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赤き芸術

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「狩りの時間よ。」
 グリモアベースにふらりと現れたベラドンナ・ベルティネッリ(人狼の咎人殺し・f02642)は開口一番に依頼の概要を告げる。
「正体不明、居場所も不明、街に潜伏して中々尻尾を見せなかったオブリビオンがいるのだけれど、今回、そいつに関する情報を知る人物を見つけたわ。ま、もう敵に捕らえられて地下牢にぶち込まれちゃってるみたいだけど。」
「あなた達猟兵には、その人物から情報を聞き出して、その情報をもとに隠れ潜むオブリビオンを探し出して狩って貰いたいの。」

 ベラドンナは、要点を伝えると、集まった猟兵達の顔を見回して頷く。
「いいかしら。詳しい説明に移るわ。今回の任地はダークセイヴァー世界のとある街よ、オブリビオンが直接統治しているわけじゃないから虐殺もないし、生活できないほど税が重いってわけでもないから、この世界では比較的平和な街ね。ただ、街では人さらいが頻発してたり、治安はあまりよくないみたいね。」
「それで、情報を持っている人物は「アンナ」という名前のこの街の領主の娘よ。人質として確保されているのか、何か重要な情報を得てしまって捕らえられているのか。理由は知らないけど、今は街はずれの路地裏にある拷問地下牢に捕らわれているわ。」
「情報を聞ければそれでいいけれど、放っておけばどんな目に合うかわからないし、できれば救出して欲しいわ。」

 ベラドンナは、続けて建物について現時点で分かっていることを説明する。
 地下牢は石造りの一階建ての建物で、内部から地下に降りる形であり、それ以外の侵入経路はない。内部の警備の人数は不明だが、最低でも牢番一人、拷問官一人はいると想定される。
 入り口には見張りが一人常駐しているが、建物の反対側に人一人くらいなら通れる窓があるため、忍び込むことは可能であること。
 周辺には人通りがほとんどない上、場所が地下であるため大きな爆発音等派手な音を発したりしなければ、救出方法は多少荒っぽい手段でも大丈夫だという。
「救出も大事だけれど、本命は隠れているオブリビオンを狩ること、あまり派手に動きすぎたり、闇雲に敵を探し回っていると敵にこちらの存在がバレる危険性があるわ。スマートにいきましょう。」
「ああ、それと地下牢の近くまでは転移で送れるから、街の構造は頭に入れなくていいわよ。」
 ひとしきり説明を終えたベラドンナは、ひらひらと手のひらを振りながら軽い口調で続ける。
「ま、そんな感じで、死なない程度に頑張ってちょうだい。よろしく頼むわ。」


いさぶろー
 初めまして、いさぶろーと申します。
 マスターとしてはペーペーですがいいリプレイが書けるよう精一杯頑張りますので、今回の依頼を担当するグリモア猟兵のベラドンナ・ベルティネッリ共々、よろしくお願いします。

 まずは捕らわれの領主の娘から情報を得るための探索パートになります。

 オープニングでも説明していますが、周辺には人がおらず、近くまで転移で行けます。救出するにあたって、バレない限りは時間的な制約もありませんので、方法に関しては自由に考えて貰って大丈夫です。
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第1章 冒険 『拷問地下牢』

POW   :    正面突破で拷問地下牢を破壊して重要人物を救出する

SPD   :    鍵を盗み出すなどして秘密裏に重要人物を救出する

WIZ   :    牢番や拷問吏を騙して重要人物を救出する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●二人の猟兵
 太陽を失い、夜と闇に包まれた世界、ダークセイヴァー。
 月と星の明かりだけが頼りなく大地を照らすその世界のとある街、その外れに位置する路地裏一帯は、建物の老朽化と人口の減少を理由に、領主の指示で住民が街の中心部に移り住んでから久しく、ゴーストタウンと化している。
 そんな中に、人目を憚るようにひっそりと建つ一つの石造りの建物だけが、壁面に埋め込まれた松明から薄ぼんやりとした灯りを放っており、入り口脇には簡素な鎧をつけた男が座り込んでいる。十中八九、ここが領主の娘が捕らえられているという地下牢だろうと、イオアン・イーリディウム(寒血機構・f01319)は確信を得る。

 「さて、潜伏していたオブリビオンの情報を握るかもしれない女性……早々に助けないといけないね。もちろん、うら若い婦女子をいつまでも牢獄にいさせるわけにもいかないし、ね」

 救出への意気込みを呟いたイオアンに答えるのは、この場にいるもう一人の猟兵である、ナノ・クロムウェル(サイボーグのブレイズキャリバー・f02631)だ。

 「はい、早く救出するためなのはもちろん、潜んでいる敵に私たちの存在が伝わらないようにするためにも、出来る限り戦闘は避けていく必要があります。」

 二人の猟兵は目を合わせ互いに頷きあうと、即席で作戦を擦り合わせた通り、イオアンは正面から、ナノは建物裏側の窓から潜入するため、二手に分かれ行動を開始した。

 ●お願い
 一人建物へ歩みを進めるイオアンは、ふと思い出したように呟く。
 「そういえば……たしかこの世界はヴァンパイアが支配しているんだったか。だったら或いは、僕が血を武器にできるかもしれないな」
 『白蛆』と呼ばれる存在に選定されたことで、その身に極低温の血を流すイオアンの存在は吸血を行うヴァンパイアにとって、予期せぬダメージを与えられる可能性がある。いざと言うときはあえて血を吸われることも――そこまで考えたところで、建物の正面についたため、思考を中断する。
 「そこで止まれ。何者だお前、今日は来客の予定なんてないはずなんだがな。」
 「おっと失礼。僕は怪しい者じゃない。ここに収容されているお嬢さんがいるだろう?彼女に用があるんだ。面会の約束も取り付けてきたはずなんだけど、おかしいな。伝わっていないのかい?」
 人通りがないといっていい路地裏に突然現れた見知らぬ美少年に当然警戒する見張りの男だが、平然と約束があると嘘をつくイオアンだが、真実である領主の娘が収容されていることを知っていることに、引っ掛かる物があったのか、徐々に警戒しつつも考える様子を見せる。
 「……伝達漏れか?……仕方ないか、ついてこい。確認を取る。名前は?」
 「イオアン・イーリディウムだよ。」
 隠す必要もないと本名で淀みなく答えるイオアンの態度に、多少は警戒を緩めた見張りの男は扉を開いて建物内部を案内する。
 内部は簡素なつくりになっており、入って左は乱雑に物資の入った木箱が積まれており、正面に木の扉が一つ、右側に地下への階段がある。その内正面の扉を開くと、中は交代要員の休憩室兼詰め所となっていることがわかった。
 中では二人の男がテーブルを囲んでトランプに興じており、見張りの男はイアオンを連れて男たちへ話しかける。
 「例の娘に今日面会の予定だそうだが、聞いているか?」
 「いや、俺は何も聞いちゃいねぇが。」 
 「『先生』からの使いも来てないしな。」
 当然、約束などあるわけもないが、さもおかしいなと言わんばかりに首をかしげるイオアン。
 「おかしいな、確かに『先生』に面会に行く許可を貰ったはず……。」
 うんうんと唸りつつ、ちらりと視線を部屋の入り口の方にやったイオアンは、残念そうな雰囲気を出す。
 「いえ、これ以上言ってもしょうがない、後日出直すとしよう。そういえば、トランプやってるんだね。実は僕トランプが結構好きでね、見張りの君も混ざって少しだけでもやらないか?」
 突然の強引な話題転換に加え棒読みで行われるトランプ好きアピールに、訝し気にイオアンを見る3人。
 「お願いだ、ね?」
 発言と同時にイオアンの目が怪しい光を放つと、それを見た3人の顔から表情が抜け落ちていく。
 「あ、ああ……そうだな、トランプをしないと…」
 「お願い……だからな……しょうがないな…」
 催眠術にかかりぼんやりした顔でトランプを配り始める男達を横目に、ぽつりと一言。
 「これだけ無力化できれば上出来だろう、後は頼んだ」

