#アポカリプスヘル
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荒廃したアポカリプスヘルの辺境。
在りし日には賑わっていたであろう半壊した酒場に風が吹き込む。
塵と砂が舞い視界にノイズが走るが、風がおさまるとカウンター横のコルクボードが目についた。
この荒れた世界において酒場とは道楽のために飲み食いする場所ではなく、情報交換の貴重な場として活用されていたのだ。
ただし、この街が崩壊した今となってはその交換相手など誰もいない。
目の前の物言わぬコルクボードを除いては。
ボードに貼り付けてあった一枚の色あせた紙には、『巨大な建造物らしき影と無数に光る眼』が映る写真とその下に数字が並んでいる。
これはこの世界特有の『手配書』だ。人類に対しその脅威度によって賞金額が付けられ、誰でもいいから勇気と能力あるものによって退治されるのを待ち望まれているのだ。
手に取った手配書に目を落とし、名前を確認すると『超重戦車』とあり賞金額もこの世界では破格の桁数だ。
顔を上げて周囲を見渡すと、それも納得する。
なぜならこの賞金首こそ、この街を破壊した張本人なのだから。
「ってことになってるんだって!」
そういうと、グリモア猟兵の明石・真多子(軟体魔忍マダコ)が動画の停止ボタンを押す。百聞は一見に如かず、拙い説明より動画を見せたほうが楽な現代っ子だ。
「オブリビオン・ストームで発生した自我を持つ戦車達が街を破壊して回ってるみたい!なんか『文明』に対して深い憎しみがあるみたいで、施設や乗り物なんかを執拗に攻撃するんだって!もうボカーンドカンって!!」
六本の腕をしっちゃかめっちゃか振り回し、なんとか身振り手振りで状況を説明する。
「幸いにも文明的な建設物や乗り物が優先みたいで住民の人達は避難済みだけど、このまま放置してたら住むところが無くなっちゃうよ!」
もうダメだーと大仰に六本の腕で天を仰ぐ。
「そこでこれ以上被害を広めないために『おびき寄せ作戦』を考えたよ!!まず一段階目は避難済みの崩壊したこの街の建設物や乗り物を直して【文明的な物でいっぱいにしよう】!二段階目は、復興したら集金首が偵察戦車を送り込んで来るはずだから【偵察戦車達をやっつけて】!最後は賞金首本人がやって来るはずだから、超AI野良戦車の【『超重戦車』を討伐してね】!」
そういうと、真多子はすぐさまキミ達をグリモアで転送し始めた。
ペプシ派
戦車と戦車が押し寄せて来るシナリオです。
被害は考えずにとりあえず大暴れしたいならどうぞ。
第一章は【文明的な物でいっぱいにしよう】です。街は既にオブリビオンによって破壊されているので、身動きとるのも戦車乗るのも一苦労なほど瓦礫だらけです。
瓦礫を除けたり、建築物を再建するのも良いですし、乗り物や物資など文明的なものなら何でもOKなのでいっぱい作りましょう。
第二章は【偵察戦車達をやっつけて】です。なんと犬戦車がやってくるので返り討ちにしましょう。
犬は滅茶苦茶デカいので注意してください。再建した街は誰も住んでないので破壊しても大丈夫です。
第三章は【『超重戦車』を討伐してね】です。犬戦車の根城でもあるこの戦車は超超巨大でともかく大きいです。
倒すのは大変かもしれませんが頑張ってください。
倒した賞金は最寄りの街で貰えるみたいです。(賞金は本シナリオ内でしか使い道はありません。)
第1章 日常
『危険施設の解体』
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POW : 瓦礫を撤去するなど、力仕事で貢献する
SPD : 危険な機材などを慎重に解体したり、周囲の避難活動などを行う
WIZ : 施設の状況を確認し、必要な作業などの計画を立てて実行する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エリン・ヘブンズドール
POW
文明に憎しみを……野生に還ってしまったのですね…?。
そんな野生溢れる子達はきっちり破壊です。その為には先ずは復興ですか…戦車による復興作業…むむ。
それに今回の手札は砲撃2枚、盾3枚、加速1枚……私達(戦車含む)に出来ること……これなら。(スペックを見直して)
基本「盾」で戦車の偽神細胞を活性化。捕食のオーラ防御を展開し瓦礫の中を突き進んで均す、捕食式蹂躙舗装で貢献です。
あとは硬いもので粉砕しても構わないなら「砲撃」の鎧無視攻撃で粉砕ですね。
この調子で動き易い場所に作り変えますよ。
グリモアの光が納まりゆっくりと目を開けると、戦争でもあったのかという程に荒れ果て崩壊した街並みが映る。
眼下を見下ろせば、自分が降り立ったのも倒壊した建物のコンクリートを道路に散りばめた瓦礫の上のようだ。
ただし、本当にこの下に道路があるのかは分からない。半壊した建物が等間隔に並ぶ中央なのでそう思っただけである。
不安定な足場をか細い脚で恐る恐ると踏み締め、辛うじて地面が露出している箇所へと降りていく。
エリン・ヘブンズドール(ミレナリィドールの戦車乗り・f24769)がようやく一息ついて周囲を見渡すと、凄惨な光景が彼女の視界を埋め尽くした。
どこも火薬の臭いが染み付き、生活感が失われた廃墟と残骸。執拗なまでに破壊され尽くしているこの街からは、襲撃者の執念にも似た憎しみを感じられた。
「なんて惨い光景なんでしょう……。これほどまで文明に憎しみを……彼らは野生に還ってしまったのですね……?」
そう呟くと、エリンは目を伏せ悲しそうな表情を浮かべた。
自我を持ち知性を有する作り物。この街を襲ったオブリビオンがそのような戦車であると聞き、その境遇をミレナリィドールの自分に重ねたのかもしれない。
掘り出され起動した自分を期待する人達が、役に立たないと知るや途端に手の平を返したあの態度。
あれを経験した時、自分もこの世界と自分の身体を憂い打ちのめされたものだ。あのままの境遇に置かれていたならと思うと、ほんの少しだけ共感しないでもない。
しかし、今はあの頃とは違う。
エリンは自力で自身の持つ潜在的能力を学習し、なんとか扱えるようにまでなったのだ。
「だから私はあの戦車さん達とは違います。知性を捨て、野生溢れる子達はきっちり破壊です。その為には先ずは復興ですか……戦車による復興作業……むむ。」
自身に秘められた能力。それは『デュエリスト』として特殊な『偽神戦車』を制御する力だ。
ただし、制御と言っても思いのままに操れるほどこのジャジャ馬は大人しくはないのだが。
一先ず『デッキ』を掲げて念じると光り輝き、この開けた場所に偽神戦車が召喚される。
光に包まれた戦車がドンと地を鳴らすと、周囲の瓦礫からもうもうと埃が舞い上がるので、せき込みながらも急いで乗り込んだ。
「『デッキ』セット、デュエルスタンバイ!」
制御盤に『デッキ』を置いて起動させると、車内が淡く光りエンジンが低い唸り声を上げ始めた。
この戦車はかなり特殊な制御方法をしており、この『デッキ』に積まれているカードで命令を送ることになっている。
いつものように最初に6枚引くと(これも枚数が決まっているらしい)、内訳が砲撃2枚、盾3枚、加速1枚。バランス良く、まずまずの引きだろう。
このジャジャ馬は、上手くカードを引く運命力が無いとどうにもならないことがまま起こるから困りものだ。
「この手札から私達(戦車含む)に出来ること……これなら。」
エリンが選んだ作戦は『道』を作ること。
道とは、古来より文明が発展するための足掛かりであり、流通があるからこそ文明の発達があったのだ。
戦車でも闊歩出来る丈夫な道を整備すれば、賞金首も注目することだろう。
何よりもこの敵を招き入れ、この偽神戦車が動き回るためにも最優先事項だ。
「私のターン。盾をセット、そのまま突き進みますよ!」
早速盾のカードを使用すると、偽神戦車の外部装甲が淡い光を纏い高速振動を始める。
この振動する装甲を盾に瓦礫へ突き進むと、豆腐を押し潰すかのように易々とコンクリートを微細に切り刻み、削り抉っていった。
盾の効果はそれだけではない、削るとともに捕食していきエネルギーへと変換していくのだ。これにより継戦能力にかけては他のカードの追随を許さない。
さらに余剰に吸収したエネルギーは道路の舗装へと変えて排出し、進むだけで整地が行われていく。
加速のカードが乏しいためにやや時間を要したが、小一時間ほどで街を一周できる程に整地が完了した。
「ふぅ、私の歩いた跡が道になるってところでしょうか。」
自力で自身に秘められた機能を手探りで学んで来たエリンだからこそ、その言葉には説得力が感じられる。
やれることはやった。後は迫りくる脅威に立ち向かいだけだと、決意を固めるとエリンは遠く地平線の向こうを睨み付けたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
天道・あや
新年初お仕事!そして初アポカリプスヘルッ!ここでもどかーんと全力で…頑張るぞー!おーー!!
文明!それはつまり…文化!という事であたしが直すのは文化的なもの!つまりお店!という訳で服屋だった場所を【ダッシュ】で街を駆けて探して見つける!
そして発見したらまずは中の壊れた物や瓦礫とかを撤去!【サウンド・オブ・パワー】でパワーアップしたあたしならどかせたりする筈!そしてあらかた撤去したら持ってきた箒とかで店の中をパッパッパ!とお掃除!残ってる服とかも軽く叩いて綺麗にしてそしてマネキンやらハンガーラックにかけて…完成!
よしっ!野良戦車さんたち!いつでも来いっ!……でもどうやって戦車と戦おう…?
グリモアの光が納まりゆっくりと目を開けると、戦争でもあったのかという程に荒れ果て崩壊した街並みが映る。
初めてこの世界アポカリプスヘルへと足を踏み入れたものの、事前に聞いてはいたがまさかこれほどまでに荒廃しているとは思わなかった。
誰かが整備したらしく道路だけは街に敷かれているが、およそ人の住める環境ではない。
少なくとも外敵がいないことを確認すると、天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)がようやく一息ついて周囲を見渡すと、凄惨な光景が彼女の視界を埋め尽くした。
どこも火薬の臭いが染み付き、生活感が失われた廃墟と残骸。執拗なまでに破壊され尽くしているこの街からは、襲撃者の執念にも似た憎しみを感じられる。
住むべき街を追われた人々からは、多くの笑顔が失われたに違いないだろう。そのことを考えると、あやの身体の奥に火が着いた。
「新年初お仕事!そして初アポカリプスヘルッ!ここでもどかーんと全力で……頑張るぞー!おーー!!」
燃える闘志をさらに焚き付けるように自分を鼓舞すると、溢れ出る元気を身体で表現するように両腕を天高く掲げて跳び上がった。
ふいに、この街を抜ける風があやの艶髪を撫でる。この街にあやという新しい風が吹き込んで来たということなのかもしれない。
一先ず気合いを入れた所で街の様子を歩いて見て回るが、やはりどこも最初に降り立った場所と同じような凄惨な光景が続く。
かつてはここも明るい商店街であったのではないだろうか、そう考えると今の暗く瓦礫しかない通りは酷く寂しく感じる。
せめてもっと明るくなれるものがあれば、今後ここに戻ってくる住民達にも笑顔が戻るだろうに。
そう考えた瞬間にあやに閃きが走る。
「そう、そうだよね!文明、それはつまり……文化!という事であたしが直すのは文化的なもの!つまりお店!これがあれば誰だって笑顔になれちゃうはず!」
自身が明るくなれるもの。自分が明るくなれるものなら皆嬉しいはず。そこから逆説的に考えたものがお店だった。
「あたしはウィンドウショッピングで眺めているだけでも楽しいし、ただそこにあるだけでも華やかで明るい気分になれちゃうもの!ここの人達だって分かるはず!」
そも、着飾り、歌い、踊るなどの娯楽文化は生きるためには必要のないものである。
文明が発達し、人の営みが豊かになったからこそ発展した娯楽文化こそ、文明の象徴ともいえるのではないだろうか。
これならばきっと賞金首も注目することだろう
何よりも生きることに必死な荒廃したこの世界には、娯楽というオアシスで笑顔を与えてあげるのが最優先事項だ。
なぜなら自分は皆の未来を照らす星なのだから。
善は急げとあやが駆け出すと、一通り歩いて見て回っていた際に見つけた服屋らしき廃墟へと急ぐ。
薄暗かった路地を抜け大通りへと躍り出ると、人の往来の多い交差点付近にその店跡があった。
瓦礫の隙間から見える、爆炎で焼け残った生地の数々。最初は人かと思ってギョッとした半分に折れたマネキン。ショーウィンドウだったであろう、通りにまで散らばるガラスの破片。
「ふふふ……あたしこと名探偵あやちゃんには全部お見通し!ズバリここが服屋よ!」
たまたま持っていたシャボン玉をぷかぷかパイプに見立てふかしながら、ビシリと目の前の廃墟に指を突き付ける。
大方の予想通り服屋なのだが、あや本人はとても満足そうであった。
見つけたまではいいが、現在はただの瓦礫の山。
ここからどうにか自力で建てないさなければ話にならない。
こんなどうしようもない壁にぶつかった時、いつもあやは歌を歌う。
挫けそうなときも夢をあきらめかけた時も支えてくれた、自分を応援する自分のための応援歌を歌うのだ。
夢見る少女が努力し、シンデレラステージを駆け上る歌詞。
その自分の口から紡がれていく歌に、あやの心が自然と熱く高鳴っていく。
「んん~~~パワァアップ!!いくぞあたし!やれるぞあたし!よし!」
すると、小柄な少女では到底持ち上がらなうような瓦礫をスイスイと持ち上げては撤去し、使えそうな瓦礫を組み合わせて壁や屋根を補強していき外観を作る。
床に積もった塵や埃も、廃材を組み合わせた即席の箒でササっと吹き飛ばし、使えなくなった服を濡らして水拭きした。
さらに、街中を駆け回り辛うじて無傷だった服をかき集め陳列すると、今では立派な服屋として復興していた。
パンパンと手を叩いて汚れを落とすと、ずらりとショーウィンドウやハンガーにかけられた服を見つめて満足そうに頷く。
「よしっ!これで完璧!野良戦車さんたちいつでも来いっ!……でもどうやって戦車と戦おう…?」
大成功
🔵🔵🔵
蜂須賀・美緒
敵をおびき寄せて一網打尽!実に良い考えね!
