#アリスラビリンス
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柔らかく、生暖かく、粘液塗れの肉が膝を抱えた少女を包む。
周囲は真っ暗。鼻をジワジワと蝕むような腐臭が全方位から漂ってくる。ほつれたグレーのブラウスや擦り切れたデニムスカートに粘ついた液体が染み、湿っぽい熱が肌に触れても、少女は一切反応しない。膝の内側を見つめる目は、光を失い枯れていた。
(……このまま、死んじゃうのかな)
芋虫めいて波打つ肉の上を運ばれながら、少女は胸の内で呟いた。
涙は湧かず、何も感じず。脳は鉛じみてズシリと頭蓋に圧し掛かり、胸は心臓が消えたかのように空虚。動く意欲ももはや無い。
(死んじゃえばいい……死んじゃえば……。もうねむたい……寝てる間に……溶けちゃえばいいんだ……そうだよね、ママ……)
無気力な思考を抱きかかえたまま、少女は肉の闇に取り込まれていく。やがて少女は、ゆりかごに揺すられる赤子のように眠りに落ちた。
●
「……で、お腹をずばーってやってアリスを助けてあげて欲しいわけなんですよー」
ぱたぱたと身振り手振りを交え、シーカー・ワンダーは集まった猟兵たちに告げた。
というのも、とある不思議の国に迷い込んだアリスが、オウガに食われて消化される寸前になっているという予知が入ったのだ。
アリスを食らったオウガは『人食いピアノ』。読んで字の如くの見た目をした元愉快な仲間だとのこと。
「これ、不思議の国の地図なんですけどね。人食いピアノはチョコで出来たコンサートホールにいるみたいです。まずはここに乗り込んで、人食いピアノをこう、どーんとやっちゃってください! そしたらおえーってアリスを吐き出すはずなので!」
捕食されたアリス―――レジニアという名の少女は、なんらかの要因で絶望してしまっており、食い殺される運命を良しとしまっている。それを受けてか、不思議の国も『廃墟化したチョコレート製の芸術の街』という様相を呈しており、どろどろとおぞましく変容を続けている。
「たぶん、人食いピアノはただレジニアちゃんを食べようとしてるわけじゃないんですよねー。きっとレジニアちゃんをオウガに作り替えようとしていて、不思議の国がそれに反応してるのかも」
人食いピアノがレジニアをどのようなオウガにしようとしているかは不明。しかし、放置すれば、まず間違いなく酷いことになる。とにもかくにもレジニアを救出せねばならないのだ。
「それとね、もし人食いピアノから助けられても、レジニアちゃんが絶望したままだときっとまた同じことが起こっちゃいます。だから、助けたら、絶望からも解放してあげてほしいなーって思いますのでー」
予知を見る限りでは、レジニアはある種母性を求めているような節がある。彼女の抱える絶望もそれに関係したものだと思われるので、参考にしてほしい。
「それじゃ、グリモア開きますねー! 行ってらっしゃい!」
シーカーは背後の大型モニタ型グリモアに両手をかざし、白く輝く道を開いた。
鹿崎シーカー
ドーモ、鹿崎シーカーです。名前言ったら怒られそうなビールに色々混ぜて飲むのが最近のトレンド。怒られそうなのでなんのビールかは言いませんが、メキシコ産です。名前は言いませんが。
●不思議の国『諦観のナハト』
チョコレートで出来た芸術の街。ヨーロッパ風の街並みですが、今は建物がドロドロと融解しながら変形するおぞましい風景となってしまっています。街のいたるところには、同じ人物をかたどったチョコレートの女性像があるようですが……。
街の南端にあるコンサートホールの中には、少女アリス『レジニア』を飲み込んだオウガ、人食いピアノが座しています。
アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。
(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
第1章 ボス戦
『人喰いピアノ』
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POW : 死の旋律
【見えない破壊音波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : メメント・モリ
【自身が喰い殺したアリス】の霊を召喚する。これは【聞いた者の生命力を奪う童謡】や【生きているアリスに憑依し、操ること】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 闇の幻想曲
【物悲しいピアノの曲を演奏すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【臨死体験の白昼夢による精神攻撃】で攻撃する。
イラスト:猫家式ぱな子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠守田・緋姫子」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●お知らせ
・執筆は人数がそろい次第始めます。現在は4月16日の朝8時を目途にしておりますが、人数次第で前後します。
ケイティ・ネクスト
【一人称・猫 二人称・お前 三人称・名前+ちゃん】
にゃっはぁ、猟兵とやらの初仕事と行くにゃ。で、誰を殺せばいい? にゃんとまぁ、殺しじゃないのかにゃ。にゃっはぁ、それじゃあ猫と楽しい事するにゃー。
っていうか、猫にチョコレートは駄目だにゃ! 早くも大ピンチだにゃ!
「にゃんとぉー!」
とりあえず無視だにゃ! 幸いチョコレートが襲ってくる感じじゃないにゃ。
「にゃんて所に猫を呼んだお前ーっ!」
それらしきピアノ見つけたらネコカラテを叩き込むにゃ。猫の跳躍アンブッシュで体勢を崩して必殺猫ぱんちを下から叩き込むにゃ。猫は割と素手のカラテ重点だにゃ。たまに鞭とかも使うけど、戦闘補助だにゃ。
シキ・ラジル
一人称:アタシ
二人称:キミ、お前
三人称:同年代の女の子には〜ちゃん、初対面の人は名前+さん、アイツ
うーん?つまりつまり、オウガって悪いやつがアリスをオウガに変えようとしてんの?だめだめー!闇堕ちはラノベの中で十分なんだから!
あのピアノの中に…ってやだー!!あのピアノ気色悪っ!!早急な救助が必要じゃん!
ともかく演奏なら負けないんだから!Electシリーズを起動して「パフォーマンス」「楽器演奏」で向こうの音楽をかき消すよ!
「衝撃波」「時間稼ぎ」で敵の動きを止めてる間にUCを発動!ミニシキちゃんたち、アイツの口を寄ってたかってこじ開けちゃえ!アリスを見つけたらそのまま助けてあげてっ
「にゃんとぉ―――っ!」
チョコレートの大通りをダッシュしながら、ケイティ・ネクスト(蠱惑の仔猫・f26817)は素っ頓狂な悲鳴を上げた。
左右にはスライムめいてドロドロと変形するチョコの家々が立ち並び、屋根や壁から触手じみたものを生やしてくねらせている。ケイティと一緒に駆けるシキ・ラジル(揺蕩う雷歌・f11241)は二の腕をさすりながら首を縮めた。
「うひゃっ、なにこれ気持ち悪っ! ここ本当に不思議の国!? どっちかっていうと不気味の国じゃない!?」
「しかも全部チョコレートだにゃ! 猫にチョコレートは駄目だにゃ! 早くも大ピンチだにゃ!」
かしましく喚く二人の左右を流れる、融解の街並み。歪む家屋やチョコの街路樹前に佇む女性のチョコレート像だけが不動で、不気味なスマイルを二人に投げかけてくる。首を巡らせるチョコ像に見送られたシキの背筋を悪寒が撫でた。
「それにあっちこっちに置いてあるあの女の人! 生きてるの? じっとこっち見て来て気味悪いよ……!」
「とりあえず無視だにゃ! 幸いチョコレートが襲ってくる感じじゃないにゃ。ひと先ずの目的はぁー……」
ケイティが縦長の瞳をギラリと剣呑に光らせた。大通りの先、不思議の国の南端にそびえる、古代ギリシャのコロッセオめいた形状の建造物。話に聞いたコンサートホール。レジニアという名のアリスを食らったオウガの居城!
「あそこだにゃ! シキちゃん、一気呵成に突撃だにゃ―――っ!」
「おっけいケイティさん! 真っ直ぐ行く!?」
「いんにゃ!」
否を唱え加速したケイティは、コンサートホールの数メートル手前で四つん這で急ブレーキ! 尻尾を眼差しは上へ。やや後方からそれを見たシキはケイティの狙いを察知した! 走り幅跳びめいたジャンプから着地、跳躍体勢!
「上から行くにゃ! とぉぉぉぉぉぉぉぉうっ!」
「そりゃあああああああああっ!」
ロケットじみた勢いでジャンプするケイティとシキ! あっという間にコンサートホールのドーム天井を見下ろす位置へ! 二人は前方回転して両足を空に向け、虚空を蹴って急降下! ケイティは両拳を握り、迫りくるドーム天井をにらむ!
「イニャーッ!」
CRAAASH! チョコレートの天井を粉砕し突撃! ホール内に響いていた物悲しいピアノの戦慄を突き破り、ステージの上に鎮座するグランドピアノの近くに、THOOOOOM! 着地の衝撃で浮いたグランドピアノが下部をさらす!
「ぺっぺっ! チョコ、チョコ、チョコ! にゃんて所に猫を呼んだお前ええええええええっ!」
憤慨したケイティはグランドピアノの底に掌底を繰り出した! GGAAAAAAAANG! 悲鳴じみた旋律を放つピアノを、力任せに吹き飛ばす! 放物線を描いたグランドピアノは空中で数回転し、足から舞台奥に落下した。
「ケイティさん、やった!?」
自分を模した大量の小型人形に抱えられてゆっくり降下したシキが声をかけた。ケイティは両拳を猫耳の近くに添える『ネコカラテ一の構え』を取りながらうなる。
「まだだにゃ。手ごたえはあったけど、アリスを吐き出してにゃいにゃ!」
床に足をつけたシキは周囲にシキ人形を控えさせながら、険しい表情でグランドピアノに目を向ける。軽くホール内を走査したところ、ピアノはケイティに殴り飛ばされたアレのみ。他には舞台を三日月状に取り囲む、階段式の観客席!
「うん、ピアノは確かにあれしか無いっぽいね……!」
シキが右腕を真横に薙ぐと、その軌道にピンクと紫の稲妻が走る! 稲妻は凝固して光の板となり、砕け散って浮遊するシンセサイザーと化した。その隣で、ケイティはピアノが沈黙していると見るや構えを解いて両手を合わせオジギする。
「ドーモ、ブラックキャットです。いつまでも黙ってにゃいで、かかってくるにゃ! それともピアノごときにアイサツしても無駄だったかにゃ!?」
ケイティの挑発した瞬間、グランドピアノが怒りを堪えるようにブルブルと震えはじめる。鍵盤がひとりでに奏でる曲は、シューベルトの『魔王』。病の子供の命を奪う、悪霊を謳った物語! ピアノの大屋根が跳ね上がる!
「GGAAAAAAAAANG!」
「っ!」
シキがぞっと肩を竦めた。グランドピアノの内部、鍵盤と連動して音を奏でる弦があるはずの場所から、赤黒い液体に濡れた巨大な舌が迫り出してくる! 大屋根からは氷柱めいて生えそろった、ビート板の如きサイズの歯! オウガの本性!
