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ご城下美食珍騒動~名脇役に迫る影

#サムライエンパイア #戦後 #ご城下美食珍騒動

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●――極上の馳走を求めて
「鍋じゃな」
「鍋に御座いますか」
 新年を迎え正月気分も少しずつ抜けて来た時分。
 とある藩の城の一角で、火蜂を囲みながらのんびりと蕎麦茶を楽しんでいる男が二人。
 藩主佐合篤胤と、筆頭家老石渡実継である。
「ついこの間に食べたアラ鍋は実に見事な味でしたな。豊かで力強く、それでいて嫌味ったらしい所が無い」
「うむ、あれには脱帽よな。美食の藩だと驕って居った俺の鼻根をぽっきりとへし折ってくれた良い鍋だった」
「牡丹鍋にアラ鍋、山の幸と海の幸は手を付けましたが、次は如何なるものを」
「うむ」
 湯呑みを置いて傍付きに蕎麦茶のお代わりを淹れさせつつ、佐合は自慢の腹をぽんと叩く。
 日頃鍛錬は欠かしていないとは言え積もる雪と凍える寒さ、更に正月のまったりとした時間の流れに押されてか、彼の腹は少しばかり贅肉を付けていた。
「この通り、少々肥えてしまっておるからな。余り力の付くものを食べても持て余してしまう。聞けば俺達ばかりか同心周りまで肉が付いたと言うではないか」
「先日の野良相撲の取り組みの時等、下原の倅が無精髭を伸ばしていた所を童達に熊だ何だと囃し立てられておりましたからな」
「あれには流石に笑いを堪え切れなかったな。あやつも気の良い実直な男なのだから、そろそろ気になる娘の一人くらい見付けても……って違う違う。今はあやつの嫁探しではなく鍋の話よ」
 話が逸れて行きそうなのを腿をぺちりと叩いて戻す。
 熱々の蕎麦茶を啜って熱い息を吐き出して、佐合は口を開く。
「まぁ、今回は肉や魚と言ったものは控え、いっそ菜ばかりで鍋をしてみようと思ってな」
「ほほう、菜だけを使った鍋に御座いますか」
「土倉に寝かせて置いたものが有るからそれを使う。葱に人参、韮、白菜、大根辺りか」
「……ははぁ、見えましたぞ。普段は鍋の脇役に徹している具材を中心に据えようと、そう言う趣向で御座いますな?」
「流石は実継よ。とは言え菜ばかりでもつまらぬので、此処は豆腐と油揚げも入れてしまおうと思うのだが」
「良いですなぁ。実を申しますと鍋の出汁を存分に吸った油揚げが大好物でして。冷酒をやる時には何よりの肴となるのです」
「何、実継もか。俺もあの出汁を吸った熱々の油揚げをはふはふやりながら米を掻き込むのが好きでな。……ううむ、これは鍋で争いが起きるやもしれぬ」
「鍋奉行では流石に役者不足ですからな、せめて鍋将軍くらい来て貰わねば」
「ガキ大将や青大将ならその辺に居るのだがなぁ」
 はっはっは、と言葉遊びに興じる二人。
 言わば風流なオヤジギャグの応酬である。
 そんな二人の下へ、一人の男がやって来る。
「失礼致しまする」
 やって来たのは身の丈六尺(だいたい180cm越え)の大男。
 がっちりと締まった筋肉質の身体と、虫も殺さぬ様な柔和な顔立ちが特徴の男だ。
 男の登場に、佐合は面白そうに肩を揺らす。
「おぉ、勝美ではないか。先程お前の名前が話に上った所よ」
「して、何事か」
「ははっ」
 平伏したままの男、下原勝美は姿勢を崩す事無く報告する。
「二日前より、城下にて物取りが続いております」
「何、物取り?」
「それが妙な物取りでして、金子の類には目もくれず、食材ばかりを盗んでいくと」
「……餓えた野盗にしては金子に手を出さぬと言うのが妙だな」
「食うに困る程に困窮した童達が流れてきたと言う話も聴きませぬな。しかし物取りが出たからと言って、殿の耳に入れる程の理由が有るとは思えぬ」
 先を促した石渡の声に頭を低くしながら、下原は告げる。
「それが……取られた食材と言うのも妙で御座いまして」
「妙?」
「はい、それがどうも……油揚げばかりが狙われている様なのです」

●――奇妙な予知とその行方
「と、言う訳です。今度は野菜鍋ですねー」
 いやぁお正月で太っちゃいまして、と普段と何ら変わらないスタイルのまま望月・鼎は笑っている。
 お馴染みのホワイトボードには大文字で『怪奇! 消えた油揚げの謎を追え!!』と正月特番でも中々見ない様な陳腐極まりないフレーズが書き込まれている。
「まぁ予知で出て来たのでオブリビオンが出て来るのは間違いないんですけどね。この連続油揚げ窃盗犯もオブリビオンですし。とは言え塒が何処に有るかは判明していないので、そこは皆さんの捜査で探り当ててくださいなー」
 そう言いつつ、鼎はホワイトボードに何やら書き足していく。
 書かれたのは『野菜鍋大会』の文字。
「新年一発目の旨いもの市のテーマは野菜鍋に決まったみたいです。肉とお魚は入ってないヘルシーな鍋料理を突きつつ、色んな屋台を巡って情報を集めてみてくださいねー。あ、幾らヘルシーと言っても、おにぎりやうどんを一緒に食べてたら意味は無いので食べ過ぎ注意なのです! それと今回は持ち寄った食材を使って鍋を作る事も出来るみたいなので、我が家の一杯的なノリで皆さんに振舞っても良いかもしれませんね。美味しい料理を食べたら口も軽くなるかもです!」


一ノ瀬崇
 新年明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願い致します。

 はい、一発目はいつものサムライエンパイアです。
 鍋を楽しみつつ情報収集、その後集めた情報を元にオブリビオン急襲、最後にボス戦と言う流れです。
 難しい推理やギミックは無いので、どうぞお気軽にご参加ください。
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第1章 日常 『鍋パーティー!』

POW   :    主に食べる

SPD   :    主に食材を用意する

WIZ   :    主に料理をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

唯・刀
「ここが鍋の会場か、たのもう」
とはいうものの、唯の刀に情報収集だの料理だのが出来るはずもない
ここは持ってきたこの食材を用いてもらうとしよう
姉貴もお薦めの食材で、整腸剤や精進料理としてはこの世界でも広まっているとか
「蒟蒻だ。……知っているだろうか。芋を固めたもので、煮て食うと美味い」
兄貴の話によると、UDCとかでは将軍が綱吉の頃に庶民に親しまれたというから、物珍しいのは間違いない

「……いいものだな、正月の寒気に鍋に酒」
これだけあればなにも要らないだろうに、盗みを働いて天下を乱すとは、一周回って憐れな連中だ
「……止めてやろう」
息の根を、かもしれないが

くいくいと燗を傾けて、未だ見ぬ敵を肴に食って飲む


宇冠・龍
由(f01211)と参加
※食材は自由に取捨選択OKです

いいですねお鍋。私もここ最近食べ過ぎでお腹が……こほん

食材選びは大事です
白菜はまず入れるとして、春菊は入れ過ぎないほうがいいかしら?
肉や魚の臭みを抑えてくれますけど、それが入っていないと他の野菜の甘みを消してしまいますし
豆腐も入れるとすると、ダシにするのも含めて昆布かキノコを沢山投入するのもいいですね。厚めに分けたしいたけやまいたけは、汁を沢山含んで口の中で噛む度うまみが零れますから
ただ味が変わりますし好みもあるのでこれは他参加者様に合わせてでしょうか

(大丈夫かしら、体重、増えないわよね……?)


宇冠・由
お母様(f00173)と参加
※持ってきた食材は取捨選択OKです

お正月の菜といったらやはり七草
(……それに、その、どれもお通じに大変良いとされますわ)

ただ大勢で食べるのならきとんと灰汁抜きしないといけません。特に大根(蘿蔔)やカブ(菘)以外は臭みもあるので
別で少しだけ塩茹でした七草を投入、大根やカブは下処理まえに適当に切っておきます

お鍋には意外とお蕎麦やうどんが合いましてよ
鍋に入れずに、露と一緒に食べる人数分だけ別に用意しておきましょう
欲しい方には油揚げも一緒に

(お母様と相談し、ネギとニラは入れないでおきます。油揚げが狙われるということなのでお狐様はネギ類は駄目だそうです。今回は平気かもですが)



 とある藩の城下で開催されている旨いもの市。
 今回のお題目は肉や魚を使わない野菜鍋だ。
 一見すると味気無く思えるが、正月太りで無駄肉が付いた町の人々は丁度良い機会とばかりに鍋を突いている。
 とは言え、鍋だけで一日を終えると言うのもそれはそれで寂しい。
 朝餉には普段通りの一汁一菜に干物でも付け、後はたらふく鍋を掻き込むと言うのがだいたいの人の考えであった。
 根野菜を主として数は少ないが葉物も幾つか有り、何処から運んで来たのか他の季節に生る野菜も露店で売られていたりと、今回も旨いもの市は大盛況だ。
 如何しても肉や魚の入った鍋が食べたいと欲望を抑え切れ無い人の為の鍋も、端の方の出店で振舞われている。
 中には正月太り等知った事かと、餅にうどんに締めの雑炊とやりたい放題な満腹三昧を楽しんでいる剛毅な人も居たりするのは、流石お祭りと言った所か。
 そんな祭りの会場で、静かに気炎を上げる二人の女性が居る。
 手に食材を載せた籠を持ち、自由に持ち寄った食材を使って鍋を作る事が出来る区画へと歩いて行く。
 一人は宇冠・龍。
 すらりと伸びる体躯に落ち着いた色合いの婦人服を纏った人派のドラゴニアンだ。
 もう一人は宇冠・由。
 全身が燃え上がっており顔を可愛らしい仮面で隠している以外は普通のお嬢様である。
(いいですねお鍋。私もここ最近食べ過ぎでお腹が……こほん)
(お正月の菜といったらやはり七草……それに、その、どれもお通じに大変良いとされますわ)
 表情には出さず静かな闘志を燃やす二人。
 似たもの親子だ。
 そんな彼女達とは別の方向からふらりと一人の男がやって来る。
 彼は唯・刀。
 ヤドリガミの剣豪だ。
 ぼさぼさの髪と無精髭が冴えない印象を与えるが、彼もまた猟兵の一人である。
「ここが鍋の会場か、たのもう」
 ぽてぽて歩いて辿り着いたのは、二人が居る場所。
 他にも自慢の野菜を持ち寄った人が数人おり、下拵えに勤しんでいる。
「おや、そちらも何か鍋にやろうと?」
 彼へ声を掛けるのは人懐っこい笑みを浮かべた若い男。
 ざるに移した野菜を水に軽く晒している。
「俺は料理は出来ぬので、代わりに使ってもらおうと思ってな」
 そう言って、彼は提げていた袋から中身を取り出す。
「蒟蒻だ。……知っているだろうか。芋を固めたもので、煮て食うと美味い」
「おぉ、こりゃ良いな! 旨いものは何でも手に入ると言われてる此処でも、偶にしか口に入らない様な食材だ!」
 蒟蒻を受け取った若い男は喜色を滲ませた声を上げる。
 高価と言う訳では無いが産地が遠いのと食材としては地味な部類に入る為かそこまでの量は流通していないらしい。
 兄や姉のアドバイスに従って持ってきたのは正解だったか、と内心で息を吐く刀。
 それ以上彼等の回りに居ても手伝える事は無さそうなので、お先に卓へ付いておく。
 途中で買ってきた熱燗をちびりちびりと傾けつつ、一応周囲の喧騒に耳を傾けておく事にした。
「下準備はこれで良いですね」
「お母様、此方も出来ましたわ」
 龍と由の親子は手際良く食材の下拵えを済ませていく。
 鍋に投入するのは春の七草に白菜、、春菊、豆腐、油揚げ、刀が持ってきた蒟蒻だ。
 張った水には昆布や椎茸、舞茸で取った出汁が加えられている。
 沸騰しない様に火加減に注意しつつ醤油、酒、塩で味を調えながら煮てやれば、野菜鍋の出来上がりだ。
 出汁の利いた汁と旨味を吸った野菜の取り合わせが実に美味しく、胃にも優しい。
「さぁ、出来ましたよ」
「物足りない方の為にお蕎麦とうどんは用意して有りますわ」
 二人が鍋を卓へ持って行き、他の皆の所へ箸と取り皿が行き渡った所で頂きますだ。
「おぉ、シャクシャクで旨い!」
「良い出汁が出てるわー♪」
 皆が舌鼓を打つのに続いて、由も出汁を吸ってクタクタになった白菜を口に運ぶ。
 噛むと熱い出汁がじゅわっと滲み出てくるが、彼女には然程熱いものでもない。
 余す所無く旨味を味わいながら大根へ箸を伸ばす。
 此方も茸の出汁を存分に吸っており、実に美味しい。
「良い味ですわ」
「汁に野菜の甘味が溶け込んでいますね」
 隣に座る龍も上機嫌に舞茸を食む。
 茸独特の歯応えの中に旨味がじんわりと広がって行き、舌を楽しませてくれる。
 肉や魚は無くとも十分に満足を得られる美味しさとボリュームだ。
 ついつい箸が止まらずに食べ進めてしまうが、心には一抹の不安が過ぎる。
(大丈夫かしら、体重、増えないわよね……?)
 同じタイミングで由の箸もピクリと止まる。
 考える事は同じらしい。
 食物繊維とビタミンで美容には抜群だが、食べ過ぎにだけは注意が必要だ。
 脳内で計算を始める淑女の二人とは対照的に、刀は自分のペースでのんびりと鍋を楽しんでいた。
 熱燗を飲み切り、今は冷酒を片手に鍋を突く。
 掴んだのは持ってきた蒟蒻。
 染みた出汁と独自の食感が口を楽しませた所へ冷酒を流し込み、嚥下する。
 蒟蒻の熱さと酒精の熱とが混ざり合った息を、ほうと吐き出す。
「……いいものだな、正月の寒気に鍋に酒」
 これ以上の贅沢は無いと楽しんでいた所で、若い男が話し掛けてきた。
 話の種は箸につままれた油揚げ。
「そう言や兄さん、二日くらい前から話題になってる油揚げを狙う盗人の話、知ってるかい?」
「あぁ、小耳に挟んだ程度だがな」
「あ、それ知ってる。うちの近所の問屋さんもやられたらしいのよ」
 鍋を突きながら他の人達も会話に参加してくる。
 龍と由の二人は意識を切り替え情報収集を始める構えだが、当の刀は予想しなかった機会に若干驚き気味である。
 とは言え折角の好機。
 酒を呑む手を止めて皆の会話に耳を傾ける。
「不思議な盗人だよなぁ。金子を盗むってんなら解るが、持って行くのは決まって油揚げばかりときたもんだ」
「問屋さんの所は寝る前に確認した時は戸締りも確りしてたらしいけど、朝起きたら綺麗に閂が外されてたって話よ」
「それは変ねぇ。外から来た物取りなら多少手荒く忍び込む様なものだけど」
「余りの手際の良さに内通者でも居るんじゃないかって最初は疑ったらしいけど、そんな大量の油揚げ取っても仕方ないだろうって。何処かへ運ぶにしたって、なぁ?」
「狐に化かされたんじゃないかーって専らの噂よ」
 その後はあーでもないこーでもないと、他愛も無い話に興じていく。
 これまでに得た情報に加えて、丁寧な仕事で油揚げを持ち去って行った事が解った。
 他の店でも被害が出ているらしく、これは単独犯によるものでは無さそうだ。
 これ以上は考えても余り意味は無いだろう。
 他の情報は他の猟兵達に任せる、と切り替えて、三人は鍋へと意識を向ける。
 消えた油揚げの怪。
 果たして真相や如何に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アマータ・プリムス
ふむ、野菜鍋ですか
お肉はないですがポトフも一応鍋のようなものですし当機はポトフを用意しましょうか

そうと決まればまずは下拵えから
具材はじゃがいも、玉ねぎ、人参、キャベツ辺りですね
皮を剥いてやや大きめに切った具材を鍋に入れ、火にかけましょう
あとは鍋にコンソメを入れて具材に火が通るまで煮込みます

ここではポトフは珍しいでしょうしきっと人が集まるでしょう
世間話をしながら情報収集です
消えた油揚げの話を聞いてみましょう
なくなった時の状況や何か見ていないか聞いておきます

