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希望と誰かが呼んだもの

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●底
 暗い。寒い。痛い。いや、その辺りは、既に慣れた。結露滴る牢の中、鎖に繋がれた少女はひどく大人しく膝を抱えていた。今日は、天井から落ちる雫の数を数えていた。ぴちょん、ぴちょん、今の少女の世界には、数少ない綺麗なもの。
 そんな音色も、すぐに掻き消される。通路奥の扉が、けたたましく開いたのだ。反響は硬い部屋を震わせて、雫がざらざら降り注いだ。
 足音が近付いてくる。少女は『恐怖』と呼べる感情に身を緊張させる。とは言え、その恐怖すら、少女が抱くには余りにも『諦観』に近かった。
 今日もひどいたわむれ事をされるのだろうか。痛い事だろうか。それとも酷い食事に口をつける様子を嗤いに来たのだろうか。
 ああ、暖かいスープが食べたい。お母さんに抱きしめて欲しい。怖くないよ、って、震える腕で言って欲しい。困ったことに、『寂しい』には、こんなに経つのにまだ慣れていないのだ。

●浮上
 「緊急収集、緊急収集。美少女を助けに行く仕事だぞぉ」
 己のグリモアを手遊びに回しながら、グリモア猟兵の多々羅・赤銅(ほふり・f01007)は獰猛な鬼の眼をしていた。冗談めかしてすらいる声掛けに立ち止まる猟兵ひとりひとりに、己の怒りを託すように見つめた。

 「さっさと向かって解決して欲しいし、手短に行くよ。行き先、ダークセイヴァー世界。仕事内容、地下牢に囚われてる少女を助け出し、クソッタレな諸悪の根源オブリビオンをブチのめしてくる事」
 少女は、近郊の村の長の娘であり、人質だ。村を恐怖で支配しているオブリビオンが、村で好き勝手暮らす為の、人質だ。オブリビオンはのうのうと搾取し続けるが、その代わりに少女は生きていられるのだ。暗く冷たい地下牢で、気まぐれに弄ばれながら。
 「牢の場所は分かってるが、ここに入る方法は、猟兵に任せることになる。頭が回るやつなら門番を騙すも良いし、手癖が悪いなら鍵を盗み出すのも良いだろ。ああ、最終的に人質を助けられれば良いんだ、正面突破だって良い。なんだって良い」

 オブリビオンが何者であるが、どこに潜んでいるかは、予知の範囲では不明だ。だが。
 「その辺は、現地で掴めるだろ。少女だって、長のやつだって、住民だって。ビビリ散らしてるが、助け出せば協力してくれるさぁ」
 先ずは。少女の奪還に全てを注いで欲しい。
 任せたぜ。赤銅は低く紡ぐ。
 さあ。絶望に抗っても良いという事を、怯える者達に伝えに行こう。


小林
 はじめまして、こばやしと申します!
 熱い冒険をしに行きましょう、絶望の底をいざ灯せ!

 少女のいる場所は村近郊の、森奥の牢屋です。 そこまでは問題なく到着できます。
 村を脅かし、搾取し、好き勝手に暮らすオブリビオンの居所を突き止め、打破を目指しましょう。

 それでは、プレイングお待ちしております!
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第1章 冒険 『拷問地下牢』

POW   :    正面突破で拷問地下牢を破壊して重要人物を救出する

SPD   :    鍵を盗み出すなどして秘密裏に重要人物を救出する

WIZ   :    牢番や拷問吏を騙して重要人物を救出する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

寧宮・澪
あー……ぬくぬく幸せに寝れないような、環境は、めっ、ですよー。
そですね、牢番だまして道を開けてもらいたいですよ。
エレクトロレギオンを使用して、牢から離れた場所で騒ぎを起こしましょー……。
その後牢番に「あっちで騒ぎが起きてますよー、何か討伐隊でしょうか…」って村人っぽい格好で誘き出します。
うまく行けば牢番は捕まえちゃいますー、レギオン50と私で罠にはめちゃう感じですね。
うまくいかなくても、んー、一瞬注意はそらせるでしょか。
そしたら他の人が抜けやすいかもですね。



森奥へ続く一本道。牢を見つける事は、こんなにも容易かった。門番が複数立っている。……いや、座って、遊んでいる? 暇、なのだろう。無理もない。されど複数の見張りを置き続ける厳重さは、この奥にいる人質の価値を示していた。
 陽の届かぬ濃い森は、外の明るさに応えない。こんなにも、暗く、冷たい。ならば、この、牢は、尚の事。澪はあたたかな布団恋しさに、乾いた鼻を物寂しく鳴らす。

 「お仕事ですよ、れぎおーん……」

 眠たげな、どこか子守唄のような声に呼ばれるは、50体のエレクトロレギオン。その小さな戦闘兵器が軋む音は幾dB。さあ、騒いで。主人の指示を受けたレギオンは、一斉にその場での行動を開始する。まるで目覚ましベルのぶつかり合いが如きけたたましさに、澪は一目散にーー己の耳も塞ぎながら牢に向かう。

 一方、牢前。退屈を持て余すも真面目な見張り達は、あくび混じりにトランプなどしていたが。奥から聞こえる騒音に気付かぬほど愚かではない。二人が立ち上がる。
 「なんだぁ?」
 「やたら騒がしいな……ひょっとして、反逆でもする気かね」
 「まさかぁ。『あの方』に逆らおうなんて、度胸、あの村にあるもんか」
 「その、まさかで、ございましてぇ……」
 突如混じった女の声に、男揃いの見張り番たちは素直に驚きの声が上がる。
 澪はブランケットを羽織り、森の暗さも相待ってみすぼらしい村人のような外見を仕立てている。
 「反逆隊、いえ、討伐隊……か何か、でしょうか……」
 「討伐隊……『あの方』がそんなもんに負けるとは到底思えないがーー」
 「だからってほっといて叱られるのは御免だぜ。追い返しに行こうや」
 「それもそうか。おい女、その詳しい位置は分かるか?」

 ふわり、重力を帯びない澪の声は、ある者には怯えた女の声に聞こえた事だろう。静かに歌うように、眠る前のように、澪は応じた。
 「ご案内、致します」
 立ち上がった見張り番二人を、50体のエレクロトレギオンの待つ場へと。

成功 🔵​🔵​🔴​

リオット・ノンスターク
「……護りがあると言うのは、少々厄介か。ふふっ、良いだろう。存分に暴れられる機会に感謝するとしようか!」
牢屋から少し離れた地点で【グランドクラッシャー】を使用し、牢番達の注意を惹き……接近しようとする敵対者を各個撃破する!
あくまでも牢の周囲に存在するオブリビオンに対する陽動……。
出来うる限り音を鳴らし、土煙を上げ、敵を引き付けられるよう努力しよう。
「さて……死を競い合おうじゃないか? 一方的になると面白くない……お友達を連れてかかってくると良い」


夢飼・太郎
 保護対象が割れてるなら苦労ねぇ。門番が1人なら、適当な方向へ石でも投げて視線を外した隙に「影の追跡者の召喚」を発動して地下牢内へ侵入させ、鍵を探させる。
 複数いるなら追跡者を囮に門番へ追わせて、残った奴は俺がブッ飛ばしたら入れるだろ。



「なんだ、数が減ってしまったな」
 リオットは森影から眺めながら、残念に思う気持ちを隠さずに零す。少女の姿であるリオットの身の丈程もある巨斧を。緩慢に、振り上げ。
 「だがーーまだまだ、私の仕事は、変わらんな。存分に暴れられる機会、感謝するとしようか!」
 第二の轟音。グラウンドクラッシャーが、一帯を激しく揺らした。轟音は頭痛へ、激震は痺れへ。直接でなくとも、それは見張り番達の体を確実に蝕む。残っている見張り番達が、一斉に武器を手に取った。
 「ち……近くにいるぞ!! 討伐隊だ!!!」
 が、その程度では、歴戦兵のリオットは止まらない。邪魔な見張り番達を引きつけるべく、巨斧を振り回す。地が割れるような力強さで。そして土ごと抉り、辺りに巻き上げる程の冷静さで。

 暗い砂煙の中。……太郎が召還したシャドウチェイサーを、その嵐の目に背負うリオットの姿は、見張りを総動員させる必要があると思わせるに、完璧だった。齢11歳の少女の姿を、影が見事に補強、怪物にしたてあげる。
 「さて……死を競い合おうじゃないか? 一方的になると面白くない……そう、もっと、集まってくれないとな」

「影なんぞ付けてくれずとも、私の陽動は充分に機能したぞ?」
 煙奥。リオットが太郎に笑う。サポートに賞賛を込めて笑う。
「最初は、俺も気を引こうとしただけだ。シャドウチェイサーの陽動なんざ、地味すぎて、アンタの派手さに呑まれちまったけど……あぁなんだよ何笑ってやがる!こんな雑魚の手助けは要らねえって言いたいんだろ、聞こえてんだよ……!」
 己の手柄にはならなかった悔しさに太郎は下を向いていた。
 「何をブツブツ言っている? そんな間にも、そら来るぞ」
 その通り。戦闘体制の見張り番達が、見掛け倒しの砂煙の化け物を討伐すべく武器を振る。術を唱える。
 「お友達の頭数はそれで全部か、悪党ども!」
 「そうか、それで全部か! ならアンタが取りこぼす分を、俺がブッ飛ばしたら完璧だな!!」

 さあ、道を開けてもらおうか!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベルゼドラ・アインシュタイン
鍵を盗み出すことくらい、俺には朝飯前だ。此処はひとまずオブリビオンに傅く従順な町娘のフリをして近付いてやろうじゃねぇの。「あら御機嫌よう門番さん、お勤めご苦労様ですわ。…ぁっ、」唐突に目眩でふらつくフリをして、門番に凭れ掛かろうとする。そっと相手の胸元に手を添えられれば此方の勝ち。指に掠めた目当ての鍵を何食わぬ顔でくすねてやろう。「御免遊ばせ。そういえば先程外でお仲間が呼んでましたよ。アナタ行かなくて大丈夫かしら?」そう言いながら相手の動きを注意深く観察する。



ベルゼドラはその騒ぎように、微かにほのかに舌を鳴らした。粘膜が口内で空気を含む程度の、ごく小さな舌打ちと呼べた。
 彼女が想定していたのは静かでスマートな鍵の奪取だ、それこそ騒ぎなんて面倒事は起こさせないような……いや、これで牢周りががらりと手空きになったのは事実だ。あとはあの扉さえ開けば良い。ベルゼドラのやる事は変わらない。一仕事終えて食べる朝飯も変わらない。黒い髪が、森の湿った空気を帯び、光も吸わずに揺れていた。鍵持ちの門番の目処はついている。動く音に混じって、鍵の触れ合う高い音が微かに聞こえていたのだから。
 それを得るために、従順な町娘……それも臆病な町娘がいいだろう。その真似事をはじめよう。

 騒ぎから逃げて来る見張りが一人いた。
 それもそうだ、鍵を持ったまま気絶に追い込まれる訳にはいくまい。自分たちを使う者に報告しようと脚を急がせているのかーーまあ。それは叶わないのだろうが。

 「きゃっ」
 「うお!」

 衝突音、黒髪の美しい町娘と鍵持ちの見張り……門番は激突した。森の深い木々の影から突如娘が出てくるなど、焦っていた鍵持ちはまず想像もしなかったのだ。
 「何だ貴様、何故こんな所に居る!」
 緊急事態に門番は問い詰める。問い詰めようとした。されど、凭れ掛かる美しい町娘の細さは、やわらかさは、湿度を含む髪は。恐怖に濡れる青い瞳は。焦る判断力を一瞬たやすく停止させた。
 「ああ、御免なさい……! まさかぶつかってしまう、だなんて。私、薬草を探していた、だけでしたの。妙な騒ぎが聞こえて、逃げようと、焦っていましたわ……」
 「そ、そそそそそうか、それは恐ろしかったろう、そうだろうとも。こちらは危険だぞ、騒ぎはあちこちで起きているからな」 
 町娘の手指は、自分を案じてくれているのだろう門番の胸元にするりと触れた。怯える者は、優しい者に触れてしまうものだと言わんばかりの、か弱き当然さを持って。
 「それは、それは。恐ろしいですわ……」
 「向こう側から逃げることだ。はやく」
 「ええ。アナタも、お急ぎでしたのに、御免なさい」
 一歩下がり、触れ合いの熱は離れる。細い指に撫でられた門番は、どんなにその女を守りたいと思った事だ。されど急ぎの身だ。二人は離れ、互いの道を行く。

 門番の足音が遠ざかった後。ベルゼドラの指先には、鍵がひとつ挟まれていた。
 「はぁ。多少予定とは違ったが……ま、問題はなかった、な」
 後は、血気盛んな者達に任せるがいいだろう。それこそ、少女に優しくしてくれそうな者達に。
 鍵を指で弾く。りん、と心地良い金属音を響かせて。弧を描いて。
 次の猟兵の手へと、託される。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

雷陣・通
父ちゃんが言っていた
女の子は力が弱いから助けてあげなきゃならないと

俺の出番だ!
敵は沢山、少女は地下牢
まともに行っても時間がかかる
ならば……

父ちゃんが言っていた!
地の利を支配するものが勝利すると!

