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猟奇探偵は嘲笑う

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #グラッジ弾

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 サクラミラージュ――700年以上も大正時代が続くこの世界は、かつて幾度かの大きな戦乱が起きており、今は禁止されている非人道的な『影朧兵器』の数々が投入されていた。
 その中のひとつに、人間の強い恨みを凝縮して弾丸とした『グラッジ弾』なるものがあった。それをひとたび喰らえば、強い『恨み』を浴びて、周囲に影朧を呼び寄せる存在となってしまうのだ。
 敵側の医療施設を破壊する目的で作られた非人道的な影朧兵器は、帝都が世界統一を機に全て廃棄された……はずだった。

「んで、あたいの予知に引っかかったってわけだよっ!」
 蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)は得意げに声を弾ませながら、グリモアベースに集まってくれた猟兵たちへ、今回の任務の内容を伝達し始めた。

「今回の任務はズバリ、破棄されたはずのグラッジ弾を『幻朧戦線』を名乗る集団の組織員が帝都に持ち込んでくるから、急いで現場に向かって彼らの思惑を阻止してねっ! 『幻朧戦線』の組織員の目印は、『鉄の黒い首輪』だよっ!」
 随分と分かりやすい目印だな?
「でも今の冬の時期はマフラーを巻かれたら隠せちゃうからね、人々の往来の中から組織員を見つけるのは無理だと思う……」
 だから、とレモンは予知の内容を伝達し始めた。

「予知では、転送先のカフェーで組織員の数名が合流するよっ! 全員、肩書は猟奇探偵って名乗るよ。格好は全員、包帯でぐるぐる巻きの全身に厚手のコート、その下は書生スタイル……って、分かるかな? 着物の中に白シャツを着込んで、下は袴姿のあれだよ、あれっ! とにかく、背格好が同じ若い男性が一同に揃うから、店内でも凄く目立つと思うっ! みんなはこっそりカフェーの店内へ潜入して、男たちの動向を監視してほしいなっ!」

 ともかく、まずはその猟奇探偵たちの動向をカフェー内で注視すれば良いのか。
 相手は探偵だ。下手に演技して気取られるよりも、普段通りに自分らしく店内では過ごすべきかもしれない。そのほうが怪しまれないだろう。

「幻朧戦線は、サクラミラージュの平和を終わらせて戦乱の世を呼び戻そうとしているっぽい! そんな企み、みんなの猟兵パワーで絶対に阻止してねっ!」
 レモンの頭上のグリモアが起動すると、猟兵たちはサクラミラージュ帝都のカフェーへと転送されてゆくのだった。


七転 十五起
 なぎてんはねおきです。
 今回の舞台はサクラミラージュ、『グラッジ弾』が引き起こす事件です。

 第一章は帝都の某カフェー店内です。
 包帯グルグル巻きの猟奇探偵たちが店の片隅でたむろしています。
 全員が幻朧戦線の組織員ですが、この中でグラッジ弾を持っているのは1人だけです。
 誰が持っているのかをよく観察・推理しつつ、探偵たちに気取られないようカフェーを満喫して下さい。ここで得られた情報量が多いほど、第二章を有利に進められます。

 第二章はカフェーを飛び出し、帝都で探偵たちを追います。
 第一章で情報を得られるかが勝負です。
 得られた情報量によって難易度が変わります。

 第三章:集団戦です。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 日常 『帝都のカフェーの優雅な日常』

POW   :    ミルクやカステラでばっちり栄養補給!

SPD   :    臨時のボーイやメイドとしてちゃっかり臨時収入!

WIZ   :    最新の雑誌や噂話からきっちり情報収集!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルード・シリウス
グラッジ弾、個人的には獲物を手っ取り早く引き寄せるに便利だから欲しい所だが、そんなものを街中で使うのは感心しねぇな…
そんな訳で、そいつ等から奪還するべく動くとするか

さてと、俺としては食い物と飲み物を注文して食事をしつつ、店内の客の一人として溶け込む形を心掛ける。相手には精々、大食いの客程度の認識を持たせれば十分だろう。気取られそうになれば、おかわりの注文を頼んでやり過ごすとしよう
さて、主に注視する点は仕草だ。どんなに包帯で隠して平静を装ってても、ブツを抱えてる奴はとりわけ無意識に周囲を警戒し、それを確認する仕草を取る筈だ。例えば懐に忍ばせてるなら、そこに手を当てる等してな…



 帝都・某カフェー。
 5人の異様な風体の男たちが、ぞろぞろと店内へ押し入ってきた。
 皆、揃って全身は包帯でぐるぐる巻き、中折れ帽を被り、厚手の黒いコートとマフラーを着用していた。
 此処で働くメイドは恐る恐る5人組に声を掛けた。
「いらっしゃいませ……、今日は、何用でしょうか?」
「軽食だ。席に案内しろ」
「か、かしこまりました……」
 威圧感が籠もった男の物言いに、迷路は思わずたじろいてしまった。
「失礼ですが、皆様は、どういった集まりで……?」
「猟奇探偵の仲間同士だが?」
「さ、左様でございましたか! だから、包帯を巻いてらっしゃる、へぇ!」
 メイドは大方、裏稼業の筋者の会合だと思いこんでいたようだ。
 自称探偵たちはメイドに奥の丸テーブルとソファーに案内されてゆく。
 その一行の動きを、横目で一瞥するのは、先んじて転送されて店内にてチョコレートパフェを頬張るルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)だ。
(まあ、筋者には違いねえよなあ……ただ極道のほうがまだ話がわかるがなあ?)
 ガツガツと掻き込むようにチョコレートパフェを胃の中へ押し込んだルードは、挙手をしてメイドを呼び付けた。
「同じやつを3つ、おかわりだ。あと、オムライスとミルクも寄越せ」
「お客様、それ以上食べるとお身体に触るのでは……?」
「いいから早く寄越せ。俺は腹が減っているんだ……!」
「ひゃっ……! かしこまりました……!」
 ギロリ、と真っ赤な瞳に睨まれたメイドはぶるぶるっと身震いさせると、オーダーを素早く取って厨房へと駆けっていった。
 注文の品が届く間、ルードは気取られないように自称探偵たちの会話や身振り手振りから、危険な禁止兵器『グラッジ弾』を持っている人物を割り出そうと試みる。
(グラッジ弾、個人的には獲物を手っ取り早く引き寄せるに便利だから欲しい所だが、そんなものを街中で使うのは感心しねぇな……)
 今、一堂に会するこの時ならば、まとめて取り押さえる荒業も出来るかもしれないが、ここでグラッジ弾を使用されては面倒だ。
(チッ、なんとか奪還するために動く他ねえか)
 そう考えていた矢先、探偵のひとりと目が合った。
 慌ててルードは雑誌を読む素振りをしてやり過ごす。
 実はさっきのおかわりも、ルードの存在への強い警戒心を感じたからだ。
 それを気取られないように、単なる大食いの変わり者を自ら演じることで警戒心を和らげ、此方の監視の目を向けやすくしたのだ。
(さて、主に注視する点は仕草だ。どんなに包帯で隠して平静を装ってても、ブツを抱えてる奴はとりわけ無意識に周囲を警戒し、それを確認する仕草を取る筈だ)
 注視をしていると、5名のうち3名が、しきりに身体の一部を庇うような動作を見せている事にルードは気が付いた。
(例えば懐に忍ばせてるなら、そこに手を当てる等してな……? つまり、何もアクションを起こさない2名は候補から外していいだろう)
 残る候補は3名。
 未だ、自称探偵たちの会話は世間話に留まっている。
 と、そこへ注文した品々が次々とワゴンに載って運ばれてきた。
「お待たせしました! おかわりのチョコレートパフェを3つ、オムライスとミルクをおひとつずつ、お持ちいたしました! ごゆっくりどうぞ!」
 ルードの眼の前に大正カフェーメニューのオリンピックが開催されてしまった。
「おい、メイド。このナポリタンってやつも急いで寄越せ」
「え……かしこまりました……」
 まさかの追加注文に、メイドは顔を強張らせながら、再び厨房へ戻っていった。
 彼女のみならず、奥にいる自称探偵たちも、ルードの事をヒソヒソと大食いの変な奴だと話しているのを、彼自身が聞き耳を立てていた。
 今一度だけ、ルードは自称探偵たちを見遣る。
 コートを脱いだ彼らの服装は、全て同じ色と同じ材質の書生姿。
 それにに加えて、ほぼ同じ背格好のため、非常に紛らわしい。
(あの3人のうちの誰かなのは確実だ……。まあ、先に頼んだ飯を平らげても遅くはねえか)
 ということで、ルードは注文した食事をパクパクと勢いよく口の中に運び始めた。
 途中、目端に他の猟兵たちが遅れて到着するのが見えた。
 店内を360度、猟奇探偵たちへの包囲網が狭まってゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神代・凶津
『幻朧戦線』だかなんだか知らないが迷惑千万な連中だぜ。
そんな奴らの好き勝手にはさせられねえな、相棒ッ!

まずは店内に入る前に相棒の式神【追い雀】を例の猟奇探偵連中につけるぜ。
こいつは発見されづらい上に五感を共有できるから奴らの怪しい動きも会話も丸裸だぜッ!

後はカフェーの店内で珈琲と甘いものでも頼んで一般客を装っていれば情報収集も楽々って寸法よッ!

それにしても相棒が頼んだ甘いものが旨そうだな。
俺もなんか頼むかッ!
「・・・鬼の面がひとりでに動いたら怪しまれるでしょ、動かないで。」
なんてこった・・・ッ!


【技能・情報収集】
【アドリブ歓迎】


榎木・葵桜
SPD

『幻朧戦線』かぁ
名前かっこいいけど、物騒なこと考えてくれちゃうよね
ともあれ、今の私ができる事、しっかり頑張っちゃうよ!

臨時のメイドさんとして給仕のお手伝いしながら
探偵さん達へ接近・観察してみるよ

私、時々実家のカフェ手伝ってるし
ちょっとは役に立つんじゃないかな
コミュ力・言いくるめ・変装・礼儀作法も活用してみるね

可能なら探偵さん達への給仕役を立候補してみようかな
メイドさん、怖がってるようだし
追加注文とかあるなら私が持っていくね

うまくいけば会話の内容が聞けたり
首元の状況も見えたりするかも?
他にも第六感にかかるものがあるか気をつけてみる

あくまでもメイドさんの職務の範囲内で
無理ないように対応するね


ラリー・マーレイ
迂闊な事したら見破られそうだし、気を引き閉めないと。
普段通りに、か。

普通の学生のふりをしよう。入店前にUC【明瞭の呪文】を使っておく。召喚した使い魔を鞄に忍ばせておくよ。
自然な振る舞いで入店し、空いた席を探す程度に軽く店内を見回し、近い席に座って一番安い珈琲を注文。文庫本を読み始める。
他の客には興味は向けない。
本を読み進めるふりをしながら、使い魔の視覚を共有。件の探偵達を観察。
透視能力を使って持ち物を探ろう。爆弾がどんな形をしてるか分からないけど、爆発物や危険物ならそれなりの慎重な隠し方、持ち運び方をしてるんじゃないかな。安全装置や起爆装置でも判別出来るかも。【第六感】で見当を付けていこう。


的形・りょう
「グラッジ弾、ねえ…」
熱や電気と同じように、感情にもエネルギーがあります。
兵器に使って良いものでは決してありませんが、その技術自体には興味があります。取り戻したら一発くすねられないかな…。

対象は、すられたりひったくられたりしないよう注意を払うはずです。単独では席を立たないようにし、壁を背にできる奥側に座るのではないでしょうか。

しかし、やけに度胸のあるメイドさんですね。もしかして、同業者?

