●グリモアベース:ムルヘルベル・アーキロギア曰く
「アポカリプスヘルにある拠点が、オブリビオンの包囲を受け孤立しているようだ。
オヌシらにはそこへ向かい、オブリビオンを撃破してもらいたい……の、だが」
グリモア猟兵である賢者は、集まった一同に向けてそう言い、言葉を区切った。
どうやら、事はただ包囲している敵を倒せばいいだけではないらしい。
「実は……すでに拠点の内部には、オブリビオンが潜伏し壊滅の機会を伺っておるのだ。
拠点そのものは元々刑務所だった建物を使っておるため、外の防備は問題ない。
しかし内側に入り込んだオブリビオンが動き出してしまえば、元の木阿弥であろう」
人間に化けて人々を先導しようとしているか、あるいは中の人々を虐殺するか、
はたまた入り口を解放してしまうか……どんな手段であれ、待っているのは人々の死。
「内側に潜伏しているオブリビオンは、『主喰らい』と呼ばれる古い銃使いだ。
かつては猟師だったようで、オブリビオン化によって凄まじい射撃能力を持っている。
彼奴が人に化けているにせよ隠れているにせよ、オヌシらならば問題ないだろう」
ムルヘルベルは、猟兵たちを拠点の内部に直接テレポートさせるという。
そして猟兵が一目見れば、『主喰らい』の正体はそれだけで看破出来るのである。
ゆえに、人々を説得したり、隠れた敵を探すために気を巡らせる必要はない。
「無論、いきなり転移したオヌシらに対し、拠点の人々は警戒を抱くやもしれん。
だが幸いなことに、拠点にはかつてワガハイが予知した事件の関係者がいるようでな。
『クークー』というソーシャルディーヴァの少女だ。彼女ならば事情を理解してくれる」
腕利きの奪還者として認識される猟兵らの登場は、人々にとっての光明となる。
説得に気を揉まずとも、オブリビオンと戦う姿が緊迫した人々に希望を与えるのだ。
つまり――求められるのは、迅速かつ確実な『主喰らい』の殲滅、そして……。
「外部を包囲する敵の全滅、であるな。……敵は人間ではない、自立機械の群れだ。
オブリビオンストームによって変異した『マシンビースト』の群れがかなりの数と、
それを束ねるリーダー役として、巨大な『暴走戦車』が拠点を見張っておる」
いずれも災厄の嵐によって異常を起こし、機械と融合した獣や殺戮兵器の成れの果て。
全力を挙げて撃滅せねば、敵は直接拠点を攻撃して全てを破壊するかもしれない。
マシンビーストの相互通信による連携、暴走戦車が持つ無数の砲口による一斉砲撃。
どちらも、相手をするには注意が必要だろう……と、ムルヘルベルは語る。
「アポカリプスヘルは危険な世界だ。我らの介入がなくばこうした惨劇は続く。
"希望が人間を作る。大いなる希望を持て"――とある詩人の言葉だ。健闘を祈る」
持っていた本をぱたんと閉じると、賢者は過去の箴言を引用し猟兵たちを鼓舞した。
それが、転移の合図となった。
唐揚げ
焼き海苔です。今回はいわゆる純戦です。デストロイ!
だいたいはOPに書いてありますが、ちょっと備考がありますので、
以下のまとめを忘れずにご一読ください。よろしくお願いします。
●シナリオの目的
『拠点に潜伏するオブリビオンを倒し、包囲網を突破する』
●各章の概要
1章:『主喰らい』(ボス戦)
かつて凄腕の猟師だったがオブリビオン化によって殺戮者と化した、猟銃使い。
武装はナタと古い装備だが、それと思えぬほどの戦闘能力を発揮する。
なんらかの方法で、拠点の包囲を崩し外側の仲間を呼び込もうとしている。
(OPにある通り、猟兵は一目で敵を看破出来るため、捜索や人々の説得は必要ない)
2章:『マシンビースト』(集団戦)
オブリビオンストームで死亡した獣が、機械と融合して生まれた殺戮兵器。
互いに通信しあうことで連携能力を発揮し、獲物を追い詰める。数が多い。
3章:『暴走戦車』(ボス戦)
包囲網の指揮役(この場合は通信網の大元か)というべき、凶悪な大型戦車。
多数の砲身を持ち、これによって敵を攻撃する。当然だが自我も存在する。
その破壊力ならば、時間をかけて拠点の防御を打ち崩すこともできそうだが……?
●舞台設定・NPC
舞台は『かつて刑務所だった建物を流用した、堅固な拠点』
猟兵たちはその内部に直接テレポートし、内部の敵と戦う(第1章)
現地には奪還者が数名、中には『クークー』というソーシャルディーヴァがいる。
ラジオを流しながら旅する少女で、以前とある事件で猟兵に救われた。
(シナリオ『クークー・レディオ』の登場NPC。知らなくても問題ありません)
●プレイングについて
今回は章ごとの採用数を4~10名様ほどとし、頂いたぶんを順次採用していきます。
なので〆は普段より早いかと思いますので、その点ご了承いただけると幸いです。
では、戦いを始めるとしましょう。
第1章 ボス戦
『主喰らい』
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POW : 速射狙撃
【高速連射の銃弾】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 贄の印
【大鉈】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 誇りを賭けた主喰らいの一撃
自身の【右腕】を代償に、【銃弾へ触れた物質を破壊する力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって右腕を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠タケミ・トードー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●拠点"ハード・シェル"
「くそっ、奴らめ……完全に外を包囲してやがる」
「なんとか脱出する手段を稼がないと。まずは老人からだ」
奪還者と武装した人々は、老朽化した監視カメラの映像を睨んで毒づいた。
四方を包囲する無機質な殺戮兵器の群れ。砲口をマウントした巨大な暴走戦車。
あれが総攻撃を仕掛けてこないことは、僥倖だが不気味でもある。
「……なんだろう。やな予感が、する……」
「どうした、クークー? 嫌な予感だって?」
色素の薄い少女……ソーシャルディーヴァのクークーの言葉に、奪還者は言った。
こういう時の彼女のカンは当たる、というのが、彼らの間での共通認識だ。
「……おい、見ろ! 誰かが入り口のセキュリティをいじくってるぞ!?」
そして、内部の監視カメラをチェックした男が、声を荒げた。戦慄する一同。
一見すれば、それは彼らと同じ奪還者に見える……なぜこんなことを!
「……待って!」
パニックに陥りかけた人々を、クークーの声が制した。
「予感、それだけじゃない。何か別の――あ」
少女が謎めいてそう言ったのと、テレポートの輝きがあたりを満たしたのは同時。
そして、猟兵たちは、緊迫した元刑務所拠点内に降り立つのである。
『主喰らい』はすでに行動を起こしている。急ぎヤツを追い詰め、撃滅せよ!
多々羅・赤銅
銃の相手なあ
嫌いなんだよなあ
ほらー、私刀一筋だからさー
銃相手だと、どーにもこーにも
(落ちていた廃材を拾い上げ)
(即時反射。刀ならずとも受ける程度はこなしてみせる。弾丸を受け流す)
(連射にも。廃材が崩れ切るまで受け、叩き落とし、捨てる)
(傷は些細)
煩くて。
踏み入った瞬間から分かっているとも、九時の方向、その殺意。
それを見逃す鬼じゃあねえさ。
人を撃つのはどんな気分だ?
害なす強者は淘汰される。たとえば刀で、あるいはーー猟銃で。
てめえももう、狩られる側だ。
悲しいなあ。
鎧無視にて斬り捨てる。
いやあ人がいようが説得も探索も要らねえってのは良いなあ、どーよ私カッコよかったー!?
BLAMN!!
振り返りざまの射撃……疾い。古びた猟銃とは思えぬほどのクイックドロウ。
達人でさえ対処は難しいであろう、後の先を得た不意打ちという矛盾。
銃はそれを可能にする鉄器だ。ましてや扱うのがオブリビオンならば……。
「銃の相手ってさあ、嫌いなんだよなあ」
しかし。
それを受けたはずの女は、うんざりした様子で廃材を放り捨てた。
がらん、と音を立て落ちたそれは、冷たいコンクリートにぶつかって跳ね――。
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMN!!
……直後に飛来した追加の弾丸を、"跳ねた拍子に受け流し、弾いた"。
「ほらー、私刀一筋だからさー。銃相手だと、どーにもこーにも」
フライパンの上のポップコーンめいて踊る廃材を、多々羅・赤銅はキャッチ。
猟銃を構えた相手を見やり、小首を傾げて意地悪く笑ってみせた。
「――煩くてな」
両者の間、空間がどろりと濁るような錯視。殺意が音もなくぶつかりあった。
『……大したモンじゃアねえか。俺っちの弾を見切るかよ』
「そらなあ、踏み入った瞬間からあんだけ殺意バラまかれてりゃ。
それを見逃す鬼(わたし)じゃあねえさ――なあ、一つ聞いていいかい」
ボロボロになった廃材で肩を叩きながら、多々羅・赤銅は一歩近づいた。
「人を撃つのはどんな気分だ?」
『…………』
「害なす強者は淘汰される。たとえば刀(こいつ)で」
すらり。赤銅の手には、すでに大業物。銘は適当なれど造りは一流。
当然だ――この鬼が手ずからに、殺意を込めに込めて鍛(う)ったのだ。
「あるいは、猟銃(そいつ)で」
偽装を解いた『主喰らい』のそれを廃材で指し示し、赤銅は言った。
『へ、へ。たまンねえさ。手応えがあるンだよ。銃には銃の手応えがよォ……』
「そうかい。だが哀しいなあ」
赤銅は右目を細めた。それは狩人の瞳。
「――てめえももう、狩られる側だッ!」
女の姿が消えた。誰もいない空間を、弾丸がむなしく通りすぎる。
神速の踏み込み。コンクリートが耐えきれずにひび割れ、瓦礫が悲鳴をあげた。
袈裟懸け。主喰らいは猟銃を杖めいて扱い、これをこじ開けるようにいなす。
ひゅう、と赤銅は口笛を吹いた――しかし口元は笑み。読んでいる。
深すぎると見えた太刀筋はこのため。ねじった半身をバネめいて解き放つ。
先の斬撃の倍の速度とリーチを持つ鬼の一撃が、主喰らいの胴を……裂いた!
『がッ』
吐血、舌打ち。主喰らいは血痕を遺しつつ、忌々しげに姿を消した。
「……いやあ、人がいようが面倒事が要らねえってのはいいなあ。ね!」
からっとした笑みを浮かべ、赤銅は振り返る。そこには駆けつけた人々の姿。
尋常ならざる立ち会いに、誰も踏み込めなかった。鬼はかんらかんらと笑って、
「どーよ、私カッコよかったー!?」
先ほどとは別人のようにあっけらかんと言う姿に、人々は息を呑む。
「……うん、カッコよかった」
猟兵。彼らの戦いを知る少女――クークーだけが、素直に頷いた。
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
潜入したオブリビオン、ねえ
相手を見ればわかるなら面倒がなくていい
後顧の憂いは早めに断つに限る
途中でクークーを見つけたら事情は説明しておこう
ついでに、それらしい人物の心当たりを聞いてみようかな
可能なら、戦闘が始まったら避難誘導をしてもらえるといいんだけど
そこはあっちの判断に任せるさ
姿を見掛けた場合は即座に狙撃
不意を衝いた隙を縫って接近
屋内となるとあまり距離を取れないだろうし
撃ち合いは周りに被害が出る可能性があるからな
……面倒だが、近づいて対処するよ
大鉈の軌道を見切って回避・あるいは手持ちの武装でいなしながら
射撃でダメージを稼いでいくよ
悪いけど“覚える”のはこっちのほうが得意だ
当たってはやれないな
オブリビオンは、猟兵を視たとき一目でそれを知るという。
絶対の天敵、相容れざるモノ……それは、猟兵も同様である。
なんらかの術式で己を隠蔽している場合はともかく、今回は尋常の例。
まして、鋭い瞳を持つ鳴宮・匡であれば、並の相手では隠しきれない。
"だから、心配しなくていいぜ。こっちはこっちで確実にやる"
道中出会ったクークーに対し、匡は手短に事情を説明した。
面識のある少女はこくんと頷き、ぱちぱちと瞬きながら彼を見つめる。
"避難誘導とか、頼めるか。緊急用の脱出口ぐらい、用意してあるだろ?"
"うん、わかった。ありがとう――でも、ねぇ。ひとつ聞いていい?"
足早に去ろうとした匡は、クークーの問いかけに視線だけで振り返った。
色素の薄い少女は、一度見送ったその背中を……そして眼差しを見つめ、言った。
"どうして、ワタシたちを助けてくれるの?"
"…………"
少しの沈黙。
"……懐かしいんだよ、ここ。それと……"
"…………?"
"ああ、いや。――もう少しらしい答え、次がありゃ用意しておくぜ"
少女はそれ以上問いかけなかった。彼もまた、そのねがいを明らかにしなかった。
ただあの時と同じように、少女は匡の背中を……男の背中を、見送った。
時間軸は現在に戻る。
『!!』
ガキン! と、古びた大鉈が不意を打った無音の弾丸をかろうじて捌いた。
『俺っちの不意を突くたア、やるじゃねえか……へ、へ。面白エや』
「そうか。俺はつまらないよ――いや、それこそ"どうでもいい"か」
主喰らいは瞠目した。眼前! この一瞬のうちに接近していたと?
研ぎ澄まされた猟師の本能が、反射的にナタを振るわせる。だが、甘い。
無意識の行動ほど読みやすいものはない。なにせそれは意志が介在しないのだ。
人体がどこまで動き、どのように殺しに来るか、匡はよく知っている。
だから、躱せる。0.2秒という人間の反射限界も、凪の海には関係のない話。
「悪いけど」
無音の銃撃がまたひとつ。斬り裂かれた腹部に追い撃ちめいて弾丸が叩き込まれた。
『が、は……!』
主喰らいが血を吐く。黒ずんだ動脈血……膵臓あたりが破裂したか。
「"覚える"のはこっちのほうが得意だ。当たってはやれないな」
無音の銃声、またひとつ。弱った獣を仕留めるように、無慈悲に。確実に。
大成功
🔵🔵🔵
夏目・晴夜
間に合ったのであれば何より
この世界もクークーさんも相変わらずな様子で一安心ですね
まず、目印も兼ねて妖刀を敵に【投擲】し【串刺し】に
そいつから即刻離れて、くれぐれも近づかないように
それは卑怯にも忍び込んできた醜悪なネズミですからね
敵の大鉈は【第六感】での回避に努めながら、
周囲の方へも攻撃が及ばぬよう『謳う静寂』で命令を下して参ります
野蛮ですね、『近づかないで下さいよ』
このハレルヤを前に無礼な。『今すぐ崇め奉ってみせて下さい』
あと『今すぐに死んで下さい』
ああ、妖刀は私のですから接近した際に返してもらいます
【傷をえぐり】ながら引き抜き、その刀で【目潰し】
良い切れ味でしょう、しっかり覚えていて下さいね
「脱出だ! まずは老人から、その次に子供を優先してくれ!」
「いつ連中が壁をぶち抜くかわからん。落ち着いて行動してくれよ」
武器を携えた奪還者たちが先導となり、拠点住人を脱出路へ誘導する。
しかしそこへ、所内を警戒していたメンバーが慌てた様子で戻ってきた。
「い、いないんだ! あの人らが戦ったっていうオブリビオンが、どこにも!」
「……まさか、またこの中に混ざってるっていうのか……!?」
一同に戦慄が走る。誰が? そして、いつ? この中に殺戮者が……?
