【Q】レディ・オーシャンと除夜の鐘
「何とか今年も無事年を越せそうですね」
顔なじみの客の言葉にええと頷きありがたいことですと続けた店主が視線を向けたのは、村に唯一の寺、その梵鐘。このまま大晦日に至れば、鐘の音が村に響き渡り、やがて新たな年がやってくる。ただ、村の人々は知らなかった、「オーシャンボール」と言う嬉しくないお年玉をもたらすわるいかみさまもまたこの村へ訪れるということを。
「サムライエンパイアに戦争を生き延びたジェネシス・エイト『レディ・オーシャン』が現れたという話はもうご存知でしょうか?」
ミュリエル・フォルクエイン(オラトリオのアーチャー・f01452)曰く、そのレディ・オーシャンが新年を迎えるとある小さな村へ出現することが分かったらしい。
「このままでは、レディ・オーシャンが空中から突如として落下させる巨大な海水の球『オーシャンボール』によって大きな被害が出てしまいます」
急ぎ住民や動物たちを避難させたり、建物を保護したりしなければ、被害は最大のモノとなるだろう。
「年の暮れと言うこともあり梵鐘を撞く行事に皆様が参加していただければ、村の皆様も親しみを感じて頂けるかと思います」
何もなしで今から避難してくれと言うより、ある程度打ち解けてからの方が指示も素直に聞いてくれるかもしれないということであろう。
「無事避難が終わるか、除夜の鐘が終われば、村に現れたレディ・オーシャンのオーシャンボールにより、周囲はまるで『海中に没した』かのような光景に変貌してしまいます」
その中には、レディ・オーシャンが配下とした盗人のオブリビオン達が泳ぎ回っていることだろう。村が水没したのをいいことに火事場泥棒と言うのもアレだが、被害にあった村の家や店から金品を頂こうというという魂胆なのだ。
「もっとも、皆様が内部に突入したなら皆様の撃退を優先してくるはずですので」
まずはこれを排する。水中戦になるのは確実なので、相応の戦い方を考えておけば、戦いを優位に進めることが可能かもしれない。
「配下を倒し、オーシャンボールの中央へ至れたなら、いよいよレディ・オーシャンとの戦いとなります」
レディ・オーシャンはこの場所で大地に向かって謎の儀式を行っているらしく、先制攻撃をしてくるだとかいったことはないが、君達が攻撃すれば応戦はしてくるだろう。
「レディ・オーシャンさえ倒せば、オーシャンボールは霧のように消えてなくなります」
だが、儀式の阻止に失敗し、儀式が成功してしまうと、レディ・オーシャンは大地から「宝物のような物品」を掘り出して姿を消し、オーシャンボールは津波となって周辺を押し流してしまうのだとか。
「村の被害を最小限にする為にも――」
豊かな胸を弾ませ、グリモア猟兵の少女はどうか力をお貸しくださいと頭を下げたのであった。
聖山 葵
除夜の鐘がやりたかっただけ? 何のことでしょうか?
という訳で、今回は村の被害を減らしつつレディ・オーシャンの儀式を阻止して頂くお話の模様です。
第二章については、水中戦に適応するようなプレイングの場合、プレイングボーナスがかかります。
では、ご参加お待ちしておりますね。
第1章 日常
『除夜の鐘』
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POW : 鐘を撞く!
SPD : 鐘を撞く!
WIZ : 鐘を撞く!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
備傘・剱
POW
…除夜の鐘かぁ…
俺から、煩悩を取ったら、何が残るんだろうなぁ
まぁ、こういったものはあれだ、願掛けみたいなもんだしな
一丁、突いて来年への抱負とさせてもらいますかね
そーいえば、色んな事言われたっけかな、ナンパしてるとか、オブリ飯はやめてとか…
来年は、気持ちも新たに、真面目に呼び込みをしてるんだって言われたり、経営の事を考えてるんだって前向きに言われる事を願うばかりだぜ
てな事を思って付いたら、割と力強く突いちまったな
大きな音が出て、寝てる子とか、起きねぇ…、いや、この後のこと考えると起きてた方がいいのか
とにかく、周りの警戒と、人数把握はちゃんとしておくぞ
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
伊高・鷹介
・あー、今年も終わりか。で、そんな年の瀬に俺はサムライエパイアに出張ってお仕事、と。ま、こういう世界で年越しってのも風情があって悪くはねぇな。
・除夜の鐘をつくのは始めてだな。うまくやれるかどうか分らんが……まあ、村人がやってるのを見て何とか真似してみっか。ドジるのも親交の内ってね。年越しそばとかも一緒に食えばより親交も深まるか? それに腹が減っては何とやらだしな。
・に、しても…俺はかの戦争の後に猟兵になったから詳しくは知らねーが。あの女神さんもロクなことしねぇな。「その時」が来たら全力で邪魔させてもらおうかねぇ……ククク……って、これも煩悩に入るのか?
