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大樹祭に迫る牙

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「まずは集まってくれたことに感謝を」
 猟兵たちに向け、エルフのグリモア猟兵、プレケス・ファートゥムが軽く頭を下げる。
「今回、向かってもらいたい世界は『アックス&ウィザーズ』だ」
 滅びた筈の古代帝国やダンジョンから出現するモンスターや邪悪な魔法使い、盗賊や悪魔、ドラゴンといったオブリビオンを退治する冒険者たちが主役の世界だ。
「今回の依頼の目的は、町を襲おうとしている仔竜の群れの排除、および仔竜の群れを操り、町を襲わせたオブリビオンの討伐だ」
 狙われている町は、翌日、祭が執り行われる。
 町の中心には、見上げるほどに大きな樹があり、この町が誕生した頃から、町を見守り続けているという。祭は、長い間、町を見守り続ける大樹へと、感謝を捧げるためのものだ。
「まあ、最終的には飲めや歌えや騒げやの大騒ぎになるのだがな」
 だが、それは大事なものだ。日々の辛さをしばし忘れ、喜びを堪能することは、明日への活力となってくれる。
 だからこそ、人々が集まる。
 祭に合わせ里帰りした者、観光として訪れる者、たまたま鉢合わせ逗留する者、そんな人々がいるため、今、町の人口は普段の倍になっている。つまり猟兵が介入しなければ、被害も倍になるということだ。
 仔竜たちは、オブリビオンの解呪不可能な呪いにより正気を失っており、人であれば問答無用で襲ってくる。呪いをかけたオブリビオンの居場所は、わかっている。だが、先にそちらに向かってしまえば、町は仔竜の群れに飲み込まれ、壊滅するだろう。
「なので、仔竜の群れの撃破を優先してくれ」
 仔竜を倒しても、大本のオブリビオンが逃げることはない。
「オブリビオンについてだが、どうも生前一度この村を襲い、手痛い反撃にあったらしい。それを恨んで、オブリビオンになってからまた襲いに来たようだ」
 プレケスがあきれを多分に含んだため息を、ひとつこぼす。
「まったく、逆恨みも甚だしいとしか言いようがないな。だが、その恨みは本物だ。やつは住人を殺しつくし、町を壊滅させるつもりだ。そして生前奪えなかった、祭の時に展示されるという宝を、今度こそ手に入れるつもりらしい」
 当然のように町にも冒険者たちがいる。だが、彼らは、仔竜がくる少し前、方角にしてちょうど反対方向から町に向かってきたモンスターに対応している。これも大本のオブリビオンが操っている。囮のつもりなのだろう。
 そちらのほうは、冒険者たちに任せておけば問題はない。ただし、仔竜の方は猟兵のみで対応しなければならない。
 猟兵たちの手で、仔竜と、原因となっているオブリビオンを倒せば、町は無事に祭を執り行えるだろう。
「私が君たちに告げられる情報はここまでだ。敵は強力だが、君たちなら倒せるだろうと信じている。……目的を果たした君たちの、無事の帰還を待っている」
 ああ、それからと、プレケスが少し柔らかな笑みを浮かべて付け足す。
「仔竜とオブリビオンを排除し、無事町を守りきれば、君たちも祭に参加してくるといい。町を守るのに協力した君たちのことを、町の人間も歓迎してくれるだろう」


白月 昴
 こんにちは、白月・昴です。
 この度、二作目を発表することが出来ました。
 今回のシナリオは、

 一章 『仔竜たちの討伐』
 二章 『ボスのオブリビオンとの戦闘』
 三章 『お祭りに参加』

 という構成になっております。
 一章開始時点で、町への連絡などは終わっており、猟兵の皆さんの前には、仔竜の群れがいる、という状況です。
 よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『戯れる仔竜』

POW   :    じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リアナ・トラヴェリア
呪われてる…。
シンパシーもあるしかわいそうでもあるけど、オブリビオンの手先になって暴れるなら止めないとダメだね。
それじゃ、行くよ!

黒剣に風の魔力を込めて衝撃波に乗せて放つよ。宙を舞っている相手ならこれで動きを抑えやすくなるかもだし。強化するのは状態異常力、なのかな?
できるだけ別の人が攻撃しやすいようにサポート出来るようにするよ。手が足りないなら止めを刺すのも手伝うよ。

周りの属性を取り込む、ってことは木かな。
ならエンハンスを火に変えて焼き払うことも出来るかも。

それにしても、この子達を操っているオブリビオンって何者なんだろう?
なんとなく魔法とか得意そうで頭のいい感じがするけど…。


エーヴィ・ニスラ
人もお祭りも守るために頑張っちゃうよ!
仔竜の呪いが解けたら一番良かったんだけど残念…。

戦闘時は突出して敵に囲まれないように出来るだけ気を付けるね。
仔竜がどのくらいいるか分からないけど、
数が多いうちは囲まれないように気を付けて
ウィザード・ミサイルで離れて攻撃していくね。
火に怯えてくれる…なんて事は無いよね。

数が減ってきたら、
近くにいるダメージの多い敵を狙っていくね。
自分のダメージが体力の6割を切ったら、
又は3体以上の敵に囲まれたら
巫覡載霊の舞も使うようにしていくよ。
可愛いけどお触り厳禁ってね!

アドリブと他の方との連携歓迎。



 町から少し離れた場所に、猟兵たちは布陣する。
 この場所は、多少大技を繰り出しても被害が出ないだろうと、プレケスがあらかじめ指示した場所だった。
 木はまばらにしかなく、また民家や橋、畑などといった『破壊しては困る物』から遠い。その分、奇襲や待ち伏せに向かないのだが。
「来た!」
 猟兵の一人が小さく、けれど鋭い警告を飛ばす。
 仔竜たちはそれなりの数だというのに、羽が触れるか触れないかの距離を保ち、一糸乱れず隊列を組み、整然と町に向かって飛んでいた。
 仮にも「仔竜」というのならば、もっと生き生きとした生気があってもよいようなものだ。だが、その仔竜たちは、精巧な人形のように、命の息吹のかけらも感じさせず、小さな翼をはためかせるさまは、不気味なものだった。
「呪われてる…」
 ドラゴニアンのリアナ・トラヴェリアが痛ましげな目で仔竜を見て、そう呟く。
「仔竜の呪いが解けたら一番良かったんだけど残念…。」
 ヤドリガミのエーヴィ・ニスラもやや気落ちした様子で、ポツリと言葉をこぼした。 
「シンパシーもあるしかわいそうでもあるけど、オブリビオンの手先になって暴れるなら止めないとダメだね」
「うん」
 リアナの言葉に、エーヴィも頷く。
 そう、どんな理由があろうと、仔竜たちは人を殺し、町を滅ぼす敵だ。自分達はそれを倒すために、この場に立っているのだから。
 リアナが黒剣に風の魔力をこめる。リアナのユーベルコード【トリニティ・エンハンス】の力だ。強化するのは、状態異常。空を舞うのなら、風による行動制限が効きやすいはずだ。
「それじゃ、行くよ!」
 リアナの掛け声を合図に、猟兵たちが一斉に仔竜たちに向け動く。
「人もお祭りも守るために頑張っちゃうよ!」
 気合十分な掛け声と共に、エーヴィの周囲に生み出された炎の矢が、仔竜が作る隊列のど真ん中へと打ち込まれる。エーヴィのユーベルコード【ウィザード・ミサイル】だ。さらに、リアナが、黒剣から風の魔力を伴った衝撃波を、矢の着弾点に向け放つ。
 炎と風が生み出す衝撃に吹き飛ばされ、仔竜の群れが拡散する。中心であった場所では、二人の技をくらい二匹の仔竜が焼かれ切られ、絶命していた。
 普通なら、逃亡するなり、猟兵を避けて町を目指すなどしたかもしれない。だが、呪いに侵された仔竜たちは、目の前にいる人間たちを殺しつくすことを優先した。それが、呪いをかけた者の命令だからだ。
 吹き飛ばされた仔竜たちは、その場ですぐに体勢を立て直し、それぞれがもっとも近くにいる猟兵たちに襲い掛かる。
 その中で炎の矢の使い手を危険だと判断したのか、火傷を負った三匹の仔竜たちが、エーヴィに向け高速で突進する。
 それを食い止めようと立ちふさがったリアナは、仔竜たちが自分を見て、息を吸い込んだことに気づいた。
 ブレスが来ると予測し、再び黒剣に魔力をこめる。周囲の自然の影響を受けるのならば、ブレスの属性は木になるか、そう判断し、風ではなく炎の魔力を選んだ。
 だが、リアナに向け吹き付けられたのは、炎の吐息。
 エーヴィの炎の矢により、少しだけあった木や、下草、藪が燃えたことで、周囲の自然環境が変化してしまったためだ。
「!」
 予想外のことにリアナは息を呑む。だが、すぐさま吹き付けられる炎のブレスに、同じく炎の魔力を纏った衝撃波をたたきつける。
 ゴウッ!
 炎と炎がぶつかり合い、炎の壁がそそり立つ。
 リアナの視界が炎にさえぎられた隙にとばかりに、仔竜たちは先程より速度を落としつつも、エーヴィへと殺到する。
 仔竜たちは連携をしていたわけではないのだろう。
 だが、三匹の仔竜たちがリアナを振り切り、エーヴィの元にたどり着いたとき、彼女は丁度、別の仔竜へと炎の矢を放ったばかりだった。
「さ、三匹!?それなら!」 
 炎の矢が間に合わないと判断したエーヴィは、ユーベルコード【巫覡載霊の舞】を発動させる。
「可愛いけどお触り厳禁ってね!」
 茶目っ気のある言葉とは裏腹に、鋭くなぎなたを振るい、その衝撃波で仔竜に切りつける。
 悲鳴を上げ、二匹が地に落ちた。
 だがもう一匹は、衝撃波に腕を切り飛ばされながらも、残る一本の腕でエーヴィに襲い掛かる。おそらく痛みなど感じぬようにされているのだろう。
 神霊体になったとしても、ダメージが0になるわけではない。痛みを覚悟し、とっさに顔を腕でガードするエーヴィ。だが、痛みは訪れなかった。
 その代わりに、仔竜の悲鳴と、
「よかった、間に合った」
 ほっとしたリアナの声がエーヴィの耳に届いた。
 慌てて腕を下ろせば、目に映ったのは息を切らせたリアナと、地面に転がる仔竜の姿。
 仔竜の速度が落ちたことにより、リアナが駆け寄るだけの時間が稼げたのだ。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
 お互いに少しだけ微笑みを向け合うと、すぐに表情を引き締め、いまだ残る敵に向け、駆け出していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルフトフェール・ルミナ
オブリビオンの執念か……。
この町の宝への執着と、かつて撃退された怨みっていう二重の執念だね。
まあ、これ以上執念は増えないかな。綺麗にここで終わるからね。
そして来年の祭りから、『勇者と魔物の戦い』って新たな演目が増えるよ! そのためにはカッコよく勝たないとね!