「うわっ、やだーっ! あのピアノ気色悪っ! あの中に閉じ込められてるとか早急な救助が必要じゃん!」
「だにゃ! 猫はカラテ重点するからシキちゃん援護をお願いするにゃ!」
言うが早いか、ケイティはステップを踏んで人喰いピアノにダッシュで接近! シキはシンセサイザーに指を置き、鍵盤側をケイティに向ける人喰いピアノに狙いを定めた!
「あの中でアリスをオウガに変えようとしてるって? だめだめー! 闇堕ちはラノベの中で十分なんだから! 行くよーっ……!」
次の瞬間、人喰いピアノが鍵盤を打ち鳴らす! GAGAGAGAAAAAAAANG! GA・GA・GA・GAAAAAAANG! 津波じみてケイティを襲う破壊音波は、しかしポップな電子音に相殺された。シキは鍵盤に指を躍らせる!
「音楽はお前の専売特許じゃない! アタシの音楽を聞け―――っ!」
ヘッドバンギングめいて頭を振り下ろしたシキが情熱的速度でポップミュージックを奏で上げる! 彼女の足元からピンクと紫の光が波紋のように拡散し、稲妻の五線譜が彼女の周囲を回転し始めた! オーロラの如き輝き!
「やっちゃえケイティさーんっ!」
シキの奏でるサウンドを追い風のように受けたケイティは直線ダッシュでピアノに肉迫! 跳躍からの回転かかと落としを繰り出す!
「イニャーッ!」
直後、ケイティの真下でグランドピアノが大口を開け、白い蒸気じみたものを吹き出した! ケイティの踵落としをガードしたそれは、無数の少女たちの霊! ピアノが食い殺して来たアリスの霊だ!
「小癪にゃーっ!」
ケイティは身をひねって竜巻回転! ゴーストアリスを蹴散らし、人喰いピアノのワン・インチ距離に着地した。鍵盤にハンマーパンチを振り下ろす!
「イニャーッ!」
「GRAAAAAANG!」
ピアノが上げる悲鳴めいた旋律に構わず、下段から蹴り上げるケイティ! CRAAASH! ちゃぶ台返しめいて跳ね上げられた人喰いピアノが足をばたつかせる中、ケイティは追撃の踏み込み掌底!
「イニャーッ!」
SMAAASH! 砲弾じみて跳ね飛んだ人喰いピアノは、コンサートホール奥の壁に激突! 床に落ちた足が曲がるのを見、シキは周囲に控える人形たちに視線を走らせた!
「隙ありっ! ミニシキちゃんたち、アイツの口を寄ってたかってこじ開けちゃえーっ!」
シキがピアノを勢いよく指差すと同時、シキ人形が魚群めいて人喰いピアノに襲撃を仕掛けた! 足を立てて持ち直すピアノに取りついたシキ人形たちが、大屋根を無理矢理に開く! Cターンして救護に向かうアリスの霊たち!
「おっと、そうはさせにゃいにゃーっ!」
その場で一回転したケイティの腕からムチが伸びる! 彼女自身の体毛で編まれたそれは螺旋を描いてアリスゴーストの群れを捕らえ、締め付け、引き寄せる! 幽霊たちは左右に身をよじって抵抗するも、逃れられぬ!
「お前たちは道連れが欲しいのかもしれにゃいけど、そうはいかないにゃ! 邪魔はさせないのにゃ!」
ムチを引っ張りながら両足を踏んじばり、ゴーストたちを足止めするケイティ! アリスたちは声をそろえて何事か歌い出すが、シキのシンセサイザーに押し流される。一方で人喰いピアノは大屋根を無理矢理開かんとするシキ人形に抵抗!
「GIGOGOGOGOGO…………!」
蝶番が激しく軋む。旋律は全てシキの音色と相殺し、実際無力! このまま口を開かれ、シキ人形の侵入を許せばレジニアを奪われてしまう。絶望の中、死と己の旋律を受け入れた少女を!
「GUGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGA…………GRAAAAAAAAAAAAANG!」
刹那、人喰いピアノは破壊音波を解き放つ―――床に向かって! 放射状に走ったクモの巣状の亀裂がケイティの足を絡めとり、体勢を崩させた!
「んにゃおうっ!?」
ケイティがグラリと揺らぎ、一瞬緩んだムチからアリスゴーストたちが滑り出す! 幽霊たちは人喰いピアノを取り囲んで底部をつかみ、またある霊たちはシキ人形を引っぺがしては投げ捨てる!
「ケイティさん! ミニシキちゃんたちっ!」
演奏スピードを上げるシキ! 暴風じみて衝撃波を伴う音楽が人喰いピアノとゴーストたちを打ち据える! だが人喰いピアノは己の下方に破壊音波を放ち続けた! そしてアリスの亡霊たちは―――ピアノを真上に跳ね上げる!
「GRAUUUUUUNGGGGGGGGG!」
破壊音波のソニックブームを吹き放ちながら垂直上昇する人喰いピアノが、コンサートホールの屋根を、CRAAASH! 突き破って不思議の国の空に出た! 尻餅を突いたケイティが後転復帰!
「あいつ、逃げるつもりにゃ!? シキちゃん、回れ右にゃ! 急いで追いかけるのにゃ―――っ!」
「もちろん! 逃がすわけにはいかないんだからっ!」
シキは両手をハサミのように動かしてシンセサイザーを消滅させ、反転してコンサートホールの出口へ駆ける! 人喰いピアノの体内で眠るアリスを助け出すべく!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
中村・裕美
(……世界を道連れにしようとしないあたり、優しい子よね)
そんなことを思いつつも
(今回この子を助けるのは私じゃない。任せたわお節介焼き)
そう言ってシルヴァーナに人格を切り替え
『わたくし・名前+~さん・お嬢様口調』
ヘッドホン『竜角』で音を遮断してUCに備えるが、それでも聞こえるなら鼓膜を部位破壊。どうせ後で治せる
敵の近くまで接近したら【瞬きの殺人鬼】で能力を上げ【早業】による惨殺ナイフ二刀流で攻撃し、その動きを気を取られているうちに踵落としなど足技で鍵盤を【部位破壊】、あとは切り裂くなり蹴り上げるなどして中のアリスを出せないか試みる
「まず第一段階。……次まで少し休みますわ」
時間切れたら裕美に交代
空亡・柚希
一人称:僕
二人称:君、あなた
三人称:あの子、あの人
呼び方:〜さん
(手で自分の頭や顔を触ることや、声を荒げることがほぼない
何かあるとこめかみの代わりに手首を押さえるのが癖)
……う、甘い匂いで目が回りそう
あの像は気になるけれど、正体はアリスの子が知っているのかな
調律、修理。やることは変わらない
全体を醜く変える異物(オブリビオン)を取り除く
戦闘音に隠れるようにHeartlessを発動
誘導弾を別方向から向かわせ、時間をずらして奇襲、そこから距離を保って攻撃していきたい
破損箇所に銃口を向けてよく狙い、傷口をえぐるように命中率重視
攻撃の予備動作に勘づければ、客席や周囲を遮蔽物にして威力を減らせるように行動
thooooooom……! 遠くから聞こえる反響を聞き、レジニアは暗闇の中で顔を上げた。
周囲は相変わらず真っ暗で、体育座りした尻の下は湿った熱を帯びた舌。だが、闇の中に響いていた物悲しいメロディが―――子守歌めいてレジニアを無気力と諦観の眠りに導くピアノの音が消えている。
「…………?」
ぼんやりした表情のまま、レジニアは闇を見上げ続けた。
GRANG! GRANG! GRANG! 騒音をまき散らしながら、人喰いピアノはチョコの街道を飛び跳ねて逃げる。時折、カエルじみて伸ばした舌で道端に立つ女性のチョコ像を捕らえ、貪り喰った。
「ARRRRRRRRRRGH……!」
大屋根の中から地獄めいた呻き声を響かせた。元は愉快な仲間たち―――不思議の国の住人であった頃の残滓、僅かに残った邪悪な知性が冷めきらぬ苛立ちを訴える。己の歌を掻き消され、あまつさえ殴られるなど! 屈辱の極み!
「GARANNNNGGGGGGG!」
鍵盤から荒っぽいサウンドをまき散らしながら、街を不格好に飛び跳ねて行く人喰いピアノ。その数メートル後方を追跡するのは新手の猟兵二人組! そのうち、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)がうっそりと呟く。
「……出遅れた、と思ったけど……ちょうどよかった……」
「塞翁が馬と言ったところかな。転移してすぐ目の前を走ってるとは。それにしても……」
裕美に応えながら、二人組のもう片方である空亡・柚希(玩具修理者・f02700)は左手首をぎゅっと握った。服の袖口から赤茶けた錆が零れ、ぎしぎしと微かな異音が漏れ聞こえてくる。柚希の顔は乗り物酔いめいて青白い。
「……う、甘い匂いで目が回りそう……」
どろどろに溶け崩れ、見えない手に弄ばれるスライムじみて形を変えるチョコレートの街。甘ったるく粘ついた匂いが鼻孔にへばりつき、ジワジワと侵食する。眉根を寄せて吐き気を堪える柚希に、裕美は大きめのドリンク缶を投げ渡した。
「……よかったら」
「ああ、ありがとう裕美さん。けど、とりあえず大丈夫」
柚希は受け取ったドリンク缶をコートの内ポケットに滑り込ませる。その前方では、人喰いピアノの長く伸びた舌が行きずりのチョコレート像を絡めとり、大きく空中に跳ね上げてから一飲みにした。柚希はそれを注意深く観察して言う。
「あの像は気になるけれど、正体はアリスの子が知っているのかな」
「……どうかな……聞いてみれば……わかるかも……。……とりあえず、助けるのが、先……」
裕美は返すと、腰に釣ったヘッドホンをつかんで頭上に持ち上げる。アーチを描くバンド部分に竜の角をあしらったそれを装着。瓶底眼鏡の奥で目を閉じ、囚われたアリスに想いを馳せた。
(……世界を道連れにしようとしないあたり、優しい子よね)
(でも、今回この子を助けるのは私じゃない。任せたわお節介焼き)
直後、なびく裕美の長髪が真っ白に変色! 瓶底眼鏡を外した瞳は、鮮血めいた純粋な赤。彼女の変化に気づいた柚希が視線を寄越す。二重人格! 彼は瞬時に事情を察し、問う。
「裕美さん、ではないのかな。なんて呼べばいい?」
「シルヴァーナ。そう呼んでいただければ幸いですわ、柚希さん。ここから先は、裕美に変わってわたくしがご一緒致します。援護を!」
「わかった」
柚希が頷いた刹那、シルヴァーナが姿を掻き消す! 一拍遅れて吹き荒ぶ突風が柚希の髪をもてあそんだ次の瞬間、人喰いピアノの目前にシルヴァーナが姿を現した! 人喰いピアノがぎょっと鍵盤を打ち鳴らす!