私はそうだなあ…。将校風の格好をして、何か甘い物でも頂くとしましょうか。衣装を手配しないとな…。
いや別に、仮装がしたいだけではなく。仕事のためですよ。

人待ちで周囲を気にしている振りをして、対象を観察します。



 カフェーの店先に、鬼面を被った巫女が佇んでいる。
「ったく、『幻朧戦線』だかなんだか知らないが迷惑千万な連中だぜ。そんな奴らの好き勝手にはさせられねえな、相棒ッ!」
 喋ったのは朱色の鬼面こと神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)だ。
 同意を求める相棒とは、鬼面を被る巫女こと神代・桜の事である。
 桜は凶津の口元を抑えてボソリと呟いた。
「……うるさい。怪しまれるから」
 だが凶津は桜の手を払いのけるように全身(?)を震わせながら喋り続ける。
「へッ! 猟兵の特性を忘れたのか、相棒ッ!? どんな姿形であろうとも、猟兵はそれぞれの世界の住民には怪しまれることはないってなッ?」
「それはそれとして、腹話術みたいにやり取りするのは、恥ずかしい……」
「恥ずかしいってなんだよッ? 俺と相棒の仲じゃねえかッ!」
「やめて……」
 そんな会話を書生風の少年が声を掛けてきた。
「君たちも猟兵なのか? よかった、同行者がいて!」
 声を掛けてきたのはラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)。今はアルダワ魔法学園に籍を置く魔法剣士だ。
 ラリーは軽く自己紹介を済ませると、笑顔で鬼面を見詰める。
「なるほど、ヒーローマスクなんだな。潜入にはピッタリだ。まさか敵は仮面が本体だなんて思わないだろ?」
「だよなァッ! ラリー、気が合うじゃねェかッ! おい相棒! 俺の代わりにラリーと握手してくれよッ!」
「はぁ……凶津、早く行くよ……任務、忘れないように」
 呆れる桜はラリーと握手を交わす。
 ここでラリーはユーベルコードを発動させた。
「迂闊な事したら見破られそうだし、気を引き締めないと。普段通りに、か。なら、探索はコイツに任せよう。ダーウーク・ミームアリフ・ペーイチェー……」
 ユーベルコード『明瞭の呪文(クレアボイアンス)』で呼び出した透明な使い魔の気配に、凶津が何かを閃いた。
「それだぜッ! なぁ、相棒も式神を使えば、奴らの動向を探れるぜッ!?」
「……うん、わかった。……式、召喚【追い雀】、出ておいで?」
 桜が印を結ぶと、雀の式神を呼び出し、自身の肩の上に止まらせた。
 奇しくも2人共、同じ系統のユーベルコードで怪奇探偵たちを監視するつもりのようだ。
「んじゃ、店内では別行動ってことで。お先に!」
 ラリーが入店したあと、数拍置いた後に凶津たちもカフェーへ潜入していった。

 店内では、既に潜入を果たしている将校姿に男装した的形・りょう(感情の獣・f23502)が林檎のジャミ(大正時代ではジャムを『ジャミ』と発音するのがモダンなのだとか)がたっぷりかかったワッフルを堪能していた。
(大正世界にワッフルが存在したんですね。あ、いや、大正が700年以上続くから、UDCアース換算だと、ここは未来世界に相当するんでしたっけ? なんか混乱してきた……)
 だが、ジャミの甘さとワッフルの香ばしい生地の香りに、その混乱も引っ込んでしまう。
(ああ、美味しい。任務のためとはいえ、衣装を手配して変装ができたり、美味しい物を食べられたり、この世界での猟兵の権限って便利ですよね)
 猟兵はサクラミラージュ世界において超弩級戦力として期待されている。そのためか、様々な『サアビスチケット』なる代物が支給されているのだ。
 的形の衣装も、カフェーの支払いも、全てこの『サアビスチケット』の恩恵なのだ。
(いや別に、仮装がしたいだけではなく。仕事のためですよ)
 心のなかで自身に言い聞かせる的形は、熱いコーヒーを啜りながら、ちらりと新たな入店者を見遣る。
(お仲間、ですね。これは心強いです)
 的形は先程から、猟奇探偵たちの挙動をつぶさに観察していた。
(やはり読みどおり、壁を背にできる奥側のソファー席に陣取りましたね。あそこならすられたりひったくられたりする心配はないですし、単独で席を立たないよう、彼らは暗黙の了解で行動しています)
 ここまでは的形の想定内。
 問題は、誰がそのグラッジ弾を持っているか、それを見定めるだけなのだが……。
(観察しているだけだと、怪しいのは2人ですかね? 一向に席を立とうとしない男と、やたらと席を立ってトイレに向かう男……)
 的形はしきりに窓や店内を見渡す素振りをする。
「遅い、あいつはまだ来ないのか……?」
 どうやら遅刻グセのある友人を待つ若い青年将校という設定のようだ。
 やはり将校の格好が功を奏したのか、探偵たちとも眼を何度も合わせるが、文句を言ってこない。
 おかげで存分にジロジロと探偵たちを盗み見ることが出来た。
(う~ん、私の見立てだと2択なんですよね。他の探偵は護衛かフェイクか。それとも同じ背格好を利用してすり替えるのか……)
 頭の中で的形は推理するも、今ひとつ確信を得ることが出来ない。
 次第に思考は、グラッジ弾のことへと向いてゆく。
(熱や電気と同じように、感情にもエネルギーがあります。兵器に使って良いものでは決してありませんが、その技術自体には興味があります。取り戻したら一発くすねられないかな……)
 かくいう的形も、感情の高ぶりによって、生命体に作用する念動力ことアンガーキネシスを最近習得した。これも感情のエネルギーだといえよう。
「グラッジ弾、ねぇ……」
 思わず口をついて出た言葉。
 突然、ソファー席で物音が聞こえた。
 探偵たちの飲んでいたコーヒーカップが床に落ちて割れたのだ。
「大丈夫ですか、お客様!?」
 飛び出してきたのは、腰元まである長い黒髪に、大きなリボンの髪飾りを添えたメイド。
 ふんわりお姫様な外見とは裏腹、快活で元気な口調でテキパキと床に散らばったコーヒーカップを片付けてゆく。
「あの、どうかされましたか?」
 探偵のひとりが肩で息をしているほど狼狽している。
 それが気になったのか、メイドは心配そうに近付いたその時。
「イヤ、なんでもない! 君は新しいコーヒーを持ってきたまえ! ほら早く!!」
「かしこまりました! ちょっとお待ち下さいね?」
 割れたカップをシルバートレイの上に載せ、小さく一礼して踵を返す。
 その様子を一部始終眺めていた的形は確信した。
(きっとあいつですね、グラッジ弾を持っているのは。何度も席を立っていた探偵です。でも口に出しちゃったのは危うかったですね……)
 塞翁が馬という結果になったが、的形は探偵たちにマークされる結果となってしまった。
 その的形の前を、先程のメイドが新しいコーヒーを持って通過してゆく。
「すみません、その後でいいので、注文をお願いします」
「かしこまりましたー♪」
 明るい笑顔を振りまきながら、探偵たちへコーヒーをメイドは差し出した。
(しかし、やけに度胸のあるメイドさんですね。もしかして、同業者?)
 首を傾げる的形へ、メイド……猟兵の榎木・葵桜(桜舞・f06218)が注文を取りに来た。
「お決まりですか?」
「ええ、決まりました」
 短い問答、されど2人はメニューの事を聞いているわけではないと互いに理解している。
 榎木は的形へ顔を近付け、耳元で囁く。
「あの人、確かに黒い鉄の首輪をしています。トイレから出た時、一瞬、マフラーを外したんです。その時、こっそり見ちゃいました♪」
「他の探偵は?」
 的形の問いに榎木は首を振る。
「そこまではちょっと。でも、協力者なのは間違いないです。使命を果たすべく協力を惜しまない、とか何とか言ってますから。引き続き、監視をしたほうがいいですよ?」
「助言、ありがとうございます。それじゃあ、『おすすめ』をください」
「あ、はい! おすすめメニューですね!?」
 的形のアドリブに榎木はメイドの職務を思い出し、慌てて厨房へ戻っていった。

「おすすめって言われても……。う~ん、適当でいいよね?」
 パンケーキに山盛りの生クリームとフルーツを乗せてゆく榎木の元へ、先輩メイドが困惑の声を上げていた。
「あの将校さん、さっきから甘いものをよく食べるね?」
「そうですね! だからもっと甘い物が欲しいだろうな~って!」
 ごまかすように取り繕う榎木。自身が猟兵であることは伏せている。
「でも、助かった。あの不気味な探偵たちの給仕、あなたがやるって言ってくれて。絵面が怖すぎよね?」
「あははは……、透明人間さんたちなのでしょうか?」
 話を合わせる榎木は、内心、考えを巡らせていた。
(『幻朧戦線』かぁ。名前かっこいいけど、物騒なこと考えてくれちゃうよね。ともあれ、今の私ができる事、しっかり頑張っちゃうよ!)
 榎木は持ち前の明るさと礼節、そして人懐っこさを買われて、臨時のメイドとして働かせてもらっている。UDCアースの彼女の実家はカフェを経営しており、時々、手伝いもしているので接客経験もある。
 そしてなにより……。
(ここのカフェーのメイド服が可愛い……♪)
 英国ビクトリア王朝時代に流行したクラシカルなパーラーメイドを模したメイド服は格調高く、まるで生ける家具と言わんばかりの美麗かつ優雅なエプロンドレスが特徴である。しっかりパニエでスカートの中をふくらませることで、裾を踏む心配もない上にシルエットがより可憐になるのだ。
「先輩、あの方たちの接客は任せてくださーい!」
「お願いするわ。あ、それ、あの将校さんの所へ持っていくね?」
 先輩がフジヤマ生クリームパンケーキの皿を的形へ持ってゆく。
 そして引き続き、メイドの職務範囲の中で榎木は探偵たちの動向を見守り続ける。

