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願うは、安寧の地を

#ダークセイヴァー #異端の神々

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#ダークセイヴァー
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#異端の神々


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 木々の生い茂る森、その中にひっそりと佇む古びた洋館。ダークセイヴァーの一角にある光景をグリモアの光に映し、ネルウェザ・イェルドットが集まった猟兵へと掲げる。
 まるで静止画のようなそれに猟兵が目を凝らしていると、一瞬館の窓にゆらりと何かの影が通るのが見えた。
「……おまけにもう一つ」
 そう呟いてネルウェザがグリモアを操ると映像に音が加わる。枝葉の揺れる音、風の吹く音――そして、呪うような何かの声。暫く流れる不気味な映像にはっきりとした人の姿はなく、その場所に訪れる者が殆どいないことが伺えた。

「さて、ここはかの世界の辺境……『異端の神々』の住まう地だ。流石のヴァンパイアもこれを支配することは諦めているようでねぇ。猟兵の皆の力で開拓することが出来れば、ヴァンパイアの支配が及ばない安全な居住地が作り出せるかもしれない」
 しかし、とネルウェザは話を続ける。
「繰り返すがここには異端の神――オブリビオンの肉体を得て、その記憶に狂った神が住んでいる。先程の影や声がそれだよ」
 彼女はそこまで語ると、一度グリモアの映像を切り替える。見えてきたのは館の内部、外観と同じく寂れ古びながらも豪奢な調度品の並ぶ室内であった。
 一見、富豪の住まいのような内装。しかし敷かれた絨毯は夥しい数の足跡で汚れ、その上には部屋の風貌に相応しくない壊れた農具が転がる。更に壁や床には何やら黒ずんだ血痕や傷が残されていた。
 そこに住人や異端の神と思われる姿はなく、館はただただしんと静まり返るのみ。映像には窓を通っていた影の正体すらも映されてはいなかった。

「神は館の奥深くに隠れ、オブリビオンとしての怨嗟や怨念を周囲に撒きながら存在している。その所為で他のオブリビオンが誘われ、危険な地と化しているんだ」
 だから先ずは館の奥へ辿り着く道を探し、神の居場所を見つけ出してほしい。ネルウェザはそう告げて映像を止め、グリモアの光をくるくると回した。
「……先程見てもらった通り、館にはオブリビオンの声が常に響いている。皆まで狂気に呑まれぬよう、くれぐれも気を付けてくれ」
 ネルウェザは転送の準備を整えると、猟兵に参加の意志を問う。肯定の返事を聞けば彼女は頷き、猟兵をダークセイヴァーへと送り出すのであった。



 家具や飾りが豪奢な割に酷く汚れ荒らされたような室内、映像でも見えていた壁や床の血痕、抉り傷。そんな館の内部へと猟兵が足を踏み入れると、すぐに拒絶するような声が響く。
 ――来るな。もう此処に近づくな。
 しかし周囲に人の影などはなく、視界には出発前に見た通り古びた家具や絵画の数々が並ぶのみ。猟兵が引き返さないのに憤ってか、響く声は低く声色を変えた。
 ――帰れ!
 途端、ガシャン! と天井のシャンデリアが大きく揺れる。床に敷かれた絨毯が波打ち、壁の絵画や近くのオブジェが震え出す。
 ――帰れ、帰ってくれ。私はもう――、
 そう、声が弱く消えて。
 やがてぶつぶつと呪詛のような声が回り出し、禍々しい雰囲気が漂い始める。館は猟兵を出口のみへと誘うように部屋の扉を固く閉じ、奥へ続く階段を消してしまった。

 道は閉ざされたようであったが、しかし周囲には違和感が残る。
 やけに規則的に置かれた片目のない銅像達、対になっているようで少しズレのある壁の絵画や模様、ずらりと並ぶ燭台の中でぽつりと一つだけ炎を揺らす蝋燭。階段があった筈の場所には大きな暖炉が佇み、ごうごうと薪を燃やしているのが見える。
 帰れと繰り返す声に反し、それらはまるで猟兵を試しているようであった。


みかろっと
 みなさまこんにちは、みかろっとと申します。
 今回はダークセイヴァーにて、ヴァンパイアに支配されていない地を開拓するべく『異端の神々』が憑依したオブリビオンを倒すシナリオです。

 第一章、先ずは館の奥へ進む為の探索パートです。館にある物を動かしたり探ったりして、隠されている部屋へと進んでください。
 また、館には常にオブリビオンの声が鳴り響き、猟兵を狂気に陥れようとしてきます。それに呑まれない為の対策や技能も含めて行動してください。

 第二章集団戦、第三章ボス戦を突破できればクリアとなります。

 皆様のプレイングお待ちしております。よろしくお願いいたします!
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第1章 冒険 『部屋の仕掛けを解け』

POW   :    物を退かせたりスイッチのような物理的な仕掛けと予想

SPD   :    巧妙な騙し絵や隠し扉のように隠された仕掛けと予想

WIZ   :    燭台に火をつけたり規則性にそって物を並べるような仕掛けと予想

イラスト:ロワぬ

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セルマ・エンフィールド
【SPD】

異端の神が住む地には何度か訪れたことがありますが……
ここは環境も悪くありませんね。掃除や補修は必要そうですが拠点もありますし、ことが終われば早い段階で居住地にできそうです。

しかし、どうしたものでしょう……先に進めるかは分かりませんが、色々調べてみましょうか。
『視力』の良さを活かし、絵や壁の模様の違和感がある場所を探し、何かしら仕掛けがないかどうか調査します。

ここやUDCアースで邪神とは何度か交戦していますし、正気を蝕む声にも慣れてきました。『狂気耐性』で声を聞き流しながら探索します。
「私はもう」……もうの後に続く言葉が何なのかは分かりませんが、帰れと言われて帰るつもりはありません。



「異端の神が住む地には何度か訪れたことがありますが……ここは環境も悪くありませんね」
 館の中を見回し、セルマ・エンフィールドは汚れつつも立派な柱や壁に手を触れる。流石に掃除や補修は必要になるが、ここを拠点として開拓を進めれば早い段階で居住地を作ることができそうだ。
 問題は、今も周囲で響く声の主。
 セルマはこの世界やUDCアースにおいて邪神との交戦経験があり、正気を蝕む声には慣れてしまっている。故に彼女は狂気に呑まれず声を聞き流せているが、並の人間に同様のことが可能かと言えばそうではないだろう。
 それにこの声が別のオブリビオンを呼ぶのであれば、居住地として開拓する場所に野放しにしておくわけにはいかない。

 声の主、異端の神の潜む場所への道を探し出すべく、セルマは近くの壁に目を凝らした。
 花を模ったような模様は非常に細かく、所々汚れが混じり見えにくくなっている。セルマが持ち前の視力を活かして視線で模様をなぞっていくと、ふとぴたりとその動きが止まった。

 ――一つだけ、花弁のずれた模様がある。
 遠くからでは殆ど同じに見えるそれは、ほんの僅かに時計回りの方向にずれて描かれている。セルマがそっと模様の中心に触れると、軽く押し込めるような仕掛けになっているのが分かった。
 そのままセルマが手に力を込めれば、模様は彼女の手ごと壁に呑みこまれていく。カチ、と何かにひっかかるような音がした瞬間、壁はセルマの手を中心にぐおんと大きな穴を広げ道を作り出した。

