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狂っているのは世界の方だ

#ダークセイヴァー #同族殺し

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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 だから――。

 斬らなければならない。悲劇が繰り返されるから。
 斬らなければならない。憎しみが連鎖しているから。
 斬らなければならない。裏切りを忘れられないから。
 斬らなければならない。私は、斬らなければならない。

 異端の神を。
 吸血鬼を。
 悪魔を。
 人を。

 ――世界を。

 私が、斬らなければならないのだ。



 グリモアベースに、やかましいホイッスルが響く。笛が鳴る前にもう集っていた猟兵の様々な感情が込められた視線を無視して、マクシミリアン・ベイカー(怒れるマックス軍曹・f01737)はホイッスルを吐き捨てた。
「お早い到着だな野郎ども! そのうえクソどもを殺したくて仕方がないというツラをしている! 悪くない!」
 荒々しく声を上げながら、マクシミリアンは猟兵たちを一人一人、目を覗き込むようにして睨みつけた。特に意味はない。
 それぞれのリアクションを確かめた後、満足したのか一歩下がった彼は、背後に浮かぶ景色を示した。それは、暗澹たる空にいくつもの尖塔を突き出した、大きな城だった。
「今回貴様らが行くのがあそこだ。ご立派な城が見えるだろう、あれが敵の巣だ。まるでディズニー・キャッスルだな! シンデレラのつもりか? クソの分際で、いいご身分だ!」
 舌打ちをしながら、不機嫌そうにその城を見上げ、しかしブリーフィングは続ける。
「あの城に垂れ流されているクソ吸血鬼の名前は『ローザリア』という。そう、世界の癌である吸血鬼だ。しかも傲慢なクソガキにして根暗でサディストのビッチときた! 殺すには十分すぎる理由だと思わんか!?」
 全力で罵りつつ、マクシミリアンは城主が鎮座しているであろう城の最上階に向けて中指を立てた。
 しかし、城は見るからに堅牢だ。また、城の眼下に広がる崩壊した城下町には、無数の亡霊が蠢いている。
 亡霊はすべて、かつてこの街に住んでいた人達だ。刃を向けるのは心苦しいかもしれないが、彼らを倒さない限り、ローザリアには辿り着けないだろう。
 マクシミリアンはそれを知りながら、変わらない調子で続けた。
「今回、ローザリアと取り巻きの亡霊どもを狙う者は、我々だけではない」
 背景が切り替わる。吸血鬼の根城と化した城に向かう、一人の少女がいた。深紅に輝く抜き身の剣を手に、何かを呟きながら、迷うことなく突き進んでいる。
 まだ幼さの残る、可憐な少女だ。しかしその姿に、猟兵たちは狂気を見た。マクシミリアンが察し、頷く。
「そうだ、奴はイカレている。いわゆる『同族殺し』だ。もっとも奴は吸血鬼ではないが――オブリビオン同士で潰し合うという点では、この呼称は正しい」
 そして、彼は「だからこいつを利用する」と続けた。
「名はカミーリャという。気に食わんが、このガキもまた強力なオブリビオンだ。だが奴は、まずは目の前のオブリビオンどもを消すことに専念する。ローザリアが生きている間は、貴様らには大して興味を抱かんだろう」
 手を出さない限り、攻撃される心配はないということだ。強大な力を借りない手はない。
 だが、狂ってしまった彼女にも、何か理由があることは間違いない。会話は難しいだろうが、その理由を探ってみるのもいいかもしれない。
「最終確認だ。まずはカミーリャの力を利用して、亡霊どもとローザリアを殺せ。こいつをどうするかは、その後に現地で判断しろ」
 戦うか、説得するか。城を支配する吸血鬼を倒すまでに、見極める必要がありそうだ。
 理解し終えた猟兵たちに頷いて、マクシミリアンが軍靴の踵を鳴らして姿勢を正した。敬礼姿勢を取ると同時に、グリモアが輝く。
「狂乱の化け物よりもなお恐ろしい戦士どもに、敬礼! 女子供の見た目に騙されて、傷を負うような真似はするなよ!」


七篠文
 どうも、七篠文です。
 今回はダークセイヴァーです。三つ巴の戦いになります。

 一章は、集団戦です。城下町に蔓延る亡霊たちを倒し、城を目指してください。
 猟兵たちが辿り着くと同時に、カミーリャも戦闘を開始します。会話は非常に困難ですが、何やらずっと独り言を呟いているようです。彼女が狂気に陥った原因の一端が、分かるかもしれません。

 二章はボス戦です。首尾よく城に辿り着いたら、城主としてふんぞり返っているローザリアをボコボコにしましょう。判定は厳しめ。
 カミーリャはローザリアに即行で斬りかかります。援護や共闘をするとプレイングボーナスがつきます。

 なお、一章二章ともに、カミーリャに敵意をもって攻撃を仕掛けると、大変なことになります。よくて苦戦判定ですので、ご注意を。

 三章は、世界の全てを敵とみなすカミーリャとの戦いです。ダイス判定は厳しめ。
 もしもこれまでに彼女が抱える狂気の原因が分かっていたならば、説得しても構いません。プレイングの内容次第では、結末に変化が出るかもしれません。
 ただし、正気に戻って仲間になることは、どのような手段であろうと、絶対にありません。

 全ての敵を倒したら、シナリオクリアです。



 七篠はアドリブをどんどん入れます。
 プレイングのままを希望される方は、「アドリブ少(または無)」と書いてください。

 また、成功以上でもダメージ描写をすることがあります。これはただのフレーバーですので、「無傷で戦い抜く!」という場合は、プレイングに「無傷」書いてください。
「傷を受けてボロボロになっても戦う!」という場合は、「ボロボロ」と書いてください。

 ステータスシートも参照しますが、見落とす可能性がありますので、どうしてもということは【必ず】プレイングにご記入ください。

※プレイングは、幕間で状況説明をしてから募集開始とさせていただきます。

 それでは、よい戦いを。皆さんの熱いプレイングをお待ちしています!
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第1章 集団戦 『その地に縛り付けられた亡霊』

POW   :    頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:善知鳥アスカ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 血にミルクを注いだブラッド・オレを飲み干し、ローザリアはグラスを置いてテラスに向かった。
 城下の街には、亡霊たちが今日も行き場もなく彷徨い、毎日心地よい悲鳴を奏でている。
「……ふふ。徹底的に痛めつけて殺した甲斐があって、芸術的な旋律ね」
 髪をかき上げ、腕を組む。そろそろ血も不足してきた。新たなメロディを加えるためにも、どこかの街から人を集めて拷問するのもいいかもしれない。
 そんなことを考えていたローザリアは、唐突に目を見開いて顔を上げた。
 殺気だ。それも、尋常ではないほど強烈な。
「なに? 人間じゃない……」
 テラスの手すりに身を乗り出して、城下町の入り口を目を細めて見つめる。
 そこにいたのは、少女だった。遥か彼方から、こちらを睨んでいる。その身なりと赤い剣が目に入った瞬間、ローザリアは思い出した。
 この辺りの領地を荒らしまわっている、人にして人ならざる小娘がいるという噂があった。
 吸血鬼だけでなく、人の集落すらも襲い、そこにいる悉くを皆殺しにする狂気の存在。異端の神をも殺したという話すらある。
「そう……あの子が」
 つい、笑みが浮かぶ。多くの同族を葬り、人も神も関係なく斬りまくるという狂気の少女に、ローザリアは興味を持った。
「面白いじゃない。好きよ、そういうの」
 城下町の扉を潜り、亡霊たちに向けて刃を向ける少女に、目を細める。
「楽しみだわ。あなたの血――どんな味がするのかしら」
 傲慢なる吸血鬼少女の紅い唇を、血に塗れた舌が、妖しく舐めた。



 亡霊たちが、カミーリャに襲い掛かる。表情をまるで動かさず、少女剣士が刃を振るう。猟兵たちは、その背後に降り立った。
 少女はこちらに目も向けず、嘆き叫ぶ亡霊を片っ端から斬り裂いている。
 圧倒的な戦闘力だが、目を奪われている暇はない。まずは、理不尽に命を奪われた彼らを、永遠の呪縛から解き放たなければならない。
 狂えるオブリビオンとともに、猟兵たちは呪われた世界に縛られる死者の魂へと立ち向かう。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

同族殺し、ね…フン、つまりは共食いか
なぜそうなるに至ったか興味が無いわけではないが…まずは目の前の亡者共からだな

ナガクニを装備
彼らに憑かれないようダッシュやジャンプを使い、急接近で切り裂き即座に離脱を繰り返して倒す
瀕死になって復活しないように弱点を見切り、一撃で倒すことに集中しよう
これ以上、苦痛に満ちたままこの世界を呪い、彷徨う事は彼らも望んでなどいないだろうからな

悪いが、一切の加減はしない
確実に仕留めろ…【怪異の黒豹】よ

そのままUCを発動
現れた黒豹と共に連携を取って敵を確実に葬っていく
カミーリャに関しては注意を払うだけに留めておくが、もし余裕があれば彼女の言葉に耳を傾けてみる



 切り裂いても次から次へ現れる亡霊に、狂えるオブリビオンは容赦なく刃を振るう。
 その様子を見ながら、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は黒革の鞘から短刀「ナガクニ」を抜き放った。
「同族殺し、ね……」
 泣き叫び縋り付いてくる亡霊を、躊躇いなく斬る。死した街人は血を流すことこそなかったが、一際大きな悲鳴を上げてのけ反り倒れ、白い粒子となって消えた。
 霊体であっても、物理的な攻撃は効くらしい。その事実を確認するや、キリカは敵の間を縫うように走り抜けて、すれ違いざまに敵の首へと冷たい刃を振るっていく。
 声にならない亡霊の叫びを聞き流しながら戦っていると、ふとカミーリャが目に入った。互いの間合いに入らないよう注意は払っているが、その声が、耳に届く。
「私がやらなきゃ……私が……!」
 彼女は吸血鬼ではない。カミーリャがオブリビオンであるということは、その命を一度終えていることを示唆していた。
 一体何が、彼女を同胞殺しの狂気に引きずり込んだのか。そのことに興味がないわけではないが、キリカは援護の必要なしと見るや、視線を己の敵へと戻した。
「まずは、目の前の亡者共からだな」
 仕留め損ねた亡霊は、その絶望に満ちた存在を終わらせることも出来ず、再び立ち上がる。一撃で死止める必要があった。
 幸い、嘆く霊の急所は人と同じく首にあるようで、深々と刃を突き刺し斬り裂くと、その身を光の粒子に変えて、彼らは天に昇っていった。
 それが、救いであるかどうかは分からない。二度目の死の先に何があるのかを、キリカは知らない。 
 だがそれでも、断言できることがあった。
「これ以上苦痛に満ちたままこの世界を呪い、彷徨う事は――彼らも望んでなどいないだろうからな」
 言うと同時に、キリカの隣に黒い粘液が浮かび上がった。それは徐々に体積を広げ、やがて動物の形を取る。
 黒豹だ。暗がりにあっても光沢する粘性の体を持つ豹が、主を見上げた。
 現れたそれに一瞥してから、キリカはこちらに手を伸ばす無数の亡霊に向かって断言した。
「悪いが、一切の加減はしない」
 ナガクニを構える。豹が体勢を低くし、牙を剥いて唸る。
 踏み込む。同時に、生み出した粘液の豹へと告げる。
「確実に仕留めろ……。怪異の黒豹よ」
 短剣と爪牙が、亡霊に向かって突き進む。
 黒豹は漆黒の粘液を撒き散らしながら、亡霊の頭部を噛み砕き、喉笛を爪で裂いて、次々に霊体を粉砕していく。
 その動きに合わせるように、キリカも疾駆する。立ち塞がる霊を、斬る。斬る。斬る。
 囲まれても即座に離脱できるほどに、彼女たちと亡霊の素早さには雲泥の差があった。
 キリカと黒豹の猛攻を受けながらも、亡霊はただ両手を伸ばして取り憑こうとしてくる。あまりにも哀れで、無残だった。
 だが、だからこそ、止まれない。その姿を終わらせてやることだけが、生きている者が彼らに与えられる慈悲だった。
 黒豹に喉笛を食い千切られた亡霊が、絶叫する。カミーリャはその悲鳴すらも聞こえていないように、一心不乱に眼前の敵を斬り倒していた。
 キリカは狂える少女の目を見た。あるいはそれは、どの亡霊よりも暗く沈んでいるようにも思える。
 彼女もまた、死して彷徨う哀れな魂なのかもしれない。そう考えて、すぐに首を横に振った。
「どうあれ、やることは変わらない」
 亡霊の数は、今も減る気配を見せない。そして、目指す城は、まだ遠い。眼前の戦いを終わらせなければ、先に進むことすらままならない。
 カミーリャのことを考えるのは、諸々が片付いた、その後だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

露木・鬼燈
剣呑剣呑。
狂気の果てに至る剣ってのもあるのかな?
好みではないけど…その術理には興味あるです。
手を出さなければ問題ないって話だよね。
観察させてもらおうかな?
どれだけ読み取り、解き明かすことができるか…
取り入れることはできなくても術理を知ることは力となる。
彼女の背景なんかには興味はないけどね。
まぁ、呟きが術理を解き明かす鍵になるかもしれないし?
そこにも注意しておこうか。
それには亡霊たちが邪魔だね。
犠牲者を救うことはできないし、過去は変わらない。
さっさと<斬祓>ってしまうのですよ。
呪詛を感知すると同時に斬祓えば囚われることはない。
さらに生体装甲に破魔の気と浄化のルーンを宿しておく。
これで安心っぽい!



 狂気に堕ちたオブリビオンの戦いは、あまりにも鬼気迫るものがあった。戦闘に娯楽性を見出す露木・鬼燈(竜喰・f01316)ですら、苦笑いを浮かべるほどに。
「剣呑剣呑」
 距離を取りつつ呟いて、魔剣「オルトリンデ」を脇に構え、薙ぎ払う。
 穢れを払う不可視の斬撃が、亡霊たちをその叫びもろとも白い粒子に霧散させ、絶望の呪縛から解き放っていく。
 呪詛を感知しながら戦えば、苦戦する相手ではない。鬼燈は無数に響く嘆きの声を斬り祓い、カミーリャに合わせて前進していった。
 一歩前を行く少女の剣筋は、常人とかけ離れた鋭さを持っている。
 観察していれば、すぐにわかった。その力の根源は、狂気だ。
 狂気の果てに至る剣。興味があった。
 地面へ叩きつけるように魔剣を縦に振るい、走った祓いの刃が亡霊を斬り裂く。その最中も、鬼燈はカミーリャの技を見極めんとしていた。
 好みの剣ではない。が、その術理を知ることは、自身の力に繋がる。
 彼女が狂った背景に興味はないが、ぶつぶつと何かを呟くその言葉にもヒントがあるかもしれない。亡霊を斬りつつ、耳を澄ませた。
 血のように赤い剣で一心不乱に亡霊を斬りまくるカミーリャは、立ちふさがるすべてのものに激しい殺気を向けていた。
「私がやるんだ……私が、私が――!」
 必死な形相だった。何かに取り憑かれているかのように――よもや亡霊ではないだろうが――、剣を振るい続けている。
 強烈な怨恨と、並々ならぬ目的意識。志という精神的なエネルギーの重要性は、武の頂点を目指す鬼燈はよく分かっていた。
 だが、前者は危険だ。敵の挑発に乗りやすくなるうえ、時に大きな隙に繋がる。あまり褒められたものではない。
 躊躇いのない戦い方は敵を滅することに特化しているが、防御はどうか。亡霊の攻勢が大したものではないので測りかねたが、カミーリャは回避すらも捨てているように見えた。
 狂える少女の鋭い剣術は、彼女自身の技量によるものだろう。間近で見た狂気から得られるものは、いかなる敵が相手でも完全に殲滅へと心を向けられることができる、その純粋性くらいなものだ。
「リターンに対して、リスクが大きすぎるっぽい」
 そう判断して、鬼燈はカミーリャから目線を外した。
 亡霊が鬼燈の肩に手を触れる。取り憑かんと悍ましい叫びを上げた瞬間、霊体が弾け飛んだ。生体装甲に宿した破魔の気と浄化のルーンが、強制的に祓い退けたのだ。
 魔剣を手に回転、邪気を切り裂く不可視の刃が周囲に広がり、鬼燈にたかっていた死霊どもが悲鳴を上げて朽ちていく。
 自身が起こした剣風に髪をかき上げられつつ、鬼燈はオルトリンデを肩に担いだ。
「犠牲者を救うことはできないし、過去は変わらない。……それは、亡霊たちもあの子も、同じだね」
 狂気の少女剣士が死に物狂いで切り開こうとしているものは、今ではない。剣に否定が込められすぎているのだ。彼女は、前を向いていない。
 今を生き、未来を斬り開くか。今を呪い、過去を斬り砕くか。それが、鬼燈の剣とカミーリャの剣の、決定的な違いだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソニア・アイウォーカー
彼女――カミーリャさん、ですか?
一体何を考えているんでしょう。
その狂気、執着……"パターン"に、とても興味があります!

共闘は申し入れても受け入れてくれなさそうですが、援護しますね!

観察のためにも、まずは敵の存在が邪魔ですね!
脚部関節ロック、照準固定、【ヘビーアームド・ウェポナイズ】
射線に入らないよう、ご注意下さい!

側面に回り、カミーリャさんへ向かう敵を減らすように砲撃を。
この亡霊達には……ううん、興味はありますが、あまり有益な"パターン"は得られなさそうですね。向かってきたら素直に後退。

カミーリャさんが呟いている言葉については、出来るだけ聞いておきます。
カメラをにゅっと伸ばして覗き込むように。



 己の悲劇を嘆き散らしながら、亡霊が少女剣士へと群がる。彼女はそれを恐れもせずに、赤い剣を縦横無尽に振るって消し飛ばした。
 その目線は虚空を彷徨っているようで、どこかを見据えているようにも見える。おおよそ、平常ではない。
 カミーリャのようなタイプは、これまでに見たことのない。ソニア・アイウォーカー(S0-N-1A・f25113)は強く心を惹かれた。
「カミーリャさん、でしたか。その狂気、執着……あなたの“パターン”に、とても興味があります!」
 接近しながら声を上げるも、カミーリャはソニアの方を向くこともなく、亡霊をひたすらに斬り捨てている。先を急ぐでもなく、目の前の一切を斬殺せんとしているようだった。
 無視をされてしまっても、ソニアは気にせず、むしろ楽しいとさえ感じる。人と関わる中で様々な行動パターンを蒐集してきたが、カミーリャはそのどれとも似つかない、まったくもって新しい性質なのだ。
 狂気。その中に、ソニアは大いなる女子力への可能性を見た。
「んー、もっと近くで観察したいですが」
 狂える少女は、こちらを見ようともしない。まるでいないものとして扱われているようだ。共闘を申し入れたところで、受け入れてくれるとは思えなかった。
 それに、機械の身であるソニアにも、亡霊たちは容赦なく襲い来る。あらゆる生命を呪い奪わんとするその“パターン”も興味深くはあるが、有益なものは得られそうにない。
「仕方ありませんねぇ。では、戦闘開始といきましょう!」
 死霊との距離を取りつつ、砲撃準備に取り掛かる。脚部関節をロックし、速度を代償に反動制御効率を上昇させ、照準を対象――カミーリャの周囲を囲む亡霊へと定めた。
 重武装モードに変形し、躊躇うことなくコンソールで各砲塔に砲撃を命じつつ、ソニアは明るく声を張った。
「援護しますね! 射線に入らないよう、ご注意ください!」
 開始された砲撃が、呪われた城下町に破壊をもたらす。爆散する炎や瓦礫に交じって、霊体が粒子となって消えていくのが見えた。
 地面から生えてくるように奇襲をかける亡霊を機銃で撃ち抜きながら、ソニアは砲撃と一緒に放っていた収音機つき隠しカメラの映像を、視界の隅に展開した。
 こっそりと地面に這わせているカメラは、カミーリャの顔を捉えていた。今にも泣きそうな顔だった。
「世界が、世界がダメになるから……私がやらなきゃいけないんだ……! 世界を護るのが、私たちの――!」
「ふむぅ。猟兵のようなことを言いますねぇ」
 口をついて出た言葉は、砲撃の爆音にかき消される。
 世界が壊れる。狂ってしまう。私が斬るんだ。私が護らなければ。しきりにそう呟き続ける少女から、今得られる情報は、あまり多くなさそうだった。
 それでも、ソニアは上機嫌に笑った。
「とっても興味深いです! 城の吸血鬼を倒した後に、あなたの“パターン”、もっともーっと、教えてくださいね!」
 胴体の中央にある光学照準器が、言葉と砲撃音に合わせて、楽しそうに伸び縮みした。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
カミーリャ、だっけ…?
彼女の行動の理由は確かに気になるね…でも、まずはこの霊達を鎮めないと…。
これ以上、苦しませたくないしね…。

【呪詛、呪詛耐性、オーラ防御、高速詠唱】防御呪術を展開し、亡霊達の呪いや怨嗟から自身を防御…。
霊魔のレンズと探知術式【呪詛、情報収集、高速詠唱】で街中に溢れる霊達の位置や一際呪いが強い中心点を確認…。
【ソウルリベリオン】を召喚し、片っ端から霊達の呪いや怨嗟を喰らい尽くし斬り裂き、破魔の鈴飾り【破魔】の力と併せて霊達を浄化…。
更に霊脈や怨霊の中心点を確認したら、【ソウル・リベリオン】と神太刀による二刀で浄化するよ…。

呪いはわたしの専門…わたしに呪いは効かないよ…



 亡霊を無慈悲に斬り捨てる狂気のオブリビオンを見て、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)はまるで泣いているようだと思った。
「カミーリャ、だっけ……?」
 剣の世界に生きる璃奈には、彼女の太刀筋に凄まじい悲壮感が宿っていることが、はっきりと分かった。
 何故、目の前の全てを否定するように斬るのか。その行動理由が気になるが、今はやるべきことがある。彷徨える霊魂を、鎮めてやらなければならない。
「これ以上、苦しませたくないしね……」
 群がる亡霊を見据えながら、璃奈は剣を召喚した。
 右手に呪詛ぐらいの魔剣「ソウル・リベリオン」を握る。放たれる呪力が波動となり、亡霊が押し戻されていく。
 璃奈は霊魔のレンズを用いて、街に溢れる嘆きの中心を見極めた。探知の術式が捉えたのは、街の北端だ。
 カミーリャの援護を仲間に任せ、魔剣を手に走り出す。呪力の波を破って手を伸ばす亡霊を、片っ端から切り裂いていく。
 呪詛喰らいの魔剣に貪られていく霊魂が、絶叫と共に光の粒子と化していく。
 物量に物を言わせて璃奈に触れ、霞の如き体を呪いに変質させた亡霊も、防御呪術により弾け飛ぶ。
 苦痛の伴う最期かもしれない。しかし、この地に呪縛され続けるよりは、遥かにいいはずだ。
 そう分かっているはずなのに、怨嗟の悲鳴と断末魔の声を聞くと、璃奈は謝らずにはいられなかった。
「ごめんね……こんな救い方で……」
 せめて少しでも痛みなく天へ昇れるよう、腕に巻いた破魔の鈴飾りで、浄化の音色を奏でる。
 突出して先行する璃奈の周囲には、夥しい数の亡霊がいた。その手が何度も触れているのに、璃奈に呪力は届かない。
「呪いはわたしの専門……わたしに呪いは効かないよ……」
 だから、諦めてほしい。その心は、亡霊たちには届かない。伸ばされる手は、斬り祓う他にない。
 命を呪わんと絡みつく亡霊を喰らいながら、璃奈はとうとう、呪縛の中心点に辿り着いた。
 それは、処刑場だった。言葉に出すのも悍ましい処刑器具が、血に塗れて捨て置かれている。
 左手に妖刀「九尾乃神太刀」を召喚、ソウル・リベリオンとともに、地面に突き立てた。切っ先から光が吹き出し、街へと広がる呪詛を浄化していく。
 これで、終わりのない絶望にピリオドを打つことができた。
 そう、思ったのに。
「やるじゃない、猟兵」
 女の声に顔を上げると、血色のマントをはためかせた少女が、空を飛んでいた。
 吸血鬼だ。璃奈は咄嗟に神太刀を構える。
 優雅に漂いこちらを見下すヴァンパイア――ローザリアは、ほくそ笑んだ。
「でも、だめよ」
 白く細い指を、吸血鬼少女が鳴らす。瞬間、璃奈は目を見開いた。
 街の至るところに、呪いの起点が現れたのだ。浄化されかけた亡霊たちが、再びこの地に縛られていく。悲鳴が、広がる。
「なんてことを……!」
「あはは! やっぱり悲鳴は最っ高の音色だわ!」
 睨む璃奈を無視してひとしきり哄笑したローザリアは、やがて妖狐の少女に視線を落とし、やはり蔑むような笑みを浮かべた。
「……悔しい? 悔しかったら城まで来てみなさい。私を殺さない限り、この亡霊たちは永遠に私の娯楽よ!」
 愉悦に浸った笑い声とともに、ローザリアは城へと飛び去っていった。
 璃奈の周りに、亡霊たちが集まってくる。失われた命の尊厳を嘆く彼らの中で、璃奈は魔剣を握りしめる。
「分かってる……分かってるよ……」
 呟いて、刃を振るう。苦痛の中で消えていく死霊の残滓を振り払った。
 同族殺しでなくとも、ローザリアは許せない。彼らの呪縛わ、解き放たなければならない。
「必ず……!」
 仇は、討つ。
 強く誓って、璃奈は歩き出す。城へ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。今はこの惨場を生み出した領主を討つのが先決。
この報いは必ず…必ず受けさせるわ…。

同族殺しが殺気を向けない限り警戒するに留め、
闇に紛れた霊魂の存在感を第六感を頼りに捉えUCを発動

…無念の内に死した霊魂達よ。
いまだ魂が鎮まらぬならば我が声に応えよ。
その無念、この私が聞き届けよう…!

