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拠点救出戦~土俵に乗ってやるのも一興よね!~

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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 アポカリプスヘルにおいて、拠点(ベース)包囲とは珍しいことではない。
 野盗(レイダー)がバイクでヒャッハーしながら略奪に来たり、オブリビオン化した美少女の群れが「あけてぇ?」って言い出したり、暴走戦車がいきなり突っ込んできたり――最後のは包囲とは違うかもしれないが、まぁ、よくあることだ。
 対処法は拠点によって違うが、防護の硬い拠点であればきっちりと中から施錠し、窓を鉄板で覆い、とりあえず諦めて敵が退散するまで身を守る。この元々は小規模な学校に作られた拠点も、そういう場所だった。
 窓こそ多いが覆った上で銃眼でも作れば守る方が有利、入口は限られている。だからこそ、今回のオブリビオンの包囲とて、耐えきるはずだったのだ。

「ふっ、そんな弱気なことで土俵が踏めるか。いや踏めない」
 四股すらも踏めはせぬ、と恰幅の良い男は言った。
「そしてこの危険なる世界で生きていくにも足りないのだ! 今は食料もある、水もある、銃もあれば銃弾もある。しかしそれがないときに囲まれたなら! ならばこの余裕のあるときに打って出ることこそが! ドスコイ精神を表すものだろう!!」
 ドスコイ精神ってなんだよ、と思った者もいるかもしれない――が、この拠点に集う者達の懸念を突いたのも事実だったのだ。
 張り手のように蓄積した不安は、かえって安全だった籠城戦への不信感を煽っていく。
「ああ、無論私が先陣を切ろう! 土俵外でも力士は戦える、それを魅せてやろうではないか!!」
 しかし、だ。
 こいつが単なる無謀な力士であれば、まだ彼がやられた瞬間全員正気に戻って再度籠城戦へと突入できたかもしれないのだが。

「この力士は悪いことにオブリビオンだった」
 上手く一般人に紛れて拠点に潜入し、守りの硬い拠点から自ら打って出させ、住民を殲滅するつもりなのだと仙道・十来は武人の片隅にも置けぬ、と肩を竦めて告げた。
 つまり入口を開けさせて人々を外に出した挙句、くるっと反転して『拠点の人々に対する』先陣になってしまうってわけである。
「幸い、我々にはオブリビオンが誰なのか見ればわかる。なのでまずは拠点内にワープしてこの力士……と呼ぶのも業腹なオブリビオンを倒し、そのまま外で拠点を包囲しているオブリビオンの撃破に移ってもらいたい」
 ちなみに力士、と言うのも嫌そうな十来だが、彼女の地元では今でも相撲が、祭の重要な演武として扱われたりするらしく結構きっちり相撲には思い入れがあるらしい。
 なので力士のオブリビオンとか割と腹立つらしい。余談だが。

「ベースの人々は無論、包囲しているオブリビオン達に対処できるほどの強さはない。そしてその力士を名乗るオブリビオンに対しても、だ。とはいえ危険への対処は身に染み込んでいる、こちらがオブリビオンを見つけて戦闘を仕掛けつつ、向こうが潜入者であることを訴えれば安全を優先して戦いに巻き込まれないよう気をつけてくれるから、そこは心配しなくて構わない。……頼む、アポカリプスヘルの砦である拠点が、内から壊される、そのようなことはあってはならない」
 荒廃した世界に生きる人々の、せめてもの安心の地であるように。
 そう頭を下げて、十来は拠点内部へのワープの準備へと移った。


炉端侠庵
 あけましておめでとうございます。炉端侠庵です。
 明けてからだいぶ経ちましたが今年もよろしくお願いします。

 さて、今回はアポカリプスヘルでの依頼になります。
 内部に侵入したオブリビオンを倒して囲んでいるオブリビオンの群れを倒して囲んでいる奴らのボスを倒す、三連戦となっております。
 ガッチムチの戦闘となりますが、よろしくお願いします!

 なお『逃げ遅れた子供を助ける』などのプレイングは格好良かったりしたら採用されますが、逆に言及しなくても拠点住民はちゃんと逃げます。
 ので、救出とかしたい場合は是非とも格好良く! ぜひぜひ!!

 あ、それではプレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ライホウ』

POW   :    電撃連続張り手
【電撃を纏った張り手の連打】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    シコサンダー
【四股を踏むことに事により起きる電撃の波動】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    鯖折り電撃攻め
【相手を抱きしめ鯖折りして】から【高圧電流】を放ち、【痛みと感電】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:8mix

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は迅雷・電子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴィクトリカ・ライブラリア
騙されては駄目よ。
そのドスコイ野郎はオブリビオン。そもそも真の力士ならマゲを結ってるはず。
つまりハゲのそいつは偽物よ!

旧学校校舎なら学術資料もありそうね。全部終わったら手持ちの物資と本や資料を交換してもらえないかな。
――そのためにも勝つ。二等司書ヴィクトリカ・ライブラリア、資料保護のためオブリビオンを排除するわ。

こいつ、白兵型のフリして半端な中距離攻撃手段も持ってるのね。
スモーゥの体捌きを取り入れた司書格闘術で時間を稼ぎつつ情報収集、放電の予兆の把握に務めましょ。
剣と槍を目の前で捨てて徒手アピールも忘れないでおくね。
でも放電し始めたら即後退して銃撃するわ。
目には目を、騙し討ちには騙し討ちを!


迅雷・電子
【心情】こんな世界にも力士っているんだって思ったけど力士の風上にも置けない野郎だね…本当の相撲ってのを教えてやるよ!!

【作戦】最初は制服姿で基地姿を見回り、オブリビオンがいたら【怪力】で投げ飛ばすよ!「みつけたよこの外道力士が!」と制服を脱いでさらしとまわしの姿になり戦闘開始だよ!敵の鯖折りは【見切り】でよけるか【怪力】で受け止めるよ!そしてその隙を見計らって連続つっぱりを食らわせるよ!「あんたみたいな相撲を舐めてる奴に負けてたまるかああ!」(絡み・アドリブOK)


村崎・ゆかり
十来の憤りはよく分かるわ。四股を踏む力士は、本来霊を祓う男神の象徴。それをオブリビオンごときが名乗るのは許しがたいわね。

拠点に転移したら、四方に黒鴉召喚したカラス型の式を放って、目標を探す。一般人を煽動してるみたいだから、すぐ見つかるでしょ。
発見次第現場に乗り込んで、「高速詠唱」で「先制攻撃」の七星七縛符を放ち、目標がその対応に追われている間に集まった人々を対比させるわ。

さて、場は調った。これより、あなたの討滅を始めます。

明らかに接近戦が得意そうよね。こちらも同じタイプの猟兵に前に立ってもらって、目標の攻撃範囲外から不動明王火界咒を連打する。
と言っても、戦場に安全な場所はない以上、油断は禁物。



 アポカリプスヘルに存在する無数の拠点(ベース)、その1つはどこか湧き立つような喧騒に包まれていた。
 オブリビオンの集団に包囲されているというのにその士気は異様に高い……否、むしろ安全な籠城戦を捨てて無謀な攻撃に出ようというのは、もはや暴走に近い。
 煽り立てる者がいるからだ。無論それは、弱き民の味方でも何でもなく――。

