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【旅団】謎解きで遊ぼう（その２）

作者：雨都瑣枝

●問題１
　罪を犯したと疑われる容疑者が３人。
　１人目は身体を鍛えるのが好きな巨漢。
　２人目は細身にパリッとしたスーツが似合う真面目そうなサラリーマン。
　３人目は平安時代のコスプレにハマっている歴女でした。
　３人のうち、２人は真犯人から罪をなすりつけられたことによって、思惑とは反対に日々積み重ねていた努力という確固たるアリバイが露呈し、容疑が晴れました。
　さて、真犯人は一体誰でしょう？

●問題２
　愛人＋イケメン＋アダルトショップ＋超働き者＋飽き性＝？

●
「というわけで、日々の無聊の慰めに、クイズへ挑戦なさってはいかがでしょうか？」
　椀種・クルトン（憂き実・f00365）が皆へ誘いをかけた。
　どうやら一番暇なのは当人だと思われる。
「問題１と２、どちらかだけ解いても構いませんし、両方へ挑戦してくださっても勿論ＯＫですわ。どうぞお気軽にご参加くださいませね♪」
　もしも見事正解した暁には、何でも好きなものを賞品として贈呈するという。
「そうは申し上げても、あくまでわたくしがご用意できる範囲に限られますの」
　例として上げるなら、UDCアースにおける最新ゲーム機やゲームソフト、あるいは南の島の別荘使用権一週間分などなど。
「ご馳走をご用意して大宴会とか、お金で解決できることでしたら、大抵は問題ございませんわ」
　ただし、グリードオーシャン産のメガリスが欲しいとか、ダークセイヴァーやサクラミラージュの洋館が欲しいなど、クルトン本人の猟兵としての能力を明らかに逸脱したご褒美は流石に用意できないので注意して欲しい。
「わたくしが何でもひとつだけ言うことを聞く……というのを賞品がわりになさっても構いませんわ」
　ちなみに（当然ながら）未成年者の飲酒喫煙は禁止である。
「ではでは、皆様のご参加、楽しみにお待ちしておりますわ」
　クルトンは皆の目線の高さに飛んだまか、ぺこりとお辞儀した。

第1章 冒険 『ライブ！ライブ！ライブ！』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス！ SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス！ WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス！ 👑1 🔵​🔵​🔵​

●勘
　キマイラフューチャー。
「真犯人は三人目の歴女だ」
　早速カフェに現れた涼風・穹（人間の探索者・f02404）は、自信を覗かせて言い放った。
「一人目のアリバイは、中国の学問の勉強をしていて漢才があった」
「漢文の才能ってこと？」
　ふむ、とクルトンが続きを促す。
「二人目は漫才をしていた」
「芸人さんでしたの！！？」
「何故なら、罪というか音読みのザイを擦り付ける——つまり紹介文の最後に付けるとアリバイが露呈する……」
　巨漢の『漢』やサラリーマンの『マン』の後ろに『ザイ』くっつける、ということらしい。
　滔々と問１の犯人が歴女な理由を語る穹だが。
「一人目だけは槓材でアリバイは麻雀、のような気もするけどな……」
　そう首を捻るあたり、確実と言い切れるぐらいの自信を持っているわけでもなさそうだ。
「槓（カン）！？」
　思わずツッコむクルトン。
「……で当たっているか？」
「残念、不正解ですわ」
　考え方の方向性はあっていますが、と肩をすくめた。
「罪は『つみ』のままお考えになった方がよろしいかと」
　続いて、問題２については、
「３０」
　だと穹は解答した。
「あれらの言葉の組み合わせなら修羅場と答えたい所ではあるけど、カナの文字数の和じゃないか？」
「いいえ。こちらも不正解ですわ」
　確かに修羅場なストーリーを作れそうな単語ばかりですが、と笑うクルトン。
「単純な解き方だけに惜しいと言いたくなりますわね。ネックになりそうなのは、超働き者とアダルトショップが表す数でしょうか」
　ちなみに正解した時の要望は、
「パフェを食べに行きたい」
　だった。
「流石に男一人だと頼みにくいというか店によっては入れもしないしな」
　その点、女性のクルトンがいれば一緒に店に入れるし、シェアすると見せかけて自分用のパフェも頼みやすいから、と穹は言う。
「あら、そういうことでしたらいつでもご一緒いたしますわ。わたくし、春限定の桜のパフェをいただきたいですわ」
　クルトンも大喜びで了承する。
　もしも穹がいつものノリでおっぱいダイブなどと言い出したら果たしてどんな反応をするかは不明だが、ともあれ平和な取引に収まって何よりである。