【SPD】
相手はブレスとか、天候操作とか、範囲広めの攻撃をしてくるみたいだね。
僕は魔術『縛』で、その攻撃力を下げようと思う。それで脅威度を下げられればいいな。上手くいけば、攻撃自体を封じられるかもしれないし……? 
うーん、攻撃属性が炎だといいのだけどな。服に魔力付与【火炎耐性】してあるのだけど、諸般の事情で他の属性耐性は付与がまだなんだ。



 他の猟兵たちから一歩遅れ、人間のルフトフェール・ルミナは、仔竜たちに向かう。
 ルフトフェールが狙うのは、敵の妨害だ。相手はブレスや天候操作といった、広範囲攻撃を仕掛けてくる。その攻撃力を低下させ、脅威度を下げるのが目的だ。
 見回せば、今にも他の猟兵にブレスを放とうとしている仔竜に気づく。狙われている猟兵は、別の仔竜の相手に追われていた。
 ならばと、魔力を高め、言葉を紡ぐ。
『我、三種の触媒もて、異形を縛る力を顕にせん。力よ、囲みこみ捕縛せよ。十重二十重に』
 ルフトフェールの元に【戒めの棘草】【手かせの消化儀】【処刑者の荒縄】が生み出される。ルフトフェールのユーベルコード【魔術『縛』(チナミニ・ソッチノシュミハ・ナイデスカラ)】だ。
 放たれたその攻撃は、仔竜にとって完全に不意打ちとなった。がっちりと三つの道具が絡みつき、仔竜は悲鳴を上げ地に落ちる。
 猟兵がルフトフェールに会釈して、仔竜に向かったことを確認し、次にいこうととした。だが気配を感じ振り返る。そこにはルフトフェールに向け、今にもブレスを吐こうとする仔竜。
 仔竜の体を炎が取り巻く様子に、ルフトフェールは細い目をさらに細くして、自分の中の魔力を高める。
 足を止めたルフトフェールを不信に思うこともなく、仔竜は炎の竜巻を、相手に向けて繰り出した。
 ルフトフェールの体が荒れ狂う炎の渦に飲み込まれた。仔竜に感情があれば、勝ったと思っただろう。そんな仔竜の体に、炎の中より放たれた【戒めの棘草】【手かせの消化儀】【処刑者の荒縄】が絡みつき、自由を奪う。
 仔竜の力が封じられ、炎の竜巻が消えれば、ルフトフェールが無傷のまま立っていた。本来なら、大火傷を負っていただろうが、ルフトフェールの鎧には高い火炎耐性が付与してあったのだ。なお、諸般の事情で他の属性耐性は付与はまだである。
「残念だったね」
 視線を向ければ、地に落ちた仔竜と目が合った。
 拘束した相手であるルフトフェールに対する、怒りも憎しみも、仔竜の目にはない。淀んだ瞳は何も映してはいなかった。
「オブリビオンの執念か……。この町の宝への執着と、かつて撃退された怨みっていう二重の執念だね」
 もっともこれ以上執念は増えないだろう。なぜなら自分達猟兵の手によって、綺麗にここで終わるのだから。
「そして来年の祭りから、『勇者と魔物の戦い』って新たな演目が増えるよ! そのためにはカッコよく勝たないとね!」
 そういうと、ルフトフェールは次の敵にむけ駆け出していく。

成功 🔵​🔵​🔴​

枦山・涼香
仔竜を倒すというのは少々胸が痛みますが、人々を傷つけさせるわけには参りません。

呪詛を仕損ずれば本人に返るもの。
仔竜たちの奔流を必ずや食い止め、この手で派手に返して差し上げましょう。
と【覚悟】を示して仲間たちを【鼓舞】。

狐火を己の周囲に浮かせて敵を待ちます。
【存在感】で【おびき寄せ】、仔竜たちに無視されないように。
走る仔竜に対し正面から数発ほど狐火を当て、相手の勢いを殺しましょう。
勢いが落ちたところで間合いを詰め、大太刀で自然現象ごと【なぎ払い】、【鎧無視攻撃】で竜鱗を切り裂いて倒します。
多勢が相手となりましょうから、狐火を牽制と目くらましに用いて囲まれないように立ち回り、再度の斬撃を狙います。



「仔竜を倒すというのは少々胸が痛みますが、人々を傷つけさせるわけには参りません」
 妖狐の枦山・涼香は、呪詛に侵された仔竜たちに、痛ましげな視線を向けるが、すぐにそれを振り切る。
 人々を守る刃であり盾、それが猟兵としての役目なのだと、覚悟を決めた。
 自慢の耳をピンと伸ばし、高らかに告げる。
「呪詛を仕損ずれば本人に返るもの。仔竜たちの奔流を必ずや食い止め、この手で派手に返して差し上げましょう」
「おう!」
 涼香の鼓舞に、周りも鬨の声を上げる。
「では、参りましょう」
 涼香のユーベルコート【フォックスファイア】により生み出されたいくつもの狐火が、その身を取り巻いた。艶やかな黒髪が、狐火に照らされる。 
 涼香が『朱の大太刀』の柄に手を添え、真っ直ぐに立つ。
 涼香の纏う存在感に、四体の仔竜たちが寄ってきた。涼香の周囲を警戒するように飛び回る。感情を封じられていても、涼香を強き存在だと認識しているのだろう。
 仔竜のうちの一匹が、涼香に向かい突進する。だが、その仔竜に狐火がぶつかっていく。
 痛みから、小さく声を上げる仔竜。その速度が、狐火にぶつかられるたびに落ちていく。
 逆に涼香は、その仔竜に対し、一気に間合いを詰める。
 一瞬、ぎょっとしたように仔竜が身を引いた。きっと、ただの条件反射なのだろうけれど。
 ぐっと踏み込み、仔竜に向け、大太刀を振るう。鎧の防御すら無視する鋭いなぎ払いが、発動しかけていた炎の竜巻ごと竜鱗を貫き、仔竜の体を切り裂いた。
 切り裂かれた仔竜が地に落ちると同時に、距離をとっていた仔竜たちが涼香に殺到する。だが、それをただ見過ごす涼香ではない。
 涼香を取り巻く狐火がいっせいに動き出す。
 突進してくる仔竜にぶつかり、その速度を削ぎ、急に仔竜の視界に飛び込ませ、その目を眩ませる。仔竜の動きを阻害し、かく乱し、次の一太刀のための状況を整える。
「はあっ!」
 気合一閃。
 先程以上に鋭いなぎ払いが、残る三匹の仔竜を切り裂いた。
 涼香は、ふう、とひとつ息を吐くと、いまだ仔竜の残る場所へと足を向ける。
 仔竜の群れの撃破まで、あともう一息だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
「子供に呪いを掛けて戦わせるなんて……ボク、絶対許さないよ!」
いくら魔物とは言え、無理やり子供を戦わせるオブリビオンに怒りを隠せないよ。

戦闘では、得意の【SPD】を活かした戦い方をするよ☆
仔竜達の高速移動に対抗して、【スカイステッパー】と背中の翅を羽ばたかせて空中を縦横無尽に飛び回るんだ♪
それで、「フェイント」「見切り」「カウンター」「空中戦」を駆使して仔竜達を蹴散らしていくよ!



 ヒュンッと音を立て、柔らかなオレンジ色が仔竜たちに向かって飛んでいく。小さな体躯で、戦場を舞い飛ぶのは、フェアリーのティエル・ティエリエルだ。
「子供に呪いを掛けて戦わせるなんて……ボク、絶対許さないよ!」
 ティエルは怒りもあらわに声を上げる。
 ノブレス・オブリージュの精神を有するティエルとしては、いくら魔物とは言え、無理やり子供を戦わせるオブリビオンに怒りを隠せない。ましてや、操っている者はこそこそ隠れて、仔竜だけを戦わせるなど、言語道断というものだ。
 しかし、仔竜を倒さないという手段をとるつもりはない。ここで仔竜を見逃せば、自分達が守るべき存在である町の人々を危険にさらしてしまう。それは許されないことだから。
 だから、ティエルは『風鳴りのレイピア』をしっかりと構える。
 三匹の仔竜がティエルに向い、体当たりせんばかりに押し寄せる。だが、ティエルは攻撃を見切ると、ユーベルコード【スカイステッパー】を発動し、空中をジャンプすることで、軽やかに仔竜の突進を回避する。さらに、ジャンプして方向を変え、一匹の仔竜の背後を取る。
「ええい!」
 仔竜がティエルの存在に気づく前に、レイピアが風鳴りの音を立て、仔竜の体を引き裂いた。
 フェアリーと仔竜。共に空飛ぶものだが、呪いに侵され支配された仔竜と、心の思うまま縦横無尽に舞うティエルでは、空中戦における優位度が違う。
 ティエルの繰り出すフェイントに翻弄され、さらに一匹が地に落ちる。
 ブレスをはずした最後の仔竜が、もう一度加速してティエルに向かって突撃する。
 だが、その動きを完全に見切っていたティエルは、ぎりぎりで仔竜を避けつつ、レイピアを繰り出した。自身の速度により、ティエルのレイピアが仔竜の喉に深く突き立つ。
 声を立てる間もなく、最後の仔竜が地に落ちた。
 見渡しても、もう呪いに侵され、うつろな目で飛び回る仔竜は一匹もいない。だが、それで終わるわけがない。
「絶対許さないよ!」
 ティエルはより一層怒りを燃やす。
 ティエル、そして猟兵たちは覚悟を胸に先へと進む。仔竜を操り、町を襲わせようとしたオブリビオンの元へ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこは、森の中の少し開けた場所であった。
 かつては誰かが使っていたらしい、崩れかけた掘っ立て小屋がひとつ。後は何もなく、数年もすれば小屋も本格的に壊れて、いつかは森に還っていくだろう。そんな穏やか場所のはずだった。
 だが、今は違う。動物はおろか、鳥の鳴き声ひとつ聞こえず、重苦しい空気に満ち溢れていた。
 その理由は明確だ。
 小屋から発せられる、背筋を凍らせるほどの憎悪。それが、全てを塗りつぶしている。
 一人の猟兵が、小屋に向け一歩足を踏み出した。
 途端、すさまじい音を立て小屋が吹き飛んだ。
 居並ぶ猟兵たちの警戒が一気に跳ね上がる。
 猟兵たちの視線の先、わずかに残った瓦礫の中に、それはいた。
 金色の禍々しい文様が描かれた、獣の骨をかぶり、おぞましいまでの憎悪を周囲に振りまいているオブリビオン、『呪飾獣カツィカ』が。
 ぎろりと、カツィカの奈落の底の様な瞳が、猟兵を睨みつける。
「キサ、マラ……ジャマスルナラ……コロス!!」
 カツィカが、怒りの咆哮をあげた。
ティエル・ティエリエル
「お前みたいな卑怯者なんて、ボクが絶対やっつけてやる!」
カツィカの怒りの咆哮に負けずに叫び返すよ!

【ライオンライド】で体長40cm程度の子供の黄金のライオンを呼び出して「騎乗」したら
縦横無尽に走り回り【SPD】でかく乱して戦うよ。
ボクとライオンくんは一心同体!敵が【呪飾解放】で高速移動してきたって負けないよ!