問題は敵は街を木っ端みじんにするぐらいの戦力を有しているということだけど...
アタシたちには同じくらいの気合と根性が備わっているから何の問題はないわね!
(あははは!と高笑いをする)
さーて...瓦礫を撤去するにも力持ちではないからなーアタシは
(腕を組んでピンと閃き)
UC発動!
Soldier!電気設備系統の機器を片っ端から集めなさい!
『サバイバル』術で簡易的な電飾を高い場所に作るわ!
電気あるところ文明あり!
これで誘蛾灯のようにオブリビオンをおびき寄せれるはず!
作戦開始よ!
ビー...ハイヴ!
(腕をクロスさせ決めポーズをする)
グリモアの光が納まりゆっくりと目を開けると、戦争でもあったのかという程に荒れ果て崩壊した街並みが映る。
事前に襲われた街だとは聞いてはいたがまさかこれほどまでに荒廃しているとは思わなかった。
誰かが整備したらしく道路だけは街に敷かれているが、およそ人の住める環境ではない。
少なくとも外敵がいないことを確認し蜂須賀・美緒(BeeHive・f24547)がようやく一息ついて周囲を見渡すと、凄惨な光景が彼女の視界を埋め尽くした。
どこも火薬の臭いが染み付き、生活感が失われた廃墟と残骸。執拗なまでに破壊され尽くしているこの街からは、襲撃者の執念にも似た憎しみを感じられる。
己が使命、このアポカリプスヘルを新天地として種の発展を背負う美緒にとって、このような外敵に繁栄を邪魔されることは許せない。
まだ未熟ながらも女王として彼女の内に滾る生まれながらの宿命が、何としても排除すべしと叫んでいた。
「そのためにも、奴らをここにおびき寄せて一網打尽というのは、実に効率的で良い考えね!そう効率!とても良い言葉よね!虫を体現するようだわ!」
機械的ともとれる規律の取れた集団行動、時に成長や環境の変化に合わせ進化していく最適化、種を残していくのにこれほどまでに効率的な者たちは中々いないだろう。
彼女の種はその中でも進化と最適化を絶えず繰り返してきた効率蟲、もとい効率厨な種族と言っても過言ではないだろう。
何より彼女の存在こそがそれを証明しているのだ。
「ま、直近の問題は敵は街を木っ端みじんにするぐらいの戦力を有しているということだけど……。」
美緒が呟きながら周囲を見ると、街全体が壊滅している惨状が広がっている。
事前の情報からも敵は超巨大であり、この瓦礫の山を築くのはさほど難しくなかったと推測された。
さらには多くの配下を従えており、先ほど感じた執念の通り草の根一つ残さぬ勢いで街を破壊したのだろうことは想像に容易い。
「それに関しては、アタシ『たち』にも同じくらいの気合と根性が備わっているから何の問題はないわね!あははは!」
多くの配下を従えているのは女王たる美緒も同じである。
そこに、種を進化させ繁栄してきた歴史から来る自信と気概が彼女の背中を押した。
ひとしきり高笑いすると、腕を組んでこの荒廃した街を散策する。
敵をおびき寄せる『おとり』は何がいいかと考えるためだ。
勿論、いずれこの世界に種を根付かせるための下見も兼ねているのだが。
つかつかと何故か整備されていた道路を歩いていくが、結局どこも半壊した建築物か元の形状も分からない瓦礫の山。
変わらぬ景色に飽き飽きとしてきたところに奇跡的に健在していた服屋が目につく。
しかし、近付いてよく見てみれば継ぎ接ぎだらけで、どうにも後から復興されたようだ。
外観はともかく内装はそれなりに綺麗にされており、この廃墟の世界において明るく煌びやかに光る店内には美緒にも惹かれるものがある。
「なるほどねぇ。確かに瓦礫も建て直せば立派なお店になるわよね。そうは言っても瓦礫を撤去するほど力持ちではないからなーアタシは……。」
先客が残した軌跡をぼんやりと眺めていると、美緒にあることが突然浮かび上がる。
『繋ぎ合わせる』のは何も瓦礫でなくとも出来るではないか、と。
「そうだわこれよ!Soldier!電気設備系統の機器を片っ端から集めなさい!」
美緒の掛け声が上がると共に、どこに潜んでいたのか無数の蟲が彼女の周囲に集まり、一斉に街中へと散った。
この廃墟の街には、大雑把に破壊されたために無傷の電飾などが豊富に眠っているはずだ。
美緒が狙っているのは灯。人類は火を、夜を照らす光を手に入れたことにより大きく発展を遂げている。
よって電飾による灯こそ文明の象徴ともいえるだろう。そしてこれならばきっと賞金首も注目するはずだ。
何よりも遠くからでもよく目立ち、囮としても最適だ。少ない資源での最大効率の効果を期待できる。
電線が全て断ち切られたハゲ鉄塔を見つけると、美緒の指示で次々と電飾による飾り付けが巻き付けられていく。
少し時期が違うが、クリスマスイルミネーションとしてはかなり上等な部類のセンスだろう。
「これで誘蛾灯のようにオブリビオンをおびき寄せれるはず!さぁ作戦開始よ!ビー……ハイヴ!」
満足気に美緒が頷くと、腕をクロスさせたポーズで配下に合図を送り電飾へ通電する。
電力も電気設備系統の機器を組み合わせた発電機だ。
頂上が3連ハニカム印に光る鉄塔を背に、遠く地平線の向こうを睨み付けるのだった。
大成功
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マディソン・マクナマス
やれやれ、航空支援も無しに対戦車戦かよ……
ま、いいさ。戦車や航空機が支援してくれる軍に雇われた事なんざ殆ど無かったし、できる事をしますかね
まずは砲撃対策だな
つっても周りにあるのは瓦礫ばかりだし、こんなもんでバリケード作っても諸共吹き飛ばされるのがオチだが……それでいい。敵の砲撃を引き付ける擬装陣地を各所に作る
終わったら酒飲んで待機、UCで現れた神様の幻覚と雑談でもするか
『こんなちゃちな陣地で騙されるかのぉ?』
いやいや、寧ろ生き残りが必死に作りました感あってリアルじゃね?
『相手さんが間抜けじゃなかったらお前……死ぬぞ、マディソン?』
死なねぇって
俺はな、死ぬのはもう少し善行積んでからって決めてんだ
グリモアの光が納まりゆっくりと目を開けると、戦争でもあったのかという程に荒れ果て崩壊した街並みが映る。
事前に襲われた街だとは聞いてはいたがまさかこれほどまでに荒廃しているとは思わなかった。
誰かが整備したらしく道路だけは街に敷かれているが、およそ人の住める環境ではない。
少なくとも外敵がいないことを確認し、風に吹かれて転がる毛玉……もといマディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)が酒瓶をあおってアルコール臭の残る息を風に乗せた。
息を吐き切ると、やたらと大きいサングラス越しに見る周囲の様子を横目で眺めるが、どこまでも凄惨な光景が視界を埋め尽くした。
鼻をくすぐる火薬の臭いが吸い込む空気染み付いており、生活感が失われた廃墟と残骸が彼の思い出したくもない過去を嫌でも想起させて堪らない。
おまけに、執拗なまでに破壊され尽くしているこの街からは、襲撃者の執念にも似た憎しみを感じられ争いの醜さを煮詰めたようだ。
目の前の景色に、マディソン苦虫を噛み潰したような顔で牙を剥きだし、何処かの国の悪態のらしきものと一緒に唾を吐き捨てる。
「チッ……やれやれ、航空支援も無しに対戦車戦をやれってのかよ……。」
今すぐにでも酒に飲まれてこの光景を忘れてしまいたいが、彼も仕事で来ている以上そうはいかないのがもどかしい。
しかし彼も戦場傭兵として雇われたからには、ヤレと言われれば給料分はキッチリやってみせるつもりだ。
「ま、いいさ。戦車や航空機が支援してくれる軍に雇われた事なんざ殆ど無かったし、できる事をしますかね。」
堂に入った野良猫のようなしゃがれ声で呟くと、ボサボサの前髪を酒で湿らせた手で後ろに撫でて気合いを入れる。
何もない街だが風通しだけは抜群だ。気化したアルコールがスゥっと頭を冷やして心地良い。
酒で酩酊した頭の中も幾分かマシになった。
「さてさて、しがない猫に何が出来ますかね、と。」
軽く身体を動かし脳に血液を送ろうと、何故か整備されていた道路を征く当てもなく歩く。
どこまで行っても見えるのは廃墟が連なるばかりで碌な物な何もない。
そもそもこの街をこのような不毛の地に変えたのも、あの襲撃したオブリビオン達だろう。
「……となると、まずは砲撃対策だな。つっても周りにあるのは盾にもならない脆い瓦礫ばかりだし、こんなもんでバリケード作っても諸共吹き飛ばされるのがオチだがな。」
まだアルコールが残っているのか、普段からの癖なのか、つい独り言が多くなる。
マディソンの言う通り、一度破壊されているボロボロのコンクリート魂などをまとめた所で、鉄筋で繋いですらいない構造物未満の代物では少々重い三角コーンを置くようなものだろう。
「だけどそれでいいのさ。」
戦地で一か所に兵を固めた所で空襲が来れば一網打尽。良くて包囲されて万事休すだ。
「しかし、猫の手も借りたくなるほど戦線を広げればどうだ。」
敵は戦力の分散を強いられるはずだ。幸いこの街には守るべき対象もいないのだから、各個撃破していけばこちらにも分がある。
自分の思考と自問自答し、酔った頭を整理していく。
大体の大筋は立てた。これでもしも上手くいかなかったその時考えればいい。
頭を使う時間が終わるや、景気づけに酒をあおった。
アルコール不足で手が震えていては、陣地作成作業もままならないからである。
後はひたすらに頭を使わず簡易陣地を各地に建てていった。
瓦礫を寄せ集め、人が中に隠れられそうな円形バリケードや土豪のように並べただけの、本当に簡素なものだ。
それでも道を塞ぎ、遠目からでも目を惹く程度にはなっているはずだ。
あらかた作り終えると、マディソンはヒンヤリと冷たいコンクリートにもたれて再び酒をあびる。
先兵が襲ってくるまでは、酒でまどろみ時間を忘れるのだ。
「随分と御立派な積み木遊びじゃなマディソン。奴らこんなちゃちな陣地で騙されるかのぉ?」
不意に余生を過ごしているような老人の声がマディソンの耳に入る。
しかし彼は声の主を探そうともしない。いつものことだからだ。
「いいんだよこれで。寧ろ生き残りが必死に作りました感あってリアルじゃね?」
酔いが回って来たのか瞼が重い。半開きの眼で酒瓶を見つめ、マディソンがぼそぼそと言葉を返す。
「しかしのぉ、相手さんが間抜けじゃなかったらお前……死ぬぞ?」
「死なねぇって。俺はな、死ぬのはもう少し善行積んでからって決めてんだ。」
姿の無い声がマディソンを心配するが、そんなことなど何処吹く風と瞼を閉じて彼が答える。
しかし、相手が妄想だろうと何だろうと、話相手がいるのは安心する。
戦地で孤独になるのは耐えられない。
この後も他愛のない話を続け、彼は襲撃の時を待つのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
わぁい戦車!拙者戦車だーいすき!
