「皆様! 初詣に参りませんか?」
ワクワクした様子でグリモアベースに駆け込んだアカネ・リアーブルは、集まった猟兵達に地図の一角を指差した。
サムライエンパイアにある、山の上にある鎖木神社は初詣客で賑わっていた。
12月31日深夜。
雪深い参道を抜けた先の神社で参拝した初詣客は皆、振る舞われるお汁粉や甘酒で暖を取って焚き火の火に当たりながら夜を過ごす。
遠くから除夜の鐘が鳴り響き、おみくじやお守りも売られていて、設えられた舞殿では年越しに合わせて神楽舞が舞われている。
鈴を手にした巫女達の舞を楽しむこともできる。
やがて夜が明け、初日の出が昇る。参拝客は皆これを待っていたのだ。
注連縄が巻かれた桜の御神木の向こうに見える海。そこから昇る初日の出は、幻想的に美しい。
二年参りの後、海の向こう側から昇る朝日を拝むと一年間無病息災でいられるのだとか。
年のはじめに、大切な人達と一緒に過ごすのも悪くない。
「この二年参りにぜひ、皆さんで参拝したいと思います。31日の深夜に転送いたしますので、その後思い思いにお過ごしくださいませ」
猟兵たちはどんな服装でも不審に思われたりしないので、振り袖や袴姿などで参拝するのはとても絵になって素敵だ。
現在、レディ・オーシャンがサムライエンパイアで事件を起こしている。だからこそ、猟兵達が率先して楽しむことで人々をあんしんさせることができる。
思う存分、初詣と初日の出を楽しんで欲しい。
「行く年は本当に、色々なことがございました。来る年も色々なことがあるのでしょう。そんな中でも無事に一年を越せるよう、お参りできたら嬉しいです」
アカネは微笑むと、ぺこりと頭を下げた。
三ノ木咲紀
オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
三ノ木咲紀です。
2019年は大変お世話になりました。
2020年もよろしくお願い致します。
という訳で、初詣シナリオです。
二年参りをして、焚き火の火に当たって夜を越して、桜の向こうから見える初日の出を拝んで帰るという流れです。
夜明けを待つ間、振る舞われる甘酒やお汁粉を楽しんだり神楽舞を見物したり、おみくじを引いたりもできます。
全部に絡んでも良いですし、ここだけは! というポイントに絞っても構いません。
思い思いに楽しんでいただければ幸いです。
なお、甘酒は米麹製ノンアルコールです。
未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反する行為は描写されませんのでよろしくお願いします。
お連れの方がいらっしゃる場合は、一行目にお名前や合言葉をお書きください。
お声がけがございましたら、同背後のグリモア猟兵がご一緒させていただきます。
プレイングの受付は、12月31日 朝8時31分以降お受けいたします。
それでは、良い一年になりますように。
第1章 日常
『サムライエンパイアの冬を楽しもう』
|
POW : 体力の限りを尽くし、力いっぱい、サムライエンパイアの冬を楽しむ
SPD : 遊びに参加したり、料理や作品を作ったり、クリエイティブに冬を楽しむ
WIZ : 恋人や友達と一緒に、サムライエンパイアの冬を幸せに過ごす
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御剣・刀也
ステラ・エヴァンズ(f01935)と一緒に参加
WIZ行動
ステラと一緒に甘酒を飲みながら初日の出を待つ
その間、巫女の舞を見て、ステラが踊りたいというのなら何も言わず躍らせて、ステラの舞を見る。