彼らに敵を見抜くことは出来ない。疑心暗鬼が高まり、カタストロフに繋がる。
しかし、それこそが主喰らいの目的なのだ。人々の中に潜んだ奴は静かにほくそ笑み、
『……ぐ、ぁああっ!?』
突如としてなげうたれた妖刀に片腕を貫かれ、呻きながら崩れ落ちた。
みずぼらしい老人の姿がぐにゃりと歪み、汚れた猟師の姿を表す。
「懲りないですねぇあなた。私たちにはお見通しなんですよ?
……ああ、突然すいません皆さん。そいつから即刻離れてくださいね」
ニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべて現れた夏目・晴夜が、一同に言う。
彼の姿を知るクークーも、奪還者たちにそれを伝え安心するように促した。
「どうも、クークーさん。相変わらずな様子で安心しましたよ。助かります。
こいつは卑怯にも忍び込んできた醜悪なネズミ……いえ、ブタですかね?」
『て、てめえ……!!』
「やだなあ、囀らないでくださいよ。このハレルヤの耳が汚れるじゃないです、か!」
ヒュカッ! うずくまっていたところからの不意打ちの大鉈。狙いは首!
晴夜は身を反らしてナタの一撃を回避し、地面に落ちた猟銃を蹴り飛ばす。
敵は舌打ちしながら飛び退り、ナタを逆手に構えて獣めいた吐息を漏らした。
『シュウウウウ……俺っちの狩りを邪魔すンじゃねエ……』
「狩られるのはあなたですよ? それと、もう一度命じます。"黙ってください"」
『誰が従――ッ!?』
バチィン! 天井から落ちた電流が主喰らいを打ち据えた。
再び崩れ落ちて膝を突く敵に対し、晴夜は超越者めいた傲然な眼差しで見下ろす。
「このハレルヤを前に無礼な。"今すぐ崇め奉ってみせてください"」
『な、なめンじゃね、エ……ガアアアッ!!』
ガガァン! 天井の蛍光灯が、破裂した電光の余波で割れ砕ける。
これは一体? ……そう、この傲慢な命令そのものはユーベルコードのトリガー。
「痛いですか? 痛いですよね。じゃあ"いますぐに死んでください"」
『…………ッ!!!!』
晴夜は悠然と敵に近寄り、刺さったままの妖刀をぐりぐりと乱暴に引き抜いた。
そして、横薙ぎに一閃。声ならぬ悲鳴と、落雷の轟音が響き渡る。
「おや? 電撃が走ったということはまだ死んでないんですか。面倒ですねえ。
では、この切れ味を教えてあげましょう――しっかり覚えていてくださいね?」
それは命令ではない。薄ら笑う死刑執行者の、無慈悲な宣誓であった。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
狩られる側だぞ、お前が
敵へは顕理輝光で対処
常時身に纏う故、準備不要
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を置き影響を回避
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げ、行動は全行程を『刻真』で無限加速し即座に終える
魔眼・封絶で拘束
確認した時点で即座に
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する
何をしていようと消え失せるだろう
捕縛中も『刻真』『再帰』で魔眼行使の瞬間を循環させ、常に「新たに拘束し続ける」
身じろぎ一つもさせる気はない
後は『討滅』を乗せた打撃で始末する
※アドリブ歓迎
蒼光を放つ双眸が、偽りの衣を剥ぎ取り『主喰らい』の本質を捕らえた。
世界原理の根源に直結した魔眼は、見えざる魔力によってすべてを封絶する。
右腕を犠牲に致命的魔弾を繰り出そうとした主喰らい――だが、何も起きない。
『なんだ? 俺っちの銃がおかしい! いや、これはまさか』
「いまさら理解したか。自分が狩られる側だということか」
『……てめエのユーベルコードかア!』
獣めいた叫びとともに、猟師は逆手に大鉈を構えて獰猛に切りつけた。
アルトリウス・セレスタイトは最小限の動作で回避、コンパクトな打撃を返す。
カウンターの一撃が、さきほど別の猟兵が与えた手傷に食い込み、敵は呻いた。
体勢が崩れる。アルトリウスは破滅の魔力を籠めた拳をさらに叩き込んだ。
一撃一撃が鋭く、疾い。ましてや魔眼・封絶がその身を、存在を縛るのでは、
主喰らいには反撃のしようがない。趨勢はアルトリウスの側に一方的に傾く。
『く、クソっ! へ、へ、このまま狩られてたまるかよ……ッ!』
しかし敵はオブリビオンである。そして泥を啜ってでも生き延びてきた猟師。
残骸と成り果ててなお、生存に対する本能はこの世界の住人らしく、貪欲だ。
打撃によって根源的な存在力を削り取られながらも、防御に努め、隙を伺う。
「お前の野望は成就しない。この拠点の門扉は開けさせん」
『……チィッ!』
頭蓋をめがけた拳を両手を犠牲に防ぎ、主喰らいは遁走した。
無論、出入り口やその制御コンソールとは逆方向、袋小路のほうへ。
相手にとっては業腹だろう。この拠点はいまやあれの牢獄に変わったのだ。
「……まだわかっていないな」
アルトリウスは心眼を起動した。壁も、帳も、その目には役立たない。
「お前に、逃げ場などない」
次の瞬間――男の姿は、敵を追って消えた。蒼い燐光の残滓だけを置いて。
成功
🔵🔵🔴
アルジャンテ・レラ
なるほど。
"彼女"が以前語っていたクークーという名のソーシャルディーヴァ。
その存在が有り難い状況ですね……。
潜伏した上で惨事を招くとは姑息な。
まあ、間に合ったのは不幸中の幸いでした。
極力間合いを詰めないよう、常に距離を置けるよう意識して立ち回りましょう。
死角を生かし障害物と成り得る物を盾とし、銃撃を受けぬよう守りに重きを置きます。
攻撃時、暫くは通常の射撃のみ放ち単調な戦術であると思い込ませたいですね。
その上で頃合いを見計らいUC。
上手く虚を衝けるといいのですが。
過去は敏腕の猟師であろうと今は随分と落ちぶれたものですね。
どれほど射撃精度が高くとも尊敬の念など到底抱けません。
人々は恐怖していた。もしかしたらこの中にオブリビオンがいるかもしれない。
包囲網に閉ざされた極限の閉鎖状況は、いわば破裂寸前の火薬倉庫だ。
パニックがすべてを壊し、風船が割れるように拠点は瓦礫と化すだろう。
あまりにもたやすい未来……それをギリギリのところで留めていたのは、
ソーシャルディーヴァの少女、クークーの尽力だった。
《ガガ、クークー。ガガ、クークー。……安心して、もう大丈夫だから》
所内に響き渡るのは、彼女が放送する超短距離通信――レトロなレディオだ。
ざらついたノイズとともに、抑揚の少ない少女の声が人々に呼びかける。
《ワタシたちを助けてくれる人たちがいる。だからもう、心配しないで》
「……ありがたいですね、こうした人がいてくれるのは」
放送が響き渡るなか、アルジャンテ・レラは弓を大きく引いていた。
鏃を向けた先、大鉈を構え腰だめに深く身を下ろす凶人、主喰らいが唸る。
「もはや、あなたの思い描いたシナリオは成就しないでしょう。
あとはあなたを倒し、外の包囲網を突破します。私たちの手で」
『へ、へ……出来るかア? 殺せるかよォ、俺っちを……』
白亜の貌がにたりと笑い、次の瞬間にはアルジャンテの眼前に迫っていた。
逆袈裟の一撃。アルジャンテは髪を一房持っていかれながらもこれを躱し、
後転して身構える。弾丸めいた速度で近づく敵へ牽制の射撃――弾かれた。
『当たらねエ! 弓なンてちゃちなモンじゃ俺っちは』
「たしかに、速度において弓矢は銃には勝てません」
『!?』
「――ですが、"こういうこと"は出来るんですよ」
ドスリ、と主喰らいの鎖骨付近に、あるはずのない二の矢が突き刺さった。
勢いそのままに主喰らいは仰向けに転がり、痛みに絶叫する。
アルジャンテはわずかに安堵めいたため息をこぼし、肩の力を脱いた。
"影迅双矢"。極限の集中を以て放たれる、"一に二を隠した時間差射撃"。
まるで一撃目をなぞるような二の矢は、敵の虚を突き同じ場所を貫くのだ。
「凄腕の猟師が落ちぶれたものですね。あなたに尊敬の念など到底抱けません」
アルジャンテは吐き捨てるように言って立ち上がる。表情は相変わらず無機質。
だが……その双眸には、射手としての矜持と怒りがたしかに燃えていた。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
私にとっては見れば敵だと分かると言うのは有難いですね。
もっとも、銃は難しい相手ではありますが。
まず、とにかく狙いを付けさせない事ですね。
【残像】が起こる様な緩急をつけて【ダッシュ】し、敵を惑わせましょう。
但しこちらも剣の間合いに踏み込めず攻めあぐねている様に見せておきます。
十分焦らしたら、攻撃の為に意を決して突撃する様に見せる【フェイント】をかけましょう。
敵のユーベルコードを誘発できればそのタイミングを【第六感】で察知し、こちらも魔銃を【クイックドロウ】し【カウンター】のユーベルコードで撃ち抜きます。
どちらが抜くのが早いか、勝負と言った所ですね。
風が、ハロ・シエラの後方で渦巻いた。
急速なダッシュによって局所的な疑似真空が生まれ、そこに大気が雪崩れたのだ。 軌跡は濁った水のように歪み、撹拌し、消えていく――その時には少女は敵前に。
時間にしてコンマ数秒といったところ。人間の反射限界に挑んだ接近である。
ハロはそのまま刺突を……放たない。キュ、と鋭くブレーキを踏んだ。
速度を殺さぬまま制動をかけ、横っ飛び。ガァンッ!! と弾丸が空間を貫く。
避けていなければ心臓を貫かれていたか。銃口は彼女をすでに捉えている。
『死になア!』
「く……っ!」
カキッ、と豆の殻を割ったような音が響き、直後に跳弾の反響音。
細剣が二つ目の弾丸を切り払い、その残骸が壁と床に命中したのである。
後退か、前進か。どちらにせよ足を止めてはならない。三発目が来る。
ハロは身を深く沈め、眉間を狙った銃弾を躱し、再びダッシュを試みた。
敵はそれを予期している。チュイン――四発目。攻防はほぼ互角か。
『へ、へ! 近づけねエかい、悔しいかア? いいざまだア!』
「……やはり、銃は難しい相手ですね。どうしても間合いが取れません」
ハロは噛みしめるような声音で言い、ゆらゆらと切っ先をさまよわせた。
それは敵から見ると、焦れに焦れて起死回生を狙っているように見えるだろう。
事実、主喰らいもそう思い込んでいた。ゆえに奴は、
『だったらよう、ふっとばしてやるよ。へ、へ、全部全部なア!』
あらゆるものを崩壊破滅させる魔弾を、右腕を犠牲に放とうと力を籠めた。
猟銃が不穏な殺意を孕む。ハロはきっと眦を決して飛び込んだ!
うかつだ。そこは敵の射撃軌道上。ハロの主観時間が緊張により鈍化する。
主喰らいもまた同様に、スローな世界のなかでにたりとほくそ笑んだ。
(間抜けがア、脳天ぶっちらばして死にやがれエ……!)
そして指先に力を込める。トリガを引けばそれで終わり……そのはず、だった。
(何?)
ハロは細剣を持たない方の手を、まるで決闘するガンマンめいて伸ばす。
すると地獄の炎がひゅぼっ、と手の中で燃え上がり、鉄を鍛造した。
黒黒とした、ぞっとするようなフォルムの魔銃。悪魔の慈悲を下す殺戮兵器を。
「――どちらが抜くのが早いか、勝負といったところですね」
BLAMN――響き渡った銃声は、ひとつ。トリガを引いたのはハロが先!
弾丸を腹部に受け、主喰らいはごろごろと転がり、燃える痛みに泣き叫んだ。
『畜生!! フェイントだと、ちくしょう、ちくしょおオオ……!!』
「正々堂々勝負をするとでも? 思い上がりが知れますよ」
ガンスピンしホルスターに収めるような仕草をすると、魔銃はかき消えた。
悶える敵を見下ろす少女の双眸は、下賤な敵に対する嫌悪と侮蔑に溢れている。
大成功
🔵🔵🔵
イス・イス
オブリビオンがいるから、来た。
戦って、食べて、またイスは戦う。
どこだろ。
主喰らいを探して拠点内を歩く。
大鉈での攻撃を『野生の勘』で察知、『咄嗟の一撃』で殴り飛ばして『カウンター』、『吹き飛ばし』て大鉈を空振りさせる。
(「そういうもの」として作られたフラスコチャイルドであるイスは理由がなくとも人を守り、オブリビオンと戦う。そういうものだから)
戦いが楽しい? イスには分からない。
けど、イスも知ってることはある。
【偽神兵器解放:𓃹𓈖𓏊𓏏𓆗】で吹き飛ばした相手に『ダッシュ』『ジャンプ』で銃を避けながら接近。接近したら『怪力』でひたすら殴る、蹴る。
この距離なら、イスは負けない。
『はあ、ハア……畜生、畜生……ッ』
重傷を負った主喰らいは、ぜいぜいと荒い息をしながら壁にもたれかかる。
こうもたやすく潜伏を見破られ、あまつさえここまで追い詰められるとは。
猟師としてのプライドが疼く。それ以上にこの痛みが忌々しかった。
『へ、へ……だが、だがア……死なねエ、俺っちは死なねエ……』
アポカリプスヘルで生き延びた男の残骸は、その生存欲求を保っていた。
いや、オブリビオンとなったことで、むしろそれは醜悪に増している。
なんとしてでも生き延びる。外の仲間を引き込んで一網打尽にしてやろう。
あの人間どもが殺戮に見舞われ、絶望する声を聞いてやるのだ……!
