で息をすれば空気が美味しい。
――ひとがたくさんいる。
ふと思い出すのは、自分に向けられた瞳。
強くなれ、と望み鍛えてくれた瞳。
幼いこがねの身の上に同情的な瞳。
小娘に何ができる、と侮って、けれど――、
「ふふふ」
口の端が強気に持ち上がる。こがねはあの時も思ったものだ。
「あたしを認めさせてあげるわ」
刀を振れば空気が唸る。重い感触、抵抗を押しのけ「勝つのはあたし」と強引に刃を通す。――ほら、勝った。
「まだまだ、これからよ!!」
――だから、あたしを見ろ。
――魅せてあげる。
剣客少女が舞うと表現するには荒々しすぎる戦踏の中に在る。
「手荒なことはしたくありません!」
ビスマスが民間人を抑えつけ、優しさの溢れる声をかけている。
「もとに、戻ってください」
ミーヤはそんな混戦を見ながらそっと息を吸う。
愛らしい声が紡ぐのは、あたたかな歌だった。
「♪ ぷんぷん、怒るのは だあれかにゃ?
♪ ふわふわ マシュマロが甘々にゃぁのに
♪ ぷるぷる ぷりんがお皿の上で舞ってるにゃぁのに
♪ 怒るのにいそがしくて 食べてくれにゃい?
♪ ちょっぴり無理やり おくちにシュート!
♪ ひとくち はっぴー&すいーてぃー 立ち寄って♪
♪ わんすてっぷ にゃんとらっぷ 味旅行♪
♪ 一緒に 夢みる テイスティ・怒り忘れて みんながスマイル!」
可愛らしい歌に人々が癒されていく。
「癒しの歌ね――これでもっと戦えるわ!」
こがねが勢いよく足を踏み込み、苛烈な一撃をUDCに叩き込む。
「さあ、次は誰っ!?」
こがねの放つ雷光が照明に照らされた会場内にあってなお眩く耀いた。
――彼らの戦いはまだ、始まったばかり。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
叢雲・源次
※アドリブ歓迎
●復讐者、再び
民間人達が恐怖に怯え、惑う
狂信者が剣を振るう
踏み込みと斥力が地面が陥没させ一瞬で移動
民間人に迫る衝撃波に立ち塞がり一閃。衝撃破を絶ち斬る
マキナ教団…不倶戴天の仇敵
不思議と口の端が吊り上がる感覚を覚えた
「やはり、これが俺の宿業か」
顕現したのは狂信者…貴様らだけか?
克肖女はどうした
廉施者は
佯狂者は
始祖いないのか?
まぁいい。どうあれ…俺が此処にいる限り貴様らが理想へ至る事は無い
「此処が貴様らの地獄と知れ。」
>Inferno_cylinder...ignition...overclock
>RDY STRATO_SABER
高速戦闘開始
超高速突撃、狂信者達斬り捨てんとする
●復讐者、再び
人の声が音の渦のように会場に溢れている。ぬるい平和に浸かって生きてきた民間人たちの胸の鼓動を暴れさせ、背をじっとりした汗に濡らすのは「恐怖」。
「ヒ、ヒィッ!!」
黒装束の男が長い鋼を振り上げる。刃がついた本物の「武器」だ。ゲームの中のキャラクターが揮うような「凶器」。そう、それは「人を殺す」――、
「あ、あ、あああああああああっ!!」
逃げようとして足をもつれさせた男が床に倒れ込む。全身が傍目にもわかるほど震えていた。ふちに涙をあふれさせた見開かれた黒目に、男の生命を刈り取ろうと振り下ろされる剣が映って――、
瞬間、反応したのは1人の男。
――叢雲・源次(DEAD SET・f14403)。
>Vendicatore di nuovo.
水の流れるが如く抜刀の姿勢を取り。
その男の周囲に静かな闘気が円状に膨れ上がる。烈しい踏み込みは周囲に雑音を忘れさせ、硬い床材が破片となり瞬きするにも満たぬ間に長身が下に沈んだように見えた――斥力が地面が陥没させたのだ。
と、思いきや。
「!?」
周囲の人々がぽかんと口を開ける――沈んだ、と思った瞬間、そこに男の姿はもうなかった!
「ああああああああっ、――!?」
悲鳴をあげていた男が息を呑む。
目の前に迫っていた死を遮るように源次が一瞬で現れ、衝撃波に向かい、抜き放つは一の太刀。白線に輪郭ぶらせてブルーグリーンの光迸らせ死線断ち切る一閃は無音のまま敵の衝撃波を霧散させた。
周辺が現実離れした光景に静寂に飲まれたようになる中、源次の口の端が吊り上がる。異様な男を凝視する人々はその静かな笑みに心臓が鷲掴みにされたようになる――例えるなら時限式の爆弾が今まさにカウントを終えようとしているのを発見したような心地。
「やはり、これが俺の宿業か」
感情の薄い声は淡々として剣戟に紛れる。踏み込みの勢いそのままに放った一閃の流れに逆らうことなくごく自然にくるりと身を廻す様は独楽に似て、いつの間にか二の太刀が抜かれて遠距離からスナイプされた光弾を弾いている。
――滅ぼせ。
左右から走り寄るUDC狂信者が突きの型に震わせる剣が源次を挟撃にて串刺しにせんと狙い、そんな戦術を児戯と見下すように男は体重を感じさせぬ跳躍にて凶刃を免れてご丁寧にワンステップ足を交差する刃に乗せ足場として利用して見せた。
「顕現したのは狂信者……貴様らだけか?」
ダンッと力を入れて足場を崩しながらくるりと宙で縦に廻る。加勢しようと駆け寄っていた1体の狂信者が回転のままに縦に振るわれた太刀に鮮やかな縦の血線を斬り裂かれた。
血と肉と――無機質な鉄の身体が露出する。
「ギャアアアアッ!!」
「キャアアアアアアッ!!」
音を思い出したような世界に戦いの臭いが立ち込める。
「克肖女はどうした」
思い出したように振り返る一閃は刃を足場に跳ばれて体勢を崩した左右の右を裂き、逆手の鋼線は左を狩る。
「廉施者は」
ぐしゃりと足元で潰すのは本物か偽物かもわからぬ眼球だ。潰す感触にパチリと音鳴る電子音、そこで初めて偽とわかる。
「佯狂者は」
身を沈めて大振りに放たれた超振動の一撃を回避して床に並行に脚をまわせば硬い金属音との衝突音、マネキンが倒れるように木偶が倒れ足で踏みつけ抑え込みながら後続と斬り結ぶ。
「始祖いないのか?」
応える声がない。
期待したわけでもない。
思いながら瞳の奥が揺れ動く。
「まぁいい。どうあれ……俺が此処にいる限り貴様らが理想へ至る事は無い」
>Inferno_cylinder...ignition...overclock
「此処が貴様らの地獄と知れ」
>RDY STRATO_SABER
――高速戦闘開始。
――超高速突撃、狂信者達斬り捨てんとする。
「七 閃 絶 刀」
悲鳴を忘れたような狂信者の首が飛ぶ!
再び音を忘却せよ! と神速が空気を震わせれば瞬きひとつの時間も許さぬ。宿りし灼熱の熱を忘れたように筋肉が収縮し、全身がバネのように二刀に敵刻む運動力を与え続け、
「……、は」
息を吐く。それすらも敵を刻むためと言いそうな瞳の奥に人々は昏いものを感じ、自分たちとはあまりに「違う」其の男に震える。
――そんなものがただの雑音(ノイズ)にもならない。
混沌の切っ先が鋼を絡め取り、億が一の可能性すらないのだと淡々と教えるように武器を取り上げて隙を逃さずもう災厄の一太刀が敵を討つ。
――敵がいる。
深紅の瞳が冷えていた。
源次の速度がグンと増す。これからが本気なのだと告げるような男の戦靴が苛烈に踏み込んで、一切を逃す気がないのだと世界に叫ぶようで、時計の針が一秒を刻むのも遅いと叱責しながら――叫ぶような其の刃は、やはりとても、静かなのだった。
大成功
🔵🔵🔵
オルキテ・タンプル
●心情
・戦闘は得意な奴に任せた。ボクはボクの得意分野で行かせてもらうよ。こう言うのは適材適所ってね。電霊使いの本領を見せてあげようじゃないか。
・さあ、楽しい悪戯の時間だ。
●行動
・UCの蜘蛛をファレノプシスに憑依。電霊が憑依したことでファレノプシスの性能向上。さらにファレノプシスの五感をボクのものに
・デンファレ展開。会場全ての情報をボクの元に集めるよ。個人的には、ギルマスの提示した退避ルートとか気になるしね。そこ狙って一網打尽とか目も当てられないし
・さあ、情報処理の時間だ。情報を制する者が世界を制すってね。教団連中の情報端末は破壊工作(クラッキング)だ。連携を阻害すれば、個で勝る猟兵が有利だろう
アリス・セカンドカラー
そう、アミロさんはそうだったのね。
とりま、時間を操縦して凍結し、時間稼ぎをしておきましょ。
オブビリオン狂信者のみ凍結の対象外、するとどうなるか?地球の自転速度がそのまま慣性として働いて凍結した時間の壁に叩きつけられるでしょう。(鎧砕き/鎧無視攻撃)
あ゛……慌ててアミロさんの時間を巻き戻し、事故なんてなかった。いいね?