 ●鍵を握るのは
 建物の裏側に回り込んだナノは、侵入経路である窓を問題なく通り抜けられそうなとを確認すると、周辺に転がっている木箱を足場にして窓から中を覗き込む。中では男二人がトランプに興じており、こちら側に目は向いていないが、着地の音で気づかれる可能性が高い。
 「あれは……牢の鍵、でしょうか。」
 しばらく窓を覗き込みつつ、侵入のタイミングを伺っていると視線の先にあるものを見つける。それは壁に掛かった鍵束であり、鍵の本数から考えて牢の鍵が含まれている可能性も高い。
 「鍵はこじ開けるつもりでしたが、余裕があれば取っていってもいいかもしれないですね。」
 すると、イオアンを伴った見張りの男が部屋に入ってきて、男二人のいるテーブルに近づいていく。
 好機と見たナノは、見張りの足音に合わせ、着地音をできるだけ殺して静かに部屋に潜入すると、素早く手近な棚の陰に隠れる。
 何事かを話し始めた男たちの視界に入らないように静かに移動し、入り口近くの壁に掛かっていた鍵を音を立てないように慎重に取ると、部屋を出る。
 「ふぅ、イオアンさんがいてくれたおかげでスムーズに潜入できました。ついでに鍵も手に入りましたし。イオアンさんが少し心配ですが……任せるしかありませんね。」
 心配そうに出てきた部屋を振り返るナノだが、かぶりをふると手に入れた鍵を握りしめてついに地下牢へ突入する。
ナノ・クロムウェル
私は入り口ではなく建物の反対側の窓からばれないように潜入します。
息を潜めて周囲を確認しながら慎重に進みます。
私としては出来る限り戦闘を避けたいからです。
しかし、重要人物が捕らえられている牢獄には牢番はいると考えられます。
また、うっかり見つかってしまう何てことも考えられます。
このようにもし戦闘になったときは…ユーベルコード、「ブレイズフレイム」を使用し、攻撃します。
倒し終えたら炎は消します。
牢屋まで辿り付いたら私の技能…「鍵開け1」を使い、牢屋の鍵をこじ開けて救出します。


イオアン・イーリディウム
「潜伏していたオブリビオンの情報を握るかもしれない女性……早々に助けないといけないね。もちろん、うら若い婦女子をいつまでも牢獄にいさせるわけにもいかないし、ね」

「……たしかこの世界はヴァンパイアが支配しているんだったか。だったら或いは、僕が血を武器にできるかもしれないな」

行動:使用能力値はWIZ。自分の吸血鬼としての美貌を利用し、牢番や拷問吏を言いくるめて騙し、重要人物の捉えられている牢屋の鍵を入手しようとする。もしも相手が自分に不信感を持つようであれば<催眠術>を使用して信用を得る。
また、他の仲間の行動を見つつ、注意が自分から逸れたようであればそのすきにSPDで鍵を盗み出そうとする。


オーランド・ブルターニュ
囚われの少女か、騎士の端くれとしては見逃せない。

騒ぎを起こしてはまずい、基本隠密でいこう。
窓から侵入して、先に牢番と拷問士を片付けよう。
周囲の安全を確保してからアンナ嬢を救出し、彼女から先に窓から脱出させる。
また、侵入時と邪魔者を不意打ちする時はクリスタライズで透明化しておこう。
そのくらいなら疲労もそこまで酷くないはずだ。
脱出して、一緒に安全な場所まで逃げてからアンナ嬢から情報を聞き出そう。

「ご無事ですか、お嬢さん。もう大丈夫ですよ。さ、お手をどうぞ」
「ふう、ここまでくればもう安全です。忙しなくて申し訳ないですけれど……貴方が囚われてしまった理由、教えて頂けませんか? 奴らを討つ為に」


ハバムル・アルコーン
囚われの娘さんを助けるシチュエーション、実にゲームでも王道のシチュエーションだ。
正直だるくはあるけれど、ゲーマーとしての血は騒いでしまう。

「ここはあたしらしくクレバーに そしてあたし的に楽に行かなくちゃ」
といって【バトルキャラクターズ】を発動。
10人の小人のゲームキャラクターを電子の海から呼び出し 建物反対側の窓から潜入させる、そして見張りの目を避けつつ鍵を盗んで娘さんを助けに行かせよう。
あたしが呼んだキャラはSPDに自信があるからね。仮に見つかるようなら小人を合体させて応戦させるよ、一匹一匹は弱くとも団結すれば…ね?

「これであたしは外で待つだけでいいって訳。ふふふ、我ながら天才だね!」



「囚われの少女か、騎士の端くれとしては見逃せないな。早く助けて安心させてやらなくては。無論、せっかく地上の見張りを無力化してくれた味方の努力を無駄にしないためにも、急ぎつつも隠密行動は意識するが。」
 そういってこれから突入する地下への階段を前に、その先にいる助けを待つ存在へ思いを馳せたオーランド・ブルターニュ(流浪の宝石騎士・f06210)は、決意を新たに地下へと歩みを進めようとするが
 「ちょ、ちょっとまった!流石にその装備で隠密行動をするのは、あたし的にちょっと無理があるかなーって。」呼び止めたハバムル・アルコーン(だらしなゲーマードラゴン・f04391)の言う通り、オーランドの装備は全身鎧に武骨な大剣、巨大なタワーシールドとガシャガシャと音を出すものばかりで、音の反響しやすい地下での隠密行動には向かない。
 仮にクリスタライズで透明化したとしても、物音を消すことはできないため、敵に不意を打って近寄ったとしてもバレてしまう可能性は高いだろう。
 「まあ、今更行くなとも言えないし、せめてこのキャラ達を先行させて様子を見ながら進もうよ。」
 ハバムルは【バトルキャラクターズ】を発動すると、その場に10人の小人のゲームキャラクターを呼び出す。
 「あたしの呼んだキャラはスピードに自信があるからね、滅多なことじゃ見つからないし、安心して付いてきていいよ。」
 じゃあ、行ってらっしゃい。とオーランドと小人達を送り出したハバムルは、地下の暗闇に仲間たちが消えるのを目にすると、仕事は終わったとばかりに脱力して伸びをし始める。
 「いくら王道なシチュエーションでゲーマーとしての血が騒ぐって言っても、正直ジメジメしてそうな地下に行くのはだるいからねぇ。こうして小人を送り込めば、あたしは外で待つだけでいいって訳。ふふふ、我ながら天才だね!」

 ●
 薄暗い地下、テーブルの上にあるランタンの火をぼんやりと見つめながら牢番の男はため息を付く。
「はあ、参っちまうよ。ただの牢番って聞いて雇われたんだけどなあ。画家だかなんだか知らないけど、正直引くよ。」
 男の視線の先には、いくつかの張り紙が張られた樽がある。『絵具』と大きくかかれた紙の下部にそれぞれ異なる日付が書いてあるそれの中身は、その全てが人間の血液だ。容器に入れていても漏れ香ってくる濃厚な血の臭いが、風通しの悪い地下空間を満たして男の気力を削ぐ。
 加えて隣の拷問室からは常にざりざりと何か金属を研ぐような音が断続的に聞こえてきており、牢番の男は完全に参ってしまっていた。
その証拠に、視界の端にやけにはっきりとした小人的生き物が掠めたような気がしても、ついに幻覚を見たかとおかしな納得をしてしまい、現実を受け入れるのに少しの時間を要した程だ。
「ん?小人……?」
 ふと現実に戻ってきたのか、小人が進んでいった方向へ振り返る牢番だったが、それと同時に襲ってきた後頭部への強い衝撃に、ぐらりと身体が地面へと倒れ込む。
 意識を失う直前に、地下牢には似合わない全身鎧のゴツい騎士の姿をみた牢番は瞳の色を濁らせ誓った。
「(もうこの仕事、やめよう)」