 真っ暗な穴の奥には、館の禍々しい空気を一層濃くしたような嫌な気配が漂う。更にその前に立つセルマの耳には、館に入った時と同じはっきりとした人の声が再び流れ出していた。
 ――やめろ、帰ってくれ。帰れ、私はもう……、
 ぷつり、と。そして再び鳴り響く、呪うような人の声。しかしセルマは落ち着き払った様子で一歩、前へと進んだ。
「……その後に続く言葉が何なのかは分かりませんが、帰れと言われて帰るつもりはありません」
 壁の穴はセルマを奥へと誘うと、途端にきゅっと口を閉じて元の平らな状態に戻ってしまう。更にどういう訳か、一つだけずれていた花の模様はどこにも見当たらなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
辺境に有る豪華な館か……少しだけ昔住んでた家を思い出すな。
(今は滅んだ故郷が、ダークセイヴァーの辺境で、住まいは豪華な館だった)

とは言え、感傷に浸るのは後回しだ。
さっさと探るとするか。

【SPD】
禍々しい雰囲気が漂い始めてるらしいが……むしろ、何の反応も無いよりは手がかりになるんじゃねぇか?
ということで【竜覚】を使用後、《第六感》を活かして禍々しい気配の濃い箇所が無いかの探知と、《視力/聞き耳》を活かした隠し扉の類の探索を並行してやるぜ。
それ特に怪しいと思った箇所を探る。
「なんか違和感が有るんだよな。館の構造上、この扉の先に空間が有ってもおかしく無ぇと思うんだが」



 辺境に建つ館、その華やかな内装を見てガルディエ・ワールレイドが嘗ての記憶を重ねて呟く。
「……少しだけ昔住んでた家を思い出すな」
 彼が頭に過ぎらせるのは、同じような辺境の地にあった豪華な館――今は滅んでしまった故郷の風景。
 ガルディエは一瞬懐かしむように目を細めるが、すぐに軽く首を振って意識を切り替える。
「感傷に浸るのは後回しだ。さっさと探るとするか」

 顔を上げ、彼は仕掛けのありそうな家具や模様の並ぶ視界――ではなく、ぞわりと胸の奥を撫でるような嫌な気配に気を集中させる。ぶつぶつと響く不気味な声も相まってかなり禍々しい雰囲気だが、ガルディエはそれを逆手に取るようにユーベルコードを発動した。
 やるしかねぇか、と彼は『竜覚』の力で感覚を鋭く変え、気配の特に濃いポイントを見極める。

 そうして彼が進んだ先は行き止まり、何の変哲も無さそうなただの壁。頑丈な石造りの柱が埋め込まれたそれは壊すにしてもかなりの力が必要そうで、下手をすれば館ごと崩れる危険も考えられるだろう。
 しかしガルディエはその向こうを見つめたまま、訝し気な様子で頤に指を添える。
「なんか違和感が有るんだよな。館の構造上、この先に空間が有ってもおかしく無ぇと思うんだが」
 そう言って耳を澄ませ、目を凝らせば――ふと、ガルディエは壁にうっすらと不自然な継ぎ目があることに気づく。
 そっと指でなぞりながら継ぎ目の形を確かめると、それは丁度ガルディエが通れる程度の長方形をしていた。

 彼はぐっと手に力を入れ、その長方形を奥へ押し込む。継ぎ目は隠し扉となって道を開き、真っ黒な空間を出現させた。
 ――来るな、来るな、来るな!
 はっきりとした人の声と、這うような無数の呪詛。まるで獰猛な獣の口を覗き込んでいるような感覚がガルディエを襲う。
 彼はそれでも扉を潜り、声の聞こえる方向へとゆっくり進んで行くのであった。

 ガルディエが通った扉は、彼を奥へ呑むと同時にガコン、と道を塞ぎ元の壁に戻ってしまう。そして僅かにあった筈の継ぎ目は、いつの間にかつるりと平らな面に変わっていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
豪奢な邸宅に、踏み荒らされた跡……そして農具、ですか
軽くホラーじみた状況下ではありますが
聴こえてくるその声はむしろ――

…『道しるべ』ダイオプサイドの欠片を
掌に載せたその緑を、小鳥に変えて放します
立ち入った者の視点では判りにくい何かを発見出来るかもしれませんし
俯瞰で見れば違和感の原因も掴みやすいかと

さて、元々いわく付きの宝石に触れる事もある身、耐性はある方ですが
取り出したのは金平糖の小瓶
一粒、離した小鳥に似た緑を選び口にする
この甘みが私の意志を繋ぎ止めてくれます
――約束を違える事はありません

小鳥と自身の視点との差異を探します
定番は絵画に描かれた物が角度により違ったり
鏡による目眩し……等でしょうか



「豪奢な邸宅に、踏み荒らされた跡……そして農具、ですか」
 曰くつきの物件と思えば軽くホラーじみた状況下。しかし聴こえる声は踏み入る者を傷つけ殺すというより、ただただ拒絶し、怯えるような声色で響いていた。

 ファルシェ・ユヴェールは奥へ進む道を探るべく、魔力を練りながら『道しるべ』の意味を持つ石、ダイオプサイドの欠片を掌に載せる。深い緑が透けるように輝くと、それは彼のユーベルコード『Vöglein flattern』を受けてふわりと羽を生やした。
 ダイオプサイドは小鳥に姿を変えて高く羽搏くと、壁や床を俯瞰しながらくるくると旋回し始める。地上からの視点では判り難い手掛かりも、上空から探すことで発見し易くなる可能性もある筈だ。

 ――しかしファルシェがその情報を待つ間も、周囲では相も変わらず這い回るような声が響き続ける。
「元々いわく付きの宝石に触れる事もある身、耐性はある方ですが……」
 思考を乱し意識を狂気に呑みこもうとするそれに、ファルシェは瞳の奥を僅かに揺らしつつ一つの小瓶を取り出した。
 瓶の中身は色鮮やかな金平糖。放した小鳥に似た緑を選び手に取ると、彼はそっとそれを口に含み――微笑む。

 砂糖菓子の真っ直ぐな甘味が柔らかく広がる。それが溶けて消えるまで、彼を狂気へ誘う声は意識の外へと弾かれていくようだった。
「この甘みが私の意志を繋ぎ止めてくれます――約束を違える事はありません」
 呟き、軽く握った手を掲げれば。
 上空を飛んでいた小鳥は一度ファルシェの元へと戻り、壁の一点を示すように嘴を動かす。視線を動かすとそこには、埃を被りながらも立派に佇む肖像画が掛けられていた。

 小鳥は再び飛び立って、絵を真上から見下ろす位置で停止する。ファルシェが導かれるようにその絵に近づくと、一瞬ピントがずれたように肖像画の輪郭がぼやけた。
 違和感を覚えて目を凝らせば、絵の中の人物が先程より僅かに右を向いているように見える。彼が更に小鳥の下へと近づいた途端、正面を向いていた肖像画の目ははっきりと右側に瞳を寄せていた。

 肖像画の示す方に何かがあるのだろうか。そうファルシェが絵の右側の壁に触れた、その時。
 ずずず、と壁がひとりでに横へずれ、真っ暗な空間に続く道を出現させる。飛んでいた小鳥がすぅっとその奥へ進み強く輝けば、ファルシェは迷わず前へと踏み出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。今まで幾度か狂ったオブリビオンとは対峙してきたけど、
お前のような苦しそうな声を発するのは初めてね。

