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吹き付ける風の冷たさが、寒さを通り越して鈍い痛みを感じさせる。
鼻を赤らめながら、かじかむ手を暖めるように吐き出される息は白い雲と化す。
せめてもの救いは透き通った空が、暖かい日差しをよく通すこと。
人々は風が吹く度に首をすくめながら、列に並ぶ。
日の光を、目を細めながら受け取りながら。
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「初詣にいかないかい?」
そう猟兵に語りかけるのは、中御門・千歳(死際の悪魔召喚師・f12285)だ。
千歳によれば、そこはエンパイアの中でもやや北に位置する村。
冬の寒さに耐えながら、人々が初詣に並んでいるらしい。
豪華というわけではない、質素な境内。
昇るのも大変な、長い階段。
せめてもの救いは、暖を取るために配られる甘酒や、屋台で売りに出される熱燗や豚汁。
そんな神社にも関わらず人々が多く訪れているのは、理由があるのだ。
「なんたって……縁結びのご利益が、あるらしいよ?」
そこに訪れたものは出会いに恵まれる、そういう噂があるそうだ。
千歳がにやにやと語るには、そうした噂により恋人を求めた若い人々が数多く参拝しているというのだ。
本来であれば縁を結ぶ神様。
それは生涯の友であったり、探し人であったり、そうした縁であってもご利益があるらしい。
しかしそれでもなお、色恋沙汰に人々の興味が惹き付けられるのは、仕方の無いものであろう。
「寒いは疲れるわで大変だけどさ、もし良かったら行っておいでよ。空気は清んでるし高い位置にあるだけあって、景色も悪くないよ」
そう語りかけ老女は猟兵たちを送り出す。
験担ぎも悪くないと笑いながら。
きみはる
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お世話になります、きみはるです。
せっかくなので、新年限定依頼を出させて頂きました。
プレイング募集は2日8時31分以降となります。
新年まったりしながらなので、全採用仕切れなかったら申し訳ありません。
第1章 日常
『サムライエンパイアの冬を楽しもう』
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POW : 体力の限りを尽くし、力いっぱい、サムライエンパイアの冬を楽しむ
SPD : 遊びに参加したり、料理や作品を作ったり、クリエイティブに冬を楽しむ
WIZ : 恋人や友達と一緒に、サムライエンパイアの冬を幸せに過ごす
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リュアン・シア
初詣? そう……そんな文化があるのね、この国には。
それにしても寒いわ。寒い。もう帰ろうかしら……私そんなに無いのよ、根性も信心深さも。何この長い階段。
甘酒いただける? ありがとう。……そちらのあなたもいかが?(列に並んでいるご婦人に手渡し)
縁結びは、あれなのよ、少し探し人がいて。
私が探しているというより、シアが窮地に在るときに多少お世話になったようだから、まぁ一応……彼女が扉を鎖した今となってはもう仕方ないかもしれないけれど(高所の吹きっさらしの中、長い黒髪を煽られながら独り言)
神社で手を合わせた後、御守りでも買っていこうかしら。……ねぇ、ネズミがずらずら付いてくるの何とかならない……?