「急急如律令! 汝は我が目、我が耳なり!」
 小声にて、けれどはっきりと村崎・ゆかりは数枚の白紙のトランプへと命じた。既に呪力を籠め己の符としたトランプがカラス型の式神へと転じる。黒鴉召喚――目立たぬ姿のままゆかりと五感を共有する式神達は、すっと拠点の四方へと飛び立った。
 元々小規模な学校だった拠点を、式神達が手分けして探すならば広くはない。そして力士じみた外見にしろ煽動という行動にしろ、目立たないはずはない。
「……1階の、教室前の交遊スペースのような辺りにいるわ」
 猟兵達に静かに告げて、ゆかりはオブリビオンを発見した式と感覚を繋げたまま歩を進める。グリモアベースからワープした場所は2階の人気のない倉庫、多少は移動の必要がある。
「こんな世界にも力士っているんだと思ったけど……」
 制服に身を包んだ迅雷・電子は無意識に速歩きになりつつぐっと眉を寄せた。電子の父は力士であり、彼女自身も女雷電の二つ名を背負い、また力士の鍛錬を積んでいる身だ。
「力士の風上にもおけない野郎だね!」
「四股を踏む力士は、本来霊を払う男神の象徴。それをオブリビオンごときが名乗るのは許しがたいわね」
 怒りのままにずんずん進んでいく電子に、十来や彼女の憤りもよく分かるわ、とゆかりは頷いた。元来は神事として行われていた相撲は、ゆかりの修める陰陽道、そして日本古来の呪術ともまた関わりの深いものだ。だからこそ、色んな意味でそれを穢すオブリビオンに怒りを示す電子や十来の気持ちも、理解できる。
 そして――またそれとは別に、守りたいものを持つ者もいる。電子とゆかりの歩に合わせつつ、ちらちらと校舎のあちこちに視線を向けるヴィクトリカ・ライブラリアだ。
「元が校舎なら学術資料もありそうね。全部終わったら手持ちの物資と本や資料を交換してもらえないかな」
 幸いにして学校の規模の割に図書室はやや大きめに見えたし、歩いてきた廊下に歴史資料室らしき小部屋があるのも確認した。どれほどが無事かはわからないが、物資と書籍や資料の交換は今この拠点で生き抜く人々の役に立つし、知識の保全とその研究はおそらくこの世界の為になる。つまり全方面にお得。
「――そのためにも勝つ。二等司書ヴィクトリカ・ライブラリア、資料保護のためオブリビオンを排除するわ」
 それぞれの思惑と気迫を籠めて、少女達は力士を自称するオブリビオン『ライホウ』の元へと迫る――!

「みつけたよこの外道力士が!」
 姿を見た瞬間突っ込んでいったのは当然のように電子だった。
 ちょうど背を向けていたライホウに大声を掛け、振り向いたところに突っ込んで真正面から廻しを取っての見事な櫓投げ。
 土俵上であれば文句なしの決まり手である。
 そしてまずは一丁ぶん投げたところで、すっぱーんと電子は制服を脱ぎ捨てた。胸元をしっかり支えるさらしにレギンスの上から身に着けた廻し、見事な女力士の姿である。どすこい。
「なっ、ライホウさんに何をする!?」
「騙されては駄目よ」
 突然の乱入に慌てた拠点住民達の前で、くいっとヴィクトリカが眼鏡を指で上げる。
「そのドスコイ野郎はオブリビオン。そもそも真の力士ならマゲを結っているはず。つまり」
 そしてびしりとその指でドスコイ野郎ことオブリビオン・ライホウを指し示す!
「ハゲのそいつは偽物よ!」
 そうだね確かにこれスキンヘッドの上にヘッドギアしてるよね。メカメカしいもんね。
 ちなみに電子はポニーテール。スキンヘッドとヘッドギアよりは全然マゲカテゴリである!
「というわけで私達がこの敵への内通者を抑えるわ。皆、巻き込まれないようにこのスペースから離れて避難をお願い」
 その間にぱっぱと符を抜いて北斗七星の力を宿して投げつけて、起き上がったライホウの動きをゆかりが封じる。七星七縛符、ユーベルコードを封印して相手の動きを制限する間に、明確に戦闘の始まる気配と的確な提案さえあるならば、この危機に慣れた世界の住民が安全確保へと移るのは素早い。幼児や老人、怪我を負った者などの誘導にもほとんど危うさはない。
 ――それは、慣れてしまうだけの危険な世界を、この数年生き抜いてきた、という事実でもある。

「さて、場は整った」
 そして七星の縛めから解放されたライホウが起き上がってくる頃には、とうにそこには『戦場』とできるスペースが形成されていた。
「これより、あなたの討滅を始めます」
「やれるもんなら――」
 完全に前衛型フルコンタクトタイプ、と主張するような巨体の前に、当然のように電子が、そしてしれっとヴィクトリカが前に出る。今回は後方からの火力担当と決め込んだゆかりがすっと場所を空け後ろに下がる。
 じりり、と見合う電子とライホウの間に行司はいない――しかし問題はない。本来行司の掛け声は競技開始の合図ではなく、力士同士が互いの呼吸によって呼吸合わせ、地を蹴って立つその瞬間によって始まるのだ。あの「はっけよい、のこった」とはその確認であり、号令ではない。
 ゆえに見合う。電子とライホウは見合い、ぶつかり合うタイミングを互いに図る。片拳を床に付きその時を待っていた電子、オブリビオンとの間に流れた時間は互いの呼吸すら見えるほどに長く感じ、けれどおそらくはたったの数分の1秒。
 呼吸が合う。
「本当の相撲ってのを教えてやるよ!!」
 もう片方の拳を床に付けてから、ばっと電子は前のめりに立ち上がった。流石に電子よりだいぶ背の高いライホウが、上からその巨体を押し付けて膝を付かせる鯖折りは有利に決まっている。けれど電子はそれを幾らか横にずれて受けると、容赦なくパワーを掛けてくる相手の膝裏に自分の膝を突っ込んだ。
 相手は下に体重をかけている。
 だがライホウの膝の裏は電子の内腿が支えている。
 そうなればあとは梃子の原理――いわゆる『切り返し』が決まる。見切りと怪力、両方が揃っての柔剛併せ持つ相撲だ。
 しかしここは土俵ではない、膝をつこうが投げられようが負けではない。くるりとむしろプロレスラーのように後ろに回転して立ち上がったライホウが、ぐぅっと右膝に手を当てて腰を落とす――そう、四股の予兆となる構え。
「こいつ、白兵型のフリして半端な中距離攻撃手段も持ってるのね」
 一旦またタイミングを待ち構える電子に対し、すっとヴィクトリカが懐に入る。彼女の戦いは『司書格闘術』――本を傷つけず敵を制圧する、そのために彼女が属していた司書が一番に学び、また最も習熟する武器。徒手空拳とて鍛えればまた無二の武器となり、さらに余計な破壊を抑えて貴重なる資料の被害を最低限とする。
 ――その意図を汲んだので、後ろから不動明王火界咒を隙を見てはばしばしライホウに撃ち込んでいるゆかりも、延焼にかなり気をつけて戦っていた。本や資料でなくてもあちこちに置かれている物資には可燃物も多く、そういう意味で不浄をある程度選んで灼く上にコントロールが容易な不動明王の力持つ炎は屋内戦向きでもある。
 ちなみにヴィクトリカが装備していた剣と槍は、とっくに投げ捨てていた。身が軽ければ司書格闘術には素早さの磨きがかかる。あくまで相撲(っぽいオブリビオン)に対して素手格闘、で立ち向かう姿勢を見せる。
 ――ついに、相手が右足を大きく上げる。雷撃の波動を纏う四股が、大きく思い切り振り下ろされ……る瞬間には、ヴィクトリカはがっつり飛びすざっていた。
 手には軽量小型のアサルトライフル。非力であっても取り回しやすく、ついでに言うなら隠蔽も容易。
「目には目を、騙し討ちには騙し討ちを!」
「ふおおおおお!!?」
 まぁ卑怯などとは言えないだろう!
 何せ向こうだって相撲と電撃攻撃のチャンポンだもの!
 ついでにゆかりも同じだけ距離を取っている。元から今回は接敵しての戦いではないが、わざわざ範囲攻撃に巻き込まれてあげる気もない。
 ついでにそのまま迫られぬよう、再び不動明王の咒を籠めた符を牽制兼ねて数枚飛ばす。
 一瞬でも怯めば十分、なぜならば。
「あんたみたいな相撲を舐めてる奴に負けてたまるかああ!!」
 電子の渾身のつっぱりが、そりゃもう凄まじいつっぱりが、もはやライホウの目前まで迫っていたからだ!
「どすこいどすこいどすこい!」
 おわかりいただけるだろうか、これが
まさに真のどすこいだ。
 それはパワーの表現であり、囃子言葉として使われるものでもあり、「そうはさせぬ」という意志であり、いっそドス、即ち刃物であっても臆さないという力士の意地の表れだ。
 ――ごめん適当言った。本当は「どっこい」が訛っただけでドスは関係ないのだ、だけどもはや電子の気迫は、相手が力士ならぬ剣士であれ刀使いであれ、やはりこのつっぱりにて立ち向かえるであろう。
 そういった、女雷電の二つ名冠する意地のつっぱりであったのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
よし、力士崩れにはこちらもそのつもりで行こう。