断末魔の残像を暗視して心の傷口を抉る精神攻撃を耐性と気合いで耐え、
亡霊の先制攻撃を全身を覆う呪詛のオーラで防御
呪力を溜めた大鎌をなぎ払う早業のカウンターで迎撃
戦闘後、心の中で祈りを捧げUCを再発動する

…この世界の為なんかじゃない。
貴方達自身の復讐の為に、そして安息の為に。
力を貸して。共に領主を討ちにいきましょう。



 死霊に溢れる街の中を、赤い斬線が突き進む。
 狂えるオブリビオン――カミーリャに思うところがないではないが、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、あえて彼女から視線を外した。
「……ん。今はこの惨場を生み出した領主を討つのが先決」
 周囲を見渡す。気づけば亡霊に囲まれていた。すべての霊が、リーヴァルディを呪っている。
 憎しみではない。それは生きていることへの妬みであり、何よりも羨望であった。
 いかなる理不尽な理由で、どれほどの苦痛の中で命を終えたのだろう。何ゆえに、死してなおこの地に縛られなければならないのか。
 それらの疑問を全て一まとめにした答えが、見上げた先にいる。リーヴァルディは堅牢で豪奢な城を睨みつけた。
「この報いは必ず……必ず受けさせるわ……」
 担いだ大鎌を両手で握りしめ、一閃。纏わりつこうとしていた亡霊たちが、悲鳴の中で消えていく。亡霊の悲鳴はそれだけで正気を蝕むが、あえて、受ける。
 左目が輝く。それは、彼女の聖痕だった。
「無念の内に死した霊魂達よ。いまだ魂が鎮まらぬならば我が声に応えよ」
 死霊どもが大鎌の切っ先に触れた瞬間、冷たい刃を通り、死者の想念を吸収していく。赤く煌めく左の眼光もまた、亡霊の魂をその身に取り込んでいった。
 耳が裂けるような断末魔の叫びが、頭の中に鳴り響く。一瞬よろめいて頭を押さえ、しかし彼女は、はっきりと声の主たちに頷いた。
「……その無念、この私が聞き届けよう……!」
 覆いかぶさるように襲い来る亡霊たちが、突如霧散した。リーヴァルディが纏う呪詛のオーラが、彼らの呪いを上回ったのだ。
 全身から噴き出す死者の怨念は、ともすれば彼女の生命力を奪いかねない。しかし、構わずに、突き進む。
 手を伸ばして縋り付かんとする亡霊に、目にも止まらぬ大鎌の斬線が走る。物理的な攻撃以上に、刃に込められた呪力が、現世との呪縛を強制的に断ち切っていく。
「……この世界のためなんかじゃない」
 斬り裂かれた亡霊たちは、苦痛の悲鳴を上げながら、リーヴァルディの赤い左目に吸い込まれていく。その一体一体が彼女を蝕み、また、強く研ぎ澄ます。
「貴方達自身の復讐のために――」
 群がる死霊が、我先に助けを求めているように見えた。それが真実であったとしても、大鎌は止まらない。
「そして、安息のために」
 得物を手に回転、大きく円を描いた刃が、彼女を取り囲む亡霊を一気に取り込んだ。
 思念の波が襲い、膝をつく。しかし、すぐに立ち上がり、顔を上げ、紫と赤の瞳で高い高い城を見上げた。
 そこにはもう、幼さの残るリーヴァルディ・カーライルはいなかった。
 取り込んだ霊魂との精神同調率が極点に達した彼女は今、亡霊たちの代弁者にして、彼らの刃。死霊の呪詛、そのものだった。
「力を貸して。共に領主を討ちにいきましょう」
 絶望を声高に歌う死霊の怨念を武器に、リーヴァルディは進む。
 諸悪の根源たる、吸血鬼のもとへ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

唐草・魅華音
カミーリャ、お姉ちゃん?……本当にお姉ちゃん、です。どうして、お姉ちゃんがオブリビオンになってるの?どうしてそんな怖い顔で刃を振るってるの?……わたしの知らない間に、一体何があったの、お姉ちゃん?

話せる時間は少しでも多くほしい。だから、お姉ちゃんの近くで戦うよう追いかけながらお姉ちゃんの動き、敵の行動パターンを【情報収集】、【戦闘知識】を元に【学習(力)】してお姉ちゃんの邪魔にならない位置を確保しながら敵の攻撃を【見切り】UCで敵を排除するよ。
そうしてお姉ちゃんに何度も話しかけて、わたしを認識してもらえるように、わたしの知らない間に何があったのか、それを少しでも知るために。

アドリブ・共闘OK


トリテレイア・ゼロナイン
「同族殺し」依頼は幾度か経験
執着対象を滅ぼせば世界に牙剥く以上、激突は不可避
ですが狂気から零れる事情を汲んで力の限り穏やかな終わりを齎す猟兵もおり、私もそれに倣ったこともありました

滅ぼすことは確定
その上で此度は私に何が出来るのでしょうか…

しかしそれ以前にやはり霊体や呪術と私の相性が最悪です
剣も盾も銃弾も効果が薄い

素晴らしき友人、いえ宿敵、いえ腐れえ…縁を深めたあの方が鍛えた業物を持ってきて正解でした
ダンピールは神殺しの力を宿すと謳われていましたが(ダクセ世界観)…この義護剣の●破魔の力は本物
哀れな亡霊達を苦界から解放できます

戦いつつUCで彼女を観察しましょう
一体何が彼女を駆り立てるのか…



「カミーリャ、お姉ちゃん……?」
 呟いた声は、亡霊の嘆きに掻き消される。戦うことも忘れて、唐草・魅華音(戦場の咲き響く華・f03360)は立ち尽くした。
 なぜ、彼女がここにいる? どうして、あんなにも怖い顔をして、刀を振るっている?
 どうして。どうして。どうして――。
「どうして、お姉ちゃんがオブリビオンになってるの……?」
 足が、震える。
 鬼気迫る表情――それは今にも泣き出しそうなほどの――で死霊を斬り裂き霧散させていくカミーリャに、魅華音は届くはずもない手を伸ばした。
 その手に絡まる、亡霊の指先。冷たい呪いの気配が、心臓に伸びていく。
「魅華音様ッ!」
 叫びと共に、魅華音は襟を掴まれ後方に放り投げられた。倒れた痛みで我に返って見上げると、大きな鋼鉄の背中が見えた。
 一閃。薄紫の壮麗な装飾で彩られた剣が、斬り裂いた亡霊を光の粒子と化させる。己の振るった剣に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は驚嘆した。
「なるほど……この義護剣、破魔の力は本物ですね。さすがは、あの方が鍛えた業物」
 宿敵であり、あえて腐れ縁と呼ぶこともできよう無二の友人に思いを馳せつつ、トリテレイアは立ち上がった魅華音へと振り返る。
「ご無事ですか」
「は、はい。ごめんなさい……」
 謝る魅華音の視線が真っすぐにカミーリャに注がれ、そこから外れない様子を見て、トリテレイアは察した。彼女は狂えるオブリビオンの、近親者だ。
 命あるものを呪わんと縋り付く亡霊どもを義護剣「ブリッジェシー」で斬り裂いて、魅華音に告げる。
「……私は、『同族殺し』の依頼を幾度か経験しました」
「……」
「無論、執着対象を滅ぼせば世界に牙剥く以上、激突は不可避。カミーリャ様とも、戦うことになるでしょう」
「そんな! お姉ちゃんは、カミーリャお姉ちゃんは――」
 腕部格納機銃を連射、しかし、効果が薄い。即座に収納して剣での戦いに切り替えながら、トリテレイアは目を潤ませる魅華音へと続けた。
「ですが、狂気から零れる事情を汲んで、力の限り穏やかな終わりをもたらす猟兵もおります。……私も、それに倣ったこともありました」
「終わりを……」
「滅ぼすことは、確定しています。彼女はもう、オブリビオンなのですから」
 俯いて、魅華音は剣を握りしめた。
 遠い日に一緒に修行をした、姉のような存在。猟兵として、共に世界を守ろうと誓った、大切な人。
 なぜ、彼女が終わらなければならないのか。
 トリテレイアの剣が、紫の斬線を走らせる。死霊が消えていくその向こうに、赤い剣を振り乱すカミーリャがいた。
 何もしてあげられないのか。どうすることもできないのか。魅華音は流れる涙を止められなかった。
「わたし、わたしは、どうしたら――」
「“汝、心の儘に振る舞え”」
 死霊の喉元にブリッジェシーを突き刺し、トリテレイアが言った。機械である彼の表情は分かり辛いけれど、魅華音には微笑んでいるように見えた。
「この剣に刻まれている言葉です。私はこの言葉があるから、後悔をしてでも選ぶことができている、のかもしれません」
「……心の、儘に」
「行ってください、魅華音様。彼女のもとへ。貴女の言葉を――心を、彼女に届けてください」
「……はい」
 涙を拭い頷いて、魅華音が走り出す。群がる亡霊を斬り裂きながら、カミーリャをひたすらに追いかける。
 健気な少女を見送ってから、トリテレイアは素晴らしき友から譲り受けた剣と、己の象徴たる大盾を構えた。
「さて、『らしく』振る舞った以上、情けない結果に終止するわけにはいきません。でなければ、フォルター様に笑われてしまう」
 右目の如く輝く青いモノアイが、呪怨の亡霊たちを、静かに見据える。
「我が名はトリテレイア・ゼロナイン。人々を救う騎士として、全力であなた方を苦界から解放します故……お覚悟を」



 その背は、もう、すぐそこだった。
 ほとんど並び立つようにして剣を振るいながら、しかし決してカミーリャに刃が届くことのないように亡霊を退けつつ、魅華音は必死に叫んだ。
「お姉ちゃん――カミーリャお姉ちゃん!」
 狂えるオブリビオンと化した少女は、答えない。亡霊たちへと何かを呟きながら、慈悲なき赤い刃を叩きこんでいる。
 まるで血のように、霧散した霊体が赤く飛び散る。その最中、魅華音はなおも、呼びかける。
「お願い……! カミーリャ! お姉ちゃん! わたしの声を聞いて!」
「私が斬るんだ――。私が――私が全てを――」
「お姉ちゃん、忘れちゃったの? わたしよ、魅華音だよ!」
「斬る――全てを――世界を――私は――!」
 届かないのか。ようやく会えたのに、こんなにも遠くに感じてしまうのか。くじけそうになる心を叱咤するように、刀を振るって亡霊を討ち倒し、二人の道を、切り開く。
 あの日々のことは、今でも記憶にはっきりと残っているのだ。忘れるわけがない。忘れられようはずもない。それはきっと、カミーリャも同じはずなのに。
 どうして、並び立つ二人の間に、とても厚くて冷たい壁を感じてしまうのか。
「わたしの知らない間に、何があったの!? お姉ちゃん、教えてよ! わたしに、わたしにカミーリャお姉ちゃんを、助けさせてよっ!!」
「……み、かね」
 足を止める。涙に塗れた瞳で、魅華音はカミーリャを、姉と慕った少女を見つめる。
 今、確かに名前を呼んだ。もしかしたら、戻ってきたのかもしれない。正気が、心が――彼女の全てが。
「カミーリャお姉ちゃん……!」
 声が届いた。もっと心を寄せられれば、またいつかのように。笑顔が咲いた刹那――。
 その希望は、淡く儚い塵と消ゆ。

「黙れぇぇぇぇぇッ!!」

 この世の憎しみを全て混ぜ込んだような絶叫はしかし、魅華音に向けられたものではなかった。
 突如激昂したカミーリャは、勢いを増して亡霊の群れへと突っ込み、己の身を顧みずに刃を振るい、吸血鬼の城へと猛進していく。
 離れていく背中に、手を伸ばす。だが、追いかけられない。魅華音の足は、竦んでしまっているから。
「お姉ちゃん……」
 震える声が、纏わりつく亡霊の声に掻き消える。
 待って。追いていかないで。ここにいて。また一緒に。あの時のように。言葉が涙となって、冷たい地面に消えていく。
「カミーリャお姉ちゃん……!」
 振り返らない姉の背中が消え、カミーリャは、膝をついた。
 どうして、彼女なのだろう。どうして、私の大切な人なのだろう。
 どうして、世界は、こんなにも残酷なのだろう。
 むせび泣く魅華音を取り込むように亡霊たちが覆いかぶさる。戦わなければならないのに、嗚咽が、止まらない。
 冷たい死霊の手が伸ばされた瞬間、彼女の体は大きな腕に救い上げられた。
 トリテレイアだ。大盾を背負い右手に剣を持ち、左手で魅華音を担いだ機械騎士は、スラスターを全開にして、一旦後退した。
 声の届かなかった大切な人の名を呼び続ける魅華音へと、彼は静かに淡々と、しかし優しく言った。
「いい傾向です」
「……どうして?」
「変化がありました。かのオブリビオンは、確かに魅華音様に反応したのです」
 それは、慰め半分だった。しかしマルチセンサーにより二人の様子を垣間見たトリテレイアは、自身の体験を通して、確信しつつもある。
 カミーリャは救われる。救うことができる。例えその可能性がゼロに近しくとも――。
「やりましょう、魅華音様」
「……なにをしたら、いいのでしょう。私の言葉は、もう……」
 赤く泣きはらした目で、魅華音はトリテレイアの顔を覗きこむ。彼は、即答した。
「私に――私たちに出来ることを、全てです。私たちの、心の儘に」
 魅華音は頷いた。カミーリャがオブリビオンとなった以上、彼女を救えるのは、猟兵となった自分たちしかいないのだ。
 トリテレイアの腕から飛び降り、刀を強く握りしめる。魅華音は覚悟を決めていた。
「待ってて、お姉ちゃん」
 彼女の身に起こったことを知り、その全てを受け止めて、狂気に堕ちた少女の最期にせめてもの安らぎをもたらすために。
 並び立つ二剣士は、亡霊が塞ぐ道を切り開き、狂える少女を追いかける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エーカ・ライスフェルト
私がオブリビオン打倒を目指す理由は、倒すと気分がいいからよ
その快楽のためなら、猟兵としてお行儀良くすることくらい幾らでも我慢できるわ
…まあ、他にも少しは理由はあるけど(小声)

亡霊がいて、カミーリャがいない場所に、【念動力】を使った【理力の迷宮】を造り上げるわ
ちょっと禍々しいフォースっぽい半透明素材で出来た迷宮になるかも
「迷宮だから当然出口はあるのよね」
城に向かう進路上に出口を複数作って、そこに炎の【属性攻撃】を叩き込みながらのんびり【バイク】を【運転】して城へ向かうわ
「私は体力がないから、ボスと戦うまで体力温存しないといけないの」
「一緒に乗って行く? サイドカーはないけど、結構速度が出るわよ」



 街の一角に、半透明の巨大な壁が幾重にも現れる。それはすべて、禍々しい輝きを放っていた。
 作り上げた理力の迷宮と、その中に彷徨う亡霊たちの姿を見て、エーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)は満足げな笑みを頬に浮かべた。
「我ながら、いい出来だわ」
 壁や地面を擦り抜けられる亡霊たちも、エーカの尋常ならざる念動力の前にはなす術がなかった。嘆きと恨みを叫びながら、不気味に迷宮を這いまわっている。
 それらを横目に、エーカはゆっくりとバイクを走らせつつ、独り言ちる。
「私がオブリビオン打倒を目指す理由は、倒すと気分がいいからよ」
 それは、偽らざる本音だった。
 亡霊たちのように、悲劇のうちに望まぬ甦りを果たしたオブリビオンもいるが、それは例外と言える。多くは、世界への敵意だけで染み出した過去だ。
 そういう連中は、いくら叩き潰しても飽きがこない。実に楽しく、気持ちがいい。
「その快楽のためなら、猟兵としてお行儀良くすることくらい幾らでも我慢できるわ」
 横目で見るのは、通りの向こうで暴れに暴れるカミーリャだった。何やら激昂した様子で、ブツブツと呟きながら赤い剣を振るっている。
 オブリビオンに恨みを抱いているのか。それとも、もっと大きな何かか。彼女が戦う理由は、少なくともエーカのそれとはかけ離れていそうだった。
 そこまで考えて、エーカは自嘲気味に笑った。
「……まぁ、私にだって他にも少しは理由があるわよ」
 それを口にしないのも、態度に出さないのも、そうする理由がないからだ。ましてや狂い果てるなど。
「そんなの、私の性に合わないでしょう」
 脳裏に引っかかった微妙な想いを吐き捨てて、エーカは右手をハンドルから放し、掌に炎を浮かび上がらせる。
 見れば、亡霊たちが理力の壁から脱出を始めていた。城へと続く道にある迷路の出口から、次々に姿を現そうとしている。
 しかし、焦らない。むしろ、そうなって当たり前なのだから。
「迷宮だから、当然出口はあるのよね」
 涼しい顔で、炎を放つ。街道に溢れ出んとしていた死霊の群が、一瞬で業火に包まれた。
 怨恨の絶叫と悲鳴が、耳をつんざく。眉をしかめてやり過ごしつつ、エーカはうんざりと彼らの声に答えた。
「うるさいわね。私は体力がないから、ボスと戦うまで諸々を温存しないといけないの。死人の霊魂に付き合ってる暇なんてないのよ」
 城までは、まだ距離がある。理力の迷路は遥か城壁まで伸びてはいるが、それを保つのも少々疲れる。
 バイクのハンドルを切って、カミーリャのもとへ。血走った眼で亡霊を斬り裂き、虚空に何度も斬線を走らせる狂った少女剣士へと、エーカは軽い調子で声をかけた。
「一緒に乗って行く? サイドカーはないけど、結構速度が出るわよ」
「斬る――! 私が全てを――世界の全てを――! 私は――ッ!!」
「……つれないわね」
 冗談の通じる相手ではないことを確認して、同族殺しのオブリビオンから距離を取る。やはり、彼女は後回しだ。
 城を見据える。その奥で血でも啜っているであろう吸血鬼へと、エーカは鋭い眼光を向けた。
「あなたは楽しませなさいよ、ヴァンパイア」
 強くひねったハンドルに呼応して響く激しいエンジン音が、亡霊の怨嗟の声を呑み込み、掻き消した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「倒すにしても説得するにしても
情報を得ておいた方がよさそうだ。」

カミーリャの戦い方や呟きに注意しつつ
攻撃を向けられても対応できる様に備え
自分に攻撃が向かない範囲で語り掛ける。
(亡霊の攻撃も注意)
「その気になれば何でも斬れそうじゃないか。
その剣で本当は一体何を斬りたいんだ?
何があったら世の全てを否定する様な剣を持てる?」
行動や表情等から相手の関心のある事が事が分からないか良く観察。

亡霊には真羅天掌で
凍結属性の吹雪を発生させ
行動を止め【破魔】属性を付与した
デモニックロッドの闇の魔弾で浄化。
繰り返される怨嗟を使う隙を与えない。
「その無理に引き延ばされた生に幕を引いてやろう。
俺にできるのはそれ位だ。」



 狂乱の少女は独り言を呟き、時折何かを叫びながら、血色の剣を以て亡霊を斬り刻み、城へと近づいていく。
 外見だけならば、まだ幼さの残る乙女だが、その剣術は達人の域に至っている。爆発している感情のせいで、その刃にも迷いがない。
 蠢く亡霊をあしらいつつ、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は思案する。
「倒すにしても説得するにしても、情報を得ておいた方がよさそうだ」
 カミーリャというらしい彼女が優れた剣士であるということと、その刃に激しい憎悪が宿っているということは、見ればすぐにわかる。
 その憎しみの理由を少しでも知ることができれば。呪詛のオーラを盾にして亡霊を押しやり、フォルクはカミーリャに接近した。
 剣の間合いに入らないように注意して、しきりに何かを言っている少女剣士へと、声をかける。
「やぁ、大した太刀筋だ。その気になれば何でも斬れそうじゃないか。その剣で、本当は一体何を斬りたいんだ?」
「こいつもだ……こいつも、私を……!」
「その亡霊は、君の知人だと?」
「あいつも……あいつも! お前たちみんな、世界の狂気だ! 私が斬らないと、この世界が……っ!」
「……世界の、ねぇ」
 とても会話にならなかったが、どうやらカミーリャの敵が世界中のあらゆるものに向けられているということは分かった。
 フォルクは続けて尋ねた。
「何があったら、この世の全てを否定する様な剣を持てる? カミーリャ、君の殺意の根源はなんだ?」
「全部、全部斬るんだ。私が斬る、世界の狂気を――私が!! あぁぁぁぁぁぁッッ!!」
 突然叫んだカミーリャが、燃え盛る火炎に包まれた。
 咄嗟に距離を取るフォルクの前で、あたかも世界を終わらせんとする劫火の如き炎を纏い、少女は亡霊が伸ばす腕へと突っ込んでいく。
 追うのは危険だ。それに、最低限の情報は集められた。フォルクはある仮説を立てる。
 カミーリャは恐らく、何者かに裏切られている。何があったのかまでは分からないが、心が壊れるその瞬間に、彼女が見ていた世界もまた、崩壊したのだ。
 どう見ても狂気に侵されているカミーリャだが、彼女にとっては正常なのが自分だけであり、自分を狂人とする周りこそが、狂っているのだ。
「……いかにも狂人らしい思考だが、ね」
 なんともやるせない想いになるが、それをため息とともに吐き出して、フォルクは黒杖「デモニックロッド」を握った。気づけば、亡霊に囲まれていた。
 主の魔力を喰らい、デモニックロッドが暗く輝く。同時に、彼を中心に突如として吹雪が吹き荒れた。
「人の世に在りし万象悉く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ――」
 ダンピールの青年が囁くと、黒杖の黒は一層濃く輝き、吹雪もその勢いを増していく。亡霊たちが、その動きを止める。
「無理に引き延ばされた生に、幕を引いてやろう」
 杖の先端を、死霊に向ける。刹那、闇の魔弾が浮かび上がり、一気に膨張した。
 直径五メートルはあろうかという巨大な暗黒の球体が、杖の主から喰らった魔力と凝縮された破魔の力を引っ提げて、放たれる。
 フォルクの行く先を遮る亡霊どもが、その呪縛ごと根こそぎ浄化されていく。復活の余力も残さず、消滅せしめた。
 さらに生み出した複数の魔弾が、こちらは掌に収まる大きさのまま、空中を縦横無尽に走り出す。その先にいた霊体を、次々に穿ち、粉砕していく。
 現世から切り離される苦痛を叫び消えていく死霊に、ダンピールの青年は迷いのない瞳を向けた。
「俺にできるのは、これくらいだ」
 吹雪の白と闇の黒に呑み込まれていく亡霊たちに、それ以上かける言葉は、なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
戦うか、説き伏せるか。
オブリビオンである以上、共に歩むことはできませんが……
(この地に縛り付けられた亡霊を見て)
……まずは、この地に住む吸血鬼を倒すのが第一ですね。

一人で乗り込むだけあって流石に強い、こちらもそれに乗らせてもらいましょう。
両手にデリンジャーを持ち、襲い掛かる亡霊を迎撃するようにカミーリャの『援護射撃』を。

私の弾丸やカミーリャの斬撃で瀕死になり姿が消えそうになった亡霊がいれば『早業』『クイックドロウ』で【イージスの弾丸】を。姿が消える前に撃ち抜きユーベルコードの発動を防ぎます。

この世界に住む者として何か分かるかもしれませんし、カミーリャの呟きには耳をすませておきましょう。



 戦うか、説き伏せるか。セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は考える。
 救いようのないほどの絶望がひしめくこの世界だ。カミーリャという名の少女もまた、その被害者なのだろう。
 肉体的にも精神的にも苦痛の果てに死に絶え、その怨恨によって現世に染み出しオブリビオンと化した、といったところか。
 気の毒だとは思う。できることなら救ってやりたいところだ。
「オブリビオンである以上、共に歩むことはできませんが……」
 呟きながら、セルマはどこに目線を映しても視界に入る亡霊を見て、ため息をついた。
「……まずは、この地に住む吸血鬼を倒すのが第一ですね」
 スカートの中に隠していたデリンジャーを抜き放ち、カミーリャへと手を伸ばす亡霊たちに向け、トリガーを引く。
 銃声と共に駆け抜けた弾丸が、死者の霊体を穿ち霧散させる。
 連続で響く発砲音にも、カミーリャは反応を示さなかった。ただ必死に、眼前の亡霊を片っ端から切り裂いている。
 その赤い斬線に、セルマは舌を巻いた。一人で乗り込むだけあって、流石に強い。
「……ならば、こちらもそれに乗らせてもらいましょう」
 城下町の亡霊を全て否定せんとばかりに突き進む少女の背後から、援護射撃に徹する。
 カミーリャが血色の剣を振るうたびに、霊体が現世と切り離され、霧散しては消える。セルマの銃弾もまた、その一射を以て亡霊を解放していった。
 作業的に敵を打ち倒していく最中で、ふとセルマは耳を澄ませた。聞こえたのは、カミーリャの呟きだ。
「みんな、みんな、狂ってる。世界も、ダメ。私だけだ、私が斬らないと……」
「……」
 この世界に生きている以上、吸血鬼や魔獣といったオブリビオンの脅威には、常に晒されている。
 だが、彼女の絶望はそうした化け物によるものとは、違う気がした。カミーリャの言う「みんな」には、親しかった人間というニュアンスが含まれているように思えるのだ。
「裏切りの類でしょうか? 生贄を差し出す時にはありがちですが」
「……許さない! 私を、私を、よくもぉッ!!」
 突如怒りに燃えたカミーリャが、紅蓮に燃える火炎を身に纏い、無謀ともいえる突撃を始めた。慌てて銃弾をリロード、追いかけつつ援護を行なう。
 亡霊たちの数が増していく。ただ多いだけではないことは、すぐに分かった。
「あれは……」
 目に入ったのは、カミーリャが切り裂いた亡霊の霊体だった。粒子と化して空に舞った瞬間、吸い寄せられるようにして再び凝固している。
 吸血鬼の呪いか。舌打ちを一つ、望まぬ復活を強いられる亡霊への追撃に切り替える。斬撃や銃弾によって亡霊の姿が消える前に、さらなる弾丸を撃ち込んで、再生の呪力をも消し飛ばす。
 空へと消えていく霊魂の残滓。放つ銃弾に鎮魂の祈りを込めながら、セルマは心に燃え上がる冷たい怒りを自覚した。
 理不尽な世界であることは、分かっている。だが、許容することはできない。
 吸血鬼。奴らさえいなければ、世界はもっと、生きやすいはずなのだ。
「……仇は、討ちますよ」
 その言葉は、亡霊たちだけでなく、狂気に呑まれた少女にも向けられていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐伯・晶
無残に殺されて死後も縛り付けられるなんて惨い話だね
まずは亡霊達を倒して解放しよう

女神降臨を使用
霊体みたいだし飛べた方が便利かな
ガトリングガンの弾に
浄化の紋様を刻んだ銀を使用し攻撃

憑りつこうとしてきた亡霊は
神気で時間を停めて防御
停まっている隙に射撃するよ

場合によっては使い魔に亡霊の時間を停めさせて
仲間の援護しよう

神と言っても邪神だから
こういう相手を救えないのはもどかしいね
どちらかというと留める方向の権能だし
それでも利用している以上
大きな事は言えないんだけど

亡霊の相手をしつつカーミリャの行動もできる限り見ておくよ
年齢とか性別とか特定の相手に変わった反応してないかとか
呟き声を多機能イヤホンで拾うとか


フランチェスカ・ヴァレンタイン
共闘、というには歪に過ぎますが… 此方は幸い、遊撃はそれなりに得意とするところですし?