 なぜか接近に気づかずあっさり不意打ちで倒れた牢番に首を傾げたオーランドだが、気を取り直して奥の牢屋へと進む。隣の部屋から聞こえるざりざりとした音は気になるが、優先すべきは領主の娘の救出だ。
進んでいくと、何部屋か牢屋があったが、そのどれもが空き部屋であり、扉が閉じている牢屋は一つしかない。オーランドは、驚かさないようにあえて隠さず鎧の音を出して近づくと、努めて優しい声色で中の人物に話しかけた。
「ご無事ですか、お嬢さん。今すぐ助けて差し上げます。」
 牢屋の中に居た少女、領主の娘であるアンナは、音に反応して一瞬びくりと身体を震わせたが、かけられた言葉が予想していたものと違ったのか、目をぱちくりと瞬かせている。
わらわらと集まった小人達は、仲間が手に入れてくれた鍵を運んでくると、一本の長いタワーを組んで牢の扉へ突撃、一番上の小人が牢の鍵穴に鍵を突き込み、ぷるぷると腕を震わせながらも逆上がりの要領で鍵を回し開ける。
 背の届かない鍵穴という難所を協力クリアし、やりきった達成感に包まれる小人達を尻目に、オーランドはアンナへと手を差し出す。
 「もう大丈夫です。さ、お手をどうぞ。」
 「え、ええ。」
 「詳しい話はあとで、一先ず安全な場所へ行きましょう。」
 未だに状況が飲み込めていないのか、ぼんやりした答えのアンナを伴い、オーランドと小人達は牢を出てきた道を戻っていく。
 階段へ続く曲がり角へ差し掛かったところで、オーランドはふと地下に降りてから聞こえ続けていたざりざりした音が聞こえなくなっていることに気づき、嫌な予感に従って立ち止まる。すると角から服は血液で赤黒く染まり、右手にはのこぎり、左手にはヤスリのようなものを持った2mほどの大男が現れた。男はアンナを見て状況を察したのか、素早い判断で手にしたのこぎりを振り下ろす。
 「くそっ、牢番のヤロー何してやがった!脱獄されてるじゃねーか!」
 とっさにタワーシールドで防いだオーランドだが、しっかり構え切れていないにもかかわらず小動もしない。
「牢番の彼は今頃夢の中だよ。君もこれからそうなる。」
オーランドがそう返すと、盾の影からぴょんぴょんと10人の小人達が飛び出し、素早く3人一組になると、騎馬を組んで突撃していく。あぶれた一人が悲しみを背負い、アンナに慰められて立ち直った時には、既に大男はその素早さと見た目のファンシーさに見合わぬ威力の高い体当たりに翻弄され、オーランドのシールドバッシュを食らって地面に沈んだ後だった。

● 
障害を排除し、地下牢から脱出してベラドンナの待機している場所へ戻った猟兵達とアンナ。ここに来てやっと状況を整理できたのか、アンナの態度は落ち着いてきている。
「ここまでくればもう安全です。忙しなくて申し訳ないですけれど……貴方が囚われてしまった理由、教えて頂けませんか?奴らを討つ為に。」
猟兵達を代表してオーランドがアンナへ問いかけると、アンナはしばしうつむき、意を決して話始める。
 「まずは、助けていただきありがとうございます。私は……知ってしまったのです。あの恐ろしい画家の正体が、ヴァンパイアだということに。だから父も庇いきれず……お願いです、どうか、どうか奴を倒してこの街を救ってください!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『秘密の拠点への通路』

POW   :    罠や障害を力尽くで突破する

SPD   :    発動した罠を素早く回避する

WIZ   :    慎重に罠を見つけ出して安全に進む

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「えぇと、じゃ、纏めるわね。」
 落ち着いたとは言っても、先ほどまで囚われていた身、疲れもあるし、精神的にも参っているだろうと、ひとしきり聞き取りをした後、要点をベラドンナが纏めて改めて説明、アンナには休んで貰う運びとなった。
 「彼女アンナは領主の娘で、領主である父がパトロンをやっている画家が家に来ていると使用人の話を聞いて会いに行った。するとそこに居たのはヴァンパイアで、あれよあれよと地下牢へ。」
 以前から画家のパトロンである、という話は小耳に挟んでいたが、なかなか会わせて貰えなかった、今思えばあれはヴァンパイアから守るために娘の存在を隠していたのだろうとアンナは言っていた。
 「で、まあ正直領主の話はどうでもいいのよね。大事なのは画家、というかヴァンパイアね。こいつが悪趣味なことに、人間の生き血で絵を描くとか。気持ち悪いわね。というかヴァンパイアなら飲みなさいよ。」
 バッサリと切り捨てるベラドンナは、アンナから得た情報として、この街で起こっている人さらいの事件はこのヴァンパイアが起こしていて、定期的に絵の『絵具』としてさらって来てはあの地下牢のアイアンメイデンで回収していると説明した。
 「で、早いとこそのヴァンパイアを倒したいわけだけど、いる場所がまた面倒なのよね。」
 ヴァンパイアの拠点は街の東の高い塀に囲われた屋敷で、警備も多く雇っているため、簡単には侵入できない。
 「まあでも、普通の人間ならまずムリだけど、猟兵である私たちなら話は別、いくらでもやり方はあるし、作れるわ。周りを調べて観察するもよし、塀を飛び越えちゃうもよし、正面突破でごり押すもよし、方法は一任するわ。」
 それじゃよろしくねと、遅れてやってきた安堵と疲れからかすすり泣き始めたアンナの背中をポンポンと叩きながらベラドンナは猟兵を見送った。
リン・イスハガル
【SPD】にて行動。
罠があると思しき場所にナイフを投げてみたりしてわざと発動させる。
侵入は多分バレるだろうけど、必ず、助ける。
「罠が、あるなら、わたしは、それを回避してみせる」

敵が現れるような罠だった場合は
シーブズ・ギャンビットにて攻撃を行う。


ペイン・フィン
「・・・・・・手伝いに来たよ」
合流し、情報を共有した後、侵入の準備を開始しよう。

自分はそれなりにSPDに心得があることだし、
皆の先陣を切って侵入し、発動した罠を回避することで無力化。
警備に見つかったら、そのまま皆とは別れて行動し、陽動を行おう。
場合によっては、そのまま揺動した人員を蒔いて合流し直してもいい。
その際は、こっそり警備の1人を拷問して、情報も抜いておこうか。

「本当は、拷問は気乗りしないんだけど・・・・・・」
「君(警備の人)が話してくれたら、しなくて済むから・・・・・・。ね?」

せめて、怪我しないような方法で聞き出すことにしようか。



暗闇に包まれる閑静な住宅街の中、一際大きな屋敷の裏手に高く聳える塀を前にしてリン・イスハガル(クリスタリアンのシーフ・f02495)は唸っていた。
「侵入方法、どうしよう。」
 罠を回避する自信はあったため、とりあえず塀の前に来ては見たものの何も起こらず、屋敷の周囲を入り口の警備に見つからない範囲でぐるりと周ってみても、罠らしきものは見つからなく、裏口のようなものも見当たらない。どうしたものかとリンがその死んだ魚のような眼で塀をじっと見つめたまま思案していると
 「……手伝いに来たよ。」
 と後方でグリモア猟兵のベラドンナと情報を共有していたペイン・フィン(”指潰し”のヤドリガミ・f4450)が追い付いてくる。
 「屋敷の周囲、罠はなし、入り口、正面のみ」
 リンは振り返ってペインと調査の結果を共有する。
 「と、なると真正面から入るか、塀を越えるかになるけど……」
 ペインが視線を向けた塀の高さは、おおよそ3mほど、一人では届かない高さだが、二人で協力すれば何とか届きそうだ。
 「うん、いけるかも。僕たちは塀を越えて潜入しようか。」
 ペインの言葉にリンがこくりと頷き、二人は準備に取り掛かった。
 