「GARANG!?」
「ごきげんよう、ピアノさん。そしてさようなら!」
ナイフ二刀流の高速斬撃が人喰いピアノに襲いかかった! SLALALALALALALALALALALALALALALA! 突如の襲撃に泡を食ったピアノは全体を切り裂かれながらもブレーキをかける! だが遅い!
「シッ!」
シルヴァーナのかかと落としが人喰いピアノの鍵盤中央部分を粉砕! 折れた歯の如く白い破片を周囲に散らし、人喰いピアノは大屋根を跳ね上げた! そして極大の絶叫を解き放つ!
「GYAAAAAAAAAAAARGH!」
空気が波打って激震し、クロスガード体勢を取るシルヴァーナを打ち据えた! シルヴァーナは胃袋を激しくシェイクされるような感覚を味わいながらもこれに耐える! 人喰いピアノは音波を放射した勢いのまま急速バック!
「柚希さんっ!」
シルヴァーナの声を打ち消すピアノの音波。だが柚希は既に動いていた! 両手を黒手袋を外し、赤錆びた鋼の義手を外気にさらす。彼は砲弾じみた速度で飛んでくる人喰いピアノに両手の平を突き出した!
「あまり多様したくはないけど……仕方ないか」
ギゴゴゴゴゴ! 柚希の両手の平が左右に開き、銃口が迫り出す。人喰いピアノはシルヴァーナに気を取られている。BOMBOMB! 柚希は錆びたマイクロミサイルを空中に射出し、低姿勢ダッシュで人喰いピアノの真下に潜る!
「よっと!」
前転から上下反転し、ピアノの底にスプリングキック! SMAAAAASH! 真下から予期せぬ一撃を食らい真上に跳ね飛ぶ人喰いピアノ! その大屋根の中に花火じみた光を引いた二発の誘導弾が飛び込み、BOOOOOOOM!
「ARRRRRRRRRRRRRRRRGH!」
口から爆煙を吐いた人喰いピアノが尻餅を突くように落下し、バウンドを数度繰り返す。片膝立ちで振り返った柚希はさらに二発の玩具ミサイルを発射! 突風じみた速度で駆けるシルヴァーナがそれらを追い越し、ピアノへと斬りかかった!
「アリスを吐きなさい!」
二刀ナイフの刺突が人喰いピアノに突き刺さる! シルヴァーナは両腕に力を込めてピアノを持ち上げ、フロントスープレックスめいて背後に振り下ろした! CRAAAAASH! 衝撃で跳ねた人喰いピアノの口にミサイルがダイブし爆発!
「GAAAAAAAAAARRRRRRRGH!」
「ふっ!」
シルヴァーナは上体をぶん回して人喰いピアノをチョコの家に投げつけた! グランドピアノの巨体はドロドロと変容するチョコ家屋の壁を突き破って屋内へ! 同じくチョコレートで出来た家具を蹂躙しながら暖炉に激突!
「ARRRRRRGH!」
人喰いピアノは大屋根を開いて舌を伸ばし、家の中身をベロリと舐める。さらにチョコレートのパイプオルガンに向かうチョコ像を捕食! 残った鍵盤を上下させて拙い音楽を奏でだす!
「まだまだ……!」
急加速したシルヴァーナが家屋に突っ込み飛び蹴りを人喰いピアノに叩き込む! チョコ暖炉ごと壁を粉砕して家から蹴り出される人喰いピアノ! 上空、ジャンプでチョコの家を飛び越えた柚希が両手の平からミサイル射出!
「着弾まで、3、2、1……今っ! シルヴァーナさん!」
砕けた鍵盤にミサイルが着弾爆発した瞬間、家屋から飛び出したシルヴァーナは跳躍しながら高速側転! 身を揺すって爆煙を振り払う人喰いピアノの大屋根に、ダイビングキックを繰り出した! CRASH! ピアノ真下の地面が砕ける!
「ARRRRRRRGH……!」
人喰いピアノが焦ったように旋律を鳴らす。シルヴァーナはバク宙からの蹴り上げでグランドピアノを蹴り飛ばした! 宙を舞う巨体! シルヴァーナは追撃すべく跳躍予備動作を取るが、折り曲げた膝が震えて動けぬ。活動限界が近い!
「足が……! 柚希さん、追撃を!」
「わかった!」
シルヴァーナの前に着地した柚希が上着を跳ね上げ、両腰のホルスターから拳銃を引き抜いて人喰いピアノに連続発砲! BLAMBLAMBLAMBLAM! 鉛弾がピアノの底に生まれた亀裂を的確に穿ち、木屑を散らした。
「GRARARARANG……GRARARARANG……!」
銃撃を受けながら、人喰いピアノは残った鍵盤をフル稼働させて曲を奏でる。音階が足りず、攻撃的な音楽はもはや出せない。だがピアノの全体から湧き上がる白い煙が―――ゴーストの霧が大屋根の中へ雪崩れ込む! 柚希は眦を吊り上げた!
「何をするつもりかは知らないけど、やらせない。砕かせてもらうよ!」
柚希は宣告し、人喰いピアノめがけてハイジャンプ! ピアノがまとうゴーストの霧が一部柚希に向かって伸びあがり、少女の上半身を複数かたどる。物悲しいハミングを歌いながら手を伸ばすアリスのゴーストたちに回転銃撃!
「どいて!」
BLAMBLAMBLAMBLAM! 乱れ飛ぶ鉛弾に眉間を貫かれ、アリスゴーストが次々に消滅! 柚希は拳銃を人差し指に引っ掛けて回し、両手をそれぞれ空中と地上にかざしてミサイルを撃つ! 対角線を描く錆びた弾頭!
「シルヴァーナさん!」
「ええ、ええ。まだ、終わってませんもの……!」
己に強いて立ち上がったシルヴァーナが、空対地ミサイルめがけて跳躍! 弾頭を蹴って二段ジャンプした彼女を、柚希はフィギュアスケートのパートナーめいてキャッチ! 一回転して空中へ放る! 亡霊たちがシルヴァーナに殺到していく!
「させない!」
人差し指に回したままの拳銃をつかみ、柚希はゴーストたちを次々と撃ち抜く! 切り開かれた空の道で前方回転したシルヴァーナは二発目のミサイルに着地、三段目のジャンプを決めた。人喰いピアノよりも高く、空へ!
「あなたの演奏もこれにて終幕。特等席のアリスを返して頂きますわ!」
シルヴァーナは右手のナイフを掲げ、高速縦回転しながら人喰いピアノへ急降下! 演奏を続けながらゴーストを吸い込み続ける人喰いピアノとすれ違い―――SLAAASH! 真っ二つに裂かれたピアノの間から少女が落下!
「柚希さん! 受け止めてくださいまし!」
「わかってる!」
シルヴァーナが叫ぶより速く地を蹴り、柚希が少女の落下点に走る! 白い煙の尾を引き、死んだように目を閉じた少女が地に叩きつけられる寸前でスライディング! 受け止めた! 少し遅れて墜落したピアノの残骸が砕け散る!
「……ふぅ」
尻餅を突いたような体勢で一息つき、柚希は少女の前髪を払った。顔色は悪いが、服装は事前に聞かされていたものと一致する。彼女がレジニア。絶望の果てにオウガに囚われたアリスだ。
「うん、怪我はしてない。ちゃんと生きてる……」
レジニアの背中を支える錆びた義手。赤黒く染まったそれに伝わる鼓動を感じ、柚希は立ち上がった。少し離れた場所に着地したシルヴァーナへと駆け寄っていく。
「シルヴァーナさん、無事かい?」
「ダメージは……受けていませんけれど……」
片膝立ちの体勢でうずくまったシルヴァーナが呻くように応える。視界はぼやけ、体は動かぬ。一次的に力を解放した代償だ。シルヴァーナはぎこちなく振り返り、柚希の腕に抱えられたレジニアを見て微笑んだ。
「まず第一段階。……次まで少し休みますわ」
糸の切れた人形めいてガクンとうなだれるシルヴァーナ。彼女の白髪に黒い波紋が広がり、元の黒髪へと戻った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『アリスの板チョコ工場!?』
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POW : パワーで破壊しつくす
SPD : 素早く犠牲者を助け出す
WIZ : 機械を操作して止める
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●お知らせ
・第二章に移行します。
・絶望の国を支配していたオウガ『人喰いピアノ』は滅されました。しかし、チョコレートの市街は変容し、国が丸ごとチョコレートで出来た巨大な工場に変化してしまいました。
・工場はレジニアを板チョコに加工し、次なるオウガの餌とすべく牙を剥きます。レジニアを守り、彼女の扉まで連れて行ってあげてください。
・工場のいたるところには、女性のチョコレート像がいくつも存在し、これがレジニアを奪うべく襲いかかって来ます。レジニアが絶望している限り無限に湧いて出てくるようです。
・プレイングボーナスは『レジニアの絶望を暴くこと』です。彼女が何に絶望し、何故人喰いピアノに食われることを選んだのかがわかれば、突破の鍵になるかもしれません。
・ここからの参加もOKです。プレイングをお待ちしております。
シキ・ラジル
『アタシ・キミ・名前+さん、名前+ちゃん』
キーさん(f20914)呼ぶよ!
やっとあのピアノぶっ飛ばしたと思ったら今度は何っ!?
