ブレイズ・フロントライン・シェルター
#アポカリプスヘル
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「燃えろォーッ!」
「焼いちまええええええ!」
「ウオーホォーッ!」
BOOOOOOOOOOM! 津波じみて押し寄せる紅蓮の炎が、巨大な鈍色の壁に襲いかかった。
岩盤に埋め込まれるようにしてそびえる鉄壁に火炎放射をする集団の名は、『フレイムアーミー』! 消防士じみた服装に、フルフェイスガスマスクを被り。あらゆるものを炎で焼き払わんとする、血も涙もない凶悪集団である!
「ヒャハハハハハ! 火でよく見えねえなあ! ホントに燃えてんのかァ!」
「知らねえよォ! 燃えるまで焼くんだよォ!」
「燃えなくてもいつか溶けんだろ! そしたら次は中身だァァァ!」
「中身まだ出てこねえのかァ! もう燃えてんのかァ!」
「知らねえよォ! 火でよく見えねえ!」
『ウワーッハッハッハッハ!』
哄笑するフレイムアーミーたちは火炎放射の引き金を引き続ける。そして分厚いシェルター壁の奥、逃げ込んだ人々においては―――。
●
「オブリビオンが紛れ込んでるんですよー」
巨大薄型テレビジョンのグリモアを背後に、シーカー・ワンダーはのんびりと告げた。
とある岩場に作られたシェルター型の『拠点(ベース)』が、オブリビオン集団『フレイムアーミー』に包囲されたのだという。
拠点は万が一オブリビオンの襲撃があっても問題ないよう、メインの出入り口を最大限固めている。そのため、フレイムアーミーが立ち去るまで持ちこたえるか、脱出までの時間稼ぎは出来る見込みであった。
「それだけならまぁ、フレイムアーミーやっつければいいんですけど。でもさっき言った通り、オブリビオンが一人、先に潜り込んじゃいまして……しかも、シェルターの扉を開けるように言ってるんですよ」
そのオブリビオンの名は『幻鏡拳のミラ』。オブリビオン拳士たちの軍団『拳帝軍』の一員であり、シェルター内の人々にフレイムアーミーを正面から迎撃しようと提案している。
『幻鏡拳のミラ』は一般人に擬態して扇動するつもりのようで、既に多くの人々が迎撃準備に入っているようだ。このままではシェルターが開け放たれ、フレイムアーミーが全てを焼き尽くしてしまうだろう。
「いくら擬態できるといってもオブリビオン。猟兵の目なら一発で見分けられますので、まずは幻鏡拳のミラをやっつけて、それからフレイムアーミーの退治をお願いします!」
しゅっしゅとシャドーボクシングをしていたシーカーは、グリモアの脇に移動して猟兵たちへと道を開く。白く光り輝く画面を隣に、思い出したようにして言った。
「あ、そうそう。フレイムアーミーは切り札を持っているみたいです。それが何かまではわからなかったんですが、追い詰められたら必ず出してくるはずです。くれぐれも気を付けてー!」
鹿崎シーカー
ドーモ、鹿崎シーカーです。多分これが今年最後のOPです。
●舞台設定
とある岩場にある岩石を用いて作られたシェルター型拠点。メインの出入り口にフレイムアーミーがたむろして火炎放射を浴びせ、シェルター内に侵入したミラが扉を開けさせようとしています。ミラを倒し、フレイムアーミーを撃破してください。
●第一章『『拳帝軍』幻鏡拳のミラ』(ボス戦)
オブリビオン拳士たちの軍団「拳帝軍」の拳闘士です。彼らはそれぞれ特殊な拳法を使用し、その圧倒的な力で暴虐の限りを尽くします。ミラは敵を中心に高速で回り続け、嬲りながらUCを反射する戦法を得意としている拳士です。
シェルター内の一般人に紛れていますが、猟兵の目なら一発で見抜くことができます。シェルター内のミラを撃破したのち、外に出て第二章に移行します。
●第二章『フレイムアーミー』(集団戦)
ゾンビ退治を行っていた軍人達が死に、オブリビオンとして蘇った姿です。火炎放射器を用い、あらゆるものを焼却することを至上の喜びとする彼らのマスクの下の皮膚は醜く焼け爛れています。
シェルター外に出ての戦闘です。倒すと奥の手として第三章のボスを繰り出してきます。
●第三章『???』(ボス戦)
アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。
(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
第1章 ボス戦
『『拳帝軍』幻鏡拳のミラ』
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POW : 幻鏡双神拳(ミラージュ・ダブル)
【左右が反転した自分の幻影】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : 幻鏡円舞陣(ミラージュ・ロンド)
【相手の周囲を高速で旋回しながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【自分の幻影】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ : 幻鏡反鏡殺(ミラージュ・リフレクター)
【円舞陣の圏内】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、円舞陣の圏内から何度でも発動できる。
イラスト:えんご
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フローラ・ソイレント」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メンカル・プルモーサ
…ふむ、まずは中の敵からか…
オブリビオンを見つけたらに気づかれないように言いくるめやコミュ力を駆使して一般人をそれとなくオブリビオンから離れるするよう誘導するか…
そしてオブリビオンのいる通路や部屋を【愚者の黄金】でふさいで完全隔離…とりかかるよ…
予め【再起する不倒の英雄】を自分や仲間にかけておくよ…
…これで嬲りながら攻撃してきてもすぐに回復できるしバフもかけれる…
…●幻鏡反鏡殺でコピーされるユーベルコードは性質上「一度見ている」から【崩壊せし邪悪なる符号】で相殺・無効化するよ……
…あとは円舞陣の圏内で受け止められないように【縋り弾ける幽か影】によるステルス式自爆ガジェットで攻撃といこう…
リカルド・マスケラス
「一人称:自分・二人称:名前を呼び捨てなチャラい喋り方」
こーゆー時、洒落たカマかけで相手を炙り出すなんて出来ればカッコいいんすけど、とりあえず自分のできることを頑張るっすかね。判別は付いてるし
自分は一般人が巻き込まれないよう、ミラの周囲にUCで呼び出した分身をこっそりと【忍び足】で配置っす。分身の格好とかは大人から子供まで選べるので、避難した一般人に見えるように。戦闘が開始されたら分身が一斉にお面をかぶり、一般人と区別をつきやすくする。
「そんなに回りたいなら、回してやるっすよ!」
戦闘では分身達に【ロープワーク】【怪力】で鎖分銅によって相手を巻きつけ、そのままベーゴマめいて激突させる。
アリシア・マクリントック
一般人に紛れて悪行を働くなど不届き千万!私たちはそのような卑怯者に負けはしません!
見つけましたよ……変身!セイレーンアーマー!尾鰭展開!神話形態!
「♪さぁ手を
取り合い開いた 世界を映すのは
他の誰でもない 私だと叫んで
触れたもの全てが 未来になっていく♪」
周囲を回って動きを封じ込めると言ってもその動きは二次元のはず……上空からのヒットアンドアウェイには対応できないでしょう?
急降下して一太刀浴びせたら上空へ離脱を繰り返して戦います。
もしも地上戦に引き込まれたら翼で防御してしのいでから、スキを見てフェンリルアーマーにチェンジしてスピード勝負です!
クルス・グリムリーパー
【アドリブOK】
人間のふりをしていても無駄ですよ。
キミからは死に戻りの臭いがします。
死神である私が地獄へ導きましょう。
【戦闘】
速さに置いては不利となりえます。
ならば暗殺スキルで気配を消し、瓦礫に隠れながら一撃を食らわせましょう。
足を狙い、速さを削ぎ落とします。
そうすればこちらでもついていけるでしょう。
幻影はどちらも仕掛けてくるのでしょうか
もしそうだとしても一気に攻撃をして倒します。
もし私を仕留められたら相手も油断するでしょうか。
それでもユーベルコードを使い、油断したところで必殺の一撃を食らわせてあげます。
メルティア・サーゲイト
【私・お前・名前呼び捨て】
なんつーか、頭悪ィ奴らだなァ……
「シェルター空けるのか? まあ、いいけどさァ」
ドールユニットで内側に紛れ込んで会話で少し時間を稼ぎながらオブリビオンをじっくり観察して、本体の位置を把握しておく。
「ここを開けたらどうなるか教えてやろうか」
ガラクタに偽装したゴーレムが把握した位置に向けてCODE RAMPAGEで右腕を飛ばして掴んで引き寄せ、左腕のシリンダーを稼働。CODE SUDDENで吹っ飛ばすぜ。
「こういう事になる。開けてもいいんだぜ、あの扉をよォ」
所で、右腕にシリンダー付けて掴んだ時にCODE SUDDEN打てないかなァ。打てる気はするんだが。
「反撃すべきです!」
多くの人々が集まる広大なシェルター。戦車やパワードスーツ、赤錆びたコンテナなどが乱雑に置かれた空間の一角に出来た人だかりの中心で、薄汚れたツナギ姿の女が鬼気迫った声で演説を打ち立てていた。大仰な身振りを加え、周囲の人々に語りかける。
「見ての通り、連中は扉の前で無意味な火炎放射を繰り返すのみ。恐らく奴らは、高度な頭脳を持ち合わせていないはず! 物量で押し込めば、追い返すことは充分可能です!」
演説を聞いた老若男女がざわめきながら意見を交わす。聴衆の反応を待つ女。やがて、彼女の正面に立つバーコードヘアの中年男が口を開いた。
「言いたいことは理解したが……作戦でもあンのかい。まさか誰かしらに薪んなれってんじゃあないだろうな?」
「もちろん、作戦ならばあります。まずは、このベース内に置かれているコンテナを並べられる限り並べて扉を解放。そこからビークルで押し込むんです。相手はたかが火炎放射器、武装コンテナを溶かすだけの力は無いでしょう」
早口でまくし立てられ、中年男がややたじろぐ。プランを聞いた人々は再度さざめき立ち、空間内にあるコンテナや置きっぱなしにされた重機類を数え始めた。
迎撃に対し前向きに検討し始めたベースメンバーに、女はもうひと押しとばかりに声を張る。
「我々のベースにカチ込みかけたこと、後悔させてやりましょうッ!」
「あー、ちょっといいか」
人だかりの中からスッと伸びる手。振り返る人々に道を開けてもらいながら進み出たメルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)は、ツナギ姿の女に問う。
「連中の頭が悪ィのは同感だ。ブチのめすのも異論はない。だがシェルター空けるのか? わざわざあのバカ共を招待するって?」
「ええ。そうでもしなければ、奴らは延々と扉の前で火炎放射し続けるでしょう。向こうの燃料が尽きるのを待つのも手ではあります。しかし、現状を考えるに打って出る以外ないかと。いつまで籠城すればいいのかもわかりませんし」
「ふーん……」
返事をしながら、メルティアは前髪で隠れた右目を細める。
(チッ、もっともらしい意見並べやがるなァ。私のお喋りでどんだけ気を引いてられるか……)
赤い瞳に映った女の姿が残像めいてぶれ、黒いビジネススーツを着た別の女性の姿を現す。『幻鏡拳のミラ』!
女の本性を見抜いたメルティアは、人だかりをちらりと伺った。人の隙間の奥を走る、黒いロングコートを羽織った幼女を見つめて内心で呟く。
(正体わかってんだし、とっととぶっ飛ばしたいとこなんだが。避難誘導すんなら早いとこ頼むぜ、お二人さんよ)
一方で、メルティアの視線が投げられた先。幼女の右側頭部に据えられた狐面ことリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は、ライダースーツを着た女性と囁き合うメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の後ろで息を切らした。
「ひぃ、ふぅ……あーしんどい。神経使うっすね、コレ……」
小さくぼやくリカルドに振り返るメンカル。小声で話し合っていた女がそそくさと退散するのを余所に、彼女はこくんと頷いて見せた。
「……お疲れ……だいぶ良い感じ、だから……もうちょっと、頑張って」
「もうちょっとっすかぁ。はぁ」
大きく息を吐き、リカルドは背筋を伸ばしてコートを正す。心配そうに横目で見やるのは、ツナギの女と話し合うメルティア。
「メルティア、大丈夫っすかねえ。敵の真ん前で時間稼ぎするって言ったっすけど」
「……時間の問題かな……長く喋ってると……どうしても不自然って思われる……。急ごう……リカルド、分身追加お願い……」
「ういっす!」
リカルドは両手指を組み、薄い狐火じみたオーラで身を包む。腕に力を込め、音量を限界まで絞って叫んだ。
「忍法・霧影分身術! バレねーように、ドロンッ!」
BOMBOMBOMBOMB! リカルドの周囲に噴き出した数本の霧が人型に凝固。裏腰や後頭部、背中に狐面を下げた年齢性別人種もまばらな人々に変化した。リカルドはちらちらとメルティアたちの方を気にしつつ、メンカルに静かな檄を飛ばす。
「入れ替わり作戦続行っす! サクサク避難させてくっすよ、メンカル!」
「……うん」
動き出すメンカルとリカルド。他方のメルティアは、小型のコンテナを挟んでミラと向かい合っていた。二人の周りはテーブル代わりのコンテナを覗き込む人々で寿司詰めになり、広げられた紙を覗き込んでいる。紙には簡易図で示されたシェルター内部と外、長方形にいくつもの三角形。
作戦内容を絵に書いたミラは、ペン先で紙をコツコツと叩いた。
「……と、このような形で如何でしょう。これなら確実に外敵を返り討ちに出来ると考えますが」
「ん―――…………」
口元に右手を据えたメルティアが唸る。シワの寄った眉間には汗がにじみ、顔つきは険しい。ミラが告げた詳しい作戦内容を反芻し、図式をにらみ―――メルティアは内心で頭を抱えた。
(ああクソッ、駄目だ。欠陥らしい欠陥が見当たらねえ! マジで外の連中追い返す気かコイツ? 何を考えてやがる……?)