舞を見た後舞の感想を言う
「なんていうか、綺麗としか言い表しようがなかった」
と、ちょっと照れつつ感想を言う
初詣をして願い事をしたら、何を願ったのか聞かれたら
「秘密だ」
と教えない
初日の出を手を握ってみながら
(何時までも隣にいられますように)
と願いを心の中でもう一度となえる
ステラ・エヴァンズ
刀也さん(f00225)と参加
WIZ行動
刀也さんと日の出を待ちつつ、神楽舞をするようなら自身も一緒に舞を奉納させていただけないか交渉します
これでも戦巫女なもので…混ぜていただけるなら誠心誠意心を込めて舞わせていただきましょう
刀也さんからの感想を聞けば
「ふぁ…き、恐縮です。その、ありがとうございます」
と相手につられるように照れて赤くなり
初詣で昨年の感謝をしっかり捧げつつ、相手の返答にむぅと膨れ
「なら私も秘密です。それにこう言うのは口にしたら叶わなくなるとも言いますしね」
初日の出を見て
(末永く刀也さんが健やかでありますように)
何処までもついて行くと手を握り返しては寄り添って
※アドリブご自由に
● 神楽に捧げる祈りと願い
幽玄な雅楽が、神楽殿に響き渡った。
爆ぜる松明に照らされた、闇の残る神楽殿。響き渡る笙や篳篥の、長く響く独特の音色。
ゆく年とくる年を寿ぐ神楽殿の舞台に、ひときわ鮮やかな鈴の音が響いた。
巫女装束に身を包んだステラ・エヴァンズ(f01935)が舞台中央に歩み出た時、神楽を見ていた住民から感嘆の声が響いた。
桜文様の千早に緋袴。青の髪には桜の冠。
松明の明かりと雅楽が満たす神楽殿の中央に進み出たステラは、手にした鈴をしゃん、と鳴らすと歌に合わせて神楽を舞った。
この夏。滲み出た織田信長という深い闇に覆われた、この世界の爪痕を癒やすように。今なお襲う外敵の脅威を祓うように。
神楽を舞い、新しい年を寿ぐステラの姿に、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は目を細めた。
天武古砕流の正統後継者として生まれ、修羅の道を歩んできた刀也の人生に、舞はさほど近い場所にはない。だが、ステラの神楽舞は素晴らしいものだと心が理解する。
共に神楽を見る猟兵や住民たちも、同じことを思ったのだろう。ステラの神楽舞を見守る住民たちの、どこか虚ろで人形じみた目の色に、少しずつ輝きが戻ってくるのが見て取れた。
雅楽と唄、そして神楽が三位一体となりカミを降ろし場を清めていく。
最後に鈴が高く鳴らされ、現実世界へと立ち返る。
一礼したステラが舞台の袖へと去るのを見守った刀也は、舞台袖でどこか放心したようなステラに歩み寄った。現れた刀也の姿に、我を取り戻し花のように微笑んだステラが駆け寄ってくる。
「刀也さん」
「お疲れさま。……なんていうか、綺麗としか言い表しようがなかった」
この感動を伝えるための語彙力のなさに内心うなだれながらも、それでも伝えようとする刀也の気持ちが伝わったのか。ステラは頬を赤らめると、鈴で口元を隠した。
「ふぁ……き、恐縮です。その、ありがとうございます」
照れて赤くなっているステラもかわいい。そう思う刀也の頬も、心なしか熱い。
神に詣で願いを聞き届けられるなら。浮かぶ願いは一つだけ。神に祈るのも、ただ一つだけ。
(「このまま、何時までも隣にいたい」)
照れながら佇む二人の間を、除夜の鐘が響いて消えた。
● 願いはたった、ひとつだけ
着替えや挨拶を済ませたステラは、刀也の姿を探して駆け出した。