…お前にどんな過去があり、どんな事情があるか分からないけど、
私の為すべき事は変わらないわ。

事前に自我を増幅する“調律の呪詛”を付与
狂気耐性等の精神攻撃の耐性を強化してUCを発動

不可視の手を繋ぐように存在感の無い血刃を操り、
壁や床を透過して隠し通路の位置を暗視して見切り、他の者に知らせる

…謎解きは不得手だからね。力業でいかせてあげるわ。

謎解きが捗らないようなら“魔晶弾”に限界を突破した魔力を溜め銃撃
純粋な破壊属性攻撃で障害を突破できないか試みる

…やっぱり、行き詰まったらこの手に限る…なんてね。



 帰れと拒絶する声は、怯えるように震え出す。
 ――もう、近づかないでくれ。帰ってくれ――!
 ガシャガシャと家具が再び動き、複雑な砦を作る。しかしそれでも完全に道が閉ざされたわけではないようで、家具の並びや壁の模様には規則性や不自然なズレが残されたままだった。

 だが、リーヴァルディ・カーライルはそれに注目することなくただ一歩前へ出る。
「今まで幾度か狂ったオブリビオンとは対峙してきたけど、お前のような苦しそうな声を発するのは初めてね」
 そう声の主へと話し掛けるような言葉は、届いたのか否か。
 リーヴァルディの周囲では依然ぐるぐると回るように声が鳴り響き、彼女の意識を襲い続ける。それでもリーヴァルディは『調律の呪詛』によって自我をはっきりと保ったまま、言い放つように口を開いた。
「……お前にどんな過去があり、どんな事情があるか分からないけど、私の為すべき事は変わらないわ」

 リーヴァルディはユーベルコード『限定解放・血の飛刃』を発動する。彼女の目や耳にも等しい不可視の刃は周囲の声までもを隙間なく捉えて飛び交うが、呪詛の力を纏う彼女はそれを耐え切って先へ進む道を探した。
「……謎解きは不得手だからね。力業でいかせてあげるわ」
 隠すように塞がれた壁目がけてリーヴァルディが血刃を向かわせる。ひゅっ、とそれが壁をすり抜けた瞬間、彼女は館の禍々しい空気を一層濃くしたような空間の存在を感じた。
 そのまま刃を大きく旋回させると、リーヴァルディは壁の向こうに幾つか独立した通路が繋がっていることに気づく。

 彼女はその中の一つへ的を絞ると、血刃を一度止めて『魔晶弾』を込めた銃を取り出した。
「……やっぱり、行き詰まったらこの手に限る……なんてね」
 銃口はまっさらな壁を捉え、リーヴァルディの指が動くと同時に重い発射音を鳴らす。放たれた弾丸は壁に触れるや否や、内包した魔力を炸裂させてズドォン! と激しい衝撃を生み出した。

 ボロボロになった壁の向こうには、リーヴァルディが感じた通り嫌な気配の漂う空間が広がる。来るな、帰れと繰り返す声の中、彼女は立ち止まることなく奥へと進んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『繁栄を願う者ども』

POW   :    収穫せよ、生まれ出でよ、同胞よ
レベル×1体の、【頭部の農作物】に1と刻印された戦闘用【自分たちそっくりな異形の人型】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    耕せ、耕せ、畑を作れ
【農具】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を耕して畑に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    繁栄せよ、増えよ、埋め尽くせ
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。

イラスト:笹にゃ うらら

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が真っ暗な道を進むと、ふっと突然明るく開けた部屋が現れる。ここに声の主、館に潜む異端の神が居るのか――そう辺りを見回した、その時であった。
「耕せ、耕せ、耕せ! こんな館は耕してしまえ!」
 ぞろぞろと部屋に流れ込んでくる人影。しかしその頭部は人のそれではなく、芋やトウモロコシといった野菜の形をしていた。
 その気配から察するに、おそらく彼等は異端の神の声に呼び寄せられたオブリビオンだろう。
「畑を、畑を! 悪魔の子よりも、我らの繁栄を!」
 野菜頭のオブリビオン達は声を張り上げ農具を振り回す。そして周囲に置かれた家具や壁目がけてそれを振り下ろし、狂ったように破壊を始めた。

 ――やめろ、やめてくれ! もうこれ以上――ッ、

 鳴り響いていた声が更に悲痛に、泣き叫ぶように空気を揺らす。同時に館は崩れそうな程ガタガタと震え、猟兵達が通ってきた通路を塞いでしまった。
 野菜頭のオブリビオンが部屋を壊し騒ぐたびに、館の震動と声が少しずつ強くなる。
 これ以上彼等を暴れさせるのは危険だ。
鈴木・志乃
神様が狂うってどういうことだろうねぇ……この世界の秘密に迫るのはちょっと怖いな
まぁ、故郷だけどねここ

オーラ防御展開
安直だけど焼くのが一番だよね
第六感で攻撃を見切り【スライディング】で回避しながらすれ違い様にUC発動【焼却】
勿体無いけど灰にしようか
【高速詠唱】で炎を広げて周りの敵にも燃え移らせよう

破れかぶれで突進してきたら光の鎖で【早業】【武器受け】からの【念動力】で 縛り上げ【カウンター】発火
必要なら油も引っ掻けてやる

部屋の調度品は燃やさないように気を付けようか
神様の怒りを買うのは避けたいからね。同時に二方面対処とか洒落ならん
……ま、どんな相手かも分かんないけど



「神様が狂うってどういうことだろうねぇ……この世界の秘密に迫るのはちょっと怖いな」
 まぁ、故郷だけどねここ。そう言葉を続けながら、部屋に辿り着いた鈴木・志乃は野菜頭のオブリビオン達へと近づいて行く。
 畑を、繁栄をと喚く彼等の農具を躱し、間に滑り込むように駆け抜けながら、彼女はユーベルコード『浄化の炎』を発動した。
「安直だけど焼くのが一番だよね」
 ゴウッ、と志乃とすれ違ったオブリビオンの頭が激しく燃える。身体の見た目に反して人の頭部とは程遠い造形をしたそれは、こんがりと焼き目を付けて煙を上げていた。
 だがそれでもオブリビオンは、地響きのような唸り声とともに農具を振り上げる。
「繁、栄を……仲間をォオォ!!!」
 その瞬間、志乃を中心にして野菜頭の人型がぐるりと囲むように現れる。地面から生えるようにして出てきた彼等は、一斉に志乃へ飛び掛かろうとしていた。
「……勿体無いけど灰にしようか」
 志乃はユーベルコードの炎を更に大きく燃え上がらせ、それを広げるように魔法を詠唱する。彼女の口から素早く紡がれた呪文は薪をくべるが如く炎に勢いをつけ、オブリビオン達を呑み込まんと部屋を駆け巡った。