【POW行動】
槍を背のベルトに固定、戦闘開始と同時にがっぷり四つ……は嫌だな。両手で組み合い[怪力]勝負。[部位破壊]する勢いで力を籠め[継戦能力]により相手を消耗させていく。

そうだ、相撲でも見た事がある。敵頭部の露出している部位に角も使った渾身の頭突きをしよう。
お前だってその肩と膝についてるだろ。

相手が電撃を纏った瞬間を[見切り]、後方へ[ジャンプ]と同時に[槍投げ]。電撃は避雷針となった槍へ流れる筈。槍に追随して[ダッシュ]し柄を掴み、UC発動。

力士まがいにはそのつもりで行くと言った。
……その身体、本当によく燃えそうだ。

連携・アドリブ歓迎です!


イス・イス
ドスコイ精神、イスには理解できない。
説明を要望……やっぱりいい。

無差別攻撃に巻き込まれそうな人に『ダッシュ』で近寄り『怪力』で抱えて電撃の範囲外へ。
無事? ならいい。

もう一度四股を踏もうとしたら【偽神兵器解放:𓃹𓈖𓏊𓏏𓆗】。偽神兵器:「チェト」から過剰にエネルギーを送ることで更に加速。
電撃が起きるより前に接近して殴る。てー。
『怪力』で『吹き飛ばし』して転ばせれば電撃は使えない。

起き上がるより先に接近し、追撃の『踏みつけ』。やー。
『怪力』で押さえつけつつ偽神兵器でもある脚から『生命力吸収』。
エネルギー補充開始、いただきます。
たくさん食べて、またイスは戦う。



「ドスコイ精神、イスには理解できない」
 とっても困ったような顔で、イス・イスは呟いた。
「説明を要望……」
 そして隣の鬼桐・相馬を見た。
 ――相馬の鉄面皮ながらも、僅かながら困ったように眉を寄せた様子に察したのだろう。
 あと。
「ふむでは説明してやろう! ドスコイ精神とは本来相撲道に由来する祭事と」
 目の前の敵の説明が絶対気合が入る上に長くなる事も察したのだろう。
「やっぱりいい」
 ばっさり言ったイスに相馬は表情を変えぬまま小さく安堵したように息をつき、オブリビオン『ライホウ』は床に思わずのの字を書いた。

 さて。
「よし、力士崩れにはこちらもそのつもりで行こう」
 そう相馬は静かに宣言すると、普段の得物である槍を背のベルトへと固定した。ライホウと視線を交わし合った次の瞬間――がっぷり四つとは行かないが、両手を掴んで組み合ってみせる。
 そしてその間に、イスが駆けた。組み合う2人とは逆方向へ。――どうやら教室にいたため逃げ遅れたらしい、女性と子供を両脇に抱えて全力でダッシュする。140センチを少し越えた程度のイスでは女性の足が床に付きかけではあるが、力と速度自体は問題ない。フラスコチャイルドでありその四肢を『偽神兵器』として形成されたイスであってみれば。
「無事?」
「は、はい! ありがとうございます」
「ならいい」
 無表情に、けれど其処に幾分の安堵を宿して頷くと、イスはすぐに戦場となった交遊スペースへと戻って行った。
 そして相馬とライホウは、まだがっぷりと組み合っていた。無論、その状態ではオブリビオン側も張り手を出せない。物理的に。
 そして先に動いたのは相馬だった。一瞬力を緩めたかと思うと、額の角を中心とした頭突きを思い切りスキンヘッドの頭部に叩きつける!!
「ぐおおおおおお!!」
 これは痛い!
 ただでさえ頭突きの威力は高いのに、羅刹の角によってその破壊力が一点集中の刺突として発揮される。それは。痛い。
「お前だってその肩と膝についてるだろ」
 表情を変えずに丁寧に忠告してやったが、当然相馬に喰らうつもりはない。
 両手をひっ掴んだまま、リーチを保ち続け――次の瞬間。
 手を離す。離れたライホウの手がその時にはもう雷撃を纏っている。後ろに飛びすざりながら、相馬は素早く背中から冥府の槍を抜き放つとそのまま投げた。
 張り手と共に繰り出された雷撃が槍を伝い、相馬には届かぬまま拡散し威力を失う。それを確認してから柄を掴む。
「お、お前相撲で来るんじゃなかったのか!」
「力士まがいにはそのつもりで行くと言った」
 そう、相撲で行くとは言ってない。
「……その身体、本当によく燃えそうだ」
 ユーベルコード『鬼火継ぎ』、青黒く燃える炎が槍の穂先を覆い、恰幅の良い肉体を貫く。
 一度下がったライホウは、イスも戻ってきたことに一つ舌打ちするとぱん、と膝に手を置く。そして右脚を上げ、雷撃纏う四股を踏もうとしたまさにその時。
「偽神兵器。解放。風よ、馳せろ」
 心臓部である偽神兵器『チェト』を過活動状態にし、大量のエネルギーを送り込み神速の如きスピードで――殴った。
「てー」
 単純な攻撃ではあるが、右脚を高く上げたところに強力なパンチを食らえばバランスは崩れる。
 しかもその巨体すら吹き飛ばすレベルの威力、相撲ならばとっくに決まっているところだが、ここは戦場。倒れた相手に即座に駆けつけると、遠慮なくイスはライホウを踏みつけた。
「やー」
「ぎゃあああああ!」
 無論、イスの脚も偽神兵器であり、オブリビオンからの生命力吸収を可能としている。
「エネルギー補充開始、いただきます」
 そしてそれをオブリビオンと戦うための燃料とする。無駄がない。
「たくさん食べて、またイスは戦う」
 その通りたくさん『食べさせて』あげるのが良さそうだったので、相馬は食事が終わる――オブリビオン・ライホウが消滅するまで、起き上がろうとするのを引っ叩いて抑えるのに専念しておくことにした。
「……これがごっつぁんです、というやつか」
 消滅に至るまで踏み尽くされる力士もどきを眺めながら、思わずそう呟いた相馬なのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『黙示録教の信者』

POW   :    【黙示録教の信仰】我らガ祈りを聞き届ケ給ヘ!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    【黙示録教の崇拝】我ラが願イヲ聞き届け給え!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    【黙示録教の殉教】幸福なル滅びト終焉ヲ此処に!!
【心臓と同化したオブリビオン爆弾による自爆】が命中した対象に対し、高威力高命中の【疑似超大型オブリビオン・ストーム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:嵩地