メルティアはしばらく無言を貫き、やがて大きく溜め息を吐いた。ミラがペン回しをしながら尋ねる。
「何か、異論はありますか?」
「……いや」
メルティアはミラから目を逸らし、頭を掻きながら明後日の方向に視線を向ける。彼女の左側のずっと奥に、分厚く広い鋼の壁が生み出すデッドエンド。あれを一枚隔てた外で、フレイムアーミーが火炎放射を続けているのだろう。メルティアは言葉を濁した。
「異論は無い。無いけどさ……アレ開けんのかァ……。まあ、いいけどさァ」
ミラが化けた女は、じっとメルティアを見つめ続ける。音が引き潮めいて遠ざかり、やってきた無音が場を支配した。数秒の沈黙。やがて、メルティアはミラと目線を合わせて告げる。
「なあ。ここを開けたらどうなるか教えてやろうか」
「……はい?」
女が怪訝な表情をした瞬間、メルティアはコンテナをキックしてミラごと吹き飛ばした!
「がはっ!?」
コンテナごと弾丸めいて飛んだ女は前方回転してコンテナを直上へ弾く! 片膝立ちで着地した彼女が顔を上げると共に、メルティアの後方遠くで巨大な布が跳ね上げられた。天井スレスレに広がる砂色のカバーの下から現れたのは、無骨な人型の機械ゴーレム! 潜伏していたメルティアの本体!
ゴーレムは目に当たる部分を赤く光らせ、大きく右手を振りかぶる!
「おらよ、こっち来なァァァッ!」
KBAM! 巨大な右ロケットパンチが真っ直ぐ飛翔し、驚愕の表情で凍りつくツナギ姿の女性を捕縛! ゴーレムはワイヤーで繋がった右腕を引き戻しながら左腕を振りかぶる。握りしめられた女は両腕を引き抜こうともがくが、脱せぬ!
「何をッ……!」
「何をするってか? こうすんだよ!」
ゴーレムは右手を突如として離し、女を虚空に投げ出した。直後、上体を大きくひねって引き絞られた左肘が爆発! 剛拳が滞空する女の胴体を直撃した! 内蔵が口から飛び出すが如き衝撃!
「くはっ……!」
「ぶっ飛びな」
SMASH! 殴り飛ばされた女が砲弾じみた速度で壁に突っ込む! 女を埋め込んだ巨大な陥没の中央めがけ、人混みから影がひとつ飛び出した。跳躍したアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)は、白いドレスの上から着けた銀の機械ベルトに銀の鍵を斜めに差す!
「見つけましたよ……変身! セイレーンアーマー! 尾鰭展開! 神話形態!」
鍵をレバーめいて下ろすと同時、露出していた持ち手部分がベルトのバックルに収納された。ベルトが蒼銀の閃光を解き放ち、機械音声で宣言!
『Gate open! Change Seiren!』
光の中で、アリシアの全身を渦潮じみたオーラが包み白いワンピースを洗い流す。剥き出しになった胴体と両腕に収束したオーラは凝固し、それぞれ両肩と鳩尾からへそ下までが開けた薄いアーマーと両二の腕から手首までを覆う薄青のアームカバーに変化!
続いて透けたスカート状のヴェールが巻きつき、腰から下を束ねたオーラ光がアイスブルーの金属めいた魚の下半身を形作る。人魚めいたフォルムとなったアリシアの頭に金のリングが嵌めこまれ、その下部から飛び出した薄布が彼女の目元から後頭部までをぐるりと隠した。
最後に両手を頭上に掲げたアリシアは、両手の平を一直線にかすめる青い光線つかむ! 弾けた光の中から現れた、蒼氷めいて輝く三叉槍を回転させて目の前を引き裂いた!
「はぁっ!」
SMACK! 爆ぜた蒼銀の光から飛び出したアリシアは、中空を魚雷じみた速度で駆け抜け壁の女へ一直線に槍を突き立てに行く! 壁にめりこんだ状態で顔を上げたツナギ姿の女は、四肢を壁に押し当てて緊急脱出! アリシアの刺突を回避して床を転がり、人混みにダイブし紛れ込む!
超低姿勢で人々の足を避けて疾駆しながら、ツナギ姿の女は銀粉を吹き散らして姿を変えた。黒いスーツに烏帽子を被った、紺色の髪をした女―――『幻鏡拳のミラ』本来の姿に!
(なんてこと……迷いのないパンチに刺突! まさか私の変装をあっさりと見抜くなんて!)
腹をさすりながら歯噛みをするミラ。胃を押し込まれるような違和感を抱えながらも、最高速度で駆け続ける。
(いいえ、落ち着くのよ。不意は打たれたけれど、チャンスはある! 一端別の誰かに身をやつして敵の数を確かめる! 反撃はそこからよ!)
方針を決めた次の瞬間、二条の剣閃がミラの両ふくらはぎを斬り裂く! 傷から噴き出す鮮血!
「ぁっ!」
ミラは頭から床に突っ込みゴロゴロと床を転がるが、即座に片膝立ちで体勢復帰した。人混みの外に弾き出された彼女の目の前に、黒い外套を着た女性が鎌を携えて歩み寄る。フードの下から真紅の瞳をのぞかせたクルス・グリムリーパー(永遠の死神・f24385)は、底冷えのする声で言い放った。
「人に紛れて隠れれば、私たちの目を誤魔化せるとでも? 甘いですね」
彼我の距離3メートルの位置で立ち止まり、大鎌の先を突きつける!
「人間の振りをしていても無駄ですよ。キミからは死に戻りの匂いがします。死神である私が地獄へ導きましょう」
「やれやれ……」
ミラは床に着いた片膝を上げ、両手を握った。拳から水泡めいて湧き立つのは、藍色で縁どられた銀色の光!
「さすがは猟兵。嗅覚もまた、犬並というわけですかッ!」
FLASH! 銀色の閃光が爆発した瞬間、クルスは袈裟掛けに鎌を振るう! 彼女の背後に現れたミラの左肩口が裂け、クルスの腹に衝撃が走った。顔を歪めて身を折るクルスに振り向くミラの後方上空に三叉槍を構えたアリシア!
「さぁ手を、取り合い開―――いた―――世界を映―――すのは―――他の誰でもない、私だと叫んで―――!」
槍に蒼銀の光をまとわせた急降下刺突! ミラはクルスへの追撃をやめて側転回避し、地に槍を突き立てたアリシアを真横から殴りかかった! 横目で迫りくるミラを見たアリシアは、尾びれで空気を叩いて身を起こす!
「触れ―――たもの全てが―――未来になっていく―――!」
手中で槍を回転させ、突撃してくるミラに突きを繰り出す! ミラは裏拳で軌道を逸らし、そのままアリシアの鼻面にパンチを放った。思い切り身を反らしたアリシアは、鼻先を光拳がかすめると同時に尾ひれで床を叩いてバックジャンプ! ミラがフラッシュし、アリシアの真後ろに出現!
「後ろッ……!」
「逃がしません。我が拳に死角無しと知りなさいッ!」
ミラは引き絞った右拳を包むと共に、左側に視線を滑らせた。CABOOOOOOM! 爆音と炎を噴出してメルティアのゴーレムが殴りかかる! 空中で側転し上下逆転したミラの目と鼻の先を鉄拳が通過! 一回転して鋼の腕に飛び乗ったミラはアリシアの回転足払いを軽く跳んで避けた。
「ダブル!」
ミラが叫んだ瞬間、SMACK! 背後にもう一人のミラが現れ、本体の背中にサイドキック! 弾丸の如く突進したミラはメルティアの腕から肩へ駆け上がって再度跳躍し、ヘッドパーツに回し蹴りを叩き込む! SMAAASH! 大きく傾くゴーレムの躯体!
「ちっ!」
「二度も同じ拳は食らいません。さっきと同じように行くとは思わないでくださいッ!」
「抜かせ!」
メルティアは逆の肘を爆発させて斜めに拳を突き上げる! ミラは銀閃を放ってワープし、メルティアの周囲を高速で旋回し始めた。銀色に輝く光が足回りや胸回りを駆け抜け、蛇行や螺旋軌道を描く! CRASH! CRASH! ゴーレムの右膝、右肩甲骨部、左脇腹が破砕し体勢を崩した。
「クッソ! ぐあっ!」
CRASH! うなじを壊され、うなだれるゴーレム。後頭部を狙える空に現れたミラは、銀に輝く蹴り足を曲げる! メルティアは立ち上がろうとするが間に合わぬ! ミラの瞳がギラリと輝く!
「意趣返しです。行きますよッ!」
銀の流星じみた飛び蹴りがメルティアを急襲! 機械の頭部が砕かれる寸前、メルティアの足元に青白い魔法陣が広がった。メルティアのマシンアイが赤く輝き、振り向きざまの裏拳をミラの飛び蹴りに激突させる! SMAAAAASH! まき散らされる銀の光芒!
「速度が上がった……!」
「死角無しは私も同じってこった。メンカル!」
メルティアが叫ぶと同時、ミラを挟んでメルティアの向かい側に駆け出したメンカルが銀月の杖をミラへ掲げる! はためく白衣に青白い光の粒子がまとわりついた。
「……メルティア、そのまま抑えて。……世に漂う魔素よ、変われ、転じよ。汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金……!」
ミラの上下左右前後の六面に出現した魔法陣が黄金色の光を放つ! 眩い光が消え失せたそこには、ミラを閉じ込めた金色のキューブが現れた。メルティアは即座にキューブを握りしめて爆破! 前後反転して爆煙に包まれた手を振りかぶる!
「クルス! 投げるからぶった斬ってやれ!」
THROWWWWWWW! 投擲された黒煙が一直線に伸びていき、先端からミラの姿が露出した。直線状に大鎌を振りかぶって待ち伏せるクルス! ミラはスーツをボロボロに焦げ付かせながらも彼女に向かって両手を伸ばした!
「ミラージュ・ダブル!」
ミラの両手の平が銀色のレーザーを発射! クルスが迫りくる光線を鎌の一閃で斬り捨てた直後、彼女の足元に屈み込んだミラの分身が現れる! 大鎌をフルスイングして隙をさらしたクルスの胸を、勢いよく立ち上がりながらのパンチが貫通! 浮き上がったクルスが血反吐を吐き出した!
「ごふっ……!」
頭から血を被ったミラはクルスの胸から拳を引き抜き、逆の手で繰り出したチョップで頭部粉砕! 炸裂する脳漿にメルティア、メンカル、アリシアが思わず凍りつく。一方空中で複雑に回転した本体のミラは両足を地に着けて急制動! 床に二本線の焦げ跡を刻み、メルティアたちを振り返る!
「仕留めました! 次ッ!」
「次は自分っすよッ!」
即座に後方跳躍するミラの足先を竜巻めいて回転する影が横切った。着地した彼女に、狐面の男二人を両手から伸びる鎖でグルグル巻きにしたリカルドが飛びかかる!
「食らうっす! そらぁぁぁぁぁッ!」
空中で高速横回転するリカルドからベーゴマじみて二人の男が放たれる! 突進してくる二つの回転体を、ミラはジグザグステップ回避! 垂直回転跳躍でリカルドが投げ放った鎖分銅を避け、斜めに伸びた鉄鎖を踏んで駆け上がる! リカルドは鎖を引いてワイヤーアクションじみた飛び蹴り!