ある程度の距離を取ってカミーリャを追跡しつつ、神聖属性を纏わせた属性攻撃のUCで亡霊達を祓っていきましょうか
空中戦機動での誘導弾で撃ち抜き、急降下や急加速の強襲で断ち斬り、至近距離からの奇襲にカウンターで蹴りを浴びせ
俯瞰の強みを活かしてカミーリャや他の方の死角をカバーしての援護砲撃なども
…昔取った何とやら、こう見えてもアンデットの駆除はわりと手慣れてますのよ?

それにしてもこの狂戦士っぷり――矛を向ける先がいずれなくなれば、やっぱりこっちに向きますよねえコレ……
念のため、情報収集も欠かさないでおきましょうか、と



 肉体を奪われた亡者たちの嘆き叫ぶ声は、上空まで響いている。
 夜色の可憐なドレスを身に纏った佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、空の上からガトリングガンを構え、悲し気に目を伏せた。
「無残に殺されて死後も縛り付けられるなんて……。惨い話だね」
「まったく。吸血鬼の悪趣味っぷりには、慣れませんねー」
 大きな白い翼を羽ばたかせるフランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)も、眼下に広がる惨状に辟易していた。
 こうなってしまえばもう、彼らにしてやれることは限られてしまう。腹を決めた晶は、ガトリングガンの砲塔を亡霊たちへと向けた。
「まずは亡霊達を倒して解放しよう」
「えぇ。浄化と言うには少々手荒ですが――!」
 テールバインダー型の砲口を真下に向け、フランチェスカが閃光を発した。
 放たれた誘導弾が着弾、炸裂する。神聖な属性を付与された爆発が、亡霊たちを強制的に祓っていく。
 晶のガトリング砲が回転、銀色の弾丸が川となって、呪いに汚染された街へと降り注ぐ。
 無限とも思われるほどの銀製の弾丸には、全て浄化の紋様が刻み込まれている。銃弾を浴びた死霊たちもまた、現世と縛り付ける鎖を強引に断ち切られ、霧のように散っていった。
 亡霊たちが、一斉に空へと手を上げた。二人の猟兵を呪わんとする思念が、霊体の腕を無限に伸ばす。
「これは……!」
 晶は咄嗟に邪神の力を解放、呪詛そのものと化した腕を時間ごと停止させ、銀の弾丸で撃ち抜き霧散させた。
 光を纏う斧槍で迫る腕を斬り祓い、フランチェスカが首だけで晶へと振り向く。
「悠長にしていられませんわね。晶さん、ここは彼女の力を借りましょう」
「同感。それじゃ、やろうか!」
 砲撃と銃弾の雨を降らせながら、二人は一度高く舞い上がり、亡霊の腕を回避しつつ、赤い斬線を目指した。
 狂えるオブリビオン、カミーリャは、その卓越した剣術をがむしゃらに扱い、死人の魂を滅多切りにしている。
 晶が援護射撃を展開し、同時に使い魔を放ってカミーリャの周囲の時間を止める。
 すかさずフランチェスカが砲撃を叩き込み、聖なる爆風の中に急降下、伸ばされる亡霊の腕を斬り捨て、神聖な力を纏わせた長くしなやかな足による蹴りを浴びせた。
「……昔取った何とやら、こう見えてもアンデットの駆除はわりと手慣れてますのよ?」
 浄化の光を纏う攻撃に、一切の躊躇はない。同情などすれば引き込まれてしまうことを、フランチェスカはよく知っていた。
 時間操作とガトリングガンを用いて、晶はカミーリャとフランチェスカの援護に徹した。黒衣のドレスと魔力の翼を揺らめかせながら、独りごちる。
「……もどかしいね」
 彼――晶は本来、男性である――の中には、神がいる。だが、その神が彼らを救うことは、決してない。
 なぜならば、邪神だからだ。呪縛から解放するどころか、時間ごと現世に留める権能だった。
 現にこうして戦っている間にさえ、一瞬の近い時間とはいえ、晶は亡霊たちの時間を止めている。
「……利用している以上、大きなことは言えない。分かってるさ」
 それでも、吸血鬼の呪いを断ち切るための手段になる。使えるものも使わずに後悔するより、マシだと思った。
 降り注ぐ銀の弾丸に援護されながら、フランチェスカは斧槍と蹴りによる接近戦を展開し、その最中で少女剣士の様子を見た。
 独り言をぶつくさやりながら剣を振り回し、時折壊れたように叫び出す。刃に憎しみをありったけ込めたような戦い方に、思わず頬が引きつる。
「それにしてもこの狂戦士っぷり――矛を向ける先がいずれなくなれば、やっぱりこっちに向きますよねえ、コレ……」
 正気を取り戻してくれるなどという楽観的な予測は、出来そうもない。ため息などつきながら再度飛翔、砲撃で援護しつつ晶と合流する。
 砲塔をクールダウンさせる時間の間、晶は回避運動に徹していた。フランチェスカとカミーリャの接近戦を見ていた彼は、大きな翼を羽ばたかせて舞い上がった淑女へと目を向け、尋ねる。
「どうだった?」
 無論、カミーリャのことだ。問われたフランチェスカは、下から伸びてくる呪いの手を斬り祓い、肩を竦めた。
「剣士としては間違いなく一流ですねぇ。しかもバーサーカー。わたしたちが一人で戦って勝てる相手では、ありませんわね」
「時々何かを叫んでいたようだけど」
「よく聞き取れませんでしたね。意味があるものかどうかすらも」
 晶が頷き、二人は散開した。呪詛を流し込もうとする腕から逃れ、砲撃とガトリング斉射で霊体を粉砕していく。
 爆音と銃撃音の中で、晶は多機能イヤホンを耳に装着した。音の嵐の中でも、カミーリャの声を拾うことができるはずだ。
 集音対象をカミーリャがいるポイントの一点に絞ると、戦闘音や亡霊たちの嘆きをカットした声が、耳に届いた。
『……みんな狂ってる……。斬らなきゃ、斬らなきゃ』
 虚ろな声だった。妄執に取りつかれていると言えばそれまでだが、彼女がそう思わなければならないだけの理由が、過去にあったのだろう。
 恐らくは、彼女が死した経緯に答えがある。しかし、カミーリャがそれを教えてくれるとは思えない。
『みんな……みんな! 狂った、あの日、狂って、私を、狂って――あああああああッッ!!』
 叫び出す少女の高い声に、晶は顔をしかめた。声がうるさかったのではない。彼の中に住まう邪神が、その絶叫を聞いて言ったのだ。
 カミーリャを狂気の奈落に突き落とした者は、世界の敵ではないと。
「……」
「何か、分かりました?」
 倒しても復活を果たす亡霊を、五月雨式の砲撃により念入りに駆逐したフランチェスカが、一息ついたとばかりにやってきた。
 振り返った晶を見て察したらしく、彼女は「あぁ、そういう感じですか」と不快げに眉を寄せた。
 カミーリャは、亡霊の中でも人の形をくっきり残している者に、凄まじい敵意を向け、狂気が沸点に達したかのように叫んでいる。
 そこから導き出せる答えなど、一つしかない。
「……この世界ですからねぇ。吸血鬼や魔獣の類よりも、もしかしたら異端の神よりも、人間の方が恐ろしくなることが、間々ありますから」
「命に執着するのは、生きている以上は当然だけど……」
 答えた昌は、俯いてドレスの胸元を掴んだ。邪神が嘲笑っている。人間の醜さがもたらした結果だと。
 その声が届いたわけではないが、フランチェスカもまた、亡霊を相手に深紅の剣を振り乱す少女を見て、不愉快気に鼻を鳴らした。
「どちらにしても、彼女はもう現世にいて良い存在ではありませんわ。然るべき後に、対処はしましょう」
「そうだね。それが僕たちの仕事だ」
 城はもう、すぐそこに見えている。これまでの道のりとは比較にならない敵が、そこにいる。
 勝利を収めたその先に、世界を安寧に導く光が見えるはずなのだが――。
 晶とフランチェスカは、この戦いが明るい結末になることが、今のところはどうにも、想像できなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アンナ・フランツウェイ
世界の全てが敵か…。 その考えに飲まれるのはいけないのは分かってはいるけど、一方でその思想に心の奥で私は若干賛同しているのは否定できない…。でもまずは城主の被害者である彼らを救わなくちゃ…!

カミーリャの死角から攻撃を仕掛けようとする亡霊達に向け、【呪詛】を上乗せした【拒絶式・呪詛黒百合】を発動。せめて苦しませずに彼らを解放していこう。

討ち漏らしと召喚された亡霊には【断罪兵器シンズ・ブレイカー】で【範囲攻撃】。同時に【衝撃波】で群がる亡霊をなぎ払う。

あとはカミーリャを死角から襲う亡霊を倒しつつ【聞き耳】を立て、彼女の独り言を…かつて世界を憎んだ者として、彼女が狂気に陥った原因を探ってみよう。



「世界の全てが敵……か」
 目に映る一切を否定するかのような戦いを繰り広げるカミーリャを見て、アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)は悲し気に呟いた。
 その気持ちが、分かってしまう。かつてアンナもまた、世界を憎む者の一人だったからだ。身に宿す呪詛天使が叫ぶ世界への憎悪は、今も心に燻っている。
 だが、だからこそ、それに呑まれてはいけないことも知っている。それは悲劇以外、何も生み出さない。
 カミーリャのために何かをしてやりたい気持ちはあるが、その前に、やらねばならないことがある。
「まずは、城主の被害者である彼らを救わなくちゃ……!」
 怨嗟の声を上げながら、街に蠢く亡霊たちに、断罪兵器「シンズ・ブレイカー」を向ける。
 体と連結したその得物が、黒百合の花弁となって空に舞った。
 呪詛を宿した漆黒の花びらが、カミーリャに纏わりつく死霊へと降り注ぐ。
 哀れな霊魂の悲鳴が、一つ、また一つと消えていく。現世から引きはがされた亡霊が、静かに霧散し、粒子となって消えていく。
 花弁が纏う呪詛は、この世の存在を蝕む呪い。例え亡霊であろうと、その例には漏れない。
 せめて、苦しませずに解放を。アンナの願いが込められた呪詛により、多くの魂が自由を取り戻していく。
 しかし、吸血鬼がこの地に施した呪いもまた、強力だった。一時は呪縛から解き放たれた霊魂が、再び縛られ、死霊として蘇る。
「このままじゃ、苦しみが繰り返されるだけ……くっ!」
 意を決したアンナは、黒百合の花びらを集めて再びシンズ・ブレイカーに構築、薙ぎ払うようにして振り回す。
 神をも屠る一撃を受け、また放たれる衝撃波に晒されて、亡霊たちは今度こそ復活することなく、強制的に天へと帰されていった。
 強引な手段でも、永劫の悲劇を終わらせてやりたかった。
 苦痛の声を発する亡霊をなぎ倒しながら、徐々にカミーリャへと近づく。彼女はやはり一心不乱に、死した霊魂を斬り伏せ続けていた。罪なき人々の怨嗟の声は、まるで届いていないように見える。
「……カミーリャ」
 アンナは狂える少女の背後についた。死角を守るように戦いながら、耳を澄ます。
「狂っている……狂っている。信じちゃいけないんだ、お前も、お前たちも! あの子も、あの人も――みんな、みんな!」
 赤い刃をがむしゃらに振るいながらの言葉は、涙に揺れているようにすら聞こえた。後ろを守るアンナを知覚できないほどに、彼女は前しか見ていない。
 今、カミーリャは「信じちゃいけない」と言った。裏切られたのだろう。それも、悲しみや怒りに心が完全に踏み砕かれるほどの裏切りにあったのだ。
「……」
 アンナはふと、目を伏せた。
 カミーリャは、あまりにも孤独だ。その孤独を、アンナは誰よりもよく知っていた。そこに至る闇の深さもまた。
 だから、知りたいのだ。狂気に呑まれるほどに、心を蝕む絶望の正体を。彼女の魂が安らぐヒントは、そこにあるのだから。
「見つけたァァァァァッ!!」
 絶叫に、アンナは目を見開いた。テラスから愉快気に見下ろすローザリアを睨みつけて、カミーリャが殺意に燃えている。
「あはは! ようこそ私の城へ。玄関はそこよ、入ってきなさいな!」
「狂いを断つんだ、私が! 私が、狂いを、狂った奴らを、私の剣でッ!!」
 剣気を撒き散らしながら、カミーリャが豪奢な城門を斬り破った。
 アンナは考える。協力してローザリアを倒したとして、カミーリャは救われるのだろうか。絶望の一端だけでも、消してやることができるのか。
 少女の狂気を理解できてしまうアンナには、頷く自信が、今はない。
 カミーリャが突破した城門に、後続の猟兵が駆け込んでいく。立ち尽くしていた背を仲間に押され、顔を上げた。
「それでも、できることはある。できることをするんだ。……そうだよね、アンナ」
 自分に言い聞かせて、かつての己を見たような想いを振り切って、仲間とともに城の中へと突入する。
 必至に戦意を燃やすアンナの心の奥底で、呪詛天使がほくそ笑んだ気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ローザリア』

POW   :    ブラッディエンハンス
戦闘中に食べた【他人の血液】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    プライド・オブ・ヴァンパイア
【闇の魔力】【血の魔力】【影の魔力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ダークネスイリュージョン
自身からレベルm半径内の無機物を【闇】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:みろまる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は十六夜・巴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 城の中は、異様なほどに静かだった。
 階段を凄まじい勢いで駆け上るオブリビオン、カミーリャを、猟兵たちは追いかける。
 辿り着いたのは、謁見の間だった。玉座では、白とも銀とも取れる髪色の吸血鬼少女が、頬を笑みに歪めている。
「よく来たわね。歓迎するわ」
「見つけた――お前がぁぁぁッ!」
 カミーリャは目を見開いて、ローザリアに斬りかかった。赤い刃の斬線が走る。
 しかし、剣は届かなかった。片手を挙げた吸血鬼の前に、凝固した闇が現れ、深紅の剣を押し留めている。
「うぅぅあぁぁぁぁッッ!!」
 唸り叫んで押し込もうとするカミーリャへと、ローザリアは蔑むように目を細めた。
「不躾な女ね。挨拶くらいしなさいな」
「斬る……! こいつを、こいつも! 全部、全部斬るんだ! 世界を、私が……!!」
 その言葉に、吸血鬼少女が笑った。
「あは! ずいぶんとスケールが大きいのね、あなた。嫌いじゃないわ。私の同族だけじゃなく、人間すらも斬殺する狂気……素敵ね、ホント」
「人間――人間!? ……殺す、こいつも、人間もッ! みんな、狂っているからッ!!」
「あらあら、落ち着きのない子」
 くすりと呟いてから、ローザリアが自身の手を爪で引っかき、溢れる血を振り払った。
 舞い散った血液は、弾丸の如き勢いを以てカミーリャに衝突し、軽い少女の身体を猟兵たちの方へと弾き飛ばす。
 受け身も取らずに転がり、立ち上がる狂気の剣士。その様子を見ながら、ローザリアが背中から吹き出した闇で、翼を形成する。
 暗黒の翼を音もなく羽ばたかせ、彼女は赤い瞳を楽しげに輝かせた。
「ふふ、いいわよ。可愛がってあげる。もちろん、そっちのあなたたち――猟兵も一緒にね」
 カミーリャが叫ぶ。猟兵たちが武器を構えて、ローザリアを見据える。
 戦いの気配がはち切れる最中、残虐なる吸血鬼が、哄笑する。
「さぁ、かかってきなさい! 斬って潰して転がして、最後にその血を飲み干してあげるわ。……あなたたちは、どんな味がするのかしらね?」
露木・鬼燈
オブリビオン同士で喰い合って沈む。
なんてのが一番なんだけどね。
まぁ、そう上手くはいかないよね。
予定通りにカミーリャを援護して吸血鬼から沈める。
いい感じにカミーリャも消耗してくれればいいんだけど。
んー、欲張りすぎて失敗や余計な傷を負うのは面白くない。
猟兵だと思って援護するっぽい。
<骸晶>を展開して狙撃で援護するのです。
高速で戦闘を行う吸血鬼を狙うのは難しいけどやりようはある。
如意宝珠に取得済みのカミーリャの情報を入力。
彼女の動きを予測することで間接的に吸血鬼の位置を算出。
そこに暴喰之呪法を乗せた棒手裏剣を魔杖から電磁投射。
これでイケルイケル!
他の猟兵も絡んで予測演算が不安定になったら待てばいい。


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フッ…味わってみるか?吸血鬼よ
まぁ、私に食らい付けたらの話だがな

怒りに狂うカミーリャの攻撃の合間を縫うように銃撃
遠距離から誤射をしないように狙い撃つ
ローザリアがこちらに攻撃しようと接近したら距離を取りつつカミーリャが攻撃をしやすいように動いて誘導し、彼女が攻撃を加えたら追従するように銃撃を行う

私の血は美味いか?
気に入ってくれれば嬉しいんだがな

あえて近づかせないように腐心する事で敵の吸血を誘い
噛み付いてきたらUCを発動
牙が刺さった箇所を体組織を破壊し血液を溶かす猛毒の霧へと変えて攻撃
怯んだ隙に銃弾を至近距離で撃ち込み蹴り飛ばす

ふむ…どうやらお前の口には合わなかったようだな
残念だよ



 尋常ならざる剣幕でローザリアへと斬りかかるカミーリャ。的確に急所を狙う刃は、凝縮した闇による受け止められ、逸らされている。
 化身鎧装<骸晶>を展開した露木・鬼燈(竜喰・f01316)は、棒手裏剣に暴喰之呪法を付与しながら、その戦闘を観察した。
 カミーリャの剣術は驚異的な完成度を誇っているが、いかんせん感情に任せすぎている。油断なく、しかし余裕を滲ませるローザリアの方が、総合的な実力では上か。
「オブリビオン同士で喰い合って沈む。……なんてのが一番なんだけどね」
 ライフルめいた形状の杖を、ローザリアに向ける。狂えるオブリビオンの消耗も狙えれば結果としては最良だが、そう簡単にはいくまい。
 欲張りすぎて失敗したり、余計な傷を負ったりするのは、面白くない。
「仕方ない、猟兵だと思って援護するっぽい」
「こちらが一方的に合わせなければいけないというのは、骨が折れるがな」
 苦笑いしつつ、ライフル――こちらは実銃だ――のマガジンを装填したキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)が言った。
 二人は同時に杖と銃を構えた。鬼燈は如意宝珠にカミーリャの情報を入力することで、キリカは豊富な銃撃戦経験から来る戦闘知識によって、それぞれに遠距離から、ローザリアを狙い撃つ。
 VDz-C24神聖式自動小銃”シルコン・シジョン”の発砲音に合わせて、魔杖から棒手裏剣が電磁投射された。神聖な弾丸と魔剣により増幅された呪詛を纏う刃が、音速を超える速度で吸血鬼に迫る。
 キリカと鬼燈の攻撃に、ローザリアは瞬時に反応した。カミーリャの剣を捌きながら闇の壁を形成、銃弾と刃を防ぐ。
 弾かれた二人の攻撃は、力なく床に転がり、足を踏みしめる狂気の剣士によって蹴り飛ばされた。
「吸血鬼がぁぁぁぁッ!!」
「ふん。『こちら側』のくせに、猟兵に援護されるなんて。情けない子ね!」
 赤い剣を凝固した闇で受け、ローザリアの張り手がカミーリャの頬を捉える。乾いた音とともに弾き飛ばされた少女が、壁に激突した。
 常人ならば骨が砕け死に至ったかもしれない威力だが、オブリビオンの剣士は立ち上がり、その目を殺意の炎に燃やす。
 余裕綽々といった様子でカミーリャを見下すローザリア。油断している。キリカは即座に銃を構えた。
「いただくッ!」
 連続した射撃音が響く。夥しい火線が玉座の間にぶっ放される。吸血鬼が片手を上げて闇の壁を形成、それらを受け止めた。
 しかし、闇にひびが入る。神聖式の名を冠する銃から撃たれた弾丸は、ローザリアが操る暗黒をも穿たんとしていた。
 一発残らず撃ち尽くさんとトリガーを引きながら、キリカは叫んだ。
「鬼燈!」
「ぽい!」
 答えた鬼燈は、ローザリアの背後。杖を構えて棒手裏剣を放つ。敵が掲げたもう片方の手から発せられた闇が盾となり、鋭い刃を防いだ。
「鬱陶しい……!」
 行動を制限された吸血鬼の少女が、忌々し気に舌打ちする。その目は、鬼燈かキリカ、どちらから始末するかを見定めているようだった。
 そこに飛び込む、少女の絶叫。
「死ねぇぇぇぇぇッ!!」
 カミーリャの斬撃が、空を切る。大きく胸を逸らせたローザリアは、間一髪で深紅の刃を逃れていた。
 銀髪が舞う。目の前に散る己の髪の毛に、吸血鬼の目が紅く悍ましく輝いた。
「私――私に、触れたわねぇぇぇッ!!」
 腕に纏わせた暗黒で、カミーリャを殴り飛ばす。調度品を破壊しながら派手に転がるそちらを無視して、ローザリアがキリカへと飛び掛かる。
 猟兵二人からの遠距離射撃を、悉く暗黒の魔法で打ち払う。優雅さすらあった少女は今、人を喰らう化け物の本性を全面に出していた。
「お前の血を――飲み干してやる! 私の糧となりなさいッ!」
「フッ……味わってみるか? 吸血鬼よ」
 挑発しつつ、キリカはマガジンを交換しながら回避行動を取った。掴みかからんとする手を避け、距離を取る。
 しかし、吸血鬼の速度は常人のそれを凌駕する。数秒も持たずに掴みかかられることは、明白だった。
 そこに飛来する、棒手裏剣。音もなく迫ったそれを闇が纏わりついた手で叩き堕とし、ローザリアはなおもキリカの血を貪らんとしていた。
 鬼燈は横目でカミーリャを見た。まともに殴られたせいか、起き上がってはいるが、膝をついて何かを叫んでいる。この瞬間は、あてに出来そうもない。
「ま、今はその方がいいです」
 猪突猛進な彼女は、キリカの邪魔になる。何をするつもりなのかは分からないが、彼女が策を講じていることは、共闘しながらはっきりと分かった。
 壁際に追い詰められたキリカが、ライフルをぶっ放す。目に見えない速度の弾丸を全て闇で防いで、ローザリアがとうとう、彼女の首を捉えた。
 華奢な体からは信じられないほどの腕力が、キリカの首元を襲う。苦し気に呻くその姿に、吸血鬼少女が愉悦に頬を吊り上げた。
「捕まえたわ……。ふふ、威勢がいいのは最初だけ。人間はいつもそう」
 言い終わるや、ローザリアは掴んだ首を引き寄せて、キリカが着る上着の肩口を引き裂き、露出した肌にかぶりついた。
 じゅるじゅると血を啜る音は、まるで命を吸われているかのように思えた。サディスティックな悦楽に酔うローザリアは、キリカの顔が絶望に歪んでいることを想像していた。
 だから彼女は、耳元に聞こえた声に、目を丸くしたのだ。
「私の血は美味いか? 気に入ってくれれば嬉しいんだがな」
「!?」
 瞬間、キリカの肩口が霧へと変化した。薄紫色の霧は眩暈がするほどの甘い香りを放ち、体組織を破壊し血液をも溶かす猛毒となってローザリアを包み込む。
 密着していたせいで毒霧を吸い込んだ敵は、激しく咽た。咳に混じる血が、その体内が破壊されていることを示唆している。
 ふらつくローザリアを蹴飛ばして、キリカは転がる吸血鬼を見下した。
「ふむ……どうやらお前の口には合わなかったようだな」
 ライフルを構える。銃口が、敵の脳天を捉える。
「残念だよ。実にね」
「この……下等生物の分際で!」
 両腕を闇の魔力で覆い、ローザリアが吼えた。突き出された両掌から、暗黒の球体が連続して放たれる。
 それを冷静に回避しつつ後退するキリカとすれ違うように、回復したカミーリャが飛び出した。真紅の剣が、闇の魔術を斬り裂いていく。
「あぁぁぁぁぁッ!!」
「ちっ――邪魔よ!」
 刃と暗黒が打ち合い、高速の剣戟が展開される。感情を刺激されたローザリアはもはや、目の前の敵しか見えていないようだった。
 もう、最初の余裕がない。そして、その瞬間を待っていた者がいた。
「予測演算が不安定になったら待てばいい。……ま、ここまで最高のタイミングが来るとは、思わなかったけど」
 呟きながら、魔杖の尖端をローザリアへ。鬼燈は冷徹な眼光で、敵を真っすぐ見据えていた。
 棒手裏剣が、電磁投射される。纏う暴喰之呪法が蠢き猛り、獲物を見つけた猛獣の如く、吸血鬼へと襲い掛かる。
 冷静さを欠いたローザリアは、その静かなる殺意に反応が遅れた。展開した闇が固まるより早く、冷たい刃が首筋に刺さる。
「あっ……!」
 小さな悲鳴は一瞬、次の瞬間、吸血鬼は絶叫してカミーリャを力のままに殴り飛ばし、膝をついた。
 棒手裏剣から解き放たれた百足型の呪詛が、傷口からローザリアの内部へ侵入し、その血肉を食い荒らす。悍ましい激痛に、敵は自分の体を抱くようにしながら、その身から凄まじい量の闇を噴出させた。
 キリカと鬼燈は眉を寄せた。送り込んだ毒霧と呪詛が、消滅させられている。膨大な魔力によって、相殺されているのだ。
 ローザリアが、震えながら立ち上がる。
「よくも――よくもこの私に、再生の力を使わせたわね――!!」
 自尊心を傷つけられ、怒りに打ち震える吸血鬼。カミーリャの狂気にも匹敵するほどの憤怒に、鬼燈とキリカは共に武器を構え、目配せをして頷いた。
 敵の本気を引きずり出した。激戦は、ここから始まる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フォルク・リア
あの吸血鬼を見ても相変わらず。いや狂気は増したかもしれない。
「世界を斬ると言うが。お前の世界は既に壊れているだろう。
本当に立つべきものは自分自身の中に在る。それでも。」
「まず倒すべきはあの吸血鬼、その為になら
力を合せる事は出来る。」