「あー、今年も終わりか」
日も傾きだし、小さな村全体がオレンジを帯び始める中、寺の門の前に立っていた伊高・鷹介(ディフェクティブ・f23926)はポツリと呟くと、門に背を向ける形で後方を振り返る。
「で、そんな年の瀬に俺はサムライエパイアに出張ってお仕事、と」
かやぶき屋根の民家が点在し、内一つの戸口で気の早い者が提灯に火をともそうとしているのが鷹介にも見て取れた。ガスや電気とは無縁の世界ならではの光景とでも言おうか。
「ま、こういう世界で年越しってのも風情があって悪くはねぇな」
口元を綻ばせ、向き直って寺の門をくぐれば、向かう先はただ一つ。響き渡る鐘の音につられるように足を運べば、この寺の住職と思しき人物が梵鐘の横に居り、他にも周囲に何名かの村人の姿があった。住職一人ではキツいと見て助っ人に赴いてきた村人たちか、それとも。
「……除夜の鐘かぁ」
梵鐘を視界に入れて口を開いた備傘・剱(絶路・f01759)も猟兵である以上、目的は鷹介と同じであり。
「鐘を撞きたいですと? 構いませんとも。認めるのは癪ですが寄る年波には勝てぬのか百八つを一人でどうにかするのは困難でしてな。こうして村の衆に手伝ってもらっておる次第です」
助っ人は歓迎とばかりに住職は二人の為脇に退き。
「除夜の鐘をつくのは始めてだな。うまくやれるかどうか分らんが……」
唸りつつも進み出た鷹介は、撞木から垂れ下がる縄を掴むと直前まで撞いていた住職の動きを真似る。
「おっ、上手くいったな」
勢いがつきすぎたり何なりで失敗することも視野に入れていた鷹介が鳴らした鐘の音は周囲に響き渡り。
「さてと、他所の人に頼りっぱなしじゃ、オラたちが何の為に来たかわかんねぇでな」
次はオラがと後に続いたのは、住職の側に居た村人の一人。交代交代で梵鐘を鳴らし、次第に傾いた日は山の端に触れ、やがて夕日が顔を山の向こうにうずめてゆく。
「俺から、煩悩を取ったら、何が残るんだろうなぁ」
夕焼けの色が濃くなる中、番のまわってきた剱は独言し。
「まぁ、こういったものはあれだ、願掛けみたいなもんだしな。一丁、突いて来年への抱負とさせてもらいますかね」
鷹介に倣い、縄を握って後方に引く。
「そーいえば、色んな事言われたっけかな、ナンパしてるとか、オブリ飯はやめてとか……」
脳裏に浮かぶのは、旅団での仲間との会話。縄を握る手に力が入った理由を知るのは、おそらく当人のみであろう。
(「来年は、気持ちも新たに、真面目に呼び込みをしてるんだって言われたり、経営の事を考えてるんだって前向きに言われる事を願うばかりだぜ」)
声には出さないその願いが叶うかどうかはわからない、ただ。
「あ」
撞木が鐘へぶつかる瞬間に漏れた剱の声は、一際大きな鐘の音にかき消され。
「割と力強く突いちまったな。大きな音が出て、寝てる子とか、起きねぇ……いや、この後のこと考えると起きてた方がいいのか」
「それはどういうことですかな?」
「ああ、実はな――」
失敗したと言った態の剱の言葉を聞いて住職が問えば、剱は今後起きることを説明し。
「ふむ、にわかには信じがたい……と言う気はありません」
エンパイアウォーの事がこの小さな村にも伝わっていたのか、二人が村人と共に梵鐘を撞いたことで信用を得たのか。
「村に危機が迫っているというならば、ゆゆしきこと」
「だな。オラ達に出来ることはねぇか?」
「そうだな……じゃあ、まずこの村に村人はどれくらいいるかを教えてもらえるか? それから――」
協力を申し出てきた村の人々に剱は要望を出し。
「腹が減っては何とやらだしな。年越しそばとかも一緒に食うか?」
「あぁ、そんなら家に戻って支度してくるだ」
鷹介の言に一人の村人が寺の門を飛び出してゆく。
「お待たせしましただ、持ってきただよ」
「おお、ならばこちらへ」
やがて戻ってきた村人を住職が厨房へと案内し。
「に、しても……俺はかの戦争の後に猟兵になったから詳しくは知らねーが。あの女神さんもロクなことしねぇな」
更に幾らか時は流れて火も完全に沈み、瞬く星空の下で蕎麦から立ち上る湯気を顎に当てつつ、鷹介は歎息し。
「『その時』が来たら全力で邪魔させてもらおうかねぇ……ククク……って、これも煩悩に入るのか?」
口の端を釣り上げてから首をかしげると蕎麦をすすり。この間も交代で梵鐘は撞かれ、剱の話を聞いた村人が話を広めることで避難も進み。
「村のみなさん、あけましておめでとう〜☆」
鐘の音が百八に至った頃であろうか、わるいかみさまがとうとうやって来たのは。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『名もなき盗人集団』
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POW : これでもくらいな!
【盗んだ縄や紐状のものまたはパンツなど】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : これにて失礼!
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ : ここはおいらに任せておくんな!
【なけなしの頭髪】が命中した対象を爆破し、更に互いを【今にも千切れそうな髪の毛】で繋ぐ。
イラスト:まっくろくろな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「いまうえのほうにあるのは『オーシャンボール』☆ わるいかみさまからのおとしだまですよん☆」
出現した海水の巨大な玉などこの村の誰とて欲してはいなかっただろう。
「そーれ☆」
だが、わるいかみさまことレディ・オーシャンは構うことなくそれを落下させ、村の一部を海水へと没させる。幸いであったのは、村人の避難が済んでいたことか。
「おしごとはしてもかまいませんけど、しっかり守ってくださいねん☆」
「「へい、お任せくだせぇ!」」
村に大迷惑をもたらしたわるいかみさまの要請に、オーシャンボールの中を泳ぐ盗人たちは、声をそろえて応えたのだった。
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プレイングボーナス……『水中戦に適応する』。
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秋津洲・瑞穂
ふうん?
