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六花斉放

#サムライエンパイア #【Q】 #お祭り2019 #冬休み #夕狩こあら #サムライエンパイアの冬を楽しもう

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#サムライエンパイアの冬を楽しもう


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「一面の銀世界を見に行かないか」
 穏やかな声で枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)が誘い掛ける。
 彼女がやや昂揚している様に見えるのは間違いなかろう、地図を広げた帷は直ぐに言を足して、
「サムライエンパイアのとある里山は、地形と気候の影響を受けて降雪量が多く、一晩も経つと真っ白な雪で地面が覆われるという」
 風情ある合掌造りが並ぶ、とある集落。
 傾斜の強い萱葺き屋根もこんもりと雪を被り、辺り一面を静寂に包む――その静謐の世界は凛冽にも増して美しいそうだ。
 帷は幾許か笑みを湛えながら息を継いで、
「見渡す限りの銀世界で、里山に暮らす人々は雪と共に過ごす方法を多く知っている」
 雪だるまや雪うさぎを作り、その愛らしさを愛でる。
 雪を丸めて投げ合い、合戦ごっこをする。
 雪をドームの様に作って、中に入って過ごす。
 それらは「雪あそび」と呼ばれ、里山の人々の冬の楽しみとなっているらしいのだ。
「君達もサムライエンパイアの雪に触れてみたら如何だろう」
 帷の提案に、一瞬、足を止める猟兵も居る。
 彼女はこっくりと肯き、
「現在、サムライエンパイアでは、レディ・オーシャンが事件を起こしている最中だが、君達猟兵が赴く事で、現地の人々も安心して新年を楽しめる事だろう」
 猟兵の存在が、里山の人々のお守り代わりになる。
 彼等が心穏やかに新しい年の到来を祝えるよう、手伝ってはくれないかと頼めば、「ならば」と精悍の足は前に踏み出る。
 帷はその一歩に淡く笑んで、
「サムライエンパイアにテレポートする。寒い冬こそ、心と体を、なにより親交を温めに行こうじゃないか」
 と、猟兵達を光の波濤に包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さり、ありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、儀式魔法【Q】の成功によって解放された、サムライエンパイアで冬を愉しむ日常シナリオ(やや易)です。

●シナリオの舞台
 サムライエンパイアのとある里山。
 輝くような銀世界に合掌造りの家々が並ぶ、ゆかしい景色が広がっています。

●プレイングについて
 POW,SPD,WIZの指定は不要です。
 雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり、かまくらを作ったり、ご自由な発想で冬の里山をお過ごし下さい。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 お互いの関係(顔見知り程度、友達以上恋人未満など)を添えて頂けると、より間柄に沿った描写がかないます。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
 複数での参加者様は一括採用のみで、個別採用は致しません。

 また、このシナリオでは、枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)やニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)を遊び相手として指名できます。
 精一杯、素敵な冬の思い出作りのお手伝いをさせて頂きます。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 日常 『サムライエンパイアの冬を楽しもう』

POW   :    体力の限りを尽くし、力いっぱい、サムライエンパイアの冬を楽しむ

SPD   :    遊びに参加したり、料理や作品を作ったり、クリエイティブに冬を楽しむ

WIZ   :    恋人や友達と一緒に、サムライエンパイアの冬を幸せに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 北風に凍える耳に迫る――やけに張り詰めた靜寂。
 グリモアの光を解いて厳冬の里山に降り立った猟兵らは、色彩も音色も眠る銀世界に、言葉なき嘆聲を眞っ白な息と變えた。
「――――」
 ふうわり漂う吐息の向こうに、こんもりと雪を被った萱葺き屋根が見える。
 僅かに見える木材の色が、人の気配を――此処に暮らす者の息吹を感じさせよう。
 瞳を凝らせば眞白の世界にも小路が掘られており、この雪白の壁を辿れば、集落の者に『天下自在符』を見せて安心させる事が出来る。
 その後は自由だ。
 猟兵は雪と共に生きる彼等の除雪を手伝っても良いし、囲炉裏で暖を取らせて貰っても構わない。
 これだけの雪があれば、十分なかまくらも作れるだろうし、愛らしい雪だるまや雪うさぎ、本格的な雪像を作る事だって出来る。
 橇滑り、雪合戰、宝探し――銀世界には、猟兵の童心を擽る遊びでいっぱいだ。
「……扨て、何を為ようか」
 不意に皆々の顔が悪戯に咲む。
 猟兵は寒さを忘れ、その爪先を新雪に踏み出した。
カイム・クローバー
雪合戦か、良いねぇ。俺も混ぜてくれ。

現役最強級(自称)猟兵が加わったんじゃ、公平にならねぇからよ。帷、向こうに着いてやってくれ。あ、言っとくがUCは勿論、有りな?村の子供総出+帷で掛かって来な。
言っとくが単発で飛んでくる雪玉なんざ俺には当たらねぇぜ。俺はUCを発動し、未来予測。このUCの前で全ての雪玉は無意味!(意味もなく強気)俺に雪玉をぶつけようと思うんなら帷と協力した方が良いぜ。雪玉は【早業】で作って【クイックドロウ】で射出。…俺が勝ったら村中のお汁粉を喰い尽くしてやるぜ!などと悪役っぽく言いながら。
雪玉躱しに夢中で『咎力封じ』は躱せなかったり。
ちょ、待て、タンマ、タン――うわぁぁぁぁっ!