焚き火の近く、一人ぼんやりと炎を見つめる刀也の影に得体の知れない恐れを覚えたステラは、浮かび上がったモヤのような不安を払うように明るい声を上げた。
「刀也さん、お待たせしました」
「いや、大丈夫だ。……さあ、行こうか」
「はい」
立ち上がった刀也の隣にそっと寄り添ったステラは、参道までの道を静かに歩く。
吐かれた二つの白い息が一つに混じり、夜明け前の闇の中へと消えていく。その白を見送ったステラは、本殿の前で鈴を鳴らした。
柏手を打ち、神に祈る。
昨年の感謝をしっかり捧げ、来る年も見守って欲しいと願う。
そして希望を一つだけ。
(「末永く刀也さんが健やかでありますように」)
修羅を生き、戦いに生を見つける刀也が無事でありますよう。神楽舞を舞いながら祈ったことを、ここでも繰り返し祈る。
目を閉じ祈り、顔を上げる。隣を見ると、まだ祈る刀也の姿があった。
やがて祈りを終えた刀也と共に、初日の出がよく見える丘の上へと歩き出した。
「刀也さんは、初詣で何を祈ったんですか?」
「秘密だ」
すぐに返ってくる答えに、ステラは思わず頬を膨らませる。
むぅ、とリスのようになるステラがあまりにも可愛かったのだろう。刀也は少し笑うと、問いかけてきた。
「ステラは何を祈ったんだ?」
「私も秘密です。それにこう言うのは、口にしたら叶わなくなるとも言いますしね」
「それは嫌だな」
珍しい笑みを浮かべる刀也を思わずぽかんとした顔で見上げた時、金色の光が差した。
今年最初の太陽が二人を包み込む。
地平線の彼方から投げられる美しい光に。ステラは絡ませた指に力を込めた。
腕に頬を寄せ顔を上げる。見つめ返す黒い目の奥に自分を見つけて、ステラはこぼれるような笑顔を浮かべた。
「あけましておめでとうございます、刀也さん。今年どんなことがあっても、私は何処までもあなたについていきます」
「それよりうれしいことはない。……あけましておめでとう、ステラ。今年もよろしく」
見つめ合った二人は、通じる心に微笑み合うと朝焼けの中に歩き出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジニア・ドグダラ
葛籠雄さん(f17337)と一緒に
折角ですし、頂いた着物を着て、行きましょうか。
とはいえ、着物だけですと寒いですね……あ、甘酒と、お汁粉が……おや、葛籠雄さん、よろしいの、でしょうか?
……そのような理由が。でしたら、私だけでも、頂かせてもらいますね、
ここの神楽舞は、私の知っているのよりも、遥かに綺麗、です……
初めて、でしたか?それならば、良かったかと、思います。とても、良い思い出になれれば、です。
此方の方こそ、色々とお世話になりました。会いたかった方とも、出会えましたので、感謝の念が尽きません。
そして、除夜の鐘が……はい、あけまして、おめでとうございます。今年もどうぞ、よろしくお願いしますね。
葛籠雄・九雀
ジニアちゃん(f01191)と
ジニアちゃんが着物を着るとのことであるから、それに合わせてオレも外套として濃灰の羽織を普段着の上に着るであるぞ。
ふむ、汁粉や甘酒であるな。オレはちとこの肉体から離れられぬのでな、味の感想は共有できんが。どうせである、焚き火の傍でゆっくりしておるがよい…オレが貰って来よう。
鐘が鳴るまでは神楽舞を見るである。
こう言うものは初めてでなぁ、美しいということしかわからぬが。
大変興味深い。
さて、今年は大層世話になった。プレゼントにも感謝しておる。
次の年も、ジニアちゃんにとって良いものであればよいと思うのであるよ。
…ああ、除夜の鐘であるな。
では――あけましておめでとうであるぞ!