一人が片方を足場に先に塀へ手をかけ登り、先に上った方に後の一人を引っ張り上げてもらう形で屋敷の庭へ侵入を果たした二人。
すぐさま降りると手近な茂みに身を隠し、屋敷の様子を伺う。
ヴァンパイアは自分のアトリエにいるだろう、とアンナから情報を得てはいるがその部屋が屋敷のどこに位置しているかは不明だ。
 事前の情報通り屋敷の警備は多く、巡回する警備に加えて、屋敷の中にも複数の気配を感じる。
 「それにしては裏庭の警備が少ないような……?」
 とペインが呟いた瞬間、がさり、という音と共に近くの茂みから姿を現したのは一匹の獣、ヴァンパイアの飼っているであろう犬型のオブリビオンだ。
 すんすんと鼻を鳴らし、徐々にリンとペインの隠れる茂みに近づいてくる犬型オブリビオンに、
 「このままじゃ、バレる、こちらから行って、一撃で、仕留める」
 とダガーを構えて素早く斬りかかるリン。喉を切り裂かれ、短い断末魔と共に犬型オブリビオンを仕留めることに成功したリン。しかし、再度隠れようと犬型オブリビオンから視線を外した瞬間、倒したはずの犬型オブリビオンから発せられた遠吠えを耳にし、焦りと共に振り返る。
「まずい、仕留め、そこなった…!」
 呼応するように屋敷の各所から獣の遠吠えが響き渡り、侵入者の存在を知らせる警備の声が静まり返っていた夜をかき消していく。
 「このままここに居るとまずい!移動するよ!」
 思わぬ失敗に一瞬思考を停止しかけたリンだが、ペインの声に我を取り戻すと急いで走り始める。
 「これはこれで陽動になるし、結果としてはまあまあだね。」
 ペインのフォローに、顔を俯かせていたリンも切り替えていく。
 「帰ったら、お腹一杯、おにぎり、食べよう……」
 ささやかな、けれど大きなご褒美を目標に持ち直したリンとペインは、背後から聞こえてくる獣の足音と警備の声をBGMに、陽動作戦を開始した。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

早見・葵
屋敷を尋ねる。ただそれだけ。正面から参りましょう。
何やら犬が吠えています、隠れて侵入ができないなら、切り開けばいい。
剣を構え、正門をこじ開け、中へと入ろうとする。

罠はできる限りかからないようにしながらですが、難しいならチェインで縛って壊します。
襲ってくる敵もチェインで絡め、斬っていきます。
私1人では突破も陽動も厳しいかもしれません。
他にも猟兵がいるなら、共闘して進んでいきましょう。

無理に進撃はせず、正門で大立ち回りをする。
「この屋敷の者に用があります。貴方達も仕事で雇われた身、簡単に退いてはくれないでしょう」
剣を構え直し、鋭い眼差しで見る。
「ならば手加減なしで、壁を破壊します!! 」


ドロンゴン・コーフィー
なるほど、変な趣味奴ってどこにでもいるもんだね。
血で絵を描くって、赤というか、もう黒くなっちゃったりしない? 墨でよく無い?何の拘りなの?

先に侵入した子達もいるんだね。僕は正面から行こう。
たのもーう!
【POW】で押すよ!
どうせ警備の怖いお兄さんいっぱいだろうし、堂々行く。
そう、僕は変わった画家があると聞いてやって来た、お宝大好きドラゴン! さあ、見せたまえよ!
技能、『存在感』で注目を集める。そして『恐怖を与える』ように。僕みたいなのを追い返そうとして「怒らせたらどうなるか」わかってもらお?
食べちゃうぞ?

ところで悪趣味な作品は何処にあるのかな?
ズケズケ調べに入りたいけれど。



「血で絵を描く、かー。なるほど、変な趣味奴ってどこにでもいるもんだね。」
 「ええ、私には理解できない類の趣味ですね。したくもありませんが。」
 「っていうか、血で描いたら赤いというか、もう黒くなっちゃったりしない?墨でよくない?何の拘りなの?」
 頭に大量の疑問符を浮かべているドロンゴン・コーフィー(泥の竜頭・f04487)に対して返答しつつも、ヴァンパイアの凄惨な趣味は騎士として許すわけにはいかないと、正義感を燃やすのは早見・葵(竜の姫騎士・f00471)だ。
 片やこれから遊びに行くのだと言わんばかりの気楽さに対し、片や真剣かつピリピリした雰囲気と温度差の激しい二人だが、目的は同じ、正門の突破だ。
 仲間の陽動により警備が内部の侵入者への対処に向かい、手薄になったことで正門前には最低限の人数しかいない。ドロンゴンと葵は堂々とした足取りで正門へ近づいていく。
 「たのもーう!」
  侵入者が来たばかりで門に近づいてくる足音に警戒を強めた警備の男たちに向けて、深い夜闇に似つかわしくない明るく大きな声が投げかけられる。
 「……怪しい奴らめ!何者だ!」
まさか普通に大きな声で話しかけられるとは思っていなかった警備は、一瞬詰まりながらも猟兵達へ名を問う。
「よくぞ聞いてくれた!そう、僕はここに変わった画があると聞いてやって来た、お宝大好きドラゴン! さあ、早く見せたまえよ!」
「この屋敷の主に用があります。ですがあなた達も警備として雇われた身、はいそうですかと簡単に通してはくれないでしょうね。」
 いつの間にか目的が絵の方に変わっているドロンゴンに代わり、葵が補足をする。
 ならば通すわけにはいかない、と警備が言う前に葵は破竜剣を構え、鋭い眼差しで宣言する。
 「なので手加減なしで、門を破壊させていただきます!」
 問答無用、と先制のドラゴンオーラを放つ葵、爆音とともに歪む門に警備達は慌てて応戦し始める。犬型オブリビオンも騒ぎを聞きつけて集まってきた中、大立ち回りを繰り広げる葵を襲おうと少し離れた位置からマスケット銃を構える数人の警備は、狙いをつけ始めた所で背後から強い悪寒を感じ、勢いよく振り返る。
 「いけないなー、そういうの。」
 いつの間にか背後にいたドロンゴンは、相変わらずのゆるい口調だが、相対した警備達はそこにどこか恐怖を覚える。
 「僕たちの邪魔をしたらどうなるかわかるよね?食べちゃうぞ?」
その瞬間、男たちはドロンゴンの金色の瞳がギラリと光ったように錯覚した。
「ひ、こ、こんなの相手にしてられるかってんだ!」
 恐怖に耐えかねた男が一人先んじて逃げると、俺も俺もと逃げだしていき、やがて全員がいなくなった。
 わかってくれてよかったーと、ドロンゴンは葵と合流する。
正門前の戦闘も向かってくる敵全てを蹴散らし終え、今は落ち着いている。多少の傷は負ったものの葵もまだ余力を残した様子だ。
 幾度もドラゴンオーラの爆破によりボロボロに歪んでいた正門は、オーラの鎖で軽く引っ張っただけで崩壊し、そこに出来た道を二人は進んでいく。
「さあ、屋敷の探索だー!悪趣味な作品はどこにあるのかな?」
「絵を探すのは自由ですが、目的はヴァンパイアの討伐ですよ?」
 忘れないでくださいね!と念を押す葵だったが、楽し気なドロンゴンはわかってるわかってる、と気のない返事を繰り返すばかり、これからの戦いに若干の不安を覚えつつも、葵とドロンゴンは屋敷の探索へ移るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイシア・オブリオン
罠、ね。そういう時こそ私とロジャーの出番だよね。
陽動が効いている今の状況を活かして、迷彩をかけて侵入。
まずは周囲を慎重に情報収集しつつ、罠を見逃さないようにゆっくり、けれど素早く移動。
見つけたら罠の位置を仲間と共有。解除はどうかな、出来るかな?
無理そうならダッシュ&逃げ足を活かして素早く回避。
そう簡単にゃ当たらないよ!
とはいえ、解除も回避も無理そうな罠もきっとあるよね。
そんな時は……仕方ないね。ロジャー、スペシャルパーツ召喚だよ。
この状況を突破するのに最適なパーツと合体するんだ!
ヴァンパイアの暴虐、私達で絶対に壊してやるんだからね!