ただ駆け回るだけじゃなく、時にはライオンくんの背から飛び出して上下から攻撃したりもするんだ!
こうやって、「フェイント」「見切り」「カウンター」を駆使してレイピアを突き刺して回るよ!
「鎧無視攻撃」で防御の薄そうな部分を集中的に狙うんだ!


エーヴィ・ニスラ
仔竜に呪いをかけたオブリビオンかな?
絶対許さないんだからね!

戦闘時は近くに仲間がいれば連携重視。

力は強そうだけどスピードはどうかな?
まずはウィザード・ミサイルで攻撃してみるね。
もし近接攻撃しようとしてる仲間がいたら
攻撃支援で使おうかな。

動けなくなった仲間がいたら、
ダメージを受けすぎないようにフォローに入るね。
敵の視界に入って攻撃して
動けない仲間に意識を向けないようにしたり、
武器で攻撃を受けられるように頑張ってみるね。
「やらせないからね!」

攻撃が激しそうなら巫覡載霊の舞を使って、
少しでもダメージを減らしながら攻撃していくね!

アドリブと他の方との連携歓迎。



 カツィカの怒りの咆哮が、その場を染め上げようとした。だが、フェアリーのティエル・ティエリエルの声が、その支配を打ち払う。
「お前みたいな卑怯者なんて、ボクが絶対やっつけてやる!」
 ヤドリガミのエーヴィ・ニスラもまた声を上げる。
「絶対許さないんだからね!」
 カツィカの纏う禍々しい気配が、あの仔竜たちを操っていた元凶なのだと、エーヴィに伝えてくる。
 エーヴィは許さないという強い思いを、そのまま魔力へと変える。仔竜たちを相手にしたときよりも多い炎の矢が、エーヴィの周りに生み出される。
「ライオンくん!」
 ティエルが相棒を呼ぶ。ユーベルコード【ライオンライド】により、体長40cm程度の子供の黄金のライオンが、ティエルの傍らに現れる。
「援護、するね」
「ありがとう。あの卑怯者、絶対倒そう」
 エーヴィの言葉に、ティエルは頷くとライオンに騎乗した。
「オレヲタオス、ワラワスナ!」
 カツィカが雄たけびを上げると、カツィカが纏う気配は禍々しさを増していく。瞳はらんらんと光り、猟兵たちを憎憎しげに睨み付ける。
「ライオンくん、いくよ!」
 ライオンが「がう」と小さく吠え、ティエルを乗せたまま走り出す。
 カツィカがティエルに向け、高速移動しようとした瞬間を、エーヴィは見逃さない。
「ええい!」
 気合十分な掛け声と共に、エーヴィの周囲にとどまっていた炎の矢が、カツィカに向け、打ち込まれる。エーヴィのユーベルコード【ウィザード・ミサイル】だ。
「ジャマダアアア!」
 カツィカが吠える。
 呪いの咆哮に、炎の矢は、弾き飛ばされ、またその場で爆発して煙を撒き散らす。
 視界を煙によってさえぎられたカツィカが、思わず足を止めた。その隙を見逃さず、煙の中から、金のライオンに騎乗したティエルが飛び掛かる。
 慌てて、ティエルに向かい、カツィカが爪を繰り出す。
 だが、ティエルがぐっと、ライオンの背を蹴って飛び上がった。ティエルに押され、ライオンは本来の位置より下の軌道をとり、凶悪な爪を避ける。そしてティエルはそのまま飛行して、カツィカの目を狙う。だが、さすがにそう簡単にはいかない。反対の爪がティエルを狙ってきた。足元では、ライオンがティエルから攻撃をそらそうと、カツィカにフェイントをかけているが、さすがに目のほうを優先してきた。
 ティエルは無理だと判断し、羽をたたみ一気に急降下。再びライオンに騎乗すると、今度はカツィカの足元をすり抜け、背後に回りこむ。無論カツィカも背後を向くが、さらに足元を抜いて、再びカツィカの背後をとる。
 小さな標的が、縦横無尽に駆け回る状況に、力はあれど、小回りのきかないカツィカが振り回される。
 その上、足元をすり抜けるたび、防御の薄いふくらはぎをレイピアで突かれ、カツィカが呪いの咆哮を上げる。狙いの甘いそれを、ティエルは軽やかによけようとした、だが。
「わあっ、なに!?」
 カツィカが吹き飛ばした小屋の破片がティエルの上に降り注ぐ。
 先ほどの咆哮は、木の上に引っかかっていた破片を、落とすためのものだったのだ。
 大きさとしては、それほどのものではない。だからこそ枝に引っかかっていられたのだろう。だが、フェアリーとその相棒であるライオンにとっては、十分に行動を阻害するものだ。
 ライオンの足が止まる。ティエルも破片に邪魔されている上に、ほこりが目に入り、前が良く見えない。
 カツィカが、ティエルに向け、呪詛を纏った爪を繰り出そうとした。だが、その爪は、ティエルには届かない。
「やらせないからね!」
 エーヴィがなぎなたでその爪を食い止めていた。エーヴィはすでに、ユーベルコード【巫覡載霊の舞】を発動し、神霊体になっていた。
「離れて!」
「うん。ライオンくん、下がって」
 目がまだ見えていない状態では足手まといになると思ったティエルが、ライオンに頼み距離をとる。
 ティエルが離れたことにほっとするエーヴィに向け、カツィカが憎悪のまなざしを向ける。
「ツギハキサマカアア!」
 攻撃を軽減する【神霊体】に変身しているとはいえ、至近距離からの呪いの咆哮は、さすがにすべて消しきれない。
「くっ!」
 だが、それでもエーヴィは踏みとどまり、押すのではなく、体を後ろに引いた。簡単な動作だ。だが、ふくらはぎの傷が、カツィカにたたらを踏ませ、体勢を立てなおすという隙を生ませた。ティエルの戦果だ。
 その隙を利用し、エーヴィは鋭くなぎなたを振るうと、カツィカの体を吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

祝聖嬢・ティファーナ
草薙さんに誘われたので、参加してみます☆ 草薙さんの傍に居て回復と治療と支援を基本に姿を隠す事ができる事を伝えます♪

『クリスタライズ』で姿を隠しながら、『エレメンタル・ファンタジア』や『神罰の聖矢』で光の攻撃や光になぜながら雷の豪雨を降らしてみたりしてみます☆
草薙さんにも『生まれながらの光』と『シンフォニック・キュア』で怪我を癒したり、状態異常を回復しておきます♪
邪魔にはならない様に[オーラ防御Lv5]や[鼓舞Lv5]や[祈りLv5]でサポートをしていきます♪
自分自身でも[第六感]や[見切り]で身を守ります☆


草剪・ひかり
【POW判定】
ティファーナちゃん(f02580)と一緒に参加
お色気、即興連携、キャラ崩し描写も歓迎

自分の行いを咎められて逆恨み……カッコ悪いことこの上ないね!
真っ向勝負が身上の“プロレス絶対女王”ひかり様がぐうの音もないくらいに叩きのめしてあげるよ!

とはいえ、敵は大きく強い!
体格差に押されて吹き飛ばされれば、大きすぎるバストを揺らしてダウン……!

でも、ティファーナちゃんの応援を受ければ立ち上がらないわけにいかないよね!

豊かすぎる肢体をふわりと浮かせた豪快なドロップキックで怯ませたら
隙をついて背後に回り込み、得意のジャーマンスープレックス!

上手く決まったらティファーナちゃんとハイタッチだね!



「自分の行いを咎められて逆恨み……カッコ悪いことこの上ないね!」
「ほんとだよ☆」
 人間の草剪・ひかりが憤れば、ふわふわとその傍を飛んでるフェアリーの祝聖嬢・ティファーナがこくこくと頷いた。
「真っ向勝負が身上の“プロレス絶対女王”ひかり様がぐうの音もないくらいに叩きのめしてあげるよ!」
「ボクは草剪さんの傍に居て回復と治療と支援をするからね♪」
「ありがとう。けど危ないことはしないでね、ティファーナちゃん」
「大丈夫。姿を隠してるから☆」
 そういうと、ティファーナはユーベルコード【クリスタライズ】を発動させ、姿を消した。
「それなら安心だね。じゃあ、いくよ!」
「うん♪」
 カツィカに向かって駆け出すひかりを、ティファーナの声が追いかける。
 先行した猟兵と敵の距離が近すぎたため、他の猟兵が手を出しかねていたが、相対するいた猟兵がなぎなたで吹き飛ばしたタイミングを狙い、その猟兵とカツィカの間に割り込む。猟兵は明らかに負傷していた。
「下がって!」
 ひかりが一声かければ、その猟兵はこくりと頷き、後ろへ下がる。
「勝負よ!カツィカ!」
 言うが早いか、カツィカに掴みかかる。だが、足に負傷を負ったからといって、早々たやすく組み伏せられる相手でもない。
 力任せにひかりは投げ飛ばされて、体を地面に叩きつけられる。
 豊満すぎるバスト(脅威のKカップ)がたゆんたゆんと揺れるさまに、カツィカが一瞬動きを止めた。どうやら、オブリビオンになっても、そういうところは残っているらしい。
『光りを怯える闇と悪よ、悔い改めなさい…』
 そんな声と共に、カツィカに向かい天から光が降り注いだ。別段カツィカのよこしまな視線に、天罰が落ちたわけではない。姿を消してひかりの傍にいるティファーナが、ユーベルコード【神罰の聖矢(シンバツ・ノ・セイヤ)】を足止めにと発動したのだ。さらに、【エレメンタル・ファンタジア】による雷が雨のように降り注ぐ。
「ギャアアアアア!」
 さすがに頑丈なカツィカも、これには悲鳴を上げ、体を痙攣させる。
「草剪さん、すぐ治すからね☆」
 カツィカがぶすぶすといっている間に、ティファーナが【生まれながらの光】で、ひかりを回復していく。
「ありがとう。ティファーナちゃん」
「がんばってね。ボク、応援してるから♪」
 がんばれーと、ティファーナが鼓舞すれば、ひかりが嬉しげに微笑む。
「ティファーナちゃんの応援を受ければ立ち上がらないわけにいかないよね!」
 ひかりはさっと立ち上がると、ティファーナの攻撃から回復しようとしているカツィカに向け、走り出す。
「食らいなさい!」
 ひかりの豊かすぎる肢体が、宙を舞う。両膝を折り畳むようにジャンプし、鋭く突き出した両足の裏でカツィカの胸板を蹴り飛ばす。痛烈な衝撃に、カツィカの体が吹き飛ばされた。
『おおっと!!ここで、絶対女王のドロップキックが炸裂!きいている、これはきいているぞ!』
 唐突に、どこからともなく、何者かの実況が響き渡る。これこそ、ひかりのユーベルコード【クィーンズ・アブソリュートリィ・アーキテクツ(ゼッタイジョオウノキタエアゲラレシワザノカズカズ)】である。どこから流れているか、それは誰にもわからない。
 突然の実況に、さすがのカツィカも驚いて、周囲をきょろきょろと見渡す。プロレスの実況など聞いたことないだろうカツィカからしてみれば、当然の反応だろう。
 カツィカだけでなく、フォローに入ろうとしたほかの猟兵さえ、思わず足を止めていた。
「隙あり!」
 ひかりはカツィカの背後に回りこむと、両腕を回して腰をクラッチする。
「ナ、ナニヲスル!ハナセ!」
「離すわけないでしょう!」
 じわりと、カツィカが身に纏う呪詛が、ひかりの体に染み込んでいく。だが、それはすぐさまきらきらした光となって消えていく。
『詠唱… 祝詞… 聖歌… 祈りに旋律の生命を!』
 姿は見えない、けれど確かにひかりの傍らにいるティファーナの歌う【シンフォニック・キュア】の力だ。
「ありがとう!」
 ティファーナの加護をうけたひかりは、一気にカツィカを持ち上げ、後方へと反り投げる。
「ナ、ナニー!……ガッ!」
 まさか自分の体が持ち上げられると思わなかったカツィカが驚きの声を上げる。だが、その声も、頭部が地面にめり込むことによって強制的に停止した。
『こ、これは!絶対女王が得意とする、ジャーマンスープレックスだああああ!きまった、決まったああああ!』
 地面に頭を突き刺し、体をぴくぴく痙攣させるカツィカの姿に、勝利を確信し、ひかりは技を解除し距離をとる。
 あの巨体を投げた疲労に、さすがのひかりも息があがる。
「やったよ、ティファーナちゃん!」
「やったね、草剪さん♪」
 クリスタライズを解除したティファーナとひかりがハイタッチを交わす。だが……
『こ、これは!立ち上がった、立ち上がったぞ!絶対女王のジャーマンスープレックスをくらってまだ立ち上がるとは!なんというタフネスだ!!』
 頭にかぶった骨に、多少の欠けはあったが、カツィカはいまだ健在であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
織久(f10350)(砕けた口調で話す)
と翔さん(f03463)(丁寧な口調で話す)
二人と一緒に戦おう
翔さんからもどことなく織久と似た感じがするような
二人のどちらが特攻してもすぐに守れるように【覚悟】しておこう