冥雷顕迅唱を使用。辺りを雷で満たし。
ローザリアを雷弾で攻撃すると共に
操っている闇を雷光で晴らしたり
雷、雷弾で闇を討ちカミーリャを援護。
相手からの攻撃も警戒し自身やカミーリャへの攻撃は
雷を使って迎撃、防御。
更に隙を突いて闇の翼を攻撃して機動力を奪う。
「血の味を気にするよりも自分の最期を想像してみる事だ。
己が快楽しか求めない輩には無理な相談だろうが。」


エーカ・ライスフェルト
【理力の領域】とダークネスイリュージョンの真正面からの力比べ、なんて展開になったら私が惨敗するわね
だから最初は【属性攻撃】で『ローザリア』の顔や髪を狙うわ
火の矢や炎でもいいけど、多分火の粉でも問題ないわ。挑発が目的だからダメージ0でもいいのよ
「戦いでは傷つくものよ。嫌ならこの世から去ることね」

敵がダークネスイリュージョンを使ったタイミングで、私の近くの無機物を【理力の領域】で掌握して【フォースオーラ】に変えようとするわ
目的は時間稼ぎ
足場が無くなるようなら【念動力】で私自身を支えておく

他猟兵やカミーリャが『ローザリア』を攻撃する時間を稼ぐ
または
ダメージを与えるのが目的の【属性攻撃】を行いたい



 火の粉と雷光が飛び交う中で、ローザリアとカミーリャが何度目かも分からない衝突をした。
 深紅の剣と闇の力が触れ合うたびに、激しい魔力が飛散する。炎の塊で敵の顔面を狙うエーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)は、飛び散る火の粉に舌打ちする吸血鬼を見て、冷静に言った。
「分かってはいたけれど、真正面からの力比べ、なんて展開になったら私が惨敗するわね」
「幸い優秀な前衛がいる。あの吸血鬼を見ても相変わらず――いや、狂気は増したかもしれないが」
 玉座の間に稲光を走らせながら、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)が呟くように言った。目深に被ったフードの奥からでも、カミーリャの動きは見えていた。
「まず倒すべきはあの吸血鬼という目的が一致しているなら、力を合せる事は出来る」
「援護ってことね。得意分野だわ」
 オブリビオン同士の打ち合いは、ローザリアに分があった。カミーリャが狂気に囚われて冷静さを完全に欠いているということもあろうが、元が人と吸血鬼だ。強大な悪魔の方が、地力で分があるということかもしれない。
 エーカは執拗に、火炎の属性攻撃で敵の顔や髪を狙った。彼女の経験則から言って、あの手の女は、能力にも外見にも、絶大な自信を抱いていることが多いからだ。
 それは決定的な弱点となることを、往々にして強者は知らない。知らずにいるから、簡単に激昂するのだ。
 カミーリャの刃を両手の闇で受け止めた刹那、ローザリアの眼前で炎が爆ぜた。威力としては微々たるものだが、熱はそのままに吸血鬼の白い肌を焼く。
「あっ――!?」
 のけ反った敵はカミーリャの追い打ちを叩き返し、焼かれた顔を抑え、困惑に打ち震えた。
「私の……私の顔が……!? き、傷がついたの? 私の、顔に!?」
 明らかに動揺しているローザリア。せいぜいわずかな火傷が出来た程度だが、彼女は激しく狼狽えている。
 その様子を見て、エーカは鼻を鳴らした。
「なに驚いているのよ。戦いでは傷つくものよ」
「あってはならないのよ! このローザリアが……人間如きに触れられ、傷つけられるなんてッ!」
「傷つくのが嫌なら、この世から去ることね」
「ほざくなぁぁぁぁッ!!」
 漆黒の闇が翼となって、ローザリアが飛翔した。天井のシャンデリアが暗黒へと変化し、彼女の掌に集中していく。
 放たれたのは、闇の奔流だった。エーカを呑み込まんと迫る黒き波動に、理力の壁を作り上げる。
 しかし、ローザリアの闇は理力と衝突することなく、突如輝いた雷光に飲み込まれて霧散した。
 呆気に取られて自身の両手を見つめる敵を見据えたまま、稲妻を放ったフォルクは淡々と、語り掛けるように言った。
「世界を斬ると言うが――お前の世界は、既に壊れているだろう」
 それは、ローザリアに向けての言葉ではなかった。気づいた彼女は、探す。フォルクの言葉が向いている少女を。
「本当に断つべきものは自分自身の中に在る。それでも……」
 跳躍する、赤い刃。壁を蹴った勢いを刺突に変えて迫るカミーリャに、ローザリアが「なめるなッ!」と叫んだ。
 絶叫が衝突し、赤と黒の閃光が迸る。ペースを乱された吸血鬼の白い頬に、一筋の汗が伝う。
「君が吸血鬼を斬るというのなら、力を貸そう。カミーリャ」
 玉座の間を乱反射する電流が、漆黒の翼を穿つ。目の前の剣に集中していたローザリアが、目を見開いた。
 浮力を失い落下する中、カミーリャが剣を上段に振り上げる。赤い刃から、憎悪と狂気の劫火が噴き上がる。
「斬る。斬るッ! お前を、私がぁぁぁぁッ!!」
「人間風情が調子に乗るなッ!!」
 叩きつけられた炎の刃を闇の拳で受け止めて、ローザリアとカミーリャが床に激突する。城が揺れるほどの威力を以て衝突した二人はしかし、すぐに立ち上がった。
 間合いを離したローザリアが、両手を広げる。部屋に存在するあらゆる調度品が浮かび上がり、その構成を変じていく。
「闇よ……! 一切物を喰らい尽くして、私の力になりなさい!」
 暗黒の魔力により、吸血鬼の少女を取り囲む様々な無機物が、闇へと変換されていく。それらはローザリアの得物となり、また力そのものとなる。
 はずだった。
「……なぜ」
 苛立たし気な声だった。彼女は不快気な顔で、その牙を剥き出しにしている。
 闇へと変換されていた調度品が、消失していた。否、消えたのではない。それらはすべて、不可視の力――理力となっていたのだ。
「手の内が読めれば、対策くらいするわよ」
 鼻で笑って、エーカは変換したフォースオーラを身に纏い、念動力で自分を持ち上げ、ソファにでも腰かけるように足を組んだ。
「で? お友達に出来る物が少ない状態なのに、あなたはよそ見をする余裕があるわけ?」
「くッ……!」
 歯噛みしながらも、ローザリアはエーカから視線を外した。そうせざるを得ない距離に、もうカミーリャがいたのだ。
 烈火を纏う剣術は、そのリーチをも伸ばす。徐々に押されつつある状況に、吸血鬼少女はなんとか優位を取り戻そうと、強引にカミーリャの肩を掴み取んだ。
「その血をよこせッ!!」
「あぁぁぁぁッ!!」
 取っ組み合う少女二人の絵面は、どこか肉食獣同士の戦いじみていた。
 悪魔的な腕力で抑えつけられた狂気のオブリビオンが、その血を吸われんとした、その時。
「上天に在りし幽世の門。秘めたる力を雷と成せ」
 荒ぶる閃光が、術者の意のままに走り抜け、ローザリアの背中を打った。空気が弾けるような凄まじい音とともに、吸血鬼少女が転倒する。
 雷撃を放ったフォルクは、呻きながらも立ち上がってカミーリャと距離を取る敵に、静かに輝く紫の眼光を向ける。
「ずいぶんと余裕がなくなったものだな、ローザリア」
「……ふん。油断したことは認めるわ。でもね、あなたたちでは、私を倒すことはできない。人間は所詮、吸血鬼の嗜好品に過ぎないのよ」
「俺たちをどう見下そうが勝手だが、今は自分の最期を想像してみる事をお薦めする。……最も、己が快楽しか求めない輩には、無理な相談だろうが」
 上に向けた右掌に、電流が纏わりつく。その輝きを挑発と受け取ったのか、吸血鬼の少女が唇を苛立ちに支配された笑みに釣り上げた。
「ふ、ふふ……いいわ。そこまで望むのなら――」
 再び出現した巨大な闇の翼を、羽ばたかせた。衝撃波を伴う高速で、飛翔する。
「お前を、殺す!」
「ダメよ」
 まるで超重量に押しつぶされたように、ローザリアの体は床へと叩きつけられた。闇の翼がもがき、掻き消える。
 エーカの念動力だ。無機物を変換したすさまじいフォースオーラの量が加わって、吸血鬼を抑えつけることに成功した。
 そこに、フォルクの掌が向く。放たれた雷撃が、理力を魔力で相殺したローザリアへと、激突する。
 感電は一瞬、吸血鬼の魔力が闇と化して噴き上がり、体内に侵入した電流を排除する。
「よくもこの私を、コケにしてくれたわね……猟兵!!」
 激昂する敵が、エーカとフォルクを睨みつける。しかし、彼らの視線はローザリアを見ていなかった。視線は、その背後に向けられていた。
 振り返った刹那、黒に近い赤が散った。それは、ローザリアの、血だった。
「お前を斬る――吸血鬼ッ!!」
「あぐっ……!!」
 斬られたローザリアは、顔に斜めに走った傷を抑えて、吸血鬼の血を滴らせるカミーリャの剣を見た。
 瞬間、敵の魔力が、爆風となって吹き荒れた。吹き飛ばされるカミーリャ。エーカとフォルクはそれぞれにオーラの防御で闇の魔力を防いだ。
「虫けら風情が――この私に何をしたッ!!」
「愚問ね。私たちは、あなたを殺しに来たの。その程度の傷で、大の悪魔がピーピー喚くんじゃないわよ」
「ローザリア、君はいい加減気づくべきだったんだ。追い詰められているのは、君だったのだと。それももう、遅いが」
 二人の魔術師の、冷たい断言と鋭い視線を受けて、吸血鬼の少女が牙を剥く。
「人間……猟兵……ッ!!」
 傷から滴る黒い血が、その顔をより凄惨なものにしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
※ボロボロ
事情を幾らか知った以上敢えてカミーリャ様と呼称しますが、防御を考えない戦いぶり…
領主に城下の地獄への報いどころか血肉を与えかねません

義護剣の●破魔の力で牽制し●怪力での●盾受けで彼女の隙を●かばうことを重視し戦闘
センサーでの●情報収集で二人の挙動を●見切り同士討ち回避

…先の戦闘中に亡霊の浄化を妨害した
ということは格納銃器も認識した可能性が高い…ならば

義護剣を囮に本命と見せかけ全格納銃器を発砲
射線を躱し攻撃する敵に再使用は考えず●ハッキングし●目潰し出来る程出力●限界突破した●だまし討ちスライディングUCで迎撃

哀れな魂と違い、貴女はこの剣を振るうに値しません
既製品の刃に焼かれて頂きます


セルマ・エンフィールド
どうやら、カミーリャさんとは因縁のある方がいる様子。
ならば彼女の狂気を紐解くのは任せて……私はこちらに集中させてもらいましょうか。

引き続きカミーリャさんや他の猟兵の援護射撃を。フィンブルヴェトの氷の弾丸で吸血鬼を狙います。
闇の魔力、血の魔力、影の魔力……先ほどカミーリャさん相手に使ったようなものでしょうか。
凝固した闇がこちらに放たれたらフィンブルヴェトで『武器受け』、血は『クイックドロウ』したデリンジャーによる氷の弾丸で凍てつかせ、影はどこから来るか分かりませんし『第六感』を頼りに回避を。

氷の弾丸による『属性攻撃』で隙が出来たら【絶対零度の射手】を。魔力を防御に使おうとこじ開け、撃ち抜きます。



「ちぃぃぃッ!」
 猟兵に翻弄される苛立ちを声にしながら、ローザリアが弾丸を闇の拳で打ち払う。瞬間、銃弾が氷の礫となって弾け、彼女の体に張り付いた。
 速度を奪うかに見えた氷は、闇の魔力に打ち消されてしまう。狂えるオブリビオンと激しく打ち合う吸血鬼を見て、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は慣れた手つきでマスケットに次弾を込めた。
「やはり、簡単には止められませんか」
 少女の外見をしているとはいえ、ローザリアは強大な吸血鬼だ。そう簡単に、足を止めてくれる相手ではない。
 カミーリャの猛攻を受けているために、敵は空中に飛び上がることが出来ないようだった。それだけでも、僥倖と言うべきか。
 仲間の中に、彼女との因縁が深い者がいる。であるならば、カミーリャの狂気を紐解くのは、その猟兵に任せればいい。
 今はただ、忌まわしき吸血鬼を討つ。無言で構えたフィンブルヴェトから、氷の弾丸が放たれる。
「しつこいッ!」
 発砲音に反応したローザリアが、凝縮された闇の波動を放った。マスケットの銃身を盾に、受け止める。
 悍ましい力が眼前を駆け抜け辟易したが、敵の目がこちらに向いたのは好都合だった。カミーリャの狂気に満ちた斬撃が、吸血鬼の背を襲う。
「調子に乗るな、狂人がッ!」
 振り返って闇の壁を作り、剣を止める。押し切ろうと力む少女剣士が、ローザリアのしなやかな足に蹴り飛ばされた。
 己の白い腕を掻き毟り、飛び散った血に魔力を込めて結晶化、カミーリャへと血の魔法が放たれる。
 しかし、果てしなく黒に近い赤の結晶は、巨大な盾に防がれて散った。二人のオブリビオンの間に割って入ったトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、ほとんど反射的に背後を振り返る。
「ご無事ですか、カミーリャ様」
「殺す……斬る! 吸血鬼も、私が斬るんだッ!!」
 トリテレイアの脇を駆け抜けて、カミーリャが無謀にも正面からローザリアに斬りかかる。
「考えなしに、汚らわしい獣が!」
 吸血鬼の血が結晶となり、血の弾幕が形成される。それらに飛び込もうものなら、さしものカミーリャもボロ布のように切り裂かれてしまう。
 即座に反転、スラスターを噴かしてカミーリャの前を走り、血の結晶を全て受け止める。大盾に固い音が響き、徐々に凹みが破損へと繋がっていく。
 発砲音。氷の弾丸がローザリアの足元に突き刺さり、その冷気に、敵がセルマを睨みつける。
「鬱陶しいのよ、お前はッ!」
 悍ましい魔力を纏う血液が、セルマに向けて放たれた。
 即座に判断、フィンブルヴェトを手放して、スカートの中からデリンジャー銃を二丁引き抜き、それらを全て氷弾で撃ち抜いて凍てつかせ、地面に落とす。
 容易いと感じる。意識がトリテレイアとカミーリャにも向いているせいで、敵の魔法は精度が落ちているのだ。
「このまま押し切りたいところですね」
 人数が圧倒的に多い以上、手数で攻めることはできるはずだ。それはトリテレイアも考えていたが、義護剣に宿る破魔の力で牽制し、カミーリャに合わせて戦いながらも、彼は慎重になっていた。
 城下町での戦闘で、仲間が行なった亡霊の情かを、ローザリアは妨害してみせた。恐らくは、ずっと戦いを見ていたのだろう。
 手の内を知られているということだ。格納機銃による奇襲は意味が薄いかもしれない。
「……」
 カミーリャへと振るわれる闇の力や血の魔法を、トリテレイアは徹底して防いでいた。盾はもう限界に来ているが、右手に握る破魔の剣を振るうことはなかった。
 それに気づいたローザリアが、狂気の剣と拳で打ち合いながら、蔑むような笑みを浮かべた。
「騎士の身なりをしているくせに、ずいぶんと逃げ腰ね。その剣は飾りなのかしら?」
「飾りでないからこそ、使わないのです」
 返答を鼻で笑い飛ばして、吸血鬼が後方に跳躍した。両手に溜めた漆黒の魔力を、床に手を突き足元へと流し込む。
 セルマとトリテレイアの前に、ローザリアの体を模した影が浮かび上がり、両手の爪を以て二人に斬りかかってきた。
「分身の類ですか」
「なんであれ、撃つのみです」
 互いに言って、セルマは再びフィンブルヴェトを、トリテレイアは腕部格納機銃を構え、飛び掛かる影を打ち砕いていく。
 影の魔物は貧弱だったが、それでも無視は出来ない。二人が対応に追われている間に、カミーリャはやはり躊躇いなくローザリアに剣を向けていた。
「お前を、私は、お前を!」
「……あなたの憎悪、興味があるわ。ふふ、もう少し遊んでいたら、聞き出せるかしら」
 猟兵の目が外れたことで、吸血鬼は余裕を取り戻し始めていた。やはり、カミーリャ一人では勝ち目が薄い。
 影の爪を勘で避け、セルマは揺らめくローザリアの影の頭を撃ち抜いた。暗黒が霧散する中で、トリテレイアへと向き直る。
「いけますか?」
「無論ですとも」
 最後の影を機銃で霧散させ、トリテレイアは頷いた。作戦について話すこともなく、行動を開始する。
 カミーリャとローザリアが激しく斬り結ぶ中に、トリテレイアがスラスターで突っ込んでいく。
 愛銃に氷の力を流し込み、セルマはユーベルコードを発動した。フィンブルヴェトの銃身が青く輝き、バレルに氷弾が自動生成されていく。
「撃ち抜きます」
 何度もトリガーを引き、強化された氷の銃弾が連続して射出される。耳を劈く発砲音の連鎖に、ローザリアが闇の盾を形成した。
 敵は、右手の闇でカミーリャの炎を纏う剣を、左手でセルマの氷を防ぐ形となった。力が分散したことで薄くなった暗黒の盾が、徐々に押し込まれる。
「こんな……こんなこと……!」
 歯噛みしながら踏ん張るローザリアは、正面を見て絶句した。大盾を一旦放棄したトリテレイアが、全身の格納機銃を展開して、迫ってきていた。
 舌打ちをしながら闇の壁を解除し、吸血鬼少女は後退した。セルマの氷とカミーリャの炎が衝突し、共に消える。
 なおも敵へと突進し、トリテレイアはカミーリャが射線から外れたと見るや、全身の機銃に火を入れた。
 フルバースト。ありったけの弾丸がぶっ放され、凄まじい火線がローザリアを襲う。セルマの氷弾までもが飛び交い、敵は回避を余儀なくされた。
「く……屈辱だわ……! あり得ない……!」
 高貴なる吸血鬼たる己が、人間如きの攻撃を避けることしかできないなど。許せるはずがなかった。
 激昂したローザリアは、超高速のフットワークで弾丸の嵐を回避し、血の弾幕と闇の壁で相殺しながら、狙いをセルマに切り替えた。
「まずはお前よ、氷の使い手!」
 床を踏み砕いて勢いをつけ、吸血鬼が銀色の軌跡となってセルマに迫る。しかし彼女は、フィンブルヴェトを構えたまま、動かない。
 異常な金属音がしたのは、その刹那。高速移動の最中でローザリアが見たものは、巨大な鋼鉄騎士が、自分を超える速度で移動する姿だった。
 弾丸を撃ち尽くしたトリテレイアは、自身のブレインをハッキングしスラスターの出力をリミッター解除、急激な加速をしたのだ。
 内部パーツ破損のエラーが視界に映るが、無視。セルマの前に躍り出たトリテレイアの足元から、目を開けていられないほどの閃光が迸る。
 目を光に焼かれて、ローザリアがたじろぐ。トリテレイアは出力の一切を右の足部隠蔽収納式大出力擬似フォースセイバーへと集中させながら、断言した。
「哀れな魂と違い、貴女は【ブリッジェシー】を振るうに値しません」
「なに……!? なんですって!?」
「貴女に、我が友の刃はもったいないと、そう言ったのです。既製品の刃に焼かれて頂きます」
 敵の声は、待たなかった。右脚部の爪先から発生した大出力の超高温白色エネルギーブレードが、足が自壊することも構わず振り上げられる。
 もしも彼女が光を見慣れていたのなら、あるいは躱されていたのかもしれない。しかし、ローザリアは不運なことに、吸血鬼だった。
 支える足が蒸発してバランスを崩す中、トリテレイアは敵の悲鳴を聞いた。セルマもまた、噴き上がる黒い鮮血を見上げた。
 ローザリアの血は結晶化することなく、床に落ちて絨毯に染み込まれていく。エネルギーブレードの斬り上げにより胸を縦に斬られた吸血鬼が、もんどりうって倒れる。
 片足となったトリテレイアを庇うように立ち、セルマは銃を構える。纏う衣服をも焼き斬られ、白い胸元に大きな傷を負ったローザリアは、回復のために傷口から闇の魔力を噴き上がらせていた。
「どうして……? どうして私が、こんな……」
 想定外の事態に、彼女は今にも泣き出しそうだった。しかし、セルマとトリテレイアは、到底同情する気にはなれなかった。
 カミーリャの中に燃え滾る狂気が目を付けたのも、猟兵たちの討つべき対象となったことも、なにもかも――。
 世界の敵たらんとしたローザリアが、自分で招いた結果なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソニア・アイウォーカー
これが、ダークセイヴァーの支配者、ヴァンパイアですか!
一度は滅ぼされていながら出て来るのは往生際が悪いと言うものですが、
データ収集の機会が出来た事には感謝を!

カミーリャさんの行動は注視しておきます。
なるべく彼女の隙を減らすように、ローザリアの攻撃意図を挫くようなタイミングで射撃を入れていきましょう!

全武装準備、トリガー同期、フルバースト・マキシマム。
ローザリアの反応についても可能な限り記録し、その後の射撃に反映させていきます!

彼女の嗜好については理解が出来ませんが、だからこそ良い。
破綻。非効率。遊び――そのものが有機体の放つ魅力ですから!

さて……貴女のデータは収集を終えました。ご退場下さいね。


フランチェスカ・ヴァレンタイン
連携は… こちらで合わせるしかありませんねー

吶喊していくカミーリャに合わせて属性攻撃で神聖属性やら太陽属性を乗せた援護砲撃を雨霰と
アクロバティックな空中戦機動から同属性に染めた斧槍を振り下ろし、死角を突いて砲撃と強襲を浴びせていきましょう
懐かしの太陽のお味はいかが? 世界を闇に覆って避けるぐらいですもの、吸血鬼にはよく効きますでしょう?

カミーリャが弾き飛ばされるなどで巻き込まれないタイミングを見計らい、UCで戦場に水晶群を生み出し、それらに向けて属性砲撃の乱れ撃ちを
水晶間で不規則な乱反射を繰り返し、極限まで増幅されて全方位から一点へと集束する太陽光の灼熱砲撃をどうぞ、存分に召し上がれ――!