んもー不思議の国ってみんなこうなの?アタシわかんない!!という訳でへるぷみー!おんなじアリスなら分かるでしょキーさん!(無茶振り)
とりあえずレジニアちゃんを狙ってるみたいだから守るよ!UC発動からのミニシキちゃんずカモン!いつもの如く「衝撃波」「なぎ払い」で襲ってくる奴吹っ飛ばすね。ミニシキちゃん達にはこう、左右と後ろを守ってもらうよ
ところでさっきから女の人ばっかり来るの何でだろ…もしかして、お母さん?あっ話したくなかったらいいよ!でもでも、何かあると思うの
キーシクス・ジェンダート
『私・キミ、敵には貴様・名前呼び捨て』
シキ(f11241)に呼ばれて
事情は大体把握した…困ったら呼んでくれ、とは言ったけども…理由がざっくらばんだなキミは!いや、少しは力になれると思うけども
苦笑しつつ、レジニアにも軽く挨拶
…はぁ、しつこい連中がいるようだ。「高速詠唱」からUCを発動し、寄って来る敵を優先に刃を「一斉発射」
工場施設は襲いかかる機械をトラピッチェで「スナイパー」で撃ち抜いていく
戦闘中のレジニアの様子を見て、もし女性の像を破壊した際に辛そうな表情を見せれば戦闘時は彼女の目を隠すように
すまない、辛いものを見せたね…あれは敵だ、それは忘れないで
そういえば、キミは記憶は取り戻してるのかな
ケイティ・ネクスト
「にゃんだおめー、元気無いにゃ。猫でも撫でて落ち着くにゃぁ」
9割猫モードでにゃんにゃんごろごろ。
「猫は母親なんて居なかったにゃ。居た事は居たんだろうけど……猫は、最後の一匹だから」
猫は組織最後の生き残り。ま、あんな組織なんて潰れて当然だし、潰した奴には感謝だけど。
「そーゆー、シリアスな話は置いとくにゃ。でもまあ、にゃんか結局チョコレート襲ってくる感じらしいし……ぷりーず、ヘルプミー!」
猫自身もよく分かんにゃいけど、こーやって叫ぶと援護猫が現れて敵が勝手にズタボロになるにゃ。
「ごろにゃーん、悲しい事は置いとくにゃん」
忘れられなくても、仕舞うだけで大分違うから。
中村・裕美
再びシルヴァーナとして参加
レジニアの絶望……予知だと母性を求めているというけど、そのあたりをうまく聞き出したいところ
「お茶もなくチョコレートばかりだと胸焼けしてしまいますわね。早いところお家へ帰ったほうがいいかもしれないですわ」
帰りたくないようであれば、そこから【情報収集】。シルヴァーナは相手を【精神攻撃】で煽るのが得意なので、その要領で相手の心の脆弱な部分、絶望を見つけられると思う
チョコレートを生み出す機械などはドラゴンランスを投擲して【串刺し】からの【ドラゴニックエンド】で停止させる。チョコレートの女性はナイフで追い払いつつ
「この女性の姿、心当たりあるかしら?」
もしかして、母親の姿かしら?
空亡・柚希
機械が何かしら害を加えてくるようなら対処を試みる、けど。問題はあの女性の像だ
レジニアさん。見覚え、ない?
無気力の原因を自分で言葉にできるなら、そこからの戻り方も掴めるかな
手伝いになれるよう、思い出せる範囲のものを聞いていく
(……母、かぁ。見てもらえないのか、それとも)(自分の記憶内でかなり朧気の母親像に眉根を寄せる)
工場の音と混同されたくないし、義手の方は必要な時以外静かにしていて欲しいかな(Mute使用)
避けられない時やレジニアさんが危険な時など、機械には〈誘導弾〉を挟んで錆を広げ誤作動、停止を誘発
話している人達の邪魔されないようにしつつ進もうか
(これまでのあらすじ:人喰いピアノを破壊し、アリスの少女レジニアを救出した猟兵たち。しかし直後、絶望の国は形を変え、チョコレートで出来た巨大な板チョコ工場に変化した! レジニアを元の世界に帰すべく走る猟兵たちに、国そのものが牙を剥く!)
巨大なチョコレートキューブ状の工場と化した絶望の国、その内部! 煮えたぎるチョコレートの海直上にかけられた一本橋を、シルヴァーナが風めいて一気に駆ける!
人一人分の幅しかないチョコの道。反対からは女性チョコ像が一列になって押し寄せてくる。広大な、しかしダークブラウン一色の空間内に響くのは、音程を大きく外したホラー調のピアノ独奏曲とノイズ混じりの女性声!
『チョコレー……ガガッ……が入っちゃ駄目なの…………ガガガッ……邪魔…………ガガッ』
「あらあら、お怒りのようですわね?」
シルヴァーナは耳障りなサウンドにコメントし、彼我の距離数メートルにまで迫った女性チョコ像に右手のナイフを投げつける! THROW! 一直線に飛翔した刃はチョコ像の眉間に突き刺さった! シルヴァーナは加速する!
「通して頂きますわ!」
のけ反るチョコ像の胴を駆け上がって再跳躍、左手のナイフを投擲! 間を空けて駆け寄ってきた二体目のチョコ像の喉笛に命中! シルヴァーナは着地と同時、後ろ手に一体目の眉間からナイフを引き抜く!
「御免あそばせ!」
チョコ橋を蹴り、二体目に回し蹴りを決めナイフ回収! 沸騰チョコ海に落下する二体目に構わず、長大なヘラを振り上げて迫って来た三体目の首を回転斬撃で斬り飛ばした! クリアだ。すぐ奥に扉が見える。シルヴァーナは振り返った。
「柚希さん、ご無事?」
「すまない、シルヴァーナさん。助かった」
転がるチョコ像を飛び越え、柚希がシルヴァーナの後を追ってきた。背中には、糸の切れた人形めいて脱力するレジニアが背負われている。柚希の背中に右頬をつけ、疲れたような無表情。枯れきった瞳に光は無い。
柚希はレジニアの膝下を通した左手首をつかんで顔をしかめた。
「けほっ……。熱いし、匂いがいい加減きつい。早く出よう」
「同感ですわ。地獄には煮えたぎる瀝青の泉があると言いますが……案外、瀝青ではなくチョコレートなのかもしれませんわね」
肩をすくめたシルヴァーナは、右腕を閃かせる。SLALALALASH! チョコレートの扉に無数の銀閃が走り、一瞬でバラバラに破壊した。
「ともかく出ましょう。あまり長居はできませんもの」
「そうだね。でも、ちょっと待ってもらえるかい」
そう言って、柚希はおぶったレジニアを揺する。
「レジニアさん。ひとつ、聞いていいかな」
無言で顔を少し動かし、レジニアは肩越しに見返る柚希を一瞥。一応のリアクションを見た柚希は、顎で足元を―――首を切断されたチョコ像を示した。レジニアの目蓋が、胴体と泣き分かれた頭部を見てぴくりと動く。
「この、チョコで出来た女の人の像なんだけど。見覚え、ない?」
「しらない」
レジニアは即答する。その言葉に含んだトゲを、柚希は聞き逃さなかった。レジニアは柚希の背中に顔を押し当て、ぶつぶつと繰り返す。
「……しらない。しらないもん。……しらない、しらない……」
連呼の声が小さくなっていき、やがて途絶える。柚希は沈痛な面持ちでレジニアを見、女性の像に視線を移した。チョコの像は湧き上がる熱気にやられ、表面が照り出している。もう十数分放っておけば、完全に液化するだろう。
「行こう」
「ええ」
踵を返したシルヴァーナと共に、柚希は開いた扉に駆けこんでいく。レジニアは足音と揺れを感じながら、もはや顧みられぬ女性のチョコ像を見返った。灼熱湯煎チョコ空間に置き去られた人形の頭部が、じっとレジニアを見つめている。
(……しらない。しらない……)
レジニアは自分にそう言い聞かせ、柚希の背中に頬をうずめた。閉じた目蓋の裏側にパチパチと色とりどりの火花が弾け、ピアノを弾く女性の輪郭を描き出す。耳にこびりついた旋律と、鼻の奥に溜まる甘い香りが不快だった。
◆
レジニアの母は優しかった。ピアノとお菓子作りが好きで、日曜の午後にはお茶とチョコケーキをふるまってくれる。市販の板チョコを溶かしてつやつやのケーキに作り替え、レジニアがそれを食べてる間はピアノを弾いた。
よく晴れたあたたかい日に食べるおやつと、優しい音色のトルコ行進曲をレジニアは好いた。母が綺麗な指を駆使して作り出すものが好きだった。レジニアにとって、母は素敵な魔法使いだったのだ。
レジニアの手にかかる、その時までは。
◆
「レジニアさん……!」
柚希の声が茫洋と漂っていたレジニアの意識を引き戻す。低姿勢で全力疾走する彼の足元は、高速で流れるチョコ・コンベアー。後方には超巨大なチョコプレス機が一定のリズムで上下し、流されてくる者を押し潰さんとする!
「レジニアさん、しっかりつかまって。両手を使いたい……!」
コンベアーに流されまいとしながら柚希が訴えた。レジニアの両腕は彼の双肩からだらりと垂れ下がるだけで、柚希が支えなければ落下するような状態。前方では大挙して押し寄せるチョコ像をシルヴァーナが凄まじい速度で狩り続けている!
「ふっ、はっ!」
ナイフの二刀流を閃かせ、覆い被さらんとするチョコ像をX字に斬り捨て破壊! 横薙ぎ、逆手に持ち替えての首斬り、斜めにスプリントしてのハサミじみた一撃! 一瞬でも足を止めればコンベアーに押し流される。走りながらの迎撃!
「柚希さん……! あまり長くは保ちませんわ!」
「わかってる……わかってるけど……!」
柚希は頬に焦燥の汗を垂らしながらレジニアを見た。だがアリスの少女は無言のまま、魂が抜けたように動かない。柚希の支えが無くなれば、彼女は黙って落下しプレス機に潰されるだろう! しかしレジニアは無反応!
「くっ……!」
柚希は歯噛みし、広大な横幅を持つチョココンベアーの左右を一瞥。コンベアーは高いチョコの断崖に挟まれ、その上にクランクを回すチョコ像がそれぞれ数体見える。あれがコンベアーかプレス機を動かすギミックなのは明らかだ!
(せめて一瞬、手が使えれば……!)
柚希は左手首を握りしめる。ミサイルをチョコ像が動かすクランクかプレス機に当てれば、昨日不全に追い込む自信がある。だが両手を広げれば間違いなくレジニアは落ちる! 彼女はもはや自分の死にすら無関心。黙ってプレスされるだろう!
(レジニアさんはまだ十といくつぐらいの年齢のはず。それが死もいとわなくなるほど絶望する理由……)
柚希の瞳が、シルヴァーナに解体されてバラバラになるチョコ像をじっと見つめた。ミーティング時の情報、そしてレジニアが示した先の反応からして、モデルとなった人物に予想はつく。
(……母、かぁ。見てもらえないのか、それとも……)
眉根を寄せた柚希の視界に一瞬白い靄がかかった。霧の奥にぼんやり見えるシルエット。不意に蘇った母の記憶は、凄まじく朧気だ。柚希は首を振ってイメージを打ち消す。
(いや、今はそれどころじゃないか。とにかく、レジニアさんの安全をどうにか確保して、この機械を止めなきゃ……!)
マグロめいて疾駆しながらチョコ像を食い止め続けるシルヴァーナ。既に息は上がり、額に銀の髪が貼りついている。本人の申告通り、長くは保つまい! 柚希が打開策を探すべく、周囲に目を走らせた―――その時である!
「イニャーッ!」
CRAAASH! チョコの天井が砕けて風穴が空いた。人間大の穴から飛び込んで来たのはケイティ! ドリルめいて回転しながらチョコ像の群れ中央に突っ込み、軍勢を四方八方に弾き飛ばす!
