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麻雀は健全なゲームです

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●煤けた背中を剥き出しに!
「きゃああああっ!?」
「いやぁああああんっ!?」
「駄目、駄目ぇええええっ!?」
 その日、キマイラフューチャーの一角で、女性たちの悲痛な叫びがこだました。
 ウサ耳を生やした可憐な乙女も……。
 猫耳猫尻尾の妖艶なお姉様も……。
 下半身が魚になったロリっ子までもが……!
 ――一糸纏わぬ全裸へと剥かれていたのである!!
 ……その原因は、彼女たちの前に置かれた1つのテーブルにあった。
 緑を湛えたその天板の上には、手のひらに簡単に乗ってしまうサイズの立方体が複数転がっている。
 その数、136。
 そして、その立方体の表面には漢字や様々な図柄が描かれており、時々何も描かれていない真っ白な物も見て取れた。
 ……もう、お解りですね?
 それは『麻雀』! 然らば、この場で行われていたのは『脱衣麻雀』に他ならない!!
 ……とはいえ、女の子がそんなものを進んでやるはずも無く……。
「ふっ……お前らの背中が煤けてるぜ」
 雀卓の前の椅子に腰掛ける黒スーツの人物――首から上が麻雀牌の『中』になっている怪人の、強引なる所業であった。
 ……『中』頭の怪人の背後には、首から上が麻雀牌の『東』だの『二索』だの『九筒』だのになっている怪人たちも立ち並ぶ。
 もしや……136人居るのだろうか?
 だとすれば、一般人のキマイラの女性たちではとても逃亡など叶わなかったであろう。
 しかも――この勝負、リアルタイムで動画配信されていたのである! 酷過ぎる話だった。
「ふぇーん! もうお嫁に行けないー!!」
「せめてパンツだけでも返してぇっ!!」
「どうしてこんなことを……!?」
 嘆く被害者の女性たちへ、『中』頭の怪人は「何も解っていない」とばかりに肩をすくめた。
「そんなもの、世に脱衣麻雀を流行らせる為に決まってるだろうが! ビバ、脱衣麻雀! ブラボー、脱衣麻雀! これに琴線を震わされない男など居ない! 脱衣麻雀が流行ること、それは必然! そして脱衣麻雀が流行れば、それの伝道師たる我々の支持者も増える! この世界を我らが手にする日も近いという寸法よ!!」
 ……明らかに女性からの支持率は急降下することに、この怪人共は気付いていないようだった……。
「さて……それでは次の対局へ移ろう。新たな対戦相手を連れてこい。そこの敗残者共は……適当な所へ捨ててきな!」
「「「全裸で屋外放置は嫌ー!!」」」
 この季節、二重の意味でつらいことになるだろう被害者女性たちが、大きな袋に押し込まれ、『南』や『北』や『二萬』の頭の怪人たちに運ばれていく。
 次局の動画配信準備が進められる中、『中』頭の横に『五索』頭がやって来て、耳打ちする。
「……派手に動き過ぎじゃないか? 猟兵という奴らの話も聞く。この雀荘が襲撃される可能性も――」
「――問題ないさ」
 心配げな『五索』へ、『中』は自信満々に言ってのける。
「いざとなったら『先生』にお願いすればいい……」
「――ああ、任せときなぁ」
 雀荘の一角で声が応じた。
 革張りのソファーにふんぞり返った着流しの人物が、『白』頭の怪人(体型からして女性らしい)たちをはべらせ、酒杯を傾けている。傍らの壁には長巻が立て掛けられ、鞘に納められていてなお剣呑な気配を放っていた。
「雀荘もまた賭場。賭場には用心棒が付きものだろぅ? 不届きな客ぁ丁重にお帰り頂くぜぇ」
 言いつつ、着流しの男は「くくっ」と笑う。
「――それになぁ。猟兵って奴らはべらぼうに強くて、キマイラ共の間で大人気って話じゃねぇか。そんな連中をオレが返り討ちにする様を配信出来りゃぁ、奴らより強ぇオレの人気は鰻登り! 支持率急上昇ってことよぉ!! むしろ、猟兵共に来てもらわねぇと張り合いがねぇぜぇ」
「「「「きゃー、先生素敵ー!」」」」
「なんと頼もしい……!」
 自信満々な着流しの男に、『白』頭たちが、『五索』頭が感服する。
「ふっふっふ……我らの勝利に疑いなし! 倍満は確定したようなものだ!!」
 拳を突き上げ、『中』頭は勝利のビジョンに酔っていた。

●麻雀は賭け事禁止!
「皆ー! ちょいと女の敵を殺してきてくれへんかなー!?」
 グリモアベースに来るなり物騒なことを言い出したのは、グリモア猟兵の灘杜・ころな(鉄壁スカートのひもろぎJC・f04167)だ。
 憤慨しているらしい彼女の足取りは普段より荒々しく、その分、短いスカートも盛大に翻るが……肝心の中身は見えそうで見えない。
 ころなは、据わった目で今回の予知を話し始める。
「キマイラフューチャーで非道な動画を配信する怪人共が現れるんや。攫った女の子たちを、強制的に『あるゲーム』に参加させるっちゅうな。そのゲームは――『脱衣麻雀』や!」
 口にするのも忌々しいのか、ころなの柳眉が逆立つ。
「麻雀のルールも知らんような子たちを無理矢理雀卓に座らせて、あれよあれよという間に裸にひん剥いてしまうんや! しかもその様子を動画配信とか……趣味が悪過ぎるで!!」
 お怒りのグリモア猟兵は、しかしそこで項垂れた。
「ほんまは皆に即現場へ乗り込んでほしいんやけど……うちの予知でも、動画の配信場所が何処か、解らんかったんよ。ただ、被害に遭った数十名にも及ぶ女の子たちが、その後に置き去りにされる場所は予知出来たんや。まずはそこ行って、被害者たちを保護してほしいんよ」
 彼女たちも視界を塞がれて運ばれている為、動画配信の現場が何処かは知らない。が、人数が人数だ。全員から情報を聞き、統合すれば、特定出来る可能性は充分にある。ころなもそれを期待しているらしい。
「ただ……脱衣麻雀をやらされたんやから、被害者たちは当然全裸や。その状態でうちらに情報提供なんて余裕はあらへん。女性としての羞恥心の問題だけやない……今の季節、素っ裸やったら風邪引いてしまうわ」
 それどころか、凍死の危険さえある……。
「せやから、被害者の人らから話を訊く前に、皆には急いで彼女らの服を用意してほしいんや。キマイラフューチャーの常として、服もその辺をコンコン叩けば出てくるけど……女性用の衣類を一式、それも冬用を相当数集めるとなると大仕事になるで。皆、気張ってな?」
 それらが済み、動画配信現場も特定出来たなら、後はそこに乗り込んで怪人共を片付けるだけである。
「正面からカチコミを掛けるのもええし、こっそり忍び込んで奇襲するのもええ。そこは任せるわ。ただ、怪人共の人数が多い上、さらに強い怪人が用心棒になっとるみたいや。気ぃ付けてな?」
 最後に、ころなは断言する。
「麻雀自体は相手と心理を読み合い、運を比べ合う崇高なゲームや。けど、金銭であれ着とる服であれ、何かを賭け始めた途端にそれは歪むんよ。皆、麻雀でギャンブルはご法度。忘れたらあかんで?」


天羽伊吹清
 諸君、私は脱衣麻雀が……んんっ、げふげふっ。
 ……き、嫌いではない、かな?

 そんなわけで、新人マスターの天羽伊吹清です。
 今回は脱衣麻雀にまつわるエピソードです。

 補足として。
 第1章は、被害に遭ったキマイラ女性たちの服を如何に効率良く、短時間で、彼女たちを待たせずに用意出来るか、それが重要視されます。
 そこに問題が無ければ、被害者女性たちの話を統合することで、敵怪人たちの拠点である雀荘の位置は判明します。
 ただし、あまり服集めることに時間が掛かってしまうと、被害者女性たちが体調を崩すなどして話を訊ける状態ではなくなり、敵怪人たちの拠点が判明出来ず、失敗してしまう危険性もあります。
 ご注意のほどを。

 第2章以降は、基本的に純戦闘となる予定です。

 それでは、皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『コンコンコン大作戦』

POW   :    とにかくあちこちで根気よくコンコンコンしまくる!

SPD   :    とにかく素早く器用にコンコンコンしまくる!

WIZ   :    よく考えたらコンコンコンしなくてもいいんじゃ……? 別の調達法を使う

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

百鬼・葛葉
困っている子たちを癒してあげるのはママの得意分野ですっ!
とりあえず殿方がこないように地形を利用しつつ天狐の見えざる手を張り巡らしてとおせんぼしつつ、フォックスファイアの狐火を16個浮かべて皆に暖を取ってもらいますっ!
…いえ、むしろ脱衣させられた子の中に殿方も混じってます?
その場合はコンコンして出てきた衣服いがいの物でかるく目元を覆ってあげますっ
おいたはめっ、ですよ?
こころに傷を負った子たちに優しく、手を繋いであげたりしてコミュを取りつつ、大きなお鍋に持ってきたトン汁を狐火であっためて皆に配っていきます
お腹がくちくあったかくなれば、心はおちつくもの
皆を鼓舞しつつ動ける子全員でコンコンしますっ!


上月・衒之丞
脱衣麻雀、遊戯としては好ましく思いなんしが、無理強いは好かねえことをしなんすな。
しかも見世物にしなんしは、女御らが不憫でありんす。

【WIZ】
まずはある程度の数はテレポート前に調達していく。肌着優先で。
サイズなどもあるだろうから、、入らなかった者たちのために、大きめのタオルも大量に用意していく。
「流石に嵩張りなんすなぁ。男衆なり新造なりおりゃんよござんすが、仕方ありんせん」

着る物は着せて、足りない分はタオルを巻かせて、あとは他の猟兵らが発掘するまでの間、フォックスファイアで焚き火を焚きながら、被害者のメンタルケアに回る。
辛い経験をしたのだから、慰めないと。
「ほんに辛くありんしたなぁ……」