● 温めるのは手と心
鈴の音とともに神楽舞が終わり、世界が現実へと戻ってくる。
神の世界を体現したかのような神楽舞に、ジニア・ドグダラ(白光の眠りを守る者・f01191)は思わず感動のため息を付いた。
「ここの神楽舞は、私の知っているのよりも、遥かに綺麗、です……」
「こう言うものは初めてでなぁ、美しいということしかわからぬが。大変興味深い」
ジニアの隣に座った葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)が、普段聞き慣れない楽と舞に大きく頷く。そんな九雀を見上げたジニアは、ホッとしたように微笑んだ。
「初めて、でしたか? それならば、良かったかと、思います。とても、良い思い出になれれば、です」
「もちろんだとも。……興味深いと言えば、この羽織というものも大変に興味深い。外套として一枚合わせるだけで、ジニアちゃんの隣でも似合う風になるであるな」
サムライエンパイアの文化に感心した九雀は、組んだ腕を濃灰の羽織の中に差し入れた。羽織の下に着ているのは、和服ではなく普段着。着物を着てくるジニアに合わせて選んだ組み合わせに九雀らしさを感じたジニアは、小さく微笑むと着物の袖から覗く自分の手に白い息を吐きかけた。
せっかくの初詣だ。頂いた着物を着てきたのだが、雪の残るサムライエンパイアの冬はこれだけでは少し寒い。
「着物だけですと寒いですね……」
吹き抜ける北風に、ジニアは肩を竦める。そんな様子に、九雀は立ち上がった。
「あそこで汁粉や甘酒を振る舞っているであるな。……オレが貰って来よう」
「おや、葛籠雄さん、よろしいの、でしょうか?」
立ち上がったジニアの手を取った九雀は、焚き火の側に連れて行くと椅子に座らせた。炎の近くに寄ると、凍える寒さも少し和らぐ。思わずホッとした表情になるジニアに、九雀は一つ頷いた。
「並んでいるであるから、少しかかろう。焚き火の傍でゆっくりしておるがよい」
ジニアの返事も待たずに振る舞い場に向かった九雀は、しばらくすると湯気を立てる湯呑を手に戻ってきた。
受け取ったジニアは、一つだけしか持っていない九雀に首を傾げる。
「葛籠雄さん、の、分は?」
「オレはちとこの肉体から離れられぬのでな、味の感想は共有できんのだ。さあ、冷める前に飲むが良い」
「……そのような理由が。でしたら、私だけでも、頂かせてもらいますね」
ヒーローマスクである九雀に会釈したジニアは、指先をじんわりと温めてくれる湯呑の熱を楽しむと口元へと運んだ。
UDCアースのものと比べると、甘さは控えめであっさりとしている。だが素材の滋味が冷えた体にじんわりと染み渡ってくるようで、ジニアの心も体もぽかぽかと温めてくれる。
「……美味しい、です」
「それは良かったのである」
微笑みあった九雀は、ジニアに改めて向かい合った。
「さて、今年は大層世話になった。プレゼントにも感謝しておる。……次の年も、ジニアちゃんにとって良いものであればよいと思うのであるよ」
「此方の方こそ、色々とお世話になりました。会いたかった方とも、出会えましたので、感謝の念が尽きません」
慌てて九雀と向き合い、気持ちを伝える。
激動の年が終わろうとしている。来年もまた色々あるのだろう。
去来する思い出に思いを馳せた二人の間に、除夜の鐘の音が流れた。
重く静かに、長く響く鐘の音が新年を告げる。空を見上げた九雀は、改めてジニアに向かい合った。
「……ああ、除夜の鐘であるな。では――あけましておめでとうであるぞ!」
「……はい、あけまして、おめでとうございます。今年もどうぞ、よろしくお願いしますね」
立ち上がり、深々と最初の挨拶を交わした二人は、焚き火の側を離れると神社へと向かった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シスカ・ブラックウィドー
【電脳の箱庭】で行動
レンタルの振り袖姿
サムライエンパイアで初詣!
神社にお参りして今年も幸運があるようにお祈りしよう。去年はツイてたからね。
おみくじも引くよ!恋みくじで!猟兵だからお金はいっぱいある!