ただ復興するだけじゃなんか芸が無いよね!という訳でビルを修復がてら【罠使い】らしく良い感じに倒壊するように爆薬を仕掛けるでござるよ!
ただ一人でやるとハチャメチャ面倒でござるね!適当に人手を集めたいが…
うわー誰こいつら!【俺達】と名乗ってるけど誰!?ねぇ…誰なの!怖いよぉ!
とにかくこの俺と名乗るヤツらを交えてビルの修復をしていきますぞ!
外壁とかデザインやらのあれこれは彼らのセンスに任せよう
ある程度進んだら後は任せてお外に飾る文明的なモンを作ろう
今の時期に合わせてO・ショウガ2な世界にしよう!
うム!世紀末門松に世紀末注連縄、余り物のパンジャンドラムを添えますぞ!
グリモアの光が納まりゆっくりと目を開けると、戦争でもあったのかという程に荒れ果て崩壊した街並みが映る。
事前に襲われた街だとは聞いてはいたがまさかこれほどまでに荒廃しているとは思わなかった。
誰かが整備したらしく道路だけは街に敷かれているが、およそ人の住める環境ではない。
少なくとも外敵がいないことを確認し、市街地用迷彩服に身を包む髭面の男エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)が小石を蹴飛ばし、鼻をくすぐる硝煙の臭いを肺いっぱいに取り込んで口角を上げる。
彼の目の前にはどこまでも凄惨な光景が視界を埋め尽くしているはずだが、少しも気落ちすることなくむしろ心躍らせていた。
「んん~~~……ゴッホッゴホッ!この焼き過ぎたトーストより酷い焦げ臭さ、それにやり過ぎなくらいの埃っぽさがいかにも最前線って感じでござるね。」
自称歴戦の傭兵であるエドゥアルトにとっては、ある意味日常ともいえる世界が広がっているのだ。
それに加えて彼にはまだ余裕が見える。汗の一つもかかずに、サバゲ―を遊びに来たくらいの感覚ではしゃいでいるようにも取れる態度だ。
「これから戦車が襲ってくるんでござるか。ヌフフ……わぁい戦車!拙者戦車だーいすき!楽しみですぞー!うーんしかしあれですな、ここまで荒廃してるなら放射能汚染地帯や突然変異生物とかないと、ちょっと物足りませんぞ。」
現在の彼を知る者は誰もその素性が分からないエドゥアルトの過去だが、世紀末を煮詰めたような世界を渡っていたらしき知識や装備からも、その波乱万丈な人生の片鱗が伺える。
勿論、実際に証明のしようがないため胡散臭くはあり、不審者であることに変わりはないのだが。
「さぁて張り切っていきますぞ!ただし普通に復興するだけじゃなんか芸が無いよね!ここは拙者の大好きな爆破オチトラップを仕掛けるでござるよ!爆破オチなんてサイテーとか言わせないですぞ!様式美でござるよ!!!」
転送される前から準備していたのか、エドゥアルトの背後には大量のボストンバッグの中に遠隔起爆型の爆弾が詰められていた。
火薬量は一か所で起爆すれば軽くこの街の一角が消し飛ぶ威力であり、火遊びには過ぎた量だ。
しかし当然ながら、設置の知識があっても一人でこの量をさばききるのは骨が折れる。
事前に爆弾をかき集めるのに忙しく、流石に人手の手配までは出来なかったので困ったことになった。
「ぐぅ……いざこの量の爆弾を一人で設置する思うとハチャメチャ面倒臭いでござるね!あ~せめて避難していない現地民が残っていれば……。」
最初の張り切りは何処行ったというのか、ここまで勢いだけで行動してきたエドゥアルトが不意に現実を突きつけられてしかめ面をする。
元からこの作戦前に人はいないと聞いていたし、先程周囲を確認した時ですら人の痕跡はなかったのだ。無いものねだりしても意味はないとは分かっていても愚痴は零れて来る。
諦めた様子で嫌々と爆弾の方へと振り返ると、突然目の前に知らないおっさんの顔のドアップがエドゥアルトの視界を占領した。
「どぅわ!!??どちら様でござる!?」
「俺は俺だぞ俺。」「俺も俺だぞ俺。」「奇遇だな俺だって俺だぞ俺。」「お前もか、俺も俺だぞ俺。」「やはりそうか。実は俺も俺なんだぞ俺。」
エドゥアルトが驚き身体を仰け反ると、目の前のおっさんが一人どころか大量にいることに気が付く。
どの顔もまったく面識は無いが、この世界では異質な赤チェックの服装から原住民でもないことは明らかだ。
つまり誰だか全く分からない謎の集団が突如現れたのである。
「うわー誰こいつら!みんな俺って名乗ってるけど誰!?ねぇ……誰なの!怖いよぉ!!」
一瞬オブリビオンかとも思ったが敵意は無さそうであり、とりあえず言葉は通じるらしい。
エドゥアルトは訝しんだが、ともかく猫の手も借りたかったので爆弾設置を手伝わせることにした。
街中にはいつの間にか簡易的なバリケードなどが建てられており、敵を誘導する導線として利用できそうだった。
そこを起点に、エドゥアルト指導のもと巨大ピタゴラ装置の建設が始まる。
まずはある程度ビルを復興し、オブリビオンが脱線しないようピタゴラの道を作る。デザインは適当に投げたので知らないおっさんが何とかするはずだ。
途中、世紀末注連縄トラップによる拘束、続けて世紀末門松に仕込んだロケット砲斉射と世紀末門松落としによる串刺しスポットを設ける。
「うム!素晴らしい出来映えですぞ!」
完成経過を眺め、エドゥアルトが満足そうに二カッと笑う。
「そして最後は目玉の巨大パンジャンドラムボーリングでフィニッシュでござるよ!」
注連縄や門松砲や柵によって敵の動きを止め、このパンジャンドラムの化け物を転がし爆破オチに持っていくのだ。
エドゥアルトは何の疑いもなく意気揚々と巨大なピタゴラ装置を作り上げていく。
しかし、パンジャンドラムは真っ直ぐ転がらない物。この装置で爆破オチするのははたしてどちらになるのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『タンクドッグ』
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POW : ドッグマックス
【全方位に連続した砲撃を行い、砲弾】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : ドッグ&パンツァー
自身が操縦する【無限軌道と多砲塔】の【性能を強化する事で、機動力】と【攻撃力】を増強する。
WIZ : ドッグパレードマーチ
自身の【瞳】が輝く間、【多砲塔から放たれる砲撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
イラスト:kamiya jun
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「オォォォォォン。」
キミ達が文明的な物を作り上げると、遠くで遠吠えが上がる。
人は避難したが、街中に野犬でも残っていたのだろうか。
ふと気になり視線を向けると、遠くに獣の姿が見えた。
しかし、キミ達がよく知る獣とは少し違う。犬のようではあるが、何か荷物のような物を背負いこんでいるようなのだ。
遠く小さく見えた犬のような生き物は、突然こちらへ駆けて来た。
人が残っていると思い餌でもたかりに来たのだろうか。
微笑ましく思っていたキミ達だが、その暖かな気持ちははすぐに消え去った。
なぜならあの犬がどんどん大きさを増していくからだ。
なんと遠くにいたために小さく見えていただけで、実際には家ほどの大きさもある人より大きなタンクドッグだったのだ。
その背には戦車を丸々一両乗せており、大きな顎はコンクリートを易々と砕く。
この容姿がハッキリと見える位置にまで接近すると、タンクドッグが再び遠吠えを上げる。
仲間に獲物の発見を伝えたのだ。すぐにでも群れをなして駆け付けるだろう。
キミ達は、今すぐにでも彼らと戦う覚悟を決めなければならない!
マディソン・マクナマス
砲撃対策はしたがいいが、生憎戦車装甲を抜けるような装備は持ち合わせてねぇ……ん?
……犬だな。生身だな。戦車の利点の重装甲全部捨ててんな。やっぱ犬はクソやな
……あー、ヨセミテ通信基地聞こえるか。敵砲撃地点の予測を頼む、オーバー
作製した偽陣地を狙う敵の側面の荒野に潜伏
伏せたままスマートドラッグを【ドーピング】して集中力を高め、UC【ヨセミテ通信基地応答セヨ】により、応答の無い通信機から(ただの妄想か、マディソンには何か聞こえているのか不明だが)情報を得る
敵が偽陣地に砲撃を開始したら側面から対UDC軽機関銃による【制圧射撃】を浴びせる
砲撃はUCで着弾点を予測し回避、絶えず味方の【援護射撃】を継続する
どこもかしこも寂しげに崩壊したこの街に、ぽつりぽつりと人為的に瓦礫を寄せ集められた円形バリケードや土豪が散見される。
瓦礫で作られてる以上、明らかに崩壊後作られた物だろうことは一目瞭然だ。
これを敵の偵察戦車が見れば飛んで来るのは間違いない。
そして、これらを作ったマディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)はというと、餌にかかるまでの時間つぶしにと酒をあおり、火照った身体を冷たいコンクリートで冷ましていたのだ。
目を閉じて力を抜いた姿勢でぶつぶつと一人言葉を繋ぎ、アルコールによって見えている誰かと談話しているようである。
そんなことを続けていると、野犬の遠吠えと共に地面が僅かに揺れ出した。
「ん……なんだ犬か。まったく犬ってのは盛っていないときでも四六時中五月蠅くて気に喰わなねぇな。俺はお前らなんかじゃなくて戦車を待ってんだよ。」
野犬の声に目を覚まし、ひょっこりとバリケードから頭を出して確認するマディソン。
遠くに見えるのはやはり犬だが、どうせバリケードの中に入れば普通の犬では手も脚も出ないのだから放っておこう、そう思った彼はすぐに思いとどまった。
サングラスを外し目を擦ると、もう一度先ほどの犬を二度見する。
おかしい。明らかにおかしい。
「……犬だな。犬ではあるな。……だがあのバカデケェ図体はおかしいだろ!?」
そう、接近しているのはタンクドッグ、戦車を丸々一両背負った巨大な犬だったのだ。
実質戦車2両分の巨躯で迫りくるタンクドッグにドン引きするマディソン。
しかし、これが件の偵察戦車であるとすれば餌にかかったことになる。つまりコイツがマディソンの獲物なのだ。
「チッ……犬と猫の縄張り戦争ってことかよ。あの図体ならすぐに射程圏内に来るだろうな。砲撃対策はこのバリケードで少しくらいは凌げるとして、だ。問題は……」
バリケード自体は急ごしらえのために脆い。
しかし標的となるバリケードは多く、敵はこちらの位置に気付いていない。
そのため、『当たり』を引くまで時間を稼げるのだ。その間に敵について情報を集めなければならない。
戦地において『情報』は武器だ。情報を絶たれ孤独になった部隊は、生き残ることは非常に難しくなるほど重要なほどだ。
マディソンが目を凝らしタンクドッグを足先から尻尾の裏までつぶさに観察する。
「あの犬公、どこまで機械化してるかねぇ。生憎戦車装甲を抜けるような装備は持ち合わせてねぇし……ん?」
タンクドッグの胴は背中の戦車を固定するために半分ほど機械化されているようであるが、脚を除いてその他ほとんどが生身のようだ。
風になびくゴワゴワの毛並みが作り物かどうかは、ケットシーから見ればすぐわかる。あれは間違いなく本物、100%地毛だ。
「あ~、やっぱり犬っての賢い猫とは正反対で頭がまったく足りてねぇな。戦車の利点は重装甲だってのに全部捨ててやがる。」
手持ちの武器ではお手上げかと思いきや、むしろ弱点丸出しの獲物に呆れるあまりため息が零れた。
しかし、それと同時に狩りが開始できるとマディソンが安堵すると、頭に生やした大きな猫耳にインカムをはめて口を開く。
「……あー、ヨセミテ通信基地聞こえるか。敵射程距離及び砲撃地点の予測を頼む、オーバー。」
この街のインフラは既に死んでおり電波塔なども無いはずだが、しかしマディソンの耳にはしっかりと『情報』が入って来る。
敵はやはりブラフを引いたらしい。
奴らはかなり耳が効くはずだ。こちらから攻撃しようにも発砲音で気付かれ躱される可能性がある。
装甲を捨て機動性を重視しているのもそのためだろう。
しかし相手が悪かった。
マディソンが腰を上げると、猫独特の足音を殺す歩行術でその場を離れ敵側面方向へと移動する。
遠くでは爆発音が轟き、『情報』通りブラフに向けてタンクドッグの攻撃が始まった。
再び『情報』を頼ろうとインカムへ耳を傾けると、砂嵐のような雑音が飛び交う。
「こちらマディソン二等兵、指定ポイントに着いた。続いて指示を乞う……了解した、オーバー。」