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 内憂外患、という言葉がある。
 元々国の内部でもゴタゴタが起きて、外からは他の国が攻めてきてまったくもうやばい! というやつではあるが、今の猟兵達、そして『拠点』から見るならば、内憂というべきオブリビオン・ライホウを見事葬り去ったところである。
 打って出るにもはや不安はない。確認すれば拠点を包囲しているのは黙示録教なるカルト狂信徒のオブリビオン達、向こうの方が多勢ではあるが1体ごとの実力では猟兵達に及ぶまい。
 おそらくは、彼らを率いる者がさらにいるのだろう。
 まずは包囲を蹴散らしてしまおう、と猟兵達は拠点住民の応援を背に聞きながら、校舎の外へと飛び出した――!
鬼桐・相馬
上半身に力を入れ過ぎた。(首を押さえて捻りながら肩を回す)

【POW行動】
槍に力を意識して流しつつ拠点外へ。偵察役が敵に囲まれていたら先ず助ける。後方から[ダッシュ]し、彼らを飛び越えるように[ジャンプ]、敵との間に割り込むように入り、勢いのまま槍で薙ぎ払う。
ここは俺たちが引き受けるよ。

戦闘は敵集団に突っ込み[継戦能力]で常に動き回りながら。敵の攻撃は[見切り][武器受け]で防ぐ。教義を唱え始める奴が出てきたらUC発動。
ここまで我慢したんだ、効果も高いだろう。
[怪力]を駆使し[串刺し][範囲攻撃]で[蹂躙]するような戦い方を。
……だめだな、楽しくなってきた。
敵の数が減ったら深呼吸して落ち着こう。


迅雷・電子
【心情】外道力士を倒したと思ったらなんかまた妙なのがいっぱいいるね…せっかく来たんだ拠点を守るために最後まで戦うよ!

【戦闘】基本は【見切り】と【怪力】で敵たちの攻撃はかわすか受け止めるかで対処。そして隙をついて張り手や投げで攻撃したり敵を【2回攻撃】の連続つっぱりで攻撃したりして敵を減らしていくよ!(絡み・アドリブOK)
「ごちゃごちゃうるさいよ!宗教の勧誘ならどっか他でやりな!」


イス・イス
エネルギーたくさん。イスも頑張る。
心臓に武器。イスとお揃い?

『ダッシュ』と『ジャンプ』で敵を『踏みつけ』、戦場を駆けまわりながら敵を殴る、蹴る、投げるで戦う。
自爆は『野生の勘』で察知、『咄嗟の一撃』で敵や地面を蹴って後ろに『ジャンプ』でどうにかする。

超大型オブリビオン・ストーム、美味しいかな? 疑似だけど。
オブリビオン・ストームが発生したら【偽神兵器解放:𓏏𓅑】を。
拠点はまるまる範囲内。
あれ、食べてもいいかな?

いいんだったら、いただきます。
疑似超大型オブリビオン・ストームに飛び込んで、両手両足の偽神兵器でオブリビオン・ストームを『捕食』する。

イスは平気。むしろ元気が出た。


村崎・ゆかり
黙示録教? 改派(プロテスタント)の原理主義がベースかしら?
世界滅亡の瞬間に敬虔な信徒は天国へ引き上げられるという教義だったはずだけど、この穢土に取り残されたあなたたちは、救われる資格がなかったようね。
いいでしょ。父なる主に代わって、あたしが裁きを下してあげる。

執金剛神降臨。巫覡載霊の舞を踊りながら、執金剛神と共に敵陣に突っ込んでいくわ。
自爆される前に敵の急所を「串刺し」にして、一撃必殺を狙う。
薙刀で間合いを計り、「衝撃波」を連打してリーチの内側には敵を入り込ませない。これで至近からの自爆は防げるはず。

敵が異端の教義を垂れ流すなら、あたしは孔雀明王法を読誦して、精神汚染されないようにして戦う


ヴィクトリカ・ライブラリア
こういう連中は本を焼くって歴史が証明してる。なら、わたしの敵だよ。
住民の皆は交換してもいい本を準備して待ってて。蹴散らしてくるわ。

ライホウ戦で手放した槍を住民の中で一番心得のある人に預けておくわ。万が一があったとき、それで皆をよろしくね。

さて――盾を構えて入り口を塞ぎ、アサルトライフルで敵をなぎ倒す。
なるべく弾薬の消費を抑えるために頭を狙うけど、でも一撃必殺にこだわりもしない。
此処を護る機械のように、単調にシンプルにただ突破させないように引鉄を引き続ける。
傷を受けても気にしない? そう。じゃあ恐怖を感じるまで出血を強いてあげるわ。貴方達は何人犠牲にしたら怯むのかしら?



「我らガ祈りヲ受け取リ給ヘ、真ナル救いヲ、道標を、幸福なル滅びと終焉ヲ!」
「「「ヲヲヲヲヲ――!」」」
 薄暗く雲に覆われた空の下、それよりもなお淀んだような色のローブの拳を突き上げる。もはや意味を持つのかすらわからぬような気勢を、あるいは祈りを聞きながら、村崎・ゆかりは小さく首を傾げた。
「黙示録教ね、プロテスタントの原理主義がベースかしら?」
 いわゆる聖書における『黙示録』といえば、新約聖書の終章にして預言書的な要素を持ち、かの世界観における終末論を定義した文章である。
 すなわち。
「世界滅亡の瞬間に敬虔な信徒は天国へ引き上げられるという教義だったはずだけど、この穢土に取り残されたあなたたちは、救われる資格がなかったようね」
 実際には火の池にその辺全員放り込まれるとかだが――あながち間違いではない。
 アポカリプスとはすなわち黙示録だし。
 ヘルとはもちろん地獄である。
 そしてこの世界は『アポカリプスヘル』だ。
 良くて挑発、悪ければ侮辱、最悪であれば異教の敵。そう取られても構わないと放つ言葉は、けれど黙示録教の信者達の呟く祈りもその勢いも、変わらない。おそらくは彼らが理解不能であると同時に、彼らももはやその教義と信仰以外を理解することもできないのかも知れない。
 実際、彼らの言葉にしっかりと耳を傾けて深く研究すればいろいろわかるのかもしれないが――。
「こういう連中は本を焼くって歴史が証明してる」
 少なくともヴィクトリカ・ライブラリアの言葉は1つの真理である。黙示録教のルーツや信条が明らかになったところで、外部から研究したそれをもはや狂信者でしかない彼らは厭うし、ただ忌み嫌うだけでは済まないだろう。
「なら、わたしの敵だよ」
 過去の記録・知識の保全を己の任務とするヴィクトリカが、かつて歴史上繰り返されてきた、そしてまた繰り返されるかもしれないその破壊を許せるわけはない。絶対に。
「万が一があったとき、それで皆をよろしくね」
 ライホウに向けて徒手をアピールするために手放していた槍を、この拠点の奪還者の1人だという女性に手渡す。
 おそらく、この拠点で一番戦闘慣れしているのは彼女だ。
「あなたの判断で、扱えそうな人に預けてくれても構わないから」
「わかったわ。……あなた達の方が絶対に強いでしょうし、まさに万が一、だけれど」
 受け取った槍の柄を握る手に、力が籠もる。戦いの経験を積んだ彼女だからこそ、先程のライホウを倒した猟兵達の強さも、その猟兵達が敵わない、ということの意味もわかっているのだろう。
 それでも『戦える者』として、彼女は深く頷く。
「外道力士を倒したと思ったらなんかまた妙なのがいっぱいいるね……」
「ああ。……しかし、上半身に力を入れすぎた」
 その間に土俵入りのようにゆったりと迅雷・電子が、首を押さえて捻りつつ反対側の肩を回しながら鬼桐・相馬が外へと出ていく。ヴィクトリカの言葉に奮う住民もいれば、電子や相馬が動揺した様子も見せず数多の敵へと向かっていく姿に心強さを覚える者もいるだろう。
「エネルギーたくさん。イスも頑張る」
 それに小柄な身体とは裏腹なほど平然と2人に続くイス・イスにも――怯えの欠片も見せぬ無表情は実のところ単に『何も考えていない』とのことだが。
「住民の皆は交換してもいい本を準備して待ってて。蹴散らしてくるわ」
 最後に力強く頷いて扉を潜り、しっかりと締めて施錠の音を確認すると、素早くヴィクトリカは防弾盾を構えた。物理性能にバランス良く優れたポリカーボネート製、特に耐衝撃性は折り紙付きだ。切り欠きに軽量小型のアサルトライフルを置きスコープを覗き、――引き金を引いた。