残像を使って隙を伺いつつ、ユーベルコード「雷刃(ライトニングエッジ)」を足元に叩き込み床を粉砕!
敵の動きを封じつつ、近道を作るぞ!

「俺は雷陣・通ーーイエーガーだ!」



「ありがとう、おねえさん!」
 少年の声が溌溂と響いて。宙を踊る鍵は、まだ小さなその手に、しかと握られた。

 牢の鍵と呼ぶには小さく少ない。この、入口の扉一枚分の鍵なのだろう。ならば他の牢の鍵はどこだ。きっと、この中だ。地下だ。そのどこかだ。
 
 (父ちゃんが言っていた。女の子は力が弱いから助けてあげなきゃならないと)
 緊張感と共に、通は鍵を開く。
 中は外よりも、はるかに暗く冷たい。通の毛穴が開き、泡立ち、その毛穴にまた冷気が滑り込んで、一層寒くなる様な。
 ここは人間が長く居られる場所じゃない。
 こんなところに、女の子がいるなんて、はやく助けてあげなきゃならない。
 音が響く。中にも番がいたのだろう、下界から動く音がする。つまり俺達の突入も、知られている。
 まともに行っても時間が掛かる。

 「父ちゃんが言っていた!」
 --眩い電光が、辺りを一瞬白に染めた。光の熱が、寒さを休息に和らげる。表皮が痛む程の熱を連れて。
 「地の利を支配するものが、勝利すると!」
 ならば。

 通が握る一振りの日本刀が、電光を一気に吸い上げた。それはさながら雷神の槌の如き、神々しさとけたたましさで。床を、力任せに破砕する!
 響き渡る雷鳴、床が砕け落ちる崩壊音、それに気付く下界の叫び。あらゆる轟音を引き連れて、通は下界に着地した。水滴に塗れる床が、強い光を受けてきらきら白く照らされた。光を引き連れて降り立つ子供の姿は、悪にはどんなに恐ろしいものに映るだろう。無垢にはどんなに、美しいものに見えるだろう。

 崩壊への巻き込みから逃れた足音が集まって来る。あちゃあ、まだ少し手こずりそうかもしれない。されどまだだ、少女救出まであと一息。多少の怪我は覚悟の上だ、あと一息をひきつけるのだ。

 まだ声変わりも無い少年の声は、奥に居る少女にはどんなに懐かしい音階に聞こえるだろう。さあ届けよ、この鼓舞が!
 「俺は雷陣・通ーーイエーガーだ!!」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

三岐・未夜
この話を持ってきたグリモア猟兵が、

「……赤銅なんだもんなあ、」

行かざるを得ないじゃないか。
言葉にしないまま、陰気な黒狐は牢屋の近くの物陰に潜む。
フォックスファイアを使って、牢番を誘導してみようと考えた。この狐火、結構自由に動かせるし。ちらちら揺れる炎の明かり。この闇に閉ざされた世界では、気になるものじゃなかろうか。
牢の鍵はまあ、最悪の場合は壊してしまおう。

「…………半数ずつ合体強化、片方を誘導に。片方は手元に残して隠しておこう。鍵壊すのに必要かもだし」

うん、と頷いて、黒狐は行動に移った。


浅沼・灯人
【正面突破で拷問地下牢を破壊して重要人物を救出する】

ガキを人質に、たぁ効果的なことしやがる
早く助けてやらねぇとな

俺がやるのは正面突破
つっても、俺ひとりでは救出は困難だろう
可能なら鍵を盗めるやつ、牢番を騙せるやつと組んで行動したい
組めるなら誰でもいい

俺が正面で騒いでる間に上手いことだまくらかして救出してほしい
勿論俺もくたばるつもりはねぇ、命は惜しいんでね
万が一瀕死になったら亡霊を目眩ましに退散するさ

敵がオブリビオンなら容赦しねぇし、一般人なら少し手痛い目に遭わせる
ガキ泣かせてるやつにゃ折檻だ

もし牢に辿り着けたなら
ここを出たらうまいもん食わせてやる
だから食べたいもんを言えってガキに声掛けてやるさ


キャリウォルト・グローバー
【POW】正面突破で拷問地下牢を破壊して重要人物を救出する

まだ幼き少女が囚われているとは…なんと痛ましい。
ちまちまと小細工を用するのは某には出来ぬゆえ、
正面突破で敵を【剣刃一閃】でもって薙ぎ払ってくれようぞ。
少女の身に何かが起きてからは遅すぎるのでな。
しかし、某の見た目では少女が驚いてしまうかもしれぬ、
救出は他のめんばーに任せるぞ。


エルフィ・ティントット
フェアリーに生まれたんだもん。
この小さな体を活かさないっていう手はないよね!
ひとつ歩んで忍び足、ふたあつ歩んでそろりそろうり、みっつ歩んで……。

……あれ。あたし翅あるんだから飛べばいいじゃん!
室内だから高く飛ぶ必要もないし……。
まあうん、とにかく隠密行動だねっ!
隙間に身を潜らせたりして、こっそり鍵を盗み出せないかなあ。

もし女の子を発見できたら、まず安心させてあげないと。
きっと痛い思いも怖い思いもしてる。
まずばとびきりの笑顔で、こう言ってあげるのさ。

「……やあ! このボクが、お前を手伝いに来てあげたよっ!」

生まれながらの光で、痛みも癒してあげられたらいいな。
疲れ? ありがとうの一言で吹っ飛ぶさ!


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)――――迫害された少女の救出作戦、か。――いや、何でもない。可及的速やかに救出する。

(ザザッ)SPDを活かし潜入する。使用UCは「Summon:Arms」……閉ざされた牢獄前まで潜入し赴き、召喚したオプションパーツで牢を破る。
パーツがピッキングツールになるか、ドアノッカー(扉破砕銃)になるかは判らないが……何れにせよ彼女を助ける為の物となるだろう。
牢を破り次第、彼女を救出し脱出する。
作戦概要は以上、任務を遂行する。オーヴァ。(ザザッ)


ナイ・ノイナイ
雷陣の拓いた穴を辿って参戦するぜ。
敵の撃破は狙わず、牢屋を目指して影から影へと素早く移動したい。
敵に捕まりそうになっても残像で翻弄する。
「今助ける。下がっていろ」
低く穏やかに語り掛ける。
かわしきれない障害には剣刃一閃。できれば牢の戸を切断したいが……。

牢の様子、少女の身なりからどのような扱いを受けていたか知れる物だ。
ため息と共に悲しみに表情を曇らせる。



少女は、牢の奥にいる。
 呼吸が止まりそうな轟音を聞いた。
 世界が変わる切れ端のような、白い雷光を見た。
 次々崩壊する音を聞いた。
 なんと明朗な声は届いた。
 心臓が叫ぶように鐘を打つ。
 それは『高揚』と呼べる感情だ。
 これを『希望』と誰かが呼んだ。

 雷光の少年の後ろに、巨大な影が落り立った。
 2m……否、見上げるならば3mは有りそうなその巨躯は、ウォーマシンのキャリウォルト。その身体を盾として、猟兵が降り立つ音が、大小併せ、総計五。
 天に開いた穴から零れる光の下、武器を取るは二。
 影と騒ぎにいざ隠れ、少女救出に向かうは三。

 先行く三つの影に灯人は呟く。こっちの騒ぎは任せろと。
 息を吸い、竜の怒りの咆哮を上げる。石の壁が、それだけで軋む様な、強烈な咆哮が空気を裂いた。声を張るなど面倒だが、ーー自分の仕事は、兎に角、『騒ぎ引きつける』事と決めた。敵の中には魔術を使える者も僅かばかりいるようだ。飛んでくる炎弾を、鉄塊剣を振り回し消し潰す。
 「その程度の力しか無ぇ癖に、ガキ泣かせやがって気に食わねえな……仕舞い込んだガキは何処だ!!!」
 通さない、教えるものか、あの人質は主人の物だ。怒号が混ざり合った声のひとかたまりは、ほとんどノイズと化していた。良いぞ。釣れろ、釣れろ、こちらを見ろ。
 「こいつら黙らせて探しに行くしか無え、か。デカブツ、それでいいな」
 「応よ。正面突破……罪無き少女に降りかかるあらゆる悪を、切り伏せてくれようぞ」
 その逆、キャリウォルトは静かに声を降らせた。
 抜刀。巨大な刃は、ただその質量だけでも悪への無慈悲。その上、剣豪の力量と、子を護らんとする正義の心が合わされば、最早兵器。
 灯人の頭上を横一閃。通路の壁ごと切裂き、番人や兵たちを一切合切斬り飛ばした。重なる悲鳴が汚く埋もれる。その手腕に、灯人は感心をひとつ。それが隙だった。埋もれて尚、矢を放つ兵が居た。それに気付かなかった。矢が、灯人の、首へ。

 『狐火』が、首に届く直前、矢を撫でつくした。
 火炎は一瞬で凶器を炭に変える。灯人の耳に届いたのは、さら、さら、消し炭が崩れる音だった。
 視線を上に上げる。穴の端に、黒い豊かな尾が引っかかっているのが見える。未夜だ。直感する。
 「いたのか」
 「帰りたいけど」
 眠さに不貞腐れたような声が振った。小さな欠伸、陰気な声。ぐずった後の子供にも似た声。
 「手伝いくらいは、しないとでしょ」
 ぽつ、ぽつ、狐火を灯す。下に降りて共に戦う、なんてする程の気はないが、力は貸すと言わんばかりに。
 何かしたいのだ。しに来たのだ。動かざるをえなかった。だってさ。未夜はそれを言葉にこそしなかったが、見えない表情を想像して、灯人は頷いた。
 残っているのは、逃走を前提としていた、最初からへっぴり腰の番人達のみだ。
 キャリウォルトが、刃についた血を振り払った。飛沫は花の様に鮮烈な紅だ。風圧で、天井がまた、ぱらりと崩れる。
 「まだ。まだやるのか、悪党どもよ。 某は少女の命以外に興味はない。何度でも。この刀を振るおうぞ。幸いに生き残っているその命、此処で潰して地獄への船賃に変えるのか。」