 その頃、ソファー席にほど近いテーブル席では、ラリーは書生として文庫本を読み耽っていた。
 他の猟兵や客には目もくれず、本当に普段通りにくつろいでいた。
(なんてね? 既に五感は探偵たちの傍にいる使い魔と共有している。このまま“視させて”もらうよ)
 ラリーの放った使い魔には、透視能力が備わっている。
 使い魔の眼は、確かに探偵たちの衣服を透過し、木箱に入った拳銃をその眼に捉えた。
(爆弾じゃない? 弾っていうから爆弾の類かと思ったけど、銃弾なのか……)
 木箱は菓子折りに偽装されており、一見、箱の外観だけでは分からない様になっている。
 だが探偵たちも透視能力の前には方なしである。
「すみません、コーヒー、おかわり」
「かしこまりました、お待ちくださいませ」
 メイドに追加注文をするラリー。
 この店で一番安いコーヒーをあえて頼むことで、一般人を演出する作戦だ。
 と、その時、少し離れた席で、男女の言い合う声が聞こえてきた。

「相棒ッ! 俺にもプリン食わせろって!」
「黙ってて。流石に怪しまれるから……」
 凶津と桜は、相変わらずボケとツッコミのやり取りを行いながら、雀の式神で探偵たちへ探りを入れていた。
「何だよ、カフェーの店内で珈琲と甘いものでも頼んで一般客を装っていれば情報収集も楽々って寸法でッ! かなり情報が集まったじゃねェーかッ! 俺のアイデアだぜッ!? だからプリン食わせろよッ!」
「……お面がプリン食べたらバレるでしょ、静かにして」
 桜は凶津の口の上にコーヒーソーサーを乗せて塞ぐと、注文したプリン・ア・ラ・モードを黙々と頬張り始めた。
 無口な桜だが、プリンのとろけるような甘さに目を輝かせ、思わず口角が釣り上がる。
「……美味しい」
「オゴオゴ、オゴゴゴ、ゴゴゴ!(なんだよッ! どかせよ、コレッ!)」
「……動かないで、凶津」
「オゴゴゴ!オゴ、ゴゴゴフゴゴ!(もういいッ! 俺も、なにか注文するぜッ!)」
「……だから、鬼の面がひとりでに動いたら怪しまれるでしょ、動かないで」
「オゴ……!(なんてこった……ッ!)」
 しょげる凶津だったが、雀の式神で共有した視力が探偵たちの異変を映し出した。
 皿を払い除け、すかさず桜の頭に装着する凶津。
「相棒ッ! 追跡準備だぜッ! 探偵たち、勘定を卓において逃げやがるぞッ!!」
「……凶津のせいでバレたんじゃ?」
「俺のせいかよッ!? 違うぜ、相棒ッ! そろそろ最寄り駅で汽車が出る時刻だッ! 窓から遠く、汽車の煙が見えるだろうッ!? まずいぜ、このまま更に帝都の中心街の駅でグラッジ弾をぶっ放されたらッ!」
「……追うよ、凶津!」
 凶津と桜が席を立つ。
 ほぼ同時に、猟兵たちが店を出た探偵たちを追うべく立ち上がる。
「すいません、先輩! 私、実は猟兵なんです! ちょっと行ってきます!」
 榎木もメイド服のまま、店を飛び出して探偵を追い掛け始める。
 グラッジ弾を持つ探偵の特徴を掴んだ猟兵たちは、必死に追跡を開始し始めたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『探偵を尾行せよ!』

POW   :    尾行がバレた! 逃げる探偵を一直線に追いかける!

SPD   :    屋根の上を跳びながら尾行する。

WIZ   :    使い魔を放ったり、索敵魔術などで位置を特定する。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 探偵たちは巧みに障害物や人混みを使い、時に裏路地を駆使して猟兵たちの追跡をまこうと必死だ。
 5人は散り散りになって逃走を始め、駅で合流する腹づもりなのだろう。
 既に此方の尾行はほぼバレていると思って構わない。
 だからこそ、警戒してグラッジ弾を持った探偵を見つけ出さねばならない。

 ひたすら目の前の探偵を追い掛ける事も大事だが、素早さを活かして屋根伝いにショートカットをして先回りしたり、ユーベルコードや魔術で居場所そのものを特定したりする方法もあるだろう。

 とにかく、グラッジ弾を持つ探偵を駅に近付けさせてはならない!
 猟兵たちと探偵の逃走合戦が、今、幕を開ける!
鳴夜・鶯
「この状況で、ココを固めないわけないじゃん?」

ボクはカフェには行かずに
「帝都桜學府」の面々に協力を要請、
駅周辺に包囲網を敷いて有事の際は避難誘導をお願いしておきます
「超弩級戦力」ばかり期待されても困るし
彼らにも仕事をしてもらいましょう
ベンチに腰を下ろしながら、てきぱきと指示を出して行きます

で、ターゲットは、全身包帯でぐるぐる巻き…
中折れ帽を被り、厚手の黒いコートとマフラー…
ボクなら、一度物陰に隠れて着替えるね

さて変装解除の可能性も念頭に置いて
カフェの出口に待機させて置いた
ユーベルコード「魑魅魍魎」で作った式神達にカフェから追跡させます
(*水ベースの飛行可能な小鳥形、視覚共有、自爆能力付き)


ラリー・マーレイ
引き続き【明瞭の呪文】を維持。あんなもの使わせる訳にはいかないよ。絶対に食い止めないと。

使い魔を上空に飛ばすよ。空から俯瞰して、グラッジ弾を持っていた探偵の居場所を透視を併用しながら追いかける。
……いや、違う。相手は探偵だ。持ち換えや変装で攪乱されるかも。
透視して追いかけるべきなのはグラッジ弾そのものだ。この使い魔は基本機能として対象を追尾する。拳銃に視点をロックオン。絶対に見失わない様に。

更に上空からの俯瞰で対象周囲の地形を把握。相手の逃げるルートを確認して追跡し、先回りだ。壁が邪魔なら【蟷螂の籠手】から飛ばしたロープで【ロープワーク】【ジャンプ】で乗り越える。
仲間とも連携して追い詰めるよ。


神代・凶津
ちっ、逃げ足の速い連中だ。だが逃がしゃしないぜ。
生憎と鬼ごっこは得意なんでなッ!

「・・・急いで捕まえないと。」
おっと相棒、焦る気持ちは分かるがこういう時こそ冷静にだぜ。
まずは奴らの位置を特定しないとな。
走りながら、相棒の式神【捜し鼠】をばら蒔いて奴らの位置の情報収集するぜッ!

見付けたら障害物や人混みの流れを見切って避けながら距離を詰めるぜ。
距離を十分詰めたらユーベルコード【結界射ち】で狙い打って動きを封じてやる。

さっさとグラッジ弾所持している奴をふん縛って、さっきのカフェーのプリンにありつきたいものだぜッ!


【技能・情報収集、見切り、スナイパー】
【アドリブ歓迎】


ルード・シリウス
やれやれ…遂に、というよりやっと動き出したか
お陰で、動き出すまでに腹ごしらえは完了済みだ。食後の運動と洒落込もうぜ

◆行動
追跡は自分と他の猟兵達のやり取りで得た情報から特定出来た一人を追う。服装が同じだから違う可能性もあるだろうが、それはそれで構わねぇ。その時は頭数を確実に削ってしまえばいいからな

さて、尾行というより…狩猟の要領で行かせて貰うぜ
俺達を巻こうと動いても、基本的に目的地から外れる真似はしない
つまり、目的地へ通じるルートを逆算し、奴等が通る可能性の高い道を絞って先回りから物陰に潜む。その際、外套や靴の能力を駆使し音と気配を殺す
奴等が思惑通り、上手くやってきたら奇襲を仕掛けようか


的形・りょう
走り去る悪党やら同業者を、店先で見送ります。
「おーおー、走れ走れ」
脚の速さには自信があるので、食事を完食してから追いかけても遅すぎるということはないでしょう。店の方に一言詫びてから、席に戻りました。

私だったら、走って逃げる奴を囮にして、どこかに隠れてやり過ごしてから移動しますが…。
「そうだ」
珈琲の波紋を見て、良い事を思い付きました。

私の念動力は、対象に作用すると、こちらにも手応えが返ってきます。
それをアクティブ・ソナーのように使って、コソコソとおかしな動きをしている反応を見つけ、足止めします。
全然違う人物かもしれませんし、対象がカンのいい奴だったら気取られてしまうでしょうが、ものは試しです。


榎木・葵桜
WIZ

散り散りで逃走とか、尾行をまくのに長けてるって感じがして
流石は探偵さんってとこだけど
私も負けてられないよ!

あの外見だし距離離されても見失うことってまずなさそうだけど
追いすがるんだったらやっぱり【影の追跡者の召喚】かな
対象を一人定めて、探偵さんの位置をある程度把握できたら
動きを予測しながら先回りして桜花車(達磨自転車)とともに待機してみるよ

目的地が駅なら、到達までの経路ってある程度決まってくると思うんだ
影の追跡者で見えた探偵さんの現在地を地図を使って照らし合わせて…ここかな?

うまく先回りできてたら
桜花車で通せんぼ試みるね

さぁ、貴方達の悪巧みもここでおしまい!
大人しくお縄についてもらうよー!