「うにゃあーッ! エントリーした先がチョコまみれとか洒落にならんにゃーっ! ぶっ飛ぶにゃ! イニャーッ!」
軸足でコンベアーを抉りながらの全方位回転キック! 多数のチョコ像上半身を爆砕しながら流れてくるケイティを前に、シルヴァーナは目を見開いた。ケイティはシルヴァーナに蹴りが当たる寸前で回転ジャンプ! シルヴァーナが誰何する!
「あなたは!?」
「猫だにゃ! おめーらも猟兵だにゃ? 大変そうだから助太刀してやるにゃ!」
空中で身をひねったケイティはシルヴァーナの隣に着地、並走しながら頭上の穴を振り仰いだ。
「シキちゃ―――ん! へるぷみーにゃ! 猫だけチョコに送り込むのはナシだにゃーっ!」
「わかってる、わかってるけどーっ!」
穴から覗き、声を返したシキは内部の様子を見て顔をしかめる。超大型の高速ベルトコンベア。大型プレス機。プレス機近くにアリスらしき少女を背負った猟兵。その前方十数メートル先にはチョコ像の大群。シキは背中を反らして頭を抱える。
「だーっ! やっとあのピアノぶっ飛ばしたと思ったら今度は何っ!? んもー不思議の国ってみんなこうなの? アタシわかんない! おんなじアリスなら分かるでしょキーさん!」
「無茶を言ってくれるな……」
穴を挟んでシキの対面、キーシクス・ジェンダート(翡翠の魔人・f20914)が首を振った。シキは膝立ちの姿勢で食ってかかる。
「なんでよ! 不思議の国のアリスでしょ!? じゃあ何かこう、なんかない!? なんか出来ると思って呼んだんだけど!」
「困ったら呼んでくれとは言ったけども理由がざっくらばんだなキミは! いや、少しは力になれると思うけども!」
キーシクスは溜め息を吐いて立ち上がる。猟銃を背中に固定したベルトを正し、コンベアを見つめて大まかなアクションをイメージ。
「ともかく事情は大体把握した。とにかく降りよう。こうしていても始まらない」
「おっけっ! 行くよ、ミニシキちゃんズ!」
軽く跳んで身を躍らせるキーシクスに続き、シキ人形を引き連れたシキも工場へとダイブした。その直下ではケイティが前後反転し柚希の下まで猛ダッシュ! コンベアの速度を乗算して一気に近づいていく!
「すまない、この子を頼めるか……!」
「猫に任すにゃ!」
「頼む。レジニアさん、舌を噛まないように……!」
柚希は背負っていたレジニアを横抱きにし、すぐ目の前まで来たケイティに投げ渡して垂直ジャンプ! 空中で横回転して天井近く、プレスマシンを吊り下げる支柱の根元に両手を突き出す! 錆びた義手の手の平が左右に開いて弾頭露出!
「止まれ……!」
錆びたミニミサイル二発を発射! 赤錆色の硝煙を引いて飛翔した玩具の誘導弾は狙い違わずプレス機の根元に命中して爆発した! BOOOOOM! ギゴッ、ゴゴゴゴゴッ、ギゴン! 不気味な軋みを上げてプレス機の動きが精彩を欠く!
「よし、もう一度……!」
弾頭を再装填、射出! 再度のミサイル狙撃の爆発を受けたプレス機は、凄まじい異音と共に稼働を止めた。他方、チョコ人形を縦に一閃したシルヴァーナはハイジャンプして身を反らす! シキの射線が開けた!
「お願いしますわ!」
「シキちゃんにおっまかせーっ! さあ行くよミニシキちゃんズ! まとめてふっ飛ばしちゃえ―――っ!」
シキが走りながら右拳を突き上げる! 彼女の前に横一列にならんだ小型シキ人形は一斉に息を吸い込み、破壊音波を繰り出した! 甲高い音の波動が嵐めいてチョコ像を襲い、粉砕して吹き飛ばす! シキは輝く笑顔でガッツポーズ!
「いぇーいっ!」
「お見事ですわ」
空中で小さく讃えたシルヴァーナは、手にした漆黒の槍をジャベリンめいて振りかぶった。狙いはコンベアーの左側、クランクを回し続けるチョコ像たち!
「天から下る、覇空の竜よ!」
黒く発火する槍を投げ放つシルヴァーナ! 一直線に急降下した槍はチョコ像列の中央に直撃し、漆黒の爆炎を吹き上げる! CABOOOOOOM! 天井付近まで上がった黒炎を破って現れる巨大な竜が、吠えながら爪でチョコ像を蹂躙!
「GOAAAAAAAAAAARGH!」
黒竜の咆哮が木霊する。左半分のクランクが破壊されていくと共にベルトコンベアーは速度を落としていく。疾走の速度を緩めたキーシクスは、コンベアー右側に背負った狙撃銃の銃口を向けた。
「なるほど。あそこでせっせとクランク回してこれを動かしてたってわけか」
スコープを覗き込み、チョコ像の一体に照準を合わせて引き金に指を引っかける。銃口の先に翡翠色の魔法陣が開かれた!
「いい加減落ち着いて話したいんだ。止めてもらうぞ!」
BLAMN! 魔法陣が光り、銃声と共にチョコ像の頭が吹き飛んだ! キーシクスは続けてもう一射打ち込みクランクを破壊! チョコ像とクランクを交互に狙撃し打ち砕いていく! 徐々に速度を落とし、小走り程度になるコンベア!
「もう少し!」
レバーを引いてリロードし、さらに追撃! 翡翠色に輝く魔法陣から放たれる光線が、最後のチョコ像の頭部を吹き飛ばした! ベルトコンベア完全停止! 柚希からレジニアを受け取り、走っていたケイティが足を止めて汗を拭く。
「ふいー! ようやく止まったかにゃ。猫が潰されてチョコになるなんて笑えないにゃ。おめーも無事だにゃ?」
腕の中のレジニアを見下ろすケイティ。しかしレジニアは痛みをこらえるような表情で身を硬くし、黙りこくるばかり。ケイティは首を傾げると、レジニアの右手を取って自分の頭の上に置かせた。
「にゃんだおめー、元気無いにゃ。猫でも撫でて落ち着くにゃぁ」
レジニアの手を動かし、自分を撫でさせる。レジニアは頑なに目を合わせず、うつむき気味にじっと動かぬ。ケイティが不思議そうに喉を鳴らすとチョコ像を片付けた面々が周囲に寄って来た。キーシクスが銃を肩にかけながら辺りを見回す。
「さて、一通り片付いたかな。いきなり合流して驚かせただろうし、ひとまず挨拶から」
キーシクスは片手を胸元に当て、やや苦笑気味にレジニアに自己紹介した。
「初めまして、レジニア。私はキーシクス・ジェンダート。……まぁ、なんだ。私もアリスだ。力にはなれると思うから、どうぞよろしく」
「助かった。僕らだけじゃ手が足りなかったから」
義手の手首を押さえた柚希が柔らかな笑顔で礼を言う。キーシクスは軽く笑うと、シキを視線で促した。きょとんと目を丸くしたシキがキーシクスの意図に気づいた瞬間、工場内に不気味なピアノの調べが響いた。ディエス・イラエ!
「……あ、なんかヤバそうな予感!」
天井を見上げたシキが言い、背後を振り返った。長く続くベルトコンベアーの向こうから、大挙して歩いてくる無数のチョコ像! さらに左右のクランクがあった場所、僅かに下がりかけた状態で止まったプレス機の奥にも敵影多数!
「……はぁ、しつこい連中がいるようだ。落ち着いて立ち話も出来ない」
「キーさん、前お願い! 横と後ろはアタシがやるから!」
キーシクスが掲げた右手が、翡翠に光る竜巻をまとう! 退魔の光を宿した風の刃だ! レジニアを守るようにシキ人形を展開したシキは、ふとレジニアを振り返った。
「ところでさっきから女の人ばっかり来るの何でだろ……もしかして、お母さん?あっ話したくなかったらいいよ! でもでも、何かあると思うの」
「ええ。何かあるはずですわ。そうでしょう? レジニア」
シルヴァーナが言い、鋭い視線をレジニアに向けた。びくりと身を震わせるアリスの少女に、シルヴァーナは足元に転がったチョコ像の頭をつかんで掲げて見せる。両腕を斬り落とされた残骸を!
「もう一度聞きますわ。この女性の姿、心当たりあるかしら? もしかして、母親の姿ではなくて?」
シルヴァーナの問いかけに、レジニアは口ごもりながら目を逸らす。シルヴァーナは赤い瞳で少女の表情を見つめる。その視界に、キーシクスが割り込んだ。シルヴァーナを目でいさめ、レジニアに目配せ。
「すまない、辛いものを見せたね……あれは敵だ、それは忘れないで。そういえば、キミは記憶は取り戻してるのかな」
「はいはい、そーゆーシリアスな話は置いとくにゃ。でもまあ、にゃんか結局チョコレート襲ってくる感じらしいし……ぷりーず、ヘルプミー!」
ケイティが叫ぶと同時、プレス機の上から大量の猫が飛び降りてくる! どこからともなく現れた猫たちは面食らう仲間たちの足元を駆け抜け、四方から襲い来るチョコ像の軍勢に襲撃を仕掛けた! 柚希が困惑!
「猫!? 一体どこから……!」
「知らんにゃ。ほれほれ、いいから戦うにゃ。こいつは猫が見ててやるからにゃ」
ひらひらと片手を振るケイティ。気を取り直してチョコ像に対する四人を見送り、彼女はレジニアを揺すりつつ小声で話しかける。
「……猫は母親なんて居なかったにゃ。居た事は居たんだろうけど……猫は、最後の一匹だから。ま、あんな組織なんて潰れて当然だし、潰した奴には感謝だけど」
レジニアはケイティの独白を黙って聞いていたが、やがて唇を小さく動かした。
「……のに」
「んにゃ?」
「……ママなんて、いなければよかったのに。いなければ……こんな、苦しくないのに……」
ケイティはレジニアを見下ろした。猫たちの鳴き声や銃声、破砕音などが遠い。ケイティは朗らかに笑って見せると、レジニアの顔に頬ずりをした。
「ごろにゃーん、悲しい事は置いとくにゃん。忘れられなくても、仕舞うだけで大分違うから」
喉を鳴らすケイティ。レジニアはされるがままに任せながら、僅かにうるんだ目を細めた。
大成功
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第3章 集団戦
『『偽アリス』アリーチェ』
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POW : ミルクセーキはいかが?
【怪しげな薬瓶】が命中した対象に対し、高威力高命中の【腐った卵と牛乳で作ったミルクセーキ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 甘いおねだり
レベル×1tまでの対象の【胸ぐら】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
WIZ : お茶を楽しみましょ?