さて、アミロさんと民間人のマキナ教徒を解凍。私は悪い狼さんだから、みんな纏めて捕食するわ♡悪い心は盗み攻撃でないないして、全部吐き出させてスッキリさせたらもうこんなことはしないでしょ♡
万が一、一般人に被害が出たら時間巻き戻しで治療もしくは蘇生するわ。
後はおまかせー☆
●こんなこともある
(戦闘は得意な奴に任せた。ボクはボクの得意分野で行かせてもらうよ。こう言うのは適材適所ってね。電霊使いの本領を見せてあげようじゃないか)
オルキテ・タンプル(もう一人の蘭花・f15791)がおてんばな瞳にやる気を漲らせている。「やる気」が「殺る気」ではないのは一見破天荒に見えてもオルキテがサポート寄りであるからだろうか。
「さあ、楽しい悪戯の時間だ」
オルキテの周囲に蝶が舞う。情報収集用ドローンのファレノプシスだ。
可憐な蝶たちに囲まれるオルキテは民間人の目にはアニメ世界から飛び出してきた妖精の姫君のように幻想的で美しい。
その白い手が雪崩のようにコードを綴る。
Commencer Monde
Appeler Écoutez
Araignée Magicien
Commander Commande
微細な光を纏う電霊がオルキテの綴るコードに召喚される。おてんば娘が思い出すのは、初めてこの電脳魔術を成功させたとき。
――これくらい出来て当然、と言いながら誇らしげにオルキテを見つめる肉親の目。
「On va jouer ensemble ?」
電霊たちが音もなくファレノプシスに憑依していく。
「Montrez-moi.」
愛らしい声に蝶が翅を動かして光の粉がはらりと舞う。
オルキテの青い瞳がどこか遠くを視るように瞬いた。たった今、ファレノプシスの五感がオルキテのものとなったのだ。
蝶が会場を飛ぶ。
揺れる視界を共有しながらオルキテは電脳魔術で作った中投影のタッチディスプレイとキーボードを展開する。
少女の口元が楽し気に笑っていた。
情報が集まってくる。膨大な量の情報が――精査し放題だ!! なんて、楽しいんだろう。
(ギルマスの提示した退避ルートが気になるね)
(そこ狙って一網打尽とか目も当てられない)
「さあ、情報処理の時間だ。情報を制する者が世界を制すってね」
教団の情報端末に破壊工作を仕掛けながらオルキテがコロコロと喉を震わせて笑った。
「そう、アミロさんはそうだったのね」
一方、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)も能力行使に踏み切っていた。
とりあえず、と操るユーベルコードは周囲の時間を凍結させて、例外としてオブリビオンだけはグシャグシャと悲劇的な音を響かせて撃破されていく。
「ワンダータイムプリンセス」
――不可思議な『夜』の王女様はきまぐれに時を支配する。
アリス以外が認識し得ない不思議な時間世界の中、民間人アミロがぐしゃっと。そうぐしゃっとアレなことになっていた。
「あ゛……」
やってしまった。これはクレームが来る!そう思ったかどうかは定かではないがアリスは高速で時間を巻き戻した!
きゅるきゅるきゅる……(巻き戻る音)
「事故なんてなかった。いいね?」
事実は隠蔽されたのであった。しっかり報告書には残るけど!
「さて、アミロさんと民間人のマキナ教徒を解凍」
「お手軽簡単だね」
「あら、オルキテ。悪い心は盗み攻撃でないないしてあげようと思うのよ」
「うん、隔離」
電脳魔術師は世界の平和のために仕事をしてくれている。がんばれオルキテ! 君の魔術が世界に平和を齎すと信じて――!!(打ち切り!)
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アンネリーゼ・ディンドルフ
アドリブ&連携大歓迎
◎WIZ
「あのゲーム内フレンドメールは、マキナ狂の影響がなかった人狼ゲームの村人陣営が邪魔なので隔離を狙ったものですね」
状況を見て納得した
「この恐慌状態、強引に抑えましょう」
ユーベルコード「アブソリュート・ネゴシエーション」を発動
「マキナ狂の狂信者及び民間人の皆さん、直ちに武器を捨ててください。そして民間人の皆さんは、落ち着いて速やかに出入口から避難してください」
マキナ教に影響されていようといまいと無力化させ、民間人を纏めて退場させようと試みる
マキナ狂の狂信者に対しては、弓ハープを使い早業の先制攻撃
相手の攻撃は見切り、カウンターで咄嗟の一撃を食らわせようと試みる
イヴ・クロノサージュ
アドリブ連携歓迎します
●心情
大変な事になっちゃった…
私も救出に動こう
●行動
皆さん、こちらに避難して下さい!
会場の外に出れます!
避難誘導します。
遭遇戦は、
狂信者(民間人)は頼りになる方に任せて
オブリビオンを叩きます
【空中浮遊】で飛行しながら
攻撃を【見切り】回避
そのまま、聖槍で【カウンター】攻撃
【部位破壊】で足を狙い、足止め最優先
基本行動はメディック。救急箱やAEDを持ち、怪我人の治療をします
重傷者を最優先します
【全力魔法、範囲攻撃、属性攻撃→癒属性】で
広範囲にUCを使用して軽症者は纏めて回復させます
●
人狼していたお姉ちゃんだと言われたら、お返事をしたあと
あざとい感じで「がおー。」と小声で呟きます
●role&role and...
(大変な事になっちゃった……私も救出に動こう)
イヴ・クロノサージュ(《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113)が席を立ち、避難誘導に乗り出した。
「皆さん、こちらに避難して下さい! 会場の外に出れます!」
歯車がかみ合って機械天使の翼が神秘的に広がる。ふわりと空中に浮いたイヴは迷える人々を導く天使のように清らかだ。
「危ない!」
誰かの声がして、同時にUDC狂信者が原子配列を変換して放った触手が空中のイヴを狙って伸びる。
(飛べば目立つ。目立てば狙われる。当然、承知の上よ)
イヴは触手の軌道を読み切ってひらりと避け、雷が地に落ちるように苛烈に白銀の聖槍でカウンターの突きを放った。
「!!」
悲鳴をあげて敵が足を抑えて倒れ込む。仲間の仇を討とうと触手を放つ新手には風のように廻り込んで飛翔してからの槍撃が振舞われた。
(あの方は、人狼ゲームをなさってた方ですね)
彼女のプレイを見ていたアンネリーゼはその腕前がわかる。それは、アンネリーゼ自身も「嗜みがある」からこそわかるのだ。
「あのゲーム内フレンドメールは、マキナ狂の影響がなかった人狼ゲームの村人陣営が邪魔なので隔離を狙ったものですね」
アンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)はそう推理をした。
(危険だから来るなと言ったのは)
繊細な睫がそっと瞬いて嘗て恋人が宝石のようだと囁いたピンクサファイアの瞳が煌めいた。
アンネリーゼには経験があるのだ。
(殺したくないから?)
