生きるだけでも、戦いなんだ
#アポカリプスヘル
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●荒涼たる世界
アポカリプスヘル――もはや滅亡を待つだけの世界には、わずかな生存者たちが都市や集落に拠点(ベース)を築いて日々を生き延びている。
世界の片隅にある小さな町もまた、数十名ほどの生存者が住み着いていた。
瓦礫を寄せ集めて作った家屋たちを囲うように、トタン板の壁が立ち、二ヶ所ある出入口では武装したサバイバルガンナーが交代で見張りをする。
そうしてなんとか、人々は生きていた。
「十二時よ。交代するわ」
「……ああ、頼む。それじゃ俺は寝させてもらうよ」
スナイパーライフルを持って見張り塔――壁に即席の足場を設えただけである――に来た女に、深夜から不寝番をしていた男が双眼鏡を渡して下りてゆく。
その顔に、活気というものはない。
寝ずの番をしていた男だけではない。睡眠をとっていたはずの女もだ。
さらに言えばその二人だけでもない。
町にいる者たちは皆、死んだような顔をしている。
広場に集まる子供たちは遊ぶこともせず座りこみ、大人たちも大人たちで町で一番大きな家に集まっていたが切れ切れに意味のない会話をするばかりだ。
食糧が、尽きていた。
もともとわずかな量しかなかった食糧は、二日前に完全に底をついた。
人々もそれを予想しなかったわけではない。食糧を求めて探索に出たり、どうにか自給できないかと乾いた大地で作物を育てたりしようとした。
どれも上手くいかなかった。
水だけは辛うじて残っている。一週間ぐらいは食べずとも生きてはいけるだろう。
けれど、先はない。
腹を満たす食糧を、手に入れることができなければ。
●グリモアベースにて
「新たな世界が見つかった、という情報はもう知っている者もいるだろう」
プルート・アイスマインドは集まった猟兵たちにそう告げると、いつものようにグリモアから現地世界の情景を映し出した。
何もない。
ただ荒れ果てた大地の地平線――そんな映像に一ヶ所だけ、建物が集まった場所が見えた。
「ほとんどの人類が死滅した世界だが、さすが人間は強いと言うべきか、まだ生き残っている者たちはいるようだ。もっともここにいる人々は逼迫した状況にあるがな」
暗い声音のまま、プルートは説明した。
この拠点にいる生存者たちが深刻な食糧難にあり、もはや打開する手立てもないことを。
「アポカリプスヘルでは珍しくない光景だろう。暗黒の竜巻『オブリビオン・ストーム』と、それによって生まれたオブリビオンたちが跋扈する世界……食べることも楽ではないはずだ」
食糧不足、ひいては物資不足。
それがアポカリプスヘルの慢性的な症状なのである。
最も簡単な解決法は、猟兵たちが食糧を持って転移することだろう。コンテナひとつ分とか大きな量は転移させられないが、猟兵が持ちこめる程度の量でも向こうでは大助かりだ。
だが、そうもいかない事情があるとプルートは語った。
「過剰に持ちこまれた『異世界の物資』は、オブリビオン・ストームを呼び寄せてしまうのだ。下手なところに転移しては辺りにいる人々を巻きこみかねないから、通常であれば異世界物資の搬入は難しい」
支援に行ったつもりが、逆に被害を招いてしまう可能性がある。
それを考えると迂闊な物資の持ちこみはできないのだ。
しかし今回はその限りではないらしい。
「幸運なことに、オブリビオン・ストームが発生しても人的被害が及ばない場所を特定することができたのだ。この町とそう遠くない距離でな」
宙に投影した映像をすーっと動かし、数キロほど離れた場所を指差すプルート。
そこには大きな廃墟があった。
建物は半分ほど吹っ飛んでいるが、まだ建造物としての姿は保っている。瓦礫ばかりでいかにも足場は悪いが、いったん物資を集積しておくには都合がいいだろう。
生存者たちの拠点とも近すぎず遠すぎず、ちょうど良い塩梅だ。
「おまえたちはひとまずこの場所に食糧を集め、オブリビオン・ストームを呼び寄せてくれ。そこで現れたオブリビオンを片付けたのち、困窮する拠点に食糧を届けてやってほしい」
猟兵たちが納得して頷いたのを見て、プルートは謝意をこめて頭を下げた。
目指すは終末の世界――猟兵たちの転移が、始まった。
星垣えん
年末ですね。世紀末ですね。
というわけで星垣えんでございます。
今回は、アポカリプスヘルの生存者たちに食糧を届けて頂きたいと思います。
シナリオの流れを以下にざっと。
1章は、拠点から離れた廃墟に食糧を持ちこんでもらいます。
どんな食糧を、どれぐらい持ちこむかをプレイングで指定して下さい。
崩れかけの廃墟を進んで、中に食糧が集まったら、オブリビオン・ストームが発生します。
2章は現れたオブリビオンとの集団戦。
3章は拠点の生存者たちに食糧を配給する一幕となります。ちょっとした仕事もあります。
それでは、皆様からのプレイング、お待ちしております!
第1章 冒険
『崩壊しつつある廃墟』
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POW : 瓦礫を撤去して埋まった通路を掘り起こしたり、施錠された扉を破壊して進む
SPD : 注意深く周囲を観察して危険を発見したり、危険な場所を素早く通り抜けて進む
WIZ : 廃墟をマッピングしたり、知恵や知識を利用して危険を取り除き、進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
転移した猟兵たちの顔を、砂埃を含んだ風が撫でる。
見渡せば物寂しい光景ばかりがひろがる荒野に降り立った猟兵たちは、食糧がしっかり傍らにあることを確認して前方を見据えた。
瓦礫の城――半壊した姿でそびえ立つ廃墟は、大量の瓦礫が折り重なっている。
中に入るのは随分と骨の折れる作業だろう。
しかし外に置いておけば、オブリビオン・ストームが発生したときに食糧が無事に残るかもわからない。やはり安全を期して廃墟の中に集めるしかなさそうだ。
道を塞ぐ瓦礫をどけ、枠がひしゃげて開かなくなった扉を力尽くで破って進むか。
危険かもしれないが、積みあがった瓦礫の上や下を抜けてみるか。
それともできるだけ安全なルートを探すなど、賢くやってみるか。
持参した食糧を見ながら、猟兵たちは搬入方法を考える。
ヴェロニカ・ナシーリエ
アドリブ歓迎です!
POWを選択
よいしょっと…
うぅ… 少し持ってき過ぎたかな?
この世界には甘味が足りないんじゃないかと思って、保存も効く果物系の缶詰を持って来たんだけど…
喜んでくれると良いなぁ。
行動
〈怪力/グラップル〉を合わせた拳で瓦礫や開かない扉を大胆に吹き飛ばしながら進もうかな。
うーん… どの道を通れば安全なのか分からないけど、そこは〈第六感〉でそれっぽいと思うところを行こう!