「どりゃあああああああああああッ!」
「ふっ!」
跳んだミラの真下をリカルドの蹴りが通過し、膝蹴りが依代となった少女の下顎を直撃! 思い切りのけ反る黒コートの幼女の眉間に、ミラは銀光をまとったエルボードロップを繰り出した! だが幼女の顔に被さった狐面、即ちリカルド本体の両目部分が光を放ち、ミラの肘を押し留める!
「腕が進まないッ……! いえ、これは……!」
「生憎と、鏡系の力はそっちの専売特許じゃないっす! 忍法・鏡魔眼の術―――ッ!」
SMAAACK! リカルドの両目が光量を増し、ミラの肘を押し返した! 真っ白に塗り潰された視界の中でミラが見たのは、エルボードロップを繰り出す自分を真下から眺める形の光景! 打ち下ろされた肘がミラの鼻面に激突! 思い切りのけ反った彼女を前に、リカルドは伸ばした鎖を引き戻す! そしてそれを振り回し、ミラをグルグル巻きにした。
「そんなに回りたいなら回してやるっすよ! ひと昔前の玩具みたいにッ! せぇーのっ!」
鎖を握ってミラをコマめいてぶん回すリカルド! 彼に蹴飛ばされたミラは高速回転したまま地面に落下。そこへ狐面を被ったリカルドの分身たちが一斉に押し寄せ、あらゆる方向から一人ずつタックルをぶちかましていく!
CRASH! CRASH! CRASH! リカルドの分身たちに弾かれ、ベイゴマじみて跳ね返るミラ。その上空に涙を浮かべたアリシアが飛び出し、獲物を狙うサメじみて急降下する!
「一般人に紛れて悪行を働くなど不届き千万! 私たちはそのような卑怯者に負けはしません! クルスさんの仇ですっ!」
リカルドの分身がミラにタックル! アリシアは手前に弾かれてきたミラに三叉槍の穂先を突き出した! ミラの右肩が深々と抉られ、回転停止。ミラは数歩たたらを踏むと、痛みと槍の感触だけを頼りにアッパーカットを打ち上げた! アリシアの鳩尾を抉る鉄拳!
「うぐぅっ!」
「ぐ、く……っ!」
よろめきながら拳を振り上げるミラ! アリシアを打ち上げて首を振ると、ミラはふらつく足を踏みしめて仁王立ち体勢を取った。顔をしかめながらも尾びれを振るい、空中停止したアリシアの真上に銀の光球がわだかまる!
「全く……やってくれますね。初めての経験ですよ……目を回すのは!」
見開いたミラの両目が藍色がかった銀の閃光を放った直後、光球から光線が一条垂直落下! 肩越しを空を見上げるアリシアの背中にヒットしたそれは、内側から弾けてもう一人のミラを晒した! 分身ミラはアリシアをドロップキックで叩き落とした! CRAAASH!
「っあぐ……!」
鋼の床に叩き伏せられたアリシアが即座に身を起こす、がその顎をミラのハイヒールが蹴り上げた! ややふらつく足取りで左回転したミラは追撃のサイドキックをアリシアの腹に打ち込む! 弾丸めいて吹き飛んでいくアリシアの行く手に分身ミラが滑り込み、両の掌底で飛来する鎖骨部を抉る! 骨がゆっくりと砕けていく音! 奥歯を食いしばって悲鳴を噛み殺すアリシアの腹に高速接近した本体ミラの下段パンチ!
「っ! っっっっっ……!」
「いい感触です。ようやく、感覚が戻ってきました……!」
二人のミラは素早くアリシアから距離を取り、周囲を凄まじい速度で旋回し始めた! 地に伏すアリシアを垣間見たリカルドは狐面の分身たちを引き連れ全力ダッシュで加勢に突っ込む!
「アリシアぁぁぁぁぁぁぁっ! うおおおおおお! 全分身総動員! アリシアを救出するっすよ―――っ!」
『うおおおおおおああああああああッ!』
無数の分身たちが跳躍し、アリシアを書こう銀光の輪を飛び越えんとす! だが旋回の環から飛び出した片方のミラが身をひねり、全方位に蹴りを乱れ打つ! ムチめいてしなる数多の銀光がリカルドの分身たちを片っ端から弾き返し、雲散霧消させていく。本体リカルドが地上を疾駆!
「まだまだぁぁぁぁっ!」
鎖分銅を振り回しながら加速するリカルド。その目前に落下したミラが一回転からのキックで首を狩りに行く! リカルドは屈んで避け、振るった鎖でミラの右腕を絡めとった。
「縛ったっす! もっかいぶん回してやるっすよぉぉぉぉっ!」
鎖を思い切り引いたリカルドの真横をミラの右腕が突き抜け、赤い飛沫が狐面を点々と汚す。横目を向けたリカルドの視界に―――二の腕半ばから千切れ飛んだ右腕が映り込んだ! 直後、リカルドの右頬に打撃! 右腕を切断したミラはリカルドを殴った左手を引き、右前蹴りで蹴倒す!
「ぐはぁっ!」
「回るのは私の得意分野ですが、あなたの手を借りるのは御免被ります」
ミラが言い切る背後で、もう一人のミラが身を起こしたアリシアの脇腹に突進膝蹴り! 弾かれ、地に倒れ伏すアリシアの頭を踏み付けたミラは両腕に重火器を構えるメルティアをけん制。次いで振り返り、メルティアの対角線上で杖を構えるメンカルを見据えた。そして慎重、且つ冷徹に問う。
「来ますか? 巻き添え覚悟で私を消し飛ばすか、それとも……」
メンカルは眼鏡越しに周囲を見回し、無表情のままメルティアと目配せをした。アリシアを地に押し付けるミラのシューズが銀の光をまとった刹那、メンカルは青い光をまとって地を蹴る! 足にオーラを沸かせるミラに、銀三日月を模した杖先を向けた。ミラの両目と両耳前に小型魔法陣!
「観測せし虚像よ、沸け、轟け。汝は観客、汝は賞賛。魔女が望むは舞台を止めし大喝采」
SPAAAAARK! ミラの死角聴覚を閃光と轟音が打ち据える!
「うああああああああっ!」
両目を押さえてたたらを踏むミラ。同時にリカルドを踏みつけていた方のミラが銀色のオーラをまとっての高速タックルをメンカルに仕掛ける! 跳ね起きたリカルドは鎖分銅を投げつけ、ミラの右足を捕縛した。ピンと張り詰めた鎖に片足を引かれ、動きを止めたミラの頭上に蒼い魔法陣が展開!
「……忍び寄る破滅よ、潜め、追え。汝は炸裂、汝は砕破。魔女が望むは寄り添い爆ぜる破の僕。こればっかりは……コピー出来ない……!」
メンカルが告げた瞬間、魔法陣が光量を増す。真上を振り仰いだミラが、CABOOOOOOOM! 大爆轟に飲み込まれた。メンカルはアリシアに呼びかける!
「……アリシア!」
メンカルの呼びかけを聞き、アリシアはたたらを踏むミラの足下から転がって逃れる! 腹部に手をやり、銀色の機械バックルを召喚。開いたバックル右側のパーツが排出された鍵を引き抜き、狼型の柄持つ鍵を差し込み叫んだ!
「チェンジ! フェンリルアーマーッ!」
鍵をレバーめいて倒されたベルトバックルが銀光を放射! 光が失せたそこに立っていたのは、白銀の騎士鎧と青いアイシールドを備えたヘルメットを被ったアリシア! 低姿勢で走り出した彼女は両手のガントレットから三本のミスリルクロ―を生やしてミラへと迫る!
「百倍返しです! フェンリル……テンペストぉぉぉぉぉッ!」
アリシアの爪が閃き、神速の連撃がミラの全身をズタズタに引き裂いていく! SLALALALALALALALALALALALALALA! 右腕を振り子のように引き絞り、全霊を込めた斬り上げスクラッチ! 腹から胸元までをバッサリと斬り、バックジャンプ!
「メルティアさんっ!」
「っしゃ! これで思いっきりぶっ放せるぜ!」
KBAM! 爆風を残してスタートを切ったメルティアが、地面スレスレを滑るボディブロウでミラの背中を撃ち抜いた! SMAAASH! 跳ね飛ばされたミラが放物線を描いて飛翔。赤い目を点滅させ、挑戦的にうそぶく。
「思い知ったか? こういうことになる。開けてもいいんだぜ? あの扉をよォッ! メンカル、行ったぞ!」
ミラの着地点にはクルスの遺体を検めるメンカル! 彼女が飛来するミラを見上げた瞬間、クルスの指先がピクリと動いた。直後、遺体がどす黒いオーラを噴出して起き上がる!
「……クルス?」
ぽかんとした顔で呟くメンカルを、闇を吐き出すフードの奥から赤い瞳が一瞥した。何かに気づいたメンカルはクルスから距離を取り、杖の石突で足元を叩く! そことクルスの足元を中心に魔法陣が展開! メンカルは呪文を唱え始めた!
「……抗う兵よ、起きよ、鍛えよ。汝は克復、汝は再来。魔女が望むは加護を宿す不壊なる体……!」
魔法陣から溢れた蒼白の光がクルスの足を伝って胴体と両腕に充填! フードと風穴の空いた胸に湧いた闇が晴れ、元通りに復元されたクルスが大鎌をひとふり! メンカルはまなじりをやや下げて呟いた。
「……生きてたんだ……」
「正確には蘇生です。少々驚かせてしまったようですね……。ともあれ、助かりました」
クルスは大きく屈み、ロケットジャンプ! 漆黒の一閃が虚空を舞うミラとすれ違い―――SLALALALALASH! 一拍遅れた連続斬撃がミラをバラバラに解体! 天井近くで一回転したクルスは、ローブをはためかせて着地した。ゆらりと立ち上がり、刃についた血をスイングで跳ね飛ばした刹那、クルスの後方でミラの破片が爆発四散! ゆっくりと歩きながら、クルスは低く言った。
「送還完了です。次は、外の人たちですね」
大成功
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第2章 集団戦
『フレイムアーミー』
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POW : ファイアスターター
【火炎放射器の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【ゲル状の燃料を燃やすことで生じる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : トリプルファイア
【火炎放射器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : ヘルファイア
【火炎放射器の炎】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:松宗ヨウ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リカルド・マスケラス
「一人称:自分・二人称:名前を呼び捨てなチャラい喋り方」
「初っ端からヘビーな相手だったっすね」
次の敵はすぐそこだから、ボヤいてる場合じゃないっすけどね
「さて、あちらには別の分身で挑むっすかね」
【神火分霊撃】で呼び出した炎を程々の強さに合体させ、人の姿に擬態させてから、敵に向かわせる。
向こうが人間と勘違いして炎を浴びせたところで擬態を解いて、そのまま炎で【属性攻撃】をする。顔が焼け爛れてるってことは、耐火性能はあっても完全じゃないっしょ?
「既に燃えているものをどうやって燃やすんすかね?」
あわよくば向こうの出している炎を取りんでみたいっす
本体の【火炎耐性】は焼け石に水程度なので、あまり前には出ない
メルティア・サーゲイト
【私・お前・名前呼び捨て】
面倒は終わりだな。後は突っ込んで蹴散らすだけだ。に、しても結構やられたなァ、素手格闘相手は分が悪い。
ま、どれだけやられても即時再生成出来る私には全く問題ないんだがな! 人型形態の残骸を分解して重戦車形態に組み換えだ。
「ここは戦車が主役の世界、つまり私が主役だ!」
そのまま全速前進で轢き殺すぜ。だが、火炎放射器相手に実弾系銃器は暴発が怖いな。それなら、ドリル主砲(RAMPAGEの応用で射出と巻き上げ機構付き)と砲塔から生えた二本のアームでブン回す鎖鉄球の完全格闘仕様戦車だ。
え? コレのどこが戦車だって? ははッ、某RPGでは普通にあり得る装備だぜ。
メンカル・プルモーサ
…ふむ。次は外の輩か…メイン炎で炙られてるし…
…侵入を防ぐために固めてるみたいだから他の出入り口から外に出て…
…まずは集まってるフレイムアーミー達を【連鎖する戒めの雷】で縛り付けるよ…
…それで動きを封じて時間を稼いで…重奏強化術式【エコー】で多重強化した【尽きる事なき暴食の大火】を発動…まずは白い炎を周囲に浮かべる…
…そして白い炎を操って入り口を焼いている炎や地形を包んだ炎を飲み込んで消火…と言うより白い炎の糧として勢いを増して…
…フレイムアーミー達にその白い暴食の炎をぶつけるよ…
…悪因悪果…お前達は炎で燃え尽きるのがお似合いだよ…
レイジー・ノイジー
ハッハァー! エラソーな軍人サマがザマァねぇな、サイコーに笑えるぜ!