 雪冠る松の梢を撫でる――初松籟。
 凛冽の風が粉雪を舞わせる銀世界、颯然と紺瑠璃のトレンチコートを翻したカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、雪烟る向こうに童子の笑聲を聴いた。
「雪合戰か、良いねぇ。俺も混ぜてくれ」
「あっ猟兵さまだべや!」
「おら達と遊んでくんろ!」
 松の木陰から次々と影を現す童らに笑顔を結んだカイムは、彼と視線を揃えた枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)に親指で示して見せる。
「現役最強級の猟兵が加わったんじゃ、公平にならねぇからよ。帷、向こうに着いてやってくれ」
「私と村の子ら総出で、カイム一人を?」
 良いのか、と流眄を寄越す帷に、硬質の手はひらり翩翻(ひるがえ)って、
「ユーベルコードを使うのは有りな? 全員、全力で掛かって来い」
「淸々しい自信だ」
 小気味良い艶笑を受け取った帷も条件を呑み、童子らを集める。
「さぁ皆、渾身の力と知恵を振り絞れ。親の仇と思って投げないと奴は倒せんぞ」
「そんな強いんけ?」
「よーし、やっぞ!」
 雪玉を作る兵站と不断に投擲する部隊に分け、童子らの指揮を取る帷。
 小さな手が休みなく雪玉を投げつけるが、随分と身丈のある男の外套は、一向に白雪を受け付けない。
「素直に放物線を描く雪玉なんざ俺には当たらねぇぜ!」
 美し紫瞳が視るは【絶望の福音】――十秒先の未来を映して身躱すカイムは悠然と、雪の返照に銀髪を輝かせた。
 松木の間を移動する傍らに雪を掬った彼は、素早く玉と丸めて須臾に射出!
「ひゃあ、つべたい!」
「俺に一矢報いるなら、其処の大将も戰線に加わらせるんだな」
「むくく……ぐやじい!」
「俺が勝ったら、村中のお汁粉を喰い尽くしてやるぜ!」
 一瞬で前線を崩壊させたカイムは、双眸に宿る光を帯と引きながら、銀世界を風の様に擦り抜ける――彼こそ正に松籟。
「カイム、君は悪役が似合うな」
 童心の塊の様な、悪戯な微咲(笑み)を浮べるカイムに頬笑む帷。
 ならばと彼女は童子達に耳打ちし、白磁の繊指をスッと松木に向けた。
「次に移動するのはその木だろう? 木ごと拘束する」
「――っ!」
 其は雪玉を補給する瞬間。
 ユーベルコードを封じる拘束具が一気に放たれると同時、雪玉を持った手に枷を、玲瓏の躯をロープに縛られたカイムが、松木に結ばれ機動を禦された。
「ちょ、待て、待て待て待てマテ……!」
 全て命中すればユーベルコードは完全に封じられたが、幸いにも猿轡を遁れたカイムは、十秒先に己のどんな姿を視たろう。
 定位置から雪玉を投げていた童子、兵站に専念していた者も含めた全員が松木を囲み、両手に握り込めた雪玉を……ここぞと投げつける!
「そぉれ!」
「やっつけろー!」
「タンマ、タン――うわぁぁぁぁっ!」
 雪まみれ、粉まみれ。
 カイムは童子達の渾身の雪玉を全身に喰らうと、美し銀髪をフルフルと振って六花を落とし、前髪の間より帷の笑顔を覗き見る。
 漸う長い睫が持ち上げれば、彼女は紫苑色の麗瞳に淡く咲んで、
「カイムのお陰で子供達が活き活きとしていた。さぁ、温かいお汁粉を頂きに行こう」
 と、手を伸ばす。
 然ればカイムは窃笑を噛み締めて手首を差し出し、
「……先ずはコレ外してからな?」
「あぁ、済まない。直ぐに枷を解こう」
 幾許か時を置いて。
 二人は童子らが頻りに手招く方向へ、急いで合流した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
全く異なる文化が築く、全く異なる眺めでありながら
真白の世界の眺めは何処か、懐かしく

私が我が師の許で過ごしたのも、雪に鎖される峻険な地でした
生きる術も、身を立てる学問も
今を猟兵として戦えるだけの魔術の基礎も
全てを学んだ日々には感謝しているけれど
……あの頃は雪遊びの余裕などありませんでしたね

では、子供達に声を掛けて
雪遊びは初めてなのです。教えて頂けますか?と
寒さ知らずの風の子達に混ざって大小雪だるま達を並べ
御礼は色鮮やかな異国の飴菓子をひとつずつ