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「初詣? そう……そんな文化があるのね、この国には」
リュアン・シア(哀情の代執行者・f24683)は白い息を吐き出しながら、ゆっくりと呟く。
「それにしても寒いわ。寒い。もう帰ろうかしら……私そんなに無いのよ、根性も信心深さも。何この長い階段」
彼女の口から零れるのは愚痴の山。
寒くて寒くて仕方がないというのに、長い階段により汗が浮かぶ。
額に張り付く髪が不快でさっと髪を手櫛で流せば、その漆黒の髪は強い日差しを受け、キラキラと夜空の星のように煌めく。
そうして空気と汗が触れれば、一際冷たい風が体温を奪うのだ。
その動作の艶やかさから周囲の男性陣の視線を集めるリュアン。
そんな彼女が目を止めたのは、暖を取るために配られていた甘酒だ。
「甘酒いただける? ありがとう……そちらのあなたもいかが?」
売り子の熱のこもった視線には目もくれず、隣で寒そうにしている女性へ気遣いの声をかける。
それもそのはず、彼女は決して恋人を求めて来たわけでは無いのだから。
「縁結びは、あれなのよ、少し探し人がいて……私が探しているというより、シアが窮地に在るときに多少お世話になったようだから、まぁ一応」
わざわざ友達の為なんて、友達想いなんですね……なんて言われれば、リュアンが出来るのは苦笑いを浮かべることだけ。
多重人格者としての代替人格である彼女の事情は、そこいらのご婦人に説明するには、少し複雑なのだ。
お参りが終わったら、御守りでも買っていこうか。
ようやく階段を登りきった彼女は、そんなことを考えながら振り返る。
吹き付ける風に煽られる髪を押さえ付けながら見下ろせば、そこには美しい山々が視界に入る。
「彼女が扉を鎖した今となってはもう仕方ないかもしれないけれど」
そんな景色を眺めると、胸の中がかきむしられるようで。
縁を本当に結んで欲しい相手は、扉の中。
この景色だけでも届いていることを、そっと願いながら。
「……ねぇ、ネズミがずらずら付いてくるの何とかならない?」
それでも見られる彼女の残滓に、くすりと笑いながら。
大成功
🔵🔵🔵
花園・スピカ
※他PC様やNPCとの絡みOK
・籠の鳥だったが猟兵になり初めて外に出て人と関わる楽しさを知ったばかり
世間知らずの人形故恋愛とは何か興味はあれどまだ理解できない
もっと沢山の人々とご縁を繋げるといいなぁと思いまして…!
それにしても若い方が随分沢山…えっ?恋愛の縁結び、ですか?
恋愛…
曰く相手を見ただけで心拍数が上がり顔が紅潮するとか
曰く仲間とも友人とも違う特別な感情だとか
時には人の心を激しく乱す、とも…
でもこれだけ多くの人が大変な道程を越えてまで手に入れたいもの、きっと素敵なものなのでしょうね
私もお願い、してみようかなぁ…?
未知のものが欲しいなんておかしな事なのかもしれませんが…(少し寂しげにぽそり
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「もっと沢山の人々とご縁を繋げるといいなぁと思いまして!」
花園・スピカ(あの星を探しに・f01957)は隣を歩く女性との会話の中で初詣にこの神社を選んだ理由を問われ、朗らかに答える。
肌を刺すような冷たい風が吹く度に人々が首をすくめる中、ミレナリィドールであるスピカは何でも無いかのように花の咲くような笑顔を浮かべる。
限られた世界だけに囚われていた彼女は猟兵となり様々な世界を知り始めたばかり。
エンパイアにもこうして足を運び、見知らぬ異文化に触れるのが楽しくてしょうがないといった様子だ。
そんな彼女に対して、傍らに立つ女性は不思議そうな表情を浮かべる。
女性も含め、周りの年頃の者は皆、運命的な出会いを求めてこの荒行に挑んでいるのだから。
「それにしても若い方が随分沢山……えっ? 恋愛の縁結び、ですか?」
“恋愛”という単語を聞き、スピカは足を進めながら考え込む。
恋愛とは……
曰く、相手を見ただけで心拍数が上がり顔が紅潮するとか。
曰く、仲間とも友人とも違う特別な感情だとか。
また時には、人の心を激しく乱す……とも言われる。
スピカ自身の人生の中で、猟兵として世界を渡り歩いてきた期間はまだまだ短い。
その中で得ることが出来た断片的な情報からは、メリットともデメリットともとり辛い印象しか得ることが出来なかった。
でも……、とスピカは周囲を見回す。
周囲には寒そうに身をすくめたり、また汗を流しながらも黙々と石段を登り続ける人、人、人。
本当に恋愛というものが、良くも悪くも無いものであったら、彼らはここまで努力をするのだろうか。
(でもこれだけ多くの人が大変な道程を越えてまで手に入れたいもの、きっと素敵なものなのでしょうね……私もお願い、してみようかなぁ……)
否、とスピカは己の中の自己問答に決着をつける。
ここまでの人数が、辛い思いをしても経験したいというのが恋愛というもの。
今はまだ自身には理解出来ないものの、それはきっと宝石のように光り輝くものであるはずなのだ。
(未知のものが欲しいなんておかしな事なのかもしれませんが……)
世界には、まだまだスピカの知らないものが転がっている。
そんな事実が、未だ彼女が世界から取り残されているようで。
そんな一抹の寂しさを感じながら、少し気落ちした様子でスピカは歩みを続ける。
この道の先に、未知の何かがあると信じて。
大成功
🔵🔵🔵