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夜を照らすは希望の灯

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 闇の中、亡者たちが篝火を掲げている。
 左右に2列。灯りに照らされた彼らの間の地面は赤々と輝き、その様はまるで偉大な者のみが歩く事を許された赤いカーペット。そう、それは支配者の道。
 その道をゆっくり進む者がいる。重厚かつ存在感のある鎧。厳格な雰囲気から感じる強さ。言うなれば、騎士。しかしその眼は赤く、狂気を宿している。
「再び収穫の時が来た。人よ、その命を差し出すがいい」
 全てを諦めた人々に抵抗などあろうはずがなかった。

「よろしい、休め! 吾輩の予知は以上である。長々しい前口上省いてさっそく本題に移るのである」
 そう言うとケットシーの化身忍者、ヒデオ・ゼフィールは自慢の髭が横に開く。
「以上の理由から諸君ら猟兵はダークセイヴァーの村民80人ほどの辺境の村に急行して頂きたい。理由は言うまでもない。諸君らが猟兵であるが故に、である。だが、あの世界には問題がある」
 そう、ダークセイヴァーはオブリビオンに虐げられ続ける闇の世界。希望が失われ、闇に満ちた世界の人々の瞳には常に諦念の色が浮かぶ。
「亡者を引き連れた騎士の言葉から分かる通り、定期的な襲撃。であるならば恐らく、村人たちの話を集めれば彼奴らの居場所もしれよう。だが、彼らの口を開かせることは容易ではない、というのは明らかであろう」
 しかし、頼れるのもまた彼らしかないであろう、ヒデオはそう付け加えた。
「猟兵という存在が広まり切っていない世界である以上、諸君らは村人に自らを売り込む必要がある。並外れた身体能力により奴らに勝てるという希望を、あるいは語り掛け、彼の心の闇を照らすのだ。そうしてある程度居場所が絞れれば、周辺の探索などでも割り出せるであろう」
「オブリビオンの大体の居場所と時間が分かれば有利に動ける。信頼を得るなどじれったい、と思う者もおるかもしれんが、これ重要な事はない。何時か分かるであろう」
 奮闘を期待する。ヒデオは敬礼を猟兵たちに向けた。


紅月マコト
●第1章解説
 皆さまは今回、猟兵としてダークセイヴァーの辺境の村に送られます。
 敗北者の烙印を押されたこの世界では、恐怖が人々の口を閉ざしています。
 しかし、猟兵の存在と力を彼らに示し、信頼を勝ち取れるば、彼らは心強い味方となる筈です。なぜなら、オブリビオンの姿を彼らは何時も見ていたのですから。
 村民の恐怖を払拭するためには用意する術は大きく分けて3つ。
 【POW】強さを見せて安心させたり。
 【SPD】村や周囲の探索をしたり。
 【WIZ】会話や行動で信頼を得ることで、情報を引き出せます。
 ですがこれらはあくまで一例。例にならうのもいいですが、じっくり考えてみるのもいいでしょう。なぜなら彼らも、貴方たちも、今この瞬間、生きているのですから。

●辺境の村
 この村は辺境の山を切り開いて作ったいわゆる山村。
 僅かな山の恵と必死に作った農作物でかろうじて延命している状況です。
 施設としては、通常の木材住居と村長の家。そして畑と集会所。
 以上の4つが主になると思います。集会所は残った絵本などが置かれ、小さな子供にとっての唯一の憩いの場となっております。
 皆、絶望の中でもお互いを護り合う人々。出来れば向かい合い対応してほしいなぁと。
 では、皆様のプレイングが彼に希望を灯す事を期待しています!
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第1章 冒険 『支配された村』

POW   :    強さを見せて村人を信頼させる

SPD   :    村周辺の探索を行う、村人達と密かに接触する

WIZ   :    会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「陰気臭い世界だなぁ」
 ひっそりと隠れる様なその村を見つめ阿紫花・スミコは呟くと闇の中を覗き込んだ。
 暗闇に適応したその瞳は闇を見通し、並び立つ家屋の奥に大きな建物をすぐに見つけ出す。そこは彼女の目的地、集会所である。
 「うん、あれだね」
 かろやかな足取りで道を進むスミコ。その後ろをからくり人形が追随していく。

「突然ですが……皆、お姉さんとかけっこしよう!」
  扉を開ける見知らぬ来訪者に目を丸くする子供たち。
  そんな彼らの混乱した様子を見るや否や、距離を持ち前の俊足を使い一瞬で詰め
「ただしボクはキミたちよりとても強いんだよね」
  子供たちににっこりと笑いかけた。

  その後、集会所の前はちょっとした祭になっていた。
  軽々と走るスミコを全力で追いかける楽しそうな子供たち。
  催しは1時間ばかり続いた。そして、帰り際は一人の少女がこう言った。
「お姉さん、きっと旅人だよね。この時計……あげる。だから12時になる前に村を出てね」
  その前に出れば、きっと化け物に見つからないから……と。
阿紫花・スミコ
「陰気臭い世界だなぁ。・・・さて、はじめますか。」
スミコがまず訪れたのは集会場。
「子供たち・・・突然ですが・・・お姉さんとかけっこしよう!」
なるべく集会場の付近で遊ぶ。
もちろん、人形は常に出しておき、子供たちの安全は守る。
「あの子たちの笑顔をごらんよ。この世界に必要なのは子供たちの笑顔さ。なーに、何かあればボクが守るさ。」
何か文句を言う大人達にはあっけらかんと話す。