花咲・桜華
ボクの出番だ! 犬がいるならボクが吠えてもいいよね!

▼指針
罠を見つけては、避けていく。
敵に襲われたらナイフや人狼咆哮で撃退するよ!
仲間がいるなら一緒に行こうかな。巻き込んじゃうかもしれないので距離は取りながら進むよ
「ボクは花咲 桜華って言うんだ! 君は? 」

▼罠対策
危険な罠を優先的に解除、指摘するよ。無傷で終われるなら発動させちゃう!
「あ、これダメなやつ! でも、こうしてから発動すれば」

▼共闘時
SPDを活かすようにするが、仲間がいるなら連携を重視。
近すぎず、離れすぎない距離で行動する。

▼探索
屋敷に入る場所を探して、入れそうなら覗いてみる。
「お邪魔しに来ました♪ 入りますよ~」



「排除終わり、やっと侵入できるね。」
呟くように言ったアイシア・オブリオン(メタライズ・f05786)の周囲には、数人の警備が気絶し地に倒れ伏している。
 「中の警備は動いてないみたいだけど、外が減ったおかげで大分楽だったねー。」
 アイシアの呟きに答えたのは花咲・桜華(桃色ワーウルフは深淵を覗いてやってきた・f04874)だ。
当初、二人は騒ぎに乗じて屋敷の窓から侵入する作戦を立てたが、アイシアの自作ガジェット「ジョリー・ロジャー」のサイズが問題だった。ロジャーのサイズでは窓から侵入することができないのである。そこで、起きたのが正門での味方の大立ち回り、騒ぎによって警備が数えるほどになったことで、二人は警備を静かに排除した上で正面玄関から侵入する作戦に変更、無事にたどり着くことに成功したのである。
「さて、開ける前に罠があるか調べないとね。」
ついに侵入開始、とはいかない。アイシアは油断せず扉を調べることを提案、桜花も同意して二人がかりで扉をくまなく調べていく。
「あ、これダメなやつ!」
桜花が罠を見つけたのか声を上げほんの少しだけ開けた扉の隙間を指さす。アイシアが先を視線でたどると、そこには足元の高さに一本の細いワイヤーが張られており、頭上を見上げてみれば煌びやかなシャンデリアの代わりに、こびりついた血で赤黒く染まった棘付きの鉄板が見えた。もし不用心に扉を開けて足を踏み入れていれば、即座にこの鉄板が降ってきて串刺しにされていたことだろう。いくら猟兵が超人的存在だとはいえ、当たって必ず生きている保証はない。
「危ない危ない。でも、こうして発動すれば……」
言いながら桜花がナイフでワイヤーを素早く斬り、開けていた扉を完全に閉める。すると扉の向こうから鉄板が落ちて床に落ちてめり込む鈍い音が響いた。
「手際がいいんだね。」
「それほどでも!さあ、お邪魔しに来ました、入りますよ~」
謙遜しつつも得意げに、罠を解除した桜花は意気揚々と屋敷へ乗り込んでいく。
屋敷の玄関は広い作りで、正面には二階への階段が、左右にはそれぞれ一つずつ通路がある。だが、2階は灯りが灯っておらず人の気配もないとヴァンパイアのいる可能性は薄いため、二人は一階を探索することにした。
通路を進みながら各部屋を慎重に覗いて回る桜花とアイシアだが、遭遇するのは足を引っかけると刃物が落ちてくるトラップや、扉を開けると矢が飛んでくるトラップなど簡単な物ばかりで、刃物は桜花が気づき事前に解除し、矢はロジャーの装甲で弾き、身構えていた二人は拍子抜けつつも通路を進んでいく。
やがて、通路の曲がり角に差し掛かり、ロジャーがその半身を角の先にさらした瞬間、複数の発砲音が重なった爆音が通路に響いた。
「止まって!」
急いでロジャーを下がらせ桜花を止めたアイシアは、通路の先を一瞬覗き、突き当りの部屋の前で固まってマスケット銃を構えた一団を目視する。
「解除…はできないし、この狭くて長い通路じゃ回避も難しいかな。」
「どうしよっか、無理やり突っ切る?それとも別の道を探す?ボクはどっちでもいいよ」
「いや、こうして固まって守ってるってことは、あそこが目的のアトリエの可能性が高いから、別の道は意味がなさそうかな。それに突っ切る必要もないよ。こういう時のために……コール・スペシャルパーツ!合体だよ、ロジャー!」
アイシアが叫ぶと、目の前にジョリー・ロジャー専用の、何かの砲のような筒状のパーツが召喚される。
「……なるほど。ロジャー!」
アイシアは用途を見極めるため観察し、反対側がロジャーの腕パーツの大きさと合致することに気づくと、ロジャーを呼び腕に装着させる。
しかしてそれはロジャーの腕にピッタリとはまり、凡その使い方が理解できたアイシアは、ロジャーに命令を下す。
「行くよ、ロジャー!撃って!」
蒸気を吹き出し、勇ましさすら感じさせる駆動音と共にロジャーは曲がり角の先へ身をさらす、マスケット銃の激しい連射が始まり、ロジャーの装甲をじりじりと削っていくが、ロジャーはその右腕の筒を敵陣に確りと向けると、大きな砲丸のような弾を発射する。
弾は敵陣中央にごとりと音を立てて落ちると、少しして炸裂、強烈な催涙ガスをまき散らす。
「いけ!コンボだロジャー!」
アイシアの命令に従い突撃したロジャーが、催涙ガスにより銃を構えることすらままならない一軍を容赦なく蹴散らしていき、催涙ガスが薄れ、アイシアと桜花が近づいても問題なくなったころには、立っている敵は一人もいなかった。
 「うわーお、すごいねロジャー!」
 「やったね、ロジャー。帰ったらうんと気合をいれて整備してあげるから。」
 大活躍のロジャーに称賛と労いの言葉をかける二人の前にはアトリエ、と書かれたあからさますぎる扉。
「……一旦、外にいる人にも伝えてこようか。」
「うん、ルートは確保できたし、いいんじゃないかな♪」
警戒心が先だったのか、一度安全策を取る二人は来た道を駆け足で戻りながらも、あの扉の先に目的のヴァンパイアが居ることを半ば確信に近い形で予感していた。

決戦の時は、近い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナノ・クロムウェル
ふむ…そうですね。
今回は慎重に罠を探し、それを避けるなり解除するなりして進みましょうか。派手に動いている人たちもいることですしね。私自身は隠密行動と行きましょう。
「サイバーアイ」で視覚情報を分析し、「内蔵式集音機」から周りの音で分析していきましょう。「聞き耳1」と「視力1」を活かして慎重に進みます。
また「鍵開け1」もありますので…いざとなれば怪しい所はこじ開けましょう。
これらの情報は他の人達に伝えたい所です。