……世渡り上手の大人ぶった態度の奥底に
置いて来た筈の童心が疼く心地
密やかに今の想いを掌の中に握り込めば
虹色の小さな欠片を結び――其れを雪の中にそっと隠して



 鼓膜に迫る靜謐、肌膚を掠める凛冽。
 全ての色を眠らせる様な、一面の銀世界に踏み入ったファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は、繊麗の手に握るステッキを、さくり、新雪に埋めた。
「全く異なる文化が築く、全く異なる眺めでありながら――何処か、懐かしい」
 不意に過るノスタルジア(郷愁)――。
 魔術士でもあるファルシェが師の許で過ごしたのは、雪に鎖された峻険な地で、脈々と人々が息衝く此処よりも自然は嚴しかったかと記憶が甦る。
 丹花の唇を擦り抜ける吐息は、眞白く景色を烟らせて、
(「あの頃は……」)
 生きる術も、身を立てる学問も。
 今、猟兵として戰えるだけの魔術の基礎も。
 全てを学んだ日々に感謝しつつ――雪で遊ぶ余裕は無かった。
「雪を六花と愛でる暇も――」
 あれから貴石を術の核とする独自の魔法体系を継承したファルシェは、その身に厖大なる魔力を秘めつつ、我が躯を包む鮮やかな外套を凍風に揺らした。
「そのお姿……猟兵さまけ?」
「村に来たくれたんけ」
 色とりどりの石と造花で着飾る麗人は、雪山で遊ぶ童子達の目に直ぐ留まったろう。
 珍しい来訪者に無垢の瞳が集まれば、ファルシェは美し紫瞳を淡く細めて、
「雪遊びは初めてなのです。教えて頂けますか?」
「なら、この雪玉転がして大きくしてくんろ」
「雪だるま、一緒に作らんけ」
「ゆきだるま、ですね」
 と、莞爾(にっこり)咲った彼は、それから寒さ知らずの風の子達に混ざって、大小様々な雪だるまを作って並べた。
「ちっこい方を上に乗せるんよ」
「成る程、これが頭になって……よいしょ」
 無垢の子らを師に、炭や蜜柑、人参を使って表情を付ける。
 豊かな顔貌を得た雪だるまと視線を結び、ふうわりと艶笑を注いだファルシェは、視線を同じくする童子らに身を屈めて、
「異国の飴菓子をひとつずつ。御礼です」
「ふぁー、綺麗な色!」
「猟兵さまみたいに、瑞々しい色がいっぱい」
 きゅ、と綻ぶ彼等に、胸が温かくなる。
 穏やかなるハイ・バリトン、白皙より零れる塊麗の微笑――世渡り上手の紳士的な仕草を見せるファルシェの奥底に、過ぎる星霜に置いて来た筈の童心が疼く。
(「――北風は肌膚を刺すのに、少しも寒くないとは」)
 密やかに、今の想いを掌の中に握り込める。
 白磁の繊指に結ばれた其は、虹色の小さな欠片と成って――そっと雪の中に隠れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
まさかこの年になって雪遊びをする事になろうとは
…お前にとっては何でも鍛錬の一つだろうが
まあ良い、可愛い弟子とは云え容赦はせん
お前も全力で掛って来るが良い

弟子が雪玉作成に四苦八苦する中
ぱっと雪玉を投げて真白に染め上げてやろう
全く、何が卑怯か
先手を取らねば千々に折られる未来しか見えん
…ってこら待て
塊をその侭投げる奴があるか阿呆!
怪力馬鹿の猛威を死角に隠れる事で掻い潜り
攻撃の隙を突いて冷静に狙いを定める
大人げない?
当然であろう――決して侮ってはおらぬ故な

勝敗が如何であれ
終る事には体力も尽き雪に伏す
ほれジジ、疾く手を貸せ
手を取ればすっかり冷たくて
…やれ、何か温まる物を貰いに往くぞ


ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と

地に降りたばかりの雪にも映える
育ての父にして師、であり主君と相対
…うむ、鍛練初めに相応しい日和だな

剣の代わり、雪を掴む
力を入れすぎ握り潰しては渋面
なぜ上手く行かぬのだろう
待て師父、今投げるのは卑怯――ぐぬぬ

おのれ手段を選ばぬということか
速さ精密さでは分が悪い
玉は諦めて、その辺りの程よい雪塊を丸ごと抱え投げつける
硬度も抑えつつ、ちょろちょろと動く師も捉えよう
覚悟されよ