「脱衣麻雀、遊戯としては好ましく思いなんしが、無理強いは好かねえことをしなんすな。しかも見世物にしなんしは、女御らが不憫でありんす」
 痛ましげにキマイラフューチャーへと転移したのは、上月・衒之丞(泡沫の遊女・f11255)だ。
 衒之丞はその細くしなやかな肢体に相当な手荷物を抱えている。肌着優先で、事前に準備出来る分の被害者女性たちの衣類は用意してきたのだった。
「流石に嵩張りなんすなぁ。男衆なり新造なりおりゃんよござんすが、仕方ありんせん」
 遊郭勤めらしい発言をしつつ、衒之丞はグリモア猟兵から教えられていた地点へ足早に向かう。
 路地の奥にあるその空き地には、既に百鬼・葛葉(百鬼野狐・f00152)が居り、小さな身体をテキパキと動かしていた。
「あ、そこは『天狐の見えざる手』で通せんぼしていますので、こちらから通って下さい」
 葛葉は男性が通り掛かって被害者女性たちの柔肌が晒されてしまわぬよう、ここに通じる路地に極細の糸を張り巡らせていた。普通に歩いているとそれに絡まってしまう為、同じ猟兵の衒之丞には通り抜けられるルートを指示する。
 ……ちなみに、衒之丞も実は男なのだが……割と性別を凌駕している彼の美貌に、葛葉はその事実を気付けていないのかもしれない。
 さて、共に妖狐である葛葉と衒之丞。その能力からして考えることは同じであった。狐火を呼び出して、まずはそれで被害者女性たちへ暖を取らせたのである。任意で消せる狐火ならば火事になる危険性も少ない。周囲に建物も多いこの場では良い案であった。
 葛葉など、大鍋に入った豚汁まで狐火で温め始めている。幼いながら、養護院で皆の母親代わりを務める彼女ならではの気配りであった。
「困っている子たちを癒してあげるのはママの得意分野ですっ!」
 そして衒之丞の方は、用意してきた肌着を被害者女性たちへと配っていた。とはいえ、ここはキマイラたちの天国キマイラフューチャー。キマイラたちの中には、人型を大きく逸脱している者も居るわけで、衒之丞が用意した肌着がそもそも着けられない体型の被害者女性も少なからず居たのである。
 それ以前に、人数も多過ぎて衒之丞が1人で準備した量の肌着では全員に行き渡らない。心苦しくも、衒之丞は肌着を纏えなかった者を優先して大きめのタオルを配り、この場を凌ぐ。
「……おや? 殿方も混じっておられ……る?」
「……え? 脱衣させられた子の中に殿方も混じってます?」
 疑問符を浮かべた衒之丞に、葛葉が狐耳をピコンと反応させた。彼女は近くの壁をコンコンと叩き、出てきた毛糸の帽子を衒之丞が見付けた男の子へ深く被せる。
 ……いや、むしろ、彼は男の『娘』の類いなのかもしれない。怪人共はかなり節操無く対戦相手を集めて、脱がせていたようだ。
「おいたはめっ、ですよ?」
 そんな男の娘を諭す葛葉に、衒之丞は色々な意味で苦笑するしかない。
 ……そうして、温まった豚汁を被害者女性(ごく一部男性)たちに配り、葛葉と衒之丞は彼女たちの訴えを聴いていく。
「うぅ……あんな姿が動画配信なんて……もうお嫁に行けない……」
「ほんにつらくありんしたなぁ……」
 泣きべそを掻く人魚のような姿のキマイラの少女の頭を、衒之丞は優しく撫でる。
 異性の前ではやや好色そうな口調で振る舞うこともある彼だが、今はいつもの廓女口調で被害者女性たちのメンタルケアに終始していた。
 葛葉もウサ耳の少女の冷え切った手を握ってさすりながら、彼女の言葉を黙って聴いている。
 まずは被害者たちを落ち着かせることに尽力した2人のおかげで、この場の者たちの精神も大分安定してきたようだ。
 中には葛葉の鼓舞を受け、自ら衣服を探すべく近辺をコンコンする者たちも現れた……が……。
 ……これは、怪人たちが謀ったのかもしれない。
 この空き地の周辺には、帽子やマフラー程度ならともかく、本格的な衣類が出てくる場所は無いようだった。
「……あとは他の猟兵らが発掘してくれるのを待つしかないでありんすな……」
 その為に頑張っているはずの他の猟兵たちへ、衒之丞は思いを馳せるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

古明地・利博
頭が麻雀牌なんて面白そうだね!是非とも解体して色々と調べたいな!
でもそのために被害者達のケアをきちんとしないとね♪

私は被害者のいる場所に急行するよ。着いたら少し開けた場所で【不浄の炎槍】を地面に、キャンプファイアーみたいに積み重ねるようにして放つね。
被害者達はそこで暖を取ってもらおうかな。これで少しは時間を稼げるはず。後は只管素早くコンコンして服を集めるよ。

話を聞ける状態になったら被害者の人達に『どれくらいの間運ばれたか』『どのようにして運ばれたか』『運ばれてる間に聞こえてきた音で特徴的なのはあったか』を聞くよ。それで大まかな位置は特定できると思うからね。
フフッ、待っててねぇ麻雀牌達♪



「頭が麻雀牌なんて面白そうだね! ぜひとも解体して色々と調べたいな!」
 そんな思惑もあり、今回のグリモア猟兵の要請に応えた猟兵も居る。
 古明地・利博(人間の探索者・f06682)だ。
 こんな名前だが、見た目は小柄な色白の少女である。……何か、理由がある模様?
「でも、その為に被害者たちのケアをきちんとしないとね♪」
 そう思った利博もまた、被害者女性たちに暖を取らせようとした1人なのだが……彼女は若干苦労している。
「うーん?」
 利博がその為に利用しようとしたユーベルコード、『不浄の炎槍』は、先に妖狐の猟兵たちが用いた狐火とは異なり、自在に鎮火は出来ないのである。これで生み出した火属性の投げ槍をキャンプファイヤーのような形へ組み上げようと利博は考えていたのだが……流石にそうするには、この場は人口密度が高過ぎた。被害者女性たちが火傷してしまう危険性もある。周囲の建物も比較的距離が近い為、うっかりすると燃え広がって火事になりかねない……。
 そして、そうなった場合の対処手段が利博には無いのだ。
 基本、都市世界であり、建物が密集しているキマイラフューチャーでは、火の扱いには細心の注意が必要なのである。
「……ままならないね……」
 結局、2、3本組み合わせて篝火のような形にし、そこで数人の被害者女性たちには暖を取ってもらうことにした。
 後はひたすら、可能な限り素早くコンコンして回り、被害者女性たちの為の衣服を集めようというのが利博のプランである。
 他の猟兵たちの活躍で、この近辺にはきちんとした衣服が出てくる場所が無いことは判明していた。利博は、求める物が出てくる場所を探しにこの場を後にする。
(衣服を集めて、それが被害者女性全員に行き渡って、話を訊ける状態になったら――『どれくらいの間運ばれたか?』、『どのようにして運ばれたか?』、『運ばれてる間に聞こえてきた音で特徴的なのはあったか?』を訊こう。それで大まかな位置は特定出来ると思うからね)
 利博がまとめたその案は、実際に被害者女性たちから話を訊く段になればきっと役に立つだろう。
 とはいえ、そこに到るまでにはまだまだ時間と労力が必要なようである。
「フフッ、待っててねぇ麻雀牌たち♪」
 麻雀牌頭の怪人たちとの邂逅を楽しみにしつつ、利博はサイバーパンク都市を駆けていくのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

八尾・空子
「ふむ、年若き乙女の危機を見過ごすわけにはいくまいて」
 【人形艶舞】で複製したオリジナル以外のみさきさんを操作し多方面へ向かわせコンコンさせて衣服の回収をおこなうぞ

 その上で怪人共に麻雀を挑み他の一般人に魔の手が向かわぬように時間稼ぎをするかの
「どれ、妾も麻雀には多少自信はあるでな少し相手をしてやるかの」
 ただし怪人共にまともな昼の麻雀で戦ってやる必要も無しあらゆる手段を用いて負かしてやるとしようか

 オリジナルのみさきさんを他の麻雀参加者の手牌が見える位置に配置しての手牌の把握から【フェイント】【二回攻撃】【第六感】【念動力】等を駆使して積み込みや拾い、すり替え等ありとあらゆるイカサマを行う



「ふむ、年若き乙女の危機を見過ごすわけにはいくまいて」
 そう述べて今回の事件に馳せ参じたのは、八尾・空子(妖獣 五尾の空狐・f06432)である。
 齢1300歳以上を自称する彼女、脱衣麻雀の被害に遭った女性たちを放っておけなかったのは、それ故の母性が理由か?
「それ、踊るがよい」
 空子は、『みさきさん』の愛称を持つ自らの絡繰人形の複製を、ユーベルコードで次々に生み出した。それらを念力で操作し、キマイラフューチャーの都市へと放って、あちらこちらをコンコンと叩かせ始めたのである。
 総勢15体に及ぶみさきさんの複製たちによる人海戦術……否、人『形』海戦術だ。食べ物が出たら場所を変えさせ、書物が出ても場所を変えさせ……やがて衣服が出てくる場所を見付けた複製には、ひたすらそこをコンコンと叩かせ続ける算段である。
 やり方は地道であるが、手勢であるみさきさんの複製がそれなりに居る分、ある程度の効率は期待出来た。
 それに対し――空子自身とみさきさんの本体の方は、少々当てが外れた模様である。
「……そう上手くはいかぬか……」
 麻雀については多少腕に自信がある空子、自らが怪人共との脱衣麻雀の相手を買って出て、一般人に奴らの魔手が及ばないようにしたかったのであるが……。
 ……怪人共が動画を撮影、配信している拠点が解らない現状では、直接乗り込むことは出来ない。奴らに誘拐されることを期待しようにも、流石にこの周辺の都市部だけでも、女性の人口は数百や数千どころではない。偶然空子が怪人たちに攫われる確率は途方もなく低かった。
 とりあえず、そこそこの衣服が集まった頃合いで、空子は一旦被害者女性たちの許へ帰ろうとする――が。
「……うむ? みさきさんの複製が1体、足らぬ……?」
 服だの何だのを抱えて集合したみさきさんの複製たちが、どう数えても14体しか居なかった。と……。
「なあ、さっきの紅の着物の人形を袋詰めにしてた連中って……」
「ああ、麻雀牌みたいな頭してたし、この動画配信してる連中じゃね?」
「あ、また新しい動画の配信が始まるぞ――」
「――お前たち、妾にもそれを見せてはくれぬかのう?」
「「はぃぃぃぃっ!?」」
 そんなことを話しているキマイラの青年たちに、空子は詰め寄った。気圧されたのか、彼らは手にしていた携帯端末を捧げものの如く差し出す。
 空子が受け取ったその画面の中では――今、彼女の腕の中にあるみさきさんそっくりの人形が、他2名のキマイラ女性と共に雀卓を囲んでいた。
「この怪人共……人形相手にまで脱衣麻雀とは、節操が無いのう……」
 雀卓を囲む最後の面子である『中』頭の怪人を睨み――そこで空子は気付いた。
「これは……!?」
 なんとその雀卓、いわゆる『全自動卓』であった。要するに、洗牌も山積みも、配牌さえも自動で行われる……。
 サイバーパンク都市世界たるキマイラフューチャーなら、確かにこの程度の物は存在していても不思議ではなかった……が。
「まずいのう……」
 空子はさらに当てが外れていたことを自覚する。
 もしも怪人たちと麻雀勝負が出来ていたなら、空子は様々なイカサマを駆使して翻弄してやるつもりだった。
 けれど、全自動卓の場合、積み込みを始めとしたいくつかのイカサマが行えなくなってしまう。
「……いや、それ以前の問題じゃな」
 この全自動卓は、怪人側が用意した物である。ならば、その動作は全て怪人側に有利になるように設定されていると見ていい。
 例えば――怪人が親の時、絶対に天和になるというような具合に……。
「小手先のイカサマでの対抗は、相当困難じゃな……」
(とはいえ、それをこの段階で看破出来たのは僥倖かのう?)
 怪人たちの拠点を判明させ、そこに乗り込む段になった時、この情報は何かの役に立つかもしれなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

リカルド・マスケラス
「やー、眼福眼福…とか言ってる場合じゃないっすね」
宇宙バイクに乗った仮面が颯爽と登場。どうやって運転しているかは謎だ!
「ところで、おねーさん達の中にこの辺の地理に詳しい人っているっすか?」
暖かい服や食べ物が出るコンコンポイントを知ってる人がいれば、多少遠くても宇宙バイクで調達しに行くことは出来るし、体を貸してもらえるんだったら、自分のバトルコスチューム(黒いコート)を貸してあげてもいい。
とまあ、そんな感じで行動範囲を広げることで衣服を調達しやすくする