 技巧を凝らす必要なんてない。
 銃はただ撃つだけで恐怖を刻むの。

 自動小銃はその名の通り、引き金を引き続ける限り弾丸を吐き出し続ける。無論、整備を怠れば不発を起こし故障の元になるだろう。
 しかしそれを防ぐ整備も、武器としての使用すらも、もはや必要なのは技術ですらない。
 知識だ。
 最初の数発が吸い込まれるようにローブに包まれた頭蓋を穿つ。1秒と間を置かずまた数発。銃弾の消耗を防ぐためにヘッドショットを狙いつつも、数がいる分照準よりも手数を重視する。もはや銃の機構だけでなく、ヴィクトリカの戦い方そのものがオートメイションとなったように。
「祈リを邪魔する者ヲ排せヨ!」
 籠手かそれとも鉤爪か、両腕を振りかざしてそのオートメイションを止めようと飛び出す信徒を、ゆかりの薙刀が払ったかと思えば次の瞬間にはその心臓部を貫いた。「いいでしょ。父なる主に代わって、あたしが裁きを下してあげる」
 既に巫覡載霊の舞によって神霊体へと変じた身体に、さらに執金剛神の力を呼び降ろす。荘厳なる黄金色に輝くゆかりの身の丈2倍、仏法と衆生の守り手である執金剛神は、確かに拠点の人々を守るために召喚へと応えたのだ。もはやそこに、敵は無論守るべき民の信仰すらも関係なく、無辜の人々の守護として。
 舞の動作の1つのように振るい上げた薙刀が、執金剛神と共に狂信に堕ちたオブリビオンの胸を、喉を、次々に貫いていく。
 そしてほぼ同時にゆかりの戦線を支えるように、相馬と電子がそれぞれ前へと出ていた。闘争の衝動を意識して得物たる冥府の槍へと流しつつ、ゆかりを囲もうと近づく一団へと相馬は駆け抜ける。既に突出した数人を電子が相手取って、安定した足捌きでかわし振りかざした腕を受けては流し、体勢が崩れでもすれば容赦なく投げ飛ばす。
「せっかく来たんだ、最後まで守りきるよ!」
 素早く蹴手繰りにて信徒の1人を地面に叩きつけるその瞬間、十分に助走を付けた相馬はその背を飛び越えた。勢いのままに槍を薙ぐと、さらにそこに迫る一団へと飛び込んでいく。
「こっちは俺が引き受けるよ」
「任せたわ」
「頼むよ!」
 短い言葉の応酬で、互いにある程度背を守りつつ戦場を分担する。離れた敵はヴィクトリカが丁寧に掃討しているし、イスは小柄な体躯を生かして敵の中心近くまで駆け飛び込んではそのまま偽神兵器たる足で踏みつけ、その勢いで同じ偽神兵器の拳を叩きつけ、ジャンプから敵の顔を蹴り飛ばしては自爆される直前に離脱、と遊撃を繰り返して着実に数を減らしている。
「幸福なル滅びト終焉ヲ此処に!!」
 叫び、その心臓と同化したオブリビオン爆弾が爆ぜると同時に巻き込んだのは同じ黙示録教徒の方だった。イスはとっくに巻き込まれた信徒の後頭部を蹴り飛ばして離脱している。疑似超大型オブリビオン・ストームが自爆した信徒と巻き込まれた信徒を中心に吹き荒れる――それはあくまで彼らに依る疑似的なものであり、周囲にいるのは既にオブリビオンである信者達と猟兵達だけであるから破壊力さえ除けばオブリビオン化の心配はない。が。
 きらり、無表情の中にも緑の瞳が輝いた。
「偽神兵器、解放。声よ、届け」
 ユーベルコードとしての名は『偽神兵器解放:𓏏𓅑(チェト・ムート)』――イスの偽神兵器としての力の由来としてヒエログリフによって表記されるそれは、端的に言うと「あれ食べたい」である。
「あれ、食べてもいいかな?」
 きらきらした瞳で拠点へと振り向いた少女に、祈るようにその戦いを見守っていた拠点の人々が息を呑む。オブリビオン・ストームを喰らい尽くす、親しい人も、危険な道具も、何もオブリビオン化することなく――それはもちろん、このアポカリプスヘルに住まう人々であれば願うことに違いなかった。
 ……食べるかは、ともかく。
「いいんだったら、いただきます」
 ひしひしと伝わってくる「食べちゃえ!」「お願いします!」な感じの思考に合わせて、イスが新たに自爆によって生じた疑似オブリビオン・ストームの中に飛び込んでいく。両手、両足、その全ての偽神兵器が、嵐の形態であるそれを『捕食』していく――!
 「我らガ祈りを聞き届ケ給ヘ!」
 その祈りを向けられる者は誰であり、実在するのか――もはや数を半分以下に減らしつつある信徒達の、必死の形相であった。
「ごちゃごちゃうるさいよ! 宗教の勧誘ならどっか他でやりな!」
 けれど確かにその祈りは信徒達の傷を癒すも、電子の張り手の方がずっと速い。連続つっぱりがもはや3人分連続で炸裂してオブリビオン達を弾き飛ばしたかと思えば、逃げようとした1人を腕捻りで捻じ倒す。
「オン マユラキランテイ ソワカ――ノウモボタヤ・ノウモタラマヤ・ノウモソウキャ――」
 黙示録教の祈りや教義を耳に入れぬよう、精神を守るようにゆかりが孔雀明王法を唱える。さらに敵の攻撃を見切り、受け止め続けていた相馬がそれに合わせてユーベルコードを起動した。
『血の渇望』――槍に流し込んでいた嗜虐の欲求を己へと逆流させていく。敵の攻撃をあえて反撃よりも防御によって受け止め続けていたことで、溜め込んでいた悪意が己の精神へと戻ってくる感覚にふっと相馬は笑んだ。普段ならばそれは槍に悪意を吸い取らせることによってコントロールしているものであり、しかし相馬自身は己の性分であると完全に理解しているもの――ゆえに、なるべく仲間に背を向けるという選択だけをした。そして。
「さあ、お前の悪意も槍に喰わせてくれ