 かくして、猟奇探偵たちはカフェーから散り散りになって逃げていった。
 それを追うのは猟兵たち。
 まずはラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)がユーベルコードによって追跡を開始する。
「大変だ、あんなもの使わせる訳にはいかないよ。絶対に食い止めないと。ダーウーク・ミームアリフ・ペーイチェー……」
 カフェーの店内でも活躍した『明瞭の呪文(クレアボイアンス)』の使い魔は、半径52kmを透視できる不可視の存在だ。
 それだけの範囲があれば、駅までの距離は充分に追跡可能である。
「使い魔、空から探偵を追ってほしい。目標はグラッジ弾を持つ探偵だよ」
 召喚者の命を受け、不可視の使い魔は帝都の空を飛んでいった。
「……いや、違う。相手は探偵だ。持ち換えや変装で撹乱されるかも」
 慌ててラリーは追跡する対象を変更する。
「透視して追いかけるべきなのはグラッジ弾そのものだ。この使い魔は基本機能として対象を追尾する。拳銃に視点をロックオンするんだ。絶対に見失わない様に」
 ラリーも全力で帝都の往来を疾走してゆき、探偵たちを必死に追い掛けてゆく。

 ほぼ同時に、此方も式神を放つのはヒーローマスクの神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)とその相棒の神代・桜だ。
「ちっ、逃げ足の速い連中だ。だが逃がしゃしないぜ。生憎と鬼ごっこは得意なんでなッ!」
「……急いで捕まえないと」
 走り出そうとする桜。
 だが、凶津は身体の支配権を奪い、桜を店先に留めた。
「……やめて。はやく追い掛けないと」
「おっと相棒、焦る気持ちは分かるがこういう時こそ冷静にだぜ。まずは奴らの位置を特定しないとなッ?」
「……そういうこと。わかった」
 凶津は身体の支配権を桜に返すと、桜は弾かれたように前へ飛び出していった。
 そして走りながら素早く両手で印を結び、式神を召喚する。
「……式、召喚【捜し鼠】」
 現れた57匹の鼠型式神が帝都のそこかしこに散らばってゆく。
 それを眺めた凶津は満足げに声を上げた。
「そういうことだぜ、相棒ッ! あとは集めた情報でグラッジ弾を持ってる探偵の居場所を特定するだけだなッ!」
「……これからどうするの?」
 桜の問いに、凶津は黒焔が上がる方向を向いた。
「探偵どもは駅へ向かうはずだ。情報が集まるまでは、俺たちも駅へ向かおうぜ、相棒ッ!」
「……わかった。どうする? 身体、使う?」
 桜の申し出に凶津は数瞬だけ沈黙する。
 そして、凶津は桜の顔に、吸い付くように張り付いた。
「――すまねえ、相棒ッ! 大事に扱うから許してくれよッ?」
 鬼面を被った桜、もとい凶津は、まさに鬼神のごとく帝都を駆け出し始めた。
「おら、退いた退いたァーッ! 超弩級戦力サマのお通りだぜッ!」
 その脚力は、まるで空を飛ぶが如し。
 人混みの中を疾風のようにすり抜け、時には障害物を乗り越えて壁を蹴って本当に宙を駆け抜けてゆくではないか。
 桜の身体と意識を完全に凶津がコントロールしたおかげだろうか、彼の技能を十全に発揮する事ができた結果である。
「クソッタレッ! さっさとグラッジ弾を所持している奴をふん縛って、さっきのカフェーのプリンにありつきたいものだぜッ! あらよッと!!」
 郵便ポストを飛び越えた凶津は、プリンへの渇望が追跡の原動力となっているようだ。

 そして、ここにもユーベルコードで追跡を試みる猟兵がいた。
「もーっ! 散り散りで逃走とか、尾行をまくのに長けてるって感じがして流石は探偵さんってとこだけど! 私も負けてられないよ!」
 車輪の軸に桜の花の形の飾りをあしらった、灰色がかった明るい紫色の達磨自転車に飛び乗る榎木・葵桜(桜舞・f06218)。
 愛車である桜花車には電動モーターが備わっており、自転車と名が付けど出せる速度は侮れない。
 最高時速は時速60kmだというのだから、ほぼ自動車と謙遜ない速度で移動できるのだ。
「って、あれ? 探偵さんたち、どこいっちゃったのー!?」
 慌てて飛び出したせいか、それとも探偵たちのスキルが勝ったのか、榎木は目標を失ってしまった!
「どうしよう! あの外見だし距離離されても見失うことってまずなさそうって思ってたけど! 追いすがるんだったらやっぱり『影の追跡者の召喚』かな?」
 榎木は影の追跡者(シャドーチェイサー)を召喚すると、周囲にいるはずの探偵の捜索を行わせはじめた。
「五感が共有されてるし、さっきの首に黒い鉄の首輪をしている探偵さんを見つければ……」
 と、その時、町内掲示板の前を榎木は素通り仕掛けた。
 そこに描かれているのは、最寄り駅を含んだ、この町内の詳細な地図だ。
「これだー!?」
 榎木は閃いたとばかりに、その地図に釘付けになるのだった。
「目的地が駅なら、到達までの経路ってある程度決まってくると思うんだ。だったら、先回りできちゃうよね?」
 地の利を活かすことで、探偵たちの行く手を先回りしようと思い付いたようだ。
 と、その時、影の追跡者が幸運にも、黒い鉄の首輪をしている猟奇探偵の姿を発見した!
「私ってばラッキーだね! 今、この辺りだから、影の追跡者で見えた探偵さんの現在地を地図を使って照らし合わせて……ここかな?」
 先回りポイントを割り出すことに成功した榎木は、やる気満々で桜花車を漕ぎ出す。
 榎木の姿を目撃した通行人は、スカートを翻して全速力でだるま自転車を漕ぐメイドさんという非日常的光景に圧倒されてしまっていた。

 一方、カフェーから猟奇探偵たちを追う猟兵の中には、榎木のように先回りを考える者もいた。
「やれやれ……。遂に、というよりやっと動き出したか」
 ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)はレジに『サァビスチケット』を乱雑に捨て置くと、席を立ったその場で背伸びをした。
「お陰で、動き出すまでに腹ごしらえは完了済みだ。食後の運動と洒落込もうぜ」
 ニタリ、と笑みを浮かべると、カフェーを飛び出した。
 そして、近所の塀にパルクールめいてよじ登ったかと思えば、そのまま民家の屋根に飛び乗ったではないか!
「さて、尾行というより……ここからは狩猟の要領で行かせて貰うぜ」
 ダンッと瓦を蹴って跳躍すると、隣の建物の屋根へと飛び乗った。
 そのまま屋根伝いに、駅までの道程を最短距離で突っ切ってゆく!
「俺達を巻こうと動いても、基本的に奴等は目的地から外れる真似はしない。つまり、目的地へ通じるルートを逆算し、奴等が通る可能性の高い道を絞って先回り、からの物陰に潜んで待ち伏せだな」
 ある意味、一直線に探偵たちを追い掛けることには変わらない。
 むしろ、誰よりも最短距離を突き進んだ結果、いち早く最寄り駅にルードは到着することが出来た。
「捕まえるやつは、カフェーでビビってたあの探偵だ。全身包帯でぐるぐる巻き、中折れ帽に厚手の黒いコートとマフラー。服装が同じだから違う可能性もあるだろうが、それはそれで構わねぇ。その時は頭数を確実に削ってしまえばいいからな」
 そう呟いたルードは、駅に通ずる大通りまで先回りすると、そこで行われていた光景に目を見張った。
「……なんだ? 一体、何が起きてやがる……?」
 目の前の最寄り駅が、まだ日も高いというのに一般人がどこにもいない、ほぼ無人となっていたのだ。

 最寄り駅は、端的に言うと封鎖されていた。
 一般人の立ち入りは禁止され、周囲には帝都桜學府の学徒兵たちが目を光らせているではないか。
「あー、みんなご苦労さま。グラッジ弾を持った探偵は、順調に此方へ向かっているよ」
 ベンチに座って学徒兵たちに告げるのは、桜の精の鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)である。
「まあ、『超弩級戦力』ばかり期待されても困るし、偶には君たち帝都桜學府にも仕事してもらわないと」
 つまり、この駅の封鎖は彼女の差し金であった。
「駅周辺に包囲網を敷いて有事の際は避難誘導。グラッジ弾事件は乱戦になるから、一般人が巻き込まれないように配慮しないとだよね」
 鳴夜は以前にもグラッジ弾事件に関わり、その顛末を見届けている。
 その経験則からであろう、帝都桜學府に被害拡大防止を訴えて人員を割いてもらえたのは僥倖であった。
「で、ターゲットは、全身包帯でぐるぐる巻き……。中折れ帽を被り、厚手の黒いコートとマフラー……。ボクなら、一度物陰に隠れて着替えるね」
 うんうん、と自前の推理を披露して自分で合点が行く鳴夜。
 だが、カフェに行かなかった鳴夜が、なぜ今回の事件の動向を探ることが出来たのか?
「さっきから座って、私達を顎で使ってばっかりで、あなたこそ仕事はしないんですか?」
 袴姿の女学生の学徒兵に文句を言われた鳴夜。
 それに鳴夜は呆れた様子で肩を竦めた。
「判ってないなぁ。既にユーベルコードで首謀者を追跡中だよ」
「そう、なのですか?」
 キョトンとする女学生に、鳴夜は掌を差し伸べた。
 その掌の上には、水で出来た小鳥が乗っていた。
「鳴夜流ー式術ー、魑魅魍魎ー。万が一、着替えて変装されたりしても、ボクの式神はこの周囲に配置済みだからお見通しだよ」
 系統としてはラリーと同じユーベルコードである。
 ……本当はカフェーから追跡したかった。
 だが、このユーベルコードの射程距離は、レベルm半径内である。
 鳴夜ならば半径61m以内の無機物の操作に限る。
 それを超える範囲外の無機物は、例外なく元の物質に戻ってしまう。
 ラリーは追跡しながらなので、自身を中心とした射程外に探偵たちが逃げても、頑張って追跡すれば再び射程内へ収められる。
 しかし、始めから駅に張り付いていた鳴夜にはそれができないのだ。
 そして、カフェーに向かっていない鳴夜が事件の概要を知ったのは、実はついさっきのこと。
 ルードのつぶやきを式神が拾い、五感を共有している彼女がついさっき知った情報だったのだ。
 だから、正確に言えば、グラッジ弾を持っている探偵を鳴夜自身は補足できていないのである!
 つまりハッタリなのだ!
 だが、そうとは知らない女学生は、羨望の眼差しを鳴夜に向けていた。
「すごいです! さすが超弩級戦力……!」
「いやあ、それほどでもー」
 内心、早く探偵が来てくれないかなぁと、大通りに配置した式神の視界を通して必死に探す鳴夜である。
 とはいえ、駅周辺の道路の封鎖は探偵たちに思わぬ進路変更を余儀なくさせ、他の猟兵の追跡の手助けになったことは非常に有利な点である。
 その点では、鳴夜の行動は大成功と言えよう。