大吉が出るまで引くぞ!(神社の巫女さんに怒られて結局一回しか引けない)
アイさんとシャルロットさんの方の結果はどうだったのかな?興味津々で結果を聞くよ。残念な結果だったら慰める。
おみくじを引いた後は屋台で甘いものを買い食いしながら帰ろうかな。
わたあめ、りんご飴、チョコレートバナナもいいね♪
※おみくじの結果とリアクションはお任せします
シャルロット・シフファート
【電脳の箱庭】で行動。
和ゴスだけど今回は白ニーソなど白を基調とした白無垢を思わせる流麗な仕立てが雰囲気を壊さないわ。
サムライエンパイア...赴きが流石に違うわね。
恋みくじ...まぁ、代わりに縁関係のおみくじで、気になる奴が二人...私がアリスになった時助けてもらった時計ウサギと猟兵になった時、UDCアースで巻き込まれて猟兵になった奴...なんで人間やめて光熱集合生命体になっているかのかはわかんないけどその二人ね。
おみくじの結果は...二人とも同じく吉で「経過は良好」ね。
屋台ならたこ焼きを食べてみたいわね。デビルフィッシュと言われているけど、日本関連ではよく食べられているみたいだし。
アイ・リスパー
【電脳の箱庭】
「新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いしますね」
一緒に初詣に来た旅団メンバーのシスカさん、シャルロットさんにご挨拶。
晴れ着姿でオシャレにキメましょう。レンタルですが。
「さすがサムライエンパイアの神社。
これはご利益ありそうですね」
厳かに建つ神社にお参りし、恋愛成就を神様にお願いします。
非科学的なものは信じませんが、今日だけは特別ですっ!
その後は、二人と一緒におみくじを引きましょう。
気になるのは片想い相手との恋愛運です。
(内容、反応お任せ)
おみくじを引いたら、二人と一緒に屋台を見て回りましょうか。
んー、お汁粉美味しいです。
寒さで凍えた身体が温まりますねっ!
● 三人娘(?)の夜は更けて
除夜の鐘が、神社の境内に鳴り響いた。
重く深く長く響く鐘の音を聞いたアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は、【電脳の箱庭】のメンバーに改めて向かい合った。
「新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね」
ぺこりと頭を下げるアイが着た晴れ着の袖が小さく翻る。
白地に淡い撫子色の牡丹が描かれた晴れ着に、暖色系の羽織。結い上げた銀の髪に桃の花を象った簪が揺れていた。
晴れ着姿で挨拶をするアイに、シスカ・ブラックウィドー(魔貌の毒蜘蛛・f13611)は慌てて頭を下げた。
「あけましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくおねがいしますだよ」
顔を上げたシスカが纏うのは、アイとは対象的に黒を基調とした振り袖だった。
黒地に艶やかな赤い薔薇が描かれた長い袖に、白のふわもこストールを肩に掛け。結い上げた金髪も美しく、少年にはとても見えない。
対象的な二人の姿をまじまじと見たシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス CV釘宮理恵・f23708)は、二人に向けて頭を下げた。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします」
挨拶を交わし頭を上げたシャルロットは、一風変わった着物姿。
シャルロットが着ているのは、和服を基調に洋装の美意識を取り入れたファッションーー和ゴスだった。
正月ということで白ニーソックスなど白を基調とした白無垢を思わせる流麗な仕立てが、雰囲気を壊さない。
三者三様。それぞれによく似合っている着物姿の三人は、鳥居をくぐると神社へ向かった。
松明で照らされた参道は薄暗く、あちこちに闇が残っている。神社の本殿もまた松明に照らされてはいるものの、UDCアースの神社のように明るい雰囲気ではない。
重く、暗い雰囲気を湛えた神社の様子に、アイは思わず息を呑んだ。
「さすがサムライエンパイアの神社。これはご利益ありそうですね」