雪玉を腕で弾き
本気であるな
応答に口の端上げて
…は、それでこそ我が師だ


もはや互いに何発喰らったやら
精魂尽き果てた師を助け起こし
うむ、実に好き鍛錬であった
一息入れに参ろう

冷たく熱い掌と
水に変わり滴る雫も宝石めいて



 雪面を吹き抜ける凛冽の風が粉雪を舞わせる、白銀の世界。
 雪烟る里山の幽玄に降り立った凄艶――アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は、美し星光線を煌かせる双眸を巡らせると、ふわり白い息を零した。
「――まさかこの年になって雪遊びをする事になろうとは」
 純白の雪に心躍る齢でも無し。
 正月くらい心穏やかに過ごしたいと思っていたのだが、気付けば絹糸の艶髪は松籟に毛先を遊ばれ、頬に触れる粉雪も頻りに己を誘っている。
「ああ、直ぐに引き返す不義理は為まい」
 精霊を宥めつつ、佳景に解ける。
 その姿が幾許にも眩く、映えて――。
「――師父」
 育ての父にして師、そして仕えるべき主君の優美を暫し漆黒の煌瞳に映したジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は、ブーツの底に新雪をきゅ、と踏み締めると、義気凛然と彼の眞面に正対した。
「……うむ、鍛練初めに相応しい日和だな」
 天気晴朗、空気淸冽。
 年初めの寒稽古として申し分ないと、雄渾たる鋭気が立ち昇り始める。
「……お前にとっては何でも鍛錬の一つだろうが」
 眼前の精悍を上目遣いに視る師。
 蓋しひとつ瞬きするや、鋭い光が差す――其処にヒヤリとした闘志を見た弟子は、強く母指球を踏み込んで、次なる言を待った。
「まあ良い、可愛い弟子とは云え容赦はせん。お前も全力で掛って来るが良い」
 開戰――!
 刹那、爪先を彈いたジャハルは黒劔『ちかい』を抜く代わり、掌に柔かな新雪を掬い、直ぐにも其を握り込めた。
「――む」
 蓋し降り積もったばかりの雪花は極めて繊細。
 力を籠められた其は形を保てず潰れ、掌を開いた弟子は渋面に。
 もう片方の手に握った雪玉も直ぐにほろと崩れれば、ジャハルは柳眉を顰めて訝しみ、両の掌をじ、と見詰めた。
「なぜ上手く行かぬのだろう……」
「彈の用意に苦戰しておるのか。然し敵は此方の都合など汲んではくれるまい」
 師の手は弟子より幾許も小さく花車だが、雪玉を作るのは頗る早い。
 アルバは六花を掬うや玉と丸めて振り被り、
「その黒髪、眞白に染め上げてやろう」
「待て師父、今投げるのは卑怯――……ぐぬぬ」
「全く、何が卑怯か」
 之は雪合戰。戰に卑怯も姑息も無し。
 それに、先手を取らねば千々に折られる未来しか見えぬ師にとっては、彼が雪に慣れぬ今こそ優勢を得ておく可きなのだ。
 ジャハルの外套に粉雪が斑を作るのを見ながら、アルバが次なる雪玉を丸めれば、俊敏や精密に於いては分が悪いと判断したか、ジャハルが新雪の海原へずんずん踏み込んでいく。
「おのれ、師父が手段を選ばぬなら、此方も玉に拘泥(こだわ)る事は無い」
「……って、こら待てジジそれは」
「この辺りの程よい雪塊を丸ごと投げつける」
「ッ、塊をその侭投げる奴があるか阿呆!」
「覚悟されよ」
 硬度を抑えつつ、ちょろちょろと動く師を冱瞳に組み敷き、抛る。
 その華奢を優に包める雪の塊が頭上に迫った瞬間、アルバは背進して着下点から逃れると、ふうわり雪粉を烟らせる中から反撃の雪玉を投げた。
「怪力馬鹿の猛威を掻い潜り……冷靜に攻撃直後の隙を衝く!」
「ッッ!」
 咄嗟に腕を盾と差し出し、雪玉の軌道を叩き落とすジャハル。
 腕を掃えば、幽闇の眸が七彩を冴え冴えと煌めかせており――、
「本気であるな」
「当然であろう――決して侮ってはおらぬ故な。大人げなくもなる」
「……は、それでこそ我が師だ」
 互いに好戰的な視線を結び、端整なる唇の端を持ち上げる。
 それからアルバは彈数を活かした不断の投擲を、ジャハルは躯を活かした大型直下型の攻撃で互いに譲らず、嚴しい膠着状態の末に――泥沼化した。
「むむ……互いに何発喰らったやら……」
「はぁ……精魂尽き果てたわ……」
 今や師弟は仲良く大の字に、フカフカの新雪に埋まって白い息を吐いている。
 心地好い疲労に沈む躯を動かしたのは、師の嚴粛なる聲で、
「ほれジジ、疾く手を貸せ」
 ふるり、頭(かぶり)を振って六花を払ったジャハルが、長躯を屈めて手を差し出す。
 時にアルバが硬質の手を取れば、其はすっかり冷えきっており――。
 竜の子が悴まぬか、霜傷(しもやけ)にならぬか心配を過らせた師は、両手で聢と包みながら起き上がり、
「……やれ、何か温まる物を貰いに往くぞ」
 と、冷艶の流眄を集落に注ぎ、ジャハルの足を促す。
 然れば彼も満足気に首肯を添えて、
「うむ、実に好き鍛錬であった。一息入れに参ろう」
「汁粉と雑煮があるそうな」
「しることぞーに」
 師の言葉を鸚鵡返ししながら、彼の繊手を視る。
 六花は雫となって薔薇色輝石の指先に滴り、宝石めいて陽光を彈く――その美しさに、靜寂なる双眸が眩しそうに細んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■悠里/f18274
アドリブ歓迎

一面真っ白だね、悠里!
光照り返し煌めく眞白の雪に双眸細め、白の尾鰭で穹をかく
悠里、雪だ
一緒に遊ぼう
君は雪で遊んだことがないと言っていたから
一緒に遊べたら、きっとすてきだと思ったんだ

ふふ
雪玉はね、こう…おににりを握るようにぎゅっとして丸くするんだ
少し得意げに、歪な丸を一つ
悠里が雪玉を作るのを微笑ましく眺め
君の作った雪玉の上に重ねれば、小さな雪だるまがうまれる
近くの小石で目鼻をつけると…
可愛くできた!
次は何を作る?
悠里の好きなのにしよう
大きいかまくらも――嗚呼、それは素敵だ
この子のためのかまくらを
早速雪をあつめなきゃ!