「おおお、これがダークセイヴァーの支配者、ヴァンパイアですか!」
 些か興奮したようすで、ソニア・アイウォーカー(S0-N-1A・f25113)はローザリアを見ながら両手を握りしめた。
「一度は滅ぼされていながら出て来るのは往生際が悪いと言うものですが、データ収集の機会が出来た事には感謝を!」
 ウォーマシンにもいろいろあることは知っていたが、彼女はその中でも人間臭い部類だろう。子供のようにはしゃぐソニアに、フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は思わずため息をついた。
「暢気ですねぇ」
「勉強熱心なだけです! 彼女の嗜好については理解が出来ませんが、だからこそ良い」
 本気で思っているらしいソニアは、自分より遥かに小さな、しかし経験豊富な女性であるフランチェスカに詰め寄った。
「破綻。非効率。遊び――そのものが有機体の放つ魅力ですから!」
「そうですか。まぁそれは、仕事の中で楽しんでいただくとして」
 フランチェスカが半眼で応えてから、二人はカミーリャとローザリアの戦いに目を向ける。
 猟兵たちによって追い詰められつつある吸血鬼少女は、その衣服も破り取られ、顔や胸元につけられた傷からは、黒い血を流している。回復に力を回す余裕は、もうなくなってきているようだ。
 カミーリャもまた、何度も闇の魔術と血の魔術に晒されているせいで、負傷が目立つ。もっとも、勢いそのものはまるで衰えていないが。
 それでも、二人の戦いはローザリアに分があった。実力の差が徐々に現れ、カミーリャが押されていく。
「助けに入りましょうか。連携は……こちらで合わせるしかありませんねー」
「了解です! カミーリャさんの行動は注視しておきます!」
 口々に言って、フランチェスカは空中へ、ソニアは地上から、それぞれ援護を開始した。
 カミーリャの紅く燃える刃を闇の結晶で受け止め、ローザリアが上を見上げる。純白の翼を広げた天使の如き淑女が、光り輝く斧槍を振り上げている。。
「なっ――」
 驚愕する敵に向かって、フランチェスカは容赦なく光焔の槍を叩きつけた。バク転で回避、闇を翼にして飛び上がる吸血鬼へと、追撃する。
 横に振るった斧槍を受け止めたローザリアが、刃から迸る光に激しい嫌悪感を滲ませる。
「これは……!?」
「懐かしの太陽のお味は、いかが?」
「汚らわしい光を、私に近づけるなッ!」
 斧槍の柄を蹴り上げられて、フランチェスカはバランスを崩した。そのまま空中で回転、間合いを離していく敵に向かって砲撃を行なう。
 真正面から放たれた太陽光の灼熱砲撃を血の魔術で相殺し、それでも届く光に苛立っていたローザリアは、直後、背に凄まじい衝撃を受けて悲鳴を上げた。
「あああっ!?」
「やったー! 解析完了ですっ!」
 ソニアだ。カミーリャとフランチェスカの交戦データから敵の“パターン”を把握し、相殺行動を取った瞬間を狙い、ビームキャノンをぶっ放していた。
 光線をもろに受けたローザリアの背から、黒い煙が立ち上る。それは彼女の肉を焼いたものではなく、吸血鬼が持つ闇の魔力だった。
 敵はカミーリャにも似た憎悪の感情を剥き出し、ソニアへと振り返った。噴き出す闇を推進力に変えて、急降下する。
「お前かぁぁっ!」
「おおっと、新パターン!」
 後退しつつ牽制射撃を行って、間合いを離す。そこに飛び込む、カミーリャ。深紅の剣と闇の力が、衝突する。
 怒りに任せた吸血鬼の突進は、尋常ならざる威力を持っていた。狂気のオブリビオンが、一気に押し込まれる。それでも彼女は、死に物狂いで叫んでいた。
「狂いを絶つ……! 私が! 私の剣でッ!!」
「お前はさっきから、そればっかり!」
「吸血鬼!! お前も、世界の狂いだッ!!」
「言ったわねッ!!」
 吸血鬼と同族殺しの会話が成り立っているように見え、ソニアは興味津々に二人の剣戟へと見入っていた。実に、実に興味深い。
 しかし、それは彼女の興味である。フランチェスカからすれば、聞くに値しない言葉の羅列だった。
 なので、容赦なく斬り込む。暗黒の世界にありながら陽光を纏う斧槍を、ローザリアの頭上から背に向けて振るった。
「世界を闇に覆って避けるぐらいですもの、この光、吸血鬼にはよく効きますでしょう?」
「ぐぅっ……汚らわしいッ!」
 接近する忌々しい光の気配に、吸血鬼が闇を纏った右手を向ける。受け止めようとしたのだろうが、万物を照らし出す天日の煌めきは、邪悪なる闇の波動をも消し飛ばした。
「ちっ……!」
 思わず手を引っ込める。輝く槍の穂先が手の甲に触れるだけで、ゾッとするような痛みが全身を駆け巡った。
 これが、全ての吸血鬼が恐れるという太陽か。言い知れぬ感情――それは恐怖というが、彼女は知らなかった――が、心を過ぎる。
 着地と同時に、フランチェスカはカミーリャと並んで、怒涛の連撃を展開した。劫火と陽光に迫られて、ローザリアが防御も出来ずに後退していく。
「こんな……私が、こんな……!」
「今がチャンスですね! 全武装準備、トリガー同期、フルバースト・マキシマム!」
 妙に明るい声音と共に、ソニアが搭載する全ての武装が展開、積まれている全弾薬が一斉にぶっ放された。
 飛来する弾丸やレーザー、ミサイル群に、ついに敵が逃げの一手を取った。飛び上がり、闇の翼を広げて空中へ。
 しかし、レーザーとミサイルは、執拗にローザリアを追跡し、ガトリング砲塔もまた、その進行方向を遮るように弾丸をぶっ放した。
「あなたの反応について、可能な限り記録させてもらいました。射撃に反映済みですよー!」
「わけのわからないことを!」
 抱きしめるようにして両腕を引っ掻いたローザリアが、血の飛沫を撒き散らす。飛び散った血液が凝固して弾幕となり、ミサイルを迎撃した。大爆発が発生し、城の壁に大穴が開き、その天井までもが崩れ始める。
「やりますね! ではわたくしも、全力全開でいきますよ!」
 ソニアが大出力のビームキャノンを、フルチャージでぶっ放す。何とか闇の盾により防ぐが、ローザリアはその一撃で魔力の大半を消耗したことを感じた。
 天井が瓦礫と化して崩れ落ちる中、乾燥しきった唇を舐めた。魔力と血が枯渇してきている。吸血しなければならない。
「血が……血が足りないわ」
 発作的に呟いて、見渡す。目に入ったのは、落下してくる瓦礫の中でも優雅に飛ぶ、フランチェスカだった。
 肉付きのいい女だ。その上、気に食わない態度をしている。痛めつけて血を啜るには、ちょうどいい。両手に闇の力を凝縮させて、ローザリアは鋭い牙に涎を滴らせながら、白翼の女へと飛び掛かった。
「血を寄こしなさいッ!!」
 もはや、彼女にはフランチェスカしか見えていなかった。落下する瓦礫も、目に入らない。
 だから気づかなかった。その瓦礫に紛れるように浮かぶ、いくつもの水晶群にも。
「お行儀の悪い子にはこちらを。存分に召し上がれ――!」
 妖艶に微笑んだフランチェスカが、砲塔から灼熱の太陽光をぶっ放した。ローザリアに向けられたかに思えたそれは、しかしあさっての方向を飛んでいく。
 外した。致命的な失敗を侵した。そう判断した吸血鬼の少女は、欲望のままに頬を歪ませ、牙を剥く。
 だが、ふと気づく。過ぎ去ったはずの陽光が、なぜか視界から消えていない。そして何より、フランチェスカが、変わらない余裕の笑みを浮かべている。
 周囲を見渡し、吸血鬼はまるでか弱い少女のような悲鳴を上げた。空中に設置された水晶群に、放たれた太陽光が乱反射し、光の檻めいてローザリアを取り囲んでいる。
 それらの行く末は、想像に難くない。ローザリアが全身から闇の霧を発生させてバリアにしたのは、もはや生存本能にも近い行動だった。
 暗黒の障壁が光を防いだのは一瞬、闇はもろくも打ち砕かれた、全身を天日の灼熱に晒された吸血鬼が、耳を覆いたくなるような絶叫を上げた。
 力なく床に落ちた敵は、肩で息をしながらゆっくりと立ち上がった。そこに、カミーリャが斬りかかる。
「消えてしまえぇぇぇッ!!」
 振るわれた刃が、ローザリアの肩口に食い込む。ソニアは不思議に思った。これまでの彼女の“パターン”ならば、回避行動を取っていたはずだ。
 そして、気づき、叫んだ。
「カミーリャさん、いけません!」
「もう遅いわ」
 にぃと笑った吸血鬼が、斬られることも厭わず、その牙を狂気のオブリビオンに突き立てる。
 フランチェスカが舌打ちをして斧槍を振り上げ急降下するのも、ソニアが残りエネルギーを回したレーザーを放つのも、間に合わない。
 血を啜られて、カミーリャが目を見開いた。声にならない声を発して、痙攣する。
「あ――あぁ――っ」
 レーザーが床に着弾し、光を纏う斧槍が振るわれた時には、もうローザリアは彼女を解放していた。突き飛ばして転がし、自身は闇の翼を展開して、空中へ。
 口元の血を手で拭い、吸血鬼はその目を赤に輝かせていた。目に見えて、回復している。
「狂っているとはいえ、迂闊が過ぎますね……!」
 震えながらも立ち上がるカミーリャに、フランチェスカは思わず呟いた。
 これ以上の回復は、許すわけにはいかない。エネルギー残量を確認しながら、ソニアもまた、彼女にしては厳しい声音で言った。
「……貴女のデータは、収集を終えました。そろそろ、ご退場下さいね」
 二人の猟兵に睨まれてなお、飢えを潤した吸血鬼の笑みは、強者の凄みを取り戻していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

唐草・魅華音
お姉ちゃんが世界を恨んだままなのは嫌だ。きちんとお姉ちゃんと話がしたい。けれど呼びかけるだけじゃきっと足りない。
ー機略縦横の流法。型は違えど、お姉ちゃんと一緒に身につけたこの技で。「お姉ちゃんのへたくそー!ただ突っ込むだけじゃ師匠に見切られるじゃん!」
「魅華音こそ!ちょろちょろしてるだけじゃ師匠無視しちゃってるじゃないの!」
ーあの日の想い出の、再現を。

ローザリア対策
【ダッシュ】【ジャンプ】マメットでの【ロープワーク】で動き回りながら敵行動パターンを【情報収集】、【戦闘知識】で分析し、【呪殺弾】を交えた【制圧射撃】【誘導弾】で隙を作るように誘導、カミーリャとの連携で追い詰める。


アドリブ・共闘OK



 吸血され、力と生命力を奪われたカミーリャは、足取りが覚束ない様子だった。
 ローザリアにとってみれば、格好の的だ。闇の翼を羽ばたかせ、血の結晶を槍にして、急降下からの刺突を見舞う。
「死ね! 狂人ッ!!」
 殺気に満ちた赤黒い穂先は、狂乱のオブリビオンの体躯を穿つかに見えた。しかし、次の瞬間。
 甲高い金属音と共に、血の槍が砕け散る。必死の形相で飛び込んだ桃色の髪の少女が、刀を振り抜いていた。
 落ちた槍が血溜まりと化し、それを踏みつけながら、唐草・魅華音(戦場の咲き響く華・f03360)はカミーリャを振り返り、叫んだ。
「お姉ちゃん、立って!」
 よろめく剣士少女を庇うように立ち、カスタマイズされた愛用銃【MIKANE】を、ローザリアへとフルオートで連射する。
 カミーリャの血を吸い力を取り戻した吸血鬼は、銃弾を闇の壁で難なく防ぎ、哄笑した。
「あなた、その狂った女の妹? なんなのよ、その女は」
「……お姉ちゃんも、世界を守る、猟兵よ」
 はっきりと断言する。今でこそオブリビオンと化してしまったが、かつてはカミーリャもまた、そうあろうとしたのだから。
 しかし、姉のためにと代弁する魅華音の言葉に、着地したローザリアはやはり、二人の少女剣士を見て見下すように目を細めた。
「ふふ。時々いるのよね、『世界を守る』だなどとのたまう馬鹿な人間が。最近じゃ、『ダークセイヴァー』とか呼ばれているんだっけ? あなた達もそうなんでしょう?」
 問われた魅華音は、答えない。ただ黙して、得物を構えた。
 ヴァンパイアの少女が、愉快げに笑う。
「でもね。人間は弱いのよ。少しでも不利になれば、簡単に屈服するもの。『抵抗する者を差し出せば命は助ける』なんてベタな一言で、いかに頼れる相手でも、どんな親しい者でも、躊躇なく贄にするのよ。あぁ本当に、下劣で残酷な生き物だこと」
「そんなこと……!」
「あら。あなたのお姉さんは、同意してくれるらしいけど?」
 言われて振り返り、魅華音は「お姉ちゃん!」と叫んだ。
 カミーリャが、膝をついていた。剣を取り落とし、両手で身体を抱くようにしている。狂気の威勢はなく、歯を鳴らして怯えている。咄嗟に抱きしめると、その尋常ではない震えが伝わってきた。
「お姉ちゃん……?」
「にん……げん……。人間……! 私は、みんなを……よくも……私を……ッ!!」
 魅華音の腕の中で蹲り、苦し気に呻くカミーリャ。その二人を見たローザリアが、愉悦に顔を歪ませた。
「やっぱり! あなたもそのクチなのね! 弱いがために、惨めに裏切り合う姿……。いいわ、これだから人間で遊ぶのは止められないのよ!」
 嘲る吸血鬼を睨みつけながらも、魅華音は言い返すことができなかった。
 運命の歯車は、どこで狂ってしまったのだろう。なぜ、なぜ。自問しては、あの日のことを思い出す。
 一秒たりとも忘れたことのない日々。型は違えど、共に学び競い合った、魅華音を支え続けてくれた想い出。
『お姉ちゃんのへたくそー! ただ突っ込むだけじゃ師匠に見切られるじゃん!』
『んなっ! 魅華音こそ! ちょろちょろしてるだけじゃ師匠無視しちゃってるじゃないの』
 他愛もない日々だったかもしれない。でも、楽しかった。幸せだった。二人はいつも、笑っていた。
 しかし、修行を終えてそれぞれの旅立ちを迎えてから、魅華音はカミーリャのその後を、知らない。
 真面目で一生懸命だった姉は、きっと力の限り、吸血鬼から人々を守ろうとしただろう。
 その人たちからどれほどの裏切りを受けたのだろうか。一体、何をされたのだろう。
 どうしてこんなことになるのだ。カミーリャが、何をしたというのか。
 もしも、一緒に旅をしていたら、こんなことにはならなかったのだろうか。
「お姉ちゃん――」
 このままでは、カミーリャは世界を恨み続けてしまう。そんなのは嫌だった。
 話がしたい。だが、言葉は届かない。呼びかけるだけでは、きっと、足りない。
「……」
 魅華音は立ち上がった。決意を込めて、右手に【野戦刀・唐獅子牡丹】を、左手にカスタマイズしたライフルを握る。そして、叫んだ。
「お姉ちゃん。カミーリャお姉ちゃん! 吸血鬼を、斬ろうっ!」
「……斬る」
「そう! こいつを、世界を狂わせるローザリアを、わたしたちで、斬るの!」
「……斬るッ!! 私が、私がぁぁぁぁッ!!」
「はぁぁぁぁッ!」
 魅華音とカミーリャが、同時にローザリアへと仕掛けた。ばら撒かれるライフル弾を牽制に、同じ速度で踏み込む。
 銃を手放し、引き抜いたヘアピンをナイフに変化させ二刀流となった魅華音は、カミーリャのがむしゃらな剣に合わせるように刃を振るう。
 まるで意思の疎通が取れているかのような連携に、ローザリアが闇の魔力を凝固させて受け止め、受け流す。余裕の表情は、すぐに消えた。
 カミーリャの剣術が変化したのだ。これまではただ刃を振るうだけだった戦法に、蹴りや肘、拳といった体術が加わる。これこそが、彼女が極めた剣だった。
 機略縦横の流法。己が得物を全て用いて、あらゆる戦場に適応する武。魅華音はあらゆる武具を、カミーリャは己の肉体を、それぞれ剣に組み込んでいる。
 何度も手合わせし、何度も意見を求めあった。二人はお互いの戦い方を、自分のもののように熟知しているのだ。
 魅華音は喜びを感じていた。再び分かり合えた気がした。
 カミーリャは今も「斬る、斬る」と叫ぶばかりだし、独りよがりかもしれない。だが、それでもいいとさえ思えた。
 ――あの日の想い出を、再現できたのだから。
「くぅ……ッ! 人間の分際で!」
 圧倒的な手数の攻撃に、ローザリアが思わず叫ぶ。しかし同門の剣士たちは、さらにその速度を上げていく。
 投擲した【ヘアピンナイフ】が、闇を纏った敵の右腕に弾かれる。
 その腕を、カミーリャが掴んだ。オブリビオンと化したことで強化された腕力で、引き寄せる。
 抵抗するローザリアの身体に、突如伸びた蔓が巻き付く。魅華音の愉快な仲間、豆の木【マメット】が、さらに敵を引っ張った。
 バランスを崩した吸血鬼の顔面に、魅華音とカミーリャは同時に拳を叩きこむ。既に他の猟兵によって斬られた顔の傷から、再び赤黒い血が噴き出した。
「うあぁぁっ!」
 まさかの力技にのけ反る敵に向けて、魅華音が袖に仕込んだデリンジャー銃【ヱリスの貴族の嗜み】を放つ。ゼロ距離で撃たれた呪殺弾が、ローザリアの右胸に食い込んだ。
 広がる呪力は、即座に吸血鬼の魔力で相殺された。しかし、強力な呪詛だ。打ち消すのに使った魔力も甚大だった。
 カミーリャの血を吸うことで得た力を、敵はほとんど消耗した。再び吸血衝動にかられたローザリアが、目を真紅に輝かせて、突然魅華音へと掴みかかる。
「あっ!?」
 一瞬の出来事だった。肩口に、牙が突き立つ。血が啜られ、足から力が抜ける。右手から、刀が落ちかける。
 やられた。後悔しても、間に合わない。視界が白く染まり、姉の姿が、見えなくなっていく。
 意識が薄れていく中で聞いたその声は、果たして、幻だろうか。

「魅華音っ!!」

 ローザリアから強引に引き剥がされた桃色髪の少女は、玉座の前まで投げ飛ばされた。
 急激に力を吸われて眩暈がするが、聞こえた名を呼ぶ声は、懐かしい感触として今も耳に残っている。見れば、カミーリャはすでにローザリアと戦っていた。
「助けて、くれたの?」
 ぼんやりと呟き、自ら発したその言葉が嘘のようで、でもそうとしか思えなくて、魅華音は視界が潤むのを、止められなかった。
 響いたのだ。届いたのだ。何かが、確かに。それだけで十分だった。
 目元を拭って、立ち上がる。刀を握りしめて、姉のもとへと、走り出す。
「お姉ちゃん! カミーリャお姉ちゃん!」
 呼ぶたびに不安だったその名前は、今や魅華音にとって、希望の言葉と変わっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。私は今、多くの人達の想いを背負って此処にいる。
覚悟しなさい吸血鬼。自身が為した事の報いを受ける時よ。

前章で使用した【断末魔の瞳】を維持して呪力を溜め、
同族殺しや敵の行動を過去の戦闘知識から予測して見切り、
壁や天井を怪力任せに蹴り、残像が生じる早業で空中戦を行い、
闇に紛れ速度を活かし大鎌をなぎ払う先制攻撃を行う

…捉えられると思うな。

第六感が好機を感じたら自身の生命力を吸収してUCを発動
呪詛を暴走させる魔法陣を突き抜け、
限界突破して存在感を増幅した黒炎鳥を突撃、
自爆して傷口を抉る闇属性の2回攻撃を放つ

…さぁ、復讐の刻は来た。
報復を望む魂達よ、この一撃を手向けとする。
眠りなさい、安らかに…。


雛菊・璃奈
この地に縛り付けられた霊達の為にも…貴女はここで倒す…!

【九尾化・天照】封印解放…!
敵の操る闇や闇と影の魔力を打ち払う様に【破魔】と【呪詛】の力を宿した光呪のレーザーを敵の周囲に集束させ、四方八方から照射…。
敵の攻撃は【見切り、第六感】で動きを読みつつ、光速を活かして敵に【カウンター】を仕掛ける等しつつ、レーザーで敵を貫いている間に光速で接近し、凶太刀と神太刀による光速剣の連撃を繰り出したり、バルムンクによる光速からの両断【力溜め、呪詛、衝撃波、鎧砕き、鎧無視、早業】による一撃で叩き斬ったりして光を剣に集束させた必殺の一撃で仕留めるよ…!

死んだ人達の魂さえ弄ぶ…貴女は絶対に許さない…!



 刃を向けられたローザリアは、崩れた屋根の瓦礫などを闇へと変換し、傷ついた体に取り込んだ。その場凌ぎの回復だが、紅い眼光に滾らせる殺意は凄まじい。
「はぁぁぁぁッ!!」
 剣術と体術を組み合わせて斬りかかるカミーリャを、力任せにぶん殴る。これまでに見せなかった野蛮な戦い方だが、吹っ飛んだ狂気のオブリビオンを見れば、その威力が危険なものであることが分かる。
 空中で放物線を描いたカミーリャは、黒衣の少女に受け止められた。
 その少女――リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、狂える剣士を床に寝かせた。死んではいないが、打ちどころが悪かったのだろう、気を失っている。
 起きる気配はない。どうやら、彼女は頼れないようだ。だがそれは、吸血鬼を恐れる理由になどならない。
 大鎌【グリムリーパー】を肩に担いで、リーヴァルディはローザリアを見据えた。
「……ん。私は今、多くの人達の想いを背負って此処にいる。私が彼らの復讐を請け負うわ」
「なに? 人々の想いですって? ……ふふ、面白い冗談ね。吸血鬼の私に、あなたの中に流れるものが分からないと思ったの? 汚らわしいハーフヴァンパイアが」
 揺さぶりをかけたつもりなのだろう。それだけ、余裕がないのだ。リーヴァルディは静かに首を横に振った。
「くだらない。……覚悟しなさい吸血鬼。自身が為した事の報いを受ける時よ」
「ほざくんじゃないわよ、下等生物どもがァァァッ!!」
 暗黒の魔力を爆発させたローザリアが、腕を掻き毟って血を散らせ、その全てを槍と化させて撃ち放った。
 しかし、砕け散る。突如飛来したレーザーが、赤黒い槍を相殺した。
 そして玉座を照らし出す、眩いばかりの輝き。――それは、天日の焔。金色の妖狐が、玉座の間に降り立つ。
 全身を黄金の光に包み込んだ雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、二振りの妖刀【神太刀】と【凶太刀】を手に、九尾の力を解放した。髪も九本の尾も、その全てが黄金に煌めく。
「この地に縛り付けられた霊達の為にも……貴女はここで倒す……!」
「よくも言うわ、女狐ェッ!」
 闇の球体と血の槍を召喚し、ローザリアはそれらを全て璃奈へと放った。動じず、二本の刀で、尽く切り払う。
 吸血鬼の魔法が飛来する中を、リーヴァルディが恐れること無く床を蹴り、残像が生じる速度で吶喊した。
 振るわれた大鎌が、敵の作り出す闇の盾を打ち砕く。舌打ちをして後退した吸血鬼が、漆黒の魔力を床に叩きつけた。
 闇の結界が広がり、同時に現れたいくつもの影が、璃奈とリーヴァルディを取り囲む。それらはすべてローザリアの形をしているが、黒く揺らめくばかりで、言葉も発さない。
 璃奈のレーザーが、影の魔物を片っ端から撃ち抜いていく。その隙に頭上の優位を取ろうと、ローザリアが闇の翼を広げて空へと飛び上がった。
 だが、そこはすでに、リーヴァルディの間合いだった。吸血鬼が展開した闇に紛れ、壁を蹴って跳躍し、大鎌を、振りかぶっている。
「……捉えられると思うな」
「くぁッ――!」
 結界を収束、闇を鎧のように纏った直後、ローザリアの体を大鎌が薙ぐ。斬り飛ばされた吸血鬼の少女は、きりもみしながら屋根の瓦礫へと突っ込んでいった。
 すぐに飛び出した敵は、息を切らしながら拳を握りしめ、瓦礫を殴りつける。
「馬鹿にして! 猟兵風情がッ!!」
「その猟兵に、あなたはこれから倒される……!」
 声は、真横からだった。見るより早く闇の盾を作り上げるも、あっけなく斬り裂かれる。璃奈だ。
 神域に達した光の剣技は、あらゆる闇を斬り伏せる。吸血鬼の暗黒であろうとも、例外ではない。
 神太刀と凶太刀、光速剣と化した二本の刃の連撃で、璃奈は腕に闇を纏ったローザリアと打ち合った。
 すぐに、黒に近い赤の血が噴き出した。命を削ってまで放たれる剣が、吸血鬼の体を袈裟斬りに斬り裂いたのだ。
「あああああッ! くぅ……!」
 血の弾幕を張って牽制し、ローザリアが天井に開いた穴から上空へと飛び出した。闇の魔力で傷口を強制的に塞ぎ、血を止める。
 逃げることは許されない。誇り高き吸血鬼が、人間に負けるなどあってはならない。だが、体力と魔力は取り戻したかった。
「血……血を飲まなきゃ……」
 肩で息をするローザリアは、見下ろす先のリーヴァルディと目が合った。紫の瞳が、輝いている。
 こちらを見ている。目を合わせたまま、銀髪の黒騎士は瞬き一つしない。視線は、一つではない。
 こちらを、見ている。たくさんの人間が、ローザリアを、じっと見ている。
 見られている――。
「……さぁ、復讐の刻は来た」
 リーヴァルディが呟いた。同時に、城の上空、ローザリアのほぼ足元に、巨大な血色の魔方陣が浮かび上がる。
 思わずさらに上へと退避してしまうほどに、魔方陣には夥しい量の呪詛が込められていた。空に描かれた幾何学的な文様の下で、リーヴァルディの瞳が、激しく発光する。
「報復を望む魂達よ、この一撃を手向けとする」
 魔方陣が盛り上がる。暴走した呪詛に術者が蓄えた死霊の怨念が宿り、吸血鬼をも恐れさせるほどの凶悪な呪いと化す。
 陣の中央から、燃え盛る漆黒の嘴が現れた。闇の盾を展開するローザリアが、「やめて」と叫ぶ。
 だが、止まるわけもない。彼らの怨嗟は、もう止められない。
「全ての怨念を晴らし、眠りなさい。安らかに……」
 血色の魔方陣が、爆ぜた。城下町で非業の死を遂げた人々の怨みが、悲しみが、悔恨が、怒りが、空を覆いつくすほどの黒炎鳥となってローザリアを襲う。
 闇の盾が一瞬でかき消え、黒炎鳥は吸血鬼を喰らった瞬間、漆黒の劫火となって爆散した。少女の絶叫が、城下町に響き渡る。
 黒い火の粉と散った怨念は、そのまま落ちてくることなく、空へと吸い込まれていった。
 力なく落下し、玉座の間に叩きつけられたローザリアは、衣服はほとんどが燃やし尽くされ、全身に呪詛の傷を負っていた。もはや生きる力もほとんど残されていないだろうに、それでも、立ち上がろうとしていた。
 惨めだった。同情すら覚える。だが、璃奈は右手に握った魔剣【バルムンク】にありったけの光を宿して、その切っ先を容赦なくローザリアへと向けた。
 吸血鬼を焼き尽くすであろう神聖なる太陽の光に、吸血鬼の少女が、か細い声を上げる。
「どうして……! どうして私が、こんな目に合わなきゃならないのよ!?」
「分からないの……? 本当に……?」
「分かるわけないでしょう! 私は吸血鬼、至高の存在なのよ。こんなこと、あっていいわけがない……!」
 瞬間、璃奈は一切の迷いを捨てた。もう、彼女と分かり合える可能性は、塵の欠片ほども残されていない。
 光り煌めく竜殺しの剣を、振り上げる。ローザリアが、呻くように呟く。
「どうして……?」
「死んだ人達の魂さえ弄ぶ……貴女は絶対に許せない……!」
 光の刃が、吸血鬼を斬り裂いた。確かな手応えがあり、璃奈は、これで終わったと思った。
 傷口から光を発し、致命的な激痛にのたうち回りながら、ローザリアが瓦礫に手を触れる。
「! させないッ!」
 駆け寄ったリーヴァルディが鎌を振るうより早く、天井の残骸が闇と化し、死にかけの少女に吸い込まれた。
 直後、ローザリアは黒い霧と化し、消えた。油断なく剣を構えながら、璃奈はリーヴァルディに尋ねる。
「終わったの……?」
「……いえ」
 違う。敵の気配は、まだこの玉座の間に残っている。二人がその集約点を探そうとしたその時、目覚めたカミーリャが吼えた。
「吸血鬼ぃぃぃぃぃッ!!」
 見れば、崩れた天井の陰から、残ったわずかな魔力を闇の翼にして逃げようとしているローザリアがいた。疾駆するカミーリャに、忌々し気な顔で闇の翼をマントに変形させ、裸体に纏う。
 劫火の剣と磨き上げられた体術に、吸血鬼の少女はなす術もなく、玉座の間へと追い立てられていく。振るう拳も、あまりにも弱々しい。
「お前だ! お前が、お前たちが! 世界を狂わせてッ!!」
「冗談じゃないわ……冗談じゃないのよ! なんでお前たちなんかにッ!!」
 満身創痍なオブリビオン同士の戦いを目に、璃奈はその剣から光を消した。天照の輝きも失せ、目を伏せる。
「これじゃ……いつまで経っても、悲しみも憎しみも……終わるわけがないよ……」
 尻尾までもが項垂れる璃奈の肩に、リーヴァルディが手を置いた。大鎌の切っ先は、今は誰にも向けられていない。彼女が成すべき復讐の幇助は、もう済んでいた。
 それにこの戦いも。もうじき終わる。そう確信していたから、彼女は璃奈に囁いた。
「……もう少しよ、璃奈」
 垂れた狐耳が、頷く頭に合わせて、力なく揺れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
カミーリャには同情するけど
今はローザリアを倒す為に利用させて貰うよ
関係者が来てるみたいだし成仏できるといいんだけど