 志乃の言葉通り灰になりかけながらも、オブリビオン達は狂ったように喚き、農具を振り回し続ける。そして滅茶苦茶に操られた人形のように足を動かし、ぶるぶると焦げた頭を震わせ、彼等は志乃の方へと破れかぶれの突進を始めた。
 赤く灼け始めた農具が志乃を捉えようとした瞬間、それは光の鎖によって高く弾かれる。
「んがッ!?」
 鎖は大きくよろけたオブリビオンの身体を縛り上げ、志乃の視線をなぞるように蠢き回っていく。志乃は拘束されたオブリビオンに向かってばしゃりと液体を投げ放つと、続けてそちらへ炎を伸ばした。

 炎は液体――志乃が掛けた油に触れるや否や、それを導線にしてオブリビオンの身体を次々に伝い出す。芯までよく火の通った野菜頭は何となく食欲をそそる香りを放ち、すぐに真っ黒な炭となって床に転がってしまった。

 ぼうっ、と炎は更に範囲を広げ、オブリビオンを追っていく。しかしそれが部屋を彩る調度品に触れかけた寸前、志乃はきゅっとその勢いを抑えて方向を変えた。
「神様の怒りを買うのは避けたいからね……ま、どんな相手かも分かんないけど」
 そう呟き、志乃は調度品を大きく躱すように炎を操る。炎はオブリビオン達を呑み込みながら、彼等の悲鳴や館の声を掻き消すように轟いていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
他人の家を破壊するなど、礼節以前の問題ですね
招かれざる客人は骸の海へお還り下さい
…まあ、私も侵入者ではあるのですが

ひとまず破壊を止める事を第一と致します
UCを活用し、農具を石に固めて振り回せぬようにしてしまいましょう
結ぶ結晶は重い辰砂
農具が取り回せず彼らの枷となるうちに
仕込み杖の刃で首……いえ、野菜を落としていきます

ひとつ、狙いを違えた場所を貫けば
――知らず知らずのうちに力が入っていた事に気づき嘆息
やれやれ、私は思ったより感情的なのかもしれません

私情を挟むつもりは無いのですが
此処にいる存在が何者であっても
貴方達に悪魔の子などと謗られる謂れは無いでしょう

――たとえ、これから斃す存在であるとしても



 バキッ、ドゴンと鈍い音が続き、絨毯の敷かれた床が黒焦げの屍と共に柔らかい土へと姿を変え始める。喚き、館を破壊するオブリビオン達に表情を曇らせながら、ファルシェ・ユヴェールが静かに足音を響かせた。
「他人の家を破壊するなど、礼節以前の問題ですね」
 しかしオブリビオン達はその言葉も意に介さず、一心不乱に農具を振り回し続ける。それに反応してか、館の声は耳を劈く様な悲鳴と喘鳴に変わりかけていた。

 先ずはあのオブリビオン達を止めなければ。
 ファルシェはユーベルコード『Die Hand des Zauberers』を発動させ、オブリビオンの持つ農具へと視線を向けた。
「招かれざる客人は骸の海へお還り下さい……まあ、私も侵入者ではあるのですが」
 そう呟きながら彼が手を前へ向ければ、オブリビオン達の足元から突如硬い朱が噴き出す。ファルシェが結んだ『辰砂』の結晶は一瞬にして農具とオブリビオンを呑み込み、彼等の枷となって静止した。
「何だ……動、か……ッ!?」
 オブリビオン達は野菜頭をぶんぶんと振ってもがく。しかしそれでも彼等は繁栄を、畑をと叫び、逃げ出そうというより腕を動かそうとしているようだった。

 ファルシェがステッキの先端を刃に変え、シャンデリアの光を煌めかせても尚、彼等は農具を握る手に力を込めて。
「我らの……繁栄を、畑を!! 耕さねば、動かねば!」
 言葉が途切れ、ゴトンと人の頭ほどの芋が床に落ちる。続いてもう一つ、更に一つ、二つ――ファルシェは喚くオブリビオンの言葉を絶ち切るように、その手の刃で野菜頭を落としていった。

 すぐ隣で仲間が息絶えているのにも関わらず、オブリビオンはただただ腕に力を込めて騒ぎ続ける。
「畑を、畑を、畑を!! 悪魔の子の棲み処など、耕して我らの糧に――」
 ――ぞぶり。身体に刃の潜る音とともに、オブリビオンの声が消えた。
 しかし野菜頭は床に落ちず、がくりと項垂れるのみ。ファルシェは狙いを違えてか野菜頭の繋がる首ではなく、人であれば心臓のある位置――胸の中心へ、深々と刃を突き刺していた。

 一瞬の静寂を経て、ファルシェは我に返る。彼は知らず知らずのうちに力が入っていたことに気が付き、嘆息しながら刃を引き抜いた。
「……やれやれ、私は思ったより感情的なのかもしれません」
 呟き、刃をステッキの姿に戻す。そしてファルシェは息を僅かに震わせながら、辰砂の中の屍に目を細めた。
「私情を挟むつもりは無いのですが……此処にいる存在が何者であっても、貴方達に悪魔の子などと謗られる謂れは無いでしょう」
 たとえその何者かが、これから斃す存在であるとしても。
 ファルシェがそう言葉を続ければ、館の声と揺れは少しずつ落ち着きを取り戻すように弱まっていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。これまたトンチキな連中が出てきたわね。
お前達に構っている暇は無いんだけど…ふむ。
悪魔の子?それがこの地の神と何か関係がある?

精神攻撃に耐性を得る“調律の呪詛”を維持して、
“写し身の呪詛”で殺気を放つ無数の残像を展開し距離をとり、
自身の生命力を吸収して魔力を溜めUCを発動

…悪魔の子って誰のこと?
この声について、屋敷の主について何か知っているの?

“暗号作成”で超効率化した“高速詠唱”術式の魔法陣を形成
敵の見切りを越える“早業”で傷口を抉る魔弾を“乱れ射ち”し、
敵をなぎ払う闇属性の先制攻撃を放つ

…私達も望まれぬ客だけど、お前達はそれ以下ね。
下がりなさい。屋敷は畑を耕す場所ではないわ。



「……ん。これまたトンチキな連中が出てきたわね。お前達に構っている暇は無いんだけど……」
 野菜頭のオブリビオン達に向かって、リーヴァルディ・カーライルが首を傾げて言葉を続ける。
「悪魔の子? それがこの地の神と何か関係がある?」

 するとオブリビオン達はその声に反応してか、農具を振り回し館を抉りながら声を張り上げた。
「悪魔の子の棲み処など、畑に変えて我らの糧に!!」
「我らは支配されぬ! さあ、畑を! 畑を!」
 ――問いに噛み合わない回答。
 否、彼等にリーヴァルディの問いに答える理性や思考などは残っていないようであった。ただただ何かに操られるように、狂ったように畑を耕し、仲間を増やすことを望むのみ。

 リーヴァルディは自身に掛けた調律の呪詛を維持しつつ、更に写し身の呪詛を発動する。展開された無数の残像が殺気を放ちオブリビオンを囲むと、彼女は再び問いかけるように口を開いた。
「……悪魔の子って誰のこと? この声について、屋敷の主について何か知っているの?」
 それでも、オブリビオン達はまともに答えようとしない。一心不乱に床へ農具を叩き付け、部屋中を柔らかな土に変えようと腕を動かし続ける。
 そして床に鍬がめり込むと同時に、再び何処からともなく悲痛な叫び声が響き、ガタガタと館の柱を揺らしていた。