●戦闘
私は常に防御と回復を頭に置いて戦おう
二人の行動を邪魔しないように立ち回りながら【かばう】
【盾受け】と【武器受け】でしのいで見せる
誰一人として倒させない。味方を【鼓舞】しながら敵を【おびき寄せ】る
私に敵が引き付けられれば、その分味方が自由に動ける
味方が深い傷を負ったら【生まれながらの光】で回復
足りなければ【医術】で応急処置をして戦闘後にあらためて治療しよう


香坂・翔
織久、ベリザリオと一緒に参加

SPDを選択
かつ……かちいか?(言えない)
すっごいじゃらじゃら着けてるなー
重くないのかな?
まぁ良いや
あいつを倒して皆でお祭り参加するんだもんね!

ユーベルコードの咎力封じを使用
手枷とか投げて動きを封じる
使用武器は大切な人から習った槍
織久が付けた傷を狙って抉ってみようか
攻撃が当たるならそこをめがけて二回攻撃とか

高速移動とか、俺だって早さなら負けないもんね!
ベリザリオ、守ってくれてありがとね!
織久、動きを封じるから早めにやっちゃえ!


西院鬼・織久
【POW】
【同行】
ベリザリオ(f11970)
翔さん(f03463)

【心情】
少し出遅れましたか
逃した分、ここで狩らせて頂きます
何せ我等は底無し故に
全て喰らい尽くしてくれよう

【行動】
上記の二人と組んで戦闘
担当:攻撃
二人が作った隙をいつでも狙えるよう「視力」「第六感」を働かせる

【戦闘】
「先制攻撃」で一体を「影面」で拘束
爆発と同時に「ダッシュ」して「串刺し」で縫い留める
周囲に敵が複数体いれば「範囲攻撃」の「なぎ払い」
距離が遠ければ「殺意の炎」で牽制
縫い留めた敵には「二回攻撃」「傷口を抉る」

攻撃は「残像」を利用した「見切り」で回避
「武器受け」した場合は「怪力」で押し返すか受け流した上で「カウンター」



「少し出遅れましたか」
 ダンピールの西院鬼・織久がやや悔しげな声を上げる。
「けどボスはまだみたいだし。あいつが、かつ……かちいか?」
 人間の香坂・翔がボスの名を口にする。言えてないが。
「呪飾獣カツィカですよ、翔さん」
 オラトリオのベリザリオ・ルナセルウスが丁寧に訂正する。
「すっごいじゃらじゃら着けてるなー。重くないのかな?」
「力はありそうですよ」
 織久が、淡々とした口調で答える。
「まぁ良いや。あいつを倒して皆でお祭り参加するんだもんね!」
 楽しげに、翔が話す様子に、敵を前にしているとはいえベリザリオが小さく笑みを浮かべた。
「逃した分、ここで狩らせて頂きます」
 それを攻撃合図ととったのか、織久が赤黒い槍を構え、カツィカへと駆け出していく。
「織久、待て!」
「わ、待てよ、織久!」
 二人も慌てて後を追う。
 だが、獲物を前にした織久の勢いに、追いつくことが出来ない。 
『何人たりとも死の影より逃れる事能わず』
 織久から、黒い影がカツィカに向けて、伸びていく。走る織久より速く、避ける隙さえ与えず、影がカツィカに迫り、触れ、そして爆発した。織久のユーベルコード【影面(カゲツラ)】だ。
「グオオオ!」
 カツィカが怒りの声を上げる。爆発よりも、カツィカを苛立たせたのは、自分の足にまとわりつく、影の腕。
「何せ我等は底無し故に全て喰らい尽くしてくれよう」
 織久はさらに速度を上げる。西院鬼の怨念の蠢くまま、敵を狩り怨念の糧とする事だけを求めて。
 赤黒い槍が、カツィカの身を串刺しにしようと迫る。
 だが、いくら足を負傷しようと、頭部に痛烈な一撃を食らおうとも、無数の仔竜を従えた、強力な敵だ。そうやすやすと致命傷を狙えるわけもない。
 カツィカが半歩横に移動する。それだけで、心臓部を狙った必殺の一撃は、カツィカの肩を掠めるに終わった。
 自身の防御を考えず、ただ貫くことに特化した攻撃が避けられれば、そこには特大の隙が出来るだけ。
 織久の目には、カツィカがにやりと嗤ったように見えた。
 呪詛を纏った爪が、織久に迫る。
 槍を引く余裕もなく、咄嗟に手放し、崩れた体勢のまま回避を行う。
 単純な、だがそれ故に重いカツィカの一撃が、織久の腕を掠め、拘束していた影の腕を引きちぎり、地面を抉る。
「くっ!」
 すさまじい一撃により出来た陥没に足をとられ、織久が体勢を崩す。
 至近距離、崩れた体勢。織久は、攻撃の回避は困難と判断を下す。ならば次、どこで受ければ一番少ないダメージで済ませられるか、そんなことを考えていた織久の視界に、見慣れた背が飛び込んでくる。
 激しい音を立て、その背の主であるベリザリオの純白の盾が、呪詛に塗れた爪を食い止める。
「織久!一人で出過ぎるな!」
 何とか追いついたベリザリオが、荒い息で織久に説教をする。 
「そうだよ、織久。飛び出したら危ないだろ」
「翔さんもですよ」
 ベリザリオが翔をたしなめる。
 織久を止められないと判断した翔は、真っ直ぐに織久を追うベリザリオの傍を離れ、カツィカの側面に回りこんだのだ。
 見れば、カツィカの腕には、拘束ロープが巻きついている。翔のユーベルコード【咎力封じ】の道具の一つだ。これが、カツィカの攻撃力を押さえ込んでいる。時間もなく、角度も悪い中で、全てを当てることは無理だったが、それでも攻撃を受け止めたベリザリオの負担も軽減している。
 ベリザリオも、それはわかっている。だが、翔からもどことなく織久と似た感じがして、心配しているのだ。敵を倒すために、守りがおろそかになるところが。
 とはいえ、説教ばかりしている余裕はない。
 確実に織久をしとめられると思っていたところを妨害され、一気にカツィカの機嫌が悪くなる。もっとも、織久を傷つけられたベリザリオの機嫌はもっと悪いのだが。ベリザリオが怒りのまま、カツィカを盾で押し返し距離をとる。
「それより、ベリザリオ。織久の手当てして。こっちは俺が引き受けるから」
「……わかりました」
 翔一人を前線に立てることに、ベリザリオが一瞬渋い顔をした。だが織久の傷は放置できないとしぶしぶ頷き、ベリザリオは盾をおろし、治療を開始する。聖なる光が織久の傷を癒していく。ベリザリオのユーベルコード【生まれながらの光】だ。無論、「必要ない」という織久の言葉は、二人からはスルーされていた。
 代わりに、翔は前にでて槍を構える。
 大切な人から習った槍で、大切な仲間を守るのだ。
「グオオオオ!」
 カツィカが怒りの声を上げ、高速で翔との距離を詰める。
「おおっと!」
 距離を詰めきられる前に、翔が槍を繰り出した。だが、それはフェイントだ。浅くついた槍を引き、即座にカツィカに突き立てる。先程、織久が傷つけた肩の傷を、翔の槍が刺し広げた。
「ウグ!」
 肩を押さえ、カツィカが一歩下がる。だが、肩を守るようにしながら、カツィカは攻撃に転じた。
「俺だって早さなら負けないもんね!」
 言葉通り、翔は右へ左へと軽やかに身を翻し、カツィカの攻撃を避ける。さらに、その速さを生かし、槍でカツィカの体に、浅いがいくつもの傷を刻んでいく。
 小回りが利かないカツィカは、またもや翻弄されていたが、さすがにまずいと思ったのか、翔から距離をとる。
「あ、待て!」
 翔が追いかけようと踏み込んだ途端、カツィカが足を止め、両掌を向ける。
「!」
 しまったと翔が思ったときにはすでに遅い。カツィカの掌から、身を拘束する呪詛が放たれた。
『我等が怨念尽きる事なし』
 織久の声が響くと同時に、黒い炎が地面を走り、翔へと向かう呪詛を焼き、さらにカツィカへと襲い掛かる。織久のユーベルコード【殺意の炎】だ。
 全身を炎に包まれながらも、カツィカは翔へと爪を振り下ろす。だが、それは再び真白の盾に防がれ弾き飛ばされる。
「うわ、びっくり。ベリザリオ、守ってくれてありがとね!織久もありがとう」
「こちらこそ、お待たせしてしまって。翔さんのおかげで、織久の傷も回復できました。ありがとうございます」
 ベリザリオの言葉通り、傷を治した織久が、カツィカに向かい駆ける。距離をつめ、槍を繰り出す。織久が傷つけ、翔が広げた傷に、もう一度織久の槍が刺さる。そして織久は槍をぐりっと回し傷を抉った。
「イダアアアア!」
 あまりの所業に、カツィカが悲鳴を上げ逃げを打つ。
「織久、動きを封じるから早めにやっちゃえ!」
 翔をもう一度【咎力封じ】を発動する。カツィカへ向け、手枷、猿轡、拘束ロープが放たれる。
 痛みに悶えていたカツィカは避ける余裕もなく、翔の放った拘束具に絡みとられていく。
 敵という獲物が、狩りやすく調整された。ならば、織久のやることはただひとつ、狩るのみ。
 鋭い槍がカツィカの額のど真ん中一点を目指し繰り出された。
「グオウオ!」
 カツィカがうめき声を上げる。狙い通り、織久の槍が深々とカツィカの眉間に突き立った。
 バキンと乾いた音がなり、骨が割れ、落ちる。
 そうして、猟兵たちは知る。
 あの禍々しい骨は、呪詛の力を増幅していたのではなく、制御していたのだと。
 今までとは比べ物にならないほどの、禍々しい呪詛が、カツィカの身を取りまいた。翔の拘束具が、呪詛に負け、ぼろぼろの塵となり崩れ落ちた。
「ガアアアアアアアアア!」
 頭部はひどく陥没していた。普通の生き物ならば、死んでいてもおかしくないほどに。この傷が、このオブリビオンの元となった盗賊の、直接の死因だったのだろう。
「ユルサナイユルサナイユルサナイ、オマエタチハ、カナラズコロスゥゥ!」
 濃厚な殺意が、カツィカの雄たけびに乗り、猟兵たちに叩きつけられる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