神社を見上げるアイに、シャルロットもまた深く頷く。
「サムライエンパイア……赴きが流石に違うわね」
「ささっ! 早くお参りしておみくじ引こう!」
厳かな雰囲気を敢えて無視したシスカは、二人の手を取ると本殿の前に立った。
鈴を鳴らして二拝二拍手一拝。昨年はツイていたシスカは、今年も運に恵まれるようにと祈りを捧げる。
(「今年も幸運がありますように」)
その隣で祈りを捧げたアイは、恋愛成就を神様に願う。普段は非科学的なものは信じないが、今日だけは特別なのだ。
真ん中で祈りを捧げたシャルロットは、本殿前を離れるとおみくじ売り場へと向かった。
「おみくじ。引くのでしょう?」
「もちろん! 恋みくじで! 猟兵だからお金はいっぱいある! 大吉が出るまで引くぞ!」
「あの、おみくじは一人一回が決まりですので……」
「えーやっぱり?」
おずおずとした巫女の声に、シスカは頭を掻いておみくじに手を伸ばした。
シャカシャカと振って、出てきた数字を巫女へと伝える。貰ったおみくじを思い切って大きく開く。
書かれたのは「吉」
奢らずに精進すれば、更なる発展が期待できるでしょうといった文面に、シスカは満足そうな笑みを浮かべた。
「まあまあよね。更なる発展、ってところが気に入ったわ。……アイは?」
「……小吉。「恋敵多く前途は多難。諦めないことが肝心」ですって」
アイの片思いの相手は、恋多き少年。愛され体質の彼の周りはいつも女の子が絶えない。分かっていることを改めて言われて思わずため息をこぼすアイの肩を、シスカは励ますように叩いた。
「まあまあ。「多難」ってだけで「望みなし」じゃないんだよね。ならこれからこれから!」
「……そうよね。頑張らなきゃよね」
シスカの励ましと慰めに、アイが顔を上げる。力を取り戻したアイに安心したシスカは、二通のおみくじを見比べているシャルロットに駆け寄った。
「あー、2つ引いてる! どうしたの?」
「恋みくじ……はあまり興味がないから、代わりに縁関係のおみくじを引いたの。気になる奴が二人いるから」
「えー、誰?」
興味津々なシスカに、シャルロットは遠くにいる二人を思い顔を上げた。
「私がアリスになった時に助けてもらった時計ウサギと、UDCアースで巻き込まれて猟兵になった奴。……なんで人間やめて光熱集合生命体になっているかのかはわかんないけど、その二人ね」
「そうなんだ。結果は?」
「おみくじの結果は……二人とも同じく吉で「経過は良好」ね」
満更でもなさそうなシャルロットは、二つのおみくじを括り付けると二人を振り返った。
「……せっかくだから、何か食べて帰りましょう」
「お、いいねいいね♪ 買い食いしながら帰ろう! わたあめ、りんご飴、チョコレートバナナ♪ シャルロットは何食べる?」
「屋台ならたこ焼きを食べてみたいわね。デビルフィッシュと言われているけど、日本関連ではよく食べられているみたいだし」
「たこ焼き! 甘いものとしょっぱいものって、相性いいよね! アイは?」
「んー、お汁粉美味しいです。寒さで凍えた身体が温まりますねっ!」
屋台へ行く前に振る舞いのお汁粉を手に取ったアイは、口の中いっぱいに広がる甘みに思わず緩む頬に手を当てる。いい匂いの漂う湯呑に、シスカは手を挙げた。
「あー、ボクも食べる! ボクも頂戴! お汁粉は別腹だよ!」
「じゃあ私は甘酒を。屋台の前にあったまるのも悪くないわ」
甘酒を受け取ったシャルロットは、凍える指をじんわり温める甘酒の熱にゆっくり微笑む。
温かい飲み物で体をあっためた三人は、屋台へ向けてグリモアを発動させた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・葵桜
アカネちゃんと初日の出ご一緒したいな♪
この寒さがあるから、甘酒もおいしいし
夜があるから日の出が愛おしいって思えるんだよね
(甘酒飲みながら日の出を眺め)
猟兵としてあっちこっち行くようになって一年経って
楽しいって思えることだけじゃなかったけど
だからかな
こんな時間が前よりずっと愛おしいって思うんだ
私、これでも一応ちょーっとは成長したと思うんだよね
アカネちゃんはね、1年前から頼もしかったけど
今はもっとずっと頼もしくなって、綺麗になったって思うよ!