『最初』から変わらず言葉の無い雑音が流れるが、マディソンは頷き『情報』の通り敵の次の攻撃タイミングを待つ。
二つ目のバリケードへ向けて発砲が始まった瞬時、すぐさまマディソンの対UDC軽機関銃が火を噴き、音を聞き洩らしたタンクドッグの内臓を貫いていく。
「しつけのなってねぇ野良はお仕置きだ。……あばよイヌッコロ。」
相手が巨大である以上、骨も相応に固くなる。だから内臓を狙ったのだ。
タンクドッグは肺がやられたのか声も無く倒れると、自ら背負った戦車に潰され沈黙したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エリン・ヘブンズドール
わんわん……これは…野生過ぎます…!でもあの体毛は採れたら良い資材になりそうですね。
対するこちらの手札は砲撃1枚、盾2枚、加速3枚……むむ。ここは砲撃を温存し盾2枚と加速1枚で凌いでチャンスを待ちましょう。
「盾」で大食いの捕食オーラ防御を展開し、「加速」で飛び交う砲弾の中を潜り抜けますよ。
常に手札を6枚にすべく追加ドロー(加速、盾、砲撃)……!。今度はこちらの番です!【曲弾嵐撃!】。まだまだオブリビオン・ストーム程ではないですが強烈な超信地旋回に伴う暴風で砲弾を逸らし、風に紛れた砲撃…曲弾射撃で動きを止めたわんわんを仕留めます。
この荒廃した街に道を通したエリン・ヘブンズドール(ミレナリィドールの戦車乗り・f24769)が、相棒の偽神戦車のハッチに腰掛け街外の荒野を眺めている。
その視界には、どこまでも続く荒れ果てた枯れ木と禿山が見渡す限りに続いていた。
本当に何もない世界。あるのはただエリンの頬を優しく撫でる乾いた風だけ。
天涯孤独で身寄りのない自分に少し似ているな、とぼんやり考えていると偽神戦車のエンジンが唸りを上げて黒い排煙を吐き出す。
「ごめんごめん。私には心強いナイト様がいましたね。」
この腰掛けている偽神戦車に意思はないのだろうが、それでもエリンにしか動かせないエリンだけの大切なパートナーだ。
今までも何度もエリンを外敵から守り、彼女の剣として切り払って来たのである。
少しだけ孤独が薄れたことを感謝するように、彼女は手の甲でコツコツと偽神戦車の天板を叩いて微笑む。
その時、遥か遠方で響く獣の遠吠えをエリンの耳が捉える。
この荒れ果てた世界でも逞しく生きる野生動物もいるのかと視線を移すと、小粒程に小さく見えるその獣は明らかにおかしいシルエットであった。
見た目は確かに犬。これはエリンも見たことはある。
問題はその背に戦車のようなものを背負っているのだ。
相棒よりも武骨で粗野な見た目だが砲塔があるから間違いないだろう。
「それにしてもあのわんわん……。」
観察していて気が付いたが、所々機械化していても中身は犬のままであるようだ。
たまに毛づくろいしたり、耳や尻尾をしきり動かしている。
「くぅっ、野生過ぎますモフりたい……ごほん。いえ、あの体毛は採れたら良い資材になりそうですね。」
あれだけ野性的に伸び放題の動物の毛皮、なめして加工すれば使い道はいくらでもあるだろう。
動物を愛しむ感情はあれど、こちらも生活がかかっているため容赦はしない。
戦車砲では木端微塵だろうし轢いてみるかなどと皮算用していると、エリンの観察していた犬がこちらに気が付いた。
道路に陣取る偽神戦車を見たからだろうか、激しく吠えながら近づいてくる。
「……っと!いつまでもこうしてはいられないですね。」
獲物を狩ろうとエリンが腰を上げて、するりと相棒に入り込む。
いつものように『デッキ』からカードを引くと、手札は砲撃1枚、盾2枚、加速3枚であった。
「よし、加速があれば轢くのには十分ですね……。ってええ!?あのわんわん、あんなに大きいんですか!?」
手札を確認し、偽神戦車の中から再び目標の方を見ると、なんと遠くにいたので小さく見えていただけで実際には家ほどもある大きさの巨大なタンクドッグだったのだ。
敵は実質戦車二両分はある高さから一方的にこちらを狙えるはずだ。
高さはそのまま射程距離と俯角を稼げるため、高所を取られている現状の対戦車戦は既にこちらが不利。
「ゲームとは自分の有利を押し付けるものだとは聞きますが、これはちょっとズルいんじゃないですか!?加速使用、緊急退避!!」
射程距離で負けている以上、真正面からぶつかってもしょうがない。
予め舗装しておいた道路を全力で後退しながら敵との距離を取った。
「これGがキツイから嫌なんですけど……曲がれぇぇぇ!!」
そして十字路に差し掛かる瞬間、偽神戦車の片側の履帯を停止させて自動車には到底不可能な鋭角カーブを見せつけ瓦礫の山影へと潜り込む。
背の低い戦車にも相応の利点はある。このように物陰に隠れやすく相手に狙われにくいのだ。
間一髪、先ほどの十字路に砲撃が飛んで来た。
弾速の早い徹甲弾。まともに受ければひとたまりもないだろう。
「射程距離こそ負けていますが一度懐にさえ入れれば勝算はあります。今度はこちらから打って出る番ですよ!」
手札の盾二枚を消費すると偽神戦車の外部装甲が淡い光を纏い高速振動を始める。
そうして倍速で瓦礫の山を掘り進み、街中にまで追って来たタンクドッグの側面に飛び出した。
「ドロー!これで手札は砲2、盾1、加速3……これなら!私は手札から砲撃2枚と加速3枚を使いストームコンボを発動します!」
6枚しか保持できない手札制限されたこの偽神戦車において、その内の5枚も消費する超大技。
どれだけ強くとも気軽に出せないこのジャジャ馬の真の力『コンボ』が逆転のカギとなるのだ。
突如タンクドッグの側面から現れた偽神戦車に対し、慌てながらもすぐさま砲塔を向けて乱射する。
装甲の少ないタンクドッグにとって機動力と射程こそが武器である。接近された今、狙いをじっくりと付けている余裕などないのだ。
しかし、流石にこの距離であれば偽神戦車の車体のどこかしらに当てるのは容易だった。だが、タンクドッグの弾は偽神戦車を貫くどころか、明後日の方向へと弾かれた。
なんと偽神戦車が超信地旋回による高速スピンで暴風を巻き起こしていたのだ。
「わんわんの心臓へダイレクトアタック!これでゲームセットです!」
砲撃のために足を止めていたタンクドッグの胸元にまで回転しながら接近し、偽神戦車の砲塔を密着させると、ゼロ距離による最後の一撃が放たれ心臓を木端微塵に吹き飛ばした。
「良かった~。毛皮への被害は最小限で済みましたね。」
大成功
🔵🔵🔵
蜂須賀・美緒
来たわね!戦車狩りの時間よ!
({honeycomb}に乗車後、UC発動)
Soldier!アタシがこのまま囮になって
敵を遮蔽物が多い場所まで誘導するわ!
相手はデカブツ、旋回するにしても
壊しながら追ってくるにしても
その間、移動速度は遅くなるはずよ!
その隙を狙ってアンタたちは敵の懐に入り
目を攻撃して視界を奪うとか
砲台を攻撃して暴発を誘い
同士討ちさせるように立ち回りなさい!
(ふぅぅっと息を吐く)
この作戦はアタシの『運転』にかかってる...
つまり絶対成功するってことよ!
作戦開始!ビー...ハイヴ!
(アクセルを思い切り踏み込む)
徹底的に破壊し尽くされ荒廃し切ったこの街に似付かわしくない、頂上が3連ハニカム印に光る鉄塔が煌々と街を照らす。
配下たちを使い飾り付けた張本人の蜂須賀・美緒(BeeHive・f24547)は、しばらく顔を上げて様子を見ていたが、発電機の電力供給が安定していることを確認すると嬉しそうに頷いた。
「いい感じみたいね!まぁ最初から何も問題ないって分かってたけど!」
種の最終進化形態であり、産まれながらの女王たる彼女に出来ないことはない。
という根拠のない自信が溢れてくるため、彼女の頭には失敗の二文字は無かった。
ともかくこれで獲物をおびき寄せる餌は撒かれた。
後は花の蜜に集る羽虫のように、この街を襲撃したというオブリビオンが現れるのを待てばいい。
一仕事終えたと伸びをして美緒が休憩しようと周囲を見渡すが、瓦礫だらけの廃墟へ直に腰を下ろすのが嫌なのか落ち着く場所が決まらない。
仕方がないと諦めると、指を鳴らして配下へと合図を送った。
すると、どこからともなく鉄塔に付けられたものと同じ3連ハニカム模様の旗を掲げた装甲車が美緒の目の前まで走って来た。
「ご苦労様Soldier。アタシは中で休んでるから、反応があったら呼びなさい。」
なんと装甲車は無人ではなく、予め待機させていた配下に運転させてここまで運ばせていたのだ。
戦闘時のような臨機応変の運転は任せられないが、単純作業程度なら配下に合図を送るだけで身の回りのことは何でも出来てしまう。
それが生粋の女王としての素質なのだろう。
休憩に入った美緒が装甲車内の冷蔵庫で冷やしていた飲料を優雅に飲んでいると、車内にアラートが鳴り響き配下からの緊急連絡が飛び込んで来る。
「来たわね!戦車狩りの時間よ!あなた達は全員アタシの周囲で散開しながら戦闘準備、アタシはこの子で突っ込むわ!」
美緒が後部座席から飛び乗ると、アクセルを全力で踏み抜きエンジンを全開に回す。
目指すは報告のあった街の外れ方面だ。
わざと土埃を巻き上げるように荒く運転しながら目撃地点に近付くと、遠方に家ほども大きな巨躯の犬が、さらに背中に戦車をまるまる一両背負った姿が見えた。
脚から上が周辺の崩れた瓦礫からはみ出ているため、その様子ははっきりと確認できる。
これが件のオブリビオンで間違いないだろう。そうでなければこんな進化の過程を間違えたような生物がいるわけがない。
「あんなにデカブツが相手だったなんてね……あの子達だけじゃ流石に荷が重いわよね。よし!Soldier!アタシが囮になるから、デカブツの死角から接近して取り付きなさい!」
装甲車の窓を開けて外の配下に命令すると、美緒はタンクドッグを挑発するように鼻先を横切り入り組んだ廃墟の街を走り出す。
後方で車体がビリビリと痺れるような遠吠えがあった。上手く釣れたのだろう。
「さぁもう後には退けないわね……。」
緊張で胸が高鳴る。住み慣れていた故郷では味わえなかった生と死を賭けたスリルが美緒を満たした。
落ち着くために深く息を吐き出しバックミラーから敵を見据えると、自分を鼓舞するように言葉を零す。
「大丈夫、何も問題ないわ。この作戦はアタシの運転技術にかかってるってだけ。つまり絶対に成功するってことよ!作戦開始、ビー……ハイヴ!!」
美緒が再びアクセルを全開に踏み込むと、タンクドッグと装甲車のデスレースのフラッグが振られた。
幸いにも道路だけは整備されているこの廃墟街では、走る分には困ることが無く、瓦礫の山が装甲車の盾となってくれている。
しかし、走るのが楽になっているのは敵も同様であった。荒野では4足歩行で駆けていたタンクドッグだったが、道路に入った途端に脚部の履帯を使って走り出したのだ。
さらに、4足歩行時と違い走行時の縦揺れが無いためか、そのまま背中の戦車砲を発砲し始めた。
流石に走りながらでは精度が悪いのか、装甲車の周囲の瓦礫が吹き飛ぶだけで済んでいるが、運悪く直撃すればひとたまりも無いだろう。
何度も装甲車の側面にボコボコと瓦礫の破片がブチ当たり、美緒の額にも汗が伝う。
数度目の十字路を曲がろうとしたとき、装甲車の進行方向の瓦礫が吹き飛び道を塞いでしまった。
「不味いッ!」
急ブレーキを踏んでハンドルを思いっきり切ると、横転寸前に片輪で走行しながらもなんとか持ちこたえて停車した。
瓦礫と正面衝突の大事故は回避できたが、後方のタンクドッグは勝ち誇ったように遠吠えをあげて退路を塞ぐ。
今度は外さないというつもりなのだろう。タンクドッグはゆっくりと砲塔を調整し、美緒の乗る運転席へと狙いを定めていた。
「よく聞きなさいデカブツ!アタシに失敗はないわ!既に作戦は『成功』してるのよ!」
タンクドッグが人語を理解できるかは不明だが、美緒の言葉を鼻で笑うような仕草をすると、背中の戦車内の撃鉄がカンと音を立ててトドメを刺しにかかった。
しかし、弾が発射されることはなく、砲塔内で砲弾が爆発。続けざまに、火薬庫の砲弾も爆発していきタンクドッグの上半身を吹き飛ばした。
「流石アタシのSoldier達!細工は完璧ね!」
美緒が囮になっている隙に配下たちが敵戦車へ侵入し、工作活動を行っていたのだ。
崩れ征くタンクドッグを前に、配下たちが美緒の周囲へと集まり凱旋するかのように飛び回ったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
天道・あや
お、来た来た!あれが真多子さんの言っていた偵察…戦車…戦車?…ってうわっ!?デッカッ!?そして沢山来た!?