大失敗［評価なし］

●閑話休題
　続いて。
「ちょっとした息抜きっていうのは大切だね。肩の力を抜いて楽しませて貰おうか」
　喫茶店にやってきたのはリフィクル・ナータス（昏き異界より出でしモノ・f22103）。
「あら、リフィクル。いらっしゃい」
　サムライエンパイアで過ごしたクリスマス以来のツーショットだが、順調に仲を深めているらしく、クルトンは嬉しそうに彼の頭へ飛び乗った。
「さて、問１の答えは、日々積み重ねていた努力がアリバイとしたら……」
　リフィクルは注文したアイスティーを飲みつつ解答を披露する。
「一人目、日々肉体を鍛えている巨漢。つまりシロ」
「待って。『つまり』の意味がわかんない」
　思わずツッコむクルトン。
「二人目、スーツの似合う真面目なサラリーマン。サラリーマンと言えばホワイトカラー。白い。つまりシロ」
「さっきよりはまだ理解できるけど」
「三人目、平安時代のコスプレ歴女。これは十二単などを制作する労苦を日々重ねている。つまりシロ」
「うーん、鍛えた肉体や十二単に目をつけたとこは良かったんだけど」
「……つまり、サラリーマン」
「残念ながら不正解かな。理由の方がね」
　頭の上で苦笑いするクルトン。
　とはいえ、リフィクルが本気で謎を解こうとしている姿勢が伝わってくるだけ、問１はまだマシだった。
「さて、問２か。愛人はセッ【自主規制】に言い換えることができ」
「はいストップ」
　何故なら、問２の解答を始めた途端、とんでもないことを言い出してクルトンを慌てさせたのだから。
「それでイケメンは大体ヤリチ……」
「はいはい自己紹介は良いから！！」
　したり顔のリフィクルは、ツッコミという名の蹴りを腕へ喰らったところで全く動じず、暴走を続ける。
「アダルトショップはやっぱり媚薬とか」
「えらくピンポイントな変換だけどそもそも効果あるの？　……わたくし怪しい薬飲むのはイヤですからね」
「超働き者というと……夫はクタクタで【自主規制】」
「それ『疲れ』てるのは問題文の夫じゃなくてリフィクル自身ですわよね！？」
「飽き性っていうのもいわゆる、妻に」
「妻に飽きた！？　えっ何、妻に飽きたから媚薬を使ってセフレな愛人に走るとか超外道なお話！！？」
　連想ゲームの妙にリアルな展開へ怒って、クルトンはリフィクルの耳を引っ張る。
「つまり、答えはＮＴＲ。寝取られ展開かな」
「不正解に決まっとるわアホーーーー！！！」
　一体どこから持ってきたのか、しまいにはハリセンでリフィクルの頭をはたいて絶叫するクルトン。
「違う？　そんなバカな……」
　リフィクルはリフィクルで真面目に驚いたフリをしている。
「……さては息抜きじゃなくて別のものをヌきに来たわね……」
　ツッコみ疲れて肩で息をするクルトンだが、目の前の恋人の影響かそれとも生来の性格か、息をするように下ネタを吐いているあたり、良いコンビである。