ポトフの方は具材に火が通ったら胡椒を振って、塩で味を調えれば完成です
出来上がったら皆様に振舞うとしましょうか

「油揚げ……お稲荷様でしょうか?」


神宮寺・絵里香
●心情
・なんて言うか、ここの連中食ってばっかりだな。
・んで…こんどは油揚げの窃盗ねぇ…狐でもでたのか。鳶でもでたのか。まあ知らんが、何て言うか気が抜けているというか…
・とりあえず、いつも通り腹ごしらえしてから戦えばいいわけだな。
・今回は野菜鍋ねぇ…。まあ、脂っぽいのよりはいいか。
・料理は…面倒だな。食うだけにしよう。

●行動
・昼間っから酒を飲むのもなぁと思いつつ、お茶と適当に鍋を摘まんで腹でも満たす。ま、寒い中だしこういうのも悪くはないだろう。
・あんまり量を食う方じゃないから、適当に食った後は何かないか会場の中でも探すかな。こういう時でも油揚げ盗みに来る可能性はないわけじゃないしな。



 賑わいを見せる旨いもの市。
 楽しげに行き交う人混みを掻き分けながら歩いて行くのは神宮寺・絵里香とアマータ・プリムスの二人組。
「なんて言うか、ここの連中食ってばっかりだな」
 この藩に来る度に何かしらのイベントは起きているが、その殆どが食べ物関連と有って絵里香は呆れた様な感心した様な、何とも微妙な表情を浮かべる。
 一方のアマータは表情こそ変わらないものの、足取り軽く出店を眺めている。
「娯楽に於いての食事が占める比率は、他の場所よりも多そうですね。とは言えこの藩程、食べ物が関わる事件は無さそうですけど」
「んで……こんどは油揚げの窃盗ねぇ……狐でもでたのか。鳶でもでたのか。まあ知らんが、何て言うか気が抜けているというか……」
「油揚げ……お稲荷様でしょうか?」
「どうだかな。とりあえず、いつも通り腹ごしらえしてから戦えばいいわけだな」
 聞いた限りは何ともお粗末な事件な所為か、絵里香は気怠そうに首を振る。
 どうも、この藩で起きる事件に緊迫したものは少ない様に思える。
 今回もしょうもないオチが控えていそうな予感がぷんぷんだ。
 イマイチやる気の出ない身体で練り歩いていると、目当ての場所へ辿り着く。
 旨いもの市の参加者達が自由に持ち寄った食材で調理が出来る広場だ。
「今回の品目は……ふむ、野菜鍋ですか」
「野菜鍋ねぇ……。まあ、脂っぽいのよりはいいか」
 手近な所に腰を下ろし、ひらひらと手を振る絵里香。
 料理が出来ない訳では無いが、今回は面倒臭いのでパスするらしい。
 昼間から呑み始めるのも気が引けるからか、途中で買ってきたお茶で唇を湿らせつつ、鍋が出来上がるのを待つ構えだ。
「お肉はないですがポトフも一応鍋のようなものですし、当機はポトフを用意しましょうか」
 アマータは用意した食材を前に袖を捲って気合十分。
 早速下拵えを始めていく。
 じゃがいもに玉葱、人参、キャベツを大きめに切っていく。
 着ているメイド服は伊達ではない様で、鮮やかとも言える手付きで次々に皮を剥いていく。
 土鍋に具材と水、コンソメを投入して火が通るまでじっくり煮込む。
 珍しい調味料と嗅いだ事の無い匂いに釣られてか、数人のギャラリーが集まって来た。
 火が通るまでの間、彼等と世間話をしつつ情報収集を始める二人。
「あー、油揚げなー」
「お役人さんの間では鳶狐とか言う名前が付けられてるみたいよ」
「鳶狐て」
 安直な名付けに思わず呆れた声が出る絵里香。
 油揚げばかりを狙う相手を表するには丁度良いのかもしれないが、せめてもう一捻りは欲しい所だ。
「聞いた限りじゃ被害を受けたのは問屋が二軒、豆腐屋が一軒だな」
「油揚げを狙うってのも然る事ながら、盗っていった量も随分って話よねぇ」
「どれくらいなのですか?」
「優に十貫は行ってるそうだ」
「じゅう……」
「えぇ……」
 予想以上の量に、思わず目を見張る二人。
 十貫はだいたい37.5kgである。
 つまりこの鳶狐、二晩で子供一人分と同じくらいの量の油揚げを盗んで行った事になる。
 言うまでも無く油揚げは生ものだ。
 果たしてそんなに盗って何に使うと言うのか。
「頭痛くなってきた……」
「とんでもない事件ですね……」
 如何にも突飛な事件である。
 と、土鍋が良い具合に煮えて来ているのに気付く。
 アマータは箸を刺して具に火が通り切ったのを確認し、塩を少々加えて味を調えていく。
 小皿にスープを垂らし味を確認。
「上出来です」
 その声に小さく歓声が上がる。
 これも縁と、出来上がったポトフを振舞っていく。
 評判は上々の様だ。
 絵里香も取り皿によそってもらったのを一口。
 ほくほくのじゃがいもの甘味と、旨味が染み出たスープが合わさり実に美味しい。
 買ってきたお茶との相性も悪くない。
 濃い旨味に晒された舌を、お茶の苦味が撫で行く事でリセットしてくれる。
 暫く舌鼓を打ちつつ、二人は小声で話し合う。
「十貫か。単純に被害件数の三で割っても一つ辺り10kgは超える」
「それだけの荷物となると、運んでいても目立ちそうですね」
「油揚げばかりを狙う真意もそうだが、果たしてこの二日間の被害で盗ろうと思っていた目標に届いたのかも謎だな」
「では……まだ被害は続くかもしれませんね」
「ああ。こういう時でも油揚げ盗みに来る可能性はないわけじゃないしな。警戒しておいて損は無いだろう」
 鍋を突きつつ、周囲へ視線を走らせていく。
 視界に入るのは楽しげに祭りを楽しんでいる人々ばかりだが、果たして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エイル・ヒルドル
【ファブル】で参加

鍋!祭り!歓迎会!
今日は玲の鍋を突きながらルトルファスの歓迎会よ、ヘザーも嬉しそうだしガンガン盛り上げなくっちゃ!
ヘザー!たくさん食べるわよー!
玲、具の貯蔵は十分よね?!

アタシは鍋が本格的に始まる前に一走りオブリビオンについて聞いてくるわね!

んーー!やっぱり玲の料理って美味しいわっ
野菜だから味も食べ易いし太らないしガンガン入るわよね、はふはふ、暖かくて最高!
あら、ヘザー…あらあらこれは…玲、ちょっとアンタはコッチコッチ…

あの2人、今はそっとしておきましょ
ほら、アンタには可愛いアタシって彼女がいるんだから…抱き締めて、キスして、しっかり堪能しなさいよ?


雨音・玲
【ファブル】で参加

他のみんなより早めに準備を始め
黒い前掛けと黒いタオルで髪を纏めて鍋奉行モード

支給された材料は…
葱、菊菜、白菜…葉物
人参、韮、大根…根菜類
自前は…
椎茸、舞茸、シメジ…茸類

後は…
豆腐と油揚げと
野菜鍋となると結構淡白だよな

よし下処理完了っと
酒蔵から酒粕を分けて貰ったから味噌と合わせて「粕汁鍋」としゃれ込むか
出汁を取れないのは結構きついな、その分手間かけるしかねーな

時間を掛けて灰汁を取りながら味を凝縮させていきます

歓迎会開始、美味そうにみんながつつき始めたら満足そうに眺め

〆のご飯の準備を行います

んっ?エイルどうした…
あぁ了解了解
それじゃぁちょっと俺の手伝いしてくれるか?


ルトルファス・ルーテルガイト
【ファブル】で参加

…油揚げしか狙わないって、狐の仕業か?
…変な話だが、オブリビオンを無視できんしな。

…菜食主義な身にとって野菜鍋はありがたいし
連戦が続いて、真面に座を取って食事も
してなかったから、いい機会だ。
…俺の歓迎会(?)も含め、玲の鍋をヘザー・エイルと
一緒に食べながらオブリビオンの情報を探るとしよう。

…野菜も汁も食べていくと体が温まってくるが
ヘザーが酔った様な状態(?)で寄りかかってきて。
…あぁ、確か粕汁…酒粕を使った汁がベースだって言ってたが、もしや…?

…ん?なんだいきなり、悪い事なのに悪くないって。
…何の話って、寝ぼけてるか…これ?
…おーい、まだ依頼あるんだから起きろ~。(頭を撫で)


ヘザー・デストリュクシオン
【ファブル】で参加

わー、屋台がいっぱいなの!
お祭りみたい!お祭りなの?
どこのなべもおいしそうだけど、玲くんのなべが一番楽しみなの!
それに今日は片思いの人のルトルファスくんのかんげい会だから、うれしいし楽しいの!
いっぱいなべ食べようね、エイルちゃん!
玲くんが料理してる間に敵について聞いてみるの。

はあー、玲くんのなべおいしー!
野菜も汁もおいしいし、ぽかぽかふわふわふにゃあ。
んん?よっぱらってないの。おしゃけのんでないの。
でもねむくてルトルファスくんにもたれかかって、うとうと。

あのね…わたし、すごくわるいことしたの。
でもね、わるくないの…。
だから…こわがらないで…。
だって…ねむい。なんの話だっけ?



「鍋! 祭り! 歓迎会!!」
 楽しげに浮かれる人々に負けじとテンションを上げているエイル・ヒルドル。
 元々お祭り等のイベントでは大いにはしゃいで楽しむタイプだ。
 今回も余す所無く堪能する腹積もりらしい。
「わー、屋台がいっぱいなの!」
 そんな彼女の隣で同じ様にはしゃいでいるのはヘザー・デストリュクシオンだ。
 いつも天真爛漫元気一杯なヘザーだが、今日は何時に無くテンションが高い。
 その理由は、傍に立つ青年にある。
「……油揚げしか狙わないって、狐の仕業か?」
 楽しげな女性陣とは違い、今回の事件に頭を悩ませているルトルファス・ルーテルガイト。
 聞けば聞く程謎が深まって行きそうな内容から真実を手繰り寄せ様と奮闘中だ。
 むむむと眉根を寄せて考え込む彼に注がれる熱っぽい視線には気付かない。
「それじゃ、鍋の準備をしておくから。その間の聞き込みは任せた」
 共に黒で揃えた前掛けとタオルで料理人兼鍋奉行モードに入っているのは雨音・玲だ。
 自前で持ってきた椎茸舞茸シメジのキノコ三種類が入った籠を手に、会場の端の方へと歩いて行く。
 のんびり身内で鍋を楽しむには丁度良さげな場所だ。
「まっかせなさい! ガンガン情報仕入れちゃうわよー!」
「その分料理はお任せするの!」
 鼻息荒くふんすふんすとやる気を漲らせている二人へ苦笑を返し、玲はルトルファスへ視線を向ける。
「まぁ何事も無いとは思うけど、三十分くらいで戻ってくる様に頼むぜ」
「承知した」
「早速行きましょ!」
「ルトルファスくんも早く早く!」
 賑やかに喧騒の中を進んでいく三人を見送りつつ、玲はさて、と腕捲りをして下拵えに取り掛かる。
 長葱、菊菜、白菜、人参、韮、大根、椎茸、舞茸、シメジ、豆腐、油揚げ。
 これらが今回の野菜鍋の具材だ。
「出汁を取れないのは結構きついな、その分手間かけるしかねーな」
 鶏や魚の骨から出汁を取ったりするのも実に旨いが、今回は野菜メインと言う事でそれらは使わずに仕上げる心算の様だ。
 手際良く人参や大根の皮を剥いて、食べ易い大きさに切っていく。
 小さく刻むよりは多少煮込むのに時間が掛かっても大きめにして楽しむのが良いだろう。
 火の通りにくいものから順に鍋に入れ、椎茸の戻し汁も加えていく。
 途中、小まめに灰汁を掬っていくのも忘れない。
「そろそろ良いか」
 そう言って彼が取り出したのは味噌と酒粕。
 今日の為に馴染みの酒蔵から酒粕を分けて貰って来ていたのだ。
 これを入れると、出汁とはまた違った深みと味わいが鍋に染み渡っていく。
 味噌の量を調整しつつ、もう一煮立ちさせたら完成だ。
「うはっ、これはお腹が空いてくるやつ!」
 酒粕と味噌の香りが匂い立ち、腹の虫を刺激し始める。
 次から次へと湧き出てくる涎を飲み込みながら鍋を混ぜて火が十分に通ったか確認していると、聞き慣れた声が届き始めた。
「いやー、美味しそうな匂いに思わず気も漫ろよね」
「ただいまー!」
「む、この食欲をそそる匂いは……!」
 丁度三人が戻ってきた。
 手早く箸と冷たいお茶と取り皿を用意していく。
「おう、おかえり。先ずは鍋にしようぜ、ほいお手拭」
「あぁ」
 大き目の卓に腰掛るルトルファス。
 お手拭で手を拭いているが、その視線はチラチラと鍋に向かっている。
 菜食主義の彼にとって野菜鍋は実に有難い一品。
 加えて最近は猟兵として戦いに赴く日も多く、今日の様に落ち着いた食事を取る機会は随分とご無沙汰であった。
 その所為か、期待を隠し切れずに少しそわそわしている。
 そんな彼の隣に座り、楽しそうに微笑んでいるヘザー。
 今回の旨いもの市に合わせ、彼女達の所属する旅団【地下バル『ファブル』】にルトルファスが所属した事の歓迎会も一緒にやろうと計画していたのだった。
 想いを寄せている彼の歓迎会と言う事も有って、いつも以上にヘザーは御機嫌なのである。
 知らずに緩んでくる口許からは嬉しい楽しいと言った感情が漏れ出ている。
「ヘザー! たくさん食べるわよー!」
「いっぱいなべ食べようね、エイルちゃん!」
 笑顔いっぱいの親友へ負けないくらいの笑顔を向けつつ、エイルも席に着く。
 愛する玲の手料理に、ルトルファスの歓迎会、そして終始ご機嫌なヘザー。
 盛り上がる要素しかないと深く頷きつつ、獲物へ狙いを付ける様に箸を構えて玲へ問い掛ける。
「玲、具の貯蔵は十分よね?!」
「一応倍の八人分の量で作ってるから皆満足出来ると思うぞ」
 きらりと目を輝かせながら聞いてくる彼女へ応えつつ、皆の取り皿へ鍋をよそう。
 全員分行き渡ったら、両手を合わせていただきます。
「んーー! やっぱり玲の料理って美味しいわっ」
 頬を押さえながら染み出てくる旨味と出汁のコンビネーションに震えるエイル。
 火傷には注意が必要だが、旨味の全てを吸った大根は極上の美味しさである。
「舞茸の食感と白菜の味も良いな。豆腐も熱々で味が染みていて……お、こっちの人参も甘くて旨い。またこの酒粕の香りが何とも絶妙だな」
 普段は口数の少ないルトルファスだが野菜鍋を大絶賛だ。
 勢い良く食べ進めている所為か、その長い黒髪で隠れた額にぷつぷつと汗が噴出し始めている。
「はあー、玲くんのなべおいしー! 野菜も汁もおいしいし、ぽかぽかふわふわふにゃあ」
 ヘザーは満足そうに汁を啜り、白菜で葱と韮を巻いて食べている。
 噛むとじわりと広がっていく旨味と、味噌のほっとする味わいに幸せいっぱいな様子。
 三者三様の幸せそうな笑顔を満足そうに眺めながら、玲も食べ進めていく。
「野菜だから味も食べ易いし太らないしガンガン入るわよね、はふはふ、暖かくて最高!」
「そう言えばエイル、聞き込みはどうだった?」
「んー、中々有力なのは無かったわね。確実にこれ、って言える証言には出会えず、後は役人さんが調べたのを聴き齧ったと思しき情報がちらほら有ったくらい」
 油揚げをはふはふやりながらエイルが答える。
 如何やら新しく出て来た情報は無かったらしい。
 空振りかーと汁を飲み干しお代わりをしようとお玉に手を伸ばした辺りで、ルトルファスが思い出した様に口を開く。
「直接の関係は無いかもしれないが、薬売りを見たと言う人は数人居たな」
「薬売り?」
「あー、そう言えばそんな話も有ったわね。笠を被ったえらい別嬪さんが朝早くに背負子を身に付けて北の道へ向かって行ったとか」
「聞いた限りは華奢そうな女性だったらしいが、重そうな背負子を軽々背負って歩いて行ったとかで印象深かった様だ。不思議なのはこの城下町で日中、その薬売りを見掛けた覚えは無いと言っていた事だが」
「夜に辿り着いて、直ぐ様出発してったんじゃない? 薬を売るにしても、ここじゃ町医者も居るだろうし商売にならなさそうだったとか」
 エイルの考察にふむーと頷きながら箸を進める。
 確かに珍しい事も有った様だ。
 その薬売り、偶々通りすがっただけなのか、はたまた今回の事件と何か関係が有るのか。
(……んー、ダメだな。まだ情報が足りない)
 後で他の猟兵達と合流した時にでも擦り合わせるか、と思った辺りでヘザーが静かな事に気付く。
 玲が目を向けると、ヘザーは何処かとろんとした目付きでルトルファスに凭れ掛かっていた。
「どうした、そんな酔っ払ったみたいに」
「んん? よっぱらってないの。おしゃけのんでないの」
 ルトルファスの声にそう答えるも、ヘザーは気持ち良さそうに枝垂れ掛かり、そのまま彼の腿を枕に倒れ込んだ。
 ふふー、と上機嫌に笑っているから気分が悪くなったとかでは無いらしい。
 その様子を見てルトルファスは首を傾げるが、ふと思い至る。
(酒粕を使った汁がベースだが……もしや……?)
 言うまでも無く、火を通した事で酒粕に含まれていたアルコールはほぼ飛んでいる。
 恐らくは、恋心を寄せる相手との会話、祭り独特の雰囲気、心許せる仲間との食事、酒粕の風味等が合わさった結果アルコールに因らない酩酊の様な状態になったのだろう。
 そう言った意味では彼の懸念は外れているのだが、真相に気付いたのは対面に座っていた玲とエイルの二人だけである。
「あら、ヘザー……あらあらこれは……玲、ちょっとアンタはコッチコッチ……」
「んっ? エイルどうした……あぁ了解了解」
 小声で引き寄せられた玲だったが、直ぐにエイルの言いたい事を察知する。
 この阿吽の呼吸は流石恋人同士と言った所か。
 直ぐ様気配を薄くして二人のお邪魔にならぬ様に動く。
 その動きに気付きはしたが、膝枕状態のヘザーを気遣ってルトルファスは動けない。
 まぁ十分に食べたし良いかと箸を置いて、彼女の頭を優しく撫でていく。
 気持ち良さそうに目を細めていたヘザーだったが、その口が不意に開く。
「あのね……わたし、すごくわるいことしたの。でもね、わるくないの……。だから……こわがらないで……」
「……ん? なんだいきなり、悪い事なのに悪くないって」
 要領を得ない呟きに首を傾げつつ撫で続けるルトルファス。
 続きを聴こうと耳を澄ますも、聴こえてくるのは静かな吐息ばかり。
「だって……ねむい。なんの話だっけ?」
「……何の話って、寝ぼけてるか……これ? ……おーい、まだ依頼あるんだから起きろ~」
 多少気を抜かれつつ、声を掛けながら頭を撫でてみる。
 ヘザーは擽ったそうに笑みを零すが起き上がる様子は無い。
 どうしたもんかと小さく微笑むルトルファス。
 そんな二人を横目で見守りつつ、エイルはエイルで玲に抱き付いていた。
「あの二人、今はそっとしておきましょ」
「そうだな」
「ほら、アンタには可愛いアタシって彼女がいるんだから……抱き締めて、キスして、しっかり堪能しなさいよ?」
「それじゃぁちょっと俺の手伝いしてくれるか?」
「え、あ、ちょっとぉ!」
 甘えてくるエイルをいなしつつ、玲は鍋に投入する〆のご飯の準備を始める。
 料理人兼鍋奉行としては、この〆を御座なりにする訳にも行かないのだ。
 袖にされて頬を膨らませて可愛らしく抗議をしてくるエイルを宥める様に撫でつつ、玲は耳元で囁く。
「帰ったら存分に堪能させてもらうから」
「……おっけい!」
 良い笑顔でサムズアップを返すエイル。