 それ以外は、本性に身を任せた。羅刹の怪力を存分に駆使し、片手で操った槍の穂先で敵の肉体を持ち上げると、そのまま相手の重みで串刺しにしてみせる。その身体が突き刺さったままの槍を誇示するように振り回し、薙ぐと同時に既に力を失った肉体を仲間である黙示録教のオブリビオンへと叩きつけると、すぐさま飛び込んでまた心の臓を貫く。今まさに放り投げた仲間の身体ごと、2人とも。
 知らず浮かんだ笑みは普段は制するものであるゆえに、仲間には背を向けて戦い続けた。楽しい。――愉しい。この戦いが。蹂躙が。
「……だめだな、楽しくなってきた」
 それでもそう自覚する理性は残っている。その壮絶な戦いぶりに動きを止めてしまった信徒には、ヴィクトリカが冷静に銃弾を叩きつけた。
「貴方達は何人犠牲にしたら怯むのかしら?」
 傷を受けても気にしない――狂信の恩恵であるだろうそれをいつまで受け止められるか。とっくに殲滅されつつある彼らに、いつまでその狂気が恐怖を抑え込めるだろうか。
 勿論、オブリビオンである以上、怯んで撤退に移ろうと逃がすつもりはない。今も思わず踵を返したローブの背にきっちり5発撃ち込んで、消滅させる。引き金を引き続けるという戦法は、単純でありながら完璧に有効だ。
 ゆかりが相手の間合いに入られないよう衝撃波で弾き飛ばした敵も、端からヴィクトリアが撃ち倒し、反対からゆかりが次々に突き滅ぼしていく。毒蛇や毒虫を喰らう孔雀の徳を持つ孔雀明王への祈りは、まさに邪教から精神を守る盾となる。口にして唱えることで、心を守り抜く。
 敵の数が明らかに減ったのを確かめて、相馬は深呼吸を数度繰り返した。その間にも向かってくる敵は迎撃しながらも、槍から引き戻した悪意を少しずつ戻していく。おそらくこの黙示録教の信徒達を率いる者との戦いが待っているにせよ、冷静さを欠いた過度の攻撃性はおそらく隙を生むだろうから。
「イスはむしろ元気が出た」
 疑似オブリビオン・ストームをかっ喰らってなおも元気なイスはともかく。とりあえず吸収できるものは何でも食べたいイスである。
 この偽神兵器、火力は高いのだがいかんせん燃費が悪いのだ。
「てえっ! ようし、これで結びの一番かい!?」
 最後につっぱりからの突き倒しでぶちのめした狂信者を最後に、意味のわからぬ教義を唱える声は途絶えた。
 けれど、さらに強大な気配に、猟兵達は構えを解かぬままにそれを待ち受ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ダラキュリア・クローン』

POW   :    アタシの管理にケチつけんじゃねぇ!!
【自身が作り上げた管理社会を否定された怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    テロリスト共は速やかに撲滅しなきゃねぇ!!
【自身が装備する刀剣から放たれる斬撃】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    噛み殺せ!!強襲兵ぇ!!
レベル×5体の、小型の戦闘用【に進化した森羅万象を噛砕できる羽虫】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:ぺいゆ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠播州・クロリアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「チ、せっかくけしかけてやったのに全滅か、前座にもなりやしない――潜入にしろ、包囲にしろだ」
 表れたのは、灰色の女。
 そう形容するのが相応しいオブリビオンであった。
「まったく、アタシの管理する世界を作るには、脆弱すぎた。むしろどうだい? いっそアンタ達がアタシの側につくなら、『管理する側』の1人にしてやってもいい……無論、アタシの管理下でね」
 教科書通り、お手本のようなディストピア。その管理人。
 そういう存在であることを、一切疑わない――そういう顔をした女だ。

 ああでも、どうやら彼女……『ダラキュリア・クローン』。その名の通り、彼女とてクローン技術によって生まれた存在に他ならないらしい。
「貴方は何人目のダラキュリアですか?」
 そう尋ねたら、キレる……かなぁ。多分。きっと。

 ともあれこの拠点、最後にして最大の敵対者。
 ダラキュリア・クローン。彼女を倒せば、拠点の安全は確保されるのだ!
村崎・ゆかり
ご機嫌よう、Ms.Gray。それとも、Ms.Silver?
村崎ゆかり、陰陽師。この《紫蘭》が、一手お相手仕る。

偶神兵装『鎧装豪腕』顕現。巨大な一対の手甲に「オーラ防御」を掛けて、自律防御を行う盾として使うわ。
引き続き巫覡載霊の舞で体捌きを確保し、薙刀の間合いを維持する。
炎の「属性攻撃」となる不動明王火界咒を牽制に使いながら、本命は七星七縛符。
ユーベルコードを封じたら、身体の維持も出来なくなるんじゃないかって思ったけど、どうかな?
まあ、想像が外れても、叩き潰すだけだけどね。
『鎧装豪腕』の「衝撃波」を纏った打撃をラッシュで叩き込む。

クローンか。アースクライシスで何度か相対したけど、技術が流出した?


迅雷・電子
【心情】あんな奴らの親玉ってどんな屈強な奴かと思ってたけど意外と可愛い娘なんだねえ意外だよ。でも、相撲の取りがいはありそうだね!思う存分やってやろうじゃないか!

【作戦】斬撃、羽虫は【見切り】で対処するよ。羽虫はあまりにも邪魔なら連続つっぱりで叩き落すよ!そして「あんたの名前…クローンってついてるけどもしかして誰かのクローンなのかい?」と嫌味なく聞いて激怒して向かってくるところをそのまま雷電張り手だよ!もし激怒しなかったら【ダッシュ】で間近まで詰めてそのまま雷電張り手を食らわせるよ!


ヴィクトリカ・ライブラリア
管理社会って理想自体は否定しないわよ。秩序は確かに必要だもの。
でも一つだけ聞かせて頂戴。それ、自由に本を読んで本を書けるような社会? そうでないなら願い下げね。

覚悟を決めて相手を挑発するわ。
盾は要らない。銃も、剣だって使わない。“いつでも使えるようにして”校舎の前に置いていく。
こういう歪んだ支配者気取りは、きっとこの先も現れるわ。
でもね、皆。諦めずに、拳一つでも立ち向かえば――苦しくても血が流れても、人間は受け入れがたい支配を打ち破れるのよ。
殴打で蹴脚でこいつを叩く。斬られたって構うもんか。
――これで三回、攻撃したわね。
皆のことはわたしが守る。だから、皆は自分の居場所を自分で守ってみせなさい!


イス・イス
管理? 面倒そう。イスは拒否する。

おっきい。
戦いながらUC発動のための『力溜め』。
偽神兵器:チェトからエネルギー抽出中。もうしばらくかかる。
足元をくぐったり、周囲を跳び回ったり。『ダッシュ』と『ジャンプ』で攻撃を避ける。
隙があったら巨大化した敵の肌が露出している部分に『怪力』で捕まったり飛び乗ったりして偽神兵器である両手足から『生命力吸収』。いただきます。

準備ができたら【偽神兵器解放:𓏏𓄿𓅱𓂋𓏏𓁐】。まっすぐ突っ込んで全力で殴る。

イスは疲れた。おんぶを要望する。


鬼桐・相馬
いや、もう、それは聞くなという方が無理な話だ。
――お前は何人目のクローンなんだ?

【POW行動】
キレた相手というのは、戦闘力は爆発的に増加するが隙が増えることが多い。
ついでに言うと、お前に管理されるなんてごめんだな。
そう言えば早々にUC発動しないだろうか。

真の姿となり[戦闘知識]による[見切り]と[武器受け]を最大限に生かし攻撃を防ぐ。致命傷を避ければ喰らってもいい。
こちらの攻撃は[怪力]を発揮し同じ部位を再度攻撃、[傷口をえぐる]から[部位破壊]へ。大きい分攻撃も苛烈だが当てやすいだろう。仲間に僅かでも注意がいった瞬間UC発動。