「よいしょっと……うぅ…… 少し持ってき過ぎたかな?」
巨大なリュックを背負うヴェロニカ・ナシーリエが後ろに引き倒されそうになるのを堪える。
「保存も効く缶詰を持って来たけど……喜んでくれると良いなぁ」
まだ見ぬ人々のことを思い浮かべるヴェロニカ。
持参したのは果物の缶詰だ。
この荒廃した世界にはきっと甘味が足りない――ということでめいっぱいに缶詰を持ってきたのである。
「じゃあ、これを中に運ばないと……」
リュックを背負いなおして、ヴェロニカが廃墟へ歩く。
すぐに瓦礫が道を塞いだ。建物と外の境界線のところで、瓦礫がヴェロニカの身長を越えて折り重なっていた。
常人であればどかすのはまず無理だ。
ヴェロニカも、元々生まれ持っていた虚弱な身体では無理だったろう。
だが、禁忌の実験でデッドマンと化したその身体ならば、話は別である。
「それ、っと」
平然と瓦礫に拳を打ちこむヴェロニカ。
怪力が易々と瓦礫の山を砕く。重機でもぶつけたかのように瓦礫が吹っ飛んで、ぱらぱらと舞う粉塵の向こうに廃墟内への道が開ける。
「うぅ、埃っぽい……どっちに行けばいいのかなぁ」
リュックの重さで左右に振られながら、ヴェロニカが内部を見回す。
どこもかしこも崩れかけていて、安全な道などわかりはしない。
ヴェロニカは数秒ほど悩んだ。
で。
「うん、それっぽいルートを進もう!」
きっぱり考えるのをやめた。
体幅をゆうに超えるリュックを背負って、ヴェロニカはずごーんどかーんと、盛大な破壊音を響かせながら進むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ジフテリア・クレステッド
※アドリブ・連携歓迎
●WIZ
恵まれた異世界と行き来できるようになったって初めて聞いた時は物資面で余裕ができるんじゃないかって喜んだりしたけど…美味しいだけの話はないんだね。残念。
廃墟への運搬はこういう場所での【サバイバル】経験や【救助活動】経験を活かして崩れやすそうな場所や逆にオブリビオンストームにも耐えられそうな場所とかを区分しながら無理せず少しずつ運搬する。時間はかかるかもしれないけど私は【継戦能力】が高いから根気強く進めるよ。
そしてフラスコチャイルドとしての【学習力】で廃墟の構造を暗記してマッピングするね。そしてそれを他の猟兵たちにも共有できるように何枚か作るよ。役立てばいいんだけど…。
「恵まれた異世界と行き来できるって初めて知った時は、物資面で助かると思って喜んだりしたんだけどね……残念」
見ただけで壮絶な破壊を思わせる廃墟を見上げて、ジフテリア・クレステッドはガスマスク越しのくぐもった声で呟いた。
しかし得られぬものを欲しがっても仕方がない。
ガスマスクの息苦しさを甘受して生きるフラスコチャイルドは、さっぱりと切り替えて周囲を歩き回る。その紫の瞳が探るのは比較的安全に通れそうなルートだ。
「ここは危ないかな。壁や天井が崩れそう。迂回しないとね」
崩壊の危険がある箇所、逆に嵐にも耐えられる強度がある箇所。
それらを逐一確かめながら、ジフテリアは食糧を廃墟内に運び入れる。
まず安全を確保してからという進み方は、当然ながら速度に欠ける。しかしもし瓦礫の崩落に食糧が巻きこまれては元も子もないし、彼女自身、忍耐強さには自信があった。
だから、ジフテリアは確実に進んでいた。
重い荷物を運んでは立ち止まり、経験から得た廃墟の知識を駆使して的確なルートを見つけ出す。図面はなくとも建物の基本的な構造は頭の中に入っているのだ。
さらに、ジフテリアは廃墟内を探索する中で、そのすべてを紙に写し取っていた。
安全なエリアと危険なエリアまで含めてマッピングしたそれは、ジフテリアの手で廃墟のあちこちの壁に貼りつけられている。
「他の人たちの役に立つといいんだけど……」
あとで来る仲間が迷わないようにと、ささやかな配慮を残して、ジフテリアは奥へ奥へと進んでゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
イヴェッタ・レチアーノ
囚人である私みたいな働かぬ者食うべからずなら分かるけど、
働いても食べられぬなんて高慢な私でも同情しちゃうわ……
干からびた世界にこそ蛋白質、つまり肉が必要よ
長期保存出来る干し肉や魚と肉の燻製を
UCで出現させたもう一人の私と一緒に運ぶわ
二人で運べば一人よりも多くの量を運べるからね
『肉はイヴェッタの好みにゃ、完全に私欲の言い訳にゃ☆』
人を助けて結果が良ければ動機はいいのよ……
ストームが来る前に食糧を廃墟の中に集めたいから
多少怪我等危険を承知で瓦礫の中を潜ったり瓦礫の上を駆け走るわ
あとは二人の息がピッタリでないと進めない奥地にも私達なら進めるはずよ
『1+1は2じゃなくて10にも100にもなるにゃ☆』
「働かざる者食うべからずならわかるけど、働いても食べられぬなんてね……」
最善を尽くしても、食えない。
同情を禁じ得ぬ事実にため息をこぼして、イヴェッタ・レチアーノはユーベルコードを起動する。傍らには即座に別人格の自分――いわば『ダブル』が現れた。
『イヴェッタ、参上にゃ☆』
「そういうのいいから、早く荷物持って」
自分と違いすぎるダブル(拠点における奉仕用人格)に、リュックを放るイヴェッタ。
中身は干し肉や、魚や肉の燻製だった。
『これだけにゃ?』
「干からびた世界にこそ蛋白質、つまり肉が必要なのよ」
『って言うけど、ぶっちゃけイヴェッタの好みにゃ? 完全に私欲の言い訳にゃ☆』
「結果が良ければ動機はいいのよ……」
ダブルのにゃはは笑いを聞きながら、廃墟へと足を踏み入れるイヴェッタ。
入った瞬間に、瓦礫の壁が行く手を阻んだ。押せばぐらぐらと揺れる。
ひどく不安定であることは一目で理解できた。
『いきなり行き止まりにゃ?』
「かもね……でも二階に上がれば」
天井を見上げるイヴェッタ。開いた穴から二階の空間が覗いていた。穴が開いてる以上は安全とは言い難いが、一階よりは幾分しっかりした足場がある。
『それじゃパパッと上がるにゃ☆』
「ええ、そうね」
ダブルが組んだ両手に足をかけ、跳びあがるイヴェッタ。
投げ上げられる力も使って軽々と上階に飛び移った。
そして下に手を伸ばして、ダブルを引き上げる。
『1+1は2じゃなくて10にも100にもなるにゃ☆』
「人前でその喋り方するんじゃないわよ……」
仲間の前でにゃんにゃん言われたらたまったものじゃない、と思いつつ、イヴェッタは食糧を背負って奥に進むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
数年で、ここまで……少しでも、助けないと、ですね
さて、オブリビオンストームが発生するまでに、この食糧を運び込まないと、ですが
食糧守る、防衛戦ともいえる戦いになるでしょう、から
廃墟の、どこがいい、か……探しましょう
イグニッション
『』は防具初期技能
電脳ゴーグルかけてサーチ【情報収集】
『地形の利用』地縛鎖大地と繋げ情報吸い上げもして
特に頑丈なとこ探し、運び込むと決めたら『怪力』で食糧
あったかいごはんになる「米俵」を持てるだけ持って
【忍び足】『ダッシュ』
『野生の勘』で目的地までの安全ルート『見切り』選んで素早く
瓦礫は【念動力】で持ち上げて、進む
広い視界を埋め尽くすのは、砂漠のように味気ない荒野。
砂を含んだ風を防ぐ電脳ゴーグル越しに、ナイ・デスは荒廃した世界のありようを見つめる。
「数年で、ここまで……少しでも、助けないと、ですね」
ぽん、とヤドリガミが手を置いたのは、米俵。
持ちこんだ無数の米俵に囲まれながら、ナイはユーベルコードを発動。長いマフラーや黒剣の鎧と一体化し、自身の能力を超人的に高める。
そしてその力でもってナイは廃墟へ目をこらし、鎖のついた短剣を地面に突き刺した。
大地から刃へ、刃から鎖へ、鎖からナイへ。
周辺情報が吸い上げられ、頭へインプットされてゆく。
廃墟の損壊具合や構造的に脆弱な部分、多少の衝撃に耐えうる堅牢な箇所まで――隅々まで把握すると、ナイは短剣を引き抜き、辺りに置いていた何俵もの米俵を一気に担ぎ上げた。
「あったかいごはんは力になります。これをこの世界の人々に届けるためにも、まずはオブリビオンストームから守れる奥のほうまで……!」
ゆうに百キロを超える重量を小さな体に背負って、ナイは廃墟へ駆けこんだ。
当然、床を踏むナイの足も一歩ごとに負荷が生じる。陥没して斜めに跳ね上がった床を走れば、足場は水上さながらに盛大にぐらついた。
だがナイはそんな足場で巧みにバランスを取り、駆け抜けた。
「いつ嵐が来るかわかりませんし、急がないといけませんね」
前もって得た内部情報、そして単純な勘で、半崩壊した廃墟を俊敏な野生動物のようにするすると抜けてゆくナイであった。
大成功
🔵🔵🔵
フェーリ・アイ
(言葉は発せず。霊の声は周囲にも聞こえます
フェーリが行く)
持ち込む食材はUDCアースの缶詰めや真空パックの肉や魚
ペットボトルの水とエネルギーバー
タイヤのある荷車は持ち込めるのかしら?