 ――――一方、救出すべく先行する者達。
 黒髪の青年、ナイ。
 豹を模した機械鎧、ジャガーノート。
 クリスマスの眩しさを届けるような、フェアリーのエルフィ。
 ないよないよ、あっちにもこっちにも! エルフィは小声で零しながら、隙間に引き出しに目に付くあらゆる裏側に、くるくる見て回るが、目当ての鍵は見つからない。
 「ねえ、もしも鍵が見つからなくても、お前たちなら鍵を壊せるかい? いいや勿論まだまだ諦めないよ。けれども素早く助けてあげたいからね!」
 ナイの耳元に。ジャガーノートの耳元に。旋風に舞いあげられる花びらの様に落ち着きなく飛び回ってエルフィは囁く。質問出来たらあとは隠密だ、風を失った花びらの様に大人しく、ジャガーノートの冷たい肩に舞い降りた。機械鎧はノイズ越しに妖精の声を聞き拾う。
 ザザ。
 「agree. 破壊、ピッキング、どちらになるかは不明だが……否、本機はどちらもこなせよう」
 「ああ、少女を助けたい気持ちは、全員一緒なんだ。どうとでもなる。……助けてやらないと。檻の中にいられるのは、生まれた時から檻暮らしの鳥くらいなんだから」
 ナイは剣の柄に手を添えながら、物陰を進む。その通路突き当りに、三人は見るだろう。怯えているものの、檻に目いっぱい近付いて、手を伸ばして。優しい声を、確かな光を求める少女の姿を。
 いた!いたよ!脇目も振らずエルフィは飛んだ、流れ星のような一筋の軌道で、檻の隙間に舞い込んだ。
 「やあ! このボクが、お前を手伝いに来てあげたよっ!」
 聖なる光が、少女の傷だらけの小さな掌の上に在る。あたたかくて、痛くなくて、まぶしくて、綺麗で、なによりこんなに可愛くて。
 絶望に馴れていた少女は、ただそれだけで涙のダムが壊れてしまった。だってあまりにも、沢山の希望だったから。
 「う、うう……うぅぅううう」
 「おっとと、痛い所があるなら教えてね! 全部のこさず治してあげるさ、子供がする痛い想いなんて、友達との喧嘩だけでいいのだからね」
 「ありがとう……ありがと、ありがとう……! 怖かったよ、寂しかったよ、寂しかったよぉぉお……!!!」
 泣きじゃくり光に包まれる少女に、エルフィは明るい笑顔を向け続ける。聖なる光の代償は使用者の疲労感だ。その上ここまでの心配と焦燥だってあったとも。けれどもそんな疲労は全部ひっくるめて、ありがとうの言葉と子供の笑顔があったらご精算しておつりまで来てしまうのだ。
 ザザ。「下がれ。檻を破壊する」
 檻越しにかけられたジャガーノートの命令口調に、少女が怯んだ。助けに来てくれている事は分かっているが、恐怖が体に染み込んでいる。けれど、ジャガーノートには他の伝え方など出来ない。眼光が赤く輝く、歪な豹の鎧には、子をあやす事などできない。
 ナイがやや困った様に笑って、低く、穏やかに声をかける。小鳥に語り掛ける程の、優しさをもって。少女を怯えさせないよう、己の感じる悲しみは、慈悲としてだけ表に出して。
 「今、助ける」

 ジャガーノートのドアノッカーと、ナイの剣刃一閃が、扉を破壊したのはその後すぐの事。
 止まない少女の泣き声は、産声の如く歓喜に満ちて、森外まで響いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『秘密の拠点への通路』

POW   :    罠や障害を力尽くで突破する

SPD   :    発動した罠を素早く回避する

WIZ   :    慎重に罠を見つけ出して安全に進む

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


少女救出。
 情報獲得。
 諸悪の根源のオブリビオンは、罠張り巡らされた村の地下通路に居ると云う――――
少女は猟兵に護られながら村へと帰る。
 ままならなかった歩みも、治癒で問題無く歩けるように、なった。
 母に抱き留められ、また何度目か泣きじゃくる。
 村の住民達も集まり、少女の生還を喜んだ。
 暗い村に、勇気の火が灯る。

 娘の父親にあたるだろう、村の長が歩み出た。
 
 「まさか。まさか、娘ともう一度逢えるとは、思ってもおりませんでした。心より、感謝を申し上げます……!!」

 「娘が惨い扱いを受けるくらいならば、自滅覚悟で、『彼』に挑むべきかと、思ったこともございました。されど、それはこの村の者達をも全滅させる決死に他ならず、私は、私は……いいえ、そんな葛藤、言い訳に他なりません。……村の者達も、娘の生還を喜んでくれている。このまま、この村が。『彼』に滅ぼされるのも、良いのかも、しれません」

 「――――え? それは 本気で、おっしゃっていますか」

 「ああ、とんでもない……お教え致します。お願い致します。『彼』の居場所は――」
犬曇・猫晴
同行者:織譜・奏(f03769)
さてさて、お姫様は助けられたみたいだし、ぼくらは魔王を倒しに行くとしようか
……え、来世?今世は?
奏ちゃんどう?やばそうなのある?

罠の索敵は奏ちゃんに任せて、ぼくは周囲に敵が居ないか警戒
奏ちゃんが見つけた罠を、起動が一度切りのものは作動させて回避で対処。何度も起動するものは力任せにぶっ壊しちゃおう。

こういう罠を見つけて対処するって、前の仕事を思い出すけど、やっぱり戦いがないと物足りないね。
こんな所さっさと突破して魔王戦といこうか

アドリブ歓迎


織譜・奏
同行者【犬曇・猫晴(f01003)】
さしずめ私たちは勇者か王子様ですね。頑張りましょう!
ふふふ任せてください、探すのは得意なんですよ。罠から来世の婚約者まで探し当ててみせます。

【WIZ】
文明レベルから考えるに、あんまり凝ったものは無いですかね。トラバサミとか落とし穴、矢が飛んでくるのとか。
目視はもちろん、その辺の石を投げてみたり怪しい部分にワイヤーをひっかけて引いてみたり。
壊せそうにないものは犬曇さんに任せて、私は安全確保されてから続きますね!頼りにしてます!
ううっ、もう正気を失いそうな体験は勘弁してほしいです……魔王が可愛いと良いなぁ。

アドリブ歓迎



案内された地下壕が開く。
 内部は、三叉路。この生活を破壊する存在を、どこまでも拒絶する為の分かれ道。
 それすらも元は我々の先祖から掘らせたものだと、村の長は言っていた。
 みなさん、怪我しないで、帰って来て、と。贅沢な願いを、少女は勇気を込めて、震える声で紡いだ。

 一路。
 「さてさて、お姫様は助けられたみたいだし」
 「さしずめ私たちは勇者か王子様ですね。頑張りましょう!」
 先行くは猫晴。ごく平凡な外見の男は、通路の暗さにも欠けらも動じず。敵の気配を探りつつ、後ろで罠の捜索に集中する同行の奏を護る立ち位置に着く。
 「ぼくらは魔王を倒しに行くとしようか……奏ちゃんどう? やばそうなのある?」
 「ふふふ、任せてください……探すのは得意なんですよ! 罠から来世の婚約者まで、探し当てて見せます」
 「今世は??」

 ――文明レベルから考えるに、あまり凝ったものはないですかね。
 トラバサミ落とし穴飛来する矢雨、そういった罠に目星をつけ捜索する。
 石の壁、石の床、不自然に浮いているブロックはないか? 見えない糸がはられていないか? 怪しい部分に、ワイヤーを引っかけて引いてみたり、石を投げながら進んだり。 

 作動音。
 と気付いた時には、石壁が重く倒れた音が通路に響き渡った。派手な音に身をすくませて、後に残るは獣の呼び声のような残響。
 猫晴が立って居た箇所が、厚い石壁に均しく潰され、砂煙が立っていた。
 ――猫晴は?
 「――ほ、ほおら、あったでしょう!?」
 「いや、今の割と死ぬ人居たと思うよ?」
 「犬曇さんなら無事って信じていました!」
 ……奏は明らかに安堵の色濃く笑った。砂煙と暗がりに紛れて、猫晴は、奏の後ろに移動していた。瞬時の回避だった。奏の投げた石の跳音が、他と比べて半音高い瞬間が有った、と猫晴は言う。罠を解除するという仕事に慣れのあった猫晴だからこそだろう、これを経験値と人は呼ぶ。
 「まあでも結果はオーライだ。まだまだ有るだろうし、魔王の部屋まで頑張って進むとしようか」
 「あ、犬曇さん。この壁、複数起動式です」
 ズズズ……と、壁が自動で持ち上がっていた。行儀よく、元の壁として収まる。……よく出来た罠もあったものだ。
 「うん、それじゃあぶっ壊して行こうか。奏ちゃんは下がってて」
 「はい! 頼りにしてます!」

 壁を打ち崩し、少し通気を良くして、猟兵達は進む。
  
 「ううっ、けどもう正気を失いそうな経験はしたくないです……魔王がかわいいと良いなぁ」
 「じゃあ魔王が可愛かったら、今生の分の婚約者に採用する?」
 「しませんー! もう、そんな退屈だからってからかってぇ……!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

寧宮・澪
うん、うん。女の子、無事でよかったですよー……あったかいおうちでゆっくり休んでください、ね。

さて、罠たっぷりですねー……。
ん、ん。力もいっぱいです。
罠、見つけながら行きましょ。

お仕事、またお願いしますねー……レギオーン……。

電脳ゴーグルに世界のシュミレーター起動ー……地形データや、レギオンの数によるしらみ潰しで、怪しいとこ避けていきましょー……。
他の方、いれば、レギオンで誘導したり、庇ったりして、皆さん無事に行きましょねー……。


グウェンドリン・グレンジャー
罠まみれの道……力尽くは負傷の危険あり……発動した罠、回避しつつ、やむを得ないときは、力尽くが良いと判断する……

怪しいところはEbony Featherを投げて、罠が作動するか調べる。
重さ感知式で、引っ掛かってしまった場合は、空中戦技能とMode:Mórríganを使って、空中に抜ける。
天井からも罠が降ってきた場合は、一度宙に抜けてからの素早い回避に使用。
穴に落ちた人を引っ張り出す時にも、使う。

「罠とか作ったり、長いトンネルを通らないといけない生き物……だいたい弱いか、臆病。図鑑で読んだ。」



一路。
探索特化班。

眠たげな目を擦りつつも、ふむふむ、悠々と通路を眺める澪。
どこか冷然とした印象すら抱かせる静けさを持って通路を見つめる少女、グウェンドリン。

「さて。罠、たっぷりですねー……」
「……力尽くは、負傷の危険有り。発動した罠、回避しつつ……」
「おお、良案ですねー……」
がしゃがしゃ。こくりこくり。レギオンを召喚しつつ、どこか舟こぎにもにたリズムで、澪は頷いてみせる。
「やむを、得ない時は」
「ときは」
「力尽くがいいと、判断する」
断ずるグウェンドリンを見て、思わず二度見してしまう者はきっと少なくはないだろう。澪もまた、思わず瞬きを重ねてしまった。
陽の光をろくに浴びたこともなさそうな白い肌、細い身体、少女の背丈。彼女の風貌は、些かか弱かった。
そんな沈黙を否定するように、グウェンドリンは横目で澪を見る。濡れた皮膚を突き破る如き音とともに、腰に黒い翼の刃が展開されたのだ。それが、彼女のクランケヴァッフェ。
どこか歪な美しさを魅せる黒い羽刃と、折れそうな身体、それが強さの在り方だ。澪は穏やかに笑んだ。言い切るならば、信じよう。言われ慣れているかのように、視線に動じぬ強さを信じよう。
「 私も、それがいいと、思ってましたー……けど、無理なところは。レギオンのこと、頼ってくださいねー……」
がしゃがしゃ。通路奥へ、レギオン探検隊はくまなく探索を開始する。