リアナ・トラヴェリア
やっぱり術使いだったね。
呪い…というよりエンチャントがメインみたいだけど。

ともかく近づくのは危険な
相手だから、動きを止めながら距離を取って戦おう。

気を付けなきゃ行けないのは、こっちの動きを封じる呪いかな。予備動作があるみたいだからドラゴニアン・チェインで動きを止めて、向きを変えちゃおう。
金山羊の呪いも分かるならその時点で止められるか試してみるよ。
近付かれなきゃあとは大丈夫みたいだし。
でも念のためにいつでも黒剣で受けられるようにしておくよ。

あなたがあそこで何をされたかは知らないけれど、無茶苦茶にするつもりならこつちも引かないよ!

あと少しで戦いを終えられそうなら、混ざりゆく覇王の腕を使うよ!


枦山・涼香
あなたの呪い、きっちりと返しに来ましたよ。
心配はいりません。苦しめずに滅ぼして差し上げますとも。

誅滅陣を放ったうえで、その後を追って距離を詰めます。
【存在感】でこちらに視線を引きつけるともに、あからさまな【殺気】を浴びせ、判断を迷わせましょう。
もとより誅滅陣はフェイント、それは躱させた上で領域を支配し、大太刀の【鎧無視攻撃】による斬撃を本命に。
この地に縁のない身ですが、いま一時だけは憎しみを断つため、己が園の如く振る舞う無礼をお許しください。
呪縛に囚われようとも、必ずや斬るという【覚悟】と結界の力を以て呪縛ごと【なぎ払い】、肉を切らせて骨を断つ【捨て身の一撃】で呪獣の躰に刃を届かせましょう。



「ガアアアアア!」
 カツィカが雄たけびを上げる。
 あまりにも濃密な呪詛に危険を感じ、猟兵たちが距離を取る。呪詛はじわりじわりと範囲を広げ、まるで沼のようになって行く。
「やっぱり術使いだったね。呪い…というよりエンチャントがメインみたいだけど」
 ドラゴニアンのリアナ・トラヴェリアが、カツィカの放つ強力な呪詛に眉をひそめながら呟く。
 ともかく近づくのは危険な相手だ。動きを止めながら距離を取って戦うしかないだろうと、判断を下す。
 踏み入れるだけならば、あとで回復でもかけてもらえばいいだろう。だが、この中で、カツィカと、呪詛の主と戦うのはあまりに危険すぎる。
 リアナの目に、一人の猟兵の姿が映る。妖狐の枦山・涼香だ。涼香が強い覚悟を瞳に宿し、カツィカを見る姿に、思わず制止の声を上げる。
「待って、まさか接近戦を仕掛けるつもり?」
「ええ。急がなければ、呪詛が周囲に広がってしまいます」
 一瞬の躊躇もなく返された答えに、涼香を止めるのは無理だと理解した。ならば自分のすることはひとつ。
「わかったわ。なら、サポートするわ」
 にこりとリアナが微笑みかければ、涼香もふわりと微笑んだ。
「ありがとうございます」
 短く打ち合わせると、それぞれが動き出す。
「この地に縁のない身ですが、いま一時だけは憎しみを断つため、己が園の如く振る舞う無礼をお許しください」
 大地へと許しを請うと、意識を集中し狐火を操る。
『我が妖気を以て、徴を刻む。――その身に受けるもよし、受けぬもよし。受ければ徴が汝を刻み、受けねばこの地は我が領域となりましょう』
 涼香の声に応え、青白い狐火で描かれた晴明桔梗が現れる。涼香のユーベルコード【狐炎誅滅陣(フォックスファイア・エンハンサー)】だ。
 一方、リアナは大急ぎで移動を開始する。目的地はカツィカを挟んで反対側。二人で挟撃の状況を作る。
 リアナの移動を確認し、涼香は高らかにカツィカに告げる。
「あなたの呪い、きっちりと返しに来ましたよ。心配はいりません。苦しめずに滅ぼして差し上げますとも」
 涼香は狐火で描かれた晴明桔梗を、カツィカに向け放つ。
「グオオオ!」
 カツィカが咆哮を晴明桔梗に放つ。狐火はそれに吹き飛ばされ、カツィカにダメージを与えることもなく、カツィカの目の前に落ちた。
 だが、それでいい。もとより誅滅陣はフェイント、それは躱させた上で領域を支配するのが、涼香の目的だ。
 今、カツィカの目前の大地が、涼香の領域へと変化した。決して大きな面積ではない。呪詛の沼の中では、その範囲が限界だ。だが、その小ささ故にカツィカは、その結界に気づかない。
 涼香は呪詛の沼の中央、カツィカのいる場所へと走り出す。獲物が来たとばかりに、呪詛が涼香を絡めろうとして来る。
 それを振り払い、涼香はただカツィカだけを目指して走る。 
 様子を伺うリアナと、殺気を振りまき接近してくる涼香。
 より危険と判断した涼香に向け、カツィカが動こうとした。
「させない!」
 注意深くカツィカを観察していたリアナが、カツィカに向け、ドラゴンオーラを放つ。駆け出そうとしたカツィカを爆発が押さえ込み、更に互いをオーラの鎖で繋ぐ。リアナのユーベルコード【ドラゴニアン・チェイン】だ。
 爆発は、カツィカにさしたるダメージを与えなかった。
 だが、それでかまわない。無論ダメージが通るに越したことはないが、リアナの本当の狙いは鎖で動きを制限し、涼香の作った彼女の領域前から、カツィカを動かさないことなのだから。
 リアナの生み出してくれたその時間に、涼香は呪詛に纏わりつかれ、重くなっていく体を必死に動かし、残りを踏破する。
 涼香の体が、彼女の生み出した結界内、この呪詛渦巻く中で、涼香の結界により守られた場所へとたどり着く。
 纏わりついた呪詛が、結界内の空気に触れ剥がれ落ちる。
 呪詛に侵され弱った敵をいたぶろうと思っていたカツィカが、顔色を変え、大慌てで涼香に向け、呪詛塗れの爪を繰り出した。 
 避けるには、結界内から出なくてはならない。だから、涼香は避けない。必ずや斬るという覚悟の元、『朱の大太刀』で、カツィカをなぎ払う。
「ギャアアア!!」
「きゃあ!」
 鎧すらやすやすと切り裂く一撃がカツィカを横薙ぎに切り裂いた。同時に、カツィカの爪が涼香の体を吹き飛ばす。
 リアナを含め、猟兵みながしとめたと、そう思っただろう。だが、致命傷といってもいい傷で、それでもなおカツィカは、生きていた。
「コロ、コロシテ、ヤル」
「くっ」
 傷と、何より呪詛の沼に倒れこんだことにより、涼香は身動きが取れなくなっていた。
 それに気づいたリアナが走り出す。仲間の危機に、呪詛などにかまっていられない。息を吸い、叫ぶ。
「あなたがあそこで何をされたかは知らないけれど、無茶苦茶にするつもりならこっちも引かないよ!」
「ダマレエエエエ!」
 苛立ちの声を上げ、カツィカが上体をひねり、リアナを睨みつける。リアナの言葉は、よほどカツィカの癇に障ったらしい。すでに身動きの取れない涼香を放置し、リアナに向け走り出す。一体どこにそれほどの体力が残っているのだろうか。
 呪詛により、リアナの体が重くなる。だが、今、やらなければ。
「180秒で、全てを終わらせてみせる!」
 リアナの声に答え、彼女の武器がその右腕に融合していく。リアナのユーベルコード【混ざりゆく覇王の腕(マグナスブレード)】だ。
 リアナとカツィカの体が交差する。
「バ、カナ……」
 カツィカがうめき声を上げる。信じられないとばかりに、自分の腹に突き立ったリアナの腕を見る。カツィカがリアナに突き立てるはずだった腕は、ない。先程の涼香の攻撃で半ば切り裂かれていた腕は、リアナの攻撃の余波で引きちぎれていた。
「オレ、オレノオウゴン、オレダケノ、オタ、カラ……」
 パキンパキン、そんな音をたて、カツィカの体が崩れていく。その度に、呪詛の沼は薄くなり、そして、カツィカの体が砂となり吹き散らされると同時に、沼は綺麗さっぱり消えてしまった。
「やった、の?」
「ええ、やったようです」
 呪詛の沼から開放された涼香が、リアナの傍に来る。
「そっか、よかったあ」
 そういいながら、ずるずるとリアナが地面に座り込む。
「だ、大丈夫ですか?」
「うん、平気。ちょっとタイムリミット、来ただけだから。けど、これで町も無事にお祭が開けるね」
 立てないまま、それでもリアナがにこりと笑えば、涼香も微笑み頷く。
 空を見上げれば、木々の隙間から青い空が見えた。
 きっと明日は、よいお祭日和だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『大樹祭』

POW   :    興行への飛び入り参加

SPD   :    露天商・屋台巡り

WIZ   :    祭りの喧騒を遠くに、静かに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


パン!パパン!
 上天気の空に、祭の開始を告げる合図が響く。
 昨日おきたオブリビオンの襲撃が嘘のような賑わいが、町のあちこちにあふれていた。緊張から開放された喜びが、例年以上に祭を盛り上げているようだ。
 設置されたステージからは、楽団の音楽が流れ、踊り子のみならず、町の人間もそれにあわせ踊りだす。
 祝いの酒が振舞われ、屋台の食べ物もいいにおいを漂わせ、参加者の胃を刺激する。
 そして、会場のまさに中央の、シンボルとなる大樹の前には、金色の輝きがあった。
『黄金の輝き お宝リンゴ あります(ひとり一つ)』とかかれた看板の下には、その看板のとおり、黄金色の小ぶりなリンゴ。
「さあー!町名物の、『お宝リンゴ』一人一個ずつだよー。ありがたい大樹様からのお恵みの、お宝リンゴだ。手に入るのはここだけだよー」
 係りの者らしい男の威勢の良い声が、屋台の喧騒に負けず、祭会場に響き渡った。
ティエル・ティエリエル
「わーい、お祭りだーーー!あっ、あれなんだろう!ボク、気になるよ!」
カツィカをやっつけて守ったお祭りを思う存分楽しんで回るよ!