エルフである彼女にとって何よりの安らぎを齎した深い森の中、樹齢を数えることもなく時間という概念も忘れてしまいそうな中。
木々が風に枝揺らし小鳥が羽根を遊ばせて舞う中、毎日のように現れた変り者の吸血鬼の彼。
アンネリーゼの歌声に妖し気な目元を和らげて、鋭い牙を見せぬようにしていた。その牙を彼女に剥くことなく――、
「いいえ」
「この恐慌状態、強引に抑えましょう」
思考にピリオドを打ち、アンネリーゼは言葉を紡ぐ。歌姫の紡ぐ言葉には意識して特別な力を宿してある――猟兵ならば、それがユーベルコードだとわかるだろう。
「マキナ狂の狂信者及び民間人の皆さん、直ちに武器を捨ててください」
優美なラインを描く弓ハープが自然に動いてアンネリーゼに襲いかかる狂信者を物理的に大人しくさせる。嫋やかな歌姫は、見た目と違い戦う力も有しているのだ。
「――そして民間人の皆さんは、落ち着いて速やかに出入口から避難してください」
イヴがアンネリーゼの声に「仲間が動いてくれているね」と頼もしく微笑む。
声に宿る不思議な力で人々が沈静化していく。その様子を見下ろすイヴは時折荒れ狂う触手を冷静に排除して人々を守った。
「上空からの警備は任せましたよ」
声が届くだろうと思いながら仲間へ声をかけ、会場を油断なく見つめながらアンネリーゼは推理を再開させようと「アミロ」を視線で追い――、
「子供が……」
目を見開く。
床に座り込むようにしている子供が眼に入ったのだ。
「いかがなさいました? 親御さんとはぐれてしまいましたか」
慌ててアンネリーゼが子供のもとに駆けつけ、助け起こそうとすると泣くでもなくパニックをおこすでもない子供が手に持つのは人々に踏まれて汚れた「人狼ゲーム・試合ログ集」という同人誌だった。
「これ、お父さんの本」
ゲーム好きが有志で作成したと思われる採算度外視の一冊は、会場内でのみ販売される一度切りのものなのだと見て取れる。
「これ、お父さんが友達とつくったんだって。すごく面白いって言ったけど文字ばっかでぜんっぜん面白くない」
「ああ、……」
ボロボロの本と子供の声に言葉を捜すアンネリーゼのもとに父親が遠くから走ってきて子供を抱き上げる。
「すみません、うちの子をありがとうございます――逃げるぞ」
「本、落ちてたんだよ、汚れちゃった」
「本なんかより命が大事だよ!」
遠くなる子供がアンネリーゼに手を振った。親子の声がエルフの耳に届いている。
「家かえったらモンスターカオスしようよ」
「ああ、ああ。家かえったら一緒にあそぼうな――お前はこんな状況でそんなこと言って。将来大物になるよ」
「お父さんの本きれいになる?」
「汚くても生きてりゃいいよ」
ふわり。
天井付近から光の粉が降ってくる。
雪めいた清らかな光粉は床に近づくにつれ光線をのばし、巨大な魔法陣を形成した。イヴがユーベルコードを発動しているのだ。
「天使の祝福よ!―――アンジュリーベ・ヒーリング」
救急箱やAEDを持ち飛び回るイヴが全力を振り絞り広範囲に展開した《天使ノ祝福》は負傷した民間人をまとめて癒し、傷を塞いでいく。
「天使だ……」
人々が呆然と呟く。信仰心をあまり持たぬこの都会の民間人にとっても、その光景はあまりに現実離れしていて夢のようだった。現世に顕現した天使。そんな言葉がこれほど相応しい者がいるだろうか?
「あの天使さん、人狼のお姉ちゃんだよ?」
無垢な子供がそう言えば「はい」とお姉さんの声が返ってくる。
ひらり、優雅に宙を舞い、ぴたりと止まって。
「がおー」
わるい狼が脅かすように両手を顔の近くでポージングして小声で呟く姿はとても可愛らしく、人々の心に強く残るのだった。
「人々にとって、この事件はどういったものになるのでしょうか」
アンネリーゼはそっと呟いた。
「今はまだわかりませんが――」
イヴがそっと隣に降り立ち、視点を共有する。
「全員を無事に日常生活に戻してあげたいと思っています」
それはまるで人狼ゲームで考察をするように聞こえてアンネリーゼはくす、と笑った。
「同じ視点を持っているようです」
「同じ陣営ですね」
「そのようですよ、がお」
「あら、人狼陣営ですか?」
「ふふふ」
ふたりの猟兵がくすくす笑いながら背を合わせる。背に感じられるのは仲間の温度。
――目的を共有する仲間だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
渦雷・ユキテル
ゲームの途中なんですけどー?
ああ、クローンとか是とする感じ
白い部屋の大人と同じ、と舌打ち
ずっと、噛みついてやりたかった
この人達の中にも
影響受けたのが混じってますよね
両手上げてじっとしてれば守ってあげます
妙な動きすれば周りが気付くかな
相互監視でどうぞ
トローラーは勝手に噛まれてさようなら!
懐に飛び込む方がいっそ安全かも
機械化してるなら人間より動作が
【見切り】やすい可能性ありますね
拳銃構え、間合いを取るふりして
隙ができた瞬間に接近
とん、と片手で触れるだけ
【属性攻撃】【マヒ攻撃】で
有りっ丈まで電圧上げたサイキックブラスト
機械の体には効くんじゃありません?
倒しきれなければ拳銃で止めを
※絡みアドリブ歓迎
●candy kill games
「キャあああああっ」
異常事態を訴える周囲全部も
その声に動揺を誘うことはできない。
「ゲームの途中なんですけどー?」
――渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)の声はまるでゲーム中にナンパでもされてほんのちょっと邪魔された女子学生だ。あくまで日常の中にいる、そんな声で。
けれどそのキャンディ・ストロベリーの瞳が「男たち」を視る。
「ああ、クローンとか是とする感じ」
――白い部屋の大人と同じ。
チッ、と舌打ちの音が零れて「彼」が呟く。
「ずっと、噛みついてやりたかった」
消えない記憶がある。
消えない傷がある。
ひくひくと鼻を動かしている小さなネズミちゃん。
自分の生命を繋ぎとめる免疫抑制剤、痛み止め。
記憶を追いやるまで眠れない夜がある。
席から立ちながら耳元で冷たい何かが揺れているのを感じた。ぺろり、軽く舌を出せばルージュの味がする。袖をつまめばやわらかな布がくたりとしていて、可愛い気がした。だからユキテルは緩く微笑む。
「ここにいる人達の中にも影響受けたのが混じってますよね? 両手上げてじっとしてれば守ってあげますよ」
それは出来る約束なのだと、
とうとうと流れる言葉が人々の脳に染み込む。
――スタバで友達とスマホ片手に新作のコスメやファッショントレンドや気になる先輩トークで盛り上がっていそうな、そんな「女子」が。
一瞬前まで座っていた椅子が敵UDCの原子配列変換で硬質且つ鋭利な先端を持つ触手に変じたのを見咎めてユキテルの利き手が閃いた。
鼓膜をびりりとさせる発砲音。民間人が眼を剥いて硬直する視界には銃を構えるユキテルがいる。
「……妙な動きすれば周りが気付くかな。相互監視でどうぞ」
「トローラーは勝手に噛まれてさようなら!」
機械化した狂信者が敵を排除せんと向かってくる。
(どいつもこいつも同じツラして)
自分なんてものがないって顔をして。
猫のように背をまるめて跳ねるように敵との間合いを詰める――詰めるというよりは飛び込むようなものだった。チェリーピンクのアウターが空気を孕んでふわりと背に広がる。お気に入りのリュックが中に入ったものの感触を時折伝えながら揺れて、白い羽がきっと揺れて――飛んでいるように見えるかな? なんて、ユキテルは挑戦的な笑みを浮かべて間近になった男の顔を見上げる。
とっておきの上目遣い、小悪魔スマイルで見上げた男は無感情で機械的な殺意しか持ち合わせていないみたい。
(つまんないね)
その胸はカラッポなの?
詰るように片方の手が男の胸にあてられた。一瞬、悪戯に頬を寄せて恋人の抱擁を誘うようにして。
すぐに頬を放し、突き放すように、とん、と突いた。
「!!」
びくりと男の長身がのけぞって衝撃を受ける。くす、とユキテルの喉奥から哂いが零れた。
「有りっ丈まで電圧上げたサイキックブラスト、」
倒れた男が見上げる「彼女」は拳銃を構えていた。
「機械の体には効くんじゃありません?」
――逃げたい 逃げられない
――逃がしたい 逃がせられない
――だから
笑顔を湛えて、終わりを告げる。
「じゃ、死んでください」
『死んでしまえ』。
銃が震えて、弾が啼く。
大成功
🔵🔵🔵
オブシダン・ソード
あーっ
もうちょっとで決着だったのになんで今!?
軽口叩きながら状況に対応
器物とは別の魔杖剣で、明らかに狂信者と分かる相手に斬りかかろう
炎の魔術も、小爆発で目くらましくらいに使用
衝撃波が飛ぶ前に小技と斬撃で潰していきたい
民間人に被害が行きそうなら、手を引いて攻撃範囲から逃がすか、庇う
大丈夫かな?