 ――埒が明かない。
 リーヴァルディは呆れたように息を付き、自らの生命力を魔力に変換し始める。溜まった魔力を解き放ちながら、彼女はユーベルコード『限定解放・血の銃士』を発動した。
「……限定解放。精霊言語修正、魔力錬成、術式圧縮……殲滅せよ、血の銃士」

 直後、リーヴァルディの声は短く難解な音を連ねて響く。強力故に本来時間の掛かる魔術の詠唱を暗号として効率化し、彼女は一瞬にして精巧な魔法陣を形成した。

 魔法陣はリーヴァルディの魔力を巡らせ、オブリビオン達に狙いを定めて大量の魔弾を乱射する。こちらに目もくれずせっせと畑を耕そうとするオブリビオン達は、躱す気も暇もなく弾幕に呑まれていった。
「……私達も望まれぬ客だけど、お前達はそれ以下ね。下がりなさい。屋敷は畑を耕す場所ではないわ」
 そう言い放ち、リーヴァルディは魔力を籠め続ける。
 魔弾に薙ぎ払われ、床や壁へと叩き付けられていくオブリビオン達は息絶える寸前までぶるぶると震え――それでもなお、畑を、繁栄をと不気味に呟き続けていたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
悪魔の子。
元々ここに住んでいた吸血鬼のことでしょうか?
吸血鬼よりも人間に繁栄をということであれば同意しますが……貴方たちは、もう人ではありません。

振るわれる農具を避けては相手が強化されるようですが……それよりも、床を耕されたことで異端の神の声が増す方が厄介ですね。

ならば、避けなければいいだけです。
【銃剣戦闘術】で振るわれる農具をフィンブルヴェトの銃剣で『武器受け』し、『カウンター』で『串刺し』に。
その後も銃剣の間合いより遠くで床や館内の物を破壊しようとする敵は氷の弾丸で撃ち抜き、近くの敵は銃剣での刺突、斬撃と『零距離射撃』を織り交ぜた技で倒して着実に数を減らしましょう。



「悪魔の子。……元々ここに住んでいた吸血鬼のことでしょうか?」
 オブリビオン達の吐く言葉に首を傾げながら、セルマ・エンフィールドがそう呟く。オブリビオン達は自分達の願いと目的、そしてこの館の主を指すのであろう『悪魔の子』という言葉を繰り返していた。あれが館の声、つまり異端の神が憑依するオブリビオンの記憶に惹かれた者共であるならば――この館の主というのは、嘗て彼等のような人間達に迫害され虐げられた、という記憶に苦しむ『吸血鬼』なのかもしれない。
 そう仮定すれば、セルマは自らの過去を頭に過ぎらせて。
「吸血鬼よりも人間に繁栄をということであれば同意しますが……」
 しかし、狂ったように他人の住まいを踏み荒らし、あまつさえ拒絶の声も無視して破壊するなど、到底許されるものではないはずだ。
「貴方達は、もう人ではありません」
 目の前の存在にそう言い放ちながら、セルマはオブリビオンの群れへと足を踏み出した。

 グン、とセルマの真横で錆びた鍬が振り抜かれる。闇雲にも見える動きを躱すのはそう難しく無かったが、それが床にめり込み柔らかい土に変わると同時にオブリビオンの動きが加速した。
 そして、館の声が一際大きな悲鳴となって響き渡り――精神を蝕む狂気を増す。
「ならば、避けなければいいだけです」
 セルマはユーベルコード『銃剣戦闘術』を発動し、先端に刃を持つマスケット銃『フィンブルヴェト』を握る手に力を込める。
 頭上を掠めようとした農具を受け止め、武器を弾かれてがら空きになった胴を一突きして次へ。彼女はそのまま床を耕そうとするオブリビオンの懐に潜り込むと、更に野菜頭の根元へとフィンブルヴェトを突き出した。

 そして、少し離れた地点にセルマの視線が動く。オブリビオン達は館の床を耕すだけでは飽き足らず、部屋に置かれた調度品や宝飾品にまでその手を伸ばそうとしていた。
「――させません」
 ダン! と鋭い銃声が響く。セルマは部屋の隅のソファに近付こうとしたオブリビオンの胸を的確に撃ち抜くと、素早くもう一方向のオブリビオンの元へと駆け出した。
「繁栄、を……畑をッ!!!」
 オブリビオンが思い切り農具を振り下ろす、寸前。

 一発の銃声と一瞬の斬撃音によってその声は絶たれる。ぼたりと野菜頭が床に転がり静寂が訪れれば、セルマは静かに息を付きながら銃剣を収めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
さぁて、色々と気になる館……というか館の声?の反応だが……。
とりあえず、館の崩壊を阻止する為に、集まった敵を倒すか。

館を耕すのは勘弁だが、周辺の土地なら後々に耕される事になるだろう。それで手を打って骸の海に還りな。

◆戦闘
【竜神の裁き】と近接戦闘を織り交ぜて戦うぜ
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流。
《見切り/武器受け》の受け流しで防御
敵を纏めて《なぎ払い》攻撃。

あと、館への攻撃を阻止するように立ち回るぜ

【収穫せよ、生まれ出でよ、同胞よ】対策
召喚された人形(と敵本体)を合体前に【竜神の裁き】で攻撃して早期に倒し、合体を阻止するのが基本だ。



 オブリビオンの攻撃や言葉に反応するような館の声を気にしつつ、ガルディエ・ワールレイドは部屋の中心、残った野菜頭達に向き直る。彼等は仲間が倒れても未だ農具を振り続け、館の床どころか屍をも巻き込んで潰し、耕しているようだった。
 つまりあのオブリビオン達の破壊活動を止めるには、群れの最後の一体まで残さず倒すしかない。ガルディエはオブリビオン達の姿を視界に捉え、己の力を集中させながら口を開く。
「館を耕すのは勘弁だが、周辺の土地なら後々に耕される事になるだろう。それで手を打って骸の海に還りな」
 オブリビオン達は彼の言葉も意に介さぬまま、床を少しずつ確実に土へ変え続ける。ガルディエは話の通じない野菜頭達へ向かって、ユーベルコード『竜神の裁き』を発動した。
「この雷は半端じゃねぇぜ。覚悟しな!」
 その瞬間、部屋に立っていたオブリビオンの頭部を赤い閃光が貫く。芋の頭はぱっくりと割れ、麦の頭は真っ黒に焦げ、そのまま力なく床に転がってしまった。
 彼等を貫いた閃光、それはガルディエが己の身に秘める異端の神の雷。一瞬にしてオブリビオンの身を焼き切ったガルディエは、そのまま両手に武器を握って残りの群れへと駆け出す。
 重く煌めく刃、魔槍斧ジレイザと魔剣レギアを構えた彼はオブリビオンの農具を高く弾き、集まって館を破壊しようとしていた数体を纏めて薙ぎ払った。

「畑、畑をッ!!!」
 オブリビオンは未だ足掻く。倒れた仲間の数を補うように地から自分と同じ野菜頭の人型を生み出すと、雄叫びを上げて農具を握る手に力を込めた。
 野菜頭達は額の数字を掲げるように上を向いたまま、行進と破壊を始めようとする。しかしそれらが館を踏み荒らす前に、ガルディエは再びユーベルコードの雷を広範囲へ放った。
 額の数字が小さい雑兵は細く広く分かれた雷にすら耐えきれず、なす術もなく瞬時にその息を絶やしてしまう。そのままガルディエの斧と剣がオブリビオンの首を刎ね、部屋にはただ大量の屍が転がるのみとなっていった。