銀世界に笑みが咲けば
其れはまるで
雪に歌う冬のうた


水標・悠里
■リルさん/f10762と
アドリブ歓迎
いつも窓から眺めていた雪景色の中に立っている
それだけで夢のようです
本当に、眩しいくらい真っ白なのですね
触れれば冷たくて、どんどん溶けて行く
これが雪なのですね

雪で遊ぶのですか?
ふむ、ぎゅっとして、丸く
見よう見まねで雪玉を作り、綺麗に形を整えながら頭を乗せて
長く握ったせいで少し溶けてしまったけれど、これはこれで可愛らしく見えてしまいます
貴方とならきっと世界の全てが素敵に思えてしまいそう

私が作りたいものですか
……この雪だるまのためにかまくらを作っても良いですか
寒いとはいえ冬の日差しがあれば溶けてしまうでしょう
少しでも残っていて欲しいなと、ちょっとした我が儘です



 凛冽の染む朔風が雪面を撫で、粉雪を舞わせる――嚴冬の里山。
 色彩も声音も眠らせる幽玄の銀世界に、薄花桜の麗瞳が煌いた。
「一面真っ白だね、悠里!」
 光を照り返して煌めく眞白の雪に、淡く双眸を細めたリル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)が、月白の尾鰭で穹を掻く。
 その傍ら、グリモアの光を解いて降り立った水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)は、透徹たる青の麗眸いっぱいに飛び込む雪景色に、長い睫を瞬いた。
「本当に、眩しいくらい真っ白なのですね」
 いつも窓から眺めていた雪景色の中に立っている――。
 それだけで夢のようだと、丹花の唇を擦り抜ける溜息は、直ぐにも白い息となって淸冽の穹に解けた。
「真っ白くて、冷たいんだ」
 莞爾と頬笑むリルに誘惑(つ)られ、白磁の繊指に白雪を掬う。
 少年の体温を受け取った雪花は形を解いて雫となり、掌の上で光の粒と化した。
「触れれば冷たくて、どんどん溶けて行く――これが雪なのですね」
 これが雪。
 これが六花。
 綺麗で繊細で、何処か儚い――。
 暫し陽の光を集めて煌めく雫を眺めていた悠里は、玻璃の如き玲瓏の聲に袖を引かれ、新雪に新たな一歩を踏む。
「悠里、雪で一緒に遊ぼう」
「雪で遊ぶのですか?」
「君は雪で遊んだことがないと言っていたから、一緒に遊べたら、きっとすてきだと思ったんだ」
 ことり首を傾げ、上目遣いに少年の瞳を覗き込む人魚。
 期待に胸が膨らむか、塊麗の微笑を見せるリルに、悠里も淡い艶笑を返す。
 子供の様に愉しげに先行したリルは、傍らの雪を両手で掬って掌に包み、
「ふふ。雪玉はね、こう……おにぎりを握るようにぎゅっとして丸くするんだ」
 と、少し得意げに、歪な丸を一つ。
 リル先生の手本を得た悠里は、無垢なる聲で大事なポイントを鸚鵡返しし、
「ふむ、ぎゅっとして、丸く」
 きゅ、と身を擦る様な音を立てた雪が、結晶を繋いでひとつに纏まる。
 初めてにしては上出来だろう、悠里が雪玉を作るのを微笑ましく眺めていた師リルは、彼の両掌に乗った雪玉の上に己の雪玉を重ね、小さな雪だるまを生み出した。
「これは……」
「その儘、少し待ってて」
 佳聲を置いて離れると、急いで辺りの小石と小枝を拾って戻る。
 悠里が小さな雪だるまを持つ間、リルは拾い集めたもので顔と表情を整え、
「こうやって目鼻をつけると……ほら、可愛くできた!」
「瞳が円らで佳いですね」
「楽しそうな笑顔にしてみたよ」
「長く握ったせいで少し溶けてしまったけれど、これはこれで可愛らしく見えます」
 小さな雪だるまに視線を結ぶ二人。
 童心を映した様な表情が愛らしかろう、リルと悠里は雪だるまに微咲を零しながら言を交して、
「次は何を作る? 悠里の好きなのにしよう」
「私が作りたいものですか……この雪だるまの為に、かまくらを作っても良いですか」
 小さな雪だるまの、小さな家。
 悠里は生まれたばかりの雪の精を慈しんで、
「冬の里山は寒さも嚴しいとはいえ、日差しがあれば溶けてしまうでしょう。少しでも残っていて欲しいなと、ちょっとした我が儘です」
「この子のためのかまくらを――嗚呼、それは素敵だ」
 少年のささやかな我が儘、優しい提案には、リルもふうわりと花顔を綻ばせよう。
 彼は花車の拳を握り込めると、溌溂と新雪に踏み出し、
「早速、雪をあつめなきゃ!」
 さらさらと粉雪の舞う小高い丘へと向かっていく。
 その雪に烟る姿影は餘りに綺麗で、眩くて――。
「……貴方となら、きっと世界の全てが素敵に思えてしまいそう」
 と、悠里は玲瓏の双眸を細めながら、靜かに言ちた。

 銀世界に笑みが咲けば、其れはまるで――雪に歌う冬のうた。
 リルと悠里、そして小さな雪だるまは、寂寞なる白銀の世界で軽やかに賑やかに、粉雪を舞わせながら雪遊びを満喫した――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
トモエさん/f02927