 なお、一部始終を目撃したとある町人は鍋を一口も食べていないにも関わらずお腹いっぱいになったと友人に愚痴を零しに行ったそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋神・美麗
ベルカさん(f10622)と参加

今回は野菜鍋かぁ。野菜鍋なら白菜と大根とキムチでキムチ鍋とかいいかしらねぇ。後、きりたんぽ鍋も良いかも。鍋が空いたら作ろうかしらねぇ。

まずはベルカさんと手を繋ぎながら移動して並んでる鍋を楽しむ
ベルカさんにあーんされたら
「流石にこんな場所だとちょっと恥ずかしいわねぇ」
僅かに頬を染めながらもあーんされる

鍋が空いたらキムチ鍋やきりたんぽ鍋を作って周囲に振るまいながら盗難事件やオブリビオンについて聞いて回る


ベルカ・スノードロップ
美麗(f01866)さんと参加。
「どんなものが、頂けるのでしょうか。楽しみですね♪」
【料理】の知識や技能を活かし、食べる方で楽しみます。

野菜鍋なら、「せり」も良いですね。
野菜のしゃぶしゃぶみたいなものです。

美麗さんと、はぐれない様に手を繋ぎ(場合によっては腕を組んで)色々と食べ歩き
美麗さんに「あーん」したりします。
もちろん、火傷しない様に、ふーふーして冷ましてからです。

飲み物とかも現地調達します。
あ、本題を、忘れてるなんて事は、ありませんよ。
屋台の人達から、【コミュ力】を駆使して【情報収集】します。

美麗さんが、お鍋を振る舞うみたいなので、そのお手伝いもしますね。



「今回は野菜鍋かぁ」
 出店を回りつつ様々な鍋を楽しむ緋神・美麗。
 すっかり馴染みとなったこの藩を、今回も美食を求めて練り歩く。
「どんなものが、頂けるのでしょうか。楽しみですね♪」
 その彼女の隣を歩くのはベルカ・スノードロップ。
 柔和な顔付きと柔らかい物腰から女性と間違われる事も有るが、彼は列記とした男性である。
 人混みで逸れない様にお互いの手を繋いでいるが、意外に彼の身長が高い所為か微妙に目立っているのはご愛嬌だろう。
「野菜鍋なら白菜と大根とキムチでキムチ鍋とかいいかしらねぇ。後、きりたんぽ鍋も良いかも。鍋が空いたら作ろうかしらねぇ」
 美麗は特に気にした様子も無く出店の鍋を一杯買っては満足げに食べ進めている。
 今二人が歩いているのは広場へ続く小道通り。
 普段は閑静な民家が立ち並ぶこの通りも、旨いもの市の時は軒先を貸し出して出店会場としている。
 とは言え余り大掛かりなものは出来ないので、お椀一杯程度の鍋を振舞う所が多い。
 食べ終わった食器は広場手前の回収所へ持っていけば幾らかの小銭が戻ってくるシステムだ。
 中々に好評な様で祭りの客からの評判も上々。
 帰ってきた小銭でもう一杯楽しみに行く人も多く、上手い商売と言えよう。
「野菜鍋なら、芹も良いですね」
「あー、サッと湯に潜らせるとシャキシャキして美味しいのよねぇ」
「野菜のしゃぶしゃぶみたいなものですからね」
 楽しげに会話しながら歩く二人。
 擦れ違う人達は二人を見て驚きに目を見張る。
 ベルカの身長がサムライエンパイアでは類を見ない程の高さだと言うのも有るが、この場合は何方かと言えば彼の左手に重ねられたお椀の塔の所為だろう。
 相変わらずの健啖具合で二桁を超えるお椀を積み重ねてきた美麗。
 果たして食べた分は何処へ消えるのか。
 彼も多少気にはなったが、彼女のエスコート役を仰せ付かった身としては取るに足らない事としている。
 多少の衆目を集めながら回収所へお椀を返しに。
 担当のおばちゃんが目を丸くして驚いたりと小さなイベントを挟みつつ、受け取った小銭で周囲の出店から鍋の具材を買い込んでいく。
 広場の傍には自分で鍋を作りたい人向けに具材を販売している。
 一応自分達でも食材は持ってきたが、直に新鮮な野菜を見れば買って食べたくなるのが人情と言うものである。
「おっと」
 広場前は流石に人通りも多く、だいぶ混雑している。
 逸れてしまわない様に腕を組んで美麗を抱き寄せつつ、人混みを掻き分けていく。
「ありがと、流石頼りになるわね」
「いえいえ、このくらい」
 先程より少し距離を近くして、二人は調理スペースへと辿り着く。
 簡素なものだが一通りの道具は揃っている。
 流し横へ買ってきた食材を置いて、早速鍋を作り始める美麗。
「さて、キムチ鍋ときりたんぽ鍋でも作りますか」
「お手伝いしましょう」
 持ってきたキムチとたんぽも出して調理開始。
 普段は作るよりも食べる事の方が多い美麗だが、ちゃんと料理もそつなくこなせる。
 手際良く葱やら白菜やらを切っていくのを横目で眺めつつ、ベルカもお手伝い。
 二つ鍋を作るので一つ一つの作業は手早く終わる。
 たんぽを食べ易い大きさに切っていけば、見慣れたきりたんぽが出来上がる。
「そう言えば野菜鍋って言ってるのにお米で出来たたんぽ使って大丈夫なのかしら」
 具材を煮込みながら、ふと美麗がそんな事を呟いた。
「……まぁ、広い目で見ればお米も植物ですし」
「そうね……まぁ、アレよ。美味しければセーフだわ」
 二人でうんうんと頷く。
 この藩では美味しいものであれば或る程度の事は許されるのだ。
 と言う訳でぐつぐつ煮込んで行くと、辺りに刺激的な香りが充満していく。
 キムチ鍋からは辛そうな匂いが、きりたんぽ鍋からはおこげにも似た匂いが。
 堪らず、お祭り客が数人寄って来た。
 体格の良い男性、品の良さそうなご老人、それに小さな娘を連れた若い夫婦。
「おぉう……なんて美味そうな匂いだ」
「お嬢さんがた、良ければご相伴に預かりたいのですが……」
「勿論! 美味しいものは皆で食べてこそよ!」
 腰に手を当てて胸を張る美麗。
 ベルカも取り皿と箸を配っていく。
 丸い卓に腰を下ろして、皆で両手を合わせる。
「いただきまーす!」
 元気良く声を上げた娘さんが、勇んできりたんぽを口に運んでいく。
「あぁ、そんなに急ぐと」
「あふぃ!?」
「やだ、ほらお茶を飲んで!」
 熱々のきりたんぽに舌をやられて、ご両親はてんやわんやだ。
 ご老人はキムチ鍋に興味津々な様子で、一口食べる毎に目を輝かせている。
「ほほぅ、これは白菜漬けに何やら塗してあるのですな」
「唐辛子ですね。紐昆布や鰹出汁、それに変わった所では烏賊の肝なんかも塗して作るんですよ」
「ほぅ、烏賊の肝まで! いやはや、旨い訳ですなぁ」
 ベルカの解説にふむふむと満足げな顔のご老人。
 男性は先程から旨い旨いと上機嫌だ。
 絶賛を受けて嬉しそうにしていた美麗も、鍋を食べようと箸を伸ばす。
 が、横から出て来たレンゲに手を止める。
 見ればベルカが笑顔で待ち構えていた。
「あーん」
「へっ?」
「ふーふーしてあるので大丈夫ですよ」
「いやぁ……流石にこんな場所だとちょっと恥ずかしいわねぇ。……あーん」
 差し出されたレンゲを咥え込み、きりたんぽと白菜を咀嚼していく。
 出汁の利いた良い味が出ているが、気恥ずかしさからか微妙に味が解り辛い。
「あらあら♪」
「あらあらー♪」
 二人の様子を見た母親が口に手を当て、面白そうに微笑んでいる。
 娘さんはそんな母親の真似をしているが意味は解っていなさそうだ。
 暫く冷やかされながら鍋を楽しみ、一息付いた所で本題を振ってみる。
「そう言えば最近の油揚げを盗んでいくって事件、何か聞きました?」
「あー、そんな話も聞いたが生憎何も知らないなぁ」
 聞けば皆この旨いもの市の為に、近くの村からやってきたらしい。
 その為詳しい事は何も知らないのだと。
 これは外れだったかな、と思った矢先、娘さんが元気良く声を上げた。
「とちゅうでお姉さんなら見たよ!」
「お姉さん?」
「あぁ、この城下町に来る途中で笠を被った薬売りの方を見掛けたんですよ。うちのカミさんには負けますが、中々顔立ちの整った人で」
「あらやだ、もうお前さんったら」
 惚気始める夫婦。
 居心地の悪そうな娘さんの表情に小さく笑いを零していると、男性からも声が上がった。
「そう言えば俺も見掛けたな。北の道を行くと山へ続く分かれ道が有るんだが、別嬪さんはそっちの山へ入って行ったなぁ」
「私も見掛けましたな。はて、あの道を辿っても集落は無かったと思うのですが……」
 続くご老人の言葉を受けて考え込む二人。
 山へと続く道を歩いて行く謎の薬売り。
「ミステリーの香りがするわね」
「何らかの関係が有るかもしれませんね」
 今はまだ謎に包まれた情報だが、覚えておいて損は無い。
 一先ずは鍋の残りを片付けつつ、腹ごなしに別の鍋でも食べに行こうと気持ちを切り替える美麗。
 景気良く鍋を食べ進める彼女へ、ベルカは微笑ましげな視線を向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『妖狐忍』

POW   :    魅了の術
【全身】から【魅了の術】を放ち、【幻惑】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    小刀一閃
【小刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    狐火
レベル×1個の【狐火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:すねいる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 思い思いに鍋を楽しんだ猟兵達。
 一度合流して集めた情報を繋ぎ合せて行く。
 一つ目――手際良く忍び込む技術を持った複数犯。
 二つ目――盗まれた油揚げは十貫を超えると言う大荷物。
 三つ目――朝早く、背負子を背負った薬売りが北へ向かった。
 四つ目――集落の無い山道へと消えて行った薬売り。
 それぞれは取るに足らない小さな情報だが、妙に引っ掛かる。
 もしかしたら。
 確証は無いが、猟兵達は一つの物語を紡ぎ上げる。
『薬売りに扮した下手人達が、背負子の箱に油揚げを詰めて、塒へ持ち去って行った』
 現状で手に入った情報から考えられるのはこれだ。
 全くの見当外れかもしれないが、今の所は他に当ても無いのも事実。
 外れたら外れたで良いさと気楽に構えて、猟兵達は目撃情報の有った山道へと向かってみる事にした。
 城下町からも程近い場所で分たれた山へ続く道。
 一応警戒しつつ登っていくと、古びた寺院が見えてきた。
 老朽化が激しく、長らく放置されているらしい。
 廃寺とは塒らしくなってきたと誰かが思ったその時、女性の声が響き渡った。
「て、てきしゅーーーーー!?」
 見れば狐耳を生やしたピッチリなめらか忍者服の女性が此方を指差していた。
 オブリビオンやんけ。
 瓢箪から駒と言うのか、差程期待していなかったが見事オブリビオン達が拠点にしている塒を見付け出した猟兵達。
「猟兵じゃないの!」
「油揚げは渡さないわよ!」
「もう食べちゃったんだからね!」
「おいしかったです。まる」
 わらわらと出て来るオブリビオンを蹴散らし、彼女達を取り纏めるボスを引き摺り出そう!
エイル・ヒルドル
【ファブル】で参加

うわ、またやたらと色っぽい狐が来たわね……玲はあんなのに誘惑されちゃダメだからね!
やるわよヘザー、あの狐達からアタシ達の好きな人を守るんだからっ

ヘザーが囮になる作戦ね、乗ったわ!
ならアタシは地形を利用しつつダッシュで接近、第六感と野生の勘を活かして狐の小刀一閃を咄嗟の一撃で【模倣剣】で受け止める

ふふん、その剣技…アタシの方が上手く使えるわ!
模倣剣で得た小刀一閃を早業の二回攻撃で幾重にも繰り出し、仲間達と共に息もつかせぬ連続攻撃で狐達を一斉になぎ払う!

アタシの男にぃぃ!手を!出すなぁぁぁぁぁ!
玲への接触を阻止しつつ、ヘザーと一緒に狐をボッコボコにしちゃうからねっ


ヘザー・デストリュクシオン
【ファブル】で参加!

にゃー?しごと?てき?…壊しあい!

ん?…ちょっと、ルトルファスくんに近づかないで!お色気に好かれてるんだから!
ルトルファスくんに攻撃しようとしてた敵に飛び蹴りを食らわせるの。
でも数が多いからUCで敵の好きな大きな油あげになって、捕まらないような速さでダッシュで逃げておびき寄せて一か所に集めるの。
それからみんなでいっせいに攻撃して一気に壊すの。

っ!ルトルファスくんに触んないで!
みりょうしてる敵に力溜めして全力でかかと落とし!
もう、せっかく楽しい気分だったのにだいなしなの!
…ルトルファスくん、さっき敵にだきついてたけど狐が好きなの?猫と兎より犬なの?