服が揃ったら、おねーさん達に提案
「この中に、怪人共に仕返ししたい人はいるっすか?」
そのうちの一番巨乳の人の肉体を借りて敵をシバきに行くっすよ



「やー、眼福眼福……とか言ってる場合じゃないっすね」
 そう言いつつ、颯爽と登場したのはリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)だった。
 割とチャラい感じのヒーローマスクは空中をふよふよと漂いつつ(本当は宇宙バイクで乗り付けたかったらしいが、他の猟兵がこの空き地への路地に一般人男性侵入防止の為の糸を張っていた為、出来なかった模様)、被害者女性たちへ呼び掛ける。
「ところで、おねーさんたちの中にこの辺の地理に詳しい人って居るっすか?」
 リカルドの問い掛けに、数名のキマイラ女性がおずおずと手を上げた。
「じゃあ、暖かい服や食べ物が出るコンコンポイントを知らないっすかね?」
「……心当たりはいくつかあるけど……」
 さらなるリカルドの質問にキマイラ女性たちが返した答えは、考えてみれば当然のものであった。冬の期間を快適に過ごす為には、暖かい服も温かい食べ物も定期的に入手出来なければならない。このキマイラフューチャーでは、誰もがある程度はそういうコンコンポイントの心当たりを持っているのだろう。
 ただ……そこがすぐ近くにあって、即座に迎えるようならば、被害者女性たちもとっくに向かっているわけで……。
「……でも、その場所結構遠いよ? それに、服を確保出来ても、その……運べるの?」
「ご心配無用っす!」
 リカルドには宇宙バイクという頼れる相棒があるのである。重力下であるキマイラフューチャーでは宇宙空間ほどの動きは望めないが、それでも機動性は充分。比較的大型でもある為、それなりの量の衣服を同時に運ぶことも出来るはずだ。
 何なら、ピストン輸送という手段もある。
 キマイラの女性たちから目当てのコンコンポイントの位置を教えてもらったリカルドは、来た時よりもさらに颯爽とこの場から出発する。路地の外に停めていた宇宙バイクのエンジンを吹かし、一気に加速させた。
 ……一体、どのように運転しているのかは、少々謎だが。
「まあ、本当は、おねーさんたちの誰かに身体を貸してもらえれば良かったっすけど……」
 そうすれば、その人に対してはリカルド自身のバトルコスチュームを貸すことも出来たのである。
 しかし、他の猟兵たちのケアで少しは精神的に立ち直ってきたとはいえ、まだまだ流石に被害者女性たちはそこまで積極的にはなれない様子だった。
「服が揃って、おねーさんたちが元気になったら、改めて提案してみるっす」
『この中に、怪人共に仕返ししたい人は居るっすか?』
 それに手を上げる女性が居れば、その人の身体を借りて、リカルドは怪人共をシバきに向かうつもりだった。
 少しでもその女性の悔しさが晴れるように……。
「複数人が手を上げたら――その中で一番巨乳のおねーさんを選ぶっすよ!」
 ……ちょっと、欲望も混じっていたが。
 何にせよ、リカルドの、その宇宙バイクの機動力と運搬力は非常に頼りになるものだった。
 ここまでで、被害者女性たちの衣類の確保については、実はそれほど思うようには進んでいなかったのである。
 それを補って余りある量の服類を、リカルドは被害者女性たちへもたらすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バッカンボー・パディストロー
ンー、この季節に一糸纏わずというのはサスガにマズいですネ。先にある程度ノ防寒を考えた方が良さソーデス。

ワタシは【破城麦】に使うレベル×1トンの麦稈ロールを呼び出しテ、ソレをほぐしテ簡易的な麦藁のベッドを作成しマス。シーツが見つかれバなお良いのですガ、最悪皆さんデ藁の中に潜り込めばある程度ハ寒さを凌げるでショウ。藁は寝床に使われるほど保温効果ガ高いですカラ。……チョットチクチクするのはゴメンナサイ。

その後に、あちこちをコンコンして衣服の調達を行いマス。カイロのような暖房具も見つかればなお良し、ですネー。熱源ガあるのと無いのとでは大違いですカラ。【POW】

(なるべく女性陣に目を向けない様にします)



「ンー、この季節に一糸纏わずというのはサスガにマズいですネ。先にある程度ノ防寒を考えた方が良さソーデス」
 そう考えたバッカンボー・パディストロー(麦わらおじさん・f03764)は……他の猟兵たちの行動によって、少々割を食ってしまったかもしれない。
 バッカンボーは、自身のユーベルコードで呼び出した巨大な麦稈ロール……麦わらをトイレットペーパーのようなロール状にまとめた物……を解し、それで得た麦わらを使って簡単ながら麦わらのベッドを作ろうと考えていたのだ。
 麦わらの保温力というのは、案外馬鹿に出来ない。シーツなどを被せて体裁を整えられることが理想だが……そうでなくても麦わらの山の中に潜り込むだけでも大分暖かさが違うのである。多少チクチクすることに目をつぶれば、なかなか理想的な保温器具ではあるのだ。
 ただ……通常の麦稈ロールでさえ、直径が2m以上、重量は300kgを上回るという。バッカンボーがユーベルコードで呼び出すものに至っては、重さが『トン』の領域に入ってくる。
 ……それを被害者女性たちが集まった、そこまで広いわけでもない空き地で呼び出せば、怪我人を出してしまう危険性もあった。周囲の建物を破損してしまう可能性もある……。
 故に、バッカンボーは少し離れた別の広場で麦稈ロールを召喚し、それを解す作業に入ったのだが……大きさも重量も桁違いのそれを解すのは、なかなかの重労働であった。
 必然的に時間も掛かり……恐らくは、それがバッカンボーにとっての一番の不幸。
 その間に他の猟兵たちがもっと手っ取り早い防寒対策……要は『火』を使い始めたのである。
 多くの火は、延焼分でさえも点火した猟兵の任意で消せる安全性の高いものであったが、全てがそうだというわけではない。そういう状況下へ大量の麦わらを……大量の可燃物を持ち込むことは、火災の見地から見合わせなくてはならなくなったのだ。
「……とにかく、あちこちをコンコンして衣服の調達を行いマショウ」
 ここは切り替えるしかないと、バッカンボーは都市内で被害者女性たちの衣服を探す作業へと移行する。地道にあちらやこちらもコンコンと叩き続けたバッカンボーは、衣類ではないものの、役に立ちそうな物が出てくる地点を発見した。
 それは――カイロである。
「熱源ガあるのと無いのとでは大違いですカラ」
 それに、炎ほどの温度は無いにせよ、直に身体に触れさせることが出来るカイロのような熱源は、特に冷えている部位をピンポイントで暖めることが出来る。
 大量のカイロを入手して戻ったバッカンボーは、被害者女性たちからも大変喜ばれたのであった。
 紳士な彼が、終始彼女たちから目を逸らしていたのは、また別の話。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ネオン・エルバイト
助けたいは助けたいのですが、そのまま被害者たちの前に出るのははばかられますね……現場に早々に目隠しを行っている方が現れてくださったのが、男性の立場としても大変ありがたいです。

正攻法ではないかもしれませんが、自宅にある古着や、買ったけど着なかったものを段ボールに詰めてきました。僕のだけではなく同居人の物もありますのでサイズがまちまちですが、数名分にはなると思います。
ええと、下着類はちょっとこう……さすがにご用意できなかったのですけれど……外から見る分にはあられもない姿をさらす人は減らせると思います。
(衣類の入った段ボールを目隠し役の猟兵にわたして行く)



「……助けたいは助けたいのですが、そのまま被害者たちの前に出るのははばかられますね……」
 そうやって躊躇していたのは、ネオン・エルバイト(クリスタリアンの人形遣い・f03023)だった。
(正攻法ではないかもしれませんが――)
 そう気にしつつ、ネオンが行ったのは、自宅にあった古着、買ったは良いものの結局着ることが無かった衣服などを、段ボール箱に詰めて持ってくるということだった。
 キマイラフューチャーでは確かに正攻法ではないかもしれないが、考えてみれば他の世界ではこれが正攻法である。
 ネオンが持ってきた衣類は彼自身の物だけでなく、同居人の物も含まれていた。その為にサイズはまちまちであるが……逆に被害者女性たちの体格もまちまちである為、今回はその方が都合が良かったかもしれない。
 量的には数名分ではあるが……それは即ち、数名の被害者女性は確実にこれで体裁を完璧に整えられるということでもある。
 ネオンの成果は決して小さくはないものになるだろう。
 ……にもかかわらず、彼が被害者女性たちが待つ空き地に入る為の路地の所で躊躇っているのは、その紳士力が高過ぎるせいであった。
 被害者女性たちのあられもない姿を目撃してしまうかもしれないことに、罪悪感を覚えているのである。
 そんなネオンに気が付いた女性猟兵が、大丈夫だというように歩み寄ってきた。
「――ああ、目隠しですか」
 それで視界を塞げば、ネオンの懸念はどうにか晴らすことが出来る。
「いえ……現場に早々に男性への目隠しを行ってくれる方が現れて下さったのが、男性の立場としても大変ありがたいです」
 それでも、やはり自分自身が今の空き地へ入っていくことは、ネオンとしては躊躇われたらしい。衣類が詰め込まれた段ボール箱を応対してくれた女性猟兵へ託して、自分は場を辞する。
「ええと、下着類はちょっとこう……流石にご用意出来なかったのですけれど……外から見る分にはあられもない姿を晒す人は減らせると思います」
 申し訳なさそうに頭を下げるネオンに微笑しつつ、女性猟兵は下着や肌着に関しては持ってきてくれた猟兵が居る為、全員分には足りないがひとまず何とかなりそうだと彼に教えてくれた。
「どうにか……被害者女性たちは大丈夫に出来そうですね。良かった……」
 ネオンは胸を撫で下ろし、ずっと緊張していた肩から少し力を抜くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

竜洞・梓
麻雀はたまに遊ばせていただいております。大変頭を使いますが、だからこそ楽しいゲームです。頭のスポーツなのです。
それをこんなことに使うなんて、なんて破廉恥な連中なのでしょう! ぷんぷん。
【WIZ】
被害者さんが集められている場所で、エレメンタル・ファンタジアをきわめて出力弱めで起動します。「炎のつむじ風」を上空で起こして、全体の気温を上げる試みです。なるだけ冷えてしまう人を減らしましょう!
「ぽかぽかー、ですよ!」

それから近い衣料品店に協力を要請します。エレメンタルファンタジアで「ビル風」を起こし、ベルトコンベアの要領で服を流し込んでもらいます。
もちろん後で弁償しますよ。