新年の御挨拶をあなたに
新たなるひととせ
今年もどうぞよろしくね
心踊らせてあなたの後を追う

雪化粧、というものね
真白に彩らせた世界もうつくしい
新雪を踏む音は心地好いのね
あなたの呼び声に応じて傍へと

ユキダルマ
誰かと作るのははじめてだわ
ちいさな雪玉を転がして
少しずつ大きくしてゆく感覚
こんなにも心が踊るのね
あなたへと微笑を浮かべて
凍える指さきなど忘れてしまう

ふたつを合わせて
ユキダルマの完成、ね

たのしげに笑うお顔がよいわ
円かな石を瞳に、曲がり枝を口元へ
わあ、なんて愛らしい
連れて笑顔になってしまうよう

風邪を引いてしまっては大変
あたたかい場所へと行きましょう
あなたの隣に並びゆるりと歩んで


五条・巴
七結(f00421)

新年の挨拶と、今年もよろしくね
この言葉を伝えて満足したら早速外へ

わあ、一面銀世界
積もった雪にテンションも上がって、七結に見て見てと雪で一緒に遊ぶよう外に導いて

七結は何したい?折角だから雪だるまとか作ろうよ
七結くらい大きな雪だるま
ごろごろと小さな玉から初めて大きくして
白い雪は冷たいけれど、大きくなっていく様はとっても楽しい

2つを合わせたら、顔を作ってあげなきゃね

ふふ、どんな顔にしようか
この木の棒、笑顔にぴったりの曲がり具合
可愛い顔の完成
そうだね、皆笑顔になる。
僕や七結が笑顔になったように。

久しぶりに雪だるま作った気がするなあ。
手足がすっごく冷たいや
ふふ、早く暖まりに行こうか。



「あけまして、おめでとうございます」
 一音一音、丁寧に紡いで新年を寿ぐ。
 佳聲を重ね、麗眸を結び、恭しく挨拶を交わす。
「また新たなるひととせを。どうぞよろしくね」
「こちらこそ。今年もよろしくね」
 親しき仲にこそ礼儀をと、蘭・七結(戀紅・f00421)がぺこりお辞儀をする正面、挙措を揃えた五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)が長い睫を持ち上げる。
 それから塊麗の微笑を見せ合った二人は、次いで合掌造りの土間から柴扉へ――靜謐と幽玄の世界に身を躍らせた。
「わあ、一面の銀世界……」
「雪化粧、というものね」
 冬の陽に照る雪の眩さに瞳を細める巴に、心踊らせて後を追った七結が嘆美を添える。
 丹花の唇を滑る鈴音は間もなく白い息と變わって、
「眞白に彩らせた世界も、こんなにうつくしくて……跫も心地好いのね」
 新雪を踏む度に、きゅ、きゅ、と身を擦る音に微咲(笑み)が零れる。
 七結が一歩一歩、興味深げに歩く先では、巴が童心を翼に軽やかに雪路を進んで、
「ほら、見て見て。ふわふわの粉雪」
 両手に掬い、繊麗の指の間からサラサラと零す――その麗顔も無垢な子供のよう。
 降り積もる雪に昂揚を隠せぬか、色味も豊かな呼び聲に七結も足取りを軽くして、彼が手招く傍へと駆け寄った。
 二人は鼓膜に迫る程の靜黙に玲瓏の聲を染ませて、
「七結は何したい? 折角だから雪だるまとか作ろうよ」
「ユキダルマ」
「……初めて?」
「誰かと作るのははじめてだわ」
「ちょっと頑張って、七結くらいの大きな雪だるまに挑戰しよう」
 これくらい、と手に示して見せる巴に、こっくりと首肯く七結。
 好奇心と冒険心に満ちた笑顔を交した二人は、それから小さな雪玉を銀世界に轉がし、少しずつ大きくしていった。
「冷たいけれど、雪玉が次第に大きくなっていく様はとっても楽しいね」
「ええ、こんなにも心が踊るなんて」
 ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、と眞白の海原に轉がる雪玉も何だか喋っているようで。
 その音にくすりと咲みを零した二人は、凍える指先も忘れてしまうほど。
 程良い大きさになった処で、互いに轉がした雪玉を合せれば、白銀の世界にもう一人の影が――七結サイズの雪だるまが二人の前に現れた。
 白い息ひとつ挟んで雪だるまと相対した二人は、じっと頭部(あたま)を瞶めて、
「顔を作ってあげなきゃね。――ふふ、どんな顔にしようか」
「たのしげに笑うお顔がよいわ」
 円かな石を瞳に、曲がり枝を口元へ。
 位置を相談しながら顔を作れば、豊かな表情が目の前に生まれよう。
 雪だるまは命を得た様に咲みかけると、二人はその愛度気ない白い面に綻んで、
「ほら、可愛い顔が完成した」
「わあ、なんて愛らしい。連れて笑顔になってしまうよう」
「そうだね、皆笑顔になる。――僕や七結が笑顔になったように」
 優しくて、温かな表情に胸がじんとする――。
 ほうわりと白い息を穹に解かし、二人は暫し愛嬌いっぱいの雪だるまと瞶め合った。
 時に凛と凍む朔風が白皙を撫でれば、巴は腕を抱いて縮こまり、
「久しぶりに雪だるま作った気がするなあ。手足がすっごく冷たいや」
「風邪を引いてしまっては大変。あたたかい場所へと行きましょう」
 彼の窃笑に猩々緋の麗眸を擡げた七結が、牡丹一花を揺らして集落を向く。
 巴は白銀の世界にも精彩を失わぬ花に嫣然を零すと、爪先を踏み出し、
「――ふふ、早く暖まりに行こうか」
 と、繊麗の指先に道を示して見せる。
 然れば七結はその隣にゆるりと並んで、きゅ、と新雪を踏み込めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
【銀花】