管理社会も、ダラキュリアとやらのクローンも。お前が最後だといいな。



「ご機嫌よう、Ms.Gray。それともMs.Silver?」
「アンタ、口のきき方には気を付けな。他の管理下じゃ知らないが、アタシはダラキュリア様であって他の何でもない。色による定義はお断りだねぇ」
 先んじて声をかけた村崎・ゆかりに、ニィと灰色の彼女はその唇を吊り上げた。
 あれか。階級を色で定義するタイプのやつじゃないのか。
 既に全く親しさの欠片もない笑顔で睨み合うゆかりとダラキュリア・クローン、その様子を迅雷・電子はふむ、と腕を組み眺める。
(あんな奴らの親玉ってどんな屈強な奴かと思ってたけど、なかなか可愛い娘なんだねぇ意外だよ)
 電子さん自身も相撲の苛烈さや強烈なつっぱりとは対称的にやや線の細い美人ではあるのだが。ちなみに食べても太らないのは相撲取りたる彼女の悩みである。
「管理? 面倒そう。イスは拒否する」
 同じく食べ(生命力吸収し)ても太らない系女子、イス・イスは小さく首を傾げたまま即答した。正直そう言うって思ってた。
「管理社会って理想自体は否定しないわよ。秩序は確かに必要だもの」
 それとは対称的な言葉を口にしたのは、ヴィクトリカ・ライブラリアだ。確かにこのアポカリプスヘルという世界の現状は『管理すらできていない』状態であり、だからこそ人々は理不尽な破壊や暴虐に晒されている。それを自分の目で見て、知っているからこその言葉といえた。
 けれど。
「でも1つだけ聞かせて頂戴。それ、自由に本を読んで本を書けるような社会?」
 自由に、と強調するように問いかけたヴィクトリカに、フンとダラキュリア・クローンが鼻を鳴らす。
「ああ、自由に、ね。アタシが許可する限り『自由に』すればいいさ、本なんて」
「だったら願い下げね」
 吐き捨てるように言い放つと、ヴィクトリカは盾を置いた。銃も、剣も、全ての武器をいつでも使えるようにして、校舎の前に置き、その身1つで歩を進める。
 許可する限りの自由。
 それは自由なんてものではない。単なる検閲であり、情報操作に他ならない。
 そんなものを、ヴィクトリカは許せない。赦せるはずが、ない。
 全ての武器を置き去り、最後に残った両の拳を握り締める。強く。歩を進める。着実に。
「村崎ゆかり、陰陽師。この《紫蘭》が、一手お相手仕る」
 口元に白紙のトランプ――符の一枚を近づけ、その封印を解き放つ。顕現するは『鎧装豪腕』、巨大なる一対の籠手。正しくは、それを模した式神。彼女の左右に巨大なる前腕のように浮かぶそれにオーラの防壁をさらに纏わせ、鎧装豪腕はそれに応えるようにゆかりを守る盾としてその動きを合わせる。既に巫覡載霊の舞にて神霊体と化した肉体は人間の限界を超える速度と体捌きを可能とし、それと合わせて豪奢なる意匠を纏った薙刀の間合いを保つように巨大な籠手が彼女の盾を務める。
「ハッ! 威勢はいいけどアタシの管理下に入らないなら容赦はしない、噛み殺しちまえ強襲兵ぇ!」
 ばっと広げた灰色の腕の前に、まるで黒い霧が現れたように見えた。けれどそれが一塊のように見えたのは数秒、『強襲兵』と呼ばれた数百もの羽虫が一気に羽音を立て、猟兵達に殺到する!
「――しかし」
 だいたい普段と同じ精神状態になるまで槍に感情を流し戻した鬼桐・相馬が、そのまま青黒く炎を揺らめかせる槍でぱしぱしと羽虫を灼き落としつつ、ちらりと同じようにツッコミを入れたい顔の電子に視線を向ける。
 ちょうど自分に群がってくる羽虫の攻撃を見切って避けて避けて避けて、だいぶ集まった瞬間連続つっぱりでまとめて叩き落とした電子が振り向いた。
「いや、もう、それは聞くなという方が無理だよな」
「全くだね」
 そうだよね。
 聞くよね。
 聞いたら怒るって言われたら聞いちゃうよね。
「あんたの名前……もしかして誰かのクローンなのかい?」
「そも――お前は何人目のクローンなんだ?」
 ――ぐしゃぁ。
 まだ手元に残っていた羽虫の1匹を、ダラキュリア・クローンは自ら握り潰していた。