 動かなくなったオブリビオン達の体はみるみる内に消え去り、骸の海へと帰っていく。ようやく喚き叫ぶ声が止んだかと思えば、いつの間にか――どこからともなく聞こえていた、館の主の声までもが消えていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『カイン・プロキオン』

POW   :    焼キ尽クス焔
【自身を切り裂き、噴き出す血が変化した炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【蒼の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    破滅ノ足音
【翡翠の魔眼が捕え、見据えた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    魂喰ライ
【死神の鎖】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:蒼夜冬騎

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィリア・セイアッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 館の振動も、泣き叫ぶ声も止んで。
 先程までの騒がしさもあって静か過ぎるように感じる部屋は、奥の壁にぽっかりと黒い穴を開けて沈黙していた。

 あの奥に異端の神が潜んでいるのだろうか。そう猟兵達がそちらへ一歩踏み出そうとする寸前、突如再びあの声が響き出す。
「……私は何も傷つけない。私は何も支配しない。なのに何故――」
 先程までとは違い声の発生源がはっきりと分かる。それは間違いなくあの壁の黒い穴から、足音と共にこちらへ向かってきていた。
「来ないでくれ。帰ってくれ。私はただ、静かに暮らせる場所が欲しいだけだ」
 かつん、と鮮明な足音が響けば。

 部屋に現れたのは一人のダンピール――否、ダンピールの姿をしたオブリビオン。しかしその瞳は猟兵や荒らされた部屋ではなく、ただ虚ろにどこかを見つめていた。
 猟兵がその姿に目を向ければ、すぐにそのオブリビオンが異質な気配を放っていることが判る。あれは間違いなく――オブリビオンに『異端の神』が憑依したものだ。

「私は、もうあの頃のようには――あの、頃?」
 神は狂った思考とオブリビオンの記憶が混濁したまま、首を傾げて目を動かす。
 荒らされた部屋、泥と血だらけの床、目の前の人影。神は脳裏に覚えのない筈の記憶を過ぎらせ、ひどく苦しそうに叫び出した。
「……兎に角、帰ってくれ……帰れ、この館から出ていけ!!」
 異端の神は突然血相を変えて刃を握り、猟兵を睨みつけて襲い掛かる。

 この地を人々が暮らせる場所にする為、そしてあの神をオブリビオンの記憶から解放する為――目の前の狂えるオブリビオン、『カイン・プロキオン』を倒さなければ。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。この屋敷に何か執着があるみたいだけど、
この地は今を生きる人々の安寧の為に使わせてもらう。
…それに否を唱えるならば、武器を取りなさい、悪魔の子。

今までの戦闘知識と第六感で敵の殺気の残像を暗視して、
呪詛を纏う大鎌による早業のカウンターで迎撃する

…例えお前が誰も傷付けていなかったとしても、
猟兵として過去の存在を看過する訳にはいかない。

敵の視線を見切り敵が血溜まりに足を踏み込んだらUCを発動
床の血溜まりに呪力を溜め無数の血杭で貫き生命力を吸収、
怪力任せに大鎌をなぎ払う闇属性の2回攻撃を放つ

…どうやら、見切れるのはその眼で見た物だけのようね。
それとも、素面だったらまた違った結果になっていたかしら?



 猟兵を強く睨むカインの前へ、リーヴァルディ・カーライルが一歩踏み出して口を開く。
「……ん。この屋敷に何か執着があるみたいだけど、この地は今を生きる人々の安寧の為に使わせてもらう」
「何が、安寧だ。何故――何故、私はその安寧を得られない」
 ぎろり、と翡翠の瞳がリーヴァルディを凝視する。しかし、目の前の存在はただオブリビオンとしての記憶に縛り付けられているのみであり、そこに悲しみや怒りといった感情はあれど強い意志や執念といったものは感じられないようであった。
 それでも館から猟兵を追い出そうとするカインに、リーヴァルディは大鎌を手に宣う。
「……ならば、武器を取りなさい。悪魔の子」
 ――そんなリーヴァルディの声に、カインは大きく目を見開いて。
「さ、い……煩い!! その言葉を口にするな!!」
 ヴン、とカインの鎌が空気を裂く。重い斬撃はリーヴァルディの頬の数センチ横を掠めると、そのまま勢いに乗って大きく弧を描いた。

 すかさずリーヴァルディは大鎌に呪詛を纏わせ、隙を見せたカインの胴を狙う。目にも止まらぬカウンターは彼女の狙いの中心を確かに捉え――たかに思えた。
 オブリビオンの瞳が煌めく。そしてまるでリーヴァルディの動きを読んでいたかのように、一瞬早く強く床を蹴り上げて斬撃を紙一重で躱した。
 同時に、リーヴァルディは強い殺気を感じ取る。自らの勘を信じて彼女が大きく距離を取れば、カインはふらりとよろめきながら唸るように問いかけた。

「何故、出ていかない。何故、私を追い詰める」
 虚ろな顔から紡がれる言葉に、リーヴァルディは表情を変えぬまま静かに答える。
「……例えお前が誰も傷付けていなかったとしても、猟兵として過去の存在を看過する訳にはいかない」
 どういう意味だ、とカインは歯を軋り、リーヴァルディを再び睨みつける。しかしそれ以上を答えず大鎌を掲げるリーヴァルディに、カインは堰を切ったように激昂して飛び掛かった。
 一撃、躱して更に一撃。刃が何度も交差して空気を鳴らし、荒れた部屋を駆け巡る。

 そしてカインの足がばしゃり、と水音を上げたその時。
「……限定解放。極刑に処せ、血の魔棘」
 リーヴァルディの口が動きユーベルコードを発動させる。途端に彼女の体は『吸血鬼』のものへと変化し、その気配を変えていた。
 次の攻撃を警戒し、カインは彼女の大鎌を凝視する。しかしリーヴァルディの瞳が捉えるのはカインの足元、先の野菜頭達が遺した真っ赤な血溜まりであった。
 カインが真下の異変に気づいた頃には、既に。
「……どうやら、見切れるのはその眼で見たものだけのようね」
「な、にッ……!?」
 血溜まりから飛び出した無数の赤い杭がカインの身を貫き蝕んでいく。カインが痛みに顔を歪める中、間合いを詰めたリーヴァルディが大きく鎌を振りかぶっていた。
 素面だったら結果も違っていたかしら、と彼女が紡げば。

 リーヴァルディは力任せに鎌を振り抜き、間髪入れずにもう一撃を叩き込む。深く傷を刻み込まれたカインは、血混じりの息を吐きながら虚ろな顔でぶるりと身を震わせるのであった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
狂うあなたを解放するため……などとは言いません。
私は、私たちが生きる場所を作るため、あなたを撃ちます。