「うーん、そんなに余裕はないみたいだね。でも、これだけあれば十分だよ」
 所々擦れた傷だらけの懐中時計を見つめ、スミコは独りごちた。
 そう、確かに丸1日というほどはない。だが、十分だと彼女は感じた。
 此処にいる猟兵は自分一人ではない。
 それに残り時間を把握できたのは重畳だ。少なくともこれで、気づけば時間切れという事はなくなった。自分の役目は十分に果たした筈だ。
 だが、その情報も共有できなければ意味はない。
 スミコは一度、他の猟兵たちに合流することを決め、踵を返し、呟く。 
「ねぇ、あの子たちの笑顔をごらんよ。この世界に必要なのは子供たちの笑顔さ」
 少しずつ遠ざかっていく足音。
 その背を男が見つめている。眼を閉じ、唇を震えさせ。
「そんな事、誰もが分かっている。分かっている。だが、こうすることでしか村も、あの子たちも守れない……アイツに従えば、少なくとも生き残れる筈なんだ。だが……」
 村人は不思議と心の底から湧き上がる何を感じた。それは確かな闘志だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソラスティベル・グラスラン
むむぅ、これは由々しき事態ですね……
どこもかしこも空気が重苦しいというか
ヴァンパイアたちの圧政に、みんな、心から疲れ切っているじゃないですかっ。
ふっふーん、ならばわたしがやるべきは一つ、みんなに希望を与えること!
えい、おーっ!それじゃ勇者の第一歩、気合入れていきましょう!!

まずは山の恵みを取りつくさない程度にとってきて、皆さんに元気をあげねば!
今は農業も辛いハズ。力仕事なら全く問題ナシ!皆さんの代わりに畑ざくざく。
こんなのじゃ自衛も難しいのでは?この斧に誓って、みなさんに安心をお届けしますとも!
大っ丈夫です!なにせわたしは―――
「勇者ですから!」



「むむぅ、これは由々しき事態ですね……」
 ソラスティベル・グラスランが見たのは闇に覆われた村だった。
 足元さえ見えぬ中を村人が必死に1回、1回と其処に大地があるのを確かめる様に農具を振るう。彼らの表情から読み取れる感情は、絶望。
 暁と空の勇者を名乗る彼女にとって、この光景は到底許せるものではなかった。
「ふっふーん、ならばやるべきことは一つ! これもまた勇者のへの道の確かな一歩、気合を入れて行きましょう!」
 ソラスティベルは弾丸の様に山へ駆け出した。 

「こ、こんなに……あの闇の中をよく探しにいけたわね。まぁ、こんな暗い世界で旅をするぐらいだから、それぐらいは簡単なのかしら……」
 本当にありがとうね、と笑いかけると村人の女性は農具を担ぐ。その顔は疲労でやつれていく。
「あぁ、そうだ。お前はずっと働き続けてるじゃないか。私が行こう……ゴホッゴホッ」
「お、おとうちゃーん!」
「お待ちを! そんなか細い女性のあなたにも、病弱の旦那さんにも、ましてや4、5歳の子供に無理などさせられません! 此処はこのわたしとサンダラーにお任せを! うおー!」
 乾坤一擲。勇者は農業にすら全力を尽くす。しかし全力故にその結果は神のみぞ知る。
 ソラスティベルは咆哮と共に、蒼空色の巨大斧を振り下ろした。
 これぞ、秘奥義……グラウンドクラッシャー。ただのユーベルコードではない、勇者の一撃は全て必殺技なのだ。少なくとも、彼女はそう思っているのだろう。
「あーーー! 畑が陥没……」
「い、いや! これを見てくれ! 確かにわずかにへこんでいる場所もあるけど、ほとんどがしっかりと耕されている……」
「す、すごい……お姉さんは誰なの……」
「ふっふーん……村人さん、私はソラスティベル・グラスラン……そう、勇者です!」
 巨大な斧を掲げてポーズを一つ。サンダラーはそれに応え彼女を称える様に輝いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

カイ・ザイン
あーあー、絶望に支配された目をしてるな。今の俺と大差ない目だ、よく分かるよ。
ならば、歌おう。この声が安らぎを与えるのならば、一時の憩いを村の人々に届けてやろう。
心に星明り(歌声)が届けば、それは分かり合うための端緒になり得る。何か、そう、どんな情報でも口に上らせるにはきっかけが必要なんだ。
歌は、そのきっかけにぐらいはなるはずだ。
可能であればオブリビオンの姿形ぐらいの情報は欲しいところだが、急ぎ過ぎれば信頼は築けない。ここはとにかく、俺の存在を受け入れてもらうことが先決だろう。
そうだな、旅の吟遊詩人でも装えば疑われずに一歩目を詰めることが出来るかな? 目的地は、村人が集まる場所……集会所だな。