 竜派のドラゴニアンの少女、竜洞・梓(まじかるどらごんウィッチ・f11833)はお怒りだった。
「麻雀はたまに遊ばせて頂いております。大変頭を使いますが、だからこそ楽しいゲームです。頭のスポーツなのです。――それをこんなことに使うなんて、なんて破廉恥な連中なのでしょう!」
 ぷんぷん怒りつつ、梓はまず被害者女性たちの防寒対策へと動く。
 被害者たちが集まっている路地の奥、ビルに埋もれた空き地。そこで梓は細心の注意を払って『エレメンタル・ファンタジア』を発動させた。それによって上空にごく弱い『炎の旋風』を発生させ、空き地全体の気温を上げようという試みなのである。
 ……問題は、件のユーベルコードが『制御が難しく暴走し易い』という性質を有していることなのだが……。
「ぽかぽかー、ですよ!」
 ――今、この場では上手く制御し切った。空き地には春が訪れたような暖かい空気が降りる。
 他の猟兵たちが用意していた暖を取る手段も色々とあった。しばらくの間、被害者女性たちが凍えることはあるまい。
 この成功に意気揚々と、梓は被害者女性たちの衣類の確保にも向かったのだった。
 ……ただし、梓が行ったのは、衣類の出るポイントを探して都市のあちこちをコンコン叩きまくることではない。
 確かにキマイラフューチャーでは、都市の各所をコンコン叩いて欲しい物を手に入れるのが主流だが――普通に店舗で売られている物もあるのである。
 梓は空き地付近の衣料品店へ駆け込んだのだ。
「後で絶対弁償しますので……どうかご協力、お願いします!」
 脱衣麻雀の被害者の女性たちの為に、衣類を提供してもらえないかと店に頼み込む梓。……だが、それはあまりに無謀と言えた。梓とは、被害者女性たちとも縁もゆかりの無い店に、後でお金を払うから商品を譲ってほしいなどと……。それも、口約束で……。
 本来なら冷たくあしらわれるはずのことであっただろう……が。
 梓の勇気に神様がほんの少し、手を差し伸べたのかもしれない……。
「……ねえ、それって、例の脱衣麻雀動画の被害に遭った娘たちの話よね?」
「ああああっ、あのムカつく奴! 何? アレを倒しに来てくれた猟兵さんなの!? ならOK! ぜひ協力させて!!」
 女性向けの衣料品店であるということも幸いだった。必然的に、店員は女性が多い。今回の事件の動画を知っていたらしい彼女たちは、快く梓に協力してくれた。
 ……やはりあの動画、女性からの反感は極めて大きいらしい……。
 そこが猟兵側の有利に働いた形だが、逆を言えば、ここまであの動画がキマイラフューチャーで広まっているという証拠である。今よりも対応のスピードを上げる必要が感じられた。
 ともあれ、今は被害者女性たちの所へ衣服を届けることが先決。梓は『ビル風』を巻き起こし、それに乗せて衣類を被害者女性たちの許まで運ぶことを試みる。
 ――『エレメンタル・ファンタジア』で……。
 ……先程の成功で、油断が無かったとは言い切れないだろう……。
「――んっ!? わっふ!? ……ああぁぁああああああああああっっ!?」
 梓は――今度は暴走させてしまった。想定以上に激しく吹き荒れたビル風は、折角の衣類を遥か上空へ巻き上げ……あちらこちらへ散らばらせてしまう。
 ……協力してくれた衣料品店の店員たちのおかげで、比較的短時間でそれらの衣類を回収出来たことが、せめてもの救いか?
 改めて、店員の女性たちにも手伝ってもらって衣服を被害者女性たちの居る空き地へと運んだ梓。ほぼ同時に、他にも衣服探しへ出ていた猟兵たちが成果を手に帰還する。
 時間は結構掛かってしまったが……梓たち猟兵は、被害者女性たちの為の衣類をどうにか人数分集め終わったのであった。

 ――そして、やっと心身共に落ち着いた被害者女性たちからの聞き取り調査を終えて……猟兵たちは怪人共の拠点と思しき場所を確定する。
 1つの雀荘。
 なかなか大きめの建物であり、なるほど、もし本当に麻雀牌頭の怪人たちが総勢136名居たとしても、余裕で彼らをその内に収め、かつ、内部で戦闘も支障なく行えそうなサイズであった。
 そこに、正面から殴り込みを掛けるのか、或いはこっそりと忍び込んで奇襲を掛けるのか、或いはまた別の搦め手を駆使するのか……?
 それらは全て、挑む猟兵たち次第である。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『雀牌戦闘員』

POW   :    国士無双
予め【異なる顔の戦闘員が14人揃う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    三元牌
【3人同時攻撃】による素早い一撃を放つ。また、【鳴く】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    立直
【相手の行動を読み、作戦通りの攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【狙いすました一発】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リカルド・マスケラス
「さて、リベンジマッチと行くっすよ」
暖かい格好になって元気になったら、志願者の体を借りていざリベンジへ。
巨乳希望だが、貧乳でも男の娘でも力は貸す

「脱衣も駆け引きがあってこそ!ルールも分からない子に無理やりゲームを強要ってのは、認める訳にはいかないっすよ!」
ゴッドスピードライドで縦横無尽に駆け回り、特定の敵を轢いたりドリフトで吹き飛ばしたり
「ポン!」「そこもポンっす!」
風牌を狙って攻撃し、小四喜や大四喜を狙っているように見せかける。
残った風牌達を守るような動きを見せたら、方向転換して手薄なところを攻める
混一色対々和+自風+場風がベストか
「いきなり役満狙いとかだいそれたことは流石にしないっすよ~」



 ――ドギュルォオオオオオオオオッッ!!
「な――何事だ!?」
 突如、拠点である雀荘に響き渡った爆音に、麻雀の『中』の牌を頭とする怪人は動揺の声を上げた。
 その叫びすら掻き消すように――宇宙バイクが入口の扉をぶち破り、雀荘内へ突入してくる。
「さて、リベンジマッチと行くっすよ」
 宇宙バイクの上でそう言ったのはリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)だが、その首から下は、ボンッキュッボンッという表現が良く似合うセクシーな女性のものである。
 元気を取り戻したら、怪人たちへの怒りと悔しさが沸々と湧いてきた脱衣麻雀の被害者女性たち……その内の1人の肉体を借りているのであった。
 そうすることで、彼女の無念も怪人共にぶつけてやろうというリカルドの粋な計らいである。
 ちょうど、動画撮影は休憩中だったらしく、一般人も居ない。暴れるには好機であった。
「くっ……猟兵共の襲撃か! だが、生憎とこちらには心強い助っ人が居るんだよ。『先生』! よろしくお願いします!!」
 雀荘の奥へ呼び掛ける『中』頭。リカルドも警戒するが……10秒経っても、1分経っても、5分が経過しても、奥から誰かが現れる気配は無い……。
「……え? あれ? 先生ー?」
 困惑した様子の『中』頭へ、『四萬』頭の怪人がこそこそと耳打ちする。
「いや、先生……さっき『便所行ってくる』とか言って、『白』の1人と一緒に何処か行っちゃったんだが……」
「――え!? それ、本当に便所か!? そういう建前で、『白』の娘と何処かにしけ込んでお楽しみ中とかじゃないよな!?」
 ……もし後者なら、10分や20分では多分、戻ってこない……。
 ――何かよく解らないがチャンスと見たリカルドは、宇宙バイクのエンジンを大きく吹かした。
「脱衣も駆け引きがあってこそ! ルールも解らない子に無理矢理ゲームを強要ってのは、認めるわけにはいかないっすよ!」
 変形した宇宙バイクが、一瞬で最高速へと達した。雀荘内を縦横無尽に疾走し、次々に麻雀牌頭の怪人たちを撥ね飛ばす。
「ポン! ――そこもポンっす!」
 轢き潰される『東』頭、ドリフトに巻き込まれて吹き飛ばされる『北』頭……特定の、『東』、『西』、『南』、『北』の頭の怪人を狙って攻撃しているリカルドに、『中』頭ははっとした様子だった。
「こいつ……『小四喜』、或いは『大四喜』になぞらえて攻撃している!? 小癪な、風牌たちを守れ!」
 そんな指示を飛ばした『中』頭に従い、『東』、『西』、『南』、『北』=風牌頭の怪人たちを護衛する動きを見せる他の怪人たち。『發』頭の怪人、『白』頭の女怪人、そしてリーダー格とは別の『中』頭の怪人がリカルドに負けぬ速度で同時攻撃を繰り出す……が。
「「「うわああああああっ!?」」」
 リカルドは逆に、その3体へカウンター的な轢き逃げアタックをかました。激しく壁に叩き付けられた『發』、『白』、『中』は動かなくなる。
「いきなり役満狙いとか大それたことは流石にしないっすよ~」
 小馬鹿にするようなリカルドの台詞に、嵌められたと悟った『中』頭が「ぐぬぬっ……!」と呻く。
(とはいえ、混一色対々和+自風+場風がベストっすけど……)
 何から何まで狙い通りにはいかないと、リカルドは自制する。今彼が借りている肉体は、本来は一般人のキマイラ女性のもの。それに傷一つ付けず、無事に返すこともまた猟兵の責務だ。
 怪人たちの攻撃から彼女の身体を庇わせて、少し傷付いた宇宙バイクを労うように軽く撫で、リカルドは再び疾駆を開始するのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネオン・エルバイト
この方々が不埒者の一派ですか。きちんとお掃除しておかなきゃいけませんね。

此方の行動を囮に、敵を討つ方向で行きましょうか。
リザレクト・オブリビオンを使い、死霊のうち一体には僕を守っておいてもらいます。可能ならぎりぎりまで隠れておきたいですね。
死霊のもう1体は、あえて敵が散っている場所に出現させてから【自身に一番近い敵】を狙って攻撃させておきます。こうして敢えて行動を読ませ、相手の攻撃を引きつけさせ……狙い通りにそっちに攻撃を仕掛けだしたら、僕を守らせていた方で戦場に出ていた方を狙ってた敵の隙をつきます。

狙いがうまく行かなかったり、一体倒した後は敵方の連携をかき乱すのに注力しますね。



「この方々が不埒者の一派ですか。きちんとお掃除しておかなきゃいけませんね」
 粉砕された入口の扉の陰から雀荘内を観察しつつ、ネオン・エルバイト(クリスタリアンの人形遣い・f03023)は自身の戦闘の方針を組み立てる。
(……こちらの行動を囮に、敵を討つ方向でいきましょうか)
 決めてしまえば行動は迅速に――ネオンはユーベルコードを発動させる……。
「……ん?」
 ……『それ』の存在にまず気付いたのは、『三筒』の頭を持つ怪人だった。
 大半が麻雀牌を頭部とする者たちで構成されているこの雀荘内で、あまりに異質な……錆びて亀裂が入りまくった甲冑を纏う騎士の姿。
 それは、腰に佩いた両刃の長剣を抜き――『三筒』頭へ斬り掛かってくる。
「ちょ――何か居るー!?」
 仲間の絶叫に、他の麻雀牌頭の怪人たちも見るからに死霊騎士然とした新手の敵を察した。
「何だありゃ!?」
「猟兵共の新手だろ!」
「行くぞ、『三筒』を助けろ!」
 他の怪人たちが死霊騎士の周りに殺到するが――やがて彼らは、相手の行動パターンがやけに単純なことを理解する。
 初太刀で深々と斬り付けた『三筒』を追撃することなく、新たに切り込んできた『八索』を迎え撃ったかと思えば、彼がうっかり足を滑らせて隙だらけにもかかわらず、別方向からより深く間合いを詰めてきた『二索』の方へあっさり向きを変えた。
「こいつ……より近くの相手を自動的に攻撃してないか?」
 その事実に到達して、麻雀牌頭の怪人たちはほくそ笑んだ。
「こんな動きの読み易い相手、敵ではないわ! 『立直』行くぞ、皆!!」
「「「おうっ!!」」」
 一足先に踏み込んだ『八索』が死霊騎士の剣を真剣白刃取りの要領で受け止める。その隙を突いて、他の怪人たちが次から次へと死霊騎士の背中へ蹴撃を喰らわせた。それで傾いだ騎士の、兜に包まれた頭部へ――『八索』渾身の頭突きが炸裂する。
 それによって膝を突く死霊騎士。『八索』が勝鬨を上げようとした――その刹那だった。
「――あへ?」
 鞭のようにしなる尾の一振りが『八索』頭を薙ぎ払った。
「「「……え?」」」
 作戦が上手くいったと思い、ハイタッチしていた他の怪人たちも、大きく開かれた顎によって噛み砕かれる。
「……こちらの思惑通りに行きましたね」
 身を潜めた扉の陰で、ネオンは安堵の息を吐く。
 ユーベルコードで召喚した死霊騎士にあえて単純な行動を取らせていたのは、そこを怪人共に狙わせる為だった。そうやって死霊騎士の方に怪人共の意識を引き付けた後――死霊蛇竜によって奇襲を仕掛ける、それがネオンのプランだったのである。
 それはひとまず上手くいき、怪人側に痛手を与えることが出来た……が。
「同じ手は二度も通じない……でしょうね」
 そこはネオンも理解する。
 それに、このユーベルコードを使用中は、ネオン自身は戦えなくなるのだ。流石に人数が多いせいか、隠れていたネオンに目聡く気付いた怪人も居り、作戦の成功までの間に、ネオン自身は何度かそういった敵に攻撃されそうになっていたのである。
 死霊蛇竜を護衛としていた為、返り討ちにしていたが……そちらも雀荘内に突入させた今、同じ作戦の継続は難しかった。
「……ここからは、敵方の連携を掻き乱すことに注力しますか」
 2体の死霊を送還し、ネオンは、改めて自分自身が雀荘へ踏み込んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