澪の電子ゴーグルによる地形探知、機海戦術。そして肉眼の探知、鳥の如き身軽さであらゆる罠を回避しつづけるグウェンドリンの二人の進行は着実であった。そう、途中までは。

罠の数は多く、
レギオンは数こそ多いが一撃で崩れて消える。
半数も減れば、くまなく探索、とは難しくなった。
その状況に、澪は眠さにとろけながらも、不服そうに下唇を小さく突き出していた。

「……あなた、無理は、しないでいい」
「ううーん……」

考える子供のような声に、グウェンドリンは静かに息を吐いた。
澪は胸を叩いてみせる。

「大丈夫、ですよー……まだまだ、レギオンは、います。それに、二人の方が、
探索効率も、いいですよー……」
そんな話の最中だった。
罠には虱潰し、それ即ちい言い換えれば総当たり。そんな方針のレギオンの一体が、不自然な音を立てーー
閉まる奥の扉と、地響きのような水流音。
ごぼ。ごぼ、どど、音は徐々に大きくうねりてーー
天井から、通路に向け、一斉に滝の如く流れ込んだ。

「ーーー!!」
グウェンドリンの瞳孔が、鳥のように黒く開いた。
澪は迷わず彼女に手を伸ばした。
グウェンドリンもまた、伸ばされた手を、猛禽類の如くひったくり。
Mode:Mórrígan。凶鳥は一気に壁を駆け上った。

一瞬後に。通路は水流に埋まる。残っていたレギオンは藻屑の如く流されて。後に残るは。
天井付近の繰り返しの跳躍から、失速。弱まっった水流に落下した二人だけだ。
……思いのほか濁流がすぐに引いたのは、もしかしたら、どこかの壁が壊されていたお陰かもしれない。

「ぶはぁっ……ああ……ちょっと、おどろき、ました……危なかった、ですねぇ」
「…………うん。力尽くで、解決、できた」
「はい、ありがとうございまし……あれ? それ、もしかして、えーと……私が重かったです……?」
「いや、」
グウェンドリンは首を横にふった。浴びた水がちるちる飛び散る。
「迷わず掴まれると、ちょっと、驚いて、重い」
「重かったんですね……??」
眠りがちな生活を思い出し、困惑のままに澪自身の身体に触れる様子を見て、グウェンドリンは微かに笑う。
迷わずに掴む、その迅速な判断力を賞賛したかったのだが。まあ、訂正しないでもいいかと、思うことにした。



進行を妨害する壁を、破壊。
「罠とか作ったり、長いトンネルを通らないといけない生き物……だいたい弱いか、臆病。図鑑で読んだ」
「なるほどお。じゃあ、この奥にいる人も、きっとこわくないですねー……うん。無事に、いきましょー」
立ち上がった女二人は、また道を進んでいくーー

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)――情報取得。目標:当任務の討伐対象たるオブリビオン。これより地下通路への侵入を開始。

(ザザッ)速度を活かし攻略する――
地を駆ける豹に劣らないスピードで通路を駆け抜けてみせよう。
仮に罠が作動したとして、「Leg Vernier」で跳躍、バーニアを作動させ回避すればどうという事もない。
(ザザッ)――本機はあの子をああまで怯えさせた存在が許しがたい。怯えさせてしまった本機の姿も、在り方も。

――彼女への謝罪はオブリビオンの討伐を以って為す事をこれより本機の目標とする。
その為にも、可及的速やかに目標を発見する。

――作戦概要は以上、これより実行に移る。オーヴァ。(ザザッ)


エルフィ・ティントット
用心用心、ご用心!
やっぱり妖精の本分っていえばお手伝いなわけさ!
もともと翅があって飛べるし、落とし穴系のやつは怖くないよね。
だからみんなの先を行きつつ、そういう罠の位置をガイドしようじゃないか。

それにこの後待ち受けるのは強者強敵大ボスってなもんさ。
敵が出てくるタイプの罠があるなら、余計な戦闘は避けるべきだろう?
だから、敵に出くわすようなことがあったら「妖精の領分」で他の猟兵にひっついて、一緒に姿を隠すのさ!

……あんなカワイイか弱いとってもいい子を酷い目にあわしたやつに、ボクもちょいとばかし。
あったま来てるのさ。
直接戦うのは苦手だけど。
せめて悪党にギャフンって言わせるお手伝いはしてやろうとも!



また別経路の物語。

「用心用心、ご用心! ふんふん、おっ。ここにワイヤーがあるみたいだ。ふふん、でっかち諸君には糸くずほども見えないだろうけど、フェアリーのボクから見れば、小指ほどもあるんだから、見逃さないとも!
ううん、ここは空気の流れが少し妙だ、大口を開けて獲物がかかるのを待つトロルの舌の上のよう。ピンと来るね、重量センサーってやつだ。気をつけるんだよ。
それと、この辺りにとびきり大きい落とし穴だ。下に広い空間がある気配がある。落ちたら帰ってこれないよ、帰るまでが猟兵なのだから、慎重に、頼んだよ」
ふわりふわり、エルフィは雄弁に発見を語りながら、先へ先へと飛んでいく。仮に罠が作動しても、彼女の小ささならば命中せずにすむ可能性も高い事もあり、その進行は慎重ながら大胆だ。
その後方では、ノイズがかすかに反響する。ジャガーノートが、エルフィの報告を聞いている。
「委細、承知した」
「どんと任せてくれたまえ! やっぱり妖精の本分っていえばお手伝いなわけさ。妖精のアドバイスに耳を傾けてくれてありがとう、注意してここまで来ておくれ」
くるるん。陽気に空中一回転。飛んでいては見つかりやすいと、エルフィは通路の端に降り、後続のジャガーノートを待つ。
細やかな探索を可能とするエルフィ、戦闘能力の高いジャガーノート。バランスの良い組み合わせだ。
組み合わせなのだ。

ーーーザザ、ザ。
「これより突破、実行に移る。オーヴァ」

鉄の豹が、身を低く屈める。
指を地に。脚を床に。瞬発力、爆発力を、脚に貯め、ーーーー
ジャガーノート。暴力装置は音すら引き連れず、推進を開始した。空気抵抗という名の壁を突き破り、流し、唯加速の本流に乗る!
「ゎひ」

第一関門、ワイヤートラップ。視認し避けるよりも突き進む方が迅速と判断する。ワイヤーを引きちぎり吹き荒べば、後方で鋭利な刃がゾン、と残酷な音を立て落下した気配があった。問題ない。クリア。

第二関門、トロルの大口。一歩そのエリアを踏めば、肉を噛み砕く上顎が如く天井が落下する。問題ない、その大口が閉じるよりも速く駆け切る。迫る天井、向こう側に至る狭い隙間に無理やり捩じ入るようなスライディング。クリア。

それつまり床への横たわり。落とし穴が来る下方が開いた、思いの外長距離だ、落下する子猫を待つような針山地獄を視界端に捉えるが落ちなければ問題ない、ひとつあるとすれば今の姿勢が崩れていることか! 冷静に、迅速に、身をひねり壁に脚を引っ掛けて。バーニア、跳躍する!落下分を駆け上がりーーエルフィの横、目的地点に、着地する。

ザァッ……
「オールクリア。前進を願う。」
「妖精の忠告はきちんと聞くべきだよ!」
エルフィが舞い上がり、豹の頭上にマウントする。と言ってもぷんすか不服のままにてっぺんを取っただけなのだが。
「何だいまるで捨て身みたいだ、意地を張る子供だって妖精の忠告はもう少し聞いてくれるのだよ?」
ザ、ザ。……ザザ。ノイズだけが、静かに、何度か、鎧に潜もって反響する。その微かな振動を、エルフィは鎧越しに感じていた。
「本機は、少女を苦しめたオブリビオンを破壊する事に急いている。」
「ボクもそうだね。あんなに可愛いいい子を苦しめてたなんて、アッタマきてるとも。けどあの子も怪我なく帰ってくることを望んでいるのだからね?たとえ難しくとも、あの子のお願いだよ」

謝罪を。そうジャガーノートは、小さく返した。
二人の進行は続く。

少女の願いの中に、ただ怯えさせただけの本機は。入っていないだろうと、ノイズの端に秘めながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アストリーゼ・レギンレイヴ
少女の救出は成った、という報を聞いた。
そうであれば憂いなく、敵をブチのめせるということね。
……遅れた分、身を張りましょう。

【POW】罠や障害を力尽くで突破する

【血統覚醒】で自身を強化し、とにかく、全力で。
持てる限りの速度で、出来れば先行して罠を暴き、ブチ壊していくわ。
その分後続が安全になるし。
あたしはいくら血を流しても平気だから。

罠? ――知ったことか。
傷? ――構うものか。
囚われた娘の絶望に比べれば。
今なお苦しめられる村人たちの痛苦に比べれば。
これから傲慢なオブリビオンの面を殴り飛ばせるのだと思えば。
絶望を希望に変えるのだと思えば。
……耐えてみせるわ、この程度。


キャリウォルト・グローバー
【POW】罠や障害を力尽くで突破する

少女は救けられた。
しかし、元凶を潰さねばまた別の少女が攫われることになるやもしれん。
ちょこざいな罠など某の巨体を持って
すべてを踏み潰し、斬り壊し、吹き飛ばし、
敵の親玉に向かうことにしよう。
悲劇を繰り返してはならない、それが某の正義ゆえ。


ナイ・ノイナイ
「めでたしめでたし、じゃないな。また彼女が捕まっては元通りだ」
俺も先に進むのを手伝おう。

ライオンライドで呼び出した獅子に乗り駆け抜ける。
「恐れるな。俺は共にある」
生命力を共有する獅子にもオーラ防御を付与できないだろうか。
のびのびと駆け抜けて罠を発動させては素早さで振り切って逃れる。
加速と共に真の姿の片鱗が見え、無数の青い翼が生えるが
立ち止まる頃には元に戻っている。
変化していた自覚の無いまま他の者へと振り返る。
「どこに罠があるか、これで見えたか?」



ある路は集中力の欠如が目立ち始め、
 ある路は戦力が欠け始め、
 各路の消耗が、強くなったその頃合い。

 ある路では、アストリーゼが前に出た。
 「遅れた分、取り戻させてもらうわ。……憂いなく、敵をブチのめすためにも」 
 ある路では、キャリウォルトが前に出た。
 「一度休め。それがしが出よう。何、それがしの巨体を持って、あとは全て破砕するのみ」

 そしてある路で、ナイが獅子を連れて前に出た。
 「物語の幕引きにはまだ早いか……此処からの路は、俺がひらこう」

 アストリーゼは己が内の力を解放する。左の真紅が、一層鮮烈に血潮の色をその表面に噴き出す。血統覚醒、ヴァンパイアの戦闘能力をその身に宿す。対価は寿命だ。左胸は負荷の早鐘を打ち、体内の毛細血管が飴の糸の如く千切れていくのを感じる。だが。それが、どうしたと言う。
 駆ける。持てる限りの全速をもって。破壊する。持てる限りの力を持って。
 目につくオブジェクトを破壊する。次々罠は作動する。それによる痛みなど、知ったことにも構うことにも、何ひとつ及ばない!
 矢雨は、飛礫は、刃は、彼女を貫いていく。寧ろ後方に飛ばぬよう一心不乱に舞う。矢を叩き落とし、その黒剣、時にはその身で防ぎ、血を流せど止まる事はない。
 囚われた娘の絶望に比べれば。
 今なお苦しめられる村人たちの痛苦に比べれば。
 これから傲慢なオブリビオンの面を殴り飛ばせるのだと思えば。
 絶望を希望に変えるのだと思えば!
 「……耐えてみせるわ、この程度」
 対価を払い、血路は開く。