ま、やってみますか。
お仕事中は常に水着を着けているし、扱いやすい薙ぎ槍もあるし。
水泳だってできるよ。武人の嗜み程度には。
「お助けコンちゃんただいま参ぷくぷく」
まぁ、あれよね。
泥棒さんのユベコを見るに、水の中で使うのは大変そう。
紐とか髪とか命中させるって言ってもね……。
仮にこちらのユベコを封じられたところで、ねぇ。
剣刃一閃がなくても、穂先で突いたら刺さるのは一緒だもんね。
逃げる機会があるだけ優しいと思ってねー。
なんなら狐火を放り込み続けて熱湯の海にしてもいいんだし。
いっそ狐の印籠から毒アタックだってできるし。
そゆの嫌でしょ? なら尋常に勝負しようね。
と、身振り手振りで(
「ぷく」
備傘・剱
お年玉って、こういうもんだったか?
塩害とか、そういうの考えろよ、似非海洋系女神!
さて、オーラ防御で空気の確保、そして、雷獣駆で、機動力の確保、全身をオーラで覆えば、水中でもなんとかなるだろうぜ
そして、誘導弾と、衝撃波と、呪殺弾で攻撃力の確保だ
で、盗人を各個撃破して行く訳だが…
一つ、思いついたことがある
除夜の鐘、こいつら聞いてないよな?
…てなわけで、水中に沈んだ鐘を怪力で持ち上げて、衝撃波の零距離射撃で思いっきり鳴らしてやろう
石打漁ならぬ、鐘打漁ってな
罰当たりにゃ、仏罰が下るってな
所で、この海水、どうしよう?
電気分解もできねぇし…、飲むわけにもいかないし…
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
「ふうん?」
目の前で繰り広げられる光景に秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)が首を傾げた時、剱もまた地に落ちてきた海水の巨大球体を見ていた。
「お年玉って、こういうもんだったか?」
確かにたまではあるし、落ちてきたというところだっておとしたと表すことも可能だから落とした玉ではあるのだろう。だが、漢字にすれば明らかに文字は違うし、齎されるのは臨時収入ではなく被害だ。
「塩害とか、そういうの考えろよ、似非海洋系女神!」
既にオーシャンボールの奥深く、姿すら見えないレディ・オーシャンにツッコミを入れると、さてと口にして剱は動き出す。
「駆けよ雷獣! 森羅万象、万里一空、全ては汝が望むがままに! 理外が己の理であるがの如く! じゃ、行くか」
身を守るオーラと額から生えた麒麟の角より発生した黒い迅雷で全身を覆えば、躊躇うことなくオーシャンボールに飛び込み。
「ま、やってみますか」
瑞穂もまた海水球に向かう剱の後を追う。獲物は、扱いやすい薙ぎ槍。仕事中常に水着を着けている瑞穂にとって水中戦はどうということもなく。
「お助けコンちゃんただいま参ぷくぷく」
海水球に顔が接した辺りで名乗りが泡にかわるが、それはそれ。
「来やがった!」
「お前ら、迎撃だ!」
とでも言っているのであろうか、オーシャンボール内の民家を物色しようとしていた盗人たちは瑞穂達に気づくとくるりと向きを変え泳ぎ寄ってくる。それらの手にあるのは、どこで盗んだのか縄や下着など。後者はさておき、前者がどういう目的で持たれているかは割と予想しやすく。
「まぁ、あれよね。泥棒さんの持ち物を見るに、水の中で使うのは大変そう」
などと瑞穂に感想を持たれているなど知らず、オブリビオン達は手にしたモノを投げつけようとし。
「ぶげ?!」
下着を振りかぶった盗人の一人が衝撃波を撃ち込まれて身体をくの字に折る。
「遠距離攻撃できるのがそっちだけとは思うなよ」
得た飛翔能力を活用する形で、盗人の一人を屠った剱は飛んでくる下着や縄の間を駆け抜け。
「紐とか髪とか命中させるって言ってもね……」
一見すれば水中で使うと速度が減退して使いものにならなそうだが、そこが何とかなっていたとしても瑞穂にとって投げられるモノは脅威と映らなかったようだ。
「仮にこちらのユベコを封じられたところで、ねぇ」
剣刃一閃がなくても、穂先で突いたら刺さるのは一緒。もちろんわざと当たるつもりはないのだろうが、その縄や下着も半分近くは瑞穂自身ではなく剱に向けて放たれているのだ。
「ぐげっ」
故に剱へ気をとられたオブリビオンの一体を瑞穂は繰りだした薙ぎ槍の穂先で貫き。瑞穂が一人敵を減らせば、その頃には剱もまた一人敵を減らしている。繰り返しで幾人ものオブリビオンが骸の海へと還り。
「で、盗人を各個撃破している訳だが……」
一つ思いついたことがある、と剱は続ける。
「除夜の鐘、こいつら聞いてないよな?」
実際盗人たちに確認をとった訳ではない、ただ水没した寺の梵鐘の元に急行し、鐘へと手をかけた。
「……てなわけで、石打漁ならぬ、鐘打漁ってな。これでも――」
ただ怪力任せで持ち上げた梵鐘をオブリビオン目掛けて投じ、追い打ちの様に放たれたのは、衝撃波。
「ぐあ、ばっ」
梵鐘へ追い付いた衝撃波により至近距離で金の音を聞いてしまった盗人は耳を塞ごうとしたところに鐘が直撃して顔面を砕かれ。
「罰当たりにゃ、仏罰が下るってな」
「く、くそっ、なんて奴らだ」
おののくオブリビオンが見るのは、剱ではなく、身振り手振りで主張を伝えようとする瑞穂であった。その周囲には息絶え骸の海へ還りつつある盗人の骸が幾つか漂い。