集会所、10人ほどの村人がそこに集まっている。
 その中に憔悴と疲労が入り混じるひと際やつれた男が居た。
 齢、六十。いや、七十ほどにも見える。この村の村長。
「続々と村に旅人が訪れている。私に学はないが分かる、流石に可笑しい」
 確かに、と誰かが言った。この村は山奥。わざわざ旅人が道すがら寄る場所でもない
「……収穫は今日の筈。皆、旅人を信頼しすぎるな。正義感で手を出されても困る」
 抵抗せねば少なくとも生かして貰える可能性はある。そう言って村長は集会所の裏口から出ていった。

「多くの村人が彼らに好意を抱きだしているが……やはり」
「絶望に支配された目をしてるな」
「誰だ!」
 突然の来訪者に村人たちは身構えた。
「俺はただの吟遊詩人だ。それ以上でも、それ以外でもないんだぜ?」
 その様子に気にすることもなく、カイ・ザインは彼らの前に向かっていく。
「吟遊詩人だぁ……この村に語れるような伝説も歌もねぇ! 此処だけじゃねぇ。どこいったって同じだ。同じ状況だ!」
 気まぐれに殺され、生かされ。収穫が終わってもオブリビオンに怯える日々に戻るだけだ。諦観が彼らの中を満たしていく。
 その時、声が響いた。低く、しかし強く響く歌声。
 夜を照らし人を導いた星の様な歌。
「吟遊詩人の歌の多くは英雄を称えて歌う。だが、それだけが役目じゃない。夢や希望を広めていく事こそ意味がある」
 カイは村人たちを正面から見据えた。
「希望か……長く忘れていたな」
「歌も、昔は作物が取れるたびに歌っていたのにな」
 村人が立ち上がっていく。瞳には僅かだが希望の色が見える。
「皆と話そう。ただ生きているだけじゃ無意味だ。あの騎士は無理でも、篝火を持つ亡者にされた同胞を助けたい、と僕は思う」
 あぁ、と一同が頷いた。
「篝火の亡者……命を奪われた村人のゾンビって所か」
 なら、篝火の灯りを見つければ敵の接近を察知できるか。
 カイは情報を持ち帰る為、闇に溶ける様にその場から消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

六波・サリカ
文字通り暗い世界ですね、ここは。
未来を切り開く力が無いのであれば、その力を持った他者に頼るということも重要です。
そのことを教えてあげなくてはなりませんね。

装備したサイバー・アイや陰陽術の刻まれた瞳で暗い世界を見通してみせましょう。
目的地にたどり着いたら
機械化された私の腕を見せつけ、普通とは違うという事。
敵を倒せる力があることを示します。
ヴァリュアブル・ウエポンを空に向けて放ちます。
攻撃回数の多い誘導ミサイルを選択し花火のように綺麗に爆発させます。

さて、私の力を理解したでしょうか。
諸悪の根源たる騎士の居場所を教えて下さい。
あなた達を救ってみせましょう。



「我等は所詮、村人。農具を振るう力はあれど、剣など扱えぬ。それほどの学もない故に彼らと共に考える事も出来なかった。だが、そうは思っても……」
 消えぬのだ、悔恨の念が。そう、村長は呟いた。
「驚いている。これほどの村人が私の所に押し寄せた事を。そして、その切欠を作った貴方たち旅人たちの行動力に。この世界にこれほどの者がまだいたとは、と」
 しかし、と村長は続けた。
「今更立ち上がった所で何を成す。決めた筈だ、誰にも頼らぬと」
 頼り切ってしまった我らは、誰にも頼らず罰を受け続ける。そう、決めた筈だ。
 村長の言葉に多くの者がうつむき、辺りを静寂が包んだ。
「いえ、他者に頼るということも重要です」
 仄かに輝く金の瞳で村長を見つめ、六波・サリカははっきりと告げた。
「貴方の言い分も理解はできる。しかし、我等は戦士に頼りきり、その結果が今だ」
 此処までだ。村長は話を打ち切り、その場を去ろうとする。
「確かに、あの日に失った者は二度と戻りません」
 サリカは右腕をむき出しにすると、その腕を高々と掲げた。
 瞬間、格納された誘導ミサイルが轟音と共に空へと打ち出される。
 破裂音と共に次々と爆発するそれは、夜空を照らす紅い花の様だった。
「この力は……旅人、貴方は。いや、貴方たちは一体……」
「さて、私の力を理解したでしょうか……諸悪の根源たる騎士の居場所を教えて下さい」
 ふむ、としばし思案すると村長は顔を上げた。
「正確な場所は分からぬ。だが暗黒の騎士は……この村の北の森より訪れる。いつも通りなら今日……」
「12時。篝火を掲げた亡者を引き連れて、でしょうか?」
「……その通りだ」
 まだ時間はある。森で待ち構え、その灯りを目印にすれば……先手は打てよう。
 そう言うと村長は言った。
「我等は力なき村民。共に戦えど壁にすらず、此処で待つことしかできぬ不甲斐なき身。それでも貴方たちを……頼ってもよろしいか?」
「勿論です。それに、貴方たちはもう十分に戦っていますでしょう?」
 あなた達を必ず救ってみせましょう。サリカは力強くそう言った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:トギー