あちらの武器は鎌でしょうか。
振るわれる鎌を『見切り』フィンブルヴェトの銃剣で『武器受け』、銃剣で牽制しつつ氷の弾丸の『零距離射撃』で応戦します。

この距離でも当たりませんか。ならば……

敵の魔眼により攻撃が回避されるようなら袖に隠したナイフを『投擲』し、できた隙に飛び下がり距離をとります。

狙いが予想されるのであれば……予想できても回避できないようにするだけです。

【絶対氷域】を使用、逃げ場のない絶対零度の冷気で敵を凍てつかせ、凍り付き動けなくなったところにフィンブルヴェトで弾丸を撃ちこみます。



「何故、何故だ。何故私を追い、責めるのだ」
 カインは言葉の後に喘鳴を続けながら猟兵達を睨む。虚ろなその翡翠の瞳に映るのは、猟兵セルマ・エンフィールドの姿であった。
「狂うあなたを解放するため……などとは言いません。私は、私たちが生きる場所を作るため、あなたを撃ちます」
 セルマがそう言い放てば、カインはガシャリと鎌の柄を床に突き立てて歯を軋る。
 そうやって人間は何度も私を駆逐しようとした。何度もこの身を虐げ、滅ぼそうとした。カインはそうぶつぶつと低く呟いた直後、何かが破裂したように鎌を握って走り出す。
「っ!」
 鋭く息を吸って吐き、セルマは振るわれた鎌の軌道を見切る。刃が首筋を裂こうという寸前で一歩後ろに退がり、セルマの手は素早くフィンブルヴェトを構えた。
 銃剣で鎌を受けつつその刃を振るえば、カインの動きに僅かな乱れが生じていく。セルマは一瞬の好機を逃さず手を動かすと、フィンブルヴェトの銃口を確実にカインの胸に当て――引き金に指をかける。

 が、しかし。
 カインは目を瞬き、そのタイミングが分かっていたかのようにふっと突如体の力を抜いて体を反らす。セルマの放った弾丸が空を切って一直線に壁へとめり込んだ瞬間、カインは一気に上半身を起こして鎌を握った。
 グォン! と低く空気が鳴る。
 反撃を躱したセルマは体勢を戻しながら、小さく呟いた。
「この距離でも当たりませんか。ならば……」
 セルマはカインの死角、自らの袖に隠したナイフに触れる。相手が一度鎌を後ろへ振りかぶった瞬間を狙い、彼女はその刃を投げ放った。
「……!!!」
 カインは思わず鎌を持ち替えてナイフを弾き返す。攻撃の止まった隙にセルマは大きく跳び下がると、ユーベルコード『絶対氷域』を発動した。
「狙いが予想されるのであれば、予想できても回避できないようにするだけです」

 向かってこないセルマを警戒しつつもその気配を察し、カインが一歩前へ踏み出すと同時。
 セルマの立つ位置を中心に、息も凍るような冷気が広がっていく。一瞬にして部屋全体へと霜が下り、先のオブリビオンが付けた汚れや血が凍ったことでカインの足は強く床へと縛り付けられていた。
 動けず、絶対零度の冷気に身体を蝕まれ、カインは震えながら何度も鎌の柄を床に叩きつける。ガシャガシャと虚しく衝撃音が響く中、セルマはゆっくりと一歩踏み出していた。

 息を荒くして足掻くカインへ、セルマはフィンブルヴェトの銃口を向けて。
「……逃しません」
 すっ、と彼女の指が引き金を引けば、容赦なく銃声と弾丸が放たれる。
 貫かれた胸に真っ赤な氷の花を咲かせながら、カインは床へと倒れ込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
……困りましたね
いえ、斃す他に無い事は解っているつもりなのですが

もし道を違えれば
或いは私もあのようなものに成り果てていたのかもしれないと
そう、思えてしまったから

……其処に在るだけで
己の意志に反して脅かし、そして脅かされる
神が狂う程の記憶とは
どのような心地なのでしょうか

――たらればに意味は無い事も
身勝手な感傷を重ねる事も
礼を失した愚かしい事と心得ておりますが

せめて、私なりに
何の力も借りず『ダンピール』としての力のみでお相手します
炎の直撃のみ避け、或いは払い
仕込んだ刃で相手の刃を受け流しつつ多少強引にでも懐に入り込み

貴方がオブリビオンであり、私は猟兵であった
それだけの事と致しましょう
どうか、安寧を



 カインの目は酷く苦しみ、悲しむように猟兵を睨みつける。それは直接的な憎しみや怒りではなく、ただこの境遇と記憶の理不尽さに訴えかけるような表情のようであった。
「……困りましたね」
 そう呟き、ファルシェ・ユヴェールは表情を僅かに固くする。斃す他に無いことは解っているつもりでも、目の前のダンピールに自分の過去を重ねてしまうのだ。
 ――もし『今まで』の何処かで道を違えてしまっていたら。
 或いは自分もあのようなものに成り果てていたのかもしれない、と考えてしまえば――ただ無慈悲にこのオブリビオンを骸の海に還すことなどできなかった。

 満身創痍のカインは息と血を吐き出しながら、床に突き立てていた鎌をぐいと持ち上げる。そして何を思ったか、突如その刃は猟兵ではなく自分自身へと牙を剥いていた。
「――」
 言葉、ではない。悲鳴と唸り、喘鳴の混じった何かを口にしてカインは自ら肉を切り裂く。噴き出した血は深い蒼の炎となって部屋を包み、ファルシェに向かって延び始めていた。

 狂ったように、否、狂いながら肉を裂き炎を散らす姿に、ファルシェはすっと目を細めて。
「……其処に在るだけで己の意志に反して脅かし、そして脅かされる、神が狂う程の記憶とは……どのような心地なのでしょうか」
 過去の仮定に意味はなく、他人に身勝手な感傷を重ねるなど無礼で愚かな事だと心得ていても。目の前のそれが、先のオブリビオン達が叫んでいたように悪魔の子と呼ばれ、館を侵され、虐げられたダンピールであるならば――せめて。

 ファルシェはカインの方へ向き直り、その狂える姿へ一礼してユーベルコードを発動させる。彼は彼なりに『ダンピール』としての力で立ち向かうべく、その血を目覚めさせていた。
 ずるりと炎は床を這い、カインを中心に広く広くその手を伸ばす。ファルシェは真紅に変わった瞳を煌めかせ、炎を躱して仕込み杖の刃を抜いた。
「――」
 距離を詰めたファルシェにカインが鎌を振り抜く。重い斬撃はその勢いに任せて低く唸るが、ヴァンパイアへと覚醒したファルシェを薙ぐにはとても足りない一撃であった。
 杖の刃で鎌を受け流せば、シィッ、と金属の擦れる音が部屋に響く。ファルシェが思い切り真上へと鎌を払うと同時、腕ごと武器を弾かれたカインは胴を無防備に曝け出していた。

 懐へと潜り込んだファルシェは、その刃を突き刺す寸前に小さく言葉を紡ぐ。
「貴方がオブリビオンであり、私は猟兵であった……それだけの事と致しましょう」
 周囲で焔が轟く中、彼は一瞬の刺突で深い傷を刻み込みながら。

「――どうか、安寧を」
 ファルシェが静かに刃を抜けば、カインは体を強張らせた直後に崩れ落ちる。手放された鎌が高い音を立てて転がり、床にはあまりにも鮮やかな紅が広がっていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
確かに自分の領域から帰ってくれと訴える言葉には理がある。
だが、大前提としてオブリビオンという存在に理が無いんだ。
既に過去であるお前は「あの頃」にもう戻れない。
少し気の毒だが、骸の海に還ってもらうぜ。

◆戦闘
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流。
敵の通常攻撃には《武器受け/見切り》による受け流しで対処。