(きっと、色々なことに向き合って、乗り越えたからこそだね、と微笑み)
今年も色々あるんだろうけど
私も、私なりに頑張ろうって思うよ
だから、今年もどうぞよろしくね!
ユディト・イェシュア
アカネさんと、できれば茜姫ともご一緒できれば
こんな風に新しい年を迎えるのは初めてです
せっかくなのでこの国らしい服装を
紺色の着物に同色の羽織を
…ちゃんと着れてますか?
女性陣の着物姿には心からの賛辞を
鎖木神社…茜姫にゆかりのある場所なんですか?
甘酒や焚火で暖を取りながら皆さんとお話し
初日の出の幻想的な光景に自分が今まで無事に生きてきたことを感謝します
無病息災ですか…俺は自分がどうなろうといいと思ってしまうのでよく怒られます
他の人が傷つく方が嫌ですから
でも…自分も大切にしないといけないのかもしれないと最近ようやく思えるようになりました
皆さんのおかげですね
皆さんにとって素晴らしい一年になりますように
● 新しい年に願いを込めて
夜明け前の冴え渡る空気が漂う桜の木の下で、三人の少女の影が焚き火を囲んで座っていた。夜より深い色をした桜の木には注連縄が巻かれ、花も葉もない枝の上には重そうに雪が被っている。
なんとなく無口な人影に、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は歩み寄った。
手にしているのは、盆に乗った4つの湯呑。温かな湯気を立てる甘酒を貰ってきたユディトは、黙り込む三人に声を掛けた。
「お待たせしました。甘酒を貰って来ました」
「おー! 待ってたよ甘酒!」
嬉しそうに顔を上げた榎木・葵桜(桜舞・f06218)は、受け取った温かい甘酒で指先を温めた。
熱い甘酒を冷ましながら、一口。自然な麹の甘さが口いっぱいに広がって、思わず笑みがこぼれる。
「……美味しい」
「美味しいです」
同時に呟いたアカネと視線を交わして、微笑み合う。共犯者のようにクスクスと笑いあった葵桜は、夜明け前の空に視線を移した。
「……猟兵としてあっちこっち行くようになって一年経って。楽しいって思えることだけじゃなかったけど、だからかな。こんな時間が前よりずっと愛おしいって思うんだ」
「葵桜様は、お強いですね」
微笑んだアカネは、黙って桜の木を見守る茜姫を覗き込んだ。
湯呑の熱で指先を温めていた茜姫は、アカネの言葉に頬を膨らませる。
「どうせわたくしは、葵桜さんほど強くはなれませんわ」
オルタナティブ・ダブルで姿を現した、アカネの中にいる第2人格ーー否、本人格とも言える茜姫は、何が気に入らないのか先程から無口で落ち込んだ様子さえ見せていた。
すねたようにぷい、と視線を逸した茜姫は、話題を変えるようにユディトの服を見上げた。
「ユディトさんは紋付き袴ですの? よくお似合いですわ」
「ありがとうございます。せっかくなのでこの国らしい服装をと思いまして」
はにかんだように自分の服を見下ろしたユディトは、着慣れない自分の服を検めた。
「……ちゃんと着れてますか?」
紺色の着物に同色の羽織。グレーの袴が長身のユディトを引き立てている。むしろ堂に入った和装に、葵桜は親指を立てた。
「とっても似合ってるよ!」
「ありがとうございます。葵桜さんもよく似合っていますよ」
「へへ、ありがと!」
はにかんだ葵桜は、淡い桜色の生地に葵柄の振袖姿。桜の形のかんざしを挿している。美しい着物姿に目を細めたユディトは、火の側に座ると甘酒の湯呑を握り締めた。
「こんな風に新しい年を迎えるのは初めてです」
「ユディトさんは、普段どんな風に……」