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


集めた情報が指し示したのは北の森。
 静かに息をひそめる猟兵たちの元へ、それは近づいて来た。

 歪に歪んだ体躯をしたそれは赤々と燃える篝火を掲げ、規則的な歩調で進んでくる。
 深々と被ったローブの向こうには地獄の様な断末魔の表情を浮かべた死相。
 
 それは死して尚安息を許されぬ村人たち―――
阿紫花・スミコ
「あ・・・この時計、返しにいかなくっちゃな。」
つぶやきながら、時計を大事にポケットへとしまう。
村長の助言に従い、森で奴らを待ち構える。
「・・・篝火の明かり・・・本当に来やがった」
明かりの動きから進行ルートを予測し、迎撃ポイントを探る。
他の猟兵は間に合うだろうか、できれば一緒に行動をしたい。
ガジェット「ヒートロッド」から蒸気を噴出し、人形とともに木の上へ。一気に奇襲をしかけよう。
「ダグザ!いくよ!」
木の上から人形をけしかける!
「・・・へへ!ようは影に触れなければいいんだろ!!」
からくり糸を繰り、人形を回転させる。
棍棒を持ったからくり人形「ダグザ」は敵に超高速の連続攻撃をしかける・・・!


六波・サリカ
来ましたね
先ずは取り巻きを倒すとしましょうか。
暗視や視力の効果がある私の眼「照覧式」を用いて状況や戦場の分析を行い
的確な行動が出来るように備えます。

あの篝火を消したら敵に混乱を招けないでしょうか。
試してみる価値は有りそうです。
ヴァリアブル・ウェポンを使用し内臓兵器による水圧攻撃を行います。
火が消えて混乱を招くことが出来れば
右腕を本命の内臓兵器である「制圧式」に形状変更させて
誘導性陰陽弾の一斉射撃を行います。

これで少しは敵の数を減らせたでしょうか。



時計が12時を指し示す。
 狩りの時が来た。緊張と高揚を心に抱えながらも、猟兵たちは隠密を崩さぬまま、静かに身構えた。
「この時計……返しにいかなくっちゃな」
 宝物をしまう様に時計を大事にポケットへとしまう阿紫花・スミコ。
 これでよし、と顔を上げた所でそれをまず目撃したのは彼女だった。
「……来やがった」
 遠方から少しずつ近づてい来る、ゆらゆらと揺れる光。それは紛れもなく篝火。
「えぇ、ですが先ずは取り巻きの亡者を倒すとしましょうか」
「異論はないよ」
 スミコがゆっくりと十指を天に掲げる様に伸ばした。
「移動経路計算終了……お好きなタイミングでどうぞ。合わせます」
「おっけー……いくよ!」

「ダグザ!」
 木の上のスミコの呼び声と共にからくり人形ダグザが目覚める。
 同時に立ち込める蒸気。ヒートロッドから噴き出す蒸気が相手の視界を遮っていく。
「これで決まりだ!!」
 その蒸気の中から、善神の名を冠するからくり人形は、
 死すら冒涜する目の前の悪行に怒るかの様に、猛烈な回転と共に浮き上がったダグザはこん棒を振り回し、篝火の亡者を次々と敵をなぎ倒していく。
「へへ!ようは影に触れなければいいんだろ!!」
 スミコは得意げに笑顔を浮かべる。

「派手に動いてくれますね。合わせるといった以上、合わせて見せましょう。まずは……」
 六波・サリカは体勢を立て直しつつある篝火の亡者に、照覧式を向けた。
「彼らが大事そうに掲げている篝火を消せば、更に混乱を起こせるかもしれません」
 そう言うとサリカは、右腕に内蔵されたヴァリアブル・ウェポンを起動。レンジの範囲内にある数体の篝火に水圧攻撃を放った。
 篝火は完全に消えはしなかったものの、大きく揺らめき。それと共に、亡者が進むべき道を見失ったかのように、奇妙な動きを始める。
「なるほど、篝火は彼らにとっての眼の様な物だった。という訳ですね」
 すぐ様、右腕を本命の内臓兵器である「制圧式」に変化させたサリカは、
 動きの乱れた亡者に向けて、誘導性陰陽弾の一斉射撃を行った。1体、1体と倒れていく敵。
「これで少しは敵の数を減らせたでしょうか」
「ばっちり!」
 
 しかし、勝利の余韻に浸りきる事はない。
 2人はふぅ、という一呼吸と共に一瞬で気持ちを入れ替え、次の動きに備えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイ・ザイン
さて、奇襲戦になるわけだが。まずは、血統覚醒はまずい。俺がダンピールだと知られるのは、折角村人に灯り始めた希望を猜疑心に変えてしまう。これはバツ。次、奇襲仕掛けるのに声を出すバカはいない。後方支援とはいえ歌は論外。ならば、出来るのは戦闘兵器の大量召喚による足止めと時間稼ぎか。
なにより、アレは一体一体は脆いが今回に限っては利点がある。一つ、アレは一撃で消滅する。一つ、所詮はプログラム故に亡者達のお仲間になってこっちを襲う心配がない。
こいつらで時間稼ぎしてる間に、他の突破型の猟兵に吶喊してもらえれば俺的には役割を果たした事になるだろう?
連中が村へ到達するまでの時間稼ぎ、それが俺の今回の仕事だ。