近くに居るはずのトーンに瓦礫の少ない道順を探って貰うわ
ポルターガイストで物を退けて荷車を通す幅分を拓く
『アイはホント、人使いが荒い。人助けしたいなら、自力で(強調)やりなよ』
文句は言うけど手伝ってくれるわ
私も爆弾を仕掛けて障害物を小型化する
トーンが手伝ってくれるのは、敵を早く殺したいから
作業が早ければ、その分だけ早く敵が姿を見せるはず
『まだかなぁ!悲鳴をあげない相手はつまらない。早くアイに聞かせてあげたいな』
「…」
がた、ごと、と響く音。
フェーリ・アイは、廃墟へ向けて荷車を引いていた。
『たくさん持ってきたねー。重くない?』
傍らにつきまとう霊体『トーン』の声に、フェーリは首を振る。
荷台にはいっぱいに荷物が積まれていた。目立つのは缶詰や、真空パックにされた肉や魚といった日持ちの望めそうな食品だ。水の入ったペットボトルや携行できるエネルギーバーもいくつかの箱に入っている。
生存者たちにとっては大きな助けとなる量だ。
だがそれだけに重い。脆そうな足場はもちろん通れないし、ある程度均されていなければ荷車が暴れてしょうがない。そもそも細い道では荷車が入らなかったりする。
「……」
目の前で道幅を狭める瓦礫を見て、フェーリはトーンの声がするほうへ視線を流した。
すると姿が見えない霊体は察したのか、はぁ、とため息を聞かせる。
『アイはホント、人使いが荒い。人助けしたいっていうなら“自力で”やりなよ』
刺々しい言葉を発しつつ……しかし荷車に立ち塞がっていた瓦礫が、浮き上がって左右にどけられた。フェーリの引く荷車がするするとひろがった隙間を通ってゆく。
小さな障害物をトーンが排除するかたちで、荷車は順調に進んだ。
ともすれば二人で息を合わせた行軍風景――に見える。
が、実のところ、それは違うようだった。
『敵はまだかなぁ! 悲鳴をあげない相手はつまらない。早くアイに聞かせてあげたいな』
「……」
本音を隠しもしないトーンの声に、フェーリは少し、かぶりを振った。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイ・バグショット
アポカリプスヘルを訪れるのは二度目
下見として訪れた時、この世界の惨状と環境を知らず苦労した
だから今回は防塵対策をばっちり
コートのジッパーを上げ口元まで覆い、目はゴーグルで保護
元々体が悪いのだから対策はし過ぎて悪いことは無い
……っとに空気わりィ世界だな…。
こんな世界にずっと居るんじゃ身体悪くすんのは当然か。
持参したのは経口補水液と調理無しで食べれる簡易的な栄養補助食品を持ち込めるだけ
保存食としても重宝出来るだろうとの思い
一番重要視して持参したのは薬
痛み止めや解熱剤など過酷な生活の中で必要そうなものを選択
どう考えてもすぐ医者にかかれる環境じゃあ無さそうだしな…。
不調のツラさはよく知っているからこそ
大きな荷物を背負った人影が、峻厳な岩場と化した瓦礫の山を踏み越えてゆく。
ジッパーを締め切ったコートの襟で口元を覆い、ゴーグルで目を守る完全防備スタイルで廃墟を移動しているのは、ジェイ・バグショットである。
「……っとに空気わりィ世界だな……」
およそ覇気というものがない声をこぼすジェイ。
アポカリプスヘルに来るのは二度目だった。そのときに、体の弱いジェイはこの世界の荒れ果てた環境に苦労を強いられたのである。如何に人の手が清潔な空間を作っているかということを思い知らされた。
「こんな世界にずっと居るんじゃ、身体も悪くなんだろうな」
埃やら粉塵やらとも取れぬ物質が、天井の切れ目から差す光でちらちらと浮き上がる。それに目を細めながらジェイは瓦礫をどかして進んでゆく。
その手には、廃墟の簡単な図面が記された紙片がある。
廃墟を進む途中で、壁に貼りつけられたものを見つけたのだ。筆跡の新しさから他の猟兵のものなのは明らかだったので、ジェイは遠慮せず世話になっていた。
「迷わなくていいのは、助かったな」
廃墟の奥へと歩を進めながら、背負った荷物に触れるジェイ。
背負った荷物は、経口補水液と無調理で食べられる栄養補助食品だ。味気ない品々ではあるが保存は利くし、生きる上では役に立つことは間違いない。
だがそれらも荷物の半分だ。
もう半分は、薬が入っている。
「もっと持ってきたかったが……まぁ、贅沢も言ってられないな」
持ちこめる量が限られるから、強い鎮痛剤や解熱剤を優先して持ってきた。
生きるための物資を確実に生存者に届けるべく、ジェイは廃墟を歩いてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
鳴夜・鶯
あれれ?
あちゃぁ~ボクが一番後発かな?
ボクは最近定番となったボロをまとった姿で
廃材を組み合わせた馬車のような形状の乗り物を引き連れ
荒野に立ちます。
その荷台には大量のイモ類入れた木箱が大量に積まれ
どう見ても過積載で普通は運べる量では無く
さてと…話には聞いていたけど
また面倒なところに保管しないとダメなんだね
まぁやることは変わらないけどさー
実は引き連れている馬車(?)は
ユーベルコード【魑魅魍魎】で作成したボクの式神
この術式に追加のオーダー『瓦礫を取り込み強化しながら目的地まで進め』を書き込みます
さてお片付け(吸収強化)しながら進もうか♪
この先何が出てくるかわかったもんじゃないからねー♪
どんどん行こう
「あれれ? あちゃぁ~、ボクが一番後発かな?」
荒野にぽつんと、ボロをまとって降り立った女――鳴夜・鶯が、辺りを見回してまったくの無人であることを確かめる。
仲間の姿はない。
もう皆、廃墟の中で待機してしまっているのだろう。
「う~ん、物資を集めるのに時間とられちゃったかな……」
ぽりぽりと頭をかきながら、鶯は隣にある物体に首を向ける。
どでかい馬車――のようなものが、悠然と座していた。
ようなもの、というのはそれらがすべて廃材のパーツとして組みあがっていたからだ。牽引する馬も鋼材や木材でできていて、どうにもこうにもハリボテ感が凄い。
だが車としての強度は確かなものだ。荷台にはイモがいっぱいに詰まった木箱が大量に積まれて、完全に過積載に見えるが、崩壊する兆候はない。
荷物が無事であることを確かめると、鶯は廃墟を見上げた。
「また面倒なところに保管しないとダメなんだね。まぁやることは変わらないけどさー」
呑気に言いながら、ハリボテの馬に騎乗する鶯。
すると彼女は懐から筆ペンを取り出して、馬の背に何かを書き記した。
その途端――。
『ヴォオオオオオオオオオオオオオ!!』
馬の形をした何かでしかなかったモノが、雄叫びをあげて走り出した。
疾走、爆走、大進軍。
馬車は、鶯が作り出した式神だった。辺りの廃材で作られた馬車は鶯のオーダーを受けて、廃墟へ向かって一直線に突っ走る。
あっという間に外壁が迫る――が。
「進めー♪」
外壁がまるで道を開くように、馬車が接近した瞬間に崩壊した。
しかも瓦礫がさらに馬車にひっつき、溶けこみ、より大きな車となる。
そうして巨大な馬車となった式神は、ルートも何も関係なく、嵐のように走りまくって、廃墟の奥へと瞬く間に到達するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『フレイムアーミー』