「逃げる機会があるだけ優しいと思ってねー」
言語化したなら、おおよそその様な感じなのだろうが、自身らを従えるレディ・オーシャンが後方に控えているのだ。逃げたくても逃げられないのかもしれない。
「伝わってるかなー」
もう一つ懸念があるとすれば、瑞穂の意思表示が身振り手振りのままと言うことか。
「なんなら狐火を放り込み続けて熱湯の海にしてもいいんだし」
ジェスチャーに合わせて狐火を出し。
「いっそ狐の印籠から毒アタックだってできるし」
次に印籠を取り出して指さし。
「そゆの嫌でしょ? なら尋常に勝負しようね」
首を傾げてから薙ぎ槍を構え誘えば、うおおっと雄たけびを上げてオブリビオンは向かってくる。最後の部分だけで判断して向かってきたとかそんなことはきっとない筈だ。
「ぐはっ」
ただ、一対一ではかなう筈もなく、あっさり返り討ちにあった盗人は既に骸の海へ還りつつある仲間達の一人に加わり。
「ふーむ」
「ぷく」
口元から気泡を零し振り返った瑞穂の視界には唸る剱の姿があった。
「この海水、レディ・オーシャンを倒せば消えてなくなるらしいけどよ。まだあいつらも結構残ってるんだよな」
呟き向けた視線の先は、こちらに向けて泳いでくる無数の盗人。
「電気分解もできねぇし……、飲むわけにもいかないし……さっさとあいつらも倒して似非海洋系女神をなんとかするしかねぇか」
倒したのとほぼ同数のオブリビオンを視界に居れたまま、剱はポツリとこぼしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
伊高・鷹介
・チ、分かっちゃいたがこうやって目の当たりにすると大迷惑この上ねぇな。火事場泥棒ならぬ洪水泥棒もひいふうみい……めんどくせえ、全員この場で叩っきってやらぁ。
・水中戦ねぇ。「念動力」で周囲の空間に干渉、空気のシェルターを作って挑戦だ。このまま移動すれば泳ぐ必要もねぇしな。
・さて、オブリビオンになっても盗みを働く連中へのオシオキはどうすっかね……
まず、投げつけられた頭髪は「念動力」で逸らすか、あるいは別の盗人の方へ反らしてやっか。で、当人達は【一時停止】や「念動力」で捕縛し斬り捨てる。ま、そのまま不可視の手で首を締め上げてもいいがな。
・どこぞの火付け盗賊改め方じゃねぇが、急ぎ仕事には容赦しねぇよ。
「チ、分かっちゃいたがこうやって目の当たりにすると大迷惑この上ねぇな」
他の猟兵が見た光景を目にし吐き捨てた鷹介は片手の人差し指を立て。
「火事場泥棒ならぬ洪水泥棒もひいふうみい……めんどくせえ、全員この場で叩っきってやらぁ」
途中で数えるのを投げ出すと念動力で周囲の空間に干渉、空気のシェルターとも言うべきモノを作るなり、海水球の中へと足を踏み入れた。
「これ以上は行かせねぇ」
「へ、威勢だけはいいな」
鷹介の浸入を見咎め、一番近い位置を泳いでいた盗人が即座に向かってくるが、そも相手を倒すつもりの鷹介からすれば願ったりかなったりである。
「さて、オブリビオンになっても盗みを働く連中へのオシオキはどうすっかね……」
「何を悠長な」
「ここはおいらに任せておくんな!」
向かって行く自分を前にして尚も考え始めるへオブリビオンがいきり立つも、割り込むように声を発した者が居た。なけなしの毛髪に手をかけた別の盗人である。
「油断しちゃいけねぇ、こいつの仲間にはあっしらの仲間が何人も殺られてる」
「へぇ」
単独で挑んだ仲間を窘めたオブリビオンは同胞に何やら耳打ちし。
「いくぜ」
「おう」
窘めた方が頭髪を鷹介目掛けて放つと、もう一人も動き出し。
「ま、一人で来るよりゃ良かっただろうけどな」
「な」
投げつけられた頭髪は、鷹介の視線が触れた瞬間、軌道を変えて動き出したばかりの盗人の方へ逸れ、驚きの声を発した盗人が爆発の中に消える。
「うぐ、痛てぇ、どこ狙ってやがる!」
「ち違う、あいつが」
味方に爆破されたオブリビオンが仲間に罵声を浴びせるが、鷹介から意識がそれたのは失敗であった。
「続きは骸の海ででもやれよ」
めんどくさそうに漏らすと、鷹介は不意を突く形で念動力によって引き寄せた盗人の片割れをあっさり斬り捨て。
「な、しま」
「あぁ、頭髪で繋がってたんだったな」
最初の一人の頭髪によって時間差で引っ張られてきたオブリビオンの首も刎ね飛ばす。
「そのまま不可視の手で首を締め上げても良かったがな」
「ちぃっ、やりやがったな!」
「よくも仲間を!」
鷹介がその手を試す相手は、自分の方から殺気立った顔でやって来てくれていた。
「おら、そこ動くな」
「なっ、が」
掌を向けて空間すらも捻じ曲げる念動力を放てば、先頭に居た盗人が動きを封じられて急停止し。
「ばっ」
「おま、ごふっ」
「急にとま、べっ」
後続がそこに到着して混乱が生じる。
「おー、こいつは予想外だ。けどな」
この好機を逃す手はない。混乱する盗人たちを念動力で捕縛すると流れるように警棒型の柄から展開される巨大な鋸型の武装で鷹介は処理してゆく。
「ひ、ひぃ」
「くそっ、めんどくせえ……流石に全員は無理だったか」
それでも数の多さが故に混乱から立ち直り、念動力から逃れた盗人を視線で貫き鷹介は顔を歪めた。
大成功
🔵🔵🔵
宮落・ライア
……………。
海水。つーまーり?