ソラスティベル・グラスラン
むっ……来ましたね。この村に満たされる深い悪意、その一片を担う者よ。
ですがもう思い通りに行くとは思わぬことです。この村を救う為、わたしたちがいます!
わたしは勇者!勇気ある者!!
そして勇気は、見る者に伝わり広がる光となる!!
さあ皆さん、勇者の基本、『人助け』に参りましょう!!

大声で啖呵をきり、真の姿、竜を形取るオーラを纏い、
まずはこちらに狙いを向け村人を逃がします。
そして気合を重視して全身に漲らせる。前衛はわたしに任せてください!
勇気あるものは常に不退転!世に伝わるはわたしの【勇者理論】!
敵の炎は【吹き飛ばし】、【勇気】で乗り越え、【力溜め】からの必殺を!
万が一があれば、村人を【かばう】!


メイストーム・オルカン
うわぁ、これって死んじゃった村の人達なんだよね?
趣味悪いなー、もー

でもわたしの相手をするのに炎を持ってきたのが運の尽きだね。
ペンギンとシャチのキマイラのわたしはきっと水属性、
炎の攻撃は"効果は今ひとつだ"って小学生だってゲームで知ってるよ?
たぶん!!

みんな、炎の攻撃はわたしが頑張って防いでみるから
このローブの人達を早く解放してくれると嬉しいな。

危なくなってもきっと大丈夫だよ、わたしにはユーベルコード……
ペンギンのお友達が盾になって助けてくれるから



4体に数を減らした亡者が先ほどより大幅に速度を上げ、村に近づいていた。
 先の戦闘の余波か、顔を覆っていたローブは剥がれ断末魔を浮かべる亡者の顔がむき出しになっている。
「これって死んじゃった村の人達なんだよね? 趣味悪いなー、もー……」
 好奇心旺盛なメイストーム・オルカンも流石にこれはお気に召さなかった様だ。亡者への同情から嫌悪の色が濃く顔に浮かぶ。
「そう、元は村人さん……そして、彼らを救う事また、勇者の使命!」
 瞳の中で赤々と使命と闘志を燃やすかのように、ソラスティベル・グラスランはそう言い放った。
「わたしは勇者!勇気ある者!! そう、今この瞬間。希望の火はこの世界に灯るのです! うお……」
「ストップだ」
 自らを鼓舞する為に吠えようとするを止めたのは、村へやってきた流れの吟遊詩人を名乗った、カイ・ザイン。
「奇襲仕掛けるのに声を出すバカはいない。今は静かにしていろ」
 こくこく、と首を上下させてソラスティベルはその場に座った。
「いいか、俺に突破力はない。戦闘兵器の大量召喚による足止めと時間稼ぎに全リソースを割り振る」
 だからこそ、突破力のあるお前が切り札だ。とソラスティベルにカイは告げた。
 その言葉に勢いよくコクコクと頷きながら、ソラスティベルの瞳がキラン!と眼が輝いていた。
 よし、と呟き。ソラスティベルの口から手を放し、続いてカイは思考を巡らせる。
「残る問題は炎か。戦闘兵器で防ぎきれるならいいが……」
「なら、それは任せてほしいな」
 ふふーんと、自慢げに胸を張るとメイストームは言った。
「炎の攻撃は"効果は今ひとつだ"って小学生だってゲームで知ってるよ?」
「……ふっ、そうだな。それじゃあ、任せる。行くぞ」
「はい! それでは皆さん、勇者の基本、『人助け』に参りましょう!!」
 
「まず、こちらに目を向ける!」
 エレクトロレギオンで大量に召喚された機械兵器が、
 篝火の亡者を取り囲むように攻撃を仕掛ける。
 激しい攻撃にわずかに動きを乱しながらも、亡者は1体、1体と確実に機械兵器を破壊していく。
 情勢は敵に有利の様に見えた。だが、ダメージは確かに蓄積し亡者の動きは確かに鈍くなっている。

「うおっーー!」
 このタイミングを好機と判断したソラスティベルは亡者たちの中へ飛んだ。
「勇気あるものは常に不退転!世に伝わるはわたしの【勇者理論】!!」
 竜を形取るオーラを纏い、気合を全身に漲らせる。
 体の中を走り回り、ため込まれた力は全て、必殺の一撃にふさわしい。

「みんな集まれー、楽しいショーの時間だよ!」
 メイストームの呼び声に答え召喚された10匹のペンギンがソラスティベルを護るかの様に随伴した。
 一瞬遅れ、機械兵器からソラスティベルに目標を変えた亡者たちは篝火から炎を放つ。
 しかし、次々と飛来するそれをペンギンは盾となって受け止める。