竜洞・梓
見つけましたよ。女の敵、そして麻雀を冒涜するものたち!
実際の所、ゲームの対価として賭けをすることは否定しません。
ですが、それは双方の合意あってのこと!
ましてや麻雀の面白さに目覚める可能性があったかもしれない人たちに、嫌な思い出を突きつけてその芽を潰すなど――恥を知りなさい!
【POW】
ほう、最初から真ん中を切る(前衛に出す)とは
そんなにヤオチュウが欲しいですか
しかも二と八を切る。チャンタすら狙わないのですね?
安易な国士狙いですね。ドラゴニアンチェインで端っこをまとめて爆破してあげましょう――カン!
その背中、すすけさせてあげましょう。



「見付けましたよ。女の敵、そして麻雀を冒涜する者たち!」
 憤りを言葉に乗せ、雀荘内へ叩き付けたのは竜洞・梓(まじかるどらごんウィッチ・f11833)である。彼女から放たれるプレッシャーに、麻雀牌頭の怪人たちが一歩、後退ったほどだ。
「……実際のところ、ゲームの対価として賭けをすることは否定しません――ですが、それは双方の合意あってのこと!」
 麻雀というゲームについて、自分なりの解釈を持つ梓。その気持ちが籠められた彼女の一言一句は、なかなかに重いものだった……。
「ましてや麻雀の面白さに目覚める可能性があったかもしれない人たちに、嫌な思い出を突き付けてその芽を潰すなど――恥を知りなさい!」
 怒れる魔法少女ドラゴニアン、不埒な怪人共へのお仕置き開始であった。
「……ええいっ。怯むな、皆! こちらの方が数は断然多いんだぞ!!」
 リーダー格の『中』頭から檄が飛び、それを受けた『二萬』と『八萬』頭の怪人が梓の前に立ち塞がった。それに、梓は鼻で嗤うような仕草をする。
「ほう、最初から真ん中を切るとは……そんなにヤオチュウが欲しいですか?」
「……!?」
 既に見切っていると言わんばかりの梓の弁に、前衛に出た2名の怪人の肩がビクッと震えた。
「しかも二と八を切る。チャンタすら狙わないのですね?」
「「――ほざけ!!」」
 梓の口を塞いでやるとばかりに飛び出した『二萬』と『八萬』の動きは鋭かったが――熱くなっているのか少々直線的であった。
 梓の『まじかるどらごんドレス』と名付けられたレオタードに包まれた肢体は、彼らの疾駆する線上からは既に飛び退いている。
「安易な国士狙いですね。そんなもので――わたしのこの怒りは止められません!!」
 一喝と共に、梓の身体から竜を模った闘気が放出された。それは、『二萬』と『八萬』の後方で連携の機を探っていた『一萬』と『九萬』の頭部の怪人を爆砕する。
 身体を傾がせる『一萬』と『九萬』だが、まだ膝を突くには至らない。反撃とばかりに、『二萬』、『八萬』と梓を挟撃する布陣を取ると、身体を一回転させる廻し蹴りを放った。
 大きく梓の正面と左右を占拠した旋回する蹴撃。彼女が躱すには後方へ下がるしかないが――そこには正拳突きの構えの『二萬』と『八萬』が待ち構える。
 絶対命中、回避不能、そう麻雀牌怪人たちは確信した――が。
「……気付きませんか?」
 言われて『一萬』と『九萬』ははっとした。自分たちと梓を……淡く輝く鎖が繋いでいる。それを梓は思い切り引いた。
 途端、凄絶に逆回転を始めた『一萬』と『九萬』は体勢を崩し……梓の両横ギリギリをすり抜ける。そして、彼女の背後で仲間である『二萬』や『八萬』と正面衝突した。
 味方同士で相打ちを演じ、4体もの怪人が倒れる。
「――カン! その背中、煤けさせてあげましょう」
 勇ましく言ってのけるドラゴニアン魔法少女、梓に、また一歩、麻雀牌頭の怪人たちは後退るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

古明地・利博
「うわぁ、皆頑張ってるね〜。こりゃ私も頑張らないと、ってなわけで大技狙っちゃおうっと♪」

まずは乱闘の中こっそりと侵入するよ。そしたら隅に移動して「萬子の皆〜こっちだよ〜!」って大声で呼びかけるね。で、呼びかけた瞬間【忌々しき束縛】を発動、詠唱中に牌を確認するよ。
2~8がそれぞれ2個以上いたら2体ずつ体に鎖を巻きつけて拘束、大車輪の形に私の前に並べるよ。「ツモ、大車輪…役満だよ……ってね♪」
で、鎖を締めて潰しちゃうね。
……まぁこの雀荘で認めてるか分からないけど三倍満は確定してるから十分だよね♪
もし大車輪が無理なら清一色になるように捕まえようかな。

それが終わったら後はひたすら場を掻きまわそうかな。


上月・衒之丞
ふむ、雀荘でありんしか。
握り込みなら得意ささんすが……打つ勝負ではありんせんな。
よござんす。身包み剥いで素寒貧晒して帰りなんせ。

ある程度形は崩れているようなので、国士無双に気をつけよう。
変に固まってる、もしくは固まりつつある集団がいたら、集合を阻止させてもらおうか。
見えざる糸を飛ばし、四肢や首に巻きつけて、届くなら梁に掛けて宙吊りにしてやろう。
届かなければそのまま絞めながら引き寄せて匕首で刺し殺そう。
「人型なれば、如何様にもなりんす。さあ、次は誰が散りなんし?」
これでも、暗殺が生業なんでな。怪人だろうと人型ならなんだって殺してみせる。



 正面から雀荘へ突入し、大暴れする猟兵たちの姿はとても目立っていた。
 だからこそ――逆に、雀荘へ音も無く忍び入った2名の猟兵を、麻雀牌を頭部とする怪人たちは見過ごしたのかもしれない……。
「うわぁ、皆頑張ってるね~。こりゃ私も頑張らないと」
 今もまた天井すれすれまで吹き飛ばされた『六索』頭の怪人を見上げつつ、気合いを入れるのは古明地・利博(人間の探索者・f06682)。
「ふむ、雀荘でありんしか。握り込みなら得意ささんすが……打つ勝負ではありんせんな」
 何処か蠱惑的な仕草で、しかし瞳は冷徹に戦況を観察するのは上月・衒之丞(泡沫の遊女・f11255)である。
「よござんす。身包み剥いで素寒貧晒して帰りなんせ」
 ……冥土へ――そんな言葉が言外に呟かれた気がする中、衒之丞が動き出す。
 既に、ここまでの猟兵たちの攻勢で麻雀牌頭の怪人たちの側は崩れ始めていたが……それでも、今なお連携の気配を見せる者たちは居た。
 目配せし合うように顔を向け合い、じりじりと特定の場所を目指し、集まっていく怪人の一団がある。……けれど、衒之丞に気付かれた時点で、彼らの目論見は泡沫に消える運命……。
「……行けるな、皆? 国士無双だ。まだまだこちらは――え? 何だこれ!?」
 全体のリーダー格である『中』頭の怪人が、細い……本当に細く、目で捉えることも困難な鋼線が、自分の身体へと巻き付いていることに気付いた。顔を上げれば、集合した他の怪人たちにも同様のものが巻き付いているようで……いつの間にか、身体が満足に動かせなくなっている。
『主は既にあちきの手の中にありんすよ』
 鋼線を伝って微かに、衒之丞の囁きが『中』頭に届いた……。
「――ってなわけで大技狙っちゃおうっと♪」
 時同じくして、利博もまた動き出していた。
 猟兵たちと怪人共が巻き起こす乱闘に紛れ、雀荘の隅へとこそこそ移動した利博。怪人たちが集まっている一角を確認すると、その潜伏状態を捨てて声を張り上げた。
「筒子の皆~、こっちだよ~!」
 その呼び掛けに、反射的に筒子の頭の怪人たちは利博の方を向いてしまう。……彼らがまだ充分に数を残していることを目視した利博は、頬が緩むのを抑え切れぬまま、ユーベルコードを発動させた。
 ……響いたおぞましき詠唱は、とても言葉に出来るものではなく。直後に放たれた黒い鎖が、禍々しい軋みを立てながら『二筒』から『八筒』までの頭部を持つ怪人たちを拘束する。
 奇しくもそれぞれ2体ずつ……即ち『大車輪』の形。
 筒子で作ったメンチンタンピン二盃口が、役満となるローカルルール。
 もちろん……利博が狙ってやったことだ。
 鎖で引きずられ、利博の前に引っ立てられた筒子頭の怪人たちは、うっとりとする利博の眼差しに戦慄する。
「ツモ、大車輪……役満だよ……ってね♪」
 茶目っ気たっぷりに言った利博は、捕らえた怪人たちを、1人残らず鎖をより締め上げて砕き潰した。
 その光景に絶句する余裕すら、麻雀牌頭の怪人共のまとめ役である『中』頭の怪人には無い。
 彼の周りに居た13名……国士無双狙いの仲間たちは、1人、また1人と衒之丞の傍へ鋼線で引き寄せられていき……その命を絶たれていたのだから。
 そして……とうとう『中』頭自身の番が来る。
 必死で首を巡らせて手足をバタつかせているつもりのようだが、実際には『中』頭の身体は指一本動いてはいない。それだけしかと衒之丞に縛り上げられているのだ。
 その彼の喉元へ、衒之丞は匕首を突き付ける。
「人型なれば、如何様にもなりんす」
「ち――畜生……!」
 衒之丞の闇のさらに奥底の闇を覗いてきたかのような双眸に、『中』頭は喘ぐような悪態を吐き捨て――その両腕、両脚から力を抜いた。
「……さあ、次は誰が散りなんし?」
 小首を傾げて問い掛ける衒之丞に、リーダーを喪った怪人たちの間に恐慌が走る。
「……そういえば、この雀荘で大車輪が認められてるか、確かめてなかったな~。――まぁ、三倍満は確定してるから充分だよね♪」
 その恐慌をさらに煽るように、利博が戦場を引っ掻き回す。
 最早、大勢は決していた。ほどなくして、麻雀牌を頭部に持つ怪人たちは、その場の全員が血の海へ沈んだのである……。