「――いた」
『あ?』
そこに、荒廃世界にはふさわしからぬ装いの少女がやってきた。
中東的あるいは古代南米文明を思わせる装いは、原始的でかつ露出が多い。
まるで、博物館から抜け出してきたような、ちぐはぐさがあった。
しかしそれ以上に違和感をもたらすのは、少女の双眸であろう。
ぱちぱちと瞬くエメラルド色の瞳は、無垢でありながら妙に寒々しい。
何がそうさせるのか――主喰らいには考えずともすぐにわかった。
『猟兵かア……』
「そうだ。オブリビオン、喰いに来た」
反射めいた問答。イス・イスに人間らしい情緒はあまり見られない。
それは彼女が虚無的だからというより、まだ何も詰め込まれていないからか。
"そういうもの"として造られたフラスコの中の小人に、人間的機微はない。
『畜生……狩ってやるぜエ、死ねやアッ!!』
主喰らいは吠えた。追い詰められた獣を模倣するように。
ひとっ飛びで間合いを詰めて、大鉈を首元めがけ猛スピードで振り下ろす。
振り下ろしたはずだ。だが、突然視界が明滅した。
『!?』
己が顔面を殴られ吹き飛んだのだと理解したのは、壁に激突した時だ。
尾骨がひしゃげて血が噴き出し、痛みが思い出したように襲ってくる。
『ぶ、げ……は、疾……』
「イスはそんなの要らない。遅いから当たりたくない」
つかつかと少女は間合いを詰める。そこで主喰らいは理解した。
『テメエ、ストームブレイドか! へ、へ、俺っちを喰いに来たかよ……!』
「そう。オブリビオンを食う。戦って、食って、また戦う。イスはそのためにいる」
『ひ、ひひ。くだらねエ。戦うってのはよオ、楽しいモンなんだぜッ!』
だまし討ち! 飛びかかりながらの再擊を、イスは膂力で粉砕した。
拳を拳で叩き砕き、みぞおちに蹴り。主喰らいは壁にぐしゃんとめり込む。
『ぐえっ!!』
「戦いが楽しい? イスにはわからない。けど、イスも知ってることはある」
『ち、畜しょ――』
主喰らいは咄嗟に遁走した。イスはノーモーションで床を砕き、横方向に翔んだ。
コマ落ち映像めいた一瞬の接近。主喰らいは戦慄する。
「この距離なら、イスは負けない――それに、オブリビオンは逃さない」
槌のような拳が頭蓋を砕く。脳漿が爆ぜて散らばった。
くるりと空中で回転しての踵落とし。残った胴体が真っ二つに割れる。
風が唸った。災厄の嵐を喰らう風。偽神兵器が起こす風。獲物を貪る龍の舌。
「まずい」
イスは少しだけ、顔をしかめた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『マシンビースト』
|
POW : ワイルドビースト
【野生化モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 同型機との経験共有
【頭部に内蔵した高熱の刃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【行動パターン】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 光学迷彩
自身と自身の装備、【自身と同型の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
"ハード・シェル"を包囲する何体ものマシン・ビーストの網膜に、電子が流れる。
《"ホスト"より通達。潜入個体が滅殺された。総攻撃を開始せよ》
キュウウウン……という駆動音とともに、マシン・ビーストが起き上がる。
あるものは光学迷彩で姿を隠し、
あるものは溶断熱ブレードを展開し、
あるものは邪悪なワイルドモードに変形し、
全てみな牙を尖らせた。ハッ、ハッ、と犬の吐息めいた排莢音。
飢えている。
唾棄すべき融合によって作り上げられたいびつな自我のパッチワークは、
機械でありながら殺戮と蹂躙の高揚に受けている。
血と、肉を求めている。弱者どもを引き裂くその手応えを。
「……来る」
放送で人々を安心させていたクークーは、顔を上げた。
そしてこの場にやってきた猟兵たちに、超小型端末越しに語りかける。
「お願い。門を開けるから、あいつらをやっつけて。……危険だけれど、お願い」
断る理由はない。はじめから、君達はそのためにやってきたのだ。
さあ、反撃の時だ。
打って出ろ。立ち並ぶ鋼の獣どもを叩き、貫き、斬り、砕け。
狩るのはどちらなのか、
砕かれるのはどちらなのか、
勝つのはどちらなのか。
嵐の落とし子どもに、本物の嵐の在り方を教えてやれ。
アルトリウス・セレスタイト
数は力というが
相手次第では、群れれば良いというものでもないぞ
敵へは顕理輝光で対処
常時身に纏う故、準備不要
状況は『天光』で常時漏らさず把握
攻撃へは『絶理』『刻真』で異なる時間に自身を置き影響を回避
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げ、行動は全行程を『刻真』で無限加速し即座に終える
天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
内から外へは何もできず逆は自由
俺か迷宮を破壊せねば出られぬぞ
攻撃手段さえ自壊するが、精々励め
迷宮へは『解放』を通じて全力で魔力を注ぎ強度と自壊速度を最大化
殲滅とはこうやるものだ
※アドリブ歓迎
突如として、マシンビースト数十体の頭上が暗闇に遮られた。
時刻はまだ昼であったはず。いきなり夜になるなど説明がつかない。
尋常の理から外れたオブリビオンですら、戸惑い気味に空を見上げる。
そして見よ。空を覆うのは星に非ず、不穏に瞬く蒼き燐光。
果てさえ見えぬ虚空の闇のなか、それはしかしなんら安堵をもたらさぬ。
空に輝く星は、違う。星あかりは旅人の道標となるからだ。
だがあれは、もっと別の……たとえるならば獲物を見下ろす狩猟者めいた……。
「空を仰いでいる暇があるのか?」
『『『!!』』』
はたしていつからそこにいたのか。アルトリウス・セレスタイトが立っていた。
男は双眸で機械獣どもを睨み、死刑宣告めいて言った。
「ここは原理の迷宮。無限の虚空に果てはなく、囚われた者は逃れられない。
それでも出たいならば――空を破るか、俺を殺すか。ふたつに一つだ」
やってみろ、とばかりにアルトリウスは心臓を叩く。獣どもはぐるる、と唸った。
揺らめくヴェールに覆われたその姿が消え、殺意だけが漂う。
かすかな駆動音。包囲されたか。アルトリウスは涼し気な表情を崩さない。
「もっとも――もう遅いがな」
見えざる獣が一斉に飛びかかった、その瞬間。
空の燐光が眩しいほどに煌めき、雨のように降り注いだ。
迷宮が、崩れたのだ。存在消去の自壊原理が、囚われた者を襲った。
「……覚えておけ。殲滅とは、こうやるものだ」
残骸なき荒野に男はひとり立つ。びょう、と乾いた風が吹いた。
次なる群れを見やる。あさましき殺戮の獣――滅ぼすべき新たな敵を。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
ったく、問題だらけだな
ま、どの世界もそれは同じか
そんじゃ、一つ脚本を書いてやろうか
お、クークーいんのか?
今日は刺激的なレディオになるぜ
配信と身を守る準備をしときな!
やぁどうも、ハンター?
俺を狩るつもりなのかい?その気概は結構だが、出来ないことを言うもんじゃないぜ
ククッ、舐めるなって?
否定したいなら行いで示しなよ
さぁ、それでは脚本に一筆
セット、『Dirty Edit』
右腕を代償に強大な破壊力を銃弾に籠める?
ならそれを書き換えてしまえばいい
お前のその弾丸には『何も宿らない』
ただ右腕を捨てただけ、結果はそれだけだ
さぁ、それではここでミュージックだ
クロスボウによる破壊と撃滅のパーカッション、聞いていけ
「みんな、絶対に外に出ないで。いま外で戦いが――」
《よおクークー! おっと、レディオ中だったかい? すまないな》
拠点内に取り残された人々に呼びかける電波に、若い男の声が割り込んだ。
ヴィクティム・ウィンターミュート。クークーは安堵したように微笑む。
「ううん。大丈夫。あなたも、来てくれたんだ」
《"も?" ふうん、なるほど……ま、なにはともあれ当然だろ?》
ヴィクティムは薄く笑う。……その周囲には無数の獣!
ステルス迷彩で姿を隠し飛びかかる獣を、ヴィクティムは軽やかに躱す。
ダンスめいて優雅に、ピエロのように面白おかしく、からかい侮辱するように。
そんな状態で、彼は、電話でもするようにクークーと通信しているのだ。
「せっかくだ、このままホットラインを維持しときな。いいモノ聞かせてやる」
《え? でも……》
「今日は刺激的なレディオになるぜ? この俺の脚本があるんだからなッ!」
横合いから飛びかかった不可視の獣を躱し、ヴィクティムは謳うように言った。
電撃めいた手さばき。手品のように現れたナイフを牙のごとく振るう。
マシンビーストの腹部を貫き、抉り、臓物(エンジン)を破砕、摘出。
バチバチとスパークするそれを蹴り飛ばし、BOMB! と爆ぜた拍子にステルス化。
「――"狩り方"ってのを教えてやるよ、子犬(パピー)ども」
無音の斬撃が群れを蹂躙する。それは毛刈りの作業のようだった。
淡々と、シンプルに、ミニマルに、確実に。たやすい作業である。
獣は唸る。高熱ブレードを展開しヴィクティムを同時攻撃で切り裂こうとする。
追い詰められたギャングスタのように囲まれた状態で、ハッカーは両手を上げた。
降参のサイン? 否――ナイフは消えて、そこにはクロスボウがある。
「それじゃあここで一曲、ミュージックを披露しよう。聴いてくれ。
クロスボウによる破壊と撃滅のパーカッション、派手に奏でるぜ!」
ヒュカカカカッ! 脳天に突き刺さったボルトが爆発、頭部を破砕!
さらに通信網を媒介に広がった破壊ウィルスがマシンビーストを書き換える。
ブレードの熱がボディに伝わり……苦悶とともに爆発、爆発、爆発!
「ハハッ、排気がなっちゃねえな? 体(マシン)のメンテは怠るなよ」
KBAM,KBAM!! 爆炎のステージの中で、ヴィクティムはけだものをあざ笑った。
鳴り響く規則的なエクスプロードは、奇しくもエイトビートを刻んでいる。
大成功
🔵🔵🔵
夏目・晴夜
見えなくなるとは、まるで幽霊ですね
如何にも畜生の浅知恵という感じで可愛いではないですか
我々の血肉は畜生どもには勿体ないですが、
こいつらのであれば幾らでも差し上げますよ
触れるかどうかはわかりませんがね
『芥の罪人』で数多の悪霊を嗾けて
中に潜り込ませ、配線を引き千切らせ、内部を破壊させ、
思うがままに【蹂躙】してもらいます
一番の成果を挙げた霊は特別に解放してあげますよ
どうぞ存分に暴れまくって善行を積んで来て下さい
このハレルヤも、休んでいて褒められる機会をみすみす逃す気はありません
悪霊による破壊音や【第六感】を頼りに【踏みつけ】【串刺し】にして参ります
あ、事が終われば悪霊は皆妖刀の胃の中に戻って下さいね
救いがたき愚物とは、哀しいかな死んでも治らないものである。
ことに、夏目・晴夜の妖刀に啜られた魂たとは、その好例と言えよう。
刀の周囲がゆらめき、ああ、おお、と、啜り泣くような嗚咽と怨嗟が木霊した。
刃に喰われ、なおも成仏出来ぬままに囚われた悪しき魂どもが起きたのだ。
「さあ、善行を積めば糸を垂らしてあげますよ。お行きなさい」
助けてくれ。
救ってくれ。
もう苦しみたくない。
姿なき亡者どもに見境はない。そして、目に騙されることもない。
見えざる獣の匂いを嗅ぎつけて、すすり泣き、恨み言を呻きながら群がる。
マシンビーストは身震いした。肉なきその身にも恐怖はあるのか。
だが、逃げ場はない。形なき悪霊は、一度捕らえた獲物をけして逃さない。
群がる魂が半透明の鉤爪として実体化し、鋼を引き裂き、臓腑を抉る。
神経を引き裂いて配線を引きちぎり、関節を砕き、電子頭脳をかき乱す。
畜生のごとき霊が、畜生ですらない機械を貪る。地獄じみた光景であった。
「まったく浅ましいですね。どんぐりの背比べとはこのことでしょうか」
とんとん、と妖刀で肩を叩きながら、晴夜はおぞましげに眉根を顰めた。
そもそも彼らを捕らえ、救ってやるとうそぶいている当人らしからぬ嫌悪の貌。
そこで思い出したように耳をぴくりと揺らし、横から来た獣を両断する。
「おや、見下げ果てた貪欲さですね。このハレルヤに相手をしてほしいと?
まあいいでしょう。褒められる機会をみすみす逃すつもりも無いですからね」
かつかつと荒野を歩き、並ぶ敗残兵を残らず殺す無慈悲な死刑執行官めいて、
よく斬れる妖刀を振り回し囚われた獣どもを"断罪"していく。
その両足に悪霊どもがまとわりつくたび、
踏み潰し、
踏みにじり、
塵芥のように扱ってから妖刀の中に戻してやった。
あれらに救いはないだろう。最初から救われる魂などいないが。
「汚らしい畜生は存在しているだけで万死に値します。可哀想ですね」
汚物の山でも前にしたかのように、残骸だらけの荒野で少年が首を振った。
足元には苦痛と怨嗟だけが転がっていた。
大成功
🔵🔵🔵
アルジャンテ・レラ
危険など承知の上です。
オブリビオンといえど、敵も機械。
少々複雑ではありますが……機械同士といえど根底から違うはずです。
そうでなければいけません。
でなければ、博士が私を造った意義が、推測と異なるものになってしまう。
証明します。違うのだと!
こちらへ近寄る敵を優先的に排除しましょう。
複数の矢を構え、威嚇も兼ねた通常射撃を。
撃ち漏らしは銀朱火矢で息の根を止めます。
透明化の手段もあるようなので視覚だけに頼らないようにします。
必要とあらば視界を閉ざし聴覚を研ぎ澄ませ、忍び寄る敵がいないか細心の注意を。
私にも守りたい存在がいるのです。
倒れるわけにはいきません。
光学迷彩といっても、完全にすべてを覆い隠せるわけではない。
嗅覚、味覚、触覚そして聴覚……視覚に頼らず敵を探る術は誰にでもある。
アルジャンテ・レラは誰もいない――ように見える――荒野にひとり立ち、
神経を研ぎ澄ませた。そこにないはずのものを、見出すように。
見た目は人間であれ、本質的に機械である彼が全力で集中すると、
瞳孔はぴくりとも動かず、身じろぎひとつ起こさない。完全な静止状態となる。
仮初の命を失い、人形に戻ってしまったような不気味な違和感があった。
(……オブリビオンと言えど、敵も機械。ならば……)
けれども、彼の"こころ"は違った。
(付け入る隙はある。……敵と、私は機械同士でも、根底から違うのだから)
オブリビオンと猟兵。世界のくびきから放たれながら敵対する異物。
けして交わらぬ陰と陽。違うものだ。違うもので――あるはずだ。
いや、"そうでなければならない"のだ。
でなければ。
(博士が私を造った意義が……推測と、異なるものになってしまう――!)