あっちにふらふらこっちにふらふらと屋台を見て回る。
美味しい食べ物を譲ってもらってはパクパクおいしー♪
お腹が一杯になって眠たくなったのか、最後は積まれたお宝リンゴにもたれ掛かるようにしてぐっすり夢の中へ~Zzz


エーヴィ・ニスラ
お祭り!思いっきり楽しまないと損だよね!
屋台巡りしようかな。
あと、お宝リンゴも気になるから行ってみよう!

黄金色のリンゴって凄いよね、初めて見たよ。
味も気になるけど…これって食べて良い物なのかな?
貰えそうなら係の人に聞いてみよう。

あとは時間があったら屋台巡りで色々食べ歩きしたい。
あ、クレープあるかな?果物のがあったら嬉しいな。

お祭りの食べ物って地域ごとに少し違いがあったりするし、
美味しく感じるんだよね、賑やかで楽しいからかな。
思いっきり楽しんじゃおうっと!

アドリブと他の方との絡み歓迎。


リアナ・トラヴェリア
…お宝リンゴ?
この木に生ってるんだ。
それじゃあ収穫期のお祭りなんだね。
私も一個下さいな。

…あの呪術師もこれを求めて来たのかな。
待てば良かっただけなのに。それとも複数欲しかったのかな。
とにかく、いただきます。

…宝って多分、この実の事じゃなくてこの実を食べることだったんじゃないかな。
この大樹とこのリンゴを通してつながるとか、そういう。
だったらなんだかちょっとかわいそうかな。
価値があったのはそのものじゃないのに、求めてしまってたなんて。

(リンゴの芯から種を取り出し)
これもどこかにまけばこの樹と同じくらいに育つのかな?
もしかしたら、この樹はオブリビオンがオブリビオンになる前の時代も知っているのかもね。



「わーい、お祭りだーーー!あっ、あれなんだろう!ボク、気になるよ!」
 妖精のティエル・ティエリエルがくるくると旋回する。カツィカをやっつけて守った祭を思う存分楽しむつもりのようだ。
「お祭り!思いっきり楽しまないと損だよね!」
 その傍らを歩くヤドリガミのエーヴィ・ニスラは、明るい笑顔で同意を返す。その手には、フルーツいっぱいのクレープ。
 ティエルが、エーヴィの肩にとまると、そっとクレープが差し出される。それをおいしそうに、ティエルがかじる。
 ティエル一人では大きすぎるので、二人で分け合っているのだ。
 町を救った冒険者ということで、色々な屋台で、おまけつきで様々な物をもらいながら、二人は屋台めぐりを堪能していた。
 少し人ごみに疲れた二人が、人の少ない町の中央、大樹の植わっている広場近くに来ると、顔見知りに出会った。
 ドラゴニアンのリアナ・トラヴェリアだ。
 なにやら、じっと大樹を見ている様子を不思議に思い、二人はリアナに歩み寄る。
「こんにちはー」
「何見てるの?」
「こんにちは。ええ、あれが気になって」
 ティエルとエーヴィの呼びかけに、リアナが『あれ』を指差した。リアナの言うあれとは、大樹ではなく、その巨大な幹の前に設置された「お宝リンゴ」の看板と、箱に入れられた黄金の輝きを放つ大量のリンゴ。
 係の人間と思われる数名が、やってきた人々にリンゴを配っていた。
「あ、私もお宝リンゴも気になるから行ってみよう!」
 エーヴィが誘えば、リアナはもちろん、ティエルも頷き、ついていく。
「私もリンゴください」
 エーヴィがちょうど手の空いた係の青年に声をかける。
「ボクにもリンゴ頂戴」
「私も一個下さいな」
「もちろん。さ、どうぞ」
 係の青年が、三人にリンゴを差し出した。二人は手に持ち、一人はがっしりと抱え込む。
「大樹のお恵みってことは、この木に生ってるんだ。それじゃあ収穫期のお祭りなんだね」
 リアナの言葉に青年が頷く。
「ああ、この祭は、このリンゴの収穫時期にあわせてるんだ」
「え、けど冬だよね」
 エーヴィが首を傾げた。
 雪は見えないが、体感的に明らかに冬である。一般のリンゴの収穫時期としては遅いのではないだろうか。
「この大樹はなぜか冬に実をつけるのさ。もうちょっとしたら、この青々した葉も全部落ちるぞ」
「へー、変わった木なんだねえ」
 ティエルが大樹を仰ぎ見る。確かに、いまだ青々とした葉が茂っている。
「そうだね。冒険者が結構くるが、ここ以外でこの木があるって話を聞いたことはないな」
「黄金色のリンゴって凄いよね、初めて見たよ。味も気になるけど…これって食べて良い物なのかな?」
「もちろんだとも」
 エーヴィの疑問に、にっこりと青年が笑った。笑顔のままで語られるのは、この町の伝説だ。
 このあたりは雪が少なく、それゆえに冬でも交通が滞ることは滅多にない。それゆえに、当時の町は、冬の蓄えをしなかった。だがあるとき、天変地異かと思われるほどの大雪が降り、町に食料を運ぶ馬車がまったく通れなくなってしまったのだ。
 冬の備えもなく、飢え死にするかと絶望したとき、突然大樹が黄金色に輝きだした。何事かと見に行くと、なんと小ぶりの黄金色のリンゴがたわわに実っていたのだ。
「で、そのリンゴのおかげで、誰一人飢え死にせず、持ちこたえることができた、というわけなのさ。それ以来大樹は毎年この時期に、黄金色のリンゴを実らせるようになったのさ。まさしく『お宝』だろう?」
 確かにと、三人とも納得する。飢えかけたときにもたらされた食料が、お宝でなくてなんだろう。
「けど、ほんとにぴかぴかだね、このリンゴ」
 ティエルが抱きかかえているリンゴに目をやる。冬の太陽を浴びてきらきらと輝くリンゴは、金で作ったリンゴだといわれても納得するだろう。もっとも持てば重さで気づくが。
「ああ、時折冒険者が、本物の黄金と間違えて訪れることもあるんだ。前にも……」
 さらに話を始めようとした青年だが、同じ係の年かさの男からの「さぼるなー」の声に、慌てて口を紡ぐ。
「はいはい、サボってませんよ!じゃ、俺はこれで。祭、楽しんでいってね」
 ばたばたと去っていく青年を見送っていたが、じっとリンゴを見つめるリアナに気づき、エーヴィが声をかけた。
「あれ、どうしたの?」
「…あの呪術師もこれを求めて来たのかな」
「え、あの、おたからーっていってたの、このリンゴのこと?」
 エーヴィの肩に座っているティエルが驚きの声を上げる。さすがにリンゴを抱きかかえたまま飛び続けるのは疲れるだろうと、エーヴィが座らせてくれたのだ。
「待てば良かっただけなのに。それとも複数欲しかったのかな」
「ああ、一人一個だもんね」
 なるほどなるほどと、ティエルが頷く。
「…宝って多分、この実の事じゃなくてこの実を食べることだったんじゃないかな。この大樹とこのリンゴを通してつながるとか、そういう」
 だったらなんだかちょっとかわいそうかな。敵だったとはいえ、リアナは心の中で哀れんだ。
「けど、本当に黄金だって思ってたのかも知れないよ。だってこんなにピカピカなんだもん」
「ああ、その可能性もあるね」
 カツィカのいう『お宝』が一体なんだったのか、もう誰にもわからない。全ては躯の海に還ってしまったから。
 何はともあれ、せっかく貰ったのだから食べようと、三人はリンゴにかじりつく。
「おいしー」
「ほんとすごいおいしい!」
「ええ、ほんとおいしいね」
 三人でかじったリンゴは、蜜がいっぱい入った、とてもみずみずしいリンゴだった。
 リアナは芯から種を取り出した。小さな小さな種。これもどこかにまけばこの樹と同じくらいに育つのだろうか。
 見上げれば、大樹はオブリビオンの襲撃も、祭の喧騒も気にすることはなく、ただ静かにそこにあった。
「もしかしたら、この樹はオブリビオンがオブリビオンになる前の時代も知っているかもね」 
 それもまたわからない。大樹はただ静かにそこにあるだけだ。
「うーん、もうおなかいっぱい!ちょっと休憩」
 そういうと、ティエルはふわりと飛び上がり、ふわふわと飛んでいく。どこに行くのかと、二人が見守る中、ディスプレイ用と思われる、看板の傍に数段の山として積まれているお宝リンゴの傍に、ティエルは降り立った。そして、ころんリンゴにもたれかかる。
 うまく、係の人間からは見えない位置だ。
 しばらくして小さな寝息が、二人の耳に届いた。
「寝ちゃったね」
「みたいねえ」
 くすくすと二人は笑いあい、そっとしておこうとリンゴから離れていく。
「私はもうちょっと食べようかな。一緒に行かない?」
 エーヴィの誘いにリアナが笑顔を浮かべる。
「ええ、お供させてもらうわね」
 祭はまだまだ続いている。
 すぐにまた、猟兵として戦いの場に赴くのかも知れないけれど、だからこそ、守りきった日常を楽しむのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

草剪・ひかり
POW判定?
ティファちゃん(f02580)と一緒にお祭りを楽しむ
お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎

無事に危機を脱してお祭を迎えられてよかった!
折角なので私達もご相伴にあずかろう!

プロレスラーならではの食欲で次々と屋台の美味を頼みまくるよ!
ティファちゃんと少しずつシェアすれば、美味しさも更にアップ
厳しい鍛錬と試合の毎日の私は太ったりなんて……
いや、まぁ若い頃よりは少しだけ(?)ボリューム増したけど!

少し心配になったので、腹ごなしに参加できるイベントを探そう
力自慢大会とかは、プロの参加は断られちゃうかも?

ダンスパレートとかがいいかな
見栄えの良い肢体とキレのある動きで人々の注目を集めちゃおう!