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POW : ファイアスターター
【火炎放射器の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【ゲル状の燃料を燃やすことで生じる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : トリプルファイア
【火炎放射器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : ヘルファイア
【火炎放射器の炎】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:松宗ヨウ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
食糧を持った猟兵たちが廃墟の奥の一角に集まると、まるでそれを引き金としたかのように急激に空に暗雲が垂れ込めた。
それから数秒も経たぬうちに――豪風が廃墟を襲う。
闇そのものが渦巻いているような嵐に、崩れかけの廃墟は易々とその体を千切り取られた。壁も天井も抗うすべもなく吹っ飛び、肉を削がれた建物が骨組みをさらしてゆく。
しかし、猟兵たちが食糧の集積所と定めた一角は無事だ。
廃墟のほかの箇所に比べれば無傷といえた壁は嵐に耐え、天井もぱらぱらと小さな破片を落とすのみで健在な姿を保っている。
しばらく廃墟を揺さぶると、嵐は消えた。
唸るような風音は嘘のように静まり、群衆が押し寄せているかのような大揺れも収まる。空を覆う黒い雲も晴れて、天井や壁の隙間から差しこむ光が内部を明るく照らしていた。
だが、静寂は一瞬だった。
「何かがある気配がするなぁ」
「生存者か? ゾンビか? まあどちらでもいいな!」
「何があろうと……燃やして消し去るだけだからなァ!!」
廃墟の周りには、オブリビオン・ストームの置き土産――大量のオブリビオンが発生していたのだ。
軍人然とした姿のオブリビオンたちは、喜悦に満ちた叫びとともに火炎放射器を振り回す。
一緒にまき散らした燃料のおかげで、廃墟は瞬時に炎に包囲されてしまった。
さらに、軍人たちはじりじりと包囲網を狭めてくる。
奴らが集積所まで押し入ってくれば、持ち寄った食糧も無事では済まないだろう。
連中の手元で噴きあがっている炎が、すべて無慈悲に焼却してしまうだろう。
それはまさに、火を見るよりも明らかだった。
ならばとるべき道はひとつと、猟兵たちは即座に判断を下す。
ひとり残らず、殲滅だ。
鳴夜・鶯
折角持って来たのに焼き芋にされたら意味無いじゃん…
(まずは積荷を下ろした【魑魅魍魎】の式神を解除して、瓦礫に戻しバリケードを強化。)
次に今回の本命の【コトダマクラフト】で、持ち寄った食料を囲う様に分厚いコンクリートの壁で覆って完全隔離。
ついでに足場をコトダマクラフトで作成して高所から出方を伺います。
へ〜なるなる薬品とかも併用して燃やしてんだね〜
とりあえず…消火と行きますか〜
高所から下に向けて
総量現在最大の60トンにも及ぶ水を精製して
炎と一緒に押し流して消火を行います。
さてお代わりは必要かな?満足するまで、バリバリバンバン精製しちゃうぞ♪
イヴェッタ・レチアーノ
私の世界を壊したストームが憎いのに今は耐えるしかないなんて……
この苛立ちはあんた達にぶつけてやるわ!
すぐさまオール・ワークス!でワークギアに着替えて
火炎への耐性を上げるわ
拠点への奉仕の為に様々な職技能を体験したけど
まさか工業職まで戦闘に役立つとわね
世の中分からないものだわ
残された廃墟と食糧や水、薬が延焼しない様に
火炎耐性に物を言わせて積極的に前に出て戦うわ
火炎放射器が巨大化するのなら安全装置やタンクなど
放射器の弱点が逆に狙いやすくなってるはず
銃弾じゃ炎や熱で溶けてしまいそうだから軽機関銃じゃなくて
ソーシャル・レーザーで集中攻撃するわ
こいつらを倒せば食糧を配れるのよ
SNSの皆、電力を借りるわよ!
ナイ・デス
破壊したものをオブリビオンにする、オブリビオンストーム
廃墟で、外に人も物もなかったから、この程度の数、なのですよね
初めは、被害を逃れられても、外で多種多様なオブリビオンが生まれていて、地獄のよう、な?
私、この世界、数年前……?
と、今は食糧、守らなければ!
『』は防具初期技能
【覚悟】と『勇気』で、食糧『かばう』ように、炎へ正面から
『オーラ防御』で完全に防ぐか軽減し【激痛耐性、継戦能力】慣れと、本体無事で死なないからと無視して
『迷彩』炎に塗れたまま『怪力ダッシュ』で近付き『暗殺』
【鎧無視攻撃】黒剣鎧の刃で【串刺し生命力吸収】して、刺したの急所でなくとも、命を奪い
疲労もなしと、次々命奪い、消滅させます
ジェイ・バグショット
銃火器系か…物資燃やされる前にさっさと片付けるとするか。
輪に棘がぐるっと刺さっている拷問器具『荊棘王ワポゼ』を複数空中に召喚。自動で敵を追尾し、捕らえると同時に棘が突き刺さりダメージを与える。
自動追尾を解除し自分で操ることで【早業】により速度アップ
多方面から輪を強襲させたり味方と敵の相手に割り込ませて助けたりと使い方は様々
自身は建物の死角を利用したり敵が別の相手をしている時に気配を消して殺戮ナイフによる【騙し討ち】
あらゆる攻撃に合わせ、影のUDCテフルネプで攻撃や捕縛
厄災の匣ハヌヱを片手に問う
『この世の恐怖、味わってみるか?』
夥しい数の虫は焼き払われても匣から無限に出現し、黒い闇となって襲う
ジフテリア・クレステッド
※アドリブ・連携歓迎
こんなあからさまに物資を消滅させるためのオブリビオンが来るなんて…やっぱりオブリビオンストームには意思のようなものがある…?
いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
敵はUCで火炎放射器を巨大化させてくる、か―――いい的だよ。遠距離からの【スナイパー】ライフルでの【先制攻撃】で燃料タンク部分を【部位破壊】して誘爆させる。【戦闘知識】から火炎放射器はどこ狙えば誘爆しやすいかはよく知ってる。巨大化してる分、盛大な花火になるだろうね。
向きや姿勢の関係で燃料タンクが狙えないやつの場合は放射機を持ってる手に【武器落とし】するように弾を当てて火炎放射を妨害、その後急所を狙い撃って倒す。
ヴェロニカ・ナシーリエ
アドリブ・協力歓迎です!
あれは…火炎放射器!
これはただの食糧じゃ無い… この世界の希望だよ!
それを燃やさせるわけにはいかない!
行動
私はデッドマンだから、火炎系の攻撃には弱いんだよね…
今回は中遠距離から、炎に焼かれない様注意しながら攻撃しよう!
AK-74改で〈援護射撃〉しつつ、柄付きグレネードを〈怪力〉で〈投擲〉かRPG-7.5の〈吹き飛ばし〉ってところかな?
これで倒しきれない場合は《デッドマンズ・スパーク》を広範囲に放出し、背中に背負っている燃料タンクに火を付けて爆発を狙ってみるね!
腕がダメになるけど… 食糧を待っている人々の為なら、腕の一本や二本くらい安いもんだよね!