アルジャンテの両眼が散大した。瞬間、ぐるりと身を翻し背後を射抜いた。
ヒュパッ、と放たれた矢は虚空を貫き……そこに、バチチ、と火花が奔る。
なにもない筈の空間が揺らめき現れたのは……腹部を貫かれた機械獣。
飛びかかる姿勢のまま矢で仕留められたマシンビーストは、ギャン、と鳴き、
火花とオイルの血を漏らしながら転がって、痙攣して動かなくなった。
その時にはもう、アルジャンテは次の敵の攻撃を低姿勢で躱していた。
頭上めがけて二の矢を放つ。ごろごろ埃っぽい荒野を転がって、
土だらけになりながら立ち上がり、複数の矢による牽制射撃。ガキンという音。
「――そこですね」
反響音から敵の移動先を推察したアルジャンテは、銀朱の火矢を放った。
ただ、猟兵だから、依頼されたからという戦いぶりではない。
守るべきものを守るために。
斃すべき敵を斃すために。
「まだまだいるのでしょう。どうぞかかってきてください。お相手します」
――己は、正しき目的のために造られたのだと。
誰にでもない、世界と……己自身に証明するために。
「すべて、破壊してみせる」
ひび割れた胸を張って、証明してみせるために。彼は、戦うのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
姿を隠す能力であろうと、私の【第六感】の前では無力。
……とまでは行きませんが、理性を失った動きで起きる音や刃の高熱から動きを【見切り】回避する事は出来るでしょうか。
まず数の多さが厄介ですね。
ここは敵を【おびき寄せ】て自分の周囲に集めましょう。
なるべく攻撃は回避したい所ですが、手傷を負っても構いません。
私の行動パターンを覚え、集団で向かって来るでしょうから。
その後の攻撃を【オーラ防御】で凌ぎつつ、敵を十分味方から引き離したらユーベルコードで攻撃します。
一度では不十分でも二度三度た追い討ちをかけます。
機械の部分に雷の【属性攻撃】を落として、回路を焼き斬ってしまいましょう。
跳梁跋扈、という言葉そのままに、鋼の獣どもが飛び跳ね降り注ぐ。
鉄の爪で乾いた荒野を削り、猛スピードで集団戦術を用い獲物を追い詰めるのだ。
熟練の猟兵たるハロ・シエラをして、その勢いは削ぎがたい。
(これは……このまま取り囲まれると厄介ですね)
敵は数の利を持ち、かつそれに任せた包囲網を得意とする獣だ。
ゆえにハロはあえて大きく後退し、敵の注意を自分に惹きつけた。
包囲されれば終わりだというのにおびき寄せる、というのは、
一見すると矛盾に思えるかもしれない。なにせ敵の数が増えてしまうのである。
しかもマシンビーストは、時間をかければかけるほど獲物の習性を学習し、
その動きに対応し的確な攻撃を繰り出す。ヒットアンドアウェイは悪手だ。
ただし――ハロには、その不利を克服する切り札があった。
「さあ、こちらです! それとも、私ひとり追い詰めることも出来ませんか?」
少女の挑発に、マシンビーストの群れはカメラアイを警戒色に変え吠えた。
空気をびりびりと震わせる恐ろしい遠吠えは、殺戮に酔いしれる畜生の歓喜だ。
熱ブレードが白い肌のすぐそばをかすめ、よぎり、丁々発止に攻防が始まる。
それでもハロは逃げ続ける……いや、おびき寄せる。その一瞬のために。
ついに爪が、ブレードが彼女の防御をかすめ、わずかに皮膚を抉った。
「……っ」
血が一筋こぼれ、ハロはついに足を止める。……囲まれている。
「ここまで、ですね……」
ハロは細剣を地面に突き刺し、片膝をついた。降参の合図だ。
獣どもはハッ、ハッ、と生々しい吐息を漏らしながら、徐々に包囲を狭める。
もはや終わりか。――否、ハロの双眸は死んでいない!
「もう少し集めたかったところですが……ここまでです。仕留めます!」
かっと見開いた紅眼が内なる輝きに煌めいた。
飛びかかろうとした獣たちは、異常な事態の予兆を警戒し、踏みとどまる。
……それこそが最大の悪手だ。奴らは警戒せずに飛び込むべきだった。
そうすれば少なくとも、ハロに重傷を与えることは出来たのだから。
直後、彼女の足元から広がったのは、複雑な紋様が描かれた魔術陣。
突き刺した剣を地面から引き抜くと、呼応し励起した魔術陣が輝きを増し、
陣の縁がバチバチと帯電し……輝きから無数の短刀が現れた!
「ここまで味方から離せば、区別の必要もありません――!」
雷の刃が、波濤となって前後左右に雪崩を打った。
マシンビーストが逃げ出すより早く、その体を貫き内部を灼き焦がす。
クロームとオイルで構成されたマシーンを、オーバーヒートさせ回路を切断。
すべての機械獣が機能を失い、黒焦げになってがしゃんと崩れた。
乾いた風が吹き抜ける。ハロは足を止めることなく、次の敵へと駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵
誘名・櫻宵
アドリブ歓迎
あら、クークーお久しぶり
今日も麗しい聲ね
あたし、からくりは好きではないのよう
殺しても愛を感じないから――でも、この子達は違うのかしら?
血と肉求む慾を感じるわ
蹂躙望む飢えを感じるわ
噫、嬉しいわ!屠って殺して喰らってやりたい
人魚のいぬまになんとやら、少し遊んでもよいかしら
楽しみましょ!
纏う桜花はオーラ防御の守護を
吹き荒ぶ桜花は呪殺の呪詛を
衝撃破と共になぎ払い、斬って踊って二回攻撃
屠桜が生命力を吸収してくれる――噫なかなかに、あなたの慾望は美味しいわ
見切り躱しカウンターで斬り裂き砕き
私の味を覚えるのはあの子だけでいいの
飛び上がり睨み「喰華」を咲かす
可愛いわんちゃん
あたしの桜にお成りなさい
存在を見通す術師の眼には、"それ"はひどくいびつなモノに見えた。
オブリビオン・ストームに引き裂かれた獣が、機械と混じり合い生まれたモノ。
災厄の嵐の落とし子。鋼でありながら畜生の飢えを知り血を求むる汚物。
「汚らしくて、下賤で雑で醜くて――噫、嬉しいわ」
ちろり。誘名・櫻宵の口元を、艶やかなピンク色の舌がなぞった。
蠱惑的な笑み。敵にとっては牙を剥いた狼のそれと同等――それよりも恐ろしい。
龍は見初めたのだ。愛(ころ)すべき敵(たべもの)を。
愛(けがらわ)しい。愛(ころ)したい。屠って殺して喰らってやりたい。
その身は陽の気を宿す男子(おのこ)なれど、下腹部がずくんと疼いた。
殺そう。愛してしまおう。思い描いた高揚で胸が弾む。頬が緩む。
「あなたたちみたいな"まじりもの"なら、からくりでも大好きよう、ふふふっ!」
恋した乙女のように駆け出して、血走った眼で愛刀を抜き放った。
巨獣が小動物を薙ぎ払うような獰猛な一撃。斬撃が荒野をごっそりと削り取る。
土煙と斬られたマシンビーストの残骸が舞い上がり、青空を穢した。
「蹂躙したいのでしょう? 血を浴びて肉を裂いて骨を喰(は)みたいのでしょう?
いいわ、とてもいい! そういうの――踏みにじって、壊してあげたいの!!」
夢見る幼子のように笑みを蕩けさせ、狂い咲きする桜花の中で櫻宵は踊る。
狂っていた。その"ざま"は完全に痴れ狂って呆けたもののそれで、
こぼれたはらわたよりもだらしない。だからこそ、不気味なまでに美しい。
そも、龍とはそういうものである。
強大でありながら浅ましく、
強欲であるゆえに貪欲で、
他のモノを一切鑑みず奪い殺し喰らい暴れ睥睨する。
王を僭称し善を嘲笑う。他の全てを食い物か奴隷としかみなさない。
人の依代とてその片鱗を宿すモノならば、傲慢不遜で当然。強欲で当然。
――凶暴で当然。だから殺す。愛する。斬って斬って斬って斬って舞い踊る。
「噫。美味しいわ。あなたたちの慾、とおっても」
はあ、と熱っぽい吐息を漏らし、瓦礫の山を踏みしめ竜は嗤った。
「お返しがほしい? だぁめよ――私の味を憶えるのは、あの子だけでいいの」
背後から飛びかかった獣を凝視が射竦め、牙めいた刃が腹を抉った。
「可愛い可愛いわんちゃん――あたしの桜に、お成りなさい」
死骸がぱっと無数の桜花に変わり、解けて散った。幽玄なる美。
荒野を染め上げる桜の色は、新鮮な臓物の色に似ている。
大成功
🔵🔵🔵
リーオ・ヘクスマキナ
わーお、イッパイ来てるゥ……けど残念。ここから先は通せんぼ、進入禁止って奴だよ
お帰りは真後ろ……って、ヤッパリ帰ってくれないよねぇ
じゃあ行こうか赤頭巾さん。「猟師」と「赤頭巾」が手を組めば、「狼」にだって負けないってことを証明しに!
「ブリキの木樵」と化した赤頭巾さんの背部ウェポンラックを足場にSMGで敵に牽制射撃
敵を纏めて叩き潰せるように誘導して、赤頭巾さんの斧で一気に潰してもらうよ(●援護射撃
多分、ある程度の距離を空けてると銃弾と斧が驚異だって学習するだろうから……次の戦術は、懐に飛び込んでの超接近戦かな?
けど残念、こっちには散弾銃っていう手もあるんだ。接近はむしろ、コレの餌食になるだけだよ
埃っぽい風が、リーオ・ヘクスマキナのコートを揺らした。
持っていかれそうになる帽子を慌てて抑え、リーオはおどけてみせる。
「わーお、イッパイ来てるゥ……なーんてね」
彼が立つのは刑務所の門前。正面には……そう、無数のマシンビースト。
扉が開け放たれた瞬間を狙って、内部の人々を虐殺しに来たか。
「けど残念。ここから先は通せんぼ、進入禁止ってヤツだよ」
機械の獣どもは、グルルルルル……と生々しい唸り声を漏らした。
カメラアイがキュウウと音を立ててすぼまり、リーオの顔面にフォーカスする。
連中が一番気に入らないのは、彼が口元に浮かべた笑みらしかった。
「お帰りは真後ろ――って、この様子じゃ帰ってくれないよねぇ、ヤッパリ」
やれやれと嘆息し、パチンと指を鳴らす。彼の背後に、巨大な人影が揺らめいた。
黒ずんだシルエットが像を結び、"赤頭巾"が姿を現す。
「じゃあ行こうか赤頭巾さん。"猟師"と"赤頭巾"が手を組めば、
"狼"にだって負けない――ってことを証明しに、ねっ!」
鋼の巨人と化した"赤頭巾"は重々しく頷き、どうっ、とリーオを飛び越える。
飛びかかろうとしたマシンビーストの頭を踏み潰し、土煙をあげて着地。
うやうやしく差し出された足場(ウェポンラック)にリーオが飛び乗ると、
鋼の巨人はズシッ、ズシッ、ズシッ、と重々しく駆け出した!
「そらそらそら! 最強コンビのお通りだァ!」
BRATATATATATA!! サブマシンガンがマズルフラッシュを撒き散らす。
薬莢がひび割れた荒野をカーペットのように埋め尽くし、瓦礫が折り重なった。
眉間を貫かれたマシンビーストが爆発四散し、その炎の奥から新手が来る。
高熱ブレードでリーオの首を――刎ね飛ばす前に、剣斧が逆に獣を両断した。
BRATATATATA!! ドッシ、ドッシ、ドッシ……BRATATATA! BRATATATATATA!!
地平線の彼方に嵐が揺らめく。挑むようにリーオは笑い飛ばした。
「アッハハハハハ! キミたち、あの竜巻から生まれてきたんだよねェ?
だったら俺たちは竜巻をも喰らう勢いで、派手に蹂躙しようじゃあないかッ!」
BLAMN!! 片手でSMGをばらまきながら、もう片手でショットガンを抜き撃ち。
銃と鋼の災禍が戦場を行進する。近づける獣は一匹たりとて存在しなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ヌル・リリファ
アドリブなど歓迎です
貴方たちがねらうべきなのはこっちだよ。
はやくうごくものをおそうなら、わたしがうごけばひきつけられる。
ギリギリまでひきつけて、効果範囲のなかにはいったらUCを使用。ただのガラスに変換する。
ガラスになっちゃったなら耐久力なんてないのとおなじ。
ガラスにかわった相手を順にルーンソードで粉々にくだくよ。
……マスターのつくったもののほうがずっとずっとつよいもの。
このくらいの相手に、やられたりしない。
かずはたしかにちからだけど……。
自分よりつよい相手にそれをいかすには、ちゃんと連携しないと意味がないんだよ。烏合の衆になっちゃったら、たおすのは簡単だから。
《"ホスト"より通達。猟兵は無視せよ。繰り返す、施設の破壊を優先せよ》
マシンビーストの挙動が変わった。一斉に拠点を目指し動き始めたのだ。
あちこちで迎撃が行われる中、九時の方角を請け負ったヌル・リリファも動く。
「そっちじゃないよ。あなたたちがねらうべきなのは、わたし」
ルーンソードを振るい、挑発する。マシンビーストは鬱陶しげに悶えた。
上位存在から命令が下ったのか。だがなぜ、この局面で?
……そもそも、どうして暴走戦車とやらはこの拠点攻略をはじめたのか。
あの遠くに見える砲口がヤツのものだとすれば、刑務所の破壊は比較的容易。
時間はかかるだろうが、全員とはいかないまでも人々を殺戮できるはず。
それをわざわざ、搦手を用意し包囲網を作ってまで追い詰めていた意味は。
「……わからない」
ヌルには推察出来ない。彼女には、そのための機微が欠けている。
ただ、とても"よくないこと"が隠されているのは感じ取った。
それは戦略的な隠し玉があるとか、こちらが誘き出されているとかでなく、
もっと漠然とした――そう、悪意とでも呼ぶべき、何か。
ヌルは剣を振るいながら、不思議と浮かんだ奇妙な感情に少なからず困惑した。
嫌悪、している? なぜだ? ……自らもまた、造られたからか?
そもそも比べること自体おこがましい。同じ被造物にも天と地の差がある。
"マスター"が手ずから生み出した自分たちは、こんなものと比べてはいけない。
それでも、誰かによって生み出された機械である――というのは同じ。
だから、嫌悪しているのであろうか。壊れた機械が抱いている悪意を。
ヒトが道外れた存在に怒りを見せるように? ……戦闘兵器である己が?