真白の世界に点々散らす足跡は、
雪に棲む悪戯ないきもの三匹分
ニコリネも四匹目になろうと笑って、
かろやかに彼等と相対してみせる

もちろん、わたしは全力しか知らない

言うや否や掬う白銀の弾丸は、
柔いけれど圧倒的な連射速度
空を裂いて六花を舞い散らし、
イアの声に得意げに眸きらめかす

それにしてもあのふたりの並ぶ様は、
麗しさ極まれりだと密やかにため息
見惚れて僅かに狂った軌跡はよりによって――

綾の国宝級のお顔が!

あわあわと雪上跳ねて駆け寄れば、
雪塗れのきみは銀のひかりを纏って
子どもみたいに笑っているから

みんなして顔を見合わせ、一緒に寝転ぶ雪の上
零れるあかるい笑い声が
蒼天にどこまでも白く、響いてく


イア・エエングラ
【銀花】

景色に白い紗をかけたよで
木々まで細工のよな銀世界
音も跡も残るから
行って戻って楽しげに

雪の日だけの遊び、ね
同意と一緒に小さく跳ねて
ニコリネも遊びましょうと手をとろう
合図にぐ、と拳握ったらやる気の姿勢

青い空に白い珠が飛んだなら
煌めく眩しさに胸のすくよう
――わ、
花世は投げるのお上手ねえ
感心してる間にもころり
転がるようにかけて枝葉の雪掬い
反撃すべくまんまるの玉を