【頑丈なティーポット】から【強酸性の煮え滾る熱湯】を放ち、【水膨れするような火傷】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:ちびのしま
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
◆
ある日のこと。レジニアは家の中を落ち着きなく歩き回っていた。
午後二時を回った昼下がり。いつもなら、母がお菓子を作る時間だ。
レジニアの母はチョコレートを作ったお菓子作りが得意だ。ただの板チョコが、母の手にかかればテディベアやうずらや魚に姿を変える。それらがジオラマめいて飾られたケーキを食べるのが、レジニアの一番の楽しみだった。
だが、その日母はいなかった。いつも一緒にいて、昼食を摂って、一緒にお八つ時を待ってくれるはずが、朝から姿を消していたのだ。妙な胸騒ぎに突き動かされ、しかし具体的な行動もとれないレジニアの耳に、玄関のチャイムが飛び込んで来た。
そこからのことは曖昧だが、いくつかの光景は目に焼き付いている。男二人に家から引きずり出され、箱に押し込まれたこと。燃える家。開けっ放しの扉から流れ出す、赤みがかった色の溶けたチョコ。
そして何よりも。玄関先に置かれた、チョコレートの母親像。何かに溺れたのか、表情は苦悶に満ち、手を真上に伸ばしている。それを持ってきた男に手渡されたノコギリで、言われるままに首を切り始めると、傷口から赤黒い液体が―――。
それらが、チョコレートで出来た扉を前にレジニアが思い出したことの全てであった。
●お知らせ
・第三章に移行します。
・猟兵たちの問いかけにより、レジニアはぽつぽつと不思議の国に来る以前の記憶を語ります。
・物心ついたときに父は無く、母は死に、帰る場所を失ったレジニアは扉を潜ることを拒否。同時に、扉の近くで待ち構えていたオウガ『『偽アリス』アリーチェ』の群れがレジニアを食らうべく襲いかかって来ています。
・プレイングボーナスは『レジニアを守ること』、『レジニアを慰めること』です。
・執筆は人数がそろい次第随時始めて行きます。
シキ・ラジル
『アタシ・キミ・名前+さん、名前+ちゃん』
キーさん(f20914)と一緒に
…レジニアちゃん、お母さんのことは嫌い?…本当に?「コミュ力」でもうちょっとお話聞きたいな。
ここであんな連中に食べられるなんてアタシは認めないんだからねーっ!そんなの、レジニアちゃんのお母さんだって、きっと望んでない!
あーもう今大事な話してるのー!あいつらぶっ飛ばそう、キーさん!
UC発動、Electシリーズを起動して「パフォーマンス」「歌唱」から「衝撃波」「なぎ払い」でなるべく敵を遠くへ!レジニアちゃんにはお触り禁止ー!テンション上げたいから「楽器演奏」で明るい曲を流すよ!
前を向くのに時間はかかってもいいんだよ、大丈夫
キーシクス・ジェンダート
『私・キミ、敵には貴様・名前呼び捨て』
引き続きシキ(f11241)と共に
……そうか、そんなことが。話してくれてありがとう、思い出すのも辛かったろう…お母さんとの想い出は本当に辛いだけだったかい?…キミのお母さんはキミを愛しているよ。忘れたいかもしれないけれど、その事だけは覚えていて
…どうして?親としての勘かな。私は…まぁ、ダメな父親だけど
立ち塞がるなら全て撃ち抜く
「スナイパー」で敵の持つポットと瓶を優先的に破壊。投げる寸前なら仕方ない、腕を「呪殺弾」で撃って起動を逸らす。
UCを発動し「歌唱」「高速詠唱」で味方の傷を癒す。シキの奏でる音に乗せて、彼女の心が少しでも癒せるように「祈り」ながら。
中村・裕美
レジニアを引きずり出した男性二人、アサイラムの関係者であれば、いつか報いは受けていただきませんと
慰め
「母との思い出があるのは、羨ましいことですわ。つらい思い出を塞ぐために楽しかった思い出まで塞いでしまうのは悲しいことですわ」
シルヴァーナには裕美の頃からも母の記憶はない。だから、そうした思い出が失われるのを防ぎたい
「あなたのお母様はきっと、ここにいてくれますわ」
レジニアが一緒に料理やピアノをしたことがあるなら手、そうでないなら胸を指す
敵はUCで切り裂く。胸ぐらを掴まれるなら相手の指を【部位破壊】で切り落とすか自分の服を切り取って回避
「レジニアちゃんと違って、いいことに使いそうにない手ですわね」
空亡・柚希
あぁ、だから呼ばれたのがチョコレートの国で、コンサートホール。そして、あの像は……。
……答えてくれてありがとう。優しいお母さんがいたんだね。
いなければよかった……のは、本心じゃないように聞こえたな
忘れられなくてもいい、傷を塞ぐことはそれでもできる
……君たちは、邪魔しないで
扉の側から襲ってきた敵への迎撃には、Heartlessを使用
命中率重視で手から銃器を生やし、敵の彼女らをレジニアさんに近づけさせないように攻撃を加えていく
一体を撃って他を巻き込めるように、観察(〈視力〉〈スナイパー〉)しながら立ち回る
厄介なのは薬瓶かな
小さな的だけれど、目くらましも兼ねて途中で割るように積極的に狙っていく
ケイティ・ネクスト
「んにゃぁ、そりゃ勘違いではないかにゃ」
すっぱりばっさり言い切る。
「ママを殺したのがレジニアだと本気で思ってるにゃ? ……違うね、全然違う」
レジニアの近くで白っぽいスライムで攻撃を捌きながら守るにゃ。
「直接手を下したのが誰かなんて問題ですらない。猫は何人もこの手で殺して来た。でも、猫は誰も恨んでないし、恨まれる覚えもない。殺したのは、猫を雇った奴だ。結果的に殺したのは猫だけど、それは知った事じゃない……違うかにゃ?」
さっき呼び出した猫を一匹、レジニアに寄り添わせて。
「一人で生きられないってんなら、お供に付けてやるにゃ。一人じゃなければ生きられるにゃ。何処だろうと、猫は居る」
重い沈黙の帳が降りた回廊に、五人分の靴音が連続して沁みわたる。
板チョコ工場の罠を突破しきった猟兵たちは、五者五様の表情で無言。ぱたぱたと硬いチョコレートの床を叩く靴音を聞きながら、レジニアはケイティの背中にしがみついたまま目に涙をにじませた。
胸の奥でじくじくするのは、幻肢痛めいた過去の痛み。人喰いピアノとアリス・ゴーストから逃れ、ようやく見つけた扉の前で蘇った記憶がもたらす痛みだ。その全てを聞いた五人のうち、キーシクスはゆっくりと口を開く。
「……そうか、そんなことが……」
「あぁ、だから呼ばれたのがチョコレートの国で、コンサートホール。そして、あの像は……」
二の句を継ぎかけた柚希が言葉を切った。シキとシルヴァーナに半眼で見つめられた彼は、口を押さえる代わりに義手の手首を握りしめる。シキは走る速度をやや落とし、ケイティに並んだ。乾いたレジニアの瞳を覗き込み、小首を傾げる。
「……レジニアちゃん、お母さんのことは嫌い? ……本当に?」
レジニアは無言のまま、じっとシキの目を見返す。シキは目線を逸らさないまま問いを重ねた。
「さっき、いなければよかったのにって言ってたよね。本当にそう? お母さんがいなかった方がよかった……?」
「……だって」
小さく身じろぎしたレジニアが声を震わす。目の奥が熱くなり、枯れたはずの涙があふれる。レジニアはケイティの背中に目元を擦りつけながら言った。
「おかあさんさえいなかったら……こんなつらくなかったもん……。こんな思いするなら……最初から、いない方が……」
不意に、緑衣の手がレジニアの頭を撫でた。ケイティを挟んでシキの反対、同じく足並みをそろえたキーシクスがゆっくりとアリスの髪をかき混ぜる。
「話してくれてありがとう、思い出すのも辛かったろう……」
「ん……」
レジニアの閉じた目蓋の隙間から雫がこぼれる。失われた表情が少しずつ戻り始めた少女の横顔を尻目に、柚希は穏やかな微笑みを浮かべて謝辞を告げた。
「……答えてくれてありがとう。優しいお母さんがいたんだね」
「んー……話長くなるにゃ?」
レジニアを背負っていたケイティがむずがゆそうに身を揺すった。並走するシキとキーシクスへ交互に流し目をくれる。
「長くなるなら、おめーが背負った方がいいんじゃないかにゃ? 嫌ってわけじゃないけど、積もる話を猫が立ち聞きするのもなんだか違う気がするにゃ」
「あ、じゃあそうしちゃう? シルヴァーナさんと柚希さんはどう? お話ある?」
シキに呼びかけられ、シルヴァーナは僅かに振り返った。柚希と目配せをし、たおやかな微笑をシキたちに向ける。
「言いたいことはありますけれど、お二人に先んじられてしまいましたから。お先にどうぞ」
「じゃ、僕もならうとしようかな。元々後発組だしね」
「はいはーい!」
返事したシキが、ケイティの背中からレジニアを抱き上げる。アリスの少女がシキの首にしがみつくと、手を振って加速するケイティに手を振り返したキーシクスはシキの背後に回り込み、彼女の肩越しにレジニアと顔を突き合わせた。
「すまない。嫌なことを聞いてしまったね」
キーシクスは、レジニアの前髪を親指でそっと払う。赤く腫れた目元に溜まる涙を優しくぬぐい、柔らかな口調で語りかける。
「けど、お母さんとの想い出は本当に辛いだけだったかい? そうではないだろう。辛いのは、キミがお母さんを好いてた証だ。……それに、キミのお母さんはキミを愛しているよ。忘れたいかもしれないけれど、その事だけは覚えていて」
レジニアが上目遣いにキーシクスを見返した。瞳に込められた無言の問いに、彼はやや寂しそうな面持ちで応える。
「……どうしてわかるのかって? 親としての勘かな。私は……まぁ、ダメな父親だけど」
「キーさん、実はパパだからね! アタシのじゃないよ?」
「今は家出中さ」
キーシクスは苦笑気味に首を振る。レジニアは口元をシキの鎖骨付近に埋め、目を泳がせた。母親と過ごした思い出は、胸の奥にトゲめいて刺さったまま痛みを発し続けている。扉の前に立った時ほどではないが―――耐えがたい。
「…………っ」
レジニアがシキの服をぎゅっとつかんだ。シキは彼女の頭を優しく撫でてやる。
(お母さんの手に似てる……)
そよ風が吹くようにやって来た心の声を、レジニアは胸の内でもてあそぶ。しばらくそうしていると、やがて先を走っていたシルヴァーナが声を上げた。
「出口が近づいて来ましたわ。お二人とも!」
シルヴァーナが見返ると、レジニアを抱いた二人と先頭三人との距離がやや開いていた。会話に夢中だったシキとキーシクスもそれに気づいた。
「おっとっと。急ぐよキーさん!」
「ああ、行こう」
走る速度を上げ、一気に先行く三人へ追い付いていくシキとキーシクス。長い長いチョコの回廊の先、そびえたつ両開きのチョコゲートの両側にケイティと柚希が並んでレジニアを待っていた。ケイティが口をとがらせる。
「やれやれ、どこまでもチョコ尽くしかにゃ。この世界は猫に厳しすぎるにゃ」
「ははは……まぁ、もう少しの辛抱だ」
「だといいけどにゃあ……それ、とっとと開けるにゃ」
重い溜め息を吐いたケイティは、右肩を門に押し当てた。その様子に苦笑しつつ、柚希もチョコの扉に両手を当てる。二人が同時に門扉を押し開けていくと共に、隙間から白い光が飛び込んで来る。レジニアがその輝きに目を細めた、直後!