 そんな事が起きているとは露知らず。
 最後にカフェーを後にしたのは的形・りょう(感情の獣・f23502)だ。
「おーおー、走れ走れ」
 探偵たちと猟兵たちを見送った的形は、目の前のフジヤマ級生クリームのフルーツパンケーキをゆっくりと堪能していた。
「脚の速さには自信があるので、食事を完食してから追いかけても遅すぎるということはないでしょう。ふう、ごちそうさまでした」
「あ、あのう……一体、何が??」
 メイドが困惑しきった表情で的形に尋ねてきた。
 的形だけは、最初からメイドだけに自身が猟兵であることを打ち明けていたのが故だろう。
「ああ、すいません。あの探偵たち、悪い奴等でして。お騒がせしてすいません。あと半刻もあれば事件は解決できると思うで、ご安心ください。あ、食後のコーヒーを」
「よ、余裕ですね!? ブルーマウンテンの良い豆が入ったので、如何です?」
「こんな時に商売上手ですね、メイドさん……」
 的形は苦笑しながらも効果なブルマンのコーヒーを一杯頂くため、席に戻った。
 コーヒーが入れ終わるまでの間、的形は思考する。
(私だったら、走って逃げる奴を囮にして、どこかに隠れてやり過ごしてから移動しますが……それを探し出すには……)
 腕を組んで頭を悩ませる的形の前に、メイドが香り高いブルマンのコーヒーを運んできた。
「お待たせしました。急いだほうが良いとは思いますが、ごゆっくり?」
「ありがとうございます。……ん?」
 的形は差し出されたコーヒーの水面を凝視していた。
 そこには、波打つコーヒーの波紋が描かれていた。
「そうだ」
 的形は顔を上げた。
 そしてコーヒーをそれなりに急いで堪能すると、メイドにこう告げた。
「メイドさんのおかげで、いい方法を思い付きました。事件が解決したら、また戻ってくるので、お代はツケで」
「はい、お待ちしていますね? 行ってらっしゃいませ!」
 よもやメイドに笑顔で送り出されるとは思ってなかった的形は、己に眠る狼の血と怒りの衝動を昂ぶらせると、脇目も振らずに猛ダッシュしていった。
(狼は鼻が利くんですよね。追跡を振り切れると思ったら大間違いですよ?)
 時折鼻をひくつかせ、迷いなく分かれ道を選んでゆく。
 すると、あっという間に前方に包帯を解きながら駆けってゆく猟奇探偵の姿を捉えた。

「そこまでだ!」
 ラリーが蟷螂の籠手から魔法のロープを射出し、まるでサーカス団めいてワイヤーアクションで猛追してゆく!
 逃げる猟奇探偵の首には、黒い鉄の首輪!
 いくら包帯を解いて透明になろうが、黒い鉄の首輪は自力で外すことができず、却って目立ってしまう。
 それに気付いた探偵は、包帯を解くのを止めて逃走に注力しだした。
 だが、その行く手を『コノ先、通行止め』の看板が塞ぎ、進路変更を強いられてしまう。
「何なんだ、今日は!? どうしてこんなに交通規制が!?」
 当惑する探偵の眼の前に、突然、ルードが建物の屋根の上から強襲!
「うおおっ!?」
 探偵は全身の筋肉をよじって、間一髪、ルードの剣撃を飛び退いて回避!
「チッ! 意外とすばしこいな……!」
 魔剣の切っ先を探偵へ向けるルード。
 探偵は踵を返し、別の曲がり角を曲がろうと試みる。
 だが、そこへだるま自転車に跨ったメイドさんが滑り込んできた!
「さぁ、通せんぼだよ! 貴方達の悪巧みもここでおしまい! 大人しくお縄についてもらうよー!」
「くっ! こっちもだめか!?」
 ならば、と背中にそびえる民家の生け垣を突き破ろうと突っ込んでゆく探偵!
 枝が突き刺さって無事では済まないだろうが、このまま住民を人質に取られる危険性もある!
 猟兵たちがそうはさせるかと足を進めた、その時だった。
 スドンッと探偵の目の前が突如として大爆発!
 生け垣もろとも探偵は吹き飛ばされ、再び猟兵たちの包囲網の中へ押し戻されてしまった。
「やれやれ、なんとか面目を保てたねー」
 駅のベンチからようやく腰を上げた鳴夜が、式神を自爆させたのだ。
 そうとは知らない探偵は、満身創痍で狼狽える。
「く、来るな! こっちには、グラッジ弾があるんだ、ぞ……?」
 懐に手を差し入れようとした探偵の動きが急に止まった。
 その背後、遠くから異様な圧力を放つ的形が歩み寄ってきていた。
「アンガーキネシスα……。苦しむ暇があるくらいには、手加減するよ」
 これは、彼女のユーベルコードだ!
 10秒間増幅させた指向性の感情波により、2.8km以内の視認している対象を、押し潰す重圧感で拘束し、窒息感や恐怖感で攻撃するのだ。
(私の念動力は、対象に作用すると、こちらにも手応えが返ってきます。それをアクティブ・ソナーのように使って、コソコソとおかしな動きをしている反応を見つけ、足止めします。全然違う人物かもしれませんし、対象がカンのいい奴だったら気取られてしまうでしょうが、どうやら本人のようですし、同業者の活躍で我を失っているようですね。好都合です)
 思惑がガッチリとハマった的形は、心の中でガッツポーズ!
 そして彼女は探偵に分からせるべく、更に言葉の圧を強める。
「怒れる人を目の前にすると、足が竦んだりするだろう? 今、お前が体感しているのは、それの1000%のやつだ」
「く、来る、な……! ゼーッ! ハーッ!」
 恐怖からか、肩で荒い呼吸をする探偵。
 と、そこへ、追い打ちをかけるべく凶津が駆け付けてきた!
「やっちまえ、相棒ッ!」
 凶津は身体の支配権を桜に戻す。
「……捕らえた。そこ」
 桜は破魔弓から結界霊符を結んだ矢を放ち、探偵を呪縛結界の内部へ閉じ込めてしまった!
「ちくしょう! もう少しで、悲願が達成できたものを!」
 悔しがる猟奇探偵。
 猟兵たちはこれで一件落着、と安堵しきっていた。
 ……その時であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員』

POW   :    怪奇「豹人間」の力
【怪奇「豹人間」の力】に覚醒して【豹の如き外見と俊敏性を持った姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    怪奇「猛毒人間」三重奏
【怪奇「ヘドロ人間」の力】【怪奇「疫病人間」の力】【怪奇「硫酸人間」の力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    怪奇「砂塵人間」の力
対象の攻撃を軽減する【砂状の肉体】に変身しつつ、【猛烈な砂嵐を伴う衝撃波】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 結界内で身動きが取れない猟奇探偵……否、『幻朧戦線』構成員が急に嘲り笑う。
「クク、カハハ……アハハハハハハハハハハハ!!」
 気でも触れたか、と猟兵のひとりが冷笑を浮かべる。
 しかし、探偵は至って正気であった。
「確かに! 帝都の中心部での作戦決行は阻止された! だが、僕の手元にグラッジ弾がある限り、作戦自体はいつでも決行出来るのだーッ!」
 探偵は懐から菓子折りの箱を取り出し、乱雑に中身……リボルバー銃を掴み取った。
「この世界は腐っている! 平和という毒に侵され、過去の罪を忘却しようとしている! 僕はそれが許せない! この世を再び戦乱の世に戻し、過去の英雄たちの勇姿を現代に蘇らせるのだ! 闘争こそ、この世の総てを進化させる、原動力だーッ!!」
 到底、受け入れがたい思想を喚きながら、探偵は自らのこめかみに銃口をあてがう。
 ――まさか。そんな、馬鹿な!?
「幻朧戦線にィィィ! 栄光あれッ! バンザーイッ!!」
 タンッタンッタンッ!
 銃声が立て続けに3発、駅前の大通りに轟いた。
 探偵の頭部は銃撃によって吹き飛び、頭蓋骨の中身を地面に撒き散らして死んだ。
 だが、探偵の身体を蝕むように、強い恨みが周囲に発散されてゆく!
 まるで、深淵から這い出るように出現したのは、かつての帝国兵……しかも、怪奇人間の突撃兵部隊員たちであった。
 怪奇人間の猟奇探偵を贄としたからであろうか、影朧たちも同じような性質の存在を引き寄せてしまったのであろう。
 そして、過去の英雄たちとは、彼らのことなのだろう。

 またたく間に結界は破砕され、大通りに影朧たちが爆発的に蔓延ってしまった!
 このまま放置すれば、いずれ一般人に被害が及ぶ。
 さぁ、猟兵たちよ、武器を取れ!
 なんとしても、影朧たちの軍勢を水際で食い止めなければ!!
シホ・エーデルワイス(サポート)
助太刀します!


人柄

普段は物静かで儚げな雰囲気ですが
戦闘時は仲間が活躍しやすい様
積極的に支援します


心情

仲間と力を合わせる事で
どんな困難にも乗り越えられると信じています


基本行動

味方や救助対象が危険に晒されたら身の危険を顧みず庇い
疲労を気にせず治療します

一見自殺行為に見える事もあるかもしれませんが
誰も悲しませたくないと思っており
UCや技能を駆使して生き残ろうとします

またUC【贖罪】により楽には死ねません

ですが
心配させない様
苦しくても明るく振る舞います


戦闘

味方がいれば回復と支援に専念します
攻撃は主に聖銃二丁を使用


戦後
オブリビオンに憎悪等は感じず
悪逆非道な敵でも倒したら
命を頂いた事に弔いの祈りを捧げます


リク・ネヴァーランド(サポート)
「大丈夫、“僕たち”が来た!」
うさぎ人の住む不思議の国、ラパンドール王国の元王子様です。
魔法の本の中に王宮を封じ込めることにより、王国と国民を携帯している状態にあります。
本の中から国民や過去助けた愉快な仲間達を召喚したり、剣を用いたりして戦います。

利発そうな少年といった口調で話し(僕、~さん、だね、だよ、~かい?)、年上の人や偉い人には敬語を使います。戦闘中は凛々しく台詞を言い放つことも多いです。

ユーベルコードは設定したものを何でも使いますが、命よりも大切な魔法の本に危害が加えられる可能性がある場合は本を用いず、自分自身の力で何とかしようとします(他の猟兵と連携が取れそうなら取りに行きます)。