 キャリウォルトはその巨躯と刀と、正義の心ひとつ共として。通路ごと破砕して進む。
 瓦礫が次々ふりそそけど、彼女の通った跡がそのまま路となる。一歩ごとに瓦礫を砕き、押し戻し、道を開ける。
 人間のか弱い肉を断つための、どんな罠も彼女の前では無意味である。
 小さき人間を突き落とすための、どんな大口の落とし穴も、彼女の前では足止めに過ぎぬ。
 眼前に現れた行き止まりすらも、彼女が迷わず刀を振れば、積み木の遊具のように崩れ果てて道を開ける! ああしかし。いささか、骨の折れる進行では、あった。
 「この奥に。いるのだろう、悪魔よ。二度とあの村に手出しできぬよう、それがしらが断罪してやろうぞ」

  ナイはライオンライドで召喚した黄金の獅子に、防御オーラを付与した後に。その背に飛び乗り駆け出した。
 ここは獣の遊戯場だ、罠は障害物、痛みはじゃれ合い。恐れるな、俺はお前と共にある。獅子と分かり合い、連携し、悠々と駆ける駆ける。怯えや恐れは遊戯に不要だ、獅子とナイが互いに支え合い罠の雨を駆け抜けた。
 加速と共に、ナイの姿が変わりゆく事に、何人が気付くだろう。青い羽が彼の体からこぼれていく。幸せ在るところで囀る鳥のように、この先の幸福を願うように、翼が次々彼に生えて、金の残像と青の羽が路を彩った。あれがきっと、彼の真の姿の片鱗。
 そして路の果て。立ち止まり、獅子を優しく撫でながら降り立つ頃には。ナイはまたただの人間としてそこにいた。
 「どこに罠があったか、これで見えたか?」
 穏やかに青年が振り返るも。道に散らばっていた青い羽たちも、雪解けのように失せていた。

 路の果て。ーー結局は、一本の道に続いていた。
 集った猟兵達の前に、一枚の豪奢な扉が、在る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。

イラスト:伊藤あいはち

👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


扉向こうは、広く豪奢な部屋であった。
 逆さ十字に磔となった天使の彫刻。血の匂いの取れない数多の剣。地下ゆえに陽の光を通すこともないガラス細工の
絵画。その中央、天蓋付きの寝台に。白い髪に赤い翼の男が、座り込んでいた。
 これが、これが、村を苦しめていた最大の原因、悪の権化であると猟兵たちは悟る。
 赤い翼の男は。寝台に腰掛け、手を組み、首を垂らし。まるで恐れるように、こうべを垂れていた。

 「ーー来てしまった。来て、しまった。私の幸福な生活の、破壊者共が訪れてしまった」
 男が、指を解く。
 立ち上がる。

 「何故だ? 何故、何故。うまく回っていたではないか。少女は生きて私に可愛がられ、村は私のために全てを捧ぐ。私はうまく生きていたでは無いか。これを壊す権利が、果たして貴様らにあるのか」
 猟兵の数名が、眉間の皺を深くする。

 「私の未来が告げるのだ。いずれ私は、こうして殺される運命にあると。ーー理不尽ではないか! どこから来たかも知れぬ暴虐共に私は屈さぬ。私は私の観た運命に抗う!」
 男が立ち上がる。血色の翼を広げて。
 血の匂いが一層立ち込め、周囲に赤い剣が幾多、男を護るように展開した。

 「私は、私は、あの村に愛されている! 抵抗しない、叛逆しないあの村の命を、一滴残らず私の幸福のためとする! あの少女を愛そうぞ! また、あの、か弱く薄い腹を……蹴り付け、踏み付け、愛らしく鳴く彼女を取り戻しに行こう……!」
 今にも泣き出しそうな面構えで、そんなことを、朗々と言ってのけたのだ。

 浮遊した剣が、その切っ先の狙いを猟兵達に、定めた。
エルフィ・ティントット
出たな悪党!
このボクがお手伝いを来たからにはけっちょんけちょんだ!!
……でもボク、直接の戦闘はちょっと。
だってお手伝い専門だもの。

が、しかーし!
「目立たない」ように身を隠すのも妖精の本分!
ちっちゃな体を活かして室内の色んなとこに身を潜めて
ダメージを受けた猟兵を『生まれながらの光』で回復するよっ。
疲れなんか構うもんか。何人だって、届く限り治療する。

「……絶対ぜったい、負けるなよっ。みんなが怪我したら、あの子がまた泣いちゃうんだからね!」

回復にあたっては、みんなを全力で励まして「鼓舞」するよ。
誰かが背中を押してくれるだけで、もっと頑張れることって、あるものさ。
笑顔だけは、絶対に絶やしてやるもんか。


ジェイクス・ライアー
私がここに来たのは少女への憐憫ではない。
この世界を救いたいなどという正義感ではない。
それが私に与えられた役割だからだ。

“Let's get down to work.”
-さあ仕事をはじめよう-

【SPD】
必殺仕事人・スタイリッシュな戦闘スタイル
派手なアクションは不要

味方サポートには指輪に内蔵の鋼糸で敵の自由を奪う
必要に応じて傘型の銃より【援護射撃】【零距離射撃】などを使用

連携・サポート・アドリブ歓迎
冒頭は心情のため台詞にする必要はありません
作戦自体には当初より参加していたていだと嬉しいです


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)――討伐対象視認。本機の総力を上げ対象を抹殺する。――真の姿、解放。

(ザザッ)SPDで挑む。
使用UCは「Summon: Arms」――連装式ミサイルランチャーを召喚、本機の巨腕に接続。
技能『スナイパー』及び『誘導弾』で命中率を向上。
『二回攻撃』及び『一斉発射』の併用で攻撃範囲と回数を増幅――刀剣が幾ら有ろうとそれごと対象を焼き払い、殲滅する。

――本機の真の姿。
より醜く変じた巨腕。
獣の様に唸り猛る、暴力の化身。止まる事適わぬ過剰な力。

――だが、それが本機にできる唯一の事なら。
それで誰か救えるなら――
殺す以上に、お前を殺し尽くしてやる。

――作戦は以上、実行に移る。オーヴァ。(ザザッ)


寧宮・澪
はいー、怒ってますよー……。
めっですよー。

れぎおーん、やっちゃってください……。
【エレクトロレギオン】使用。
一撃で壊れちゃうですけど、数も強さですよー。

女の子いじめて、村の人いじめて。
ひきこもって弱い者いじめして、いいようにして、楽しかったの?

ばかなの?
強者と言うなら、それらしく振る舞えばいいの。
相互理解、しないのなら獣以下。

攻撃は【オーラ防御】で軽減しましょー。
決定打が与えられなければ、与える隙を作るために【時間稼ぎ】を。

じつは、いいかげん、眠いのー……。
でも怒ってるのよー……。


織譜・奏
同行者【犬曇・猫晴(f01003)】
コスプレって通じるんですか?というかアレは本職ですって!
んー、痛いですねって教えてあげたら良いと思います(純粋な瞳)

【wiz】
後方に陣取り、『蛮勇の戦歌』で犬曇さんや他の方をサポートします。
折角力が解放されてるんですから、どんどんバフ盛って行きますよ!
やっちゃえ犬曇さんー!

犬曇さんがすごく苦戦してたら、1回歌うのをやめてワイヤーで敵の動きを鈍らせようとします。
といっても私の力じゃ対抗できなさそうなので、ただ糸を絡めるだけになりそうですけど。
敵の攻撃対象が自分になったら全力で逃げ回りますね。

アドリブ歓迎


夢飼・太郎
【団地】
生かしも逃しもしない
俺の業績の一部にしてやる

UCは敵陣営の破壊目的
「もうじき家主が消える家だ
多少損壊しても問題ねぇだろ問題ねぇから黙ってろ」
もしエージェントが他にいるなら釘をさす
「上に報告すんなよ」

以降
武器「スペアキー」で視覚を奪うなど撹乱


犬曇・猫晴
同行者:織譜・奏(f03769)
やばいよ奏ちゃん、本気過ぎるコスプレだよ
本気の中二病だよ……なんて声掛けてあげたら良いのか分かんない(真剣な顔で)

さて、どうしようか。
あいにく木の杭も銀製の弾丸もないや。
ダムダム弾って効くの?

【SPD】
こういうのは多分距離を取るとめんどくさいタイプじゃないかな?
銃を撃ちながら近付いて、十分接敵すれば剣鉈で斬りかかるよ。
出来るだけ距離を取られないようにと、奏ちゃんとこいつの間に割って入るような位置どりを心掛ける

奏ちゃんが狙われたら全力でかばうよ
大怪我をしてでも

アドリブ歓迎


ユキ・パンザマスト
救出に、探索に。色々状況を見て触れて。
あいつを手ずからボコりたい人は、きっと沢山いるでしょう。

つーわけで、駆け込みのユキは露払い! 
蝙蝠や刀剣は厄介だが『なぎ払い』の術ならある! 
それらを可能な限り捕捉できるよう、かつ味方を巻き込まないよう、位置をタイミングを『野生の勘』込みで計らい、剣呑飛び交う中空へ向けて。
「──さぁて、禍時です!! 落ちろや落ちろおっ!!」
床から伸びて、狂い咲いた白椿の花を宛らスピーカーに、歪な音と衝撃波を迸らせる! 


グウェンドリン・グレンジャー
(真の姿として猛禽じみた目が真っ赤になり、翼がより大きく鋭く)

「あなた、名前は」
見つけた……大将首と判断。
ブラッド・ガイストを使用……武装は全展開。
恐怖を与える技能を使って、牽制を試みる。
「いや……名乗らなくても、いい」
Ebony Featherを暗殺技能を使いつつ、牽制の投擲。

Mórríganのブレードを捨て身の一撃で突き刺す。
生命力吸収と……大食い技能で、このヴァンパイアから生命力を奪って、みる。
奪う側、逆に奪われるとは思ってないだろう……と、推測。
精神的動揺を、誘いたい。


ナイ・ノイナイ
引き続き、ライオンライドで召喚していた黄金のライオンと行動する。
相手のSPDユーベルコードが念力操作なので、
残像で相手の視覚を惑わせて複製された剣の幾本かをかわしたい。
ライオンに乗ったまま近づきサムライブレイドを突き立てようとする。

「死ぬ前に言え。あの娘と、村人に謝るんだ」
止めは猟兵の皆がしてくれる。勝てると信じての言葉だ。


キャリウォルト・グローバー
なるほど…お主がこの事件の黒幕というわけだな。
お主にいかなる理由があったとしても
此度の事件、お主を悪と判断するには十分すぎるゆえ、
ここで某の刀の錆としてくれようぞ。

【POW】クルーエルオーダー

ふん!そのような紙など当たる前に燃やせばいいだけのこと!
刀での接近戦だけが能の女と思うのではない!!
『熱視線(バーンゲイザー)』!!!!

――――――小細工は終わりか?
ならば斬る…!!