今なら思いっ切りぶん殴ってやっても懲罰もネェんだろ? 思う存分ぶち殺してやっても誰も咎めぇどころかヒーロー扱いだ、猟兵ってのは最高だな、えぇッ!?
別にこいつら自身に恨みや因縁があるわけじゃねーケドよ、こちとら威張り散らした軍人サマってのが死ぬほどキライでね! ワザワザ蘇ってもらったとこワリーけどもっぺん死んでもらうぜェッ!
ヒィーハァーッ!! 武器も防具も選り取り見取りだぜェッ!? わかってんだろォ、テメェら全部が肉の剣で盾だよ!
炎ォ? 丸焦げになる程度で死ぬならとっくの昔にくたばってンだよッ!! つべこべ言わず殴らせろや!!!
アリシア・マクリントック
火炎放射器は人に向けるものではありませんよ!扉よ開け!ヘパイストスアーマー!
炎と鍛冶の神の加護があれば、その程度の炎はどうということはありません!他の方への攻撃も必要に応じて庇います。
耐火性能を活かして正面から近づいてジェネシスハンマーで蹴散らしつつ敵の火炎放射器を攻撃して錬成、いい感じの武器に作り変えましょう。どんな武器が出来上がるでしょうか……創った武器は扱うのが得意そうな人に渡すなり自分で使うなり。
タンク部分を破壊してしまうと燃料が飛散して大爆発……なんてことになるかもしれないのでそこは注意しておきましょう。
クルス・グリムリーパー
【アドリブOK】
騒がしいのは好きではありませんが
その程度の炎で喜ぶなど愚かにもほどがあります。
【戦闘】
相手の炎は所詮この世の炎
本当の業火というものは私にあります。
この装備にユーベルコードと呪詛を込めて
地獄を再現し、敵を燃やし尽くします。
その炎は私の持つ鎌にも宿らせてみましょうか
これで敵の炎を受け止め、呪詛を込めた呪殺弾へと
変貌させ、相手にお返しいたします。
なるべく多くの敵をここで仕留めておきたいですね。
ベース外、シェルター扉前。分厚く巨大な鋼鉄の扉は、今だにフレイムアーミーたちが放つ炎に焼かれ続けていた!
横一列に並んだ火竜の群れが絶え間なくブレスを吐きかけるように、カーキの防火服とガスマスク、二本の燃料タンクに鉄網がけのメットを装備したオブリビオンたちは火炎放射を継続。その数百人は下らない!
「ヒャッハッハッハッハ! 燃えてるぜぇぇぇぇぇ!」
「燃えろよ燃えろお! 炎よ燃えろお!」
「天まで地獄の業火で焼き潰してやるぜェーッ!」
「焼いてんのは岩山だけどな!」
『ヒャ―――ッハッハッハッハ!』
口々に好き放題叫び、哄笑するフレイムアーミーたち。飽きもせずシェルター扉に放火し続ける彼らの背後で、うずうずと出番を待つ別のフレイムアーミー部隊の一人が待ちくたびれて声を上げた。
「オイ! 結構な時間あぶってるけどよぉ、そろそろ溶けてんじゃあねえのか!? そろそろ中入れねえか!?」
「あァ―――ン!?」
放火中のひとりが、肩越しに振り向いた。後続のフレイムアーミーの一人が語気を強める。
「ていうか中に入ったなんとかいう奴が扉開けるんじゃなかったっけか! もう開いてんのか!?」
「そういやぁそうだなァ! おい、誰か扉どうなってんのか見えるか!」
振り向いた一人の左右で、放火部隊の面々が失笑する。クツクツと喉を鳴らすだけだった笑い声は、突如として大爆笑に変化した!
「ヒャーッハッハッハッハ! 扉ァ!? 見えるわけねえだろうが!」
「スーパーホットファイアーしか見えねえよぉ!」
「燃やしてる真っ最中だからなァ!」
『ヒャ―――ッハッハッハッハ!』
背後から飛ぶ激しいブーイングもスルーして、放火部隊は炎の勢いをさらに強める! 岩肌に埋め込まれた扉は紅蓮の光に隠れて影すら見えぬ。だがノープロブレム! 放火それ自体がフレイムアーミーたちの心に滾る高揚の炎を扇ぎ立てるからだ!
そして代わってもらえない後続フレイムアーミーたちは、サムズアップの親指を下に向けてブーイングを飛ばす。なぜなら彼らも放火したいからだ!
『BOOOOOOOO! BOOOOOOOO! BOOOOOOOO!』
『ヒャッハッハッハッハッハ! ヒャ―――ッハッハッハッハッハッハァ!』
猛烈な批判を塗り潰す下卑た哄笑の声。轟と炎が唸る音、爆ぜる火の粉の音に大火事の都市にいるような錯覚を覚えて酔いしれるフレイムアーミーたちの耳に、別のサウンドが微かに響いた。耳ざとい放火部隊の一人が我に返り、周囲を見回す。
「ん? おい、なんか聞こえねえか?」
「あん?」
右隣のアーミーが問い返す。悪い寝起きじみてドスの利いた口調の彼に、耳ざといアーミーは言った。
「いや、なんか聞こえるだろ。ドドドッ、ドドドッてよ……ほら」
「あァン……?」
ガスマスクの奥で火傷に覆われた顔を怪訝そうに歪め、右隣のアーミーは耳に意識を傾けた。内なる炎を盛り立てる火災の音と仲間たちの笑い声の中に―――確かに聞こえる重低音。話を盗み聞きした左隣のアーミーが口を挟む。
「……聞こえるな。待て、なんかデカくなってきてねえか」
「っつーかどっから聞こえてくんだこの音」
三人を、他の放火部隊から切り離されたかのような静けさが包む。火炎放射の片手間、集中した彼らの耳朶をドンドン大きくなる地鳴りが震わす。数秒後、三人は同時に音源特定!
『上かッ!』
アーミーたちが顔を上げたその時、シェルター扉が埋め込まれた岩の上から飛び出す者あり!
ゴリラめいて太い両腕に、象じみた丸太の両足。四肢に不釣合いなほどに痩せた小柄の胴体に継ぎ接ぎだらけのボロ布をまとい、ボサボサに乱れた白髪を戴く顔は可憐に整った童顔。しかし緑色の瞳はギラつき、口は犬歯を剥いて笑う!
岩肌から飛び出したレイジー・ノイジー(カラードビースト・f24594)は両腕を振り上げ、放火部隊に飛びかかった!
「グルルアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
巨腕による急降下アームハンマーが、CRAAAAAASH! 大地を派手に打ち砕き、フレイムアーミーたちを木っ端の如く吹き飛ばす!
『グワ―――ッ!』
放火部隊が飛散し、放たれていた炎が失せる。赤橙色に熱された鉄扉を背後に、身を起こしたレイジーは獰猛に笑った。ブーイングをしていたフレイムアーミーたちが一気に色めき立つ!
「肉だ! 肉が来たぞ!」
「急げ! 放火用ォ―――意ッ!」
即座に三日月状に並んで火炎放射器を構える後続たち! そこへ吹き飛ばされた放火部隊も加わって戦闘態勢を取った。
「待てやゴルァ! こっちの燃料はまだ残ってンだぞォ!」
「抜け駆けしてんじゃあねえぞッコラーッ!」
「黙ッコラーッ! 散々放火してたんだからそろそろ譲れオラァーッ!」
「うるせえ! 全員で焼きゃあいいんだよおおおおおおッ!」
首と拳をゴキゴキと鳴らすレイジーに一斉放火が為される寸前、フレイムアーミーの上空に巨大な魔法陣が広がった。青白く輝くそれの上に立つメンカルは、大きな三日月をあしらった銀杖を陣中央に突き立てる!
「……紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
SMACK! 輝く魔法陣に気づいたアーミーたちが頭上を仰いだ直後、陣は紫電の鎖を無数に降り注がせた! ZGAMZGAMZGAMZGAMZGRAAAAAAAAAAAAK! フレイムアーミーは一瞬にして激しい電撃に飲み込まれ感電!
『グワアアアアアアアアアアアアアアアア!』
雷鳴に混じって響くフレイムアーミーの悲鳴! それを聞いたレイジーは背をのけ反らせて大笑した。
「ハッハァー! エラソーな軍人サマがザマァねぇなあ! サイッコーに笑えるぜぇッ! おい灰色眼鏡! 今なら思いっ切りぶん殴ってやっても懲罰もネェんだろ!? いいんだよな!?」
「……灰色眼鏡……」
顔を伏せ、眼鏡を押し上げるメンカルに構わずレイジーはダッシュ! ゴリラよろしく両手と両足を使って小ジャンプを繰り返すようにして、感電するフレイムアーミーたちに突っ込んでいく! 彼らは全員身を反らして痙攣したまま動けぬ!
「いいザマだなァ! 思う存分ぶち殺してやっても誰も咎めぇどころかヒーロー扱いだ! 猟兵ってのは最高だな! えぇッ!? ッハァァァァァァァッ!」
低空ジャンプしたレイジーは剛腕を振りかぶり、雷光荒れ狂う空間へ殴り込む!
一方、灰色眼鏡呼ばわりされたメンカルは、眼鏡から響く電子音を聞いてショックから復帰。視界に表示された矢印に従って荒野の奥へ視線を投げると、砂煙を上げて荒野を突っ切る赤い装甲車が何十台とやって来ていた!
(……増援も居たか……それなら、下は任せて……まずは予定通りに……)
即座に次の行動を決めたメンカルが杖を掲げる。三つの鎖でぶら下げられた三つの鉱石が青い光を解き放ち、六つの魔法陣がメンカルの胴を円環状に包囲した。フラフープめいて回転する六重の陣は加速する!
「重奏強化術式『エコー』起動……連鎖展開。貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
四つの魔法陣が光を灯した次の瞬間、シェルター扉の傍でくすぶる無数の火種が白く変色し、爆発的に膨れ上がって一つに融合! さらに残った二つも点灯し、六つ全ての陣が励起。両手を左右に広げるメンカルの白衣を、青白い光の風が跳ね上げる!
「……エレメンタル・ウォー、メメント・モリ、重奏発動。目覚めよ、悪食なる炎の竜……!」
CABOOOOOOOOOOM! シェルター扉を飲み込んだ白い大火が斜めに飛翔し、アーチを描いてメンカルの頭上を通過。元通りになった鉄壁から飛び立った劫火は翼を広げた炎の竜に姿を変えた!
「GAAAAAAAAARGH!」
アギトを開いたドラゴンは頭から急降下しつつ消防車じみたフレイムアーミー装甲車部隊にブレスを吐き出す! 装甲車の半数以上は左右に展開して退避するが、中央に陣取っていた装甲車群は空を斜めに斬り裂く炎に飲まれた!
「……悪因悪果……お前達は炎で燃え尽きるのがお似合いだよ……」
KRA-TOOOOOOOOM! 荒野を巨大な白い劫火が引き裂き、燃え上がる! この世の終わりじみた光景を遠目に、メンカルは左手首のハンドヘルドコンピューターに呼びかけた。
「……もしもしリカルド? 消火できたよ……開けて」
『うぃっす!』
コンピュータからリカルドの声。直後、メンカルの眼鏡レンズに『WARNING!』サインが表示! 目を見開いたメンカルは、足元の魔法陣越しに自分を急襲する十数本の火柱を目視した! 白火竜のブレスを逃れた増援装甲車からの火炎放射だ!
「リントブルム……!」
空飛ぶ箒の名を呼ぶメンカルを、魔法陣を貫通した火柱が飲み込み天を突く! さらに複数本の炎が空の魔法陣を立て続けに貫いた。BOOOM! BOOOM! BOOOOOM! いくつもの風穴を穿たれた魔法陣はガラスめいた音を立て破砕!
直後、地上に降り注いでいた紫電の鎖が消滅し、地上でフレイムアーミーズを縛り続けていた稲光が爆ぜ消えた。感電していた最後の一人を叩き潰したレイジーは顔を上げて周囲を見回す。
「あん? ……おーい灰色眼鏡! どこいったァーッ!?」
魔法陣無き空を見上げるレイジー。彼女の前に消防車めいた装甲車が続々と停車し、開いた後部から新手のフレイムアーミーたちが次々と駆け出してレイジーの前に立ちふさがった。その左右を駆け抜ける他の車両たちは気にせず、火炎放射器を用意!
「イキのいい肉だァーッ! オレたちは先にこいつらを燃やしてからベースを放火しに入る! 黒焦げハンバーグ一丁上げンぞォォォォォッ!」
数十近いアーミーたちの火炎放射器が威嚇的に炎を上げる。レイジーは身を沈め、凶悪な笑みを惜しげもなくさらしてみせた!