「――あれ? おかしいな~?」
「如何したでありんすか?」
 しきりに首を捻る利博へ、衒之丞が問い掛ける。
「怪人……135人しか居ないよ? 『白』の頭部の怪人が3人しか居ないね」
「……?」
 利博の指摘に、衒之丞は考え込んだ。そこに他の猟兵から声が上がる。「そういえば、最初にそのことで怪人共が騒いでいた」と。
 どういうことかと疑問符が浮かんだ……直後。
「――なっ!? これは、皆、どうして……!?」
 奥の扉が開き、入ってきたのがその『白』頭の怪人、最後の1人。それを見て取った利博と衒之丞の動きは素早かった。
 ――両名のユーベルコードが、最後の『白』へ引導を渡す……。
 ……それが、物語の第3章の幕開け。
「――お白ちゃん!!」
 最後の『白』が入ってきた扉から、遅れて飛び出した着流し姿の影。
 既にこと切れた『白』の身体を受け止めたその男は、徐々に、徐々に肩を震わせ――地の底から響くような怒号を上げる。
「オレの居ねぇ間に、好き勝手やってくれたようじゃぁねぇか。……生きては返さねぇぞ、猟兵共ぉっ!!」
 長巻を抜き払い、臨戦態勢に入ったその者の頭部は――餅巾着だった。
 ……けれど、粘り付くような殺気は、この怪人が麻雀牌怪人たちよりも遥かに強いという事実を猟兵たちへ知らしめる。
 脱衣麻雀動画については、既に解決を見ていると言っていい。だが……。
 ――眼前の、餅巾着頭の怪人をどうにかせねば、この戦いに本当の幕引きは訪れないようだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『餅巾着侍』

POW   :    御澱流・田楽刺し
【長巻を用いた鋭い刺突攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【煮え滾る味噌だれ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    御澱流・チカラモチ
自身の肉体を【つきたての餅めいた形質】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    ちくわと鉄アレイ
【伝説的なニンジャマスター】の霊を召喚する。これは【食べると体力を回復出来るちくわ】や【当たるとダメージを受ける鉄アレイ】で攻撃する能力を持つ。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハヤト・ヘミングです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

竜洞・梓
さしずめシノギにはつきものの用心棒ですか――なるほど、侮ってはいけない相手のようです。
【WIZ】
妖精の加護で妖精さんを呼び出します。
妖精さんと一緒にニンジャマスターが投げるちくわを回収し、私を含めた猟兵の皆さんの回復アイテムとしましょう。
そう、「チクワしか取ってねえ!」

――寒いとか言うんじゃありません!
このちくわを……「竹輪」ですから……竹……そう、索子です!
ちくわを集めて、今必殺の「緑一色」をくらいなさい!(なんかバックステップ距離分の位置が爆発する魔法

え、無理矢理? 格ゲーまではフォローしてない?
いいんですよそんなことは!!!



 壮絶な気迫を迸らせる餅巾着頭の着流し怪人に、竜洞・梓(まじかるどらごんウィッチ・f11833)は納得の表情を浮かべた。
「さしずめシノギには付きものの用心棒ですか――なるほど、侮ってはいけない相手のようです」
 一目見て、麻雀牌頭の怪人たちとは一味違うことを看破したのだ。
 ……向こうはゲーム器具、こちらは食べ物なのだから、『一味違う』のはある意味当たり前なのだけれど。
 臨戦態勢に入った梓に対し、餅巾着頭の怪人は長巻の切っ先を雀荘の床へと突き立てた。その凛とした衝撃に応える如く、彼の背後に滲み出るように、見た目からして『拙者忍者でござる!』と言わんばかりの黒装束が出現する。……向こうの景色が薄っすらと透けていることから、霊体だと思われた。
 餅巾着頭の怪人の守護霊……かどうかは解らないが、その忍の霊は何故か……忍者らしさが欠片も無いちくわと鉄アレイを梓に向けて投擲しようとする。
 その攻撃に、梓は……。
『妖精さん、妖精さん。ちょっと助けてくださいな――』
 ――実に魔法少女らしく応じた。
 梓の呼び掛けに、昆虫の翅を生やした小さなサイズの美少女たち……妖精の群れが召喚される。
 妖精たちがワイワイ、キャッキャッと宙を舞う様に、忍者の霊は梓を一瞬、見失ったようだ。それを活かし、彼女は投げ付けられた鉄アレイを次々に回避する。梓の活躍に沸き立った妖精たちが、ご褒美とばかりにお手伝いを始めた……。
 ――鉄アレイに続いて飛んできたちくわが、次から次へと妖精たちに受け止められ、回収されていく。
 少々熱いようでお手玉気味だが……なかなかに芳しい香りが食欲をそそった。
 ……実はこのちくわ、食べると体力が回復出来る……らしい。
 大量に確保されたちくわは、この戦いで猟兵たちの助力になる……かも……?
 何にせよ、梓は勝ち誇った風にドヤ顔を浮かべた。
「そう、『チクワしか持ってねえ!』ならぬ――『チクワしか取ってねえ!』」
「………………。え?」
 餅巾着頭の怪人が首を傾げた。梓の発言に、溢れていた殺気が一旦引っ込むほど戸惑っている……。
 何と彼――元ネタを知らない!
 滑った……見事に滑ってしまった梓。心なしか頬の赤みが増している。
 その原因さえも解っていない様子の餅巾着頭へ、梓は羞恥心をごまかすように強い言葉を叩き付けた。
「――寒いとか言うんじゃありません!」
「言ってねぇだろが何も!?」
 困惑の度合いを強める餅巾着怪人へ、若干あたふたしつつ、梓は言葉を続けた。
「このちくわを……『竹輪』ですから……竹……そう、索子です!」
 何か思い付いた様子の梓、バックステップを繰り返し、怪人と距離を取った。
「ちくわを集めて、索子になぞらえて、今必殺の『緑一色』を喰らいなさい!」
 ……バックステップした梓が元々居た位置が、魔法によって爆発した。ちょうどそこへと踏み込んでいた餅巾着頭の怪人が、両腕を交差してその爆風に耐える。
「……さっきから、一体何なんだ猟兵ぇ!? わけが解らねぇこと繰り返してんじゃねぇぞ!!」
「いいんですよそんなことは!!!」
 ……『流石に無理矢理過ぎる』、『格ゲーまではフォローしていない』――何処からか聞こえてくる気がするそんなツッコミを代弁する如き怪人の咆哮に、梓も咆哮し返すのであった……。

成功 🔵​🔵​🔴​

リカルド・マスケラス
「えーと、自分達は雀牌戦闘員を倒してリベンジ果たしたんで、もう帰っていいっすよね?え、ダメ?そっちから仕掛けてきた悪事なのに理不尽じゃないっすかー!」
まあ、無理そうなんで、なんとか切り抜けて、体を貸してくれたお姉さんだけでも無事に帰すっすよ。

そんな訳で、お姉さんにダメージを与える訳にはいかない不利な状況で【ジャスティス・ペイン】を発動。
宇宙バイクの機動力で相手を翻弄し、装備している鎖分銅を敵の武器に巻き付かせて攻撃の邪魔ができないか試みる。ロープワークや武器落とし、盗み攻撃も併用
「厄介な武器を何とかするっす!」
敵の刺突攻撃にはバイクで受けたり仮面の位置を動かすなりして受けるよう頑張る


フロッシュ・フェローチェス
生きては返さない?
ならこっちは選択肢をあげる。
殺す or Kill or Dieだ。ほら選べよ、餅。
(※ちくわ咥えたまま)

【先制攻撃】でまず銃撃。
【早業】で撃つ、撃つ、また撃つ。
【ダッシュ】で回り込んで蹴る……そして撃つ。
【2回攻撃】もう2発射撃――スピーディに行こう。
(※なんかちくわが増えてる)

駆け回り、錯乱しては銃を撃とう。
反撃は【野生の勘】で【見切り】、【残像】込みの【フェイント】で【カウンター】を仕掛けるか。
(※尚ちくわが以下略)

反撃のUC?……上等。
なら【選択したUC】で伸びるのも、縮むのも間に合わないよう吹っ飛ばす。
置き去りにしてやるよ、何もかもから。
(※ちくわは決して落とさない)



「えーと、自分たちは雀牌戦闘員を倒してリベンジ果たしたんで、もう帰っていいっすよね?」
 そんなことをさりげなく言ってみたリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)へ、餅巾着頭の浪人侍風怪人はギロリと睨み付けるように顔を向けた。
 ……目が見当たらないので本当に睨んでいるのかは解らないが――長巻をチャキッと鳴らして構えた姿に、リカルドを見逃してくれそうな気配は微塵も無い。
「……えっ、ダメ? そっちから仕掛けてきた悪事なのに理不尽じゃないっすかー!」
 非難の声を上げるリカルドだが、その内心は既に切り替わりつつある。
 彼が今借りている身体は、雀牌戦闘員たちが起こした脱衣麻雀事件の被害者女性のものなのだ。
(まあ、無理そうなんで、何とか切り抜けて、身体を貸してくれたおねーさんだけでも無事に帰すっすよ)
 そんな決意を宿し、少しチャラ目のヒーローマスク猟兵、死線へと足を踏み入れる。
 不利な状況が逆にリカルドの精神を研ぎ澄まし、彼の集中力を増していった……。
 リカルドの頼れる相棒――宇宙バイクが、エンジンより咆哮を上げて疾走を開始する。雀荘内を竜巻の如く走り回るその機動力は、雀牌戦闘員たちを相手取った時よりもさらに……速い。
 餅巾着侍も、その速度をすぐには見切ることが出来ないようだった。音すら置き去りにしそうな剣速で繰り出された長巻の切っ先は、宇宙バイクの後部を掠めるに留まる。一瞬遅れて迸った煮え滾る味噌だれの砲弾は、リカルドの影にすら掠りもしない。
 そして――突き出された餅巾着侍の長巻は、そこからさらに引っ張られた。すり抜け様に、リカルドが鎖分銅を巻き付けていたのである。
 がっちりと喰い付いた鎖は、蛇のように強く長巻を締め上げていた。
「厄介な武器を何とかするっす!」
 まるでロープワークのように……時に強く引き、逆にそれを緩め、リカルドは怪人侍の得物を取り落とさせようと試みる。
 けれど、宇宙バイクの馬力を上乗せしてさえ、それは困難であった。餅巾着侍は引かれれば意外な剛力でそれに抵抗し、緩められて転倒しても、長巻を手から離さない。
「ええいっ、しつこいっすよ!」
「餅は粘るもんなんだよぉ!」
 宇宙バイクに引きずられながらも、逆に鎖分銅を伝って餅巾着怪人はじりじりとリカルドとの距離を詰めてくる。
「…………っ!」
 リカルドに焦燥感が浮かんだ――次の瞬間。
「――生きては返さない? ならこっちは選択肢をあげる」
 その声は、餅巾着侍の背後から聞こえた。
 リカルドに集中するあまり、他への注意が疎かになっていたと餅巾着の頭なりに気付くが――遅い。
「殺すorKILLorDIEだ。ほら選べよ、餅」
 ……何故かちくわを咥えた口で囁かれた三択は、どれを選んでも等しく死出の旅路。
 それへと誘うように、壮絶な銃撃音が重なった。
 思わず怪人の手の力が緩み――そこを見逃すリカルドではない。
「盗ったっす!」
 餅巾着侍の得物たる長巻を強奪し、宇宙バイクを加速して一気に距離を取るリカルド。
 その宇宙バイクのスピードにも負けないとばかりに、銃を手にした影は餅巾着侍の死角へと回り込む。
 銃撃がさらに響き――気が付けば、影が咥えているちくわが2本に増えていた。
 その姿、青い瞳と緑の髪の気高き獣――フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)。
 ……この事件の最終局面たる今、新たな戦力として転移してきた猟兵である。
 フロッシュが猟兵側の新手と気付き、得物を失ったこともあって、若干餅巾着侍の気迫が揺らいだ。――その弱気に付け込む如く、フロッシュはなおも『刻天炉』と名付けられた散弾銃型のガジェットを乱射。餅巾着頭がグラグラッと踊る。
 せめてもの反撃とばかりに、餅巾着侍が廻し蹴りを繰り出すものの、それすらフロッシュは獣染みた反応で躱してみせた。次の刹那――超高速でアタッチメントを組み合わされた『刻天炉』が、一際強い銃弾を怪人の胴へ叩き込む。
「獲った――っすか!?」
 長巻を宇宙バイクで轢いてへし折ったリカルドが、勝利かと瞠目する……しかし。
「ま――まだまだぁ!!」
 ――餅巾着侍の胴体はモチモチィッ……と伸び、縮み、フロッシュの銃撃の威力を吸収した。その命に弾丸は、届いていない。
 それに、フロッシュの一際大きい右目がより見開かれた。
 3本目のちくわを口に咥え……呟く。
「……上等」
 同時、フロッシュの脚を覆う機械のブーツが可変する。
「置き去りにしてやるよ、何もかもから」
 フロッシュの姿が――消えた。
 直後、餅巾着侍の居た地点に脚を振り切った姿勢のフロッシュが出現する。続けて、凄絶な破砕音。……雀荘の壁に、蜘蛛の巣状の亀裂を走らせて、餅巾着頭の怪人がめり込んでいた。
「が……がはっ……!?」
 それでも息がある餅巾着侍を前に、フロッシュは3本の指を突き付けた。
「まだ選んでないよ? 殺すorKILLorDIE――選べよ、餅?」
 その口のちくわは、いつしか5本に増えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