「あらら? あらあら? あらあらあら!」
開き切った門の向こうから黄色い声が飛び込んだ。
工場から一歩外に出ると、そこはチョコレートの木々に囲まれた円形の広場! 最奥の大樹根元に埋め込まれたチョコ扉の前で、大きな丸テーブルにかけた少女たちがお茶会を開いていた。
ゆったりした水色のドレスに、兎耳の付いたヘッドドレス。赤い瞳をぱちぱちさせる丸っこい顔立ち少女が、驚いた表情で猟兵たちを見つめている。総勢八人、全員八つ子めいて全く同じ姿の少女たちは、互いに頬を寄せ合った。
「あれれ、変だわ。生きてる人が出て来たわ!」
「板チョコになってるはずなのに、おかしいね?」
「みんなで割って分け合うつもりだったのに、これじゃあ分けられないわ! どうしましょう!」
話し合う少女たちを前に、五人は素早く身構えた。刹那、シルヴァーナの姿が掻き消え茶会のテーブルまで瞬間移動! 旋風を巻き上げながらテーブルを下から蹴り上げる! CRAAAAASH! 跳ね飛ばされる食器たち!
「まぁっ!」
素早くテーブルから跳び離れた少女たちの半数がシルヴァーナを、もう半数がシキに抱かれたレジニアを見る! 彼女たちは手に手に薬瓶やティーポットを握り、レジニアとシルヴァーナに向かって飛び出した!
「まあ! そうなのね、そうなのね!?」
「アリスを連れ去る悪い人たち! いけないわ、いけないわ!」
「やっつけないといけないわ! ぐつぐつにゆでてお仕置きしないといけないわ!」
シルヴァーナに飛びかかる四人のうち、後方の二人がティーポットを投げつける! 放物線を描いた茶器は、しかし銃声とともに空中で砕け散った! キーシクスの援護射撃だ!
「シキ! レジニアを頼んだよ!」
「まっかせて! あいつらぶっ飛ばそう、キーさん!」
シキが左腕でレジニアを抱えたまま右腕で宙を薙ぐ! 軌跡に走る桃色と紫の電光が凝集してプリズムめいた浮遊鍵盤を作り出した。右手一本で奏でるアップテンポの旋律! 次の瞬間、シキから放射状に衝撃波が放たれた!
「やっちゃええええええッ!」
GYUUUUUUUM! 紫がかったピンクの衝撃波が、既に駆け出していた柚希とケイティの背中に追い風じみて吹きつける! 正面からダッシュで接近するオウガの少女四人が投擲した薬瓶を前に、ケイティは両腕をクロスする!
「イニャーッ!」
勢いよく開いた両腕から白い奔流! ムチめいてしなる二条の白いスライムが薬瓶を弾き飛ばすと同時に柚希は跳んだ。広げた両腕の義手が軋み、左右に開いた手の平から青銅色の拳銃を吐き出す!
「……君たちは、邪魔しないで」
オウガの少女たちめがけて柚希は二丁拳銃を乱射する! 足元を穿たれまくった少女たちは泡を食って停止!
「きゃっ!」
「わわわわっ!?」
両足をバタバタさせながら立ち止まる少女たち。そこへ一気に近づいたケイティが竜巻めいて高速回転! 白いスライムが少女たちに襲いかかった!
「イニャーッ!」
『ンアーッ!』
SWIIIIIP! オウガの少女たちが弾き飛ばされたところへシキの衝撃波が追撃をしかける! 風に舞う木の葉めいてふっ飛ばされた少女たちは背中から地面に落下! もんどりうって後転すると、目に涙を浮かべて立ち上がる!
「うー……いたぁい……」
「もう、悪い人! レディに対する礼儀がなってないわ!」
「そうよそうよ!」
「もっと丁重に扱わないと嫌われるのよ!」
「残念。猫も女だにゃ」
少女たちの抗議をしれっと受け流し、ケイティは白スライムのムチで地面を叩く。
「それににゃあ、おめーらもレジニアを丁重に扱ったりはしないんじゃないかにゃ? 取って食う気なのが丸わかりにゃ。あの気色悪いピアノとおんなじ匂いにゃ」
「ひどーいー!」
少女の一人がぷくっと頬を膨らませ、レジニアを指差した。
「それなら、あの女の子はどうなのよう! 自分でチョコになったママを首切りバニーしちゃったのに!」
レジニアがびくりと身を震わせた。肩が小刻みに揺れ、凍り付いた表情でオウガの少女たちを凝視する。四人のオウガはぴょんぴょんと跳びはねながら口々に喚き散らす!
「かわいそうな大人たち! チョコママ殺しの女の子なんて助けちゃって! あなたたちもチョコにされて首切られるのよ!」
「怖いわ! 恐ろしいわ! きっと一人じゃ食べきれないから、バラバラに切っちゃうつもりだったのね!」
「それにこんな世界にしちゃうのだもの! 食べても食べても食べ足りないに違いないのよ! あなたたちもチョコにされて食べられちゃうのよ!」
レジニアの顔から血の気が引き、開いた口から掠れた呼気が漏れ出した。その様子を見たシキは慌てて怒鳴り返す!
「ちょ、ちょっと何言ってるの! レジニアちゃんだって、そんなこと望んでやったわけじゃ……!」
「どおかしら? 実はチョコのお母さん見て美味しそうって思ったんじゃない?」
「首切る前に、ぺろっと味見したかもね! ママは甘い味がした?」
BLAMBLAMBLAMBLAM! 瞬時に屈んだ少女四人の頭上を銃弾が横薙ぎに一蹴! 着地していた柚希は険しい表情で右の拳銃を下げ、左の拳銃を掃射! 少女たちは一斉にジャンプしてこれを回避した!
「お喋りはそこまでしてもらうよ」
「もう! 悪いしずるい大人だわ!」
少女たちは着地すると同時に懐から取り出した薬瓶を投げつける! 柚希は素早くガンスピンして銃弾連射で全て破壊! その足元に少女の一人が飛び込んだ! 小さな両手が柚希の胸倉をつかむ!
「!」
「そんな悪いお兄さんにはぁー……こうっ!」
少女は背中を反らしてフロントスープレックス! さらに真横に一回転し、柚希を真横にぶん投げた! 柚希はチョコの樹木に頭から激突!
「柚希!」
スコープから目を外すキーシクス! 刹那、援護射撃が止んだのを見た少女の一人がシルヴァーナの背中にティーポットを投げつける! ポットは別の一人へ首狩り斬撃を振りかぶるシルヴァーナに直撃して砕け、背中から白煙を吹き上げた!
「ぐっ……!?」
がくんと体勢を崩したシルヴァーナのナイフが空振る! 首を斬られかけた少女はシルヴァーナの両腕をつかみ、前方回転跳躍! 地面にシルヴァーナを振り下ろす!
「えーいっ!」
SMAAAAASH! チョコの地面が砕け、シルヴァーナの肺から空気が絞り出された! そこへ二人の少女が駆け寄り、白い煙を噴き上げる背中に薬瓶を投げる! キーシクスは慌てて薬瓶を銃撃破壊! シルヴァーナは跳ね起き膝蹴り!
「あぐっ!?」
「ふっ!」
下顎に一撃食らってのけ反る少女の腹に蹴ってホールド解除! たたらを踏みながら下がるシルヴァーナの足首に沸騰した硫酸がぶちまけられた!
「つっ……!」
「つかまえたっ!」
足を焼かれたシルヴァーナを、少女の一人が羽交い絞めにする! シルヴァーナは手の中でナイフを回しながら叫んだ!
「こちらはなんとか抑えますわ! レジニアの護衛を!」
シルヴァーナはそのまま一回転し少女を弾き飛ばした! 両手のナイフを逆手に構えて疾走、投げつけられるポットや瓶をジグザグスプリント回避しながら次の少女へと突進していく! 少女はバク宙してシルヴァーナの斬撃を回避!
「ふーんだ!」
くるくる回転しながら着地した少女は、ぴょんぴょんと跳ねながら挑発する。
「守るのね! あのママ殺しの女の子を! わざわざ命懸けで!」
「いいえ、違いますわ」
シルヴァーナは凛として答え、半身が構える!
「母を失った少女の心を慰撫します。命を懸けて!」
シルヴァーナはロケットスタート! 両手を振り回して次々と投げられる薬瓶を回避し、斬り払いながら地を駆ける! 一方、ケイティは白いスライムを振り回して三つのティーポットを打ち払い、バックスウェーで少女の手を掻い潜る!
「まぁぁぁてぇぇぇぇぇぇっ!」
「待てと言われて待つ猫はいないにゃ」
追いすがる少女にスライムムチを打ち振るケイティ! 横っ飛びしてギリギリ回避した少女の脇腹に柚希の銃弾が連続で突き刺さった! 呻きながら地面をごろごろ転がる少女の行く手に割って入った柚希は少女を作家ボールめいて蹴る!
「ぎゃん!?」
「悪いね。けど、容赦はできない」
言いながら柚希は二丁拳銃を連射する! 吹き飛んだ少女は銃撃を食らいながら速度を増し、血飛沫を撒き散らしながら別の一人へと飛翔! シキにティーポットを振りかぶっていたその一人が危険を察知! 掲げた手首に銃弾が直撃!