もう、ボスと早く壊しあうの!


雨音・玲
【ファブル】で参加
ヘザーも単身囮とか無茶するよな…
俺はいつも通り、距離を詰めながら喧嘩殺法で殴り倒し

早業と武器受けを活かしながら
空中を舞う『狐火』とあからさまに向けて来る『魅了の術』の効果を
冷めた表情で両手に宿した『浄化の炎拳』で
「「パンッ!!!」」と打ち払い
「だから何?」と散らしていきます

誘惑?う~~ん、確かに色っぽいけどさ
別に俺の好みじゃねぇしなぁ~
なんせ最高の女が居るし?

あぁ~~・・・
うん、お楽しみ見たいだけど…ルト?助けようか?

炎拳で効果を打ち払おうとした瞬間
背後から感じる寒気に一気にその場を飛び退き
女子二人の鬼神のような表情と動きに黙ります

…うん、恋する女子はマジで怖いわ…


ルトルファス・ルーテルガイト
【ファブル】で参加

…やっぱり狐の仕業か、典型的過ぎるだろ。
しかも狐女って、過去の経験的に嫌な予感が…。

…此処は面倒事になる前に手早く始末を。
ヘザーがおびき寄せた敵に向けて、エイル・玲と合わせて
剣による【属性攻撃】の【全力魔法】を放って攻撃

あっ、老朽化で割れた床に足をとられ…!?
(女難体質(UC)発動、転倒先の狐女の方へふにょんとダイブ)
…あっいやその…ごめんなさ…っ!!?
(しかもその儘、狐女のUCが発動して危険な状態に)

…待ってヘザー誤解…いや、狐・犬or兎・猫どっちって
論争してる場合じゃ…。
って貴様ら(狐女)も『私達の方よね?』って詰め寄るなぁ~!?
必死の思いで振り払いながらの剣振り下ろし。



「うわ、またやたらと色っぽい狐が来たわね……玲はあんなのに誘惑されちゃダメだからね!」
「にゃー? しごと? てき? ……壊しあい!」
 突然の接敵では有ったが即座に身構えるエイル・ヒルドルとヘザー・デストリュクシオン。
 現れたのが妙に色っぽい服装の女オブリビオンと言う事も有って、想いを寄せる相手が居る二人は警戒心をバリバリに剥き出している。
 特にヘザーの顔付きはこれまでに見た事が無い程に険しい。
 理由は一つ。
 ルトルファス・ルーテルガイトの存在だ。
 持って生まれた資質なのか、はたまたそう言う星の下に生まれたのか。
 彼には拭い難く、女難に巻き込まれる性質が有った。
 具体的な事象は割愛するとして、過去の経験が脳裏を過ぎったのか彼は口の端を若干ひく付かせながら『精霊剣』を抜いた。
「……やっぱり狐の仕業か、典型的過ぎるだろ。しかも狐女って、過去の経験的に嫌な予感が……」
「あー……大丈夫か?」
 雨音・玲はそんな彼の様子を察してか気遣う様に声を掛ける。
 色々と耳にする事が多い彼の女難癖だが今回ばかりは少々拙い。
 今にも飛び掛って行きそうなヘザーから、此方にも解る程度に敵意が漏れ出ている。
(こりゃ一悶着有りそうだな……)
 こう言う時だけ矢鱈と当たる嫌な予感に頭を振りつつ、玲は妖狐忍を見遣る。
「むっ!」
「意外と良い男じゃない!」
 向こうも玲とルトルファスを見て相好を崩す。
 男相手ならば与し易いと思ったのか、彼女達は狙いを二人に絞った様だ。
 舐め回す様な視線にぞくりとしながら、ルトルファスは右手を振り抜く。
 玲が扱う炎に合わせて氷の属性を刀身に纏わせ、牽制がてら彼女達へと飛ばす。
 それを皮切りに、ヘザーが駆け寄って行った。
「ルトルファスくんに近づかないで! お色気に好かれてるんだから!」
 想い人がガックリと肩を落としたのには気付かず、ヘザーは氷の斬撃に続いて飛び蹴りを放つ。
 咄嗟に飛び退いて離れる妖狐忍達へ、エイルが腰の後ろから抜いたショートソード『マローダー』を手に迫る。
 余り彼女達を散らさない様に牽制しつつちらりと横目で窺うと、ヘザーは小さく頷いてユーベルコード【兎の幻惑】を発動させた。
 閃光の如き衝撃が網膜を襲い、顔を顰める妖狐忍達。
「何を……」
 警戒を滲ませる彼女達だったが、その意識は困惑と昂揚で塗り潰された。
「油揚げだ!」
「え、なにこれ何人前!?」
 言葉に喜色を滲ませながら目を見開く妖狐忍達。
 当然、この戦場に油揚げ等無い。
 ヘザーの使用したユーベルコードの効果で、彼女の姿が妖狐忍達には巨大な油揚げに見えているだけだ。
 匂いは誤魔化せないし視覚から得られる情報が歪んでいるだけの簡素な幻覚ではあるが、食いしん坊を体現した様なハラペコくのいちには効果抜群。
 ひらひらと動き回るヘザーを追い回し始めた。
 囮を買って出た彼女の意図を汲み、エイル達は気を抜いた妖狐忍達へ急襲を仕掛ける。
「せぇぇいっ!!」
 先ずはエイルが飛び込む。
 手にしたマローダーを煌かせ一体の首を切り裂き、返す刃で心臓へ突きを放つ。
 気付いた妖狐忍が小刀を振るい【小刀一閃】を狙って来るが、エイルはニヤリと笑ってユーベルコード【模倣剣】を使う。
 甲高い金属音を響かせながら刃を止めた小剣に、妖狐忍は目を見開く。
 当たった対象を切断する力を乗せた一撃はユーベルコードで対抗される。
 相反する能力を持ったものがぶつかり合えば、勝敗は地力の強さで決まる。
「ふふん、その剣技……アタシの方が上手く使えるわ!」
 手首を返して小刀を身体の外側へ逃がし、滑らせる様に小剣を伸ばす。
 放つのは今し方コピーした【小刀一閃】だ。
 柔肌へと潜り込んだ刃が肉と骨を切断し、血飛沫を跳ね上げながら命を刈る。
 一瞬の攻防で三体を屠ったエイルの横では、玲が両の拳に炎を宿して突き進む。
「手加減はしないぜ!」
 ユーベルコード【浄化の炎拳】を発動した拳を振るい、妖狐忍を殴り斃していく。
 正面の妖狐忍が苦し紛れに放った【狐火】を温いとばかりに打ち払い、腰を落として真っ直ぐに深く突き出す。
 浄化の炎を打ち破る前に打ち込まれた拳に吹き飛ばされて竹薮の向こうへと消えていくのを見送りつつ、玲は身体を反時計回りに動かす。
 左脚の踵が地面に付くのと同時に左肘を打ち込む。
 鋭い一撃に堪らず身体をくの字に折った妖狐忍の顔面へ、容赦の無い裏拳を放つ。
 肉が潰れ骨が割れる感触を手の甲に感じながら、追撃の回し蹴りで吹き飛ばす。
 如何やら彼女達は篭絡や情報収集と言った諜報特化型らしく、近接戦闘での脅威は無さそうに思える。
 駄目元で放たれた【魅了の術】は軽く拳を払っただけで霧散していく始末だ。
「男の癖に私の魅了が効かないとか……!」
「う~~ん、確かに色っぽいけどさ。別に俺の好みじゃねぇしなぁ~。なんせ最高の女が居るし?」
 手首のストレッチをしながら涼しげに答える玲。
 それを聞いてエイルは嬉しそうに口をもごもごさせながら妖狐忍を斬り飛ばして行く。
 そんな中、事件が起きた。
「あっ」
 精霊剣を手に妖狐忍達と切り結んでいたルトルファスの身体が前へ傾く。
 長い時間の中で朽ち果て割れていた石畳の凹みに足を取られ、体勢を崩したのだ。
 不意の動きであり殺気も乗っていなかった為、切り結んでいた相手の妖狐忍も反応出来ずに居た。
 この時、ユーベルコード【女難の不幸体質】が発動する。
 異性相手に起こる様々なハプニングと連なる被害を甘受する代わりに、それに見合うだけの幸運が引き寄せられると言う、何とも扱い難そうなものだ。
 効果も相俟って彼の身体は吸い込まれる様に倒れ込んでいく。
「あんっ」
 ふにょり、と柔らかな感触が顔全体に広がる。
 丁度倒れ込んだ先に妖狐忍の胸の谷間が有った。
「……あっいやその……ごめんなさ……っ!!?」
「あら、やだこの子かわいいじゃない♪」
 飛び込まれた妖狐忍は魅了に自信が有ったのか、満更でも無い様子でルトルファスの頭を抱える様にして抱き締めている。
 絵に書いた様なラッキースケベ状態である。
 それを目にして、玲が口を開く。
「あぁ~~…………うん、お楽しみ見たいだけど……ルト? 助けようか?」
 善意の申し出では有ったが、彼はそれを直ぐ様引っ込めた。
 背筋を撫で上げる強烈な悪寒。
 思わず道を開ける様に身体を引けば、ヘザーが表情を亡くした顔で立っていた。
「ヒエッ」
 思わず声が漏れる。
 これまで立ち塞がってきたどんな強敵達よりも強い覇気を感じる。
 悪寒を感じたのはルトルファスも同じらしく、如何にか抜け出そうともがいていた身体がピクリとも動かず硬直した。
「っ!」
 直後、拘束が解ける。
 一瞬で肉薄したヘザーが妖狐忍に全力の踵落としを見舞っていた。
 直前まで何処か勝ち誇った様な笑みを浮かべていた妖狐忍の頭蓋が凹み、そのまま全身が灰となって崩れ落ちる。
 支えを失って倒れそうになっていたルトルファスを受け止めつつ、ヘザーは残る妖狐忍達へと睨みを利かせた。
「ルトルファスくんに触んないで!」
 強く抱き寄せて威嚇すると、余りの勢いに思わず妖狐忍達も後退る。
 何はともあれ色々と危うい所を救ってもらったのには変わりない。
 お礼を言おうと顔を上げるルトルファスだったが、それよりも早くヘザーが口を開いた。
「……ルトルファスくん、さっき敵にだきついてたけど狐が好きなの?」
「へ?」
「猫と兎より犬なの?」
「……待ってヘザー誤解……いや、狐・犬or兎・猫どっちって論争してる場合じゃ……」
 後ろめたい事は無い筈なのだが、しどろもどろになってしまうルトルファス。
 それを見て悪戯心に火が付いたのか、妖狐忍達が軽口を叩き始める。
「その子は私達の方が好きみたいだけどぉ?」
「そうよね? だってあんなに情熱的に抱きついてたし」
「そっちの子もどう? ほら、狐耳もふもふよー♪」
「「あ?」」
 底冷えする様な声が二つ重なる。
 ヘザーは元より、迂闊な言動がもう一人の眠れる鬼神を目覚めさせてしまった。
「アタシの……」
 激情を青い瞳の奥に煮え滾らせながら、エイルがゆらりと動き出す。
「アタシの男にぃぃ! 手を! 出すなぁぁぁぁぁ!」
「秒で壊す」
 宛ら、炎と氷。
 奇しくも想い人が操っていた力と同じ属性を瞳に宿して突っ込んで行くエイルとヘザー。
 激しい怒りを伴った攻撃に、妖狐忍達は為す術も無い。
「わぁ……」
「……うん、恋する女子はマジで怖いわ……」
 鬼神の如き暴れっぷりで次々に蹴散らしていく二人。
 怯えと畏れを胸に、ルトルファスと玲は遠巻きに彼女達を見守るしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

唯・刀
【唯刀・兵者凶器】
魅了の術?……なにやら艶かしく体をくねらせているが、俺にはよく分からないんだ
「開き直るな、反省をしろ」
すまん、俺は鉄で出来ているから、本当に肉がある者のひもじさとかを分かってないのかもしれない
「人の者を盗って食うのは悪いことだ。悪いことをしたなら反省して謝らないといけない」
このくらいの事は俺だって知っている
一緒に盗った先の皆に謝るならばそれでよし、反省の色がないようなら
「よし……懲らしめてやろう」
俺は狂人である
故に色香になど惑わず
俺は狂人である
故に小刀になど傷付かず
俺は凶刃である
故に炎を恐れず、躊躇いなく
「斬る……!」
反省の余地あらば痛く半死半生に
救えぬならば痛みなく殺したい


宇冠・龍
由(f01211)と参加
(十貫というと30㎏を超えますね……。泥棒はいけませんけれど、そこまでお腹が空いていたというの……)
ですけど悪さをしたなら懲らしめましょう

【画竜点睛】で怨霊の腕を召喚
どこまでも伸びていく腕達で狐火を捕え、消してしまいます

腕は三百以上ありますからね。残った腕で妖狐忍を捕獲
これ以上悪さをしないと約束するのなら逃がしましょう。盗みを重ねるというのなら……呪詛で弱らせ動けなくなるまで拘束し続けます

弱ればお腹もたくさん空くはず
余った油揚げがあるんですけど、いりますか?
二度揚げしたものなので、さくさくな触感に近いですけど

……ただし、食べるなら、貴女方の首領の場所を教えてくださいね?


宇冠・由
お母様(f00173)と参加

地の利は向こう側にありますわ
狐ですので嗅覚聴覚にも優れています

なので、お母様と一緒に油揚げを沢山持参していきます
私の地獄の炎で炙って、匂いを風に乗せて嗅覚を逆手にとりましょう
近くの敵はお母様が、遠くで潜んでいる敵は私の【天上天下】で呼び出した鳥で空から強襲、首根っこを摘まんで連れてきます

敵衆を無事に捕らえられたら、はしたないですけど狐さんたちの前で油揚げを一口
「美味しいですわ……。さくりとした触感からじゅわりと熱々の汁が口の中に溢れてきます。厚めの油揚げなので、一口ではとても入りきりません」