フェーリ・アイ
(言葉は発せず、霊の声は周囲にも聞こえる
人格:フェーリ)
『アハハ!来た来た!待ってました~っ
ここからは好きにさせて貰うよ』
待ち望んだトーンが相手をする
ポルターガイストにより周囲の瓦礫を飛散させて視界を奪う
浮かせたものを高所から落とすなどが得意
高音の嘲笑は超音波並みに平衡感覚を狂わすほど
トーンに何かを守る意思はなし
フェーリは地形や荷も維持したいと考えている為、
囮として敵陣の中を駆け回って同士討ちを狙う
『ほらほらこっち♪アイはこっちだよ~』
トーンは面白がって言うが、狙い通りいかなければ延焼前に火を消してくれる
共通認識は、一体でも多く敵を倒したい(殺したい)と願っていること
まだ死なれては困ると考える
「あれは……火炎放射器!」
ごうごうと炎を吐き出す敵の得物を見て、ヴェロニカは顔色を変えた。
この場において火は厄介だ。
集めた食糧に触れようものなら、すべてが灰となりかねない。
ハリボテのように立つ廃墟の壁から外を窺っていたジェイは、億劫そうに声を漏らす。
「……物資を燃やされる前にさっさと片付けるとするか」
「そうだね……これはただの食糧じゃ無い……この世界の希望なんだから!」
ジェイの言葉に、ヴェロニカは積みあがった食糧を見て強く頷いた。
しかし、図ったかのように面倒なオブリビオンが出てきたものだ。
食糧を潰すために現れたような敵――フレイムアーミーの姿に、ジフテリアは思考に沈む。
「やっぱりオブリビオン・ストームには意思のようなものがある……?」
「……意思がどうとかは知らないけど、あれが最低にロクでもないってことは間違いないでしょうね……!」
小さなジフテリアの呟きに、物凄い剣幕を見せるイヴェッタ。
彼女の順風満帆の人生――とは言えそれもロクでもないのだが――は、あの黒嵐によってぶち壊されている。しかしそれが目の前に現れようとも今は手の出しようもなかった。
だからこそ、イヴェッタの苛立ちはそれこそ炎のように、強くなるばかりだった。
「ここは廃墟で、外に人も物もなかったから、この程度の数、なのですよね」
ぼうっと敵の陣容を見ながら、ぼんやりと声を発したのはナイだ。
窓の外から、世界を見る。
荒廃し尽くした世界を。
「運よく、直撃はしなくても、外で多種多様なオブリビオンが生まれていて、地獄のよう、な? 私、この世界、数年前……?」
「……ナイ?」
「っと」
前方を見つめたまま思考の渦に呑まれていたナイが、ジフテリアの声で我に返る。
「さぁ! 誰かいるなら出てきやがれー!」
「蒸し焼きか? 炙られたいか? 好きなほうを選ばせてやる!」
火炎放射器を手に迫る敵の群れは、もう数mそこまで近づいていた。
「今は食糧、守らなければ!」
「私もいくわ! あいつらで気晴らししてやる!」
ガラスが砕ける音を高らかに響かせて、ナイとイヴェッタが窓から飛び出す。
すぐさまフレイムアーミーの放射器が集中するが、それが火を噴く前にイヴェッタは瞬時に耐火作業着に換装。ナイも自身の前にオーラの防壁を展開した。
業火。視界いっぱいを埋め尽くす業火が二人をさらう。
しかし、二人の体は前に進んでいた。
「まさか工業職の体験が戦闘に役立つとはね……世の中分からないものだわ」
「このまま、押し返し、ましょう!」
力尽くで炎を突破し、フレイムアーミーの群れに突っこむイヴェッタとナイ。身を挺してい炎を防いだ二人の進撃に押されて、敵の前線も一気に下がってゆく。
「相手は二人だぞ! 囲め囲め!」
「火力全開で焼却だぁ~~!!」
敵の一人が声をあげると、兵士たちはナイたちを囲むように位置取りを始めた。
その場にいる数は敵のほうが多い。それは当然の対応だろう。
――が、戦場にやかましく響いた声が、許さなかった。
『アハハ! 待ってました~っ! ここからは好きにさせて貰うよ』
「なっ……!?」
「う……上から瓦礫がギゲェッ!?」
重く大きな音が無数に響き、同時に散発的に大地が揺れる。
瓦礫が、一帯に降りそそいでいた。
巨大なコンクリ片が隕石のように落ちて、兵士たちを圧殺しながら砕け散る。その破片がまた兵士たちに激突して頭や足を潰し、当たらずとも彼らの視界でノイズとなってゆく。
『いいね~。爽快♪』
愉快に笑う声は、トーンだ。フェーリを放っておいて戦場を好きに飛ぶ霊は、得意のポルターガイストで兵士たちを殺しまわり、哄笑していた。
上方からくる攻撃に、敵群は視線を上げる。
「瓦礫が落ちてくるぞ!」
「潰されるな……上に注意し――」
仲間に警告を発しようとした兵士の、声が途切れる。
その背中に、大きな鉄輪がくっついていた。
正確に言えば――鉄輪に刺さっている禍々しい棘が、兵士の胸部を惨たらしく貫いていた。
「上を向いてくれるってんなら、そうしてくれ。そうすれば楽に仕留められる」
盛大に血飛沫をあげて倒れる兵士に言い捨てるジェイ。
空中を飛ばすことができる拷問器具『荊棘王ワポゼ』を、ジェイは無数に投げ飛ばした。彼の思い通りに鉄輪は軌道を変え、落石に対応しようとした兵士たちを次々に刺し貫いて絶命させてゆく。
「う、上だけじゃねえ! 横から飛んでくるのにも注意しろぉ!」
「いやそれだけじゃねえぞ! ちょこまか動いてる奴も……」
「……」
混乱を深めてゆく兵士たちの間を、しなやかに縫ってゆく人影。
黒髪をなびかせて風のように駆けるのはフェーリだ。トーンが好きに暴れる一方、フェーリは少しでも廃墟内の食糧に被害が及ばないよう、敵陣の攪乱に専心していた。
「消し炭にしてやるぜぇ!」
「……!」
駆け回るフェーリの行く手に先回りした兵士が、火炎放射器をかざす。
その瞬間、兵士の手が吹き飛び、ノズルが宙に跳ねあがった。
「ぐおおおおっ……!!?」
手首から先が消えた腕を押さえ、その場に蹲る兵士。フェーリが見下ろすその前で、彼の頭は飛来した弾丸で砕けて赤い花を咲かせた。
フェーリは射撃が飛んできた方向に、振り向く。
「気が取られてる敵は撃ちやすくていいね」
子供用にリサイズされたスナイパーライフルに、弾を再装填するジフテリアがいた。廃墟内から長い銃身を突き出して、サバイバルガンナーは巧みに敵の数を減らしていた。
そして、射手は彼女だけではない。
「食糧に手は出させない……!」
廃墟を少し出たところの瓦礫の陰から、ヴェロニカが自動小銃『AK-74改』をぶっ放していた。自慢の速射性能がばらまく銃弾が兵士たちの体を引き裂き、合間に放られる柄付きグレネードがまとめて吹き飛ばす。
盛大な、火力援護。
ヴェロニカが撃ちこむ火力の中を、フェーリが駆けまわって攪乱し、ジフテリアが要所にピンポイント狙撃を入れる。
その見事な攻勢に、フレイムアーミーたちは完全に後手に回っていた。
「くっ、燃やされるだけの連中が面倒な!」
「火を撒け! 炎が昇れば身を隠せる! 向こうも動き回れねえ!」
抵抗の一手。
兵士たちが燃料のゲルをばらまき、辺り一帯に命中度外視の火炎を放つ。すると地面から数mもの高さの炎が上がり、周辺は火の海になった。
その火勢は凄まじく、高熱が急速に廃墟へと迫る。
巨大な炎の渦から一滴の炎がこぼれ、ついには廃墟の壁にすら届こうとした。
廃墟の中で待機していた鶯は、その刹那にため息をつく。
「折角持って来たのに焼き芋にされたら意味無いじゃん……」
鶯の手が、大量の芋を運んできた巨大馬車に触れる。すると馬車は瓦解して、瓦礫のバリケードと化して炎を食い止めた。
「応急処置。だけどこれじゃまだ不安だね~」
おどけるように言ってみせた鶯が、どこか悪戯っぽく口角を上げる。
「コンクリートでプロテクトしちゃおうか」
鶯の口から発せられた何気ない言葉が、空間に染みわたる。
途端、地面から分厚いコンクリート壁が植物のように生えだした。みるみる育つ壁は集積された食糧を囲いこみ、炎への頑強な砦が生みだされる。
その砦につけた足場を伝って、鶯ははるか高くまで登り、戦場が見渡した。
炎、炎、どこまでも。
眼下には敵が放った炎が溢れていた。足の踏み場もないほど、というやつだ。
「ヒャハハ! 燃えろ燃えろぉ!」
「へ〜なるなる薬品とかも併用して燃やしてんだね〜」
兵士を眺めながら、呑気に関心を示す鶯。
だがもちろん、火の海を観賞するために登ったわけではない。
「とりあえず……消火と行きますか〜」
再び、鶯の言葉が空間に浸潤する。
戦場の直上、空中に染み入った言霊は――巨大な水の塊を、現出させた。
ゆらゆらと中空に揺らぐ水球。
「それじゃ、消火開始」