攻撃にも耐久にも秀でた前衛がいるんだから
後ろから射撃と麻痺で援護する形で戦うよ
カミーリャの血を飲まれると厄介そうだし
そこは念入りに邪魔するよ

ローザリアが攻撃や防御するのを邪魔しつつ
僕への攻撃は神気で防御
隙を見て射撃で削っていこう

血を飲まれそうになるとか
危ない時は邪神の領域を使用
邪神を表に出さなくても
結構権能を使えるようになったからね

可能ならローザリアが滅びる直前で固定して
亡霊達と同じ目に遭わせたいな
それで誰かが救われる訳じゃないけど
あれだけの事をして自分だけ楽になるのは腹立つからね


アンナ・フランツウェイ
アンタが城主気取りの吸血鬼か。カミーリャの目的は知らないけど、街の人達の無念を晴らすためにも…アンタを処刑する!

【空中戦】を仕掛け【衝撃波】を放ち牽制。ローザリアは攻撃を【見切り】【残像】回避し続け、焦りを誘っていこう。

焦って私やカミーリャに吸血を仕掛けてきたら、それを敢えて受け【カウンター】で【呪詛】で汚染された血液を…街の人々の無念、恨みを逆に送り込んでやる。…アンタの手にかかった者達の痛み、苦しみを知るがいい。

隙が出来たら、UCで居合切りを足に放ち逃げられないようにしよう。この一撃で私は許すけど…カミーリャはどうかな。遣っちゃっていいよ、カミーリャ。



 何度も、何度も。オブリビオンの少女二人は、剣と闇の拳を打ち合わせている。
 もう、放っておいてもローザリアは死ぬかもしれない。亡たちの復讐は、仲間の手によって成された。
 しかし、彼女はまだ、報いの全てを受けていない。アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)は、隙を見ては逃げ出そうとする吸血鬼の少女を見据えた。
「アンタが……城主気取りの吸血鬼か。もう見る影もないね」
「……」
 屈辱に歯噛みするローザリアに、反省の色はない。今もこちらを下等な生物と見なし、受ける攻撃はすべて汚らわしく愚かな行ないと見なしている。
 もとより加減するつもりなどないが、どうあっても、彼女はここで死なねばならないようだった。狂気の言葉を繰り返すカミーリャに代わって、宣言する。
「吸血鬼ローザリア。街の人達の無念を晴らすためにも……アンタを処刑する」
「ふ……ふざけないでよ。ふざけないで! 誰がお前たちなんかにッ!!」
 右手で左の胸元を掻き毟り、噴き出した血が結晶となってアンナへと放たれる。しかし、赤黒い殺気の弾幕は、横から飛び込んできた無数の実弾によって破壊された。
 回転する砲塔の余韻を感じながら、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はローザリアを冷たく睨む。
「カミーリャには同情するよ。コイツではないにしろ、こんな奴らに心を壊されたんだから」
「人間風情が、えらそうな口をッ!」
 血の結晶を再び放つ。広範囲だ。晶は【携行型ガトリングガン】を握ったまま、回避せずにいる。ローザリアは勝利を確信した。
 まさに、一瞬だった。瞬きをしただけなのに、次に目を開けた時には、晶はもう、いなかった。
 血の魔力が壁にぶつかり砕ける様に、吸血鬼の少女が絶句する。
「な――」
「無駄だよ、ローザリア」
 声とともに聞こえる、ガトリング砲塔が回転する音。原理は知らないが脅威を感じた吸血鬼が、跳び退る。
 一瞬で真横に現れた晶の弾丸を闇の壁で防ぎ、力を放出しすぎて膝をつきながら、彼女は狼狽えて言った。
「なぜ……!? なぜ人間が、これほどの速さを!?」
「僕が速くなったんじゃない。君が止まってただけだよ」
 そう言って、晶は左手を持ち上げてみせた。その指先が、わずかに石化している。邪神の力を使った代償だ。
 猟兵が得体の知れない連中であることは、知っていた。だが、時を止めるなど。そんな化け物、吸血鬼の中にもいるだろうか。
 わずかに芽生えた怯えを感じ取り、アンナは終わりの時が来たことを感じた。
「……ここまでよ。諦めて死を選びなさい、吸血鬼」
 俯いたローザリアが、拳を握りしめる。唇が噛み破られて、血が滲む。
 顔は傷つけられ、その身に呪詛も受け、プライドを踏み躙られた。今ではドレスすらも燃やし尽くされ、一糸纏わぬ惨めな姿だ。
 あまりの屈辱。あまりに苦痛。
 許せない。許せない。
「お前たちは、許さない――!!」
 それは、誰の目から見ても最後の抵抗だった。
 全身から噴き出した血が漆黒の魔力と化し、ローザリアの背に巨大な翼を形成する。
 斬りかかったカミーリャが、向けられた掌から放たれた闇の波動で吹き飛ばされる。
 空へと飛びあがったローザリアは、自身の命をも魔力に変換し、闇と血の結晶を槍と化させ、玉座の間にいる猟兵とカミーリャに向かって降り注がせた。
「晶さん!」
「分かってる!」
 ガトリング砲の掃射と衝撃波でそれらを払いのけながら、二人は上空に飛び上がった。紅の瞳を憤怒に燃やすローザリアが、もはや言葉もなくし、持てる力の全てを破壊の魔法へと変換させていく。
 次々に放たれる血と闇の魔法を神気で防ぎながら、晶は敵に向かって射撃を行なう。回転する砲塔から放たれる弾丸の川は、しかし暗黒の壁に防がれ、落下していく。
「くそっ……!」
「接近戦でっ!」
 白と黒の二翼を羽ばたかせ、アンナが黒と赤の魔法を掻い潜ってローザリアに接敵する。手にする剣は、名もなき処刑刀。抜くと同時に、振り抜いた。
 重い手応え。巨大な血の盾に受け止められた。吸血鬼の瞳が煌めき、その牙が、アンナの右腕に食い込んだ。
「あぁっ!」
「アンナさんッ!」
 叫んだ晶が接近しようと試みるが、吸血によってわずかに取り戻した力が即座に血と闇の弾幕に代わり、彼の行く手を阻む。
 命を吸い取られる感覚。しかしアンナは、振り解くことをしない。これはむしろ、好都合だ。
「……ローザリア。アンタの手にかかった者達の痛み、苦しみを知るがいい」
「……!?」
 アンナの血を通して、街に迸る多くの無念や恨みが、ローザリアの中へと流れ込む。脳に直接響き渡る悍ましい亡霊たちの絶叫に、敵は自ら血を吸うのを止め、離れた。
「う――声が、声が――ッ!!」
 動揺している。銀色の髪を掻き毟り、頭の中に入り込んだ死霊を追い出さんとしているようだった。
 いっそ惨めな姿だったが、処刑を決めたアンナは迷わない。【無銘刀】を構えて一閃。闇の翼を、斬り落とす。
 飛翔の魔力を失ったローザリアが、落下を始める。それより早く、さらに抜刀の一撃を振るった。
 敵の足に走り抜けた刃が鞘に納められ、同時に、吸血鬼の膝から下が切断された。
 甲高い悲鳴が、空に響く。溢れた血が魔力を霧散させながら、穢れた大地に降り注ぐ。
 またも床に叩きつけられたローザリアは、失った足でもがきながら、必死に玉座へと縋りついた。膝から溢れる血で、美しく絢爛な椅子が汚れていく。
「私は……私は至高の吸血鬼……! 死なないわ、こんなとところで、私は……」
 歯を鳴らして恐怖しながら呟くローザリアの前に、晶とアンナが着地した。もはや脅威にならないだろう吸血鬼に、歩み寄る。
「……私はさっきの一撃で満足。晶さんは?」
「僕は、そうだね」
 魔法の一つも撃てなくなったローザリアのそばにしゃがんで、彼は銀色の髪に手を置いた。冷たい吸血鬼の肌をその手に感じつつ、目を細める。
「……それで誰かが救われるとは思わないけど、亡霊たちと同じ目に遭わせたいかな」
「えっ――」
 漏れ出た小さな声は、ローザリアのものだった。
 絶望に満ちた目を向けられれば同情の念を抱かなくもないが、それ以上に晶の心には、冷たい怒りの炎が燃え上がっていた。
「あれだけのことをして、自分だけ楽になるのは腹立つからね」
 少女の頭に置いた手が、指の第二関節まで石化を進める。瞬間、ローザリアの体が跳ねた。彼女の首から下の時間が、止まる。
 惨めなヴァンパイアが目を見開いて、晶とアンナを交互に見やる。
「たす、たすけて――!」
 漏れ出た声に、二人はまったく耳を貸さない。貸す理由など、どこにあるというのか。
 立ち上がって玉座を離れる二人の間から、カミーリャが進み出る。燃え盛る劫火の刃を強く握りしめ、その目を憤怒と狂気に染め上げ、迷いなく、剣を構えた。
「吸血鬼……ッ!」
「遣っちゃっていいよ、カミーリャ」
 アンナが声をかけた瞬間――応えたわけではないだろうが――狂えるオブリビオンの少女が、咆哮した。憤怒と憎悪を刃に込めて、斬って斬って斬りまくる。
「うあぁぁぁぁッ!! 消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろぉぉぉッ!!」
 血飛沫が舞い、玉座をひたすらに赤黒く染め上げる。邪神の力で死ぬことすらも許されなくなったローザリアは、途絶えることのない断末魔の悲鳴を上げ続けた。
 復讐劇。それが終わったところで、何かが生み出されるものではない。そんなことは、晶もアンナも分かっていた。
 だが、理屈ではないのだ。人の心は。それを知らないから、ローザリアは無残最期を遂げることになった。
 忌々しい吸血鬼の全身を切り刻んだカミーリャが、ようやくその首を斬り落としたのは、玉座の間が夥しい血で満たされてからのことだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『復讐血花』カミーリャ』

POW   :    機略縦横の流法(モード)
【剣を中心に格闘も交えた組み合わせの連撃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    狂化流法(モード)・復讐血火
【憤怒の狂気により生み出された怒りの劫火】が命中した対象を燃やす。放たれた【憤怒の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    マッドブラッド・オーバーラン
【己の血と敵の返り血で剣】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。

イラスト:純志

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は唐草・魅華音です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ローザリアの死体は、血の一滴も残すことなく床に染み込み、骸の海へと消えていった。
 忌むべき吸血鬼を斬り刻んだ少女が、肩で息をしている。猟兵たちは、彼女を注意深く見つめていた。
 剣を握るカミーリャの手には、今も力が込められている。まだ敵が残っていると、狂気の剣士はそう感じているのだ。
「次だ……次だ」
 どこまで、という答えは、恐らくないのだろう。ダークセイヴァーに存在している全ての命が、カミーリャの敵なのかもしれない。
 ――かつて、吸血鬼を倒すために自身を鍛え、そして戦ってきた少女。
 大切な人たちを守ろうとし、明るい未来を信じて戦った彼女は、ある日突然、吸血鬼に売られた。他でもない、守ろうとした郷里の人々に。
 吸血鬼に弄ばれた挙句の死が、穏やかであろうはずもない。凄惨で残酷な死を迎えたことは、想像に難くない。そうして優しい少女は、狂乱の渦に堕ちたのだ。
 だが、だからといって、見逃すことなど出来ようはずもない。戦う他はないのだ。
 カミーリャは今や、世界の敵となってしまっているのだから――。
 振り返り、狂える少女剣士は猟兵たちを見た。その瞳に宿る憎悪と狂気の劫火が燃えている。消耗したはずの力が、増していく世界への憎しみに比例して、取り戻されていく。
「次は……お前たちか……!」
 共闘したという事実など、彼女の中には存在しない。ただこの世界に立っている命として、己が斬るべき狂った世界の一部として、猟兵たちを、睨みつける。
 深紅の刃が輝き、紅蓮の炎が纏わりつく。
「お前たちが……お前たちも、私をぉぉぁぁぁッ!!」
 瞳に浮かんだ雫が炎の熱で消し飛んで、残った憎悪に突き動かされ、カミーリャが、走り出す。
 崩壊した城の玉座に、儚くも美しい復讐血花が咲き乱れる。
雛菊・璃奈
…且つて、みんなを守ろうとした子が世界の敵なんて…悲しいね…。
貴女の憎悪を解ってあげられるなんて言えないけど…せめて、貴女をその苦しみから解放したい…!

【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…!
無限の終焉の魔剣を大量展開し、更に【呪詛】を込めて一斉斉射…。
敵が魔剣に対応してる間に【呪詛、高速詠唱】による呪詛の縛鎖を発動して四肢を拘束…。
その隙に神速と凶太刀の高速化による二重加速で一気に接近し、敵の動きに【見切り、第六感】で適宜対応(敵の憤怒の炎をアンサラーで反射【呪詛、オーラ防御、カウンター、武器受け】する等)しながら【呪詛】を込めた凶太刀と神太刀の高速連撃【早業、残像】で圧倒…。
彼女を解放するよ…!



 かつて、世界を守ろうとした少女。猟兵として、未来を切り拓こうとした戦士。
 彼女は、今の自分と変わらない。寸分違わぬ志は今、過去から染み出したことと、心を破壊する狂気によって、変じてしまっている。
 たまらない思いになり、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は目を伏せる。
「悲しいね……」
 志半ばで、どれほど無念だったろう。その悔しさは想像することしかできないけれど、彼女が狂った経緯を思えば、胸が締め付けられるような心地だった。
 だが、だからこそ。璃奈は再び九尾と化して、空間をも揺らがせるほどの呪力を纏う。
 迸る呪詛の力が、玉座を砕く。血色の刃をこちらに向けて恨みを叫ぶカミーリャに、璃奈は宣言した。
「貴女の憎悪を解ってあげられるなんて言えないけど……。せめて、貴女をその苦しみから解放したい……!」
 少女の心に巣食う痛みを切り払うため、纏う呪詛に形を与える。
 顕れたのは、無数の魔剣たちだった。あらゆるものに終焉をもたらす刃の群れに、満身創痍のカミーリャが剣を構えて唸る。
「私は……私は! 狂った世界をッ!」
 群がる終焉の魔剣を打ち払い、カミーリャが叫ぶ。璃奈は答えず、その両手に妖刀【九尾乃凶太刀】と【九尾乃神太刀】を握り、一歩踏み出した。
 ただの一足で、狂気のオブリビオンとの間合いに飛び込む。即座に反応したカミーリャの剣が、璃奈の視界に飛び込んできた。
 神太刀を合わせて受け、怒りに見開かれた少女の目を覗き込む。その奥に巣食う絶望が、眼光から伝わってきた。
「猟兵――ッ!」
「!」
 飛び退ると同時に、カミーリャの剣に赤黒い光が纏い、憤怒の炎となって噴き上がる。
「うああぁぁぁッ!!」
 振るわれた血色の炎剣が、魔剣たちを打ち払う。底知れぬ怒りに、魔剣の呪詛が押し戻される。
 さらなる魔剣を召喚しながら、璃奈は呟いた。
「それでいいよ……。全部、吐き出して……」
 彼女を人に戻すことはできない。共に歩むことができたオブリビオンもいるが、だからこそ分かる。カミーリャは、無理なのだ。
 それでも、彼女の声を聞いてやるくらいならできる。終焉の魔剣を叩き切るカミーリャに歩み寄り、璃奈はその手に魔剣【アンサラー】を呼び出した。
 目が合い、狂える剣士が叫びと共に剣を振るう。血色の炎が襲いかかり、璃奈はそれを、魔剣で受け止めた。
 炎が反転、カミーリャを包む。劫火の熱に悲鳴を挙げて転倒する少女は、あまりにも弱々しい。
 再び神太刀と凶太刀に切り替えて、斬りかかってくる少女と剣戟を交わす。璃奈の神速に、カミーリャはついてこれていないようだった。
 すでにローザリアとの戦いで、彼女は傷ついていた。猟兵と連戦したことにより、消耗は加速している。
 弱っているのだ。しかし、怒りに燃えるカミーリャは、それをこの瞬間まで、表情や仕草に見せようとしなかった。
 刺突の如き蹴りを避け、カミーリャを凶太刀の峰で殴り飛ばした璃奈は、終焉の魔剣たちの切っ先を向けたまま、わずかに目を見開いた。
「……」
 カミーリャは、恐怖していた。
 引きつった顔で魔剣を見上げ、立ち上がることもできない姿に、初めて人間らしさを感じる。
「そっか……ずっと、怖かったんだね……」
 いつも脳裏にへばりつく己の死の光景。それを狂った現実として切り裂こうとしていたのだろうか。彼女なりに、世界を正しく導くために。
 だとするならば、その遺志を継ぐのは、猟兵カミーリャの同胞である、璃奈たちだ。
「わかったよ……。貴女の心の闇、わたしたちが必ず斬ってみせるからね……」
 例え痛みが伴おうとも、その全てを受け止めてみせる。
 璃奈の――猟兵たちの決意が、剣気となって吹き荒れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「最初から決めていた事だ。
此処へ来るよりずっと前に、
オブリビオンは倒すと。なら、猟兵の役目を果たすだけだ。」

生命を喰らう漆黒の息吹を使用し
鳳仙花の花びらを周囲に展開。
剣による近接攻撃を主体にする事を予想して
防御、【カウンター】重視で行動。
花びらで敵の視界を遮ると共に剣での攻撃を妨害しつつ、
血で剣を巨大化しようとしたら
血の生命力を花びらで吸い取って弱体化させる。
攻撃を防いでいる内に剣の攻撃範囲を【見切り】
血煙の様なオーラを纏った真の姿を開放
花びらを掌に収束、凝縮して
相手に向って一気に放って攻撃。
「この狂った世界でも、
此処で暮らす人々の営みまで否定する事は俺には出来ない。
だから、止めさせて貰う。」


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

吸血鬼は倒したが…まだ仕事は残っているな
彼女が狂乱のままオブリビオンになるのを見過ごすわけにはいかないな

ナガクニを装備
短刀と素手で彼女の攻撃を見切り、いなし、躱しつつ攻撃
頭に血が上っているのなら少しは落ち着くかもしれんし、他に説得するメンバーがいるならそちらに攻撃が行かないようにもできるだろう