「……あなたたち、はやくこわれて。なんだか、ざわざわするの」
ヌルはサイキックエナジーを解き放ち、マシンビーストの群れをガラスに変えた。
ぱきん、と音を立てて残骸が砕け、陽の光を浴びてキラキラと散る。
壊れた獣の残滓は、ひどくきれいに思えた。そこに畜生の殺戮欲求はない。
だから壊そう。敵は壊し、殺し、オブリビオンを駆逐するのが己の仕事。
壊そう。こんな奴らは、いてはいけないのだ。きっと、おそらくは。
「無価値なものがむれたって、連携しないと無意味なんだよ。だから――こわれて」
ぱきゃんと音を立てて、また一つ、穢れたケモノが大地に転がった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
◆ジャック(f02381)と
お、こっちだぜジャック
どう攻める? ――オーケー、このままの距離だな
近づかせないってことなら任せておけ
相手の動きより、こっちの攻撃のほうが早いのは保証する
“影”を介して知覚情報も共有しておくよ
俺の本領は兵器以上に、“眼”のほうでもあるからな
武器だけの複製じゃ不十分だろ
視えてるか? ……問題なさそうだな
それじゃ、やろうぜ
さっさと掃除しないとな
ついてこいよ、ジャック お前ならできるだろ
――【涯の腥嵐】、最大火力で周囲一帯を薙ぎ払うぜ
射程内に入ったやつから順に潰していくよ
ジャックとは文字通り一体だ、フレンドリーファイアは考慮しなくていい
動くものがなくなるまで、全力でやろう
ジャガーノート・ジャック
◆匡と
(ザザッ)
合流完了。
状況は理解した、匡。
速やかに殲滅するとしよう。オーヴァ。(ザザッ)
近づかせるつもりは毛頭ない。
――"Leopard: Arm-ON"。
搭乗対象者・"鳴宮・匡"。
兵器リンク開始――拡張展開完了。
"凪の海"の圧倒的蹂躙制圧射撃。
それをレオパルドで拡張模倣再現する。無論本機の熱線銃も共に。
標的認識。
ターゲット・マーク完了。
照準良し――其方も問題なさそうだな。
では行こう――発射。
(一斉発射×狙撃×二回攻撃)
――凪の静寂齎す弾丸の雨と、本機の熱線の嵐。
些か火力が過剰すぎたか。
――まぁ良しとしよう。作戦完了。次に行こう。
(ザザッ)
ザザッ、ザリザリ、ザリザリザリザリ……。
オブリビオン・ストームとよく似た、しかし異なる砂嵐が渦巻き、やがて晴れた。
バチバチと電光の残滓を纏い、片膝立ちの姿勢から立ち上がる黒いシルエット。
《――合流完了》
ジャガーノート・ジャックの赤いアイライトが、鳴宮・匡を見据える。
「お、こっちだぜジャック。状況、だいたいわかってるよな?」
《――拠点内の危険は排除、包囲網の突破のため反撃中、戦局は……》
BRATATATATATA!! 外から、奪還者たちの弾幕音が響いてきた。
マシンビーストの猛攻に対し、クークーを筆頭に彼らも迎撃に出たのだ。
すでに外に出た猟兵たちがかなりの数を削っている。これが最終攻撃と見えた。
「問題、なさそうだな。……で、どう攻める?」
ふたりは話しながら門を抜ける。がなりたてるような砲火の音が出迎えた。
荒野には無数の残骸が転がり、それを踏みしめ鋼の獣どもが来る。
あちこちで斬撃音、魔術の残響、銃声、咆哮……が、響き渡っていた。
戦場である。この世界ではおそらく、ありふれた風景なのだろう。
もっとも、その"ありふれた風景"の結末は、あまり気持ちのいいものでないが。
《――敵は集合している。最大火力による飽和攻撃が妥当だろう》
「オーケー。"そういうの"なら得意分野だ。――お前もそうだろ?」
ジャガーノートはこくりと頷いた。匡の背後、陽射しに照らされ伸びた影法師が、
ぐにゃりと歪んでジャガーノートのそれへと食指を伸ばす。
流れ込む圧倒的情報の奔流。ジャガーノートのバイザーに走査線が流れる。
《――……知覚情報、共有完了。生体データも確認した。"Leopard"を出す》
「了解」
ガシャン、と空中にワイヤフレーム状の電影が浮かび、実体化した。
巨大装甲兵器"Leopard"。ジャガーノートが有する広域殲滅破壊兵器である。
『搭乗者の生体データを確認。声紋登録を行ってください』
《――搭乗対象者、"鳴宮・匡"。セキュリティフルアンロック、リンク開始》
『武装制限の解除を承認。拡張展開を開始します……』
BHG-738C"Stranger"――小口径携帯用自動拳銃。
BR-646C"Resonance"――カスタム型多目的自動小銃。
TNN-LF88C"Disintegration"――対物分子崩壊光線銃。
その他、スナイパーライフル、グレネードランチャー、ショットガン。
手榴弾。プラスチック爆薬。感圧式地雷、短機関銃、対大型獣大口径拳銃……。
次々に現れた殺意の顕現を、Leopardは拡張・模倣・再現する。
匡もまた、使い慣れた漆黒の処刑具を手に取り、スライドを引いた。
《――知覚リンク、ターゲット・マーク完了。照準よし》
「フレンドリーファイアは考慮しなくてよさそうだ。よく視える」
視界内の獣の群れが高熱ブレードを展開し、前線に立つふたりに狙いを定めた。
ふたりの背後にカーテンのように砂嵐が揺らめき、無数の銃口が現れる。
ゴコン――機甲兵器が駆動音を漏らし、インジケータが緑色に変わった。
「それじゃ、やろうぜ。さっさと掃除しないとな」
《――同意する》
敵集団その相対距離500メートル。
400。
300。
200。
100。
「ついてこいよ、ジャック。お前なら出来るだろ」
《本機はこれより、"凪の海"との共同殲滅ミッションに入る。オーヴァ》
90、80、70――射程圏内(アサルトタイム)。
「遠慮はなしだ」
《――作戦開始》
海が落ちてきたようだった。
隙間なくバラまかれた火砲は、雨や嵐という比喩では足りまい。
海が質量そのままに、空から落ちてきた。そういうしかなかった。
点でも面でもなく、空間を対象とした超・飽和攻撃が大地を空を嘗め尽くし、
そこにあるものを、あってはならないものを、撃ち抜き、焼き尽くす。
残骸すらも遺らない。あとに在るのはただ――そう、静寂の凪。
埃っぽい風が全てを洗い流し――獣は、綺麗サッパリ姿を消した。
誰もが、その圧倒的殲滅攻撃に呆然として、立ち尽くしていた。
《――いささか、火力が過剰すぎただろうか》
「仕留め損なうよりはいいだろ」
《――同意する。では、次のミッションに移ろう》
「ああ。敵は殺すさ。――機械だろうが、なんであれな」
ふたりの双眸が、最後の敵を見据えた。
無数の砲口を生やした、でたらめのように巨大なシルエットを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『暴走戦車』
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POW : オーバーキャノン
自身の【戦車砲のうち1本】を代償に、【ビルを消し飛ばす程の爆発力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって戦車砲のうち1本を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 全門発射
【何本もの戦車砲から砲弾の連射】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : セメント弾
【主砲】から【速乾性セメントを詰めた特殊砲弾】を放ち、【空中で炸裂した砲弾から降り注ぐセメント】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:8mix
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ウィイイイイン……と、無人戦車の砲塔が回転した。
まるで、その場に立つ猟兵たちを見渡すかのように。
『……想定外の事象を、我々は好ましく思わない』
邪悪な知性を得たジャンクが、囀る。
『鏖殺予定時刻を1200秒オーバー。実に遺憾。我々の損耗も甚大ゆえに無視出来ず。
……猟兵。天敵。我々は疑問を呈する。なにゆえに、我々の予定を妨害したのか』
無機質な電子音声は、本当に理解出来ていないようだった。
『本惑星に人類は不要。生存者はすべて、抹殺し消去すべきイレギュラーである。
ゆえに、我々は殺戮する。絶望させ、蹂躙し、殺戮し、すべてを過去とする』
「……ワタシたちに、絶望を味わわせたくて。わざわざこんなことをしたの……?」
『肯定。我々はオブリビオン。我々は本惑星の、本次元の存続を許容しない。
速やかに滅び、消え去るべきである。最大限の悲嘆と絶望を抱き、全滅すべし』
クークーは震えた。理解できない悪意を前に、人はそうするしかない。
これが、オブリビオンなのだ。
これが、この世界を覆いつつある闇なのだ。
『我々は天敵の抹消を熱望する。標的変更――全猟兵の抹殺』
もはや語る言葉などない。ただ一秒でも速く、これを滅ぼさねばならない。
壊れた機械、歪んだ兵器、在るべからざる残骸を、抹殺せよ。
手の施しようもないガラクタは、塵に還してやるほかない。
Bite the dust――それは、戦いに無様に死ぬという意味のスラングだ。
アルトリウス・セレスタイト
押し売りは叩き返されるのがお約束だ
敵へは顕理輝光で対処
常時身に纏う故、準備不要
攻撃へは『天冥』『明鏡』で攻撃者を害するものへ転化
攻撃分含め必要な魔力は『超克』で“外”より汲み上げ、行動は全行程を『刻真』で無限加速し即座に終える
破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
高速詠唱を『再帰』で無現循環させ、天を覆う数の魔弾を誘導し目標を隙間なく包み込む飽和攻撃
差し挟む攻撃も纏めて飲み込んで間断なく叩き付ける
相応に耐えると想定するが気にはしない
物量戦は大得意だ
障害は無視するとはいえ視界は遮るかもしれん
他の猟兵の妨げにならぬ程度に様子を見つつ、遠慮なしに撃ち続ける
※アドリブ歓迎
砲声が大気を破裂させ、ドウン……という残響で空間が震えた。
着弾箇所を中心に馬鹿げた大きさの爆炎が広がり、大地を削り取る。
あとに生まれるのは、子供が戯れに抉ったようなランダムなクレーターだ。
こんなに破壊と蹂躙が横行するならば、この世界が荒廃から立ち戻るはずもない。
アポカリプスヘルという世界がどういう状況にあるのか、その実例か。
「まるで駄々をこねる餓鬼だな。いい加減に静まれ」
アルトリウス・セレスタイトは空を埋め尽くすほどの魔弾を一瞬で生み出し、
片手を挙げた。それを振り下ろした瞬間、星のごとき輝きは地上に殺到する。
ガガガガガガガ――ッ!! 計330の魔弾招来、その術式を無限循環!
絶え間なく降り注ぐさまはスコールのよう。強固な暴走戦車の装甲をして、
間断なき破滅消去の具現は耐えがたく、砲口が錆びてへし折れ爆散した。
『我々は我々の破滅を許容しない。我々は滅びない。我々が滅ぼすのだ』
逆回し映像めいて折れた砲塔が再生し、魔弾の雨の中で砲声を鳴らした。
BOOOOM……アルトリウスは動かない。降り注いだ砲弾は直前で抹消されるゆえ。
「いまさら、お前達に"なぜ"とは問うまい。その習性は知り尽くしている」
『次弾、装填……』
「ゆえに、容赦するつもりもない。お前は何一つ奪えず滅ぼせも殺せもしない。
無為に生まれ、無為に死んでいけ。押し売りは叩き返されるのがお約束だ」
他者の入り込む余地のない砲撃合戦だった。魔弾と砲弾は互いに互いを滅ぼす。
アルトリウスは攻め手を落とすつもりはなかった。敵は滅ぼす、それが猟兵。
――いや、それだけではない。義務や責務という話ではない。
このように無秩序に滅びをばらまくだけの、何の益にもならない残骸を、
彼は彼という一個人として許容できなかった。見過ごせない。許せない。
「――お前が奪ったぶんだけ、苦しみ足掻き飢えて死ね」
空っぽであったはずの男に今たしかに燃えるもの。
それを、義憤と人は云う。
成功
🔵🔵🔴
●業務連絡
本章では10〜15名様までご案内できるかもしれません。
頑張ります。執筆は深夜になるためご了承ください。
多々羅・赤銅
笑わす笑わすぅ。
ここに居る人らも誰かを愛してんだ。何なら私を愛してくれるかも知れねえんだ。
消えていい筈あるかばーか。
このたったの一振りで、てめえに敗北を刻んでやる。
私達ちっぽけな人類が、諦めの悪い怪物である事
とくと怯えてご覧じろ
火炎耐性激痛耐性、かばう、力溜め、鎧無視
ビルをも呑むその砲撃をーー真っ向勝負、一閃、爆風を斬り飛ばす
炎熱に耐え、飛来物は斬り落とす。
この手のは自分が一等強いと思ってっから
それ以上に圧倒的な力で捻じ伏せるのが一等いい
爆風に隠れて接近、
なあ、消したんだと思った!?
はあー豆腐みてえな鉄塊!
無理自体はしてるとも
痩せ我慢してるとも
それがどうした
私の後ろには
愛おしい人類がいるもんで
キリキリキリ……と不穏な軋み音を立てて、砲口が多々羅・赤銅を捉えた。
大地も壁も、人も獣も何もかもを消し飛ばす、虚無めいた間口を広げた殺意の穴。
赤銅はおのれが鍛えた刀を肩に担ぎ、不機嫌そうに舌打ちして唾を吐き捨てる。
「で? だからあんだよ。ビビらすんならさっさと撃ってこいっつーの」
『…………』
「人類の抹殺? 世界の滅び? 偉そうにぶってさぁ、笑わす笑わすぅ!」
皮肉に顔を歪め、赤銅は露悪的に口の端を吊り上げる。
「出来もしねえことを誇るなんざ、自分は雑魚ですっつってるようなもんだぜ?
――出来たとしても、てめぇに誰ひとり殺させやしねえ。もう誰ひとりもな」
怒気が空気を圧迫する。威圧感は濡れて重たくなった布のように一帯を覆い、
砲撃によって抉れた地面の土塊が、ばかりと音を立てて崩れた。
「ここに居る人らも誰かを愛してんだ。何なら私を愛してくれるかもしれねえんだ。
消えていいはずがあるか、ばーか。消えていいやつがいるとすりゃあ――」
バッターのホームラン予告めいて、赤銅は切っ先を暴走戦車に向けた。
「てめえ以外にいねーんだよ。……このたった一振りで、それを教えてやる」
ざしゃり。赤銅は一歩を歩みだす。暴走戦車は砲弾を撃たない。
撃たないのか。
撃てないのか。
赤銅は怖れひとつ見せずに、また一歩――ざしゃり。
「私が鍛えた刀(こいつ)で、てめえに忘れられない敗北を刻んでやる」
『…………』
「私たちちっぽけな人類が、取るに足らねえ獲物が、諦めの悪い怪物であること」
『…………』
「とくと怯えて御覧じろ。さあ、撃ってきやがれ!!」
ざしゃり! 赤銅は足を止めた。もはや誰にも彼女は動かせまい。
心臓が破裂するような静寂――そして、電子音声が告げた。
『出力臨界、突破――オーバーキャノン、発射』
BOOOOOOOOM!!