鶯が指を下に向けると、留まっていた水は堰を切ったように落下した。
「な、何だ……水が……!」
「流されベバッ!?」
総量60tにも及ぶ水は地に落ちるなり四方へ激流を走らせる。重い瓦礫すらも押し流す力は易々と炎を鎮火させ、同時に兵士たちの命までをも呑みこんでゆく。
「畳みかけるなら、今が好機ね!」
退避して水流をやり過ごしていたイヴェッタが声をあげ、すでに半分ほどに数を減らしたフレイムアーミーに突っこんだ。
「クソッ……やられやしねぇぞ!」
「どいつもこいつも燃やし尽くしてやるぜぇ!!」
敗勢にある己を鼓舞するように叫び、兵士たちが火炎放射器を掲げる。
するとまるで風船が膨らむように放射器が巨大化。背負ったタンクまで身の丈を超えるほど大きくなり、その増加した燃料でもって大量の炎を四方に吐き散らした。
身を焦がすほどの大火が、空気を焼く。
だが、廃墟内のジフテリアは冷静にスナイパーライフルの照準を定めた。
「巨大化したタンクか――いい的だよ」
少女の指が、引き金を引く。
一直線。銃弾が飛んだ。
燃え上がる炎を突き抜けた弾は、巨大化した燃料タンクに命中して盛大に爆発させた。さながら映画のワンシーンのような爆炎が兵士を呑みこみ、吹き飛ばす。
「ぐおお……ッ!?」
爆発に巻き込まれずとも、近くにいた兵士たちも爆風に体を煽られる。
イヴェッタは彼らの隙を捉え、即座に荷電粒子砲を取り出し、構えた。
「SNSの皆、電力を借りるわよ!」
自身に埋めこまれたソーシャル・ネットワークサーバーを介して、荷電粒子砲に人々からの電力が凝縮される。
青白く煌めく砲口が狙うのは――やはり燃料タンク。
「わざわざ狙いやすくしてくれるなんて、ご苦労様!」
一閃。
迸ったレーザーが燃料タンクを貫き、誘爆を引き起こす。イヴェッタは放出したままのレーザーを剣のように振るい、次々と近くの兵士たちのタンクを爆破してゆく。
爆炎と轟音がひしめく戦場。
大打撃を被ったフレイムアーミーは、大混乱に陥った。
「くっ、視界が利かねぇ!」
「いったい何がどうなってんだァ!? こっちは何人残って――」
「一人も、残りません!」
「あぁ。全員ここで死んでいけ」
狼狽えていた兵士たちの背後に忍び寄ったのは、ナイとジェイ。
流れるようにジェイの殺戮ナイフが兵士の喉笛を切り裂き、ナイの手首から伸びた黒剣鎧の刃が背中から心臓を貫通する。
あっという間に兵士二体の命を刈ると、二人はさらに混沌の戦場を暗躍した。
「食糧を運ぶ邪魔を、するなら、消えてもらいます!」
両の手首から突き出させた黒剣で、兵士たちを次々に刺し貫いてゆくナイ。
「ぐが……ッ!?」
「こ、こいつ……強……」
首や心臓を一突き。急所を外しても、肉を刺した刃が生命力を奪い取る。ナイが通れば兵士たちは成す術なく倒れ伏し、戦場の炎に焼かれるのを待つだけの屍と化した。
一方、ジェイもまた屍の山を築いていた。
ただし、手ずからではない。
『この世の恐怖、味わってみるか?』
「な、なんだそいつは……うようよと!?」
問いを口にしたジェイの手で、青黒き正方形――『厄災の匣ハヌヱ』が開く。
どっ、と黒い波が溢れた。夥しい数の虫だ。匣から出てくるなり黒燐虫は地面を這い、フレイムアーミーの体に群がっていた。
「や、やめろォ……やめろォォォォーーーー!!」
「来るなアア……!! ……ァァ…………」
肌を破かれ、肉を喰われ、兵士たちが虫に埋め尽くされたまま倒れる。
炎で焼き払おうとも、そのたびに匣は虫を吐き出した。無限に湧き出る蠢く闇の前に、兵士たちは抗うこともできず、無惨な死に姿を晒すのみだった。
次々に仲間の声が減ってゆくことに、兵士たちはようやく戦慄する。
「このままじゃ俺たちも死んじまう……!」
「退くぞ! いったん後退して立て直すんだ!」
留まってはまずいと判断した兵士たちが、踵を返して走る。今でこそ炎に魅入られた狂人ではあるが元は軍人だ。撤退の動きは淀みなかった。
だが先頭の一団が炎の領域から抜けようとした瞬間、トーンの笑い声が降った。
『今更逃げるんだ? アハハハ!! そんなの許すわけないよね~?』
「ぐっ……!?」
「何だ……体がふらつく……!」
それまでまっすぐに走っていた兵士たちの進路が、右に左にと逸れてゆく。
まるで酩酊しているかのように。
まるで何十回と回転した後かのように。
『あ~これでもう逃げられない。絶体絶命ってやつだね!』
トーンの嘲笑が響く。
この笑声が、兵士たちの後退を阻んでいた。トーンの声が超音波のように彼らの脳へ影響して、まともに歩けぬほどに平衡感覚を狂わせていたのだ。
ついには膝をつき、敵群は完全に止まった。
そこへ、ヴェロニカは自動小銃を放り捨てて、吶喊する。
右腕から眩いほどの電光を閃かせながら。
「食糧を待っている人々の為なら……腕の一本や二本くらい安いもんだよね!」
『やっ! やめ――』
跳躍したヴェロニカが振り下ろす右腕を見て、兵士たちはわずか先の未来を察して手を振った。命乞いをするように。
しかし次の瞬間、ヴェロニカの右腕は莫大な電気を放出していた。
溢れだした電撃のあまりのショックに、デッドマンの右腕が爆ぜる。だが同時にスパークが一気に広域を包みこみ、地面すら揺らすような電撃が兵士たちの燃料タンクをひとつ残らず撃ちぬいてみせる。
無数の燃料の、一斉爆発。
天まで届きそうないくつもの火柱は、オブリビオンを殲滅した証だった。
「さて、それじゃ行こっか」
「そうね。早いとこ食糧を届けないと」
瓦礫で再び巨大馬車を作り出した鶯の言葉に、こくりと頷くイヴェッタ。
目指すは人々が救援を求めている拠点。
静けさを取り戻した荒野を踏んで、猟兵たちは守り切った物資とともに出発した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『井戸を掘ろう』
|
POW : 力仕事で、井戸を掘りまくる
SPD : 手押しポンプを用意したり、用水路などの施設を準備する
WIZ : 人々から昔の話を聞くなどして、水脈のありそうな場所を調査する
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「こ、これは……! いや、というよりも、あなたたちは……?」
「こんなに多くの食糧……本当に我々にくれると言うのか!?」
拠点に到着した猟兵たちを迎えたのは、人々の驚きと感謝がない交ぜになった顔だった。
荒れ果てた世界に、余裕ある者などいない。
それは考えずともわかる現実である。だからこそ物資を持ってきたという猟兵たちに対して彼らは驚き、命を繋ぐ食糧に泣いて喜んで頭を下げた。
中央にある広場には、多くの人々が集まっていた。
水で紛らわせていた空腹に食べ物を詰めこむと、徐々に活気も蘇ってくる。
肉や魚、芋や果物、多様な食べ物は人々に物質的な栄養だけでなく精神的な栄養も与えていた。久方ぶりの『美味い食事』に特に子供たちは大いに喜んだ。
もちろん、猟兵が持ちこんだ保存食や薬も喜ばれた。大人たちはそれらが如何に自分たちに必要であるかを理解しているからだ。特に探索に出る奪還者(ブリンガー)たちはしばらくは無理をしなくてよくなったことに感謝した。
――だが一方で、彼らの表情には少しばかりの陰りもあった。
猟兵たちが探りを入れると、小銃を携えたサバイバルガンナーの男は、干し肉を噛み千切りながら胸の内を語った。
「今回はさすがに参った。化け物や賊どもならこの銃で相手ができるが、空腹ばかりはどうにもならないからな。あんたたちのおかげでしばらくは食い物に困らんだろうが……それが尽きたらって不安は拭えんよ」
情けないがな、と乾いた笑いを浮かべる男。
食糧がない極限状況――それを経験したことで、人々の心には大きな不安が染みついていたのだ。またいつ自分たちは追いこまれるかわからない、と。
猟兵たちは思案した。
自給自足ができれば安心を得られるだろう。
しかし荒れ果てた大地に作物が根付くかはわからない。仮に作付けできたとしても収穫はずっと先だ。どのみち外に探索に出るしかないだろう。
だがここで、猟兵たちは思いついた。
水ならば確保できるかもしれない。
この拠点は飲料水も奪還者の持ち帰りに頼りきっている。今回は食糧が先に底をついたが、次は水がなくなるかもしれない。それはきっと食糧不足よりも厳しい状況だ。
もし拠点内に水源を確保することができれば――。
猟兵たちは、自分たちが持ちこんだ食糧を笑顔で食べる人々を見渡して、決意した。
この拠点に、井戸を掘ろう!