彼女が味わった地獄を考えれば、世界と人々を憎悪するのも無理はない…
だが、その先にあるのは吸血鬼共と何ら変わりない存在になる事と、救いのない破滅だけだ

敵がUCを使ったら、こちらもUCを使って足止め
腕や足を長剣に変えて敵の連撃をいなす
彼女がこのまま滅びを受け入れるならば使う必要はないだろうがな



 受け止めてみれば、その剣に込められている憎悪の深さがよく分かった。
「……これほどとは」
 思うところはある。キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は冷徹だが、残虐ではない。世界に裏切られた少女が狂乱のまま堕ちていく姿は、見過ごせない。
「猟兵、猟兵ッ! お前たちも、私の、私を――!」
 赤い斬線を短刀【ナガクニ】で受け止め、流す。崩した姿勢をも利用して、カミーリャは鞭のように唸る蹴りを繰り出した。
 身を反らして避けたキリカの目の前に、花びらが舞う。香る鳳仙花の花弁に、死の気配が漂う。
 まさしく、生命を喰らう漆黒の息吹の如し。濃厚な終焉の匂いに、狂気に満ちたカミーリャすらも、たじろぐ。
「最初から決めていたことだ。ここへ来るよりずっと前に、オブリビオンは倒すと」
 花吹雪に包まれるようにして、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は言った。静かな声音には、秘められた決意の力強さがあった。
「いかなる理由があろうとも、猟兵の役割を果たす。……形はなんであれ、ね」
「猟兵――私は、私も――ああああああッ!!」
 絶叫して赤い剣を振り上げ、斬風で鳳仙花の花びらを吹き飛ばすカミーリャ。その抵抗は危険を顧みておらず、彼女の生きる意思が希薄であることを、フォルクは感じ取った。
 世界に絶望し、自分以外が狂った世界の全てを斬ろうというのだ。命に執着するわけもない。無謀とも取れる突進でキリカに接近し、血色の剣が袈裟斬りに振るわれる。
「その思い切りの良さは危険だよ、カミーリャ」
 深紅の刃、その腹を素手で叩き退け、短刀で肩口を斬りつける。傷は浅いが、滲む鮮血に少女の怒りがさらに燃え上がる。
「あぁぁぁぁッ! 邪魔をするなぁぁぁッ!!」
 甲高い金属音と火花が飛び散る中を、鳳仙花の花弁は舞い続ける。触れる度、感触もなく生命力を喰らっていく冥界の華に、狂気の少女は徐々に顔色を白くしていった。
 ただの人間だったならば、とっくにその命を吸い尽くされていただろう。カミーリャが戦い続けていられるのは、彼女がオブリビオンだからか、それとも赤い刃の吸った血が、彼女に不屈の力を与えているのか。
 あるいは、復讐の念それこそが、カミーリャの力の根源なのか。
「もしもそうなら――その念、俺たちが断ち切る」
 呟いて、フォルクはこの世ならざる鳳仙花の花弁を、さらに虚空から呼び出した。死をもたらす華の香りが、崩壊した玉座の間に広がっていく。
 命を吸われる感覚に激昂するカミーリャが、ナガクニを弾いてキリカの腕を掴む。直後、その全身が炎に包まれた。
「あぁぁぁぁッ!!」
「くっ……!」
 あらゆる感情の権化である劫火が鳳仙花も燃やし尽くされていく中で、しかしキリカは、逆にカミーリャの腕を引き寄せた。
 牙を剥いて殺意を示す少女へと、諭すように告げる。
「お前が味わった地獄を考えれば、世界と人々を憎悪するのも無理はない。だが、その先にあるのは、吸血鬼どもと何ら変わりない存在になる事と――救いのない破滅だけだ」
「うぐっ、ああぅッ!!」
 捕まれた手を振り払わんとするカミーリャ。その気持ちが全てわかるとは言わないが、それでも理解はできる。同じ、いつか全てを失った者として。
 少女の手から、血が飛び散った。掴んでいたキリカの手が、長剣に変わっている。その刃が、カミーリャの手に深い傷を負わせていた。
 さらに一閃、胴を切り裂く。咄嗟に身を引かれ急所は避けられが、噴き出す血の量から見て、傷は浅くない。
「うあぁぁッ!!」
 悲鳴を上げて、カミーリャが倒れた。激痛に怒りが塗りつぶされたか、炎が消える。舞い散る鳳仙花の花びらの中で、キリカは静かに刀を構えなおした。
「……」
 流れ出る血に悶え苦しみ、激情に燃えるオブリビオンの少女に、キリカは得も言われぬ感情を覚え、わずかに目を伏せた。
「くぁっ、猟兵、猟兵ッ! うああああああッ!!」
 血に塗れてなお、カミーリャは立ち上がった。流れ出る血が、彼女の手に握られる深紅の刃に吸い込まれていく。その刀身が脈動するのを、フォルクは確かに見た。
「あれは……!」
 目深に被ったフードの奥で目を見開いた刹那、カミーリャの剣が赤黒い光を纏う。血色の光刃は、瞬時に彼女の身の丈を超えた。
 大剣と化した得物を、カミーリャが叫びとともに振るった。死の鳳仙花が、暗い赤に呑まれて消える。
「ああああッ! 血……私の血だ! この血は、私が、彼らを! なのに! なのにぃぃぃッ!!」
 流れ出る血を吸収して剣と化す姿は、まさしく憎悪の化身のようだ。
 カミーリャが、フォルクを見据えた。眼光に尋常ならざる殺気を漲らせ、剣気を滾らせ吶喊する。
 巨大化した血の刃が迫る中、彼は目を見開いた。
 瞬間、足元から血煙のようなオーラが噴き出し、その身を覆う。冥界に咲く鳳仙花の花びらが空から舞い降り、上を向けた掌に集まっていく。
 一瞬、カミーリャが足を止めた。真の姿となったフォルクを見て、その目にわずかな動揺――人間の残滓が漂う。
 わずかな心の断片を感じ取り、フォルクは事実だけを淡々と言った。
「この狂った世界でも、此処で暮らす人々の営みまで否定する事は、俺には出来ない」
 それを脅かす者を肯定することも、また。凝縮した花弁を、狂気に震える少女に向ける。
 カミーリャが吼えた。空間を支配する殺気の中に、恐怖が見え隠れしている。
 だが、フォルクは決めていた。迷うことは、決してしないと。
「――止めさせてもらう」
 放出された花びら。血色の光剣が掻き消したのはわずか、一瞬で鳳仙花に包まれたカミーリャが、悲鳴を上げた。
 花弁を振り払うように手をばたつかせ、必死に剣を振るう。その刃は、元の大きさにまで戻っていた。
 彼女から流れる血の生命力は、舞い踊る花びらに吸い尽くされていたのだ。
 死の花から逃れるように後退したカミーリャは、その先にいたキリカと再び剣戟を始めた。腕や足を刃へと変える変幻自在の剣術に、いなされていく。
 押し込まれてもなお感情のままに剣を叩きつけてくるカミーリャも。キリカは小さく呟いた。
「……滅びを受け入れては、くれないか」
 少女の心に巣食う歪んだ使命感。それがある限り、世界を滅ぼすまで、カミーリャは止まらない。
 二人が猟兵である以上、どうあっても、消えてもらわねばならないのだ。いかにかつて世界を愛してくれていたとしても。
 その存在が、新たな悲劇の始まりとなってしまう前に。
 少女の心を狂気に叩き堕とした地獄を、繰り返させないために。
「そう……決めていたことだ。全て、最初から」
 決意の言葉をもう一度言ってから、フォルクはフードの奥で、目を閉じた。
 鳳仙花の甘い香りの中で、キリカと斬り結ぶカミーリャの世界を拒絶する絶叫は、絶え間なく聞こえ続けていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アンナ・フランツウェイ
故郷の人に売られた…。私と一緒だね。(真の姿…呪詛天使になりながら)…そして私とも一緒ね。でも私には誰にも渡せない願いがあり、その願いにはオブリビオンが邪魔なのよ。
だから…その憎悪を私にぶつけなさい。この呪詛天使が相手になって、受け止めてあげるわよ。

UCで血の鋸を作成。カミーリャのUCを【見切り】ながら対処し、行動の傾向や癖を覚え隙を見つけていくわよ(【学習力】)。

隙を見つけたら命中率を重視した一閃を放ち、【傷口をえぐる】【部位破壊】で両断しながら【生命力吸収】してあげるわ。

アンタの憎悪は私が継ぎ、ダークセイヴァーを…いや全ての世界を滅ぼしてあげる。だから…安らかに眠りなさい。



 猟兵たちの猛攻に少女が見せた恐怖は、一瞬で憤怒に塗りつぶされた。
 再び得た狂気を刃に変えて、カミーリャが攻撃に出る。まるで、その狂える心こそが正常だと言わんばかりだ。
 彼女の気持ちが、アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)には痛いほどよく分かった。
「故郷の人に売られた……。私と一緒だね」
 悲しげな呟きとともに、その背に漆黒の翼が現れる。
 呪詛天使、その顕現。アンナは指先から流れ出た血を鋸に変えて握り、その刃をカミーリャへと向けた。
「……そして、私とも一緒ね」
 似て非なる声音。アンナの穏やかさが、凍てつくほどの冷徹さに取って代わる。
 狂える少女が放つ剣気を受け流し、呪詛天使はどこか硬質な声で言った。
「でもね、私には誰にも譲れない願いがあり、その願いにはオブリビオンが邪魔なのよ」
「猟兵……! いや、違う。こいつは、化物だ……! 私を、私たちを! お前のようなやつがッ!」
 カミーリャの狂気は、ほんのわずかに変質していた。激しい憎悪に、わずかな恐怖心と悲哀が滲んでいる。
 それでいい。誤魔化すための怒りでは意味がない。呪詛天使は血の鋸をひと振り、空いた手でカミーリャを誘う。
「そう、その憎しみよ。私に全てぶつけなさい。この呪詛天使が相手になって、受け止めてあげるわよ」
「うああぁぁぁぁッ!!」
 血走った目で、カミーリャが床を蹴った。ただの一跳びで間合いを詰め、アンナの胸ぐらを掴む。
 振り払い、鋸を振る。直後、赤い刃が交錯し、呪詛の火花が飛び散った。
 少女の剣には、凄まじい力が込められていた。その根源に垣間見える絶望の色に、呪詛天使が目を細める。
「それでいいのよ」
 一閃。カミーリャの右肩から血飛沫が舞う。浴びた返り血から生命力を取り込んだ黒翼の天使は、同時に流れ込む狂気をも飲み干した。
 かつてその怨念と共に死んだ身としては、彼女の絶望は懐かしさすらある味だった。
 故に、笑う。カミーリャの剣を受けながら、黒の天使は微笑する。
「そう、もっとよ。」
 激しい戦闘の中、猟兵との戦いでついた傷から、燃えるような鮮血が飛んだ。それでも体力は無尽蔵とばかりに、狂気の少女は体術と剣術を駆使し続けた。
 左の拳が、呪詛天使の頬をかすめる。そちらに気を奪われた刹那、深紅の剣が喉に向かって突き上げられた。
 後ろにのけぞり回避、追撃の蹴りに吹き飛ばされるも黒翼を羽ばたかせて勢いを殺し、着地する。
 カミーリャは血に塗れながらも、未だ怒りに燃えていた。それは過去という、決して消えない絶望の炎だ。
 消す必要などないと、呪詛天使は断じた。血の鋸を握ったまま、両手を広げる。警戒するカミーリャに、手を差し伸べるように。
「アンタの憎悪は私が継ぎ、アンタがそうしたがっていたように、ダークセイヴァーを――いや、全ての世界を滅ぼしてあげる」
 身体の奥底で、アンナが「止めて」と叫んでいる。それを無視して、世界を憎む天使は、カミーリャに歩み寄った。
「だから……全ての怒りを私によこして、安らかに眠りなさい」
「うぅ……あぁぁぁッ!!」
 激昂して斬りかかる、狂える少女。その刃を受け止めて、流れ込む憤怒の甘美な味に、呪詛天使はただただ愉悦に酔って、微笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ソニア・アイウォーカー
いずれにせよ倒さなければならないのだとしても、
最後、ただの敵として対峙したくはない。そう思っていました。

どうやら言葉をかけるのはわたくしの役目ではないようですが、ならば。せめてこれまで共有した短い時間、その想いを込めて弾丸で語りましょう。

貴女が損傷を厭わない戦い方をする事は知っています。
ですがそれに距離を開いて対処するのではあまりにも素っ気ない!
ガウスキャノン、延長砲身パージ。フルバースト・マキシマム。
この装甲と火力で、正面から受けて立ちましょう!

回避は捨て、というよりそもそも無理でしょう。カウンターに徹して。どこまでやれるかわかりませんが、これもまた経験ですね!


セルマ・エンフィールド
かつて、私は吸血鬼に従い言われるがままに人を狩っていた。
カミーリャさんにとっては到底許せない存在でしょう。

ですが、ここで斬られるわけにはいきません。

近接戦闘では分が悪そうですが、付け入る隙はあります。
フィンブルヴェトからの氷の弾丸でカミーリャさんを狙います。
放たれる炎は『見切り』直撃は回避します。炎には強い方ですし、延焼程度であれば『火炎耐性』で凌げるでしょう。

接近されたなら【柳弾】を使用。
フィンブルヴェトも手放し脱力した状態で攻撃を受け、『クイックドロウ』したデリンジャーで『カウンター』の『零距離射撃』を。

私には罪がある。
だからこそ……この世界が平和になり、裁きを受けるときまでは死ねません。



 「うぅぅ……ぁぁぁぁあああ!!」
 頭を抑えて目を血走らせ、カミーリャの身体が炎を纏う。
 怨嗟の熱風がもたらす温度変化のエラーが表示される中、ソニア・アイウォーカー(S0-N-1A・f25113)は怒りに震える少女から目を離せなかった。
「いずれにせよ、倒さなければならないことは、分かっていました」
 避けられない運命。彼女のために彼女を殺すしかないという現実。
 それを分かっているからこそ、紅蓮の劫火に包まれて叫ぶカミーリャに、ソニアはどうしても言いたかった。
「でも――最後は、ただの敵として対峙したくはない。そう思っていました」
 言葉は届かない。それも分かっている。だからこれは、ソニアが自身に言い聞かせているのだ。
「あなたに言葉をかけるのは、わたくしの役目ではありませんので。せめて、これまで共有した短い時間、その想いを込めて、弾丸で語りましょう」
「猟兵、猟兵ッ……はあああああッ!」
 燃え盛る火炎を引っ提げて、カミーリャが深紅の剣を振り上げ迫る。
 ソニアは距離を開くこと無く、その場に留まった。戦いの中で語り合いたいのに、間合いを取るのはあまりにも素っ気ないではないか。
 それになにより、彼女と話をしたいのは、ソニアだけではない。
 銃声は一発。カミーリャの足元が凍てついて、劫火をも消し去る冷気が立ち込めた。
 愛銃【フィンブルヴェト】に氷の弾丸を込め、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は振り返ったカミーリャを静かに見据える。
「カミーリャさんにとって、私は到底許せない存在でしょうね」
 かつて、セルマは吸血鬼に従い、言われるがままに人を狩っていた。理由はあれど、奴らの手先だった。
 この手には今も、罪無き人の血が染み込んでいるのだ。カミーリャに世界の狂気と断ぜられても、返す言葉はない。
 しかし、それでも。フィンブルヴェトのスコープを覗き、聞こえないだろう声で呟く。
「ですが、だからこそ、ここで斬られるわけにはいきません」
 次弾を放つ。同時に走る。氷の弾丸がカミーリャの左手にあたり、炎を一瞬霧散させた。
 憎悪だけではない、変質した怒りを叫んだオブリビオンの少女が、再び地獄の業火を噴き上がらせた。
 距離はソニアが近い。剣士少女は迷わず近くの猟兵へと斬りかかる。
「お前も……お前も私をッ!!」
「わたくしたちは、世界の味方です!」
 8.2mm長砲身ガウスキャノンの延長砲身をパージ、接近戦仕様に切り替える。
 灼熱の魔剣と化した赤い刃が振るわれる。熱波に表面装甲が溶けるが、ソニアは構わず全砲身を展開した。
「この装甲と火力で、正面から受けて立ちますっ!」
 爆音と共に弾丸の全てが放たれる。一瞬目を見開いたカミーリャは、先陣を切ったミサイルを斬り捨てた。
 刹那、爆発。爆風に吹き飛ばされ、剣士の少女が着地をするもバランスを崩す。そこに、無数のミサイルと銃弾、レーザーがなだれ込む。
 捌き切れず被弾して、カミーリャが悲鳴を上げた。だが、一度放たれた銃弾たちは止まらない。
「うぅ――うああぁぁぁッ!!」
 膨れ上がる感情が、炎と化す。玉座の間を紅蓮に染める劫火が、弾丸を消し飛ばした。
 狂気の力を取り戻したカミーリャが、弾丸とレーザーの嵐の悉くを、炎でかき消し、剣で切り払っていく。
 ただ一人で、己の力だけで世界を変えんと突き進む少女。その戦いは、あまりにも孤独だった。
 残弾の表示がみるみる減っていっても、ソニアが焦ることはなかった。
「カミーリャさん、知ってますか?」
 まるで友人にそうするように語りかけ、弾を切り裂いて接近する少女に、手を伸ばす。
「わたくしたち猟兵は、一人で戦ってはいないのですよ」
 振り上げた刃の先――ソニアの肩の上に、セルマがいた。飛び乗ってマスケット銃を構え、その目はカミーリャを寸分違わず狙っている。
 一瞬、狂気の少女が顔を歪めた。それは、己の甘さへの悔恨か、放たれるだろう弾丸への恐怖か。
 しかし躊躇わず、セルマは引き金を引いた。ソニアのフルバーストに比べればいかにも控えめな発砲音と共に、カミーリャが倒れる。
 撃ち抜いたのは、左の脇腹。劫火が傷口を燃やし、血を止める。
 フィンブルヴェトを背に回して、セルマは淡々と言った
「急所は避けました」
「猟兵……! 猟兵……!! くぁぁぁッ……!!」
 悔しげな――そう聞こえたのは、きっと気のせいではない――カミーリャの声音を耳に、セルマはスカートからデリンジャーを取り出す。
「私には罪がある」
 セルマの声は、氷のように静かだった。それは彼女の、決意の固さでもある。
「あなたは今、あなたの真実を以て、世界を救おうとしている。ならば私は、その炎を受け入れなければなりません」
 人の身をカミーリャの劫火に晒せば、そのダメージは甚大だ。ソニアはその危険を察したが、同時に、今はセルマに任せるべきだとも思った。
 猟兵たちは皆、形は違えど、カミーリャを狂わせた過去を認め、受け止めようとしているのだ。受け止め、解放しようとしている。
 セルマはデリンジャーを握ったまま、両手を下げ、脱力した。
「カミーリャ。あなたが倒すべき罪人は、ここにいます」
「罪、罪ッ! あぁ、私は、私は、私がッ!」
 立ち上がったカミーリャが、セルマの胸ぐらを掴んだ。
 天を焦がさんと吹き荒れる獄炎。二人の少女が炎に飲まれる様を、ソニアは機械の身ながら息を呑んで見守る。
「燃えろ、燃えろ、燃えろッ! 許さない。絶対に! 絶対に……許さないッ!!」
 骨の髄まで焼き尽くさんとするカミーリャは、掴むセルマの服が燃えないことに、気づかない。
「セルマさん……」
 ソニアには見えていた。サーモグラフィーで確認すれば、赤い熱波の中に、氷の冷たさを保つ人影が変わらずに立っているのだ。
 カミーリャの目の前で、炎に包まれたセルマが、淡々と独白する。
「えぇ。私は許されないでしょう。いつか必ず、この咎を負わねばなりません」
 デリンジャー銃を、掲げる。カミーリャの憤怒が再び崩れる。炎が、弱まる。
「ですが、だからこそ……この世界が平和になり、裁きを受けるときまで、私は死ねません」
 放たれた弾丸。ゼロ距離から胸部に銃弾を受けたカミーリャが、吹っ飛ぶ。
 銃を収めて、セルマはカミーリャに背を向けた。受け止めるべきは受け止めたと、そう背中が語っている。
「セルマさん、それがあなたの、“パターン”ですか」
 人の心の機微とは、本当に興味深いものだ。ソニアは目を細めて微笑みたい思いだった。
 倒れたカミーリャが起き上がり、怒り狂って床を殴りつけている。心が制御できていないのだろう。
「……なるほど」
 ソニアは気づいた。自分も含めて猟兵たちは、カミーリャを敵と見なしているわけではない。
 倒すべきは、彼女の狂気。世界を想う少女を世界の敵に変えた悲劇の真因を、討たねばならないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
カミーリャに斬られた人からすると
吸血鬼と大差ないかもしれないけど
裏切られ虐げられて狂った人に
責を問うのはやりにくいね

左手はしばらく使えないし
封印の縛めで盾になって時間を稼ぐよ
人の形をした亡霊に強く反応してたから
石像も壊したくならないかな

他の猟兵に妙案があれば
攻撃を引き受けて時間を稼ぐよ

もしくは自分への攻撃にかまけて
周りへの注意が散漫になってる内に
使い魔に状態異常攻撃させよう

狂気を払う権能があればいいけど無いからね
できるとしたら今の感情で固定するか
人形のように感情を凍り付かせるくらいかな

あの激情をずっと封じる事はできないかもしれないけど
一時でも冷静になれば他の人の言葉が届くかも

アドリブ多めでも可


フランチェスカ・ヴァレンタイン
易きに流されて護りを捨てた方々の末路も想像は付きますが…
とはいえ、売られた側にしてみれば何の慰めにもなりませんわねー

…どうやら因縁をお持ちの方もいらっしゃるようですし、決め手はお任せしてわたしはカミーリャの戦力を削ることに専念するとしましょう

剣の間合いへの踏み込みをバーニアの水平移動で瞬間的にずらして斧刃を打ち合い、格闘戦を空中戦機動で回り込むことでいなしてカウンターの蹴撃を浴びせ
至近距離での応酬で捉えた狂気を、UCの光刃で刻んでいきましょうか

――旅路の傍らで冒険者などしていたハズが巡り巡って今や違う世界の星の海におりますけれど。思えばわたしも騙し騙され手の平返しは割と日常茶飯事でしたねえ…


リーヴァルディ・カーライル
…ん。守ろうとした人達に裏切られて、殺されて…。
あるいは、貴女は未来の私の姿なのかもしれない。
…それでも、貴女の狂気を肯定する気はないわ。

今までの戦闘知識から説得は他の猟兵に任せ、
全身を圧縮魔力のオーラで防御して限界突破するUCを発動

…説得するなら手早くね。
その時間ぐらいは稼いであげるから…。

敵の気合いや殺気の残像を暗視して近接攻撃を見切り、
怪力の踏み込みから魔力を溜めた大鎌のカウンターで迎撃

第六感が好機を捉えたら大鎌をなぎ払い、
自身の生命力を吸収して早業の武器改造で連携
双剣の2回攻撃から手甲剣を突き刺し傷口を抉り、
呪詛を流し込む闇属性攻撃を放つ

…っ、ここまで、ね。後は、任せた……わ。



 徐々に弱っていくたびに、その力を狂気に求めるカミーリャ。この残酷な世界でも、彼女が受けた絶望は相当なものであったことは、想像に容易い。
 そして、彼女を贄とした連中の末路もまた。易きに流されて護りを捨てた者は今、生きてはいないだろう。
「……とはいえ、売られた側にしてみれば、何の慰めにもなりませんわねー」
 フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は、憤怒に塗れて床を殴りつけ、炎を刃に凝縮させていくカミーリャに、なんとも複雑な視線を向けた。
 それは、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)も同じ思いだった。
「裏切られ虐げられて狂った人に責を問うのは、やりにくいね」
 無論、人里を襲い滅ぼしたカミーリャの罪は重い。彼女に斬られた人からすれば、その存在はもはや、吸血鬼と大差ない。
 だが、それでも彼女は、猟兵であろうとしたのだ。今この瞬間も、形は狂えど、カミーリャは世界を救おうとしている。
 少女が立ち上がり、敵たる猟兵を睨み、唸る。
「うぅぅぅぅ……ッ! あああぁぁぁッ!!」
 深紅の刃が向かった先は、フランチェスカでも晶でもなかった。
 二人の間に割って入った黒衣の少女が、漆黒の大鎌でカミーリャの一撃を受け止める。
 重い剣だった。さして年の変わらない少女の剣には、あまりにも深い怨嗟が込められている。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、彼女の悲嘆に共感する自分を感じていた。
「……ん。守ろうとした人達に裏切られて、殺されて……。あるいは、貴女は未来の私の姿なのかもしれないね」
 大鎌【グリムリーパー】が、深紅の剣を弾く。無理やり間合いを離されて、カミーリャはリーヴァルディに殺意の眼光を向けた。
 共感はする。しかし、認めるわけにはいかない。大鎌の切っ先を、狂える少女に向ける。
「どんな理由でも、貴女の狂気を肯定する気はないわ」
「狂って……違う……! 私は、私は……!」
 片手で頭を抑えて震えるカミーリャは、割れんばかりの頭痛を堪えているようだった。
 その様子を見て、フランチェスカは理解した。この少女は、自分を狂わせることでのみ、自分を保っている。
 彼女にとっては、狂気こそが理性なのだ。全てがおかしくなってしまったと思えるほどの憎悪がなければ、一度破壊されたカミーリャの精神は、砂塵と崩れ落ちていたことだろう。
 そして今、彼女の心は再び壊れようとしている。
「……やり切れないね」
 ため息をついて、晶は顔を上げた。石となって未だ戻らない左手を見て、覚悟を決める。
 フランチェスカも斧槍の刃を光で纏う。リーヴァルディもまた、全身に全魔力を凝縮展開させた。
 震えが止まり、カミーリャは目を見開いた。
「そう、そうだ。私は……!」
 まるで笑っているかのようだと、晶は感じた。その顔は、怒りと憎しみに埋め尽くされていたが。
「違う、私は違う! 狂って、狂っているのは――」
 薄れつつあった狂気が、舞い戻る。
 三人が構え、カミーリャが、叫ぶ。