祝聖嬢・ティファーナ
お宝リンゴはティファーナの分では無く、ダークセイヴァーの子供たちに持って帰るのに1個か確認させて頂き、「内緒だからな」と許されたら子供たちの笑顔を思って感謝の礼と祈りを返します☆
他にもダークセイヴァーでの子供たちや大人たちの「お土産」をお店や知り合いに聞きながら買って『フェアリーランド』にしまっていきます♪

ティファーナはお宝リンゴは自分の分は用意しません!
「皆様の笑顔こそ¨希望であり栄養です☆¨」と答えます♪

草薙さんが居たら、お礼を言って「感謝の聖歌」と「勇気の詠唱」をプレゼントします☆
もちろん、他の方が聞いても加護と成果を受けてもらって構いません♪



「無事に危機を脱してお祭を迎えられてよかった!」
 人間の草剪・ひかりが、祭を楽しむ人々の笑顔に、満足そうに笑う。
「みんな楽しそうで嬉しいね♪」
 人の笑顔が好きなフェアリーの祝聖嬢・ティファーナも嬉しげに笑いながら、ひかりの肩の辺りをふわりと飛んでいる。
 賑わいを堪能していた二人の鼻に、良い香りが漂ってくる。
「わ、いいにおい☆」
「よーし、折角なので私達もご相伴にあずかろう!」
「わーい♪」
 ひかりは、プロレスラーならではの食欲で次々と屋台の美味を頼んでは食べ、頼んでは食べ。ティファーナとシェアしていることで、おいしさが更にアップしていて、いくらでも入りそうだ。
 町を守った冒険者ということで、どの屋台でも無料の上におまけつき。
「あ、これもおいしいよ、ティファちゃん」
 先程もらった、ふんわり甘い焼き菓子をティファーナに差し出すが、ティファーナはお腹を押さえて首を振る。
「もうおなかいっぱい☆」
「あらそう?」
 そういえば自分も、少しお腹が膨れた気がしないでもない。思い返せば、確かにちょっと食べ過ぎたような。手を見れば、焼き菓子の反対は大きな肉串だ。
「いや、うん。厳しい鍛錬と試合の毎日の私は太ったりなんて……いや、まぁ若い頃よりは少しだけ(?)ボリューム増したけど」
 傍らを飛ぶティファーナにも聞こえないぐらい小さな声で、ひかりはぼそぼそと呟く。
「草剪さん?どうかしたの?」
 突然食べるのをやめ、うつむいてしまったひかりに、ティファーナが心配げに声をかける。
「な、なんでもないよ!!ただ、えーとほら、ちょっと、体動かしてこようかなって!ティファちゃんはどうする?」
「あ、ボク、行きたいところがあるんだ♪」
「そうなの?ついていこうか?」
「ううん、大丈夫。草剪さんは先に行ってて☆」
 そういうとティファーナは、ひゅんと空に舞いあがった。
「いってらっしゃい。何かあったら呼んでねー!」
「はーい♪」
 ティファーナが向かうのは、お宝リンゴのある場所だ。
 見ると、一段落したのかリンゴを貰いに来る人はおらず、さらにリンゴはまだまだあった。これなら大丈夫かなと思いながら、ティファーナは、リンゴを並べなおしている係の一人の傍らに舞い降りる。
「こんにちはー♪」
「ん、ああ、こんにちは。おじょうちゃんもリンゴ貰いにきたのかい?」
 にこにこと対応してくれる男に、ティファーナはとりあえず聞いてみようと口を開いた。
「あの、リンゴって一個だけしかもらえないですか?」
「ん?」
「子どもたちに持って帰ってあげたいんです♪きっとすごく喜ぶと思うんです☆」
「ふむ。ん?おじょうちゃん、町を救ってくれた冒険者の一人か」
 どうしたものかと考え込んでいた男は、ティファーナの正体に気づいた。
「ありがとな、ほんと両方向からモンスターが来たって聞いて、生きた心地がしなかったぜ」
「どういたしまして♪」
 助かったと笑う男に、ティファーナが微笑み返す。自分のしたことで、誰かが笑顔になるというのは、やっぱりとても嬉しい。
「そうだなあ、一人一個ってのが原則なんだが、おじょうちゃんは町を救ってくれた町の恩人だ。その恩人の頼みを断るなんて、恩知らずってもんだ。あ、ただ、内緒にしてくれよ?」
 へたくそなウインクで、了承してくれた男に、ティファーナは深くお辞儀をする。
「ありがとうございます☆」
「いいってことよ。けど、持てるのかい、リンゴ?」
「大丈夫です♪」
 ダークセイヴァーの子供たちは、笑ってくれるだろうか。きっと笑ってくれるよね、そんなことを思いながら、きらきらと光をはじく、黄金色のリンゴを、ユーベルコード【フェアリーランド】を使い、どんどん小さな壷にしまっていく。
「ありがとうございました♪やさしいあなたに幸せがあらんことを☆」
 リンゴを分けてくれた男に、ティファーナは感謝の礼と、祈りを送る。
「おや、嬉しいね。ん?全部しまっちゃうのかい?おじょうちゃんは食べないのかい?」
 いいのだと、首を振る。なぜなら。
「皆様の笑顔こそ¨希望であり栄養です☆¨」
 そう。みなが喜んでくれる。それこそが、一番大事なことなのだから。
「ありがとう、おじさん♪」
「こっちこそ、町を守ってくれてありがとうな」
 リンゴをいっぱい手に入れられたティファーナは、ニコニコ笑顔でひかりの元へ。
 一方、ひかりは、ダンスパーティーに参加していた。パーティーといっても、作法や格式があるというものではなく、上手下手関係なし、楽しめればそれでよしというものだ。
 最初は腕相撲だの、リンゴを模した重りの持ち上げ競争などを覗いてみていたのだが、さすがにプロの自分が参加するのは気がひけた。だが、ダンスならば競争でもない上に、思いっきり体を動かせる。今の自分にはぴったりだ。
 鍛え上げられた体をのびのびと動かし踊るひかりは、明らかに注目を集めていた。
 見栄えの良い肢体が、軽やかな動きで舞い踊るそのさまは美しい。そして、腕を動かす度に、足を運ぶ度に、くるりと回転する度に、見事に揺れるKカップ(109cm)。
 注目を集めないわけがない。
 注目しすぎた男性が、パートナーの女性に足先を踏まれ悲鳴を上げているが、別段それはひかりのせいではない。
「草剪さーん☆」
 ふわりとティファーナがひかりの元に舞い降りてくる。
「お帰りなさい、ティファちゃん。ご用事おわった?」
「うん♪」
 ひかりは踊りをやめると、会場の隅へ移動する。結構派手に踊っていたこともあり、さすがに少し疲れてきたから休憩だ。
 ティファーナはくるくるくるとひかりの周りを舞いながら、疲れが取れるようにと「感謝の聖歌」と「勇気の詠唱」を送る。
「わー、ありがとうね、ティファちゃん!」
「あのね、あのね、草剪さん♪」
「なあにティファちゃん?」
「一緒に来てくれてありがとう☆おかげでこの町の人を救うことができたよ♪」
 突然のフィアーナの言葉に、ひかりが目をぱちくりさせる。
「なにを言うかと思ったら、ティファちゃんだって、一緒に頑張ってくれたでしょう。ティファちゃんが応援してくれたから、私、頑張れたんだよ!」
「へへ、それなら嬉しいな♪」
 ダンス会場へと目をやれば、誰も彼もが笑顔を浮かべ楽しげに踊る。
 ひかりが、ティファーナが、他の猟兵たちが守りきったもの。それがこの笑顔だ。
「あ、みんなへのお土産も買わなくちゃ♪」
 リンゴも素敵だが、他にもダークセイヴァーの子供たちや大人たちの「お土産」も買おうと思っていたのだ。だが、何がいいだろうか。
「あ、じゃあ、運動も終わったし、私も一緒に探すよ。お店の人とかに、聞いてみよう!この町のお土産と言ったらこれだって言うのが見つかるよ!」
「うん☆」
 笑顔と光にあふれたこの町のかけらを探しに、二人は再び、屋台のほうへと足を向けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
織久(f10350)と翔さん(f03463)は祭りに興味があるようだ
いや祭りに出てくる食べ物に、かな?
翔さんはともかく、織久が興味を示すなんて……うん、いい傾向だ
私も一緒に行っていいかな?

●行動
二人が楽しんでいるのを見守っていたい
織久は翔さんとは気が合うのだろうか
友達になってくれたらいいな
そしたら織久も多少は自重………しないな
いやでも少しは周りを見るようになるかも………しれない?
とにかく二人のやり取りを邪魔しないようにしよう
ただし食べ過ぎは注意する!


西院鬼・織久
【SPD】
【心情】
美味い、と言うのはなかなか癖になる感覚です
全体的に味が濃い物ばかりなので余計でしょうか
一つずつ制覇していきましょう

【同行】
呼称:ベリザリオ(f11970)
何かと一緒にいる事が多い
態度では分かりにくいが信頼しているし頼み事は割と聞く
呼称:翔さん(f03463)
年の離れた年少だと思っている事もあり対応は優しめ

【行動】
ダークセイヴァー出身
各世界を回って自分が健啖家だと知った

ひたすら屋台の料理を制覇していく
ただし一つの屋台につき一つだけ
他の客の分を奪ってはならないと思っている
『お宝リンゴ』も一つしっかりもらって行く
食べる時は無駄なくこぼさず丁寧に食べきる


香坂・翔
織久、ベリザリオと同行。


屋台でひたすら食べ歩く。
焼きそばたこ焼きあんず飴にリンゴ飴ー!
どれから食べるかなー
全部食べるけど!

織久、どれから食べに行く?
変わり種は半分こしようなー!
お祭りの邪魔されなくて良かったねー!

全制覇するつもりで食べ歩く
食べたら太る、じゃなくて食べただけ動けば問題ないもんね!
明日からまた、事件解決に赴くぞー!
でも今日は色々食べ歩かないとね!