大失敗［評価なし］

●正解とヒント
「真犯人は２人目のサラリーマン」
　再び穹へと解答のターンが移る。
「何故でしょう？」
　テーブルの上の椅子のミニチュアに座りなおしたクルトンが問う。
「一人目のアリバイは鍛錬を、三人目のアリバイは平安時代の衣装をそれぞれ積み重ねていた、であってるか？」
　穹の確認には、残念そうに首を振るクルトン。
「平安時代の衣装にそこまで詳しい訳じゃないけど和装なら畳んでしまうものだろうな、と。スーツだけは積み重ねるんじゃなく吊るすものだしな」
「う～ん。もの凄く答えへ近づいてはいるのですが」
　クルトンはそこまで言うと、意を決して解説を始めた。
「真犯人は２番のサラリーマン。そこは合ってます。何故サラリーマンかと申しますと、他の２人の特徴を端的に言えば……」
　体を鍛えている巨漢は『重』い。
　平安時代のコスプレ、即ち十二単は『襲（かさね）』と言う。
「重も襲も両方『かさね』と読めますわね。そこへ問題文であった『罪」をなすりつけると『つみかさね』になる……」
　よって、『つみ』をなすりつけられてもどうにもならないサラリーマンが犯人という事らしい。
「……我ながら無理のあるこじつけなのは承知しておりますわ。ファーストダンジョンの演算機や迷い路の真似は難しいですわね」
　と、肩をすくめるクルトンだが。
「でも、問題２はシンプルな計算問題なればこそ、破綻もしていないしきっと正解者が現れてくださると信じておりますわ」
　すぐに気を取り直して問題２の続行を断言した。
「そうだと良いな。問題２の答えは２７だ」
「うわぁん、惜しい～～！」
「考え方そのものが違っているならもう少し考えてみるけど、拗音を一つとした場合の文字数を足してみた」
「ん～、じゃあ大ヒント！　愛人って他にも同じ意味の単語がありますわよね。特撮ヒーローやロボットを数えるみたいな。そんな感じで他の単語も数字の入った熟語に変換して、全部の数字を足してくださいませ」
「了解」
「ところで、一緒にパフェを食べに行く以外にもご要望はございます？」
　すると、穹はおもむろに１冊の本を取り出した。
「……この同人誌の作者を知らないか……？」
　表紙を見たクルトンが素直にドン引きする。
「うわぁ」
　悪どい顔つきをした穹らしきキャラのイラストと『鬼畜王・穹』というタイトルを見れば、そんなリアクションになるのもやむを得ない。
「……一応言っておくが俺じゃないぞ。こんな画力はないからな」
「左様で。でもわたくしにも心当たりはありませんわ。涼風様のお知り合いがこっそりお作りになったとか？」
　言いながら、穹にページを捲らせて中を読むクルトン。
「よかった。どんなに恐ろしい内容かと思いましたけど、案外面白く読めますわね……個人的には、凌辱とか多人数でとか、愛情の無い１８禁描写はどうも苦手で」
　フィクションですからゆきずりでも一夜の過ちでも思いあまって無理やり風味でも構いませんけど、せめて目の前の相手を大事に思ってる感じは欲しいですわ——と何故か熱弁した。
　Ｈな同人誌を一気読みした恥ずかしさからの照れ隠しかもしれない。
　穹も頷く。
「登場人物が気にはなるけど、中々に実用的かついい感じのイラストだし、良い出来ではあるんだよな……」
「実用しないで……にしても、作者は一体どなたなのかしらね」
　問題２だけでなく妙な謎が増えてしまったようだ。

大失敗［評価なし］

●ひらめきの勝利
　さて。
「別解を考えてみたよ」
　とやってきたのはルキ・マーシトロン（🧟‍♂️・f24589）。
　初めての戦争参戦となった帝竜戦役にて迷いの森の謎を幾つも解き明かした彼だから、今回も期待が持てる。
「『巨漢』『サラリーマン』『歴女』の読みの最初の一文字の前に『つみ』を重ねてみよう」
　ルキはクルトンの向かいの椅子へ腰掛けて、独自に生み出した別解の解説を始めた。
「ふむふむ」
「巨漢と歴女はそれぞれ『つみき』『つみれ』という意味が通った単語になるけど、サラリーマンだけは『つみさ』という謎の語にしかならない。
　——つまり『つみ』を重ねられなかったサラリーマンが犯人だ。
　実に単純かつ筋の通った説明へ、クルトンは驚いて、
「すごーい！　すごいですわルキ様！！　むしろそちらを正解にしましょう！！！」
　と感激を隠さずに大興奮した。
「喜んでもらえて何よりだよ」
　ルキも満足そうに頷いて、次は未解決の問２へ移る。
「問２は、対応する単語はそれぞれ」
　手近にあったメモ帳へ『二号』『二枚目』『？』『？』『三日坊主』と書き連ねていく。
「アダルトショップと超働き者が難関だね……『十八禁』と『二十四時間営業』……かな？　合計すると４９だね」
　一応全てを数字のつく単語に言い換えて計算するものの、本人も納得していないのか首を傾げた。
「すごいすごい、メモの３つは当たってますわよ」
　ぱちぱちと拍手するクルトン。
「問１の別解が凄すぎてもうクリアにしたい気分ですけれど、それはそれで、ルキ様なら問２も華麗に解いてくださりそうで惜しくなりますわね」
　ならば最終ヒントですわ、と楽しそうに続けた。
「アダルトショップはほんとにアダルトショップそのものを指す単語がありますの。サムライエンパイアでの呼ばれ方、と申せば……答えも同然でしょうかしら。超働き者は言い換え方が悪うございましたわね。多方面で何人分もの活躍をすること、他には……お寺とかにある仏様、仏像の見た目を表す四字熟語でもありますわ」
「なるほど、ありがとう。もう一度考えてみようかな」
「正解なさった時は、何かご要望ございます？」
「そうだね、解ぼ……いや、フェアリーの生態について詳しく教えてもらおうか」
　和やかなはずの会話の中に何やら不穏な単語が紛れ込んでいて、クルトンは思わず固まった。
「解ぼ……ああいえ、フェアリーの生態ですか。さして人間と違いが、翅と大きさ以外にありますかどうか」
「そうなんだ」
「……意味なく解剖される勇気はありませんけど、なんなら盲腸になった時の手術とかお願いしましょうか？？」
　妙な気遣いを挟みつつ、謎解きタイムはもう少し続くようだ。