…と、とりあえず落ち着こう!息をすってーはいてー…よしっ!
右よし!左よし!あたし…よしっ!どんな大きくても戦車ぽくなくても皆の未来の為にどっかーんと倒すっ!
自作CDをセットしたラジカセをお店に置いて音量MAXで流す!そしたらきっと敵がやってきたりする筈!そして敵の目的はあたし達より街の破壊、つまりお店を破壊するのに夢中になる筈!そして破壊してる向かいの廃墟から【レガリアス】を稼働させて【ダッシュ】で敵の攻撃を【見切り】避けて敵の懐に胴体の下に潜り込んでUC 発動!(属性攻撃雷、楽器演奏)
壊れ果てたこの街にただ一つ健在する建物が、悠然と客を待っていた。
無論、住民達は既に避難済みであり、いつまで待ったところで訪れる者はいないのであるが。
また建物は作りこそしっかりとしているが、外見は継ぎ接ぎだらけでサイケデリックな色合いになっている。
元はこうではなかったのだが、一度崩壊していたものを天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)がありあわせの材料で立て直して今に至るのだ。
しかし、中身は服屋であるため店の外見が多少奇抜であれど、不思議とオシャレに見えて来る。
これも建て直したあやのセンスのおかげなのだろう。
その再建した服屋の前では、あやが小首を傾げて立ち尽くしていた。
「これから戦車が攻めて来るんだよね?う~ん生身でどうやって戦車と戦おう……?」
文明的な物を作った以上、この存在が敵に嗅ぎつけられれば襲撃してくるに違いない。
つまり、あやはこれから偵察戦車を迎え撃たなければならないのだ。
どうしたものかと悩んでいた所、遠方で獣の遠吠えが上がる。
この街に唯一残ったこの街に客が来ないように、住民は既にいないため飼い犬ではないだろう。
ならば野犬の類だろうかと視線を送ると、街外れに荒々しく動く犬の姿があった。
「あっ犬!……だよね?なんか背負ってるみたいだけどなんだろう。」
しかし、よく観察してみるとその背中に歪な甲羅のようなものを背負っていた。
元々この世界出身ではないあやが、他世界にはこういう生き物もいるのだろうと納得していると、急に犬がこちらに振り向いた。
あやの声が聞こえたのかもしれない。こちらを見つけると犬はすぐさまこちらへと駆けて来た。
「お、来た来た!……あ~でももうすぐここも戦闘が始まっちゃうから巻き込んだら可哀想だよね。お店の中に隠れててもらおうかな。」
明るく優しい性格のあやは、こちらへ駆けて来る野犬の心配をしていた。
しかし、こちらへ近づいてくるにつれて、柔らかな笑顔が徐々にひきつっていく。
「ちょちょちょっと、あの犬の背中のって戦車じゃない!?おまけになんか地鳴りまでしてきたんですけど!?……はっ!!もしかしてあれが真多子さんの言っていた偵察……戦車……戦車?……ってうわっ!?メチャクチャデッカッ!?」
厳しいスタァへの道を歩むあやにとって、壁にぶち当たることは珍しくもない。今回もそのうちの一つというだけだ。
今までも乗り越えてきたし、この壁もまた飛び越えていくつもりだ。
だが、如何せん予想していた敵の風体と大きく異なるため、あやも少し戸惑っていたのだ。
「……と、とりあえず落ち着くのよあたし!息をすってーはいてー……よしっ!右よし!左よし!敵よし!あたし……よしっ!どんな大きくても戦車ぽくなくても皆の未来の為に、悪い犬はどっかーんと倒すっ!」
規格外な猟兵が多い中、意外にも常識人なためにあやの思考は固まっていたが、なんとか落ち着きを取り戻し気合いを入れてタンクドッグを見据えた。
敵は家ほどの大きさもあり、あやが真正面からぶつかっても不利だろう。
ならばと振り返り、店の中へと飛び込んだ。
何も籠城戦をするつもりはない。この街を破壊し尽くすような敵である以上、ここもたいして持ちこたえないだろう。
あやが狙っていたのは、盾としてではなく『囮』としての価値だ。
店内放送の操作盤に駆け寄ると、持ち込みのラジカセと繋いで音量をMAXに設定する。
そして、大事に懐にしまっていた自作CDを入れると、店外にまで響く大音量の音楽が流れ始めた。
あやが耳を塞ぎながら店外へ飛び出し店を離れるが、なんとタンクドッグはあやに見向きもせずに店に向かっていた。
「やっぱり思った通り!作戦成功!そのままあたしの歌に聞き惚れててね!」
彼らの目的は最初から『文明的な物を破壊する』こと。
だからこそ音楽という文明が目の間にあれば、無意識にそちらを優先してしまうのだ。
あやが店を離れ周囲を見渡すと、丁度瓦礫がスロープ状になり店側に向かって上がり勾配となっていた。
「よし!スタァへの階段見つけた!」
スロープから十分距離を取り、靴ひもを結ぶようにあやが屈むと靴のスイッチを押す。
すると靴底がインラインスケートのような形の靴、レガリアスへと変形した。
その時、丁度スロープの向こうでは店が破壊され、一曲終わったところで音楽が止まる。
文明的な物が破壊し終わったからには、タンクドッグの次の標的はあやだろう。
しかし、その心配は無用であった。彼女のステージは既に完成しているのだから。
「お願いレガリアス、あたしに翼を!いっくよー!!」
脚部内部で圧縮された大気が一気に解放され、弾丸のようにあやが飛び出しスロープを駆け上り飛翔する。
同時にインラインスケート部が接地面との摩擦と回転によって、膨大な電力を生み出していた。
「あたしの歌は、夢は、まだ終わってない!心が痺れるようなあたしの思いのアンコールを聴かせてあげる!いぇ~い!」
完全に服屋の方に気を取られていたタンクドッグは、高速で飛翔してくるあやに反応できずに、その懐への侵入を許してしまった。
そして、機械化されていない胸下、心臓の直下であやの歌声と共に迸る電撃が直撃。
感動に打ち震えたように身体を揺らしたかと思えば、タンクドッグはそのままどさりと横たわり活動を停止した。
「やったー!……ってそうだCD!!」
勝利の余韻に浸る余裕も無く再び瓦礫に戻った店内に戻ると、奇跡的にも無傷のラジオが見つかり、安堵しながらあやは胸をなでおろしたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
世紀末なワンちゃんだ!kawaiiでござるね!
早速このワクワク世紀末ランドを使う時が来たようだな…!
敵の砲撃をビルの影など地形を利用して耐えつつ門松にて応射!
花火合戦でござるよ!本日はお越し頂きありがとう喰らえ!
近づいた所をビル爆破と注連縄他残りの罠で素敵なドッグランを作成ですぞ!
そしてメインイベント!巨大パンジャン!心逝くまで楽しんで欲しい!お帰りはあの世ですぞ!
…なんか爆発が強くね?アノ俺たち調子に乗って火薬を盛りすぎたでござるね!
これは逃げられない!爆発オチなんてサイテー!!
全部終わった辺りで【スポーンポイント】に拙者復活!
いやーリスポーンがなければ危なかったでござるな!
「huuuuuu!!!ついに完成ですぞ!知らない俺達ありがとうでござる!」
街ごと使った巨大なピタゴラ装置を作成していたエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)が歓喜の声を高らかにあげて、協力者たちを労う。
彼が振り返ったその先には、ずらりと並ぶエドゥアルトと全く面識のない謎の赤チェック服のおっさんたち。
流されやすくノリで生きているのか、エドゥアルトの喜ぶ声を聴くと皆一斉に全身を使って大歓声を轟かせた。
「流石俺だぞ俺!」「俺として鼻が高いぞ俺!」「俺もそうだねって気分だぞ俺!」
皆一様に上半身を傾け、腕を組むようなポーズでサムズアップしている。
別にどこの国の挨拶であるとかではないのだが、それを見たエドゥアルトのも同様のポーズでサムズアップを返すと、謎の知らないおっさん達は満足したように頷き帰り始めた。
その整列しながら揃って歩く姿はレミングスのようであり、さながら俺ミングスといったところだろうか。
そして彼らが何処に帰るのかはエドゥアルトにも分からないが、来た時のようにいつの間にかいなくなるのだろう。
エドゥアルトが行列を作る彼らの後ろ姿を見送ると、再び巨大なピタゴラ装置に振り返る。
「ヌフフ……さぁてお次は遂に戦車でござる!このために遥々出向いたんだからたっぷりと楽しませてもらいますぞ!」
エドゥアルトがピタゴラ装置のオオトリ、巨大パンジャンドラムボーリングを固定する櫓に陣取り街の外周を見渡す。
「んん~♪んふふ~♪どこから攻めて来るでござるかな~!」
戦いに挑むというよりは、完全に玩具で遊ぶくらいの気楽さで敵影を探していた。
実際、これだけ大掛かりな装置を建設すれば、男子たるもの心が浮足立つのも仕方が無いだろう。
「パキン……シャキ……サク……」
この戦闘までの僅かな休息、傭兵たるもの食べられるときに食べて体力を管理する癖が付いていた。
エドゥアルトは櫓で風に当たりながら休憩がてらに携行食のレーションを齧る。
細長いブロック状のソレは、軽くて腹持ちも良いため長く戦うのに向いているが、如何せん味は最低だった。
「…………まっず。」
筆舌しがたいそのあまりにもな味に顔をしかめると、ポケットから取り出したバターを一欠と、マーマイトを薄く塗って誤魔化した。
軽食を済ますと、遠方で獣の遠吠えがあがる。
暇で欠伸をしていたエドゥアルトが横目で確認すると、少々変な姿の犬が街外れにいた。
背中には戦車のようなものを乗せており、脚部は履帯となって荒れ地を悠々と闊歩している。
「あっ世紀末なワンちゃんだ!kawaiiでござるね!こっちの世界は放射能での変異系ではなくこう来たんですな~!」
もはやすっかり観光気分に浸っていると、タンクドッグが巨大ピタゴラ装置の存在に気が付き再び遠吠えをあげる。
今度は何度も繰り返しており、次第にさらに遠方から返事をするように遠吠えが返ってきた。
仲間を呼んでいたのだ。
「んん?あれ?なんだとぉ……もしかしてあのワンちゃんが偵察戦車だったんでござるか?」
エドゥアルトが気が付いた頃には大量のタンクドッグが街に向かって駆けてきており、視界の一面がタンクドッグの群れで埋まっていた。
「まぁともかく早速このワクワク世紀末ランドを使う時が来たようだな……!」
獲物が多いならとりあえずヨシ!と楽観的に捉え、エドゥアルトが白い歯を見せてニカっと不敵に笑った。
タンクドッグの群れが街に侵入し始めると、エドゥアルトの作戦も始まった。
まず敵の動きは先鋒のタンクドッグは突き進み、後方のタンクドッグが砲撃による波状攻撃を仕掛けているようだった。
「HAHAHA!撃たれたら撃ち返すのが祭りの流儀!世紀末門松砲にて応射!」