古明地・利博
また変わり種が出てきたね!だけど……君はそこまで面白くなさそうかな。軽く遊んで帰ろっと。

あ、面白い事考えちゃった~。というわけで早速【忌々しき束縛】を使うよ。ただし餅巾着にじゃなくて最後に殺した白にね。それに鎖をグルグル巻きにして武器として使うよ。フレイルみたいな感じで振り回してね。あ、攻撃が飛んで来たらその白で受け止めるよ。

もしその餅巾着が激高したら追い打ちをかけるように煽ろうかな。「ねぇねぇ、今どんな気持ち?さっきまで一緒に居た白が敵に使われてボロボロになってく姿を見るのってどんな気持ち?」ってな感じでね。
多分そこまで言ったら私を集中狙いしてくるだろうから誰か止めをさすまで耐え続けるよ。



 壁より剥がれ落ちた餅巾着侍を前に、古明地・利博(曰く付きの蒐集家・f06682)はつまらなそうであった。
「また変わり種が出てきたね! だけど……君はそこまで面白くなさそうかな」
 ……「軽く遊んで帰ろう」――そう言わんばかりの利博の言動に、負傷が決して軽くないはずの餅巾着侍の肩がピクリと揺れる。
 そんなことは露知らず、利博は頭上に電球が浮かんだような表情を浮かべた。
「あ、面白いこと考えちゃった~」
 ポンッと手を打ち、即座に己のユーベルコードを発動させる利博。
 禍々しき旋律がその口より囁かれると、幾本もの黒い鎖が彼女の周囲の空間より滲み出た。それが宙を翔け、怪人の身体を雁字搦めにする。
 ……ただし、餅巾着侍ではなく――最後に彼の目の前で死んだ雀牌戦闘員を。
「――お白ちゃん!?」
 餅巾着侍が上げた焦った声に、利博はこれから行うつもりのことへの期待を高める。
「そぉれー!」
 ユーベルコードの黒い鎖を振り回す利博。その遠心力で、鎖に囚われた『白』頭の女怪人の骸が持ち上がる。まるでフレイルのように、それを餅巾着頭目掛けて叩き付けた。
 餅巾着侍はギリギリでそれを回避するが、すぐ横で『白』の身体がぐしゃっと嫌な音を上げる。……口があれば、餅巾着侍は奥歯が砕けるほど噛み締めていたかもしれない。
 弾け飛ぶように餅巾着侍は利博目掛けて疾駆し、拳を突き出すが――利博は引き戻した『白』の身体を盾のようにその前へ割り込ませた。……『白』き怪人へ衝突する寸前で、餅巾着侍の拳撃が止まる。
 怪人らしからぬ甘さが生み出したその隙を、利博は見逃さない。『白』の身体をハンマーとして、餅巾着侍を殴り飛ばす。
 ……再び、着流しの怪人が壁にめり込んだ。
「……こ、の……ゲスがぁぁああああああああ!!」
 激昂した様子の餅巾着侍へ、利博はさらに煽るように言葉を重ねた。
「ねぇねぇ、今どんな気持ち? さっきまで一緒に居た『白』が敵に使われてボロボロになってく姿を見るのってどんな気持ち?」
「――――――――ッッ!!」
 それに餅巾着侍が返したのは、最早獣の如き言葉にならない音の羅列であった。
(ま、そろそろいいかな~?)
 餅巾着侍の激怒の様相を確認し、利博はそんな風に考える。
 ……彼女は別に、意味も無く餅巾着侍を挑発していたのではない。そうやって、餅巾着侍が自分を攻撃対象として付け狙うように仕向けたのだ。
(私を集中して狙ってくれば、その分他の猟兵が動き易くなるからね~。さて、後は誰かがとどめを刺してくれるまで、耐え続ければ――)
 利博の作戦は悪くない。悪くはなかったのだが――些か餅巾着侍を舐め過ぎていた。
「――――ッッ!! 出やがれニンジャマスターァァ!!」
 餅巾着侍が、背後に黒装束の忍者の霊を召喚する。直後、その霊が取り出したのは――無数のちくわ。それを、餅巾着侍は投擲される前に全て奪い取った。1本も残さず、己の口(?)へ押し込む。
「――えっ?」
 利博が目を見張る。
 あのちくわには体力を回復する効果がある。傷そのものは治らずとも、それによって失われていた餅巾着侍のスタミナが大分持ち直したはずであった。
 そして、餅巾着侍の足が、転がっていた物を蹴り上げる。……長巻の鞘。それを手に再度走り出した着流し姿は――先程までとは比べものにならないほど速い!
「……っっ!?」
 慌てて『白』フレイルを繰り出す利博だが、今度はそれはあっさり躱された。……人間大の物体を鎖で振り回しているのである。如何にユーベルコードを利用していても、大振り過ぎて本来はそうそう当たるものではないのだ。先刻は、餅巾着侍が弱っていたからこそ通じたのである。
 ……『白』の身体を引き戻すのも、今度は間に合わない。一気に肉迫した餅巾着侍の手にする鞘が――利博の鳩尾を打ち抜いた。
「ぐふぅっ!?」
 ……利博のもう一つの油断は、彼女自身がそこまで防御に長けた猟兵ではないことを失念していたことだ。時間稼ぎに関してはそれなりの能力があるものの……その為の手段として真っ向から敵と相対することを選んだのは、少々悪手だったかもしれない。
 鳩尾から内部へ伝わった衝撃が横隔膜を痙攣させ、利博の呼吸を奪う。
 その苦しみに耐え、命からがら利博は餅巾着侍の前から離脱するしかなかった……。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

上月・衒之丞
……いや、用心棒なんはわかりなんしが。何故、餅巾着でありんすか?
もうちっとマトモな用心棒はおらなんしか?
まぁようざんす、敵で人型であるなら遠慮はござりんせん。

鋼線を自在に操り、四肢を絡めとり拘束しながら少しずつスライスしていこう。
「無明弦月流、文月、如月。その力、封じいす」
柔らかな餅の肌に食い込む様はさながらボンレスハムか。
そのまま輪切りにするのもいいが、今は封じられてもらおう。

女御らの大事な肌を晒させた罪は大きい。
最後は拘束を全て解き、背を向け飛び込んできたところを雨のような糸で刺し貫く。
「終いでありんす。せめて華やかに、儚く散りなんせ。無明弦月流……睦月」



 負傷は深く、得物の長巻は失っているものの……ここに来て餅巾着侍の気迫は、初期状態よりも増大しているように感じられた。
 それを前に、上月・衒之丞(泡沫の遊女・f11255)は微かな困惑を顔に浮かべている。
「……いや、用心棒なんは解りなんしが。何故、餅巾着でありんすか?」
 ――今さらながら、根本的な疑問であった。
「もうちっとマトモな用心棒は居らなんしか? ――まぁようざんす、敵で人型であるなら遠慮はござりんせん」
 衒之丞の雰囲気が細く、鋭く、冷たく研ぎ澄まされる。
 その手に煌めく鋼線のように……。
 餅巾着侍も、衒之丞の静謐な殺気に気付いたようである。
 ……同時に、衒之丞こそ彼が執着していた『白』頭の女怪人に直接手を下した片割れであることにも気付いた……。
 片や極北の冷気のような衒之丞の殺意、片や煮え滾る溶岩の如き餅巾着侍の殺意、双方が交錯する。
 餅巾着侍の突き出した長巻の鞘を、衒之丞は舞うように後方へ回避。……そして、衒之丞が寸前まで居た空間には、視認すら困難な鋼線が残されていた。それが餅巾着侍の腕へ、脚へ、蜘蛛の糸のように絡み付いていく。
「無明弦月流、文月、如月。その力、封じいす」
 衒之丞のユーベルコード――それも2つ同時。極細ながら強靭な鋼線は、なおも前へ踏み出そうとする餅巾着侍を拘束する。
「……身体が動かねぇとしても! 出ろ、ニンジャマスター!!」
 お得意の忍者霊召喚で不利を脱しようと叫ぶ餅巾着侍。……が、ゆらりと滲み出ようとした忍の霊体は――繭のように巻き付いてきた衒之丞の鋼線に抑え込まれる。餅巾着侍が唖然とした雰囲気を醸し出した。
 ……衒之丞の『如月』なる技は、相手のユーベルコードを縛るものなのである。
 動きも、ユーベルコードも制限された餅巾着侍の肉体へ、衒之丞の鋼線がさらに、さらに強く喰い込んでいく……。
「まるで、ボンレスハムのようでありんすね……」
 吟じた衒之丞が指で鋼線を弾く。途端、餅巾着侍の右手の小指がブツッ……と切れ飛んだ。
「…………っ!?」
 悲鳴は堪えた餅巾着侍だが、続けて左手の小指、右足の小指、左足の小指……と順に切断されていく。
 ……餅巾着侍を雁字搦めにした鋼線が、その細さと強靭さを活かした切れ味で、端から刻んでいっているのだ。
 それを為す衒之丞の瞳は、ただただ冷たい……。
「女御らの大事な肌……晒させた罪は大きいでありんすよ?」
 ……餅巾着侍が、『白』頭の女怪人の屍を猟兵が弄んだことに激昂したのと同じように……否、それ以上に……。
 ――衒之丞はキマイラ女性たちを辱めた怪人共の所業にこそ、激怒していたのである。
 そのまま全身が輪切りにされるかと思われた餅巾着侍だが――唐突にその身体を束縛していた鋼線は解かれた。支えを失い、餅巾着侍は前のめりに倒れる。
 憎き怪人の無惨な有様に溜飲が下がったのか……衒之丞は彼に背を向けた。後は他の猟兵に任せたとばかりに、戦場から歩み去ろうとする。
「……ゥゥウガァァアアアアアアアアッッ!!」
 ――その背中目掛けて、一気に跳ね起きた餅巾着侍が突貫した。無防備な衒之丞の痩躯へ、力の限り長巻の鞘を突き込もうとする……。
 その攻撃の気配を今察知したように振り返った衒之丞は――酷く呆れた眼差しをしていた。
「終いでありんす。せめて華やかに、儚く散りなんせ。無明弦月流……睦月」
 ――瞬間、餅巾着侍の顔面が縦に裂けた。それを皮切りに、肩口が、胸が、太股が、背中が、腹が、腋が……怪人の全身が縦横無尽に切り裂かれる。
 ……背を向けた段階で、衒之丞は自分と餅巾着侍の間に不可視の鋼線を霧雨さえすり抜けられぬほど、張り巡らせていたのであった。そこにむざむざ飛び込んだ餅巾着侍は、既に冥府への階段に片足を掛けたも同然である。
 ……辛うじて人型を保っていることが不思議なほどの餅巾着侍へ、今度こそ衒之丞は背を向けたのだった。しかし……。
「……ま……だ……だ……ぁ……」
 ――餅巾着侍の息の根、未だ止まらず……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルフローレ・カノン
女性の敵がいるときて助太刀にきましたが……
普通に目前の餅巾着怪人を撃破すればいいのですね。
(理解できなかった麻雀のルールブックは背中に隠した)