…ああ、これゲームと違って信じるしかできないね
後ろから刺されるならまぁ仕方ない、投げ飛ばしてあげるからちょっと寝ててね
刺されるのは咄嗟にマントにオーラ防御で何とかならないかな
願う事や望むことは、悪い事ではないと思うけど――
テンション上がってそうな狂信者はUCで蹴っとばす
ごめんね、難しい話よくわかんないから
●10 minutes now
「あーっもうちょっとで決着だったのになんで今!?」
オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が軽口を叩きながらも魔杖剣を抜いていた。金装飾を誇る気高き剣身は黒瑪瑙の輝きを魅せ、切っ先に渦巻く炎が小爆発を起こしながら人形めいたUDC狂信者の剣を窘めるように弾き飛ばした。
「扱いがなってないよ」
其れが不満だというように口を尖らせ、けれど相手の瞳があまりに無感情だから大仰に肩を竦めて諦めたように足を振り上げて腹を蹴る。
床に転がる剣は敵同様に量産されたものなのだろう。ヴ、ヴ、ヴ、と不思議な振動を見せてむずがるようにしていた剣が静まるのを見てオブシダンは微笑んだ。
「おつかれさま」
言いながら下から振り上げるような剣の刃がガチリと噛み合う音を立てて「何か」を防ぐ。
カラリと軽く高い音をたてて落ちるそれを一瞥したフードに隠された眉があがる。
「カッター、だったっけ」
小さな刃。それもまた武器となる。民間人が放ったのだろう。
「刃とは、対象を切断ないし切削する機械要素ないし構造のことである……」
お道化た調子で呟く身体がマントを翻して素早く駆けている。駆けるうち低くした姿勢の上、フードを掠めるように衝撃波が後ろへ流れていった。ふわ、とフードが後ろへ流れて隠れていた顔が顕わになれば煌々とした焔に似た瞳が思いがけず苛烈な戦意を見せていた。
「対象に対しての圧力を可能な限り細い面積に集中させるため、先端部は細く薄く研ぎ澄まされ」
剣をもたぬ片手には五指が包み込むようにしながら赤い焔が育てられている。魔術だ。
オブシダン・ソードは、ウィザードであった。
「そぉれ」
戯れるように放り投げれば花火となる。閃光に爆発音。きれいだよね花火、と笑み魔杖剣を低く横に振る。衝撃波を放とうとしていた敵の胸元が浅く切り裂かれて機械の肌があらわれた。衝撃にのけぞる一体の横を走り抜けて手を取るのは色の黒い肉厚の民間人の手だ。剣なんて握ったことがないだろう。
「What's going on here?」
不安そうな目に人間の姿のオブシダンが映っている。握った手は温度を伝えているだろうか? オブシダンはそうだろうと思った。
世界の加護がこんな時も働いて、2人の間に壁はない。
「なんだろうね。若者の暴動ってところかな、うん。きっとそうじゃないだろうか――、ああ、君がそっちの可能性もあるんだっけ。これはゲームと違って信じるしかできないけれど」
くすくす、と笑うオブシダンはフードを被り直した。どちらでもいい。刺されても仕方ない、なんて笑いながら。
「願う事や望むことは、悪い事ではないと思うけど――」
向かううち、進行を妨げるように喚く「狂信者」が立ち塞がり「わかりやすい」と喜んで蹴っ飛ばした。
「ごめんね、難しい話よくわかんないから」
どうやら手を引く民間人は白のようだった。オブシダンはそう結論付けながら、別段黒でも同じだと考えていた。
「I'm alway on your side――、だって、そのためのモノだもの」
言葉は伝わっただろう。
あたたかな熱を導くよう、混乱の中を走る。
走る。
生命の源といえる心臓を断つ感覚を知っていた。
血濡れた掌を知っていた。
グリップを握る力がふいに弱まって、熱が冷めた瞬間を知っていた。
人の生が終わりを前提としているものだと知って、なお愛しさがこみあげる。
「君、僕のことを忘れてしまうかな」
きっとそうだよね。
組織が仕事をするんだろう――微笑み、出口に連れて行った。名も知らず、素性も知らない。
それは時間にすればきっと、10分にも満たないくらいの間柄。
その程度の思い出だ。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
うーん、こういうんは苦手だな。
狂信者っつってもそれだけで殺したくねえし、場の空気に中てられてるだけの人には猶更手荒いことは出来ねえし。
それに、アミロの言ってたことも気になる。
何でも不可能が可能になるって、そんなにいいことには思えねえなぁ。
ともあれ、この場を収めねえとな。
基本は民間人の人たちの避難を手伝うのを中心に動く。
中には後ろから襲いかかって来る人もいるから、〈第六感〉で察知したり〈オーラ防御〉で凌いだり。
んで、《針の一刺、鬼をも泣かす》でちょっと針を刺して、元に戻す。一時的におかしくなってるだけなんなら、これで元に戻せるはずだ。
ひょっとしたら狂信者にもある程度効果あるかもしんねーな。
セシリア・サヴェージ
『こころ』の無い人間に未来などありません。『こころ』が無ければそれはもはや……。
私は人々の未来を護ります。
「皆さんまずは落ち着いてください。私たちが出入り口まで誘導いたしますので離れずに付いて来てください」
周囲の一般人に【団体行動】を呼びかけ、すれ違う人々にも声を掛けながら速やかに出入り口まで向かいます。
一般人にUDCの攻撃が向かうならばこの身を挺して護ります。【かばう】
彼らが無事でいられるならば喜んで血を流しましょう。
ですが、私もただやられるばかりではありません。
UC【血の代償】を発動し肉体を強化。一般人の無事が確認できたらUDCを【蹂躙】しに向かいます。
●Save&Safe
(うーん、こういうんは苦手だな。狂信者っつってもそれだけで殺したくねえし、場の空気に中てられてるだけの人には猶更手荒いことは出来ねえし)
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)と接したことがある者に彼の人となりを問えば10人中10人が人当たりの良い少年と応えるだろう。明朗快活、裏表がない――たくさんの机と椅子が並ぶ学校の教室の中で友人たちとその年頃ならではのトークに花を咲かせて笑っていそうな、そんな少年だ。
(狂信者っつってもそれだけで殺したくねえし、場の空気に中てられてるだけの人には猶更手荒いことは出来ねえし)
少年の身体は騒乱の中でほんの少し怯えに固まり、けれどその拳はぎゅっと固められて踏みとどまるようだった。
――嵐は、決して「普通の少年」ではない。
少年は旅をする。幼くして亡くした両親が旅した世界を見たい、と言って。
少年は星を視る。高名な占星術師の教えを胸に、時には超常たる存在を傍らに招きて。
少年は逃げない。どんなに心が震えて体が逃げ出したいときでも、少年は逃げることを己に許さない。
「こころ、が、ない人間?」
セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は温厚な銀の瞳の奥を揺らす。
セシリアは人を知る者だ。
それは、嘆き悲しむ者だった。
それは、怖れる者だった。
それは、震える自身を守るため他者を迫害することもある。
それは、救いの手を差し伸べた彼女を化け物呼ばわりして怖れ迫害することもあった。
「なにを仰るのです」
それは、ありえないのだと女騎士は否定する。
「『こころ』の無い人間に未来などありません」
彼女は、そんな「人」を決して見棄てない。
裏切られ傷つけられることはあっても、決して守ることをやめない。
それは、彼女自身が人であるからだ。
こころを持ち、あるべき未来を望む人であるからだ。
「『こころ』が無ければそれはもはや……」
生きているとは、言えない。
セシリアはそう小さな声で呟いて人々を狙い振り下ろされる凶刃を自らの騎士剣、暗黒剣ダークスレイヤーで受け止めた。
響く音は悲鳴のようだ。
セシリアには剣が啼くようにも思えるし、高揚し哂うようにも思えた。
そう思いながら、瞳は冷静だった。
「私は人々の未来を護ります」
言葉を理解するかどうかもわからぬ敵へと不思議と誠実な気持ちで宣言して、セシリアは斬り結ぶ一体の剣を押しのけて胴を深く斬る。ガチリ、と途中で金属音がして構わず力で押し切れば血交じりの鉄部品が足元に落ちて敵が崩れ落ちる。
「皆さんまずは落ち着いてください。私たちが出入り口まで誘導いたしますので離れずに付いて来てください」
避難誘導は慣れている。
セシリアの落ち着いた態度が周囲に伝播する。整然とした列をなし、人々が避難していく。
(おれも、がんばらねえと)
セシリアの仕事ぶりを見て嵐が奮起する。
琥珀色の瞳は強い意志に煌めきながら前を視る。旅人の外套をひらりと揺らして取り出すのは小さな携行用ソーイングセットだ。逃げ惑う人々の中で川の流れに身を削られる川中の岩のように佇みながら嵐は針を取り出した。古めかしい縫い針である。
「麦藁の鞘、古き縫い針、其は魔を退ける霊刀の如し、ってな!」
後ろから襲い掛かってきた民間人の気配に咄嗟に振り返ってその手にある針に気付く。中年女性の民間人が扱う「武器」も針のようだった。
「奇遇だな」
「凶器」を持つ手をねじり上げてチクリと針を刺してやれば、ユーベルコードが成る。
「針の一刺、鬼をも泣かす(ペインエディター・ペインブレイカー)」
――それは、肉体や精神のあらゆる異常のみを攻撃する。
「あっ、わ、わたしは今何を?」
「戻ったか、よかった」
嵐は正気を取り戻した民間人女性に微笑んで針を手渡した。
「おれが言うのもおかしいけど針で身を守るのはちょっと難しいと思うぞ。避難手伝うよ、逃げよう」
「ありがとう、わたしちょっとどうかしていたわ」
よかった、と笑む嵐の耳に少女の悲鳴が届いた。
「お姉ちゃん、何をするの!?」
見れば、民間人の少女が悲鳴をあげている。先刻までいつも通りだった姉が妹に向かってヘアピンを振りかざし狂乱の瞳を剥いている。
「うわ、まずい!」
焦った嵐が咄嗟に動くより先に女性の凛とした声が響く。
「――いけない!」
間に割って入り姉を抱き留めたのはセシリアだった。
「はなせ、はなせぇっ!!」
暴れる姉の爪やヘアピンがセシリアの頬を浅く傷付けてうっすらとした赤い血線を生む。
「いいえ――いいえ」
(「あなた」を傷付けないために!)