ここで交渉
油揚げが欲しかったら、洗い浚い吐いてもらいますの



「地の利は向こう側にありますわ。狐ですので嗅覚聴覚にも優れています」
「とは言え取れる手段は少ない、か。此処は愚直に攻め上がるとしよう」
 宇冠・由は燃え上がる身体を寺院の中へ滑り込ませながら周囲を確認する。
 塒にしていただけ有ってこの場所への理解が深いのは向こう側。
 回転扉や仕掛け階段等の面白いギミックは流石に無いだろうが、それでも足場となる箇所や迎え撃つのに丁度良い足場の情報を掴んでいると言うのは強みだ。
 戦いを有利に進める為には、彼女達が持つアドバンテージを詰める一手が欲しい。
 戦術を練る由へ簡潔な答えを返しながら無造作に歩き出すのは唯・刀。
 無銘刀のヤドリガミである彼は、自らの肉体を得物とする。
 リーチと言う面では遅れを取るが、鍛え上げられた手足はそのまま振るっても鋼鉄を両断せしめる程の一撃を放つ事が出来る。
 下手に長物を持つよりも余程脅威となるのは流石と言うべきか。
 そんな二人の後ろ、四脚門の下で真面目そうな顔をしているのは宇冠・龍だ。
 小刀を構えて此方を警戒している妖狐忍達へ視線を送りつつ、彼女は同情や憐憫にも似た感情を抱いていた。
(十貫というと30kgを超えますね……。泥棒はいけませんけれど、そこまでお腹が空いていたというの……)
 生来の温和な性質故か、彼女は相手がオブリビオンと言えど飢えに苦しんでいたのかと思うと非情になり切れずにいる。
 しかし妖狐忍達の振る舞いで被害を受けた人が居るのも事実。
(悪さをしたなら懲らしめましょう)
 むん、と気合を入れ直す。
 対する妖狐忍達はと言えば、自分を鼓舞する意味も有るのか頻りに此方へ挑発染みた言葉を投げ付けていた。
「何よ、猟兵なんかに負けないわよ!」
「いつも美味しいご飯たべてる癖に!」
「此処で打ち倒してやるんだからね!」
 やいのやいのと声を上げる妖狐忍達。
 微妙に締まらない空気が流れている中、ふと由が手をぽんと叩く。
「私に良い考えが有りますの」
 こんな事も有ろうかと持参してきた油揚げを取り出し、左腕の地獄の炎をほんの少し吹き上げさせる。
 黒みを帯びた炎に炙られ、油揚げが柔らかくなり表面の色味を濃くしていく。
 風に乗った匂いを捉えてか妖狐忍達の口が閉じられる。
 鼻をすんすんと鳴らしながら欲望でギットギトになった瞳を向ける。
 当然、その行く先は炙られている油揚げである。
「咲けよ徒花、一つ二つと首垂らせ」
 妖狐忍達の意識が逸れた隙を狙い、龍がユーベルコード【画竜点睛】を発動する。
 虚空から突如現れた無数の怨霊の腕がのたうちながら伸びて行き、気を抜いていた妖狐忍達を拘束に掛かる。
「きゃっ!?」
「わぁっ!?」
 大方は反応間に合わず囚われの身となるが、数人は如何にか逃れる事に成功する。
「ちょっと、何よこれ!」
 伸び行く腕を避けながら、術者である龍を倒そうと一体が飛び向かってくる。
 その行く手を阻むのは刀だ。
「退きなさいよっ!」
「そうは行かん」
 振るわれる小刀を難なく躱しながら手刀で突く。
 紙一重で回避した妖狐忍が反撃に移ろうと足裏に力を籠めた所へ、掬い上げる様に蹴りを見舞う。
「む」
 体勢を崩せれば御の字と言った心算で放った蹴りは、彼の予想を大きく超える結果を齎した。
 左の腰元から脳天まで一気に振り上げられた爪先から僅かに遅れて、妖狐忍の身体がゆっくりと左右に分たれていく。
 漏れ出た血液が石畳を濡らす手前で粉となり、肉体は灰へと形を変える。
「……幾ら女人の姿とは言え、此処まで脆いのか……?」
 首を捻る刀に対し、そちらを向いていた妖狐忍達は顔を青くして動きを止める。
 多くの戦場を渡り歩き、何時しか数える事すら億劫になる程に人を切り捨ててきた過去を持つ彼だからこそ、その鋭さは名刀と呼ばれる一振りにも引けを取らない。
 まだ向かってくる奴は居ないかと巡らされた彼の視線から逃げる様に、幾人かは離脱の構えを取る。
「あら、逃がしませんのよ」
 しかし彼女達の逃避行は第一歩を踏み出す前に頓挫する。
 由のユーベルコード【天上天下】によって召喚された鳥の群れが死角から急襲。
 抵抗する間も無く首根っこを抑えられ、先に捕まっていた妖狐忍達と同じ場所へと送られた。
「ひぇぇ……」
 怯える彼女達へ、先ず刀が歩み寄る。
 先程の一撃ですっかり怯えてしまったらしく、皆顔を引き攣らせている。
 一縷の望みに賭けて【魅了の術】を使ってみるが、彼女達の色香は残念ながら届かない。
 刀は自身をユーベルコード【唯刀・兵者凶器】の効果で強化している。
 力を得る為に自身へと課したのは『狂人であること』なのだから、この場に置いての相性は最悪と言わざるを得ない。
「人の者を盗って食うのは悪いことだ。悪いことをしたなら反省して謝らないといけない」
 威圧するでも宥めすかすでも無く、坦々と告げる刀。
 掛けられた言葉に、怯えつつも一体の妖狐忍が口を開く。
「な、なによ……良いじゃないの、油揚げの一貫や二貫くらい。まだまだいっぱい有るんだし」
「開き直るな、反省をしろ」
 呆れた目を向ける刀の後ろで、静かに龍が脳内で突っ込みを入れている。
(一切れ二切れならまだしも、一貫以上は流石に欲張りさんなのでは……!)
 三人で分けても一人当たり1kg以上だ。
 そんな量の油揚げを食べるとなると、幾ら好物でも厳しそうな気配はする。
 行けるのか行けないのかひっそり悩む龍。
 彼女の思惑はさておき、由はイイ感じに炙られた油揚げを摘んで妖狐忍達の鼻先を擽っていく。
 面白い様に顔を動かして油揚げを追う彼女達。
 誘導は十分とばかりに、由は仮面の下へ油揚げを持っていって咀嚼する。
「あー! ずるい!」
 誰かが悲痛な文句を口にした。
 私にも寄越せと目で訴え掛けてくる彼女達へ、由は言い聞かせる様にゆっくりと口を開く。
「美味しいですわ……。さくりとした触感からじゅわりと熱々の汁が口の中に溢れてきます。厚めの油揚げなので、一口ではとても入りきりません」
 ごくり、と誰かの喉が鳴る。
 その音で意識を戻した龍も懐から油揚げを取り出して見せた。
「余った油揚げがあるんですけど、いりますか? 二度揚げしたものなので、さくさくな触感に近いですけど」
「食べる食べる食べる!」
「わ、私も!」
「ただし」
 騒ぎ始めた彼女達だったが、龍の言葉に続きが有ると解ると一様に押し黙った。
 その反応を見て案外行けそうな雰囲気を感じつつ、条件を突き付ける。
「……ただし、食べるなら、貴女方の首領の場所を教えてくださいね?」
「油揚げが欲しかったら、洗い浚い吐いてもらいますの」
「そ、それは……」
 口篭る妖狐忍達。
 忠誠や敵意から口を噤んだのでは無く、何処か他の仲間と牽制し合う様な妙な空気が流れ始める。
 恐らく油揚げは食べたいが口火を切るのは体裁が悪いからと、他の誰かが口を割るのを待っているのだろう。
 この期に及んで往生際が悪いと言うか何と言うか。
 実直な刀は彼女達の様子に小さく溜息を零す
 それを見咎めたのは彼の正面で捕まっている妖狐忍。
「……なによ、溜息なんか吐いちゃって」
「余りの小悪党っ振りにな。油揚げを盗み出しただけでは飽き足らず、今度は仲間を出汁にする心算か?」
「う、うるさいわよ!」
「反省の余地は無し、か」
 もう一度これ見よがしに溜息を吐いてみせる刀。
 それが引き金となったのか、妖狐忍は首を回して胸の谷間に移動させていた小刀を口に咥えて抜き放ち、刀の顔目掛けて投擲した。
 不意打ちに腰を浮かし掛ける龍と由。
 だが、刀の顔へと向かう小刀が彼を傷付ける事は無かった。
 響き渡るのは軽い金属音。
 頬を切り裂くかと思われた薄刃は彼の皮膚を切り裂く事無く弾かれ、彼の足元へ落ちる。
「――俺は狂人である」
 ぽつりと、彼は呟く。
 その声は今までに聞いたものよりも幾分冷たく響く。
「――俺は強靭である」
 背筋を駆け上がる怖気に、小刀を放った妖狐忍は震える。
 何故刃を肌に受けて傷一つ付かないのか。
「――俺は凶刃である」
 最早一時の猶予も無し。
 そう感じた妖狐忍は【狐火】を生み出して彼を倒そうと攻撃を仕掛ける。
「斬る……!」
 だが生まれた狐火が彼を覆うよりも早く、手刀が空を斬った。
 散らされた狐火が弱弱しく消えていく最中、ごとりと鈍い音が鳴る。
 手刀で断たれた首から上が石畳を転がり、流れ出る血が石畳を濡らしていく。
 しかしそれらは直ぐに乾き、灰と化した肉体と同じ様に風に吹かれて消えていく。
「さて、皆様」
 他の妖狐忍達がそれを見届けたのを確認して、由は穏やかに告げた。
「先程お母様がお尋ねになった貴女方の首領が居る場所……教えてくださいますわね?」
 最早彼女達に逆らう気力は残っていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アマータ・プリムス
はぁ、この子たちが実行犯ですかね?
深く考えても仕方ないですし懲らしめるとしましょうか

なにやらネロがうるさいですしひと働きしてもらいます
「どうしてそんなに張り切っているかは知りませんがほどほどに」
『ケケケ、あいヨ!』

当機はネロも含め皆様のサポートを
指先からフィールムを伸ばして手足に巻き付け動きを阻害
力比べには勝てそうもないですが一瞬でも隙を作れれば十分でしょう

振るわれる小刀もフィールムで受け止めそのまま巻き付け奪い取ります

ネロが大鎌を振り回してはしゃいでいるので当機はそこそこ働けば十分でしょう
奪い取った小刀は適宜投擲して牽制を

いくら油揚げが好きだからと言って人のものを盗んではいけませんよ


神宮寺・絵里香
●心情
・やっぱり狐かよ。ってか、全部食ってるんじゃねぇよ
・まあ、思った通りのオチか
・なんていうか‥‥ここは領主だけじゃなくて、出てくるオブリビオンも大概食い意地が張ってないか‥。まあ、どうでもいいけど

●戦闘
・傘と翼槍の二刀流で戦闘。第六感と戦闘知識で攻撃のタイミングを見切り、水属性を纏った傘で武器受けすることで狐火を掻き消しつつ、カウンターの呪詛を纏った翼槍で薙ぎ払う
・ある程度敵が纏まってきたら、その方向に向けて翼槍を槍投げしてからUCを発動。死の呪詛による範囲攻撃でまとめて殺す
・翼槍を投げ終えたら、黒蛇剣を抜いてその辺に居る敵を狩りに行く
「美味しい思いをしたんだから死んでおけ馬鹿ども」


緋神・美麗
ベルカさん(f10622)と参加
アドリブ・絡み歓迎

まさかオブリビオンがこんなにいるなんてねぇ。やってることはみみっちいけどオブリビオンな以上退治しないとね。
「まだ頭目が控えてるみたいだし、さっさと片付けましょうか」

ベルカさんが敵を翻弄している間に気合い・力溜めで威力を十分に上げて出力可変式極光砲を攻撃回数重視で使用、鎧無視攻撃・衝撃波・誘導弾で命中と威力を強化して弾幕を張って圧倒する

「もふもふは敵が全部片付いて落ち着いてからお願いするわ」


ベルカ・スノードロップ
美麗(f01866)さんと参加。
アドリブ・絡み歓迎

それじゃあ、敵を翻弄しましょうか
「ほら、みんな出ておいで」と、ユーベルコード《もふもふの楽園》を発動
召喚するのは、もふもふな子たちです
【全力魔法】で、いつもより沢山お喚びしましょう

ナインテイルは、九尾の狐さんですし、この忍者さん達には畏敬の念があるかもしれません
【だまし討ち】ではありますけど
モーラットとヒュプノスたちには【範囲攻撃】【追跡】で、敵の攻撃の手が散漫になるように指示出しをしますよ