「お祭の邪魔されなくて良かったねー」
 開放された喜びが、祭をさらに盛り上げる中、人間の香坂・翔は傍らを歩く人物に、にこにこと笑いながら声をかける。
「ええ、そうですね」
 ダンピールの西院鬼・織久も同意を返す。
 二人の少し後ろを歩いている、オラトリオのベリザリオ・ルナセルウスは、優しい顔で、彼らを見守っていた。
 ベリザリオとしては、翔はともかく、織久が興味を示したことに、少し驚いた。もっとも正確には祭ではなく、祭に出てくる食べ物に、興味津々のようだ。
「……うん、いい傾向だ」
 こうやって少しずつでも、やさしい日常に触れようとしてくれるのは、本当に良い傾向だ。
 一緒に行っていいかと尋ねれば、嫌がる様子もなく許可されたこともベリザリオにとっては嬉しいことだ。 
「焼きそばたこ焼きあんず飴にリンゴ飴ー!どれから食べるかなー」
 翔が楽しげな声を上げる。周囲からはいいにおいが漂ってくる。ちなみに、どれから、であって、どれをではない。
「美味い、と言うのはなかなか癖になる感覚です。全体的に味が濃い物ばかりなので余計でしょうか」
「織久、どれから食べに行く?」
「そうですね。一つずつ制覇していきましょう」
 こちらも全部制覇する気満々だ。
 ダークセイヴァー出身である織久は、さまざまな世界を回ることによって、自分が健啖家であることを知った。つまり、食べられる機会は逃さない。
「わかったー!」
 仲良く屋台について相談している姿がほほえましくて、ベリザリオは口元に優しい笑みを浮かべる。
 織久は翔と気が合うのだろうかと心配していたが、今の様子を見ている限り大丈夫のようだ。このまま翔が、織久の友達になってくれればいいのだが。そしたら織久も普段の危なっかしい行動を、多少は自重を……
「………しないな」
 ベリザリオはゆるく首を振った。
「いやでも少しは周りを見るようになるかも………しれない?」
 自分で言いながら首をひねっているベリザリオは、いやいやと首を振る、今はとりあえずそれはおいておこう。
 とにかく二人のやり取りを邪魔しないようにしよう。戦いだけでなく、こうやって日常を楽しむことは、とても大切だ。
 そう結論をつけて、ベリザリオは、少年達を見守る役目に戻った。
 おいしいと思っても、一つの屋台で買うのはそれぞれひとつだけで、買い占めたりしないこと。変り種は、半分こして堪能すること。
 そんなルールを決めて、屋台を回っていく二人の姿は大変ほほえましい。織久の無駄なくこぼさず丁寧に食べきる様子は大変行儀がよいと思う。だが、飲食系の屋台を端からすべて、食べ、飲んでいく様子に、さすがに食べすぎかなと思わなくもない。 
 だが、せっかく仲良く祭に参加しているというのに、口うるさく言うのもどうだろうかと考えると、なかなか言いづらくもある。
 楽しく過ごす姿を見ていたいという思いと、いやしかし保護者として食べすぎを注意しなければという思いの間で、ベリザリオは葛藤する。
 悩みながら歩いていたベリザリオは、立ち止まっていた織久にぶつかりそうになり、慌てて足を止める。
「どうした、織久?」
 隣に織久がいないことに、ワンテンポ遅れて気づいた翔が、駆け足で戻ってくる。
「あれ、どうしたの織久?」
「翔さん、ベリザリオ、あれを」
 織久が指差したのは、屋台の次の商品、ではなく、屋台と屋台の隙間から見えるものだ。それは「お宝リンゴ」とかかれた看板だ。看板は町のどこからでも見える大樹の近くと思われるところに、設置されているようだ。
「なになに、『お宝リンゴ』?」
「リンゴとある以上食べられる可能性が高いです。見に行ってみませんか?」
「もちろん行く!」
「ベリザリオはどうします?」
「もちろん行くさ」
「満場一致ですね、じゃあ行きましょう、さあ行きましょう」
 食べ物と思われるからか看板のほうへと歩いていく織久を、遅れまいと二人が追いかける。
 近づけば、箱に入れられた黄金の輝きを放つ大量のリンゴが目に入った。ついでに、「ひとり一つ」という看板もだ。係らしき数人の人間が、訪れるものに黄金色のリンゴを配っていた。
 物怖じせず、織久が係の女性に声をかける。
「すみません、このリンゴは食べられますか」
 織久にとって、もっとも確認しておかなければならない事柄だ。
「もちろんですよ。確かに小さいし、ぴかぴかすぎてびっくりするかもしれませんが、食べてみれば蜜がいっぱい入っていておいしいですよ」
 おそらくよく聞かれるのだろう。女性はにこにことしたまま、織久の疑問に答える。
「ならばいただけますか」
「ええ、どうぞ」
 女性が織久の掌に、リンゴを一つ置く。
「ありがとうございます」
「あー、俺もください」
 翔も女性にむけ手を差し出す。そこにも女性はリンゴを置いた。
「貴方もいかがですか?」
「ありがとうございます。いただきます」
 ベリザリオも、渡されたリンゴを受け取った。
 織久はすぐさま食べたそうにしたが、さすがにここでは邪魔になるだろうとベリザリオがとめる。
 少し離れた、人気の少ない場所に移動すると、織久と翔が、リンゴにかじりつく。
 ベリザリオは食べる前に、リンゴを観察してみた。冬の日差しを浴びて、きらきらと輝くリンゴは、確かに作り物のように見えた。重みだけはリンゴそのものなのが、かえって不自然に感じるほどに。
 だが、黙ったまま無言でもぐもぐと食べる織久を見るに、味も大変よろしいのだろう。翔も素直においしいといって食べている。
 ベリザリオも一口齧ってみる。
「これは、なかなか」
 女性が言ったとおり、蜜のたっぷり入ったリンゴはみずみずしく、口の中をすがすがしい甘さで満たしてくれた。
 リンゴ一個とはいえ、小ぶりだ。年少の二人組みは、すぐさま食べ終わる。
「では、翔さん、残りの屋台へと向かいましょうか」 
「了解!」
 二人の台詞に、ベリザリオは思わずリンゴを喉に詰めそうになる。だが、今は詰めている場合ではない。無理やり飲み込んで、今にも屋台エリアに戻ろうとしている二人を呼び止める。
「ちょ、ちょっと待った」
「え、なにー?」
「どうしました?」
 何故止められたのだろうと、不思議そうな顔で二人が振り返る。
「まだ食べるのか?」
「全制覇するつもりだよ」
「当然ですね」
 何を当たり前のことを、と言わんばかりの二人に、これはさすがに止めないと、とベリザリオは慌てる。
「いやいやいや、そろそろ二人とも食べすぎだぞ。ほ、ほら、太るぞ」
「大丈夫。食べたら太る、じゃなくて食べただけ動けば問題ないもんね!」
「そのとおりですね」
「問題解決ー」
「ですね」
「明日からまた、事件解決に赴くぞー!でも今日は色々食べ歩かないとね!」
「ええ」
 楽しげな二人の様子に、ベリザリオが再び止めようか、見守ろうか悩み始める。しばし悩んで、ひとつため息をつくと、見守るほうに決めた。
 みなが守りぬいた平和なのだ。堪能しても罰は当たるまい。
 彼らは祭の喧騒の中を歩いていく。織久や翔、ベリザリオたち猟兵が守った平和を楽しみながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

枦山・涼香
どうにか大過なく終わらせることができましたね。
別方面に向かわれた冒険者の方々のほうも、無事に終わっていればよいのですが。

ではせっかくですから、お祭りも楽しませていただきましょう。
お宝リンゴはお土産にしましょうか。
わたしにもお一つくださいな。これは大樹になるのですか?
それとも大樹と同じ種類の若木を育てているのでしょうか。
リンゴは大事にくるんでしまって、流れで出店に細工物を物色にいきます。
このあたりの特産品ってなんでしょうね。
ヘアアクセサリとか気に入ったのがあれば欲しいのですが……。
ちょっと髪に当てて、鏡を覗き込んで迷ってみたり。
そんなお休みをすごしましょう。

大樹に見守られた町、素敵でしたね。



「どうにか大過なく終わらせることができましたね」
 妖狐の枦山・涼香は、祭ににぎわう町を見て、嬉しげに微笑んだ。
 別方面に対応していた冒険者たちも、さすがに無傷とは行かなかったが、死者はもちろん重傷者も出ずにすんだことを聞き、ほっとしていた。 
「ではせっかくですから、お祭りも楽しませていただきましょう」
 憂うことは何もない。ふさふさの尻尾を揺らしながら、涼香は祭の喧騒の中に溶け込んでいく。
 涼香がまず向かったのは、『お宝リンゴ』の元だ。冒険者の話を聞いたときに、一緒に薦められたのだ。この町の特産のひとつだから、是非と。
「わたしにもお一つくださいな」
「はい、どうぞ。すごくおいしいですよ」
 声をかけられた係の少女が、涼香にリンゴを渡した。リンゴ渡しの係が嬉しいのか、だいぶ気合が入ってる様子だ。ほほえましいなと、涼香は小さく笑う。
「これは大樹になるのですか?それとも大樹と同じ種類の若木を育てているのでしょうか?」
「この大樹になったものを、みんなで収穫してます。この木は一本きりしかなくて。種から若木を育てようって計画もあるにはあるんですが、なかなか成功しないって聞いてます」
「一本きりなんですか」
「町はこの大樹と共に育ったといわれていて、苗木の頃から初代町長が世話していたそうです。ただ、その苗木が、元からこの地に植わっていたのか、初代町長がここに植えたのかはわからないそうです」
「そうなんですか」
 大樹を見上げれば、青々とした葉からやさしい木漏れ日が落ちてくる。一般的なリンゴの木がこの時期に青々とした葉を茂らせているのは、そうそう見たことがない。かなり特殊な、もしかしたら突然変異の、本当に世界に一本きりの木なのかもしれない。
 たった一本きりの大樹。けれど、大樹は寂しそうに見えなかった。見守り、見守られる町の人々と共にあるからだろうか。
「大樹に見守られた町、素敵ですね」
「はい!」
 涼香の言葉に、少女が満面の笑顔で頷いた。
「あ、長々と話しちゃってごめんなさい」
「いえ、お話を伺えて楽しかったです。あ、そうだ。ついでといってはなんですけれど、このリンゴ以外で、この町の特産品があったら教えていただけません?」
「あ、それでしたら、この町は模様の綺麗な石が取れる場所があって、それを加工したアクセサリーがありますよ」
「それは素敵ですね。教えてくれてありがとう」
 少女に軽く頭を下げると、涼香はその場をあとにした。
 涼香は手の中の、冬の光を浴びてきらきらと輝くリンゴを見る。形は完全にリンゴなのに、本当に金細工かと思うほどきらきらしている。
 少し考えて、涼香はリンゴは大事にハンカチでくるむ。おいしいと少女も言っていたし、今、食べてもいいのだが、せっかくなのでお土産にしようと思ったのだ。
 続いて向かうのはもちろん、細工品の店があるエリアだ。
 少女の言っていた、特産の石細工を扱う店も何軒かあるようだ。見るかぎり、どの店も何人もの女性客がいる。
 そのうちの一軒に涼香は足を進めた。
「まあ、素敵」
 店に入った途端目に映るのは、赤、青、緑、黒、白、様々な色合いのつるりとした石が、ペンダントやブローチ、そして髪飾りに加工されている。
「いらっしゃい。この町の特産品だよ。お一ついかが?」
 店の女性が、涼香に気づき、笑顔と共にアクセサリーを薦める。
「手にとっていいですか?」
「ええ、もちろん。模様も色も様々だから、色々試してくださいな」
「ありがとうございます」
 まず取ったのは、赤い石に、白い線が入った花を模した髪飾り。
 髪に当てて、鏡を覗き込む。
 黒い髪に、赤い色は映えて見えた。
「あ、けど、こちらのほうがいいかしら」
 今度は逆に、白い石に赤い線のはいった、鳥を模した髪飾りを手に取る。
 加工がしやすいのか、形も様々だが、天然石ゆえ、全ての石の色や模様が微妙に違うのだ。
 見れば、涼香の隣にいる女性も、あれにしようかこれにしようか、迷っているようだった。なるほどこれは、どの店も混むはずだ。
 いつものことなのか店の女性も、悩む客に文句をいうことはない。まあ、いっそ全部買ってはどうかと薦めることはあるのだが。
 守られた平和の中、涼香は幸せな悩みを抱きつつ、ごくありきたりの、だからこそ大切なお休みをすごすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月30日


挿絵イラスト