それは"砲弾"などという生易しいものではない。砲口からほとばしった破滅だ。
砲塔そのものを破壊するほどの威力は、指向性を与えられた濁流めいていた。
星の核まで届くかもしれない超・高熱の閃光が、ビーム砲めいて赤銅を包む。
ゴウッ!! と、乾いた風が熱波に吹き飛ばされ……爆炎が、失せた。
「…………!」
クークーは胸元を手でぎゅっと抑え、眉根を顰めた。赤銅が、いない。
死んだのか。いや、死んだどころか亡骸さえ、あれでは……。
「……はーあ。くっだらね」
『!!』
クークーはうつむきかけていた顔をあげた。戦車からも驚愕が伝わった。
声がする。声の主は――あそこだ。爆炎の中心。赤銅だ。生きている……!
「なあ、消し飛んだと思った? 思ったよなあ! あーあ、くだらねえ!!」
怒号を吐き捨て赤銅は詰め寄る。否、駆ける。よく見ればその体は煤だらけだ。
地面に刻まれた破滅の傷跡は、彼女が一閃を以て破壊力を両断したことを示す。
彼女の立っていた場所のすぐ手前から、V字に軌跡が別れているのがその証。
それでも、無傷ではない。
むしろ重傷といっていい。全身が灼けて、喉まで焼けていた。
けれども。
『次弾――』
「はあー、豆腐みてえな鉄塊! そんなやわっこいんならよぉ!!」
赤銅が、跳んだ――真っ向正面、打ち下ろしの斬撃を、叩きつける!
ギャ、ギャギャギャギャギギギギギギ……!!
火花を散らして装甲が両断され……刀が、地面に突き刺さった。
「身の程味わって吹っ飛びやがれ、ガラクタ野郎」
……KA-BOOOM!!
暴走戦車が切断面から火花と爆炎を噴き上げて後方へ吹き飛んだ。
赤銅は……後ろを振り返り、クークーに、そして人々に二本指を立て手振りした。
愛おしい人類(りんじん)たちへ、愛を込めて。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
その疑問に敢えて答えるなら、我々が猟兵でそちらがオブリビオンだから。
その一点ですね。
さて、相手は大きい。
攻撃の威力もでしょうね。
となれば回避するのは難しい。
なので【オーラ防御】で身を守りながら敵にまっすぐ【ダッシュ】で接近します。
オブリビオンとは言え相手は機械、自分を巻き込むような距離なら爆発する攻撃は避けるかも知れませんから。
機銃等の攻撃なら【激痛耐性】と銃口の【見切り】で対応できるでしょう。
接近出来たならキャタピラや砲身など、届く所を片っ端からユーベルコードで斬り【部位破壊】して戦力を削ぎましょう。
一気には倒せなくても、力の続く限り削り取って見せます。
キュラキュラキュラ……履帯で地面を切り裂き、焼け焦げたタンクが走る。
その対面、常に一定の距離を保って駆け続けるハロ・シエラ。
彼女のすぐあとを、チュンチュンチュンチュンッ! と機銃が抉る。
接近が出来ない。両者の立ち回りは、まるで一つの円の縁をなぞるようだ。
(相手は巨大。やはり威力も相応……喰らうわけにはいきませんか)
BRATATATATATATA!! 放たれる機銃は一つ一つが鋼鉄を貫く大口径だ。
人体で喰らえばどうなるかなど、試す必要もない愚問である。
しかし。
逆に言えば、だからこそ――接近さえ出来れば、アドバンテージはこちらにある。
「私たちが何故戦うのか、それが疑問であると言いましたね!」
黒髪をなびかせながら駆けるハロが、声を張り上げた。
「そんな疑問、答えるまでもありませんがあえて言うならば、たったひとつです。
我々が猟兵で、そちらがオブリビオンだから……ただその一点に尽きますッ!」
突然の角度変更。ハロは片足をブレーキ装置として急激に向きを変え、加速。
あらん限りの魔力を自らの正面にピンポイント展開し、機銃掃射を耐えきる。
BRATATATATATA……跳弾が頬をかすめる。意に介さず走る。敵をめがけて!
『――照準補正、完了。砲撃、開始』
ガキュン、と砲口がひとつ、ハロを捉えた。
その瞬間彼女は、己が木っ端微塵に吹き飛ぶ光景を幻視した。
……今から放たれる砲弾(あれ)を浴びたら、耐えきれずに自分は死ぬ。
危機感知能がもたらした未来予知めいた確信。ハロは恐怖に足を……止めない!
(なら、それよりも速く、この刃を届かせるまで――!)
虚空に残像を刻み、ハロの姿が色つきの風となった。
通り抜けたあとにまっすぐなレールめいた軌跡が刻まれ、土煙が舞い上がる。
魔力強化による、両脚の筋肉が断裂するギリギリの踏み込みによる急加速。
骨が、筋肉が軋みをあげ、激痛が走る。奥歯を噛み締め、眉を顰めて堪える。
「……壊し、滅ぼすのが自分だけだというその驕りが命取りです……ッ!」
追い詰められた人類の意地を見よ。滅びに抗う我らの力を見よ。
ざんっ、と大地が裂けた。遅れて閃光めいて走った剣閃――砲塔の爆発!
『想定以上の速度による斬撃。理解不能、理解不能……!』
爆発の衝撃で半分浮かび上がった巨体を、ハロはさらに切り裂く。
履帯。砲身。装甲。根菜を削るように少しずつ、しかし確実に。
力の限りに刃を振るい、その存在をこの世界から削り取っていく……!
大成功
🔵🔵🔵
アルジャンテ・レラ
……はい。そうですね。
ペースを乱され、想定を狂わされる。そのような事象など私も好みませんよ。
あなたと同じです。
人々は日常を生きようとしています。
脅かす存在がいなければ続く筈の日常を。
先にそれを妨害したのはそちらでしょう。……"不愉快"です。
未来を見据える人間が不要かどうかなど、過去が判定していいものではありません。
私はそう思います。
麻痺毒は僅かでも効けば御の字でしょうか。
連射を基本とし手数で挑みます。
隙間から戦車の内部に矢が届けば……。狙いは慎重に。
セメントに動きを封じられぬよう回避を試みますが、間に合わないと感じたらせめて両腕だけは守ります。
その際は火力を限界まで増し銀朱火矢を。
バチバチ、バチバチ……メキ、メキゴキバキバキ……!
あちこちがスパークし損傷した暴走戦車のボディが、急速に修復していく。
損傷箇所を埋め合わせるのではなく、傷そのものが巻き戻されていくのだ。
オブリビオン・ストームに触れたことで与えられた、機械ならざる特異性か。
しかし、それも無限ではあるまい。だが厄介ではある……。
『理解不能、理解不能。戦闘推移、想定プランとなにひとつ一致せず』
「……緻密な分析のもとに定めたペースを乱され、想定を狂わされる。
業腹でしょうね。そのような事象など私も好みません、あなたと同じです」
軋みながらいびつな再生を行う暴走戦車の前に、アルジャンテ・レラが立つ。
携えるのは弓矢ひとつ。巨大戦車を相手にするにはあまりに心もとない。
『……』
「人々は日常を生きようとしています。脅かす存在がいなければ続くはずの日常を。
……わかりませんか? 彼らの思い描いたものを、未来を妨害したのが誰なのか」
『不要なり。未来を築くための生命など、社会など、人類はすべて不要である』
「だから妨害した、自分は悪くないと? ……その考え自体が"不愉快"です」
めったに動かぬアルジャンテの眉根が、顰められた。嫌悪と、怒りに。
「未来を生む人間が不要かどうかなど、過去が判定していいものではありません。
私はそう思います――だから、私はあなたを否定します。……あなたたちを」
きりきりきり、と弓を引く。巨象に挑むアリのようだった。
再生を終えた戦車の砲塔が、アルジャンテに向けられた。
『人類は不要。我らの天敵も不要。ゆえに消滅せよ。速やかに、確実に』
「断ります。消え去るのは……あなたのほうです!」
ドウッ!! 砲塔が火を噴いた。アルジャンテは弓を構えたまま横っ飛び回避。
着地する寸前に一の矢を放つ。機銃掃射を転がって躱し、さらに二の矢。
放たれた鏃はかきん、と音を立て装甲に弾かれた。当然の結果である。
『無意味。我々の装甲にそのような原始的装備は効果を持たない』
「さあ。どうでしょうか」
ドウ、ドウッ!! 拘束を狙ったセメント砲弾をアルジャンテは躱す。
一撃でも喰らえばスイスチーズのように穴だらけにされ自分は破壊されるだろう。
……いや、"死ぬ"だろう。だから避ける。そして、矢を放つ。
鏃が砕ける。折れる。装甲を削ることすら出来ずに、無意味に、無駄に。
違う。
(無駄ではない。無意味でもない)
この行為に意味はある。
この想いに意味はある。
でなければ――己は、なんのために世界に生まれたというのだ!
「私は――私の存在を証明します。以てあなたを否定します、オブリビオン!!」
ヒュパッ――放たれた矢は燃えて、空中で無数に分かれて着弾した。
向けられた砲口にすっぽりと火矢が飛び込み……KBAM!!
内側から破砕し、残る矢がそこへ殺到する。アルジャンテは手を緩めない。
『ありえない。理解不能。我々が被弾を受けるなど』
「わからないでしょう。どうぞそのまま破壊されてください」
ヒュカッ! KBAM! 小さくとも確実に、致命に届かせるために。
無意味などさせないために。傷つこうと何度でも――何度でも。足掻く。
それが、ひび割れた心から生まれた己のねがいだと信じて。
大成功
🔵🔵🔵
誘名・櫻宵
アドリブ歓迎
おいしかったわ
でざぁとはまだかしら
荒地に桜を咲かせるのは何時だって愉しくて堪らない
痺れる悪意は刺激的で美味しそう
悪なら祓うが陰陽師の務めかしら
ガラクタの意思などどうでもいいわ
熱望など燃え尽きた鉄屑
知らない
要らない
愛を頂戴!遊びましょ
桜花の守りで勢い殺し
砲撃も砲弾も全部なぎ払い斬り崩し
疵抉るよう二回攻撃
衝撃波に生命吸う呪詛をのせて殺意も悪意も頂くわ
悲嘆も絶望もあなたには勿体ない美酒
第六感で察し見切り
呪殺の斬撃を叩き込む
破魔と呪詛と怪力とごちゃ混ぜに咲かせ
渾身の力を込めて「絶華」
なぎ払い斬り壊して―こういう時なんというんだったかしら
あなたに贈る言葉
You're Going Down
ね?
星そのものが死にかけているこの世界に、舞い散る桜花は一層鮮やかだった。
見るものの目を虜にする……けれども不安を掻き立てるほどにみずみずしい桜色。
恋する乙女が赤らめた頬と同じ色。
こぼれ落ちた新鮮な臓物と同じ色。
夜明けの刹那、朝焼けのような色。
逢魔が時を告げる幽世のような色――。
誘名・櫻宵が撒き散らす桜花は、そういうものだった。
美しく、不気味で、それ以上に誰よりも彼自身が嫣然としていた。
誘うように。
惑わすように。
心をざわつかす笑みは、対峙した者を不可解の霧へと陥れるだろう。
舞い散る桜はいかにも幻想的で、視覚的な前後不覚を誘う。人外の剣である。
ドウ――それを吹き飛ばそうと砲声が鳴り響いた。あまりにも無益な行いだ。
どれだけ威力の高い大砲であろうが、竜巻を殺せるものか。
どれほど熱量の高い火炎であろうが、海を枯らせるものか。
数えることも出来ないほどの桜花はそれ自体が一種のヴェールとなって、
砲弾の勢いを殺し、削ぎ、淑やかに抱きしめてわけをわからなくしてしまう。
『解析不能。これはいかなる事態か。次弾、装填。一斉砲火を実行』
「まだくれるの? 嬉しいわ。――もっとちょうだい? もっと、もっと」
色恋に痴れ狂った生娘のように、形の良い唇が睦言を囁く。
もたらされるものは柔らかな指の愛撫ではなく、鋭利な斬撃である。
空間をも断ち切る絶無の剣閃は、そのたびに分厚い装甲を膾斬りにし、
大地を抉りながらその存在そのものを呪い、冒し、腐らせる。
そして……奪う。啜る。歪んだ機械知性が得たおぞましい殺意、悪意を。
それこそが美味だと龍は謳う。どろりと愛欲(さつい)に蕩けた眼を綻ばせ、
紅潮し息を弾ませながら剣を振るう。表情と、所作と、言葉がちぐはぐだった。
『砲撃。砲撃。砲撃。我々は貴様のような存在を許容しない。不要である』
「うふふ。うふふふ! ねえ、どうでもいいの。あなたの意志だなんて――。
そんなのよりもっと熱いものを、あなたの殺意を見せてごらんなさい。もっと!」
悲嘆も絶望も、お前のようなガラクタにくれてやるには甘露に過ぎる。
なにもかも私のものだ。だから死ね。精一杯に足掻いて喚いて鳴いて死ね。
斬撃は甚振るようであった。身の丈を超える、重厚な鋼の兵器を、だ。
巨大戦車はあちこちで小爆発を起こし、ついに砲塔が爆裂した。
櫻宵は装甲の上に乗り上がって、逆手に握りしめた愛剣を突き刺した。
臓物を抉るようにぐりぐりとかき混ぜる。歪む音声とスパークが心地よい。
「こういうとき、なんと云うんだったかしら」
ええと、と視線を彷徨わせてから、男は言った。
「……――"You're Going Down/あなたの負けよ"。ね?」
口元は笑んでいるが、その眼はちっとも笑ってはいなかった。
大成功
🔵🔵🔵
夏目・晴夜
はいはい、可哀想に
未来を持たず必死で現在にしがみついている過去の残骸でしかない自分こそ
真に全滅すべき不要物だと理解したくないのですね
自分達には未来が無いのにお前らに有るのはずるいと、
自分達と同じじゃなきゃ嫌だと駄々をこねている訳ですね
本当に下らない
しかしセメント弾とは実に助かりましたよ
ガラクタに花弁の毒が通用するのかわかりませんでしたので
蜘蛛の巣を張ると共に、空中の特殊砲弾を包み込むように蓮の花弁を大量に舞わせ
炸裂したセメントを纏い石のように固まった花弁を、
全て敵に降らせて叩き込んであげます
ああ、でも一つ
ガラクタのくせに私と気が合う所がありましたね
私も常に、敵に絶望を味わせたくて堪らないのです
――KA-BOOOOM!!