「必、殺ーーーーー!!」
 響く、雷の如き轟音。
 舞い上がった土煙が晴れたその後には倒れ伏し、動きを止めた亡者たちだけが居た。
 ソラスティベルは彼らを見下ろし、静かに目を伏せる。その腕はかすかに震えていた。

「……これでこの人たちは解放されたんだよね?」
「あぁ……」
 そう呟いてカイは彼らの顔を布で隠す。この様な顔を晒すのも忍びない、という配慮だった。
「はぁ……喝っ! 亡骸をそのままにするのは忍びないが行きましょう。まだ終わっていません」

 その言葉に2人は静かに頷き、立ち上がった。

 ―――助けてくれて、ありがとう。

 誰かのそんな言葉を、戦場の猟兵たちは聞いた様な気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:神手みろふ

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「なるほど、お前たちは……いや、その様な言葉。この場では無為」
 長身の黒騎士がゆっくりと猟兵に向かって進む。
「見事な戦いだった。まずは騎士として心からの賛美を送らせて頂く」
 自身の背丈ほどある剣をゆっくりと鞘から引き抜く、構えた。
「しかし、貴様たちにはこの場で消えて貰う。私の目的の為に」
 一歩、一歩と近づく。慢心はなく、怯えもない。
 磨き上げた武とそれを誇る。堕ちてなお武人というべき気配を放つ黒騎士。
「私という完成された個か、お前たちという群か。残るべきは、1つ」
 
 ―――参る
六波・サリカ
凄まじい気配です。
照覧式で分析しても、随分と優れた戦士であることが分かりますね。
周囲の様子も分析し、連携できる仲間がいれば情報を共有。
最適な行動を取れるようにします。

先ずは様子見で攻撃をしてみましょうか。
とはいえ手を抜くつもりはありません。全力です。
「侵攻式。起動≪ウェイク・アップ≫! 殺戮指令、急急如律令≪プログラムド・ジェノサイド、エクセキュート≫!」

機械の右腕を巨大爪形状に変形させます。
持ち前のスピードで相手の懐に潜り込み
あらかじめプログラムされていた通りに連続斬撃を放ちます。

「あなたの目的など知りません。私の目的のために、あなたには消えてもらいます。」
私は村人を救うと決めたのですから。


阿紫花・スミコ
「目的・・・?子供達を恐怖に陥れることがお前の目的に必要だとでもいうのか!!!」

(先手必勝だ!合体も召喚もする隙を与えてやるもんか!)

ヒートロッドから蒸気を後方へ射出し、人形とともに敵との距離を一気に詰める。
「いけ!ダグザ!!」
からくり人形「ダグザ」の巨大な棍棒から繰り出される必殺の一撃、ヘヴィストライクをお見舞いしてやる!!


ソラスティベル・グラスラン
来ましたね、諸悪の根源…!
騎士の本懐を忘れ、民の命を脅かす貴方は騎士ではない。ましてや武人でなど。
貴方からの賛辞など、欠片も心に響きはしない!
貴方を倒します、魔人よ!

小細工は必要ありません、勇者として、全力の【勇気】を持ってぶつかるのみ!
積極的に前に出て敵の注意を惹きます、味方のピンチは【かばう】
敵の攻撃を味方には寄せ付けません、【怪力】【吹き飛ばし】、ついでに【気合】
それでも足りなければ、奥の手です!【力溜め】からの、勇気ある一撃を!

ひけらかす為ではなく、弱者を救い、皆さんと勝って帰る為の力!
これが、わたしたちの勇気です!


カイ・ザイン
あーあ、目の色、赤くなってるだろうな、今の俺。
俺を捨てたクソ親父と同族にかける慈悲はない、全力で行かせてもらう……と、威勢よく言いたい所だが、どうにも野郎の間合い、攻撃範囲に入るのは俺だと荷が勝ちすぎる様だ。
幸いにして、同行している猟兵には攻撃を得手としている奴らが多い様だし、無理に前線に出て足手まといになるのは御免だ。
であれば、俺が出来るのは歌う事。姑息と言われ様が、身を隠し、目立たない様にし、ヘッドセットに付いたマイクで心の限りに、声の限りに歌おうじゃないか。
届け、歌声。この声は仲間達の身を癒す奇跡になるだろう!
後方支援と侮るなよ、クソ野郎。歌は、立派な武器にも回復手段にもなるんだぜ?


羽久依・集葉
拙者忍者でござるので、真正面からなんてことはせんでござるよ。
忍者らしく、ここぞというタイミングで奇襲するでござる!
具体的に言うならあの黒騎士が軍馬を出した時に【羽久依流投擲術】で脚を奪うでござる。
それまでずっと、忍者らしく息を潜めて隠れているでござる
……そんな余裕がなさそうなら、普通に黒騎士の隙を狙うでござるけどね!