エドゥアルトが手元の遠隔装置を操作すると、各所に設置された巨大門松が対地連装ミサイルのように筒からミサイルを射出。
側面方向および後方で距離を取って砲撃してくるタンクドッグを次々に一掃。
しかし、それでも先行するタンクドッグたちは恐れも知らず吶喊してくる。
だが一か所にまとまっていると危険だと察知したのか、接近するにつれて横方向に散らばりエドゥアルトのいる櫓を包囲しようとしていた。
「おっと、躾けのなっていないワンちゃんでござるね!ドッグランのコースから出たらお仕置きですぞ!」
再びエドゥアルトが遠隔装置を弄ると、簡易的に復旧していた建築物が次々に爆発し、さらには連装砲となっていた世紀末門松砲の下部が噴射・飛翔しひっくり返って柵となっていった。
最終的に瓦礫と逆さ門松による、エドゥアルトの櫓までの一直線のコースが出来上がる。
「そしてメインイベント!巨大パンジャン!心逝くまで楽しんで欲しい!お帰りはあの世ですぞ!」
エドゥアルトが櫓に設置されているデンジャーと書かれた赤いボタンを押すと、櫓に固定されていた巨大パンジャンの車輪に付けられたロケットモーターが点火、勢いよく回転してコース上のタンクドッグ達を挽肉に変えていった。
がしかし、急に片側のロケットモーターが爆発しパンジャンドラムが跳ね上がると、着地時にクルリと反転しエドゥアルトの方へと逆走を始める。
「……あ、モーター壊れたでござるね。さてはあの俺たち調子に乗ってロケットの火薬を盛りすぎたでござるね!」
逆走しながらも丁寧にタンクドッグ達をに追撃しつつ、勢いは全く衰えない。
今から逃げようにもエドゥアルトは櫓に登っているためどうにもできない。
「アーッ!これは逃げられない!爆発オチなんてサイテー!!」
パンジャンドラムはご親切にも産みの親であるエドゥアルトの元で丁度起爆し、周囲一帯を焦土に変えながらキノコ雲を空高く生やしていた。
大空に薄く透けるエドゥアルトの笑顔が浮かんでいるのであった。
「拙者復活!いやーリスポーンがなければ危なかったでござるな!」
ひょっこり別の場所で傷一つ無いエドゥアルトが笑う。
彼はパンジャンドラムのスペシャリスト、保険として肉体が死んでも復活できるように設定していたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『超重戦車』スーパーモンスター』
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POW : ウルトラ・ザ・キャノン
【旧文明の国際条約の破棄】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【主砲の砲弾を大都市を一撃で消滅させる砲弾】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 加農・ファランクス
レベル分の1秒で【全砲門に砲弾を再装填し、連続で砲弾】を発射できる。
WIZ : ゴールキーパー
【連続で射撃攻撃を行う、大口径の車載機銃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
イラスト:8mix
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キミ達は自分よりも巨大なタンクドッグに臆することなく果敢に立ち向かい、そして勝利することが出来た。
流石この街を破壊したオブリビオンの一派であるだけあり熾烈な戦いであったが、だれ一人欠けることなくこの街を守ることが出来たのだ。
これですべての偵察戦車は倒した。
しかし、彼らはしきりに遠吠えをあげて何者かに知らせを送っていたことが気がかりである。
そう、彼らの根城でもあり、この街で指名手配されていた『超重戦車』の存在だ。
キミ達が嫌な胸騒ぎを感じていると、傾き始めていた夕陽が急に姿を隠した。
何事かと顔を上げると、街の外れに見覚えのない山が現れていたのだ。
否、あれは山などではない。動く山などありはしないからだ。
少しずつこちらへと向かってくるソレは、遠くからでもハッキリと化物だと直感する。
重々しい威圧感のある砲塔の数々、家より大きな岩石をも踏み砕く超巨大な履帯、何重にも重ねられ錆一つ無い分厚い装甲。
まさに怪物、スパーモンスターの名に相応しい大艦巨砲主義の極致ともいえる野良戦車の姿がそこにあったのだ。
もはや勝てる勝てないの算段をしている暇はない。
キミ達は既に怪物のテリトリーに踏み込んでしまったのだ。
最後の決戦に立ち向かわなければならない!
蜂須賀・美緒
(双眼鏡で敵を確認する)
無数の機銃で迂闊に近づけないわね
なら機銃で撃ち落とされない速度で急接近するだけよ
({honeycomb}から『メカニック』で改造した台座付きロケットランチャーを複数台設置しUCを発動)
Soldier!このロケットランチャーは時限式で発射し、着弾しても爆発せず、推進力を大幅に向上させたものよ!
この砲弾に掴まって着弾寸前で離れて懐に潜り込み、機銃を優先して破壊しなさい!
アタシは{honeycomb}で囮になって敵の注意を引き付けるわ!
手配書見たでしょ?
アイツを倒せばアタシら大金持ちよ!なんてね!
さぁ気合い入れてくわよ!
作戦開始!ビー...ハイヴ!
(腕をクロスして決めポーズ)
3連ハニカム模様の旗を掲げた装甲車が黒煙の中から現れた。
先ほど爆散したタンクドックの残骸を押しのけようやく広い路地へと抜けたのだ。
締め切っていた窓を全開に空けると、蜂須賀・美緒(BeeHive・f24547)が新鮮な空気を求め顔を出す。
「よくやったわSoldier!これでこの世界の外敵がまた減ったし、分蜂計画が一歩前進ね!」
勝利を共に喜ぶように装甲車の周囲を飛び回る配下たちへ、美緒が笑顔で語り掛けた。
配下を労うのも女王たる美緒の務めである。
女王としてまだ未熟な彼女のコミュニティは大きくは無いが、これだけの頼もしい仲間がいる。それが彼女の自慢でもあるのだ。
ふと、車内から出していた美緒の鮮やかな黄色い髪を不快な生暖かい風が撫でる。
同時に後方で立ち込めるタンクドッグの硝煙とは異なる排気煙の『臭い』が気になった。
蜂は臭いに敏感でありそのルーツのある美緒もまた鼻が利くのだ。
風の吹いた方向をみると、街外れの山が出元のようだ。
違和感を感じた美緒が双眼鏡を取り出し様子を伺うと、黒鉄の山はなんと超巨大な戦車であった。
「嘘っ!?もしかしてアレが『賞金首』なの!?」
車内に頭を引っ込めると、ブリーフィングで受け取っていた手配書と見比べる。
賞金首の名は『超重戦車』。賞金額と遠景の姿、名前の他に詳細は何も書かれていないシンプルなものだが、その二つ名の通り超ド級の戦車であることから間違いないだろう。
予想以上に大きいことには驚いたが、しかしこれは美緒にとっては大きなチャンスである。
新しい女王として分蜂活動中の彼女にとって、活動資金はいくらあっても困ることはない。
もう一度賞金額を確認してぺろりと唇を舐めると、双眼鏡に視線を戻し獲物を慎重に観察する。
情報は大事だ。大切な配下を犬死させるわけにはいかない。
女王として、後方で爆散したタンクドッグのようにさせるわけにはいかないのだ。
「ふーんなるほど。あの無数の機銃があると迂闊に近づけないわね。なら撃ち落とされない速度で急接近するだけよ。」
一見するとそびえ立つ巨砲に目を引かれがちだが、目聡く観察すると対人兵器の機銃がずらりと配置されている。
しかし、タネが明かされて対策さえ分かってしまえば問題ない。
敵が自分達より遥かに巨大であるからといって、退くような臆病者は蜂にはいないのだ。
賞金首が街に接近するまでの時間を利用し装甲戦車を改造すると、美緒はすぐさまアクセルを踏み込み獲物を狩りに駆け出した。
目視できる距離にまで近付くと敵の巨砲が美緒の駆る装甲車を捉えようと見定めるが、巨砲過ぎるがゆえに射線を見極め避けることは美緒の運転技術を以ってすれば容易であった。
「アンタを倒せばアタシら大金持ちよ!特別製のプレゼントまで用意したんだし、さぁ気合い入れてくわよ!」
美緒が兵装用コンソールを弄って叫ぶと、装甲車の天井が開き連装ミサイルランチャーがせり出て来る。
「作戦開始!ビー……ハイヴ!」
腕をクロスするようにコンソールを叩くと、次々と弾頭が顔を出して『超重戦車』へと襲い掛かった。
対する賞金首も機銃を放つが、所詮対人兵器では高速飛来するミサイルを迎撃することは叶わない。
運よくかすっても特別に装甲を付けられた弾頭の勢いを削ぐには焼け石に水であった。
遂にミサイルが『超重戦車』に直撃すると、大爆発起こり分厚い装甲を破るかと思われたが、弾頭先端の信管が潰れると傘のように後部から割れて中から美緒の配下たちが飛び出してきた。
「行きなさいSoldier!巨人も蜂の一刺しでぶっ倒れるってことを思い知らせてやるのよ!」
無数のミサイルから溢れ出た配下たちは、一目散に賞金首の内部へと侵入していく。
美緒は最初に観察した時から無人のAI戦車であることは見抜いていたのだ。
護衛の偵察戦車もいない今、敵は丸裸も同然である。
電子制御の扉を破り制御室へと辿り着くと、配下たちが次々と機器類をショートさせていく。
そうして全ての電源が完全に落ちると、あれだけ無敵に見えた『超重戦車』は遂に沈黙した。
「やったわね!さっすがアタシ達!絶対成功すると分かってたわ!」
囮となって装甲車を走り回していた美緒の周囲に配下が集合すると、両腕をクロスするように決めポーズを作り記念の自撮りを撮る。
背景にはデカデカと獲物の姿が写っている。
「あとはこの写真を隣町に持っていけば晴れて賞金獲得ね!こっちの世界でのアタシの名声も上がるし活動資金も手に入るしで一石二鳥よね!」
ホクホクと頬が緩む美緒が鼻歌を歌いながら装甲車のエンジンをかけると、賞金を受け取りに荒野を走り出すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エリン・ヘブンズドール
何かとてつもない一撃を放つつもりの様ですね。折角確保したもふもふを失う訳にはいきませんし、一斉射撃コンボで対抗したいところですが…くっ、手札は砲撃2枚、盾2枚、加速2枚……均等すぎます。
これは帰ったらデッキ調整ですね。砲撃の比率を増やさないと。
むむ、下手に手札交換している暇もなさそうですし女は度胸!【スキル発動!】
「加速」起きなさい、相棒(動力炉の限界突破)
「盾」とてもお腹が空いたでしょう?