 駅前の大通りに溢れかえる影朧――かつての大戦で活躍した旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員たちが周囲を見渡す。
 彼らは自分たちが地面に転がる頭が半分吹き飛んだ死体の意思によって呼び出されたことを理解すると、オブリビオンの破壊衝動のままに暴れ始めた。
「帝都に……再び戦乱を呼び戻す!」
「そうはさせません!」
「そうだよ、そのために“僕たち”が来た!」
 助っ人に駆け付けたオラトリオのシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)、そして時計ウサギの元・王子様のリク・ネヴァーランド(悠久ノ物語・f19483)が、影朧たちの前に立ち塞がる。
「ここは私達が抑えます。皆様は、まず残った駅周辺の野次馬たちの避難をお願いします」
 シホは後ろに控える猟兵たちへ告げた。
 そして、すぐさま騒ぎを聞き付けて集まった民間人たちの避難を促し、リクへと目配せ。
「攻撃は、私が一手に引き受けます。その隙に攻撃をして下さい」
「わかった、と言いたいところだけど……」
 リクはゴクリと喉を鳴らした。
「これは僕には少々、肩の荷が重すぎるかもしれないね」
 目の前の影朧たちは、豹人間と砂塵人間へとその身体を変えてゆき、四方八方から押し寄せてきそうな雰囲気だ。
 シホに比べ、まだまだ猟兵としての活動が浅いリク。
 対して、敵は英雄とまで評された軍隊。
 正直、正面からの激突では力負けしてしまうのは、リク自身が理解している。
 だが、それでもリクは腰元の聖剣ヴォーパルブレードを天に掲げ、左手で魔法の本……リクの故郷であるラパンドール王国を内部に封じ込めた“悠久ノ物語”を広げて、語らかに名乗りを上げた。
「僕の名前はリク! クロムリク・ラパンドール・フォン・ネヴァーランド! うさぎ人たちの暮らす不思議の国、ラパンドール王国の元王子だ! この生命より大事な魔法の本……僕の“王国”は絶対に守る! そして、この世界の人々も守ってみせる!」
「自ら弱点を晒すとは。マヌケな王子様だ」
 砂塵人間たちの体積が膨張し、周囲に砂嵐を伴った衝撃波を撒き散らし始めた。
「そのまま飲み込んで、小汚い本もろともズタズタにしてくれる!」
「リクさん……!?」
 シホがカバーリングを行うべく駆け寄るが、その行く手を豹人間に遮られてしまう。
「お嬢さんは俺たちの相手をしてもらおうか」
「申し訳ありませんが、それは後ほど……」
 シホは豹人間を左右にジグザグに揺さぶった後、その頭上を飛び越えてリクを抱きしめる。
「危ない……っ!」
 リクが砂嵐に飲み込まれる寸前、シホがリクに覆い被さり、魔法の本を衝撃波から身を挺して庇う。
 斬り刻まれるシホの全身に全方位から砂塵と衝撃波が打ち付けられる!
 更には、豹人間たちの爪や牙による追撃がシホの身体を引き裂いてゆく!
 首元から撒き散らされる聖者の鮮血が、彼岸花の花弁めいて飛び散った!
「もういい! 本を守ってくれたことは感謝します! 僕も戦えますから! これ以上は、あなたが!?」
 青ざめるリクへ、慈愛の笑みを浮かべるシホ。
「……大丈夫、です。慣れて……ます、から」
 リクだけではない。シホは影朧たちへも同様に自愛の笑みを浮かべるのだ。
「私はあなたを許します」
 そう告げた次の瞬間、シホの身体から流れていた出血がピタリと止まり、傷がたちまち癒えてゆくではないか!
 これこそが、シホのユーベルコード『【贖罪】償いの時間(ラクニハシネナイノロイ)』なのだ!
「……大丈夫です。私は、総てを受け止めます」
 血塗れだったシホが何事もなかったかのように佇むと、周囲がざわ……と騒がしくなる。
「な、なんだ、コイツ……!?」
「あの出血量で、なんで死なない!?」
「頸動脈を断ち切ったはずだ、生きていられるわけがない!?」
 困惑する影朧たちの動きが鈍る。
 その時、庇われたリクが奥歯を噛み締めながら立ち上がった。
「なんて無様だ……。僕は、目の前の女性ひとりすら守れないだなんて。自分自身に腹が立つ!」
 聖剣ヴォーパルブレードを振り上げ、再び砂塵に変わる前に影朧たちを次々とリクは切り捨て始めた。
 その剣筋は、一太刀ごとに鋭くなり、また速度が増していった。
「認めよう、僕はまだ弱い! 猟兵の実力は、まだまだ駆け出しだよ! だから、危険を承知で頼みたい! この未熟な僕に、みんなの力をの力を貸してほしい!」
 その言葉と共に、左手の中の魔法の本が輝き始める!
「ユーベルコード! 悠久ノ物語(キングダム・カム)! ありがとう、みんな……!」
 魔法の本の中から、長槍を携え鎧甲冑を纏ったうさぎ人の騎士団が出現!
 すぐさまリクとシホの周囲を盾で守るように取り囲んだ。
 これは……重装歩兵の集団戦術、ファランクス!
「無礼者! 王子に刃向かう賊どもめ!」
「王子! ここは、我らにお任せを!」
「どうか、御下知を、我らに!」
 騎士団のファランクスが砂嵐の衝撃波を跳ね除け、豹人間の爪の一撃を弾き返す!
 そして、接近してきた影朧たちを槍衾で撃退してゆく。
 リクは目尻に涙を浮かべながら、腹の底から叫んだ!
「よし! 反撃開始だ! 大丈夫、“僕たち”が来た!」
「「えい! えい! オオオオッ!!」」
 鉄壁の布陣のなかで、リクは騎士団へ的確な采配を行って敵をどんどんと撃退してゆく!
 シホもユーベルコードを解除し、反転して攻勢にでる。
 二丁の聖銃ピア(Pea)&トリップ(Tulip)で、ファランクスの隙間から光の精霊弾と魔力の銀の弾丸を連続射撃!
「リクさん、その本は一体……?」
 シホの問いに、リクは凛々しく答えた。
「オウガにより、アリスラビリンスに存在した僕の故郷は滅ぼされてしまいました。でも、『対象を“物語”にして封印する』魔法を転用し、王宮周辺の土地と住民とを本の中に隔離することで“王国の滅亡”を寸での所で免れたのです。そして、ユーベルコードの効果で、抵抗しない者を宮殿に招待することも出来ます。もちろん、いつでも外に出ることが可能です」
 つまり、とリクはシホに告げた。
「本の中の王国の住民たちは、その気になればいつでも外へ出てこられるます。だからこうやって、僕を守るために、一緒になって戦ってくれるのです!」
「それは、素敵ですね……」
 微笑みながら呟くシホは、唐突に銃撃をやめた。
 そのまま、彼女はファランクスの中で祈りを捧げ始める。
「影朧は、倒されても幻朧桜で浄化されることで転生が可能と伺っています。どうか、今は安らかな眠りを。そして、願わくば新たな生を、この世界で授かれますように……」
 首に掛けたロザリオを両手で握りしめながら、斃れてゆくかつての英雄の2度目の死を弔っているのだ。戦闘中でも祈りを捧げられるのは、屈強な集団陣形だからこそ出来る行為だ。おかげで、野次馬たちを避難させる時間を稼ぐことが出来た。
 さぁ、ここからは猟兵たちの大攻勢の時間である!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルード・シリウス
それがお前の選択か…くだらねぇ
世界を変えるというのなら、お前が呼び出した影朧どもを自らの糧にし、世界に覇を唱えるだけの存在に至ればよかったんだ…
嗚呼でも感謝するぜ。お前は糧となる餌を呼び寄せた。なら…俺はコイツ等を一つ余さず喰らい尽くし、その域に己を高める為の糧とするだけだ

神喰と無愧を携え、影朧の群れへと飛び込む様に突撃。致命傷となる一撃以外、幾ら受けようが構わねぇ。一匹でも多く、喰らい尽くせる位置を取るべく動く
その位置を取る事が出来たら、【黒獣爪牙】で範囲内に居る獲物総てを喰らい尽くし、受けた傷は捕食と生命力吸収の能力で癒す

過去の英雄だろうが関係ねぇ。その血肉と魂を捧げ、等しく俺の糧となれ


ラリー・マーレイ
よく分かんない思想だな。平和の何が悪いんだよ。
そんな理屈で虐殺なんかさせるもんか!

剣を構えて敵達と対峙。市民に被害が出ないように、奴等を抑えなきゃ。
だけど相手は英雄と呼ばれた歴戦の兵士。僕の実力で対抗出来るかな……。いや、それでも勝たないと!
【金剛石の騎装】。全身を輝く鎧が覆って、剣が巨大なグレートソードに変化する。
闘争で大勢を殺して歴史に名を残すのが英雄なら、名も知れず人々を守るのが勇者だ!その力、貸して貰う!

大剣を【なぎ払い】敵を斬り割いていく。
【勇気】を振り絞り、防御は鎧に任せて全力で攻撃する事で【限界突破】。虐殺から人々を守る戦いだ。勇者の鎧が砕かれるなんて絶対に有り得ないと信じる!


神代・凶津
くそ、想像以上にイカれた野郎だったようだな。
現れちまったのは仕方ねえ、迎撃するぞ相棒ッ!
雷神霊装でいくぜ。

「いくぜ、相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」

雷神霊装で引き上げたスピードで一気に距離を詰めて先制攻撃だぜ。
破魔の雷撃を纏った妖刀の一閃をくらいな。
距離が空いた敵には雷の斬撃の放射をぶちこんでやるよ。
敵の攻撃は見切って逆にカウンターで斬撃を叩き込んでやるぜ。

「・・・彼等はここで止めます。」
おうよ、相棒。
過去の英雄たちとやらにはさっさとお帰り願おうかッ!


【技能・先制攻撃、破魔、見切り、カウンター】
【アドリブ歓迎】


鳴夜・鶯
!?銃声…

はぁ、想定してた中で一番最悪のパターン
銃声が3発なのが気になるけど…

さぁみなさんお仕事です
一般人の避難誘導と露払いはお任せしますね

ベンチから立ち上がりギターケースからギターを取り出します

さてさて…
使われたとなれば数だけは居るからね
ボクはボクの出来る仕事をさせて貰うよ

彼らが手が届かないなら
手が届くまで引き落とす

好きにはさせないよ!
楽器演奏+『Daybreak』

300本を超えるユーベルコードを封じる閃光を操縦で方向を操作してワラワラと現れた敵に叩きつけます

さぁ守るよ!!

討伐できたら
反動で頭から外れたであろう2発の弾丸を探してみようかと思います

サンプルは多いに越した事はないしね


榎木・葵桜
思想のために命を捨てるって気持ちは、私にはわかんない
過去の罪を忘れることはよくはないけど
でも、戦乱の世がいいなんてこと、絶対にないんだから

真の姿解放
外見変化とかはないけど
常以上の力が漲ってることが自分でわかる

命をかけた探偵さん達には申し訳ないけど、
猟兵として、ここは意地でも食い止めてみせるよ…!