「もふもふしたいですか?」
この子達も喜びますしね
[じゃあ、敵が片付いたらで」



「はぁ、この子たちが実行犯ですかね? 深く考えても仕方ないですし懲らしめるとしましょうか」
「やっぱり狐かよ。ってか、全部食ってるんじゃねぇよ」
 何の捻りも無い予想通りのオチに、アマータ・プリムスと神宮寺・絵里香は溜息を吐く。
 小刀を構える妖狐忍達はやる気満々らしく警戒心を露にして此方を睨み付けているが、対する二人の心境は何とも言えない微妙なものである。
「なんていうか……ここは領主だけじゃなくて、出てくるオブリビオンも大概食い意地が張ってないか……」
「類は友を呼ぶとありますが……美味しいご飯は食いしん坊を呼ぶんでしょうか?」
 この後に控える頭目と呼ぶべきか、彼女達を取り纏める指導者の思惑は不明だが、今の所食うに困ったオブリビオンが食べ物を求めて盗みを働いたようにしか見えない。
「やってることはみみっちいけどオブリビオンな以上退治しないとね」
「そう言う面では、彼女達も不憫ですね」
 相手が誰でもオブリビオンであればスタンスを変えない緋神・美麗の言葉に頼もしさを感じつつ微笑むベルカ・スノードロップ。
 ともすれば情けを掛けてしまいたくなる程に情け無い様子の彼女達に、上手く表現出来ない哀れみの様なものを覚える。
『ケケケ、御託は良いから始めよォぜェ!』
 一人もとい一体気合を入れているのはアマータの弟たる南瓜頭の案山子人形『ネロ・フラーテル』だ。
 普段は飄々としていたりやる気無さげにしている彼だが、何故か今回はやる気十分。
 トランクから飛び出してぶんぶんと大鎌を素振りしている。
「どうしてそんなに張り切っているかは知りませんがほどほどに」
『ケケケ、あいヨ!』
 解っているのかいないのか、ネロは愉しげに笑っている。
「まぁ良い。此処で潰す」
 彼のやる気に応える様に、絵里香が右脚を踏み込み跳び上がった。
 右手に翼槍、左手に和傘。
 槍は兎も角日用品片手に勝負を仕掛けてくるのを挑発と受け取って、妖狐忍達は憤慨する。
「ちょっと、馬鹿にしないでよね!」
「そんな傘燃やしちゃうんだから!」
 古びた精舎の屋根に乗った所へ、妖狐忍達が【狐火】を放つ。
 妖しげに揺らめく紫を帯びた火が絵里香の元へ殺到する。
 着地の瞬間を狙った攻撃だ、咄嗟には動けない。
 そんな事を考えていた妖狐忍達の視線の先、絵里香は眉一つ動かさずに左手に持った傘で狐火を払う。
 雨冠の巫女である彼女に生半可な火が効く筈も無い。
 邪を打ち払う水の波紋に流され、ぱしゅり、と小さな音を残して狐火は鎮火された。
「えっ、うそっ!?」
 その気になれば町一つ燃やし尽くす事さえ出来る炎と化す狐火だ。
 幾ら燃え移る前の種火だからと言って、こうも易々と掻き消されるとは夢にも思わない。
「な、なんでぇ!?」
 彼女達にとっては現実離れした光景だったらしく、驚愕の声が上がる。
 だが戦場で一々驚いている様では生き残れない。
「辞世の句はそれで良いのか?」
 気付けば眼前に迫っていた絵里香が翼槍を構えていた。
 どのタイミングで動き出したのかさえ解らぬまま、咄嗟に右手を持ち上げて小刀を自身と絵里香の間に滑り込ませる。
「しっ!」
 当然、そんな小刀程度で勢いを受け切れる筈も無い。
 絵里香の振るう『黒翼槍 スノードロップ』は声の様な高く澄んだ風切り音を響かせて、小刀ごと妖狐忍達を弾き飛ばした。
 薙ぎ払われた彼女達は受身を取る間も無く、灰となって屋根から落ちていく。
 呆気無い死を迎えた仲間の惨状に、思わず思考が止まる妖狐忍達。
『ケケケ、余所見してて良いのかヨォ!?』
 突如、回廊の庇の上へと飛び上がる影が浮かぶ。
 大鎌を構えた南瓜頭が、彼女達を見下ろしていた。
「え、あ……!?」
 咄嗟に動けたのは三人の内二人。
 残る一人は回避行動に移る前に、脳天を大鎌で叩き割られた。
 瞬時に灰へ形を変えた妖狐忍を見る事も無く、ネロはけたけた笑いながら両手で大鎌を回して跳び向かう。
 薄汚れた瓦を踏みながら迫り来る案山子人形の攻撃を如何にか避けながら、妖狐忍達は声を上げる。
「ちょちょちょ! こいつの動き封じて!」
「どうやって!?」
「お得意の魅了で何とかしなさいよ!」
「こいつオスでもメスでもない絡繰人形でしょうがぁぁぁ!!?」
 いっそ駄目元で魅了の術でも使ってみるかとトチ狂い始めたその瞬間、彼女達の身体が後ろに倒れた。
「んなぁっ!?」
 受身は取ったが身体を起こそうにも足が動かない。
「当機をお忘れですか?」
 指先から鋼糸『マギア・フィールム』を伸ばしたアマータが問い掛ける。
 彼女が伸ばした鋼糸の先は妖狐忍達の足首と腰元に括り付けられていた。
 如何やらこっそりと拘束していたらしい。
『ケケケ、悪く思うなヨ?』
 当然これだけでは身動きが取れないだけで決定打にはならない。
 時間を掛ければ抜け出せるし、一度喰らえば対処法も解る。
 だが、残念ながらその『次』は無い。
 案山子人形が振るう大鎌に首を刎ねられ、彼女達の肉体が灰となる。
『ケケケケケ』
「はしゃいでるわね……」
 何時に無くテンションハイマックスな弟に首を傾げつつ、アマータは次の目標を見定める。
 派手な動きはネロが、細やかなサポートは彼女が。
 一心同体とも言えるコンビネーションに、妖狐忍達は攻めあぐねている。
 そんなスタイリッシュな戦いを余所に、ベルカの周囲では実に緩い空気が流れていた。
「ほら、みんな出ておいで」
 彼が使うユーベルコード【もふもふの楽園】は、物理的な破壊力と言う面では大した脅威ではない。
 ナインテイル(九本の尾を持つ狐に似た召喚獣)、モーラット(体長30cm程の丸っこい毛玉の様な妖獣)、ヒュプノス(羊をデフォルメした外見の星霊)を召喚して放ち、命中した対象の攻撃力を削ぐと言う、何方かと言えばサポートやデバフを担うユーベルコードだ。
 ちなみにそれぞれ『あんこさん・りんごさん・とまとさん』と名付けられている。
 共通しているのは柔らかな体毛が作り上げる極上のもふもふ感。
 小動物特有の庇護欲を擽るビジュアルと相俟って、気を強く持たないと抵抗は難しい様にも思える。
 対する妖狐忍達の反応はと言えば。
「きゃー! なにこの子!」
「おぉぉ……もっふもふやぞ。まる」
「持って帰りたいわぁ……」
 いっそ無様と言える程に引っ掛かっている。
 完全に愛でるモードへと移行しており、もふもふカフェか何かと錯覚する程度には平和な光景が広がっている。
 偶に攻撃の余波や流れ弾で一体二体くらい仲間が消し飛んで行くが、彼女達の視線はもふもふに釘付けである。
「何でしょう、この若干の申し訳無さ」
 頬をぽりぽりと掻くベルカは、目論みを超える成功を実感しつつも微妙な居た堪れなさに苛まれていた。
 陽動足止めを主眼に置いたもふもふによる作戦は功を奏している。
 少し離れた所で電球の弾幕を放って戦っている美麗の援護にもなっているのは間違い無いのだが、イマイチ戦っている感が無い。
「怪我しない分良いのかもしれませんね……」
「はっはー! どっからでも掛かって来なさい!」
 そんな平和なもふもふエリアの隣では、美麗が大立ち回りを披露していた。
 彼女はユーベルコード【出力可変式極光砲】による電球での射撃戦を挑んでいる。
 当初はベルカの召喚獣に逆魅了されていた妖狐忍達だったが、当然我に返る者も居る。
 そうして戦意を取り戻した彼女達を相手取り、次々に数を減らしていく。
「そんなんじゃ私の弾幕は突破出来ないわよー!」
 もふもふの援護で十分にエネルギーを充填する時間を稼げた彼女の攻撃は、普段の数倍苛烈さを増している。
 拳大の電球が視界を埋め尽くす程に並び、矢弾よりも速く飛び向かい、着弾したら弾けて周囲に電撃をばらまく。
 小刀や狐火で迎撃しようと奮闘するも、数の暴力の前には無力だ。
「ず、ずるいわよ!」
「ひきょうものー!」
「卑怯もラッキョウもないわよ!」
 容赦無く電球を撃ち放って行く美麗。
 展開された圧倒的な弾幕の前に、妖狐忍達は為す術も無い。
 如何にか弾幕を逃れて攻撃を仕掛けようとする者も居たが、下手に動くと伸びてくる鋼糸に足を取られて転んでしまう。
「アマータさん、ナイスアシスト!」
「サポートはお任せください」
 グッとサムズアップを贈りつつ倒れ込んだ妖狐忍を電球で消し飛ばして行く。
 命中すると光が弾けて妖狐忍が灰に変わるまでを覆い隠してくれるので、グロ的な映像が視界に映らないのもポイントだ。
「しかしサクサクですねぇ。あ、美麗さんもこの子達をもふもふします?」
「もふもふは敵が全部片付いて落ち着いてからお願いするわ」
「じゃあ、敵が片付いたらで」
 そんな雑談を交わす余裕さえ有る。
 絡め手中心で浸透作戦を取られていたら厄介だったかもしれないが、カチコミを食らわせてしまえば蹴散らすのは簡単な様だ。
「く、くぅ……! 撤退! 撤退よ!」
 止まない弾幕に形勢不利と悟って、妖狐忍達は逃走を図る。
 追撃しつつその背を見送りながら、美麗は同情を含んだ呟きを落とした。
「あらー、まだ私の所でやられた方が怖くなくてすむのに」
「ひにゃああああーーー!?」
「いわんこっちゃない」
 妖狐忍達が逃げ出した先で悲鳴が上がる。
 半壊した蔵の周りまで走っていた妖狐忍達の一団の中心に、小さなクレーターが出来ている。
 その中央には、一本の黒い槍が突き立っていた。
「うごごご」
「え、なに!?」
 次の瞬間、槍は無数の黒い羽根とスノードロップの花びらに姿を変えた。
 黒と白、対照的な色が織り成す幻想的とも言える光景が広がるが、妖狐忍達はそれ所では無い。
 悪寒、吐き気、眩暈、頭痛、気怠さ。
 全身が不調を訴え出し、真っ直ぐ立っている事さえ困難になる。
 一度倒れ込めば起き上がる事は叶わず、程無くして全身が灰と化す。
 禍々しい気配を放つ黒い羽根と辺りを舞う花びらから放たれる呪詛に身体を蝕まれ、クレーターの周囲に立っていた妖狐忍達がばたばたと倒れていく。
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
「何よこれぇ!」
 余りに異様な気配を感じ取り近付くに近付けないでいると、小さな影がふらりと現れる。
「逃がさねぇよ」
 呪詛を撒き散らす黒と白の領域へ足を踏み居れ、右手を伸ばす。
 途端周囲に漂っていた羽根と花びらが吸い込まれる様に集まり出し、それらは一本の槍へと姿を変えた。
 戻った槍の感触を確かめてから地面に刺し置き、腰元に下げていた『黒蛇剣 ウルミ』を抜き放ち、絵里香は残った妖狐忍達を睥睨した。
 ユーベルコード【待雪草の呪詛】の影響か、はたまた修羅の気配を宿した絵里香に気圧されたか。
 妖狐忍達は怯えを瞳に浮かべたまま身動きが取れない。
 そんな彼女達の内心とは裏腹に、絵里香は軽い調子で言葉を投げ付ける。
「美味しい思いをしたんだから死んでおけ馬鹿ども」
 一閃。
 何時振り切られたのかも解らぬまま、黒蛇剣の軌跡をなぞる様に視界がずるりと滑る。
「え……?」
 困惑に至る前の疑問、ただ呆けた様な表情を浮かべたまま、妖狐忍達の首と胴が離れた。
 落ちる途中で肉体は灰となり、静かに地面へと灰の小山が出来る。
 文字通り一掃した絵里香は詰まらなさそうに鼻を鳴らして黒蛇剣を下げ直す。
 下っ端とは言え張り合いが無い。
 立ち塞がってくるのならもう少し歯応えの有る相手の方が退屈はしなくて済むのだが。
『ケケケ、おっかねェナァ』
 そんな彼女をからかう様に笑う案山子人形。
 くるくると大鎌を弄びながら妖狐忍達を追い回すのにも飽きたらしい。
 残っている妖狐忍はもふもふを堪能している数体だけらしく、後は斃し切った様だ。
 アレは向こうに任せるとしよう、と絵里香は槍を抜いて本堂の側へと歩き出す。
 その隣には何時来たのか、アマータが控えていた。
「さて、どうなりますかね」
「下らないオチしか待っていなさそうだが……」
「当機もそんな気がいたします」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『人祓い妖狐』いずな』

POW   :    雷調演舞『青雷龍縛』
自身に【触れた者を感電させ動きを封じる青き雷】をまとい、高速移動と【螺旋を描き対象を追跡する青雷の龍】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    人祓儀式『怨霊殺界陣』
【人祓いの儀式】を披露した指定の全対象に【この場に近づきたくないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    狐火『狐怨蒼炎砲』
【美しさに反応する狐火】が命中した対象を燃やす。放たれた【青の炎彩の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。

イラスト:つかさ

👑7
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 妖狐忍達を蹴散らした猟兵達。
 彼女達を取り纏め指揮していたオブリビオンは、如何やら本堂の奥に居るらしい。
 外でこれだけ派手に戦っていたにも関わらず一切姿を見せなかった相手。
 果たして何が待ち受けているのかと警戒しながら、猟兵達は朽ちた本堂へと足を踏み入れる。
 本堂は変わった造りをしていて、参拝を行う外陣よりも、本尊を安置する内陣と脇間の方が広くなっている。
 安置されていたで有ろう本尊の姿は何処にも無く、代わりに狐の耳と尾を生やした少女が正座したまま此方を見据えていた。
「来ましたか」
 厳かに少女は口を開く。
 彼女が此処を取り纏めていたオブリビオンだろう。
 ゆらりと立ち上がり、お祓い棒を持ち上げる。
 すると青い炎がぽつぽつと彼女の周囲に生まれ、本堂の中を照らしていく。
「我が野望……」
 重々しい雰囲気の中、彼女は口を開いた。
「手を伸ばせば油揚げが有る生活……貴方達に邪魔はさせません!!」
唯・刀
UC発動のタイミングを窺いながら
「野望……手を伸ばせば油揚げが有る生活……と、きたか」
間合いをとって、口だけ動かして油断させる
「ならば盗み奪うなどという不安定を選んだのは愚かだ。此処の藩主や家老を見習って、民に慕われればいいのに」
グリモアの予知の力なら遠距離攻撃は避けられる
「盗み奪われると分かった物を誰が作る、誰が運ぶ、誰が扱う?結局のところ正当な対価を払うか、いっそ自分達で作らなければ」
グリモアの予知の力ならば、味方と敵の動きを察知して隙間を縫って
「手の届くところに、欲しい物はやっては来ない」
発動
いずなの傍に出現と同時に狙い澄ました貫手を一撃
「愚かしい者に与えられる物は冷たい鉄の刃が精々だ」


メンカル・プルモーサ
…………働け、買え。
…油揚げ職人さん達だって生活があるんだから。
ちょっと怒ってるけどこれは出遅れて美味しい野菜鍋を食べそこねた事に対する八つ当たりなどでは決してない。いいね?

さて。狐火に対応してこちらも白い炎……【尽きる事なき暴食の大火】を出して対抗……青の炎を巻き込んで迎撃するよ…
そして炎は防御に回しつつ…
【空より降りたる静謐の魔剣】により魔剣を狐の周囲四方八方から呼び出して攻撃を仕掛けるね…

…これは食べられた油揚げの恨み…後食べそこねた野菜鍋の恨み…
…半分ぐらい目の前の狐が関係ない気がするけど些細な事…あとであの藩の城下町で食べ歩こう…


神宮寺・絵里香
【心情】
・まあ下っ端がああだから黒幕も似たような感じか。
・何だなぁ…本当に。ここのオブリビオンはアホばっかだな。
・まあいいか。妖退治は神宮寺の巫女の務めだ。さっさとぶちのめすに限る
【戦闘】
・傘と黒剣の二刀流
・水属性のオーラ纏った傘で狐火を見切って武器受け。炎を掻き消しつつ、黒剣を伸ばして串刺し攻撃でカウンター。躱されても二の矢として、番犬の鎖を黒剣から伸ばして拘束する。
・後は電気を流して痺れさせる麻痺攻撃から、鎖を手繰り寄せてからの格闘戦でもするか。グラップル技能で関節でも極めるかな。
「くだらない野望はここで終わりだ。ったく、傍迷惑な馬鹿どもめ」


エイル・ヒルドル
【ファブル】で参加

コイツが黒幕ってワケね、油揚げの為にずいぶんと面倒をしてくれたじゃないの!
みんな行くわよ、アタシ達でぶっ飛ばしてやりましょ!

アタシに妙な精神攻撃なんて効かないわっ…と言いたいけど、どうなっても良いように第六感で位置を捉えて目にも留まらぬ早業で二丁光線銃を抜き誘導弾を乱れ撃ちで近寄れなくても問題なく攻撃!
更に【スーパーお姉ちゃん召喚】でお姉ちゃんを呼び、儀式影響を受けていないお姉ちゃんが剣で衝撃波を放ち連撃
アタシ達の敵じゃないっての!

って、何かルトルファスとヘザーがイイ感じじゃないっ!
アタシも玲とイチャイチャしたいぃぃ!
玲!今夜は寝かせないからねっ、覚悟しときなさいよーー!


ヘザー・デストリュクシオン
【ファブル】で参加!

好きなものを毎日食べたいのはわかるけど、人のもの盗んだらだめなの!
あとあなたの部下がルトルファスくんに変なことしたから壊す!

ボスには幻覚はきかないだろうからふつうに壊すの。
ルトルファスくん無理しないで!
敵が彼に気を取られてる間に力を溜めてダッシュで近づいて、死角から跳び出してラビットキック!

敵に追い打ちしようとしたら突然ルトルファスくんに抱き着かれてびっくりして押し倒されちゃうの。
にゃ?!だ、だめよ、こんなところで…!そういうことは、二人きりのときに…!
うれしいけど、玲くんとエイルちゃんが見てるし恥ずかしいの…!
顔が熱くなっちゃうけど、ケガさせたくなくてふり解けないの…!


緋神・美麗
ベルカ(f10622)さんと参加
アドリブ・絡み歓迎

手を伸ばせば油揚げが有る生活…仮にもオブリビオンの抱く野望がそれとか残念過ぎるわねぇ。オブリビオンでさえなければ放っておいてあげたんだけど。
「ここがキマフューならあっけなくその野望も成就できたでしょうねぇ。もう本当に色々と残念ねぇ。せめて苦しまないように一撃で介錯してあげるわ」
ベルカさんの誘い出しに釣られたところを気合い・力溜め・鎧無視攻撃・誘導弾・捨て身の一撃で強化した超巨大電磁砲で撃ち抜く

「さて、お仕事終わったし、また鍋を楽しむとしましょうか」


ベルカ・スノードロップ
美麗(f01866)さんと参加。
アドリブ・絡み歓迎

食いしん坊さんですか?

戦力は充分みたいですし、今回も搦め手の【だまし討ち】でいきます
《選択UC》を発動して、手から『油揚げを炊いている時の匂い』を発します
油揚げが好きで盗んでいたのなら、この匂いは、充分な【誘惑】になるでしょう
『液体等』を発するので固形物も出せます
なので『炊きたての出汁の滴る油揚げ』を出して、意識をこちらに向けて
食いつかせますね
釣られて出てきた所を、美麗さん達に叩いて貰います

(ただのイタズラ妖狐なら連れ帰って、望み通りの生活をさせられたのですが……)

お仕事が終わり、改めて鍋を楽しむわけですが
「もふもふも、一緒にですね」


雨音・玲
【ファブル】
『POW』
うぇ、マジこの状況同情するよ
俺ならこんな場所で戦わねぇし、逃げの一手だろうなぁ

鬼気迫る気迫を纏った二人の攻めと遠距離からの乱れ撃ち
アレで味方には掠りもしないから流石…
その上、おおぅ、おねぇちゃん召喚とか殺意高くないか_?