(跳ね上がった動力に比例した偽神細胞の活性化)
「砲撃」今ここに全てを喰らい尽くす一撃を。蹂躙せよ
(大食いの捕食オーラ防御を全て砲撃に転じた、捨て身の一撃)
…もう動けません。この街で一泊出来ると良いのですが。
度重なる砲撃により、ただでさえ崩壊していた街がさらに凸凹を増やし悲惨な状況になっていた。
そんな中、エリン・ヘブンズドール(ミレナリィドールの戦車乗り・f24769)は黙々とモフモフな毛皮を弄っていた。
先の激戦で仕留めたタンクドッグから皮をはぎ、なめして毛皮にしていたのだ。
「(もふもふもふ)ふぅ、(もふもふもふ)これは(もふもふもふ)実に(もふもふもふ)良いものですね(もふもふもふ)。」
元々半身が戦車であったことや、家よりも大きな体躯であったこともあり、毛皮は何枚にも分けられていた。
そのせいか、偽神戦車の操縦席は全面毛皮張りのもふもふエリアとなっており、エリンは丸めた毛皮を抱き枕のように抱きながら全身でもふもふ具合を堪能していた。
本来これほど短時間でなめすことは出来ないのだが、そこは偽神戦車の扱いにかけては右に出る者がいないエリンである。
『砲撃』を使用してタレットの機銃を稼働させると、巨大な肉の塊であるタンクドックの亡骸を大まかに撃って切断し切り分けた。
そのまま『盾』を使用すると皮に付着した余分な肉をこそぎ落として綺麗にし、あっというまに皮だけに剥いた。
あとは手持ちの特殊な薬品や洗剤などで処理を施し、『加速』で急速回転させたエンジンの熱で乾燥させたのだ。
今ではこの通り、人をダメにするもふもふ毛皮に包まれ堕落したエリンの姿に変わってしまった。
「(もふもふもふ)不味いですね、(もふもふもふ)このもふもふは(もふもふもふ)オブリビオンよりも(もふもふもふ)強敵かもしれません(もふもふもふ)。」
しかし、エリンの至極のもふもふタイムは長くは続かなかった。
偽神戦車の上で天日干ししていたもふもふ毛皮の様子を見ようと、操縦席からエリンが顔を出すと暖かな陽が消えていたのである。
まだそんな時間ではないはずとエリンが陽の落ちる方角に顔を向けると、昇っていた陽を隠すほど巨大な山がこちらへ向かってきているのだ。
「いえ、もしかしてアレは!?」
偽神戦車の操縦席に戻りもふもふ毛皮の中をまさぐると、ブリーフィングで受け取っていた『手配書』を取り出す。
山のように大きな車体、天に届きそうなほど長い砲身、地を割り地鳴らす巨大な履帯。
「間違いありません。アレは賞金首の『超重戦車』!」
情報では、タンクドックの根城にされていたと聞く。
なるほど、家よりも大きな奴らの寝床としては丁度良いのかもしれない、がしかしそのタンクドックがいない今なら邪魔されずに一騎打ちするチャンスだろう。
「まさに最強の戦車を決める頂上決戦ですね……ですが『最強の戦車』の称号は私と相棒が頂きますよ!」
エリンの手配書を握る手に力がこもると、『デッキ』をセットし偽神戦車を起こして決闘の地へと駆け出した。
街を出て瓦礫のカモフラージュが無くなると、敵もこちらに気が付いたらしい。
一際目を引くその車体中央にそびえ立つ煙突のような主砲が、固定器具を次々とパージし首を降ろし始めた。
エリンの駆る偽神戦車が何台入ることが出来るか想像もつかないほど巨大なマズルが、獲物を捉えようとしているのだ。
「どうやらとっておきの一撃を放つつもりの様ですね。お互い『最強』を譲る気はない、ということでしょうか。ならばこちらも一斉射撃コンボで対抗したいところですが……ドロー!!」
今回引けた手札は砲撃2枚、盾2枚、加速2枚。
均等でバランスが取れてはいるが、今必要なのは『砲撃』による遠距離攻撃力だ。
「こんな時に……!!これは帰ったらデッキ調整ですね。ともかく今は悔やんでいる暇はありません!女は度胸!」
エリンが覚悟を決めると、偽神戦車の足を止める。
どうせあの主砲を防げなければ、何処へ逃げようと無事では済まない。
ならばと、主砲には主砲で真っ向勝負を仕掛けることにしたのだ。
「聞いていますか相棒。正直とても危険な賭けになるでしょう。ですが、私はあなたが一番の戦車であると知っているから怖くはありません!スキル『ファイナルターン』発動!」
エリンがスキルの名を口にすると、彼女の瞳が、髪が、身体が次々偽神戦車の車内と同様に淡く光り出した。
彼女にしか扱えない偽神戦車、そのリミッターを彼女自身をキーとして外したのだ。
「これが、最初にして最後のターンです!手札の6枚を消費してさらにドロー!さらに消費!ドロー!さらに!……」
本来手札の6枚で行動するという制約を超える文字通りのリミッター解除。
加速を重ねることにより動力炉を臨界値ギリギリまで稼働させ、盾を重ねることにより偽神細胞の活性化をさせていく。
跳ね上がった動力が主砲の威力を限界にまで高めていった。
「これが最後のカード、『砲撃』を消費して主砲発射!!」
全40枚すべてを使った、今のエリンたちに出来る最大の攻撃が放たれるが、向こうも丁度こちらを捉え同時に主砲を放った。
主砲の口径があまりにも違いすぎるため、本来勝負にもならないはずである。
しかし、一発に込めた想いは段違いであった。
二つの砲弾がぶつかる瞬間、『盾』の効果が付与されたエリンの砲弾が敵弾を貫き、通り抜けた時点で粉々に打ち砕いた。
勢いは止まらず『超重戦車』の主砲を射抜くと、一刻の間をおいて大爆発を生じて不敗の巨山が破られた。
「勝ッ……た。勝ちました!!……まぁこちらももう動けませんけど。」
『デッキ』を全て消費すると、しばらく偽神戦車がオーバーヒート状態で活動が止まってしまうのだ。
「この辺に泊まる場所……なんてないですよね。ですが、これだけもふもふの毛布がありますし相棒と一緒に夜を過ごすとしましょうか。」
エリンが操縦席を抜けると、もふもふ毛布に包まり激戦で疲れて眠る相棒と共に夜空を見上げたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
マディソン・マクナマス
いざ実物見るとデカさエグイなオイ……バランスどうなってんだっつーかどういう設計思想してんだっつーか……いや現実逃避してる場合じゃねーや
あんな装甲抜ける火力持ってねぇが……ま、やるしかねぇか
暴走宇宙ハーレーに【騎乗】して砲火を掻い潜り接近、スマホの望遠モードで砲身の駆動部や装甲の接合部を撮影
ドローン自動操作アプリに映像を取り込み、最優先攻撃目標に設定。戦場外に置いてきた暴走アメリカントラックに満載したUC【自爆特攻ドローン】を起動
山みてぇな鉄の塊ったって、結局は大量の小さな部品の寄せ集めだ
撮影した接合部のボルトや、比較的脆弱な駆動部にドローンの自爆突撃を集中させ、可能な限り敵の損傷を狙う
「ブファッ……すぅ……はぁ~……。」
いくら敵の図体が大きかったとはいえ、遠距離からあばら骨の間を縫って心臓を狙い撃つなどという芸当は心底疲れた。
機関銃のスコープから顔を離すと、マディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)が止めていた息を一気に吐き出す。
スマートドラッグを利めていたので集中力と全能感から外さない自信は持っていた。
しかし、おかげで今はこちらの心臓が破裂するんじゃないかという程激しく鼓動し、手足の先まで熱く火照っている。
感覚が鋭くなっているの感じるし、火照った身体に入り込む新鮮な空気の心地良さに幸せを感じる。
「これは少しキメ過ぎたかもしれねぇな……。」
頭の中は今までにないくらいクリーンで澄んでいるのに、多幸感で満たされその場を動く気力がなくなってきた。
このままクスリに飲まれては不味いと、酒を一口あおって敏感になった舌が受ける美味の衝撃で身体が飛び起きる。
「まったく我ながらげんきんな身体してるぜ。」
ようやく立ち上がったマディソンが仕留めた獲物の生死を確認すると、血なまぐささに鼻をひしゃげた。
クスリで覚醒している五感が、嗅ぎ慣れた血の臭いさえも無視できないくらい意識させて来るのだ。
「あークソ、こりゃたまらんな……しっかし遠くで見ても十分にデカイとは思ってがこの犬公マジデケェな。家と同じ、いやそれ以上はあるか?」
ただでさえ小柄な種族のケットシーからしてみれば、本当によく仕留められたものだと感心するほど大きなタンクドックの亡骸がマディソンの視界いっぱいに広がっていた。
生死の確認が付いたので、鼻が曲がらないうちにさっさと退散しようと振り返った時、五感が研ぎ澄まされていた彼の耳に不愉快な地ならし音が飛び込んで来る。
回転しながら擦れる金属音、地を擦りながら不整地を踏み締めるあの音。
その音を捉えた瞬間、マディソンの視界に過去の記憶がフラッシュバックする。
戦地を走る鋼鉄の塊、戦禍を広げ仲間たちを屠った憎き怨敵。
「この音は……戦車か。」
音を識別した途端、マディソンが瞬時にタンクドックの死骸の影に隠れるように移動すると、音の方向へと目を向ける。
荒野が続くこの世界で動くものがあればすぐわかるはずだと目を凝らすが、なかなか見つからない。
そんなはずはないと頭を振ってもう一度探すと、ようやく見つけた。もとい最初から見つけていたが気が付けていなかったのだ。
「おいおいおいマジかよ……デカさエグイなオイ……バランスどうなってんだっつーかどういう設計思想してんだっつーか……いや現実逃避してる場合じゃねーや。」
マディソンが目を凝らし探そうとしていた場所は、大きな山の麓かと思っていた。
しかし、実際にはその山そのものが音の出所だったのだ。
目の前に現れていたのは賞金首の『超重戦車』である。
目を疑う光景だが、確かに受け取っていた手配書の絵には縮尺の記載がないから不思議ではなかったのだ。
「あんな化物の装甲抜ける銃なんて持ってぇしな……だいいちまともに真正面からぶつかるなんて賢い選択じゃねぇ。」
まだこちらが見つかっていないらしく、数多ある砲台はコチラを向いていない。死体に隠れていたのが功を奏したのだろう。
「厄介だがコイツの『情報』は自分で集めないといけねぇらしいな……。」
クスリのせいか頭は冴えている。インカムからは何も聞こえない。
仕方がないとスマホを取り出すと、撮影モードの望遠機能で『超重戦車』の各部を観察し、要所を撮影記録していく。
どれだけ巨大な姿をしていようと巨大な一枚金型で鋳造しているわけもなく、当然装甲の継ぎ目が沢山あった。
マディソンはそういった『衝撃に弱い』箇所を重点に探していたのだ。
「まぁ山みてぇな鉄の塊ったって、結局は大量の小さな部品の寄せ集めだからな……っと。」
未だ配下の仇を探す間抜けな巨人の弱点を丸裸にすると、マディソンがニヤリと口角を上げて笑った。
彼の持つスマホはあるアプリと連動しており、今その下準備が全て終わったのだ。
マディソンが再びスマホを操作すると、彼の後方から土煙を上げながら一台の暴走トラックが走っていた。
それはゴミ収集車のような後部開閉式コンテナ付の黒塗りのトラックであり、側面には『マディソン清掃サービス』の印字が施されている。
「いつまで終わった戦争に残り続けるゴミは掃除しなきゃならねぇからな。戦車なんてもんが戦争以外で出張ってくるんじゃねぇよ。」
暴走車の音に反応したのか、『超重戦車』の各部に備え付けられた機銃がトラックに向けて斉射されるが、特別に装甲を施されているトラックはビクともしない。
そのまま至近距離にまで近付かれて、ようやく砲塔を回し終えた幾つかの砲門がトラックのタイヤを射抜き止めることが出来たが、それでも破壊にまでは至らない。
「ほぉ、あの速度で突っ込んだのによく止められたもんだ。まぁもう遅いがな。」
マディソンがスマホのスイッチを押すと、トラックのコンテナ後部が開き、中から大量のドローンが飛び出した。
「全く良い時代になったもんだよな。今時は爆薬載せたドローンが、自動操作アプリでお手軽ミサイルになっちまうんだからよ。」
『超重戦車』の至近距離で勢いよく飛び出したドローンが機銃によって数機落とされた。しかし、その飛び出したほとんどのドローンは『超重戦車』の駆動部や排気設備、装甲の継ぎ目などに飛来し自爆を成功させていた。
装甲の継ぎ目を破壊され装甲版が剥がれると、そこには排熱のために外側に設置されていた動力炉が露わになる。
最後に残ったドローンが飛び込むと、『超重戦車』の心臓が破裂し内部から大炎上、さらに火薬庫に引火していく。
何度も繰り返される爆炎と爆音が鳴り響き終わると、鉄の居城がくず鉄の山へと変り果てていたのだった。
大成功
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天道・あや
あれが超重戦車…!……本当にデカっ!?…でも!デカい物ほど登り甲斐が…いや、越え甲斐がある!皆の未来の為にも…必ず倒す!!
主砲はあんだけ大きいとなると撃つのにも時間がかかるはず!だから打たれる前に倒す!
【レガリアス】をフル稼働させて全力【ダッシュ】!
主砲以外の砲撃は【見切り】!ジグザグダッシュで避ける!
そして戦車にある程度接近したら【ジャンプ】で戦車に飛び乗る!
そして目指すは主砲!うおおお!全力ダッシュ!
主砲の下に着いたらジャンプしてUC発動!(鎧砕き、属性攻撃雷)主砲の砲身を壊す!…のは無理かもだけど曲げる事はできる筈!上に曲げて撃てないようにする!
これが…あたしの…人間の底力だーー!!