基本は仲間への援護攻撃中心に
砂塵人間には桜の花弁で対抗するよ!
【桜花捕縛】で敵の動きを止められたら
2回攻撃意識して胡蝶楽刀(薙刀)でなぎ払っていくね
敵からの攻撃は武器受けと激痛耐性で対応するよ

大通りに一般人がどれだけいるかがわからないけど
もし人がいるなら、そっちに被害が及ばないように気をつけて立ち回るね


的形・りょう
あーあ。遂にやってしまいましたか。面倒なことになりましたね。
さて、目の前の影朧達は、どのような過去から出でしものなのでしょうか。しかし残念ながら、彼らの境遇を汲んでいる時間はありません。
「私には、この世界の難しいことはよくわからないよ。だけどな」
どうせ最後には大立ち回りになるだろうからと、上を一枚バッと脱ぐだけでいつもの格好になれるようにしておいたのです。すばやく変身し、妖刀を構えます。
「闘争で進化するのは、私ら獣だけだ。あんた達は人間だろうが」
憂国の志士も、過去の英雄も、哀れな姿にしてしまう。やはりあれは、恐るべき技術です。
悪いですが、少しだけ耳を塞いでいて下さいよ。
(アドリブ歓迎です)



 救援に駆け付けてくれた猟兵たちの活躍により、野次馬たちを避難させる充分な時間は捻出された。
 真っ先に動いたのは、駅前のベンチに腰掛けていた鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)だ。
「!? 銃声……はぁ、想定してた中で一番最悪のパターン」
 ベンチから腰を上げると、鳴夜は駅の周辺の交通規制を行っていた学徒兵たちへすぐさま指示を飛ばす。
「さぁ、みなさんお仕事です。銃声を聞いて野次馬で集まってきた一般人の避難誘導と、その避難経路の確保のための露払いはお任せしますね」
 学徒兵たちは猟兵までの実力は有していないものの、ユーベルコヲド使いとして影朧へ対抗する力を有している。民間人を守るように四人一組で行動させ、襲いかかる影朧を抑えて避難経路を切り拓かせた。
 同時に、鳴夜自身も行動を開始する。
「銃声が3発なのが気になるけど……さてさて、使われたとなれば数だけは居るからね。ボクはボクの出来る仕事をさせて貰うよ」
 抱えていたギターケースから、ジャズベースギターを取り出して瞬時にチューニングを行う。
「彼らが手が届かないなら、手が届くまで引き落とす」
 ジャン、とGmコードをかき鳴らした後、そのまま影朧たちの軍勢の中へ近寄ってゆく。
「好きにはさせないよ!」
 鳴夜は戦場に、夜明けを連想させるタイトルの楽曲を演奏し始めた。

 メイド姿の榎木・葵桜(桜舞・f06218)が、猟兵たちの元へ駆け寄ってきた。
「避難誘導、周囲で待機していた学徒兵さんたちにお願いできたよ!」
「よかった、これで僕たちは戦闘に集中できる!」
 ラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)も敵の攻撃を牽制に専念していたが、ようやく攻撃に転身できると知ると、腰に挿していた取り回し易いサイズの両刃剣ことフレイムタンを鞘から抜き払った。
「ディフェンスシールドで守るのはおしまいだ! ここからは焼き斬ってやる!」
 フレイムタンの剣身から炎が断続的に噴き上がる!
「大体、よく分かんない思想だな。平和の何が悪いんだよ。そんな理屈で虐殺なんかさせるもんか!」
 剣を持って対峙するラリー。
 これに呼応して、榎木も朱色地に金装飾の薙刀である胡蝶楽刀を持って身構える。
「思想のために命を捨てるって気持ちは、私にはわかんない。過去の罪を忘れることはよくはないけど。でも、戦乱の世がいいなんてこと、絶対にないんだからっ!」
 胡蝶楽刀の柄に付けられた魔除けの鈴がリンと鳴る。
 それを合図に、榎木の存在が変質していった。
「命をかけた探偵さん達には申し訳ないけど、猟兵として、ここは意地でも食い止めてみせるよ……!」
 榎木の外見の変化は見当たらないが、周囲に漏れる圧が桁違いに強くなってゆくではないか!
 影朧たちも、目の前の少女が発する得体の知れない雰囲気に、様子を見るべく足が止まってしまう。
「おっと、真の姿を解放したか、メイドの嬢ちゃんッ?」
 鬼面の神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が感心したように声を掛けた。
 同じく協力関係にある神代・桜も、無言で榎木を一瞥していた。
 榎木は頷くと、大きく深呼吸。
「外見変化とかはないけど、常以上の力が漲ってることが自分でわかるよ」
「ああ、嬢ちゃんの気迫、俺の全身にビリビリ伝わってきてるぜ?」
「……凶津は全身というか、顔面でしょ?」
 桜のツッコミに凶津は空中でずっこけるように傾いた。
「それは言わないでくれよ、相棒ッ? つーか、くそ、あの包帯探偵、想像以上にイカれた野郎だったようだな?」
 猟兵の様子を窺う白い軍服の影朧たちを前に、凶津は呆れた口振りで言葉を吐いた。
「現れちまったのは仕方ねえ、迎撃するぞ相棒ッ!」
「……当然。私はいつでも行けます」
 桜は凶津を自らの顔に被ると、無銘の妖刀を鞘から抜き払って片手で正眼に構える。
 空いた片手には神楽鈴。
 シャンシャンと鳴らし、凶津へ合図を送った。
「いくぜ、相棒ッ! スパークフォームだ!」
「……転身ッ! 雷神霊装ッ!」
 シャンッと一際大きく神楽鈴を鳴らし、その場で剣舞する凶津と桜。
 瞬間、ユーベルコードを使用する凶津と桜の心がひとつに合わさる!
 桜の全身が破魔の紫電に包まれ、妖刀にまでそれが伝播してゆく。
 まさに雷神と化した凶津は、桜の身体を操って飛び出していった!
「お先に失礼ッ! 破魔の雷撃を纏った妖刀の一閃をくらいなッ!」
 ゴロゴロゴロッと雷鳴を轟かせながら、稲光が如き後続速度で影朧たちよりも先手を打って次々に斬り伏せてゆく!
 堪らず影朧たちは怪奇『猛毒人間』三重奏――怪奇『ヘドロ人間』の力と怪奇『疫病人間』の力、更に怪奇『硫酸人間』の力を宿し超強化を果たす。
 強力な毒素を体内に溜め込んだ彼らは毒に侵され血反吐を撒けど、怪物の名に相応しい身体能力で斬撃をかわす。
 だが、凶津は焦らず、妖刀から破魔の電撃を集束させた斬撃を繰り出し、影朧たちを遠距離から滅多斬りだ!
「距離が空いた敵には雷の斬撃の放射をぶちこんでやるよ。って、ハンッ! そのばっちい拳なんぞ、俺たちに当たるかよッ!?」
 猛毒まみれの殴打の殺到を凶津は光の速度で回避してゆくと、すれ違いざまに影朧たちを辻斬りにしてしまった。
 そのたびに神楽鈴を鳴らしてゆく姿は、まるで何かの神性な儀式を執り行うように厳かで神々しい。
 ソレに拍車を掛けているのは、鳴夜の演奏と歌声だ。
「明けない夜なんて無い 夜明けに向かって叫ぼう」
 ユーベルコード『Daybreak(ディブレイク)』を歌い上げると、戦場が新手の能楽のような連帯感が生まれる。
 更に鳴夜は300本を超えるユーベルコードを封じる閃光を出現させ、ワラワラと現れた敵へ向け、閃光を操って叩き付けてゆく!
「さぁ守るよ!!」
 鳴夜は広範囲に被害を及ぼす砂塵人間を集中的に無効化してゆき、そのまま閃光で射抜いていった。
 骸の海へと還る影朧たちを、夜明けを連想する光が包み込んで消し去っていった。
 仲間の活躍に遅れを取るものかと、ここでラリーと榎木が追撃をせんと動き出す。
「舞う桜はあなたを捕らえて離さない、ってね! 見せてあげるよ、桜吹雪!」
 砂嵐へ向けて榎木がユーベルコード『桜花捕縛』を放ち、影朧たちの動きを封じる。
 だが、砂嵐の衝撃は強力で、一部が弾き返されてしまった。
 砂塵人間が直接、榎木へと襲いかかる!
「負けないよっ! 避難していった人たちのためにも、ここは通さないんだからっ!」
 衝撃波には衝撃波を、ということで榎木は薙刀を素早く一度にニ回振るい、敵の砂の身体を衝撃波でなぎ払って掻き消してゆく。
 当然、間近で砂嵐を間近に受けそうになるが、鳴夜の放つ閃光に幾度も助けられてゆく。
 榎木も鳴夜が演奏に専念できるように、周囲の露払いと援護に専念し始めた。
 時には薙刀で攻撃を受け止め、受けた傷の痛みを押して敵を返り討ちにしていった。
 対して、ラリーは豹人間へと変貌を遂げた影朧の素早い攻撃に翻弄されていた。
「くっ!? なんて素早くて強烈な一撃なんだろう!」
 盾に受けた衝撃でよろめくラリー。
 傷を受けることはなかったが、実力の彼我を悟ってしまう。
「市民に被害が出ないように、奴等を抑えなきゃ。だけど相手は英雄と呼ばれた歴戦の兵士。僕の実力で対抗出来ていない……。いや、それでも勝たないと!」
 体勢を整え、フレイムタンを振るって影朧を2度斬り裂いては盾で攻撃を受け止めるラリー。
 次第に数の力で押し込まれてゆく……!
「まだだ、まだ、諦めるわけには……!」
 劣勢を感じ、後退してゆくラリー。
 豹人間たちが、獲物へとどめを刺すべく一斉に雪崩込んできた!
 ラリーは絶叫しながら剣を振るった。
「ここで終わるなんて嫌だーッ!」
「終わらせねぇよ」
 不意にラリーの脇を銀髪の青年が駆け抜けてゆく。
 白と黒の二振りの魔剣を暴風めいて振り回せば、あっという間に豹人間たちがみじん切りにされてしまった!
「安心しろ。俺が全部、喰らってやるぜ」
 ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)は満身創痍のまま愉悦の笑みを浮かべていた。
 ラリーはルードの姿に目を剥いた。
「ひどい傷だ! すぐに手当てを……」
「必要ねぇ。致命傷となる一撃以外、幾ら受けようが構わねぇ。一匹でも多く、喰らい尽くせるならな」
 すぐさまルードは豹人間の群れのど真ん中へ飛び込んでゆき、目を血走らせながら血煙を巻き上げてゆく。
 敵をなます切りにしてゆく最中、地面に転がる探偵の死体を思わず踏みつけてしまった。
 ルードは死体を雑に蹴飛ばすと、つまらなそうに顔をしかめた。
「それがお前の選択か……くだらねぇ。世界を変えるというのなら、お前が呼び出した影朧どもを自らの糧にし、世界に覇を唱えるだけの存在に至ればよかったんだ……」
 死んでしまった探偵をルードは見下すかと思いきや、その顔は一片、愉悦と狂気に満ちた笑みを浮かべていた。
「嗚呼、でも感謝するぜ。お前は、俺の糧となる餌を呼び寄せた。なら……俺はコイツ等を一つ余さず喰らい尽くし、その域に己を高める為の糧とするだけだ」
 まさに入れ食い状態だとルードは心から歓喜していた。
 もはやルード自身が自然災害めいた暴力を振るいはじめたことで、豹人間たちはラリーからルードを抑えるべく戦力を集中し始めた。
 そんな光景に、ラリーは唇を噛みしめる。
「馬鹿にするな……! 僕だって、出来る!」
 そう叫んだラリーの全身が、突如として眩く輝き始めた!
「伝説の勇者の力、今だけ貸して貰う! 来い! アダマァースッ!!」
 ユーベルコード『金剛石の騎装(アダマス)』!
 想像から無敵の伝説の勇者の武装一揃いを創造し、ラリーが身に纏った!
「闘争で大勢を殺して歴史に名を残すのが英雄なら、名も知れず人々を守るのが勇者だ!」
 フレイムタンの剣身が巨大化すると、グレートソードに変化!
 そのままルードの傍へ駆け寄り、豹人間をすれ違いざまに両断してゆく!
「うおおおっ! 邪魔だーっ!!」
 先程とは打って変わって敵を撃破してゆくラリー!
 だが豹人間たちは爪を立て、四方八方から引き裂かんと腕を何度も振るった。
 ラリーの全身は細切れのズタボロに……なるわけもなく、ダイヤモンドの如き輝きを放つ鎧が全て弾き返してしまった!
「虐殺から人々を守る戦いだ。勇者の鎧が砕かれるなんて、絶対に有り得ない!」
 勇気を振り絞ったラリーの全身に力が漲る。
 そのパワーはラリーの限界を突き抜け、今このときだけは本物の勇者同然の実力を発揮するようになったのだ。
「ハッ、やればできるじゃねぇか。決めるぞ?」
 ルードがラリーと背中を合わせたまま声を掛けてきた。
「もちろんです! 合図は任せます!」
 ラリーもグレートソードを正眼に構えたまま、ルードへ背中越しに答えた。
 ルードは自らの血を染み込ませた漆黒の刀身を持つ暴食剣「神喰」を地面に突き立てると、磔にした邪精を動力核とした鋸刃持つ巨大な白い大鉈である呪詛剣「無愧」を肩に担いだ。
「お前ら、運が悪いな……。そこは俺の領域だ」
 ラリーもグレートソードに全力の魔力を宿すと、剣身が炎で赤く光を放ち始めた。
 そしてグレートソードを逆手に持った!
「勇者の一撃、受けてみろ!」
「過去の英雄だろうが関係ねぇ。その血肉と魂を捧げ、等しく俺の糧となれ……!」
 ルードの合図から発し、2人の猟兵の攻撃は一瞬で豹人間たちを斬り刻んでゆく。
 地面に刺さったルードの黒い魔剣から、縦横無尽に走る黒い斬撃が空間ごと半径58mの敵の群れを斬り裂き、ラリーが逆手から放った炎の大斬撃は、目の前の豹人間を一瞬で消し炭にしてしまった。
「やりました、倒しましたよ! って、傷が塞がってる……!?」
 ラリーはルードの身体の傷が消えていることに驚いた。
 ルードはユーベルコードを放ったと同時に、攻撃した影朧の生命力を吸い上げて自身の力に変換していたのだ。
「ああ? 俺はただ“喰らった”だけだがな?」
 一瞬で影朧の軍団を一層してしまったルードの実力に、ラリーは感動すら覚えるのだった。