【焼キ尽クス焔】対策
敵の「自身を切り裂く」動きに応じて【竜神気】使用。
敵の振るう刃を後押しして、敵が意図するよりもより深く傷つけさせるぜ。
瞬時に飛び込んで《捨て身の一撃》を仕掛ける。
強い炎を繰り出してくるリスクは承知の上で、一気に仕留める方針だ。



 オブリビオンの口は最早音を紡ぐことは無く、ただぱくぱくと虚しく開閉していた。しかし、そこに目を凝らせば未だ猟兵を拒絶し追い払おうとするように唇が動いているのが判る。
 ガルディエ・ワールレイドはカインの前へと踏み出しながら、諭すように告げた。
「確かに自分の領域から帰ってくれと訴える言葉には理がある。だが、大前提としてオブリビオンという存在に理が無いんだ」
 カインの口がふと、問うようにひとつ動く。それはガルディエが放った猟兵としての条理を理解できない、という様子であった。
 退くこともなくゆらりと狂ったように鎌を掴むカインへ、ガルディエは声色を変えぬまま言葉を続ける。
「既に過去であるお前は『あの頃』にもう戻れない。少し気の毒だが――」
 静かに、槍斧と剣を携えて。
「骸の海に還ってもらうぜ」

 瞬間、ブツッと何かが千切れる音が響く。ガルディエの視線の先では、カインが鎌を自らの肉へと食い込ませ、血を噴出させる様が曝け出されていた。
「――」
 喘鳴と共に溢れる血液が、蒼の炎となってガルディエに迫る。痛みも厭わずただ目の前の存在を排除しようとする様は狂気そのものであった。
 両者の距離は僅かに遠い。
 しかしガルディエは腕を伸ばしても届かぬであろう敵の身に向けて、ユーベルコード『竜神気』を放っていた。
「悪ぃな。そこも俺の間合いだ」
 そう呟けば、ガルディエはカインの鎌に意識を集中させて。
「――!?」
 ぞぶり、とカインの腕に深く深く刃が食い込む。飽くまでも血液を出させる為のそれはカインの意に反して強く押し込まれ――そのまま、腕を床へと落としてしまった。

 掠れた悲鳴が響く。炎の踊る部屋の中、カインは我に返ったようにガルディエの方を向いた。
 隻腕の鎌がガルディエに牙を剥く。まともでない思考から放たれる斬撃はかなり単純で、ガルディエは魔剣レギアでそれを受けながら易々と弾き返した。
 そのまま大振りな動きを予測し、ガルディエはもう片手の魔槍斧ジレイザを振り抜く。
 ごしゃりと骨の砕ける音が響けば、カインは鎌を握りしめたまま壁へ叩きつけられてしまった。
 カインは腕の断面から酷い量の血を流し、満身創痍の様子で立ち上がる。そして最早記憶すらも朦朧としているのだろうか、カインは再び鎌を自らの肩口へと向け始めていた。

 ガルディエはそれに合わせ、竜神気を放って刃を後押しする。身体を真っ二つにするかのような勢いで鎌が食い込めば流石にカインも状況を理解し、焦るように手を止めていた。
 轟々と燃え盛る炎をすり抜け、ガルディエは一気にカインとの間合いを詰める。
 強く踏み込んだガルディエは渾身の力を込め、至近距離の胴へと斬撃を放った。

 カインは一瞬意識を飛ばしつつ、片手に握っていた鎌を手放して床に転がる。僅かにぴくりと動く口は、ただただ苦痛と拒絶を込めて言葉を紡ごうとするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。もはや武器を持つ力も残っていないみたいね。
本当はこのまま狩るつもりだったんだけと…。

全身を存在感を消す呪詛のオーラで防御して闇に紛れ、
殺気を消し気絶できないか試み、
第六感や戦闘知識が不可能と判断すれば、
怪力任せに大鎌をなぎ払い仕留める

…今なら貴方達に、安寧を与える事ができるかもしれない。

両眼に魔力を溜め憑依した魂の残像を暗視して見切り、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収してUCを二重発動(2回攻撃)

心の中で祈りを捧げ神の魂を浄化して光の精霊に、
カインを闇の精霊に昇華して分離できないか試みる

…これで少なくとも、これ以上虐げられる事も狂気に苦しむ事も無い。
願わくば、その魂に安息が訪れんことを…。



 からん、と微かに持ち上がった鎌が床に引き戻される。カインは力の入らない隻腕を震わせながら、必死の形相で呼吸を続けていた。
「……ん。もはや武器を持つ力も残っていないみたいね。本当はこのまま狩るつもりだったんだけど……」
 リーヴァルディ・カーライルは何度も鎌に触れては落としを繰り返すカインを見つめ、その瞳に幽かな慈悲を浮かべて呟く。彼女はカインの視界から外れているうちにすうと闇に紛れると、そのままカインの方へと歩き出した。
 呪詛を纏ったリーヴァルディの姿はカインの目に映らない。しかしカインは突如鎌から意識を離すと、最後の力を振り絞るように片腕を振り上げた。
「――」
 ジャッ! と、カインの元から長い鎖が飛び出す。掠れ声で吠えるカインはただ闇雲にそれを振り回しながら、虚ろな顔で言葉の紡げない口を動かしていた。
 リーヴァルディは大鎌を構え、鎖を躱しながらカインとの距離を詰めていく。
 あれを鎮めるには痛みや気絶などでは事足りない。リーヴァルディは自らの勘と経験からそう判断したか、大鎌に渾身の力を込めて鎖ごとカインを薙ぎ払った。

 カインは床に倒れ、ほんの僅かな呼吸を残して目を閉じる。
 ――最早、止めを刺すのにそう力は要らないだろう。リーヴァルディがその手に持つ刃を一度突き立てれば、目の前のそれは骸の海へと還って逝く筈だ。

 しかし、リーヴァルディは大鎌を構えない。代わりにその紫の両眼へと魔力を籠め、彼女はカイン――否、オブリビオンの身体の奥で狂う神の魂を探ろうとしていた。
「……今なら貴方達に、安寧を与える事ができるかもしれない」
 そう囁いて、リーヴァルディはユーベルコード『限定解放・血の煉獄』を発動させる。そして吸血鬼と化している身体の力を使い――更にもう一度、ユーベルコードを重ねた。
「……限定解放。これは傷付いた魂に捧げる鎮魂の歌。最果てに響け、血の煉獄……!」

 彼女は目の前で大人しく眠るオブリビオンへ、二つの力を向かわせて祈りを捧げる。
 神の魂を感じる方へ光を。
 オブリビオンの身へ闇を。

 ――これで少なくとも、これ以上虐げられる事も狂気に苦しむ事もない。
 ふわり、と不可視の力が虚空へ浮き昇るのを感じれば――カイン・プロキオンの身体は霞み、解けるように消えていく。
「願わくば、その魂に安息が訪れんことを……」
 リーヴァルディは骸の海へと還っていくカインに、そう最後の祈りを捧げた。

 狂える主が安らかに消え逝けば、その途端館が大きく揺れて元の姿を取り戻す。
 不思議な細工も狂気の気配も消えた館から、猟兵達が去ろうとしたその時。
 正面玄関に飾られていた肖像画が――ふっ、と優しく微笑んだような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月30日


挿絵イラスト