「放しません!」
正気に戻ったとき、妹を手にかけたと気付けばこの姉はどんな顔をするだろう――過去の悲劇の中に幾度となく似たケースがあった。
いつか、防げなかった悲劇。
「あなたは、あなたたちは、私がお守りします」
それは血を吐くような烈しい誓いであった。
「おい、大丈夫か。手を貸すぞ」
嵐が駆けつけて姉にちくりと針を刺した。
「これで大丈夫だ!」
「ああ、ありがとうございます」
「いや、こっちもすぐ動けなくて。動いてくれて助かったよ」
猟兵ふたりが笑い合う中、姉妹は何度も頭を下げてUDC組織員に連れて行かれた。この後は日常生活に戻れるようになるまで組織が必要な処置を施してくれるのだろう。
「嵐さん、そのお力で民間人狂信者をお願いします。私はUDCを相手取りましょう――ただやられるばかりではありません」
セシリアの闘志が敵に向く。嵐はそっと頷いた。
「ああ、気を付けてな!」
セシリアが駆けだした。
美しき薔薇に棘があるようにこの優しき女騎士にも牙がある。全身に湧きあがるは暗黒の気。血の代償――時に人々を怖れさせてしまう原因でもある。
銀の髪が涙花のように舞いながら禍々しい暗黒の力纏いし剣が敵陣深くに斬り込み、暴虐の嵐と化して――どちらが悪だかわかったものではない、なんて自嘲しながらセシリアは敵を蹂躙するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
おお、現れおったか。 蹴散らしてくれるわ…と言いたい所じゃが、まずは皆の安全を確保せぬといかんのう。
会場の床を蔓植物に変換して操り、蔓で邪魔をして『狂信者』を遠ざけて出入り口までの道を作るのじゃ。
(動物使い+鼓舞+団体行動) さあ、避難の必要な者は、わしの呼んだ狼達に乗って逃げるがよい。 わしとマニトゥは、民間人と『狂信者』の間に立ち、狼の爪や牙や弓矢でけん制して殿を受け持つのじゃ。
む、あの民間人達は怪しいとわしの【野生の勘】がささやくのう。 じゃが、傷つけるのも忍びない、蔓植物を操って縛っておくかの。
避難が終わったら反撃開始じゃ。マニトゥに【騎乗】して突っ込むぞ!
宮入・マイ
はーい!
アミロちゃんに質問っス!
マキナ教に入っても面白おかしく人狼ってできるんっスか?
あっ首が…答えの代わりに衝撃波が来るとはっス。
まぁ首ぐらいで死ぬマイちゃんじゃないっスけど。
というわけでマイちゃんの取り巻き軍団!
ちょっと無防備になるっスから気合いを入れてマイちゃんを守るっス!
と民間人に守らせつつ【全因集業】っス。
やばそうな攻撃は腕なり足なりちぎって投げて【かばう】っスけど。
さーいうこと聞かないマイちゃんズ進軍っス!
マイちゃんのつがいになるのがいるかもしれんっスしちゃんと守るっスよ〜、繁栄はそっちにとっての使命っスからね。
…面白おかしくできるならマキナ教でも別にいいんっスけどね。
きゃっきゃ。
カイム・クローバー
夢見た無限の可能性。心地の良い言葉だな。…質問があるんだが、答えてくれないか?
『志を等しくしない者』はどうなる?アンタらに共感出来ない。そう答えた民間人は、はい、そうですか、と見逃してくれるのか?
ま、そういう訳だ。志に賛同できないなら伏せておいた方が良いぜ。
UCを発動し、その場で跳躍し、集団戦の真ん中に飛び込む。魔剣を顕現し、【二回攻撃】に【範囲攻撃】を交えて集団の中心で暴れる。
衝撃波は周囲に仲間が居ても関係なく使うと予想。なんせ、心がねぇんだ。仲間の傷も痛みも分からねぇだろうさ。【見切り】と【残像】で躱しつつ。
これが無限の可能性の先駆けか?ハッ、可能性を潰した人間モドキじゃ、俺には勝てねぇよ
●Melee pot
「おお、現れおったか。 蹴散らしてくれるわ……と言いたい所じゃが、まずは皆の安全を確保せぬといかんのう」
エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)が重々しく頷いて長い杖を両手で捧げ持つようにすれば聖獣マニトゥが巫女の秘術を邪魔する一切から守らんと足元で睨みを利かせる。
「此の地には緑が少ないのう。じゃが、民よ、忘れるでない」
手元で鎮めの青色煌めく魂石のブレスレットが揺れている。霊木の枝からつくられた杖が仄かに光を帯びた。
それが「ゲームのキャラクターのなりきり」でもなんでもなく「ほんものの奇跡」なのだと人々は感じ取る。
「な、なんだコレ」
「すごい……」
しゅるりしゅるりと音たてて会場の床材が蔓に変わっていく。
「おそれることはない。自然とともにあれ」
エウトティアは厳かに杖を掲げる。無知なる人々を教え導く祖母のように。
ふわり、マニトゥが尻尾を揺らしている。
(マニトゥ、わしはうまくできているじゃろうか)
揺れる尾はエウトティアを肯定してくれていて、それがわかるからエウトティアはにっこりとした。それは、年相応のあるがままの少女の笑顔であった。
蔦が狂信者を遠ざけ、道を作る。
「さあ、避難の必要な者は、わしの呼んだ狼達に乗って逃げるがよい」
杖を仕舞ったエウトティアはかわりに弓を構え、マニトゥと共に狂信者たちを牽制している。その最中にふと数人を見咎めて猫耳がぴくりと反応した。
「マニトゥ、あの民間人は」
「ぐるるる」
「じゃのう」
そう思ったのじゃ、と燃える瞳が同意した瞬間に緑の蔦が伸びた。
「わああああっ」
「は、はなせぇ!」
蔦に囚われて暴れる民間人に周囲にいた人々がぎょっとするが、蔦が捕らえた人々のポケットや手荷物から刃物を見つけて取り上げれば得心顔で逃げていった。
異世界ならともかく、この世界ではふつうの民間人は刃物を持ち歩いたりしないのだ。
「避難は済んだようじゃのう」
エウトティアが笑い、マニトゥに騎乗する。待ってましたと狼が吠えた。
「突っ込むぞマニトゥ!」
「ヴァウ!」
――筋肉を躍動させて駆けるマニトゥの背でエウトティアは風なき会場の風となる。
(味方も派手にやってるみたいだな!)
「夢見た無限の可能性。心地の良い言葉だな」
カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は便利屋である。邪神絡みの依頼を幾つも解決し、UDC組織にも名は覚えられている。異名は幾つもあって、要するに腕が良い。婚約者に頭が上がらないという噂もある。要するにいい男だ。
「『志を等しくしない者』はどうなる? アンタらに共感出来ない。そう答えた民間人は、はい、そうですか、と見逃してくれるのか?」
カツ、と硬質な靴音を故意に鳴らして一歩近寄れば「民間人」のその男は眉を下げた。
「ぼくは、強要はしないと」
カイムの瞳が会場を見た。逃げ惑う人々。そんな人々にUDCと民間人の狂信者が時に襲いかかり、猟兵が守っている。
視線の意味を悟ったアミロが唇を噛んだ。
「ま、そういう訳だ。志に賛同できないなら伏せておいた方が良いぜ」
目の前の民間人とよく似たケースを知るカイムは頬を緩めた。根っこの部分では悪人でもない。人を殺したがっているわけでもない。「思っていたのと違う現実」をこいつも持て余しているに違いない――カイムはそう感じた。
そして、邪神の力の一端を呼び覚ました。それは、戦いをこなすうちに制御できるようになった新たな力の片鱗だ。
「嵐は避難誘導してるのか」
ぽつりと呟く。カイムはこの民間人への対処を友に任せたいと考えていたのだ。
(嵐らしいといえば、そうだな)
その全身が紫雷で覆われ、高く跳ぶ。それはどう見ても常人の動きではなかった。
「さあ、パーティーの始まりだぜ!」
敵の塊の真ん中に飛び込みながら素早く振るのは鋭利な刃を幾つも波のように立てて荒ぶる渇望する者の――神殺しの魔剣。トレンチコートを靡かせて敵UDCの衣服の下、機械化された肩を力任せに叩き斬る――バチリと紫電が敵と自身の全身を駆け巡り、敵が悲鳴をあげた。
にい、と口元に狂暴な笑みが浮かぶ。
「心がねぇんだよな」
痛みは感じるか、と揶揄するように吠えて身を捻れば衝撃波が駆け抜けて近くにいた仲間のUDCを犠牲にする。
「ハッ」
距離を一息に詰めてやれば、無感情な敵の目が近くなる。目に映る自分が唯一世界で感情を抱く者であるようにも思えてカイムは哂う。
「――これが無限の可能性の先駆けか? ハッ、可能性を潰した人間モドキじゃ、俺には勝てねぇよ」
袈裟に斬る敵の身体は肉と鋼が混ざり合い、雷に灼かれる臭いは人の狂気に満ちていた。
「な、なんですかあの人は。人間なんですか」
アミロが愕然としてそれを見ている。
そんなアミロへと、飛びぬけて明るい声がかけられた。
「はーい! アミロちゃんに質問っス! マキナ教に入っても面白おかしく人狼ってできるんっスか?」
宮入・マイ(奇妙なり宮入マイ・f20801)が学校の授業中に先生に質問するようなノリで元気よく手をあげて質問したのだ。
「それは……で、できませ」
アミロが応えようとした時。
ひゅんっ! 衝撃波が回答を遮るように飛んでマイの首がカタツムリのフードごとスパーンと飛んだ!