「ハッ! やれるもんならやってみろ! 別にお前らに恨みや因縁があるわけじゃねーケドよ、こちとら威張り散らした軍人サマってのが死ぬほどキライでね! ワザワザ蘇ってもらったとこワリーけどもっぺん死んでもらうぜェッ!」
地を蹴るレイジーに包囲火炎放射が襲いかかった!
そして他方、レイジーたちをすり抜けた装甲車たちは重々しい地鳴りを響かせるベースへと一直線に突き進む! 先頭を走る装甲車の運転手が前のめりになり、ガスマスクに仕込んだインカムを通じて声を張る!
「ヒィィィヤッハアアアアアア! ゲートがちょっとずつ開いてやがる! このまま突っ込むぞ! つかまれッ!」
アクセルを踏み抜かれ、急加速する赤く重厚な戦車たち! 徐々に上がっていくゲートさて、あちらには別の分身で挑むっすかね」の隙間は、人が低く屈めばなんとか通れる程度。だがフレイムアーミーたちは構わず突撃し、車のスピードメーターが限界を振り切りかけた、その時である!
DRRRRRRNG! ゲート奥からエンジン音が鳴り響き、隙間をすり抜けて三つの影が飛び出した! 車体をギリギリまで横倒しにしたバッファロー型バイク、黒いローブを着て大鎌を担いだ小柄な少女、燃える赤黒の全身鎧を着た鉄槌の騎士!
クルス、アリシアと一緒にベースから出たリカルドは、バイクを起こして車体をスピン。機首を猛進してくるフレイムアーミー装甲車に向け、ハンドルをひねった。
「やーれやれ、初っ端からヘビーな相手だった……とか言う暇も無く次っすか。クルス、体は本当に大丈夫っすか?」
「問題ありません。死など、とうに慣れました」
冷たい目つきでフレイムアーミーを見据えるクルス。そこへ投げかけられる運転手の罵声と暴言!
『そこのけそこのけフレイムアーミーのお通りだァーッ! それとも焼却処分が好みのデストルドーか! OK、だったら消し炭にしてその辺の畑にでも撒いといてやる! フレイムトラクター、インシネレイトモ――――――ドッ!』
装甲車たちのルーフに装備された巨大キャノンが縦長の砲身を伸ばす。橙色に変色する砲口の奥を睨み付け、アリシアは走り続けながら声を張る!
「火炎放射器は人に向けるものではありませんよ! 今すぐ武装解除して投降してください!」
『うるせェーッ! 燃えカス志望がゴチャゴチャ言ってんじゃあねえぞォ! 死ねええええええッ!』
BBBBBBBBBOOOOOOOOOOOOOM! 装甲車群が一斉に劫火をぶっ放す! 津波じみて押し寄せる炎を前に、リカルドはアクセルペダルをキックした。
「さて、あちらには別の分身で挑むっすかね。お二人とも、お先に行かせてもらうっす!」
DRRRRRRRR! 猛る闘牛めいてエンジンを鳴らし、リカルドバイクが先行! 肉迫する強力な火炎放射を前に、激しくドリフトさせてシートを蹴り跳躍! 中空に至ったリカルドは交叉した両腕に炎を灯す!
「擬態解放! 忍法・神火分霊撃ッ!」
両腕を左右に開いた瞬間、リカルドは全身を太陽めいて光らせた! CABOOOOOOOOOM! 彼の爆発と共に広がる炎が壁と化し、装甲車が放つ炎を真正面から受け止める! 自分たちの炎で視界が塞がれたフレイムアーミーたちは歓声!
『ヒィーハハハハハハハハ! これは燃えちまったなァーッ!』
『遺灰すら残らねえんじゃねえのか!』
「残ってても車で引き潰しちまうよ!』
『ヒャーッハッハッハッハ!』
炎壁に気づかず直進する装甲車たちを、ベース内で待機するリカルドの本体は炎壁の上部あたりから俯瞰して溜め息を吐く。自分に擬態させていた炎は健在である!
「無駄無駄っす。既に燃えているものをどうやって燃やすんすかね? ……ま、言っても聞こえないと思うっすけど」
ロングコートと狐面を着けた幼女は小さくぼやき、両手を人差し指だけ立てた状態で組んだ。手に力を込める幼女の肩や背中から、狐火めいたオーラが昇る!
「さーて、ベースに入り込まれても嫌だし、一発混ぜっ返すとするっすかね。神火分霊撃…………解ッ!」
炎壁が後ろに歪み、フレイムアーミーたちの劫火を―――押し戻す! BOOOOOOOOOOOOOOOM! 逆風じみて放たれた爆炎が炎壁に気づかず走り続けていた装甲車をまとめて飲み込み、フロントガラスを爆砕して運転席に雪崩れ込む!
ALAS! 消防車じみた装甲車の集団は嵐に飲まれた難破船じみて流された! 打ち返された炎が荒野を大きくひと撫でして過ぎ去ったところへ、炎壁を飛び越えたクルスが大鎌を振り上げる! 大きく湾曲した刃は柄尻に届かんばかりだ!
「……まだいますね。運転手以外は無事でしたか」
目を細めるクルスの目下には、ひっくり返されたおもちゃ箱の中身めいて散らばる数々のフレイムアーミー装甲車。だがクルスが察知した通り、車体後部から転がり出た乗員たちは無事である! 彼らは首を振ると、即座に空のクルスに気が付いた!
「上だァーッ!」
「構えろォ! 上にいやがるぞおおおおおッ!」
「焼けェーッ! 燃やせぇぇぇぇ!」
手持ちの火炎放射器を構え、噴射口を上向けるフレイムアーミーたち! クルスは彼らを見下ろし、黒紫色のオーラをまとう!
「何よりもまず火を放つのが先ですか。重ね重ね、痛々しいです」
『ヒャッハァ――――――ッ!』
BOOOOOOOOOOM! 一糸乱れぬ一斉放火が虚空を斜めに引き裂いて、クルスを巻き込む! 業とうなる燃焼音。幾重にも伸びた炎の交差点は、しかし内側から突き破られた。回転しながら落下し、片膝立ちで着地したクルスは無事である!
「何ィ!? なんで燃えてねえ!」
「馬鹿な! オレたちの炎に、燃やせねえものなんてあるはずが……!」
「どんな手品を使いやがった!?」
色めき立ち、困惑するフレイムアーミー! ゆらりと立ち上がったクルスは鎌をひと振りして火の粉を払い、冷淡に告げた。
「あなたがたの炎は所詮この世の炎。その程度で喜ぶなど愚かにもほどがあります」
両手を左右から頭上に持ち上げ、水平になった鎌の柄をつかむ。クルスの矮躯から噴き上がる禍々しいオーラ! 描き出される巨大なドクロめいた陰影の下で、若き死神は宣告する!
「地獄をここに。本当の業火というものを見せてあげましょう」
「ザッケンナコラーッ!」
突風の如き殺気を怒声で跳ね退け、フレイムアーミーの一人がクルスを指差す!
「オレたちゃ無敵のフレイムアーミー! 負けるわきゃねえんだァァァァァァッ!」
「そうだ! さっきのァマグレに決まってる! もう一発燃やしてやらァァァァァッ!」
仲間の鬨の声に当てられ、次々に火炎放射器を構えるフレイムアーミー。だが刹那、炎壁を破って走り出たアリシアがクルスの真横を駆け抜けフレイムアーミーたちへ突進! 赤熱する巨大なハンマーを下段に振りかぶり、アーミーの一人に急接近!
「はッ!」
振り上げられた槌が火炎放射器を跳ね上げる! ガスマスクレンズの下で目を白黒させるアーミーの腹に前蹴りを叩き込んだアリシアは、即座に自分へ狙いを変える左右の二人に横薙ぎスイングを繰り出す。弾き飛ばされる火炎放射器!
「火炎放射器は、人に向けるものではありませんよ!」
「なろッ……!」
毒づく右のアーミーにショルダータックルを打ち込み、左のアーミーの鳩尾に跳び膝蹴りを直撃させてダウンを取る! アリシアは炎壁を振り返って叫んだ!
「リカルドさん! 武器を!」
「はいっす!」
炎の壁が三発の火球を放った。炎弾は五芒星めいた形に変化し、内から爆ぜて三人の青年に擬態! 前方回転した三人の炎人間は宙を舞う赤熱鉄塊に手を伸ばす。
それはアリシアの鉄槌に弾かれた三つの火炎放射器! 溶鉄の塊となった武器は波打つように形を変えて三本の湾刀に変化した! 一人につきひとつ剣をキャッチした炎人間はフレイムアーミーたちの真っただ中に着地し、刃を振るって首を狩る!
「畜生! こっち来やがった! 燃やせッ!」
「おい待て、あっちの黒いガキはどうする!?」
「その前にこの鎧のアマを……ぬおッ!」
SMASH! 火炎放射器がまたひとつ打ち上げられ、回転しながら槍に変形! 宙空を横一直線に飛翔した狐面の鎧武者が槍をつかんでフレイムアーミーの包囲にダイブし、高速回転させながら振り回して次々とアーミーを斬り飛ばす! 統率混乱!
「ウオオオオオオッ!」
「もうなんだっていい! とりあえず燃やせ! 燃やせ燃やせェッ!」
「フレンドリーファイアしちまうぞ!」
「気にすンじゃねえ! オレたちが炎だァーッ!」
フレイムアーミーたちがてんでバラバラ、無暗やたらに火炎を放つ! 仲間の巻き添えお構いなしの無謀な放火の中を駆け抜けるアリシアは、真正面から浴びせかけられる炎に頭から突っ込んだ! 火の粉を振り払った彼女は無傷!
「燃えてねッ……!?」
「その程度の炎、どうということはありません! 食らいなさい、錬鉄の力っ!」
BOMB! 爆炎をまとったハンマーを振り回し、アリシアはアーミーの一人を殴り飛ばした! 彼の手から離れた火炎放射器を打ち上げ、さらに背後から不意打ちで放たれた炎を裏拳で粉砕! 攻撃に失敗したアーミーはバックジャンプ!
「チィーッ!」
「はいそこッ!」
跳び下がるアーミーの首が斬り飛び、首の切断面からシャンパンめいて血が噴き出す! 元火炎放射器の双剣を携えたリカルドの分身は、二本の刃をくるくると回して手近なアーミーを首狩り殺!
炎と血飛沫、武装に肉体が飛び交うケオスの戦場を冷静に見つめながら、クルスは黒く発火したローブをひるがえした。邪悪な怨嗟を燃やす炎が大鎌の刃に燃え移る!
「死してなお蘇るだけでも罪深いのに、火遊びなどもってのほかです。……充分楽しんだでしょう。さあ、お還りの時間です」
鎌を下段に構えて引き絞り、クルスはその場で一回転! SLASH! 黒い剣閃が波紋めいて拡散し、一拍遅れて生き残ったアーミーたちの首が飛ぶ! 切断面から燃え上がった黒炎はたちまち死骸をくるみ、甲高い断末魔じみたサウンドを放った。
『GYA―――AAAAAAAAAAAAAARGH!』
黒い炎が噴き上がり、周囲一体が暗く染まった。首を失い、よたよたと死のダンスを踊るフレイムアーミーたちの遺骸が順々に倒れていく―――その時! 黒炎の領域をぶち破って五台の装甲車が飛び出した! 一台の前面にはレイジーがへばりつく!
「ぐおおおおおおおおおおおおおっ!」
レイジーに組みつかれた装甲車の運転手は思い切りハンドルを切って車体をコマめいて回す! 遠心力により吹き飛ばされ、仰向けに倒れ込むレイジーを引き潰しにかかる巨大質量! 運転手が叫びを上げた。
『ウ―――ラアアアアアアアアアアアアッ!』
装甲車が加速した刹那、走り出た狐面の青年二人がレイジーを横からかっさらい轢殺を回避! 五台並んで走る装甲車群を前にしたクルスは回転跳躍で車体を飛び越す。五台は構わず炎壁を貫きベースへ直行していく! アリシアが声を張る!
「いけません! ベースが……!」
マフラーから火を噴き、装甲車はニトロブーストで再加速! ミサイルめいた速度でシャッターを開き切ったベースへ特攻をかけた。いつまで経っても燃やせぬ猟兵たちを捨て置き、燃やしやすいベース内の人々を狙う構えだ!
『ヒャッハッハッハッハッハ! ザマァ見ろクソ野郎ども! お前らがいつまでも燃えねーってんなら、先に他の奴から焼いてやる! 死んだ兄弟たちに上げる香も兼ねてなァッ! ヒィーハハハハハハハ!』
運転手が絶叫しながらアクセルを踏む足に力を込める! 迷いなく突っ込んで来る五台をベース内壁際から見つめたリカルドは、奥に振り返って呼びかけた。
「メルティア! 来たっすよ!」
「おう! あぶねえあぶねえ、私の出番がもうねえのかと思ったぜ!」
地鳴りじみた音を立て、ベースの奥から巨大なロボが姿を現す! 上半身は人型で、下半身はキャタピラ駆動。腹部に大型のドリルを備え、砲身を利用して形成された両腕には鎖付きのモーニングスター!