んっ?嫌さ
別にさぼっちゃいねぇよ
予想通りなら、戦うにしても逃げるにしても、もうそろそろ…

全体へ放たれた青雷の龍の攻撃
エイルを庇う様に「咄嗟の一撃」+【業火の死線】の
炎を宿した拳で受け止めて相殺
お互いを、UCを封じる炎の鎖で繋いで逃亡を防止します

悪いけどもう好きにはさせねぇよ
あはは、少しでも早く帰らないと駄目みたいだからさ
ぼちぼち大人しくしてくれると助かるな


ルトルファス・ルーテルガイト
【ファブル】で参加

「…そんな物(油揚げ)の為に迷惑かけるんじゃない!
何カッコつけてんだよ、お前は!?
…こっちは鍋食べた代償に、狐女に抱きつかれるわ
ヘザーに憎まれるわ玲に笑われるわ
エイルに呆れられるわ…散々なんだよ!」
と、自棄気味になって突貫
【電撃耐性】で耐えながら、鬼気迫る気迫で
【恐怖を与え】ながら【属性攻撃】
秒で斬り捨て

さっさと全部終わらせて、今日はもう帰る
ってあ…。
(また不幸体質が発動して転倒、とっさに体捻って
避けようとした先で、ヘザーに思わず抱き着く姿勢)
……、あぁもぅ~!
得体知れないオブリビオンなんかより
ヘザーを選ぶに決まってるだろう!(おめめぐるぐる)
(※青年は色々とお疲れの様です)


アマータ・プリムス
……普通に働けば、とも思いましたがあなた方はオブリビオンでしたね
まぁ、なんにせよこちらのやることは変わりません

さ、やりますよネロ

ふむ……人払いの結界ですか
ご生憎様、当機は人形ですので……近づきたくないという感情は一時的にカットさせていただきます
ネロも呼び出し二機で結界内で行動開始です

まずは儀式を止めていただきましょうか
とは言ったものの当機にその手の知識はございませんので直接聞きますか
アルジェントムからUDCアースで購入した油揚げを取り出し差し出します

「この結界、どうしたら消えるんでしょうか?」

聞き出せたらネロに結界を消してもらい
聞き出せなかったら暴れて壊してもらいましょう

油揚げは差し上げますよ


宇冠・由
お母様(f00173)と参加
※止めは他の方希望

手を伸ばす範囲に美味しいものがある……。その願い、大変に素晴らし――いえ、駄目ですわ(母に注意され)

私の紅と貴女の蒼、どちらが上か勝負
炎を虎の形状に変化させて青雷の龍とぶつけ合わせます
(純粋な攻撃力はそちらの方が上でしょう。ですが、粘り強さと負けん気なら私だって負けはしませんの)

【七草繁縷】で相手の技の動きを鈍らせ、隙を作ります
あまり派手に動き回っては神社が燃えてしまうかもしれませんので

手持ちの二振りの火炎剣を投擲し、いずな本体の動きも磔にさせてもらいます
(貴女の炎はとてもお綺麗でした。敗因は一つだけ。食べすぎで移動速度が落ちていたこと……)


宇冠・龍
由(f01211)と参加
※止めは他の方希望

(城下の被害は二日前ほど。決意したのがそこからとなると……ごめんなさい)
野望が三日坊主になることを心中で謝っておきます

「由、太りますよ?」
相手の野望に共感を見せる娘に少し注意を
美味しいものが悪ではないんです。盗みを働いたのが悪だということ。なによりその野望は、際限なき体重と体脂肪の増加を生みますので
適度に動いたあとに食べれば、食べ物はより美味しくなりますよ

【竜逢比干】で夫の霊を召喚
氷の息吹で相手の炎を相殺し、娘や他の方が動きやすくなるように

由が相手の動きを止めると同時、こちらも氷風の槍を投擲し、更に身動きさせないようにします



「コイツが黒幕ってワケね、油揚げの為にずいぶんと面倒をしてくれたじゃないの!」
 ホルスターから愛銃『六花』と『散桜』を抜き放ち、くるくると弄びながら眼前のオブリビオンを見据えるエイル・ヒルドル。
 好きなものの為に、と言う理由は解らないでも無いが他者に迷惑を掛けてまで行う様では頂けない。
「好きなものを毎日食べたいのはわかるけど、人のもの盗んだらだめなの!」
 追随する様に口を開くのはヘザー・デストリュクシオン。
 普段なら多少の共感や同意は得られたであろうが、今回ばかりはそうも行かない。
「あとあなたの部下がルトルファスくんに変なことしたから壊す!」
 そう、恋に燃える少女は酷くおかんむりである。
 その怒気に当てられてか、微妙に剣を構える動きがぎこちないのはルトルファス・ルーテルガイトだ。
「……そんな物の為に迷惑かけるんじゃない! 何カッコつけてんだよ、お前は!?」
「そんなもの? 人が好きだと公言しているものを貶めるとは、何たる傲慢!」
「好きだと口にするんならそれを貶める様な手段を取るんじゃねぇよ! ……こっちは鍋食べた代償に、狐女に抱きつかれるわヘザーに憎まれるわ玲に笑われるわエイルに呆れられるわ……散々なんだよ!」
「自分の不徳を私の所為にされても困る!」
「え、何この突如始まったレスバトル」
 丁々発止の遣り取りを交わす少女とルトルファスの勢いに思わず困惑の声を上げるのは雨音・玲である。
 チーム【ファブル】の三人がこの通りフルテンションなので、彼は昂する事無く冷静に戦場を観察しようと努めていた。
 苦労人ポジションとも言うが、生来の面倒見の良さのお陰か妙に板に付いている。
 そんなやる気満々な三人と引率の先生みたいな一人の隣では、宇冠・由が何やら感銘を受けていた。
 わんぱくとまでは行かないが、食べる事は好きな由。
 可愛らしい仮面に隠され表情は解らないが、声色はうっとりとしている。
「手を伸ばす範囲に美味しいものがある……。その願い、大変に素晴らし――」
「由、太りますよ」
 乙女にとっての禁句を躊躇わず口にするのは彼女の母、宇冠・龍。
 野望に共感を示した娘を嗜めるべく、ジト目を送る。
「いえ、駄目ですわ」
 母の視線と言葉を受けて正気に返った由は、ぶんぶんと首を振る。
 一瞬想像した光景は正にパラダイスと言って良いものだったが、流石にだらしなく崩れる身体を想像してしまっては是とは言えない。
(……いえ、いっそ地獄の焔で脂肪分も一緒に燃焼させてしまえば理想の体型を維持しつつ好きなものを好きなだけ食べられるのでは……!)
「由」
 邪な考えを抱いた瞬間、龍の声が響く。
「駄目ですよ」
「あっ、はい」
 幾分冷え冷えとする視線を投げ掛ける龍。
 その中に僅かばかり、ズルイと言いたそうな色が混じっているのは気の所為だろうか。
「食いしん坊さんですか?」
 思わずドキリとする由。
 ベルカ・スノードロップの呟きは地味に由にも刺さっていた。
「手を伸ばせば油揚げが有る生活……仮にもオブリビオンの抱く野望がそれとか残念過ぎるわねぇ。オブリビオンでさえなければ放っておいてあげたんだけど」
「……普通に働けば、とも思いましたがあなた方はオブリビオンでしたね。まぁ、なんにせよこちらのやることは変わりません」
 野望の小ささに少しばかり毒気を抜かれているのは緋神・美麗とアマータ・プリムスの二人だ。
 言葉通り、これが普通の人間だったならば罪を償わせた後に仕事の斡旋でも請け負った所だが、相手がオブリビオンであるなら見逃す訳には行かない。
(ただのイタズラ妖狐なら連れ帰って、望み通りの生活をさせられたのですが……)
 運命とは残酷です、と肩を竦めるベルカ。
「まあ下っ端がああだから黒幕も似たような感じか」
「大悪党ではなかった分、民草に大きな被害が出ていないのは不幸中の幸いか」
 はっきりと言葉に呆れを滲ませているのは神宮寺・絵里香と唯・刀だ。
 油揚げの窃盗が何かしらの策謀のカモフラージュだった時の事も念の為に想定して置いたのだが、蓋を開けてみればただ食い意地が張っただけの相手。
 然程の脅威では無かった事を喜ぶべきか否か、難しい所である。
「何だなぁ……本当に。ここのオブリビオンはアホばっかだな」
「む、失礼ですね! 人の好きを否定から入る様ではいつかバチが当たりますよ!」
「バチねぇ……」
 ビシッと人差し指を突き付けてくる少女に、絵里香は微妙な顔を返す。
「まあいいか。妖退治は神宮寺の巫女の務めだ。さっさとぶちのめすに限る」
「みんな行くわよ、アタシ達でぶっ飛ばしてやりましょ!」
 絵里香とエイルの声に戦闘態勢に移る猟兵達。
 呼応する様に、少女もお祓い棒を構える。
「生憎ですが既に貴方達は我が掌の上。人祓儀式『怨霊殺界陣』起動……!」
 右手に持ったお祓い棒の柄尻を左手の掌に押し当てる少女。
 次の瞬間、猟兵達の身体が低く沈む。
「おわっと」
「なにこれぇー!」
 バランスを崩し掛けたエイルとヘザーが、お互いの身体を支え合う。
 突如心に入り込んで来た得体の知れぬ悪寒。
 この場に居てはいけない、近付いてはいけない。
 そんな思いが脳内に響き渡っている。
 見れば皆が同じ様な状態になっているらしく、膝は付かぬものの何かに耐える様に歯を食い縛っている。
「精神干渉の類か」
 雨冠の巫女としてか、それとも神域のものとしてか。
 忌避の感情を色濃く受けている絵里香は額を抑える様にしながら口を開く。
「ふっふっふ、辛そうですね。この場は私の領域。我が野望に猟兵の居場所は有りません……!」
「ふむ……人払いの結界ですか」
「んぉぉっ!?」
 普通にすたすたと動き回るメイドさんに目を見開く少女。
 動きに澱みが無いかを確かめていたアマータは少女に向けて綺麗なカーテシーを見せた。
「ご生憎様、当機は人形ですので……近づきたくないという感情は一時的にカットさせていただきます」
「かっと……?」
「遮断、とも言います」
「え、ずるくないです!?」
「ずるくないです。さ、やりますよネロ」
『ケケケ、面白い事になってんナァ?』
 飛ばれて飛び出て南瓜頭。
 アマータの持つ銀色のトランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』から南瓜頭の案山子人形『ネロ・フラーテル』が飛び出てきた。
 彼も影響を受けていないらしく、ぶんぶんと大鎌を振って上機嫌である。
「くっ、しかしたった二人では出来る事等高が知れています!」
「残念、もう一人居るわよ」
「ひょっ?」
 初手から動きを封じられるとは思わなかったが、対抗策が無い訳では無い。
 ピンチの時こそふてぶてしく。
 にやりと口の端を無理矢理吊り上げ、エイルは大きく息を吸い込んだ。
「お姉ちゃぁぁん! 助けてぇぇぇぇ!」
 本堂内に響き渡る呼び声。
 彼女の助けを求める声がユーベルコード【スーパーお姉ちゃん召喚】を発動させる。
『はいはいっと、あら。何だか面白そうな事になってるじゃない』
 声と共に周囲を妖しく照らしていた青い炎が幾つか掻き消される。
 変わりに生まれた白い光の中から出て来たのは、髪を後ろで結った長身の女性。
 燃える様に鮮やかで艶やかな髪は、エイルのものと良く似ている。
 抜刀術の達人、王宮騎士エレナ。
 妹のピンチに凛々しく推参。
『こないだはうわばみで今度は狐っ娘ね、ふっ! 随分とバリエーション豊富な相手を、てぃっ! って鬱陶しいわねこの炎!』
 格好良く現れたエレナだったが、喋る暇も無い程に青い炎が殺到していく。
「ふ、ふっ。その炎は美しさに反応して燃え上がるのですよ! 格好良い登場が裏目に出ましたね!」
「そんな理由で襲ってくるんですか……」
 多少動揺はしているが気を取り直した少女の説明に呆れた目を向けるアマータ。
 とは言え心強い味方には間違いない。
 アマータはトランクから油揚げを一つ取り出してみる。
 先ずは絡め手からだ。
「この結界、どうしたら消えるんでしょうか?」
 少女は油揚げに一瞬目を引かれるが、くんくんと鼻を鳴らすと顔を顰めた。
「この油揚げは出来損ないですね、食べられませんよ」
「出来損ない……?」
「油を絞った後の大豆で作っているから味も匂いも貧弱、更に豆腐を固める過程で妙な混ぜものを入れています。これでは豆腐本来の美味しさが損なわれてしまう。更に揚げる油も低湿なものだから変にべちゃっとしていて、臭い。低級品です」
 UDCアースの世界で購入してきた普通の油揚げだったが、少女に言わせれば紛い物らしい。
(好きなだけかと思いましたが、油揚げガチ勢でしたか――――!)
 予想外の展開と少女の知見に瞠目するアマータ。
 ならばともう一つ油揚げを取り出す。
 こんな事も有ろうかと、念の為に老舗の豆腐屋から直に買ってきたものも有るのだ。
 そちらには興味津々な様子を見せる少女。
「おっ、こっちの油揚げは一目見てそれと解る一級品ですね。職人達の誇りと愛情が垣間見えます」
「見て解るものなのですか……」
 段々と呆れに近いものを感じ始めてきたアマータ。
 兎も角こっちの油揚げなら十分交渉にはなりそうだ。
「この結界、どうしたら消えるんでしょうか?」
「む、取引の心算ですか」
 警戒した顔付きを見せる少女。
 悩む素振りも無く、お祓い棒を振るって青い炎を生み出してくる。
「貴女方を倒した後、じっくりと味わうと致しましょう……!」
「脳筋思考……!」
『殴って解決、嫌いじゃないわ』
 剣を振るい、炎を衝撃波で掻き消しながら迫っていくエレナ。
 アマータも予想を裏切り続ける少女に舌を巻きつつ、トランクをライフルに変形させてネロと共に攻撃を仕掛けていく。
 所が少女はお祓い棒を巧みに操り、三人の攻撃を巧みに防いでいく。
 斬撃はいなし、衝撃波は打ち払い、銃撃は青い炎で迎撃し、打撃は回避する。
 その姿からは予想も付かなかったが、意外にも動けるタイプらしい。
「手数が足りないわね……!」
 美麗も先程から電撃を操ろうとするが、襲い来る忌避感が邪魔をして集中出来ない。
 動こうにも、足は前に進む所か勝手に下がろうとさえする。
「せめてこの結界さえ如何にか出来れば……!」
 何かこの状況を打開出来るものはないか、と視界を巡らせる刀。
 彼の耳が奇妙な音を捉えたのはそんな時だった。
「歌……?」
 遠く、幽かに聴こえる流れる言葉。
 歌かと思ったそれが結びを迎えるのと同時、本堂の壁が突如白く燃え上がった。
「何だ!?」
「っ、あ、動けるぞ!」
「結界が……!?」
 地震かと思える程の揺れが本堂を襲う中、玲とルトルファスは先程まで襲い掛かってきていたプレッシャーが消え去っているのに気付いた。
 結界を破られた事に動揺する少女は目を慌しく巡らせ、見付ける。
 四脚門の上、杖を構えて此方を見る一人の猟兵の姿を。
「油揚げを手に入れる、野望……?」
 猟兵は僅かに怒りを滲ませた声で、淡々と告げる。
「…………働け、買え」
 遅れてやってきた猟兵、メンカル・プルモーサ。
 少女が行った人祓いの儀式。
 この場に近付きたくないとする『この場』即ち本堂を焼き払う事で、結界を維持する為の式を崩したのだ。
 中々のパワープレイである。
 ひょいと軽くジャンプして皆の元へ降り立ったメンカルは、白い炎――ユーベルコード【尽きる事なき暴食の大火】で次々と青い炎を喰らい尽くして行く。
『ふぅ、これで動き易くなるわ』
 派手な登場で青い炎の襲撃を一身に引き受けていたエレナから感謝の言葉が飛ぶ。
 それに頷きを返しつつ、メンカルは杖を少女に向けた。
「此処で増援とは、猟兵も中々悪知恵が回るようです……!」
「……ふっ」
「何が可笑しいのです!」
 小さく笑みを零す様に息を吐き出した彼女の様子に、あっと由は思い当たる。
 それは食を愛するものだけが分かり合える感覚。
(野菜鍋を食べ損ねた事への怒りですのね……!?)
(わかる)
 はらぺ娘勢の美麗も思わず腕を組んで頷いている。
 メンカルは静かに怒りを滲ませながら、更なる詩を紡ぐ。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 ユーベルコード【空より降りたる静謐の魔剣】の発動。
 刻んだ傷痕から凍て付く冷気を生み出す魔剣を呼び出して、メンカルは口を開く。
「……これは食べられた油揚げの恨み……後食べそこねた野菜鍋の恨み……」
「それは八つ当たりではありませんか!?」
「ちょっと怒ってるけどこれは出遅れて美味しい野菜鍋を食べそこねた事に対する八つ当たりなどでは決してない。いいね?」
「承服致しかねます!」
 お祓い棒を振るい魔剣を打ち払っていく少女。
 攻勢に転じるは今、と皆も己が武器を手に挑み掛かって行く。
「いよっし、アタシも攻めるわよ!」
『余りはしゃぐんじゃないわよ』
 エイルが二挺光線銃を構え、姉のエレナと共に駆け抜けていく。
 常に位置取りを変えながら誘導弾を乱れ撃ち、それに合わせて剣先から衝撃波を放って行く。
 少女は追加で青い炎を生み出して対応するが、敷いた炎陣の一角が不意に綻びる。
「如何な炎とて水には消し止められる」
 和傘『擬槍 蛇乃目』と黒剣『黒蛇剣 ウルミ』を手に舞い踊る絵里香。
 水の属性を宿し薄ぼんやりと光るそれらを振るい、次々に炎を掻き消していく。
 時折黒剣を伸ばして刺突を放つが、少女も然る者。
 紙一重ギリギリの所では有るが有効打を貰わぬ様にお祓い棒で受け流していく。
「ええい、大人しく観念しろ! 俺の平穏の為にも!」
 ルトルファスは『精霊剣』を構えながら懐に飛び込む様に身を滑らせる。
 接近戦を嫌がってか、少女は場所を小まめに変えながら距離を離そうとする。
 飛び込むのも味方の攻撃の隙間を縫う必要が有る為ハイリスクでは有るが、危険を冒してこそ間隙を突く一撃と成り得る。
 果敢に攻め掛かるルトルファスを援護するのはヘザーだ。
「ルトルファスくん無理しないで!」
 彼の突撃に合わせ死角となる位置からユーベルコード【ラビットキック】を用いて奇襲を仕掛けていく。
 互いの動きの癖を理解しているからこその連撃。
 一糸乱れぬ連携に感嘆の息を吐きつつ、玲は静かに動きを見据えていた。
(鬼気迫る気迫を纏った二人の攻めと遠距離からの乱れ撃ちアレで味方には掠りもしないから流石……。その上、おおぅ、おねぇちゃん召喚とか殺意高くないか)
 自分がこの状況に追い込まれたらと考えると思わず身震いしてしまう。
 取るとしたら逃げの一手だな、と頷きながら彼等の動きを見守る玲。
 流石に死角からの攻撃は厄介なのか、少女はヘザーの攻撃に対して身を大きく動かして回避していく。
 だが大きく動く分付け入る隙も大きくなる。
 それをカバーしようと少女は青い炎を更に増やしていくが、これを龍が押し留める。
 ユーベルコード【竜逢比干】で召喚した夫の霊が氷の息吹を放ち、防御円の如く行く手を阻む炎を相殺していく。
「美味しいものが悪ではないんです。盗みを働いたのが悪だということ。なによりその野望は、際限なき体重と体脂肪の増加を生みますので」
「生憎と私は幾ら食べても太らない体質ですので!」
「貴女は今私の逆鱗に触れました……!!!」
 思わずびくりと身体を震わせて息吹を止め、目を丸くして妻を見遣る夫の霊。
 彼女は背負っていた『氷風の槍』を手に、少女へと向かっていく。
 慌てて息吹で援護する夫の霊。
 そんな仲睦まじい夫婦の姿に何処か微笑ましさの様なものを感じつつ、由は地獄の炎を練り上げていく。
(徐々に追い詰めては居ますが、何処か余裕を感じられる佇まい……まだ何か隠していますわね?)
 勘、としか答えられないが確信として胸に有る予感。
 念には念をと炎で雄々しき虎を練り上げた瞬間、少女が空いた左手を上に向ける。
 メンカルの炎で焼き尽くされ、頭上には日暮れを迎えた空が見える。
「調子に乗るのもそこまでです……! 来たれ雷、穿つ龍となれ!」
 突如、彼女の身体に青白い雷が落ちる。
 衝撃と閃光に皆が一度距離を取ると、白い煙の中から青い雷を身に纏った少女がお祓い棒を構えていた。
 咄嗟に、由は両手を少女へ向ける。
「雷龍号哭!!」
「炎虎大喝!!」
 荒れ狂う雷龍と吼え猛る炎虎が激突する。
 激しい閃光と轟音が撒き散らされ、雷龍が炎虎を食い破る。
 雷龍も無傷とは行かず、空へ溶ける様にして千切れ飛んでいった。
「互角と言いたい所ですが、此方はまだ余力が有ります。連発出来ぬなら命運も此処まで……っ!」
 追撃を放とうとした少女だったが、不意に動きが止まる。
 同時に周囲へ漂うのは場違いな匂い。
 油揚げを出汁で炊いている時の匂いだ。
「昆布と白身の魚から出る旨味を吸った油揚げの匂い……耐え切れますかね?」
 によによと笑うのはベルカ。
 ユーベルコード【ハニーポット・トラッパー】で右手人差し指の爪を変異させ、まさに食べ頃ジュウシィーな『炊きたての出汁の滴る油揚げ』を見せ付けていく。
 モチーフは先程の野菜鍋祭りで口にした油揚げなので味も匂いも抜群。
 食いしん坊な野望に塗れた相手なら食い付く筈。
 彼の目論見通り、少女は動きを止めて唾をごくりと飲み込んだ。
 だがそれはもう、教科書に載せたい程見事な隙である。
「はっはー、隙有りよ!」
「ぐふうぅぅーっ!?」
 晒した隙に叩き込まれたのは美麗のユーベルコード【超巨大電磁砲】による一撃。
 練りに練り上げた渾身の一撃で有ったが、意外にも少女は立ち上がる。
 見た目と違ってかなりタフな様だ。
「あら、せめて苦しまないように一撃で介錯してあげる心算だったんだけど……丈夫ね?」
「私の油揚げへの情熱はこんな所で潰えたりしません! と言うか何ですか貴女! 折角技の名前まで宣言して格好良い感じだったのに! 三日くらい悩んで決めた技名だったんですよ!」
「気持ちは解るわ」
(私も解りますとも)
 ロマンを追い求める美麗と、魂深く封印した中二病が疼く由。
 何方も必殺技とか名乗り口上とか、そう言う格好良いものには惹かれるお年頃だ。
「でも戦場で隙を晒した訳だし、多少はね?」
「隙有りだ」
 忍び寄っていた刀が貫手を放つ。
 背後からの奇襲を転がって避ける少女。
 惜しくも攻撃は外れたが、刀に落胆は無い。
 寧ろこれは仕込み。
 互いに距離が空いていた為全力で放っていても深手にはならず、精々が表皮を浅く切り裂くだけに終わっていただろう。
 だからこそ、刀は敢えて『抜いた』攻撃を放った。
 死角から不意を突く絶好の機会。
 誰もが決定的となる一撃を放つだろう。
 その思い込みを逆手に取って、刀は態と攻撃の直前に声を出して相手に気付かせ、且つギリギリで避けられる速度に落とした貫手を放った。
 一度見て躱した攻撃をもう一度避けるのに、一度目以上の速度で避けようとする奴は居ない。
「野望……手を伸ばせば油揚げが有る生活……と、きたか」
 罠を仕掛ける場合、罠と悟らせてはいけない。
 故に、彼は喋り続ける。
「ならば盗み奪うなどという不安定を選んだのは愚かだ。此処の藩主や家老を見習って、民に慕われればいいのに」
「今更説教とは良い身分ですね……!」
 再び猟兵達の波状攻撃が始まるが、纏った雷の補助を受け危なげなく対処していく少女。
 此方と話す余裕も有るらしい。
「盗み奪われると分かった物を誰が作る、誰が運ぶ、誰が扱う? 結局のところ正当な対価を払うか、いっそ自分達で作らなければ手の届くところに、欲しい物はやっては来ない」
 隠す様に握った左手の内、彼のグリモアが淡く光る。
 グリモアの予知の力をユーベルコードへと落とし込み、ほんの僅かな時間だが戦場での予知を可能にした、彼の切り札。
「賢しげな事を! そうしたとて、どうせ滅する腹積もりでしょう!」
 少女が左手を開き、真っ直ぐに伸ばしてくる。
 同時にユーベルコード【唯刀・鏡花水月】を発動。
 彩度が落ちた世界の中で、雷龍が螺旋を描きながら飛び向かってくるのを眺めながら戦場を見渡す。
 一番近くに居るのは……南瓜頭の案山子人形だ。
「邪魔するぞ」
『ウォォッ!?』
 数瞬先を予知した刀はネロの隣へとテレポートする。
 突如現れた刀に珍しく驚きの声を上げるネロ。
「なっ!?」
 目の前から消え失せた相手を探そうと意識を広げた少女へ、背後から貫手を放つ。
 今度は確かな手応えが返る。
「ぐぅっ!」
 それでも咄嗟に身を捻り心臓への直撃は避けた辺り、この少女は前衛として非常に優秀と言えそうだ。
「愚かしい者に与えられる物は冷たい鉄の刃が精々だ」
 取ったと思ったんだがな、と言う言葉は飲み込んで刀は構える。
 追撃は避けようと飛び退く少女の左脇腹が、丸く抉り取られていた。
 白い骨と膨れ上がる肉、僅かにはみ出る臓器と脈動の度に滴る血。
 十分に深手と評る傷だ。
「まだまだ……っ!?」
 反撃に移ろうとする少女だったが、押し留められるように身体が止まる。
 慌てて下げた視線の先では、左足首へ地獄の炎が纏わり付いていた。
「ふふ……純粋な攻撃力はそちらの方が上でしょう。ですが、粘り強さと負けん気なら私だって負けはしませんの」
 宿した熱とは裏腹に涼しげな声で笑ってみせる由。
 先程ぶつけ合った炎虎から飛散した炎の欠片。
 それらはユーベルコード【七草繁縷】により生み出された炎であった。
 燃え上がる枷となった炎は地面に少女の足を縫い付ける。
「良い動きです、由」
 枷を外そうと動く少女の右脚首を、今度は氷風の槍が貫く。
「小癪な真似を……!」
 両足を留められた少女は左手を上に向ける。
「乱波招雷……!」
「はいはい、予想してたぜ」
 少女を中心に雷が奔る。
 無差別に攻撃を加える雷撃が荒れ狂う龍となって戦場を駆け巡ろうとするが、その牙は拳によって受け止められる。
 ユーベルコード【業火の死線】による相殺。
 長らく息を潜めていた玲は両の拳を突き出しながら少女と相対している。
 勿論、その背には愛しきエイルを庇う様に。
「なっ、何故……っ!?」
「雷って聴いてピンと来てたんだよ。指向性を持たせて放てるなら、当然無秩序に放電させる事だって出来るよな?」
「くっ、ならばもう一度……なっ!?」
 漸く気付いた様で、少女は自身の左腕を見て驚愕する。
 左手首には炎の鎖が絡み付き、自身と玲とを繋いでいた。
「悪いが雷は封じさせてもらったぜ。もうビリビリは御免だ」
「…………右手も抑えておこう」
 飛来する魔剣がお祓い棒を弾き飛ばし、少女の掌へ突き立つ。
 途端、掌から花が開く様に氷が生まれ出す。
 悪あがきの様に青い炎で氷を溶かしに掛かるが、それらはメンカルの操る魔剣で打ち払われた。
「くだらない野望はここで終わりだ。ったく、傍迷惑な馬鹿どもめ」
 四肢を封じられた少女の首元へ、今度は絵里香がユーベルコード【番犬の鎖】を放つ。
 不死殺しの重力の鎖が絡み付いて、少女の上体が徐々に折れていく。
「お、おもっ……!」
「罪の重さとは言わねぇがじっくり味わえ」
 如何にか鎖から逃れようともがく少女。
 下手に暴れられても困るので、絵里香は鎖を伝わせて紫電を流し込んだ。
「んびっ」
「あん? 雷を扱う癖に外からの耐性は無いのか」
 流された電気で麻痺したのか、少女の身体から力が抜けていく。
 念の為に追撃しておくか。
 そう考えぐいっと鎖を引いて首を寄せ、絵里香はそのまま右腕を捻り上げ始める。
「あだだだだだ!?」
「容赦有りませんね……」
「うぇ、マジこの状況同情するよ……」
 最早満身創痍と化した少女の様相に哀れみの視線を向けるアマータと玲。
 いつの間にか少女の後ろに回り込んでいたネロは臀部を執拗に大鎌でちくちく斬り付けている。
「こら、お行儀の悪い」
『ケケケ』
 見咎めたアマータにあっさり捕獲されるネロ。
 何が彼の琴線に触れたのか、今回の彼はテンションが色々とおかしい気もする。
「まぁまぁ、無力化出来たならサクっと斃しちゃいましょ」
 美麗が二度目のチャージを完了する。
 ヤキを入れていた絵里香も一先ず下がった所で照準を合わせる。
 先程までの研ぎ澄まされた攻防の空気は何処へやら、少女は青い顔をして美麗を見ている。
「今度こそ一撃だから安心して逝きなさいな」
 音速を超えて射出された鉄球。
 鉄塊と言い換えて良い程に巨大な質量を持った弾が少女に直撃する。
 轟音を響かせながら内陣を破壊していった鉄球の通った後には、ほんの僅かに積もった灰が散らばっていた。