「きゃああああっ!!」
「マ、マイちゃんがーー!!」
周囲から悲鳴があがる。取り巻きが腰を抜かして座り込み、アミロが蒼白になった。
「な、なんということ――」
「びっくりしたっス」
だが、首はころころ転がりながら愛らしくそう喋った。
「く、首が喋ったアアアアアアア!?」
「生きてるううう!! え¨え¨!? マ¨イち¨ゃ¨ん!?」
取り巻きもびっくりだ。
「マイちゃんはこれぐらいで死なないっスよ?」
マイは心底不思議そうにつぶやくと転がった首を胴につけた。元通りだ。パーカーフードが千切れたままで、それだけが「先ほどの首スパーンが現実だったのだ」と教えてくれている。
「というわけでマイちゃんの取り巻き軍団! ちょっと無防備になるっスから気合いを入れてマイちゃんを守るっス!」
「えっ、……え?」
「マイちゃんのつがいになれるかもしれないっスよ」
「!!」
腰が抜けていた民間人たちがなんとその一言に下心をバクハツさせて立ち上がる!
「あ、あなたたちはそれでいいんですか?」
アミロが「現実についていけない」といった顔でつっこみをいれた。
「俺がマイちゃんを守る!」
「いやいや俺が」
「いざというときは俺が盾に」
「どうぞどうぞ」
民間人たちは頼もしいんだか頼もしくないんだかよくわからないノリでへっぴり腰ながらマイを守ってくれようとして――、
「ちょっ、立てねえ。手伝ってくれ」
「こっちも脚が震えてる」
「お前ら気合入れろォ!?」
平和な都市に生きるオタサー部員にしては精一杯の勇気を見せ、ぷるぷるふるふると頑張っていた。
「産むッス増やすっス地に満ちるっス、そんで面白いことやるっス」
マイ本人はというと蟲達を無数に殖やして――、
『『『そんな暇はない。』』』
「あ、言うこと聞かんっスねこいつら」
「マイちゃん!? マ¨ダ¨!?」
取り巻きたちが必死な声をあげている。マイは「お待たせっス」とチャーミングにウインクをしてみせた。それだけで取り巻きたちは幸せそうな顔をする。
「アッ、チガウンダヨォ!? せかしたわけじゃないんだよォ?」
早口に自分の失言を取り繕う取り巻きをスルーしてマイちゃんズが進軍を開始する。
「さーいうこと聞かないマイちゃんズ進軍っス!
マイちゃんのつがいになるのがいるかもしれんっスしちゃんと守るっスよ~、繁栄はそっちにとっての使命っスからね」
「なっ、ななななんですかあっ!?」
アミロがマイちゃんズの進軍を見て悲鳴をあげた。
「……面白おかしくできるならマキナ教でも別にいいんっスけどね」
きゃっきゃっと楽しそうに笑い、マイはどこまでも自由だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
日輪・黒玉
●緋姫子さんと行動
気に入りませんね、人に紛れてこそこそと
誇りを感じられません
そのような輩に黒玉は負けません
任されました
速度を上げていきますので、回収は緋姫子さんにお任せします
黒い残像を召喚後、散らばらせて高速移動からの蹴りで一般人の皆さんには気絶していってもらいます
猟兵に保護されている方は安全かと思いますので対象からは除外します
狂信者たちの方は残像複数で取り囲み、触手を回避しながら周囲から一気に蹴りかかって排除していきます
守田・緋姫子
●黒玉と行動
チッ......!民間人を守りながら戦えというのか。そういうのは性に合わん!
クロタマ!一般人は片っ端から気絶させろ!私がユーベルコード「死霊の巣」で異空間に放り込んで隔離する!流れ弾に巻き込まれるよりはマシだろう!
狂信者達は召喚した死霊に相手をさせるぞ。黒玉の背中のガードにも10人ぐらい常に付けておこう。
●with you
「気に入りませんね、人に紛れてこそこそと。誇りを感じられません」
日輪・黒玉(日輪の子・f03556)は騒動に眉を寄せる。
「そのような輩に黒玉は負けません」
髪色と同じピンク色の狼耳も不満を訴えて角度がついている。
共に行動していた守田・緋姫子(電子の海より彷徨い出でし怨霊・f15154)は動く狼耳にほんの少しだけ触ってみたい気持ちになりながらも敵に舌打ちした。
「チッ……! 民間人を守りながら戦えというのか。そういうのは性に合わん!」
ぞろぞろと会場に湧いているのは「過去から這い出た怪物」だと緋姫子は認識している。そして、緋姫子は自分も同類だと――口には出さないが――思っていた。
(だが、守る)
射干玉の瞳が敵を視る。
守るべき相手ではなく、敵を視て、緋姫子はそう誓う。
――門を開こう。
それは、彼女の領域だ。常人ならば垣間見ただけで正気を持っていかれそうな饗宴、悪霊の渦、煮え滾り湧き立ち溢れて止まらくなりそうな鍋に似たそこから常世へ招く死霊たちがUDC狂信者へと魔手を伸ばして相手取る。
「何か背中に感じます」
違和感に敏い黒玉が問う視線を投げる。その瞳の青が良く晴れた日の青空のようだと思いながら緋姫子は頷いた。
「プレゼントだ、黒玉」
「護衛をつけてくれてるのですね」
正しく言葉の意図は理解されていた。
「黒玉は集中すると視点が狭くなるからな。さっきもハイドサーチが甘かった」
「ゲームとリアルは違……いえ、ありがとうございます」
本人には視えないが、その背には10人ほどのボディガード霊がぴったりと付き添っている。
(少し過保護だろうか)
緋姫子は一瞬考え、「ううん」と首を振る。
ゲームと違い、リアルは取り返しがつかないのだ。
「クロタマ! 一般人は片っ端から気絶させろ! 私がユーベルコード「死霊の巣」で異空間に放り込んで隔離する!流れ弾に巻き込まれるよりはマシだろう!
緋姫子の指示は合理的で、ゲームの攻略するための最適ルートを熟知しているように的確だ。
(いつも)
黒玉は頷いた。
その声は、いつも的確なのだ。
「任せてください」
そして、ふと付け足そうと思った。理由は――後から思い出せば、きっとその場の勢いとかそんなものだった。その前の日、喧嘩をしたからとか、直前に仲直りしたからとか、きっとそんなことだった。
(緋姫子さんは、自己評価が低い繊細な方です)
言葉にするのは、心からのものを。
「緋姫子さんは、――頼りになります」
「!!」
小さな少女が嬉しそうな気配を見せて、黒玉は「よかった」と思いながら速度をあげる。
駆ける周囲の世界にゲームの中に迷い込んだみたいな触手が伸びあがる。背中は守られていた。
「クロタマ!」
「黒玉は、負けません」
当たり前です、と呟く瞳には誇りが昇る。黒玉は鳥かごを形作るように弧を描く触手を超人的な速度で掻い潜る。民間人はいつ何をされたか自覚のないまま気絶させられ、次々と倒れていく。黒い残像が着々と仕事をする後ろで緋姫子がせっせと民間人を異空間に放り込んで隔離している。
首筋にふと手をあてればトクントクンと脈打って、生きている彼らは――光ある自然世界を生きる「本物(リアル)の人々」だ。
彼らとUDC、どちらが自分に近いかと思えばちくりと胸の奥が痛む。
「黒玉、さすがだな! 順調じゃないか」
そんな感傷に首を振り、緋姫子は相方を労った。
視線をやれば黒玉の残像が幾つも狂信者を取り囲み、目で追うのも追い付かないくらいの超速で一斉に蹴撃を放っている。
ふたりのゲームはクリア目前だ。
狼の誇り高い瞳がふと緋姫子を視る。
一瞬、時が止まったような錯覚を覚える。
「緋姫子さん」
瞳に緋姫子が映っているのが不思議だった。リアルな彼女にリアルな自分が認識されていて、猟兵仲間として共に戦っている。
「ん、」
応えようとしてふっと掻き消えた黒玉の姿に緋姫子がきょとんとする。刹那。
ガッ、
重い何かがぶつかる音がして傍らに緋姫子が現れていた。
「ご自分にも護衛霊をつけてください」
緋姫子に手を伸ばした狂信者を蹴り倒し、黒玉はそう言って「怪我はありませんか」と問いかけた。
「怪我なんて」
するわけがない、と返そうとして緋姫子は口を噤み。
「黒玉のおかげで無事だったぞ」
ありがとう、と小さく付け足せば狼はプライドの高そうな笑みを浮かべて頷いた。
「お互い様です」
「うん、お互い様だ!」
ぐしゃぐしゃに乱れた混沌の会場の中、ゲームだかリアルだかわからないような現実の中でたったひとつの影が踊っていて、けれどそんなことはどうでもいいのだと今は思うのだ。
「次はどこにいきましょうか」
「あっちかな」
なんだ、全然クリアじゃない。
緋姫子はそう思って笑った。
まだまだ全然。
「オブリビオンはいっぱいいるな」
「ええ、そうですね」
「全部、倒そう! 黒玉」
「もちろんです」
――全部だぞ。
心の中で囁いて。with you.