アストリーゼ・レギンレイヴ
――ああ。
やっと。やっとお前たちを、この手で殺せる。

殺気も、殺意も、隠す必要すらない。
お前たちを目の前にして、背を向ける必要もない。
この身は全て、すべてお前たちを殺すためだけにあるのだから。

両手で握り締めた黒剣を思いきり叩き付ける。
息をつく間を与えぬように、間断なく攻撃を。
前線から退かず。他の者への攻撃は、全て庇う気概で。

目を、逸らすな
あたしから、……お前たちが奪ったもののなれの果てから
目を逸らすことは許さないわ

相手が足を止めた刹那、ユーベルコードを発動
血茨を束ねた槍で、穿ちぬく。
壊す場所は、手でも足でも構わない。
この一撃が、お前を倒す布石になるのならば――。


アマラ・ミュー
出遅れちゃったね。じゃ、遅れを取り戻そうか

誰かが隙を作ってくれたらそれを逃さない
基本方針はこれでいくよ。
敵から距離を取って立ち回り
攻撃を「見切り」
可能な限り回避を試みる。

ただ、敵のクルーエルオーダーに対しては回避以外の対応を優先するよ
詳細はわからないけれど敵に主導権を握られるのは不味いからさ。
誓約書を撃ち、破壊を試みる。「援護射撃」は得意なんだ。

敵に隙が生まれたら、『木枯らし』で【大空を穿つ】。
外道なんでしょ、相手。なら苦しんでもらうよ。
この地を蝕む毒そのものに、因果応報って言葉を体感させてあげようね。

何者も罪を犯せば報いを受けるものだよ。
ここにそれを与えるモノがいないのなら私達がやってやる。


三岐・未夜
「……武器の複製は、僕が撃ち落とす」

べつに、強くないし、戦うのも好きじゃないけど、僕は僕にやれることをやる。電脳ゴーグルを被ると、重苦しい髪の隙間から覗くのは夜に傾く黄昏色の瞳。

こっちにおいで。
ここに獲物がいる。

そう示すように、手招くように、誘蛾灯のような狐が催眠と誘惑をもって攻撃を誘き寄せる。
75体ものエレクトロレギオン一斉に操り、同じ戦場にいる人々の間を縫うように飛ばして吸血鬼の武器の複製を次々撃ち落とす。

「……シューティングゲーム、結構得意なんだよね」

自分は仲間の援護に回る。そう決めた。戦うの、嫌いだし。でも、出来ることがあるならやろう。やらずに後悔するよりは、やって苦労する方が良い。


雨宮・冬華
救出は終わったのですね。それはなによりなのです。ではこれから悪霊折伏のじかんなのです。あにぃ(譲葉)とお師匠(玄冬)と空ねぇ(空穂)と綾ねぇ(綾女)といっしょなのですよ。
あにぃとお師匠に前衛に立ってもらって、女子陣は後ろから攻撃を仕掛けるのです。
丈夫な二人には壁になってもらうのですよ
数は正義と聞くので終幕を齎すもの、六曜で花吹雪を見せて差し上げましょう
腐った性根、白百合で叩きのめして差し上げます
知っていますか?白百合は死者を悼む花。あなたが苦しめた人たちに詫びながら……冥府の果てに、堕ちろ
大丈夫、救ってあげます。曲がりなりにも陰陽師は生と死を見守るものですから。腹立ちますけどね、見送ってあげる


風峰・空穗
冬華がだいぶ怒ってるみたいだけど、愚劣を赦せないのは私達も同じ
恐怖による圧政はここまでよ、悪党
師匠(玄冬)と譲葉に壁役をやってもらって、私は司令塔を
冬華は突貫気味のおバカだし、綾女はまだ戦場に慣れていなそうだからバランスを取りながら攻撃を仕掛けるわ
なぜこんなことを、とは聞かないわ
貴方は虐げたかったから虐げたのでしょう?
ならば私達が許せないから滅ぼすとしても文句はないわね?
しっていて?
何かをしたいという権利は、何かを引き換えに失うかもしれないという覚悟と、何かを代わりに果たすという義務を負ってこそ訴えられるのよ
貴方は私達の逆鱗に触れた
さぁ、殺し合いましょうか
リザレクト・オブリビアンで片を付けるわ


木崎・綾女
師匠、譲葉、しっかり壁やってよね。そこのちまいの(冬華)が突っ切っていったら止められるのアンタたちくらいなんだから!まかせたわよ!?
空(空穂)と合わせてエレメンタル・ファンタジアを使うわ
冬?あの子は……突っ走るでしょ、こっちが合わせてあげるしかないわね
ヴァンパイア、ね。ダンピールならうちにもいるけど。
生まれ持って悪だとしても、善になろうとすればそれなりに人のために生きることはできたでしょうに
なんだか哀れね、こいつに虐げられてきた人も、虐げるしか生きる楽しみを見いだせなかったこいつも
終わりにしましょう、こんな誰も救われないバッドエンド
あんたはともかく、アンタが虐げた人は幸せになる義務があんのよ!


小金井・譲葉
壁壁いうなよ。そう言われんでもちゃんとやるっての。うちの餓鬼どもはおっかないね。
冬(冬華)が突っ走らないように見張りつつ師匠(玄冬)と壁役だ
司令塔は空、綾は初戦闘だ、無理すんなよ?
咎力封じでもつかってみっかね
奴さん明らかに「咎」を犯してるわけだしな
生きる上で楽しむのはいいことだよ
そこに自分なりのプライドややりがいもあったんだろうさ
でもな、自分のために他者を屠るなら、他者に屠られる覚悟をしねぇとな
救われないものに救いの手を。それが雪椿の営業方針だ
お前は俺らや、他の猟兵の怒りに触れた
ここで止まってもらうぜ、ヴァンパイア
怪物は怪物らしく、墓場に還んな
手向けの花は、そこの陰陽師が贈ってくれるさ


土井・玄冬
壁か、うむ、相分かった。それくらいしか能がないからな、でかい図体を生かすぞ
妖剣を解放する
こら、冬。お前はあまり前に出るんじゃない。転んだらどうするんだ。おとなしく後ろから爆撃していなさい
譲(譲葉)と空(空穂)と綾(綾女)と協力だな
頼もしく弟子たちが育って師匠として鼻が高いぞ
好きに生きるのは生き物の特権だ
だが、弱者を虐げ生きるものは亡びるのが道理だろう
悔い改めろ、とは言わん
お前が選び、歩んだ道だ、そこにお前の正道があったなら、口を出すだけ野暮だろうさ
だがな、俺たちは俺たちの正道のためにお前を撃つ
必ずだ
救われないものを救うと、俺は決めたのだから
俺自身が救われるためにな
嗤っていけ


ケース・バイケース
(躍り出る鯉)(いや、正しくはバウンドボディSPD31を使用して、良い感じにみょんっと伸びてヒュンとやって来た)
(鯉は跳ねている)
(敵の親玉である、ヴァンパイアの目の前でびちんびちんと跳ねている)

(その動きは、たぶん敵の目を引き付け、他の者が動く隙を恐らく生み出した)
(と思う)

(鯉はびたんびたんと必死に跳ねている)
(それしか出来ないのだ。何故なら鯉だから)

(それでも鯉は、跳ねる)

(やがて鯉は、水がない為力尽きていく)

(無力)

(時間は稼いだ。たぶん)



「ーーやばいよ奏ちゃん。本気すぎるコスプレだよ。本物の厨二病だよ、しかも変に拗らせてるよ」
 そんな。マイペースな声がした。赤翼の……ヴァンパイアの言葉になど、耳を貸してはいなかったのだろうと思える声が。
 「なんて声かけてあげたらいいか分かんない」
 「んー。イタいですねって、教えてあげたらいいと思います」
 平凡な雰囲気の長身、犬曇・猫晴(f01003)と、金糸と銀目の調度品の如き彼女は織譜・奏(冥界下り・f03769)だ。彼らはいたって真剣な目をしていた。それはヴァンパイアを煽るに充分であった。恐れにコートされた怒りが、赤い瞳に燃えた。
 「貴様ら、なにをのうのうとぉ……!」
 指先の動き一つで、剣が空気を裂き。迷わず、よりか弱そうな奏目掛け、それは飛来する。奏は後方に脚を走らせ退避する。
 炸裂音。剣が撃ち落とされた男。奏を護る猫晴の銃撃と、ゴーグルを装備した夜狐、三岐・未夜(かさぶた・f00134)のエレクトロレギオンの射撃だ。
 「ふー……武器の複製は、僕が、撃ち落とす。シューティング、結構、得意だから」
 できることはする。後悔は、したくない。犇めくは総数75。数の暴力と呼べるレギオン達が、合間を縫い、即ち隙間なく、飛来物を撃たんと配置する。
 「ありがとね、私はここでどんどんバフ盛っていきますから!」
 「そう? なら後ろは安心だね。僕は接敵して来よう。距離取ると、面倒な手合いでしょ。あれ」
 「やっちゃえ犬曇さん! ーー勇猛なる者へ捧げよう。私の歌を、希望の未来を!」
後方に退避した奏が、蛮勇の戦歌で猟兵達を一斉に鼓舞する。身体能力が開花するのを感じる。猫晴と、ライオンライドと共にあるナイ・ノイナイ(幸いの鳥・f02501)が、先陣として駆けた。
 猫晴は、後方の奏を特に斜線に取るように、迫る剣を撃ち落としては、接敵を叶え剣鉈を振る。ナイは、残像を残すほどに素早く縦横無尽に駆け、翻弄しながら剣を回避していく。その間にも、未夜のレギオンは次々シューティングの得点を上げていた。
 「猪口才な!!」
 血走る叫びと共に、ヴァンパイアはベッドサイドテーブルに置いていた紙束を乱暴に掴む。瞬間、それを阻止するように、ナイのサムライブレイドが、ヴァンパイアの腕に突き立った。
 「死ぬ前に。言え。あの娘と、村人に謝るんだ」
 「何を、何を……!! 私が何か間違っているとぬかすのか!!」
 ナイの要求は、この先のヴァンパイアの死を断ずるもの。猟兵の勝利を宣告するもの。言っても無駄だろうとも、罪を自覚する余地を与えるだけの、ナイの慈悲だ。未だ。未だ勝負はかけらも決まってすらいないだろうと。ヴァンパイアは怒りのままに。ブレイド突き立つ腕の肉が刮げる事すら構わず紙束をばらまくのだ、この距離で。ナイに、血の匂いの紙が注ぐ。ーーこれは、まずい。焦るナイの瞳に、焦燥と歓喜に開いた赤い瞳孔の、下衆な笑みが写り込んだ。そこで退いてしまった。それがまずかった。
 「《お前はもう、動いてはならない》……痛い目をみたくなかったらなぁ!」
 クルーエルオーダー。血の契約書に触れたものにルールを課し、それを破るとダメージを与える……動いてはならない、など。犬でもできる契約を、ナイは破ってしまった。内側から、命を拒絶するような激痛が走り、獅子にしがみ付き、歯を食いしばり悲鳴を喉奥で押しつぶしたが、その声も逆流する血でごぼりと濁った。
 それだけでない。ヴァンパイアがばらまいた紙束すべてが契約書だ、それに触れてしまったものは軒並み動きを奪われる。猫晴の死角から向かった契約書は、背に触れる寸前、奏のワイヤーが絡め、破いたが。未夜のレギオン達は多数動きを奪われた。もし動けばダメージが走り使い物にもならなくなる。……いまの弾幕は避けるの、難しかったな、と。苦く、月の瞳を歪ませる。
 「犬曇さん、無事ですか!」
 「奏ちゃんのおかげさまで。けどちょっと、あれやられるのは焦るなぁ」
 「そうかよビビってんなよ、ビビってねえようるせえな」
 入れ替わる如く、ブツブツ独り言を溢す夢飼・太郎(扉やかく言うな・f00906)が駆け込んだ。我武者羅に、グラウンドクラッシャーを叩き込もう。目標は、ヴァンパイアーーと見せかけて、この施設そのものに。故に、ヴァンパイアが避けたことは、さしたる問題では無かった。
 「は、ふははっ……!? どこを狙っている!?」
 「うるせえ」
床は轟音と共に破壊され、かつその衝撃のあまりの強さに、岩場の如く突き立った。それを太郎は繰り返す。ヴァンパイアの嘲笑が響く。
 「誰がトンマだ、誰がビビってるだ弱いだ、弱かねえうるせえ黙らすぞ。生かしも、逃しもしねえ」
 ただっ広いこのエリアに、石床の盾を次々作る感覚で。ヴァンパイアを追う振りをしながら。
 しつこい太郎を追い払うべく、追加のクルーエルオーダーの血文字を書こうと、蝙蝠どもに契約書を集めさせる。契約書を加えた蝙蝠が、ヴァンパイアの元に集まって行く。描かれた血文字は、乾いた砂のように消えて行くのが見えたーーまずいな、太郎は舌を打つ。
 「ならば私は、貴様をここで生きて帰れぬ姿にするだけ。さあどんな契約がお望みだ!」
 叫んだヴァンパイアが、蝙蝠から契約書を受け取るべく手を伸ばしたその時、熱線が襲った。
 蒼い熱線は部屋の上空一帯を撫で払い、蝙蝠ごと契約書を次々燃やす。発生源はウォーマシン、キャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)だ。
 「熱視線(バーンゲイザー)……そのような紙など、当たる前に燃やせば良いだけのもの。無事だな、太郎よ。」
 「助けてなんて言ってねえが危ないところだったありがとう」
 「太郎、太郎、無事でよかった。あれ、痛そうだから……」
 「ふ、それがしにも場を譲ってもらいたい。奴を刀の錆にせねばならぬのは、それがしも同じ事……」
 キャリウォルトの、普段は赤い瞳が。蒼く燃えるままにヴァンパイアを見据える。刀に手を掛けている。いつでも焼き殺せる。いつでも切り捨てる。正義の名の下、兵器は殺意を炯々と燃やし続ける。
 「吸血鬼よ。お主のこれまでの所業、そして先の言葉!生かす価値無しと断じてやろうぞ! 最早御託も無用、唯斬るのみ!」
 「斬れるものならばなぁ!!!」
 浮遊の剣と、巨躯の剣戟。散る火花は蒼く、蒼く!