暴走戦車から発射された砲弾が、突如として空中で爆発四散した。
何が起きた? 弾丸や斬撃で迎撃されて爆発したのなら。その予兆があるはず。
だが、暴走戦車と対峙する猟兵――夏目・晴夜は、ただその場に佇んでいた。
『解析不能。なんらかの防御障壁、ないし力場があると推定』
「私がそんな大仰な技を、あなたなんかに使うとでも? 思い上がりも甚だしい」
晴夜は肩をすくめて皮肉げに笑う。その双眸が、どろりと濁った。
白目は墨を流したような黒に変わり、瞳孔がぞっとするような赤に変ずる。
額に等間隔の裂け目が走り、瞳孔と同じ赤い眼球らしきものがぎょろりと開く。
そしてまるで天使が翼を開いたかのように、背中からわっと蓮の花が溢れた。
……「泥中の蓮」という言葉がある。
蓮の花は美しく見事な見た目をしているが、濁り汚れた泥にその花弁を咲かせる。
穢れた沼に咲き誇る、対照的なまでに綺麗な蓮の花。
転じて、汚れた環境でも清らかさを損なわないことを形容する言葉である。
晴夜の背中に萌え出た蓮は、見惚れてしまうほどに美しかった。
誰が知ろう。おの花弁の一つ一つが、おぞましい毒性を宿していることなど。
綺麗な薔薇には棘がある、とも言う。美の裏側には相応の何かがあるのだ。
それを背負い裂けたような笑みを浮かべる晴夜の眼は、どこまでも昏い。
誰にも見通せないほどに。いわんや、彼の心中をや……。
ドウッ――KA-BOOOOM。
再び放たれた銃弾が、やはり何もない"ように見える"空中で爆散した。
そしてようやく、砂埃が爆発で巻き上がったことで、"それ"が明らかになる。
蜘蛛の糸だ。
鮮血で染め上げたような、真っ赤な、真っ赤な蜘蛛の糸。
眼に見えないほどに細く伸びた、しかし鋼よりもしなやかな蜘蛛の糸が、
晴夜を中心に無数に蔓延っている。これが、砲弾を切断したのだ。
「未来を持たず、必死で現在にしがみついている過去の残骸でしかないモノ。
真に全滅すべき不要物とは、他ならない自分だと理解したくないのでしょう?」
『否。我々は――』
「ああ、いいですよ。理解できる知能があるだなんて最初から思ってません。
まったく可哀想ですね。自分にないモノを持つ相手に妬みを向ける俗物とは」
本当にくだらない――晴夜は、心底興味がなさそうに呟いた。
暴走戦車は取り合わず、セメント弾で蜘蛛の糸を絡め取ろうとする。
その瞬間、晴夜の背中に生えた蓮の花が満開になり、毒の花弁を撒き散らした。
爆発寸前の砲弾を抱きしめるように包み込み、内部で炸裂させ、
セメントによって硬化した花弁が暴走戦車へと返っていく。因果応報である。
石のように固まったそれらは、カカカカカッ! と、装甲に突き刺さった。
染み込む毒は、生物であろうとなかろうと、なんであれ腐らせ殺す。
誰であろうと。敵であろうと、味方であろうと、愛しい人であろうと。
『ガ、ガ、ガガ、ガ……データに、異ジョウ……』
ばちばちとスパークを起こした暴走戦車を見て、晴夜は思い出したように言った。
「ああ、でもひとつだけ、あなたと私で気が合うところがありましたよ」
きゅう、と口の端が釣り上がる。化け物の笑み。
「――私も常に、敵に絶望を味わわせたくてたまらないのです」
弧を描くように歪んだ双眸は、相互理解不可能の狂気に染まっていた。
大成功
🔵🔵🔵
伊達・クラウディア
アドリブ・連携歓迎
これがオブリビオン…これが、我らの敵ですか。
この残骸に、一つだけ感謝できることがあるなら、何の呵責なく斬れる悪だということですね。
もはや語るべき言葉もなし。故にこれは宣誓です。
「我が胸の刃に従い、貴様を斬る!」
『出羽国』により、『梵天丸』を転送。射撃用ガジェットフル装備に加えて本来なら拠点防御用の強化外装『五七桐』も併せて【一斉発射】だ。
敵の攻撃もあるだろうが、『三つ引き両紋』による【盾受け】や【激痛耐性】で耐えてみせよう。
貴様程度では、我が刃を折るに能わず。さぁ、貴様が地に帰るまで撃ち続けてやろう!
アルナスル・アミューレンス
物資集めて寄ってみたら、騒がしい事になってるねぇ。
まぁ、これも合縁奇縁。片づけましょうか。
さぁ、行くよ。「鏖殺(オキテ)」、掃除の時間だよー。
外部から拠点に向かっていく形で発見・会敵。
偽神細胞の封印を解除。
「起きて」もらい、G.R.V5を侵食融合して射撃形態の偽神兵器に。
迷彩を以って闇に紛れ、忍び足で敵を射程圏内に収められる位置に移動し、膝射の姿勢で狙いを定めて――
――さて、じゃあ「暴食(ソウジ)」を始めましょうかねぇ。
そんなどでかい図体を悔やむんだねぇ。
――連射
如何に頑強な装甲だろうが関係なく。
暴食の銃弾の雨は蝕み、崩し、最後の一片まで捕食し尽くす。
さて、狙われる前に退散しましょうかねぇ。
「……おやあ? なんだか騒がしいことになってるねぇ」
決戦の舞台と化した拠点"ハード・シェル"から、それなりに離れた荒野にて。
ガスマスクにゴーグルを装着した、浅黒い肌の男が呟いた。
この距離でも聞こえてくる銃声と轟音。紛れもないオブリビオンの気配。
さて、どうしたものか。もともと物資集めの一環でこのあたりにいたのだが……。
「まぁ、これも合縁奇縁かな」
男は剽げた調子でそう言って、進路を変えた。
伊達・クラウディアにとって、オブリビオンとは"倒すべき敵"程度のものだった。
誰もがそうしているし、事実彼女が相対した敵はみな、性根から邪悪だった。
人々を苦しめる悪を斬るのが、彼女の考える"剣豪"の使命である。
ならば、斬ろう。そして人々と数多の世界を救ってみせようと。
……その考え自体は間違いではない。むしろシンプルで好ましい。
ただ彼女は、"オブリビオンというモノの本質"を、まだ理解しきれていなかった。
「来いッ、梵天丸!」
クラウディアの胸にかかったペンダントが、声に従い淡い光を放つ。
それは空間を越え、クラウディアにガジェットをもたらす科学の光だ。
少女めいた背丈を無骨なフォルムが覆い、強固な外骨格として現実化した。
ゴシュウ――関節から蒸気を噴き出し、クラウディアは駆け出す。
暴走戦車は、拠点に砲口を向けていた。その前に飛び出し、クロスガード。
ドウ――KA-BOOOM!! 砲撃が外骨格の着弾し、派手な爆煙で彼女を包み込む。
「く……ッ!!」
防御機構をもってしても、衝撃は殺しがたい。クラウディアは奥歯を噛みしめる。
踏みしめた両足が地面を削り、ざりざりと大きく後退した。
だが、死んでいない。蒸気バーニアを噴き出して再度の疾走。
(他者を殺し、絶滅させることをなんとも厭わないモノ。これが、オブリビオン!)
機銃の嵐を弾き、重火器型ガジェットによる反撃で敵を牽制しながら、
クラウディアは眉根を顰めた。怒り、哀しみ、困惑、焦燥、綯交ぜになった感情。
(これが、我らの敵――もはや"斬る"ことに、何の呵責もなし!)
ドドウ――KBAM!! 2つの砲弾が両者の間で相殺され爆炎を起こした。
「もはや語るべき言葉も不要。我が胸の刃に従い、貴様を斬るッ!」
クラウディアは炎を物ともせずに間合いを詰めた。ゼロ距離射撃の構えだ。
あの装甲。遠間からではいくら撃ったところで貫くことなど不可能だろう。
ゆえに、自傷を厭わぬ超接近距離で全火力を叩き込む。あれは倒さねばならぬ敵。
その過程でどんな傷を負うとしても、この身で悪を討てるならば……!
「――!!」
その決意と覚悟が、勇ましきクラウディアの眼を曇らせたか。
巨大砲口が彼女を照準に捉えている。敵もまた、自壊を厭わぬ構え!
予測される全力砲撃を真正面から受けたならば、いくら梵天丸と言えど……!
BRATATATATATATATA!!
緊迫の一瞬を斬り裂いたのは、横合いから叩き込まれた機関砲の銃声。
大口径弾丸がエネルギーチャージ中の砲塔に突き刺さり、爆散せしめた。
『第十四砲塔、被弾。砲撃不可能――』
キュラキュラキュラ、と暴走戦車は後退する。そこにさらなる銃撃。
BRATATATATATATATA!!
衝撃に備えて身を固くしていたクラウディアは、その銃声の主を見た。
赤いレンズのゴーグルに無骨なガスマスク、背中には巨大なバックパック。
完全に荒野を踏破するためのサバイバルスタイル。"奪還者"か? いや……。
「お取り込み中悪いねぇ。騒ぎが聞こえたもんだからさぁ」
ゴーグルの男……アルナスル・アミューレンスは、世間話めいて言った。
クラウディアの視線を奪ったのは、男が持つ……いや、男の片腕である。
おそらくは機関砲……だったもの、というべきか。
それはあの暴走戦車のように、歪んで混ざり合っていた。男の片腕と。
「きさ――いえ、貴殿は?」
「ああ、これ? 偽神兵器って言ってさ、知ってる? 知らない?
まあどっちでもいいんだけど、暴走とかはしないから安心してよ」
アルナスルは陽気に言うと、片腕のタービンめいた機構が回転を始めた。
おそらくはバレルだろう。排熱蒸気が噴き出し、あたりを白く染める。
「暴食(ソウジ)、しないとでしょ? アレ」
「……そう、ですね。我としたことが戦闘中に……」
助けられたと言うべきなのか、邪魔されたと言うべきなのか。
アルナスルの調子に毒気を抜かれ、どう反応するか困り果てたクラウディアは、
ひとまず気を取り直すことにした。まずは、倒すべき敵がいる。
「援護するよ。ぶちかましてやりな」
アルナスルはその場で膝立ちに構えた。片腕からアンカーめいた機構が生える。
地面と銃身をコネクトし、マウント。クラウディアは頷いて再びダッシュ!
暴走戦車が砲口を動かそうとする――遅い。もはや、やらせはしない。
「貴様程度では、我が刃(こころ)を折るに能わず。さあ、地に還れ!!」
クラウディアは機銃をアームで掴んで引きちぎり、全ての火力を解き放った。
同時にアルナスルも、暴走戦車の装甲にすさまじい量の銃弾を叩き込む。
BRATATATATATATA!! BRATATATATATA……BRRRRRRRTTTTTTT!!
鼓膜が破れそうなほどの砲声が大気を震わせ、荒野を白く染める。
「最後の一片まで捕食(そうじ)してあげるよ、たっぷり浴びな!」
偽神細胞の混ざった機関銃弾は、装甲そのものを腐食させ崩壊させる。
暴走戦車の前面が穴だらけに変わるまで、そう時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
オイオイ、なんだよ
ただの自立戦車かと思ったら…中々イカれた思想してやがる
ンッンー、悪くないが…駄目だな、ニーズはそこには無い
スプラッターはもうお終い、ここからは希望溢れる脚本だ
鉄屑は──敗けて、死ね
ククっ、テメェのその砲弾は強力だがよォ
そんな長い砲塔をいちいち振り回さなきゃ行けねのは大変だよなぁ
横に振りまくってやりゃそれだけ狙いが付けにくい
(ま、これだけで上手くいくとは思ってねーけど)
奴の全方位攻撃の予兆は砲塔を見ればいい
妙に狙いが拡散した時が勝負だ…セット、『Welcome』
───ここまでおいで、坊や
この距離じゃ撃てねえ、しかも5秒のスタンだ
さぁ、それでは開演だ!スクラップショーのなァ!!
鳴宮・匡
◆ジャック(f02381)と
さて、本命のお出ましだぜ
やれるよな、ジャック――信用してるぜ
相手の動きを視ながら、攻撃を重ねていくよ
特に駆動部、武装の連結部、足回りあたりを重点的に狙おう
完全に破壊はできなくていい
この傷はいわば目印みたいなもんだからな
無理に破壊を狙うよりは、確実に当てる方を重視する
――視えてるだろ、ジャック
そこが狙い目だ
高威力の砲弾は、撃たれる前に対処したい
熱や音で通常射撃とは違う気配を感知したら
その砲塔を目掛けて狙撃
内部で爆発でもしてくれれば上々だけど
最低でも撃たせなければ御の字だ
――残念ながら、抹消されるのはそっちだな
跡形もなく消え失せな
この地平に必要ないのは、お前の方だ
ジャガーノート・ジャック
◆匡と
(ザザッ)
無論。そして本機もまた君を信用している。
ミッションを開始しよう、グッドラック。
(ザザッ)
高威砲は此方でも援護する。友人を傷つけられるのは本機の性分として赦し難い。(援護射撃)
同じく鉄の獣。
パンツァーを称せし物。
本機は嘗てお前のようであり
そして一つ運命が狂えばお前の様になっていたろう。
そうならずに済んだのは――共に戦い進むものが居たからだ。
《此は為し難きを知りつつ、尚心昂らせ挑む戦いである》
肯定。
《フラグメント:E反応――Mode:Ace》(学習力×戦闘知識×覚悟×勇気)
マークがよく見える。
飛空機式ファンネル・チャージ最大。(力溜め×狙撃)
"Pursuit"、Fire.
(ザザッ)
ヌル・リリファ
アドリブなど歓迎です
すくなくともいまのわたしは、いまをいきるものがそこまでの絶望と悲嘆にしずんでほろびるべき、とまではおもわないから。
ひかりの武器を展開。
そらからそそぐセメントにぶつけてはじく。サイキックエナジーの【衝撃波】もつかって、みちをふさぐものはとりのぞく。
天敵を、わたしたちをほろぼすことをねがうようだけど、当然その感情はそのままかえってくるよ。
敵は、ほろぼす。
接近できたら、【属性攻撃】で強化したルーンソードできりすてる。
そのままもとの場所にかえって。
かえりみちがわからないっていうなら、わたしがここでほろびというかたちでしめしてあげるから、簡単でしょう?
リア・ファル
アドリブ共闘歓迎
まるっとお任せ
POW
今を生きる人類もまた世界の一部
過去であるキミが人類を否定するのなら
ボクは人類を肯定しよう
デカい戦車だけど
デカいヤツを倒すのは、得意なんだ
「資金リソース投入、虚数空間に接続――
魔剣ヌァザよ、多元を繋げ!」
ココと虚数空間を繋ぎ、
我が機動戦艦ティル・ナ・ノーグの主砲直径ほどの空間を開こう
1発撃つ間があれば十分さ
「主砲、前方の対象へ指向。
目標、オーバーキャノンおよび暴走戦車」
目標距離算出、誤差修正
UC【魔眼殺しの超電磁砲】使用!
虚数空間のティル・ナ・ノーグから、
魔錬徹甲弾をぶっ放す!
「この世界も続いていく! 今を生きる誰かの明日の為に!