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
マナミさんが裏切り者でも構わない
でも…僕は信じるよ
柔らかな笑顔を
繊細な言葉を
貴方は…白だ
少なくとも、僕にとっては
弱くてもいいんだよ
人狼に限らず、どんな事も
大事なのはいかに楽しむかだと僕は思うな
だから、護るね
【オーラ防御】で身を護りながら
翼で浮遊しての【空中戦】
そこかしこから聞こえる喧騒を落ち着かせるため
【催眠】を乗せた【歌唱】を響かせる
寝かしてしまわない程度に、冷静な判断を取り戻させるために
今の僕で生きるから楽しいんだよ
一人一人違うから、出会いが面白いんだよ
悪しき者、悪しき心だけを祓う【破魔】の【指定UC】
もしもマナミさんにも巣食うものがあるなら、まとめて浄化
思い詰めなくていいんだよ
●Fiat lux
(マナミさんが裏切り者でも構わない)
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は目の前の少女を見てそう思った。
一見すると何不自由なく大切に育てられたように見える整った容姿の「少女」は、「そうではない」。
澪は幼くして囚われ、奴隷として扱われていた。一部の記憶がなく、人と接する時にはありのままの自分を全てさらけ出しているわけではない。性別を間違われることも多いが、わざわざ訂正しなくてもいい、と誤解をそのままにすることも多かった。
栗花落・澪は「彼」を知らない者には一見あたたかな温もりの中で育てられた育ちの良いお嬢様に視えるかもしれない。
世の中の汚い部分を何も知らないような無垢な者に思われるかもしれない。
けれど、
けれど、その瞳はマナミを柔らかに見ていた。
「僕は信じるよ」
それは決して、純粋すぎるが故に社会に悪があると知らぬ者がふわふわと口にする綺麗事ではない。
地に足つかぬロマンティストが夢みがちな瞳で間抜けな美句を並べるわけではない。
決してそれとは違うのだとその瞳を視ればわかるのだ。
「澪、さん」
マナミの手の緊張を解すように澪が手を取る。指をひとつひとつ丁寧にひらくようにして、冷たく色を失った指に体温が戻るようにと視線を落とした。
「僕は信じるよ。
柔らかな笑顔を、
繊細な言葉を、
貴方は……白だ」
――少なくとも、僕にとっては。
澪はそう言って微笑んだ。
マナミは頷いた。
「私、私は、」
言葉は続かなかった。ぽたり、と涙滴が手にしたたり一瞬あたたかで、けれどすぐに冷たさを感じる。
「弱くてもいいんだよ」
泣きじゃくる頬を包み込むようにして澪は眉を下げて笑った。ふたりの周りだけ世界から切り離されたみたいで、けれどそんなことはないと澪は知っている。
「人狼に限らず、どんな事も大事なのはいかに楽しむかだと僕は思うな」
「だから、護るね」
手を放して背を向ける。
どうかずっと白でいて、と祈るような気持ちが背で揺れる。
無防備な背中にマナミは泣きながら頷いた。
「私、白です!! 私、黒にはならない!」
「――しってるよ」
振り返る笑顔はおひさまのようにあたたかで、優しい。
澪は聖なるオーラを身に纏いながら白い翼を羽搏かせ、会場の天井付近まで飛翔した。
すう、と息を吸い込む頬が濡れていた。
(あれ?)
おかしいな、と思いながら喉を通る声は透明(クリア)に伸びた。
♪sleeping sleeping
♪In the sun
下の方からは絶えず悲鳴や剣戟や銃声が響いて、鉄めいた香まで感じられる。
――そんな「日常」にもいつしか慣れていて。
♪And God said
♪Let there be light
♪and there was light
中性的な歌声が紡ぐ音はやさしく切なく地に降りて、やがて人々の耳に届く。荒れた心がふわりと内側から撫でられて、宥められて、徐々に落ち着きを取り戻す――、
(今の僕で生きるから楽しいんだよ。
一人一人違うから、出会いが面白いんだよ)
下を向けたぽたりと滴が零れて、澪は笑った。
「思い詰めなくていいんだよ」
――そうだよ。
と、言い聞かせるようにして。
天井を見上げれば騒動が始まる前となんにも変わらない天井がある。
「うん」
大丈夫。
澪は頬を拭ってもう一度歌い出す。
♪Fiat lux――全ての者に光あれ
光、あれ。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・エヴァンズ
ギルマスであるダイキさんが主犯では…スケープゴート…?
いえ、今は考えてる暇はありませんでしたね
と言っても建物内でこの人混みの中では大技や広範囲攻撃は危険
民間人の安全・避難を第一優先とし、次いで仲間である猟兵のサポートを主としましょう
特にご家族、お子さん連れの方
人波に押されてはぐれたり、転んで怪我をしないよう護りながら避難誘導を
大丈夫、急に賑やかになって驚きましたよね
親御さんの手を離さないでください
狂信者へは星罰で攻撃、仲間への支援とします
影響された方は第六感を併用して見切りをつけ、攻撃してきたら庇い、天津星で軽く気絶攻撃を
会場の隅へ安置するか、外へ連れていってもらいましょう
※連携・アドリブ歓迎
トリテレイア・ゼロナイン
問答をする余裕はありません
民間人保護を最優先に出入口周辺の安全確保
●武器受け●盾受けで●かばいつつ射線が通るタイミングをセンサーで●見切り銃器での●スナイパー●武器落としか頭部狙撃
発狂者はアンカーでの●ロープワークで引き寄せ攻撃を意に介さず●怪力で●優しく気絶
この出入口が一つの構造…私が「仕掛ける」なら誘導した逃げ道に伏兵か罠を絶対に仕掛けます…!
懸念を他の猟兵に伝え戦闘しつつ自身を●ハッキング
並行処理能力●限界突破し同時にUCを●操縦、出入口周囲を●情報収集
●破壊工作の知識とも照らし合わせ脅威があれば真っ先に排除
杞憂で在ったら此方の援護
何方か重要参考人のギルドマスター・ダイキの確保願います!