「目的……?子供達を恐怖に陥れることがお前の目的に必要だとでもいうのか!!!」
「怒りに目を曇らせるな、若き戦士よ。理解できる筈だ、それは目的の過程にすぎぬと」
 激昂する阿紫花・スミコをなだめるかのように、黒騎士はそう言った。
 いや、それすらも何かの作戦なのか。身構える一同。
「凄まじい気配ですね……」
 六波・サリカのサイバーアイ【照覧式】から情報と共に伝わる脅威度は強敵と断ずるしかない。 
「ですが、この動き……見切る気がない?」
「然り。弱者と侮らぬ。強者と認める故に、貴様たちの攻撃、悉く受け私の全力を持って返礼とする」
 静かに、一歩一歩と距離を詰めるその動きに隙は見えない。
「つまり、お前にとって俺達はあの子供たちと同じ、目的の過程……必要な犠牲って事だ」
 カイ・ザインは赤々とした瞳を浮かべ、黒騎士を見据える。
 それに応えるかの様に黒騎士はカイを見つめた。しばしの沈黙の後。黒騎士は言った。
「そうだ、と言ったらならば……どうする!」
 黒騎士は流れる様に剣を振る。流れる様なその一撃を受け止めたのは、碧空色の大斧。
「貴方を倒します、魔人よ!」
 ソラスティベル・グラスランの宣言に黒騎士はどこか満足そうな表情を浮かべた気がした。
「良かろう……来い!」
 最後の戦いが今、始まる。

「先手必勝だ!合体も召喚もする隙を与えてやるもんか!」
 阿紫花・スミコはヒートロッドの蒸気を後方に高速で噴出させ、瞬間的に加速。
 からくり人形「ダグザ」と共に黒騎士へ飛び掛かった。
「いけ!ダグザ!!」
 放たれる必殺の一撃、ヘヴィストライク。
 眼前の悪を討つべしと、ダグザは巨大な棍棒を振り下ろす。
 しかし、黒騎士はすでに防御の体勢に移行していた。
 甲高い金属を殴打する音が響く。
 黒騎士の体が地面へと浅く沈み、攻撃を受けた左腕の籠手は大きく損壊した。恐らく、その腕も。
「重く、激しい一撃だ! だが、読みやすい! 腕一つでお前の命ならば釣りが来よう!」
 振りかざした大剣がスミコに迫る。

「うおっーー!」
 しかし、その攻撃をソラスティベルがその怪力を駆使して受け止める。
「良いのか? この剣を振り切った後ならばその斧もこの身に届いていたぞ」
 確かに、それが最もダメージを与える手段だっただろう。だが、ソラスティベルは真っすぐ睨み返して言った。
「私の勇気は、この力は……皆さんと勝って帰る為の力です!」
「愚かな! その理想は何時か貴様を滅ぼす!」
 徐々に力を強め押し込もうとするが、ソラスティベルには疲れが見えない。そして、その怪力はそれを押しとどめる。
 戦場に響く、カイの癒しの歌。それが勇者を支えていた。
 姿は見えず、しかしとめどなく響くその歌声はまるで彼らの勇姿を歌うかの様にすら見える。

 ―――後方支援と侮るなよ、クソ野郎。

 黒騎士の耳元で囁く様に、そんな言葉が響いた。

「侵攻式。起動≪ウェイク・アップ≫! 殺戮指令、急急如律令≪プログラムド・ジェノサイド、エクセキュート≫!」
 六波・サリカの機械の右腕、侵攻式が巨大な爪へと形を変えていく。
 放たれる連続の斬撃は殺戮のみを命じられた、必殺の攻撃。
「あなたの目的など知りません。私の目的のために、あなたには消えてもらいます」
 冷酷な言葉と共に、繰り出された攻撃は敵を斬り裂き続け。ついにはその鎧すら穿つ。
「くっ……!」
 片腕を破壊され、剣を失い。更には肉体に深々と刻まれたダメージ。
 猟兵たちの攻撃に、ついに騎士は退く事を選んだ。
 長剣を捨て、その場を離脱する為に大きく背後に跳躍。
「ブラック、キャバリアーーーーーー!!!」
 彼が呼ぶは愛馬たる漆黒の軍馬。彼の呼び声にそれは答え、大きな嘶きと共に彼の元へ走る。

 しかし、その背に騎士が乗る事はなかった。
 走るその勢いのまま、足をもつれさせ地面に倒れこむ軍馬。
 その体には深々とクナイが刺さっていた。
「これぞ、羽久依流投擲術でござる」
「……初めから、息を殺し潜んでいたか。目の前の敵に意識を向けすぎたか……」
「無論。拙者忍者でござるので、真正面からなんてことはせんでござるよ」
 まさか、卑怯など言わんでござろう?と羽久依・集葉は問いかける様に言う。
「当然……お前も、そしてあのダンピールも、自らに出来る事をした。それだけだろう」
 そう、集葉はただ、この一瞬だけを狙っていた。自分の一撃が、確実な決定打となる瞬間を。
 いや、彼だけではない。猟兵たちがというべきか。
 連携、それが彼らの力を本当の力なのだと、今の結果が物語っている。
「合体も召喚もする隙を与えてやるもんか……って、ボク、言ったよね?」
「なるほど、理解していたわけだ。この者の存在を。私以外の、全てが。ふっ、ふっふっ……」
 群の強さ、それを圧倒的にまで見せつけられた黒騎士は笑う。ただ、笑った。
 剣はなく、愛馬も失い、この身に残る武器はその拳のみ。
 絶望的というしかない、その状況で。彼の眼はなお、赤々と輝いた。
「これぞ、戦場。心が躍る……絶望など、ない! 私はすでに通り過ぎたのだ!」
 黒騎士の瞳はなお、闘志に満ちている。戦いの終わりは、近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