大失敗［評価なし］

●因果応報？
　解答のターンはみたび穹へと戻ってきた。
「二号＋二枚目＋四目屋＋八面六臂＋三日坊主＝２５」
「正解ですわ！」
　ルキの奮闘がかなり効いたのだろう、ようやく正解を導き出せたようだ。
「……アダルトショップと超働き者は、一寸微妙で自信が無かったけど」
「左様ですわね。後者はわたくしも反省点だと思いますわ」
　そう頷きつつも、正解してもらえてホッとするクルトン。
「自分で提示しておいてなんだけど１８禁店とかの方がまだ意味が通じる気がするし、他の言葉も最近はあまり聞かないようなものが多いな……」
「あまり聞かないからこそクイズにできるんじゃありませんの。１８禁店は他にも現代風なあれこれが引っかかりそうですけど……」
　ふと、いつものように感想を述べているようで、何やら穹の様子がおかしいことに気がついた。
「なんだか、妙にお顔の色がお悪いようですけれど……さて、正解者様へのご褒美、わたくしへのご要望はいかがいたしましょう？」
「ああ、うん……」
　何故か真っ青な顔色をしている穹は、地を這うように低い声で苦しそうに唸ったものだ。
「……今すぐユーベルコードを解除しろ……」
　それというのも、穹はさっきまで、やたらと格好良い穹とクルトンの幻に無理やり正座させられて、絶賛お説教タイムを受けていたのだ。
　彼らは、クルトンのユーベルコード『蒼翅大冒険』で喚び出された、真面目な性格と整った容姿、優美な立ち振る舞いを兼ね備えた、いわば完璧な幻たちなのである。
「全く、我が素体ながら日頃のおっぱいダイブもそうだが、バレンタインの際のおっぱいチョコ作りとやらも理解に苦しむね」
「ましてやお知り合いのうら若い女性の皆々様までお呼び立てして、あんな破廉恥な完成品を見せつけるだなんて、セクハラ以外に何と申せましょうか」
「極めつけはあの薄い本を堂々と昼日中へ椀種へ読ませるなどと……」
「破廉恥通り越して悪趣味ですわ。変態としか思えませんわ……」
　何せ本物とは段違いにクソ真面目な性格の２人であるから、穹への余計なお説教は延々と続いた。
「ああ。あれですの。いやまあ、さっきは妙なものを読まされて大変恥ずかしゅうございましたから、ちょっとは反省していただこうと思いまして」
　しれっとほざく本物のクルトンだが、
「……解除出来ないなら仕方が無い。俺は夢の俺へ仕掛けるから援護は任せた……この世で一番殴り易い相手だしな 」
　心身ともに追い詰められた本物の穹がついには武器を持ち出して臨戦態勢へ入ったので、慌ててユーベルコードを解除するのだった。
「ああもう、同じ顔で殴り合うだなんて不毛な喧嘩はおやめなさいな。解除いたしますわよ」
　ともあれ、秘密結社オリュンポス支部主催でひっそりと行われた謎解き大会は、こんな波乱のうちに幕を閉じたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2020年06月15日