ジフテリア・クレステッド
※アドリブ・連携歓迎
井戸……?そう簡単に出るものかな……。
でも、外の世界から来た猟兵たちの力はこれまでの流れで分かってるし、もしかしたらやってくれるかもしれないね。
―――うん、正直に言うよ。私、井戸作りと言われてもやれることが一切ない……!
ただ、まあ、井戸作りなんて大仕事をするに当たって怪我人が出たりするかもしれないし、【医術】で応急処置とかができるように備えておこう……。
後は……事故が起きた時に【救助活動】ができるよ……ネガティブなことが起きない限りは活躍の場がないね。
サボりだと言われるのは……いや、この場合はサボりだと言われるぐらい順調な方がいいのか。うん。というわけで何もなければサボる。
フェーリ・アイ
(言葉は発せず、霊の声は制御不能
OPのみ記憶を共有
人格:ネズ)
物資はある!人も無事!
敵はもういない!いやっほー!
井戸を掘るんだね
ダイアリー・キーの中から必要な道具を出してガツガツ掘ろう
掘削機は初だけど、余ってるエンジンにドリル取り付けて、
深く掘るごとにその辺の鉄骨を継いで伸ばす
ついでにベルトと土砂を運ぶバケツを歯車で繋いでいけば上等だろ?
でもその前にダウジングで掘る場所も絞っとかないとな
温泉出れば最っ高♪
『アイは幸運に期待する夢見がちなんだってさ』
いいんだよ。夢は弱い人の生きる助けになるから
大人子ども関係なく、悲しそうな顔してる人の頭はポンポンって撫でちゃうぞ~
にっこりして欲しいな(にこにこ)
ナイ・デス
私達、猟兵だけで……いえ。皆さんも、一緒になって井戸、できたほうが、達成感とか、あっていいですか、にゃ?
【医術】で見抜いたり、不調あると自分で思う人、集まって……
拠点の人、全員集まっても三桁いない、ですか。なら全員まとめて、いけますね
『生まれながらの光』で、ベースの人、全員まとめて包み、健康体にします
健康で、しばらくの物資もある、今
未来も明るく、なるように。色々、がんばってください、です
……私は、ちょっと、休憩、にゃー
井戸ができたら、お水ちょっと、ください
……ありがとう、です。疲れが、とれたので
この大地も、できるだけ、癒しましょう……!
米俵の藁まいて、大地と一緒に再生
稲穂実る大地、戻しましょう
ヴェロニカ・ナシーリエ
アドリブ・協力歓迎です!
WIZを選択
確かに水は大事だよね。
盲点だった…
まぁ…水を持って来たとしても、すぐ無くなるし…
うん、これで良かったんだよね。
行動
私は水脈がある場所を知っていそうな人を探して話を聞いてみようかな。
… この腕じゃ力仕事や道具の準備は無理そうだしね。
探すのは〈第六感〉でそれっぽいと思った人、なるべくお年寄りを中心に探してみよう!
会話する時は狐の面を付けて行うよ。
失礼だとは思うんだけど… これが無いとまともに話が出来ないから…
あ… 腕なら大丈夫だよ!
薬は塗ったから、そのうち再生するよ!
イヴェッタ・レチアーノ
荒廃前は蛇口から水出したり川辺を歩いたりと
水が身近にあってくれたのを思い出したわ
井戸という身近にある水で少しでも安堵感が欲しいわね
井戸を掘って作る過程を子供達にも開発現場を見せて勉強させたいわね
大人達や子供本人の承諾を交渉するけど
荒廃した世界だからこそ勉学や情報は一人でも共有させたいのよ
どうかしら?
にゃ口調が恥ずかしいけどオルタナティブ・ダブルでもう一人の私が井戸開発の説明と子供達の面倒を担当
私がオール・ワークス!でドワーフメイルによるトンネル掘りで井戸掘りしたり
板金鎧による怪力で井戸設置に必要な道具や施設を準備する肉体労働するわ
今後修理が必要ない位しっかりした井戸にする為に手を抜かないわ
「こんな世界になる前は、蛇口から水が出たし、川辺を散歩したものね……」
つい数年前までは、この世界にも不自由ない暮らしがあった。
人生をかなーりエンジョイしていた昔を思い出して、イヴェッタは生存者たちを見る。腹が膨れた分の生気は戻っていたが、それでも晴れやかな笑顔とは遠い。
「井戸っていう水場があれば、少しは安堵感も抱けるかしらね」
「水は大事ですからね。今回みたいに持ってくることができても、いずれはなくなるし……うん、やっぱりいつでも使える水場がほしいですよね!」
だらりと右腕をぶら下げたヴェロニカが、左手をぎゅっと握る。
井戸が完成し、水不足の心配がなくなれば人々の気分も変わるだろう。
だがジフテリアは、少し懐疑的だった。
「ないよりはあるほうが心強い……けど、そう簡単に水が出るものかな……」
都合の良いことはありえない。
この世界に生まれ落ちた彼女はそれを身に染みて悟っていた。
万事がうまく運ぶなら、アポカリプスヘルが猟兵たちと繋がった時点で物資不足は解消されているし、自身も周囲を汚染するようなカラダにはならなかっただろう。
だから、都合の良いことはありえない。
――しかし、ジフテリアは『それでも』とも思う。
「外の世界から来た猟兵たちの力なら、もしかしたらやってくれるのかな?」
「――!」
彼女の隣でニッと笑顔を作ったのはフェーリ――の別人格のネズである。
何も話さないので、人格のスイッチを一目で把握するのはほぼ不可能だ。しかしほとんど表情が動かないフェーリに対してネズは見るからに朗らかだった。
もうダウジング棒とか持っとるもん。
「――!」
『まーったく子供っぽいよねぇ、アイはさ』
「いってらっしゃい」
水源を探し当てる旅に出発するネズ。傍にいるっぽい霊体に何か言われてる後姿をジフテリアは手を振って見送った。
一方、拠点内をうろうろするヴェロニカ。
「井戸を作るにも水脈を見つけないとだよね……この腕じゃ力仕事はできないし、せめて情報収集をがんばろう!」
張りきるヴェロニカは――しかしなぜか狐の面をつけている。
説明しよう!
ヴェロニカは高レベルの人見知りなのである!
コミュ力が上がる狐面を装備していないと、知らない人と話すとか一言だって無理だった。
「えーっと、おばあさんおじいさん……」
きょろきょろとお年寄りを探すヴェロニカ。
水脈とか知ってそう、という直感的な思考である。
しかしお年寄りであれば、遠方から逃げ延びたのではなく元から近辺に住んでいた可能性が高いので、割と理に適っていた。
「あ、すいませーん!」
「……んん? おや奇妙な……」
日当たりの良いベンチに座っていたお婆さんに駆け寄るヴェロニカ。狐面をつけてるもんだからお婆さんは訝しげな顔をしたが、ヴェロニカは何とか警戒を解いて耳寄りな情報を手に入れた。
「そういえば、昔は井戸があったとか親に聞いたような……」
「そ、それどこにあるのかな!?」
(「なるほどダウジングも反応してる気がする! 間違いない!」)
「水あるのかな? その反応はあるってこと?」
地面に向けたダウジング棒をぷるぷるさせるネズの横で、ヴェロニカが逸る。
彼女が持ってきた情報から、猟兵たちは拠点の南側に来ていた。閉鎖した商店やらが並ぶ区画を探索すると、お婆さんの言葉どおりに井戸の名残が見つかったのだ。
とはいえ、井戸の残骸のように見えるというだけで、地面に穴があるわけでもない。
「掘ってみないと、わからないですか、にゃ?」
「見た感じ、そうみたいだね」
下を向いててくてくと歩き回ってきたナイに、淡々と頷くジフテリア。
ひとまず目途はついた。あとは掘ってみてのお楽しみである。
(「よっし、それじゃ地面を掘ってみようか!」)
首に提げていた古めかしい鍵を取り、持ち上げるネズ。
およそ現代の錠相手では使いようもないそれをひと振りすると、ネズの足元にゴトンと音を立ててドリルが落ちた。もうひと振りすると今度はエンジン機構。
それを器用に繋げると、即席の掘削機の出来上がりだった。
(「作業開始ー!」)
ガガガガガッ!!