「この状況でまだあきらめてないのか……?」
 致命傷を受け、愛馬を失ってなお途切れぬ勢いに、阿紫花・スミコは驚愕の表情を浮かべた。
「諦める、諦めぬなどという選択はお前たち人の価値観にすぎぬ……」
 骸の海より出でた我等、オブリビオンにはそんなものは存在せぬ。何より、此処は戦場」
 ゆらり、ゆらりと迫る黒騎士が猟兵たちを真っすぐに見据える。
「勝つか負けるか。生きるか死ぬか。究極的にはこの場にある選択は2つ……」

―――参られよ、狩人。見事、私の命を刈り取って見せろ
阿紫花・スミコ
「く・・・なんてことだ・・・この状況でまだあきらめてないのか・・・?」
スピードを生かしたヒットアンドウェイ戦術。からくり人形「ダグザ」を駆使しながら、敵の隙を狙う・・・ボクの人形の最強の技、スピニングスイーブのタイミングを・・・!
焦りは禁物・・・先に根を上げた方の負けだ。

敵が隙を見せたらスピニング・スイーブを。人形を回転させ、棍棒による連続回転攻撃をお見舞いしてやる!!


カイ・ザイン
ハッ、笑わせる! 絶望の先に希望を灯すのが俺達、猟兵の仕事だ!
先の戦闘で奴は「群での戦闘」を理解しただろう。前衛で戦う者、後方支援に徹する者、一瞬の隙を狙い潜む者。故に連携に対抗する術を考えるはずだ。そこにはある種の予断が発生する可能性がある。即ち、後方支援者はそれに徹するはずだ、という予断が。
もう一度言うぞ? 後方支援と侮るなよ、クソ野郎!
丁度一発ぶん殴りたかった所だ、積み上げた高速戦闘用身体制御プログラムを強制解放して全速力で吶喊する!
『スタックコード、解放。これより先は煉獄の庭、誰も生きて出られると思うな』詠唱の狭間、苦笑いが出るのはいつもの事だ。『……まぁ、俺もその一人なんだけどね?』



「ダグザ!」
 だが、スミコは気づいていた。
 少なくとも此処まで大局は自分たちに大きく有利に動いていた。
 しかし、此処で焦り隙を生めば、そこを突かれ自分たちはその有利を失う。
「先に根を上げた方の負けだ。行くよ、ダグザ!」
 その声に答えるかの様に、ダグザはその機動性を生かし、接敵と離脱を繰り返し一撃。一撃を確実に積み重ねていく。
 だが、黒騎士は耐え続けた。
 確かに削がれている。しかし、溢れる闘志はそれを感じさせぬ。
「くっ……スピニングスイーブのタイミングを」
 その呟きをカイ・ザインは聞いた。
「なら、それは任せてくれ」
 カイは隠密を解き、森を、世界を覆う暗闇の中から姿を現した。

「スタックコード、解放……これより先は煉獄の庭、誰も生きて出られると思うな……」
 まぁ、俺もその一人なんだけどね。
 そんな呟きと共にフッ、と苦笑いを浮かべ、突貫したのはカイ・ザイン。
「ハアアア!!
 赤々とした目を光らせ自身の存在を示すかの様に怒声を張り上げる突撃していく。
 そこには先ほどの冷静さが欠片もない様に見える。
「愚かな! 怒りに我を失い、自らの役目すら忘れたか!」
 黒騎士は拳を振り上げ、カイの頭蓋を粉砕すべくその鉄腕を彼に振り下ろす。
 しかし、その拳は届く事はない。
 煉獄の庭にて(コード・プルガトリウム)の発動によって急速に引き上げられた身体能力の前では、回避など造作もない。
「ハッ、笑わせる! 忘れた事なんてない。絶望の先に希望を灯す、それが……」
 拳の中に自分の意思を閉じ込めるかの様に、カイは拳を深く、深く握りこむ。
「俺達、猟兵の仕事だ!!」
 激しい破裂音と共に、めり込む拳が黒騎士の頭蓋を激しく揺らす。
「おっ、ごっ……」
 耐えきれず、その体は大きく揺らめいた。
「これで決まりだ!!」
 ダグザが超速の回転と共に、轟音をあげながら黒騎士にこん棒を振り下ろす。
「……見事」
 加速と共に繰り出された連続攻撃は、黒騎士の肉体を打ち砕いていく。
 後に残るものは何もない。
 此処に、勝敗は決した。

 この1歩は微々たるものかもしれない。
 しかし、遠く先に存在する希望に繋がる、1歩だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月22日


挿絵イラスト