【自己証明】で攻撃性能強化。
そして【選択UC】発動。
まぁ水に電気を通せばどうなるかなんて……言わずもがなだよね?
近づいても離れても水の中にいる限り逃げ場なんて無いし、
なんだったら水の中を走る雷なんて芸当でも…どうかな?
こっちが代償で力尽きるまでそっちはもつかなー?
ついでに電気分解で水球小さくなったりとかしないかなー。
避難誘導とか苦手だし、それを他の猟兵にぶん投げ多分頑張らないとね!
にしてもレディオーシャンは元気だなー。
「海水」
どれほどの期間沈黙していただろうか。沈黙を破って転送された宮落・ライア(ノゾム者・f05053)が口にしたのは、一つの単語であった。
「畜生、また新手か! こうなりゃ、自棄だ! 一矢報い――」
「つーまーり?」
視界の中に先の戦いの生き残りである盗人が向かってくる姿を認めても動じた様子はない、いや。
「負けられない! 死ぬことも止まることも認められない! 私は託された! 選ばれたんだから!」
拳を握り込んで叫ぶと、攻撃すらまだ受けていないのに、こぼれ出た血が身体を伝う。
「な、どう」
「落涙する民にハレルヤの歌を」
自身が攻撃したわけでもないのにダメージを受けている様子のライアに面をくらい、駆け寄って来ていた盗人の足が鈍るが、それは明らかに失敗であった。流血を代償に己を強化したライアは、顔色を悪くしながらもその肌に火花を弾けさせた。過剰なまでの発電及び蓄電体質によって生じた電気が行き先を求め荒れ狂い出しているのだ。
「まぁ水に電気を通せばどうなるかなんて……言わずもがなだよね?」
「う、うそだろ?!」
理解が追いついて、慌てて距離を取ろうとし出すが、無駄なこと。
「近づいても離れても水の中にいる限り逃げ場なんて無いし」
そも、レディ・オーシャンの護りを放棄して逃げ出すならもうとうに海水球の中から逃げている筈。オブリビオンに出来るのは戦うことだけの筈であり。
「なんだったら水の中を走る雷なんて芸当でも……どうかな?」
「や、止め」
「止めない」
形を変える武具をライアは槍へと変えて投じ。
「ぎゃあああっ、がっ」
先の言葉通り海水球の中を走った雷は、槍に貫かれた盗人を焼き焦がしあがっていた悲鳴すら断つ。
「ぐっ」
「ひ、怯むんじゃねぇ! 相手は一人だ!」
倒さなければ、全滅させられる。悟った盗人が仲間を叱咤し、お先に失礼と口にするや、何もない場所を蹴りながらライアへ接近し。
「おごっ」
あと一歩の距離まで近寄ったところで、背中から槍の穂先が生えた。
「二人目。こっちが代償で力尽きるまでそっちはもつかなー?」
上がる断末魔は一切気にした様子もなく、ライアが視線を向けた先は、海水球の天井部。
「ついでに電気分解で水球小さくなったりとかしないかなー」
向こうに透けた空を見て呟くも、流石にそこまでうまくは行かない様であり。
「避難誘導とか苦手だし、それを他の猟兵にぶん投げた分頑張らないとね!」
「ひっ」
頑張った結果自身がどうなるかを察してしまったオブリビオンの顔が引きつり。もう最初の四分の一にまで彼らが全滅したのは、ある意味必然であったのかもしれない。
「さてとー」
毒と出血でふらつきながらもライアが歩き出せば、往く手を阻む者はもうおらず。
「もう来ちゃったのですねん☆ もっとゆっくりしててもよかったんですよん☆」
「にしてもレディオーシャンは元気だなー」
海水球の中央、儀式を行っている筈なのに消耗した様子のまるでないわるいかみさまを目にして、ライアは感想を漏らしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『レディ・オーシャン』
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POW : ディープシー・ストーム
【激しく渦巻く冷たい海水の奔流】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 「邪魔が入らないようにしちゃいますね〜☆」
非戦闘行為に没頭している間、自身の【周囲を舞う膨大な海水】が【防壁を形成し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : ウォータージャベリン
レベル×5本の【海】属性の【当たったものを海水に変える水槍】を放つ。
イラスト:hina
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
備傘・剱
漸く、現れたか
名状しがたき深海系海洋女神!
儀式したけりゃ躯の海で勝手にやってろ!
オーラ防御全開、攻撃はガントレットで受け流す
誘導弾と衝撃波と呪殺弾を弾幕に、ワイヤーワークス投擲して、動きを封じる
念動力で体内を攻撃しつつ、隙を突いて黒魔弾を叩き込む
避けられても、衝撃波の零距離射撃に鎧砕きと鎧無視攻撃を合わせて喰らわせてやる
防壁を展開したら、念動力で防壁ごと持ち上げて、鐘に何度も叩き付けて、煩悩を払ってくれるわ!