「はあぁ!? アタシがクローンだって!? 所詮管理されるか処分されるしか能のない階級の奴らと一緒にするんじゃないこの反逆分子どもが! 何人目とか冗談じゃない、クローンで代替が効くような奴らとは違うんだよォッ!」
 ばしん、と地面に振り下ろした踵がついでにもう3匹、羽虫を粉砕する。――巨大化している。彼女の怒りに呼応して、その肉体が一気にその身長も質量も、燃え上がるような戦闘力も増していく。
「おっきい」
 じぃ、と怯えも感慨もそこまでない様子で、イスが緑の瞳でそれを見上げて呟いた。
「ついでに言うと、お前に管理されるなんてごめんだな」
 当然のように相馬と電子、精神的に急所をぶち抜いた2人に怒りを向けるダルキュリア・クローンの様子を冷静な表情で相馬は眺めた。――キレた相手というのは、その増大する戦闘力に比例するように隙が増えやすい。リーチも伸びるが急所の面積も増える。
 す、とゆかりが突撃するダルキュリア・クローンの正面から外れ、道を空ける。あえて挑発したからには、その思惑があるはずだと見送り、すぐに振り返るとその後方を塞ぐようにして巨体の後を追う。
 正面では――電子が、腰を落とし堂々と、その瞬間を待ち構えていた。
「相撲の取りがいはありそうだね! 思う存分やってやろうじゃないか!」
 にぃ、と意識せずとも口の端が上がる。相手は巨体、それに比べればこちらは小兵。しかし相撲にて小柄な力士が活躍した例は、決して少なくなどないのだ。
 長いリーチを利用した斬撃を見切り、潜り込むようにその懐へと飛び込む。完全に踏み込むことができれば長過ぎるダラキュリア・クローンの間合いからは外れ、そして己が肉体を最大の武器とする電子にとってはほぼ触れんばかりの至近距離こそが間合い!
「どすこぉぉぉい!!」
 その勢い、女雷電と人は呼ぶ。
 凄まじい速度と威力で繰り出される張り手が纏うは電撃、伝説の大横綱の名をあだ名とするに相応しく、そして速い――!
「ぐぁああああっ!!」
 悶絶しつつよろめいて、何とか踏みとどまったその軸足を冷静に容赦なく相馬が槍で抉り抜く。避けられるタイミングでも体勢でもないところに一欠片の容赦もなく一撃、そのまま傷を広げるかのように突き刺したままの穂先を跳ね上げる。相手がなんとか体勢を整え、軸足を移して蹴り上げた脚を身体の前で斜めにした槍で受け止めると、その力に抗わず後ろへと相馬は跳んだ。巨大化したヒールが防ぎきれず引っ掻くような傷を刻むが、元より相馬の戦闘スタイルは致命傷でなければ喰らう覚悟だ。
 そして。
「なるほど」
 敵はズボンスタイルではあるが、巨大化したおかげで脛や足の甲の露出が大きい。相馬ががっつりそこを抉ったのを見て、納得顔でイスが頷くと、容赦なく新たな軸足の方に飛び乗った。
 相馬に後ろ蹴りを入れた脚がまだ引き戻せていない状態である。
「いただきます」
 偽神兵器の手で脛に抱きつくように掴まり、両腕両脚の偽神兵器を完全駆使しての生命力吸収、そしてダルキュリア・クローンの剣が斬り飛ばしに来る寸前にひょいっと足の下をくぐって逃げた。踏みに来るところをダッシュで回避、その間に相馬と電子がまた反対の脚を動かす前にしこたま抉って張り手をぶちこんでいた。そちらを狙えば今度はまたイスが飛び乗り、身一つで殴り込みに来たヴィクトリカが脛に思い切り肘を叩き込む。
 本来の等身大であればこうも脚ばかり狙えるはずがないのだが、巨大化したばかりにまず一番狙いやすい部位が脚である。
 とはいえ――間合いを保ちつつ飛翔能力にものを言わせダルキュリア・クローンの攻撃をかわしつつも、潮時かな、とゆかりは全員を見回した。確かに相手にもかなりのダメージを入れているが、攻撃力が上がった相手の攻撃を避け、受ける消耗も大きい。特に注意を引いたり他の猟兵の方に行きそうな攻撃を受け止めたりしつつ、傷を厭わず動く相馬辺りはなおさらだ。
 すっ、と一度下がったゆかりを、鎧装豪腕が剣を受け止めて援護する。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
 派手に炎の咒を籠めた符を投げ、『不動明王火界咒』を続けざまに数発。さらに符を抜き放とうとしたゆかりに、ダルキュリア・クローンの注意が向いたその瞬間。
「その命脈の火、落としてやろう」
 すっ、と相馬が死角になる位置から飛び出した。穂先を真下に向け、既に身体からも傷を埋めて噴き出すと同じ青黒い炎を燃え上がらせた冥府の槍を、叩きつける。狙うはオブリビオンの、その剥き出しになった足の甲。
 ただ単純で、けれど重い。その衝撃はただ敵を穿つだけでなく、直撃した場所を中心に地面にクレーターの1つも作る、『焔落とし』――青黒き業火の落下と道連れに、相手の生命の火すら落とさんとばかりに。
 ――足の甲に。
 だいたい足の親指と人差し指の骨の付け根近くに、割と狙いやすいツボがある。巨大化しているいるならなおのこと。
 そしてツボとは逆に言えば急所だ。
 もはや声にならない悲鳴、さらに勢いで破壊された地面に足を攫われバランスを崩し、挙げ句ゆかりの不動明王火界咒を真っ向から喰らって――けれどそれは本命ではない。不浄を灼き絡みつく炎は牽制だ。
 そう、その時には既に、北斗七星の力を宿した符がダルキュリア・クローンのユーベルコードの力を封じ込めていた。
 巨大化していた肉体が萎んでいく。元の人間大になるだけではあるが、かなりの手傷を負わせた上で、だ。
(ユーベルコードを封じたら、身体の維持も出来ない……とまではいかないか)
 クローンという性質上その可能性はあったが、彼女自身が誰かのユーベルコードによって維持されている、というわけではないのだろう。
「アースクライシスで何度か相対したけど……クローン技術が流出した?」
 ぽつりと呟きつつも、七星七縛符の強制力は維持したままでゆかりが鎧装豪腕を前に出し、再び薙刀の間合いまで距離を詰める。さらにそれより近い間合いまで踏み込み、正面を取ったのはヴィクトリカだ。
「こういう歪んだ支配者気取りは、きっとこの先も現れるわ」
 素早く踏み込み、届かなかった顔面へと拳を叩き込む。ダラキュリア・クローンが体勢を立て直して剣を振るうよりも速く。
「でもね、皆。諦めずに、拳一つでも立ち向かえば――苦しくて血が流れても、人間は受け入れがたい支配を打ち破れるのよ」
 司書格闘術。
 それはかつて彼女が所属した軍事組織『Bunker of Knowledges』にて、一番に学び最も極めた武器。本を傷つけず、敵を制圧する。最終的に、己の手足以上に制御できる武器はなく、智慧と知識によって磨き上げられた肉体と戦技は兵器の領域となる。知識を守る、それを第一義としたがための戦闘術。
 斬撃を受け流しはしたが、かわしきれずに傷は負った。それでも前に出る。右拳はフェイント、半身を取って避けたところで左脛で逆に相手の腿を蹴りつける。膝を崩したところに、今度こそ右手を叩き込む。ただし手刀で、みぞおちに。
「――これで三回、攻撃したわね」
 腕に流れ落ちる血を振るい、校舎まで届けとヴィクトリカは声を張り上げる。
「皆のことはわたしが守る。だから、皆は自分の居場所を自分で守ってみせなさい!」
 戦う姿は、鼓舞となるだろう。
 けれど現実にオブリビオンに立ち向かう時、この世界の住民に、拠点の人々に必要なのは守りだ。己を、大切なものを守るための力だ。いつかこの世界にも転機が訪れ、オブリビオンの暴虐を打ち払うべく戦う時が来ることがあるはずで、その時まで生き抜くために。その先の明るい未来を、生きて迎えるために。
 きっとヴィクトリカの鼓舞は、戦う姿は、この拠点の人々の心の支えとなるだろう。
 そしてこの拠点を救うために、猟兵達が集まった、そのこと自体も、
 等身大となったダラキュリア・クローンに電子がまた容赦のない張り手を叩き込み、さらに衝撃派を纏ったゆかりの鎧装豪腕がラッシュをかける。相馬の一撃で地面はかなり破片と起伏だらけになっているのだが、巨大化していた間にひたすら脚を殴られたダラキュリア・クローンに対して、基本的に重心が低く安定した姿勢の多い相撲の電子と司書格闘術のヴィクトリカ、飛行能力のため特に支障のないゆかり、偽神兵器のおかげもあるが戦い方が根本的に身軽なイス、そして回避に重点を置いていないので足を取られても致命的になりにくい相馬。
 この戦いほぼ脚の話だった気がする。
 ――そしてその中で、絶えず飛び回ったりダッシュしたりと動き回っていたイスが、足を止めた。
「偽神兵器、解放。嵐よ、止まれ」
 チェト・タウエレト。偽神兵器に溜め込んだ全エネルギーを、彼女の中心である偽神兵器;チェトから解放し、真っ直ぐ突っ込み、全力で、殴る。
 圧倒的なパワーの前には、殴るという動作で十分なのだ。
「管理社会も、ダラキュリアとやらのクローンも。お前が最後だといいな」
 ふっ飛ばされた勢いそのままに塵となり消えゆくオブリビオンを、見送るようにそっと相馬が呟いた。

「イスは疲れた。おんぶを要望する」
 偽神兵器として駆動する分の全エネルギーを使い尽くしたイスに残るのは、見た目の年齢相応の身体能力だけである。少なくともまた『たくさん食べる』まで。
 そこに戦いの疲労が加われば、大の字になるのも仕方ない。帰るまでが遠足とか偽神兵器のマニュアルに書いてない。
 相馬が屈んで背中を向けたら、よじ登る体力はまだ、なんとか。
 もう安全だという報告には、ヴィクトリカと電子が校舎へと向かっている。用意してもらった本の受け取りも兼ねて、だ。
「……クローン技術、か」
 ヒーローズアースでの戦いでさんざん戦った相手もクローンを駆使して来たが――ダラキュリア・クローンの消えた跡を見つつゆかりが考える。元々このアポカリプスヘルでは、生き残るためにかなりのいわゆる『禁断の技術』すらも駆使されており、フラスコチャイルドも遺伝子操作されたクローンであるらしいから、その技術自体がアポカリプスヘル特有のものであるかもしれない。が、何らかの形で猟兵達がこの世界にたどり着くより前に、ヒーローズアースとの繋がりが存在した可能性もないではない。現にかの戦いに参戦していたレディ・オーシャンは今サムライエンパイアに居を移しているし、サムライエンパイアでも織田信長が異邦人を異世界から召喚していたし、世界を渡るのは猟兵達のみというわけではない。
 と、考えていたところで校舎からの呼び声に、ゆかりと相馬は振り向いた。イスはもう半分相馬の背中で眠りかけている。
「もらえることになった本が結構たくさんあって……」
「まぁあたしも結構持てるけどさ、もう1人くらい人手が欲しい。どっちにしろ最初に出てきた部屋から帰らなきゃいけないし、2人ともまずは校舎に戻るとしようじゃないか!」
「そういうこと。ならグリモアベースまで一緒に運ぶわ。……12歳の子よりは軽いでしょ」
 後半はイスをおんぶした相馬に向けて言うと、ゆかりは校舎へと駆け出した。何度か瞬きしてから、ふっとほんの小さく頬を緩めて相馬はゆっくりと彼女達を追う。背中のイスを起こさないように。
 拠点内で尽きることない感謝の言葉と住民達の安心した笑顔に送られて――猟兵達はまた、グリモアベースへと戻って行ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月22日
宿敵 『ライホウ』 『ダラキュリア・クローン』 を撃破!


挿絵イラスト