 エリアに太郎が作った影に、血を吐くナイが、肩で息をしながら潜んでいた。立て直せ、立て直せ。目を閉じ痛みの緩和に神経を注ぐーー時。暖かな光が、まぶた向こうに在った。愛される全てのものに訪れる祝いの日、クリスマスを思わせる、フェアリーのエルフィ・ティントット(グッドフェロー・f00156)だ。エルフィの、生まれながらの光が、ナイを治癒する。
 「さあ、これで動けるだろ? まだ痛むなら、一度下がろう。ひっそりと回復してあげるとも」
 ね!ニヤリ勇敢な笑みだった。橙の瞳は、まさに小さな灯の色。ぐるるる。金の獅子も、同意するように甘く喉を鳴らした。
 
 クルーエルオーダーにより、動けなくなったものは下がり。動けるものが代わりに前に出る。咲くは、古本屋『冬椿』。
 「あにぃ、お師匠、前方はお任せします!悪霊折伏のじかんなのですっ!」
 「しっかり壁やってよね。ここのちまいのが突っ走ったら、止められるの、あんた達なんだからね!」
 「壁壁言うなよ、言われんでもちゃんとやるっての。うちのガキ供はおっかないね」
 「ははは。そうまいった顔をするな、譲。俺は弟子達が頼もしくて、鼻が高いぞ?ーー相分かった」
 ちまい、ながら、豪奢な衣服に身を包むのは雨宮・冬華(薄暮の魔女・f00232)。緊張と心配を拭い去れぬ声を上げたのは木崎・綾女(宵月の魔女・f00737)。
 二人の前に立つ赤髪は黄金色・譲葉(凶架煉獄・f00835)。師匠と呼ばれた白き男は土井・玄冬(逢魔の魔人・f00965)。
 そしてさらにその後ろにてーー冬椿司令塔、風峰・空穂(響藍の魔女・f00506)は、その若さに見合わぬ母性をもった眼差しで、四人の布陣を眺め見た。
 「恐怖による圧政は、ここまでよ。……さあ。殺し合いましょう」
 「は、なにかと思えば……場違いな子供、緊張して使い物にならなさそうな女。女にいいように言われる男、すでに枯れた男、後ろでふんぞるは若い女……お遊戯だな!」
 「……綾女は落ち着いて、戦場をみて。あなたに出来ることの、最善を尽くして。大丈夫、あとは私が合わせるわ。冬華は前に出過ぎないこと。後ろから、花を舞わせてあげなさい」
 「はい! ーー腐った性根、白百合で叩きのめして差し上げます」
 冬華の。護符が。鬼道書が。なぎなたが。怨嗟の玉が。業魔の剣が。無数の白百合の花びらに変貌してゆく。満開の、甘い香りが立ち込めた。
 ーー白百合は祈りの音色。弔いの羽音。ほら、死者の葬列が貴方を連れにやってくる。
 幼さ残る舌が、美しく言の葉を紡ぎて。白百合は、ヴァンパイアへと襲来する。併せて、ユーベルコードと、敵の『咎』を封じるべく、譲葉の咎人封じも放たれた。が。
 「く、それが、どうしたという!」
 新たに複製された剣が舞う。盾のように、主の周囲を固めこむ。花びらは剣の盾に阻まれ、どどうと次々爆発した。譲葉が飛ばした咎人封じも、炎に飲まれる。ぎら、ぎら、目を焼く光が、剣越しに視界一面を覆う。
 「は、はは……爆撃か! 愛くるしい見目をしながら、恐ろしい事をしてくれる……このような無駄な事はやめるがいい。少女、お前は後方で、無力に絶望し、震えているくらいが最も愛らしくーーぎゃおおう!!?」
 「悔い改めろ、とは言わん」
 言葉の途中だった。花に燃える剣の盾が、吹き飛ばされた。玄冬の、妖剣解放による、斬撃と衝撃波が、敵の護りを一瞬で瓦解させる。無数の花弁が、一斉に流れ込んだ。炎と悲鳴が、再び上がる。妖気纏う玄冬が、振り抜いたままの姿勢から、ゆっくりと、姿勢を立てながら語る。
 「だが、弱者を虐げ生きるものは、亡びるのが道理だろうよ」
 「その白百合が、アンタへの手向けの花だ。そこの冬華からの、な」
 譲葉が続け、冬華が前のめりに頷いた。その青の瞳は平時の、海をたたえたような豊かな美しさは今は凍てついて。怒りが、底冷えしていた。
 あなたが苦しめた人たちに詫びながら。冥府の果てに、堕ちろ。と。
 花の火葬から、ヴァンパイアは怒りの雄叫びを挙げた。炎から飛び出し、振り払い。葬火纏う剣を、怒りのままに、縦横無尽に、無秩序に、暴力の嵐の如く。意志無き攻撃は、虫の群れを回避しにくいのと同じように、回避の難易度をあげる。後衛では、回避を特に不得手とする者を守るよう、キャリウォルトがその体躯を盾とし覆いかぶさっている。
 そして、冬椿では。その剣すら、壁たる譲葉が、後ろに届かせまいと防ぎ抜く。
 「師匠は無茶すんな。あとその寿命削るの、いったんやめてくれ」
 「そうか。弟子達が頼もしくて、鼻が高いな」
 「それさっきも聞いたぞ」
 攻防の苛烈さの中でも、ただ仲間を思いやりながら。壁としてそこにあり続ける。炎の剣は何が助かるかって。斬られても、傷が焼けて、血が出ずに済む事だった。……肉の焼ける匂いがする。
 篭る炎の熱を冷却すべく、綾女のエレメンタル・ファンタジアが氷の嵐となって部屋を呑む。
 「なんだか哀れね、こいつに虐げられてきた人も、虐げるしか生きる楽しみを見いだせなかった……お前も」
  冷却は、霜となり、氷となり。ヴァンパイアの行動を封じていく。
 「終わりにしましょう、こんな誰も救われないバッドエンド……あんたはともかく、アンタが虐げた人には! 幸せになる義務があんのよ!」
 「バッドエンドを連れてきた本人が、よくもよく鳴く…………!!!」
 「ね。あなた、知っていて?」
 空穂の声が、静かに、されど心に直接反響するかのような美しさで紡がれる。
 「何かをしたいという権利は、何かを引き換えに失うかもしれないという覚悟と。何かを代わりに果たすという義務を負ってこそ、訴えられるのよ。
 それすらないあなたは。私達の逆鱗に触れた。」
 リザレクト・オブリビアン。死霊騎士と死霊蛇竜が召喚され。傷付いた譲葉と、時を削る玄冬に代わり、吸血鬼めがけ進んで行く。
 その間にも白百合は舞う。
 「大丈夫、救ってあげます」
 陰陽師は。生と死を見守るもの。だから例え、それが、すくわれぬものを生み出す悪魔だったとしても。見守り、見送り、それを命の救いと呼ぶ。
 「腹、たちますけどね」
 炎と、食い縛る絶叫が、そんな冬華の冷たい声をかき消すように、轟く。
 
 その間にも、エルフィの回復仕事は終わらない。
 派手な戦いに、範囲の限られた地下屋内。吸血鬼の剣は、次々血を吸っている。エルフィもまたランプなどの物陰に隠れては、先の接近戦により、クルーエルオーダーの餌食となっていた太郎を。肉を焼き切られた譲葉を。命を削った玄冬を。あるいは流れ弾を捌ききれなかった猟兵に、治癒光をこっそり降らせていくが。エルフィの疲労が積み重なっていく。
 頭が朦朧としてくるのだ。視界が不明瞭になってくるのだ。動悸息切れは、はたしてまだ隠せているだろうか。それでも、それでも、その笑顔を曇らせる事なく、滲む汗すら星の輝きに、覚束ない飛行は妖精の踊りに変えるのだ。
 「……絶対ぜったい、負けるなよっ。誰も、怪我すら残さず帰るんだ。ボクたちがあの子を泣かせない! さあお行き、怪我をしたらいつでもボクが駆けつけるさ!」
 一人一人に、祈りにも似た、真っ直ぐな鼓舞を捧げて。そうだ。諦めなど、とうに捨ててきてしまった。
 されど。負傷者が治ってゆくその違和感に、気付かないヴァンパイアではない。
 そしてその原因を探知すべく放たれた影の蝙蝠の群が、妖精一匹見つけるのには時間は要さなかった。
 「そこか……そこにいるな、小賢しい羽虫!!」
 弱者を見つけたヴァンパイアは、意気揚々と剣を差し向ける。
 その時、鯉が、勇猛果敢に飛び出した。
 鯉が。勇猛果敢に。部屋中央へ。我先に飛び出した。
 集まった猟兵たちの隙間を、バウンドボディによる伸縮性を駆使しすり抜け、ヴァンパイアの眼前へと飛び出していた。
 ヴァンパイアと猟兵、多かれ少なかれ軒並み驚愕を浮かべたことだ。思わずヴァンパイアが駆使する剣が静止した。
 それこそが鯉、もとい、ブラックタールのケース・バイケース(鯉・f03188)の目論見だ。
 それにーー仲間が踏ん張っている時に、仲間が怒りと共に戦う時に、その荒みを癒せなければ鯉の存在価値などないと思ったのかもしれない。鯉は愚直に無力に跳ね続ける。濡れた巨体を硬い床に打ち付けてびだんばたんと跳ね続ける。その脈絡の無い状況の温度差、グッピーなら死んでいるであろうこの現状では、ヴァンパイアももう完全に「は?」みたいな顔をしたまま動けない。
 エルフィによる治癒と避難が、無事安全に終了した。