ふふ、きっとよくよく飛ぶよう
得意顔の間にも鮮やかな送球
目を丸くして瞬きながらも、向こうには駆ける姿
僕は綾の仇を、とるべきかしら

互いに白い花飾る格好も寝転ぶ童心も
すこし可笑しくて、咲う声は心地好くて
ともに笑うなら心はずっと暖かで


都槻・綾
【銀花】

白銀へ眩く細める双眸
足許できゅっきゅと鳴く雪の聲は
新雪を喜び駆ける小動物の愛らしさにも似て

私達も跳ねてみましょうか

ふくふく笑み
掌大の雪玉を掲げて見せる

ニコリネさんも誘い
男女に分かれて雪合戦

手加減は無しですよ、と
告げるが開始の合図

屈んで掬って丸めて投げて
雪に足を取られるも厭わず
銀野原を走り回る

イアさんが作り上げる雪玉は綺麗なまんまるで
投げるのが勿体ないくらい

感心して手元を覗き込んだ隙
飛来した玉から
硝子の如き青年を護るべく
咄嗟に盾になるけれど
見事に顔面直撃

砕ける雪がきらきら煌めくのと
慌てて駆け寄るかよさんの表情が可愛かったのとで
雪原に仰向けに転がって咲かせる、
いつまでも止まぬ楽し気な笑い声



 里じゅうに銀の六花の摺箔をした様な、幽玄の銀世界。
 松木の梢を擦り抜ける初松籟は淸冽と、眠れる玉屑を繽紛と舞わせる。
 色彩も音色も靜まった佳景に降り立った都槻・綾(夜宵の森・f01786)は、冬の陽光に照る白雪の眩さに、麗し青磁の双眸を柔かく細めた。
「――これは見事な」
「ね。景色に白い紗をかけたよな、木々まで細工のよな、果てまで続く銀世界」
 目映しい、と額に添えた掌手の下、透徹の藍瞳に彊界を眺むはイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)。
 透き通る繊指が光を返照して煌めく隣、境・花世(*葬・f11024)は思色の艶髪を朔風に梳らせる儘、白磁の項に凛冽を滑らせる。
 美唇を滑る歎聲は間もなく白い息と立ち昇り、
「白雪を冠る山々が重畳と聳えて……まるで墨絵の世界に来たみたい」
 水墨の如き眺望(ながめ)に誘惑られる佳人が轉ばぬよう、綾とイアが手を差伸べる。
 皆々が進む足許では、きゅっきゅと雪が鳴いて――新雪を喜び駆ける小動物の愛らしい聲の様だと微咲を零した綾が、悪戯な流眄を注いだ。
「私達も跳ねてみましょうか」
「滑って轉んで、雪だるまにならぬよう」
 云って、きゅ、と手を包むイアも子供の様に朗らか。
 音を愉しんだ足跡がくっきりと残るものだから、彼等は眞白の海原を往って戻って、点々と斑を落していった。
 花世はふうわりと彈みながら嫣然を零して、
「雪に棲む悪戯ないきものが三匹。四匹目は――」
 颯と振り返り、飜々(ひらひら)と玉臂を振る。
 視れば彼女が視線を向けた先――合掌造りの集落から人影が疾走って来た。
 意気揚々と手を振り返すは、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)。里山の者達に『天下自在符』を見せて説明を終えた処、三人の姿を見つけたらしい。
「綾さん、イアさん、花世さーんっ! 混ぜて、まぜてー!!」
 何して遊ぼう? いっぱい楽しもう!
 靴底が滑る儘に雪路を走るニコリネに視線を結んだ綾は、傍らの新雪を掬うと、掌大の雪玉を掲げて見せる。
「男女に分かれて雪合戰は如何?」
 ふくふく笑む綾にはイアも笑顔を映して、轉ぶ直前のニコリネの手を取って助ける。
「雪の日だけの遊び、ね。いっしょに愉しみましょ」
「イアさん!」
 小さく跳ねた繊躯は、童心を翼にしたか花葩の如く軽く。
 仄かな花馨を連れた花世はニコリネを手招くや、粉雪を連れて軽やかに二人に相対し、
「真劔勝負でいきましょ」
「手加減は無しですよ」
「もちろん、わたしは全力しか知らない」
 義気凛然――。
 花世と綾が鋭くも艶帯びた瞳を結ぶ隣、イアもぐ、と両拳を握ってやる気を見せれば、ニコリネは距離を取って松木に隠れた。
「当ったらアウトで、二人やっつけた方が勝ち!」
 是の返事は双方から――雪玉となって返ろう。
 綾は松木の間を風の様に擦り抜けながら、駆け様に雪を掬って丸め、足が取られるのも構わず抛る、投げる。
 新雪の深みが邪魔をするのはご愛嬌。
「ああ、手元が狂って――」
「お化粧しましょう。白粉は如何かしら」
 其処に差し入るは花世の冱彈。
 彼女は【偽葬】(マガイモノ)で身体能力の向上を狙いながら、柔かいながら圧倒的な連射速度を以て綾の影を追った。
「わ」
 刹那、麗瞳を丸くした綾が紙一重で回避する。
 冬の淡い青空に白銀の珠が飛んだなら、イアは其の煌めく眩しさに快哉を覚えて、
「――わ、花世は投げるのお上手ねえ」
「あら、褒めてくれるなら、もっと飛びそう」
 イアの歎聲に得意げに眸を煌かせる花世は手練の撃手。
 凄艶は不断に雪花を空へと躍らせ、枝に幹に、可憐な六花を舞い散らせた。
 その美しさには味方からも感歎が溢れて、
「ひゃあ、花世さんったら綺麗で……つよい!」
 ありがと、と花世は柔かな嫣然を返すものの、その麗瞳は己がより惹かれ見惚れる――綾とイアの並ぶ美景に繋がれ、麗しさ極まれりと密やかに嘆息を零す。
「ふふ、きっとよくよく飛ぶよう、まるめて、まるめて」
「イアさんが作り上げる雪玉は綺麗なまんまるで。投げるのが勿体ないくらい」
 和気藹々にして活溌婉麗。
 轉がるように掛けて枝葉の雪を掬い、掌の中で円やかな珠と丸めて投擲る――邪気ない一球ながら、白銀の雪玉は松木から移動した瞬間のニコリネを見事に打ち取った。
「んンー!」
「おや、竟に大物が掛かった」
「あら、ニコだるまになって」
 くすくすと微咲を溢し、一瞬の間に拳を突き合わせる綾とイア。
 その姿が何とも綺麗で――時を奪われた花世は僅かに命中を狂わせ、予想だにせぬ軌跡に眞先に瞠目した。
「あっあっ……!」
「っ、イアさん――」
 硝子の如き青年を護るべく、咄嗟に盾と身を差し出した綾の顔面に六花が飛び込む。
 ぱしゃ、と彈けた冷涼は濡烏の前髪を濡らし、長い睫に雫を乗せた。
「――綾の国宝級のお顔が!」
 あわあわと雪上を跳ねて撃手が駆け寄る。
 鮮やかな送球に目を丸く、ぱちくりと瞬いていたイアは、敵陣から駆け付ける八重牡丹に反撃の瞬間を躊躇って、
「僕は綾の仇を、とるべきかしら」
 小首を傾げる間、品の佳い鼻梁に芳しい花馨を掠めたイアは、視線を結び合う二人の小気味よい会話を聴いた。
 先ずは綾が雪原に仰向けになった儘、麗瞳を細めて花世を見上げ、
「砕ける雪がきらきら煌めくのと、慌てて駆け寄るかよさんの表情が可愛かったのとで、佳いものを見せて貰いました」
「……子どもみたいに笑って」
 雪に塗れて銀の光を纏う綾を眩しそうに瞶めた花世は、誘惑られて花顔を綻ばせる。
 それからニコだるまも集まれば、今度は全員が顔を見合わせて白銀の海原にダイブし、ぼふん、と粉雪を舞わせて嗤い合った。
「――ふふふ」
「……あはは」
 互いに白い花で躯を飾り、膨らむ童心の儘に寝転んで。
 すこし可笑しくて、咲う聲は心地好くて。明るく煌めくような聲が白い息となって溶けていけば、其々の胸は温かな想いで満たされる。
 笑聲はいつまでも止まず――。
 ずっと、ずっと、蒼白い穹に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月05日


挿絵イラスト