「これは……」
 つい先ほど、仲間からアトリエ発見の報を聞いたナノ・クロムウェルは、一人先行して部屋の調査に来ていた。
 入念に罠がないか調べてからの入室、扉を開けたナノを迎えたのは、灯りはつけども主のいないアトリエの姿だった。
 周囲には白いまっさらなキャンパスやパレット、イーゼルなどが散乱しており、雑に管理されている印象を受ける。また、描きかけで放棄したのか赤黒く変色した血が塗りたくられたキャンパスもいくつか見つかり、ここが件のヴァンパイアの画家のアトリエで間違いないとわかる。
 「ここ以外に居そうなところはないんですが……ふむ。」
 ナノは、次への手掛かりを見つけるため、より入念な調査を行う。サイバーアイで視覚情報を分析すると同時に、内蔵式集音器を使い床や壁をノックして反響音を分析する。
 やがて、部屋の奥の床に埃の積りが浅い場所があることを視覚情報の分析結果で得たナノは、続いて音の分析を行うことで、そこに空間があることを発見した。
 「階段でもあるんでしょうか、となると鍵か取っ手か何かが……ビンゴです。」
 落ちていたキャンパスをどかし、鍵穴を発見するとナノは慣れた手つきで針金を入れる。鍵の作りは簡単だったのかすぐにガチャリと音がなる。床の出っ張りを持ち上げると地下への階段が姿を現した。途端、蓋をしていた容器を開けたように、濃密な血の臭いが流れる風と共に運ばれてくる。
 「う……流石に嫌な臭いですね。」
 臭いに顔を顰めたナノだったが、遠くから聞こえてくる猟兵達の大小さまざまな足音を集音器で拾い、気を取り直して戦闘へ向けて覚悟を固めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


濃密な血の臭いが充満する地下室、階段を降りて簡素な木の扉を開けた猟兵達はこちらに背を向ける一人の男……ヴァンパイアの姿を発見する。
 白い肌に赤い瞳、白銀の流れるような長髪の優男、といった風体のヴァンパイアは、緩慢な動きで振り返る。
 「犬どもを貸し与えてやったというのに、使えん奴らだ。絵具にする価値もない。」
 吐き捨てた男の周囲には、真っ赤な液体の並々と注がれた樽に、赤と赤と赤の絵具の乗ったパレット、これまた赤く染められたキャンパスがあり、生きたまま連れてこられたのか、苦悶の表情で息絶えた数人の人間の死体も転がっていた。
 凄惨な現場に敵意を露わにヴァンパイアを睨み付ける猟兵達に、ヴァンパイアはぶるりと体を震わせる。
 「んんっ……それに比べて諸君ら猟兵は素晴らしい……その正義感、敵意、久しく感じていなかったモノだ。」
 どことなく恍惚とした表情を浮かべるヴァンパイア。
 「ただただ抵抗する気のないモノを苦悶に歪ませるのも些か飽きた。創作にはモチベーションの維持とインスピレーションが不可欠だ。わかるね?」
 そのままゆっくりと立ち上がり、両手を広げ大仰な仕草を取ったヴァンパイアは、楽しみで仕方がないと期待に満ちた笑顔を向ける。
 「その意思を挫き、絶望に満ちた表情を浮かべさせる時が楽しみだよ。」
花咲・桜華
「芸術は君のセンスじゃ辿り着けないさ。そして、君の悪事はここまでだ!」
よく見たら葵もいるし、連携して戦っていこう!

ナイフを抜いて構える。
三段構えの奇跡の破壊者で相手の動きを阻害して、攻撃しやすいようにフォローしよう。

スピードを活かして、ヴァンパイアを切り刻む。
攻撃しては離れるを繰り返しつつ、攻撃力を削ぎ、可能であればUCを封じる。

怪我した人がいたら、後退させよう。
すぐに倒せる相手ではないから長期戦になってもいいように、無理な攻めはしない。


早見・葵
花咲・桜華がいるので一緒に戦いましょう。

ヴァンパイア如きに折れる心も剣も持ち合わせてはいません。
「貴様の芸術もどきを終わらせます」
白銀の剣を構え、騎士の誇りを掲げ、倒すのみ。

相手の攻撃を剣で弾き、距離を詰めた状態で剣戟をかけます。
相手の攻撃に注意しつつ、避けれる攻撃は避けます。
Drache Jagdでせめて腕の一本でも吹き飛ばそうと……
「貴様の芸術は、貴様の死で造りなさい!!」
隙あらば全力の攻撃を。

危険な状態であれば、一度後退しましょう。



「芸術には君のセンスじゃたどり着けないさ。そして、君の悪事はここまでだ!行くよ、葵!」
「ええ、連携していきましょう。」
花咲・桜華はナイフを構え、早見・葵は破竜剣――グラムセイバーを構える。二人は同じ竜狩りギルドに所属する団員、竜狩りを掲げる者として、ヴァンパイア如きに折れる心も剣も持ち合わせてはいない。
ただ、白銀の剣を構え、騎士の誇りを掲げ、倒すのみ。
「貴様の芸術もどきを終わらせます。」
決意を固め、宣言と共に斬りかかった葵の一撃を腰から抜いた豪勢な刀剣で防ぐヴァンパイア。
「芸術とは己の内よりあふれ出るもの、私の作品を芸術だと感じられないのは、君達の感受性が足りないからなのだよ。」
鍔迫り合いになり、じりじりと押し込まれつつも余裕を感じさせる態度で反論するヴァンパイアは、中空に刀剣の複製を召喚、念動力で操作された刀剣は葵を切り刻まんと迫る。鍔迫り合いを中断し、飛来する刀剣の対処に移った葵と入れ替わるように、桜華がヴァンパイアに斬りかかる。
「遅いよ!ボクの本気、見せてあげるよ!」
スピードを生かし、ヒット&アウェイの戦法でヴァンパイアを翻弄する桜華、手に持った刀剣で応戦するヴァンパイアだが、時折斬撃の合間に混ざる閃光や雷撃にペースを崩され、全てを防ぐことは叶わない。
このままでは、と堪らず大きく距離を取ったヴァンパイアは、更に刀剣を複製しようとし――できなかった。
「なに……?」
「足元がお留守だよ、画家センセイ?」
 ヴァンパイアは、言われていつの間にか足元に増えている重みに気づく。視線をやった先の自身の足には地を這うように桜華から延ばされた鎖が巻き付いていた。
 「コードブレイカー発動、だね!葵!」
 「ええ、任せてください。」
 奇跡の破壊者(コードブレイカー)の発動によって、既に召喚されていた刀剣から解放された葵の身体には、少なくない切り傷があり、流れ出る血の量からその傷が決して浅くはないことを物語っている。それでも致命傷は受けておらず、その瞳に宿る強い意志は一層強く輝いていた。
 「『望むは星の願い 煌めく命の輪廻 魂巡りて無窮と成らん その永遠を止める一瞬の閃光』」
 詠唱と共に一息でヴァンパイアに肉薄する葵、鎖で動きを封じられているヴァンパイアに逃れるすべはなく、強烈な横薙ぎを受ける。勢いを殺さぬようにその場で一回転した葵は、全力を込めて突きを放つ。
「Drache Jagd!(ドラハンヤーグト)」
突きの衝撃により背後のキャンパスを巻き込みながら吹き飛んだヴァンパイアは、激しい音と共に壁に打ち付けられる。
 「ん、ふふ……痛いじゃあないか。私も少しキてしまいそうだ。」
 笑みを浮かべよろよろと立ち上がるヴァンパイアだが、その目は笑っていない。脇腹から流れ出た血を手でぬぐい、べろりと舐め上げる。
 腐っても夜の支配者たるオブリビオン、依然余力は残した様子だ。
 ――戦いの夜は、始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ドロンゴン・コーフィー
やあ、悪趣味くんだ。良いお家だね。
で、今日なんだけど、色々貰いに来たよ。キミの作品と、ついでにキミのこれからもね。


【この身は夢幻、我が名は竜】で、周りのものを取り込むよ。人の死体は……仲間の士気に関わるよね、ノータッチで。…僕一人なら気にしないんだけどなぁ。でも「絵の具」は良いよね?
「今日の僕は、赤の竜!みんなの怒りの体現者さ」
これからは悪趣味くんの好きにはさせない。だって、そうするのは僕らなんだからね!
(防御強化)


ところで、それがキミの絵? まあ、出来はどうでも良いや。ドラゴンのお宝なんて、ガラクタでも山積みになってれば上等だろうし。ちゃんと置いとくから、安心してやられて良いよ!