とドリルで地面を掘り起こすネズ。やかましく暴れるドリルを何とか制御して、硬い地面を土砂やら粉塵へと分解してゆく。
――その様子を、集まった子供たちが耳を押さえつつ眺めていた。
「うるさーい」
「でもすごいね。どんどん穴ができてるー」
「あれ何してるのー?」
「はい! そこのあなた良い質問ですにゃ! あれは井戸を掘ってるのにゃあ♪」
「イド?」
「簡単に言うと水が出てくる穴にゃ」
「すげーー!」
元気な子供たちの相手をして、校外学習よろしく説明しているのは、またまた登場したイヴェッタのダブルである。
こんな世界だからこそ後学のために――とイヴェッタは見学を提案していたのだ。
「水って地面掘れば出るのー?」
「どこからでも出るわけじゃないにゃ。ポイントの見極めが肝心なのにゃ!」
(「……子供たちも興味持ってくれたみたいでよかったわ。死ぬほど恥ずかしいけど」)
ダブルと子供たちの横を通過したイヴェッタが、ちょっとだけ頬を綻ばせる。
両脇には大きな石を抱えていた。頑丈な井戸を作るための石材として、拠点外で適当に見繕ってきたのである。
ネズが掘っている穴のそばに石を置くと、イヴェッタは進捗具合を見下ろした。
穴はもうかなり深い。ネズが鉄骨で延長したドリルは、もう3、4mほどの長さだ。
「順調みたいね。これは彫り出した土砂? 邪魔だから向こうに運んでおくわね」
(「ありがとー!」)
積んでいた土砂を適当な入れ物で運び出すイヴェッタに、ぶんぶんと手を振るネズ。
そんな二人の肉体労働によって、井戸掘りは滞りなく進んでいた。
細長い銃口の先が、地面の上にかりかりと何かを描く。
ジフテリアは数人の幼い子供たちに囲まれて、狙撃銃で絵を描いていた。
完成したのは、井戸の構造図。
「簡単にするとこんな感じ」
「へーっ」
「落ちてもだいじょーぶ?」
「落ちたら死ぬ」
「「えーーっ!?」」
抑揚のない言葉で子供たちをビビらせるジフテリア。
別に率先して子供と触れ合おうとしたわけではない。
井戸掘りと言ってもやれることがない、と隅っこでサボタージュしていたら、ガスマスクを面白がったキッズに絡まれていたのだった。
「おねーちゃんは、いどほり? しないの?」
「特に手伝えることもないからね。私は救護係として待機」
不思議そうに見てくる女の子に、簡単な医療具を見せるジフテリア。
「きゅーごがかり?」
「怪我人を治すお仕事だよ」
「じゃあケガしてる人、さがしてくる!」
「別に無理して探さなくても……」
止めようとするも、女の子は風のようにジフテリアのもとから駆け去った。
そして結構、頑張った。
二分後、女の子は――。
「ケガしてる人ー!」
「え、えーと……?」
右腕がボロッボロになってる狐面の女を笑顔で連れてきていた。
言わずもがなヴェロニカである。
無理やり連行されて困惑気味のヴェロニカである。
「治すって言ってもこのレベルは……」
「薬を塗ったから大丈夫って説明したんだけど……」
自慢げな女の子を挟んで、なんか気まずく相対するジフテリア&ヴェロニカ。
どうしたものか。この右腕は治せないと言うべきか。しかし女の子が褒めてほしそうに胸を張っている。無駄だったって知ったらがっかりしそうだ。あ、これ詰んでる。
とか、ジフテリアが無言で思考していた、そのときである。
「あ、脚が動いたー!」
「なんだか気分がすっきりしてきたわ!」
「体が軽くなったような……これなら井戸掘りも手伝えるぜ!」
わーわーっ、と大きな歓声が、向こうの人だかりから聞こえてきた。
口々に体の快癒を叫ぶ彼らの中心には、眩くも柔らかな光が放たれていて、それが人々の間を抜けてジフテリアたちのところまで照らしている。
その光源は、ちょこんと座ってるナイだった。
「皆さんの、不調、晴れましたか、にゃ?」
「ああ! すげえなあんた!」
「聖者様だわ! いや天使様ね!」
「い、いえ、あの……」
ユーベルコードの光を発しながら、歓喜した人々にわしわし撫でられるナイ。
生存者たちも井戸掘りを手伝えれば、達成感も得られて良いのではないだろうか。
そう考えて、ナイは拠点の人々を集めてユーベルコードで治癒させたのである。
だが代償もある。数十人を一斉に治療したナイには、彼らの感謝感激のなでなでを回避する体力は残っておらず、撫でられるままこてんと横倒しに。
「ど、どうしたの!? 大丈夫!?」
「大丈夫、です。ちょっと、休憩させてください、にゃー……」
膝を抱くように体を丸め、すやぁするナイ。
その様子を遠巻きに見ていたヴェロニカは、ハッと気づいて自分の右腕を見た。
「あ、ついでにわたしの腕も治ってたみたい!」
「えーすごーい!?」
「こっちに連れてきたおかげかもね」
「やったー!」
ぱちぱちと拍手するヴェロニカとジフテリアの周りを、女の子は小躍りして走り回るのだった。
猟兵らの井戸掘りが実を結んだのは、それから1時間ほど経ったときだった。
「――!」
ネズのドリルが地下の一点を穿つと、染み出すように水が湧いたのだ。少し掘り広げれば湧き水は勢いを増して、なみなみと穴底を満たした。
穴が崩れぬよう内部に石を積んでいたイヴェッタは、足元から昇る冷気を感じて微笑。バケツ一杯分の水を汲んで地上に戻って、人々の前で盛大にぶちまけた。
「水よ! 飲めるぐらい綺麗な、ね」
途端、空気が弾けたかのような歓声が響く。
濡れた地面を裸足で踏んで遊ぶ子供たちを見ると、悪い気分はしないイヴェッタだった。
もちろん、一仕事を終えたネズも。
『ほんっとに水が出ちゃったよ。地面を掘ったら水がー、なんて夢みたいな話をよくまあ実行しちゃったもんだね~』
(「いいんだよ。夢は弱い人の助けになるから」)
つまらなさそうなトーンの小言に、心のうちで言い返すネズ。
イヴェッタが見ている子供たちを彼もまた、ニコニコと笑顔で眺めるのだった。
「……お水、美味しいです、ね。ありがとう、です」
「どーいたしましてー!」
飲み干したコップを返して、子供に丁寧にお辞儀をするナイ。
疲れてぐったりしていた体は、地中から湧いた冷たい水ですっかり元気を取り戻していた。
水の美味さもある。
だが何より、この大地に残る活力を感じられたような気がしたのだ。
「まだ、希望はあります、にゃー」
心配して水を持ってきてくれた子供たちを連れて、ナイは広場に向かった。
仮の食糧集積所となっているそこには、彼が持ってきた米俵も積まれていた。空っぽの俵を見繕うとナイはそれらを大量の藁にバラして、子供たちに配った。
「たくさん、この地に、まきましょう。きっと、稲穂実る大地、戻りますから」
「地面にまくの?」
「うん、わかったー!」
ナイの言葉を聞いて、子供たちが一斉に手を振り上げる。
荒涼の大地に今一度。
素朴な希望の匂いが、涼しい風に乗って流れていった。
大成功
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