人型重戦車と化したメルティアは各部から圧縮空気を噴き出して呟く。
「トロトロしてた扉もようやく開いたし、これで思う存分暴れられるってわけだ。教えてやるよ。ここは戦車が主役の世界、つまり私が主役だ!」
ギャルルルルルルルルルルルルルル! キャタピラを超高速で駆動させ、メルティアはロケットスタートを決める! 荒野へ飛び出した巨体は、腹部のドリルを回転させて真っ向から来る装甲車たちに狙いを定めた!
「ぶっ飛びなァ!」
砲弾めいて放たれたドリルが装甲車の一台を強襲! 開いた運転席と車体後部からフレイムアーミーが緊急脱出した直後、CRAAAAASH! ドリルが装甲車を穿りねじってスクラップに変える。メルティアはさらに両のアームから鎖鉄球を射出!
ドリルから伸びるワイヤーを挟んで疾駆する二台は、ルーフに設置された大型火炎放射器を伸長させた! 咆哮する運転手!
「鉄球如きで止まるかよォ! ファイアアアアアアアアアアアッ!」
BBOOOOOOOOOOM! 二つの巨大バーナーじみた炎が鎖鉄球を受け止め、赤熱させながら押し返す! メルティアは腹部から伸びたドリルをワイヤー巻き上げ機構を駆使して引っ張り戻し、そのまま上半身をコマめいて回した。振り回される両鉄球! 並んで走る四台のうち左側の二台が横薙ぎ鉄球によりまとめて殴打を食らい、斜めに吹き飛ぶ!
「ハッハー! 五台じゃあちょっと足りねえなァ! あるだけ全部持って来な! 全部スクラップに変えてやるよッ!」
回転を止め、メルティアは左のアームを振り下ろす! 長く伸びた鎖がしなり、残る二台を一緒に叩き潰しにかかった! 運転席と車体後部からフレイムアーミーが脱出し、CRAAASH! 装甲車が叩き潰され、爆発四散! 転がり出たアーミーたちは自棄になって口々に声を張り上げた!
「畜生がァッ! 燃やせ燃やせェッ!」
「こうなりゃあのロボから燃やしてやるァ!」
「クソッたれがァァァァッ!」
百人以上が一斉に業火を放ち、鉄砲水めいて地上を走った炎がメルティアのキャタピラを包む! すぐさま橙色に熱を持ち始めるキャタピラを止めぬまま、メルティアは腹部のドリルを再起動!
「ハッ、それで私の足を止めたつもりか? それがどうしたァッ!」
CEEEEEEEEEEEEEE! 甲高い駆動音を立てたドリルを砲弾めいて発射! だが砲弾の軌道上に立つアーミーの一部が火炎放射器を上げ、ドリルを真っ向から迎撃!
「ウオオオオオオオオッ! 燃やせええええええッ!」
「鉄程度でどうにかなると思うなよガラクタ野郎ッ!」
「こうなりゃ全燃料をブチまけるぞ! トリプルファイア部隊ーッ!」
火力を増した火炎放射により、ドリルが弾き返された。同時に、火炎放射を続けるアーミーたちの後方から、四人がかりで担がれた巨大火炎放射器が三門進み出る! メルティアは即座に状況判断。両腕から鎖鉄球を射出するもアーミーたちの炎が行く手を阻む! メルティアは内心で舌打ちし、鉄球とドリルを引き戻した。
「露払い共が! だったらまとめてひき殺すだけだァァァァッ!」
キャタピラを全開駆動させ、アーミーたちへ一気に迫る! その時、三門の巨大火炎放射器が炎の光線を噴出! メルティアの顔面と両肩に突き刺さった! 進撃の勢いが緩む!
「ぐっ……!」
「今だァ! 押せえええええええッ!」
「このままドロドロの溶鉄に変えてグツグツのシチューみてえにしてやるぜ!」
「おら燃えろ燃えろォッ! ヒャッハーッ!」
BOOOOOOOOOOM! 火力を増すフレイムアーミーたちの爆炎! メルティアのキャタピラが高熱にあぶられて前方から溶け始め、不自然な前傾姿勢となっていく。彼女の視界が真っ赤に染まり、『OVER HEAT』のメッセージを点滅させた!
(オーバーヒートだと? 舐めるなよ……!)
キャタピラの回転数を無理矢理引き上げ、炎の中を突き進むメルティア! 彼女は肩越しに後方を振り返って叫ぶ!
「リカルド! 一気に押し込む! 背中になんか一撃寄越せッ!」
「メルティアの背中にっすか! んーと……!」
リカルドは素早く思考を回す。既にメルティアの周囲は炎の海であり、もはや彼の耐火性能では耐え切れぬ! 迷った末、彼は指笛を吹き鳴らした!
「アルタイル! 馬力全開!」
DRRRRRRRRNG! 猛々しいエンジン音を轟かせ、バッファローめいたバイクが荒野をかける! メルティアと彼女を取り囲む火の海を大回りした宇宙バイクはメルティアの後方で鋭いドリフトを決め、ミサイルめいて飛び出した! バイクはメルティアの背中に衝突、彼女の推進力と化して前へ押し出す!
「いい一撃だぜ! 行くぜ、CODE CENRAUR!」
火を浴びながら急加速するメルティア! 紅蓮の熱波をアームのクロスガードで防ぎながら疾駆する彼女を、フレイムアーミーが嘲笑った!
「馬鹿めが! この炎に近づいてタダで済むわけがねえだろうが! 来れば来るほどテメェは溶ける! アイスクリームのようになァッハッハッハッハッハッハ! …………あ?」
哄笑するフレイムアーミーの目を、炎越しに青白い光が射抜いた。メルティアの巨躯をかたどる粒子の輪郭。それは彼女を炎から保護する魔力の光!
「……我が護りよ、削れ、防げ。汝は喪失、汝は絶壁。魔女が望むは五色届かぬ防魔の理」
静かな詠唱が響いた瞬間、メルティアの全身を眩い光が包み込む! 音量を増す駆動音が燃焼音を塗りつぶし、炎を勢いよく打ち払う! BOOOOOOOOM! 激しい熱風がフレイムアーミーを襲い、木の葉じみて吹き飛ばした!
「ぬああああああッ!」
「グワアアアアアッ!」
火の粉混じりの風に弾き飛ばされたフレイムアーミーたちへ、炎を打ち破ったメルティアが走る! その右肩にはチェック柄のスカートや白いローブを焦げ付かせたメンカル! 彼女の魔術がメルティアの火炎耐性を強化したのだ!
「ッし抜けたぜ! ありがとなメンカル!」
「……気にしないで……これぐらい、なんとかできる……」
「頼もしい限りだ。さてと、そろそろ仕上げと行くかァ!」
メルティアは上体をひねって後方へ鎖鉄球を伸長! 長く円弧を描いたそれを、宙に投げ出されたフレイムアーミーめがけてフルスイング! まとめて薙ぎ払われたアーミーズは鉄球側面で潰れ血飛沫を噴き出す! 残った一部が背中から地面に落下!
「ぐはァッ!」
「く、クソッ! やりやがった!」
「早く立て! もう一回トリプルファイアで……!」
跳ね起きたアーミーのひとりが、真後ろに投げ出された巨大火炎放射器に手を伸ばした。直後、それは橙色に発熱してバスタードソードに変形!
「なにっ……!?」
息を呑んだフレイムアーミーが顔を上げると、バスタードソードを挟んで向かい側にハンマーを振り下ろしたアリシアが立つ! 鉄槌を担ぎ上げた彼女は、赤いバイザー越しに凍り付くアーミーを見下ろした。
「あの大きな武器なら、既に私が打ち直しました。次はあなたたちの性根を叩き直す番ですッ!」
高々と掲げられた鉄槌が振り下ろされる! SMAAAAASH! 彼女が殴打すると同時、やや離れた場所で二十人近いアーミーが再度空中を舞った。右腕を振り抜いたレイジーは、毛先の燃える髪を振り乱して吠える!
「クルス!」
後ろに差し出されたレイジーの右手に、駆け寄ってきたクルスが飛び乗る。レイジーは彼女をカタパルトめいて投擲! 跳ね飛ばされた二十余名のフレイムアーミーに黒いオーラをまとった死神が肉迫! 大鎌が黒い炎をまとって燃えた!
「もう充分でしょう。続きは骸の海でしてください。薪になるのは、あなたたちですが」
クルスは大鎌を一閃! 幾条もの黒い斬撃が空を走っていき、フレイムアーミーたちをすり抜ける。次の瞬間、彼らはバラされ、ドス黒い血の雨を降らせた! その下ではアーミーの手足をつかんで引き千切るレイジー!
「オラオラどうしたァ! もう増援はねえってのか!?」
「う、ウオアアアアアアアアア!」
レイジーの前に立つ五人のフレイムアーミーが、彼女めがけて爆炎を繰り出した。一瞬にして炎に飲み込まれるレイジー! しかし彼女は鉄拳一発で放射を吹き飛ばし、ダッシュ左ストレートをフレイムアーミー二人の胴に叩き込む! 水風船めいて爆裂殺!
「ッハ! 丸焦げになる程度で死ぬならとっくの昔にくたばってンだよッ! つべこべ言わず殴らせろやァッ!」
大振りの右腕がさらに二人の頭部を狩り飛ばし、左アームハンマーで残る一人を叩き潰す! 距離を置いて火炎放射体勢を取る別の二人に、首を失ってふらふら踊るアーミー二人の胴をつかんで投擲! 火炎放射体勢を解いて左右に跳び分かれる二人!
「うおッ!?」
「ぬおっとぉ!」
地面を転がるフレイムアーミー片割れの足を、素早く駆け寄ったレイジーの手がつかまえた。レイジーは彼を振り回し、もう片方に打ち下ろす! SKUAAASH! 二者の頭部が衝突粉砕! 飛び散る脳漿と返り血を顔に浴びながら、レイジーは凶悪に笑う!
「ヒィーハァーッ! 武器も防具も選り取り見取りだぜェッ!? わかってんだろォ、テメェら全部が肉の剣で盾なんだよォォォォォォッ!」
他方、赤銀の刃を手にした狐面の集団が生き残ったアーミーたちを次々と斬り殺していく! 襲いかかる炎を一太刀の下に引き裂き、フレイムアーミーの首筋を切断する彼らはリカルドの分身! 地獄めいた周囲の光景を見回し、アーミーの一人は立ち尽くした!
「う、嘘だ……嘘だ!」
徐々に放射される炎の数が減っていき、代わりに倒れ伏す死骸が増えていく。おろおろとする彼を、脳が渦巻くような困惑が支配する。
(最初はベースを焼くってだけの話だった! 向かってくる奴らもまとめて黒焦げなるはずだった! なのにどうしてこうなった!? なんでこいつらは一向に燃えねえ!? なんでこっちが死んでってんだ! 畜生、こうなったら奥の手だ……!)
彼は火炎放射器から片手を離し、襟元のバッジを親指で押した。直後、彼に黒い影が覆い被さる。ギクリとした彼が火炎放射器を手に振り返ると、そこにはメルティアの巨体! メンカルの白い炎をまとった鉄球が振り下ろされ、CRAAAAASH!
アーミーを叩き潰したメルティアはアームを上げながらぼやいた。
「さーて、ざっとこんなもんか? ったく、格闘に熱暴走とヘビーなラインナップが続くぜ……」
「……ん。あとは……こいつらの切り札とやらだけかな……」
メンカルが眼鏡のツルに手を添えると、右目のレンズにソナーレーダーが投影された。同心円を光のラインが時計回りに一周し、点々と消える光点を表示。一周するごとに消えていく光の点は、オブリビオンの生態反応である。
「……12……8…………5……2…………ゼロ。フレイムアーミーの反応、消失……」
メンカルがつぶやきかけたその時、レーダーに新たな光点が浮かび上がった。メンカルは眠たげな瞳を光らせ、左目で戦場を俯瞰する。死屍累々となった地上に立つのは、アリシア、クルス、レイジーとリカルドの炎分身たちのみ。だが新しいオブリビオン反応は、真っ直ぐ円の中心―――即ち、メンカルの居る場所へ接近している。
「……んー……? これは……もしかして……」
ふと、メンカルは空を仰いだ。青空にひとつ、四角い影。徐々に大きくなるそれは、垂直落下する巨大物体だ! メンカルはメルティアに呼びかける!