「やあ、悪趣味くんだ。良いお家だね。」
 周囲の惨状をきょろきょろと見回しながらドロンゴン・コーフィーはヴァンパイアへ気さくに話しかける。
 「悪趣味とはまたひどい言われようだ。私の芸術は高尚なものなのだがね。だが人間どもには理解できぬのも仕方のないことか。」
 「ふーん、そうなんだ。」
 言葉と共にやれやれと呆れと憐憫の混じった表情を向けてくるヴァンパイアに生返事を返しつつ、ドロンゴンは続ける。
 「で、今日なんだけど、色々貰いに来たよ。キミの作品と、ついでにキミのこれからもね。」
 言うと同時、部屋の内部にあるものがドロンゴンへ引き寄せられていく。『絵具』は渦巻くように集まり体に、イーゼルは爪や翼に、キャンパスは翼膜に。『この身は夢幻、我が名は竜』によって竜の姿に武装したドロンゴンは、翼を広げて咆哮する。
 「今日の僕は、赤の竜!みんなの怒りの体現者さ」
 ドロンゴンは、勢いよく前足を振り上げ、イーゼルの爪をヴァンパイアへ振り下ろす。
 イーゼルの爪を豪勢な刀剣で軽々と粉砕したヴァンパイアは、続けて竜の身体へ素早く剣閃を叩き込むが、『絵具』で構成された流体の身体には効いていない。
「おお、素晴らしい。私の趣味からは外れるが、それもまた芸術だ。しかし、私の絵具を勝手に使われては困る。」
 ヴァンパイアは、懐から何事か書かれた羊皮紙を取り出すと、赤の竜と化したドロンゴンの流体で出来た体に腕を突っ込む。
 「誓約書に基づいて私は求めよう。『私の絵具を返したまえ』」
 瞬間、竜の身体で武装したドロンゴンは、自分の身体にひとりでに傷がついていることに気づく。敵の誓約書のルールに反して竜の身体を維持しているペナルティを食らったのだ。
 「まあ、戦えない程じゃないかな。悪趣味くんに従うのは嫌だしね。」
 「愚かな……」
 傷の具合を見て、竜の身体を維持し続けることにしたドロンゴン、二人の千日手とも言える戦いはドロンゴンの身体が傷だらけになった頃、猟兵の応援が来たことで終わりを告げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナノ・クロムウェル
私に芸術は分かりませんが…貴方が危険なのは分かりました。
倒させてもらいます。
「翠炎剣」に翠に輝く炎を纏わせ攻撃を仕掛けます。
サイボーグである私の膂力を活かし力いっぱい叩きつけましょう。
「属性攻撃」の技能も持ち合わせていますしね。
相手の攻撃は「サイバーアイ」で分析し、的確に「見切り」剣で「武器受け」を行いましょう。
敵のユーベルコード「クルーエルオーダー」へ私は「翠炎悪魔」で対抗します。
たとえルールを破ってダメージを受けようとも…「翠炎悪魔」で耐え、強力な一撃を与えて見せましょう



負傷した猟兵と入れ替わりヴァンパイアの前へ躍り出たナノ・クロムウェルは、改めて周囲の惨劇――ヴァンパイアの言う『芸術』の痕を見て、目を伏せる。

 「私に芸術はわかりませんが……あなたが危険なのは分かります。故に、倒させてもらいます。」
 宣言と共に目を上げたナノの表情は薄く、読み取れるほどの感情はない。しかし、その瞳にはこの惨劇を生み出す敵を必ず討ち果たすという決意に満ち、呼応するように構えた『翠炎剣』に宿る炎はその輝きを増していく。

 「芸術家だから、と簡単に倒せると思われるのは些か不愉快だ。」
 サイボーグの膂力を生かし、一瞬で距離を詰めてからの叩きつけ、それをひらりと躱したヴァンパイアの豪奢な刀剣による反撃を、ナノは首を逸らすことで避ける。
 そして始まる剣戟の応酬、ナノはサイバーアイの分析能力を最大限に発揮し、ヴァンパイアの刀剣による攻撃を避けるか、剣で受けるか、的確に判断を下し凌いでいく。

 「今の内に警告しておきます。あなたが生存を望むのなら全力で逃げてください。」
 「ふむ、そのセリフはそっくりそのままお返ししよう。」
 ヴァンパイアは、刀剣の打ち合いに飽きたのか、血文字で書かれた誓約書を取り出そうと懐へ手を入れる。

 「そうですか、警告はしましたので。」
 全身を機械化し、悪魔の如き姿となったナノは、その背から緑の炎を噴出し、ヴァンパイアへと「翠炎剣」を振りかぶり突貫していく。
 意識を半分懐へ向けていたヴァンパイアはその一撃に反応することができず、誓約書を命中させることには成功したものの、ルールを宣告することなく攻撃を受ける。
 一時的に理性を失う代わりに得た力は凄まじく、ヴァンパイアを袈裟斬りにしても尚衰えぬ勢いのままに振り下ろされた剣は、地下室の床を小規模なクレーターに変えた。

 「仕留めきれませんでしたか。」
 元の姿に戻ったナノは、斬った手ごたえが足りないことを感じ、確信していた。攻撃により生じた土埃の先に、依然ヴァンパイアが健在であることを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペイン・フィン
真の姿を解放。
今より数歳程度幼くなり、赤黒い霧を纏う。

また、同時にコードを起動。
今持ってきている全ての拷問具・・・・・・。
ナイフ、スタンガン、焼き鏝、膝砕き、
そして、自分の本体でもある親指潰しを赤霧から複製し、展開。
ヴァンパイアに向けて拷問攻撃を行う。

・・・・・・こんなの、あまり、好みじゃないんだけどね。



「ふむ、こうも数が多いと面倒だな。これでは創作どころではない。」
 土埃が晴れ、立ち上がって袈裟に斬られた傷跡を見て、そうひとりごちるヴァンパイア、余裕そうな発言とは裏腹に、その動きは鈍い。そんなヴァンパイアに追い打ちをかけるように、眼前に立ちはだかるモノが一人。ペイン・フィンだ。

 「そろそろ、創作の時間は終わりだよ。罪を重ねた者は、罰を受けなければ。」
  ペインの周囲に赤黒い霧が集まっていく。纏わりつくような霧が濃さを増し、完全にペインの姿が霧に飲まれたのは一瞬、だがその一瞬でペインの様子は変化していた。
 外見年齢が数歳幼くなり、赤黒い霧が身体を薄く包むように纏わりついている。だが何よりも変化しているのは、存在だ。先ほどまでの雰囲気とは違う。ただのヤドリガミではない、もっと別の“何か”。