「鎖木神社……茜姫にゆかりのある場所なんですか?」
話を逸らそうとする茜姫の言葉を遮り、ユディトは真っ直ぐ茜姫を見据えた。何か言おうと口を開いた茜姫は、口を閉じると桜の木を見た。
桜の木をーーその向う側にある、鎖木神社を。そこに付随する小さな集落を。
「ここは、わたくしが生まれ育った里。かつて『行く末の予祝者・縁姫』が支配していた場所ですの。ここの人々は未だに過去に囚われていて、毎年やっていることをただ繰り返しているのですわ。初詣客なんて誰も来ないのに、神楽を舞って振る舞いをして」
「初詣にここを選んだのも、茜姫たってのお願いなんです。猟兵の皆様方が来ることで、何か変化が起こればと」
困ったように微笑むアカネの着物の裾を、茜姫はぎゅっと握る。かつてこの村を石を投げられ後にした茜姫には、ここにいるのも辛いのだろう。だが自分の辛さよりも村人の変化を望む茜姫の姿に、ユディトは今までの自分の姿を見た。
今までの自分を、周囲の人々はこんな気持で見守っていたのだろう。
「茜姫。……俺は自分がどうなろうといいと思ってしまうのでよく怒られます。他の人が傷つく方が嫌ですから」
「ユディトさんらしいですわね」
視線を戻した茜姫に、ユディトは一つ頷いた。
「でも……。自分も大切にしないといけないのかもしれないと、最近ようやく思えるようになりました。皆さんのおかげですね」
何も言わずに見つめる茜姫の手を、ユディトはそっと取った。
「だから、茜姫も。決して無理はしないでくださいね」
「無理など、最初からしておりませんわ」
強がる茜姫が、少しだけ笑う。そんな茜姫に、アカネは視線を落とすと何も言わずに甘酒を飲む。
アカネの隣に寄り添った葵桜は、今年一年あった出来事を一つ一つ思い返した。
身にしみこむほどの寒さの中、夜明けを待つ。暖を取るのは焚き火と甘酒だけ。
暖房なんて無いこの世界。だからこそ分かることもあるのだと葵桜は知っていた。
「……ねえ、アカネちゃん。この寒さがあるから甘酒もおいしいし、夜があるから日の出が愛おしいって思えるんだよね」
そう言った葵桜は、アカネに寄り添うと力づけるように冷たい手を握った。
「アカネちゃんはね。1年前から頼もしかったけど、今はもっとずっと頼もしくなって、綺麗になったって思うよ! きっと、色々なことに向き合って、乗り越えたからこそだね」
「……そうでしょうか」
自信なさそうに呟くアカネに、葵桜は拳を握り締めた。
「そうだよ! 私、これでも一応ちょーっとは成長したと思うんだよね。だから分かるよ。去年は色々あったけど。今年も色々あるんだろうけど。私も、私なりに頑張ろうって思うよ。だからね」
葵桜の言葉に導かれるように、東の空に光が走る。
水平線の彼方から上がる、最初の太陽。金と朱で空を染め上げる光は夜の闇を裂き、黒く染め上げられていた桜の木を精気ある生きた木へと変えていくようだった。
花も葉もない桜の木だが、春になったら美しい花を咲かせるだろう。立ち上がった葵桜は、初日の出の美しさに目を細めるとアカネ達を振り返った。
「だから、今年もどうぞよろしくね!」
「皆さんにとって素晴らしい一年になりますように」
「……はい!」
「……あなた方がそこまで言うのでしたら、仕方がありませんわね」
いつもの調子を取り戻した茜姫に、笑い声が響く。
改めて昇る陽を見たユディトは、幻想的な光景に無事に生きてきたことへの感謝を捧げた。
大成功
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