高速回転させて対G訓練もおつってなもんかもな
儀式がどれだけ重要かは知らんが、俺に見つかったのが運の尽きだぜ
真面に成功できると思うなよ
恨み言は、あの世でつぶやけ
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
「漸く、現れたか名状しがたき深海系海洋女神!」
レディ・オーシャンを視認するなり剱はワイヤーワークスを振りかぶった。
「儀式したけりゃ躯の海で勝手にやってろ!」
だが放ったのは、振りかぶったワイヤー付きのハンマーではなく、衝撃波と、誘導弾と呪殺弾。何もしてこないとは思っていなかったのであろう。
「おことわりですよん☆」
果たしてその予想は正しかった。激しく渦を巻く冷たい海水の奔流が弾幕にした剱の攻撃を逸らし弾きつつ逆に剱へ襲い掛かったのだ。
「この程度、でどうにかなるかよ!」
弾幕の相殺で弱まった海水の奔流をフォトンガントレットを盾の様に翳し、オーラで体を覆いながら凌ぎつつ、剱はワイヤーワークスを投擲する。
「ほんめいはそっちですか☆ これは一本とられましたねん☆」
海水の流れは剱自身を襲った直後、流れきってしまったことで向かってくるワイヤー付きのハンマーを押し流すことは出来ず、レディ・オーシャンの肩に命中したワイヤーワークスから伸びるワイヤーが名状しがたき深海系海洋女神の腕へと絡みついた。
「捕まえたぜ! あとはっ」
「きゃー、あぶないひとが近よってきますよん☆」
念導力で攻撃しつつ、ブレスレット型のワイヤー収納器にハンマーから伸びるワイヤーを回収することで剱は距離を詰め。
「漆黒の魔弾はいかな物も退ける。罠も、敵も、死の運命さえも!」
両者の距離がほぼゼロへ達したところで、漆黒の魔弾を剱はレディ・オーシャンへ叩きつけ。
「く、ぅ」
「儀式がどれだけ重要かは知らんが、俺に見つかったのが運の尽きだぜ」
呻くレディ・オーシャンへ外れた時の備えとして放つつもりだった衝撃波の追撃に沿えるのは、真面に成功できると思うなよという言葉。
「っ、それはどうですかねん☆」
「ぐおっ?!」
追撃も命中させたものの、レディ・オーシャンの周囲を泳いでいたリュウグウノツカイ型の機械が尾を一振りして剱を弾き飛ばし。
「流石に一人で仕留めきれるほど弱くはないか」
慣性で後方に流されながら、剱はポツリと漏らしたのだった。
成功
🔵🔵🔴
秋津洲・瑞穂
なんかこー、軽い神様ねぇ。
この国では浜辺に漂着した板切れも神だから、お似合いかもだけど。
そのぶん神の地位は低くて、ただ神というだけでは扱いも悪いよ。
そのへん解ってるのかな。
ともあれ息が続かないので海上へ戻って、頭上に石を投げこもう。
「爆雷投下ぁ♪」
大きめの石が頭にあたればダメージも入る……のかしら……?
しばらくチャポンチャポンやったら、再び海中へ。
大きな石に掴まって一気に潜水。海流で流されるのはヤだし。
狐火の壁も盾に使って真上からの突撃、石は最後の砦。
衝突まで石が砕かれていなかったら頭の天辺にドゴンっ(
そうまで巧く行かなかったとしても、やることは一つだけよ。
薙ぎ槍を構えて垂直突撃!
「ぷく」
松苗・知子(サポート)
『メリハリつけていかないとね!』
妖狐の陰陽師 × スターライダー
年齢 20歳 女
外見 153.8cm 灰色の瞳 黒髪 色黒の肌
特徴 ポニーテール お調子者 アクティブ カフェ好き 実はロマン主義者
口調 はすっぱ(あたし、あなた、呼び捨て、なの、よ、なのね、なのよね?)