「メルティア、下がって……! 上……!」
「あ? ……うおっと!?」
上空の影に気づいたメルティはキャタピラを逆回しして高速バック! 彼女の居た場所に落ちてきたコンテナが大地を打ち据え、粉塵を上げた。即座に身構える猟兵たちの前で、コンテナはフタを開き、さらに四方の壁面が外側に倒す。もうもうと立ち込める冷たい霧の奥で、肥満体の巨体がうごめいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ゾンビジャイアント』
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POW : ライトアーム・チェーンソー
【右腕から生えたチェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD : ジャイアントファング
【無数の牙が生えた口による捕食攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : レフトアーム・キャノン
【左腕の砲口】を向けた対象に、【生体レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:タヌギモ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●お知らせ
・第三章はボス戦です。フレイムアーミーの切り札、ゾンビジャイアントを打倒してください。
・このゾンビジャイアントは、フレイムアーミーが用いる火炎放射器の燃料を体内に抱えています。そのため使用UCに強力な炎属性を付加しており、火炎の攻撃に耐性を持ちます。
・また、衝撃を与えると爆発します。
メルティア・サーゲイト
【私・お前・名前呼び捨て】
キャタピラって案外簡単に直せるンだ。無限軌道を修理。ドリルと鉄球は要らんな、腕ごとパージしよう。
「やっぱり射撃戦で締めないと私らしくないってモンだ。新技で行く!」
新たに生成した射撃戦向けの腕を六本! それぞれにガトリングカノン、ガトリングショットガン、レールカノンを二挺! 無限軌道側面に五六連ミサイル、肩に巡航ミサイル、背部に滑空砲のフル装備だ。
「FCS、IFF正常動作確認。好きなだけ喰らいな!」
滑空砲以外の一斉射撃を浴びせながら捕まらない距離を旋回!
「ま、テメーを仕留めるにはな」
隙を見て背中の滑空砲に一発だけ籠めたAPFSDSを構える。
「一発で十分だ」
メンカル・プルモーサ
(物理的な意味で)燃えてるなあ…
それならこちらはなるべく衝撃を与えない形でダメージを与えていくとしようか…
【空より降りたる静謐の魔剣】により刀の形をした魔剣を周囲に展開…
…ゾンビに「斬る」軌道で攻撃を仕掛けていくとしよう…
…特に左腕のビームは危険だから早めに切り落とすか……【撃ち貫く魔弾の射手】で狙撃して破壊をしておきたいところだね…
…最後に大爆発されると困るから…無詠唱の【夜飛び唄うは虎鶫】により召喚したガジェットを1体上空へ飛ばしておいて…
…大爆発しそうになったら【彼方へ繋ぐ隠れ道】でガジェットの所に飛ばしてしまおう……たまやー…
クルス・グリムリーパー
●プレイング
気の毒な姿です。
哀れみを感じます。
このままでは苦しいでしょう。私がキミを無事、送って上げましょう。
【アドリブOKです。】
【戦闘】
敵に衝撃を与えると爆発するのですか
ならば衝撃をなるべく減らすためにも斬撃で攻撃したほうが良さそうですね。
とは言え、仕留めきれなければ危ない…
ならば、この体を捨て身として挑みましょう。
相手の持つチェーンソーを体を張って封じてみせます。
私の体で…攻撃を抑え込み、それを持って
ユーベルコードを執行します。
この捨て身の力と、限界を突破した一撃で
致命傷を与えてみせます。
アリシア・マクリントック
大きな爆弾……というわけですか。これは難題ですね。攻撃をすれば爆発する、しかし攻撃しないわけにもいかない……
そもそも爆発とは激しい燃焼。であれば冷却すれば安全に倒せるのでしょうが、そういった技はありませんし。それならこうです!行きますよマリア!変身!魔法少女マジカル・マリア!
マリア、敵を結界で包むのです!爆発を抑えきるほどの強度はありませんが……結界の内側の酸素をなくしてしまえばそもそも爆発ができないはずです!攻撃も結界越しになってしまいますが、なんとかするしかありません。
もっと有効な防御手段を持っている人がいればそちらに協力しましょう。倒すだけならできるかもですが、爆発を防ぐのが優先です!
リカルド・マスケラス
「一人称:自分・二人称:名前を呼び捨てなチャラい喋り方」
爆発するらしいから、集落から離して戦いたいところ
「ドライブに付き合ってもらうっすよ」
【牽牛星覚醒】でアルタイルのパワーを強化し、バイクから鎖分銅を射出し【念動力】で動きを操りながら【ロープワーク】で捕縛。バイクを【操縦】して【怪力】で集落から離れた地点へ引きずっていく
「アルタイルのパワーは伊達じゃないっすよ!」
鎖を斬られたら巻き直し、敵のチェーンソーが届かない長さを保ちつつ引っ張っていきたいなあと
「払え給え清め給え……この地にとどまらず、さっさと成仏するっすよ」
安全そうな場所まで引っ張ったら【破魔】の力を込めてビーム砲を敵に撃ち込む
「AAAAAAAARGH!」
コンテナから解き放たれたゾンビジャイアントが咆哮し、左腕を振りかぶる! キャノン砲を飲み込んだ肉がボコボコと橙色に膨張しあた瞬間、熱線を薙ぎ払う!
CABOOOOOOM! 吹き寄せる莫大な熱風を展開した大型魔法陣で防ぎつつ、メルティアの肩に乗ったメンカルは気だるげな顔で呟く。
「……燃えてるなあ……。触るな危険って雰囲気……」
「あんな気色悪いモンに触りたがる物好きなんて、この世にゃいねえと思うがな」
皮肉めいて返すメルティアの両腕が鉄球ごと落ち、腹部のドリルが圧縮空気を放ってパージされた。直後、吹き抜けた熱風の奥から飛びかかるゾンビジャイアント! 右手のチェーンソーを振り上げ、メルティアを引き裂きにかかる巨体の前に割り込んだクルスが横向きにした大鎌で斬撃を受け止めた。甲高い悲鳴と火花散らす黒刃!
「ARRRRRRRGH!」
「ふっ……!」
黒い手甲を装備した腕で大鎌を支え、黒炎に包まれた刃でチェーンソーを押し返す! 回転刃を弾かれた巨体の胴に、クルスは漆黒に燃える回転斬りを叩き込んだ! 血の代わりに噴出する紅炎と黒炎で裂きつつ、鎌を振り切る!
「はっ!」
SLASH! 斬り払われたゾンビジャイアントは後方に飛び、両足で地面を引っかきながら着地した。メルティアの目の前に降り立ったクルスは前傾姿勢で鎌を担ぐように振り上げ、様子を伺うように佇むゾンビを真っ直ぐ見据える。
横向きになった顔の頬から胸まで裂けて出来た大きな口が、呼吸に合わせて火を吐き出す。火口に溜まるマグマめいた沸騰音がグツグツと響く中、クルスは同情じみた視線をゾンビに向けた。
「気の毒な姿です。哀れみを感じます。……このままでは苦しいでしょう。私がキミを無事、送って上げましょう」
「Arrrrrgh……ARRRRRRRRRRRGH!」
チェーンソーをうならせて飛び出すゾンビジャイアントに合わせ、ローブを黒く燃やしたクルスが疾走! 二者は凄まじい速度で距離を詰め、ワン・インチ距離で切り結ぶ!
CREEEAAAK! ぶつかり合う回転刃と黒炎鎌が弾かれて離れ、高速剣戟を展開! つんざく金属音と共に赤と黒の火花が散った!
「AAAAAARGH!」
左足を引いた半身から振り子めいて繰り出されるゾンビ斬撃に対し、クルスは前方回転跳躍で振り上げられた右手首に着地! 鎌を振りかぶる彼女をゾンビジャイアントが腕を真横に振るって払った瞬間、巨体の上空を一台のバイクが飛び越える!
「ベースから出て来てみれば、これはまたドデカイのが来たっすねー! けどま、行けるっすよね!」
DRRRRRNG! リカルドを乗せた牛頭バイクはゾンビジャイアントの後方に着地し、走りながら車両後部から鎖分銅を射出! 念動力の証たる赤橙色をまとったチェーンは、ゾンビの左脇を抜けて胴体を斜めに周回して捕縛した。
「GRRRRRR……?」
「ここじゃあ暴れ辛いっすからね。いっちょドライブに付き合ってもらうっすよ。アルタイル!」
リカルドはアクセルペダルをキックしハンドルをひねった! 大型のバイクマフラーがバーナーめいて火を噴き一気に加速! 鎖に引っ張られたゾンビジャイアントが真後ろに跳ね飛び、風を切る!
「GAAAAAAARGH!」
「アルタイルのパワーは伊達じゃないっすよ! このまま死に場所まで一直線っすーッ!」
いななく猛牛めいたエンジン音と共に遠ざかっていくバイクとゾンビ。迷いなくそれを追うクルスの後方で、メンカルはメルティアの肩から飛び降りた。尻の下に滑り込んで来た箒に腰掛け、メルティアを振り返る。
「……それじゃ、お先……」
「なんだ、まーた置いてけぼりかよ。無限軌道はすぐ修理できるからいいけどよ」
不満げにこぼすメルティア。その時、彼女の右キャタピラ側面に回ったアリシアが、巨大な鉄槌をフルスイングした! SMASH! キャタピラ全体が赤熱し、粘土じみて変形! アリシアは見下ろしてくるメルティアを真剣な眼差しで見上げた。
「修理は私が担当します! 鍛冶神の力にかかればすぐです!」
「ほお、そりゃあ頼もしい。武装も頼めるか?」
「任せてください!」
ハンマーを肩に担ぐアリシアに、メルティアは内心にやりと笑みを浮かべる。そして浮遊したままのメンカルに視線を移し、檄を飛ばす。
「すぐ追い付くからな。うっかり焼肉になるんじゃねえぞ!」
「……ん」
こくりと頷いたメンカルを乗せた箒が、先端をリカルドたちの進行方向に向けてロケットの如く飛翔! 同時に、アリシアは跳躍し両手でハンマーを振り上げた。
「お手並み拝見と行くぜ、アリシア!」
「はい! ヘパイストスアーマー、全力全開!」
巨大なハンマーが焔をまとい、メルティアに振り下ろされた。
●
DRRRRRRRRRRR! リカルドのバイクが殺風景な荒野を走り、ゾンビジャイアントを激しくバウンドさせていく。地面と激突するたびにゾンビジャイアントの背中は小爆発を繰り返し、水切石とその波紋めいて巨体が連続で跳ね続ける!
「ARRRRRGH!」
咆哮したゾンビジャイアントは右手のチェーンソーを地に突き刺し、進行方向とは逆の方向に回して抵抗を試みる! CEEEEEEEEEE! 岩盤を容易く引き裂く音を聞いたリカルドは、バイクハンドルを握り込んだ。
「おおっと、途中下車はご遠慮願うっす!」
刹那、リカルドのバイクは急にジグザグを描き始めた! 右に左にゾンビジャイアントの軌道も変化し、地面に噛みついたチェーンソーが―――外れる! ゾンビは地に叩きつけられてBOMB! リカルドは再度の衝撃波を肩越しに一瞥!
「アルタイルのパワーは伊達じゃないっすよ!」
「AAAAAARGH!」
吠えたゾンビジャイアントは体が浮き上がった一瞬の隙に身をひねって一錐揉み! チェーンソーを振るって鎖を断ち斬り、両足から着地した。左腕の砲塔を向けてくるゾンビを振り返り、リカルドはドリフトを決めてターンを決める。
「途中下車禁止って言ったばっかりなんすけどねえ!」
尻尾めいて振るわれた鎖がバイクの後部座席に巻き取られていくと同時、ゾンビジャイアントは熱線を放つ! BOOOOOOOM! 緋色の光線を前にリカルドはバイクペダルをキックして突進! 命中寸前でバイク右側面をビームに向けた。
「いよっと!」
ギリギリまで倒れたバイクのすぐ真上を貫く高熱の砲撃! スライディングじみて地面を滑ったリカルドは、光線が過ぎ去るや体勢復帰して車体をウィリー! 真横にチェーンソー腕を振りかぶって突っ込んで来るゾンビジャイアントをジャンプ回避!
「さて、ドライブの続きっす!」
ゾンビジャイアントの頭上を越えて着地したバイクは再び後部座席から鎖分銅を射出した。だがゾンビジャイアントは振り向きざまの斬撃でこれを弾き、肩越しに振り返るリカルドの背中を照準! 左二の腕と砲身を飲み込んだ前腕部の肉が膨らむ!