敵は(姿は奇妙ですが)手練れのようですので
敵の攻撃を[見切り][武器受け]などでいなして
攻撃のチャンスを伺いましょう。
【無敵城塞】で堪えることもします。
「ここは堪えてみせますよ!」

攻撃に転じる際は、[2回攻撃][なぎ払い]で
メイス振り回して牽制します。
[力溜め]の後[鎧砕き][気絶攻撃]で
その頭の餅巾着を思いっきり叩いてみたいのです。
いったい、その餅巾着が、どのような挙動をみせるのか、
実に興味があります……(←なんか危ない目で独り言)


ネオン・エルバイト
しぶといですね。餅だけに、ということでしょうか?
……でしたら、真っ当に力技で叩き潰してさしあげましょう。やるのは僕ではありませんが。

リザレクト・オブリビオンで召喚した双方ともを餅巾着侍への攻撃に向けます。僕の目的は敵にダメージを重ねる事ですので、召喚した子達のダメージ回避はあまり考えません。奴が何か召喚してきたとしても、そのまま二体とも特攻させます。
僕自身は……協力できる猟兵が居る場合や、隠れる場所がある場合は身を隠しておきたいです。協力者の背や隠れる場所がないなら……フェイントやオーラを使用した防御で攻撃を可能な限り避け続け、召喚したオブリビオンの攻撃できる時間を増やそうと思います


古明地・利博
ゲホッゲホッ…ちょっと遊びすぎたね、ハハッ………ぶっ殺す。

ってな訳でこっからは真剣に行く。
呼吸を落ち着かせてる間にスカートの膝から下は千切って捨てる、動きづらいからな。それと、装備してる電脳ゴーグルでナックルダスターを生成して手に着ける。無理そうならさっきの布を手に巻きつける。
落ち着いたら【禁じられた神降ろし】を発動。一気に間合いを詰めてインファイトだ。
敵の反撃やユーベルコードには最大限気を使う。これ以上攻撃を受けるのは辛いからな。
相手に隙ができた瞬間ラッシュを叩き込んでやる。体が伸びるよりも早くな。フィニッシュは相手の鳩尾に全力の一撃だ。やられたらやり返さないとな!



「……しぶといですね。餅だけに、ということでしょうか?」
 最早満身創痍、生きて動いていることが不思議なほどの状態の餅巾着侍を前に、ネオン・エルバイト(クリスタリアンの人形遣い・f03023)は驚嘆混じりの溜息を吐いた。
 そんなネオンと餅巾着侍を見比べて、メルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)は首を傾げていた。
「女性の敵が居ると聞いて助太刀に来ましたが……?」
 ……生憎と、脱衣麻雀でキマイラ女性たちを辱めていた雀牌戦闘員たちは全員絶命している。現在の戦況を吟味し、メルフローレは考えを切り替えた。
「――普通に目前の餅巾着怪人を撃破すればいいのですね」
 そう言って、彼女はコソコソと麻雀のルールブックを背中に隠すのだった。……それを読んでも麻雀というゲームをよく理解出来なかったらしい彼女にとっては、雀牌戦闘員を相手取らなくて済んだのは、むしろ僥倖だったかもしれない。
 ……そして、雀荘の片隅で一際強い闘志を漲らせるのは古明地・利博(曰く付きの蒐集家・f06682)だ。
 餅巾着侍に突かれた鳩尾がまだ痛むらしく、冷や汗が滲んでいる顔を無理矢理に笑みの表情にする。
「ゲホッゲホッ……ちょっと遊び過ぎたね、ハハッ……ぶっ殺す」
 直後に一転、真剣な表情となった利博は、穿いていたスカートの膝から下を引き千切る。そして、その布地を両の拳へバンテージ……もしくはナックルダスターのように巻き付けた。
 これ以上長引かせず、今、餅巾着侍との死闘を終わらせる――そんな決意の下、猟兵たちは動き出す。
「……ッッ!!」
 既に言葉にならない咆哮を迸らせ、餅巾着侍もほとんど四つん這いで駆け出した。
「……敵は手練れのようですね」
(奇妙な姿ですが……)
 呟きながら最前衛に立ったのはメルフローレである。
 彼女は長巻の鞘で突き掛かってくる餅巾着侍の動きを冷静に見極め、グラディウスでその攻撃を受け流す。
「…………っ!?」
 とうに瀕死に見える餅巾着侍の刺突は、それでも重かった。気を抜けば一息に崩される――そのことを悟り、メルフローレは全身を超防御モードへと移行させた。
「ここは堪えてみせますよ!」
 そんなメルフローレの後方、安全圏に自身は身を置き、ネオンは騎士甲冑を纏いし死霊と蛇のように長い胴体の竜の死霊を現世に再び呼び覚ます。
「……真っ当に、力技で叩き潰してさしあげましょう。やるのは僕ではありませんが」
 自分たちこそネオンの代理人と言わんばかりに、騎士の死霊と蛇竜の死霊がメルフローレを攻め続ける餅巾着侍へ躍り掛かった。
 目には目を、死霊には死霊を……餅巾着侍は幾度も自分を助けたニンジャマスターの霊を召喚し、ネオンの死霊たちへぶつける。忍霊が握る鉄アレイと死霊騎士の剣が衝突し、霊的な火花が散った。――その隙に、死霊蛇竜は忍装束の霊魂の脇をすり抜け、それの主人たる怪人の大腿部へ牙を突き立てる。
「……ァ……ッ……!?」
 一旦、メルフローレへの攻勢を中断し、蛇竜の頭へ拳を振り落とす餅巾着侍。蛇竜霊は顎を離すが、間髪入れずに尾の一撃を怪人へ見舞った。
 騎士霊の方も、鉄アレイで殴打されて兜や鎧が砕けようと、一切構わず剣を振り続ける。
(僕の目的は敵にダメージを重ねることですので……)
 故に、今は召喚した死霊たちの負うダメージは度外視することを、ネオンは決めていた。その結果、ただでさえ傷付いていた餅巾着侍の身体は、死霊たちの攻撃でますます負傷を深めていく。
 ……煩わしい死霊の召喚主がネオンであることを、餅巾着侍も気付いているようだが……ネオンに向かうルートをメルフローレが巧みに動いて遮っていた。絶対的な防御力を発揮している彼女を突破してネオンに辿り着くことは、今の餅巾着侍には至難である。
 その上――猟兵側からはさらなる攻撃役が投入されたのだから。
 唇からこの世のものとは思えぬ詠唱を零し、利博が餅巾着侍の許へ走り込む。一歩進むごとに、彼女の身体は異形な……けれど何処か神秘的な……しかしやはりおぞましい何かを身に宿していった。両目から血涙を、口からは吐血を零し、肌のあちこちも裂けさせながら、彼女は怪人へ肉迫する。
「っはあ!!」
 餅巾着そのものの頭部の、引き裂けた箇所を殴り付ける利博。本来はそこまで格闘に長けているわけではないが……多大な代償を支払いながら行われる歪な神降ろしが、彼女の能力を信じられないほど強化していた。
 餅巾着侍が、風車のように回転しながら吹き飛ぶ。
 その先に、ニンジャマスターの霊を下した死霊騎士が駆け込んでいた。刀身に亀裂が入った長剣を、折れても構わないとばかりに横薙ぎに振り抜く。
 切り裂かれ、打ち返された餅巾着侍へ、利博が飛び込んで廻し蹴りを喰らわせた。怪人側も反撃の前蹴りを放つが、利博は身を捻って躱す。……先に油断から手痛い反撃を受けた教訓が、彼女の中で確かに息づいている。
 利博は超強化された身体能力に任せて、拳を、肘を、膝を、爪先を、餅巾着侍へ打ち込み続けた。相手が身体に餅の柔軟性を付与し、威力を殺そうと、それごと捻じ伏せるつもりで攻撃を繰り出し続ける。
 餅巾着侍に、もう攻撃に転じる余裕は無い――そう判断したメルフローレは超防御モードを解除し、メイスを手に自らも攻撃に移った。利博と挟撃する形でメイスを振り回し、怪人の動きをさらに制限する。
 ……天井に伸ばした腕を貼り付けて、その反動で宙へ逃れようとした餅巾着侍だが――それは蛇竜の死霊がその腕を噛み切ることで妨害した。宙に五体が浮き、全く身動きが取れなくなった用心棒怪人へ、猟兵たちの必殺の意志が収束する。
「……その頭の餅巾着を思いっきり叩いてみたいのです。一体、その餅巾着がどのような挙動を見せるのか、実に興味があります……」
 何やら危ない独り言がメルフローレの口から漏れ出した気がする中――彼女のメイスが、渾身の力を乗せられて旋回した。
「やられたら――やり返さないとな!!」
 正拳突きの姿勢から、裂帛の気合いと共に利博の拳が餅巾着侍目掛けて打ち出される。狙いは、まさしくその宣言通り――彼女も餅巾着侍から打たれた、鳩尾。
 禁断の神の加護が宿る拳撃が怪人の胴体の真ん中を貫き、清廉なる神の加護を受けた乙女の振るったメイスが、餅巾着頭にめり込んで、弾力たっぷりのそこをズタズタに裂き砕いた。
 身体に風穴を開けられ、頭部もぐしゃぐしゃにされれば、如何に怪人……オブリビオンとて終焉を迎えるしかない……。
 ……何か、出汁っぽい香りが漂い始めた中、脱衣麻雀から始まった一連の事件、死闘は幕を引かれたのである。

 ……怪人たちとの激闘を終えた猟兵たちが、舞台となった雀荘の外へ出た時――今まさに朝日が昇るところだった。
 あの激戦は、気が付けば夜を徹していたらしい。
 精神的にも肉体的にも疲労が纏わり付く猟兵たちの今の心根は、もしかしたら、徹夜麻雀の直後にも似ていたかもしれなかった。
 ……怪人たちを全滅させた今、これ以上の脱衣麻雀の犠牲者が出ることは恐らくないだろう。
 とはいえ、それの被害に遭った女性たちの動画は既に広まってしまっているし、後ろの雀荘も、怪人たちの手を離れたとしても、健全な営業を行えるのはいつになるか解らない。
 これら全てを教訓とするなら、やはりこの言葉で締め括るしかなかった。
 麻雀は健全なゲームです。
 不健全なプレイは、自身にも周りにも決して良い結果はもたらしません。
 絶対にやめましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月21日


挿絵イラスト