「……こんなの、あまり、好みじゃないんだけどね。」
 ぼそりと呟かれた言葉と共に、ペインの周囲に展開される大量の拷問具達、ペインの真の姿の一部を見て、驚愕か恐れか、それとも歓喜か、理由はわからずとも硬直していたヴァンパイアは拷問具の拘束を回避することができなかった。
 スタンガンで抵抗力を奪われ、いくつものナイフで地面に縫い留められ、それでも余裕の表情だけは崩さなかったヴァンパイアが、それを見た瞬間血相を変える。

「な、なにをするつもりだ!それは、それだけは!」
 ヴァンパイアを恐怖させたもの――それは膝砕きと親指潰し。

 「膝砕きは膝だけを砕くってわけじゃないんだ。」
 ペインの言った通り、膝砕きは膝を砕かずに腕を標的にしている。親指潰しはその名の通りの標的を。それぞれセットされて、後は命令を下すだけ。
 画家としての生命線である腕や手を失いかねないともあって、今までの余裕さをかなぐり捨ててわめくヴァンパイアだが、ペインは気にも留めず拷問具に許可を出す。

 「はぁ……ほんと、嫌だな……。」
 潰された指や腕に追い打ちをかけるように押し当てられた焼き鏝により地下室に響き渡る苦痛の呻き声をBGMに、呟かれた言葉は拷問具である自身への自己嫌悪故か、それとも静かな暮らしがしたいという願いが叶わないことへの不満か、答えは胸の内に。

大成功 🔵​🔵​🔵​


「貴様ら……許さん、許さんぞ!」
拷問から抜け出し、蓄積されたダメージと拷問の疲労により満身創痍なヴァンパイアだが、その目に宿る戦意は今までで最も強いものだ。
 「貴様ら猟兵は皆殺しだ!そう、そうだ。根絶やしにしてからでも絵を描くには遅くはない。傷をいやすのはそれからでいい……」
 ぶつぶつと独り言を呟き始めるヴァンパイアの表情に、今までの余裕はない。しかし、手負いの獣となったヴァンパイアはより危険度を増していると言えるだろう。
羽重・やち
【三姫】。
【先制攻撃】の【早業】、で、初手。
「…なんだ、随分、手負いだな」
もっと、悠然、と、構えていると、思っていたが。
やちが、応援、来るまでに。大分、手酷く、やられたらしい。
ああ、手負いの獣、侮る、そんな三流の手、やちは使わない。

お前の攻撃、は、【見切り】に【残像】残して回避の一手。
ユーベルコードは、【ミレナリオ・リフレクション】で、相殺だ。
三姫、真っ直ぐ狙うな。【フェイント】、入れて、確実に、削りにいけ。



「なんだ、随分、手負いだな。」
 羽重・やち(明烏・f09761)が応援に駆け付けた時には、既にヴァンパイアは満身創痍だった。腕は折れ力なく重力に従って垂れ下がり、親指は潰れその断面は焼け潰れている。
 やちの予想ではもっと悠然と構えていると思っていただけに、随分手酷くやられたらしいヴァンパイアの有様に拍子抜けしてしまいそうになる。だが、やちは手負いの獣を侮ってかかるような三流の手は使わない。
 狙うはからくり人形【三姫】による先制攻撃、可愛らしい童の姿をした三姫は、ヴァンパイアの首を狙う。すんでの所で攻撃に気づいたヴァンパイアは、使えなくなった左腕を盾に攻撃を防ぐ。

 「次から次へと、まったくもって忌々しい……!」
 憎々し気に猟兵たるやちを睨み付けたヴァンパイアは、4つ指となった手で豪奢な刀剣を振るう。今までのような甚振るための剣ではなく、効率的に命を狩るための剣筋、首や脚を重点的に狙ったその剣を、やちは人形のような無表情のまま、三姫による攻撃を加えつつ、残像を交えた動きでひらひらと避けていく。

 「ちぃっ……ちょこまかと……!」
 薄く掠る傷はあれど、致命傷には至らず。じわじわと己の身体に傷が増えていくことに業を煮やしたヴァンパイアは、周囲に潜ませていた己の眷属である蝙蝠を差し向ける。

 「無駄、読めている。」
 【ミレナリオ・リフレクション】――やちのユーベルコードが、影から襲い来る蝙蝠と全く同じ姿形をとり、空中でぶつかり合う。互いに噛みつき、錐揉みして闇へと消えていく。

 奇襲の失敗に意識を割いた一瞬の後、ヴァンパイアは背後に猛烈な悪寒を感じる。素晴らしい反応速度による振り向きざまの横薙ぎ一閃、しかしヴァンパイアに何かを斬った手ごたえはない。
 代わりに感じたのは、喉が焼けるような熱、やちと三姫による一瞬の早業に己の首が斬られたのだとヴァンパイアが認識するまでには、しばしの時間を要した。

成功 🔵​🔵​🔴​

アレクシア・アークライト
「次から次へ」で申し訳ないけど、多分私で最後だから安心して。

音もない、光もない。遠くからのそんな攻撃を躱せるかしら?(念動力、サイコキネシス)
あいつの遠くからの攻撃は、多重障壁で防御。
万が一近付かれたら、念動を込めた一撃を放ってあげる。(ヴァリアブル・ウェポン)

それにしても、首を斬られてまだ生きてるなんて、さすがは「バンパイア」ね。
やっぱり最後は心臓に杭を打たなきゃダメなのかしら?

この世界のバンパイアは、死んだらどうなるんだろう?
死体が残るなら、うちのとこ(UDC組織)の研究材料にしてもいいわね。
あいつの好きな芸術とは無縁のところで、淡々と解剖され、分解され、研究される対象にしてあげる。



ひゅうひゅうと空気の抜けるような音を喉から発し、ふらふらと覚束ない足取りながらもぎらついた眼を猟兵に向けるヴァンパイア。未だ戦意を露わにするのは、これだけ不利な状況でも自身の敗北を欠片も想定していない愚かともいえる傲慢さ故か。

「首を斬られてまだ生きてるなんて、さすがは「バンパイア」ね。やっぱり最後は心臓に杭を打たなきゃダメなのかしら?」
 疑問と共にヴァンパイアへ視線を向けたアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は、静かにサイキックエナジーを放つ。
 音もなく、光もなく、触れることなく物体へ影響を及ぼす。超能力の代名詞とも言える能力、サイコキネシスは目に見えるわけではないため、回避は殊更に難しい。万全であれば常ならざる力の気配を察知して避けることもヴァンパイアならばできたが、満身創痍の今、それは叶うことはない。

 「ぐぅっ……がっ、がああああああ!!」
 自由を奪われ、念力の意のままに叩きつけられて苦悶の声を上げるヴァンパイア、一瞬の隙をついて体の自由を奪い取るも、苦し紛れに放った誓約書付きのナイフは幾重にも重なったフォースシールドに阻まれて勢いを失い、反撃も失敗に終わる。

 「馬鹿な、こんな、ことがっ……私はまだっ」
 続く言葉は言えず、ヴァンパイアは虚空へ手を伸ばしたのを最期に、指先から崩壊するように消滅した。

 「あら、死体が残るなら、うちのとこに持って帰って研究材料にするのもいいかと思ったんだけど……しょうがないわね。」
 ちょっぴり残念そうに、けれどすぐに諦めて興味を失ったアレクシアは、ヴァンパイア討伐の報せを届けるため、くるりと踵を返し、歩いていく。

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 あなた達がヴァンパイアを討伐したと聞いて、領主の娘であるアンナはとても安堵した様子で猟兵達へ感謝を告げる。
「人さらいも減って、お父様もやっとまともに街の領主ができるようになって……まだまだこれからですけど、久しぶりに、未来に希望を持てた気がします。」

 そう言って、心からの笑顔で
「本当に、ありがとうございました!」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月07日


挿絵イラスト