「ARRRRRRRRRRRGH!」
BOOOOOOOOM! ぶっといビームがリカルドを強襲! 緋色の光が彼をバイクと依代もろとも飲み込まんとした、その時である! 上空から血の如き赤光で縁どられた黒のオーラをまとったクルスが垂直落下しながら鎌を振り下ろした!
SLASH! Y字に分かれクルスとリカルドの左右を抜けた光線が、遠くの地面に命中して大爆発を引き起こす! 光線が止むと同時に大鎌を構えたクルスは、停車したリカルドを見ぬままに問う。
「ここが彼の墓場ですか」
「いやー……もうちょっと引き離そうと思ったんすけどね?」
「そうでしたか。しかし、そうも言っていられないようです」
次の瞬間、クルスは地を蹴る! 大鎌を振りかぶる彼女の目前には、炎したたる大口を開いて突っ込んで来るゾンビジャイアント! ロウソクじみて火を灯した無数の牙を蠢かせ、ワン・インチ距離まで迫ったクルスに覆い被さる形で噛みかかる!
「シッ!」
クルスの鋭い斬り上げが縦長の口を一閃! わずかにのけ反る巨体の腹に一回転からの横薙ぎ斬撃を入れたクルスはバク宙。傷口から噴き出した炎をかわし、たたらを踏むゾンビジャイアントを空中から見下ろした。
「これ以上苦しむのも嫌でしょう。ここでキミを討ち果たします」
「ARRRRRGH……!」
ゾンビジャイアントは半歩下がった足を前に出し、折り曲げた両膝から先をボコボコと膨張させた。次の瞬間、腐肉の巨体がロケットめいて飛翔! クルスめがけて一直線!
「GYARRRRRGH!」
「!」
燃えるチェーンソー斬り下ろしを大鎌の斬撃で弾くクルス! だがゾンビジャイアントは右手首から噴き出した炎を推進力に再度の攻撃を繰り出した。クルスはとっさに大鎌の柄を掲げて防ぐも、踏ん張り効かず地面に叩き落とされる! CRASH!
「ぐっ!」
噴き上がる粉塵から跳ね出たクルスが地面をバウンドしたのちゴロゴロと転がる。そこへ地面スレスレまで片手を伸ばしたリカルドがバイクを走らせ、クルスをかっさらって過ぎ去った。彼女が居た場所にゾンビが頭からダイブ!
「GRRRRRRRRR……」
砕けた地面から頭を引き抜いたゾンビジャイアントは、不満げに喉を鳴らしながら辺りを見回す。刹那、丸太じみた右足の腱が引き裂かれて凍結! 右膝をついたジャイアントが空を見上げると、そこには杖を掲げるメンカルが浮遊していた。周りには高速回転する氷の刀が数百本!
「……ステイシス・レイン……凍りつけ……」
メンカルが杖先をゾンビジャイアントに向けると同時、チャクラムめいて回転する氷刀全てが流星群の如く空を裂いて降り注いだ! 風切り音を響かせるそれらを、ゾンビジャイアントは片膝をついたまま左腕を振り上げ熱線で薙ぎ払う!
BBBBBBBOOOOOM! 空を球状の爆発が埋め尽くす! ゾンビジャイアントは左腕の肉をボコボコと膨らませ、メンカルが居た方向に第二射発射体勢を取った。瞬間、無数の爆炎を射抜いた青白い閃光が腐肉の左肩を貫通!
「GRAAAAAAAAAARGH!」
肩に大穴を開けられたゾンビジャイアントの悲鳴が轟く。同時に、巨体の下半身が激しく膨張して表面に現れた無数のコブが灼熱に輝き始めた! 先のクルスを撃ち落としたロケットジャンプの構え! だが上半身を伸ばしたゾンビを、球状の暴風が包み込んだ!
「いいですよマリア! そのまま封じ込めてください!」
ゾンビジャイアントの後方上空、狼耳を生やした魔法少女の肩口にひっついた妖精が叫ぶ。人形ほどの背丈に長く伸びた金の髪。それは小さなフェアリーと化したアリシアだ! 狼の前脚を模したヘッドの杖を構えるのは、擬人化した狼のマリア!
「AAAAAAAAAARGH!」
「……!」
巨大肉団子めいたゾンビジャイアントの下半身がさらに膨張すると共に、マリアは杖持つ両手に力を込める! ジェット噴射めいてゾンビジャイアントの内側から噴き出した炎は、しかしすぐに静まった。穴の開いた風船の如くしぼみゆく体に驚愕し、ゾンビジャイアントは硬直! その様を見たアリシアが即座に声を張り上げた。
「今です! 酸素が無くては、そもそも爆発は出来ないはずです!」
DRRRRRRRNG! 返答代わりに響く駆動音! ゾンビジャイアントの真後ろにドリフトで回り込んだリカルドは、バイクの機首を巨体の背中に向けた。鋼鉄バイソンヘッドのツノとツノの間にあたたかな橙色の光球が収束していく!
「っし! 爆発しなきゃこっちのもんっす! 払え給え清め給え……この地にとどまらず、さっさと成仏するっすよ! 成仏ビームキャノンオックス、発射ァァァッ!」
CADOOOOOM! ツノから撃ち出された橙の光線が、振り向くゾンビジャイアントを消し飛ばしにかかった。両足を元のサイズまで戻したゾンビジャイアントは、前後反転しながらチェーンソーを突き出した!
「AAAAAGRRRAAAAAAAAAAAAARGH!」
QUUUUUUUUUM! 甲高いサウンドを上げて左右に裂ける浄化の光! チェーンソーを斬り下ろしてビームを打ち払ったゾンビジャイアントは左手の砲をリカルドに突きつける! 緋色の熱を溜め込む巨人の砲口が、閃光を放つ前に落下!
ゾンビジャイアントの左腕を斬り落としたのは、白いボディの人型ロボット。メンカルが呼び出した近接専用人型ガジェット『右手の聖剣』! ブレード状になった腕部が風穴の空いた肩を断ち斬ったのだ!
「GUUUARRRRRRRRR!」
血の代わりに爆炎を噴き出しながら、ゾンビジャイアントは大口を開いてガジェットを頭から胸上までに食らいつく! 力尽くで鋼の肉体が噛み千切られるのを見たメンカルは、眼鏡のツルに指先を触れた。
「……座標、届いた……?」
「ああ、バッチリな!」
眼鏡から響くメルティアの声! 次の瞬間、ゾンビジャイアントの頭上に雨の如くミサイルが降り注いだ! CABBBBBOOOOOOOM! 噴き上がる膨大な黒い煙へ接近するのは、六本腕になったメルティア! ガトリングカノン、ガトリングショットガン、レールカノンを二丁ずつ備えた腕を黒い煙の中心に向ける!
「やっぱり射撃戦で締めないと私らしくないってモンだ。新技で行く! CODE NOTORIOUS、FCS・IFF正常動作確認。! 鍛冶神とやらの力も入ったスペシャルバージョンだ、好きなだけ喰らいな!」
巨大重火器が一斉に火を噴いた! 大量にぶっ放される銃弾に散弾、二条の稲光が爆心地に吸い込まれていく。メルティアは下半身の無限軌道をひねって進行方向を変え、遠巻きにゾンビジャイアントを砲撃しながら旋回! キャタピラについた大量のミサイルがエサを見つけたピラニアの群れめいて飛ぶ!
「ARRRRRRGH…………!」
爆音に混じって轟くゾンビジャイアントの声。連続する爆発に従ってマリアが突き出していた杖が徐々に上がっていき、SMACK! 蒼白い光を弾けさせた。ハッとしたアリシアが警鐘を叫んだ。
「結界が剥がれました! 気を付けて!」
「……ん」
メンカルが袖口から飛び出したタブレット端末をつかみ、素早く操作する。超巨大なキノコ雲の根元中心部に橙色の陰影が―――ゾンビジャイアントの反応が無い!
「ん……?」
メンカルが眉をひそめた、その時である! 青空を覆い隠す黒い煙を突き破ってゾンビジャイアントが斜めに落下! チェーンソーを振り上げ、勢いよく斬りかかる巨体。無表情を崩さないメンカルの前に空中浮遊する黒い人型ガジェットがインターラプトした。ビームキャノンとなった左腕を持ち上げる機人に、メンカルは言い放つ!
「方位角良し……ファイア」
ZGYUUUUUM! 漆黒の光線がゾンビジャイアントを撃ち落としにかかった。空中前転したゾンビジャイアントは沸騰めいて泡立った背中から炎を噴いて落下速度を増す! 迫りくる黒閃に回転刃を振り下ろし、引き裂きながらメンカルに襲いかかった!
「AAAAAAAAAARGH!」
CREEEEEAAAAAK! チェーンソーが機人のビームを断ち斬りながら肉迫し、鋼の胴体を斜めに引き裂いた! 陽炎めいて消滅する人型ガジェット。その奥に浮遊するメンカルに首狩り斬撃が襲う! 刹那、メンカルは青白く光輝いた。チェーンソーが光を断つが、そこにメンカルは無し!
高空を飛ぶトラツグミ型ガジェットが、背面から噴出した青い光を破ってメンカルが出現! 彼女が緊急ワープ退避を決めると共に、黒煙から飛び出した鎖分銅がゾンビの右腕に幾重にも巻きつく!
「……リカルド、よろしく」
メンカルが呟くと同時、爆炎を貫いて飛び出したバイクのシートに立つリカルドが、ゾンビと繋がった鎖を伸ばしきった両手でつかむ!
「降りて……来いっすーッ!」
思い切り引っ張られた鎖に従って墜落するゾンビジャイアント! バイクの後部席から跳んだクルスは鎖に着地して猛然と駆け上がっていく! 黒い火の粉の尾を引きながら!
「アリシアーッ! 爆発は任せるっす!」
「マリア、結界全力展開!」
リカルドの合図を聞いたアリシアがマリアの肩に手を置いた。主の命に応えたマリアはロッドを振り回して暴風を引き起こす! 空中で身をひねり、クルスと向かい合ったゾンビジャイアントの全身に絡みつく旋風! しかしチェーンソーは依然駆動中! クルスは構わず鎖の上を疾駆する!
「ARRRRRRRRRRRRRRGH!」
「炎を封じられてもなお向かってきますか。あるいは、まだ生きていたいのかもしれませんが……」
クルスの両目が黒いオーラの中で真紅に輝く!
「キミは既に人ならざるアンデッド。その未練ごと、断ち切りましょう」
「GRRRRRRRAAAAARGH!」
落下の勢いを乗せたチェーンソー斬撃と大鎌の一撃が交錯―――次の瞬間、虚空に薔薇が咲くように鮮血が噴き出した! ゾンビジャイアントの回転刃がクルスの左肩から腹までを裂いている反面、クルスの鎌は胴体に食い込んだのみ!
「WWWWGYAAAAAAAAAAAAAARH!」
千切れかけたクルスを食らわんと牙を剥くゾンビジャイアント! 醜い大口がクルスを飲み込む寸前、宙を染める鮮血が黒紫色に染め上げられた! クルスは両目を見開き、両手でつかんだ鎌を横一文字に振り抜く!
SLAAASH! 死のふちから蘇った死神の一閃が、ゾンビの胴体を深々と斬り裂いた。だが完全切断はならず! クルスは手首を返してリカルドの鎖を断ち斬り、身を反らして噛みつき回避。さらに両足をゾンビジャイアントに向けてドロップキック!
「っ……!」
SMASH! 蹴りの反動を利用して飛び離れるクルス! ドロップキックの衝撃に加え、斬撃による重傷で制御を失ったゾンビの肉体は爆発寸前まで膨れ上がる! マリアの風結界が締め上げて押し潰すも完全には止まらぬ! 空中に破裂寸前で固定されたゾンビジャイアントを狙うのは、メルティア!
人型重戦車の背中で、巨大な砲が上にスライド! わずかに前傾姿勢を取ったメルティアは、風の結界を無理矢理押し広げて爆発しようとするゾンビジャイアントに狙いを定めた。砲の下部からジェット噴射!
「ま、テメーを仕留めるにはな、一発で十分だ。さあ行くぜ!」
空を仰ぐ砲門前の空間が球状に歪み、砲身に吸い込まれていく。蒸気を発して下がる無限軌道、垂れ下がる六本腕。メルティアは爆発寸前になったゾンビジャイアントへ言い放った!
「全動力解放、CODE FATAL! ぶっ飛びなァッ!」
超音速で放たれた砲弾がゾンビジャイアントの膨らんだ肉体の下腹部から上を消し飛ばす! 一拍遅れて轟雷じみた大音声が荒野を震わせ、残った下半身が燃え上がった。残ったゾンビは下半身は黒く焼け焦げ、ボロボロと塵に還って風にさらわれた。
大成功
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