「さて、お仕事終わったし、また鍋を楽しむとしましょうか」
「もふもふも、一緒にですね」
 一仕事終えて山を降りた一行。
 出発した時は高かった日もとっぷりと暮れ、すっかり夜となっていた。
 小さな集落ではもう晩御飯を食べて寝るばかりの時分だが、旨いもの市の会場である城下町はまだまだ賑わいを見せている。
 寧ろ昼間は自重していた酒飲み達が騒ぎ出すので宴もたけなわと言った所か。
「……野菜鍋、楽しみ……」
「適度に動いたあとに食べれば、食べ物はより美味しくなりますよ」
 出遅れて食いっぱぐれたメンカルは昼間の分も楽しもうと意気揚々。
 彼女にも祭りを楽しんでもらおうと龍は美味しそうな鍋を出していた店をピックアップしている。
 美麗とベルカも、今度は食べ歩きを中心にしようと今度は大通りを歩く心算だ。
 そんな風に盛り上がっている中、由は静かに戦った相手へと思いを馳せていた。
(貴女の炎はとてもお綺麗でした。敗因は一つだけ。食べすぎで移動速度が落ちていたこと……)
 そっと呟く様に心の中で黄昏る由。
 しかし身体は既にお祭りの鍋を食べる事にシフトチェンジしており、先程から涎が止まらない状況だ。
 程無くして今度は彼女の移動速度が落ちるだろう。
「にしても最初から最後までくだらなかったな」
「もう少しオブリビオンにも矜持を持ってもらいたい所だな」
 辛辣な評価を下すのは絵里香と刀だ。
 気の抜けた犯行動機、ぐだぐだな組織運営、その割りに手の掛かる相手とあってイマイチ爽快感の無かった任務である。
「まぁまぁお二人共。此処は勝利の美酒と美味しいお鍋で宴会と行きましょう」
 自分の口の端を両手の人差し指でぐいっと持ち上げ、笑みを作って見せるアマータ。
 彼女としては無事オブリビオンを倒せた上に、新しいレシピの刺激にもなってと良い事尽くめだ。
 若干ネロのテンションは気になる所であったが、男の子には色々有ると納得しておいた。
 彼女のおどけた仕草に、二人も息を一つ吐く。
「そうだな。酒も料理も旨いんだから楽しむとするか」
「昼間は冷酒だったから今度はぬる燗をやってみるかな」
「お酌はおまかせください」
 静かに盛り上がる三人の後方では、ちょっとばかり騒がしげな四人が歩いていた。
 ファブルの四人である。
「もー、ルトルファスくんったら……」
「誤解だって、俺は別に喜んでた訳じゃ」
 痴話げんかをしているヘザーとルトルファス。
 その後ろで、玲とエイルは微笑ましげに行く末を見守っている。
 戦いの最中は抜群のコンビネーションを見せていた二人だったが、こうして落ち着くと妖狐忍達とのハプニングへの言及が始まったのだった。
 ぷんすかぽんモードのヘザーに、ルトルファスはたじたじである。
 と言っても、二人共本気で言い合ってる訳では無いので眺めていて心配では無い。
 寧ろ互いに如何仲直りへ持って行くか探り探りなのが解る為、玲もエイルもニヤニヤが止まらないのである。
「あっ」
「うおぁっ!?」
 そんな時、事件が起こる。
 ルトルファスのユーベルコード【女難の不幸体質】が発動した。
(何で此処でぇ!?)
 小石に足を取られて前に身体が傾いていく。
 不運な事に倒れる先には鋭く突き出た小さな木の枝が。
「あぶなっ!?」
 咄嗟に身体を捻って倒れるコースを変える。
 如何にか枝の直撃は避けたとほっとした瞬間、彼の胸板にふにょりと柔らかい何かが。
「にゃ?! だ、だめよ、こんなところで……! そういうことは、二人きりのときに……! 
うれしいけど、玲くんとエイルちゃんが見てるし恥ずかしいの……!」
 焦った様な声が下から届く。
 倒れ込んだ時に巻き込んでしまったらしく、ヘザーが組み伏されていた。
「あら、大胆♪」
「最近の若い子は進んでますなぁ♪」
 背後から聴こえて来る愉しげな囃し立てに一瞬こんちくちょうと思わなくも無いが、意識は直ぐに眼前の少女によって引き戻される。
「ルトルファスくん……」
 熱っぽい瞳で見上げられ、ルトルファスの頭が茹っていく。
 何か言わなくては、いや寧ろ退くべきだろう。
 ぐるぐると思考が回って脳内がホンワカパッパし始めた時、不意に気付く。
 ヘザーの熱っぽい視線に混ざる、不安の色。
「……、あぁもぅ~!」
 一切合財を投げ捨てて、ルトルファスは口を開いた。
「得体知れないオブリビオンなんかよりヘザーを選ぶに決まってるだろう!」
「え……あ……っ!」
 嬉しそうに声を上げるヘザー。
 突如溢れるメイクラブな雰囲気に、傍から見ているエイルも大興奮である。
「って、何かルトルファスとヘザーがイイ感じじゃないっ! アタシも玲とイチャイチャしたいぃぃ! 玲! 今夜は寝かせないからねっ、覚悟しときなさいよーー!」
「へいへい、解ってますってお姫様」
 抱き付いてくるエイルに笑みを向けつつ、玲は小さく息を吐く。
(微妙に締まらないなぁ……ま、これもおいら達の持ち味かね?)
 きゃいきゃいと楽しげに騒ぎながら、猟兵達は祭りへと戻る。
 楽しげな宴会は日付が変わる頃まで続いたそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月29日
宿敵 『『人祓い妖狐』いずな』 を撃破!


挿絵イラスト