 なお鯉が作ったこの隙の対価は、酸素欠乏。水を求め、ぐったりと力つきそうな鯉の危篤を前に、大慌てで抱きかかえて走り去る未夜と太郎のお水捜索RTAは、また別の話とする。

 「ーー茶番かぁ!!!!?」
 怒号が一帯を揺らした。
 「うちの鯉の勇気を罵倒するのは!やめてもらいましょうかねえ!」
 呼ぉん、と、よく通る声が響き渡りて、白椿が咲いた。床から咲いた。中空めがけ高く伸び、夕焼け小焼けの放送塔が如く。それは白椿のホログラム。その手綱を己が意志にて握るは、夕暮れの鵺、ユキ・パンザマスト(ヤオツバキ・f02035)。
 剣、蝙蝠どもが、いちにの幾多と舞う高くへ伸ばし、天辺の花からの距離感も、獣の勘にて掴んでは。
 「さぁさ皆様、帰らぬ悪い子はけものが食っちまいますよぉ。逃げろ隠れろ、準備はいいですねっ!?」
 位置よし退避よしノイズよし。いいや気付いたヴァンパイア、てめえだけは逃がさねえ。
 「禍時ですーーー落ちろや、堕ちろぉッ!!!」
 ーーウウウア。ウウウア。ひがおちる。
 脳髄を揺さぶる、酷く歪んだサイレンが、衝撃波として効果範囲内に轟々と。遊び時間の終わりを告げる。がしゃん、がしゃらら、衝撃波を受けた剣は落ち。影の蝙蝠はざららと消えた。
 「さ、厄介な露は振り払いました。後には夜帳がおりますよ、血の匂いの化け物が、次つぎ集まる時間です」
 なぁんてね。小さく冗談めかし締めましては、白椿のくびがぼとりと落ちて。きらきら消えてーー
 ユキの頭部に、血が咲いた。
 「ぇ?」
 剣は落ちれど、その操作権までは失われていなかったのだろう。ヴァンパイアが、死角に落ちた剣を繰っていた。頭皮が削げ、耳が斬り裂けた。獣の聴覚を持ってしても反応が遅れたのは、屋内故の残響が、音を隠したか。急所にほど近い負傷に、ユキは苦痛に唸り声めいた悲鳴を。吠えるものかと、喉の筋肉がぎしり軋む程、無理矢理に飲み込んで。
 ヴァンパイアは嬉々と語る。血管が破裂し、穴という穴から血が垂れ落ちている。その血を指先で掬っては、新たな書面をぐしゃりと掴んだ。
 「たかが音だ、その程度で何をいい気になっている……!! 血の匂いの化け物? 貴様の首が刎ね落ちるという話だな?そうだ!次はそうしてくれよう、《お前は血を流してはならない》ーーー」
 カミサマまで届け。と、女の声がした。
 銃声が重なる。
 ひとつは、契約書を撃つ弾丸ひとつぶ。それは次々連続し、的確に、流星群の如く撃ち込まれる。書面が穴だらけになるほどに、胸に達した弾丸と傷口が、血を広く広く吐き出していく。
 もうひとつは、ヴァンパイアの右手を吹き飛ばす弾丸だ。手首が後ろに飛び、体身体が置いていかれるなど、なんと貴重な体験か。
 声にもならぬ激痛と驚愕に、ヴァンパイアが顔を上げれば。銃口から煙をたなびかせるは緑髪のエルフ、アマラ・ミュー(天のカミサマを射るように・f03823)。柱影より、傘の仕込み銃を今も静かに向け続ける紳士、ジェイクス・ライアー(素晴らしき哉・f00584)。
 「やるね、ジェントルマン。もう片側も吹き飛ばしておく?」
 ジェイクスが、静かで短い呼吸音と、発砲で応じた。文字を書くのに必要である、手というツールを、淡々と破壊していく。彼の仕事は確実で、冷静で、無慈悲である。故に、その手際は美しい。
 「ぎっ……さ、ま、らぁぁあ……!!!」
 「まあまあ、そう怒ると、毒の周りが早くなるよ」
 アマラが微笑んでいた。さも、その言葉を待っていたかのようなタイミングで。言葉の通り、ヴァンパイアを毒の激痛が襲う。開いた穴を抑えたところでもう遅い。
 外傷とも、魔術とも違う。内側から直接焼くような、心臓周辺を直接食い破られるような毒の痛みは、想像できない方が幸いだ。
 「ーーねえ、因果応報の味はどうだい、外道。それが村の人たちが耐えてきた痛みだよ」
 
 戦いは、間も無く終わりを迎えるだろう。
 血臭立ち込める部屋は、いずれ崩れ去るだろう。

 「目を、逸らすな」
 アストリーゼ・レギンレイヴ(Lunatic Silver・f00658)が、ヴァンパイアの眼前へ飛び込んだ。その目に宿るは殺意、四肢に宿るは殺気、身体に巡るは眼前の敵を殺し尽くすというさだめの叫び。
 黒き剣を細い両の腕で握りしめ、絶え間なくヴァンパイアに叩きつける。それをヴァンパイアの剣が受け、いなし、黒剣ごと女を吹き飛ばさんと振るわれれど、殺意は深く絡みついて、足一歩分たりとも退きはしない。
 「逸らすな。あたしから。おまえたちが、奪ったものの、なれのはてから」
 逸らすことは許さない。これは私の復讐だ。
 その殺し合いは、見るものの心臓ごと掴むダンスのようでさえあった。どんな殺意も、憎悪も、殺害も、突き詰めてしまえば、どす黒くも、美しい。炎も、悲哀も、いつの時代も美しいものなのだから。
 剣と剣が噛み合ったまま天へと振り上がり、一際甲高い音と共に離れた。アストリーゼの眼光は濁らない。靴底が床を鳴らす。
 「ーー潰えなさい」
 その言葉を合図に、アストリーゼの脚元から荊が躍り出た。ヴァンパイアが斬り裂けども構わない、無駄なこと。荊はヴァンパイアの目を貫くまで、止まることは決して無かった。

 がくん。一度漕いだ舟でむりやり首を起こし、狭い視界の中、それでも踏ん張っているのは寧宮・澪(澪標・f04690)だ。数多のエレクトロレギオンに、オーラ防御を付与し少しでも頑丈性を上げ、仲間の盾となるべく小さな機械兵たちは動き回る。
 「そうです……怒って……怒ってます、よー……」
 しぱしぱ、目をなんども瞬いて、細めて、それでも擦って。疲労感も重なって、澪の眠気は重度のものとなっていた。
 「女の子、いじめて……、村の人、いじめて…………。ひきこもっ、て。弱い者、いじめして……」
 眠りとは、小さな死にも似ている。眠気に苛まれれば、全てがどうでもよくなるものだ。それでも意識を繋げ続け、それも、他人の為の怒りを振るい続けることが、どんなに難しいか。彼女の内の怒りの炎が、どんなに青く熱く燃え続けていたか。
 仲間の狙撃手を、回復手を、護り、時に狙撃を行う。いじめて、楽しかったの?ばかなの?もう、眠すぎて、しぱしぱして、怒りっぱなしで、涙だって出てしまう。
 「もう……もう………ねむいのぉ…………! でも、おこって、るの、よー……!!」
 最早ただの駄々だったかも知れない。けどだめだ、この終焉を見届けるまでは。どんなに小さくとも、死ぬわけにはいかないじゃないか!

 「大丈夫。もうすぐ、終わるから」
 グウェンドリン・グレンジャー(NEVERMORE・f00712)が、真っ赤に開いた瞳孔で牽制を続ける。黒い翼状の刃の切れ味も素早さも、罠通路での比ではない。それはもはや牽制とも呼べぬ殺傷力。ブラッド・ガイストによる強化も相俟って、もはや少女は、いきものを喰らうためだけの姿に成り果てた。血を纏う黒い悪魔。あるいはその身を捧げ続ける黒き天使。
 ジェイクスの鋼糸がヴァンパイアを絡め取り。アストリーゼの茨が貫いて。動きを封じたのを、グウェンドリンは逃さない。
 捨て身の一撃、体の限界を無視した加速で飛び込んだ。Mórríganの刃を針山の如く
ヴァンパイアに突き刺し、貫き。翼の内側に、獲物を包み込むように刺し尽くしーー生命力を、吸い上げる。大食らいが、ありったけ、吸い上げる。
 ヴァンパイアの表情がひどく歪む。奪われる分を奪い返そうと、牙を、剣を、グウェンドリンに突き刺し返す。少女は、それを冷徹に見つめていた。
 「……あなた、名前は」
 血だ、血だ、血ばかりだ。二人の血だまりが、凶器の檻の内側にぼたぼたと海を作る。
 「いや。やっぱり、いい。名乗らなくて、いい」
 名前くらい。聞いてやろうかと思ったが。散々村人を蹂躙したヴァンパイアの血はあまりに臭くて。そんな個体情報への興味は、すぐに失せた。
 肉を貫いている事実すら気にかけず後方へ跳躍すれば、鋭利な刃は肉を内側から断ち斬った。

 ごぼぼと吐血に濁るヴァンパイアの喉が。吠える。
 「何故……何故、何故だ。うまく、回っていたではないかァ……!! 少女は、生きて、愛され、村は私のために、全てを、捧ぐ……!!これを!壊す権利が!貴様らにィ……!!」

 そして、総ての終焉は、ノイズで始まった。
 「Summon: Arms…………装着完了」
 豹鎧が、召喚したミサイルランチャーを装備する。本作戦開始時より参加していた彼であるが、その姿は、少女救出時のそれとは大きく変貌していた。
 両腕は、速度を重視された豹鎧と比べあまりにアンバランスに巨大化し、あらゆる暴力の象徴と化していた。
 暴力には、暴力を。
 デタラメに搭載された武装の不十分な排熱は獣の如く唸りを上げ、繋がる本人をも蝕むが、暴力とは、血も涙も無いものだ。故に彼がその身体負荷を言語にて訴える事は無い。理解を欲してもいない。
 だが、それが、こんな兵士ーージャガーノート・ジャック(オーバーキル・f02381)にできる唯一の事なら。
 (それで、誰か。救えるなら。)
 「ーー殺す以上に、お前を殺しつくしてやる」
 その宣言は、なんと非効率的な事だ。それこそが、鎧を脱がなかろうが、暴力の権化であろうが、その声ひとつひとつにノイズが掛かっていようが、ジャガーノートが心持つ何よりの証。
 故にこそ、誰もそれを止めようとはしなかったのだろう。

 ミサイルランチャーが悪を焼いた。
 永かった悪夢ごと焼くように、施設ごと打ち壊れてゆく。
 事前に施設破壊を狙っていた者も居たが故に、悪夢の終わりは脆かった。
 爆風が、瓦礫が、崩壊が。猟兵達を一斉に襲う。
 刃が、光が、歌が、銃撃が、機械兵が、衝撃波が。猟兵達が一切防ぎきる。
 崩れ去った天井から、村から見える、満天の星空が見えた。
 爆発音を聞きつけ、村人が徐々に集まってくる。
 地上から猟兵達を覗き見る村人達の表情を見れば、巻き込まれた者などの憂いは無いことがすぐに伺えるだろう。

 駆けつけた少女が、躊躇無く猟兵達目掛けて飛び降りて。
 その喜びの涙を抱きとめたなら、それにて、この村の悲劇は、おしまい。

 流れた血の上に、今がある。
 暗闇が、照らされた日の物語。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月22日


挿絵イラスト