「いったぁっ!」
キーシクスに手首を撃ち抜かれた少女はドッジボールじみて飛んできた少女をかわしきれず衝突! そのまま二人まとめて地面をもんどりうって転がった。
「キーさんナイス!」
シキが快哉を叫び、鍵盤を引く指を速めた。徐々にテンポを上げて行くポップミュージック。そこに、消え入りそうなレジニアの声が混ざり込む。
「……お母さん」
「んっ?」
シキは演奏を止めぬまま、レジニアを見る。少女は青ざめた顔をシキの胸元に沈め、小刻みに震えていた。彼女の瞳にフラッシュバックする過去の光景。目に焼き付いたあの日のこと。
「やっぱり……いない方がよかった。お母さんさえいなかったら……きっと…………きっと、こんな辛い思いしなかった……。お母さんも、私に……ころされる、ことだって……」
声が徐々に上擦り、掠れ始める。胸を蝕む痛みが心臓に噛みつき、脈動のたびにきつい苦痛を伝えてくる。
「んにゃぁ、そりゃ勘違いではないかにゃ。ママを殺したのがレジニアだと本気で思ってるにゃ? ……違うね、全然違う」
レジニアが顔を上げ、前線で戦うケイティを見た。ケイティはジグザグバックステップで少女二人のグラップルを回避しながら言う。
「直接手を下したのが誰かなんて問題ですらない。猫は何人もこの手で殺して来た。でも、猫は誰も恨んでないし、恨まれる覚えもない。殺したのは、猫を雇った奴だ。結果的に殺したのは猫だけど、それは知った事じゃない……違うかにゃ?」
少女の顔面をケイティの猫パンチが打ち抜いた! SMAAASH! 殴り飛ばされ、宙を舞う少女の胸を何発もの銃弾が穿つ! 胸から血を流しながら放物線を描いた少女が爆発四散! 柚希はガンスピンしつつ告げた。
「いなければよかった……のは、本心じゃないように聞こえたな。忘れられなくてもいい。それでも、傷を塞ぐことはできる。それに、だ」
ジャキッ。拳銃が立てる金属音に、爆発四散した仲間を振り返っていた少女たちが向き直った。柚希は赤い瞳を剣呑に光らせ、両腕を交叉して言い放つ!
「君たちに、他人を咎める権利はないだろう。人喰いの怪物である、君たちには」
「ま、猫にもないんだけどにゃ」
軽く肩を竦めたケイティが頭上でスライムのムチをひゅんひゅんと振り回す。霧が放射されるように迫る殺気に、オウガの少女たちが気圧され半歩後ずさった直後! ケイティは地を蹴り一気に接近!
「きゃっ!?」
「ひっ……!」
一瞬怯む少女たち。そのうち一人のくるぶしを銃弾が撃ち抜く! 円弧を描く軌道で駆けた柚希が拳銃を速射し、三対六本の足に風穴を開けた。ドミノ倒しめいて横に倒れ込んでいく少女たちの手中で薬瓶が銃撃破砕! 決定的な隙を晒す!
「イニャーッ!」
ケイティが左手のスライムムチを真横に振り抜き少女三人の首をはね飛ばす! 首の切断面から血飛沫を噴射する肉体に右手を振り抜き胴体寸断! バラバラ死体と化したオウガの少女たちは爆発四散! それを余所に柚希は疾走を続行!
「シルヴァーナさん!」
前方に両手を突き出しての銃撃! BLAMBLAMBLAMBLAM! 縦二列に四発ずつ放たれた銃弾が、膝を突いたシルヴァーナにポットを振り上げる少女のふくらはぎを貫通! 少女は思い切りのけ反った!
「きゃあっ!?」
刹那、シルヴァーナの目が鋭い刃じみてギラリと光る! 彼女は高速回転しながら立ち上がり銃撃を受けた少女を細切れ殺! スライス肉片と化した少女に構わず、別の一体に飛びかかった! その背後から迫る別の一人!
「ちょっと……!」
やや動揺しながらも伸ばした腕がシルヴァーナの襟首につかみかかった! シルヴァーナはそちらも見ずに左のナイフを閃かせる! SLASH! 少女の五指が切り飛ばされた! 血飛沫噴出!
「いっ、ああああああああああああああああ!」
指を失った手の手首を押さえて絶叫する少女を放置し、シルヴァーナは怖気づき硬直した一人のワン・インチ距離に踏み込む! 恐怖の表情でわずかに身を反らせた少女の胸元に引き寄せられた両手を一瞥し、冷淡に呟く!
「レジニアちゃんと違って、いいことに使いそうにない手ですわね」
「ひっ……!」
涙を浮かべた少女の顔に無数の銀閃が走り、足元までを網羅する! SLALALALASH! シルヴァーナは相手の手首めがけてトドメの一閃! 少女の胸が両手首ごと真横に寸断されると同時、彼女はバラバラ死体となって崩れ落ちた!
「さて……あと二人ですわね……!」
振り返ったシルヴァーナの目が指を斬り落とされた一人と、目を見開いたまま固まるもう一人を睨む! だがシルヴァーナは苦痛に顔を歪めて片膝を突いた。焼けただれた背中に無数の膿玉! 煮沸硫酸と腐ったミルクセーキを浴びた傷!
「くぅっ……!」
蛇に狙われた蛙めいて凍り付いていた二人の少女は、とっさに薬瓶とティーポットを振り上げる! 恐慌のままにシルヴァーナに殴りかかったその時、二発の銃声が手中のティーポットと薬瓶を打ち砕いた! 二人は頭から中身を浴びる!
『きゃああああああああああっ!』
腐ったミルクセーキと沸騰硫酸を被って狂乱する二人の少女! シルヴァーナは銃口から硝煙を上げるキーシクスと柚希を一瞥し、両手のナイフをハサミじみて振るう! SLASH! 少女二人の首は飛沫を散らしながら飛び、爆発四散した。
●
数分後。扉前の広場には、穏やかな音色のシンセサイザ旋律が流れていた。
演奏に合わせて歌うのはキーシクス。床に正座したシルヴァーナの背中にかざした手の平に翡翠色の光を灯し、焼けた背中を徐々に癒やす。化膿がしぼみ、ただれた肌が逆再生めいてゆっくりと戻っていく。
シキの腕を離れ、柚希に抱きあげられたレジニアは、その様をじっと見つめていた。柚希は手袋を嵌めた手で少女の背中を撫でてやる。
「怖いものを見せてしまったかな。ごめんね」
レジニアは肩を縮め、首を振る。やがて何かを探すように目を泳がせ、控えめに口を開いた。
「……どうしても、帰らなきゃだめ……?」
「…………そうだね」
柚希は曖昧に言葉を濁した。
レジニアを取り巻く現実は過酷だ。母を失い、家を失くし、帰る場所は無い。かといって、この迷宮に残ったところで命の保証は誰にもできない。運よく親切な愉快な仲間に拾われたとして、そこにオウガが攻め込まないとも限らないのだ。
広場に流れていた音楽が穏やかになり、やがてフェードアウトする。歌い終えたキーシクスはシルヴァーナから手を離した。
「はい、終わったよ。ひとまずの応急処置ではあるが、放置するよりはマシだろう」
「感謝しますわ」
シルヴァーナは閉じていた目を開き、立ち上がる。焦げ付き、引き裂かれたようになった服の背中は、まだ薄く腫れてはいるが元の肌を取り戻していた。シルヴァーナは近くに転がる茶会テーブルからクロスを拾い、それを羽織る。
「治療して頂いて早々厚かましくはありますが……あの子と話しても?」
「ああ。私の方は伝え終わった。シキは?」
「アタシ?」
シンセサイザを消したシキが顔を上げた。彼女は腕を組み、虚空をしばし見つめて黙考。小さくうなる。
「うーん……もう一言言いたいけど、いいや! シルヴァーナさん、お先にどうぞ!」
「ありがとうございます」
朗らかなシキに微笑み返すと、シルヴァーナはレジニアの下に歩み寄る。レジニアは柚希に抱きあげられたまま振り返り、不安げにシルヴァーナを見上げた。シルヴァーナはその瞳を覗き込み、優しく問う。
「まだ、つらく感じます?」
レジニアがうつむき気味に頷く。シルヴァーナはレジニアの前髪をひと房横に流しつつ、諭すように言った。
「母との思い出があるのは、羨ましいことですわ。つらい思い出を塞ぐために楽しかった思い出まで塞いでしまうのは悲しいことですわ」
柚希の胸元をつかむレジニアの手を優しく包み、引き寄せるシルヴァーナ。いつくしむように手の甲に触れる。
「あなたのお母様はきっと、ここにいてくれますわ。だからきっと、大丈夫」
「……でも……」
レジニアが言い募り、所在なさげに口を動かす。胸の痛みと、暗闇に独り立たされたような不安。言葉にできない心持に揺れる少女の胸に、突如もふもふしたものが押しつけられた。驚いて見下ろしたレジニアの目に、一匹の猫。
青みがかった灰色をした猫を押しつけたケイティが、眠たげな眼差しで告げる。
「一人で生きていくのが不安かにゃ。一人で生きられないってんなら、お供に付けてやるにゃ。一人じゃなければ生きられるにゃ。何処だろうと、猫は居る」
「猫……」
一声鳴いた子猫に、シルヴァーナはレジニアの手を触れさせた。艶のあるふかふかした毛並みが手の平に伝わる。猫は心地よさそうに喉を鳴らすと、レジニアから飛び降りた。
「あっ……」
小さく声を上げ、すがるように手を伸ばすレジニア。子猫は数歩歩いて少女に振り向き、また鳴いた。柚希はレジニアを地に降ろす。
「ついてこいってさ」
「ついて……?」
レジニアが柚希をじっと見る。柚希は頷き、彼女の背中を優しく押した。再び歩き出していた猫は扉の横に座り、レジニアを見つめている。アリスの少女は猟兵たちに見返った。
さっきまであったぬくもりは無い。一人で歩く恐ろしさにすくむ。ケイティはひらひらと手を振った。
「早く行くにゃ。猫の気が変わって置いてけぼり食らう前に。ついていけば、まぁなんとかなるにゃ。チェシャ猫よりは、面倒見いいからにゃ」
レジニアは背中を丸めると、十三階段を行く死刑囚めいて歩き出した。足が震える。凄まじい向かい風の中を行くように、ゆっくりと進む。永遠めいた数秒の果て、レジニアは扉の前に辿り着いた。もう一度、レジニアは猟兵たちを振り返る。
たった数メートルの距離が、遥かに遠い。レジニアの瞳が大きく揺らいだ。
(……怖い)
今まで縋っていたぬくもりから遠ざかる不安と心細さが、波のように押し寄せてくる。動けなくなった少女に、シキは大きく手を振った。
「頑張って! 前を向くのに時間はかかってもいいんだよ、大丈夫! とりあえず進めば、なんとかなるから!」
猫が鳴き、扉がひとりでに押し開かれる。軋みながら開いた扉の向こう側、先を見通せぬ光の前を見てためらう少女の脇を猫が走っていく。アリスの少女は震える足で半歩を踏み出し、最後にもう一度猟兵たちに視線をやると、猫を追って小走りに潜り抜けて行った。
大成功
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