死を覚悟した時は 無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)
口も足癖も悪いが義理人情には弱い。伸縮自在の特殊警棒と宇宙ビックスクーターで暴れまわり、時々クレバーに妖術も使ってみるスペースヤンキーもとい陰陽師
実は常識的
※セリフイメージ
「けったくそわるいわね」
「ぶちのめすわよ!」
「あ、あたしよりよほどやばい奴なのよ……」
(「なんかこー、軽い神様ねぇ」)
直接目にした感想を心の中で呟くと、瑞穂は海水球の中を上方に向かって泳ぎ始める。何か考えあっての事なのであろう。
(「この国では浜辺に漂着した板切れも神だから、お似合いかもだけど。そのぶん神の地位は低くて、ただ神というだけでは扱いも悪いよ」)
そのへん解ってるのかなと時折視線を下方に向けるが、先ほどの様にジェスチャーで伝えることはない。両手両足を全力で使って泳いでいるからそんな余裕がないという訳でもあるのだが。
「村を海水の中に沈めてしまうとか、けったくそわるいわね」
その瑞穂が目指す上空からビックスクーターを駆って、ではなく重力に引かれ海水球に飛び込もうとしているのは、松苗・知子(天翔けるお狐・f07978)。
「この下にいるのがわかってるって言うなら――」
宇宙空間ならば縦横無尽に走れる知子の愛車も重力下で出来るのは、地上走行と降下、そしてジャンプのみ。それすら関係なく着水しそのまま沈んでゆくのは、知子の目に映っていたからだろう海中に没した村の建物や地面、つまりビックスクーターが走行できる場所が。
「こんどはべつの人がきたんですねん☆ でも、じゃましちゃだめですよん☆」
とは言えレディ・オーシャンとてビックスクーターが本領を発揮できるようになるまで頭上を仰いでただ眺めてはいなかった。夥しい数の水槍を周囲に生成すると、一斉に穂先を知子とビックスクーターへ向け、解き放ったのだ。
「っ」
もし、が何もせず水槍を受けていれば愛車諸共海水に変えられていたことだろう、だが。
「さあさ、楽しくやりましょう」
水槍が命中する前に知子の周囲に召喚された器物の妖たちが出現し、水槍を迎え撃った。妖達の攻撃がもしくは妖自身が水槍に当たり海水へと変わり。
「ちょ、わっ」
数だけで言うなら水槍の方が圧倒的多数であり、相殺し損なった水槍の第一陣をビックスクーターの加速と身体を傾けることで知子はとっさに躱し。
「あ、あたしよりよほどやばい奴なのよ……」
どういう数飛ばしてきてるのよと零しつつ、知子のビックスクーターは水没した村を駆ける。すぐ後ろの地面を突き刺さる水槍によって海水に変えながら。
「あー、始まってるみたい。それじゃ――爆雷投下ぁ♪」
一方でこの様子を上から見ていた瑞穂は、海水球にいくつも石を投げ込む。
「あっちに気をとられてたらあたったりするかも。それで、大きめの石が頭にあたればダメージも入る……のかしら……?」
自分で言っておいて首を傾げたりもしたが、少なくともただ知子を水槍で狙い続けても居られないだろう。
「そろそろいいかな?」
何せ、瑞穂自身も大きめの石に掴まりながら海水球の中へ潜り出したのだから。
(「このままうまくいくと良いけど。海流で流されるのはヤだし……あ」)
出した狐火の壁も盾にどんどん潜って行けば、上を仰いだレディ・オーシャンと瑞穂は目が合い。
「上からなにかおちてくるとおもったらやっぱりそっちにもいましたねん☆」
(「あは、あはは」)
そううまくいかないかと苦笑する瑞穂の視界のなかでレディ・オーシャンは冷たい海水の奔流を激しく渦巻かせ。
「ぶちのめすわよ!」
「ぎゃふん☆」
特殊警棒で殴られたうえにビックスクーターで轢かれた。
(「えーと」)
瑞穂に気を取られて今度は知子への攻撃が疎かになっていたのであろう。同時に儀式も継続中であるわけだし。
「じゃあ、そういうことで」
ぷくと漏れた気泡を言語化したらそんな感じであろうか。瑞穂は轢かれたレディ・オーシャン目掛け掴まっていた石を両手で持ちかえるとその頭部目掛けて振り下ろしたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
伊高・鷹介
・ハン、この水害の元凶にやっと会えたか。先の戦争に俺は参加できなかったからなぁ……延長戦が本番ってのも悪かねぇ。
・水中戦は毎度のごとく念動力で空気のシェルターを作って対応。
……で、だ。
あの女神さんの攻撃は海水を操ってのものだ。念動力かそれに準ずる何かかは分からねぇが襲ってくるものは海水という物質にすぎねぇ。
なら、【超パワー】で海水の奔流に対抗。幾ら水が激しく渦巻こうが、その周囲にもっと強固な渦のコップを作ってしまえば被害は出ねぇ。無論、カミサマごと奔流を閉じ込めた後はそのコップをどんどん縮めて水圧での圧し潰しを図っていくぜ。
ま、要するにカミサマとの力比べだな……少しくらいは消耗させられんだろ。
「ハン、この水害の元凶にやっと会えたか」
鷹介の視界の中でその元凶は頭部に石を叩きつけられて地に伏していたが、顔が見えずとも見えている背中と周囲を泳ぐ機械の魚達を見れば間違いようもない。
「先の戦争に俺は参加できなかったからなぁ……延長戦が本番ってのも悪かねぇ」
しかも、討つべき元凶はまだ起き上がろうともしていない。
「なら、今のうちに、な」
先の戦いの時の様に念導力で周囲の海水を押し出し、空気のシェルターを作り出すと鷹介は動き出す。
「うう、ひどい人たちでしたねん☆」
レディ・オーシャンが片手で頭を押さえながら身を起こしたのは、その直後。
「またべつの――」
視界に鷹介の姿を認めた水害の元凶は立ち上がる事よりも攻撃を優先した。
「……で、だ」
周囲の海水が激しく渦巻き、奔流として襲いくる準備を整えつつあったが、鷹介は想定内だというかのごとく全く動じず、レディ・オーシャンを見据える。
「あの攻撃は海水を操ってのものだ。念動力かそれに準ずる何かかは分からねぇが襲ってくるものは海水という物質にすぎねぇ」
攻撃が放たれた直後でも鷹介の様子は変わらず、ただ海水の奔流とその向こうのわるいかみさまを見て。
「行くぜぇ!」
叫んだ瞬間、鷹介とレディ・オーシャンの間の空間が捻じ曲がった。
「え~っ」
わるいかみさまが驚きの声を上げるが、理屈は先に鷹介が口にした通り。海水の奔流と言ものはどれほど威力があろうが早かろうが物質の動きに他ならず、歪められた空間を前にしては無力だった。
「幾ら水が激しく渦巻こうが――」
空間に干渉できないのであれば、意図したとおり外部に影響を及ぼすことは不可能。だが、鷹介はさにあらず。空間を捻じ曲げることで、カミサマごと奔流を奔流も利用して形成した強固な渦のコップへ閉じ込め。
「さて、と。そんじゃ、次は圧縮ってな」
空間を捻じ曲げるほどの念動力が渦のコップをどんどん小さくしてゆく。
「わたしはのしイカじゃないですよ~☆」
「イカだとは思っちゃいねぇよ。……けどな、これなら少しくらいは消耗させられんだろ」
「っ」
口の端を釣り上げれば、わるいかみさまは逆に口元をひきつらせたように鷹介には見え。
「力比べだ、耐えて見せろよ、カミサマぁ!」
鷹介が吠えた瞬間、渦のコップは一気に縮小し、爆ぜた。恐らくは金属の魚達を構成していたモノであろう、様々な金属片が四方八方に飛び散り。
「どうだ、少しは効いただろ?」
ボロボロになりつつも姿を見せたレディ・オーシャンへ鷹介はどう猛に笑んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵
宮落・ライア
絶対先制ってあるんだっけ?