 猟兵の大攻勢により、残る影朧は駅前の広場に押し込められていた。
「……彼等はここで止めます」
「おうよ、相棒。過去の英雄たちとやらにはさっさとお帰り願おうかッ!」
 紫電の斬撃を妖刀から飛ばし、着実にその数を減らしてゆく凶津と桜。
 その傍らには、的形・りょう(感情の獣・f23502)が鞘のない抜身の邪教の妖刀を振るっていた。
「あーあ。遂にやってしまいましたか。面倒なことになりましたね」
 少々億劫なったのか、的形は猛毒人間の攻撃を妖刀で斬り払うと、り式特工具甲型を組み合わせた電磁投射銃を向けてナットを射出しはじめた。
 撃ち抜かれた影朧たちがバタバタと斃れてゆく様に、的形は冷静に彼らへ告げた。
「一瞬で数千度まで熱せられたナットでも喰らって下さい。こっちから触るのは、その、精神衛生上、なんか嫌なので」
「分かるぜぇ、その気持ち! ところで狼の将校さんよ? その格好、動きづらくねぇか?」
 凶津の言葉通り、的形は未だ変装用の将校の姿のままだった。
「おっと、うっかりしてました。とうっ!」
 的形は上着に手を掛けると、そのまま一気に服を脱ぎ去った!
 思い切ったこの行動に凶津が焦る。
「おおいッ!? おまッ、天下の往来で服を脱ぐんじゃねーよッ!」
「……凶津、よく見て。彼女、ちゃんと服を着てる」
 桜の言葉通り、的形は猟兵活動時のユニフォームと化したセーラー服……人狼装束を着込んでいたのだ。
「まさか鬼面に突っ込まれるなんて思ってませんでしたけど……どうせ最後には大立ち回りになるだろうからといつもの格好になれるようにしておいたのです」
 ナットを敵に撃ち込みながら、近付いてきた敵を妖刀で叩き切ってゆく的形。
「んだよ、驚かせやがってッ!?」
「……今日の凶津、なんだかお父さんみたい」
「おと……あ、相棒ッ!?」
 桜の思わぬツッコミに凶津は衝撃を受けた模様。
 それでも、敵への攻撃は継続したままだ。
 的形は戦闘を行いながらも、どこか上の空であった。
(さて、目の前の影朧達は、どのような過去から出でしものなのでしょうか。しかし残念ながら、彼らの境遇を汲んでいる時間はありません)
 理想を掲げて殉死した探偵は、彼らを英雄だと言っていた。
 そして呼び出されたのは怪奇人間の軍隊。
 過去の罪、という言葉からも推察すれば、きっと気持ちのいい話ではないのだろう。
 しかし、的形は心のなかで、彼らへの憐憫や同情の一切を蹴り捨て、目の前の敵を睨み付ける。
「私には、この世界の難しいことはよくわからないよ。だけどな」
 妖刀を宙へ放り投げる。
 だが、妖刀は地面に落ちずに浮遊したままだ。
 的形の勘定が高ぶり、念動力が発動したのだ。
 彼女の妖刀には数多の狗の魂が封じられており、生命力に反応する的形の念動力と作用しているのだ。
「闘争で進化するのは、私ら獣だけだ」
 妖刀がひとりでに空中を舞い始めると、猛毒人間たちの首を立て続けに刎ねてゆく!
「あんた達は……人間だろうが!」
 その語気は確かに怒りで満ちていた。
「凶津さん、相棒さん。グラッジ弾ってやつは、憂国の志士も、過去の英雄も、哀れな姿にしてしまう。やはりあれは、恐るべき技術です」
 的形の言葉に、凶津たちは首肯した。
「……そろそろ、終わらせましょう」
「ああ、フィナーレだッ!」
 妖刀へ迸る紫電が、より一層強くなる。
 凶津は牙突の構えを桜に取らせると、剣先へと破魔の力を一点集中させた。
「今だ、相棒ッ!」
「……穿ち抜く」
 桜の身体が切っ先を前に突き出すと、爆発めいた雷轟とともに今日一番の紫電が毒人間たちを貫いた!
 しかし、完全に影朧たちを滅することが出来ない。
「それじゃ、残りは私が引き受けます。悪いですが、死にたくないなら少しだけ耳を塞いでいて下さいよ」
「お、おうッ? 相棒ッ!」
「……判ってる」
 桜は自身と凶津の耳の部分を抑えると、的形へ向かって大きく頷いた。
 的形はその場で大きく息を吸うと、ユーベルコードを小さく詠唱した。
「……聞いてみろ、私の怒りを」
 ユーベルコード『激情咆哮(フューリアス・スクリーム)』発動!
 的形が狼特有の遠吠えを帝都の空へ向けて行えば、半径54m内の影朧たちに高威力の音波攻撃をぶつけてゆく!
 更に追加攻撃で昏睡効果が発動し、影朧たちは一気に総崩れになった。
「あー、今回は眠らせましたか。追加効果がランダムなのが玉に瑕ですなんですよね、これ」
「やべぇやべぇ……。相棒が耳を塞いでくれなかったら、俺たちまでおねんねだったな?」
 ふらつく凶津と桜だったが、ダメージと睡魔は発生していないようだ。
 凶津は桜の顔から剥がれて中を舞うと、周囲を見渡して頷いた。
「よし、これで全員、ぶちのめしたって事だよなッ? さぁ、カフェーに戻ってプリン喰おうぜッ! もう俺は我慢できねーぜッ!?」
「え、プリン? ヒーローマスクって、飲み食いした後の物質ってどうなるんです?」
 的形は桜に問い掛けた。
 だが、桜も首を傾げて判然としない様子。
「……骸の海、でしょうか?」
「細けぇこたァいいんだよッ! ほら、プリンップリンッ!」
「うるさい」
「モゴゴゴーッ!?」
 桜の懐に無理やり仕舞われる凶津の抗議の声は届かない。
 そんなやり取りを真横で聞きながら、的形はチラリと探偵の死体を一瞥した。
「……グラッジ弾、まぁ、残ってないと思いますけどね?」

 駅前に幻朧桜の花弁が吹きすさんでゆく。
 鳴夜は桜の精である。
 的形のユーベルコードで昏睡した影朧たちは、彼女によって浄化されたのだ。
「それにしても、まさか、3発とも頭に撃ち込んだなんて……」
 討伐後、事後処理を学徒兵たちに任せた鳴夜は、探偵の死体を検分していた。
 そして判ったことは、リボルバー銃に残弾はなかったことからグラッジ弾は全部で3発であった事と、それが全て探偵自身の頭にぶち込んだという事だった。
「……人間、頭を貫かれただけじゃ即死できねぇ事があるらしいぜ」
 歩み寄ってきたルードが鳴夜へ語り掛ける。
「コイツの思想はくだらねぇ。だが、コイツにとっては自分の生命を張れる程の理想だったようだな。だからこそ、死力を尽くして全弾をぶっ放したんだろうが、俺が大半を喰らってやったぜ。コイツもとんだ犬死だな」
 ルードは踵を返して、帝都の街中へ消えていった。
「……幻朧戦線。ひとをここまで駆り立てる彼らの思想とは、一体……?」
 鳴夜は帝都の闇に潜む存在に背筋が寒くなってしまう。
「ねぇ、さっきは援護してくれてありがとう! よかったら、みんなでカフェーで打ち上げしよって話なんだけど……?」
 榎木が鳴夜に声を掛けると、ハッと我に帰った彼女は笑顔を取り繕う。
「勿論です。是非、同席させて下さい」
「今度は気兼ねなくコーヒー以外も注文できる! 何食べようかな?」
 ラリーは足取り軽く、3人とともにカフェーへの道を引き返してゆく。

 ひとまずは、幻朧戦線の企てた事件は阻止することに成功した。
 しかし、帝都の闇に潜む謎の集団の陰謀は、まだ終わったわけではない。
 それまでは、カフェーにてしばしの休息を楽しむのも一興であろう。
 勝利のプリンに、乾杯。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月22日


挿絵イラスト