「狂っているのは――世界のほうだッ!!」

 爆発した感情のままに、踏み込む。絢爛な床が爆ぜ、深紅の剣が奔る。
 その先にいたのは、晶だった。交差させた腕に、憤怒の炎を纏う切っ先が突き刺さる。
 しかし、血は流れない。カミーリャの手に伝わっているのは、無機質な感触だった。
「……どうせ、左手は使えなかったんだ。捨てると決めれば、こういう使い方もできる」
 凄まじい力に押し込まれながらも、晶は踏ん張って言った。彼の両腕は、その服も含めて硬質な石像と化していた。
 石化の侵食が進む。動かせる筋肉が減っていく悍ましさを感じながら、晶はフランチェスカとリーヴァルディに振り返った。
「僕が盾になる!」
 その声に、二人は行動で応えた。カミーリャの左右に回り込み、同時に仕掛ける。
 斧槍からは邪気をも切り裂く光刃が、大鎌からはあらゆる怨念を塗りつぶすほどの呪詛が、それぞれ容赦なく振るわれる。
 カミーリャの反応は早かった。咄嗟に晶を左手で突き飛ばし、斧槍の柄を掴んで止め、大鎌を剣で受け止める。光と闇、双方の力に顔を歪めつつも、鎌を弾き斧槍の穂先をずらして回避、後方に跳んだ。
 すかさずバーニアを吹かして最接近し、フランチェスカが敵の間合いに飛び込む。相手は達人だ。しかし、経験ではフランチェスカも負けていない。
 敵の裏をかく。その答えはシンプルだった。光を纏う刃を背に引いて、刺突の気配を見せる。
 隙の大きい構えに、カミーリャが攻めた。斬り上げ、動きは最小限だった。瞬間、フランチェスカはバーニアを真横に吹かした。
「っ――!」
 急激な方向転換に、臓器が悲鳴を上げる。その痛みを噛み殺し、目の前を走る血色の剣を、弾き飛ばす。
 一瞬、カミーリャがバランスを崩した。少女の目はそれでも、敵たる猟兵を睨んでいた。無理やり体を起こして、鋭い突きを振るってくる。
 その刃は、またしても晶に防がれた。割って入った瞬間に肩まで石化させ、左肩で剣を受け止める。
 苛立ちが炎となって、切っ先から噴き上がった。その熱に辟易しながらも、晶は少女の殺意を真正面から受け止める。
「盾になるって言ったはずだよ。僕にも、譲れないものがあるんだ」
「斬る!! お前のような、お前のような化け物がッ!」
「……否定はしないよ」
 ため息交じりに呟いて、振るわれた二撃目、袈裟斬りを上半身で受け止める。赤い刃が刃こぼれし、カミーリャが目を丸くした。
 気づけば愛用のパーカーまでもが石と化した晶の背後から、リーヴァルディが飛び出す。欠けた深紅の剣に呆然としているカミーリャへと、大鎌を振るう。
 当たれば必殺の一撃は、再び狂気を取り戻した少女の刃に止められた。
 剣を交えるとよく分かった。怒りが膨れ上がっている。先ほどよりも――それこそ、ローザリアと戦っていた時よりも、彼女は明確な殺意に燃えていた。
「私は、私は! 世界を斬るんだ! この狂った世界を……邪魔をするな猟兵ッ!!」
「……それが貴女の真実だというなら……私は、その真実を否定するだけよ」
 身に宿す一切の魔力が、リーヴァルディの体を駆け巡る。吸血鬼を狩るために見出した秘技は今、吸血鬼に全てを奪われた者に向けられていた。
 口の中に血の味が滲む。持って一分強だ。凝縮させた全魔力を強制展開、決戦形態と化して、カミーリャに斬りかかる。
 絶叫して応戦するカミーリャは、しかしすぐに押され始めた。彼女の剣技が劣っているのではない。リーヴァルディの鎌が悉く、その動きを封じているのだ。
 少女の発する気合いや殺気が、見えていた。魔力の暴走で充血した目は、カミーリャが振るう剣の軌跡を、その刃が動くより先に捉えている。
 深紅の剣が、大鎌の強烈な威力を以て弾かれる。狂気の少女は、ついにその刃を手放した。
 放物線を描く得物を目で追うカミーリャへと、リーヴァルディは大鎌を双剣に変形させ、残存する全ての魔力を込めた刃を、振り抜いた。
 鮮血が飛ぶ。それでもオブリビオンの少女は、カミーリャの腕を掴み取った。引き寄せて、肉弾戦に持ち込もうとしていた。
「私が、滅ぼす! お前もッ!!」
「……」
 答えずに、双剣を手甲剣に変形、切り裂いた傷口に突き刺す。絶叫する少女へと、強大な呪詛が流れ込んだ。
 刃を引き抜いて、そのままリーヴァルディは倒れた。全ての力を出し尽くした彼女は、もう指先すらも動かせそうになかった。
 仰向けになった視線の先に見える白翼に、思いを託す。
「……ここまで、ね。後は、任せた……わ」
 フランチェスカの煌めく光刃は、頭を抱えて蹲るカミーリャに向けられていた。
 急降下からの斬撃。しかし、止められる。流れ込んだ呪詛と拮抗する狂気が、再び少女の手に血色の剣を作り出していた。
 わずかに眉を寄せて、言葉を零す。
「……ままなりませんわね」
「あぁ……私の、私の怒りはッ!! 私の怒りに、手を出すなッ!!」
 そこに答えがあることは、もう分かっていた。彼女の表層を支配する狂った憤怒を切り裂けば、その奥に隠されている核心が見えるはずなのだ。
 リーヴァルディは強大な呪詛を流し込むことで、カミーリャの心を覆う狂気を浮き彫りにしてくれた。ここでそれを突破しなければ、すべてが無に帰ってしまう。
 攻め手が思いつかないまま対峙していた、その時だった。
「カミーリャ!!」
 叫んだ声は、晶のものだった。彼は首から下のほとんどを石に変えつつも、邪神の権能を使おうとしていた。
 振り返ったカミーリャが、晶の目を見る。瞬間、内なる邪神が少女の心に手を伸ばした。
「ひっ――ああああああ!!」
 直接精神を鷲掴みにされる感触に、カミーリャが拒絶するかの如く叫んだ。しかし、邪神の干渉は止まらない。
「やめろ! やめろやめろやめろやめろやめろッ!!」
 憤怒と憎悪の奥にある心を守るために、必死に剣を振るって晶を斬る。しかしその身のほとんどをこの世ならざる石と変えた晶は、傷つかない。
 少女は恐怖していた。これまでの猟兵との戦いで揺らいだ狂気は今、本来の心と混ざり合うことなく分離している。
「フラン――!」
 仲間を呼びながら、晶はついに石像と化した。
 彼は元に戻るのかしら。フランチェスカは心の片隅でそんなことを思ったが、きっと大丈夫と自分に言い聞かせつつ、取り乱すカミーリャに挑む。
 光刃が、血色の剣と交わる。浮き彫りにされ、不安定な怒りとなったことで、カミーリャの表情は激変していた。
 戸惑い、失望、恐怖、憎しみ、悲しみ、怒り、そして、孤独。あらゆる感情に支配されたその顔は、まだあどけない少女のものだった。
 表層の狂気を斬り刻んだところで、正気に戻るわけではあるまい。だがせめて、最期に本音を引き出してやることくらいはしてやりたい。
 刃を交わしながら、フランチェスカはふと微笑んだ。
「思えばわたしも、騙し騙され手の平返しは割と日常茶飯事でしたねえ……」
 懐かしい、しかし戻りたいとは思わない過去を、カミーリャの狂気とまとめて切り裂いていく。
 迸る炎と涙と共に放たれた左の拳を、ふわりと飛び上がって避け、その後頭部に強烈な蹴りを叩きこむ。倒れかけてもなお立った少女の背に、光の刃を深々と斬りつける。
 カミーリャは声もなく、立ったままよろめいた。光刃の軌跡から、血と共に歪んだ何かが溢れるのを、フランチェスカは確かに見た。
「……」
 切っ先を向けて警戒しつつ、動けないリーヴァルディと晶を庇うように立つ。
 斬られたカミーリャはふらふらと四、五歩進んでから、膝をついた。天井を見上げたまま、動かない。
 その背中しか見えないが、フランチェスカには、次にカミーリャが発する声が想像できた。
 そしてそれは、すぐに正解だと分かる。
「うっ……あぁ……! 私は、私は、どうして……!」
 慟哭。カミーリャは玉座の間だけでなく、城下町にまで響き渡るように、泣き叫んだ。
 怒りで隠していた本心は、悲嘆であり、恐怖だったのだ。ようやく引き出せた真実を前に、しかしフランチェスカは、光刃を消さなかった。
 まだ、終わりではない。この嘆きこそが彼女の狂気の本質ならば――。
 瞬間、火柱が立ち上る。カミーリャを包み込む劫火が天井を蒸発させ、玉座の間が薄暗い雲の下に晒される。
 獄炎に涙を蒸発させながら、狂気に沈んだ少女は再び、剣を取った。猟兵たちに向き直り、悲痛に満ちた目を向ける。
「……これからが、最後の戦いですわね」
 フランチェスカが呟いた瞬間、少女は心の全てを曝け出し、彼女の敵であるべき猟兵へと、その刃を向けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
※ボロボロ
(杖替わりに盾、自身を●ハッキングし重心制御を補正し移動)

“汝、心の儘に振る舞え”
それを為すには時に危険を冒す必要がありますが…今がその時
奇跡は起こせませんが、為すべきは我が胸中に

光学センサーの●情報収集で重心移動や挙動の「起り」を把握し●見切り●武器受けや●操縦するワイヤアンカーでの●ロープワーク殴打も併用し防御

深追い時に無事な脚部パイルを●串刺し姿勢安定
盾を捨て前腕部伸縮機構を作動し●だまし討ち
●怪力で拘束、UCを突き立て

狂気や感情とは脳内物資の影響を受ける物
そのバランス是正が「過去」にどれ程通用するかは未知数
目の前の相手を正しく認識できればよいのですが…

私が為せるのは此処まで…


唐草・魅華音
※ボロボロ/アドリブ・共闘OK
※敵UC対抗策
超スピードで走り回り風の幕を纏うように【火炎耐性】、さらにグレネードの爆発をぶつけて【焼却】して相殺を狙い、必要であれば爆風にあえて突っ込む。

UDCでわたしは人と分かりあえ、生きる事を選んだオブリビオンを見た。お姉ちゃんがそうなってくれる可能性は……無いのかもしれない。けれど、諦めて滅ぼすだけで終わってしまうのは、嫌だ。
言葉だけでも、一緒に戦うだけでも足りない。それなら…全力で。正気に戻ってくれるまで、何度でもぶつかる。
恨み言しか無かったとしても、ちゃんとしたお姉ちゃんから話を聞きたい。だから……わたしはここにいるんだよ!気づいてよ、お姉ちゃん!


エーカ・ライスフェルト
私はオブリビオンを殺すのだから殺されて終わるのも覚悟しているけど
「オブリビオンを殺す猟兵と戦って終わりというのは、虚しすぎると思うわ」
「あなたは今のような感じでオブリビオンを殺してみたみたいよ、カミーリャさん?」成し遂げたことはあると、伝えておきたい

最初は【属性攻撃】だけを使って、炎の矢や単なる炎をぶつけて時間稼ぎをする

カミーリャがUCを使うタイミングで私も【加速する理力】を使う
【剣】を【念動力】で抑え込むのは無理と思うから、強化した【フォースオーラ】と【念動力】で私自身を動かして回避、カウンターで手首や足を狙うわ
62秒経過直前に、カミーリャの攻撃範囲の外に私自身を【念動力】で放り投げたいわね


露木・鬼燈
カミーリャから得られるものはもうない。
となると…もう興味はないしね。
後は仕事として合理的に骸の海に沈める。
となるところですが、因縁のある人もいるようだしね。
カミーリャに興味はなくても、猟兵のためならね。
なんらかの決着がつくまで何とか引き延ばしてみよう。
そのために有効なUCは<戦乙女の叡知>かな。
オルトリンデ、君の力を借りるですよ。
解析したデータを基に適切なルーンを選択。
生体装甲と魔剣にルーンを乗せ、攻撃を相殺していくですよ。
引き延ばせば引き延ばすほど、データは集まり楽になる。
まぁ、逆に言えば最初の方が辛いんだけどね。
そこは気功術による肉体活性とかで補うってことで。
ペース配分が大事っぽい。



 カミーリャに、心が戻った。唐草・魅華音(戦場の咲き響く華・f03360)には、そう見えた。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」
 天へと延びる劫火の中で泣き叫ぶ少女へと、駆け寄る。連れ出さなければ、燃え尽きてしまう前に。
 紅蓮の炎に手を差し伸べた、その刹那。
「やぁぁぁっ!!」
 叫びは、カミーリャのものだった。
 咄嗟に刀を構えていなければ、魅華音の首は跳んでいたかもしれない。気づけば、炎を纏う血色の刃と姉の顔が、目の前にあった。
「お姉、ちゃん」
「どうして! どうしてよ! 私は世界を、世界を守るって、それだけだったのに!」
「……!」
 瞬間、魅華音は理解してしまった。涙に歪んだカミーリャの目に、自分は映っていないと。彼女は今も、果てしない孤独の中にいる。
 声は届かないのか。ローザリアとの戦いで通ったと思った心は、気のせいだったのか。
「……お姉ちゃん、わたしだよ! 魅華音だよ、分かるでしょ!?」
「みんなを、守ろうと、私は、なのに、みんなは、私を! なんでよ、どうして!?」
「おね――」
 剣を打ち合いながらも声をかけようとした瞬間、魅華音は不可視の力で引き寄せられた。離れていく姉が、再び紅蓮の炎に包まれる。
 必死に手を伸ばした瞬間、その身を抱き留められた。邪魔をされたと感じて、苛立ちのままに振り返ると、同じ桃色の髪の女がいた。
 彼女はずいぶん冷静に、空をも焦がす火柱を見つめている。
「すごいもんね。私の炎じゃ、あぁはいかないわ」
「なにを……」
「褒めてるのよ。あなたのお姉さんをね」
 冗談めかして言いながら、エーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)は魅華音を解放した。
 感情が発露しては熱波を吹き荒れさせるカミーリャは、その力も極限まで高めている。もはや、暴走していると言っていい。
「放っておいても自壊するでしょうけど、どう?」
「……諦めて滅ぼすだけで終わってしまうのは、嫌です」
「ま、そりゃそうね。オブリビオンを殺す猟兵と戦って終わりというのは、虚しすぎると思うわ。……さて、どうする?」
 エーカの声は気づけば横に並び立っていた二人に向けられていた。漆黒の魔剣【オルトリンデ】を担ぐ露木・鬼燈(竜喰・f01316)と、歪んだ大盾を杖代わりにして立つトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。どちらも、ローザリア戦での傷は癒えていない。
 しかし、二人はどこか、朗らかだった。
「どう、ねぇ。僕はカミーリャから得られるものもないし、興味はないんだけど」
 かかとで床を叩きながら、鬼燈が言った。しかし、だからといって簡単に骸の海に沈めてしまうという選択は、今の彼にはない。
 仲間のためならば。その意識は、孤高の武芸者である鬼燈にもあるのだ。
「“汝、心の儘に振る舞え”。魅華音様にお伝えした言葉ですが……それを為すには、時に危険を冒す必要があります」
 満身創痍ながら、自身をハッキングしてでも重心制御をしながら、トリテレイアは腰部格納庫から一本の短剣を取り出した。
「私は……今がその時だと思います。奇跡は起こせませんが、為すべきは我が胸中に」
「ふぅん。まぁ猟兵として成し遂げたこともあるわけだし、協力はしてあげましょうか。私と鬼燈さんは、時間稼ぎというか、足止めね?」
「OKっぽい。じゃ、僕から仕掛けるですよ」
 三人は口々に言うと同時に、獄炎の中からカミーリャが姿を現した。その剣は紅の光刃を纏って大剣と化し、さらに劫火の炎まで纏っている。
 とめどもなく流れる涙は、落ちると同時に熱風に蒸発させられる。彼女の中で終わりのない悲しみが続いているようで、魅華音は心が締め付けられるような思いだった。
「お姉ちゃん……」
「私は……私は、猟兵だったのに。世界を守る、猟兵だったのに! あぁぁぁぁぁッ!!」
 爆風と共に、狂気の少女が斬りかかる。カミーリャは今や、憤怒よりも濃い悲嘆に包まれていた。
 受け止めたのは、宣言通り鬼燈だった。黒と赤が交錯し、激しい剣戟が繰り広げられる。その剣技もさることながら、一撃の威力が尋常ではない。
 死に際の力だ。普通に戦っていては、勝てない。鬼燈は舌打ちして、魔剣を握る手に力を込めた。
「オルトリンデ! 君の力を借りるですよ!」
 数合打ち合った結果を解析、最も最適なルーンを選択し、生体装甲と魔剣に付与する。輝いたルーンが、カミーリャの剣を跳ね除けた。
 剣の技で負けた悔しさを噛み潰して、再度斬りかかりながら、鬼燈は少女の後方に回ったエーカに目配せした。
 カミーリャの四肢に、念動力が絡みつく。その抵抗が凄まじいことを感じた瞬間、エーカは全身に力を走らせた。
「……一分よ!」
 叫ぶと同時に、無数の炎の矢を展開、狂い泣く少女の頭上に降り注がせる。立ち上った火炎がその全てを相殺した。
 劫火が剣に集束し、漆黒の魔剣と打ち合う。体力の消耗が凄まじいが、鬼燈は徐々に敵の情報を収集出来ているおかげで、徐々にペースを取り戻していた。
「知ることもまた力なり……ってね!」
 刺突に入る際に手首を捻る癖を見極め、その瞬間にオルトリンデを斬り上げて、血色の剣を弾く。
 手から離れて宙を舞う剣を、カミーリャが見上げた。その目から、涙が散った。
 大きくバランスを崩した少女の顔は、死の恐怖に埋め尽くされていた。
 その顔に、鬼燈は呟く。
「……終わりは、今じゃない」
 瞬間、か細い少女の体は空中に放り投げられた。エーカの念動力だ。頭痛がするほどの力の乱用に歯を食いしばりながら、カミーリャの体を固定する。
「女の子なんだから……ちょっとはおしとやかに……しなさい!」
 フォースオーラをクッションにして、傷つけないよう地面に叩きつける。それでも衝撃があったのか、カミーリャは口から血を吐いた。
 しかし、それはエーカも同じだった。フォースオーラを増強しすぎた反動で、全身にダメージが及んでいく。
「まだよ、まだ……!」
 残る全ての力で、カミーリャの足首を縛り付ける。立ち上がって泣き叫ぶ少女に引きずられながらも、必死に耐える。
 猟兵たちが、この瞬間を繋いでくれたのだ。例え狂気のエネルギーが暴走していたとしても、ここで仲間の力を無駄にするわけにはいかない。
 そう、全てはこの時のために。魅華音を肩に乗せたトリテレイアは、短剣を手にワイヤーアンカーを射出、カミーリャの足元に突き立てた。
「行きましょう。彼女の声を聞きに」
 ワイヤーを巻き取り、巨体が走り出す。バランスを崩しながらも接近する鋼鉄の巨体に、狂える少女が絶叫し、玉座の間を劫火で包み込んだ。
 凄まじい熱波に焼かれながらも、トリテレイアは突き進む。ハッキングによる強制的な稼働に耐えられず、あらゆるプログラムがシャットダウンしていく。
 カミーリャが突進してきた。暴発した心の力を拳に込めて、殴りつける。盾ごと左半身を破壊され、吹っ飛ばされかけたトリテレイアは、残った脚部のパイルを地面に突き立てて踏ん張った。
 反動に耐えられず吹っ飛んだ魅華音が、着地をして叫ぶ。
「お姉ちゃん! お願い、わたしの声を聞いて! 魅華音を、見てよ!」
「み……かね……!」
 カミーリャの目が、魅華音に向いた。しかしその顔は、やはり絶望に歪んでいる。
 狂気から逃れられない少女は、ありったけの悲痛をその名に込めて、絶叫した。
「魅ィィ華ァァ音ぇぇぇっっっ!!」
 獄炎を引っ提げての蹴りが、妹分の首を蹴り飛ばさんと迫る。呆然とする魅華音は、避けられない。
 その蹴りは、漆黒の魔剣に受け止められた。オルトリンデに奔る衝撃に、鬼燈が歯を食いしばる。
「ぐっ……重いッ……!」
 押し込まれ、弾き飛ばされる。大きな隙を見逃さず腹を殴られ、鬼燈は瓦礫の中に突っ込んだ。
 ここに来て、カミーリャは驚くべき力を発揮している。しかし、猟兵は諦めない。
「いい加減――腹括りなさい――カミーリャ――!」
 うつ伏せに倒れたエーカが、血を吐きながらも手を伸ばしていた。そこから放出された念動力が、弱々しいながらもオブリビオンの少女を縛る。
 見えざる力を無理矢理に引き千切った瞬間、魅華音はかつて姉と慕った少女を羽交い絞めにした。狂うほどの悲しみと絶望が力となって、振り解こうと暴れる。
 もう、出し惜しみはなしだ。己が持てる力の一切で、魅華音は彼女に答えたかった。
「お姉ちゃん、この技を覚えてる? ――禁忌。影流法、百華恵風」
 身体能力のリミッターを外し、後ろから抱きかかえる力を強化する。動きを奪われたカミーリャが、全ての負の感情を混ぜ込んだ声で、世界を呪う。
「どうして! どうして!? 魅華音ッ!! キミも、キミまで私を――!?」
「……それは、違います」
 右脚の全てと左上半身の六割を失ったトリテレイアが、目の前に立っていた。支えているのは、額から血を流す鬼燈だ。
 魅華音に羽交い絞めにされたまま動けないカミーリャに近づき、短剣をその胸元に突きつける。恐怖に歪む泣き顔には、幼さが残っていた。
「貴女は、目の前の相手を……魅華音様を、正しく認識する必要があります」
 短剣【ミセリコルデ】、その慈悲の刃が、胸に深く刺さる。切っ先から、痛覚麻痺薬と睡眠誘発剤が同時に注入されていく。オブリビオン化による悪影響をも除去するナノマシンが、カミーリャの体内に流れ込む。
 静かな時間だった。魅華音は、暴れる姉の力が抜けていくのを、その手に感じていた。
「あっ――あぁ――」
 痙攣し、倒れ込むカミーリャ。追従するように、力を出し切った魅華音もまた、膝をついた。
 トリテレイアの体が、仰向けに倒れる。アイカメラが赤く明滅する様子を見て、傍らに尻もちをついた鬼燈が苦笑いを浮かべた。
「トリテレイアさん、今日は一段と、ボロボロっぽい」
「えぇ、とはいえ、後悔はありません。私たちが為せるのは、此処まで……」
「だね。あとは彼女の仕事っぽい」
 鬼燈の視線の先には、消えゆくオブリビオンを胸に抱く、魅華音の姿があった。


 なんて冷たい体なのだろう。カミーリャを抱きしめて、そう思う。
 トリテレイアの短剣から流れ込んだ薬やナノマシンのおかげか、彼女の目は虚ろながら、穏やかなだった。
「……お姉ちゃん。魅華音だよ。分かる? 独りぼっちにさせて、ごめんね」
 声をかける。何度も、何度でも。
 人と分かり合え、生きる事を選んだオブリビオンを見た。しかし、姉がそうなる可能性は、もう無い。だがそれでも、最後に話す時間くらいは、くれてもいいはずだ。
 誰にでもなくそう願い、思い切り抱きしめる。魅華音の鼓動が伝わるように。カミーリャの息遣いを感じられるように。
「なんでもいいんだよ、お姉ちゃん。わたし、全部聞くから――恨み言しか無かったとしても、ちゃんとしたお姉ちゃんから、話を聞きたいよ」
 気づけば、涙が流れていた。楽しかった日々の記憶が、また戻る。
 どうしてと、カミーリャは言っていた。魅華音だって同じ想いだ。どうして大好きな姉が、こんなに悲しい目に遭わなければならないのだ。
「お姉ちゃんの話を聞くために、わたしはここにいるんだよ。だから、お願い――」
 もう、頬に伝う熱い雫は、堪えられなかった。震える声で、魅華音は懇願する。
「気づいてよ……お姉ちゃん……!」
 消えてしまう前に、一度だけでもいいから。魅華音の声が、カミーリャに吸い込まれていく。
 柔らかな感触があった。桃色の髪の毛を描き上げられるその感覚は、とても懐かしい気がした。
 そして。
「み……魅華音……」
「!」
 弱り切った声で呼ぶ声は、いつかの優しいカミーリャのものだった。顔を離して見てみれば、彼女は蒼白になった顔に、困ったような笑顔を浮かべていた。
「どうして……泣いてるの……?」
「お姉……あぁ……!」
 魅華音は、姉の胸に顔を埋めて泣いた。
「……泣いてちゃ、ダメだよ……。師匠に、怒られるでしょ……」
 カミーリャは正気を取り戻してはいない。死に向かう薬によって、夢を見ているかのような心地なのだろう。
 なんでもよかった。自分を見てくれた。それだけで十分だ。魅華音はカミーリャを抱きしめ、何度もその名を呼んだ。
 頭を撫でてくれながらも、カミーリャは笑ったり泣いたり、せわしなく感情をブレさせていた。そして、静かに言った。
「魅華音……私……。私は……あいつらに……」
 魅華音は全てを聞いた。誰に裏切られ、どの化け物に捧げられ、どのように死んだか。それはそれは、筆舌に尽くしがたい苦痛の山だった。
 一緒に怒ってやりたいと思う。だけれど、それではカミーリャが、ゆっくり眠れなくなってしまう。だから、ただただ抱きしめて、頷いて聞いた。
 安心させてやりたかった。これがきっと、最期の時だから。
 全てを話し終えた後、カミーリャが呟いた。
「私……猟兵に……なれなかったのかな……」
「そんなことないよ。お姉ちゃんは、猟兵として成し遂げたことがあるって、わたしの仲間が言っていたの」
「仲間……魅華音の……」
「うん、猟兵の仲間。わたしと、お姉ちゃんの、仲間だよ」
 涙を拭いながら、なんとか笑って答える。お別れの時に泣いているなんて、嫌だった。
 カミーリャは崩壊した天井から空を見上げて、「そっか」と力なく言った。その時、細い体から何か大切なものが抜けるのを、魅華音は姉を抱く腕で感じた。
「魅華音」
 呼ばれて、顔を見る。瞬間、涙が溢れた。
 カミーリャの体は、徐々に火の粉へと変じていた。その中で、彼女は、優しく微笑んでいた。
「あなたは、立派な猟兵になって、ね……。私は、出来なかったから」
「お姉ちゃん! 待って、まだわたし――もっとお話がしたいよ!」
 幼子のように引き留める魅華音に、カミーリャは小指を差し出した。
「お願い。約束、して?」
「……」
 声にならず、何度も頷き、必死に笑って、指を絡ませる。
 狂気と戦い続けた少女の体が薄れていく中、二人は決して、繋いだ小指を離さなかった。
 その魂が天へと帰る瞬間、カミーリャは魅華音に頬を寄せた。
「ありがとう、魅華音。……さようなら」
 その言葉とともに、最後の火の粉が、手の中から、消えた。

 掌に残った姉の温もりを抱きしめて、魅華音は仲間たちの目も気にせず、声を上げて泣いた。
 大切な人を想う、心からの涙。それは悲しくもあり、また温かくもあった。
 魅華音の慟哭は、カミーリャに捧げる鎮魂歌の如く、薄曇りの空に響き渡っていった。

 fin

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月03日
宿敵 『『復讐血花』カミーリャ』 を撃破!


挿絵イラスト