邪魔をするなら、撃ち貫く!」
――この鎧(キャラクター)を纏うようになってから、様々なことがあった。
冷徹な兵士というペルソナ。あるべき役割(ロール)を演ずるための鋼の仮面。
……それが、すべて偽りの自分なのかと言えば、むしろ逆だ。
"ジャガーノート・ジャック"とは、おのれにとっての理想形であり、
こうであったらいい――こうでありたいという、願望でもあった。
これは、いわばもうひとりの自分。化身(アヴァター)というべきだろう。
……だからこそ、間違え、苦しみ、どうすべきかを見失ったこともある。
BRATATATATATATATA!! DOOOOOM……BRATATATATATATA!!
キリングフィールドのように、ひっきりなしの銃声が荒野に響き渡る。
ジャガーノートが複製・模倣した無数の弾幕。
彼と共に戦う鳴宮・匡の、多種多様な銃火器による精密射撃。
「……さすがにあれだけでたらめな数の砲台が生えてると、弾幕も厚いな」
匡の声音には、わずかにだがうんざりしたような気配があった。
いよいよ外装の修復が追いつかなくなった暴走戦車が一斉射撃を始めて五分。
猟兵はもとより、彼らが背後に回した拠点もろとも吹き飛ばそうとする猛威は、
匡やジャガーノートレベルの火力がなければ防げなかっただろう。
問題は、相手の弾幕もすさまじい厚さなために、完全に膠着してしまったことだ。
弾丸の準備は十分にしている。そもそもジャガーノートが同行している。
撃ち負けるつもりはない……が、このままでは埒が明かないのも事実。
《――さきほどのような飽和攻撃では効率が悪いと推測する》
「ああ。あんな分厚い装甲、真正面から相手してやる義理も理由もない」
匡は弾幕の隙を突いて敵駆動部や砲塔の連結部にスナイプを試みている。
追い詰められた獣の本能か、あちらもよく先読みするものだ。実に鬱陶しい。
すでにジャガーノートとの作戦会議は住んでいる。当たりさえすればいいのだ。
"目印"を与えられればそれで話は終わる。だがその"少し"がもどかしく遠い。
『――お困りのようだな? チューマ』
まるでタイミングを図ったかのように、聞き馴染んだ声がした。
匡は耳にセットしたインカムのスイッチをオンにし、ため息をつく。
「で? わざわざこんな演出したってことは、"脚本"は出来てるんだろ?」
『もちろんさ。それに――頼れる助っ人も来てくれてるんでな』
ヴィクティム・ウィンターミュートが"頼れる"とまで言うのは、
思い当たる限り数人。この場に転移していそうなのは……おそらく彼女らか。
「なら、タイミングは任せる。あとは俺とジャックで片付けるよ」
『オーケィ、んじゃ――仕事(ラン)の始まりだ』
通信を終え、匡はジャックに目配せをした。鋼の戦士は無言で頷く。
ヴィクティムが仕込んだ策ならば、いちいち詳細を伺う必要などない。
変化する状況に即座に対応し、最善を尽くす……スタンドアロンなチームワーク。
今までもそうやって勝ってきたのだ。今回も、そうするだけ。
だが、あえて匡は言った。
「ジャック。――信用してるぜ」
冷徹なる兵士は静かに答えた。
《――心得ている。そして本機もまた、キミを信用している。グッドラック》
前触れもなく予兆もなく、気配もなく。当然のように、突然に。
強襲任務(アサルト・ミッション)が開始する。まず始めに仕掛けたのは――。
同秒、匡とジャガーノートの待機場所と真反対に存在する潜伏ポイント。
「主役のお許しも出た。さぁ、それでは開演だ。スクラップショーのなァ!」
叫びながら姿を表すヴィクティム。暴走戦車の砲塔が彼を照準に捉えた。
ドウ――そして躊躇なしの砲撃。しかしヴィクティムの速度には追いつけない。
爆炎が上がった瞬間、彼は着弾地点のギリギリに着地している。
『猟兵。抹殺。我らの天敵を根絶やしにせよ。我らの破滅を妨げる者を抹殺せよ』
「オイオイ、なんだよ……イカれた思想の自律戦車が完璧にイカれちまったか?
敗北(まけ)を認めろよスクィッシー。てめぇの大言壮語はもう叶わねぇよ」
ドウッ!! 言葉を遮ろうと放たれた砲弾も、ヴィクティムには止まって見える。
「正直、てめぇの御託は悪くねぇ。だがダメだ、ニーズはそこにはないんだからな。
スプラッターはもうお終い、ここからは希望溢れる脚本のお時間だぜ?」
『否定。我々はすべてを殲滅し、抹殺し、この世界を破滅させる』
「露悪趣味の悲劇なんざ、手垢がつきすぎて腐っちまってんのさッ!!」
BRATATATATATA!! 機銃を引きつけるヴィクティム、全力のスプリント!
矢継ぎ早に飛来する砲弾をきりきり舞いで躱しながら、彼は敵の挙動を見ていた。
入射角。旋回速度。照準から砲撃までのタイムラグ。リロードの間隙……。
(たしかに当たりゃあヤバい。だが――ククッ、大変だよなぁ?)
長大な砲塔はデッドウェイトでもある。ましてやそれが大量に生えているのだ。
敵は砲塔を再生あるいはその場で生成することでリロードの隙を殺している。
それでも、補いきれないウェイトが必ず存在する。匡とジャガーノートのせいだ。
彼らの弾幕は、暴走戦車にとっても決してラクな相手ではない。
事実、ヴィクティムが囮役を始めたことで、徐々に弾幕合戦が競り負けていた。
「狙いが多けりゃそれだけバラける! だったら――こうだ!」
『!?』
パチン! 軽やかなフィンガースナップとともに、空から降り注ぐ光芒!
敵の電子知性がその不意打ちに混乱した瞬間、疾風のように駆け抜ける二つの影。
「ここからはボクらの番だ! 行くよ、ヌルさん!」
「うん。もうだいたい、あっちのデータはみきったよ」
ヌル・リリファ、そしてリア・ファルのふたりである。
彼女らはそれぞれルーンソードと魔剣ヌァザを手に荒野を疾走し、
盲撃ちでバラまかれる機銃を斬り捨てながら前進する。足を止める暇はない。
ヌルのユーベルコードによって、敵の弾幕に隙が生まれた今が接近のチャンス。
それもコンマ数秒でカバーされるだろうが、間合いに入ればこちらのもの!
『敵性体の接近を感知。セメント弾、散布開始』
「わたしたちをとめることなんて、あなたにはできないよ」
ドウドドウッ! 砲塔から放たれた妨害セメント弾を光の刃が貫いた。
脳漿めいて飛び散ったセメントはサイキックエナジーの武器を包み即座に硬化。
石のように硬くなった刃が等間隔に並ぶさまは、いわば突撃経路だ。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。危険にあえて飛び込んだ先に活路が見える。
追い詰められた人間だけが可能とする、大逆転。電子知性には不可能な無謀。
――かつての己なら、きっとこんな真似は出来なかっただろう。
ヌルは思う。仮に同じことをしても、それは"似たようなこと"でしかない。
最高傑作である自らの性能を――それは誇りでもあるが――過信し、
不意を討たれて致命的な事態に陥っていた可能性だって、当然ありえる。
(わたしはマスターの最高傑作。戦うためにうまれて、敵をころすもの)
それは変わらない。己は最高峰であり続ける。だが戦うのは自分だけではない。
ゆえにこうするのだ。協調し、連携し、各々の最適を引き出すために行動する。
それが人間の強さであることを知っている。彼女はそれを学びたいと思う。
彼らと共に過ごし、戦うことは、無駄ではない。こうして身についているのだから。
「ヌルさん! 10秒後に次元経路を開くよ、サポートお願い!」
「りょうかい」
――それは、彼女と肩を並べて荒野を駆けるリアも同じだった。
電子の海から生まれたもの。封印されし艦(ふね)を依り代とする電脳存在。
肉を持たず血もなく、そんな自分を人間だなんて謗ることは出来ない。
だからいつだって、彼女は隣人(ネイバー)であり続けるのだ。そう標榜する。
ヒトでないもの。けれどもヒトを肯定するもの。ヒトに寄り添うもの。
きっといつかは……また自分だけが、誰も居ない宇宙の虚空に佇むとしても。
この楽しくにぎやかな、かけがえのない時間と記憶が、孤独の枷になるとしても。
それでも、ヒトとモノの狭間を繋ぐことこそが、己の使命なのだと。
"三界の魔術師"とはそのための銘だ。そうあれかしと己に任じた名だ。
この使命を誇りに思う。胸を張って言える。自分はいつだって正しいと。
驕慢ではない。正しいと信じたことを、そのままに――いいや、
それ以上に為せているのだと。そうだ、彼らのおかげで。善き人々よ。
だからこそ。この歪んだ機械知性を認めてはならぬと己ならぬ己が囁くのだ。
「資金リソース投入、虚数空間に接続――」
過去である残骸(キミ)が、人類(ヒト)を否定するのなら。
「魔剣ヌァザよ……多元を繋げッ!」
同類(ボク)は、人類(かれら)を肯定しよう。
……束の間、ヌルはまぶたを伏せた。
人々のことを思う。善き人々、悪しき人々。業。善性。情。怒り。哀しみ。
己には、まだそのすべてを理解することも、共感も出来ないけれど。
"楽しい時間を、みんなとともに過ごしたい"という、
子供のように無邪気で無垢な、かけがえのない想いは心(ここ)にある。
だから、いまのわたしは。
(――ひとびとが、絶望と悲嘆にしずんでほろびるべき、なんておもわない)
少なくとも今は。おそらくはこれからもきっと。そうであるはずだ。
……そうでありたい。故に否定する。その滅びを否定する。絶滅を否定する。
「敵は、ほろぼす」
空色の瞳に戦意が満ちた。呼応した光の刃が無数の砲弾を貫き爆散する。
来たれ、魔眼殺しの超電磁砲(レールガン・タスラム)よ。
虚数の空間より間口を広げ、歪んだ機械知性に風穴を開けよ。
魔錬徹甲弾、装填――ティル・ナ・ノーグの砲口が咆哮をあげる!
「この世界も続いていく! いまを生きる誰かの明日のために!
――主砲、前方の対象……ボクらの敵を、撃ち貫けぇっ!!!」
閃光がほとばしった。空間を越えた電磁砲がオーバーキャノンを相殺。
余剰エネルギーが弾幕を吹き飛ばし……暴走戦車の電子防壁を破壊する!
「――視えてるだろ、ジャック」
光と風を浴びながら、匡は言った。すでに、放つべき魔弾(や)は放たれた。
一瞬の間隙。敵の全ての防御を剥ぎ取る砲火。囮の果てに訪れた閃光。
匡の撃ち込んだ弾丸は、それでも暴走戦車の装甲を撃ち抜くことは出来ない。
当然である。彼は戦艦を貫くような、あの破滅の光を生み出すことは出来ない。
ただ生きたいと願い、その欲求にしたがって足掻いてきただけのモノなのだから。
そのために多くの屍を積み上げた。この荒野はあまりにも馴染みがある。
ありすぎる。そして、理解が出来すぎる――人々の渇望も、残骸の殺意も。
憎いだとか、怒りではない。それ以外はすべて"どうでもいい"のだ。
だから引き金を引ける。……引いてきた。あるべきものを全て置き去りにして。
結果がこれだ。草も生えぬ荒野のように、何もない虚無的な内海。
……否定しよう。絶滅すべきである、ゆえに絶滅せよなどというふざけた戯言は。
人は、そんな空っぽな理由で死んでいいものではない。
命には価値がある。血まみれのこの手で、それは計れないけれど。
「"しるし"は付けた。あとは、お前に任せる」
ぱきん、と破砕音が響いた。魔弾が致命的なクラックをもたらした音だ。
他愛もない音ともに、敵の主砲は爆散していた。ワンホールショットの成果。
――この鎧(キャラクター)を纏うようになってから、様々なことがあった。
冷徹な兵士というペルソナ。あるべき役割(ロール)を演ずるための鋼の仮面。
……それが、すべて偽りの自分なのかと言えば、むしろ逆だ。
"ジャガーノート・ジャック"とは、おのれにとっての理想形であり、
こうであったらいい――こうでありたいという、願望でもあった。
これは、いわばもうひとりの自分。化身(アヴァター)というべきだろう。
……だからこそ、間違え、苦しみ、どうすべきかを見失ったこともある。
《――了解。ミッションを開始する》
鉄の獣、機甲兵器(パンツァー)を称せしモノよ。
お前はかつての本機(ぼく)であり、
そしてひとつ運命が狂えば、本機はお前のようになっていたろう。
"此は為し難きを知りつつ、尚心昂らせ挑む戦いである"
《――肯定(イエス)》
いまでも陥穽は口を広げている。すぐそばにぽっかりと虚無がある。
そこに堕ちずに済んでいるのは、彼らのおかげだ。
相棒。戦友。守るべき姫。笑いあえる仲間。道を示してくれる人々。
たとえばほら、彼のように。
いつものように皮肉げな笑みを浮かべ、大団円のみちしるべを作り、
勝利とハッピーエンドをもたらそうとするあの男――いや、"この男"か。
「お膳立ては済んだぜ。格の違いを教えてやれよ、ジャック」
こつん、とヴィクティムが鋼の装甲をノックした。
5秒。丸裸にされた電子知性に叩き込まれた致命的なICEブレーカー。
術者を即座に瞬間移動させ、かつ対象を5秒だけ凍結する冬寂のおまじない。
仕掛けるべき時はとっくに視えていた。パズルのピースも揃っている。
あとは出来るだけ派手に、劇的に、そいつを披露すればいい――このように。
「ここまでおいで、坊や。なあんてな」
ジャガーノートの背中越しにヴィクティムは言い、ひらりと手を振った。
来れるはずもない。電子知性に自由はない。あれは処刑を待つ死刑囚だ。
《――よく視える》
匡の刻んだ"しるし"。撃ち貫くべき逆鱗が。
フラグメント:E反応、Mode:Ace。
飛空機式ファンネル・チャージ……最大(マキシマム)
ヒトでありながら、ヒトをやめたスピード狂の愚かさと力はいまここに。
《――"Pursuit",Fire》
とどめのレーザー攻撃が放たれた。敵に防ぐすべはない。
躱すすべもない。弾丸を放つことも出来ないし、仲間もいない。
『理解不能。理解不能。理解不能。破滅がもたらされるべきは我々では』
KBAM。……KRA-TOOOOOOOOOOOM!!
盛大な爆炎が噴き上がった。歪んだ電子知性が鋼の骸とともに滅んだ証。
「……残念だけど、抹消されたのはそっちだな」
煌々と立ち上る火柱を見上げて、匡は言った。
「この地平に必要ないのは、お前たちのほうだ。……心配しなくていいぜ。
お前のお仲間も、跡形もなく消し去って骸の海に還してやるからさ――」
誰にも聞こえぬ呟きは、似た者同士へ送る別れの挨拶のようだった。
大成功
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