己が身の何倍もある巨大な犬が横たわる懐で、少女がラジカセのほこりを払って様子を見ていた。
何の変哲もないラジカセだが、彼女にとって重要なのはその『中身』の方である。
それなりの精密機械であるため先の戦闘での損傷が無いか慎重に回し見ると、恐る恐るイジェクトスイッチを押して『中身』の安否を確かめる。
彼女、天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)にとってかけがえのない夢の形、自作CDが割れていないか心配で仕方がなかったのだ。
マスターではないため複製はいくらでも出来るが、そういう問題ではない。
自分の夢が傷付くのが怖かったのだ。
「大丈夫……大丈夫よあたし……深呼吸して、ゆっくり目を開けるの……。」
いきなりだとショックが強すぎるため、目を瞑ってCDを取り出して、薄眼を徐々に開いていく。
すると、あやの手に納められていたのは無傷の自作CDの姿であった。
「はぁ~良かった~。でもこれでまた一つあたしの歌に箔が付いたってものよね!」
自分の歌で敵をも魅了し引き寄せた。
売り込むためのエピソードが増えたと満足気に頷くと、自分のサインを描いたケースに丁寧に仕舞う。
一枚一枚手書きケース。この世に同じものは二つとないあやのプレミアムグッズである。
ラジカセとCDを遠征用の丈夫な荷物入れに収納すると、あやの耳が不快な金属の擦れる音を微かに捉えた。
「……??なんだろうこの嫌な音……。」
彼女は自らで作曲もこなせるため、雑多な音が混じる屋外であっても耳聡くその音を拾うことが出来たのだ。
もっと細かく音の出所を探ろうと、タタっと軽やかに地を蹴り元服屋であった瓦礫の頂上へと駆け上がる。
周囲で朽ちている他の瓦礫と違い、この服屋はあやが丈夫な骨組みになるよう建て直していたため、入り口側の壁一面が崩れる被害で済んでいる。
そのため屋上に登ると周囲一帯をよく見渡せた。
「こっち……かな?」
あやが耳の後ろに手を当て集音するように覆うと、風に乗ってやってきた先ほどの不愉快な音を探っていく。
程なくして聞き分けたあやが音の方向へと目を向けると、なんと巨大な鉄の山が土煙を上げてこちらに向かっていたのである。
「ん?んん~?……何あれデカっ!?あっもしかしてあれが超重戦車……!」
そのシルエットに見覚えアリと気が付くと、あやが懐にしまっていた手配書を取り出し広げる。
山のような大きな戦車。よくわからないが砲塔が沢山ついていて強そうな見た目。
この写っている姿は探していた賞金首で間違いないだろう。
「やっぱりね!それにしてもあれはデカ過ぎる……でも!デカい物ほど登り甲斐が……いや、越え甲斐がある!皆の未来の為にも……必ず倒す!!」
街外れの荒野を地鳴らす障害を見つめると、決意を固めた様に手配書を握った手に力がこもった。
配下であるタンクドッグとの戦いで既にこちらの居場所は知れていたのだろう。
『超重戦車』の副砲というには大きすぎる砲塔の数々からアラレのように砲弾があやに向かって無理注いできた。
「頑張ってレガリアス!あたしに越えられない壁は無いってところを見せて!」
対するあやも黙って見ているわけではない。
今回も靴をレガリアスのインラインスケート形態にすると、服屋の瓦礫を一気に滑り降りて『超重戦車』の元へと急いだ。
今もなお降り注ぐ副砲の中、中央にそびえ立つ巨大な煙突のような主砲。その一撃必殺の都市破壊兵器を抑える拘束具が次々と外されていくのが見えたからだ。
「主砲はあんだけ大きいとなると撃つのにも時間がかかるはず!だから撃たれる前に倒す!」
この街を壊滅させた規模の威力だとすれば、考えるより先に動くしかないのだ。
土砂降りの爆炎の中、何度も危険な場面はあった。
しかし、あやには叶えなければならない夢がある。人々の未来を照らす星、スタァになる、そのことを胸に何度でも立ち上がり副砲の射程圏より内側に滑り込んだ。
「一番星が昇らなかったら誰が皆を照らすの!絶対に登ってみせる!目指すは主砲、うおおお全力ダッッッシュッッッ!!!」
『超重戦車』正面の段々に重なる副砲の並ぶ隙間。丁度壁を二つ隔てたように対面するその隙間へとあやが飛び込む。
空を滞空する間に脚部のレガリアへ大気圧縮を行わせ、片面の副砲を蹴る瞬間に圧縮大気を解放し反対側の副砲へと跳び移っていく。
三角跳びの要領でヒョイヒョイと駆け上がると、ついに首を下ろした超巨大な主砲の下に辿りついた。
「流石にあたしじゃこんな大きな鉄の塊を壊せない……けど!曲げることくらいならあたしにだって!!」
真上を睨みぐっと膝を曲げてバネを作ると、レガリアの力と共に固く握った右手を突き上げ主砲の喉笛を叩き抜く。
「いっけぇぇ!!これが……あたしの……人間の底力だぁぁぁ!!!」
ゴウンと鈍い衝撃音が響くと、主砲が跳ね上がって天を仰ぐ。
衝突時の誤作動か、そのまま主砲が放たれた。
高く高く昇る一番星の流星が尾を引き、一夜を開けるように墜ちて来る。
「ちょっと!これってマズいんじゃないの!?」
痺れる右手をさすりながら、あやが再びレガリアでの全速力で離脱すると、後方で耳をつんざく爆発音ととてつもない風があやの背中を押していく。
「あたし飛んでるぅぅぅ!?」
空中で腕をバタつかせて吹き飛ばされていると、見慣れた半壊の服屋が見えて来る。勢いは止まらずこのままではぶつかってしまう。
もうだめか、そう思い目を瞑ったあやだが、返って来た感触はもふんと柔らかく包み込むクッションのような感触。
「わぷっ!……これってさっきの犬?」
なんと彼女を救ったのは先ほど倒した犬の亡骸であった。
身体を傷つけずに倒せていたからこそ今に繋がったのだろう。
もふもふの毛皮から顔を離し振り返ると、『超重戦車』は跡形も無く消し飛んでいた。
「勝った……やったー!!!」
勝利の嬉しさに自作の歌を口ずさむと、心地良い風が彼女の髪を撫でるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
ところで賞金なんだけどコレ誰が出してくれるんだろうね
相手は陸のモンスター…相手するには相応の用意が要りますな!
【軍用機】召喚!今日の一品はこれ!「Ju88P-1」!
この吊り下げた武装(75mm砲)を見てくれ…こいつをどう思う?
よーし、盛大にやろうぜ!
地上で砲撃されぬよう街の残骸に隠れながら【操縦】しテイクオフ!
どんな戦車でも弱点は真上から攻撃されることでござるよ!
砲は向けづらい、装甲は厚くしにくい…なので勢いよく90度で急降下!弾薬庫のありそうな砲塔の付け根めがけて75mm砲をシュゥゥゥゥ!超!エキサイティンッ!
なにこの機体に急降下の記録はない?急降下できない?
できないじゃねぇよ、やるんだよ
「ふぅ……それにしても見事なパンジャンだったでござるなぁ。」
焼け焦げた元・自分の死体を満足そうに見下ろすエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)が言葉を零した。
先の戦いで彼は、街すらギミックの一部として大立ち回りを演じたエドゥアルトのピタゴラ装置作戦によって多くの戦果を挙げることが出来たのだ。
最後の大詰めである超巨大パンジャンドラムの威力も凄まじく、群れ為してきたタンクドッグ達も一網打尽で吹き飛ばしたほどなのだから。
ただ一つ失敗だったのは、そのパンジャンドラムが真っ直ぐ転がらずにエドゥアルト本人まで巻き込んで大爆発したことだろうか。
「まぁアレは真っ直ぐ転がらないのが正解みたいなものだから結果的に大成功みたいなものですぞ。」
足元の綺麗に黒焦げた自分の死体を見つめ、しみじみと感慨深そうに頷いた。
彼が保険としてリスポーン地点を設定していなければ危なかったかもしれない。が、ある意味彼が一番パンジャンドラムのことを信頼しているからこそ用意していたのかもしれない。
「さてと、ウェーブを超えたしそろそろボス戦が始まる頃合いでござるかな?拙者ワクワクですぞ!」
死を乗り越えてきたとは思えない朗らかな表情で懐をまさぐると、一枚のくたびれた紙を取り出す。
表に写されているのはブリーフィングで見せられた手配書と同様のもの。
下の方には多額の賞金額が記されている。
「ところで賞金なんだけどコレ誰が出してくれるんだろうね。隣町で聞いてみますかな。」
また写真から分かる外観はとにかく異形であった。
まずそんなに必要なのかとツッコミたくなる副砲の量。
「機銃も気持ち悪いくらいいっぱい付いてるでござるね。」
そしてこんなの実戦では的になるだけじゃないのと言いたくなる山のような図体。「これ一両で爆撃機作れるんでござろう。」
普通なら正気を疑う設計をしている見た目だが、不思議とエドゥアルトには親近感が湧いた。
「むっ!だんだんと、このどことなく英国面に堕ちてる感じが気に入ってきましたぞ!早く戦ってみたいでござるな!」
先の戦いでも大活躍?したパンジャンドラムを始め数々の珍兵器を産み出してきた英国魂が疼くのだろう。
エドゥアルトが胸を高鳴らせ早く早くと待ち望んでいると、パンジャンによって見晴らしの良くなった街を抜けてさらに奥の荒野から、件の賞金首らしき影が見えて来た。
「いやマジデケェでござるな!相手は陸のモンスター……となると相手するにはこちらも相応の用意が要りますな!」
地平線を隠す巨大な『超重戦車』をニヤリと口角を上げながら睨むと、彼は準備のために駆け出した。
山のように大きな車体、天に届きそうなほど長い砲身、地を割り地鳴らす巨大な履帯。
まさに陸のモンスターの名に相応しいゲテモノ珍兵器が街へと向かう中、その上空では風を切る鉄の鳥が大空を支配していた。
「てってれー今日の一品はこれ!『Ju88P-1』!この吊り下げた75mm砲を見てくれ……こいつをどう思う?すごく……大きいだろ。よーし、今日は盛大にやろうぜ!」
エドゥアルトが駆り出したのは対戦車攻撃機の一種である。
見た目にも分かりやすいデカイ砲を乗せた攻撃力重視の重くて遅いパワータイプの戦闘機。
思いっきり空気抵抗を受けまくるので対空戦は動く的でしかないが、この空は既に彼のもの。気兼ねなく大空に羽を広げることが出来るのだ。
「デュフフフ!離陸してしまえばこちらのものよ!どんな戦車でも弱点は真上から攻撃されることでござるからな!」
戦車は基本的に対地戦が主戦場であるため、横方向の装甲が重視されている。
そのため、重量制限を考えれば天板装甲は厚くすることは稀だ。
市街地殲滅用の『超重戦車』も例外ではなく、巨大な主砲を除けば上空へ砲を向けることは難しかった。
エドゥアルトが機体を振って窓から地を這うハリネズミを見下ろす。
「弾は真っ直ぐ射抜かないと薄い装甲でも弾かるでござるからなぁ。……なので勢いよく90度で急降下!」
機体を振った勢いで旋回しながらそのまま大きく上昇すると、電源の切れたラジコンのように動きを停止。
重い砲塔に引っ張られて180度くるりと回転すると、真っ逆さまに急降下し始めた。
「なに、この機体に急降下の記録はない?急降下できない?できないじゃねぇよ、やるんだよ!」
ただでさえ重くて遅いこの機体に当然そんな記録があるわけはない。
徐々に加速していく世界の中で、機体全体がビリビリと振動していく。空気抵抗が大きすぎるのだ。
エドゥアルトの握る操縦桿が痺れるほどに震えるが、グッと奥歯を喰いしばり離さない。
「とりあえず第一関門突破ですぞ!最後は75mm砲を相手の頭にシュゥゥゥゥ!超!!エキサイティンッ!!!」
握っているのがやっとの状態ではあるが、気合で叫んで主砲のスイッチを押しぬくと、機体腹部の対戦車砲が放たれる。
ボンと『超重戦車』の天板に穴を空けると、幸運にも弾薬庫であったらしく内部から爆発が起きた。
連鎖的に爆発が爆発を呼び、もはや沈黙まで秒読みという状況である。
「やるじゃない(ニコ!)。さぁあとは拙者が帰還すれば作戦成功でござるな!」
エドゥアルトが機体の姿勢を戻そうと操縦桿引くが、一向に反応は無い。
「え?え?嘘でござる!天丼オチなんてサイテー!」
エドゥアルトを乗せた機体は燃え盛る『超重戦車』に沈み、彼と共に大爆発で周囲一帯を焦土に変えてしまった。
「拙者復活!いやーリスポーンがなければ危なかったでござるな!」
ひょっこり別の場所で傷一つ無いエドゥアルトが笑う。
先ほどのリスポーン地点へと戻っていたのだ。
丁度吹き飛んで来た彼の元・身体が元々・身体の横にスライディング土下座を決めてきた。
「さてと、帰る前に賞金貰いに隣町へと向かってみるでござるか。」
暴れ切って満足したエドゥアルトは、Pip-Boyのマップ機能で印を付けると賞金を目指し荒野を歩き出すのであった。
大成功
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