まぁどの道後手に回るから防壁の形成は避けられないけれど。
で、その防壁の遮断能力ってどんな物さ。自負とかあったりするの?
あればあるほど私は嬉しいよ。私はそれをぶち抜きに来たんだから。
【霹靂神】の充填開始。
何か妨害があれば雷撃の薙ぎ払いと範囲攻撃で相殺。
無いならその余裕に胸を高鳴らせて充填に集中。
小細工抜きで真っ向から海水ごと防壁を荷電粒子ビームで消し飛ばして打ち抜いてあげます。
どうやって世界を渡ったのか疑問ではありますが……
まぁ答えないでしょうしそれについては問いません。
今何をしようとしているのかの方が重要ですから。
答えないのでしょうが。
……。
話す舌は必要ありませんね。
「絶対先制」
ふいにそんな単語を思い出してしまったのは、他のジェネシス・エイトの面々が戦いの際に先手を取ってきたからだろうか。
「まぁどの道後手に回るから防壁の形成は避けられないけれど」
「これいじょう邪魔が入らないようにしちゃいますね~☆」
諦念とセットでライアが視線をやれば、わるいかみさまの周辺にある膨大な海水が防壁を形成し始めたところであり。
「で、その防壁の遮断能力ってどんな物さ。自負とかあったりするの?」
「ご想像におまかせしますよん☆」
投げられた問いへの反応はは、他の猟兵に抱かせた軽い神様そのものだったが。
「ふぅん。わたしとしては、あればあるほど嬉しいよ」
何故ならライアはそれをぶち抜きに来たのだから。
「それじゃ、始めよう」
攻撃を、ではない。その下準備をだ。ライアが霹靂神の充填開始すれば、槍の内側での荷電粒子の圧縮と加速が行われ。
「妨害はなしなんだ、余裕だな」
何かしてきた時に相殺しようと備えていたことが無駄になったというのにライアは嬉しそうにしつつも充填に集中する。レディ・オーシャンからすると、防壁を維持するために戦闘行為に出ること自体が不可能だった可能性もあるが。防壁のなかのわるいかみさまからすれば、儀式が完成すればいいのであって、猟兵達を殲滅する必要はないのだ。
「そろそろ、だな」
結局互いに相手へ手を出すことはなく、五分が過ぎた。
「どうやって世界を渡ったのか疑問ではありますが……まぁ答えないでしょうしそれについては問いません」
槍を向けたまま、ライアはレディ・オーシャンを見つめる。
「今何をしようとしているのかの方が重要ですから」
言外にここで何をしていて、何をしようとするのかを問うと、村を海水に沈めた元凶は、口を開く。
「邪魔せず見ていてくれればわかりますよん☆」
「……そう」
答えが返ってきたのは、ライアにとって予想外だったが、それは出来ない相談でもあった。グリモア猟兵が説明していたのだ。
「儀式が成功してしまうと、レディ・オーシャンは大地から『宝物のような物品』を掘り出して姿を消し、オーシャンボールは津波となって周辺を押し流してしまう」
と。
「これ以上の会話は必要ありませんね」
問答を打ち切り、ライアは槍の穂先をしっかりとオブリビオンへ向け。
「味方は避けてください。融けますよ? 護りごとぶち抜きます」
誰か加勢に転送されてくる者が居たとしたら巻き込まないようにの気遣いか、警告の直後に高加速荷電粒子ビームは放たれ、海水の防壁にぶち当たった。
「効きませんよ~☆」
外部からの攻撃を遮断する防壁に護られているからこそ、レディ・オーシャンは避けることをしなかった。
「本当に?」
だが、ライアの打ち出したビームは相手を護りごとぶち抜く性質のモノだ。加えて、レディ・オーシャンはここまでの戦闘でずいぶん消耗している。
「えっ」
声が漏れた直後、攻撃を遮断していた筈の防壁が貫かれ、わるいかみさまは光に呑まれ。
「あっ」
直後に海水球が霧の様に霧散し始め。
「終わった。けど、これって後片付けも大変そうだよね」
それ程長い時間でないとはいえ海水に浸かっていた民家や店を見回し、ライアはポツリと呟いた。猟兵達は戦いに勝利したのだ。
成功
🔵🔵🔴