アネモネ・ネモローサ
※アドリブ連携大歓迎
……結局、大きな騒ぎに発展してしまったか。
私の力不足だ。すまない。
せめて、犠牲者が出ないように。
必ず、守ってみせよう。
持っているヴェールを硬くして[かばう][盾受け]に注力。
共にいるハシモト親子とまきなさんはエウトティアや他の猟兵に任せられそうであれば任せるし、そうでなければ彼らを守ることに集中する。
……守っていた民間人に背中を刺されたか。
当然だな。狩人は見つけ次第噛むのが、人狼側の定石だ。
しかし残念だったな。この体は人間とは、違う。
刺されて穴の開いた身体も気にせず【指定UC】にて刺した相手へ[精神攻撃][催眠術]。
夜時間はまだ長い。少し眠っていてもらおうか。
……良い夢を。
●Werewolf games
(ギルマスであるダイキさんが主犯では……スケープゴート……? いえ、今は考えてる暇はありませんでしたね)
ステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)が民間人の安全・避難を第一優先として避難誘導をしている。
(問答をする余裕はありませんね)
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が出入口の安全確保に動いている。
「皆様、落ち着いて避難をお願いします!」
拡声された声が会場に響き渡る。
世界の加護によりその姿は住民に違和感を与えない。
「ママーロボットー」
「ロボットさんはまた今度ね」
ロボット好きな子供が大きなボディに触りたいと手を伸ばし、母親が「それどころじゃない!」と子供の手を掴んで連れていこうとしている。
「この出入口が一つの構造……私が「仕掛ける」なら誘導した逃げ道に伏兵か罠を絶対に仕掛けます……!」
警告を発しながらセンサーが「射線が通った」と判じて騎士兜の口元が突然カパリと開き、黄金色の銃口があらわれる。けたたましい音と共に銃弾が撃ちだされて敵UDC狂信者の振り上げていた剣をその手から弾き飛ばした。
「ロボットの頭が壊れたあああああっ!!」
「もう、ロボットはあとで買ってあげるわよ!」
子供が背後で泣いていた。母親が「いい加減にしなさい!」と怒っている。
「わ、私は壊れていません!」
トリテレイアは騎士兜をもとに戻して大盾と長剣を構えた。右手に剣、左手に盾。
わあ、と子供が眼を輝かせる。
UDC狂信者が出入口を狙って「湧いて」来る。1体を盾で抑え込むようにして背後を庇い、別の1体の剣を剣で受け止め。逃げる人々の邪魔をしようと動いた民間人の発狂者にはワイヤーを素早く放って引き寄せて。
「手品みたい」
「早く避難なさってください……」
「ほら、もういくわよ!」
母親もなんだかんだいって押しが弱いようだった。
「緊急事態ですから、強引に手を引くか抱き上げて連れていくのがよろしいかと」
「そ、そうするわ」
若い母親はそう言って子供を抱え上げた。
「おもっ、大きくなったわね」
「ロボットもっと見たい」
「それどころじゃないの! あとでロボット買ってあげるったら」
母子が遠くなるのをセンサーで見守りながらトリテレイアはワイヤーで絡めとった民間人の首筋に慎重に慎重にこれでもかと手加減しながらの手刀を入れて気絶させた。
そんな騒動の中。
「……結局、大きな騒ぎに発展してしまったか。私の力不足だ。すまない」
「えっ?」
アネモネ・ネモローサ(人に憧れし黒き彩喰み・f21338)はそう言って護衛していた民間人に頭を下げた。
「け、警察の方とかでしたか? もしかして」
「いや……」
一瞬否定しようとして。
アネモネは思い直す。
「いや、似たようなものだ」
近くにいた民間人を纏めて保護しようと集め、アネモネは手にしていたヴェールを硬くする。
(せめて、犠牲者が出ないように。必ず、守ってみせよう)
心の中でそう誓う。堅牢たる "白練"は名の通りやわらかな白さ。アネモネの眼や頭髪と同じ――故郷を壊したUDCの色だ。
その白さを見てアネモネは人を護る意思を一層固くする。それを練り込むようにして、ヴェールは堅牢となるのだ。
「どなたか……!!」
仲間猟兵の声に動こうとしてアネモネが動きを止める。火のついたようにエリが泣いていた。
「あああああああああああん!!」
(泣かせてしまった)
最初に思うのはそんなことだった。白い眉が僅かに寄る。
背に庇っていた民間人男性がアネモネの背にナイフを突き立てていた。
「あ、あ、ああ」
突き立てた本人がショックを受けた様子で蒼白になってぶるぶる震えている。
「当然だな。狩人は見つけ次第噛むのが、人狼側の定石だ」
アネモネは静かに頷いた。
「しかし残念だったな。この体は人間とは、違う」
ゲームとは違うのだ。「猟兵」はそう呟き――2日間でゲームの事を大分理解した自分に気が付いた。
父親が自身も動揺して震えながらエリをぎゅっと抱きしめている。
「エリ、大丈夫だ。大丈夫だ、大丈夫だぞ」
まきなさんはスマホに手をやり、震える指で救急車を呼んでいた。
大丈夫だ、と彼らに告げるアネモネの声は優しく、申し訳なさそうな響きを伴っていた。
「驚かせてしまった。すまない」
白い瞳には、遠くから救援に駆けつけるUDC組織員が映る。
(……人々に早く安寧を)
アネモネは緋色の紙を取り出した。金色の文字が綴られた紙に幻想を籠めれば夢が成る。
それが、アネモネのユーベルコード――然る夢への赤紙(カトゥミーン)。
占い師がその正体を言い当てるように白い瞳が「狂信者」を見つめる。
「白だ」
狂信者は、白だ。
唇が厳かに告げる。
「夜時間はまだ長い。少し眠っていてもらおうか。……良い夢を」
ぶるぶる震えていた男性はアネモネの声に誘われるように眠りに落ちた。
「か、彼は」
「一過性の症状だ。――治る」
アネモネはそう告げて護衛していた民間人をUDC組織員に任せた。
遠く、子供の泣き声が聞こえる。
至るところで誰かが泣いていて、誰かが怯えていて、誰かが助けを必要としていた。
「えーん、えーん」
親とはぐれて不安と恐怖に泣きじゃくる女の子に手が差し伸べられる。
真っ赤に泣きはらしたぐしゃぐしゃの子供の目が見上げれば、そこには心配そうに子供を見つめるステラがいた。琥珀色の瞳が優しさに満ちて、握った手は思ったとおりにあたたかい。
「大丈夫」
にこりと笑む顔は慈愛に溢れて、人ごみをかきわけて母親が走ってくれば安心したように子どもを渡した。
「急に賑やかになって驚きましたよね。親御さんの手を離さないでください」
怖い事は何もなく、ただ賑やかなお祭りなのだと安心させるように言うステラに母が何度も頭を下げて我が子の手を確り繋ぎ、避難していく。
「ご無事で……」
避難していく民間人たちを笑顔で見送るステラの視界に懐から刃物を取り出す狂信者が視えてほっそりとした指が敵に向く。
「聖為る哉 星生る哉……!」
直後、天から音もなく降り注いだ星の光が狂信者に命中し、床に倒した。
「この方は影響を受けただけのご様子。UDC組織に引き渡しましょう」
民間人の脈を取り気遣わしげな視線を寄せながらステラが組織員に狂信者を引き渡す。
そんな中――、
「何方か重要参考人のギルドマスター・ダイキの確保を願います!」
声が響いていた。トリテレイアの声だ。
◆
空は曇っていた。
灰色の空の下、定期的に清掃されながらもこびり付いた汚れが隠せなくなってきた古いビルが並んでいた。
「おっちゃん、ぶっかけ蕎麦ひとつ」
「あいよ」
蕎麦屋は空いていた。
店内には蕎麦を啜るずずっ、ずずっという音と調和するようにしてラジオの声が流れていた。
『なるほど。月神さんは今回の事件をゲームが青少年に悪影響を与えた例だとみるのですね』
『当たり前ですよ。だいだい何ですか、人を騙すだの疑うだの多数決で一人殺すだの……トラブルは産まれるべくして産まれたんです』
『僕はそう思いませんけどねえ……テレビゲームもそうですが、同じゲームをしていてマトモな人というのはそりゃーもうたくさんいるわけですよ。結局は元々のその人の人間性やその人間性が作られた家庭や社会に原因があるわけで、ゲーム一つのせいにするのはおかしいと』
蕎麦を啜りながらスーツ姿の若い女性が声を顰めた。
「白木さん、その、言ってたじゃない? 弟さんがあの事件で」
白木と呼ばれた男はスマホを卓上に置いて、もう使わなくなったアプリを整理してから箸を取る。
「ええ、そうなんですよ黒岩さん。弟は元々オタクでねえ。アミロだっけ、アニメキャラの声真似でネットにゲームプレイ動画をアップしたりもするぐらい変な奴だったんだけど」
「まあ。でも私、そういうの観るの好きよ」
「あ、そうなんだ」
白木は人の良さそうな顔をくしゃりとした。
「今は、弟は病院にいるよ。ちょっと一時的におかしくなってたみたいで。そのうち治ると思う。おれは弟の社会復帰を支援しようと思ってるんだ」
「大変ね、白木さん、弟さん思いで優しいわね。何かあったら相談に乗るわ」
「ありがとう……その、もしよかったら名前で呼んでくれないかな。前から思ってたんだ」
「……じゃあ、大貴さん」
カラン、とドアが開く。
「へい、らっしゃい」
蕎麦屋のおっちゃんが威勢よく挨拶をした。
「おや」
数人が店内に入ってくる。
「お邪魔します。本日は仕事で立ち寄らせて頂きました」
トリテレイアがドアの外側でそう言って丁寧に腰を折る。
「やっと見つけました。あなたが真の――人狼です」
店内に一歩入り、ステラがそう言った。
「さて、昼のターンだ」
アネモネがそう言って大貴に近づいた。
「う、」
「大貴さん? どうしたの? ……あなたたちは?」
「うわあああああっ!!」
大貴がドアに向けて走り出す。
「おっと、逃がしませんよ」
「詳しく話を聞かせて頂きますっ!」
トリテレイアが長身で店の入り口を外側から塞ぎ、ステラとアネモネが大貴を取り押さえる。
――『ゲーム終了』。
――『人狼は全て見つかりました』。
――『村人陣営の勝利です』。
呆然とする店内のラジオからはインタビューの声が流れていた。
『やさしいお姉ちゃんがたすけてくれたんだよ』
『I want to say ...Thank you for your help...to him』
『お父さんがゲームおしえてくれるっていうんだよ、いっしょにあそぶの』
『ゲームに負けた人が暴れ出したときにはびっくりしたわ。あんまりショックで記憶があいまいなの……カッターとか振り回してたかしら』
この日、ひとつの事件が解決したのだった。
●End
大成功
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